IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジェムス・エンヂニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-バルブピン 図1
  • 特開-バルブピン 図2
  • 特開-バルブピン 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118234
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】バルブピン
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/28 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
B29C45/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021074
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】504019489
【氏名又は名称】ジェムス・エンヂニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】門脇 聡
(72)【発明者】
【氏名】金子 広孝
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AJ11
4F202AR13
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK03
4F202CK07
(57)【要約】
【課題】射出成形が終了した後に先端面に樹脂が残存しにくいバルブピンを提供する。
【解決手段】金型内に形成されたキャビティへ溶融樹脂を導入するためのゲート部に設けられた台座に対して着座することにより、前記ゲート部を閉鎖するためのバルブピンであって、先端面と前記溶融樹脂との接触が点接触となるように、前記先端面の全体にわたって複数のマイクロディンプルが形成されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内に形成されたキャビティへ溶融樹脂を導入するためのゲート部に設けられた台座に対して外周面が着座することにより、前記ゲート部を閉鎖するためのバルブピンであって、
先端面と前記溶融樹脂との接触が点接触となるように、前記先端面の全体にわたって複数のマイクロディンプルが形成されている、バルブピン。
【請求項2】
前記先端面の算術平均粗さは0.1~1μmであり、前記マイクロディンプルの最大高さは1~10μmである、請求項1に記載のバルブピン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形用金型へ溶融樹脂を導入するためのゲートの開閉を行なうために射出ノズル内で駆動されるバルブピンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂製品の製造技術として、金型内に形成されたキャビティへゲートを通じて溶融樹脂を導入し、キャビティ内で樹脂を固化させた後、成形品を金型から離型させる射出成形が知られている。このような射出成型では、溶融樹脂を射出する射出ノズルを備えたランナユニットが利用される。射出ノズルの内部にはゲートを開閉するためのバルブピンと呼ばれる棒状のピンが配置され、射出ノズル内に設けられた台座に対してバルブピンを着座させることで、ゲートの閉鎖を行なうようになっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-063110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなランナユニットでは、射出成形が終了した後で射出ノズルを金型から離型させたときに、ゲートに面するバルブピンの先端面に固化した樹脂が残存することがあった。このような部分に固化した樹脂が残存していると、次回の射出成形の際にバルブピンに残存していた樹脂が成形品の表面に転写されるという不具合がある。そのため、バルブピンの先端面をテーパ形状にするなどの対策が採られている。そのような対策により、射出成形が終了した後のバルブピンの先端面に樹脂が残存することが少なくなったものの、射出ノズルを離型させる際の温度条件等によっては、依然として、バルブピンの先端面に樹脂が残存する場合があることがわかった。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、射出成形が終了した後に先端面に樹脂が残存しにくいバルブピンを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金型内に形成されたキャビティへ溶融樹脂を導入するためのゲート部に設けられた台座に対して着座することにより、前記ゲート部を閉鎖するためのバルブピンであって、先端面と前記溶融樹脂との接触が点接触となるように、前記先端面の全体にわたって複数のマイクロディンプルが形成されているものである。
【0007】
本発明に係るバルブピンにおいて、前記先端面の算術平均粗さは0.1~1μmとし、前記マイクロディンプルの最大高さは1~10μmとすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るバルブピンでは、先端面と溶融樹脂との接触が点接触となるように先端面の全体にわたって複数のマイクロディンプルが形成されているので、先端面と溶融樹脂との間の摩擦抵抗が低減され、それによって、先端面に樹脂が付着しにくくなる。これにより、射出成形が終了した後に先端面に樹脂が残存しにくいバルブピンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施例のバルブピンを含むホットランナユニットの射出ノズルの内部構造の一例を示す部分断面図である。
図2】同実施例のバルブピンの先端面の状態を示す図である。
図3】先端面にマイクロディンプルを形成した場合と形成していない場合での樹脂の残存状態を比較するための画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るバルブピンの一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1はホットランナユニットの射出ノズル100の内部構造を示している。
射出ノズル100は、先端にゲート部102を備え、内部流路104内を流れた溶融樹脂がゲート部102から射出される。内部流路104の先端部内面は、ゲート部102に向けて内径が小さくなるように傾斜して台座106を形成している。
【0012】
バルブピン1は、先端がゲート部102を向くように内部流路104に配置された棒状の金属部材である。バルブピン1は、内部流路104内において軸方向(図において上下方向)へ駆動される。バルブピン1の先端に、射出ノズル100のゲート部102の内径よりも僅かに小さい外径をもつ円柱形状の先端部2が設けられている。バルブピン1の先端部2よりも基端側(図において上側)の部分に、先端部2から基端側へいくにしたがって外径が徐々に大きくなるように外周面が傾斜したテーパ部4が設けられている。バルブピン1のテーパ部4は、バルブピン1がゲート部102側へ駆動されたときに台座106に着座し、ゲート部102を閉鎖する。
【0013】
図2に示されているように、バルブピン1の先端面2aには、複数のマイクロディンプル(直径がμmオーダーの窪み)が全体にわたって形成されている。このような複数のマイクロディンプルは、先端面2aに対してマイクロショットピーニング処理を施すことによって形成することができる。マイクロショットピーニング処理とは、微細な粒子を対象面に対して高速で投射する処理である。先端面2aに対して施すマイクロショットピーニング処理では、例えば、鋼粒子、ステンレス粒子、ガラス粒子、セラミック粒子、インジウム鉛粒子、錫粒子、銀粒子、二硫化モリブデン粒子、二硫化タングステン粒子、窒化ホウ素粒子、フッ素樹脂粒子などの中からバルブピン1の素材に適した粒子を選択して使用することができる。バルブピン1の素材の一例は、ハイス鋼(SKH51など)である。粒子の直径を100μm以下(例えば、直径55μm程度)とし、投射速度を100m/秒以上とすることができる。
【0014】
バルブピン1の先端面2aに上記のようなマイクロショットピーニング処理を施すことで、先端面2aの算術平均粗さを0.1~1μm、マイクロディンプルの最大高さを1~10μmとすることができる。先端面2aをこのような状態にすることで、先端面2aと樹脂との接触が点接触になり、先端面2aと樹脂との摩擦抵抗が小さくなり、射出成形が終了して射出ノズル100を離型させた後のバルブピン1の先端面2aに樹脂が残存しにくくなる。
【0015】
一般的に、バルブピンにはTinコーティングが施されることによって耐圧性や耐摩耗性の向上が図られている。一方で、この実施例のバルブピン1のように、先端面2aに上記のようなマイクロショットピーニング処理を施すことで、マイクロフォーシング効果によって先端面2aの硬度が向上し、Tinコーティングと同等の効果が得られる。
【0016】
図3の(A)は、先端面にマイクロディンプルが形成されていない(マイクロショットピーニング処理が施されていない)バルブピンを用いて射出成形を行なった後のバルブピンの先端面をゲート部側からみた画像であり、(B)は先端面にマイクロディンプルが形成されている(マイクロショットピーニング処理が施されている)バルブピンを用いて射出成形を行なった後のバルブピンの先端面をゲート部側からみた画像である。
【0017】
図3(A)の画像では、射出成形後に離型されたゲート部に固化した樹脂膜が白く映っており、バルブピンの先端面に樹脂が残存していることがわかる。一方で、図3(B)の画像では、射出形成後に(A)と同じように離型されたゲート部に白い樹脂膜が写っておらず、バルブピンの先端面に樹脂が残存していないことがわかる。このように、マイクロショットピーニング処理によってマイクロディンプルが先端面に形成されたバルブピンを使用することで、射出成型後に金型から離型された射出ノズルのゲート部に樹脂が残存することを効果的に抑制できることがわかる。
【0018】
以上において説明した実施例は、本発明に係るバルブピンの実施形態の一例にすぎない。本発明に係るバルブピンは、先端面に複数のマイクロディンプルが形成されていることによって樹脂との接触が点接触となっていることを主な特徴とするものであり、その他の構造についてはゲート部の構造等に応じたものに変形可能である。上記実施例では、ホットランナユニットにおけるバルブピンとして説明しているが、コールドランナユニットにおいても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 バルブピン
2 先端部
2a 先端面
100 射出ノズル
102 ゲート部
104 内部流路
106 台座
図1
図2
図3