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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118249
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】物体検査システム及び表示制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20230818BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20230818BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20230818BHJP
   G03B 15/03 20210101ALI20230818BHJP
   G03B 15/05 20210101ALI20230818BHJP
   G03B 11/00 20210101ALI20230818BHJP
   G03B 17/18 20210101ALI20230818BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20230818BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20230818BHJP
【FI】
G01N21/84 E
G03B15/00 T
G03B15/02 R
G03B15/03 V
G03B15/05
G03B11/00
G03B17/18 Z
H04N5/225 400
H04N5/225 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021100
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】515086908
【氏名又は名称】株式会社トヨタプロダクションエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】椛島 治樹
【テーマコード(参考)】
2G051
2H053
2H083
2H102
5C122
【Fターム(参考)】
2G051AA88
2G051BA04
2G051BB15
2G051CA04
2G051CB01
2G051CC15
2H053AA00
2H053CA12
2H053CA21
2H083AA01
2H083AA16
2H083AA25
2H083AA26
2H083AA51
2H102AA41
2H102AA71
2H102BA21
2H102BB08
5C122DA12
5C122EA12
5C122FB16
5C122FF22
5C122FK12
5C122FK24
5C122GG17
5C122GG30
5C122HA46
5C122HB01
5C122HB07
(57)【要約】
【課題】工場などで物体の検査を行う場合に、環境光の影響を効率良く低減することを課題とする。
【解決手段】物体検査装置10は、分光部13aにより所定の期間で環境光の計測を行い、全ての時間帯で光の強度が所定の閾値以下である標準波長帯域を特定し、さらに所定の時刻において分光部13aにより環境光の計測を行い、所定の時刻における光の強度が所定の閾値以下である波長帯域を特定する。そして、特定された2つの波長帯域を比較し、撮像に適した波長帯域を選択処理する。物体検査装置10は、選択処理された波長帯域の光が透過され、かつ、この波長帯域以外の光を透過させないフィルタ14bを介して特定波長帯域の光を物体50に照射し、物体50から反射した光を、選択処理された波長帯域の光を透過させ、かつ、この波長帯域以外の光を透過させないフィルタ13cを介して撮像部13bで撮像する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の撮像部により検査対象となる物体の画像を撮像し、撮像した物体の画像を所定の表示部に表示制御する物体検査システムであって、
あらかじめ設定された所定の時刻における環境光を形成する各波長帯域のうち強度が低い所定の波長帯域を特定する特定手段と、
少なくとも前記特定手段により特定された波長帯域に基づいて選択された波長帯域の光を前記物体に照射する光源装置と、
前記物体の画像を撮像する撮像装置と
を備えたことを特徴とする物体検査システム。
【請求項2】
前記物体の検査を行う検査時間帯における環境光を形成する各波長帯域のうち強度が低い標準波長帯域を特定する標準波長帯域特定手段と、
前記特定手段により特定された波長帯域及び前記標準波長帯域に基づいて波長帯域を選択処理する選択処理手段と
をさらに備え、
前記光源装置は、
前記選択処理手段により選択処理された波長帯域の光を前記物体に照射する
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検査システム。
【請求項3】
前記特定手段は、
前記環境光を形成する波長帯域ごとに分光する分光手段を備え、
前記分光手段により分光された各波長帯域の強度に基づいて、強度の低い波長の光の波長帯域を特定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の物体検査システム。
【請求項4】
前記光源装置は、
白色光を発光する発光部と、
前記白色光を形成する波長帯域のうち、前記選択処理手段により選択処理された波長帯域の光を透過する第1のフィルタと
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の物体検査システム。
【請求項5】
前記撮像装置は、
前記白色光を形成する波長帯域のうち、前記選択処理手段により選択処理された波長帯域の光を透過する第2のフィルタを備えたことを特徴とする請求項4に記載の物体検査システム。
【請求項6】
前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタは、
複数の特定の波長帯域の光を透過する複数の光学フィルタと、
前記複数の光学フィルタのうち前記選択処理手段により選択処理された波長帯域の光を透過する光学フィルタを自動選択する選択手段と
を備えたことを特徴とする請求項5に記載の物体検査システム。
【請求項7】
前記光源装置は、
前記発光部から発光された特定の波長帯域の光を所定領域に対してスポット的に照射することを特徴とする請求項4に記載の物体検査システム。
【請求項8】
所定の撮像部により検査対象となる物体の画像を撮像し、撮像した物体の画像を所定の表示部に表示制御する物体検査システムにおける表示制御方法であって、
あらかじめ設定された所定の時刻における環境光を形成する各波長帯域のうち強度が低い所定の波長帯域を特定する特定工程と、
光源装置が、少なくとも前記特定工程により特定された波長帯域に基づいて選択された波長帯域の光を前記物体に照射する照射工程と、
撮像装置が、前記物体の画像を撮像する撮像工程と
を含むことを特徴とする表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場などで物体の検査を行う場合に、環境光の変化の影響を効率良く低減することができる物体検査システム及び表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場などで物体の検査を行う場合に、この物体を撮像した画像を表示装置に表示し、検査者が画像を見ながら物体を検査する技術が知られている。かかる場合に、照明や日光などの環境光が変化したならば、画像を形成する各画素の画素値が変動し、物品を視認できなくなる場合がある。
【0003】
このため、特許文献1には、各画素に対応して、少なくとも1種のカラーフィルタと、両側に隣接する波長域よりも太陽光の分光放射照度が低い特定の波長域を透過する特定のフィルタとが受光面上に配置された撮像素子と、この撮像素子から取得する画像信号における、特定のフィルタを配置した画素が生成した信号成分に基づいて、撮像素子の撮像範囲に照射される太陽光と異なる特定の光源の照射状態を検出する撮像装置が開示されている。これにより、太陽光の放射照度が大きい場合であっても、太陽光の影響を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6322723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のものは、太陽光の分光放射照度が低い特定の波長域を利用するものであるが、太陽光、照明及びセンサが混在する室内では、光源の状態が時間帯によって変化するため、太陽光の分光放射照度が低い特定の波長域を用いたとしても、適正な画像が取得できるとは限らない。
【0006】
言い換えると、工場などで物体の検査を行う場合には、検査を行う時間帯に応じて環境光の影響を低減する必要がある。このため、工場などで物体の検査を行う場合に、いかに効率良く環境光の変化の影響を低減するかが重要な課題となっている。
【0007】
本発明は、上記従来技術による問題点(課題)を解決するためになされたものであって、工場などで物体の検査を行う場合に、環境光の変化の影響を効率良く低減することができる物体検査システム及び表示制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、所定の撮像部により検査対象となる物体の画像を撮像し、撮像した物体の画像を所定の表示部に表示制御する物体検査システムであって、あらかじめ設定された所定の時刻における環境光を形成する各波長帯域のうち強度が低い所定の波長帯域を特定する特定手段と、少なくとも前記特定手段により特定された波長帯域に基づいて選択された波長帯域の光を前記物体に照射する光源装置と、前記物体の画像を撮像する撮像装置とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記物体の検査を行う検査時間帯における環境光を形成する各波長帯域のうち強度が低い標準波長帯域を特定する標準波長帯域特定手段と、前記特定手段により特定された波長帯域及び前記標準波長帯域に基づいて波長帯域を選択処理する選択処理手段とをさらに備え、前記光源装置は、前記選択処理手段により選択処理された波長帯域の光を前記物体に照射することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記特定手段は、前記環境光を形成する波長帯域ごとに分光する分光手段を備え、前記分光手段により分光された各波長帯域の強度に基づいて、強度の低い波長の光の波長帯域を特定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記光源装置は、白色光を発光する発光部と、前記白色光を形成する波長帯域のうち、前記選択処理手段により選択処理された波長帯域の光を透過する第1のフィルタとを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記撮像装置は、前記白色光を形成する波長帯域のうち、前記選択処理手段により選択処理された波長帯域の光を透過する第2のフィルタを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記第1のフィルタ及び前記第2のフィルタは、複数の特定の波長帯域の光を透過する複数の光学フィルタと、前記複数の光学フィルタのうち前記選択処理手段により選択処理された波長帯域の光を透過する光学フィルタを自動選択する選択手段とを備えたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記光源装置は、前記発光部から発光された特定の波長帯域の光を所定領域に対してスポット的に照射することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、所定の撮像部により検査対象となる物体の画像を撮像し、撮像した物体の画像を所定の表示部に表示制御する物体検査システムにおける表示制御方法であって、あらかじめ設定された所定の時刻における環境光を形成する各波長帯域のうち強度が低い所定の波長帯域を特定する特定工程と、光源装置が、少なくとも前記特定工程により特定された波長帯域に基づいて選択された波長帯域の光を前記物体に照射する照射工程と、撮像装置が、前記物体の画像を撮像する撮像工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、工場などで物体の検査を行う場合に、環境光の影響を効率良く低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態1に係る物体検査システムの概要を示す図である。
図2図2は、図1に示した物体検査装置の構成を示す機能ブロック図である。
図3図3は、標準波長帯域の特定についての概要を示す図である。
図4図4は、図3に示した物体検査装置による標準波長帯域の特定を説明するための説明図である。
図5図5は、図2に示した物体検査装置による波長帯域の特定を説明するための説明図である。
図6図6は、図2に示した物体検査装置による標準波長帯域の特定手順を示すフローチャートである。
図7図7は、図2に示した物体検査装置による表示制御手順を示すフローチャートである。
図8図8は、可視光画像及び特定波長帯域の光を用いた処理済画像の一例を示す図である。
図9図9は、実施形態2に係る物体検査システムの概要を示す図である。
図10図10は、図9に示した物体検査装置の構成を示す機能ブロック図である。
図11図11は、図10に示した物体検査装置による表示制御手順を示すフローチャートである。
図12図12は、実施形態3に係る物体検査システムの概要を示す図である。
図13図13は、図12に示した物体検査装置の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る物体検査システム及び表示制御方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
[実施形態1]
<物体検査システムの概要>
まず、本実施形態1に係る物体検査システムの概要について説明する。図1は、実施形態1に係る物体検査システムの概要を示す図である。なお、ここでは、あらかじめ検査を行う全ての時間帯で光の強度が所定の閾値以下である標準波長帯域は特定されているものとする。
【0020】
図1に示すように、物体検査装置10は、所定の時刻になったならば、分光部13aが検査台60上の環境光を分光し、波長毎の強度を物体検査装置10に通知する(S1)。そして、物体検査装置10は、所定の時刻における環境光の波長毎の強度を通知されたならば、その時刻において強度が所定の閾値以下となる波長帯域を特定する(S2)。かかる波長帯域が複数存在する場合には、強度がより小さな波長帯域を特定する。
【0021】
そして、物体検査装置10は、全ての時間帯において強度が所定の閾値以下である標準波長帯域と、その時刻において強度が所定の閾値以下である波長帯域を比較し、撮像に適した波長帯域を選択処理する(S3)。例えば、その時刻における波長帯域Tの強度T1が標準波長帯域Sの強度S1よりも小さい場合(T1<S1)には、波長帯域Tを選択処理する。一方、波長帯域Tの強度T1が標準波長帯域Sの強度S1以上である場合(T1≧S1)には、標準波長帯域Sを選択処理する。また、波長帯域Tの強度T1と標準波長帯域Sの強度S1に差がない場合には、標準波長帯域Sを選択処理することもできる。
【0022】
物体検査装置10は、選択処理された波長帯域の光を透過させ、かつ、この波長帯域以外の光を透過させないフィルタ14bを配設する。そして、白色光源14aにより発光された光のうちフィルタ14bを透過した光を物体50に照射する(S4)。また、物体50と撮像部13bとの間にフィルタ13cを配設する。かかるフィルタ13cは、フィルタ14bと同様に、選択処理された波長帯域の光を透過させ、かつ、この波長帯域以外の光を透過させないフィルタである。このため、撮像部13bは、選択処理された波長帯域の光に基づく物体50の画像が撮像される(S5)。
【0023】
そして、物体検査装置10は、撮像部13bにより撮像された画像に対して画像処理を行う(S6)。具体的には、かかる画像をx方向、y方向に微分処理して輝度勾配を求め、この輝度勾配が所定の閾値未満の画素の画素値を所定値(例えば、「0」)にして、該画素の輝度勾配が存在しないようにする。かかる画像処理を行った画像を表示部11に表示制御する(S7)。
【0024】
<物体検査装置10の構成>
次に、図1に示した物体検査装置10の構成について説明する。図2は、図1に示した物体検査装置10の構成を示す機能ブロック図である。図2に示すように、物体検査装置10は、記憶部15及び制御部16を有し、表示部11、入力部12、撮像装置13及び光源装置14が接続されている。表示部11は、各種情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示デバイスである。入力部12は、マウスやキーボードなどの入力デバイスである。
【0025】
撮像装置13は、分光部13aと、撮像部13bと、フィルタ13cとを有する。分光部13aは、検査台60の環境光の波長ごとの強度を計測する装置である。分光部13aは、プリズムによる分光又は回折格子による分光が行われる。撮像部13bは、物体50を撮像するカメラである。フィルタ13cは、特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させない光学フィルタである。
【0026】
光源装置14は、白色光源14aと、フィルタ14bとを有する。白色光源14aは、紫外光、可視光及び赤外光の波長帯域を含む光を照射する光源である。かかる白色光源14aとして、例えばLEDを用いることができる。なお、放電灯(水銀ランプ、重水素ランプ、タングステン及びキセノンランプなど)、又は、レーザ励起の白色光源を用いることもできる。なお、光源装置14は、フィルタ14bを使用せず、特定の波長帯域の光を直接照射できる光源であってもよい。
【0027】
フィルタ14bは、特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させない光学フィルタである。かかる光学フィルタは、イオンアシスト蒸着多層膜やスパッタリング多層膜等を用いて製造することができる。
【0028】
記憶部15は、ハードディスク装置や不揮発性メモリなどの記憶デバイスであり、標準分光データ15aと、分光データ15bと、画像データ15cとを記憶する。標準分光データ15aは、長期の期間において所定の時刻に分光部13aで計測された環境光の波長と強度を対応付けたデータである。分光データ15bは、所定の時刻において分光部13aで計測された環境光の波長と強度を対応付けたデータである。画像データ15cは、撮像装置13の撮像部13bにより特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させないフィルタ13cを介して撮像された画像データである。
【0029】
制御部16は、物体検査装置10の全体を制御する制御部であり、標準分光出力取得部16aと、標準波長特定部16bと、分光出力取得部16cと、波長特定部16dと、波長帯域選択処理部16eと、光源制御部16fと、撮像処理部16gと、画像処理部16hと、表示制御部16iとを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、標準分光出力取得部16aと、標準波長特定部16bと、分光出力取得部16cと、波長特定部16dと、波長帯域選択処理部16eと、光源制御部16fと、撮像処理部16gと、画像処理部16hと、表示制御部16iとにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0030】
標準分光出力取得部16aは、長期の期間における所定の時刻で分光部13aを制御して検査台60の環境光の計測を行い、分光部13aから出力される分光データを取得し、標準分光データ15aとして記憶する処理部である。標準分光出力取得部16aは、例えば朝、夕方、夜の時間帯で標準分光データ15aの取得を行う。
【0031】
標準波長特定部16bは、標準分光出力取得部16aで取得した各時間帯の標準分光データ15aから全ての時間帯において光の強度が所定の閾値以下となる標準波長帯域を特定する処理部である。
【0032】
分光出力取得部16cは、所定の時刻において分光部13aを制御して検査台60の環境光の計測を行い、分光部13aから出力される分光データを取得し、分光データ15bとして記憶する処理部である。波長特定部16dは、分光出力取得部16cで取得した所定の時刻における分光データ15bから、該時刻における波長帯域を特定する処理部である。
【0033】
波長帯域選択処理部16eは、標準波長特定部16bで特定された全時間帯において光の強度が所定の閾値以下となる標準波長帯域と、波長特定部16dで特定された所定の時刻において光の強度が所定の閾値以下となる波長帯域とを比較し、撮像に適した波長帯域の選択処理を行う。
【0034】
例えば、その時刻における波長帯域Tの強度T1が標準波長帯域Sの強度S1よりも小さい場合(T1<S1)には、波長帯域Tを選択処理する。一方、波長帯域Tの強度T1が標準波長帯域Sの強度S1以上である場合(T1≧S1)には、標準波長帯域Sを選択処理する。また、波長帯域Tの強度T1と標準波長帯域Sの強度S1に差がない場合には、標準波長帯域Sを選択処理することもできる。
【0035】
光源制御部16fは、検査台60に載置された物体50を撮像するために、光源装置14の白色光源14aをオン/オフ制御を行う制御部である。光源装置14のフィルタ14bは、波長帯域選択処理部16eで選択処理された波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させないフィルタである。かかるフィルタ14bは、操作者が複数のフィルタの中から該波長帯域に適合するものを選択して設置する。
【0036】
撮像処理部16gは、光源装置14から光が照射された後に、検査台60に載置された物体50を撮像部13bにより撮像させるよう制御する処理部である。フィルタ13cは、波長帯域選択処理部16eで選択処理された波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させないフィルタである。かかるフィルタ13cは、操作者が複数のフィルタの中から該波長帯域に適合するものを選択して設置する。
【0037】
画像処理部16hは、物体50を可視化して表示するための画像処理を行う処理部であり、(1)ノイズ除去、(2)微分処理、(3)輝度勾配の算定、(4)閾値処理などを行う。(1)ノイズ除去においては、公知の積分処理、平滑化処理などを行う。(2)微分処理においては、例えばX方向及びY方向のSOBELフィルタを用いることができる。(3)輝度勾配の算定においては、X方向の微分画像及びY方向の微分画像の画素値を用いて輝度勾配を求めることができる。
【0038】
なお、各画素の輝度勾配を求める際には、単にX方向の微分画像の画素値xとY方向の対応する位置の画素値yの平均値などを用いることができる。表示制御部16iは、画像処理部16hで処理された画像を表示部11に表示制御する処理部である。
【0039】
<標準波長帯域の特定の概要>
次に、物体検査装置10の標準波長帯域の特定についての概要を説明する。図3は、標準波長帯域の特定についての概要を示す図である。図3に示すように、物体検査システムは、事前に光源装置14から照射する光の波長を特定する処理を行う。
【0040】
具体的には、検査台60の上部には、分光部13aが設けられており、この分光部13aが検査台60上の環境光(太陽光及び照明光を含む)を分光し、波長毎の強度を物体検査装置10に通知する(S10)。そして、物体検査装置10は、複数の時間帯における環境光の波長毎の強度をそれぞれ通知されたならば、全ての時間帯で強度が所定の閾値以下となる波長を含む標準波長帯域を特定する(S11)。
【0041】
このようにして、事前に長期の期間において全ての時間帯で光の強度が所定の閾値以下である標準波長帯域を特定する。例えば、朝、夕方、夜のそれぞれ所定時刻における環境光の波長毎の強度を用いて全ての時間帯で強度が所定の閾値以下となる標準波長帯域を特定することになる。
【0042】
<標準波長帯域の特定について>
次に、図3に示した物体検査装置10による標準波長帯域の特定について説明する。図4は、図3に示した物体検査装置10による標準波長帯域の特定を説明するための説明図である。ここでは、長期の期間として朝、夕方、夜の3回計測する例を示している。図4に示すように、物体検査装置10は、標準分光出力取得部16aにおいて分光部13aの環境光の各波長の強度を取得する。環境光は、朝の時間帯では日光及び照明光となり、夕方の時間帯では日光及び照明光となり、夜の時間帯では照明光となる。ここで、照明光は、室内や工場等の室内灯の光であるものとする。
【0043】
そして、例えば朝、夕方及び夜の時間帯において計測を完了したならば、計測した全ての時間帯の各波長の強度が閾値以下である標準波長帯域を特定する。図4の例では、朝の時間帯、夕方の時間帯及び夜の時間帯の全ての時間帯で閾値よりも強度が低いのは波長がλ1よりも長い帯域となる。このため、標準波長特定部16bは、光源装置14から物体50に照射する光の波長帯域を例えばλ1より長く、λ2より短い波長帯域に特定する。
【0044】
<波長帯域の特定について>
次に、所定の時刻における波長帯域の特定について説明する。図5は、図2に示した物体検査装置10による波長帯域の特定を説明するための説明図である。図5に示すように、物体検査装置10は、所定の時刻に分光出力取得部16cにおいて分光部13aの環境光の各波長の強度を取得する。そして、取得した分光データ15bに基づいて、所定の時刻における各波長の強度が閾値以下である波長帯域を特定する。図5では、波長がλ3より長くλ4よりも短い波長を特定する。なお、所定の時刻は、例えば毎正時である。
【0045】
物体検査装置10は、波長帯域選択処理部16eにおいて、標準波長特定部16bで特定された長期の期間における全ての時間帯の各波長の強度が所定の閾値以下である標準波長帯域(ここでは、λ1よりも長いくλ2より短い波長帯域)と、波長特定部16dで特定された所定の時刻における各波長の強度が閾値以下である波長帯域(ここでは、λ3より長くλ4より短い波長帯域)とを比較し、撮像に適した波長を選択処理する。
【0046】
例えば、その時刻における波長帯域Tの強度T1が標準波長帯域Sの強度S1よりも小さい場合(T1<S1)には、波長帯域Tを選択処理する。一方、波長帯域Tの強度T1が標準波長帯域Sの強度S1以上である場合(T1≧S1)には、標準波長帯域Sを選択処理する。また、波長帯域Tの強度T1と標準波長帯域Sの強度S1に差がない場合には、標準波長帯域Sを選択処理することもできる。
【0047】
<物体検査装置10の標準波長帯域を特定する処理手順>
次に、物体検査装置10による標準波長帯域の特定手順について説明する。図6は、図2に示した物体検査装置10による標準波長帯域の特定手順を示すフローチャートである。図6に示すように、物体検査装置10は、所定時刻になるまで待機する(ステップS101;No)。所定の時刻は、例えば朝ならば9時とする。
【0048】
物体検査装置10は、所定時刻になったならば(ステップS101;Yes)、分光部13aの分光出力を取得する(ステップS102)。その後、物体検査装置10は、計測を終了しないならば(ステップS103;No)、ステップS101に移行して、次の所定時刻が来るまで待機する。また、物体検査装置10は、計測が終了したならば(ステップS103;Yes)、全ての時間帯で強度が閾値以下となる標準波長帯域を特定し(ステップS104)、処理を終了する。
【0049】
<物体検査装置10による表示制御手順>
次に、物体検査装置10による表示制御手順について説明する。図7は、図2に示した物体検査装置10による表示制御手順を示すフローチャートである。
【0050】
図7に示すように、物体検査装置10は、所定の時刻になるまで待機する(ステップS201;No)。そして、物体検査装置10は、所定の時刻になったならば(ステップS201;Yes)、分光出力取得部16cにおいて所定時刻の分光部13aの環境光の各波長の強度を取得する(ステップS202)。
【0051】
そして、物体検査装置10は、所定時刻において計測した各波長の強度が閾値以下である波長帯域を特定する(ステップS203)。その後、物体検査装置10は、全ての時間帯の各波長の強度が閾値以下である標準波長帯域と、所定時刻の各波長の強度が閾値以下である波長帯域とを比較し、撮像に適した波長帯域を選択処理する(ステップS204)。そして、選択処理された波長帯域の光を透過し、この波長帯域以外を透過しないフィルタ13c及びフィルタ14bを配設する(ステップS205)。
【0052】
物体検査装置10は、光源装置14の白色光源14aをオンにし、光を照射する(ステップS206)。かかる白色光には、様々な波長の光が含まれるが、フィルタ14bにより特定の波長帯域(撮像に適した波長帯域)が透過され、かつ、この波長帯域以外が透過されない光が物体50に照射される。
【0053】
物体検査装置10は、物体50に対して照射した光が選択処理された波長帯域及び強度であるかを確認するために分光部13aより分光出力を取得する(ステップS207)。その後、物体検査装置10は、計測した分光出力が適正であるか否かを判定する(ステップS208)。具体的には、選択処理された波長帯域である場合には、適正であると判定される。
【0054】
そして、分光出力が適正でないと判定されたならば(ステップS208;No)、エラー処理を行い(ステップS209)、処理を終了する。ここで、かかるエラー処理としては、例えば表示部11に「白色光源エラー」等の文字を表示するか、エラーコードを表示することができる。
【0055】
これに対して、分光出力が適正であると判定されたならば(ステップS208;Yes)、検査台60に載置された物体50の画像表示処理を行う(ステップS210)。なお、ここで画像表示処理とは、検査台60に載置された物体50の画像を取得し、取得した画像にノイズ除去、微分処理、輝度勾配の算定、閾値処理などの画像処理を行った後、処理済画像を表示部11に表示制御する処理である。
【0056】
そして、物体検査装置10は、検査が終了したか否かを判定する(ステップS211)。物体検査装置10は、検査が終了していないと判定したならば(ステップS211;No)、ステップS201に移行する。また、検査が終了したと判定されたならば(ステップS211;Yes)、処理を終了する。
【0057】
<特定波長帯域を用いた処理済画像>
次に、特定波長帯域の光を用いた処理済画像の一例について説明する。図8は、可視光画像及び特定波長帯域の光を用いた処理済画像の一例を示す図である。図8(a)に示すように、可視光画像は、背景にある様々な物体も含む画像となる。これに対して、図8(b)に示すように、撮像に適した波長帯域を選択処理し、選択処理された波長帯域の光を照射して撮像した画像は、背景部分が除去された物体50を含む画像となる。
【0058】
上述してきたように、本実施形態1では、物体検査装置10は、分光部13aにより所定の期間で環境光の計測を行い、全ての時間帯で光の強度が所定の閾値以下である標準波長帯域を特定する。さらに所定の時刻において分光部13aにより環境光の計測を行い、所定の時刻における光の強度が所定の閾値以下である波長帯域を特定し、特定された2つの波長帯域を比較し、撮像に適した波長帯域を選択処理する。そして、物体検査装置10は、特定の波長帯域(撮像に適した波長帯域)の光が透過され、かつ、この波長帯域以外の光を透過させないフィルタ14bを介して特定の波長帯域(撮像に適した波長帯域)の光を物体50に照射し、物体50から反射した光を、特定の波長帯域(撮像に適した波長帯域)の光を透過させ、かつ、この波長帯域以外の光を透過させないフィルタ13cを介して撮像部13bで撮像することにより、工場などで物体の検査を行う場合に、環境光の変化の影響を効率良く低減することができる。
【0059】
なお、上記実施形態1では、所定の時刻になったか否かに基づいて波長帯域の特定を行っていたが、検査台60に照度センサ等を配設し、照度センサの計測値が所定の閾値以上変化を生じた場合に、環境光の計測を行い波長帯域の特定を行ってもよい。
【0060】
また、上記実施形態1では、ある時刻における波長帯域Tの強度T1と標準波長帯域Sの強度S1とを比較して波長帯域を選択処理する場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、波長帯域Tの強度T1と標準波長帯域Sの強度S1の関係を考慮することなく、波長帯域を選択処理することもできる。ある時刻以降に強度の変化が考えにくい場合には強度とは無関係に標準波長帯域Sを選択処理することもできる。
【0061】
[実施形態2]
ところで、上記実施形態1では、選択処理された波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させないフィルタはあらかじめ操作者が設置しておき、白色光源14aから選択処理された波長帯域の光を照射し、撮像部13bにおいて選択処理された波長帯域の光を撮像する場合について説明したが、本実施形態2では、特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させない複数枚のフィルタを撮像装置23及び光源装置24に備え、フィルタを制御部で自動選択する場合について説明する。なお、実施形態1と同様の部位については、同一の符号を付すこととして、その詳細な説明を省略する。
【0062】
<物体検査システムの概要>
次に、本実施形態2に係る物体検査システムの概要について説明する。図9は、実施形態2に係る物体検査システムの概要を示す図である。ここでは、物体検査装置20は、全ての時間帯で光の強度が所定の閾値以下となる標準波長帯域を特定できていることとする。
【0063】
図9に示すように、物体検査装置20は、物体50と撮像部13bとの間に可変フィルタ23aを配設する。かかる可変フィルタ23aは、特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させない複数枚のフィルタからなる。また、物体50と白色光源14aとの間に可変フィルタ24aを配設する。かかる可変フィルタ24aは、可変フィルタ23aと同様に、特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させない複数枚のフィルタからなる。
【0064】
そして、物体検査装置20は、所定の時刻になったならば、分光部13aが検査台60上の環境光を分光し、波長毎の強度を物体検査装置20に通知する(S20)。そして、物体検査装置20は、所定の時刻における環境光の波長毎の強度を通知されたならば、その時刻において強度が所定の閾値以下である波長帯域を特定する(S21)。その後、物体検査装置20は、全ての時間帯において強度が所定の閾値以下である標準波長帯域と、その時刻において強度が所定の閾値以下である波長帯域を比較し、撮像に適した波長帯域を選択処理する(S22)。
【0065】
その後、物体検査装置20は、波長帯域が選択処理されたならば、可変フィルタ23a及び24aの選択処理された波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させないフィルタを選択する(S23)。そして、物体検査装置20は、光源装置24の白色光源14aにより発光された光のうち可変フィルタ24aを透過した光を物体50に照射する(S24)。物体検査装置20は、物体50から反射した光を、選択処理された波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させないフィルタが選択された可変フィルタ23aを介して撮像部13bで画像を撮像する(S25)。
【0066】
そして、物体検査装置20は、撮像部13bにより撮像された画像に対して画像処理を行う(S26)。具体的には、かかる画像をx方向、y方向に微分処理して輝度勾配を求め、この輝度勾配が所定の閾値未満の画素の画素値を所定値(例えば、「0」)にして、該画素の輝度勾配が存在しないようにする。かかる画像処理を行った画像を表示部11に表示制御する(S27)。
【0067】
<物体検査装置20の構成>
次に、図9に示した物体検査装置20の構成について説明する。図10は、図9に示した物体検査装置20の構成を示す機能ブロック図である。図10に示すように、物体検査装置20は、記憶部15及び制御部26を有し、表示部11、入力部12、撮像装置23及び光源装置24が接続されている。
【0068】
撮像装置23は、分光部13aと、撮像部13bと、可変フィルタ23aとを有する。可変フィルタ23aは、特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させない複数枚の光学フィルタから構成され、円形又は直線の光学フィルタを保持する金具に光学フィルタを装着し、金具をモータ等で動かすことによって、透過させる光の波長帯域を可変する。
【0069】
光源装置24は、白色光源14aと、可変フィルタ24aとを有する。可変フィルタ24aは、特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させない複数枚の光学フィルタから構成され、円形又は直線の光学フィルタを保持する金具に光学フィルタを装着し、金具をモータ等で動かすことによって、透過させる光の波長帯域を可変する。
【0070】
制御部26は、物体検査装置20の全体を制御する制御部であり、標準分光出力取得部16aと、標準波長特定部16bと、分光出力取得部16cと、波長特定部16dと、波長帯域選択処理部16eと光源制御部16fと、撮像処理部16gと、画像処理部16hと、表示制御部16iと、フィルタ選択処理部26aとを有する。実際には、これらのプログラムをCPUにロードして実行することにより、標準分光出力取得部16aと、標準波長特定部16bと、分光出力取得部16cと、波長特定部16dと、波長帯域選択処理部16eと光源制御部16fと、撮像処理部16gと、画像処理部16hと、表示制御部16iと、フィルタ選択処理部26aとにそれぞれ対応するプロセスを実行させることになる。
【0071】
フィルタ選択処理部26aは、波長帯域選択処理部16eで選択処理された光の波長帯域に対応して、可変フィルタ23a及び可変フィルタ24aに配設されている複数枚の光学フィルタから選択処理された波長帯域の光を透過させ、かつ、この波長帯域以外の光を透過させないフィルタを選択する処理をする。具体的には、波長帯域選択処理部16eで光の波長帯域が選択処理されたならば、その波長帯域の光を透過させ、かつ、この波長帯域以外の光を透過させないフィルタを選択する信号を撮像装置23の可変フィルタ23aと、光源装置24の可変フィルタ24aに通知する。
【0072】
<物体検査装置20による表示制御手順>
次に、物体検査装置20により表示制御手順について説明する。図11は、図10に示した物体検査装置20による表示制御手順を示すフローチャートである。図11に示すように、物体検査装置20は、所定の時刻になるまで待機する(ステップS401;No)。そして、物体検査装置20は、所定の時刻になったならば(ステップS401;Yes)、分光出力取得部16cにおいて所定時刻の分光部13aの環境光の各波長の強度を取得する(ステップS402)。そして、物体検査装置20は、所定時刻において計測した各波長の強度が閾値以下である波長帯域を特定する(ステップS403)。その後、物体検査装置20は、全ての時間帯の各波長の強度が閾値以下である標準波長帯域と、所定時刻の各波長の強度が閾値以下である波長帯域とを比較し、撮像に適した波長帯域を選択処理する(ステップS404)。
【0073】
物体検査装置20は、光源装置24の可変フィルタ24aについて波長帯域選択処理部16eで選択処理された波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させないフィルタを選択する(ステップS405)。そして、物体検査装置20は、撮像装置23の可変フィルタ23aについて波長帯域選択処理部16eで選択処理された波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させないフィルタを選択する(ステップS406)。その後、物体検査装置20は、光源装置14の白色光源14aをオンにし、光を照射する(ステップS407)。かかる白色光には、様々な波長の光が含まれるが、可変フィルタ24aにより選択処理された波長帯域が透過され、かつ、この波長帯域以外が透過されない光が物体50に照射される。
【0074】
物体検査装置20は、物体50に対して照射した光が選択処理された波長帯域及び強度であるかを確認するために分光部13aより分光出力を取得する(ステップS408)。その後、物体検査装置20は、計測した分光出力が適正であるか否かを判定する。具体的には、特定の波長帯域である場合には、適正であると判定される。
【0075】
そして、分光出力が適正でないと判定されたならば(ステップS409;No)、エラー処理を行い(ステップS410)、処理を終了する。ここで、かかるエラー処理としては、例えば表示部11に「白色光源エラー」等の文字を表示するか、エラーコードを表示することができる。
【0076】
これに対して、分光出力が適正であると判定されたならば(ステップS409;Yes)、検査台60に載置された物体50の画像表示処理を行う(ステップS411)。なお、ここで画像表示処理とは、検査台60に載置された物体50の画像を取得し、取得した画像にノイズ除去、微分処理、輝度勾配の算定、閾値処理などの画像処理を行った後、処理済画像を表示部11に表示制御する処理である。
【0077】
そして、物体検査装置20は、検査が終了したか否かを判定する。物体検査装置20は、検査が終了していないと判定したならば(ステップS412;No)、ステップS401に移行する。また、検査が終了したと判定されたならば(ステップS412:Yes)、処理を終了する。
【0078】
このように、本実施形態2では、物体検査装置20は、特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させない複数枚のフィルタから構成される可変フィルタ23a及び24aを撮像装置23及び光源装置24に配設し、この可変フィルタ23a及び24aを制御部で選択することにより、波長帯域選択処理部16eで選択処理された波長帯域の光を照射し、撮像部13bにおいて選択処理された波長帯域の光を撮像するように構成したため、工場などで物体の検査を行う場合に、環境光の変化の影響を効率良く低減することができる。
【0079】
[実施形態3]
ところで、上記実施形態1及び2では、検査台60の全面に特定の波長帯域の光を照射する場合について説明したが、本実施形態3では、複数のスポット白色光源及び複数の可変フィルタを用いて、検査台60の特定の場所の物体50を表示する場合について説明する。なお、実施形態1及び2と同様の部位については、同一の符号を付すこととして、その詳細な説明を省略する。
【0080】
<物体検査システムの概要>
次に、本実施形態3に係る物体検査システムの概要について説明する。図12は、実施形態3に係る物体検査システムの概要を示す図である。ここでは、物体検査装置30は、全ての時間帯で光の強度が所定の閾値以下となる標準波長帯域を特定できていることとする。
【0081】
図12に示すように、物体検査装置30は、物体50に局所的に光を照射するためにスポット白色光源37a、37b及び37c(以下、「スポット白色光源37」と総称する場合がある)を配設する。また、物体50とスポット白色光源37との間に可変フィルタ38a、38b及び38c(以下、「可変フィルタ38」と総称する場合がある)を配設する。かかる可変フィルタ38は、特定の波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させない複数枚のフィルタからなる。ここで、スポット白色光源37は、白色光源14aの光照射方向に光の照射方向を絞るレンズ、又は、光の照射方向を絞るフィルタが設置された白色光源である。
【0082】
そして、物体検査装置30は、所定の時刻になったならば、分光部13aが検査台60上の環境光を分光し、波長毎の強度を物体検査装置30に通知する(S30)。そして、物体検査装置30は、所定の時刻における環境光の波長毎の強度を通知されたならば、その時刻において強度が所定の閾値以下である波長帯域を特定する(S31)。その後、物体検査装置30は、全ての時間帯において強度が所定の閾値以下である標準波長帯域と、その時刻において強度が所定の閾値以下である波長帯域を比較し、撮像に適した波長帯域を選択処理する(S32)。
【0083】
その後、物体検査装置30は、波長帯域が特定されたならば、可変フィルタ38の複数枚あるフィルタのうち、選択処理された波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させないフィルタを選択する(S33)。その後、物体検査装置30は、光源装置34のスポット白色光源37により発光された光のうち可変フィルタ38を透過した光を物体50に照射する(S34)。物体検査装置30は、物体50から反射した光を、選択処理された波長帯域の光を透過させ、かつ、該波長帯域以外の光を透過させないフィルタが選択された可変フィルタ23aを介して撮像部13bで画像を撮像する(S35)。
【0084】
そして、物体検査装置30は、撮像部13bにより撮像された画像に対して画像処理を行う(S36)。具体的には、かかる画像をx方向、y方向に微分処理して輝度勾配を求め、この輝度勾配が所定の閾値未満の画素の画素値を所定値(例えば、「0」)にして、該画素の輝度勾配が存在しないようにする。かかる画像処理を行った画像を表示部11に表示制御する(S37)。
【0085】
<物体検査装置30の構成>
次に、物体検査装置30の構成について説明する。図13は、図12に示した物体検査装置30の構成を示す機能ブロック図である。図13に示すように、物体検査装置30は、記憶部15及び制御部26を有し、表示部11、入力部12、撮像装置23及び光源装置34が接続されている。
【0086】
光源装置34は、複数のスポット白色光源37a、37b及び37cと、複数の可変フィルタ38a、38b及び38cとを有する。スポット白色光源37は、光の照射する領域を光学レンズ等で限定した白色光源である。また、可変フィルタ38は、実施形態2の光源装置24の可変フィルタ24aと同様のフィルタである。
【0087】
なお、物体検査装置30の処理手順については、物体検査装置20の処理手順と同等であるので詳細な説明は省略する。
【0088】
このように、本実施形態3では、物体検査装置30は、複数のスポット白色光源37を配設し、物体50とスポット白色光源37の間に配設された可変フィルタ38により検査台60に局所的に置かれた物体50を特定の波長帯域の光を照射し、撮像部13bにおいて特定の波長帯域の光を撮像するように構成したため、工場などで物体の検査を行う場合に、環境光の影響を効率良く低減することができる。
【0089】
なお、上記実施形態3では、光源装置34は、スポット白色光源37が3つの場合について説明したが、これに限定されるわけではない。また、光源装置34は、1つの白色光源を用いて、光の照射方向に、光の照射方向を絞り、その方向が可変であるレンズ、又は、フィルタを設置して実現してもよい。
【0090】
上記の各実施形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る物体検査システム及び表示制御方法は、工場などで物体の検査を行う場合に、環境光の変化の影響を効率良く低減する場合に適している。
【符号の説明】
【0092】
10、20、30 物体検査装置
11 表示部
12 入力部
13、23 撮像装置
13a 分光部
13b 撮像部
13c フィルタ
14、24、34 光源装置
14a 白色光源
14b フィルタ
15 記憶部
15a 標準分光データ
15b 分光データ
15c 画像データ
16 制御部
16a 標準分光出力取得部
16b 標準波長特定部
16c 分光出力取得部
16d 波長特定部
16e 波長帯域選択処理部
16f 光源制御部
16g 撮像処理部
16h 画像処理部
16i 表示制御部
23a、24a 可変フィルタ
26 制御部
26a フィルタ選択処理部
37、37a、37b、37c スポット白色光源
38、38a、38b、38c 可変フィルタ
50、50a、50b、50c 物体
60 検査台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13