(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118250
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】パネル取付構造
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
E04B2/74 521E
E04B2/74 521D
E04B2/74 521K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021102
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】591260029
【氏名又は名称】株式会社内藤ハウス
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【弁理士】
【氏名又は名称】浅川 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100197996
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 武彦
(72)【発明者】
【氏名】桑原 幸雄
(57)【要約】
【課題】 支柱に対してボルトの締め付けによってパネルを固定する場合、パネルの耐力を活かすことができるパネル取付構造を提供する。
【解決手段】 支柱5a,5bにパネル6をボルト10で固定するパネル取付構造であって、前記パネル6にはボルト10の軸径より大きい孔からなる貫通孔12と、この貫通孔12に嵌め込まれる内接リング13とが設けられ、前記内接リング13にはボルト挿通孔14が設けられ、このボルト挿通孔14に挿入されたボルト10によって、内接リング13を介して前記支柱5a,5bに前記パネル6をボルト10で固定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱にパネルをボルトで固定するパネル取付構造であって、
前記パネルにはボルトの軸径より大きい孔からなる貫通孔と、この貫通孔に嵌め込まれる内接リングとが設けられ、
前記内接リングにはボルト挿通孔が設けられ、このボルト挿通孔に挿入されたボルトによって、内接リングを介して前記支柱に前記パネルをボルトで固定するパネル取付構造。
【請求項2】
前記内接リングは、前記パネルに設けられる貫通孔の平面形状と同一の外形形状を有する請求項1に記載のパネル取付構造。
【請求項3】
前記内接リングは、前記パネルに設けられる貫通孔の内周面の厚みと同一の厚みを有する請求項1又は2に記載のパネル取付構造。
【請求項4】
前記内接リングが、前記貫通孔に嵌め込まれる本体部と、前記本体部の周囲に設けられるフランジ部とを有し、前記フランジ部が前記パネルの貫通孔の周縁部に係合する請求項1に記載のパネル取付構造。
【請求項5】
前記貫通孔は、ボルトの軸径より大きい内径を有する平面形状が円形の孔である請求項1乃至4のいずれかに記載のパネル取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱に木質ボードなどのパネルを固定して壁面を形成するためのパネル取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プレハブ・システム建築は、短工期、低コスト、長寿命化を実現させるものとして、その需要が高まっている反面、軽量鉄骨工法又はブレースを用いた構造が主流であるため、意匠性、開放性などに制約があり、仮設建築のイメージを払拭できない。一方、木材を使った建築物は、鉄骨やコンクリートの建築物と比較して環境負荷が少なく、地球環境にやさしい建物として期待されているものの、構造安全性が十分でないこともあり、材料特性のばらつきなどで構造が過剰となる問題があった。
【0003】
そこで、従来からプレハブ・システム建築と木造建築とを組み合わせて両者の利点を活かしたパネル取付構造が知られている。特許文献1には、建物の屋外通路に沿って設けられる通路パネル部において、支柱に対してビスやボルト等によりパネル部材を直接固定するパネル取付構造が開示されている(
図1乃至
図6を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のパネル取付構造にあっては、パネル部材にボルト挿通孔を設け、ボルト挿通孔に通したボルトの締め付けによって支柱とパネル部材とを直接固定している。そのため、パネル部材に設けられたボルト挿通孔の内周面とボルト軸とが直接当たることから、地震などの激しい揺れによって支柱に応力が発生した場合に、ボルトを介してパネル部材にせん断力が作用してパネル部材にボルトが食い込んでしまうおそれがあり、パネル部材の耐力を活かすことができなかった。
【0006】
そこで本発明は、支柱に対してボルトの締め付けによってパネル部材を固定する場合、パネル部材の耐力を活かすことができるパネル取付構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るパネル取付構造は、支柱にパネルをボルトで固定するパネル取付構造であって、前記パネルにはボルトの軸径より大きい孔からなる貫通孔と、この貫通孔に嵌め込まれる内接リングとが設けられ、前記内接リングにはボルト挿通孔が設けられ、このボルト挿通孔に差し込まれたボルトによって、内接リングを介して前記支柱に前記パネルをボルトで固定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパネル取付構造によれば、パネルに内接リングを嵌め込み、この内接リングを介して支柱にパネルをボルトで固定し、ボルトからパネルに作用する応力を内接リングで分散させることで、パネルに応力が集中することがなく、パネルの破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るパネル取付構造の支柱とパネルとの関係を示す斜視図である。
【
図3】
図1においてボルト締付時におけるIII-III線断面図である。
【
図4】支柱に応力が発生した時の内接リングの作用を示す説明図である。
【
図5】従来のパネル取付構造において、支柱に応力が発生した時のパネルに及ぼす作用を示す説明図である。
【
図6】第2実施形態に係るパネル取付構造の支柱とパネルとの関係を示す斜視図である。
【
図8】
図7においてボルト締付時におけるVIII-VIII線断面図である。
【
図9】支柱に角パイプを用いた時のパネル取付構造の要部を示す斜視図である。
【
図10】本発明のパネル取付構造を用いて形成した壁面の一例である。
【
図11】本発明のパネル取付構造を用いて形成した壁面の他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るパネル取付構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面は、本発明に係るパネル取付構造を模式的に表したものである。これらの実物の寸法および寸法比は、図面上の寸法および寸法比と必ずしも一致していない。また、重複説明は適宜省略させることがあり、同一部材には同一符号を付与することがある。さらに、本発明の技術的範囲は以下で説明する各実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0011】
図1乃至
図3には本発明に係るパネル取付構造の第1実施形態が示される。このパネル取付構造では、所定間隔に設置された金属製の支柱に木質パネルを取付けて、建造物の外壁面を実現している。基礎1の上に所定間隔毎に立設された複数の縦柱2と、各縦柱2の上部に掛け渡される桁梁3とで四角形のフレーム4を構成している。フレーム4内には、両側の縦柱2の間に複数の支柱5a,5bが設置される。各支柱5a,5bはいずれもチェンネル状の金属材からなり、木製のパネル6を挟んで背中合わせに一対が配置される。各支柱5a,5bの柱脚は柱脚接合プレート7を介して基礎1に固定され、支柱5a,5bの柱頭は柱頭接合プレート8を介して桁梁3に固定されている。なお、前記支柱5a,5bは、プレハブ建築などで広く用いられる軽量鉄骨材と同種のものであってもよい。
【0012】
パネル6は、プレハブ建築などで用いられる合板材と同種のものであってもよい。パネル6の大きさは、横幅がフレーム4の左右の縦柱2間の幅に対応している。一方、パネル6の縦幅は任意である。この実施例では3枚のパネル6を使って壁面を形成している。フレーム4の左右の縦柱2に取り付けられたガイドレール9に沿って3枚のパネル6を順次落とし込むことで、各パネル6の上下端に隙間のない壁面を構築することができる。
【0013】
前記パネル6を上下に3枚配置したのち、パネル6の面を挟んで前記片側に設置した支柱5aとは反対側に同様の支柱5bを設置する。前述したように、反対側に設置した支柱5bも、柱脚が柱脚接合プレート7を介して基礎1に固定され、柱頭が柱頭接合プレート8を介して桁梁3に固定される。
【0014】
このようにして、パネル6の両面を一対の支柱5a,5bが挟み込んだ状態で両者が固定される。パネル6には支柱5a,5bに設けられたボルト挿通孔11と同じ高さ位置に貫通孔12が設けられている。。この実施形態において、前記貫通孔12はパネル6に両側位置において、上下2箇所に設けられている。貫通孔12は、ボルト10の軸部10aの直径より大きい内径を有する平面形状が円形の孔であり、この孔に内接リング14が嵌め込まれている。支柱5a,5bに設けられたボルト挿通孔11はボルト10の軸部10aの直径に対応した内径を有している。
【0015】
前記内接リング13は、
図2及び
図3に示されるように、前記貫通孔12の平面形状とほぼ同一の外形形状を有する円柱状部材によって形成され、両面に平面部13aを有する。平面部13aの中心部にはボルト10の軸部10aの直径に対応した内径を有するボルト挿通孔14が設けられている。また、内接リング13の側面部13bの厚みは貫通孔12の内周面の厚み、すなわちパネル6と同一の厚さ若しくはそれよりやや薄く形成されている。そうすることによって、貫通孔12に嵌め込まれたときに、内接リング13の一部がパネル6の上面に突出しない。また、一対の平面部13aは平滑面であることが望ましい。支柱5a,5bの背面と内接リング13の平面部13aを密着させることができ、ボルト10による締め付け効果が上がる。内接リング13は金属製であることが好ましく、パネル6の貫通孔12に工具などで叩いて嵌め込むことで圧着される。
【0016】
一方の支柱5bから挿入したボルト10を、内接リング13のボルト挿通孔14を介して反対側の支柱5aのボルト挿通孔11から突出させ、その先端にナット15を螺合させる。ナット15の締め付けによって、一対の支柱5a,5bとパネル6とがしっかりとボルト10で固定される。
【0017】
図4(a),(b),(c)には、上述した内接リング3の作用が示されている。例えば、
図4(a),(b)に示したように、地震時などの激しい揺れによって支柱5に応力Qが生じた場合に、支柱5とパネル6を固定しているボルト10にも同様に応力Qが発生し、さらにボルト10から内接リング13を介してパネル6に伝わる。その際に、内接リング13の外形がボルト10の直径よりも大きく、貫通孔14に嵌め込まれている内接リング13とパネル6との接触面積が大きいために、
図4(c)に示したように、ボルト10からパネル6に伝わる応力Q’が内接リング13によって分散される。すなわち、パネル6にはボルト10から作用するせん断力が集中することがないのでパネル6が破損することもなく、パネル6の耐力を活かすことができる。
【0018】
図5(a),(b),(c)には、上述した内接リングを用いていない従来のパネル取付構造が示されている。
図5(a),(b)に示したように、地震時などの激しい揺れによって支柱5に応力Qが生じた場合には、支柱5とパネル6を固定しているボルト10にも同様の応力Qが発生し、ボルト10から直接パネル6に応力Qが伝わる。その際に、パネル6のボルト挿通孔6’内でボルト10とパネル6とが互いに接触しているため、
図5(c)に示したように、ボルト挿通孔6’を介してパネル6にボルト10のせん断力Qが集中して、パネル6がボルト挿通孔6’付近からが裂けて破損するおそれがあった。
【0019】
図6乃至
図8には本発明に係るパネル取付構造の第2実施形態が示されている。先の実施形態と同様、基礎1の上に所定間隔毎に立設された複数の縦柱2と、各縦柱2の上部を連結する桁梁3とでフレーム4を構成している。各支柱5cは、先の実施形態と同様、柱脚が柱脚接合プレート7を介して基礎1に固定され、柱頭が柱頭接合プレート8を介して桁梁3に固定されている。
【0020】
本実施形態では、前記支柱5cが断面H型の鉄骨材からなり、この支柱5cを両側から2枚のパネル6a,6bで挟んでボルト10で固定するものである。各パネル6a,6bには、先の実施形態と同様、ボルト10の軸径より大きい内径を有する平面形状が円形の貫通孔12が設けられ、この貫通孔12に円形の内接リング23が嵌め込まれている。この内接リング23は、先の実施形態のものとは形状が異なっており、
図7及び
図8に示されるように、前記貫通孔12に嵌め込まれる円形カップ状の本体部23aと、当該本体部23aの周囲に設けられるフランジ部23bとを有して構成され、全体が断面略ハット形状からなる。この内接リング23は、本体部23aがパネル6a,6bの各貫通孔12に嵌め込まれる一方、フランジ23bが貫通孔12の周縁部12aに係合することで、パネル6a,6bにしっかりと固定される。前記周縁部12aは、内接リング23をパネル6a,6bに装着したときに、フランジ23bが当たる貫通孔12の周囲のパネル部分を含む。なお、この内接リング23は、先の実施形態と同様、パネル6a,6bの貫通孔12に工具などで叩いて嵌め込むことで固く圧着される。なお、
図6に示したように、前記内接リング23は一枚のパネルに対して両側の上下2箇所に設置される。
【0021】
支柱5cを2枚のパネル6a,6bで両側から挟んだ時に、両側のパネル6a,6bに設けられた内接リング23のボルト挿通孔24と、挟み込んだ支柱5cに設けられたボルト挿通孔11とが一直線上に並ぶ。これらすべてのボルト挿通孔24,11に一方のパネル6b側からボルト10を挿入し、反対側のパネル6a側に突き出たボルト10の先端にナット15を螺合させる。そして、ナット15を締め付けることによって、両側のパネル66a,6bは、支柱5cを挟んだ状態でしっかりとボルト10により固定される。
【0022】
この実施形態に係るパネル取付構造にあっても、第1実施形態の場合と同様、地震時などの激しい揺れによってボルト11に応力が生じた場合に、その応力を内接リング23を介してパネル6a,6bに分散させることができる。特にこの実施形態では、ボルト10の応力を2枚のパネル6a,6bに分散させることができるので、パネル6a,6bの耐力がさらに活かされることになる。なお、断面H型の鉄骨材に代えて、
図9に示したような角型パイプを支柱5dとして用いることもできる。
【0023】
上記実施形態における内接リング13,23は、いずれも平面形状が円形の外形形状からなるが、パネルに設けられる貫通孔12の形状に対応していればよいので、円形に限定されない。
【0024】
図10及び
図11には、本発明のパネル取付構造を用いてデザイン性の高い壁面に仕上げる例が示されている。
図10にはパネル6を千鳥張りに配置して壁面を構築する例が示されている。隣接するパネル6同士の間に空間部25を設けることで、内部の透過性を高める効果がある。また、支柱5は各パネル6の裏側に配置されているため、表側のパネル6から支柱5を隠すことができる。したがって、外観上にも優れ、開放感のある建物の外壁面として利用することができる。
【0025】
図11には素材の異なる3種類のパネル6c,6d,6eを組み合わせてデザイン性の高い壁面を構築する場合の例が示されている。なお、3種類のパネル6c,6d,6eの配置や組み合わせは自由であり、またパネルの種類も2種類若しくは4種類以上の組み合わせは自由である。
【符号の説明】
【0026】
1 基礎
2 縦柱
3 桁梁
4 フレーム
5a,5b,5c,5d 支柱
6,6a,6b,6c,6d,6e パネル
6’ ボルト挿通孔
7 柱脚接合プレート
8 柱頭接合プレート
9 ガイドレール
10 ボルト
10a ボルトの軸部
11 ボルト挿通孔
12 貫通孔
12a 貫通孔の周縁部
13 内接リング
13a 平面部
13b 側面部
14 ボルト挿通孔
15 ナット
23 内接リング
23a 本体部
23b フランジ部
24 ボルト挿通孔
25 空間部