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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118255
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】型枠パネルおよび施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/86 20060101AFI20230818BHJP
   E02D 27/01 20060101ALI20230818BHJP
   E04G 11/06 20060101ALN20230818BHJP
【FI】
E04B2/86 601B
E02D27/01 C
E04G11/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021108
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 勲
(72)【発明者】
【氏名】姫野 賢
(72)【発明者】
【氏名】永田 幸自
(72)【発明者】
【氏名】相馬 剛
【テーマコード(参考)】
2D046
2E150
【Fターム(参考)】
2D046BA11
2E150BA24
2E150BA26
2E150BA32
2E150BA42
2E150BA52
2E150CA03
2E150HC12
2E150MA02X
2E150MA03Z
2E150MA47X
(57)【要約】
【課題】施工性を向上させることのできる型枠パネルを提供する。
【解決手段】型枠パネル10はコンクリート型枠として使用するものであって、長辺42a同士が隣接するように組まれた短冊状の複数の板片42を有し、板片42は、隣接するものの長辺42a同士が回転可能に接続されている。板片42は一対の長辺42aに沿った一対の鉤手部44a,44bを有し、隣接する板片42同士は鉤手部44a,44bが係合している。隣接する鉤手部44a,44b同士は、相対的に変位可能な移動代をもって係合している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート基礎の型枠として使用する型枠パネルであって、
長辺同士が隣接するように組まれた短冊状の複数の板片を有し、
前記板片は、隣接するものの前記長辺同士が回転可能に接続されている
ことを特徴とする型枠パネル。
【請求項2】
前記板片は一対の前記長辺に沿った一対の鉤手部を有し、
隣接する前記板片同士は前記鉤手部同士が係合している
ことを特徴とする請求項1に記載の型枠パネル。
【請求項3】
隣接する前記鉤手部同士は、相対的に変位可能な移動代をもって係合している
ことを特徴とする請求項2に記載の型枠パネル。
【請求項4】
隣接する前記板片のうち一方は、前記長辺の端部に前記鉤手部のない欠損部を有し、
隣接する前記板片のうち他方は、前記長辺の端部に前記鉤手部を加締めた抜止部を有する
ことを特徴とする請求項2または3に記載の型枠パネル。
【請求項5】
前記板片は、平面部、および該平面部の両端から前記長辺までの一対の斜面部を有し、
隣接する前記板片同士の前記平面部と前記斜面部とが形成する角部同士が当接するときに前記平面部同士は直交面を形成する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の型枠パネル。
【請求項6】
前記板片には長尺方向に沿った直線状の屈曲筋が形成されている
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の型枠パネル。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の型枠パネルを設置する施工方法であって、
ロール状態に巻き取られた前記型枠パネルを巻き出しながら、前記コンクリート基礎における立ち上がり部の壁面となる位置に設置するパネル工程を有する
ことを特徴とする施工方法。
【請求項8】
前記パネル工程に先立ち、前記型枠パネルが嵌め込み可能な幅を有する下レールを上向きに開口する向きで敷設する下レール工程を有し、
前記パネル工程ではロール状態から巻き出した分を前記下レールに嵌め込む
ことを特徴とする請求項7に記載の施工方法。
【請求項9】
前記パネル工程の後に、前記下レールに嵌め込まれた前記型枠パネルに対して、前記型枠パネルが嵌め込み可能な幅を有する上レールを下向きに開口する向きで被せる上レール工程を有する
ことを特徴とする請求項7または8に記載の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート型枠として使用する型枠パネル、および該型枠パネルを設置する施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の基礎には立ち上がり部がある。立ち上がり部を形成するためのコンクリート型枠として型枠パネルが用いられている。立ち上がり部の形成のためには型枠パネルを対向するように立設してその間にコンクリートを打設する。型枠パネルは、養生してコンクリートが硬化した後に脱型する場合とそのまま残置する場合とがある。型枠パネルを残置させる場合には、脱型の手間がなく、立ち上がり部の強度を補強することができ、さらにコンクリートを空気から遮断して酸化による劣化を抑制することができる。残置させる型枠パネルとしては、特許文献1に記載のものが挙げられる。この型枠パネルは、正面視で略正方形であって、多数の角波形状の断面を形成するように板材をプレスしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-007967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、立ち上がり部の壁面を覆うためには施工性の観点からパネル型枠の枚数が少ないことが望ましい。そのため、従来の1枚ごとのパネル型枠はある程度の長さを有しているが、長いパネル型枠は取り扱いが容易ではない。また、1面の立ち上がり部を複数枚の型枠パネルで覆う場合には、相互の型枠パネルをねじなどによって締結する必要がある。このように従来の型枠パネルには施工性に依然課題がある。
【0005】
さらに、特許文献1のパネル型枠はある程度の長さ及び面積を有していることから角波形を成型するには大型のプレス機が必要となり、さらに角波の数に応じた型が必要であって設備費が高額となる。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、施工性を向上させることのできる型枠パネルおよび施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる型枠パネルは、コンクリート型枠として使用する型枠パネルであって、長辺同士が隣接するように組まれた短冊状の複数の板片を有し、前記板片は、隣接するものの前記長辺同士が回転可能に接続されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる施工方法は、上記の型枠パネルを設置する施工方法であって、ロール状態に巻き取られた前記型枠パネルを巻き出しながら、コンクリート基礎における立ち上がり部の壁面となる位置に設置するパネル工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる型枠パネルおよび施工方法では、施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態にかかる型枠パネル、該型枠パネルを含む型枠セット、および型枠セットによって形成される基礎の模式平面図である。
図2】外周部の周辺における型枠パネル、型枠セットおよび基礎の縦断面図である。
図3】中通り部の周辺における型枠パネル、型枠セットおよび基礎の縦断面図である。
図4】型枠パネルの斜視図である。
図5】2枚の型枠パネルの端部の拡大斜視図である。
図6】型枠パネルを形成する板片が2枚接続された状態を示し、(a)は基本状態の断面図であり、(b)は相対的に一方に回転した状態の断面図であり、(c)は相対的に他方に回転した状態の断面図である。
図7】型枠パネルを形成する板片が2枚接続された状態を示し、(a)は互いに最も接近した状態の断面図であり、(b)は互いに最も離間した状態の断面図である。
図8】ロール状に巻き取られた型枠パネルの平面図である。
図9】ロール体から型枠パネルを巻き出しながら設置する工程の説明図であり、(a)はロール体のうち下レールから遠い側から巻き出しながら設置する例の説明図であり、(b)はロール体のうち下レールから近い側から巻き出しながら設置する例の説明図である。
図10】4つの閉領域を有する基礎の形成のために、各閉領域ごとに型枠パネルを設置する経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる型枠パネルおよび施工方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の実施形態にかかる型枠パネル10、該型枠パネル10を含む型枠セット12、および型枠セット12によって形成される基礎14の模式平面図である。基礎14はコンクリート基礎である。図2は、外周部18aの周辺における型枠パネル10、型枠セット12および基礎14の縦断面図である。図3は、中通り部18bの周辺における型枠パネル10、型枠セット12および基礎14の縦断面図である。図1図2図3は、型枠セット12に対してコンクリート打設を行った状態を示している。図1では、型枠パネル10が視認可能となるように上レール32を省略している。基礎14は、例えば戸建て住宅等のべた基礎であるが、布基礎であってもよい。
【0013】
図1図2図3に示すように、基礎14は、平面状に広がる耐圧盤部16と、鉛直に起立する壁状の立ち上がり部18とを有している。立ち上がり部18の高さHおよび幅Wは規格化されている。立ち上がり部18は、耐圧盤部16の縁に沿った外周部18aと、該外周部18aによって囲まれた範囲で耐圧盤部16上に設けられる中通り部18bとに区分される。基礎14には、耐圧盤部16内で升目状に配設されるスラブ配筋20と、立ち上がり部18内で上方に突出している立ち上がり配筋22とが設けられている。
【0014】
型枠セット12は、内周側の型枠パネル10、外周型枠パネル24、外周部枠支持部材26、立ち上がり部枠支持部材28、下レール30、上レール32、上端補強部材34および幅止め部材36を備えている。
【0015】
外周型枠パネル24は、外周部18aの外周面18aaを区画するものであり、基盤38の上に配置され、基盤38や地面等に固定したサポート部材39によって支持されている。外周型枠パネル24は、本体である板材24aと、該板材24aの外表面に取り付けた枠材24bとから構成されている。板材24aは、合板等の非金属によって成形した薄板状を成すものである。板材24aの内表面には、硬化したコンクリートとの離型性を向上させるため、樹脂製のフィルムを設けたり、離型材を塗布してもよい。外周型枠パネル24は複数枚が並列して配設され、相互間は保持金具40や枠材24bを貫通するねじなどによって連結されている。上端補強部材34は、保持金具41を介して外周型枠パネル24の上端部に配置するもので、枠材24bと同様、アルミニウム合金等の金属によって成形した角筒状に構成してある。
【0016】
型枠パネル10は、外周部18aの内周面18ab、中通り部18bの対向する両側の側面18baおよび中通り部18bの端面18bbを区画するものである。型枠パネル10は、内周面18ab、側面18bbaおよび端面18bbに沿って連続的に配設可能となっている。型枠パネル10は、外周部18aおよび中通り部18bによって閉じられた閉領域の全面を1枚で区画することが可能であるが、条件によっては一部に他のパネルを組み合わせて用いてもよい。
【0017】
型枠パネル10は、外周型枠パネル24と対面している箇所では外周部枠支持部材26によって下面が支持されている。外周部枠支持部材26は、支持部本体26a、固定用ネジ部材26bおよび支持片26cを備えている。支持部本体26aは外周型枠パネル24に取り付けられ、固定用ネジ部材26bを内周側に向けて突出するように保持する。支持片26cは底部26caから外壁26cb、内壁26ccおよび中間壁26cdが上方に突出する形状であり、例えば板材を曲げ加工して得られる。支持片26cは外壁26cbの部分が固定用ネジ部材26bの先端に固定され、内壁26ccと中間壁26cdとの間で下レール30を介して型枠パネル10の下面を支持する。
【0018】
下レール30は上方に開口するコ字形状の部材であり、外片30aと内片30bとの間で型枠パネル10がずれないように保持している。外片30aは内片30bよりやや高く、コンクリート打設時に型枠パネル10に対して内周向きの力が加わったときに該型枠パネル10を安定して支持することができる。下レール30は、例えばアルミニウム合金等による押し出し材である。
【0019】
上レール32は、外片32aと内片32bとの間で型枠パネル10の上部をずれないように保持している。上レール32は下レール30と同じものを上下逆向きにして適用可能である。幅止め部材36は、型枠パネル10及び外周型枠パネル24の上端部間に掛け渡すことにより、これらの相互間距離が変化する事態を防止する。幅止め部材36は上レール32を介して型枠パネル10の上端部を支持する。
【0020】
図3に示すように、型枠パネル10は、中通り部18bの側面18baを区画する箇所では立ち上がり部枠支持部材28によって下面が支持されている。立ち上がり部枠支持部材28は、基盤38に載置される脚部28aと、該脚部28aから上方に突出する2本の支柱28bと、これらの支柱28bによって水平に支持されている梁部28cとを有する。梁部28cの両端には支持片28dが設けられている。支持片28dは上方が開口するコ字形状である。支持片28dは下レール30を介して型枠パネル10の下面を支持している。この箇所においても型枠パネル10の上部には上レール32が設けられる。この箇所においても型枠パネル10の上部同士は上レール32を介して幅止め部材36によって相互距離が保たれている。なお、基礎14を2回打設で施工する場合には、外周部枠支持部材26および立ち上がり部枠支持部材28を省略し、1回目の打設で形成された耐圧盤部16の上面に下レール30を配設し、該下レール30に型枠パネル10を嵌め込んでもよい。
【0021】
型枠パネル10についてさらに説明する。
図4は、型枠パネル10の斜視図である。図5は、2枚の型枠パネル10の端部の拡大斜視図である。図6は、型枠パネル10を形成する板片42が2枚接続された状態を示し、(a)は基本状態の断面図であり、(b)は相対的に一方に回転した状態の断面図であり、(c)は相対的に他方に回転した状態の断面図である。図7は、型枠パネル10を形成する板片が2枚接続された状態を示し、(a)は互いに最も接近した状態の断面図であり、(b)は互いに最も離間した状態の断面図である。
【0022】
型枠パネル10は、上記のようにコンクリート型枠として使用するものである。型枠パネル10は、長辺42a同士が隣接するように組まれた短冊状の複数の板片42によって構成されている。型枠パネル10はいわゆるスラット構造であり、隣接する板片の長辺42a同士が該長辺42aに沿う方向を基準として回転可能に接続されている。板片42は、例えば鋼板をプレス加工して得られる。
【0023】
具体的には、板片42は一対の長辺42aに沿って鉤手部44a,44bを有しており、隣接する板片42同士は鉤手部44aと鉤手部44bとが係合して回転可能な構成となっている。鉤手部44a,44bはそれぞれ略360度程度の円弧による渦形状となっている。一方の長辺42aに沿った鉤手部44aは他方の長辺42aに沿った鉤手部44bよりやや小さくなっており、大きさの違いによって係合が可能となっている。板片42は、平面部42b、および該平面部42bの両端から長辺42aまでの一対の斜面部42cを有し、平面部42bと斜面部42cとは角部42dを形成している。また、平面部42bの中央には長尺方向に沿った直線状の屈曲筋42eが形成されている。
【0024】
図5に示すように、隣接する板片42のうち一方は、長辺42aの端部に鉤手部44aのない欠損部42fが形成されており、他方には、長辺42aの端部に鉤手部44bを加締めた抜止部42gを有する。抜止部42gが鉤手部44aの端面に当接することにより板片42同士の変位が制限されて抜け止めの作用がある。抜止部42gはペンチなどの工具によって容易に形成可能である。また、抜止部42gは同様の工具により元の鉤手部44bの形状に戻すこと又は切り取ることも可能であり、隣接する板片42を離脱させることができる。これにより、必要に応じて型枠パネル10を短くすることができる。さらに、2つの型枠パネル10の双方の端部の板片42の鉤手部44aと鉤手部44bとを係合させて抜止部42gを形成することにより、型枠パネル10を長くすることができる。これらの作業は簡易な工具によって容易に行うことができ、施工現場での対応が可能である。
【0025】
図6(a)に示すように、隣接する板片42が並列して双方の平面部42bが同一面上にある状態を基準状態とする。この基準状態で、一方の鉤手部44aと他方の鉤手部44bとは略270度に亘って対向している。図6(b)に示すように、隣接する斜面部42c同士が接近するように双方の板片42が相対的に回転すると角部42d同士が当接する。このとき、双方の平面部42b同士は直交面を形成するようになっている。このように、型枠パネル10では、板片42同士を直交する向きに容易に設定することができ、外周部18aと中通り部18bとによって形成される入隅部18c(図1参照)に沿って配置する際に好適である。図6(c)に示すように、板片42同士は、隣接する斜面部42c同士が離間する方向には基準状態から少なくとも90度の相対回転が可能となっており、中通り部18bにおける出隅部18d(図1参照)に適用可能である。板片42同士は図6で例示した角度状態以外の任意の角度になり得ることは勿論である。
【0026】
また、隣接する鉤手部44a,44b同士は、相対的に変位可能な移動代をもって係合している。図6(a)の基準状態で板片42の配列方向にX1ずつの移動代があるものとする。そうすると、図7(a)に示すように、板片42同士が最も接近した状態における鉤手部44aと鉤手部44bとの隙間X2はX1の2倍となる。図7(b)に示すように、板片42同士が最も離間した状態における鉤手部44aと鉤手部44bとの隙間X2はX1の2倍となる。すなわち、板片42同士は±X1の合計X2だけの移動代を有している。したがって、型枠パネル10がN枚の板片42から構成されている場合、全体としての移動代はX2×(N-1)となり、枚数に応じて全長を変化させることができ、適用する外周部18aや中通り部18bの長さに合わせた調整が可能となっている。
【0027】
また、板片42の幅は立ち上がり部18の幅Wの1/4となっている(図1参照)。板片42の幅を立ち上がり部18の幅Wの整数分の1とすることにより、端面18bbの区画が容易となる。板片42は立ち上がり部18の高さHよりもやや長く設定されている。
【0028】
図8に示すように、型枠パネル10はロール状に巻き取りが可能となっているため場所をとらず、搬送や保管に好適である。型枠パネル10は、軸46の回りに巻き取り、軸46に固定された円板48の上に載置することにより扱いが一層容易となる。ロール状に巻き取られた型枠パネル10をロール体50とも呼ぶ。型枠パネル10は鉤手部44a,44bの部分が回転自在に構成されていることから、全体として可撓性に優れている。そのため、図8から了解されるように、比較的細い軸46に対する巻き始め部分に無駄な空間がなく容積効率が高い。
【0029】
型枠パネル10を敷設する施工方法について説明する。ここでは外周型枠パネル24の敷設については省略する。
まず、型枠パネル10を敷設する施工に先立ち配筋の敷設を行い、所定の箇所に外周部枠支持部材26および立ち上がり部枠支持部材28を所定の箇所に所定数配置する。そして、下レール30を上向きに開口する向きで支持片26c、支持片28dに合わせて敷設する(下レール工程)。次に、ロール状態に巻き取られたロール体50から型枠パネル10を巻き出しながら、立ち上がり部18の壁面となる位置に設置する(パネル工程)。
【0030】
この工程では図9に示すように、ロール体50から巻き出した分を下レール30に嵌め込むことにより型枠パネル10を設置する。このとき、図9(a)に示すようにロール体50のうち下レール30から遠い側から巻き出してもよいし、(b)に示すようにロール体50のうち下レール30に近い側から巻き出してもよい。ロール体50の軸46と下レール30との距離は作業者の判断により任意に設定してよい。
【0031】
図10に示すように、基礎14が外周部18aおよび中通り部18bによって閉じられた4つの閉領域52a,52b,52c,52dを形成している場合、型枠パネル10はレール30に沿って各領域に矢印で示すように4周回することで設置される。閉領域52aのように複雑な領域や、閉領域52bのように広い領域であっても、型枠パネル10はロール体50から巻き出しながら容易な敷設が可能である。また、基本的に各領域について連続的な1回の作業で型枠パネル10を設置することが可能である。そのため、作業者は矢印のように周回するだけで設置作業を行うことができる。
【0032】
ただし、1つのロール体50では型枠パネル10の長さが足りない場合には、途中で継ぎ足してもよい(図5参照)。型枠パネル10は隣接する板片42同士を任意の角度にすることができるため、閉領域52cのように鋭角部や鈍角部にも対応が可能である。閉領域52dのように狭い箇所では、型枠パネル10を予めロール体50から所定長さだけ巻き出して広げてから設置してもよい。
【0033】
この後、下レール30に嵌め込まれた型枠パネル10の上部に対して、上レール32を下向きに開口する向きで被せ(上レール工程)、さらに幅止め部材36等を設置することにより型枠セット12が組み上がる。型枠セット12が組み上がった後にコンクリートの打設を行う。コンクリートの養生および硬化後には外周型枠パネル24を脱型するが、上記のとおり型枠パネル10は残置するものとする。すなわち、型枠パネル10はコンクリート打設までは型枠セット12の一部であるが、外周型枠パネル24の脱型後には基礎14の一部となる。
【0034】
上記のように構成される型枠パネル10は複数の板片42から構成されており、隣接する板片42の長辺42a同士が回転可能に接続されていることから、ロール体50として保管および搬送が可能であるとともに、ロール体50から巻き出しながら型枠セット12の一部として設置する施工が可能になり施工性が向上する。
【0035】
また、型枠パネル10を構成する板片42は短冊形状であり、具体的には立ち上がり部18の高さHよりもやや長く、立ち上がり部18の幅Wの整数分の1の幅となっている。そのため、1枚の板片42は短冊状であって面積が小さく低廉な小型の設備で製造可能である。使用するプレス機などの設備では、幅の狭い1枚の板片42に応じた型があればよく、型費を抑制できる。型枠パネル10は、自動機により多数枚の板片42を連続的に組み立てて製造可能である。
【0036】
型枠パネル10は、隣接する板片42同士が鉤手部44a,44bによって係合しているため構造が簡単であり、広い角度範囲に亘って回転可能であって、しかも抜けることがない。また、鉤手部44a,44bによる係合ではわずかな隙間があり、打設したコンクリートのノロが生じ得る。そのため、立ち上がり部18におけるコンクリートの充填状態を確認することができる。さらに、隣接する鉤手部44a,44b同士は、相対的に変位可能な移動代をもって係合していることから、立ち上がり部18の長さに合うように調整が可能である。
【0037】
型枠パネル10では、鉤手部44a,44bが大きい角度範囲に亘る円弧の渦形状同士が係合していることから、概念的には2本のポールが同心状に存在しているのと同様であって高強度であって反りにくく、コンクリート打設時に作用する内圧に耐え得る。また、板片42は、平面部42b、および該平面部42bの両端から長辺42aまでの一対の斜面部42cを有する台形断面となっており、さらに曲がりにくくなっている。平面部42bには長尺方向に沿った直線状の屈曲筋42eが形成されていることから、一層高強度となっている。なお、特許文献1に記載の型枠パネルは構造上で十分な強度がないため複数本のパイプによって側面を補強しているが、本実施の形態にかかる型枠パネル10では適度な強度を有しているため基本的に補強が不要であり施工が容易である。ただし、施工条件によっては補強材を設けてもよい。
【0038】
型枠パネル10では、抜止部42gを変形させることにより隣接する板片42を離脱させることができる。そのため、電動工具などによる切断をすることなく型枠パネル10を短くすることができる。また、2枚の型枠パネル10は、一方の端部の鉤手部44aと他方の端部の鉤手部44bとを係合させた後に加締めによる抜止部42gを形成することで連結させることができる。抜止部42gの脇には孔42hが形成されていて加締作業を行いやすい。この連結にはねじ止めや溶接などが不要であって作業が容易である。型枠パネル10の両端は鉤手部44a,44bによって形成されており、外面が筒状であり滑らかである。
【0039】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0040】
本発明にかかる型枠パネルは、コンクリート基礎の型枠として使用する型枠パネルであって、長辺同士が隣接するように組まれた短冊状の複数の板片を有し、前記板片は、隣接するものの前記長辺同士が回転可能に接続されていることを特徴とする。このような型枠パネルは、隣接する板片の長辺同士が回転可能に接続されていることから、ロール体として保管および搬送が可能であるとともに、ロール状態から巻き出しながら型枠セットの一部として設置する施工が可能になり施工性が向上する。
【0041】
本発明にかかる型枠パネルは、前記板片は一対の前記長辺に沿った一対の鉤手部を有し、隣接する前記板片同士は前記鉤手部同士が係合していてもよい。鉤手部による係合は構造が簡単であるとともに、適度に大きい角度範囲に亘る円弧の渦形状とすることができ、高強度であって反りにくい。
【0042】
本発明にかかる型枠パネルは、隣接する前記鉤手部同士は、相対的に変位可能な移動代をもって係合していてもよい。これにより、型枠パネルを立ち上がり部の長さに合うように調整することができる。
【0043】
本発明にかかる型枠パネルは、隣接する前記板片のうち一方は、前記長辺の端部に前記鉤手部のない欠損部を有し、隣接する前記板片のうち他方は、前記長辺の端部に前記鉤手部を加締めた抜止部を有してもよい。このような抜止部によれば型枠パネルを複数に分離し、または複数の型枠パネルを連結する作業を容易に行うことができる。
【0044】
本発明にかかる型枠パネルは、前記板片は、平面部、および該平面部の両端から前記長辺までの一対の斜面部を有し、隣接する前記板片同士の前記平面部と前記斜面部とが形成する角部同士が当接するときに前記平面部同士は直交面を形成してもよい。これにより、型枠パネルを90度の入隅部に沿って配置するのに好適となる。
【0045】
本発明にかかる型枠パネルは、前記板片には長尺方向に沿った直線状の屈曲筋が形成されていてもよい。これにより、板片の強度が向上する。
【0046】
本発明にかかる施工方法は、上記の型枠パネルを設置する施工方法であって、ロール状態に巻き取られた前記型枠パネルを巻き出しながら、前記コンクリート基礎における立ち上がり部の壁面となる位置に設置するパネル工程を有することを特徴とする。このようにロール状態から巻き出しながら型枠セットの一部として設置すると施工性が向上する。
【0047】
本発明にかかる施工方法は、前記パネル工程に先立ち、前記型枠パネルが嵌め込み可能な幅を有する下レールを上向きに開口する向きで敷設する下レール工程を有し、前記パネル工程ではロール状態から巻き出した分を前記下レールに嵌め込んでもよい。
【0048】
本発明にかかる施工方法は、前記パネル工程の後に、前記下レールに嵌め込まれた前記型枠パネルに対して、前記型枠パネルが嵌め込み可能な幅を有する上レールを下向きに開口する向きで被せる上レール工程を有してもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 型枠パネル、12 型枠セット、14 基礎(コンクリート基礎)、18 立ち上がり部、18a 外周部、18b 中通り部、18c 入隅部、18d 出隅部、30 下レール、32 上レール、42 板片、42a 長辺、42b 平面部、42c 斜面部、42d 角部、42e 屈曲筋、42g 抜止部、44a,44b 鉤手部、50 ロール体
図1
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図10