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  • 特開-構造物の補強方法および補強構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118274
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】構造物の補強方法および補強構造
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230818BHJP
   E04C 5/07 20060101ALI20230818BHJP
   E01D 19/02 20060101ALI20230818BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
E04G23/02 D
E04C5/07
E01D19/02
D06M15/564
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021132
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】520352193
【氏名又は名称】ライトウエイ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521236807
【氏名又は名称】eco断熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】辻 正和
(72)【発明者】
【氏名】藤森 浩一郎
【テーマコード(参考)】
2D059
2E164
2E176
4L033
【Fターム(参考)】
2D059AA03
2D059GG23
2E164AA05
2E164AA11
2E164CB01
2E176AA01
2E176BB03
2E176BB28
4L033AA06
4L033AA08
4L033AA09
4L033AB05
4L033AC11
4L033CA50
(57)【要約】
【課題】コンクリートなどからなる構造物をしっかりと補強することができ、現場での施工が容易な補強方法および補強構造を提供する。
【解決手段】構造物STの補強方法は、構造物STの外側に織布4を取り付ける第1工程と、前記構造物STの外側に取り付けられた前記織布4の表面にポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方を塗布する第2工程とを有し、前記織布4として網目が30メッシュ以上110メッシュ以下のものを用いる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の外側に織布を取り付ける第1工程と、
前記構造物の外側に取り付けられた前記織布の表面にポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方を塗布する第2工程と、
を有し、
前記織布として網目が30メッシュ以上110メッシュ以下のものを用いる
ことを特徴とする構造物の補強方法。
【請求項2】
第1工程の前に、前記構造物の表面にポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方を塗布する前処理工程をさらに有する請求項1記載の構造物の補強方法。
【請求項3】
第1工程において前記織布に100N以上の張力かけて前記構造物の外側に前記織布を取り付ける請求項1又は2に記載の構造物の補強方法。
【請求項4】
前記織布を構成する繊維が単糸または撚糸で、太さが0.2mm以下である請求項1~3のいずれかに記載の構造物の補強方法。
【請求項5】
前記織布を構成する繊維が、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール(PBO)繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1~4のいずれかに記載の構造物の補強方法。
【請求項6】
構造物の補強構造であって、
構造物の外側に、網目が30メッシュ以上110メッシュ以下の織布を有する第1層と、ポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方からなる第2層とが積層されていることを特徴とする構造物の補強構造。
【請求項7】
前記構造物の表面と前記第1層との間にポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方からなる前処理層を有する請求項6記載の構造物の補強構造。
【請求項8】
前記織布を構成する繊維が単糸または撚糸で、太さが0.2mm以下である請求項6又は7に記載の構造物の補強構造。
【請求項9】
前記織布を構成する繊維が、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール(PBO)繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項6~8のいずれかに記載の構造物の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造物の補強方法および補強構造に関し、より詳細には、コンクリートや各種鋼材などからなる建築物や海洋構造物の補強方法および補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の橋梁や海洋構造物などがコンクリートの中性化や鉄筋の錆などによって老朽化が進み、地震などによって倒壊する危険性がこれまでから問題視されてきた。
【0003】
そこで、コンクリート躯体を有する構造物の補強方法が種々提案されている。例えば特許文献1では、高架橋の橋脚部などのコンクリート躯体の外周面に、強化繊維を含んで形成された繊維シートを巻き付け、巻き付けられた繊維シートの外面側を硬化型樹脂で被覆するコンクリート構造物の補強方法が提案されている。また特許文献2では、コンクリートブロックからなる構造物に高強度繊維製メッシュ布帛を取り付けた後、高強度繊維製メッシュ布帛をポリウレア樹脂で被覆する構造物の補強方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-34434号公報
【特許文献2】実用新案登録第3232092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に提案の補強方法では、繊維シートに樹脂が含浸しておらず、また繊維シートはコンクリート躯体の外周面に接着していない状態で巻き付けられている。このため繊維シートと樹脂との一体強化が十分には図れないおそれがある。また特許文献2に提案の補強方法では、メッシュ布帛の空間率は70%以上が好ましいとされている。メッシュ布帛の空間率が大きいとポリウレア樹脂のメッシュ布帛を挟んだ構造物との接着性は向上すると考えられるもののメッシュ布帛の強度が低下し構造物の十分な補強が図れないおそれがある。
【0006】
そこで本発明の目的は、構造物を一層しっかりと補強することができ、しかも現場での施工が容易な補強方法および補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成する本発明に係る補強方法は、構造物の外側に織布を取り付ける第1工程と、前記構造物の外側に取り付けられた前記織布の表面にポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方を塗布する第2工程とを有し、前記織布として網目が30メッシュ以上110メッシュ以下のものを用いることを特徴とする。
なお、本明細書における「メッシュ」とは、1インチ(25.4mm)間にある繊維の数をいうものとする。
【0008】
前記構成の補強方法において、第1工程の前に、前記構造物の表面にポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方を塗布する前処理工程をさらに有する構成としてもよい。
【0009】
また前記構成の補強方法において、第1工程で前記織布に100N以上の張力かけて前記構造物の外側に前記織布を取り付ける構成としてもよい。
【0010】
また前記構成の補強方法において、前記織布を構成する繊維が単糸または撚糸で、太さが0.2mm以下のものであってもよい。
【0011】
また前記構成の補強方法において、前記織布を構成する繊維が、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール(PBO)繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。
【0012】
また本発明によれば、構造物の外側に、網目が30メッシュ以上110メッシュ以下の織布を有する第1層と、ポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方からなる第2層とが積層されていることを特徴とする構造物の補強構造が提供される。
【0013】
前記構成の補強構造において、前記構造物の表面と前記第1層との間にポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方からなる前処理層を有していてもよい。
【0014】
また前記構成の補強構造において、前記織布を構成する繊維が単糸または撚糸で、太さが0.2mm以下のものであってもよい。
【0015】
また前記構成の補強構造において、前記織布を構成する繊維が、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール(PBO)繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る補強方法および補強構造によれば、現場での施工が容易で、構造物をしっかりと補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る構造物の補強方法の一例を示す工程図である。
図2】スプレー塗布装置の一例を示す概説図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る補強方法および補強構造について詳述するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0019】
図1に、本発明に係る補強方法の一例を示す工程図を示す。
【0020】
(前処理工程)
図1(a)に示すように、まず、コンクリートや各種鋼材などからなる構造物STの表面にポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方がスプレーガンGで噴霧塗布されて前処理層3が形成される。このような前処理層3が設けられることで、後述する織布と構造物STとの密着性が向上して補強構造の強度が高まると共に、現地施工において構造物STへの織布の取り付け保持などの作業性が向上する。
【0021】
なお、ポリウレタン樹脂及び/又はポリウレア樹脂の塗布は、スプレーガンによる噴霧塗布やローラ塗布など従来公知の塗布方法を用いることができるが、作業労力の軽減および作業時間の短縮が図れることから図1(a)に示すようなスプレーガンGによる噴霧塗布が好ましい。
【0022】
ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基を1分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物と、アルコール性水酸基を1分子中に2個以上有するポリオール化合物とを反応させることによって得ることができる。また、ポリウレア樹脂は、イソシアネート基を1分子中に2個以上有するポリイソシアネート化合物と、アミノ基を有するポリアミン化合物とを反応させることによって得ることができる。
【0023】
前処理層3としてポリウレタン樹脂又はポリウレア樹脂の原料をスプレー塗布する場合には、例えば図2に示すスプレー塗布装置SPを用いるのが好ましい。図2に示すスプレー塗布装置SPでは、ドラム缶61からイソシアネート化合物が、ドラム缶62からポリオール化合物またはポリアミン化合物がそれぞれ装置本体60に供給され、装置本体60において所定圧力に調整されたイソシアネート化合物と、ポリオール化合物またはポリアミン化合物とは加熱ホース63を介してスプレーガンGに供給される。そして、スプレーガンGにおいてイソシアネート化合物と、ポリオール化合物またはポリアミン化合物とが混合されて構造物STに噴霧される。例えば、噴霧する際のスプレー塗布装置SPの装置本体60からの吐出圧力は14MPa~24MPa程度で、最高液圧温度は約90℃程度である。このようなスプレー塗布装置SPとしては、例えば、GRACO社製「H-XP3リアクター」が好適に使用される。
【0024】
ポリイソシアネート化合物としては、例えばジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(液状MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)等の低分子量イソシアネート化合物が挙げられる。
【0025】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0026】
ポリアミン化合物としては、例えば、トリエチレンテトラミンのような脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミンのような芳香族ポリアミン、イソホロンジアミンのような脂環式ポリアミン等を挙げられる。
【0027】
前処理層3の厚みに特に限定はないが、通常、0.5mm~3.0mmの範囲が好ましく、より好ましくは1.0mm~2.0mmの範囲である。
【0028】
(第1工程)
次に、図1(b)に示すように、前処理層3の表面に織布4が取り付けられる。これが第1層1となる。第1層1の層厚は織布4の厚みと略同一である。なお、織布4の厚みは、織布4を構成する繊維の太さ及び織組織に起因し、後述するように、繊維の太さは0.2mm以下が好ましいことなどから、織布4の厚みは0.4mm以下が好ましい。織布4の取付は前処理層3が硬化する前に行うことが推奨される。前処理層3が接着層として織布4を保持する役割を果たすからである。もちろん、前処理層3が硬化した後に織布4を取り付けても構わない。織布4の取付は100N以上の張力をかけて行うのがよい。ただし、織布4の材質によっては大きな張力をかけると網目構造が変形するおそれがあるので、上限値としては200N程度が好ましい。
【0029】
本発明で使用する織布4は網目が30メッシュ以上110メッシュ以下であることが重要である。網目が30メッシュより小さいと、網目の開き目が大きくポリウレタン樹脂やポリウレア樹脂が織布4へ進入して織布4と前記樹脂との一体化は図れるものの、織布4の強度が十分ではなく所期の補強効果が得られないおそれがある。一方、網目が110メッシュより大きいと織布4の強度は得られるものの網目の開き目が小さくポリウレタン樹脂やポリウレア樹脂の織布4への進入が不十分で網目と前記樹脂との一体化が図れず所期の補強効果が得られないおそれがある。後述するように、織布4を構成する繊維が単糸または撚糸であって、例えば、その太さが0.2mmの場合、織布4の網目の好ましい下限値は50メッシュであり、上限値は100メッシュである。
【0030】
織布4を構成する繊維に特に限定はないが、単糸または撚糸であるのがよい。繊維が無撚糸であると前記樹脂を吹き付け塗布する際に繊維の乱れや繊維の広がりが生じやすくなり織布強度の低下や織布開口の変化が生じやすくなるからである。繊維の太さとしては0.2mm以下であるのが好ましい。
【0031】
繊維は、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、ポリパラフェニレン・ベンゾビス・オキサゾール(PBO)繊維からなる群より選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。織布4の組織としては特に限定はないが、平織、綾織、杉綾織などが好ましい。
【0032】
(第2工程)
図1(c)に示すように、構造物STに取り付けた織布4の表面にポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方がスプレーガンGによってスプレー塗布される。織布4の表面にスプレー塗布された前記樹脂の一部は、織布4の開口を通って前処理層3の表面に至るとともに織布4の開口を埋める。その後、織布4の表面に前記樹脂からなる第2層2が形成され、図1(d)に示す積層構造となる。これにより、織布4を有する第1層1と第2層2とが一体化し強度が高くなる。
【0033】
第2層2の層厚に特に限定はないが、通常、0.5mm以上5.0mm以下の範囲が好ましい。第2層2の層厚が0.5mmよりも薄いと十分な補強効果が得られないおそれがある。一方、第2層2の層厚が5.0mmよりも厚いと使用樹脂量に対して十分な効果が得られないおそれがある。
【0034】
ポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の原料および塗布方法については、前述の前処理層3における例示がここでも例示される。
【0035】
(その他)
以上説明した実施形態では前処理層3を設けていたが、前処理層3を設けることなく構造物STの表面に織布4を取り付けて第1層1を形成した後、ポリウレタン樹脂及びポリウレア樹脂の少なくとも一方を塗布して第2層2を形成してもよい。
【0036】
また、構造体の補強度を高めるため、第1層と第2層とを交互に複数層積層してもよい。第1層と第2層の形成は前述の第1工程と第2工程を繰り返えせばよい。なお、第1層と第2層とを交互に複数層を積層した場合であっても最も外側の層は第2層とするのが望ましい。
【0037】
また最外層としてトップコート層を設けてもよい。このようなトップコート層としては、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリル樹脂あるいはこれらの変性樹脂などを使用することができる。トップコート層の層厚に特に限定はないが、例えば0.02mm以上1.0mm以下程度の厚みが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る補強方法および補強構造によれば、現場での施工が容易で、構造物をしっかりと補強することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 第1層
2 第2層
3 前処理層
4 織布
G スプレーガン
ST 構造物
図1
図2