(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118288
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】制振機構及び機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/16 20060101AFI20230818BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20230818BHJP
F16F 7/00 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
G06F1/16 311D
F16F15/02 C
F16F7/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021161
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】593063161
【氏名又は名称】株式会社NTTファシリティーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北原 進之介
(72)【発明者】
【氏名】杉村 義文
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正敦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幹夫
【テーマコード(参考)】
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
3J048AA07
3J048AC10
3J048AD08
3J048BA24
3J048BF09
3J048BG04
3J048CB18
3J066AA22
3J066BA01
3J066BB01
3J066BC03
(57)【要約】
【課題】ラック内に搭載しやすい制振機構及びその制振機構を備える機器を提供する。
【解決手段】制振機構は、上側板面と下側板面とを有し、下側板面がコンピュータを搭載可能なラック内の棚板の板面に接するように載置される板と、板に対し固定されている反力部と、上側板面を摺動可能であり、反力部と衝突可能な可動部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側板面と下側板面とを有し、前記下側板面がコンピュータを搭載可能なラック内の棚板の板面に接するように載置される板と、
前記板に対し固定されている反力部と、
前記上側板面を摺動可能であり、前記反力部と衝突可能な可動部と、を備える
制振機構。
【請求項2】
前記可動部が前記反力部を囲む請求項1に記載の制振機構。
【請求項3】
前記反力部が前記可動部を囲む請求項1に記載の制振機構。
【請求項4】
前記可動部が、
第一ガイド方向への前記反力部に対する摺動が可能であり、前記第一ガイド方向と交差する第二ガイド方向への前記反力部に対する摺動が規制されている外部部材と、
前記第二ガイド方向への前記外部部材に対する摺動が可能であり、前記第一ガイド方向への前記外部部材に対する摺動が規制されている内部部材と、を備える
請求項3に記載の制振機構。
【請求項5】
複数のレールを備え、下面を有し、前記下面がコンピュータを搭載可能なラック内の棚板の板面に接するように載置されるレールユニットと、
前記各レールに対し固定されている反力部と、
前記各レールを摺動可能であり、前記反力部と衝突可能な可動部と、を備える
制振機構。
【請求項6】
前記反力部が、前記各レールの延びる方向に互いに離れている一対の反力体を備える請求項5に記載の制振機構。
【請求項7】
前記複数のレールが、
第一レール方向に延びる第一レールと、
前記第一レール方向と交差する第二レール方向に延びる第二レールと、を備える
請求項5又は6に記載の制振機構。
【請求項8】
前記反力部が、衝突面に緩衝材を備える請求項1から7のいずれか一項に記載の制振機構。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の制振機構と、
前記ラックと、を備える
機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制振機構及び機器に関する。
【背景技術】
【0002】
耐震性能を向上させるために、ラックに制振機構を設けることが知られている。
例えば、特許文献1には、制振機構をラックの内部に設置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えばラックの内部のスペースが棚板で薄く仕切られている場合、特許文献1のような制振機構だとラック内に搭載できないことがある。
【0005】
本開示の目的は、上述のいずれの課題を鑑みて、ラック内に搭載しやすい制振機構及びその制振機構を備える機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る制振機構は、上側板面と下側板面とを有し、前記下側板面がコンピュータを搭載可能なラック内の棚板の板面に接するように載置される板と、前記板に対し固定されている反力部と、前記上側板面を摺動可能であり、前記反力部と衝突可能な可動部と、を備える。
【0007】
本開示の一態様に係る制振機構は、前記可動部が前記反力部を囲む。
【0008】
本開示の一態様に係る制振機構は、前記反力部が前記可動部を囲む。
【0009】
本開示の一態様に係る制振機構は、前記可動部が、第一ガイド方向への前記反力部に対する摺動が可能であり、前記第一ガイド方向と交差する第二ガイド方向への前記反力部に対する摺動が規制されている外部部材と、前記第二ガイド方向への前記外部部材に対する摺動が可能であり、前記第一ガイド方向への前記外部部材に対する摺動が規制されている内部部材と、を備える。
【0010】
本開示の一態様に係る制振機構は、複数のレールを備え、下面を有し、前記下面がコンピュータを搭載可能なラック内の棚板の板面に接するように載置されるレールユニットと、前記各レールに対し固定されている反力部と、前記各レールを摺動可能であり、前記反力部と衝突可能な可動部と、を備える。
【0011】
本開示の一態様に係る制振機構は、前記反力部が、前記各レールの延びる方向に互いに離れている一対の反力体を備える。
【0012】
本開示の一態様に係る制振機構は、前記複数のレールが、第一レール方向に延びる第一レールと、前記第一レール方向と交差する第二レール方向に延びる第二レールと、を備える。
【0013】
本開示の一態様に係る制振機構は、前記反力部が、衝突面に緩衝材を備える。
【0014】
本開示の一態様に係る機器は、前記制振機構と、前記ラックと、を備える。
【発明の効果】
【0015】
上記一態様によれば、制振機構をラック内に搭載しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図1のII-II線における第一実施形態に係る機器の水平断面図である。
【
図3】第一実施形態に係る制振機構の動作を説明する図である。
【
図4】第二実施形態に係る制振機構の平面図である。
【
図5】第二実施形態に係る制振機構の動作を説明する図である。
【
図6】第三実施形態に係る制振機構の平面図である。
【
図7】第三実施形態に係る制振機構の動作を説明する図である。
【
図8】機器の頂部変位の時刻歴を示すグラフである。
【
図9】機器の頂部加速度の時刻歴を示すグラフである。
【
図10】機器の頂部変位の時刻歴と可動部の加速度の時刻歴とを示すグラフである。
【
図11】第三実施形態の他の変形例に係る制振機構の平面図である。
【
図12】第四実施形態に係る制振機構の平面図である。
【
図13】第四実施形態に係る制振機構の水平断面図である。
【
図14】
図13のXIV-XIV線における第四実施形態に係る制振機構の垂直断面図である。
【
図15】
図13のXV-XV線における第四実施形態に係る制振機構の垂直断面図である。
【
図16】第四実施形態に係る制振機構の動作を説明する図である。
【
図17】第四実施形態に係る制振機構の別の動作を説明する図である。
【
図18】比較例に係る制振機構の動作を説明する図である。
【
図19】第一実施例における可動域の長さと頂部変位との関係を示すグラフである。
【
図20】第二実施例における可動部の総重量と頂部変位との関係を示すグラフである。
【
図21】第三実施例における緩衝材の有無と頂部変位との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示に係る各種実施形態について、図面を用いて説明する。
【0018】
<第一実施形態>
以下、本開示に係る第一実施形態について、
図1~
図3を用いて説明する。
【0019】
(全体構成)
図1に示すように、機器1は、制振機構2と、コンピュータ3と、ラック4と、を備える。
【0020】
ラック4は、制振機構2と、コンピュータ3と、を内部に搭載可能である。
以下、ラック4の幅方向をX方向、ラック4の奥行方向をY方向、ラック4の上下方向をZ方向ともいう。
【0021】
ラック4は、複数の棚41に区画する複数の棚板43を備える。各棚板43は、XY面に沿う平面である板面43sを有する。
ラック4の複数の棚41のうち、制振機構2が最上段に設けられ、コンピュータ3として複数のサーバ類が他段に設けられている。
【0022】
(制振機構の構成)
制振機構2は、ラック4の天板42とラック4内の最上段の棚板43との間に設けられている。
図1及び
図2に示すように、制振機構2は、板21と、反力部22と、可動部23と、を備える。
【0023】
板21は、XY面に沿う一対の平面である上側板面21uと下側板面21dとを有する。
板21は、棚板43の上を向く板面43sに、下側板面21dが接するように載置されている。
板21は、板面43sにネジ等の固定部材21fで固定されている。
【0024】
反力部22は、板21に対し、上側板面21u側に固定されている。
本実施形態において、反力部22は、軸がZ方向を向く円柱形状を有する。
【0025】
可動部23は、上側板面21uを摺動可能であり、反力部22と衝突可能である。
本実施形態において、可動部23は、軸がZ方向を向く円環形状を有し、XY面内について反力部22を囲んでいる。
反力部22と可動部23とが同軸位置にある状態において、制振機構2は、反力部22の外周と可動部23の内周との間に可動域RMに相当する空間24を有する。
【0026】
(動作)
図3に示すように、地震等により、機器1に対し外部から水平力F1が掛ったとする。
その際、機器1が受ける水平力F1に対し、可動部23は、慣性力により、板21の上側板面21uを水平力F1の働く方向と反対方向に滑る。
反対方向に滑った可動部23は、反力部22に衝突し、水平力F1と逆方向の水平力F2を反力部22に与える。
可動部23が与える水平力F2は、反力部22を介して機器1が受ける水平力F1を低減する。
このような水平力F1の低減が繰り返されることにより、例えば地震中において、定常的に水平力F1を低減できる。
【0027】
(作用及び効果)
本実施形態によれば、制振機構2が、可動部23が滑る板21が棚板43の板面43sに接する構造を有するため、制振機構2全体の厚さが縮小される。
このため、たとえ、ラック4の内部のスペースが棚板43で薄く仕切られていても、制振機構2をラック4内に設けることができる。
したがって、制振機構2は、ラック4内に搭載しやすい。
他方、地震等により機器1に振動が加わった場合、可動部23が慣性力により反力部22に衝突することにより、制振機構2は、機器1に加わる水平力を低減することができる。
【0028】
本実施形態によれば、反力部22は円柱形状を有し、可動部23は円環形状を有する。
これにより、角を有する形状の場合に比べて、反力部22と可動部23とが、地震のように一方向性でない震動に対して、常に一点で衝突するため、力が分散せずに有効に働く。
このため、制振機構2は、機器1に加わる水平力を低減しやすい。
【0029】
(変形例)
本実施形態では、反力部22は円柱形状を有し、可動部23は円環形状を有しているが、水平力を低減できるならどのような形状であってもよい。
変形例として、反力部22は角柱形状を有し、可動部23は角環形状を有してもよい。
【0030】
<第二実施形態>
以下、本開示に係る第二実施形態について、
図4及び
図5を用いて説明する。
本実施形態の制振機構102は、以下に説明する点を除いて、第一実施形態の制振機構2と同様である。
【0031】
(制振機構の構成)
本実施形態の制振機構102は、第一実施形態の制振機構2に代えて、機器1に設けられる。
図4に示すように、制振機構102は、板21と、反力部122と、可動部123と、を備える。
制振機構102は、第一実施形態の制振機構2と同様に、ラック4内に搭載される。
【0032】
反力部122は、板21に対し、上側板面21u側に固定されている。
本実施形態において、反力部122は、軸がZ方向を向く円環形状を有し、XY面内について可動部123を囲んでいる。
【0033】
可動部123は、上側板面21uを摺動可能であり、反力部122と衝突可能である。
本実施形態において、可動部123は、軸がZ方向を向く円柱形状を有する。
反力部122と可動部123とが同軸位置にある状態において、制振機構102は、反力部122の内周と可動部123の外周との間に可動域RMに相当する空間124を有する。
【0034】
(動作)
図5に示すように、地震等により、機器1に対し外部から水平力F1が掛ったとする。
その際、機器1が受ける水平力F1に対し、可動部123は、慣性力により、板21の上側板面21uを水平力F1の働く方向と反対方向に滑る。
反対方向に滑った可動部123は、反力部122に衝突し、水平力F1と逆方向の水平力F2を反力部122に与える。
可動部123による水平力F2は、反力部122を介して機器1が受ける水平力F1を低減する。
【0035】
(作用及び効果)
本実施形態によれば、制振機構102が、可動部123が滑る板21が棚板43の板面43sに接する構造を有するため、制振機構102全体の厚さが縮小される。
このため、たとえ、ラック4の内部のスペースが棚板43で薄く仕切られていても、制振機構102をラック4内に設けることができる。
したがって、制振機構102は、ラック内に搭載しやすい。
他方、地震等により機器1に振動が加わった場合、可動部123が慣性力により反力部122に衝突することにより、制振機構102は、機器1に加わる水平力を低減することができる。
【0036】
本実施形態によれば、反力部122は円環形状を有し、可動部123は円柱形状を有する。
これにより、角を有する形状の場合に比べて、反力部122と可動部123とが、地震のように一方向性でない震動に対して、常に一点で衝突するため、力が分散せずに有効に働く。
このため、制振機構102は、機器1に加わる水平力を低減しやすい。
【0037】
(変形例)
本実施形態では、反力部122は円環形状を有し、可動部123は円柱形状を有しているが、水平力を低減できるならどのような形状であってもよい。
変形例として、反力部122は角環形状を有し、可動部123は角柱形状を有してもよい。
【0038】
<第三実施形態>
以下、本開示に係る第三実施形態について、
図6~
図10を用いて説明する。
本実施形態の制振機構202は、以下に説明する点を除いて、第一実施形態の制振機構2と同様である。
【0039】
(制振機構の構成)
本実施形態の制振機構202は、第一実施形態の制振機構2に代えて、機器1に設けられる。
図6に示すように、制振機構202は、レールユニット221と、反力部222と、可動部223と、を備える。
制振機構202は、第一実施形態の制振機構2と同様に、ラック4内に搭載される。
【0040】
レールユニット221は、複数のレール226を備える。
レールユニット221は、下面221dを有し、下面221dが棚板43の板面43sに接するように載置される。
本実施形態において、複数のレール226は、それぞれX方向に延びており、X方向に延びる姿勢でY方向に並んでいる。
また、レールユニット221は、底板221bを備え、底板221bに下面221dを有する。
【0041】
反力部222は、各レール226に設けられ、各レール226に対し固定されている。
反力部222は、各レール226の延びる方向に互いに離れている一対の反力体227を備え、底板221bに所定ピッチで設けられた穴228を利用し、各レール226の延びる方向の任意の位置に固定できる。
一対の反力体227は、可動部223を挟んでいる。
各反力体227は、可動部223を向く衝突面227sに、緩衝材229を備えており、可動部223との衝突時の衝撃を和らげる。
【0042】
可動部223は、各レール226に設けられている。
可動部223は、各レール226を摺動可能であり、各反力体227と衝突可能である。
一対の反力体227の間の中心に可動部223がある状態において、制振機構202は、各反力体227と可動部223との間に可動域RMに相当する隙間230を有する。
【0043】
(動作)
図7に示すように、地震等により、機器1に対し外部から水平力F1が掛ったとする。
その際、機器1が受ける水平力F1に対し、各可動部223は、慣性力により、各レール226を水平力F1の働く方向と反対方向に滑る。
反対方向に滑った各可動部223は、一方の反力体227に衝突し、水平力F1と逆方向の水平力F2を反力体227に与える。
各可動部223が与える水平力F2は、反力体227を介して機器1が受ける水平力F1を低減する。
【0044】
(作用及び効果)
本実施形態によれば、制振機構202が、可動部223が滑るレールユニット221の下面221dが棚板43の板面43sに接する構造を有するため、制振機構202全体の厚さが縮小される。
このため、たとえ、ラック4の内部のスペースが棚板43で薄く仕切られていても、制振機構202をラック4内に設けることができる。
したがって、制振機構202は、ラック内に搭載しやすい。
他方、地震等により機器1に振動が加わった場合、各可動部223が慣性力により一対の反力体227に繰り返し衝突することにより、制振機構202は、機器1に加わる水平力を低減することができる。
【0045】
本実施形態の一例によれば、
図8及び
図9に示すように、ラック4に制振機構202を設けない場合(非制振時)に比べて、ラック4に制振機構202を設けた場合(制振時)の方が、ラック4の頂部変位及び頂部加速度を半減以下に減衰させることができる。
なお、
図10に示すように、ラック4に制振機構202が設けられている(制振時)場合、可動部223が反力体227に衝突した瞬間に、可動部223に加速度が発生し、可動部223が衝突することにより、可動部223は、ラック4の頂部の変位波形における最大変位部分を減少させることができる。
【0046】
(変形例)
本実施形態では、制振機構202は、複数のレール226を備えるが、反力部222と可動部223とを備えるなら、どのように構成されてもよい。
変形例として、複数のレール226が、それぞれY方向に延びており、Y方向に延びる姿勢でX方向に並んでいてもよい。
他の変形例として、
図11に示すように、複数のレール226が、第一レール方向DL1としてX方向に延びる第一レール231と、第一レール方向DL1と交差する第二レール方向DL2に延びる第二レール232と、を備えてもよい。
本変形例によれば、制振機構202は、X方向及びY方向の2つの方向について、機器1に加わる水平力を低減することができる。
【0047】
<第四実施形態>
以下、本開示に係る第四実施形態について、
図12~
図17を用いて説明する。
本実施形態の制振機構302は、以下に説明する点を除いて、第一実施形態の制振機構2と同様である。
【0048】
(制振機構の構成)
本実施形態の制振機構302は、第一実施形態の制振機構2に代えて、機器1に設けられる。
図12に示すように、制振機構302は、筐体309と、可動部323と、を備える。
本実施形態において、筐体309は、中空直方体形状を有し、可動部323を内包している。
筐体309の底は、板321として機能し、筐体309の側壁は、反力部322として機能する。
制振機構302は、第一実施形態の制振機構2と同様に、ラック4内に搭載される。
【0049】
図13~
図15に示すように、板321は、XY面に沿う一対の板面である上側板面321uと下側板面321dとを有する。
板321は、棚板43の上を向く板面43sに、下側板面321dが接するように載置されている。
板321は、板面43sに固定されている。
【0050】
筐体309として、反力部322は、板321と一体成形されていることにより、板321に対し、上側板面321u側に固定されている。
本実施形態において、反力部322は、Z方向を枠高さとする矩形枠形状を有する。
【0051】
可動部323は、外部部材361と、内部部材362と、を備える。
【0052】
外部部材361は、板321の上側板面321uを摺動可能であり、反力部322と衝突可能である。
外部部材361の底361bは、平板形状を有し、全体に亘って板321の上側板面321uに接している。
外部部材361は、中空直方体形状を有し、内部部材362を内包している。
外部部材361は、Y方向について反力部322の内寸法と略同じ外寸法を有し、X方向について反力部322の内寸法より小さい外寸法を有する。
このような寸法を有することにより、XY面内について反力部322の中心に外部部材361がある状態において、外部部材361は、反力部322のX方向に延びる一対の各側内壁322xに接する。その際、制振機構302は、外部部材361と反力部322のY方向に延びる一対の各側内壁322yとの間に可動域RM1に相当する隙間371を有する。
このような構造により、外部部材361は、第一ガイド方向DG1として、X方向への反力部322に対する摺動が可能であり、第一ガイド方向DG1と交差する第二ガイド方向DG2として、Y方向への反力部322に対する摺動が規制されている。
【0053】
内部部材362は、外部部材361の底361bの上面361uを摺動可能であり、外部部材361と衝突可能である。
内部部材362の底362bは、平面形状を有し、全体に亘って外部部材361の底361bの上面361uに接している。
内部部材362は、直方体形状を有する。
内部部材362は、X方向について外部部材361の内寸法と略同じ外寸法を有し、Y方向について外部部材361の内寸法より小さい外寸法を有する。
このような寸法を有することにより、XY面内について外部部材361の中心に内部部材362がある状態において、外部部材361のX方向に延びる一対の各側内壁361xと可動域RM2に相当する隙間372を有し、可動部323のY方向に延びる一対の各側内壁361yと接している。
このような構造により、内部部材362は、第二ガイド方向DG2への外部部材361に対する摺動が可能であり、第一ガイド方向DG1への外部部材361に対する摺動が規制されている。
【0054】
(動作)
例えば、地震等により、機器1に対し外部からY方向の水平力Fy1が掛ったとする。
その際、
図16に示すように、可動部323のうち内部部材362は、外部部材361内を滑り、慣性力により外部部材361に衝突し、外部部材361を介して水平力Fy1と逆方向の水平力Fy2を反力部322に与える。
可動部323が与える水平力Fy2は、反力部322を介して機器1が受ける水平力Fy1を低減する。
【0055】
同様に、地震等により、機器1に対し外部からX方向及びY方向に傾く水平力Fxy1が掛ったとする。
その際、
図17に示すように、可動部323のうち内部部材362は、外部部材361内を滑り、慣性力により外部部材361に衝突する一方で、可動部323のうち外部部材361は、板321上を滑り、可動部323は、水平力Fxy1と逆方向の水平力Fxy2を反力部322に与える。
可動部323が与える水平力Fxy2は、反力部322を介して機器1が受ける水平力Fxy1を低減する。
【0056】
(作用及び効果)
本実施形態によれば、制振機構302が、可動部323が滑る板321が棚板43の板面43sに接する構造を有するため、制振機構302全体の厚さが縮小される。
このため、たとえ、ラック4の内部のスペースが棚板43で薄く仕切られていても、制振機構302をラック4内に設けることができる。
したがって、制振機構302は、ラック内に搭載しやすい。
【0057】
他方、地震等により機器1に振動が加わった場合、可動部323が慣性力により内部衝突する一方で、反力部322に衝突することにより、制振機構302は、機器1に加わる水平力を低減することができる。
【0058】
さらに、本実施形態の制振機構302によれば、内部部材362が反力部322に対して水平面内において揺れにくい。このため、水平面内の各方位に対して可動部323の各構成を面で衝突させることができる。
比較例として、
図18に示すように、制振機構が外部部材を備えない場合、内部部材362が反力部322との可動域の範囲で自由に動いてしまい、XY面内において内部部材362が反力部322に対して揺れて傾くことがある。そのように傾いた場合、機器に加わるY方向の水平力Fy1に対し、内部部材362が反力部322に与える水平力が、Y方向の水平力Fy2とX方向の水平力Fx2に分散してしまうため、機器に加わる水平力Fy1が低減されにくい。
これに対し、本実施形態の制振機構302によれば、外部部材361により、内部部材362が反力部322に対して水平面内において揺れにくいため、機器1に加わる水平力Fy1が低減されやすい。
【0059】
(変形例)
本実施形態では、制振機構302において、第一ガイド方向DG1がX方向であり、第二ガイド方向DG2がY方向であるが、第一ガイド方向DG1と第二ガイド方向DG2とが異なる水平方向であればどのように構成されてもよい。すなわち、外部部材361と内部部材362とが互いに異なる水平方向へ摺動が可能であれば、制振機構302は、どのように構成されてもよい。
変形例として、外部部材361は、Y方向への反力部322に対する摺動が可能であり、X方向への反力部322に対する摺動が規制されていてもよい。その際、内部部材362は、X方向への外部部材361に対する摺動が可能であり、Y方向への外部部材361に対する摺動が規制されていてもよい。
【0060】
<他の変形例>
上述の各実施形態において、制振機構は、ラック4の複数の棚41のうち、最上段に設けられているが、ラック4内であれば、どのような位置に設けられてもよい。
変形例として、制振機構は、ラック4の複数の棚41のうち、空いている任意の段に設けられてもよい。
【0061】
上述の各実施形態において、制振機構は、ラック4の棚板43の板面43sに固定されているが、板面43sに接するように載置されるなら、どのように構成されてもよい。
変形例として、制振機構は、板面43sにネジ等で固定されず、板面43sに置かれるだけでよい。このような構成によれば、制振機構を搭載するための特別な取り付け用治具が不要となり、既設のラックに容易に搭載可能である。他方、このような構成でも、制振機構の自重により制振機構と板面43sとの間に摩擦力が働くため、制振機構は、制振機能を発揮することができる。
【0062】
上述の各実施形態において、ラック4には、サーバ類が設けられているが、コンピュータ3であれば、どのような装置であってもよい。
変形例として、ラック4には、コンピュータ3として、クライアント類が設けられてもよいし、通信機器類が設けられてもよい。
他の変形例として、ラック4には、コンピュータ3として、通信機器類が設けられてもよい。その際、通信機器類は、ルータ、スイッチ、ハブ、多重伝送装置等を含んでもよい。
【0063】
上述の各実施形態において、制振機構が有する可動域RMの長さは、機器1の振動を制振できれば、どんな長さであってもよい。
【0064】
上述の各実施形態において、制振機構が備える可動部の重量は、機器1の振動を制振できれば、どんな重量であってもよい。
【0065】
第三実施形態において、各反力体227は、衝突面227sに緩衝材229を備えるが、変形例として、他の実施形態において、反力部が衝突面に緩衝材を備えてもよい。
逆に、他の変形例として、第三実施形態において、各反力体227は、衝突面227sに緩衝材229を備えなくてもよい。
【0066】
以上、本開示の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として示したものであり、本開示の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【実施例0067】
以下、実施例により本開示をさらに具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
制振機構の実施例について、
図19~
図21を参照しながら説明する。
【0068】
(第一実施例)
第一実施例として、
図19に、第三実施形態の制振機構202における可動域RMの長さが、5mm、10mm、15mm、20mm、30mm、45mmであるときの頂部変位への影響を示す。
可動部223の総重量はラック4の重量の5.10%(可動部223を3個)とし、緩衝材229は高減衰ゴムとした。
図19に示すように、ラック4の頂部変位波形における最大変位部分(正及び負)は、可動域RMの長さが10mmのとき非制振時に対して最大58%低減した。また、可動域RMの長さは、長すぎると可動部223の衝突が発生しないため低減効果が得られず、短すぎると衝突する力が小さくなり低減効果が小さくなった。
【0069】
(第二実施例)
第二実施例として、
図20に、第三実施形態の制振機構202における可動部223の総重量がラック4の重量の5.10%(可動部223が3個)、3.40%(可動部223が2個)、1.70%(可動部223が1個)であるときのラック4の頂部変位への影響を示す。
可動域RMの長さは20mmとし、緩衝材229は高減衰ゴムとした。
図20に示すように、可動部223の総重量がラック4の重量の5.10%のとき、ラック4の頂部変位波形における最大変位部分は、非制振時に対して最大40%低減した。可動部223の重量は、重いほど低減効果を得られるが、5.10%と3.40%とでは低減効果に差がなかった。よって、総重量の5%程度の可動部を用いることで、ラック4の頂部変位波形における最大変位部分を非制振時に対して30%~40%程度削減できることを確認した。なお、ラック4の頂部変位が可動域RMの長さ以上になると衝突を始めるため、ラック4の頂部変位波形における主要動部分(正及び負)の低減効果は、ラック4の頂部変位波形における最大変位部分での低減効果に比べ大きくなり、主要動部分を非制振時に対して60%程度削減できることを確認した。
【0070】
(第三実施例)
第三実施例として、
図21に、第三実施形態の制振機構202における可動部223の緩衝材229の影響を示す。
可動部223の総重量はラック4の重量の5.10%(可動部223を3個)とし、可動域RMの長さは20mmとし、緩衝材229は高減衰ゴムとした。
図21に示すように、ラック4の頂部変位波形における最大変位部分(正及び負)は、緩衝材229の有無にかかわらず非制振時に対して約40%低減した。よって、緩衝材229の有無が機器1の振動制御に与える影響はほぼなかった。