(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118297
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 2/86 20060101AFI20230818BHJP
E04G 21/14 20060101ALI20230818BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20230818BHJP
E04G 11/08 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
E04B2/86 601C
E04G21/14
E04G21/02 103
E04G11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021177
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 和彦
【テーマコード(参考)】
2E150
2E172
2E174
【Fターム(参考)】
2E150AA36
2E150CA00
2E150HC00
2E172AA05
2E172DB00
2E174AA03
2E174BA02
2E174CA03
(57)【要約】
【課題】建物の屋上に設置されるコンクリート構造物の構築コストを削減する。
【解決手段】製造工程12において、建物の建設現場で、コンクリート部材を、天地反転した状態で製造する。一つの型枠を使用して、高さが異なる複数のコンクリート部材を製造してもよい。揚重工程14において、製造した前記コンクリート部材を、天地反転して揚重する。設置工程16において、揚重した前記コンクリート部材を、前記建物の屋上に設置する。更に、打設工程18において、前記屋上に設置した前記コンクリート部材のなかに、生コンクリートを打設して硬化してもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の建設現場において、コンクリート部材を、天地反転した状態で製造し、
製造した前記コンクリート部材を、天地反転して揚重し、
揚重した前記コンクリート部材を、前記建物の屋上に設置する、
施工方法。
【請求項2】
前記コンクリート部材を製造する工程において、
一つの型枠を使用して、高さが異なる複数のコンクリート部材を製造する、
請求項1の施工方法。
【請求項3】
前記屋上に設置した前記コンクリート部材のなかに、生コンクリートを打設して硬化する、
請求項1又は2の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の屋上にコンクリート構造物を構築する施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、折曲げPC基礎型枠内にコンクリートを打設して、キュービクル架台基礎、パラペット若しくは機械基礎などの構造物を構築する施工方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術は、工場で製造した折り曲げPC基礎型枠を建物の建設現場へ運搬する必要があり、運搬コストが高くなる。
また、高さの異なる複数の構造物を構築する場合、それぞれの構造物に合わせて、折り曲げPC基礎型枠を製造する必要があり、製造コストが高くなる。
この発明は、例えばこのような課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
建物の建設現場において、コンクリート部材を、天地反転した状態で製造し、製造した前記コンクリート部材を、天地反転して揚重し、揚重した前記コンクリート部材を、前記建物の屋上に設置する。
前記コンクリート部材を製造する工程において、一つの型枠を使用して、高さが異なる複数のコンクリート部材を製造してもよい。
前記屋上に設置した前記コンクリート部材のなかに、生コンクリートを打設して硬化してもよい。
【発明の効果】
【0006】
建物の建設現場でコンクリート部材を製造するので、コンクリート部材の運搬コストを抑えることができる。
コンクリート部材を天地反転した状態で製造するので、同じ一つの型枠を使用して、高さが異なる複数のコンクリート部材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を参照して、建物の屋上にコンクリート構造物を構築する施工方法10について説明する。
コンクリート構造物は、例えば、設備基礎やハト小屋などである。
施工方法10は、例えば、製造工程12と、揚重工程14と、設置工程16と、打設工程18とを有する。
【0009】
最初に、製造工程12において、コンクリート部材を製造する。
コンクリート部材は、屋上に設置されるコンクリート構造物そのものであってもよいし、コンクリート部材を屋上に設置したのち、そのなかに生コンクリートを打設することにより、打設したコンクリートと一体化してコンクリート構造物となる型枠部材であってもよい。
コンクリート部材を製造する場所は、建物の建設現場の敷地内であるが、最終的にコンクリート構造物を設置する場所である屋上とは異なる場所(例えば、地上)である。すなわち、サイトPCa(プレキャスト)によって、コンクリート部材を製造する。
また、コンクリート部材は、屋上に設置するときの状態とは天地反転した状態で製造する。
【0010】
次に、揚重工程14において、製造工程12で製造したコンクリート部材を、クレーンなどの揚重装置を使用して、コンクリート部材を吊り上げて天地反転し、更に、コンクリート部材を設置すべき建物の屋上まで吊り上げる。
【0011】
そして、設置工程16において、揚重工程14で揚重したコンクリート部材を、建物の屋上の設置すべき場所(例えば、スラブの上)に設置する。
【0012】
設置工程16で設置したコンクリート部材が型枠部材である場合は、最後に、打設工程18において、コンクリート部材のなかに生コンクリートを打設し硬化させることにより、コンクリート構造物を構築する。
【0013】
図2~4を参照して、製造工程12について詳しく説明する。
図2に示すように、型枠20は、天面型枠21と、外側型枠22と、内側型枠23とを有する。
天面型枠21は、例えばコンパネなどの平らな板である。
外側型枠22は、屋上に設置すべきコンクリート構造物の外形に合わせて製作される。上述したとおり、コンクリート部材を天地反転した状態で製造するため、外側型枠22は、天地反転した状態で、天面型枠21の上に固定される。
内側型枠23は、例えば四角形筒状であり、外側型枠22のなかで、天面型枠21の上に固定される。なお、コンクリート部材が型枠部材でない場合は、内側型枠23は、なくてもよい。
【0014】
このようにして形成した型枠20のなかに、
図3に示すように、生コンクリートを打設して硬化させることにより、コンクリート部材30を製造する。
生コンクリートは、コンクリート部材30が所定の高さになる量を打設する。言い換えれば、必要とされるコンクリート部材30の高さに合わせて、打設する生コンクリートの量を調整する。これにより、同じ一つの型枠20で、高さが異なる複数のコンクリート部材30を製造することができる。
【0015】
コンクリート部材30が硬化したのち、
図4に示すように、外側型枠22及び内側型枠23を取り外す。
コンクリート部材30は、例えば、筒部31と、鍔部32とを有し、中心を垂直方向に貫通した貫通穴33を有する。筒部31は、例えば長方形筒状である。鍔部32は、例えば長方形枠状であり、筒部31の下にある。ただし、これは天地反転した状態なので、屋上に設置されるときには、鍔部32は、筒部31の上に配置される。
このようにコンクリート部材30が上側に鍔部32など横方向に突出した部分を有する形状である場合、天地反転せずに製造すると、外側型枠22を取り外すのに手間がかかる。場合によっては、外側型枠22を破壊せざるを得ず、同じ一つの型枠20で複数のコンクリート部材30を製造することができない。これに対し、このように天地反転して製造すれば、外側型枠22だけを持ち上げることにより、外側型枠22を取り外すことができる。なお、外側型枠22及び内側型枠23を容易に取り外すことができるよう、外側型枠22及び内側型枠23は、わずかにテーパーを有する形状であってもよい。
【0016】
次に、
図5~7を参照して、揚重工程14について詳しく説明する。
まず、
図5に示すように、コンクリート部材30の鍔部32の側面に、回転治具41,42をインパクトなどで取り付ける。図示していないが、反対側の同じ位置にも、回転治具41,42を取り付ける。したがって、全部で四つの回転治具41,42をコンクリート部材30に取り付ける。
回転治具41,42は、例えば、インサートとリンク部とを有する。インサートは、コンクリート部材30の躯体に打ち込まれる。リンク部は、インサートに回転自在に取り付けられている。
【0017】
そして、クレーンなどの揚重装置に取り付けられた二本のワイヤ51を二つの回転治具41のリンク部に引っ掛けて持ち上げると、
図6に示すように、鍔部32の反対側の縁を支点にして、コンクリート部材30が天面型枠21の上で回転する。
【0018】
このようにして、コンクリート部材30を天地反転して、正しい向きにしたのち、
図7に示すように、クレーンなどの揚重装置に取り付けられたもう二本のワイヤ52を二つの回転治具42のリンク部に引っ掛ける。
そして、四本のワイヤ51,52でコンクリート部材30を吊り上げて、建物の屋上に揚重する。
【0019】
図8~9を参照して、設置工程16及び打設工程18について詳しく説明する。
建物の屋上には、
図8に示すように、例えば、屋上スラブ61と、屋上スラブ61から突設された差し筋62とがあらかじめ設けられている。
その上に、揚重工程14で揚重したコンクリート部材30を移動させ、
図9に示すように、貫通穴33のなかに差し筋62が挿入されるよう、コンクリート部材30を設置し、回転治具41,42をインパクトなどで取り外す。
その後、貫通穴33のなかに生コンクリートを打設して硬化させることにより、コンクリート部材30と一体化し、コンクリート構造物を構築する。
【0020】
なお、屋上スラブ61の上にコンクリート部材30を設置するのではなく、屋上スラブ61を打設する前の配筋が済んだ状態で、スペーサなどを用いてコンクリート部材30を本来設置すべき高さの位置に設置し、貫通穴33のなかに生コンクリートを打設するとき、同時に屋上スラブ61を打設してもよい。
【0021】
設備基礎は、複数の設備基礎の上に架け渡した鉄骨などの上に設備を設置するため、上面の高さを一致させ、鉄骨が水平になるようにする必要がある。これに対し、屋上スラブ61には、排水などのため、傾斜が設けられている。このため、設備基礎の高さを、設置される位置に応じて変える必要がある。
上述したように、コンクリート部材30をサイトPCaで天地反転して製造することにより、同じ一つの型枠20で、高さの異なる複数のコンクリート部材30を製造することができる。
【0022】
以上のように、屋上に施工する設備機器の基礎コンクリートの施工方法に関し、屋上設備基礎コンクリートを、現場内で、サイトPCa化し、クレーンにて吊り上げて設置する。PCa制作時に、基礎の上下を逆にして施工することで、スラブ勾配による基礎高さの違いに対応できる。
まず、サイトPCaにて、基礎コンクリート施工する。次に、基礎をつり込む(天地回転させる)。そして、スラブコンクリートの上に基礎を据え付ける。最後に、基礎中(中央部)のコンクリートを打設する。
PCaにすることで、工程が短縮できる。逆さにしてコンクリートを打設することで、天端の押さえが不要となる。打設高さを要請できるので、型枠が転用可能となる。逆さにすることで、床勾配による基礎高さの変更に対応できる。ハト小屋にも応用できる。スラブコンクリート打設前に据付でもよい。
屋上設備基礎を作業所内でPCa化する。屋上床勾配により基礎高さが異なるため、天地を逆にして基礎を作成する。その後、躯体に吊り用インサートを打ち込む。そして、回転治具を使用して回転させる。この状態で屋上へ揚重し、セットする。屋上にセットした後、中央部部分にコンクリートを充填する。なお、アンカーセットのある場合は、打設前にセットする。
下部躯体工事中に、地上にて屋上基礎をPC化して作成するので、鉄骨建方中にパラペットPC・設備基礎躯体を施工でき、工程を短縮できる。
上スラブは勾配がついているため、場所ごとに基礎の高さも変わるので、設計上の高さにできるよう天地を逆さまにして作成する。
地上作業なので、鉄筋・型枠資材の揚重回数が減り、工期を短縮できる。地上作業なので、作業員が屋上まで往復する時間が省け、効率化できる。材料が飛散するリスクを低減できる。型枠解体も地上で行うので、安全であり、資材揚重が不要になる。
回転治具を使用し、インパクトで取付け、取外しする。インパクトを使用するので、PCセットの時間を短縮できる。
【0023】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例である。本発明は、これに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することなく様々に修正し、変更し、追加し、又は除去したものを含む。これは、以上の説明から当業者に容易に理解することができる。
【符号の説明】
【0024】
10 施工方法、12 製造工程、14 揚重工程、16 設置工程、18 打設工程、20 型枠、21 天面型枠、22 外側型枠、23 内側型枠、30 コンクリート部材、31 筒部、32 鍔部、33 貫通穴、41,42 回転治具、51,52 ワイヤ、61 屋上スラブ、62 差し筋。