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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118304
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
G01N21/84 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021190
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】517038051
【氏名又は名称】株式会社HACARUS
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 理王
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AC19
2G051BB01
2G051CA04
2G051CD06
2G051DA06
2G051DA08
(57)【要約】
【課題】
本発明は、少量多品種に対応できる検査装置および検査方法を提供することである。
【解決手段】
検査装置100は、撮像装置220と、照明装置210と、撮像装置220および照明装置210をアーム205で保持するアーム駆動装置200と、被検査体を鉛直軸回転の移動を可能に保持する保持装置300と、アーム駆動装置200および保持装置300を収納可能な筐体500と、筐体500を支持しつつ移動可能な移動装置600と、撮像装置220、照明装置210、アーム駆動装置200、および保持装置300へ電力を供給する単一電力供給部400と、を含むものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置と、
照明装置と、
前記撮像装置および前記照明装置をアームで保持するアーム駆動装置と、
被検査体を鉛直軸に沿って回転可能に保持する保持装置と
前記アーム駆動装置および前記保持装置を収納可能な筐体と、
前記筐体を支持しつつ移動可能な移動装置と、
前記撮像装置、前記照明装置、前記アーム駆動装置、および前記保持装置へ電力を供給する単一電力供給部と、を含む、検査装置。
【請求項2】
保持部をさらに含み、
前記アーム駆動装置は、前記保持部の中央部を支持し、
前記保持部の一端側に前記撮像装置が設けられ、他端側に前記照明装置が設けられ、
前記保持装置は、前記被検査体を保持しつつ、鉛直方向に上下移動可能である、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記保持部は、樹脂製であり、前記撮像装置は、焦点距離が20mm以下であり、前記照明装置は、全灯または所定の割合の点灯が可能な点灯システムを有する、請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記筐体は、枠体構造からなり、前記単一電力供給部は、単相100ボルトまたは単相200ボルトである、請求項1から3のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記移動装置は、前記筐体の下部に配置され、かつ無人搬送機能、自動走行機能、所定位置で移動しないための制動機能、所定位置へ移動するための移動機能の少なくとも1つを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記筐体は、さらにスプリングバランサを含み、
前記スプリングバランサは、前記撮像装置および前記照明装置の配線を保持する、請求項1から5のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
さらに被検査体受取装置を含み、
前記被検査体受取装置は、検査前の前記被検査体を前記保持装置に移動させるとともに、検査後の前記被検査体を取り出す、請求項1から6のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項8】
移動装置を備えた筐体内に被検査体を撮像する撮像装置、前記被検査体に照射する照明装置、前記撮像装置および前記照明装置を保持しつつ移動させるアーム駆動装置、前記被検査体を保持する保持装置、および各装置に電力を供給する単一電力供給部を備え、前記被検査体を検査する検査方法であって、
前記筐体を前記移動装置により移動する移動工程と、
前記撮像装置および前記照明装置を前記アーム駆動装置で保持しつつ、前記被検査体の全方向から発光および撮像する発光撮像工程と、
前記保持装置により前記被検査体を保持しつつ鉛直軸周りに回転させる回転移動工程と、を含む、検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の検査を円滑に実施するための検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2021-67592号公報)には、空間的制約を考慮した上で、漏れなく被検査物を検査可能な検査システムが開示されている。
特許文献1に記載の検査システムは、被検査物を検査する検査システムであって、撮像装置と、回転テーブルとを備え、前記撮像装置は、カメラと、駆動機構とを備え、 前記カメラは、前記駆動機構に設けられ、前記被検査物を異なる視点及び視線で撮影するように前記駆動機構によって移動可能に構成され、前記回転テーブルは、前記被検査物を載置して回転可能に構成されるものである。
【0003】
特許文献2(特開2019-82333号公報)には、異常の判別精度を高めた検査装置が開示されている。
特許文献2に記載の検査装置は、 所定のパターンを有する照明光で被検物を照明する照明部と、前記照明部に照明された前記被検物の表面で前記照明光が鏡面反射して形成される前記パターンの鏡像を撮像する撮像部とを備え、前記撮像部は、前記被検物の表面に対して合焦して、前記パターンの鏡像を撮像するものである。
【0004】
特許文献3(特開2019-158553号公報)には、検査対象物と撮像装置との位置関係を保った状態でその他の撮像条件だけを変えながら検査対象物の画像を複数取得する必要がある画像検査において、撮像装置に対する検査対象物の位置を変化させたままの状態で撮像を可能にする技術が開示されている。
特許文献3に記載の画像検査装置は、検査対象物を画像で検査する画像検査装置であって、前記検査対象物を撮像する撮像手段と、前記撮像手段に対する前記検査対象物の位置を周期的に相対変化させる変更手段と、前記相対変化によって周期的に繰り返される、前記撮像手段に対し前記検査対象物が所定の位置となる複数のタイミングで、撮像条件の相異なる複数の画像が取得されるように前記撮像手段に前記検査対象物を撮像させる制御手段と、を備えるものである。
【0005】
特許文献4(特開2016-38204号公報)には、測定死角を低減する内面形状検査用のセンサユニット及び内面形状検査装置が開示されている。
特許文献4に記載の センサユニットは、検査対象物に形成された穴の内面形状検査用のセンサユニットであって、平行リングレーザ光を出射する平行リングレーザ光生成部と、前記平行リングレーザ光を反射するハーフミラーユニットと、前記ハーフミラーユニットからの前記平行リングレーザ光を一端から入射し他端に向けて導光し、前記穴の内面からの反射光を前記他端から取り込み、前記ハーフミラーユニットに出射する導光部と、前記ハーフミラーユニットを透過した前記反射光を入射する撮像部とを備える。
【0006】
特許文献5(特開2017-003415号公報)には、1つの光源を用いた光切断法により被検体の表面の検査を行う場合に比較して、被検体の表面の欠陥を精度良く検出することができる検査装置、検査方法、及び検査プログラムが開示されている。
特許文献5に記載の検査装置は、被検体の表面が移動する一方向の該表面内の交差方向に帯状に延び、該一方向に並んだ2つの照射領域に光を個別に照射し、かつ該一方向に隣り合って配置された2つの光源と、該2つの照射領域の間又は2つの照射領域が重なる領域を撮像する撮像部と、該表面の移動中に、該2つの光源を交互に点灯させて一方又は他方の光源が各々点灯された状態で、該撮像部で各々得られた画像の差画像を生成する生成部と、を備えたものである。
【0007】
特許文献6(特開2013-160531号公報)には、検査対象物体の外形の欠陥を高精度に検査する検査装置が開示されている。
特許文献6に記載の検査装置は、 検査対象物体を撮像して、検査対象物体の検査部位に相当する画像領域である検査領域が含まれる画像データを生成する撮像部と、画像データに含まれる各画素の画素値を平滑化して、平滑画像データを生成する平滑部と、画像データの画素と、当該画素に対応する平滑画像データの画素の画素値の差分を画素ごとに求めて、差分画像データを生成する差分部と、検査部位の検査基準としての基準画像データと差分画像データとの類似度に基づいて、検査対象物体が良品か否かを判定する判定部とを備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-67592号公報
【特許文献2】特開2019-82333号公報
【特許文献3】特開2019-158553号公報
【特許文献4】特開2016-38204号公報
【特許文献5】特開2017-003415号公報
【特許文献6】特開2013-160531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
検査装置においては、種々の研究開発が進められており、大型の検査装置が検査システムとして固定配置されていることが多い。しかしながら、少量多品種に対応した工場等においては、検査システムを導入する費用が多額となるため、人力による検査が利用されている。これらの少量多品種等の生産現場においても自動化の要望が高まってきている現状がある。また、コロナ禍による人材不足と共により自動化のニーズが高まってきている。
【0010】
本発明の主な目的は、少量多品種に対応できる検査装置および検査方法を提供することである。
本発明の他の目的は、装置自体が移動可能であり、少量多品種に対応できる検査装置および検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)
一局面に従う検査装置は、撮像装置と、照明装置と、撮像装置および照明装置をアームで保持するアーム駆動装置と、被検査体を鉛直軸に沿って回転可能に保持する保持装置と、アーム駆動装置および保持装置を収納可能な筐体と、筐体を支持しつつ移動可能な移動装置と、撮像装置、照明装置、アーム駆動装置、および保持装置へ電力を供給する単一電力供給部と、を含むものである。
【0012】
この場合、筐体内の撮像装置、照明装置、アーム駆動装置および保持装置が移動装置により容易に移動できる。その結果、少量多品種の検査を行う場合に、検査装置を容易に移動させることができる。また、被検査体を鉛直軸周りに回転移動させつつ、アーム駆動装置に取り付けられた撮像装置で撮像し、検査を行うことができる。その結果、少量多品種の製品に対して、全方向からの検査を確実に実施することができる。特に、アーム駆動装置を大型化することでアームの長さを延長させることができるが、その場合、検査装置自体の大きさが大きくなり移動が困難となる。本発明においては、アーム駆動装置と保持装置とを設けることで、アーム駆動装置の小型化、結果として検査装置の小型化と移動可能性を高めている。
また、すべての装置が単一電力で駆動可能であるため、移動の場合にも電力の確保が容易である。
【0013】
(2)
第2の発明にかかる検査装置は、一局面に従う検査装置において、保持部をさらに含み、アーム駆動装置は、保持部の中央部を支持し、保持部の一端側に撮像装置が設けられ、他端側に照明装置が設けられ、保持装置は、被検査体を保持しつつ、鉛直方向に上下移動可能であってもよい。
【0014】
この場合、保持装置は、鉛直方向に上下移動可能であり、アーム駆動装置は保持部の中央部を支持し、保持部の一端側に撮像装置が設けられ、他端側に照明装置が設けられているので、照明装置の重量と、撮像装置の重量とがバランスよく配置される。その結果、カウンターウェイト効果が生じて、アーム駆動装置のアームが動作した場合に、アームに加わるモーメントを減少させることができる。その結果、アーム駆動装置の小型化を図ることができる。
【0015】
(3)
第3の発明にかかる検査装置は、第2の発明にかかる検査装置において、保持部は、樹脂製であり、撮像装置は、焦点距離が20mm以下であり、照明装置は、全灯または所定の割合の点灯が可能な点灯システムを有してもよい。
【0016】
この場合、保持部は、樹脂製であるため、アーム駆動装置の小型化を図ることができる。また、樹脂は、UV硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、形状保持樹脂、3Dプリンターを用いた積層造形による樹脂、その他任意の樹脂からなってもよい。さらに、保持部は、単なる板形状を組み合わせたものであってもよく、トポロジー最適化手法による形状であってもよい。
また、撮像装置は、焦点距離が20mm以下であるため、小型の撮像装置を用いることができ、重量を低減させるとともに、検査装置の小型化を図ることができる。すなわち、焦点距離の短いレンズを用いることで、対象物までの距離を短く設定することができる。その結果、ロボットとワークの距離を短くできるため、結果として検査装置の筐体サイズが水平方向にも垂直方向にも小さくすることができる。さらに、焦点距離を短くすることで、アーム駆動装置のアームの距離も短く設定できるため、結果としてアーム駆動装置自体の小型化も可能になり、検査装置自体のさらなる小型化、軽量化が可能になる。
さらに、照明装置は、全灯または所定の割合の点灯が可能であるので、異なる所定の割合で複数回発光させて光の照射方向を変えて撮像することで、被検査体の不良を確実に検出することができる。
【0017】
(4)
第4の発明にかかる検査装置は、一局面から第3の発明にかかる検査装置において、筐体は、枠体構造からなり、単一電力供給部は、単相100ボルトまたは単相200ボルトであってもよい。
【0018】
この場合、筐体が枠体構造からなるため、移動装置の小型化を図ることができる。また、単一電力供給部は、単相100ボルトまたは単相200ボルトのいずれか一方からなるため、電源の確保が容易である。また、単相100ボルト仕様の場合、筐体内に設けられたすべての装置の小型化を図ることができる。
【0019】
(5)
第5の発明にかかる検査装置は、一局面から第4の発明にかかる検査装置において、移動装置は、筐体の下部に配置され、かつ無人搬送機能、自動走行機能、所定位置で移動しないための制動機能、所定位置へ移動するための移動機能の少なくとも1つを含んでもよい。
【0020】
この場合、移動装置は、筐体の下部に配置されるので、筐体全体を容易に移動させることができる。特に自動走行機能または無人搬送機能を有することで、スケジュールに応じて自動で走行し、検査場所へ移動することができる。また、これらに限定されず、キャスターまたは人力による台車で移動可能にしてもよく、衝突防止装置等をさらに兼ね備えていてもよい。また、移動装置は、検査を実施している場合に意図しない移動を抑制するため、制動機能を有することがより好ましい。
【0021】
(6)
第6の発明にかかる検査装置は、一局面から第5の発明にかかる検査装置において、筐体は、さらにスプリングバランサを含み、スプリングバランサは、撮像装置および照明装置の配線を保持してもよい。
【0022】
この場合、スプリングバランサを設けることで、撮像装置および照明装置から延在するケーブルの重量をアーム駆動装置に負担させることなく、スプリングバランサで負担させることができる。その結果、検査装置の小型化を図ることができる。
【0023】
(7)
第7の発明にかかる検査装置は、一局面から第6の発明にかかる検査装置において、さらに被検査体受取装置を含み、被検査体受取装置は、検査前の被検査体を保持装置に移動させるとともに、検査後の被検査体を取り出してもよい。
【0024】
この場合、少量多品種の個々の検査場所に被検査体受取装置を配置させることで、検査装置を移動させて検査を実施することができる。また、被検査体受取装置により検査前と検査後に自動に被検査体を取り出すことができるので人手を減らすことができる。
【0025】
(8)
他の局面に従う検査方法は、移動装置を備えた筐体内に被検査体を撮像する撮像装置、被検査体に照射する照明装置、撮像装置および照明装置を保持しつつ移動させるアーム駆動装置、被検査体を保持する保持装置、および各装置に電力を供給する単一電力供給部を備え、被検査体を検査する検査方法であって、筐体を移動装置により移動する移動工程と、撮像装置および照明装置をアーム駆動装置で保持しつつ、被検査体の全方向から発光および撮像する発光撮像工程と、保持装置により被検査体を保持しつつ鉛直軸周りに回転させる回転移動工程と、を含むものである。
【0026】
この場合、筐体内の撮像装置、照明装置、アーム駆動装置および保持装置が移動装置により容易に移動できる。その結果、少量多品種の検査を行う場合に、検査装置を容易に移動させることができる。また、被検査体を鉛直軸周りに回転移動させつつ、アーム駆動装置に取り付けられた撮像装置で撮像し、検査を行うことができる。その結果、少量多品種の製品に対して、全方向からの検査を確実に実施することができる。特に、アーム駆動装置を大型化することでアームの長さを延長させることができるが、その場合、検査装置自体の大きさが大きくなり移動が困難となる。本発明においては、アーム駆動装置と保持装置とを設けることで、アーム駆動装置の小型化、結果として検査装置の小型化と移動可能性を高めている。
また、すべての装置が単一電力で駆動可能であるため、移動の際にも電力の確保が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本実施の形態にかかる検査装置の構成の一例を示す模式的ブロック図である。
図2】アーム駆動装置のアームの先端の一例を示す模式的斜視図である。
図3】アーム駆動装置のアームの先端の一例を示す模式的側面図である。
図4】検査装置の一例を示す内部構造側面図である。
図5】検査装置の一例を示す内部構造斜視図である。
図6】本実施の形態における検査装置の制御の一例を示すフローチャートである。
図7】移動装置を自律型協働ロボット(AMR)にした場合の検査装置の一例を示す模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
【0029】
[実施形態]
図1は、本実施の形態にかかる検査装置100の構成の一例を示す模式的ブロック図であり、図2は、アーム駆動装置200のアーム205の先端206の一例を示す模式的斜視図であり、図3は、アーム駆動装置200のアーム205の先端206の一例を示す模式的側面図である。
【0030】
(検査装置100)
図1に示すように、検査装置100は、主にアーム駆動装置200、保持装置300、単一電力供給部400、筐体500および移動装置600を含む。
【0031】
(アーム駆動装置200)
本実施の形態においては、アーム駆動装置200は、アーム205長が350mm以下の6軸式協働ロボット(ユニバーサルロボット)を用いた。また、アーム駆動装置200のアーム205の先端206には、後述する照明装置210、撮像装置220および保持部250が設けられている。
アーム駆動装置200は、6軸式協働ロボットの機能により照明装置210および撮像装置220を用いて、保持装置300に保持された被検査体の検査を実施できるものである。
本実施の形態においては、アーム駆動装置200として、デンソーウェーブ社製の人協働ロボットCVR038A1を用いた。本実施の形態にかかるアーム駆動装置200の可搬重量は500グラムであり、本実施の形態においては、それを下回るように設計した。
【0032】
(照明装置210)
図2に示すように、本実施の形態に係る照明装置210は、内部にリング状に複数のLEDが配置されている。また、複数のLEDのうち所定の個数のLEDを個別に点灯させることができる。それにより、リング状の円周上を8区分し、それぞれ8分の一ずつ点灯させることができる。その結果、被検査体に対して異なる方向から光を照射することができる。本実施の形態における照明装置210の重量は、305グラムである。
本実施の形態においては、照明装置210として、イマック社製のリング照明IMDR-130DWHV-8chを用いた。
【0033】
(撮像装置220)
次いで、撮像装置220は、500万画素のカメラを用いた。さらに、撮像装置220のレンズは、焦点距離20mm以下が好ましい。また、本実施の形態においては、焦点距離8mmのレンズを用いた。撮像装置220は、照明装置210の発光に同期して被検査体の撮像を実施するものである。本実施の形態における撮像装置220の重量は、120グラムである。
なお、本実施の形態においては、照明装置210および撮像装置220をそれぞれ個別となっているものを使用したが、これに限定されず、照明装置210と一体になった撮像装置220を用いてもよい。
本実施の形態においては、撮像装置220として、オムロン社製のSTC-MCS500POEを用いた。
【0034】
(保持装置300)
また、保持装置300は、被検査体を鉛直軸周りに回転させることができるとともに、鉛直上下方向に駆動可能な機能を有するものを用いた。すなわち、保持装置300に保持された被検査体を回転させつつ、アーム駆動装置200により移動される撮像装置220等で被検査体の上方から検査され、保持装置300が鉛直上方向に駆動することにより、被検査体が持ち上げられ、被検査体の下方(裏面等)に対しても撮像装置220等で検査することができる。
また、保持装置300は、後述する被検査体受取装置910、920、930等により、検査前の被検査体を自動的に受け取り、検査後の被検査体を排出することができるものである。なお、保持装置300は、被検査体受取装置910、920、930に限定されず、人力により被検査体を受け取ってもよい。
本実施の形態においては、保持装置300の主な構成として、鉛直上下方向および鉛直軸周りに回転可能な電動アクチュエータおよび電動アクチュエータを動作させるためのコントローラーを用いた。
【0035】
(単一電力供給部400)
次に、図1に示すように、単一電力供給部400は、単相100ボルトの電力を受取り、DC24ボルト、DC12ボルトまたはDC5ボルトのいずれか1つに変換する装置である。なお、複数に変換する装置であってもよい。単一電力供給部400は、変換した直流電圧を、アーム駆動装置200、照明装置210、撮像装置220、保持装置300の全てに供給する。
なお、単一電力供給部400は、工場等において使用される単相200ボルトの電力を受取り、DC24ボルト、DC12ボルトまたはDC5ボルトのいずれかに変換する装置であってもよい。
本実施の形態にかかる検査装置100は、移動可能であるため、電力を受取る装置を単一電力供給部400の一つにすることで、容易に移動後の電源を獲得することができる。すなわち、ワンタッチで検査装置100へ電力を補給することができるというメリットを有する。
また、単一電力供給部400が、単相100ボルト対応の場合には、アーム駆動装置200、照明装置210、撮像装置220、保持装置300の全てを、単相200ボルト対応の場合と比較して、小型化することができる。
一方、単一電力供給部400が、単相200ボルト対応の場合には、アーム駆動装置200、保持装置300を、単相100ボルト対応の場合と比較して、大型化するとともに、被検査体の大きさが大きくても対応することができる。
また、図示していないが、単一電力供給部400は、筐体500の下方側に施設内における単相100ボルト電源に接続可能なコンセントケーブルを有してもよい。
【0036】
(筐体500)
本実施の形態に係る筐体500の外形は、高さが1600mm以下であり、幅750mm以下であり、奥行が900mm以下とした。また、筐体500は、軽量化のため、主に枠体で構成した。なお、本実施の形態においては、被検査体の受け取りまたは排出部以外の枠体に対して樹脂製のパネルを取り付けてもよい。
なお、本実施の形態においては、筐体500の外面に検査結果を収集するためのパーソナルコンピュータ等と接続可能なLANコネクタ、各装置の非常時にすべての機能を停止する緊急停止ボタン等を設けた。
【0037】
(移動装置600)
続いて、移動装置600は、コスト低減のために筐体500の下部にキャスターを配置することで対応した。さらに、本実施の形態にかかる移動装置600は、水平調整機能を有する。すなわち、検査装置100が水平状態を維持できるような機能を有する。なお、移動装置600としてキャスターの代わりに、無人搬送車(AGV)または自律型協働ロボット(AMR)を用いる例については後述する。
【0038】
(アーム205の先端部206)
また、本実施の形態においては、図1図2および図3に示すように、アーム駆動装置200が、アーム205の先端206に照明装置210、撮像装置220および保持部250を有する。図3に示すように、保持部250は、略T字形状の樹脂部材からなる。また、保持部250の一端側に照明装置210が設けられ、保持部250の他端側に撮像装置220が設けられる。保持部250は複数の孔を設けて軽量化されている。特に、保持部250は、ジェネレーティブデザインを用いた場合、23グラムであり、本実施の形態のT字形状の場合、49グラムまで重量を抑制している。また、ネジ等の固定具を含めて500グラム以内で実現していることが好ましい。
【0039】
(照明装置210、撮像装置220および保持部250の関係)
さらに、照明装置210および撮像装置220の間にアーム駆動装置200のアーム205の先端部206が固定される。図3に示すように、アーム205の先端206を基準にして、照明装置210の重心は距離L1の位置にあり、撮像装置220の重心位置は距離L2の位置にある。
また、照明装置210の重心からの力F21が下方向に加わり、撮像装置220の重心からの力F22が下方向に加わる。一方、アーム205の先端206の支持力F206が上方向に加わる。その結果、力F21と力F22とは、カウンターウェイトの関係となる。
本実施の形態においては、距離L1が27mmであり、距離L2が36mmである。また、後述するように、本実施の形態においては、照明装置210および撮像装置220は、いずれも軽量であるが、単相100ボルトからの電力に対応して動作可能なアーム駆動装置200により駆動されるため、駆動時の回転モーメントに耐え得る構造にする必要性がある。
【0040】
本実施の形態においては、駆動時の回転モーメントに耐え得る構造とするため、アーム205の先端206の支持位置に対して、保持部250を用いて保持部250の一端側に照明装置210の重心を配置し、他端側に撮像装置220の重心を配置する構造とした。その結果、アーム205の先端206に照明装置210および撮像装置220を配置した場合と比較して、回転モーメントを53%程度減少させることができた。なお、回転モーメントを40%以上、好ましくは、50%以上減少させることが好ましい。
なお、本実施の形態においては、図3および図4に示すように保持部250をT字状の部材を例示したが、これに限定されず、トポロジー最適化手法による形状であってもよい。すなわち、保持部250を三次元プリンターにより形成してもよい。
【0041】
(検査装置100の内部構造)
次に、図4は、検査装置100の一例を示す内部構造側面図であり、図5は、検査装置100の一例を示す内部構造斜視図である。
【0042】
図4および図5に示すように、筐体500は、直方体状で形成され、矩形状の骨組みで枠体が形成されている。また、筐体500の上部の枠体には、スプリングバランサ550が設けられている。
スプリングバランサ550は、撮像装置220、照明装置210およびアーム駆動装置200の配線を保持するために設けられている。ここで、スプリングバランサ550は、スプリングのトルク変化をテーパドラムにすることにより吊り下げ対象物である各配線の重量を保持する機構であり、アーム駆動装置200のアーム205が駆動した場合に照明装置210および撮像装置220の配線の重量をアーム205に加わらないようにするための装置である。
【0043】
その結果、アーム205に余分な力(配線の重量およびモーメント)が加わることなく、アーム駆動装置200がアーム205の先端206に設けられた照明装置210および撮像装置220を移動させることができる。
また、当該移動と同時に保持装置300が被検査体を鉛直上下方向に移動させ、かつ鉛直軸周りに回転させることができるので、撮像装置220による被検査体の撮像を容易に実施することができる。
具体的には、撮像装置220により一方向において数枚撮像されるが、当該数枚撮像する場合の、それぞれにおいて、照明装置210からの光の照射方向(当て方)を変化させることで、被検査体の検査を実施することができる。
【0044】
次に、図6は、本実施の形態における検査装置100の制御の一例を示すフローチャートである。
【0045】
図6に示すように、検査装置100は、まず電源ON/OFFにより電源をONする(ステップS1)。
次に、検査装置100は、異常が発生していないか確認する(ステップS2)。異常が発生していない場合、ステップS4の処理へ移行する。一方、異常が発生した場合には、異常がリセットされたか否かを判定し(ステップS3)、リセットされる前、ステップS1の処理からステップS3の処理を繰り返す。なお、所定回数繰り返しても異常がリセットされない場合には、電源をOFFさせるようにしてもよい。
【0046】
次に、図6に示すように、検査装置100は、原点復帰要求があった場合(ステップS4)、原点復帰を開始する(ステップS5。)一方、原点復帰要求がない場合には、ステップS7の処理へ移行する。
【0047】
原点復帰を開始した後、原点復帰が完了したか否かを判定し(ステップS6)、原点復帰していない、または原点復帰できないと判定した場合、検査装置100は、異常が発生したとして、ステップS2の処理に戻り、処理を繰り返す。
【0048】
一方、原点復帰したと判定した場合には、検査装置100は、検査のための保持装置300およびアーム駆動装置200が動作可能か否かを判定し(ステップS7)、動作可能であると判定した場合には、動作を開始する(ステップS8)。すなわち、後述する検査処理を実施する。
一方、検査のための保持装置300およびアーム駆動装置200が動作不可能であると判定した場合には、異常が発生したとして、ステップS2の処理に戻り、処理を繰り返す。
【0049】
最後に、検査装置100は、検査処理が終了した場合、動作を完了させる(ステップS9)。そして、検査装置100は、ステップS3の処理に戻り、処理を繰り返す。
一方、検査処理が終了しない、または終了できない場合には、動作が完了せず、異常が発生したとして、ステップS2の処理に戻り、処理を繰り返す。
【0050】
続いて、本実施の形態における検査方法の一例について説明を行う。まず初めに、被検査体に対して上面から照明装置210の光の照射を4回変化させて撮像し、保持装置300により鉛直軸周りに90度ずつ回転させる。撮像結果は、図示しないパーソナルコンピュータに送信され、傷または不具合の有無がチェックされる。なお、上記の角度と回数とは、撮像装置220による画素数、撮影範囲および焦点距離により任意に変更してもよい。
【0051】
続いて、保持装置300は、鉛直上方向に被検査体を上昇させる。そして、被検査体に対して下面から照明装置210の光の照射を4回変化させて撮像し、保持装置300保持装置300により鉛直軸周りに90度ずつ回転させる。
撮像結果は、図示しないパーソナルコンピュータに送信され、傷または不具合の有無がチェックされる。それらの結果を踏まえて被検査体が良品か不良品かの判断がなされる。
以上のような工程で、撮像装置220による撮像結果を基にして検査を実施することができる。
【0052】
次に、図7は、移動装置600を自律型協働ロボット(AMR)にした場合の検査装置100の一例を示す模式的説明図である。
【0053】
図7に示すように、所定の工場内において検査装置100を用いる場合について説明を行う。なお、本実施の形態においては、移動装置600が自律型協働ロボットであるとともに、バッテリ、蓄電池、発電機のいずれかを有しており、各装置に電力を供給することができる仕様である。
【0054】
まず、検査装置100は、自律型協働ロボット(AMR)により被検査体Aの検査場所に移動する。そして、被検査体受取装置910により被検査体Aが保持装置300へ受け渡される。検査装置100は、被検査体Aの検査を実施する。
次いで、被検査体Aの検査が終了した場合、被検査体受取装置910により保持装置300から被検査体Aが取り出される。検査前の被検査体Aが複数ある場合には、当該処理を繰り返す。当然ながら、被検査体受取装置910は、良品の被検査体Aと不良品の被検査体Aとを、それぞれ取り出した後、異なる位置に収納する。
【0055】
次に、検査装置100は、自律型協働ロボット(AMR)により被検査体Aの検査場所から被検査体Bの検査場所へ自動的に移動する。
そして、被検査体受取装置920により被検査体Bが保持装置300へ受け渡される。検査装置100は、被検査体Bの検査を実施する。
次いで、被検査体Bの検査が終了した場合、被検査体受取装置920により保持装置300から被検査体Bが取り出される。検査前の被検査体Bが複数ある場合には、当該処理を繰り返す。当然ながら、被検査体受取装置920は、良品の被検査体Bと不良品の被検査体Bとを、それぞれ取り出した後、異なる位置に収納する。
【0056】
次いで、検査装置100は、自律型協働ロボット(AMR)により被検査体Bの検査場所から被検査体Cの検査場所へ自動的に移動する。
そして、被検査体受取装置930により被検査体Cが保持装置300へ受け渡される。検査装置100は、被検査体Cの検査を実施する。
次いで、被検査体Cの検査が終了した場合、被検査体受取装置930により保持装置300から被検査体Cが取り出される。検査前の被検査体Cが複数ある場合には、当該処理を繰り返す。同じく、被検査体受取装置930は、良品の被検査体Cと不良品の被検査体Cとを、それぞれ取り出した後、異なる位置に収納する。
【0057】
このように、移動装置600が、無人搬送車(AGV)または自律型協働ロボット(AMR)により構成される場合には、被検査体A、B、Cの検査個数または所定の検査データを受領した場合に、次の被検査体の検査場所に移動するプログラムを移動装置600に入力させておいてもよい。また、本実施の形態においては、被検査体A、B、Cがベルトコンベアで搬送され、被検査体受取装置により検査装置100の保持装置300と受け取りを行うようにしてもよい。
【0058】
以上のように、本発明にかかる検査装置100は、少量多品種に対応することができる。また、移動可能な検査装置100は、人力による場合、キャスター等の移動装置600により容易に移動できるとともに、単一電力供給部400により容易に検査を実施することができる。さらに、移動可能な検査装置100は、自律型協働ロボット(AMR)または無人搬送車(AGV)による場合、人力が不要となり、人的資材を有効に使用することができる。
【0059】
また、本発明にかかる検査装置100は、被検査体の汚れ、傷、異物、欠損、部品等の取り付け位置または部品の傾きまたは部品の向き、へこみ、銘板、欠け、塗装むら、等任意の不良を検査することができる。特に検査装置100は、少量多品種で形状が複雑な被検査体の場合でも容易に対応することができる。
【0060】
本発明において、検査装置100が「検査装置」に相当し、撮像装置220が「撮像装置」に相当し、照明装置210が「照明装置」に相当し、アーム205が「アーム」に相当し、アーム駆動装置200が「アーム駆動装置」に相当し、被検査体A、B、Cが「被検査体」に相当し、保持装置300が「保持装置」に相当し、筐体500が「筐体」に相当し、移動装置600が「移動装置」に相当し、単一電力供給部400が「単一電力供給部」に相当し、保持部250が「保持部」に相当し、スプリングバランサ550が「スプリングバランサ」に相当し、被検査体受取装置910、920、930が「被検査体受取装置」に相当し、検査装置100を使用する方法が「検査方法」に相当し、移動装置600が移動する工程が「移動工程」に相当し、照明装置210および撮像装置220を用いる方法が「発光撮像工程」に相当し、保持装置300が被検査体を保持しつつ鉛直軸周りに回転させる工程が、「回転移動工程」に相当する。
【0061】
本発明の好ましい一実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0062】
100 検査装置
200 アーム駆動装置
205 アーム
210 照明装置
220 撮像装置
250 保持部
300 保持装置
400 単一電力供給部
500 筐体
600 移動装置
550 スプリングバランサ
910、920、930 被検査体受取装置
A、B、C 被検査体


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7