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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118318
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】射出装置および射出発泡成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20230818BHJP
   B29C 45/48 20060101ALI20230818BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20230818BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C45/48
B29C45/00
B29C44/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021218
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】苅谷 俊彦
【テーマコード(参考)】
4F206
4F214
【Fターム(参考)】
4F206AB02
4F206AP13
4F206AR14
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM04
4F206JQ16
4F206JQ26
4F214AB02
4F214AP13
4F214AR14
4F214UA08
4F214UB01
4F214UM16
4F214UM33
4F214UM90
(57)【要約】
【課題】可塑化能力が小さくなるのを抑えることができる発泡成形用の射出装置を提供することこと。
【解決手段】本発明の発泡成形用の射出装置1は、射出ノズル18が設けられる加熱シリンダ10と、加熱シリンダ10の内部に、中心軸Cを中心にして回転が可能で、かつ、中心軸Cに沿って下流側Lへの前進および上流側Uへの後退が可能に設けられるスクリュ20と、加熱シリンダ10の内部において溶融樹脂Mに注入される発泡ガスG1を加熱シリンダ10の内部に供給する第1ガス供給路53と、上流側Uへの溶融樹脂Mの逆流に対向するカウンタガスG2を加熱シリンダ10の内部に供給する第2ガス供給路55と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出ノズルが設けられる加熱シリンダと、
前記加熱シリンダの内部に、中心軸の周りに回転が可能で、かつ、前記中心軸に沿って下流側への前進および上流側への後退が可能に設けられるスクリュと、
前記加熱シリンダの内部において溶融樹脂に注入される発泡ガスを前記加熱シリンダの内部に供給する第1ガス供給路と、
上流側への前記溶融樹脂の逆流に対向するカウンタガスを前記加熱シリンダの内部に供給する第2ガス供給路と、
を備えることを特徴とする発泡成形用の射出装置。
【請求項2】
樹脂原料を保持するとともに、前記樹脂原料が原料通路を通って前記加熱シリンダの内部に供給される原料ホッパと、
前記原料通路を解放しまたは閉鎖する遮断機構と、
を備える請求項1に記載の発泡成形用の射出装置。

【請求項3】
前記加熱シリンダにおける上流側の端部を気密に封止するシール機構を備える、
請求項1または請求項2に記載の発泡成形用の射出装置。
【請求項4】
前記第2ガス供給路による前記カウンタガスの供給口は、
前記遮断機構と前記加熱シリンダの間の前記原料通路に設けられる、
請求項2に記載の発泡成形用の射出装置。
【請求項5】
前記第2ガス供給路による前記カウンタガスの供給口は、
前記シール機構に設けられる、
請求項3に記載の発泡成形用の射出装置。
【請求項6】
前記第2ガス供給路による前記カウンタガスの供給口は、
前記シール機構の下流側に設けられる、
請求項3または請求項5に記載の発泡成形用の射出装置。
【請求項7】
前記シール機構による封止部位からの前記カウンタガスの漏洩を抑える遮蔽ガスを供給する第3ガス供給路を備える、
請求項3に記載の発泡成形用の射出装置。
【請求項8】
前記遮断機構は、
前記遮断機構を通って前記加熱シリンダに供給される前記樹脂原料の供給量を計測する機能を備える、
請求項2または請求項4に記載の発泡成形用の射出装置。
【請求項9】
前記第1ガス供給路からの前記発泡ガスと前記第2ガス供給路からの前記カウンタガスは、互いに独立して制御される、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の発泡成形用の射出装置。
【請求項10】
前記第2ガス供給路からの前記カウンタガスは、
前記スクリュの回転数に基づいて供給される、
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の発泡成形用の射出装置。
【請求項11】
加熱シリンダの内部に供給される樹脂原料を加熱して溶融樹脂に溶融しながらスクリュの回転推進力により上流側から下流側に向けて搬送し、
この搬送の過程において、前記溶融樹脂に発泡ガスを注入、溶解させる射出発泡成形方法であって、
前記溶融樹脂の上流側への逆流に対向するカウンタガスを前記加熱シリンダの内部に供給する、
ことを特徴とする射出発泡成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融樹脂に発泡剤としての不活性ガスを注入して射出成形して発泡成形品を得る射出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多数の微細な気泡を含む発泡成形品は、軽量であるにも関わらず強度にも優れているため、需要が多い。射出成形により発泡成形品を得るために用いられる発泡剤は、化学発泡剤と物理発泡剤がある。化学発泡剤としては、例えばアゾジカルボン酸アミドのように熱により分解して気体を発生する物質が用いられる。物理発泡剤は、例えば窒素、二酸化炭素等の不活性ガスが用いられる。不活性ガスからなる物理発泡剤は高圧かつ高温で樹脂に注入されるので浸透力が強く、得られる発泡成形品において発泡ムラが発生しにくい。
【0003】
物理発泡剤としての不活性ガスを用いる発泡成形において、特許文献1は、樹脂が圧縮されるようになっている第1の圧縮区間と、樹脂の圧力が低下するようになっている飢餓区間と、樹脂が圧縮されるようになっている第2の圧縮区間とが形成され飢餓区間にガスが注入されるようになっている射出成形機のスクリュを開示する。特許文献1が開示するスクリュは、第1の圧縮区間に対応する部分には、メインフライトとメインフライトよりリード角が大きいサブフライトの組み合わせからなるバリアフライトが形成されるともに、バリアフライトの前方に所定幅のリング状を呈するダムフライトが形成されている。特許文献1のスクリュによれば、成形サイクル中またはメンテナンス等によるスクリュの回転停止中においても加熱シリンダ内をガスがスクリュの上流側に向かって流れるまたは漏洩するおそれがない、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-032547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のスクリュは、バリアフライトとダムフライトを溶融樹脂の流動方向(搬送方向)に冗長的(直列)に配置している。バリアフライトとダムフライトのシール機能はクリアランスシールであることから、溶融樹脂は搬送過程においてバリアフライト部とダムフライト部の狭い隙間を通ることになる。つまり上記の従来技術のスクリュでは、バリアフライト部とダムフライト部で大きな流動抵抗を受けることになるので、可塑化能力が小さくなってしまう。
【0006】
以上より、本発明は、可塑化能力が小さくなるのを抑えることができる発泡成形用の射出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発泡成形用の射出装置は、射出ノズルが設けられる加熱シリンダと、加熱シリンダの内部に、中心軸の周りに回転が可能で、かつ、中心軸に沿って下流側への前進および上流側への後退が可能に設けられるスクリュと、加熱シリンダの内部において溶融樹脂に注入される発泡ガスを加熱シリンダの内部に供給する第1ガス供給路と、上流側への溶融樹脂の逆流に対向するカウンタガスを加熱シリンダの内部に供給する第2ガス供給路と、を備える。
【0008】
本発明の発泡成形用の射出装置において、好ましくは、樹脂原料を保持するとともに、樹脂原料が原料通路を通って加熱シリンダの内部に供給される原料ホッパと、原料通路を解放しまたは閉鎖する遮断機構と、を備える。
【0009】
本発明の発泡成形用の射出装置において、好ましくは、加熱シリンダにおける上流側の端部を気密に封止するシール機構を備える。
【0010】
本発明の発泡成形用の射出装置において、好ましくは、第2ガス供給路によるカウンタガスの供給口は、遮断機構と加熱シリンダの間の原料通路に設けられる。
【0011】
本発明の発泡成形用の射出装置において、好ましくは、第2ガス供給路によるカウンタガスの供給口は、シール機構に設けられる。
【0012】
本発明の発泡成形用の射出装置において、好ましくは、第2ガス供給路によるカウンタガスの供給口は、シール機構の下流側に設けられる。
【0013】
本発明の発泡成形用の射出装置において、好ましくは、シール機構による封止部位からのカウンタガスの漏洩を抑える遮蔽ガスを供給する第3ガス供給路を備える。
【0014】
本発明の発泡成形用の射出装置において、好ましくは、遮断機構は、遮断機構を通って加熱シリンダに供給される樹脂原料の供給量を計測する機能を備える。
【0015】
本発明の発泡成形用の射出装置において、好ましくは、第1ガス供給路からの発泡ガスと第2ガス供給路からのカウンタガスは、互いに独立して制御される。
【0016】
本発明の発泡成形用の射出装置において、好ましくは、第2ガス供給路からのカウンタガスは、スクリュの回転数に基づいて供給される。
【0017】
本発明は、加熱シリンダの内部に供給される樹脂原料樹脂を加熱して溶融樹脂に溶融しながらスクリュの回転推進力により上流側から下流側に向けて搬送し、この搬送の過程において、溶融樹脂に発泡ガスを注入、溶解させる射出発泡成形方法を提案する。この提案は、溶融樹脂の上流側への逆流に対向するカウンタガスを加熱シリンダの内部に供給する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上流側への溶融樹脂の逆流に対向するカウンタガスを加熱シリンダの内部に供給することにより、可塑化能力が小さくなるのを抑えることができる二つのステージを備える射出装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る射出装置の正面断面図である。
図2】第1実施形態に係る射出装置のスクリュの仕様を説明する図である。
図3】第1実施形態に係る射出装置を用いる可塑化工程から射出工程までを示す図である。
図4】第1実施形態に係る射出装置の作用を説明する図である。
図5】第1実施形態に係る射出装置の発泡ガスG1とカウンタガスG2の供給パターンを示す図である。
図6】(a)および(b)は、第1実施形態に係る射出装置の変形例を示す図である。
図7】第2実施形態に係る射出装置の正面断面図である。
図8】第2実施形態に係る射出装置の発泡ガスG1、カウンタガスG2および遮蔽ガスG3の供給パターンを示す図である。
図9】第2実施形態に係る射出装置の変形例を示す図である。
図10】実施形態に係る射出装置に用いられる他のスクリュを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態および第2実施形態を含んでおり、いずれも発泡成形品を得るためのものであり、かつ、可塑化能力が小さくなるのを抑えることができる二つのステージを備える射出装置を提供する。
【0021】
〔第1実施形態:図1図6
図1図2および図3を参照して、第1実施形態に係る射出装置1の概略構成を説明する。
図1に示されるように、発泡成形用の射出装置1は、内部が中空な加熱シリンダ10と、加熱シリンダ10の内周面とスクリュ20の外表面の間の空間である処理領域11において中心軸Cの周り回転運動および中心軸Cに沿って往復移動が可能に設けられているスクリュ20と、を備えている。加えて、射出装置1は、加熱シリンダ10の内部に発泡成形のための例えば不活性ガスを供給するガス供給機構50を備えている。
なお、射出装置1において、図1に示されるように樹脂の流れる向きに対応して、下流側L、上流側Uが特定される。下流側Lおよび上流側Uは相対的な意味を含んでいる。
【0022】
加熱シリンダ10には、その上流側Uに原料ホッパ13が設けられる。原料ホッパ13には射出成形の樹脂原料である樹脂ペレットPが蓄えられており、樹脂ペレットPは原料ホッパ13から加熱シリンダ10の内外を貫通する原料通路14を通って処理領域11に供給される。
加熱シリンダ10には、原料ホッパ13が設けられる位置よりも下流側Lの側に、第1ガス供給路53の第1ノズル53Bが設けられる。第1ノズル53Bは加熱シリンダ10の内外を貫通しており、ガス供給源51から供給される例えば不活性ガスIGからなる発泡ガスG1は、第1ガス供給路53を通って処理領域11に至る。
加熱シリンダ10の最も下流側Lには、射出ノズル18が設けられる。加熱シリンダ10の内部で可塑化された溶融樹脂は、この射出ノズル18を通って、図示が省略される金型のキャビティに充填される。
加熱シリンダ10の外周には、樹脂ペレットPの溶融のための複数のヒータ19が設けられている。加熱シリンダ10の外側には、ヒータ19の他の構成を適用し、あるいは置換することを妨げない。
【0023】
[スクリュ20:図1図2
次に、スクリュ20について図1および図2を参照して説明する。
スクリュ20はその回転推進力により樹脂ペレットPを上流側Uから下流側Lに向けて搬送する。
スクリュ20は、上流側Uに設けられる第1ステージ30と第1ステージ30に連なり下流側Lに設けられる第2ステージ40とを有している。第1ステージ30は、樹脂ペレットPを溶融して溶融樹脂Mを生成するのに加えて、生成された溶融樹脂Mを第2ステージ40に向けて搬送する。第2ステージ40は、第1ステージ30から供給される溶融樹脂Mに発泡ガスG1を注入するとともに分散させる。
【0024】
[第1ステージ30:図1
第1ステージ30は、図1に示すように、一例として上流側Uから順に第1領域30A、第2領域30Bおよび第3領域30Cの3つの領域に区分される。樹脂ペレットPは、加熱シリンダ10の内部において第1領域30A、第2領域30Bおよび第3領域30Cを順に通過することで、溶融樹脂Mとされる。
【0025】
第1領域30Aは、溝深さD30Aが一定のスクリュ溝が形成されるように一条のフライト31が形成され、原料ホッパ13から供給される樹脂ペレットPを第2領域30Bに向けて搬送する。第1領域30Aの溝深さは、第2領域30Bおよび第3領域30Cにおける溝深さよりも大きい。第1領域30Aは、供給部と称される部分である。第1領域30Aにおいて樹脂ペレットPは固体のまま第2領域30Bに向けて搬送される。第1領域30Aは、可塑化開始時には原料ホッパ13に対応する位置に配置される(図3(a))。
【0026】
次に、第2領域30Bは、一例として、第1領域30Aのフライト31に連なる主フライト33と、主フライト33よりも外径が小さく設定されている副フライト35とを備えている。副フライト35は、主フライト33よりリード角が大きく設定されている。第2領域30Bは、上流側Uから下流側Lに向けて溝深さD30Bが浅くなるように構成されている。なお、第2領域30Bと第1領域30Aの境界部分における溝深さはD30AとD30Bが等しい。第2領域30Bの上流側Uにおいて固体である樹脂ペレットPは下流側Lにおいて溶融樹脂Mとされる。第2領域30Bは圧縮部と称される部分である。
【0027】
副フライト35は、その両端が主フライト33に対して閉塞されていることが好ましい。副フライト35の両端あるいは片方が、主フライト33から離れていると、その隙間から固体の樹脂が漏れ出て溶融樹脂Mに混入するのに対して、閉塞していれば固体の樹脂が副フライト35を乗り越えることができず溶融樹脂Mのみが副フライト35を乗り越えることができる。これにより、溶融樹脂Mが副フライト35の頂部をもれなく乗り越えるので溶融樹脂Mにせん断力が付与されて下流に搬送できる。
第1ステージ30の第2領域30Bに副フライト35を設けることにより、固体樹脂と溶融樹脂を分離するとともに、比較的に弱い力で緩やかに圧縮することを想定している。これによって、第1ステージ30のスクリュ溝内で固体の樹脂ペレットPが目詰まりをおこし、それが加熱シリンダ10に対して楔となり、スクリュ20に偏加重、偏芯、振れ周りが発生するのを抑制することができる。
【0028】
副フライト35は、主フライト33の頂部における外径(直径)をDとすると、中心軸Cの方向の長さ(L35)が7D~12Dの範囲に収まるように設けることが好ましい。より好ましい長さ(L35)は8D~11Dであり、さらに好ましい長さ(L35)は9D~10Dである。
【0029】
次に、第3領域30Cは、一例として、第2領域30Bの主フライト33に連なる一条のフライト37が形成される。第3領域30Cは、溝深さD30Cが一定に形成されている。そうすることにより、第2領域30Bから搬送される溶融樹脂Mの密度を一定にすることを想定している。第3領域30Cは、計量部と称される部分である。
【0030】
[第2ステージ40:図1図2
第2ステージ40は、一例として、図1および図2に示すように、上流側Uから順に第1領域40A、第2領域40Bおよび第3領域40Cの3つの領域に区分される。加熱シリンダ10の内部において第1領域40A、第2領域40Bおよび第3領域40Cを順に通過することで、溶融樹脂Mに発泡ガスG1が注入されるともに分散される。
【0031】
第1領域40Aは、加熱シリンダ10の内部の処理領域11に発泡ガスG1が供給される第1ノズル53Bに対応して設けられる。ここでいう対応とは、スクリュ20が前進または後退したとしても、第1ノズル53Bが第1領域40Aの範囲を外れないように設けられていることをいう。第1領域40Aは、一例として、複数条のフライト41からなる多条フライトが形成されている。第1領域40Aは、好ましい形態として、その溝深さD40Aが上流側Uから下流側Lに向けて深くなるように形成される。第1領域40Aは、溝深さD40Aを上流側Uから下流側Lに向けて深くなるように形成することにより、溶融樹脂Mの内部における発泡ガスG1の溶解量のバラツキを小さくすることができる。その溝深さD40Aが上流側Uから下流側Lに向けて深くなるのは好ましい形態であるが、本発明としては、上流側Uから下流側Lに向けて第1領域40Aの溝深さD40Aが浅くなるようにしてもよいし、上流側Uから下流側Lにかけて溝深さD40Aが等しくしてもよい。
【0032】
多条フライトからなる第1領域40Aは、その中心軸Cの方向の長さ(L41)が2D~5Dの範囲であることが好ましい。より好ましい長さ(L41)は2.5D~4.5Dであり、さらに好ましい長さ(L41)は2D~4Dである。
【0033】
また、溶融樹脂Mの分割数を多くするためには、第1領域40Aにおけるフライト41の条数は多い方が好ましいが、フライト41の条数が多すぎると、多条フライト部の溝内の断面積が小さくなり過ぎてしまう。そうすると、ガス注入部領域の溝内充満度が大きくなるので、発泡ガスG1の入り込む空隙が小さくなり発泡ガスG1の注入量が小さくなってしまうことがある。このため本発明者の鋭意研究による経験から、発泡ガスG1の注入量を十分に得ることができるとともに、溶融樹脂Mへの分散も良好に行うためには、フライト41の条数は6~10とすることが好ましく、それぞれのフライト41の巻数は1~2とすることが好ましく、かつ、それぞれのフライト41は、同じ外径、同じリード角を有していることが好ましい。
【0034】
上流側Uから下流側Lに向けた全体の溝深さD40Aが第1ステージ30の第3領域30Cの溝深さD30Cよりも深ければ、溶融樹脂Mの充満度が低くなるため、第1領域40Aを飢餓部ということができる。
【0035】
次に、第2領域40Bは、一例として、一条のフライト43が形成される。第2領域40Bの溝深さD40Bは、上流側Uから下流側Lに向けて浅くなる。そうすることにより、第1領域40Aから搬送される溶融樹脂Mを圧縮する。第2領域40Bは、第2領域30Bと同様に、圧縮部と称される部分である。
【0036】
次に、第3領域40Cは、一例として、第2領域40Bのフライト43に連なるフライト43が形成される。第3領域40Cの溝深さD40cは、第1領域40Aの最も下流側Lと同様、一定に形成されている。そうすることにより、溶融樹脂Mの密度を一定にすることを想定している。第3領域40Cは、第3領域30Cと同様に、計量部と称される部分である。
【0037】
[ガス供給機構50:図1
次に、図1を参照して、ガス供給機構50を説明する。
ガス供給機構50は、例えば不活性ガスIGが蓄えられているガス供給源51と、発泡生成用のガスである発泡ガスG1を供給する第1ガス供給路53と、溶融樹脂Mの上流側Uへの逆流に対向して逆流を抑えるカウンタガスG2を供給する第2ガス供給路55と、第1ガス供給路53と第2ガス供給路55は、ガス供給源51に直接連なる基礎ガス供給路52から分岐している。
【0038】
第1ガス供給路53は、ガス供給源51と第2ステージ40の第1領域40Aとを繋ぎ、ガス供給源51からの発泡ガスG1を加熱シリンダ10の内部に供給する第1供給配管53Aと、第1供給配管53Aの先端に設けられる第1ノズル53Bと、を備える。また、第1ガス供給路53は、第1供給配管53Aの途中に設けられ発泡ガスG1の第1ノズル53Bに向けた供給を制御する第1バルブ53Cを備える。第1バルブ53Cは、制御部60の指示により開閉(ON/OFF)され、第1バルブ53CがONされると、発泡ガスG1が加熱シリンダ10に供給され、発泡成形がなされる。
【0039】
第2ガス供給路55は、ガス供給源51と原料通路14とを繋ぎ、ガス供給源51からのカウンタガスG2を原料通路14の内部に供給する第2供給配管55Aと、第2供給配管55Aの先端に設けられる第2ノズル55Bと、を備える。また、第2ガス供給路55は、第2供給配管55Aの途中に設けられカウンタガスG2の第2ノズル55Bに向けた供給を制御する第2バルブ55Cを備える。第2ノズル55Bは、次に説明する遮断機構70よりも樹脂ペレットPの流動の向きの下流側における原料通路14に設けられる。つまり、第2ノズル55BのカウンタガスG2の供給口は、遮断機構70と加熱シリンダ10の間の原料通路14に設けられる。第2バルブ55Cは、制御部60の指示により開閉(ON/OFF)され、第2バルブ55CがONされると、カウンタガスG2が原料通路14の内部に供給される。第2バルブ55Cと第1バルブ53Cは、制御部60の指示により、開閉が独立して制御されるとともに、全開と全閉の間の任意の中間の開度を維持して第1ノズル53Bおよび第2ノズル55Bに供給する発泡ガスG1およびカウンタガスG2の流量または圧力を制御することができる。
【0040】
[遮断機構70:図1
遮断機構70は、可塑化工程と関連して、加熱シリンダ10の内部と原料ホッパ13の間における原料通路14の解放または閉鎖を行う。具体的には、可塑化工程中は原料通路14を解放するが、可塑化工程が終了したら原料通路14を閉鎖する。遮断機構70は第2ガス供給路55からカウンタガスG2を供給する際に、遮断機構70は原料通路14を閉鎖する。これにより、遮断機構70は、第2ガス供給路55におけるカウンタガスG2の供給効果を向上させることができる。ここでいう解放とは原料通路14を全て開く(全開)ことを意味し、閉鎖とは原料通路14を全て閉じる(全閉)ことをいう。また、遮断機構70は可塑化工程の終了に近づいてスクリュ回転数が所定の回転数まで減速したときに原料通路14を閉鎖し、可塑化工程の開始後でスクリュ回転数が所定の回転数に到達後に解放してもよい。これにより後述するスクリュ回転数が低くポンプ能力が小さいためにガスの逆流が発生し易くなった際に、カウンタガスG2供給することができる。
【0041】
遮断機構70は、一例として原料通路14に対して進退動作することにより、原料通路14の解放および閉鎖する弁体71と、弁体71を支持する弁座73と、を備える。遮断機構70は、弁体71の進退動作を実現する駆動源75、例えばピストン・シリンダ装置を備える。駆動源75は、制御部60からの指示により、弁体71を直線往復運動させる。遮断機構70において、弁体71が原料通路14を閉鎖しているときには、原料通路14は気密に封止され。したがって、第2ガス供給路55から原料通路14の内部に供給されるカウンタガスG2は遮断機構70を越えて原料ホッパ13の内部に漏洩することができない。
なお、ここでは一組の遮断機構70を設ける例を示しているが、樹脂ペレットPが流動する向きに複数組、例えば二組の遮断機構70を設けることもできる。
【0042】
[シール機構80:図1
次に、射出装置1は好ましい形態として、上流側Uの端部に、加熱シリンダ10とスクリュ20の間を気密に封止するシール機構80を備える。シール機構80は、第2ガス供給路55から供給されるカウンタガスG2が加熱シリンダ10の上流側Uから外部に漏洩するのを抑える。
シール機構80は、一例として、加熱シリンダ10とスクリュ20の間に設けられるパッキン81と、パッキン81を支持するパッキン支持体83と、を備える。パッキン81は、加熱シリンダ10の内周とスクリュ20の外周との間に配置される例えば樹脂材料、金属材料からなるリング状の部材である。パッキン支持体83は、下流側Lの端部にパッキン81が固定される例えば金属材料からなる部材である。パッキン支持体83は、加熱シリンダ10とスクリュ20の間に挿入される円筒状の固定筒83Aと、固定筒83Aの上流側Uの端部に連なる固定フランジ83Bと、を備える。固定フランジ83Bは、図示を省略する締結手段により加熱シリンダ10の上流側Uの端部に固定される。
【0043】
[射出装置1の動作:図1
射出装置1の概略の動作は以下の通りである。なお、図1を参照願いたい。
加熱シリンダ10の内部に設けられるスクリュ20が回転すると、原料ホッパ13から供給される熱可塑性樹脂からなる樹脂ペレットPは、加熱シリンダ10の下流端の射出ノズル18に向けて送り出され、この過程で、樹脂ペレットPは溶融樹脂Mとなる。溶融樹脂Mはガス供給源51から供給される発泡ガスG1と混合された後に、図示が省略される型締装置の固定金型と可動金型の間に形成されるキャビティへ所定量だけ射出される。なお、樹脂ペレットPの溶融に伴いスクリュ20が背圧を受けながら後退した後に、前進することで射出を行なうというスクリュ20の基本動作を伴う。また、加熱シリンダ10の外側には、樹脂ペレットPの溶融のためにヒータ19の他の構成を適用し、あるいは置換することを妨げない。
【0044】
[射出成形の手順:図3
以上の要素を備える射出装置1は、以下の手順で射出成形を行なう。
射出成形は、よく知られているように、図示が省略される可動金型と固定金型を閉じて高圧で型締めする型締工程と、樹脂ペレットPを加熱シリンダ10の内部で加熱、溶融して可塑化させる可塑化工程と、可塑化された溶融樹脂Mを、可動金型と固定金型により形成されるキャビティに射出、充填する射出工程と、キャビティに充填された溶融樹脂Mが固化するまで冷却する保持および冷却工程と、金型を開放する型開き工程と、キャビティ内で冷却固化された成形品を取り出す取り出し工程と、を備え、上述した各工程をシーケンシャルに、あるいは一部を並行させて実施して1サイクルの射出成形が完了する。
【0045】
以上の射出成形の一連の手順の中で、本実施形態が関連する可塑化工程と射出工程の概略について、図3を参照して説明する。
[可塑化工程]
可塑化工程では、樹脂ペレットPを加熱シリンダ10の上流側Uの原料ホッパ13から供給する。可塑化開始当初のスクリュ20は、加熱シリンダ10の下流側に位置しており、その初期位置からスクリュ20を回転させながら後退させる(図3(a)「可塑化開始」)。スクリュ20を回転させることで、スクリュ20と加熱シリンダ10の間に供給された樹脂ペレットPは、せん断力を受けて加熱されながら徐々に溶融して、下流に向けて搬送される。なお、本実施形態においては可塑化工程におけるスクリュ20の回転(向き)を正転とする。樹脂ペレットPの供給を継続するとともに、スクリュ20を回転し続けると、溶融樹脂Mが加熱シリンダ10の下流側に搬送され、かつ、スクリュ20から吐出されるとともにスクリュ20よりも下流側に溜まる。スクリュ20の下流に溜まった溶融樹脂Mの樹脂圧力とスクリュ20の後退を抑制する背圧とのバランスによってスクリュ20を後退させる。この後、1ショットに必要な量の溶融樹脂Mが計量され溜まったところで、スクリュ20の回転及び後退を停止する(図3(b)「可塑化完了」)。
【0046】
樹脂(樹脂ペレットP,溶融樹脂M)と発泡ガスG1の状態を、樹脂が溶融に至らない状態を「α」、樹脂が溶融した状態を「β」、発泡ガスG1が溶融樹脂Mの中に分散した状態を「γ」および発泡ガスG1の分散が完了したことを「γ’」の4段階に概ね区分して表記している。
「未溶融樹脂α」はせん断力を受けるが、溶融不足の樹脂が残存する状態であり全てが溶融するには到っていないことを示し、「樹脂溶融β」は、樹脂ペレットPがせん断力を受けることで徐々に溶融していることを示す。また、「ガス分散γ」は、スクリュ20の回転に伴い、供給された発泡ガスG1が溶融樹脂Mに分散され、さらに「ガス分散完了γ’」は、溶融樹脂Mの中に発泡ガスG1が十分に分散され、射出に供される状態を示している。ただし、「ガス分散完了」の領域には、発泡ガスG1が偏在することもある。
【0047】
[射出工程]
射出工程に入ると、図3(c)に示すように、スクリュ20を前進させる。そうすると、スクリュ20の先端部に備えられている図示しない逆流防止弁が閉鎖することで、スクリュ20の下流に溜まった溶融樹脂Mの圧力(樹脂圧力)が上昇し、溶融樹脂Mは射出ノズル18から前述したキャビティに向けて吐出される。
以後は、保持工程と、型開き工程と、取り出し工程を経て、1サイクルの射出成形が完了し、次のサイクルの型締め工程、可塑化工程が行われる。
【0048】
[カウンタガスG2の供給による作用:図4
次に、発泡ガスG1に加えてカウンタガスG2を供給することによる作用を、図4を参照して説明する。
発泡ガスG1を供給すると、図4に示すように、下流側Lから上流側Uに向けて発泡ガスG1によるガス圧力P1が溶融樹脂Mに作用する。ここで、射出される溶融樹脂Mは上流側Uら下流側Lに向けて移動するのが原則であるが、ガス圧力P1により、溶融樹脂Mには下流側Lから上流側Uに向けて移動しようとする逆流が生じる。しかし、本実施形態においては、原料通路14に供給されるカウンタガスG2によるガス圧力P2が上流側Uから下流側Lに向けて溶融樹脂Mに作用する。したがって、発泡ガスG1による溶融樹脂Mの逆流が抑制される。
第1ガス供給路53による発泡ガスG1の供給と、第2ガス供給路55によるカウンタガスG2の供給は、好ましい形態として、供給量および供給圧力が互いに独立して制御される。
【0049】
[発泡ガスG1とカウンタガスG2の供給パターン:図5
次に、図5を参照して、発泡ガスG1とカウンタガスG2の供給パターンを説明する。
第1実施形態においては、発泡ガスG1とカウンタガスG2の供給パターンは第1-1と第1-2の二つある。
第1-1パターンは、可塑化工程の開始から途中まではカウンタガスG2の供給は行わない(G2 OFF)が、途中から可塑化工程の終了までカウンタガスG2の供給を行う(G2 ON)。このカウンタガスG2の供給の要否を決める要素は、スクリュ20の回転数である。つまり、回転数が高い間はカウンタガスG2を供給しないが、回転数が低くなるとカウンタガスG2を供給する。これは以下の理由による。
【0050】
スクリュ20が回転している間は、スクリュ20のポンプ作用によりスクリュ溝の内部の圧力(溶融樹脂圧力)を上昇できる。特に、スクリュ回転数が高い間は、カウンタガスG2による圧力がなくても第1ガス供給路53からの発泡ガスG1のガス圧力による溶融樹脂Mの逆流をスクリュ20のポンプ作用によって防止できる。しかし、スクリュ20の回転数が低くなるとスクリュ20のポンプ作用が低下するため、第1ガス供給路53からの発泡ガスG1のガス圧による溶融樹脂Mの逆流を防止しきれなくなる。そこで、スクリュ20の回転数が低くなってスクリュ20のポンプ作用が小さい期間に、第2ガス供給路55からカウンタガスG2を供給する。これによるとスクリュ20の回転数が高い間はカウンタガスG2を供給しないためカウンタガスG2の供給量を少なく抑えられるので、射出成形の費用低減に有効である。
【0051】
ただし、スクリュ回転数が高から低へ移行する場合であっても、可塑化工程の開始から終了までカウンタガスG2の供給を継続して行うこともできる。これが図4に示される第1-2パターンである。
【0052】
[効 果]
以下、本実施形態による効果を説明する。
以上説明したように、射出装置1によれば、発泡ガスG1による溶融樹脂Mの逆流がカウンタガスG2により抑制される。これによって、スクリュ溝内において溶融樹脂Mの流動抵抗、搬送抵抗となるダムフライトなどの障害物を設ける必要がないか、あるいは設けるとしてもダムフライトの高さを高くしなくても溶融樹脂Mの逆流を防止できるため流動抵抗、搬送抵抗の度合いを低減できるので、可塑化能力の低下を抑えることができる。
【0053】
射出装置1は、カウンタガスG2が供給される原料通路14に遮断機構70を備えている。この遮断機構70は、第1ガス供給路53から供給されるカウンタガスG2が原料ホッパ13へ抜け出るのを原料通路14において留める。したがって、遮断機構70は、カウンタガスG2が不必要に消費されるのを抑えることができる。これによって、可塑化能力の低下を効果的に抑えることができる。
【0054】
例えば、特許文献1のように第1ステージにダムフライトやバリアフライトを備える2ステージのスクリュに第1実施形態を適用すると、可塑化能力増大のために、ダムフライトやバリアフライトの高さを低くしても、カウンタガスG2によるガス圧力P2によって溶融樹脂Mの上記した逆流を抑制できる。
【0055】
また、射出装置1は、加熱シリンダ10の上流側Uの最端部にシール機構80を備えており、このシール機構80は、加熱シリンダ10とスクリュ20の間の隙間を封止する。したがって、シール機構80によっても、カウンタガスG2が不必要に消費されるのを抑えることができる。これによって、可塑化能力の低下を効果的に抑えることができる。
【0056】
射出装置1は、第2ガス供給路55によるカウンタガスG2の供給先を原料通路14とスクリュ20の間に設ける。そうすることにより、カウンタガスG2を溶融樹脂Mに原料投入時から触れさせることができるので、第2ガス供給路55から供給されるカウンタガスG2が、スクリュ20の先端側からの溶融樹脂Mの逆流防止に加えて、カウンタガスG2を溶融樹脂Mに含侵させることができる。
【0057】
さらに、スクリュ20の上流側Uの基部において、第2ガス供給路55から供給されたカウンタガスG2と原料樹脂である樹脂ペレットPが接している。したがって、当該領域において樹脂ペレットPにカウンタガスG2を浸透させることができ、樹脂ペレットPへの不活性ガスIGの溶解量を増大させることができる。また、不活性ガスIGは樹脂ペレットPが低温であるほど浸透しやすいことから、樹脂ペレットPが溶融前の低温状態であるスクリュ20の基部において不活性ガスIGと接触することは、樹脂ペレットPへのガス溶解量の増大に有効である。これにより、溶融樹脂Mに含侵する発泡ガスG1の量を増大させて高発泡倍率の発泡成形品を得ることができる。
【0058】
[第1実施形態の変形例:図6(a),(b)]
図6(a)および図6(b)を参照して、第1実施形態の変形例を説明する。
この変形例は、第2ガス供給路55からのカウンタガスG2の供給先に関するものである。
図6(a)に示すように、カウンタガスG2はシール機構80を通じて加熱シリンダ10の内部に供給することができる。また、図6(b)に示すように、カウンタガスG2は遮断機構70とシール機構80の間を通じて加熱シリンダ10の内部に供給することもできる。ここで、発泡ガスG1を用いる発泡成形において、気泡発生の核とする核材を原料である樹脂ペレットP原料とともに投入することが多いが、この核材は微細粒状または粉末状であることが多い。このため、核材がスクリュ20の上流側Uにおいてスクリュ20の外周と加熱シリンダ10の内周との間の隙間から外部に漏れ出るおそれがある。これに対応するべく、図6(a),(b)ようにカウンタガスG2を注入することによって、スクリュ20の先端側からの溶融樹脂の逆流防止に加えて、外部に漏れ出ようとする核材をカウンタガスG2によるガス圧力によって押し返すことができる。なお、図6において、スクリュ20の記載を省略している。
【0059】
[第2実施形態:図7図8
次に、図7および図8を参照して第2実施形態に係る射出装置3を説明する。
射出装置3は、第1ガス供給路53および第2ガス供給路55に加えて、第3ガス供給路57を備える。第3ガス供給路57は、パッキン81の下流側Lの端部(図中左側端部)に隣接して、加熱シリンダ10の処理領域11に不活性ガスからなる遮蔽ガスG3を供給する。また、射出装置3は、第3ガス供給路57を除けば、射出装置3の構成は射出装置1を踏襲している。
【0060】
第3ガス供給路57は、ガス供給源51と第1ステージ30の第1領域30Aとを繋ぎ、ガス供給源51の遮蔽ガスG3を加熱シリンダ10の内部に供給する第3供給配管57Aと、第3供給配管57Aの先端に設けられる第3ノズル57Bと、を備える。また、第3ガス供給路57は、第3供給配管57Aの途中に設けられ遮蔽ガスG3の第3ノズル57Bに向けた供給を制御する第3バルブ57Cを備える。第3バルブ57Cは、制御部60の指示により開閉(ON/OFF)され、第3バルブ57CがONされると、遮蔽ガスG3が加熱シリンダ10の処理領域11であって、パッキン81の下流側Lの近傍に供給される。第3バルブ57Cは、第2バルブ55Cと第1バルブ53Cと同様に、制御部60の指示により、開閉が独立して制御されるとともに、全開と全閉の間の任意の中間の開度を維持して第3バルブ57Cに供給する遮蔽ガスG3の流量または圧力を制御することができる。
【0061】
第3ガス供給路57からの遮蔽ガスG3の供給による作用は以下の通りである。
第3ノズル57Bから遮蔽ガスG3を供給することにより、パッキン81の下流側Lの端部における気圧を増大できるか、または、当該下流側Lに遮蔽ガスG3からなる障壁、つまりエアカーテンを生成できる。そうすれば、第2ガス供給路55から供給されるカウンタガスG2が射出装置3の上流側Uの端部から外部へ漏洩するのを防止して、第2ガス供給路55から供給されるカウンタガスG2の圧力によって昇圧させたスクリュ基部側の溝内圧が低下するのを抑制できる。
また、第3ガス供給路57は、パッキン81の下流側Lの端部ではなく、パッキン81の上流側Uの端部の近傍に供給されてもよい。具体的には図9に示す通り、パッキン81の上流側Uにパッキン81と中心軸Cの方向に間隔を空けてパッキン82を設けるとともに、パッキン81とパッキン82の間に遮蔽ガスG3を供給してもよい。これにより、エアカーテン効果に加えて、パッキン81とパッキン82の間に供給される遮蔽ガスG3によりパッキン81とパッキン82の間の圧力が増大して、パッキン81を更に押しつぶしてパッキン81による加熱シリンダ10とスクリュ20の間の隙間を更に機密に封止できる。また、パッキン81とパッキン82の間に供給される遮蔽ガスG3は、第2ガス供給路55から供給されるカウンタガスG2がパッキン81をすり抜けて射出装置3の上流側Uの端部からの外部への漏洩に対する背圧としても機能し得る。
【0062】
第3ガス供給路57による遮蔽ガスG3をも含む、発泡ガスG1、カウンタガスG2の供給パターンを図8に示している。図8における発泡ガスG1、カウンタガスG2については、第1実施形態の射出装置1について示した図5の発泡ガスG1、カウンタガスG2と同じである。図8には遮蔽ガスG3がカウンタガスG2と同じタイミングで供給される例が記載されているが、遮蔽ガスG3はカウンタガスG2よりも先行して供給されてもよいし、遅れて供給されてもよい。
【0063】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、射出装置3の第2ガス供給路55の第2ノズル55Bは、加熱シリンダ10の胴部であって、第1ガス供給路53の第1ノズル53Bと原料通路14との間に設けられてもよい。こうすることにより、第1ノズル53Bに近い位置において上流側Uに逆流しようとする溶融樹脂MにカウンタガスG2を加えることができる。そして、逆流しようとする溶融樹脂Mまでの、第2ノズル55Bからの距離が短い。このため、第2ノズル55Bから逆流しようとする溶融樹脂Mまでの間で第2ノズル55BからのカウンタガスG2の圧力損失が少なく、より確実に溶融樹脂Mにガス圧力を加えることができるので、逆流を防止する顕著な効果が期待できる。
【0064】
また、以上で説明したスクリュ20においては、第2ステージ40の第2領域40Bおよび第3領域40Cを一条のフライト37としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図9に示すように、多条フライトからなる第1領域40Aの下流側Lに第2領域としてのフィン混練部40Dを設けることができる。
【0065】
フィン混練部40Dは、図10に示すように、多条フィン型からなり、円周方向に間隔をあけて設けられる複数の板状のフィン44からなる複数のフィン群45を、中心軸Cの方向に間隔をあけて備えている。
このように、多条フライトからなる第1領域40Aの下流側Lに、長さが比較的に短いフィン44と、フィン44を設けない流路断面積が大きく流動抵抗の小さい領域とを設ける。この流動抵抗の小さい領域は、隣接するフィン44の中心軸Cの方向の間隔および周方向の間隔の双方を含む。このフィン混練部40Dを設けることにより、フィン44による攪拌効果と流動抵抗の緩和効果を溶融樹脂Mと発泡ガスG1の混合物に交互に与えることによって、注入される発泡ガスG1の圧力が低く注入ガス量が少なくても、溶融樹脂Mへのガスの溶解バラツキを抑制することができる。
【0066】
フィン混練部40Dにおいて、それぞれのフィン44の中心軸Cの方向の長さL44は0.05D~0.2D、中心軸Cの方向に隣接するフィン44とフィン44の間隔L46は0.1D~0.2Dとすることが好ましい。また、フィン群45の段数は、5~10段とすることが好ましい。
【0067】
以上の実施形態で示した遮断機構70は弁体71が直線往復運動する例を示している。しかし、本発明においては、原料通路14の解放および閉鎖を行って樹脂ペレットPの流動および流動の停止を行うことができる、例えば、回転式の弁体を備える遮断機構などを広く適用できる。
【0068】
また、一般にスクリュ20の溝内を充満させないようにするために、処理領域11に向けた樹脂ペレットPの供給量を計測するとともに樹脂ペレットPの供給量を少なくする計量式の原料供給装置を設けることが知られている。上述した遮断機構70は、原料通路14を解放(全開)および閉鎖(全閉)するのに加えて、処理領域11に向けた樹脂ペレットPの供給量を計測するとともに原料通路14の開放量を制御する機能を備えることができる。
第1ガス供給路53の第1ノズル53Bの付近においてスクリュ溝の内部に空隙を設けることで、第1ノズル53Bからスクリュ溝内に発泡ガスG1を供給することが容易となる。そこで、遮断機構70を樹脂ペレットPが通過する供給量を計測して、処理領域11の内部のスクリュ20に供給する単位時間当たりの樹脂ペレットPの供給量を求める。単位時間当たりの供給量に基づいて弁体71の開度を調整して樹脂ペレットPの供給量を少なく調整することにより、スクリュ溝の内部が樹脂ペレットPで充満しないようにする。
このようすれば、第2ガス供給路55から供給するカウンタガスG2が原料ホッパ13に漏洩するのを抑えることに加えて、遮断機構70が樹脂ペレットPの供給量を調整する機能を兼用することにより、樹脂ペレットPの供給量を調整する計量式の原料供給装置と遮断機構を個別に設ける必要がないので装置の小型化が可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1,3 射出装置
10 加熱シリンダ
11 処理領域
13 原料ホッパ
14 原料通路
18 射出ノズル
19 ヒータ
20 スクリュ
30 第1ステージ
30A 第1領域
30B 第2領域
30C 第3領域
31 フライト
33 主フライト
35 副フライト
37 フライト
40 第2ステージ
40A 第1領域
40B 第2領域
40C 第3領域
40D フィン混練部
41,43 フライト
44 フィン
45 フィン群
50 ガス供給機構
51 ガス供給源
53 第1ガス供給路
53A 第1供給配管
53B 第1ノズル
53C 第1バルブ
55 第2ガス供給路
55A 第2供給配管
55B 第2ノズル
55C 第2バルブ
57 第3ガス供給路
57A 第3供給配管
57B 第3ノズル
57C 第3バルブ
60 制御部
70 遮断機構
71 弁体
73 弁座
75 駆動源
80 シール機構
81,82 パッキン
83 パッキン支持体
83A 固定筒
83B 固定フランジ
C 中心軸
G1 発泡ガス
G2 カウンタガス
G3 遮蔽ガス
IG 不活性ガス
M 溶融樹脂
P 樹脂ペレット
P1,P2 ガス圧力
U 上流側
L 下流側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10