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特開2023-118367超音波検査用スカーターおよび超音波検査装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118367
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】超音波検査用スカーターおよび超音波検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/28 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
G01N29/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021289
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100091926
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】仁村 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】河原 昇生
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047BA01
2G047BC03
2G047CA01
2G047GA01
2G047GE02
2G047GE03
(57)【要約】
【課題】液体の噴流を安定して噴射することを可能にする。
【解決手段】超音波検査用スカーターは、液体を噴射するノズルと、
前記ノズルのノズル孔の基端が接続され、ノズル孔方向に沿って延びる筒穴状の中央中空部を有する中央筒部と、中央中空部に液体が供給される液体供給口と、中央筒部の中央中空部内に位置し、ノズル方向に沿った整流面を有する中央整流部とを有し、ノズルから噴流される液体内で伝播される超音波を送信または受信する超音波探触子を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するノズルと、
前記ノズルのノズル孔の基端が接続され、ノズル孔方向に沿って延びる筒穴状の中央中空部を有する中央筒部と、
前記中央中空部に液体が供給される液体供給口と、
前記中央筒部の中央中空部内に位置し、ノズル方向に沿った整流面を有する中央整流部と、を有し、
前記ノズルから噴流される液体内で伝播される超音波を送信または受信する超音波探触子を有する超音波測定用スカーター。
【請求項2】
前記中央筒部の外周側で、前記中央筒部を、間隔を空けて囲み、前記中央筒部との間で筒状の外周内側中空部を形成する外周内側筒部と、
前記外周内側筒部の外周側で、前記外周内側筒部を、間隔を空けて囲み、前記外周内側筒部との筒状の外周外側中空部を形成する外周外側筒部と、
前記外周外側中空部に液体が供給される前記液体供給口と、
前記外周内側中空部内に位置し、ノズル方向に沿った整流面を有する外周整流部と、を有し、
前記外周内側中空部と前記中央中空部と、が連結され、
前記外周外側中空部と前記外周内側中空部と、が連結されている請求項1記載の超音波測定用スカーター。
【請求項3】
前記外周内側中空部が、前記中央中空部のノズル方向後端側に連結され、
外周外側筒部中空部が、前記外周内側中空部のノズル方向前端側に連結されていて、
前記中央中空部の後方側に前方側より大径とした連絡中空部を有し、前記連絡中空部を介して前記外周内側中空部と中央中空部とが連結していて、
前記外周外側中空部の厚さは、前記外周内側中空部の厚さよりも小さくなっている請求項1または2に記載の超音波測定用スカーター。
【請求項4】
前記外周外側中空部に、前記液体供給口から供給される液体が流れる流域にフィルタを有し、
前記フィルタは、前記液体が通過する網目構造を有する請求項2または3に記載の超音波測定用スカーター。
【請求項5】
ノズルを下方に向けた状態の全体形状において、少なくとも、正面視の断面形状が50mm径の円形内に収まる形状を有し、
前記中央中空部および前記ノズルのノズル孔には、後方側から先端側に向けて内径が小さくなるテーパ面を有している請求項1~4のいずれか1項に記載の超音波測定用スカーター。
【請求項6】
受信用の超音波検査用スカーターと送信用の超音波検査用スカーターとを各スカーターに備えるノズルが、噴流方向が互いに対向するように位置させて受信用の超音波検査用スカーターと送信用超音波検査用スカーターとを固定するスカーター固定具と、
被検査物を保持し、少なくとも、前記被検査物の被検査部を受信用の超音波検査用スカーターと送信用超音波検査用スカーターの各ノズル間に位置させて前記被検査物を移動させるマニピュレーターと、を有し、
受信用の前記超音波検査用スカーターと送信用の前記超音波検査用スカーターの少なくとも一方が請求項1~5のいずれか1項に記載の超音波検査用スカーターからなる超音波検査装置。
【請求項7】
前記マニピュレーターは、被検査部を挟む空間の狭小側に請求項1~5のいずれか1項に記載の超音波検査用スカーターが位置するように被検査物を保持し、
さらに前記ノズル間の液体噴流方向と交差する方向に被検査物を回転移動可能にし、
かつ前記噴流方向と交差する方向に被検査物をスライド移動可能にする請求項6に記載の超音波検査装置。
【請求項8】
受信用の超音波検査用スカーターおよび送信用超音波検査用スカーターの少なくとも一方は、前記スカーター固定具への固定において、噴流方向において被検査物との距離を測定する距離測定センサを有する請求項6または7に記載に記載の超音波検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、超音波検査に用いる超音波測定用スカーターおよび超音波検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波測定に際し、被検査物にスカーターにより水を噴射し、その噴流で形成される水柱中で超音波を伝播させて超音波透過法により被検査物の測定を行う方法が知られている。
例えば、特許文献1では、開口部からハウジングの内部に水を誘導するためにハウジングの内部を減圧する減圧装置を備え、噴射口から噴射されて被検査物の表面に衝突した水をハウジングの開口側に誘導して水柱を形成する超音波式測定装置が提案されている。
また、特許文献2では、水を噴射するノズルに、被検査物体に当たって飛散する水が噴流による水柱に当たることを防止するカバーを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-77196号公報
【特許文献2】特開2020-34390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、噴流中で超音波を伝搬させる場合、良好な検査結果を得るためには噴流が安定した状態で被検査部に当たり、その噴流中で超音波が安定して伝搬しているのが望ましい。
特許文献1、2では、被検査部に噴流が当たった後に、水が水柱に当たる課題について考慮しているが、噴流を良好な状態にして被検査部に当てることについては配慮がされていない。
【0005】
本願発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、噴流を安定した状態で噴射して、被検査物の超音波検査を良好に行うことができる超音波検査用スカーターおよび超音波検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の超音波検査用スカーターのうち、第1の形態は、
液体を噴射するノズルと、
前記ノズルのノズル孔の基端が接続され、ノズル孔方向に沿って延びる筒穴状の中央中空部を有する中央筒部と、
前記中央中空部に液体が供給される液体供給口と、
前記中央筒部の中央中空部内に位置し、ノズル方向に沿った整流面を有する中央整流部と、を有し、
前記ノズルから噴流される液体内で伝播される超音波を送信または受信する超音波探触子を有する。
【0007】
本発明の超音波検査装置の一形態は、受信用の超音波検査用スカーターと送信用の超音波検査用スカーターとを各スカーターに備えるノズルが、噴流方向が互いに対向するように位置させて受信用の超音波検査用スカーターと送信用超音波検査用スカーターとを固定するスカーター固定具と、
被検査物を保持し、少なくとも、前記被検査物の被検査部を受信用の超音波検査用スカーターと送信用超音波検査用スカーターの各ノズル間に位置させて前記被検査物を移動させるマニピュレーターと、を有し、
受信用の前記超音波検査用スカーターと送信用の前記超音波検査用スカーターの少なくとも一方が前記形態の発明の超音波検査用スカーターからなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スカーターのノズルから安定した状態で液体を噴射することができ、超音波探傷を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の一実施形態の超音波検査用スカーターの平面図である。
図1B】超音波検査用スカーターの側面図である。
図1C】超音波検査用スカーターの底面図である。
図1D】超音波検査用スカーターの正面図である。
図2】超音波検査用スカーターの縦断面側面図である。
図3】中央中空部10Aにある整流部の斜視図である。
図4A】外周内側中空部12Aにある整流部の平面図である。
図4B】外周内側中空部12Aにある整流部の整流板を一部省略した正面図である。
図5A】スカーター本体の一部を構成する本体部材2Aの平面図である。
図5B】スカーター本体の一部を構成する本体部材2Aの正面図である。
図5C】スカーター本体の一部を構成する本体部材2Aの底面図である。
図6A】スカーター本体の一部を構成する本体部材2Bの平面図である。
図6B】スカーター本体の一部を構成する本体部材2Bの正面図である。
図6C】スカーター本体の一部を構成する本体部材2Bの底面図である。
図7A】スカーター本体の一部を構成する本体部材2Cの平面図である。
図7B】スカーター本体の一部を構成する本体部材2Cの一部を断面した正面図である。
図7C】スカーター本体の一部を構成する本体部材2Cの底面図である。
図8】実施形態の超音波検査用スカーターにおける水の流れを説明する図である。
図9】実施形態の超音波測定用スカーターを使用した例を示す概略図である。
図10】狭小空間を有する被検査物の概略斜視図である。
図11】実施形態および関連技術の超音波検査用スカーターを狭小空間に配置して使用した例を示す概略図である。
図12】超音波検査装置の実施形態を示す概略平面図およびブロック図である。
図13】超音波検査用スカーター間で、被検査物をマニピュレーターで保持した状態を示す概略正面図である。
図14図13のA部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<超音波検査用スカーター>
この実施形態では、超音波検査用スカーターの一形態を説明する。
【0011】
超音波検査用スカーター1は、図1A図1Dに示すように、外形形状が横断面円形状のスカーター本体2を有し、スカーター本体2の一端側はノズル孔11Aを有するノズル11を構成している。以降では、ノズル孔11Aの噴射方向を前方(図1B示下方)として説明する。
スカーター本体2は、後端側に探触子3が設けられ、探触子3に超音波を伝達するケーブル4が接続されており、ケーブル4には、後述する超音波伝送ケーブルが接続される。なお、探触子3は、使用用途などに応じて異なるサイズのものに取り替え可能である。また、スカーター本体2の側壁には、給水口5が設けられており、給水口5には、導入管5Aが接続され、導入管5Aにさらに給水管6が接続されている。給水口5は、本発明の液体供給口に相当する。
スカーター本体2は、正面視で、下方側が一部球面形状を有し、ケーブル4、給水管6を除いて、38mm径の球形状の内側に収まる全体形状を有している。本実施形態では、スカーター本体2は、50mm径の球形状内に収まる全体形状を有するものが望ましい。
【0012】
スカーター本体2は、図2に示すように、ノズル孔11Aの後方側に、内部に横断面円形の中央中空部10Aを有する中央筒部10を有している。
中央中空部10Aは、前方に向けて徐々に径が小さくなるテーパ面10Bを有しており、テーパ面10Bは、ノズル11内でノズル孔11の先端側まで延長している。すなわち、テーパ面10Bの一部は、ノズル孔11Aの側面を構成している。
【0013】
中央筒部10の外周側には、中央筒部10の外周側を囲むように間隔を空けて、ノズル方向に伸張する外周内側筒部12を有しており、中央筒部10外周面と外周内側筒部12内周面との間で環状の外周内側中空部12Aが形成されている。
また、中央中空部10Aの後方側には、外周内側筒部12の上方側の内空間により連結中空部12Bが形成されており、連結中空部12Bは、中央中空部10Aよりも大径になっている。連結中央部12Bの外周側は、外周内側中空部12Aの後方端に環状に連通しており、連結中央部12Bを介して中央中空部10Aと外周内側中空部12Aとが連通している。
【0014】
外周内側筒部12の外周側には、外周内側筒部12の外周側を囲むように間隔を空けて、ノズル方向に伸張する外周外側筒部13を有しており、外周内側筒部12の外周面と外周外側筒部13の内周面との間で環状の外周外側中空部13Aが形成されている。
なお、外周外側中空部13Aの厚さは、外周内側中空部12Aの厚さよりも小さくなっている。外周外側筒部13の外周面はスカーター本体2の側面を構成している。
【0015】
外周外側中空部13Aの前方側は、外周内側中空部12Aの前端側に環状に連結されている。外周内側中空部12Aおよび外周外側中空部13Aの連結側には、ノズル11の下面の球面形状に沿って、内側に向けて次第に前方に位置する曲面状の傾斜面13Bを有しており、外周外側中空部13Aから外周内側中空部12Aにかけて水が円滑に流れ、水の流れに乱れが生じにくくなっている。
【0016】
外周外側筒部13の一側壁側には、前記した給水口5が貫通するようにして形成されており、給水口5には外部に伸張する給水管6が接続される。給水口5は、外周外側中空部13Aに連通しており、最終的には中央中空部10Aに連通している。給水管6には、外部の給水ポンプに接続されて、給水管6内の給水連絡路6Aを通じて給水口5への水の供給が可能になっている。
なお、給水口5は、この実施形態では、外周外側筒部13の側壁に設けるものとして説明したが、外周外側筒部13に限定されるものではなく、外周外側中空部13Aに給水できる個所に設けるものであればよい。
【0017】
さらに、中央中空部10Aでは、ノズル孔11Aの後方側において、中空部10A内周面にほぼ嵌まるようにして整流部20が配置されている。
整流部20は、図3に示されるように、中央に貫通孔20Aを有し、その外周に放射状に7枚の整流板20Bが同角度間隔で設けられている。整流板20Bは、ノズル方向に沿った形状を有し、その表裏面が整流面20Cとなっている。これにより、中空部10Aを通過する水は、整流部20の貫通孔20Aおよび整流面20C、20C間の空間を通過して流れが整えられる。整流板20Bの側面は、テーパ面10Bに沿ったテーパ形状を有している。
この例では、1枚の板を折り曲げて、中央に貫通孔20Aを有するように複数の整流板20Bを成形している。ただし、本発明としては整流部の製造方法が特に限定されるものではなく、形状も適宜変更することができる。また、中央の貫通孔を設けないものとしてもよい。上記整流部20は、本発明の中央整流部に相当する。なお、中央整流部は、中央筒部と一体に形成されているものであってもよい。
【0018】
さらに、外周内側中空部12A内には、図4A、4Bに示す整流部21が設けられている。
整流部21は環状の形状を有しており、外周内側中空部12Aに環状に収まる。整流部21は、中央筒部10の外周面に沿う形状の整流部筒体21Aを有し、整流部筒体21Aの外周面に放射状に等角度間隔で複数の整流板21Bが設けられている。
整流板21Bは、この例では16枚からなり、その外周端は外周内側筒体12の内周面にほぼ沿う形状を有している。整流板21Bは、整流部筒体21Aよりも後方に伸張しており、前方側では、整流部筒体21Aと整流板21Bとは前方端位置が揃っている。整流板21Bの側面はノズル方向に沿った整流面21Cとなっている。
整流部筒体21Aは、整流板21Bを固定するためのものであり、整流板21Bの整流面21Cに沿って水が流れることで水の流れを安定させる。整流部21は、本発明の外周整流部に相当する。本発明の外周整流部は、外周内側筒部または外周外側筒部と一体に形成されているものであってもよい。
【0019】
また、外周外側中空部13A内には、外周外側筒部13の内周面と、外周内側筒部12の外周面との空間において、厚さ方向を塞ぐように、全周に亘ってフィルタ22が配置されている。フィルタ22は、給水口5の前方側、すなわち水の流れにおいて下流側に配置されている。
フィルタ22は、不織布で構成され、網目構造を有している(商品名:ミガギロンZ;三共理化学製#150~320)。給水口5に導入された水は、予め定めた流量(例えば5~10L/分)で送られており、フィルタ22において目の間を通ることで圧損が生じつつ、網目を通過することで水の流れが整えられる。なお、本発明としては、フィルタの種別や網目の大きさ等は特に限定されるものではない。
【0020】
超音波検査用スカーター1は、図5A、B、C、図6A、B、C、図7A、B、Cに示すように、複数の部材によって構成されている。この例では、スカーター本体2は、本体部材2A、2B、2Cで構成されている。
以下の説明では、ノズルを下方側に位置させた状態で説明する。
【0021】
本体部材2Aは、図5A、5B、5Cに示すように、スカーター本体2の下方側形状を構成しており、その下方側は下面を球面とする球欠形状のノズル11を有している。ノズル11上の中央に中央筒部10が立ち上がっている。ノズル11の中心に上下に貫通するノズル孔11Aが形成され、中央筒部10の内部に筒穴形状の中央中空部10Aを有しており、中央中空部10Aはノズル孔11Aが連通している。中央中空部10Aとノズル孔11Aには、先端に向けて次第に径が小さくなるテーパ面10Bを有しており、テーパ面10Bの一部はノズル孔11Aの傾斜面を構成している。
ノズル11の上面外周端に環状に上面周壁11Bを有し、ノズル11の上面側では上面周壁11Bを除いて内側に向けて、中央筒部10の外周面に至るまで次第に深くなる環状のくぼみを有しており、湾曲した傾斜面13Bを構成する。環状のくぼみは、外周外側中空部13Aの前端側と外周内側中空部12Aの前端側を連通させる。
ノズル11の下面の球面形状は、超音波検査用スカーター1をR部の内周側に配置する際に、超音波検査用スカーター1の回転動作を容易にする。
【0022】
本体部材2Bは、図6A、6B、6Cに示すように、ノズル11の上面周壁11B上に接し、上面周壁11Bと同じ厚さ(2.4mm)の筒壁からなる円筒状の外周外側筒部13を有しており、外周外側筒部13の上端には、内周側に3mm厚(筒壁肉厚を含む)としたリブ13Cが形成されている。リブ13Cの内径は27mmになっている。
さらに、外周外側筒部13の側壁には、給水口5が開口されており、給水口5に接続されるように外周外側筒部13の外壁に導入管5Aが設けられている。
【0023】
本体部材2Cは、図7A、7B、7Cに示す円筒状の外周内側筒部12を有し、外周内側筒部12の上端近くに、前後方向に互いに間隔を有する2重のリブ12Cを有し、外周内側筒体12の上端に蓋部12Dを有している。蓋部12Dには、探触子3を挿入するための取付孔12Eが形成されている。取付孔12Eの内径は、リブ12Cの内径と略同じになっている。
外周内側筒体12の外径は、外周外側筒体13のリブ13Cの内径内に隙間なく嵌まる大きさ(27mm径)を有しており、外周内側筒体12は、外周外側筒体13のリブ13Cの内径側に挿入される。外周内側筒体12は、蓋部12Cがリブ13Cの上端に当たるまで嵌め込んだ状態で、外周外側筒体13の下端とほぼ同じ下端位置になる長さを有している。
【0024】
上記本体部材2A、2B、2Cの組み立てにおいては、中央中空部10A内へ整流部20を配置し、外周内側中空部12A内に整流部21を配置し、外周外側中空部13A内に、隙間なく環状にフィルタ22を配置する。この際に、フィルタ22は、給水口5の下方側すなわち水の流れにおける下流側に配置する。本実施形態では、整流部20、21、フィルタ22を配置したが、本発明としては、少なくとも整流部20を必要とし、整流部21、フィルタ22は省略することが可能である。ただし、より良好な水の噴流状態を得るためには、整流部20とともに、整流部21、フィルタ22を設けるのが望ましい。
【0025】
取付孔12Eには、探触子3が嵌め込まれる。探触子3は、リブ12Cの内径内に収まり、下端がリブ12Cの下面に揃うように取り付けが行われる。これにより連結中空部12Bの上面側は探触子3側の下面とリブ12Cの下面で塞がれ、2段のリブ12C間の凹部にはシーリング12Fが配置される。
本体部材2A、2B、2Cは、ボルト、ナット、ねじなどの固定具を用いることなく、互いに接する面を接着により接合することができる。これにより、超音波検査用スカーター1全体を、給水口5を後方にし、ケーブル4や給水管6を除いた正面視で38mm径内に収まる小さな形状にすることができる。
この実施形態では、本体部材2A、2B、2Cによりスカーター本体2が構成されるものとしたが、スカーター本体を構成する部材の数や形状が限定されるものではなく、スカーター本体2が一体で構成されるものであってもよい。
【0026】
超音波検査用スカーター1における水の流れを図8に基づいて説明する。
給水管6の給水連絡路6Aを通って給水口5から外周外側中空部13Aに環状に水が導入される。この水は、フィルタ22を通過した後、外周外側中空部13Aの前方側にあるくぼみの傾斜面13Bに沿って外周内側中空部12Aの前端側に円滑に流れ込み外周内側中空部12A内を後方側に移動する。その際に、水はフィルタ22を通過することによって整流され、さらに、水は外周内側中空部12A内を流れて整流部21を通過して整流され、外周内側中空部12Aを後方側に移動する。
水は、外周内側中空部12Aの後方端で連結中空部12Bに環状に移動した後、中央中空部10Aで前方側に移動する。中央中空部10Aでは、水は前方側に移動し、整流部20を通過してさらに整流がされる。
整流部20を通過した水は、中央中空部10Aおよびノズル11に移動し、テーパ面10Bで絞られつつ前方に移動し、ノズル孔11Aから前方に噴射される。
【0027】
中央中空部13Aを通過する水はフィルタ22で整流され、さらに、外周外側中空部12Aおよび外周内側中空部10Aを通過する水は、上記した二つの整流部20、21によって整流され、ノズル孔11Aから前方に噴射される水は、乱流がなく、良好な層流状態を有している。
【0028】
超音波検査用スカーター1を送信用に使用する場合、探触子3から超音波を前方に送り、中央中空部10Aおよびノズル孔11A内を流れる水に伝播させる。超音波は、層流状態の水中を進み、減衰が少なく、安定して伝播することができる。
超音波検査用スカーター1を受信用に使用する場合、層流状態の噴流中を超音波の減衰が少なく安定して伝搬し、探触子3で受信される。
【0029】
図9は、超音波検査における使用状態の一例を示すものである。
超音波検査用スカーター1を送信用とし、被検査物100をノズル11の前方に配置し、被検査物100を挟んだ対向側に受信用の超音波検査用スカーター50を配置する。超音波検査用スカーター50は、関連技術に関するものであり、ノズルの前方に被検査物100が位置するようにする。
【0030】
この状態で、超音波検査用スカーター1および超音波検査用スカーター50のノズルから水を噴射して、被検査物100の被検査部100Aに水柱30を打ち当てる。
水の供給量は特に限定されないが、例えば5~10L/分の供給量とすることができる。
この際に、超音波検査用スカーター1で探触子3より超音波を発生させて超音波検査用スカーター1内を流れる水に超音波を伝播させる。超音波は、水柱30とともに被検査物100の被検査部100Aに当たり、被検査部100Aを透過し、超音波検査用スカーター50から噴射された水柱60内を伝播して超音波検査用スカーター50内に伝わる。超音波検査用スカーター50では、探触子51で被検査部100Aを透過した超音波を受信する検査が行われる。この際に超音波は安定した状態で被検査部100Aに当たることで超音波の超音波検査を良好に行うことができる。
【0031】
本実施形態の超音波検査用スカーター1では、水が被検査部100Aに当たった際に、安定した水傘状になる。これは、水が良好な層流状態になっていることにより得られる。一方、水が乱流状態であると、被検査物に当たった際に、安定した水傘状態にならず、水が四散しやすくなる。安定した層流状態の水の流れでは、超音波の減衰が小さく、伝播も安定している。
【0032】
上記の例では、送信用の超音波検査用スカーター1で、探触子3より1MHzの周波数で超音波を送信し、受信用の超音波検査用スカーター50では、1MHzの超音波を測定したところ、エコーの高さ変動は、20.5~28.0%となり、変動が少なく安定していた。一方、水の整流が十分になされていないスカーターを用いた場合、水が乱流状態になり、エコーの高さ変動は6.0~19.0%になって減衰量が多くなるとともに常に変動が生じて不安定な超音波の伝搬状態になっていた。
また、本実施形態の超音波検査用スカーター1は、正面視で38mm径内に収まる形状を有しているため、整流を行うためには十分な流路を確保することが難しくなるが、整流部20、21の配置およびフィルタ22の配置により整流作用が十分に得られるため、噴射された水は良好な層流状態が得られている。
【0033】
上記した例では、平盤状の被検査物100を対象にして説明をしたが、例えば、被検査物110を対象にして、送信用の超音波検査用スカーター1を狭小な空間に配置する場合について説明する。
被検査物の一例を図10に示す。
被検査物110は、長尺形状を有し、断面R形状となるR部を中央部分に有しており、断面R形状部分を挟んで両側の片が約45度の角度差を有している。R部には、コア111のあるものと、ないものとがある。図では、コア111を有するものを示しており、本実施形態としては、コアの有無が限定されるものではない。この被検査物110は、例えば航空機用の翼ノーズ部などが例として挙げられる。
この例では、R部を被検査部110Aとしており、例えば断面R形状部分の内面側に送信用の超音波検査用スカーター1を配置し、断面R形状部分の外面側に受信用の超音波検査用スカーター50を配置する。
被検査部110Aは、測定範囲が頂上部分に限定されるものではなく、その周囲を測定する必要がある。この際に、超音波検査用スカーター1は、被検査部110Aにできるだけ垂直に水を当て、その先に受信用に超音波検査用スカーター50を配置するのが望ましい。
【0034】
しかし、スカーターを狭小な空間に配置した際に、移動が制限されると、噴射される水を被検査部に良好に当てることが難しくなる。
図11は、被検査物110の内面側に送信用の超音波測定用スカーターを配置した図であり、図示右側の図は、本実施形態の超音波検査用スカーター1を配置したものであり、図示左側の図は、関連技術で角形の形状を有する超音波検査用スカーター50を配置したものである。図中の二点鎖線は、スカーターと被検査物110の回転位置が変更された際の位置関係を示している。
超音波検査用スカーター1は、ノズル11を下方にした正面視の状態で横幅が33mm、探触子3を含めた縦長さが35.5mmで、全体が38mmの円形内に収まっている。超音波検査用スカーター50は、ノズルを下方にした正面視の状態で、横幅が37mm、探触子3を含めた縦長さが40mm、本体形状が矩形状の形を有し、全体形状は49mmの円形内に収まる形状を有している。
【0035】
超音波検査用スカーター50は、被検査部110Aの頂上部分に向けた状態では、角部が被検査物110の被検査部110Aの内面に近接しており、回転範囲が制限され、回転角度が大きくなると被検査物110の内面と接触してしまう。このため被検査部110Aに対しては斜めに水を当てて測定を行わざるを得ず、良好な超音波透過を行うことができない。
これに対し、超音波検査用スカーター1は、給水管6を被検査物100の長尺方向に配置して、被検査物110の内面と広い範囲に亘って所定のクリアランスを保つことができ、超音波検査用スカーター1を大きな角度範囲で調整することができる。これによりノズル11から噴射される水を被検査物110の内面に水をほぼ垂直に当てることができ、被検査物100に対し超音波を良好に透過させることができる。特に超音波検査用スカーター1は、ノズル11がある下面側が断面弧状に形成されており、回転調整をより容易に行うことができる。
【0036】
<超音波検査装置>
次に、送信用のスカーターと受信用のスカーターとを用いて、被検査物110をマニピュレーターで保持・移動する超音波検査装置について、図12図14の図に基づいて説明する。
図12は、超音波検査装置200の平面概略図とブロック図を示しており、超音波検査用スカーター1と、超音波検査用スカーター50とを水の噴射方向が対向するように向かい合わせに設置固定される。
超音波検査装置200では、超音波検査用スカーター1と、超音波検査要スカーター50とに給水を行う給水ポンプ201が配置されており、給水ポンプ部201の出側は、超音波検査用スカーター1と、超音波検査要スカーター50とに給水配管202に接続されている。図では、簡略のため、一本のラインで給水配管202が記載されているが、実際には、それぞれの超音波検査用スカーター1、50に独立して給水を行うことができる。
給水ポンプ201、給水配管202によって所定の水量で超音波検査用スカーター1と超音波検査要スカーター50とに給水を行うことができる。
【0037】
また、超音波検査用スカーター1および超音波検査要スカーター50の探触子には超音波信号を伝送する超音波伝送ケーブル215が設置されており、その一端は、探傷器210に接続されている。
探傷器210には、信号ケーブル225によって、収録PC211、解析PC212が接続されており、解析PC212では、超音波検査用スカーター50で測定された超音波を受けて被検査部における探傷の解析を行い、必要に応じて解析前または解析後のデータを収録PC211に保存する。
【0038】
マニピュレーター230には、信号ケーブル222によりロボットコントローラー221が接続されており、ロボットコントローラー221は信号ケーブル226によって制御盤220が接続されている。さらに、ロボットコントローラー221は、スカーター側のセンサと信号ケーブル227により接続されている。信号ケーブル226、ロボットコントローラー221、信号ケーブル222を介して、制御盤220によってマニピュレーター230に対する位置信号が送られ、制御盤220の指令に従ってロボットコントローラー221によりマニピュレーター230の動作が制御される。スカーター側のセンサによる位置信号は、信号ケーブル227を通じてロボットコントローラー221に通知される。
【0039】
制御盤220には、信号ケーブル223によってPLC213(Programmable Logic Controller)が接続されており、PLC213と制御盤220との間では、マニピュレーター230による被検査物の位置信号のやりとりが行われる。
また、PLC213には信号ケーブル224により前記した探傷器210が接続されている。PLC213からは探傷器210に位置信号が送られ、探傷位置と探傷結果との関連付けが行われる。
【0040】
超音波検査装置200は、図12、13に示すように、超音波検査用スカーター1と超音波検査用スカーター50が対向して配置され、それぞれが後述するスカーター固定具250A、250Bに固定されており、その後方側にマニピュレーター230が配置されており、マニピュレーター230の一側方に被検査物置き台245を設置されている。
マニピュレーター230の後方側にハンド置き台240が設けられている。
【0041】
ハンド置き台240には、ワーククランプハンド241が配置される。ワーククランプハンドは、被検査物の大小に対応して異なるサイズのものを用いることができ、図では、大サイズのワーククランプハンド大241Aと小サイズのワーククランプハンド小241Bとが置かれている。
【0042】
マニピュレーター230は、基台上にベース部230Aが縦軸により水平回転可能に取り付けられており、ベース部230Aに第1アーム部230Bの基端側が水平軸により縦回転可能に取り付けられており、第1アーム部230Bの先端側に第2アーム部230Cの基端側が水平軸により縦回転可能に取り付けられている。第2アーム部230Cの先端側には、ハンド部230Dが第2アーム部230Cに沿った軸により自転可能となっている。これによりハンド部230Dは、図13の動作範囲B内で移動することができる。
【0043】
マニピュレーター230は、制御盤220の制御指令を受けてロボットコントローラー221を介して各回転軸が回転して所定の位置に移動する。最初に、ハンド置き台240にあるワーククランプハンド241を取り出して吸着により保持する。
マニピュレーター230では、ベース部230A、第1アーム部230B、第2アーム部230C、ハンド部230Dの回転移動により、ワーククランプハンド241を保持しているハンド部230Dを移動させ、被検査物置き台245に設置されている被検査物110をクランプし、この被検査物110を測定に備えて移動させる。
【0044】
被検査物110は、マニピュレーター230の移動動作により、超音波検査用スカーター1と超音波検査要スカーター50の間の上方から、被検査物110が縦になった状態で下降させる。その際には、被検査物110のR部内面側すなわち被検査部110Aの内面が超音波検査用スカーター1側に向き、かつ超音波検査用スカーター1の先端側から所定の距離、例えば5mm程度の間隔を維持するようにする。被検査部110と超音波検査用スカーターとの距離は、超音波検査要スカーター50側に設けられた距離測定センサ251A、251Bの測定により行うことができる。
【0045】
測定の際は、超音波検査用スカーター1と超音波検査要スカーター50のノズルからそれぞれ水を噴射した状態で、超音波検査用スカーター1から水柱中を伝搬させて被検査部110Aを透過させ、超音波検査要スカーター50で水柱中に超音波を伝搬させ、受信した超音波によって被検査部110Aの探傷を行う。超音波は、超音波伝送ケーブル215を経て探傷器210に送られ、解析PC212により超音波測定に対する解析が行われる。その際の被検査部110Aの位置はセンサ251A、251Bによる検知結果、位置信号指令から取得することができ、PLC213を介して探傷器210に通知され、探傷結果と探傷位置との関連付けが行われる。
【0046】
被検査部110Aの異なる位置を測定する場合は、マニピュレーター230により、超音波検査用スカーター1の周りで被検査物110を、被検査部110Aの縦軸を中心に回転させ、R部周辺の測定を行う。この際には、超音波検査用スカーター1の先端側と同じ間隔を有するように距離測定センサ251A、251Bで間隔を測定しつつ、被検査物110の回転移動を行う。その後、上記と同様に被検査部110Aの測定を行うことができる。
また、マニピュレーター230により被検査物110を縦方向に移動させて、同様に異なる位置での被検査部110Aの測定を行い、また同様に、被検査物110を回転させて被検査部110A周辺の測定を行う。
【0047】
以上の動作により、超音波検査用スカーター1と超音波検査用スカーター50をスカーター固定具に固定して被検物110の測定を行うことが可能になる。
これによりスカーターから噴射される噴流は安定し、水量の変動や水しぶきの発生が抑えられることから噴流中を伝播する超音波は安定した状態で被検査部にあたり、検査精度が向上する。また被検物110はマニピュレーター230により縦方向に動かして測定を行うため、被検物が長尺であったり、または可撓性を持つ場合に発生するたわみや曲げ応力を抑えることが出来るため、被検物のたわみに応じた探傷位置の補正が不要で、測定位置の精度を上げることが可能で、さらに曲げ応力抑制は被検物の破損防止にもつながる。
検査された被検査物110は、マニピュレーター230によって所定個所に移動させることができる。本実施形態の超音波検査用スカーター1は、全体の断面形状を小さくして配置を容易にしており、また、被検査物を回転させて測定する際にも広い範囲で測定をすることが可能になる。
【0048】
なお、上記形態では、マニピュレーターとして第1アーム部と第2アーム部とハンド部を有するものについて説明したが、構成部材は特に限定されるものではなく、適宜の機構を組み合わせてマニピュレーターを構成することができる。
【0049】
なお、上記実施形態では、超音波検査用マニピュレーターから水が噴射されるものとして水に限定して説明したが、その他の液体を用いるものであってもよい。
【0050】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明の範囲を逸脱しない限りは上記実施形態に対する適宜の変更が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 超音波検査用スカーター
2 スカーター本体
2A 本体部材
2B 本体部材
2C 本体部材
3 探触子
4 ケーブル
5 給水口
5A 導入管
6 給水管
6A 給水連絡路
10 中央筒部
10A 中央中空部
10B テーパ面
11 ノズル
11A ノズル孔
11B 上面周壁
12 外周内側筒部
12A 外周内側中空部
12B 連結中空部
12C リブ
12D 蓋部
12E 取付孔
12F シーリング
13 外周外側筒部
13A 外周外側中空部
13B 傾斜面
13C リブ
20 整流部
20A 貫通孔
20B 整流板
20C 整流面
21 整流部
21A 整流部筒体
21B 整流板
21C 整流面
22 フィルタ
30 水柱
50 超音波検査用スカーター
60 水柱
100 被検査物
100A 被検査部
110 被検査物
110A 被検査部
200 超音波検査装置
201 給水ポンプ
202 給水配管
210 探傷器
211 収録PC
212 解析PC
213 PLC
215 超音波伝送ケーブル
220 制御盤
221 ロボットコントローラー
222 信号ケーブル
223 信号ケーブル
224 信号ケーブル
225 信号ケーブル
226 信号ケーブル
227 信号ケーブル
230 マニピュレーター
230A ベース部
230B 第1アーム部
230C 第2アーム部
230D ハンド部
240 ハンド置き台
241 ワーククランプハンド
241A ワーククランプ大
241B ワーククランプ小
245 被測定物置き台
250A スカーター固定具
250B スカーター固定具
251A 距離測定センサ
251B 距離測定センサ
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14