(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118380
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器蓋
(51)【国際特許分類】
B65D 41/34 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
B65D41/34 116
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021305
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】丸山 有友
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA12
3E084AA22
3E084AA24
3E084AA32
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC04
3E084CC05
3E084DA01
3E084DB02
3E084DB05
3E084DB12
3E084DC04
3E084DC05
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA04
3E084GB04
3E084GB08
3E084KA13
3E084KB01
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】係止手段32が充分な剛性を維持しながら、材料使用量を低減させることのできる、新規の合成樹脂製容器蓋を提供すること。
【解決手段】係止手段32の主部34の内周縁をタンパーエビデント裾部18の内周面と平行に周方向に連続させると共に、上記主部34の嵌合上面40だけでなく下面42にも複数個の肉抜き部44を周方向に間隔をおいて形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを具備し、該スカート壁には周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリットと該スリット間に存在する複数個の橋絡部とから構成された周方向に延びる破断ラインが形成されており、該スカート壁は該破断ラインよりも上方のスカート主部と該破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部とに区画されており、該スカート主部の内周面には雌螺条が形成され、該タンパーエビデント裾部の内周面には半径方向内方に突出し且つ周方向に延在する複数個の係止突起又は半径方向内方に突出し且つ周方向に連続して延在する環状係止突条から構成される係止手段が配設されており、該係止手段の主部の上面には上方に向かって内径が漸次増大して該タンパーエビデント裾部の内周面に接続される嵌合上面が設けられ、該主部の下面は下方に向かって径方向外側に傾斜して該タンパーエビデント裾部の内周面に接続される合成樹脂製容器蓋において、
該主部の内周縁は該タンパーエビデント裾部の内周面と平行に周方向に連続し、該主部の該嵌合上面及び該下面には夫々複数個の肉抜き部が周方向に間隔をおいて形成されている、ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋。
【請求項2】
該嵌合上面に形成された該肉抜き部の周方向幅及び数と該下面に形成された該肉抜き部の周方向幅及び数とは等しく、該嵌合上面に形成された該肉抜き部及び該下面に形成された該肉抜き部は周方向において整合して配置される、請求項1に記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項3】
該嵌合上面に形成された該肉抜き部の周方向中心位置と該下面に形成された該肉抜き部の周方向中心位置とは周方向において交互に配置される、請求項1に記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項4】
該係止手段が複数個の該係止突起から構成される場合、該係止突起の周方向両側の端部の内周縁は、該主部の該内周縁の周方向端から周方向の外側に向かって径方向外方に傾斜して該タンパーエビデント裾部の内周面に接続される、請求項1乃至3のいずれかに記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項5】
該端部の上面には、上方に向かって内径が漸次増大して該タンパーエビデント裾部の内周面に接続される上側補強部が設けられている、請求項4に記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項6】
該端部の下面には、下方に向かって内径が漸次増大して該タンパーエビデント裾部の内周面に接続される下側補強部が設けられている、請求項4又は5に記載の合成樹脂製容器蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製容器蓋に関する。
【0002】
本発明は、スカート壁におけるタンパーエビデント裾部の内周面には、周方向に延在する複数個の係止突起或いは周方向に連続して延在する環状係止突条から構成された係止手段が形成されている形態の合成樹脂製容器蓋に関する。
【背景技術】
【0003】
周知の如く、ガラス、合成樹脂或いは金属薄板から形成され、円筒形状である口頸部の外周面には雄螺条とこの雄螺条の下方に位置する係止あご部が配設されている容器のための容器蓋として、円形天面壁とこの天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを具備し、スカート壁には周方向に間隔おいて周方向に延びるスリットとかかるスリット間に存在する橋絡部とから構成された周方向に延びる破断ラインが形成されており、スカート壁は破断ラインよりも上方のスカート主部と破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部とに区画されている合成樹脂製容器蓋が広く実用に供されている。スカート主部の内周面には雌螺条が形成され、タンパーエビデント裾部の内周面には係止手段が形成されている。係止手段は、半径方向内方に突出し且つ周方向に延在する複数個の係止突起又は半径方向内方に突出し且つ周方向に連続して延在する環状係止突条から構成されている。係止手段の主部の上面には上方に向かって内径が漸次増大して該タンパーエビデント裾部の内周面に接続される嵌合上面が設けられている。また、係止手段の主部の下面は下方に向かって径方向外側に傾斜してタンパーエビデント裾部の内周面に接続されている。
【0004】
内容物が充填された容器の口頸部を密封する際には、口頸部に容器蓋を被嵌せしめて閉回転方向に回転せしめ、口頸部の雄螺条に容器蓋の雌螺条を螺合せしめる。かくして口頸部に容器蓋を所要とおりに装着すると、容器蓋の係止手段は口頸部の係止あご部を弾性的に乗り越えてその下方に位置する。係止手段が係止あご部を弾性的に乗り越える際には、係止手段の下面が下方に向かって径方向外側に傾斜していることによってタンパーエビデント裾部は円滑に弾性変形せしめられる。口頸部を開封して容器の内容物を消費する際には、容器蓋を開方向に回転せしめる。かくすると、雄螺条と雌螺条との螺合解除に応じて口頸部に対して容器蓋が上昇せしめられる。容器蓋が幾分上昇せしめられると、容器蓋の係止手段が口頸部の係止あご部に係止せしめられ、これによってタンパーエビデント裾部の上昇が阻止される。係止手段が係止あご部に係止せしめられる際には、係止手段は嵌合上面の存在によって係止あご部に強固に保持される。容器蓋の開方向への回転を続けると、スカート壁に形成されている周方向破断ラインが破断され、タンパーエビデント裾部がスカート主部から分離される(或いは、タンパーエビデント裾部に軸線方向破断ラインが形成されている場合には、軸線方向破断ラインが破断されてタンパーエビデント裾部が無端環状から有端帯状に展開され、タンパーエビデント裾部はスカート主部から完全に分離されることなく周方向の一部においてスカート主部に接続され続ける)。容器蓋の開方向への回転を続けると、タンパーエビデント裾部を残留せしめて容器蓋が(或いはタンパーエビデント裾部を含む容器蓋の全体が)口頸部から離脱され、口頸部が開封される。
【0005】
また、近時においては、環境負荷や製造コストを低減する観点から、容器蓋を製造するための材料使用量を低減することが要求されている。下記特許文献1には、係止手段の嵌合上面に複数個の肉抜き部を周方向に間隔をおいて設けることで材料使用量を低減させた容器蓋の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、上記特許文献1に開示された容器蓋にあっても材料使用量の低減は不充分であって更なる低減が要求されている。
【0008】
ところで、係止手段を形成するための材料使用量を低減させるべく係止手段に肉抜き部を設けると、係止手段の剛性が低下することから、以下のとおりの問題を生じる虞がある。第一に、容器蓋を成形金型から離型せしめる際には、半径方向内方に突出する係止手段は成形金型から所謂無理抜きされるため、係止手段の剛性が低いと、係止手段が所謂だれの如き成形不良を生じる虞がある。第二に、口頸部を開封する際には、係止手段は口頸部の係止あご部に係止せしめられてタンパーエビデント裾部の上昇を確実に阻止しなければならないため、係止手段の剛性が低いと、係止手段が弾性的に変形して係止あご部を乗り越えてしまう所謂すっぽ抜けを生じる虞がある。従って、係止手段に肉抜き部を設けて係止手段を形成するための使用材料を低減したとしても、係止手段は充分な剛性を維持していなければならない。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、係止手段が充分な剛性を維持しながら、特許文献1に開示された容器蓋よりも材料使用量を更に低減させることのできる、新規且つ改良された合成樹脂製容器蓋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討の結果、係止手段の主部の内周縁をタンパーエビデント裾部の内周面と平行に周方向に連続させると共に、上記主部の嵌合上面だけでなく下面にも複数個の肉抜き部を周方向に間隔をおいて形成することで、上記主たる技術的課題を解決できることを見出した。
【0011】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を解決する合成樹脂製容器蓋として、円形天面壁と該天面壁の周縁から垂下する円筒形スカート壁とを具備し、該スカート壁には周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリットと該スリット間に存在する複数個の橋絡部とから構成された周方向に延びる破断ラインが形成されており、該スカート壁は該破断ラインよりも上方のスカート主部と該破断ラインよりも下方のタンパーエビデント裾部とに区画されており、該スカート主部の内周面には雌螺条が形成され、該タンパーエビデント裾部の内周面には半径方向内方に突出し且つ周方向に延在する複数個の係止突起又は半径方向内方に突出し且つ周方向に連続して延在する環状係止突条から構成される係止手段が配設されており、該係止手段の主部の上面には上方に向かって内径が漸次増大して該タンパーエビデント裾部の内周面に接続される嵌合上面が設けられ、該主部の下面は下方に向かって径方向外側に傾斜して該タンパーエビデント裾部の内周面に接続される合成樹脂製容器蓋において、
該主部の内周縁は該タンパーエビデント裾部の内周面と平行に周方向に連続し、該主部の該嵌合上面及び該下面には夫々複数個の肉抜き部が周方向に間隔をおいて形成されている、ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋が提供される。
【0012】
好ましくは、該嵌合上面に形成された該肉抜き部の周方向幅及び数と該下面に形成された該肉抜き部の周方向幅及び数とは等しく、該嵌合上面に形成された該肉抜き部及び該下面に形成された該肉抜き部は周方向において整合して配置される。また、該嵌合上面に形成された該肉抜き部の周方向中心位置と該下面に形成された該肉抜き部の周方向中心位置とは周方向において交互に配置されていてもよい。該係止手段が複数個の該係止突起から構成される場合、該係止突起の周方向両側の端部の内周縁は、該主部の該内周縁の周方向端から周方向の外側に向かって径方向外方に傾斜して該タンパーエビデント裾部の内周面に接続されるのが好適である。この場合には、該端部の上面には、上方に向かって内径が漸次増大して該タンパーエビデント裾部の内周面に接続される上側補強部が設けられているのがよい。また、該端部の下面には、下方に向かって内径が漸次増大して該タンパーエビデント裾部の内周面に接続される下側補強部が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、係止手段の主部の嵌合上面だけでなく下面にも複数個の肉抜き部が形成されていることから、より少ない材料使用量で容器蓋を製造することができる。本発明では更に、係止手段の主部の内周縁がタンパーエビデント裾部の内周面と平行に周方向に連続することに起因して、容器蓋が成形金型から離型される過程で係止手段が成形金型から無理抜きされる際には係止手段の主部の内周縁全体が成形金型と、口頸部を開封する過程で係止手段が係止あご部に係止せしめられる際には係止手段の主部の内周縁の上面全体が係止あご部の下面と当接する故に、係止手段は変形しにくい、つまり係止手段は充分な剛性を有する。従って、本発明の容器蓋にあっては、より少ない材料使用量で製造可能であるにも拘わらず、係止手段の剛性は充分に維持されるため、係止手段に外力が作用しても、タンパーエビデント裾部の変形は防止される。本発明にあっては更に、係止手段の上面及び下面に夫々複数個の肉抜き部が設けられているため、係止手段の表面積は増大せしめられ、これにより、係止手段の上面と下面との間で生じる冷却速度の差を小さくすることができると共に、成形後に容器蓋を効率的に冷却させることが可能となり、製造効率が良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に従って構成された合成樹脂製容器蓋の好適実施形態を、一部を断面で示す図。
【
図3】
図1に示す容器蓋及びこれが装着された容器の口頸部の一部拡大して示す図。
【
図4】
図1に示す容器蓋のタンパーエビデント裾部の内周面を展開して示す図。
【
図5】本発明に従って構成された容器蓋の第1変形例における、タンパーエビデント裾部の内周面を展開して示す図。
【
図6】本発明に従って構成された容器蓋の第2変形例における、タンパーエビデント裾部の内周面を展開して示す図。
【
図7】本発明に従って構成された容器蓋の第3変形例における、タンパーエビデント裾部の内周面を展開して示す図。
【
図8】本発明に従って構成された容器蓋の第4変形例における、タンパーエビデント裾部の内周面を展開して示す図。
【
図9】本発明に従って構成された容器蓋の第5変形例における、タンパーエビデント裾部の内周面を展開して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に従って構成された合成樹脂製容器蓋の好適実施形態を示す添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0016】
図1及び
図2を参照して説明すると、ポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から射出成形又は圧縮成形することができる容器蓋2は、円形天面壁4とこの天面壁4の周縁から垂下する円筒形スカート壁6とを具備する。天面壁4の内面外周縁部には、下方に垂下する比較的長い筒状の内側シール片8及び下方に垂下する比較的短い筒状の外側シール片10が形成されている。内側シール片8と外側シール片との間には、天面壁4の内面から下方に僅かに突出する環状微小突条12も形成されている。
【0017】
スカート壁6には周方向に延びる破断ライン14が形成されており、スカート壁6は破断ライン14より上方のスカート主部16と破断ライン14より下方のタンパーエビデント裾部18とに区画されている。破断ライン14は周方向に間隔をおいて周方向に延びる複数個のスリット(切り溝)20とスリット20間に存在する複数個の橋絡部22とから構成されており、タンパーエビデント裾部18は複数個の橋絡部22を介してスカート主部16に接続されている。
【0018】
スカート主部16の外周面には、周方向に見て交互に存在する凹凸形状から構成された滑り止めローレット24が形成されている。スカート壁6のスカート主部16の内周面には雌螺条26が形成されている。雌螺条26には周方向に間隔をおいて複数個の欠損部28が設けられている。
【0019】
図1及び
図2と共に
図3及び
図4も参照して説明すると、タンパーエビデント裾部18の内周面には係止手段が配設されている。図示の実施形態においては、係止手段は、半径方向内方に突出し且つ周方向に延在する複数個(図示の実施形態においては5個)の係止突起32から構成されている。係止突起32は、内周縁がタンパーエビデント裾部18の内周面と平行に周方向に連続する主部34と、主部34の周方向両側に位置し且つ内周縁が主部34の内周縁の周方向端から周方向の外側に向かって径方向外方に傾斜してタンパーエビデント裾部18の内周面に接続される端部36とに区画される。
図3に示すとおり、係止突起32の主部34の上面は、径方向内側に位置し且つ略水平に延在する係止上面38と、径方向外側に位置し且つ上方に向かって内径が漸次増大してタンパーエビデント裾部18の内周面に接続される嵌合上面40とに区画される。図示の実施形態においては、嵌合上面40の縦断面形状は、上方に向かって直線状に延出した後に径方向外側に傾斜して延出している。一方、係止突起32の主部34の下面42は下方に向かって径方向外側に傾斜してタンパーエビデント裾部18の内周面に接続されている。そして、
図1及び
図4を参照することによって理解されるとおり、主部34の嵌合上面40及び下面42には夫々複数個の肉抜き部44が周方向に間隔をおいて形成されている。肉抜き部44は、嵌合上面40及び下面42をタンパーエビデント裾部18の内周面が露呈せしめられるようにして切り欠くことにより形成される。嵌合上面40において切り欠かれた角部、つまり嵌合上面40に形成された肉抜き部44の角部には、周方向に連続して延在する突条46が残留せしめられている。突条46の縦断面形状は凹弧状となっており、その径方向内側端縁は係止上面38の径方向外側端縁に連続的に接続されている。突条46の縦断面形状が凹弧状であることで、容器蓋2を成形金型から型抜きする際の抜き抵抗を低減することができ、係止突起32の形状崩れが抑制される。一方、下面42において切り欠かれた部位の下面は実質上水平にせしめられている。
図4を参照して説明すると、図示の実施形態においては、嵌合上面40及び下面42に形成された肉抜き部44の数は4個ずつで等しい。そして、肉抜き部44の周方向幅もすべて等しく、全ての肉抜き部44は周方向に等間隔に配置されている。従って、図示の実施形態においては、嵌合上面40に形成された肉抜き部44と下面42に形成された肉抜き部44とは周方向において整合して配置されている。また、肉抜き部44の周方向幅は、周方向に隣接して位置する2つの肉抜き部44の間に残留する残留部50の周方向幅に比べて広く、残留部50はリブ状となっている。係止突起32の端部36の上面には、上方に向かって内径が漸次増大してタンパーエビデント裾部18の内周面に接続される上側補強部52aが設けられており、上側補強部52aは肉抜きされていない。端部36の下面には、下方に向かって内径が漸次増大してタンパーエビデント裾部18の内周面に接続される下側補強部52bが設けられており、下側補強部52bも肉抜きされていない。また、図示の実施形態においては、下側補強部52bは径方向に主部34から離れる方向に内径が漸次増大している。なお、端部36の下面の下端縁は、周方向外側に向かって漸次上方に傾斜せしめられている。タンパーエビデント裾部18の内周面には更に、周方向に隣接して配置される2つの係止突起32の間において周方向に連続して延在する突条54も形成されている。突条54の断面形状及び上下方向高さ位置は突条46と同じであり、突条54の周方向両端は係止突起32の周方向端面に夫々接続されている。
【0020】
図1には容器蓋2と共に容器の口頸部100が二点鎖線で示されている。ポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂、ガラス或いは金属薄板から形成することができる容器の口頸部100は全体として円筒形状であり、口頸部100の外周面には雄螺条102と雄螺条102の下方に位置する係止あご部104が形成されている。係止あご部104は下方に向かって外径が漸次増大する弧状の上面、円筒形状の外周面及び実質上水平に延在する下面を有する。口頸部100の外周面には、更に、係止あご部104の下方に位置するサポートリング106(かかるサポートリング106は当業者には周知の如く容器の搬送に利用される)も配設されている。
【0021】
容器内に内容物を充填した後においては、口頸部100に容器蓋2を被嵌して容器蓋2を閉回転方向、
図1において上方から見て時計方向、に回転せしめ、容器蓋2の雌螺条26を口頸部100の雄螺条102に螺合せしめる。
図1に示す状態まで雌螺条26を雄螺条102に螺合せしめると、容器蓋2の内側シール片8が口頸部100内に侵入して口頸部100の内周面に密接され、外側シール片10が口頸部100の外周面に密接乃至近接せしめられ、環状微小突条12が口頸部100の頂面に密接され、かくして口頸部100が密封される。タンパーエビデント裾部18の内周面に配設されている係止突起32は口頸部100の係止あご部104を弾性的に(即ちタンパーエビデント裾部18の弾性変形乃至変位によって)乗り越えて係止あご部104の下方に位置する。係止突起32が口頸部100の係止あご部104を弾性的に乗り越える際には、係止突起32の下面42が下方に向かって径方向外側に傾斜していることによってタンパーエビデント裾部18は円滑に弾性変形せしめられる。かかる状態にあっては、
図1と共に
図3を参照することによって理解されるとおり、係止突起32の嵌合上面40が口頸部100の係止あご部104の外周面下端部に接触乃至密接せしめられる。
【0022】
内容物を消費するために口頸部100を開封する際には、容器蓋2を開方向、即ち
図1において上方から見て反時計方向、に回転せしめる。かくすると、雄螺条102と雌螺条26の螺合が漸次解除され、スカート主部16と共にタンパーエビデント裾部18は上記回転と共に口頸部100に対して上昇せしめられる。このとき、
図2を参照することによって理解されるとおり、タンパーエビデント裾部18に設けられた係止突起32の嵌合上面40が口頸部100の係止あご部104の外周面下端部に密接せしめられることで、摩擦による抵抗トルクが漸次増大せしめられる。容器蓋2が所定程度口頸部100に対して上昇せしめられると、係止突起32の係止上面38が係止あご部104の下面に係止せしめられ、タンパーエビデント裾部18の軸線方向上方への移動は阻止される。このとき、係止突起32の嵌合上面40も口頸部100の係止あご部104の外周面下端部に密接せしめられていることで、タンパーエビデント裾部18は係止あご部104に保持される。そして、タンパーエビデント裾部18の軸線方向上方への移動が阻止されることで、破断ライン14の橋絡部22に応力が生成されて橋絡部22は破断され、タンパーエビデント裾部18はスカート主部16から切り離される。破断ライン14が破断された後においては、タンパーエビデント裾部18を口頸部100に残留せしめて、容器蓋2の天面壁4及びスカート壁6のスカート主部16は回転と共に軸線方向上方に自由に移動せしめられて口頸部100から離脱され、かくして口頸部100が開封される。所望ならば、タンパーエビデント裾部18に軸線方向破断ラインを形成し、容器の口頸部100を開封する際には上記軸線方向破断ラインが破断され、一方周方向に延在する破断ライン14はその一部が破断されることなく維持され、タンパーエビデント裾部18が無端環状から有端環状に展開され、タンパーエビデント裾部18と共に容器蓋2の全体が口頸部100から離脱されるようになすこともできる。
【0023】
本発明によれば、係止突起32の主部34の嵌合上面40だけでなく下面42にも複数個の肉抜き部44が形成されていることから、より少ない材料使用量で容器蓋を製造することができる。本発明では更に、係止突起32の主部34の内周縁がタンパーエビデント裾部18の内周面と平行に周方向に連続することに起因して、容器蓋が成形金型から離型される過程で係止突起32が成形金型から無理抜きされる際には係止突起32の主部34の内周縁全体が成形金型と、口頸部100を開封する過程で係止突起32が係止あご部104に係止せしめられる際には係止突起32の主部34の内周縁の上面全体が係止あご部104の下面と当接する故に、係止突起32は変形しにくい、つまり係止突起32は充分な剛性を有する。従って、本発明の容器蓋にあっては、より少ない材料使用量で製造可能であるにも拘わらず、係止突起32の剛性は充分に維持されるため、係止突起32に外力が作用しても、タンパーエビデント裾部18の変形は防止される。本発明にあっては更に、係止突起32の上面及び下面に夫々複数個の肉抜き部44が設けられているため、係止突起32の表面積は増大せしめられ、これにより、係止突起32の上面と下面との間で生じる冷却速度の差を小さくすることができると共に、成形後に容器蓋を効率的に冷却させることが可能となり、製造効率が良好となる。また、係止突起32の端部36の上面に上側補強部52aを、下面に下側補強部52bを設けることで係止突起32の剛性は良好に維持される。
【0024】
上述した実施形態においては、係止突起32の、嵌合上面40に形成された肉抜き部44の周方向幅及び数と下面42に形成された肉抜き部44の周方向幅及び数とは等しく、嵌合上面40に形成された肉抜き部44と下面42に形成された肉抜き部44とは周方向において整合して配置されていたが、
図5乃至
図8に示す変形例の如く、嵌合上面に形成された肉抜き部及び下面に形成された肉抜き部の周方向幅及び数並びに周方向位置は適宜に変更してよい。以下の説明では、上述した実施形態と同一の部位については、同一の番号に、第1乃至第4変形例において夫々a乃至eを付して示す。
【0025】
図5に示す第1変形例にあっては、係止突起32aの嵌合上面40aに形成された肉抜き部44aの数と下面42aに形成された肉抜き部44aの数は等しいが、嵌合上面40aに形成された肉抜き部44aの周方向幅の方が下面42aに形成された肉抜き部44aの周方向幅よりも幾分広く、嵌合上面40aに形成された肉抜き部44aの周方向中心位置と下面42aに形成された肉抜き部44aとは周方向中心位置とは周方向において交互に配置されている。
【0026】
図6に示す第2変形例にあっては、係止突起32bの嵌合上面40bに形成された肉抜き部44bの数と下面42bに形成された肉抜き部44bの数は等しいが、嵌合上面40bに形成された肉抜き部44bの周方向幅の方が下面42bに形成された肉抜き部44bの周方向幅よりも幾分狭い。そして、本変形例では、嵌合上面40bに残留せしめられた残留部50bの周方向幅は下面42bに残留せしめられた残留部50bの周方向幅よりも広く、嵌合上面40bに残留せしめられた残留部50bの周方向中心位置と下面42bに残留せしめられた残留部50bの周方向中心位置とが周方向において整合せしめられている。
【0027】
図7に示す第3変形例にあっては、係止突起32cの嵌合上面40cに形成された肉抜き部44cの数は4であるのに対し下面42cに形成された肉抜き部44cの数は3であり、嵌合上面40cに形成された肉抜き部44cの周方向幅の方が下面42cに形成された肉抜き部44cの周方向幅よりも広い。そして、本変形例では、嵌合上面40cに残留せしめられた残留部50cの周方向幅及び周方向中心位置と下面42cに形成された肉抜き部44cの周方向幅及び周方向中心位置とが対応せしめられている。
【0028】
図8に示す第4変形例にあっては、係止突起32dの嵌合上面40dに形成された肉抜き部44dの数は4であるのに対し下面42dに形成された肉抜き部44dの数は3であるが、嵌合上面40dに形成された肉抜き部44dの周方向幅と下面42cに形成された肉抜き部44cの周方向幅とは略同一、嵌合上面40dに残留せしめられた残留部50dの周方向幅と下面42dに残留せしめられた残留部50dの周方向幅とは略同一であり、嵌合上面40cに残留せしめられた残留部50dの周方向中心位置と下面42dに形成された肉抜き部44dの周方向中心位置とが整合せしめられている。
【0029】
例えば第3変形例や第4変形例のように、嵌合上面40c、40dに形成された肉抜き部44c、44dと下面42c、42dに形成された肉抜き部44c、44dとが周方向において交互に配置されると、嵌合上面40c、40d及び下面42c、42dの両面が周方向の同じ位置で肉抜きされることが可及的に回避されるため、係止突起32c、32dの剛性が
図1乃至
図3に示す実施形態の係止突起32の剛性よりもより一層向上せしめられる。
【0030】
また、上述した実施形態はいずれも、係止手段は半径方向内方に突出し且つ周方向に延在する複数個の係止突起から構成されていたが、
図9に示す第5変形例のように、係止手段は半径方向内方に突出し且つ周方向に連続して延在する単一の環状係止突条32eから構成されていてもよい。係止手段が環状係止突条32eにより構成される場合には、環状係止突条32e全体が係止手段の主部34eとなる。この場合も嵌合上面40e及び下面42eの夫々に形成される肉抜き部44eの数及び周方向幅並びに周方向位置を適宜変更してもよい。
【0031】
以上、添付図面を参照して本発明の容器蓋の好適実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の範囲内において更なる変形例もあり得る。例えば、図示の実施形態においては、係止手段の上面には、上方に向かって内径が漸次増大してタンパーエビデント裾部の内周面に接続される嵌合上面と共に、略水平に延在する係止上面も設けられていたが、係止上面を省略して係止手段の上面全体を嵌合上面としてもよい。また、肉抜き部44の形状は実施例及び変形例においては矩形のものであったが、周方向にみて残留部の上端同士、及び下端同士を円弧状(アーチ状)に繋ぐようにするなど、曲線的な肉抜きでもよい。
【符号の説明】
【0032】
2:容器蓋
4:天面壁
6:スカート壁
14:破断ライン
16:スカート主部
18:タンパーエビデント裾部
20:スリット
22:橋絡部
26:雌螺条
32:係止突起(係止手段)
34:(係止突起の)主部
40:(係止突起の主部の)嵌合上面
42:(係止突起の主部の)下面
44:肉抜き部