(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011840
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】異なる核酸アジュバントの組み合わせによる、新規Th1誘導性アジュバントおよびその用途
(51)【国際特許分類】
A61K 31/711 20060101AFI20230117BHJP
A61K 31/7064 20060101ALI20230117BHJP
A61K 31/7084 20060101ALI20230117BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20230117BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230117BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230117BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230117BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230117BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230117BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230117BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230117BHJP
C12N 15/117 20100101ALN20230117BHJP
【FI】
A61K31/711 ZNA
A61K31/7064
A61K31/7084
A61K31/352
A61K45/00
A61K39/39
A61P17/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61P37/08
A61P43/00 111
A61P43/00 121
C12N15/117 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176545
(22)【出願日】2022-11-02
(62)【分割の表示】P 2020096071の分割
【原出願日】2015-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2014235934
(32)【優先日】2014-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 刊行物等1:日本免疫学会総会・学術集会記録(The 43▲rd▼ Annual Meeting of the Japanese Society for Immunology)、公開日:平成26年11月18日(印刷上) 刊行物等2:第13回あわじしま感染症・免疫フォーラムin奈良(The 13th Awaji International Forum on Infection and Immunity in Nara)・要旨集、公開日:平成26年9月23日 刊行物等3:第13回あわじしま感染症・免疫フォーラムin奈良(The 13th Awaji International Forum on Infection and Immunity in Nara)・ポスター、公開日:平成26年9月23日
(71)【出願人】
【識別番号】505314022
【氏名又は名称】国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】石井 健
(72)【発明者】
【氏名】黒田 悦史
(72)【発明者】
【氏名】ブルジュ テミゾズ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新規Th1応答の誘導、細胞傷害性T細胞の誘導および抗がん作用・抗アレルギー作用技術を提供すること。
【解決手段】CpGオリゴヌクレオチドとSTINGアゴニストの組合せ物が提供される。あるいは、STINGアゴニストを含む、I型アジュバントとして用いるための組成物であって、該STINGアゴニストはCpGオリゴヌクレオチドとともに投与されることを特徴とする、組成物が提供される。あるいは、CpGオリゴヌクレオチドを含む抗がん剤であって、該CpGオリゴヌクレオチドはSTINGアゴニストとともに投与されることを特徴とする、抗がん剤が提供される。CpGオリゴヌクレオチドを含む、STINGアゴニストのIgE誘発作用を低減または消失させるための組成物もまた提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫分野に関する。より特定すると、新規Th1誘導性アジュバントおよびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
アジュバントとはワクチンの効果を上げるために添加されている免疫増強剤であり、近年の免疫学の発展により、そのアジュバントの作用機序が徐々に明らかにされている。最近では、アジュバントがもつ多彩な免疫制御の特性により感染症のみならず、アレルギー、ガン、自己免疫疾患の予防や治療への応用が期待されている。
【0003】
これまで多くのワクチンアジュバントは抗体産生(液性免疫)を誘導することを主に開発されてきた。そのためアラムアジュバントをふくめた現行の多くのアジュバントはTh2アジュバント(タイプIIアジュバント)と呼ばれる液性免疫誘導型のアジュバントである。しかしながらガンやアレルギーの予防や治療には液性免疫よりも細胞性免疫の誘導が重要であり、それらはTh1アジュバント(タイプIアジュバント)とよばれている(
図9)。
【0004】
現在まで多くのTh1アジュバントの候補物質が報告されているが、最も有効と考えられているのがCpGオリゴヌクレオチド(CpG ODN)である。CpG ODNはガンや感染症のワクチンアジュバントとして有効であることが示されているが、現在はさらに効果的なCpG ODNが開発・改良が試みられている(非特許文献1および2)。効果的な改良型CpG ODNが開発できれば、今まで以上にガンやアレルギーの治療へ応用される可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Tougan, T. TLR9 adjuvants enhance immunogenicity and protective efficacy of the SE36/AHG malaria vaccine in nonhuman primate models. Hum Vaccin Immunother. 2013, 9(2):283-90.
【非特許文献2】Kobiyama, K. et. al. Nonagonistic dectin-1 ligand transforms CpG into a multitask nanoparticulate TLR9 agonist. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014, 111(8):3086-91.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、CpG ODNとSTINGアゴニストの組み合わせによるTh1応答の誘導、細胞傷害性T細胞の誘導および抗がん作用・抗アレルギー作用に関して解析を進めたところ、本発明の特定の組合せが、Th1型免疫反応の誘導(
図1A)、ガンの予防・治療への応用(
図5)およびアレルギーの予防・治療(
図8)への応用に使用され得ることが見出された。そして、I型免疫反応(細胞性免疫)とII型免疫反応(液性免疫)のスイッチを可能にすることが判明した(
図11)。
【0007】
本発明者らは、K3 CpGおよびcGAMPが個々に有する問題を、K3 CpGおよび3’3’-cGAMPを組み合わせることによって克服しようと試みた。本発明者らは、免疫学的特徴、ワクチンアジュバントとしての効力、およびこの組み合わせの抗腫瘍免疫療法としての潜在能力、ならびにin vitroおよびin vivoにおける作用機序を調査した。in vitroにおいて、K3 CpGおよびcGAMPを組みあわせた効果を、ヒトおよびマウスPBMCを用いて分析した。さらに、この組み合わせの効果を、免疫化モデルを介して、免疫化の組み合わせの後に抗原特異的T細胞およびB細胞の応答の誘導を測定することによって、in vivoにおいて分析した。最終的に、本発明者らは、組み合わせられたK3 CpGおよびcGAMPがマウス腫瘍モデルにおける腫瘍の成長を抑制する能力を評価した。本発明者らの結果は、K3 CpGおよびcGAMPの組み合わせが、強力な1型アジュバントおよびガンに対する有望な免疫治療剤を作製することを示す。
【0008】
本発明者らはCpG ODNとSTINGアゴニストの組み合わせが、相乗的にTh1型免疫応答を誘導すること(
図10)、STINGアゴニストによって副反応として誘導されるIgE産生を抑制すること、Th1応答にはMyD88シグナルとSTING-I型インターフェロンシグナルが必要であること、担ガンモデルマウスにおいて、CpG ODNとSTINGアゴニストを同時に投与することによりin vivoで効果的にガン細胞の増殖を抑えること(
図5)、さらにヒトの末梢血単核球(PBMC)を刺激し、Th1応答の指標であるIFN-γを強力に誘導することを見いだした(
図1A)。
【0009】
種々のSTINGアゴニストについても評価を行い、内因性のSTINGアゴニストである2’3’-cGAMP、細菌由来である3’3’-cGAMPおよびc-di-GMP、さらに合成STINGアゴニストであるDMXAAのすべてにおいてCpGと共にマウスに投与することでTh1型免疫反応の誘導が認められた。
【0010】
これらの結果から、CpG ODNによるTLR9シグナルとSTING- I型インターフェロンシグナルの組み合わせは強力なTh1型免疫反応を誘導する重要なシグナルであることが明らかとなり、ヒトにおいても同様な効果が認められることが示唆された。これらをアジュバントとして使用することにより従来は困難であったガンやアレルギーのワクチン療法が可能になると考えられる。
【0011】
したがって、本発明はCpG ODNと他の核酸アジュバント(STINGアゴニスト)の組み合わせによる、従来よりも効果的なTh1アジュバントの誘導方法、さらにガンやアレルギーへの新規治療法を提供する。本発明はCpG ODNとSTINGアゴニストの組み合わせによるTh1応答の誘導、細胞傷害性T細胞の誘導および抗ガン作用・抗アレルギー作用に関するシグナル伝達系の因子またはその発現産物あるいはそのフラグメントまたは誘導体など、アジュバントの組み合わせによりにより誘導されるTh1応答を識別するためのマーカー、検出剤、阻害剤、およびガンやアレルギーを予防または治療するための組成物に関する。
【0012】
このように、TLR9およびIFN遺伝子の刺激剤(STING)に対するアゴニスト(STINGアゴニストまたはSTINGリガンド)は、ワクチンアジュバントとして機能し得る。しかしながら、現在利用可能なCpG ODN(K/B型)は、IFNを弱く誘導し、STINGアゴニストは、2型免疫応答を誘導し、潜在的な治療的適用を制限する。本発明では、本発明者らは、TLR9-アゴニストとSTING-アゴニストとの間の強力な相乗作用を示すことを見出した。それらを組み合わせて、効果的な1型アジュバントおよび抗ガン剤を作製することに成功した。in vitroでの本発明者らによる研究は、結果的にNK細胞のIFNγ(II型IFN)の産生が生じるCpG ODN(例えば、K3)とSTINGアゴニスト(例えば、cGAMP)との間の相乗効果が、IL-12およびI型IFNの同時作用に起因し、IRF3/7、STING、およびMyD88によって別個に制御されることを示唆する。in vivoでの本発明者らの免疫化モデルは、高い抗原特異性のIgG2c抗体応答およびT細胞由来IFNγの産生に加えて、CD8+T細胞応答の促進によって例示されるように、cGAMPとCpG ODNとの組み合わせが、強くTh1型応答を誘導することが可能な強力な1型アジュバントとして機能することを明らかにした。本発明者らのマウス腫瘍モデルにおいて、CpG ODNおよびcGAMPをともに腫瘍内注射することによって、単独での処置と比較して腫瘍サイズが顕著に減少し、CpG ODNおよびcGAMPは抗原を含まない抗ガン剤として機能した。したがって、CpG ODNおよびSTINGアゴニストの組み合わせは、強力なII型IFN誘導剤として治療的適用を提供する。したがって、本発明は以下を提供する。
<「組み合わせ」に着目した発明シリーズ>
(1)CpGオリゴヌクレオチドとSTINGアゴニストの組合せ物。
(2)I型アジュバントとして用いるためのものである、項目1に記載の組合せ物。
(3)前記STINGアゴニストのIgE誘発作用を抑制するためのものである、項目1または2に記載の組合せ物。
(4)前記CpGオリゴヌクレオチドは、K/B型オリゴヌクレオチドである、項目1~3のいずれか1項に記載の組合せ物。
(5)前記CpGオリゴヌクレオチドは、K3 CpG(配列番号1=5’-atcgactatcgagagttctc-3’)、CpG1826(配列番号2=5’-tccatgacgttcctgacgtt-3’)、およびD35 CpG(配列番号3=5’-ggtgcatcgatgcagggggg-3’)からなる群より選択されるCpGオリゴヌクレオチドである、項目1~4のいずれか1項に記載の組合せ物。
(6)前記STINGアゴニストは、cGAMP、3’3’-cGAMP、c-di-GAMP、c-di-AMP、2’3’-cGAMP、およびDMXAA、から選択されるSTINGアゴニストである、項目1~5のいずれか1項に記載の組合せ物。
(7)抗がん剤として用いるためのものである、項目1~6のいずれか1項に記載の組合せ物。
(8)前記抗がん剤は、リンパ腫、およびメラノーマから選択されるがんを対象とする、項目7に記載の組合せ物。
(9)II型免疫応答を減少または消失させ、I型免疫応答を発現または強化するためのものである、項目1~8のいずれか1項に記載の組合せ物。
(10)インターフェロンγ(IFN-γ)の誘導のためのものである、項目1~9のいずれか1項に記載の組合せ物。
(11)ワクチンアジュバントとして用いるためのものである、項目1~10のいずれか1項に記載の組合せ物。
(A1)有効量のCpGオリゴヌクレオチドとSTINGアゴニストとを組み合せて被験体に投与する工程を包含する、該被験体を処置または予防するための方法。
(A2)前記組み合わせはI型アジュバントとして用いられる、項目A1に記載の方法。
(A3)前記CpGオリゴヌクレオチドは、前記STINGアゴニストのIgE誘発作用を抑制するために有効な量で提供される、項目A1またはA2に記載の方法。
(A4)前記CpGオリゴヌクレオチドは、K/B型オリゴヌクレオチドである、項目A1~A3のいずれか1項に記載の方法。
(A5)前記CpGオリゴヌクレオチドは、K3 CpG(配列番号1=5’-atcgactatcgagagttctc-3’)、CpG1826(配列番号2=5’-tccatgacgttcctgacgtt-3’)、およびD35 CpG(配列番号3=5’-ggtgcatcgatgcagggggg-3’)からなる群より選択されるCpGオリゴヌクレオチドである、項目A1~A4のいずれか1項に記載の方法。
(A6)前記STINGアゴニストは、cGAMP、3’3’-cGAMP、c-di-GAMP、c-di-AMP、2’3’-cGAMP、およびDMXAA、から選択されるSTINGアゴニストである、項目A1~A5のいずれか1項に記載の方法。
(A7)前記処置または予防は、がんを対象とするものである、項目A1~A6のいずれか1項に記載の方法。
(A8)前記がんは、リンパ腫およびメラノーマから選択される、項目A7に記載の方法。
(A9)前記処置または予防により、II型免疫応答を減少または消失させ、I型免疫応答を発現または強化される、項目A1~A8のいずれか1項に記載の方法。
(A10)前記処置または予防により、インターフェロンγ(IFN-γ)が誘導される、項目A1~A9のいずれか1項に記載の方法。
(A11)前記組み合わせはワクチンアジュバントとして用いられる、項目A1~A10のいずれか1項に記載の方法。
<STINGアゴニスト自体のI型アジュバント製剤としての用途を強調した発明シリーズ>
(12)STINGアゴニストを含む、I型アジュバントとして用いるための組成物であって、該STINGアゴニストはCpGオリゴヌクレオチドとともに投与されることを特徴とする、組成物。
(13)項目2~11のいずれかまたは複数の特徴を有する、項目12に記載の組成物。(A12)STINGアゴニストのI型アジュバント効果を発揮するための方法であって、該STINGアゴニストをCpGオリゴヌクレオチドとともに投与する工程を包含する、方法。
(A13)項目2~11またはA2~A11のいずれかまたは複数の特徴を有する、項目A12に記載の方法。
<STINGアゴニストのCpGに対するI型アジュバント製剤増強効果を強調した発明シリーズ>
(14)STINGアゴニストを含む、CpGオリゴヌクレオチドのI型アジュバントの作用増強剤。
(15)項目2~11のいずれかまたは複数の特徴を有する、項目14に記載の作用増強剤。
(A14)CpGオリゴヌクレオチドのI型アジュバントの作用を増強する方法であって、該CpGオリゴヌクレオチドを、STINGアゴニストとともに投与する工程を包含する、方法。
(A15)項目2~11またはA2~A11のいずれかまたは複数の特徴を有する、項目A14に記載の方法。
<STINGアゴニストの抗がん剤としての側面を強調した発明シリーズ>
(16)STINGアゴニストを含む抗がん剤であって、該STINGアゴニストはCpGオリゴヌクレオチドとともに投与されることを特徴とする、抗がん剤。
(17)項目2~11のいずれかまたは複数の特徴を有する、項目16に記載の抗がん剤。
(A16)がんを処置または予防するための方法であって、該方法は:
STINGアゴニストを含む抗がん剤をCpGオリゴヌクレオチドとともに投与する工程を包含する、方法。
(A17)項目2~11またはA2~A11のいずれかまたは複数の特徴を有する、項目A16に記載の方法。
<CpGオリゴヌクレオチドの抗がん剤としての側面を強調した発明シリーズ>
(18)CpGオリゴヌクレオチドを含む抗がん剤であって、該CpGオリゴヌクレオチドはSTINGアゴニストとともに投与されることを特徴とする、抗がん剤。
(19)項目2~11のいずれかまたは複数の特徴を有する、項目18に記載の抗がん剤。
(A18)がんを処置または予防するための方法であって、該方法は、CpGオリゴヌクレオチドを含む抗がん剤をSTINGアゴニストとともに投与する工程を包含する、方法。
(A19)項目2~11またはA2~A11のいずれかまたは複数の特徴を有する、項目A18に記載の方法。
<CpGによる、STINGアゴニストのアレルギー(IgE)誘発作用抑制を強調したクレームシリーズ>
(20)CpGオリゴヌクレオチドを含む、STINGアゴニストのIgE誘発作用を低減または消失させるための組成物。
(21)前記STINGアゴニストのアレルギー誘発作用が低減または消失される、項目20に記載の組成物。
(22)項目2~11のいずれかまたは複数の特徴を有する、項目20または21に記載の組成物。
(A20)STINGアゴニストのIgE誘発作用を低減または消失させるための方法であって、該方法は、STINGアゴニストを用いる際に、CpGオリゴヌクレオチドを投与する工程を包含する、方法。
(A21)前記STINGアゴニストのアレルギー誘発作用が低減または消失される、項目A20に記載の方法。
(A22)項目2~11またはA2~A11のいずれかまたは複数の特徴を有する、項目A20またはA21に記載の方法。
【0013】
本発明において、上述した1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。
【0014】
本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解することにより、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、これまで困難であったTh1型免疫反応を誘導する新規アジュバントとその誘導シグナルについての情報を提供する。現行のアジュバントの多くは抗体産生を誘導するTh2アジュバントであるが、これらのアジュバントはガンやアレルギーのワクチン療法には不向きであった。さらに、STINGアゴニストは副反応としてIgEを誘導するため、アレルギー性炎症を引き起こす恐れもある。しかしながら本発明では、二種類のアジュバンを組み合わせるだけでIgE誘導を抑えながら強力なTh1アジュバント効果を誘導できる。また、DMXAAをはじめとするSTINGアゴニスト自体はアラムアジュバントと同様に液性免疫を活性化するTh2アジュバントとして機能することから、STINGアゴニストをプラットホームとすることで、そのまま使用すれば従来型の液性免疫誘導型Th2アジュバント、CpG ODNと組み合わせれば強力な細胞性免疫誘導型Th1アジュバントとして使用できる(
図11)。このように質の異なる疾患に対して使用できる汎用性の高いアジュバントは例がなく、次世代型のアジュバントとして技術的および経済的にも波及効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは、各提供者のヒトPBMC培養物の上清における産生されたIFNγの濃度を示す。左から、アジュバントなし、K3 CpG、K3 CpG+cGAMP、cGAMPを示す。縦軸は、培養物上清のIFNγの濃度(ng/ml)を示す。K3 CpGおよびcGAMP(それぞれTLR9-アゴニストおよびSTING-アゴニスト)は、NK細胞によって相乗的に先天性IFNγの産生を誘発する。2人の健常な提供者由来のヒトPBMCを、K3 CpG(10μg/ml)、cGAMP(10μM)、またはK3 CpG+cGAMPとともに24時間インキュベートし、上清のIFNγの濃度をELISAによって測定した。データは、少なくとも2つの独立した実験の代表であり、2組の平均+SDで示される。
*p<0.05;
**p<0.01(Bonferroniの多重比較検定を含む一元分散分析)。
【
図1B】
図1Bは、フローサイトメトリーによって分析した結果を示している。上の段から、アジュバントなし、K3 CpG、K3 CpG+cGAMP、cGAMPを示す。左列のパネルの縦軸はCD16陽性CD56陽性のナチュラルキラー細胞(NK細胞)の前方散乱(FSC)強度を、横軸はIFNγ-APCの蛍光強度を示している。右列のパネルの縦軸はCD8-PEの蛍光強度を、横軸はIFNγ-APCの蛍光強度を示している。K3 CpGおよびcGAMP(それぞれTLR9-アゴニストおよびSTING-アゴニスト)は、NK細胞によって相乗的に先天性IFNγの産生を誘発する。3人の健常な提供者由来のヒトPBMCをK3 CpG、cGAMP、またはK3 CpG+cGAMPで16時間刺激し、最後の4時間はブレフェルジンAの存在下で刺激した。刺激後、細胞を、IFNγ産生細胞を検出するためにフローサイトメトリーによって分析した。グラフは、IFNγ産生CD3
+CD8
+T細胞、CD3
+CD8
-T細胞(CD4
+T細胞を含む)およびCD3
-CD56
+CD16
+NK細胞のパーセンテージを示している。
【
図1C】
図1Cは、中和抗体で処置した場合の各提供者のヒトPBMC培養物の上清における産生されたIFNγの濃度を示す。左の群から、アジュバントなし、K3 CpG、K3 CpG+cGAMPおよびcGAMPを示す。各群の左から、アイソタイプコントロール、α-I型IFN、α-IL-12/23p40、α-I型IFN+α-IL-12/23p40を示す。K3 CpGおよびcGAMP(それぞれTLR9-アゴニストおよびSTING-アゴニスト)は、NK細胞によって相乗的に先天性IFNγの産生を誘発する。2人の健常な提供者由来のヒトPBMCを、K3 CpG、cGAMP、またはK3 CpG+cGAMPでの24時間の刺激の前に30秒、5μg/mlのアイソタイプコントロール、I型IFN中和抗体、IL-12/23p40中和抗体またはI型IFN+IL-12/23p40中和抗体で処置した。IFNγの産生をELISAにより測定した。データは、少なくとも2つの独立した実験の代表であり、2組の平均+SDで示される。
*p<0.05;
**p<0.01(Bonferroniの多重比較検定を含む一元分散分析)。
【
図2A】
図2Aは、マウスPBMC培養物の上清における産生されたIFNγの濃度を示す。左の群から、アジュバントなし、K3 CpG、K3 CpG+cGAMPおよびcGAMPを示す。各群の左側が野生型マウス由来、右側がIRF3/7DKOマウス由来を示す。縦軸は、培養物上清のIFNγの濃度(ng/ml)を示す。K3 CpGおよびcGAMPの組み合わせは、IRF3/7依存的な態様でのmPBMCにおける先天性IFNγの相乗的な誘導、および樹状細胞によるIFNαおよびIL-12の産生を引き起こす。野生型マウスおよびIRF3/7 DKOマウス由来のマウスPBMCをK3 CpG、cGAMP、またはK3 CpG+cGAMPで24時間刺激し、IFNγの産生をELISAにより測定した。データは、少なくとも2つの独立した実験の代表であり、2組の平均+SEMで示される。
***p<0.001;(Studentのt検定)。
【
図2B】
図2Bは、DM-DCより産生されたIL-12p40の濃度を示す。左から、アジュバントなし、K3 CpG、K3 CpG+cGAMP、cGAMPを示す。縦軸は、IL-12p40の濃度(ng/ml)を示す。K3 CpGおよびcGAMPの組み合わせは、IRF3/7依存的な態様でのmPBMCにおける先天性IFNγの相乗的な誘導、および樹状細胞によるIFNαおよびIL-12の産生を引き起こす。GM-DCを、K3 CpG、cGAMP、またはK3 CpG+cGAMPを24時間刺激し、IL-12p40の産生をELISAにより測定した。データは、少なくとも2つの独立した実験の代表であり、2組の平均+SDで示される。
***p<0.001;(Bonferroniの多重比較検定を含む一元分散分析)。
【
図2C】
図2Cは、FL-DCより産生されたIL-12p40の濃度を示す。左から、アジュバントなし、K3 CpG、K3 CpG+cGAMP、cGAMPを示す。縦軸は、IL-12p40の濃度(ng/ml)を示す。K3 CpGおよびcGAMPの組み合わせは、IRF3/7依存的な態様でのmPBMCにおける先天性IFNγの相乗的な誘導、および樹状細胞によるIFNαおよびIL-12の産生を引き起こす。FL-DCをK3 CpG、cGAMP、またはK3 CpG+cGAMPで24時間刺激し、IL-12p40の産生をELISAにより測定した。データは、少なくとも2つの独立した実験の代表であり、2組の平均+SDで示される。
***p<0.001;(Bonferroniの多重比較検定を含む一元分散分析)。
【
図2D】
図2Dは、FL-DCより産生されたIL-12p40の濃度を示す。左から、アジュバントなし、K3 CpG、K3 CpG+cGAMP、cGAMPを示す。縦軸は、IFNαの濃度(ng/ml)を示す。K3 CpGおよびcGAMPの組み合わせは、IRF3/7依存的な態様でのmPBMCにおける先天性IFNγの相乗的な誘導、および樹状細胞によるIFNαおよびIL-12の産生を引き起こす。FL-DCをK3 CpG、cGAMP、またはK3 CpG+cGAMPで24時間刺激し、IFNαの産生をELISAにより測定した。データは、少なくとも2つの独立した実験の代表であり、2組の平均+SDで示される。
***p<0.001;(Bonferroniの多重比較検定を含む一元分散分析)。
【
図3A】
図3Aは、マウスPBMC培養物の上清における産生されたIFNγの濃度を示す。左から、アジュバントなし、K3 CpG、K3 CpG+3’3’-cGAMP、3’3’-cGAMP、K3 CpG+c-di-GMP、c-di-GMP、K3 CpG+2’3’-cGAMP、2’3’-cGAMPを示す。縦軸は、培養物上清のIFNγの濃度(ng/ml)を示す。TLR9-アゴニストおよびSTING-アゴニストの組み合わせは、in vovoで2型免疫応答も抑制する強力な1型アジュバントである。マウスPBMCを、K3 CpG(10μg/ml)、STING-アゴニスト(10μM)、またはK3 CpG+STING-アゴニストで24時間刺激し、IFNγの産生をELISAにより測定した。データは、少なくとも2つの独立した実験の代表であり、2組の平均+SEMで示される。
【
図3B】
図3Bは、OVAで免疫化したマウスにおける血清の抗OVA抗体力価を示す。左のパネルがIgG2cの抗OVA抗体力価、右のパネルがIgG1の抗OVA抗体力価を示す。左から、生理食塩水、K3 CpG、K3 CpG+3’3’-cGAMP、3’3’-cGAMP、K3 CpG+c-di-GMP、c-di-GMP、K3 CpG+2’3’-cGAMP、2’3’-cGAMP、DMXAAを示す。TLR9-アゴニストおよびSTING-アゴニストの組み合わせは、in vivoで2型免疫応答も抑制する強力な1型アジュバントである。マウスを、K3 CpG(10μg)、3’3’/2’3’-cGAMP(1μg)、c-di-GMP(1μg)、DMXAA(50μg)またはK3+3’3’/2’3’-cGAMP/c-di-GMP/DMXAAを含むかまたは含まないOVA(10μg)で、筋肉内で0および10日目に免疫化した。17日目に、OVA特異的血清IgG1およびIgG2cをELISAにより測定した。データは、少なくとも2つの独立した実験の代表であり、2組の平均+SDで示される。
*p<0.05;
**p<0.01(Mann-WhitneyのU検定)。
【
図3C】
図3Bは、OVAで刺激した脾臓細胞により産生されるIFNγおよびIL-13の濃度を示す。左のパネルの縦軸がIFNγの濃度(ng/ml)、右のパネルの縦軸がIL-13の濃度(ng/ml)を示す。左から、生理食塩水、K3 CpG、K3 CpG+3’3’-cGAMP、3’3’-cGAMP、K3 CpG+c-di-GMP、c-di-GMP、K3 CpG+2’3’-cGAMP、2’3’-cGAMP、DMXAAを示す。TLR9-アゴニストおよびSTING-アゴニストの組み合わせは、in vovoで2型免疫応答も抑制する強力な1型アジュバントである。(B-C)マウスを、K3 CpG(10μg)、3’3’/2’3’-cGAMP(1μg)、c-di-GMP(1μg)、DMXAA(50μg)またはK3+3’3’/2’3’-cGAMP/c-di-GMP/DMXAAを含むかまたは含まないOVA(10μg)で、筋肉内で0および10日目に免疫化した。脾臓細胞をOVA(10μg/ml)タンパク質で48時間刺激した。IFNγおよびIL-13の産生をELISAにより測定した。データは、少なくとも2つの独立した実験の代表であり、2組の平均+SDで示される。
*p<0.05;
**p<0.01(Mann-WhitneyのU検定)。
【
図4A】
図4Aは、OVAで免疫化した各マウスにおける血清の抗OVA抗体力価を示す。左のパネルがIgG2cの抗OVA抗体力価、右のパネルがIgG1の抗OVA抗体力価を示す。左の群から、K3 CpG、K3 CpG+cGAMP、cGAMPを示す。各群の左から野生型、Tmem173gt、MyD88 KO、IRF3/7 DKO、IFNAR KOマウスを示す。抗原特異的IFNγの誘導におけるK3 CpGおよびcGAMPの組み合わせの相乗効果は、IRF3/7、STING、MyD88、IL-12およびI型IFNシグナル伝達に依存している。野生型、Tmem173gt、IRF3/7 DKO、MyD88 KOおよびIFNAR KO C57BL/6Jマウスを、OVAおよびK3 CpG、cGAMP、またはK3 CpG+cGAMPで、0および10日目に筋肉内経路を介して免疫化した。17日目に、OVA特異的血清IgG2cおよびIgG1をELISAにより測定した。データは、少なくとも2つの独立した実験の代表であり、2組の平均+SDで示される。
*p<0.05;
**p<0.01;
***p<0.001(Bonferroniの多重比較検定を含む一元分散分析)。
【
図4B】
図4Bは、OVAで刺激した脾臓細胞により産生されるIFNγおよびIL-13の濃度を示す。左のパネルの縦軸がIFNγの濃度(ng/ml)、右のパネルの縦軸がIL-13の濃度(ng/ml)を示す。左の群から、K3 CpG、K3 CpG+cGAMP、cGAMPを示す。各群の左から野生型、Tmem173gt、MyD88 KO、IRF3/7 DKO、IFNAR KOマウスを示す。抗原特異的IFNγの誘導におけるK3 CpGおよびcGAMPの組み合わせの相乗効果は、IRF3/7、STING、MyD88、IL-12およびI型IFNシグナル伝達に依存している。脾臓細胞をOVAで48時間刺激した。IFNγの産生をELISAにより測定した。データは、少なくとも2つの独立した実験の代表であり、2組の平均+SDで示される。
*p<0.05;
**p<0.01;
***p<0.001(Bonferroniの多重比較検定を含む一元分散分析)。
【
図4C】
図4Cは、OVAで免疫化したC57BL/6Jマウスにおける血清の抗OVA抗体力価を示す。左のパネルがIgG2cの抗OVA抗体力価、右のパネルがIgG1の抗OVA抗体力価を示す。左の群から、K3 CpG、K3 CpG+cGAMP、cGAMPを示す。各群の左側がIL-12p40+/-を示し、右側がIL-12p40 KOを示す。抗原特異的IFNγの誘導におけるK3 CpGおよびcGAMPの組み合わせの相乗効果は、IRF3/7、STING、MyD88、IL-12およびI型IFNシグナル伝達に依存している。(C)IL-12p40+/-および-/-C57BL/6Jマウスを、OVAおよびK3 CpG、cGAMP、またはK3 CpG+cGAMPで、0および10日目に筋肉内経路を介して免疫化した。17日目に、OVA特異的血清IgG2cおよびIgG1をELISAにより測定した。データは、少なくとも2つの独立した実験の代表であり、2組の平均+SDで示される。
【
図4D】
図4Dは、OVAで刺激した脾臓細胞により産生されるIFNγおよびIL-13の濃度を示す。左のパネルの縦軸がIFNγの濃度(ng/ml)、右のパネルの縦軸がIL-13の濃度(ng/ml)を示す。左の群から、K3 CpG、K3 CpG+cGAMP、cGAMPを示す。各群の左側がIL-12p40+/-を示し、右側がIL-12p40 KOを示す。抗原特異的IFNγの誘導におけるK3 CpGおよびcGAMPの組み合わせの相乗効果は、IRF3/7、STING、MyD88、IL-12およびI型IFNシグナル伝達に依存している。(D)脾臓細胞を、OVAタンパク質で48時間刺激した。IFNγの産生をELISAにより測定した。データは、少なくとも2つの独立した実験の代表であり、2組の平均+SDで示される。
*p<0.05(Mann-WhitneyのU検定)。
【
図5】
図5は、EG-7マウス腫瘍モデルにおける腫瘍の成長を測定しグラフを示す。縦軸が腫瘍サイズ(cm
3)、横軸がEG-7リンパ腫細胞の接種後の日数を示す。K3 CpGおよびcGAMPの組み合わせは、EG-7マウス腫瘍モデルにおいて腫瘍を効率的に抑制する。マウスは、1×10
6個のEG-7リンパ腫細胞(100μlのPBS中)を0日目に皮下注射された。7および10日目に、マウスは、PBS(n=8)、K3 CpG(n=8)、cGAMP(n=8)、またはK3 CpG+cGAMP(n=9)の腫瘍内注射を受け、マウスを腫瘍の成長について22日間モニターした。データは、2つの独立した実験の代表である。
*p<0.05;
**p<0.01(Mann-WhitneyのU検定)。
【
図6】
図6は、OVA254またはOVA323で刺激した脾臓細胞により産生されるIFNγの濃度を示す。左の群から、生理食塩水、K3 CpG、K3 CpG+cGAMP、cGAMPを示す。縦軸は、IFNγの濃度(ng/ml)を示す。をK3 CpGおよびcGAMPの組み合わせは、in vivoにおける強力なCD8
+T細胞の活性を誘発する。マウスを、OVAのみ(n=2)、あるいはOVAおよびK3 CpG(n=4)、cGAMP(n=4)またはK3+cGAMP(n=4)のいずれかで、筋肉内経路を介して0および10日目に免疫化した。17日目に、脾臓細胞を単離し、MHCクラスI(OVA257)またはMHCクラスII(OVA323)に特異的なOVAまたはOVAペプチドで48時間刺激した。IFNγの産生をELISAにより測定した。データは、少なくとも2つの独立した実験の代表である。
*p<0.05;
**p<0.01(Studentのt検定)。
【
図7】
図7は、細胞内IFNγ染色実験のためのゲーティング手法を示している。初めに、CD3
+/-細胞を、リンパ球ゲートからゲーティングした。次に、CD3
+集団から、IFNγ
+CD8
+/-細胞をゲーティングし、結果に示す。NK細胞を、CD3
-CD56
+CD16
+集団からゲーティングし、IFNγ
+NK細胞を結果に示す。
【
図8】
図8は、OVAで免疫化したマウスにおける血清のIgEの濃度を示す。左から、生理食塩水、K3 CpG、cGAMP、K3 CpG+cGAMPを示す。縦軸は、IgEの濃度を示す。STINGアゴニストはIgEを誘導するが、CpGと組み合わせることにより、これを抑制する。
【
図9】
図9は、細胞性免疫および液性免疫の概要を示す。これまで多くのワクチンアジュバントは、抗体産生(液性免疫)を誘導することを主に開発されてきた。そのためアラムアジュバントを含めた現行の多くのアジュバントは、Th2アジュバント(II型アジュバント)と呼ばれる液性免疫誘導型のアジュバントである。しかしながらガンやアレルギーの予防や治療には液性免疫よりも細胞性免疫の誘導が重要であり、それらはTh1アジュバント(I型アジュバント)とよばれている。
【
図10】
図10は、I型アジュバントの指標であるIgG2cおよびIFNγの産生を示す。左のパネルは、OVAで免疫化したマウスにおける血清の抗OVA IgG2c力価を示している。左から、生理食塩水、K3 CpG、cGAMP、K3 CpG+cGAMPを示す。右のパネルは、OVAで刺激するか、またはOVAで刺激しない場合のIFNγの産生を示す。左の群から、生理食塩水、K3 CpG、cGAMP、K3 CpG+cGAMPを示す。各群の左側はOVAで刺激しなかった場合、右側はOVAで刺激した場合の産生されたIFNγを示す。縦軸は、IFNγの濃度(ng/ml)を示す。CpG ODNおよびSTINGアゴニストの組み合わせは、相乗的にTh1型免疫応答を誘導する。
【
図11】
図11は、STINGアゴニストをプラットホームにした新規次世代アジュバントの概要を示す。DMXAAをはじめとするSTINGアゴニスト自体はアラムアジュバントと同様に液性免疫を活性化するTh2アジュバントとして機能することから、STINGアゴニストをプラットホームとすることで、そのまま使用すれば従来型の液性免疫誘導型Th2アジュバント、CpG ODNと組み合わせれば強力な細胞性免疫誘導型Th1アジュバントとして使用できる。
【
図12】
図12は、脾細胞におけるCpG1826と3’3’-cGAMPとの組み合わせまたはD35 CpGと3’3’-cGAMPc-di-GMPとの組み合わせのインターフェロンガンマ産生の相乗効果を示す図である。上段は、CpG1826と3’3’-cGAMPとの組み合わせとの組み合わせ、下段は、D35 CpGと3’3’-cGAMPc-di-GMPとの組み合わせとの組み合わせを示す。それぞれy軸はインターフェロンガンマ(IFNγ)の生成量(pg/ml)を示し、x軸は左から刺激なし、CpG1826と3’3’-cGAMPとの組み合わせまたはD35 CpGと3’3’-cGAMPc-di-GMPとの組み合わせ、および3’3’-cGAMP単独を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0018】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0019】
本明細書において「CpGオリゴヌクレオチド」または「CpGオリゴデオキシヌクレオチド」、「CpG ODN」あるいは単に「CpG」とは、交換可能に使用され、少なくとも1つのメチル化されていないCGジヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド、好ましくは、オリゴヌクレオチドをいう。少なくとも1つのCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドは、複数のCpGモチーフを含み得る。本明細書中で使用される場合、句「CpGモチーフ」とは、シトシンヌクレオチドと、それに続くグアノシンヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのメチル化されていないジヌクレオチド部分をいう。5-メチルシトシンもまた、シトシンの代わりに使用され得る。
【0020】
CpGオリゴヌクレオチド(CpG ODN)は、免疫賦活性のCpGモチーフを含有する、短い(約20塩基対)、一本鎖の合成DNA断片であって、Toll様受容体9(TLR9)の強力なアゴニストであり、樹状細胞(DCs)およびB細胞を活性化して、I型インターフェロン(IFNs)および炎症性サイトカインを産生させ(Hemmi, H., et al. Nature 408, 740-745 (2000);Krieg, A.M. Nature reviews. Drug discovery 5, 471-484 (2006).)、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)反応を含む、Th1型の液性および細胞性免疫反応のアジュバントとして作用する(Brazolot Millan, C.L., Weeratna, R., Krieg, A.M., Siegrist, C.A. & Davis, H.L. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 95, 15553-15558 (1998).;Chu, R.S., Targoni, O.S., Krieg, A.M., Lehmann, P.V. & Harding, C.V. The Journal of experimental medicine 186, 1623-1631 (1997))。そこで、CpG ODNは、感染症、癌、喘息および花粉症に対して可能性のある免疫療法剤とみなされてきた(Krieg, A.M. Nature reviews. Drug discovery 5, 471-484 (2006);Klinman, D.M. Nature reviews. Immunology 4, 249-258 (2004))。
【0021】
CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)は、細菌ゲノムとの類似に起因する免疫賦活性の特徴を有する非メチル化CpGモチーフを含有する合成一本鎖DNAであり、特定の型の自然免疫細胞におけるTLR9によって認識される[Hartmann et al., J. Immunol.(2000)164:944-953;Wagner et al., Trends Immunol.(2004)25:1-6]。リガンド結合の際、TLR9は、アダプター分子myD88を介してシグナルを伝達し、IRF7依存性I型IFNおよびNF-κB依存性サイトカインの産生をもたらす[Krieg et al., Nat. Rev. Drug Discov.(2006)5:471-84]。さらに、in vivoにおいてCpG ODNは、APCにおけるCpG ODNによって誘導されるサイトカインの型に起因して、Th1型応答を誘導することが報告されている[Krieg et al., Nat. Rev. Drug Discov.(2006)5:471-84]。異なる型のCpG ODNの中で、D型CpG ODNが、I型およびII型IFNの両方を強く誘導するが、B細胞活性化を誘導することができない[Krieg et al., Nat. Rev. Drug Discov.(2006)5:471-84;Klinman et al., Nat. Rev. Immunol.(2004)4:1-10]。K型CpG ODN(K3 CpG)は、B細胞の活性化を強く誘導して、IL-6および抗体の産生を生じさせ、他方で、それらは、I型およびII型IFNを弱く誘導するだけである。しかし、D型CpG ODNは凝集を形成するため、K型 CpGのみが臨床的用途に利用可能である[Krieg et al., Nat. Rev. Drug Discov.(2006)5:471-84;Klinman et al., Nat. Rev. Immunol.(2004)4:1-10]。
【0022】
LPSまたは非メチル化CpG DNA(CpG)(CpG ODN)などの病原体由来因子は、IL-12およびI型またはII型IFNなどのサイトカインを産生する自然免疫細胞を刺激し、これはTh1型応答および細胞性免疫を生じさせるのに役立つ[Kawai et al., Immunity.(2011)34:637-650;Trinchieri et al., Immunol.(2007)7:179-190]。IL-12は、ナイーブCD4+T細胞に働き、Th1の発生およびIFNγの産生を駆動する[Seder et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.(1993)90:10188-92;Hsieh et al., Science.(1993)260:547-579]。そして、IFNγ産生Th1細胞は、1型免疫の誘導における主役であり、これは、高い食作用活性によって区別される[Spellberg et al., Clin. Infect. Dis.(2001)90509:76-102;Mantovani et al., Curr. Opin. Immunol.(2010)22:231-237]。さらに、Th1細胞は、抗腫瘍免疫の発生において重要な役割を果たし、IFNγの産生を含む適切な活性化およびCTLのエフェクター機能に役立つ[Hung et al., J. Exp. Med.(1998)188:2357-68; Vesely et al., Annu. Rev. Immunol.(2011)29:235-271]。したがって、強いTh1型応答を誘導し得る薬剤、CTL、およびNK細胞[Vitale et al., Eur. J. Immunol.(2014)44:1582-1592]は、それらが細胞内病原体またはガンに対する効率的なワクチンアジュバントまたは免疫治療剤の開発において重大な役割を果たし得るため、すぐに要求される。
【0023】
骨格修飾や周囲の配列の違いによりD/A型,K/B型,C型、およびP型に分類される(Vollmer, J. & Krieg, A.M. Advanced drug delivery reviews 61, 195-204 (2009).)。D/A型は主に形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid dendritic cell,「形質細胞様DC」または「pDC」と称する)からのI型インターフェロンの産生,K/B型はB細胞の増殖とIgMやIL-6などの産生をそれぞれ誘導することが示唆されているD/A型のCpG-DNAはIFN-α産生を強く誘導するが,pDCの成熟化誘導活性は低く,B細胞に直接的な免疫刺激活性を示さない。K/B型はB細胞に免疫刺激活性を示し,pDCの成熟化を強く促進し,IL-12誘導能が高いのに対し,IFN-α誘導能は低い。TCGの繰り返し配列を有しすべてがチオール化されているC型の配列では,ポリクローナルなB細胞活性化やpDCによるIFN-α産生を誘導する。
【0024】
D/A型 CpG ODN(A型、D型等とも呼ばれ、CpG-A ODNとも表示される)は、5’および3’末端にホスホロチオエート(PS)結合を、およびホスホジエステル(PO)のパリンドローム(回文構造)CpG含有配列を中心に有するポリGモチーフを特徴とするオリゴヌクレオチドである。5’および3’末端にホスホロチオエート(PS)の存在故、細胞取り込みが容易になるとされる。CpG D/A型は、大量のインターフェロンα(IFN-α)をpDC中に産生する(CpG K/B型とは異なる特徴である)。これにより、NK細胞およびγδT細胞において強力な活性化およびインターフェロンガンマ産生を生じる。しかし、B細胞は活性化せず、pDC成熟化もしない(Krug, A., et al. European journal of immunology 31, 2154-2163 (2001).;およびVerthelyi, D., Ishii, K.J., Gursel, M., Takeshita, F. & Klinman, D.M. Journal of immunology 166, 2372-2377 (2001).)。
【0025】
他の3つの型のODNは、PS骨格からなる。
【0026】
K/B型 CpG ODNは、CpG-B型またはCpG-K型とも呼ばれ、ポリGモチーフがない、1つ以上のCpGモチーフを有するすべてがホスホロチオエート(PS)骨格を有するものである。典型的には、非回文構造の、複数のCpGモチーフを含有する。K/B型 CpGはIFN-αの誘導活性は弱い(ほとんど産生しない)が、非常に強力なTh1アジュバントであり、強力なB細胞応答刺激剤であり、化してIL-6を産生させ、pDCsを活性化して成熟化させる(Verthelyi, D., Ishii, K.J., Gursel, M., Takeshita, F. & Klinman, D.M. Journal of immunology 166, 2372-2377 (2001);およびHartmann, G. & Krieg, A.M. Journal of immunology 164, 944-953 (2000).)。K/B型 CpG ODNは、単球由来樹状細胞および pDCの両方の生存を促進し、活性化し、そして成熟させる機能を有する。
【0027】
近年、開発されたC型およびP型のCpG ODNはそれぞれ1つおよび2つの回文構造CpG配列を含有しており、双方ともK型の様にB細胞を活性化させ、D型の様にpDCsを活性化させることができるが、P型CpG ODNと比較して、C型CpG ODNは、IFN-α産生をより弱く誘導する(Hartmann, G., et al. European journal of immunology 33, 1633-1641 (2003);Marshall, J.D., et al. Journal of leukocyte biology 73, 781-792 (2003).;およびSamulowitz, U., et al. Oligonucleotides 20, 93-101 (2010))。
【0028】
D/K型およびP型CpG ODNは、G-tetradsと呼ばれる平行4本鎖構造を形成するフーグスティーン塩基対、およびシス回文構造部位とトランス回文構造部位との間のワトソン-クリック塩基対、という高次構造をそれぞれ形成することが示されており、これらはpDCsによる強力なIFN-α産生に必要である(Samulowitz, U., et al. Oligonucleotides 20, 93-101 (2010).;Kerkmann, M., et al. The Journal of biologyical chemistry 280, 8086-8093 (2005).;およびKlein, D.C., Latz, E., Espevik, T. & Stokke, B.T. Ultramicroscopy 110, 689-693 (2010))。高次構造故、K型およびC型CpG ODNのみが、ヒト用の免疫療法剤およびワクチンアジュバントとして一般的に利用可能であるとされている(Puig, M., et al. Nucleic acids research 34, 6488-6495 (2006); Bode, C., Zhao, G., Steinhagen, F., Kinjo, T. & Klinman, D.M. Expert review of vaccines 10, 499-511 (2011);およびMcHutchison, J.G., et al. Hepatology 46, 1341-1349 (2007))。
【0029】
A型 CpG ODNとは対照的に、C型CpGは、ポリGモチーフがない完全なホスホロチオエート(PS)骨格を有するが、刺激性CpGモチーフと組み合わせて、CpGのA型パリンドローム配列を含むものである。in vivo研究により、C型CpG ODNは、非常に強力なTh1アジュバントであることが報告されている。
【0030】
本発明において好ましい実施形態で用いられるK型CpG ODNは、10ヌクレオチド以上の長さであり、且つ式:
【0031】
【0032】
(式中、中央のCpGモチーフ(CpGとして記載される)はメチル化されておらず、WはAまたはTであり、N1、N2、N3、N4、N5およびN6はいかなるヌクレオチドであってもよい)で表されるヌクレオチド配列を含む。
【0033】
一つの実施形態において、本発明のK型CpG ODNは10ヌクレオチド以上の長さであり、上記式のヌクレオチド配列を含む。但し、上記式中、中央の4塩基のCpGモチーフ(TCpGW)は10ヌクレオチド中に含まれていれば良く、必ずしも上記式中、N3およびN4の間に位置する必要はない。また、上記式中、N1、N2、N3、N4、N5およびN6はいかなるヌクレオチドであっても良く、N1およびN2、N2およびN3、N3およびN4、N4およびN5、並びにN5およびN6の少なくともいずれか一つ(好ましくは一つ)の組み合わせは2塩基のCpGモチーフであっても良い。前記4塩基のCpGモチーフがN3およびN4の間に位置しない場合、上記式中、中央の4塩基(4~7番目の塩基)中の連続するいずれかの2塩基がCpGモチーフであり、他の2つの塩基はいかなるヌクレオチドであっても良い。また、オリゴデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の一部または全てがホスホロチオエート結合で置換されていてもよい。好ましくは、オリゴデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の全てがホスホロチオエート結合により置換されている。
【0034】
本発明においてより好適に用いられるK型CpG ODNは1つまたは複数のCpGモチーフを含む非回文構造を含有する。更に好適に用いられるK型CpG ODNは1つまたは複数のCpGモチーフを含む非回文構造からなる。
【0035】
本発明のオリゴデオキシヌクレオチドに含まれるK型CpG ODNは、好ましくはヒト化されている。「ヒト化」とは、ヒトTLR9に対するアゴニスト活性を有することを意味する。従って、ヒト化K型CpG ODNを含む本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、ヒトに対してK型CpG ODNに特有の免疫賦活活性(例えば、ヒトB細胞を活性化してIL-6を産生させる活性)を有する。
【0036】
ヒト化K型CpG ODNは、一般的に、TCGAまたはTCGTからなる4塩基のCpGモチーフを特徴とする。また、多くのケースにおいて、一つのヒト化K型CpG ODN中にこの4塩基のCpGモチーフが2または3個含まれる。従って、好ましい実施形態において、本発明のオリゴデオキシヌクレオチドに含まれるK型CpG ODNは、少なくとも1個、より好ましくは2以上、更に好ましくは2または3個、TCGAまたはTCGTからなる4塩基のCpGモチーフを含む。該K型CpG ODNが2または3個の4塩基のCpGモチーフを有する場合、これらの4塩基のCpGモチーフは同一であっても異なっていてもよい。ただし、ヒトTLR9に対するアゴニスト活性を有する限り、特に限定されない。
【0037】
本発明のオリゴデオキシヌクレオチドに含まれるK型CpG ODNは、より好ましくは、配列(atcgactctc gagcgttctc(配列番号1))で表されるヌクレオチド配列を含む。
【0038】
K型CpG ODNの長さは、本発明のオリゴデオキシヌクレオチドが免疫賦活活性(例えば、B細胞(好ましくは、ヒトB細胞)を活性化してIL-6を産生させる活性)または抗がん活性を有する限り、特に限定されないが、好ましくは100ヌクレオチド長以下(例えば、10-75ヌクレオチド長)である。K型CpG ODNの長さは、より好ましくは50ヌクレオチド長以下(例えば、10-40ヌクレオチド長)である。K型CpG ODNの長さは、更に好ましくは30ヌクレオチド長以下(例えば、10-25ヌクレオチド長)である。K型CpG ODNの長さは、最も好ましくは、12-25ヌクレオチド長である。
【0039】
本明細書において「リガンド」または「アゴニスト」とは、交換可能に使用され、対象となる実体(例えば、レセプター)に対してそのレセプターの生物学的作用を発現またはそれを増強する物質をいう。天然のアゴニスト(リガンドとも称される)のほか、合成されたものや改変されたもの等を挙げることができる。
【0040】
小胞体に局在する膜タンパク質として同定された「STING」(IFN遺伝子の(アダプター分子)刺激剤(stimulator of interferon genes))は,さまざまなRNAウイルスおよびDNAウイルスの感染に対する生体防御機構において重要な役割をはたす.また,STINGはウイルスおよび細菌に由来するDNA成分に対する自然免疫応答の誘導に重要な役割を示すことが報告されているが,その分子機序は明らかにされていなかった.この論文において,筆者らは,STINGはウイルスに由来するゲノムDNAのみならず,ISDとよばれる45~90塩基対の合成2本鎖DNA,さらに,アポトーシス細胞に由来する自己のDNA成分と複合体を形成しうることを明らかにした.in vitroにおけるDNA相互作用領域の解析より,STINGのC末端側の領域が重要であることが示された.STINGによるさまざまなDNA成分の認識はSTINGの核膜の周辺領域へのダイナミックな局在の変化を誘発し,TBK1の活性化を介しインターフェロンの産生を誘導することが示された.さらに,STINGは微生物に由来する非自己のDNA成分のみならず,自己のDNA成分の認識を介した慢性的な炎症性の応答の制御にも関与している可能性が示唆された。
【0041】
本明細書において「STINGリガンド」および「STINGアゴニスト」は、交換可能に使用され、IFN遺伝子の(アダプター分子)刺激剤(STING=stimulator of interferon genes)のリガンド(アゴニスト)であり、I型IFN産生およびNF-κB媒介サイトカイン産生を誘導する。STINGアゴニストは小胞体に局在する膜タンパク質であるとされている。STINGアゴニストとしては、cGAMPに加えて、細菌起源の環状ジヌクレオチドであるc-di-AMPおよびc-di-GMPは、TBK1-IRF3軸を介してシグナルを伝達して、I型IFN産生およびNF-κB媒介サイトカイン産生を誘導するIFN遺伝子の、アダプター分子刺激剤(STING)のリガンドである[Burdette et al., Nature.(2011)478:515-8;Mcwhirter et al., J. Exp. Med.(2009)206:1899-1911]。最近の研究は、これらの環状ジヌクレオチドは、抗原特異的T細胞および液性免疫応答を増強する能力に起因して強力なワクチンアジュバントとして機能する。それにもかかわらず、本発明者らのグループは以前、STINGアゴニストであるDMXAAは、STING-IRF3媒介性のI型IFNの産生を介して、2型免疫応答を予想外に誘導する[Tang et al., PLoS One.(2013)8:1-6]。2型免疫応答は、1型免疫応答を誘導できないことがあるため、環状ジヌクレオチドを含むSTINGアゴニストの臨床上の有用性には議論の余地があった。例えば、最も一般的なアジュバントのアルミニウム塩(アラム)は、細胞内病原体由来の疾患またはガンの場合に防御すると考えられている細胞媒介性免疫を誘導する能力を欠く[Hogenesch et al., Front. Immunol.(2013)3:1-13]。この制限を克服するために、アラムを、モノホスホリルリピドA[Macleod et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.(2011)108:7914-7919]およびCpG ODN[Weeratna et al., Vaccine.(2000)18:1755-1762]を含む多くの異なる種類のアジュバントと組み合わせられてきた。STINGに関連する技術については、微生物DNAと同様に、特に宿主DNAが不適切にサイトゾルに存在する場合は、宿主DNAもまた、危険信号となり得、それによって、インターフェロンおよび炎症性サイトカインの産生をもたらす[Desmet et al., Nat. Rev. Immunol.(2012)12:479-491;Barber et al., Immunol. Rev.(2011)243:99-108]。最近同定された1つのサイトゾルDNAセンサーは、環状GMP-AMP合成酵素(cGAS)であり、これは非標準の環状ジヌクレオチドcGAMP(2’3’-cGAMP)の産生を触媒し、そのプリンヌクレオシドとの間の非標準2’、5’結合および3’、5’結合を含有する[Sun et al., Science.(2013)339:786-91]。標準cGAMP(3’3’)は、細菌内で合成され、哺乳類2’3’-cGAMPよりも様々な結合を有し、GMPおよびAMPヌクレオシドはビス-(3’、5’)結合によって結合する[Wu et al., Science.(2013)339:826-30;Zhang et al., Mol. Cell.(2013)51:226-35]。
【0042】
したがって、本発明において使用され得るSTINGアゴニストとしては、2’3’-cGAMP、c-di-AMP、3’3’-cGAMP、3’2’-cGAMP等の環状時ヌクレオチド(CDN)、DMXAA等のキサンテノン誘導体等を挙げることができる。また、STINGアゴニストはWO2010/017248に説明されており、その内容は全体が参考として援用される。
【0043】
本明細書において「アジュバント」とは、本明細書中で使用されるとき、ワクチンの効果を上げるために添加されている免疫増強剤であり、特定の抗原を構成するのではなく、投与される抗原に対する免疫応答を押し上げる、薬剤のことを指す。アジュバントは近年の免疫学の発展により、そのアジュバントの作用機序が徐々に明らかにされている。最近では、アジュバントがもつ多彩な免疫制御の特性により感染症のみならず、アレルギー、ガン、自己免疫疾患の予防や治療への応用が期待されている。
【0044】
これまで多くのワクチンアジュバントは抗体産生(液性免疫)を誘導することを主に開発されてきた。そのためアラムアジュバントをふくめた現行の多くのアジュバントはTh2アジュバントと呼ばれる液性免疫誘導型のアジュバントである。しかしながらガンやアレルギーの予防や治療には液性免疫よりも細胞性免疫の誘導が重要であり、それらはTh1アジュバントまたはI型アジュバントとよばれている。
【0045】
現在まで多くのTh1アジュバントの候補物質が報告されているが、最も有効と考えられているのがCpGオリゴヌクレオチド(CpG ODN)である。CpG ODNはガンや感染症のワクチンアジュバントとして有効であることが示されているが(非特許文献1)、現在はさらに効果的なCpG ODNが開発・改良が試みられている(非特許文献2)。効果的な改良型CpG ODNが開発できれば、今まで以上にガンやアレルギーの治療へ応用される可能性がある。
【0046】
本明細書において「I型アジュバント」とは、Th1アジュバントとも呼ばれ、I型免疫反応を誘発するアジュバントをいう。代表的にはナチュラルキラー細胞または細胞傷害性T細胞による抗腫瘍効果によって特徴づけられる。
【0047】
本明細書において「II型アジュバント」とは、Th2アジュバントとも呼ばれ、II型免疫反応を誘発するアジュバントをいう。代表的には、抗体誘導による感染予防効果によって特徴づけられる。
【0048】
本明細書において「I型免疫応答」とは細胞性免疫ともいい、食細胞、細胞傷害性T細胞 (CTL;Cytotoxic T Lymphocytes)、ナチュラルキラー細胞が体内の異物排除を担当する免疫系である。T細胞が関係する。ヘルパーT細胞にはTh1細胞とTh2細胞が存在し、これらはサイトカインを放出することにより互いの機能を抑制しあっていると考えられている。これらの細胞はもとは1つの細胞から分化し、この細胞をナイーブT細胞(Th0)と呼ぶ。具体的な分化メカニズムについてはT細胞の項を参照。Th0細胞からTh1細胞に分化した細胞はIL-2等のいわゆるTh1サイトカインを産生し、ウイルスに感染した細胞等の破壊を行うCTLの活性化を行う。また、細胞性免疫はウイルスに感染した細胞の除去のみでなく腫瘍免疫や移植免疫にも関与している。
【0049】
本明細書において「II型免疫応答」とは液性免疫ともいい、抗体や補体を中心とした免疫系である。抗体が血清中に溶解して存在するためこのように呼ばれる。マクロファージや樹状細胞などは抗原を細胞内へ取り込んだのちに分解を行い、その断片を細胞表面に提示することにより抗原提示細胞として機能している。抗原提示細胞はMHCクラスII分子を介して抗原断片を提示し、ナイーブT細胞(Th0)細胞表面のT細胞抗原受容体(TCR;T Cell Receptor)へシグナルを伝える。Th0細胞が1型ヘルパーT細胞(Th1)と2型ヘルパーT細胞(Th2)のどちらに分化するかの割合は疾患により異なるがTh2サイトカインと呼ばれるインターロイキン(IL;Interleukin)-4,IL-5等の存在下においてTh0はTh2に分化し、液性免疫を誘導する。
【0050】
本明細書において「免疫グロブリンE」または「IgE」とは、哺乳類にのみ存在する糖タンパク質であり、免疫グロブリンの一種である。IgE分子は2つの重鎖(ε鎖)と2つの軽鎖(κ鎖およびλ鎖)から構成され、2つの抗原結合部位を有している。健常人における血清中のIgE濃度はng/ml単位であり他の種類の免疫グロブリンと比較しても非常に低いが、アレルギー疾患を持つ患者の血清中では濃度が上昇しマスト細胞や好塩基球の細胞内顆粒中に貯蔵される生理活性物質の急速な放出(脱顆粒反応)を誘起する。これらのことからIgEはヒスタミンなどと並んでアレルギー反応において中心的な役割を果たす分子の一つとして数えられる。
【0051】
本明細書において「アレルギー」とは、免疫反応が、特定の抗原に対して過剰に起こることをいう。アレルギーを引き起こす環境由来抗原を特にアレルゲンと呼ぶ。「アレルギー疾患」とは、外部からの抗原に対し、免疫反応が起こる疾患をいう。ただしその抗原は通常生活で曝露される量では無害であることが多く(たとえば春先の花粉そのものが毒性を持っているわけではない)、不必要に不快な結果をもたらす免疫応答が起こっているといえる。アレルギー性疾患とも言う。代表的な疾患としてはアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症)、アレルギー性結膜炎、アレルギー性胃腸炎、気管支喘息、小児喘息、食物アレルギー、薬物アレルギー、蕁麻疹があげられる。また、最近になって柑橘類の匂いや、ガムなどの香料の匂い程度で喘息、顔面紅潮などの1型アレルギー症状を示す病
態が注目されている。
【0052】
他方、「自己免疫疾患」とは、自己の体を構成する物質を抗原として、免疫反応が起こる疾患。特定の臓器や部位の障害、炎症をもたらしたり、全身性の症状を呈する場合がある。代表的な疾患としては関節リウマチといった膠原病や円形脱毛症があげられる。
【0053】
本明細書において「インターフェロン(IFN)」とは、動物体内で病原体(特にウイルス)や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌するタンパク質(サイトカイン)であり、そのうち、IFN-γは、Th1型サイトカインである。
【0054】
本明細書において「被験体(者)」とは、本発明の診断または検出、あるいは治療等の対象となる対象(例えば、ヒト等の生物または生物から取り出した細胞、血液、血清等)をいう。
【0055】
本明細書において「薬剤」、「剤」または「因子」(いずれも英語ではagentに相当す
る)は、広義には、交換可能に使用され、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッ
カリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0056】
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害(例えば、がん、アレルギー)について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消退させることをいい、患者の疾患、もしくは疾患に伴う1つ以上の症状の、症状改善効果あるいは予防効果を発揮
しうることを含む。事前に診断を行って適切な治療を行うことは「コンパニオン治療」といい、そのための診断薬を「コンパニオン診断薬」ということがある。
【0057】
本明細書において「治療薬(剤)」とは、広義には、目的の状態(例えば、がん、アレルギー等の疾患など)を治療できるあらゆる薬剤をいう。本発明の一実施形態において「治療薬」は、有効成分と、薬理学的に許容される1つもしくはそれ以上の担体とを含む医薬組成物であってもよい。医薬組成物は、例えば有効成分と上記担体とを混合し、製剤学の技術分野において知られる任意の方法により製造できる。また治療薬は、治療のために用いられる物であれば使用形態は限定されず、有効成分単独であってもよいし、有効成分と任意の成分との混合物であってもよい。また上記担体の形状は特に限定されず、例えば、固体または液体(例えば、緩衝液)であってもよい。なおがん、アレルギー等の治療薬は、がん、アレルギー等の予防のために用いられる薬物(予防薬)、またはがん、アレルギー等の抑制剤を含む。
【0058】
本明細書において「予防」とは、ある疾患または障害(例えば、アレルギー)について、そのような状態になる前に、そのような状態にならないようにすることをいう。本発明の薬剤を用いて、診断を行い、必要に応じて本発明の薬剤を用いて例えば、アレルギー等の予防をするか、あるいは予防のための対策を講じることができる。
【0059】
本明細書において「予防薬(剤)」とは、広義には、目的の状態(例えば、アレルギー等の疾患など)を予防できるあらゆる薬剤をいう。
【0060】
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分
(例えば、検査薬、診断薬、治療薬、抗体、標識、説明書など)が提供されるユニットをいう。安定性等のため、混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、検査薬、診断薬、治療薬をどのように使用するか、あるいは、試薬をどのように処理すべきかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。本明細書においてキットが試薬キットとして使用される場合、キットには、通常、検査薬、診断薬、治療薬、抗体等の使い方などを記載した指示書などが含まれる。
【0061】
本明細書において「指示書」は、本発明を使用する方法を医師または他の使用者に対する説明を記載したものである。この指示書は、本発明の検出方法、診断薬の使い方、または医薬などを投与することを指示する文言が記載されている。また、指示書には、投与部位として、経口、食道への投与(例えば、注射などによる)することを指示する文言が記載されていてもよい。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
【0062】
(好ましい実施形態)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本発明の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
【0063】
<CpGとSTINGアゴニストとの組み合わせ>
1つの局面では、本発明は、CpGオリゴヌクレオチドとSTINGアゴニスト(あるいはSTINGリガンドともいう)の組合せ物を提供する。本発明の組合せを用いて、種々の治療または予防、例えば、がん、アレルギー等の治療または予防、あるいは免疫賦活化を用いた治療または予防を行うことができる。
【0064】
したがって、本発明は、CpGオリゴヌクレオチドとSTINGアゴニストの組合せ物の有効量をそれを必要とする被験体に投与する工程を包含する、疾患の治療または予防のための方法を提供する。
【0065】
1つの実施形態では、本発明の組合せ物は、I型アジュバントとして用いるためのものである。この現象は、両方の側面から見て予想外である。すなわち、STINGアゴニストの側から見れば、通常このリガンドは液性免疫すなわち抗体誘導による感染予防効果のみを生じるものと考えられているが、CpGを加えることで、細胞性免疫が惹起されている。このような「スイッチ」効果はまさに予想外であるといえる。また、CpGの細胞性免疫惹起効果が、STINGアゴニストで顕著に亢進された。STINGアゴニストに細胞性免疫惹起効果がほとんどないことにかんがみれば、CpGが持っている細胞性免疫惹起効果を考慮したとしても量的に予想外に顕著な亢進を示したといえる。
【0066】
別の実施形態では、本発明の組合せ物は、前記STINGアゴニストのIgE誘発作用を抑制するためのものである。理論に束縛されることを望まないが、STINGアゴニストにIgE誘発作用があり、アレルギーの副作用がありうることが予想外にも本発明において初めて見出された。したがって、このような課題を解決する必要があるところ、その解決がCpGによってなされたという点でも予想外であるといえる。
【0067】
1つの実施形態では、STINGアゴニストとしては、3’3’-cGAMP、2’3’-cGAMP、2’2’-cGAMP、DMXAA、c-di-AMPおよびc-di-GMP等を挙げることができる。DMXAAはマウス特異的なSTINGアゴニストでありヒトではあまり効果がないとされる。3’3’-cGAMPは細菌性cGMAPであり、2’3’-cGAMP哺乳動物性cGAMPであり、2’2’-cGAMPは非天然型のcGAMPである。
【0068】
1つの実施形態では、本発明のCpGオリゴヌクレオチドは、K/B型オリゴヌクレオチドである。理論に束縛されることを望まないが、K/B型オリゴヌクレオチドは特にCpGODNはがん、感染症のワクチンアジュバントとして有効であることが示されているところ、本発明によりさらにこれを増強することができるからである。
【0069】
1つの実施形態において、本発明において使用され得るCpGオリゴヌクレオチドとしては、一般的なCpGであればどのようなものでも使用することができるが、例えば、K3 CpG(配列番号1(5’-atcgactatcgagagttctc-3’))、CpG1826(配列番号2(5’-tccatgacgttcctgacgtt-3’))、およびD35 CpG(配列番号3(5’-ggtgcatcgatgcagggggg-3’))等を用いることができるがそれらに限定されない。
【0070】
1つの実施形態では、本発明において使用され得るSTINGアゴニストは、cGAMP、3’3’-cGAMP、c-di-AMP、c-di-GAMP、2’3’-cGAMP、DMXAA等を挙げることができる。
【0071】
1つの特定の実施形態では、本発明の組合せ物は、抗がん剤として用いられる。この場合、本発明の治療または予防のための方法は、がんを治療または予防するための方法として提供される。
【0072】
1つの実施形態では、前記抗がん剤は、リンパ腫、メラノーマ等のがんを対象とすることができる。
【0073】
別の実施形態では、本発明の組合せ物は、II型免疫応答を減少または消失させ、および/またはI型免疫応答を発現または強化するためのものである。
【0074】
別の実施形態では、本発明の組合せ物は、インターフェロンγ(IFN-γ)の誘導のためのものである。あるいは、本発明の組合せ物は、ワクチンアジュバントとして使用するためのものである。この場合、本発明の治療または予防のための方法は、免疫を不活化するための方法として提供される。
【0075】
これらの2つの因子(CpGオリゴヌクレオチドおよびSTINGアゴニスト)は、それぞれ同時に投与されてもよく、時間を違えて投与されてもよく、同じ製剤で投与されてもよく異なる製剤を組み合わせて投与されてもよく、順にあるいは別々に投与されてもよい。
【0076】
T細胞活性化に対するアッセイは例えば、以下のように実施することができる。いくつかの実施形態において、様々なアッセイが、免疫応答がT細胞またはT細胞の群において刺激されているか否か(すなわち、T細胞またはT細胞の群が「活性化されて」いるか否か)を判定するために利用され得る。いくつかの実施形態において、T細胞における免疫応答の刺激は、T細胞によるサイトカインの抗原誘導性産生を測定することによって判定され得る。いくつかの実施形態において、T細胞における免疫応答の刺激は、T細胞によるIFNγ、IL-4、IL-2、IL-10、IL-17および/またはTNFαの抗原誘導性産生を測定することによって判定され得る。いくつかの実施形態において、T細胞によるサイトカインの抗原生成性産生は、細胞内のサイトカイン染色の後のフローサイトメトリーによって測定され得る。いくつかの実施形態において、T細胞によるサイトカインの抗原誘導性産生は、表面捕捉染色の後のフローサイトメトリーによって測定され得る。いくつかの実施形態において、T細胞によるサイトカインの抗原誘導性産生は、活性化されたT細胞培養物の上清中のサイトカイン濃度を測定することによって判断され得る。いくつかの実施形態において、これは、ELISAによって測定され得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、T細胞によるサイトカインの抗原生成性産生は、ELISPOTアッセイによって測定され得る。一般に、ELISPOTアッセイは、サンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)という手法に非常に類似の手法を使用する。抗体(例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体など)を、PVDF(フッ化ポリビニリデン)が裏打ちされた(backed)マイクロプレート上に無菌的にコーティングする。抗体を、対象のサイトカインに対する特異性について選択する。そのプレートをブロッキングする(例えば、そのアッセイにおけるいずれの抗体とも反応性でない血清タンパク質を用いて)。目的の細胞を、抗原またはマイトジェンとともに様々な密度でプレーティングし、次いで、加湿された37℃のCO2恒温器内に指定の時間にわたって置く。活性化された細胞によって分泌されたサイトカインは、広い表面積のPVDF膜上のコーティングされた抗体によって局所的に捕捉される。ウェルを洗浄することにより、細胞、残骸および培地成分を除去した後、そのサイトカインに特異的な2次抗体(例えば、ビオチン化ポリクローナル抗体)をそのウェルに加える。この抗体は、標的サイトカインの異なるエピトープと反応性であり、ゆえに、これを用いることにより、捕捉されたサイトカインが検出される。洗浄することにより、任意の未結合のビオチン化抗体を除去した後、検出されたサイトカインを、アビジン-HRPおよび促進基質(例えば、AEC、BCIP/NBT)を用いて可視化する。着色した最終産物(スポット、通常、黒っぽい青色)は、代表的には、個別のサイトカイン産生細胞を表す。スポットは、手動で(例えば、解剖顕微鏡を用いて)、またはマイクロウェルの像を捕捉し、そしてスポットの数および大きさを解析する自動リーダーを用いて、計数され得る。いくつかの実施形態において、各スポットは、単一のサイトカイン産生細胞に対応する。
【0078】
いくつかの実施形態において、T細胞における免疫応答は、約1%~約100%の抗原特異的T細胞が、サイトカインを産生している場合に、刺激されていると言われる。いくつかの実施形態において、T細胞における免疫応答は、少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%または約100%の抗原特異的T細胞が、サイトカインを産生している場合に、刺激されていると言われる。
【0079】
いくつかの実施形態において、T細胞における免疫応答は、免疫された被験体が、無処置コントロールよりも少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約5000倍、少なくとも約10,000倍、少なくとも約50,000倍、少なくとも約100,000倍または少なくとも約100,000倍超、多いサイトカイン産生細胞を含む場合に、刺激されていると言われる。
【0080】
いくつかの実施形態において、T細胞における免疫応答の刺激は、T細胞の抗原誘導性増殖を測定することによって判定され得る。いくつかの実施形態において、抗原誘導性増殖は、分裂T細胞におけるH3-チミジンの取り込みとして測定され得る(時折、「リンパ球形質転換試験」または「LTT」と称される)。いくつかの実施形態において、H3-チミジンの取り込み(γカウンターからのカウント数として与えられる)が、無処置コントロールよりも、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約5000倍、少なくとも約10,000倍または少なくとも約10,000倍超、高い場合に、抗原誘導性増殖が生じたと言われる。
【0081】
いくつかの実施形態において、抗原誘導性増殖は、フローサイトメトリーによって測定され得る。いくつかの実施形態において、抗原誘導性増殖は、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)希釈アッセイによって測定され得る。CFSEは、そのスクシンイミジル反応基によって細胞質タンパク質(例えば、T細胞タンパク質)のアミノ基に結合する、無毒性で蛍光性の膜透過性色素である。細胞が分裂するとき、CFSE標識されたタンパク質は、娘細胞に等しく分配されるので、細胞蛍光は分裂ごとに半減する。その結果として、抗原特異的T細胞は、各々の抗原の存在下における培養後にその蛍光を失い(CFSE低)、そして培養物中の他の細胞(CFSE高)と識別可能になる。いくつかの実施形態において、CFSE希釈(すべてのCFSE+細胞に対するCFSE低細胞のパーセンテージとして与えられる)が、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約100%である場合に、抗原誘導性増殖が生じたと言われる。
【0082】
いくつかの実施形態において、T細胞における免疫応答は、T細胞活性化の細胞性マーカーが、刺激されていない細胞と異なるレベル(例えば、それより高いレベルまたはより低いレベル)で発現されている場合に、刺激されていると言われる。いくつかの実施形態において、CD11aCD27、CD25、CD40L、CD44、CD45ROおよび/またはCD69は、刺激されていないT細胞よりも、活性化されているT細胞において、より高度に発現される。いくつかの実施形態において、L-セレクチン(CD62L)、CD45RAおよび/またはCCR7は、刺激されていないT細胞よりも、活性化されているT細胞において、それほど高度に発現されない。
【0083】
いくつかの実施形態において、T細胞における免疫応答は、抗原パルス(antigen-pulsed)標的細胞に対するエフェクターCD8+T細胞による細胞傷害性をアッセイすることによって測定される。例えば、51クロム(51Cr)放出アッセイが、行われ得る。このアッセイでは、エフェクターCD8+T細胞が、クラスIMHC上にウイルスペプチドを提示している感染細胞と結合し、そしてその感染細胞にアポトーシスを起こすようにシグナル伝達する。エフェクターCD8+T細胞が加えられる前に、その細胞が51Crで標識されている場合、上清に放出される51Crの量は、死滅させた標的の数に比例する。
【0084】
当業者は、上述のアッセイが、T細胞の活性化が起きているか否かを判定するために利用され得る単なる例示的な方法であることを理解する。T細胞の活性化が起きているか否かを判定するために使用され得る当業者に公知の任意のアッセイは、本発明の範囲内に包含される。本発明において利用されるアッセイならびにT細胞の活性化が起きているか否かを判定するために使用され得るさらなるアッセイは、Current Protocols in Immunology(John Wiley & Sons,Hoboken,NY,2007;本明細書中で参考として援用される)に記載されている。
【0085】
<STINGアゴニスト自体のI型アジュバント製剤としての用途>
別の局面では、本発明は、STINGアゴニストを含む、I型アジュバントとして用いるための組成物であって、該STINGアゴニストはCpGオリゴヌクレオチドとともに投与されることを特徴とする、組成物を提供する。ここで使用されるSTINGアゴニストおよびCpGオリゴヌクレオチドは、<CpGとSTINGアゴニストとの組み合わせ>および実施例を含め本明細書の他の箇所に記載される任意の形態を1つまたは複数を組み合わせて採用することができることが理解される。
【0086】
したがって、本発明は、被験体における疾患の治療または予防のための方法であって、該方法は、有効量のSTINGアゴニストを含む、I型アジュバントとして用いるための組成物をそれを必要とする被験体に投与する工程を含み、該STINGアゴニストはCpGオリゴヌクレオチドとともに投与されることを特徴とする。この場合、CpGオリゴヌクレオチドは、STINGアゴニストの投与と同時、または前あるいは後に投与することができる。したがって、本発明は、STINGアゴニストのI型アジュバント効果を発揮するための方法であって、該STINGアゴニストをCpGオリゴヌクレオチドとともに投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0087】
1つの実施形態では、アジュバント増強効果を利用した本発明で治療または予防され得る疾患は、がん、アレルギー、ウイルスまたは細菌感染症等を挙げることができる。さらに特定すると、アジュバント増強効果を利用した本発明で治療または予防され得る疾患は、がんであり、そのような癌としては、リンパ腫、メラノーマ等を挙げることができる。
【0088】
これらの2つの因子(CpGオリゴヌクレオチドおよびSTINGアゴニスト)は、それぞれ同時に投与されてもよく、時間を違えて投与されてもよく、同じ製剤で投与されてもよく異なる製剤を組み合わせて投与されてもよく、順にあるいは別々に投与されてもよい。
【0089】
<STINGアゴニストのCpGに対するI型アジュバント製剤増強効果>
別の局面では、本発明は、STINGアゴニストを含む、CpGオリゴヌクレオチドのI型アジュバントの作用増強剤を提供する。ここで使用されるSTINGアゴニストおよびCpGオリゴヌクレオチドは、<CpGとSTINGアゴニストとの組み合わせ>および実施例を含め本明細書の他の箇所に記載される任意の形態を1つまたは複数を組み合わせて採用することができることが理解される。
【0090】
したがって、本発明は、有効量のSTINGアゴニストを含む組成物を被験体に投与する工程を包含する、CpGオリゴヌクレオチドのI型アジュバントの作用増強のための方法を提供する。したがって、本発明はまた、CpGオリゴヌクレオチドのI型アジュバントの作用を増強する方法であって、該CpGオリゴヌクレオチドを、STINGアゴニストとともに投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0091】
これらの2つの因子(CpGオリゴヌクレオチドおよびSTINGアゴニスト)は、それぞれ同時に投与されてもよく、時間を違えて投与されてもよく、同じ製剤で投与されてもよく異なる製剤を組み合わせて投与されてもよく、順にあるいは別々に投与されてもよい。
【0092】
<STINGアゴニストの抗がん剤としての使用>
別の局面では、本発明は、STINGアゴニストを含む抗がん剤であって、該STINGアゴニストはCpGオリゴヌクレオチドとともに投与されることを特徴とする、抗がん剤を提供する。ここで使用されるSTINGアゴニストおよびCpGオリゴヌクレオチドは、<CpGとSTINGアゴニストとの組み合わせ>および実施例を含め本明細書の他の箇所に記載される任意の形態を1つまたは複数を組み合わせて採用することができることが理解される。
【0093】
したがって、本発明は、STINGアゴニストを含む抗がん剤を有効量被験体に投与する工程を包含する、被験体におけるがんの治療または予防のための方法を提供し、この方法において、該STINGアゴニストはCpGオリゴヌクレオチドとともに投与されることを特徴とする。したがって、本発明は、がんを処置または予防するための方法であって、該方法は:STINGアゴニストを含む抗がん剤をCpGオリゴヌクレオチドとともに投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0094】
1つの実施形態では、STINGアゴニストを利用した本発明で治療または予防され得るがんは、リンパ腫、メラノーマ等のがんを対象とすることができる。
【0095】
これらの2つの因子(CpGオリゴヌクレオチドおよびSTINGアゴニスト)は、それぞれ同時に投与されてもよく、時間を違えて投与されてもよく、同じ製剤で投与されてもよく異なる製剤を組み合わせて投与されてもよく、順にあるいは別々に投与されてもよい。
【0096】
<CpGオリゴヌクレオチドの抗がん剤としての使用>
別の局面では、本発明は、CpGオリゴヌクレオチドを含む抗がん剤であって、該CpGオリゴヌクレオチドはSTINGアゴニストとともに投与されることを特徴とする、抗がん剤を提供する。ここで使用されるSTINGアゴニストおよびCpGオリゴヌクレオチドは、<CpGとSTINGアゴニストとの組み合わせ>および実施例を含め本明細書の他の箇所に記載される任意の形態を1つまたは複数を組み合わせて採用することができることが理解される。
【0097】
したがって、本発明は、CpGオリゴヌクレオチドを含む抗がん剤を有効量被験体に投与する工程を包含する、がんを治療または予防するための方法であって、該CpGオリゴヌクレオチドはSTINGアゴニストとともに投与されることを特徴とする、方法を提供する。したがって、本発明は、がんを処置または予防するための方法であって、該方法は、CpGオリゴヌクレオチドを含む抗がん剤をSTINGアゴニストとともに投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0098】
1つの実施形態では、CpGオリゴヌクレオチドを利用した本発明で治療または予防され得るがんは、リンパ腫、メラノーマ等のがんを挙げることができるがこれらに限定されない。
【0099】
これらの2つの因子(CpGオリゴヌクレオチドおよびSTINGアゴニスト)は、それぞれ同時に投与されてもよく、時間を違えて投与されてもよく、同じ製剤で投与されてもよく異なる製剤を組み合わせて投与されてもよく、順にあるいは別々に投与されてもよい。
【0100】
<CpGによる、STINGアゴニストのアレルギー(IgE)誘発作用抑制>
別の局面では、本発明は、CpGオリゴヌクレオチドを含む、STINGアゴニストのIgE誘発作用を低減または消失させるための組成物を提供する。ここで使用されるSTINGアゴニストおよびCpGオリゴヌクレオチドは、<CpGとSTINGアゴニストとの組み合わせ>および実施例を含め本明細書の他の箇所に記載される任意の形態を1つまたは複数を組み合わせて採用することができることが理解される。
【0101】
したがって、本発明は、有効量のCpGオリゴヌクレオチドを含む組成物を被験体に投与する工程を包含する、STINGアゴニストのIgE誘発作用を低減または消失させるための方法を提供する。したがって、本発明は、STINGアゴニストのIgE誘発作用を低減または消失させるための方法であって、該方法は、STINGアゴニストを用いる際に、CpGオリゴヌクレオチドを投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0102】
1つの実施形態では、本発明で治療または予防され得るアレルギーとしては、STINGアゴニストの副作用としてのアレルギー、その他、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(花粉症)、アレルギー性結膜炎、アレルギー性胃腸炎、気管支喘息、小児喘息、食物アレルギー、薬物アレルギー、蕁麻疹等を挙げることができるがそれらに限定されない。
【0103】
これらの2つの因子(CpGオリゴヌクレオチドおよびSTINGアゴニスト)は、それぞれ同時に投与されてもよく、時間を違えて投与されてもよく、同じ製剤で投与されてもよく異なる製剤を組み合わせて投与されてもよく、順にあるいは別々に投与されてもよい。
【0104】
1つの実施形態では、前記STINGアゴニストのアレルギー誘発作用が低減または消失される。
【0105】
(医薬品、剤型等)
本発明は、上記種々の形態の医薬(治療薬または予防薬)として提供される。
【0106】
治療薬、予防薬等の投与経路は、治療に際して効果的なものを使用するのが好ましく、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、または経口投与等であってもよい。投与形態としては、例えば、注射剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤等であってもよい。本発明の成分を投与する場合には、注射剤として用いることが効果的である。注射用の水溶液は、例えば、バイアル、またはステンレス容器で保存してもよい。また注射用の水溶液は、例えば生理食塩水、糖(例えばトレハロース)、NaCl、またはNaOH等を配合してもよい。また治療薬は、例えば、緩衝剤(例えばリン酸塩緩衝液)、安定剤等を配合してもよい。
【0107】
一般的に、本発明の組成物、医薬、治療剤、予防剤等は、治療有効量の治療剤または有効成分、および薬学的に許容しうるキャリアもしくは賦形剤を含む。本明細書において「薬学的に許容しうる」は、動物、そしてより詳細にはヒトにおける使用のため、政府の監督官庁に認可されたか、あるいは薬局方または他の一般的に認められる薬局方に列挙されていることを意味する。本明細書において使用される「キャリア」は、治療剤を一緒に投与する、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。このようなキャリアは、無菌液体、例えば水および油であることも可能であり、石油、動物、植物または合成起源のものが含まれ、限定されるわけではないが、ピーナツ油、ダイズ油、ミネラルオイル、ゴマ油等が含まれる。医薬を経口投与する場合は、水が好ましいキャリアである。医薬組成物を静脈内投与する場合は、生理食塩水および水性デキストロースが好ましいキャリアである。好ましくは、生理食塩水溶液、並びに水性デキストロースおよびグリセロール溶液が、注射可能溶液の液体キャリアとして使用される。適切な賦形剤には、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等が含まれる。組成物は、望ましい場合、少量の湿潤剤または乳化剤、あるいはpH緩衝剤もまた含有することも可能である。これらの組成物は、溶液、懸濁物、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、粉末、持続放出配合物等の形を取ることも可能である。伝統的な結合剤およびキャリア、例えばトリグリセリドを用いて、組成物を座薬として配合することも可能である。経口配合物は、医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリン・ナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的キャリアを含むことも可能である。適切なキャリアの例は、E.W.Martin, Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mark Publishing Company, Easton, U.S.A)に記載される。このような組成物は、患者に適切に投与する形を提供するように、適切な量のキャリアと一緒に、治療有効量の療法剤、好ましくは精製型のものを含有する。配合物は、投与様式に適していなければならない。これらのほか、例えば、界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等を含んでいてもよい。
【0108】
本発明の一実施形態において「塩」は、例えば、任意の酸性(例えばカルボキシル)基で形成されるアニオン塩、または任意の塩基性(例えばアミノ)基で形成されるカチオン塩を含む。塩類には無機塩または有機塩を含み、例えば、Berge et al., J. Pharm.Sci., 1977, 66, 1-19に記載されている塩が含まれる。また例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩等が挙げられる。本発明の一実施形態において「溶媒和物」は、溶質および溶媒によって形成される化合物である。溶媒和物については例えば、J. Honig et al., The Van Nostrand Chemist’s Dictionary P650 (1953)を参照できる。溶媒が水であれば形成される溶媒和物は水和物である。この溶媒は、溶質の生物活性を妨げないものが好ましい。そのような好ましい溶媒の例として、特に限定するものではないが、水、または各種バッファーが挙げられる。本発明の一実施形態において「化学修飾」は、例えば、PEGもしくはその誘導体による修飾、フルオレセイン修飾、またはビオチン修飾等が挙げられる。
【0109】
本発明を医薬として投与する場合、種々の送達(デリバリー)系が知られ、そしてこのような系を用いて、本発明の治療剤を適切な部位(例えば、食道)に投与することも可能であり、このような系には、例えばリポソーム、微小粒子、および微小カプセル中の被包:治療剤(例えば、ポリペプチド)を発現可能な組換え細胞の使用、受容体が仲介するエンドサイトーシスの使用;レトロウイルスベクターまたは他のベクターの一部としての療法核酸の構築などがある。導入法には、限定されるわけではないが、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、および経口経路が含まれる。好適な経路いずれによって、例えば注入によって、ボーラス(bolus)注射によって、上皮または皮膚粘膜裏打ち(例えば口腔、直腸および腸粘膜など)を通じた吸収によって、医薬を投与することも可能であるし、必要に応じてエアロゾル化剤を用いて吸入器または噴霧器を使用しうるし、そして他の生物学的活性剤と一緒に投与することも可能である。投与は全身性または局所であることも可能である。本発明ががんに使用される場合、さらに、がん(病変部)に直接注入する等、適切な経路いずれかによって投与されうる。
【0110】
好ましい実施形態において、公知の方法に従って、ヒトへの投与に適応させた医薬組成物として、組成物を配合することができる。このような組成物は注射により投与することができる。代表的には、注射投与のための組成物は、無菌等張水性緩衝剤中の溶液である。必要な場合、組成物はまた、可溶化剤および注射部位での疼痛を和らげるリドカインなどの局所麻酔剤も含むことも可能である。一般的に、成分を別個に供給するか、または単位投薬型中で一緒に混合して供給し、例えば活性剤の量を示すアンプルまたはサシェなどの密封容器中、凍結乾燥粉末または水不含濃縮物として供給することができる。組成物を注入によって投与しようとする場合、無菌薬剤等級の水または生理食塩水を含有する注入ビンを用いて、分配することも可能である。組成物を注射によって投与しようとする場合、投与前に、成分を混合可能であるように、注射用の無菌水または生理食塩水のアンプルを提供することも可能である。
【0111】
本発明の組成物、医薬、治療剤、予防剤を中性型または塩型あるいは他のプロドラッグ(例えば、エステル等)で配合することも可能である。薬学的に許容しうる塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来する遊離型のカルボキシル基とともに形成されるもの、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどの遊離型のアミン基とともに形成されるもの、並びにナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、および水酸化第二鉄などに由来するものが含まれる。
【0112】
特定の障害または状態の治療に有効な本発明の治療剤の量は、障害または状態の性質によって変動しうるが、当業者は本明細書の記載に基づき標準的臨床技術によって決定可能である。さらに、場合によって、in vitroアッセイを使用して、最適投薬量範囲を同定するのを補助することも可能である。配合物に使用しようとする正確な用量はまた、投与経路、および疾患または障害の重大性によっても変動しうるため、担当医の判断および各患者の状況に従って、決定すべきである。しかし、投与量は特に限定されないが、例えば、1回あたり0.001、1、5、10、15、100、または1000mg/kg体重であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。投与間隔は特に限定されないが、例えば、1、7、14、21、または28日あたりに1または2回投与してもよく、それらいずれか2つの値の範囲あたりに1または2回投与してもよい。投与量、投与間隔、投与方法は、患者の年齢や体重、症状、対象臓器等により、適宜選択してもよい。また治療薬は、治療有効量、または所望の作用を発揮する有効量の有効成分を含むことが好ましい。悪性腫瘍マーカーが、投与後に有意に減少した場合に、治療効果があったと判断してもよい。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験系から得られる用量-反応曲線から推定可能である。
【0113】
本発明の一実施形態において「患者」または「被験体」は、ヒト、またはヒトを除く哺乳動物(例えば、マウス、モルモット、ハムスター、ラット、ネズミ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、マーモセット、サル、またはチンパンジー等の1種以上)を含む。
【0114】
本発明の医薬組成物または治療剤もしくは予防剤はキットとして提供することができる。
【0115】
特定の実施形態では、本発明は、本発明の組成物または医薬の1以上の成分が充填された、1以上の容器を含む、薬剤パックまたはキットを提供する。場合によって、このような容器に付随して、医薬または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形で、政府機関による、ヒト投与のための製造、使用または販売の認可を示す情報を示すことも可能である。
【0116】
特定の実施形態において、本発明の成分を含む医薬組成物を、リポソーム、微小粒子、または微小カプセルを介して投与することができる。本発明の多様な態様において、このような組成物を用いて、本発明の成分の持続放出を達成することが有用である可能性もある。
【0117】
本発明の治療薬、予防薬等の医薬等としての製剤化手順は、当該分野において公知であり、例えば、日本薬局方、米国薬局方、他の国の薬局方などに記載されている。従って、当業者は、本明細書の記載があれば、過度な実験を行うことなく、使用すべき量等の実施形態を決定することができる。
【0118】
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J. et al.(1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001); Ausubel, F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Ausubel, F.M.(1989). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Innis, M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press; Ausubel, F. M.(1992). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Ausubel, F.M. (1995).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Innis, M.A. et al.(1995).PCR Strategies, Academic Press; Ausubel, F.M.(1999).Short Protocols in
Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Wiley, and annual updates; Sninsky, J.J. et al.(1999). PCR Applications: Protocols for Functional Genomics, Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
【0119】
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait, M.J.(1985). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Gait, M.J.(1990). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Eckstein, F.(1991). Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, IRL Press; Adams, R.L. et al.(1992). The Biochemistry of the Nucleic Acids, Chapman & Hall; Shabarova, Z. et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids, Weinheim; Blackburn, G.M. et al.(1996). Nucleic Acids in Chemistry and Biology, Oxford University Press; Hermanson, G.T.(I996). Bioconjugate Techniques, Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0120】
例えば、本明細書において、当該分野に知られる標準法によって、例えば自動化DNA合成装置(Biosearch、Applied Biosystems等から市販されるものなど)の使用によって、本発明のオリゴヌクレオチドを合成することも可能である。例えば、Steinら(Stein et al., 1988,Nucl. Acids Res. 16:3209)の方法によって、ホスホロチオエート・オリゴヌクレオチドを合成することも可能であるし、調節孔ガラスポリマー支持体(Sarin et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:7448-7451)等の使用によって、メチルホスホネート・オリゴヌクレオチドを調製することも可能である。
【0121】
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値の範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
【0122】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0123】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0124】
以下に実施例を記載する。必要な場合、以下の実施例で用いる動物の取り扱いは、必要な場合、医薬基盤研究所および/または大阪大学において規定される基準を遵守し、ヘルシンキ宣言に基づいて行った。試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma-Aldrich、和光純薬、ナカライ、R&D Systems、USCN Life Science INC等)の同等品でも代用可能である。
【0125】
(一般手法)
(材料および方法)
(マウス)
7~10週齢の雌性C57BL/6JマウスをCLEA JAPAN INC.から購入した(日本、大阪)。MyD88 KOマウスをOriental BioService Inc.(日本、京都)から購入した。STINGのリガンド結合部位に機能欠失型変異を有する[Sauer et al., Infect. Immun.(2011)79:688-94]IL-12p40 KOおよびSTING変異マウス(Tmem173gt)を、Jackson Laboratories(Bar Harbor、ME、USA)から購入した。IRF3/7 DKOマウスを、IRF3 KO[Tang et al., PLoS One.(2013)8:1-6]およびIRF7 KOマウスから生成し、これらのうちの後者は、MEXTのNational Bio-Resource Projectを介して、RIKEN BRC(日本、茨城)によって提供された。IFNAR2 KOマウスをB&K Universalから得た。全ての動物実験を、Animal Care and Use Committe of RIMDおよび大阪大学免疫学フロンティア研究センター(IFReC)のガイドラインに従って行い、動物の使用は、大阪大学により承認された。
【0126】
(試薬)
2’3’-cGAMP、c-di-GMPおよび3’3’-cGAMPを、Invivogen(San Diego、CA、USA)から購入した。DMXAAをSigma-Aldrich(St. Louis、MO、USA)から購入し、5%のNaHCO3に溶解した。ヤマサ(日本、千葉)は、c-di-GMPを提供してくれた。OVAを関東化学(日本、大阪)から購入し、エンドトキシンレベルを、Toxicolor(登録商標)(生化学工業、日本、東京)により1EU/mg未満として決定した。K3 CpG ODN(配列番号1)を、以前記載されたようにGene Design(Ibaraki,Osaka,Japan)によって合成された。
【0127】
(サイトカインの測定)
マウスIL-12p40、マウスIL-13、およびヒトIFNγのレベルを、BioLegend(San Diego、CA、USA)のELISAキットを用いて測定した。
【0128】
(統計分析)
Mann-WhitneyのU検定、Studentのt検定またはBonferroniの多重比較検定を含む一元分散分析を、統計分析に用いた(*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001)。統計分析をGraphPad Prism software(La Jolla、CA、USA)を用いて行った。
【0129】
(実施例1:免疫化および脾臓細胞の培養)
麻酔後、C57BL/6Jマウスを、0および10日目に、OVA(10μg)、またはOVAおよびK3 CpG(10μg)、DMXAA(50μg)、c-di-GMP(1μg)、2’3’-cGAMPまたは3’3’-cGAMP(1μg)、あるいはK3 CpG+2’3’-cGAMP/3’3’-cGAMP/c-di-GMP/DMXAAで筋肉内に免疫化した。17日目に、OVA特異的血清IgG1およびIgG2cを、以前に記載されたELISAによって測定した[Kuroda et al., Immunity.(2011)34:514-526]。IgG2cおよびIgG1のELISAにおいて使用される二次抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗マウスIgG2cおよびIgG1(Bethyl Laboratories、Montgomery、TX)であった。17日目に、脾臓細胞を回収し、単細胞懸濁液を、gentleMACS dissociator(miltenyi Biotech、Gladbach、Germany)を用いて調製した。Tris-NH4Clバッファーを用いた赤血球の溶解の後、脂肪をRPMI(1%のペニシリン/ストレプトマイシンおよび10%のウシ胎児血清(FCS)を含有する)中で培養し、全OVA(10μg/ml)あるいはMHCクラスIまたはMHCクラスIIに特異的であるOVAペプチド(それぞれOVA257、OVA323)(10μg/ml)で48時間刺激した。IFNγおよびIL-13の産生をELISAによって測定した。
【0130】
(結果:TLR9-アゴニストおよびSTING-アゴニストの組み合わせは、1型アジュバントであり、2型免疫応答を抑制する)
アゴニストのSTINGアゴニスト、DMXAA、c-di-GMPおよび哺乳動物の2’3’-cGAMPが、2型免疫応答を誘導することが報告されていることを考慮して[Zhang et al., Mol. Cell.(2013)51:226-35;Burdette et al., Nature.(2011)478:515-8;Tang et al., PLoS One.(2013)8:1-6]、本発明者らは、次に、K3 CpGがこれらの他のSTINGアゴニストと協同する能力を調べた。マウスPBMCは、3’3’-cGAMPで刺激しただけでなく、2’3’-cGAMPおよびc-di-GMPもK3 CpGと協同して、先天性IFNγの産生を誘導した(
図3A)。
【0131】
in vivoにおいて、これらの組み合わせのアジュバントの特性を評価するために、本発明者らは、OVAタンパク質ならびにK3 CpG、STING-アゴニスト、またはK3 CpGおよびSTING-アゴニストの組み合わせで、マウスを0日目および10日目の2回免疫化した。17日目に、抗原特異的抗体の応答および脾臓細胞の応答を試験した。cGAMP、c-di-GMPおよびDMXAAなどのSTINGアゴニストでアジュバント化された全てのマウス群は、血清の抗OVA IgG1の高い力価(
図3B)、および脾細胞によるOVA特異的IL-13の産生(
図3C)で特徴づけられる2型免疫応答を有していたが、TLR9アゴニストのK3 CpGでアジュバント化された群は2型免疫応答を有していなかった。明確な対照によって、K3 CpGの添加は、STINGアゴニストによって誘導される全ての2型免疫応答を、OVA特異的な血清IgG2cおよび脾細胞IFNγの強い誘導によって特徴づけられる1型免疫応答に変換し、この2型免疫応答は、OVA特異的な血清IgG2cおよび脾細胞IFNγの強い誘導によって特徴づけられ、他方でOVA特異的なIgG1およびIL-13の産生をシャットダウンする(
図3Bおよび
図3C)。本発明者らはまた、OVA特異的なCD8
+T細胞によるIFNγの相乗的な誘導を観察した(
図6)。これらの結果は、TLR9-アゴニストおよびSTING-アゴニストの組み合わせが、組み合わせによって免疫化されたマウスの抗原刺激脾臓細胞における相乗的適応性IFNγを誘導すること、およびSTINGアゴニストによって誘導される2型免疫応答を抑制することが可能な強力な1型アジュバントを生じさせることを示唆する。
【0132】
(実施例2:ヒトPBMCの単離および刺激)
全てのhPBMCの実験を、Institutional Review Board of the National Institute of Biomedical Innovationからの承認に従って行った。ヒトPBMCを、ヒトリンパ分離培地(IBL、日本)を用いて健常な血液提供者の血液から単離し、1×106個の細胞をRPMI中で培養した。PBMCをK3 CpG(10μg/ml)、cGAMP(10μM)、またはK3 CpG+cGAMPで24時間刺激し、IFNγの産生をELISAによって測定した。
【0133】
in vitroでの中和実験について、上記のように培養されたhPBMCを、刺激の24時間前に、IL-12/23p40中和抗体(クローン:C8.6、BioLegend、 San Diego、CA、USA)、I型IFN中和抗体(クローン:MMHAR-2、PBL Interferon Source、Piscataway、NJ、USA)、またはIL-12/23p40中和抗体およびI型IFN中和抗体の処置(5μg/ml)に、30分間供する。
【0134】
(結果:組み合わせた場合、K3 CpGおよびcGAMPは、ヒトPBMC(hPBMC)におけるIFNγを強力に誘導する)
K3 CpGは、1型免疫応答を誘導すると報告されているヒト化K型(B型としても知られている)CpG ODNであるが、弱くIFNを誘導するだけである[Klinman et al., Nat. Rev. Immunol.(2004)4:1-10;Verthelyi et al., J. Immunol.(2001)166:2372-2377]。他方で、cGAMPは、強い1型IFNを誘導し得、アジュバントとして機能し[Li et al., Science.(2013)341:1390-4]、他のSTINGアゴニストは、2型免疫応答を誘導することが報告された[Tang et al., PLoS One.(2013)8:1-6]。K3 CpGおよびcGAMPのこれらの公知の制限を克服するために、本発明者らは、K3 CpGおよび標準3’3’-cGAMPの組み合わせの免疫賦活性の特性をin vitroにおけるhPBMCにおいて調べた。TLR9媒介シグナル経路とSTING媒介シグナル経路との相互作用を見出すために複数のhPBMCを用いて多くのサイトカインをスクリーニングした後(データは示さず)、本発明者らは、本発明の組み合わせが、IFNγの誘導において、強力な相乗作用(K3 CpGまたはcGAMP単独での刺激よりも約10~90倍)を示すことを見出した(
図1A)。
【0135】
次に、hPBMCにおいて主要なIFNγ産生細胞型を同定するために、本発明者らは、K3 CpG、CGAMP、またはこれらの組み合わせで刺激されたhPBMCにおけるIFNγの細胞内染色を行った。本発明者らの結果は、CD3
-CD56
+CD16
+NK細胞は、hPBMCの中で、組み合わせの刺激に対する応答における相乗的なIFNγの主要な産生細胞であることを示す(
図1B)。
【0136】
I型IFNおよびIL-12は、1型免疫応答の誘導に加えて、IFNγの産生のためのNK細胞を活性化することが可能である[Hunter et al., Immunol. Lett.(1997)59:1-5;Nguyen et al., J. Immunol.(2002)169:4279-4287]。したがって、本発明者らは、次に、hPBMCにおける組み合わせが誘導する先天性IFNγ産生におけるIL-12およびI型IFNの役割を調べた。IL-12中和抗体での処置は、組み合わせの刺激によって相乗的なIFNγの誘導を減少させた(
図1C)。I型IFN中和抗体での処置は、組み合わせが誘導するIFNγの産生に対していずれの影響もなかったが、I型IFNおよびIL-12の両方を同時に中和することによって、相乗的なIFNγ産生をさらに減少させた(
図1C)。これらの結果は、IL-12は、I型IFNとの組み合わせにおいて、hPBMCによるIFNγの相乗的な産生に役に立つことを示す。まとめると、上記の結果は、組み合わせた場合、K3 CpGおよびcGAMPは、IL-12およびI型IFNに部分的に依存する機序を介して多量のIFNγの産生をもたらす強力なNK活性化因子であり得る。
【0137】
(実施例3:マウスPBMCおよび樹状細胞の培養)
マウスPBMCを、マウスリンパ分離培地(IBL、日本)を用いてC57BL/6Jマウスから単離し、0.5×106個の細胞をRPMI中で培養した。GM-DCの培養物を、C57BL/6Jマウスの脛骨および大腿骨由来の骨髄細胞を洗い流し、これらの細胞を、20ng/mlのGM-CSF(Pepro Tech、Rocky Hill、NJ、USA)の存在下で7日間培養するによって調製した。GM-DCを、1%のペニシリン/ストレプトマイシンおよび20%のFCSを含有するRPMI中で培養した。FL-DC培養物を、100ng/mlのヒトFlt3L(Pepro Tech)の存在下で7日間培養されたC57BL/6Jマウスの骨髄細胞から調製した。FL-DCを、1%のペニシリン/ストレプトマイシンおよび10%FCSを含有するRPMI中で培養した。
【0138】
野生型マウスおよびIRF3/7 DKOマウス由来のマウスPBMCをK3 CpG、cGAMP、またはK3 CpG+cGAMPで24時間刺激し、IFNγの産生をELISAにより測定した。また、GM-DCおよびFL-DCを、K3 CpG、cGAMP、またはK3 CpG+cGAMPを24時間刺激し、IL-12p40およびIFNαの産生をELISAにより測定した。
【0139】
(結果:マウスにおけるK3 CpGおよびcGAMPによる相乗的なIFNγの誘導の細胞機序および細胞内機序)
マウスにおける初期(先天性)IFNγの誘導に対する本発明のTLR9アゴニストとSTING-アゴニストとの間の相乗作用を調べるために、本発明者らは、マウスPBMC(mPBMC)をK3 CpG、cGAMP、またはこれらの組み合わせでin vitroにおいて刺激した。本発明者らがhPBMCにおいて観察したものと同様な相乗的態様において、多量のIFNγの産生を観察した。IRF3およびIRF7は、それぞれcGAMP媒介性I型IFNおよびCpG媒介性I型IFNの誘導のための必要な下流の分子であるので[Wu et al., Science.(2013)339:826-30;Kawai et al., Nat. Immunol.(2004)5:1061-8]、本発明者らは、野生型マウスまたはIRF3およびIRF7の両方を欠損したマウス(ダブルノックアウト、DKO)のどちらかに由来するmPBMCを用いて、相乗的なIFNγの産生におけるIRF3およびIRF7の役割を調べた。相乗的なIFNγの産生が、IRF3/7DKOのmPBMCにおいて抑制された(
図2A)。
【0140】
IL-12およびI型IFNは、hPBMCにおける相乗的なIFNγの産生の原因となるため(
図1C)、本発明者らは、IL-12および/またはI型IFNを産生し得る樹状細胞を活性化する組み合わせられたK3 CPGおよびcGAMPの能力を調べた。半発明者らが、GM-CSF由来樹状細胞(GM-DC)およびFlt3L由来樹状細胞(FL-DC)を、K3 CpG、cGAMP、またはこれらの組み合わせとインキュベートすると、本発明者らは、mPBMCにおいて観察されたものと同様の相乗作用を見出した(
図2B~
図2D)。K3 CpGおよびcGAMPの組み合わせは、単独での刺激により誘導される量よりも、GM-DC(
図2B)およびFL-DC(
図2C)の両方による顕著に高いIL-12p40の産生、およびFL-DC(
図2D)による顕著に高いIFNαの産生を誘導した。このことは、本発明の組み合わせによる相乗的なIFNγの誘導において、IL-12およびI型IFNに対する潜在的な役割を示す。あわせて、これらの結果は、hPBMCにおけるIFNγを強力に誘導するK3 CpGとcGAMPとの間の相乗作用は、マウスにおいて再現されることを示す。この相乗作用についての機序は、IRF3/7媒介性細胞内シグナル伝達に関与し、相乗作用は、形質細胞様DC(pDC)によるI型IFN、ならびに古典的DC(cDC)およびpDCの両方によるIL-12の産生を誘導する。
【0141】
(実施例5:細胞内サイトカインおよび細胞表面分子の染色)
ヒトPBMCをK3 CpG(10μg/ml)、cGAMP(10μM)、またはK3 CpG+cGAMPで16時間刺激し、最後の4時間はブレフェルジンAの存在下で刺激した。刺激後、細胞を回収し、CD16-PerCP-Cy5.5抗体(BD Biosciences:Franklin Lake、NJ)、CD56-BV421抗体(BioLegend)、CD3-FITC抗体(BD Biosciences)およびCD8-PE抗体(Miltenyi Biotech)を用いて表面分子を染色した。固定化および透過処理された細胞を、細胞内IFNγの検出のためにIFNγ-APC(BioLegend)で染色し、BD FACSCANTO II フローサイトメータを用いて分析した。
【0142】
(実施例6:腫瘍細胞および処置)
E.G7-OVA胸腺腫細胞を、American Type Culture Collection(VA、USA)から購入し、RPMI中で培養した。1×106個の細胞を、0日目にマウスの背中の皮下に注射した。7および10日目に、マウスは、PBS(50μl)、K3 CpG(10μg)、cGAMP(10μg)、またはK3CpG+cGAMPが腫瘍内に与えられ、腫瘍の成長についてマウスを22日間モニターした。
【0143】
(結果:K3 CpGおよびcGAMPは、一緒にマウス同系外植腫瘍モデルにおける腫瘍の成長を抑制できる)
Th1細胞およびCD8
+T細胞の応答は、抗腫瘍免疫の精製に重要であるので、本発明者らは、マウス腫瘍モデルにおけるK3 CpGおよびcGAMPの組み合わせの免疫療法の潜在能力を調べた。本発明者らは、OVA発現EG-7リンパ腫細胞をマウスに皮下注射によって接種した。7日目および10日目に、マウスは、PBS、K3 CpG(10μg)、cGAMP(10μg)、またはK3 CpGおよびcGAMPの腫瘍内注射を受けた。組み合わせ処置は、PBS、K3 CpG、またはcGAMPの処置と比べて、腫瘍の成長を顕著に抑制し(
図5)、これは本発明の組み合わせは、ガンに対する抗原を含まない免疫治療剤として機能し得ることを示唆する。
【0144】
(実施例7:KOマウスにおけるIFNγの産生)
野生型、Tmem173gt、IRF3/7 DKO、MyD88 KOおよびIFNAR KO C57BL/6Jマウスを、OVAおよびK3 CpG、cGAMP、またはK3 CpG+cGAMPで、0および10日目に筋肉内経路を介して免疫化した。17日目に、OVA特異的血清IgG2cおよびIgG1をELISAにより測定した。また、脾臓細胞をOVAで48時間刺激し、IFNγの産生をELISAにより測定した。
【0145】
IL-12p40+/-および-/-C57BL/6Jマウスもまた、OVAおよびK3 CpG、cGAMP、またはK3 CpG+cGAMPで、0および10日目に筋肉内経路を介して免疫化した。17日目に、OVA特異的血清IgG2cおよびIgG1をELISAにより測定した。また、脾臓細胞を、OVAタンパク質で48時間刺激し、IFNγの産生をELISAにより測定した。
【0146】
(結果:IRF3/7、STING、MyD88、IL-12およびI型IFNのシグナル伝達に依存するIFNγの相乗的な誘導)
本発明者らは、mPBMCにおいて先天的なIFNγの相乗的な産生が、cGAMPおよびK3 CpGのそれぞれによるI型IFNの誘導に必要とされるIRF3およびIRF7に完全に依存することを示した。cGAMPはSTINGのリガンドであり、K3 CpGは、アダプター分子MyD88を介してシグナル伝達するTLR9のリガンドであるため、本発明者らは、IRF3/7 DKOマウス、IFNα/βレセプター(IFNAR)KOマウス、MyD88 KOマウスおよびSTING変異マウスを用いて、IRF3/7、MyD88、STINGおよびI型IFNの、組み合わせによって誘導される抗原特異的IFNγの相乗的な産生における関与を評価した。血清における組み合わせによって誘導された抗原特異的IgG2cおよび脾臓によるIFNγの産生は、野生型マウスと比較して、STING変異マウス、IRF3/7 DKOマウス、MyD88 KOマウスおよびIFNAR KOマウスにおいて顕著に減少した(
図4Aおよび
図4B)。
【0147】
マウスおよびヒトPBMCにおける本発明者らのin vitro研究はまた、IL-12が先天性のIFNγの相乗的な誘導に寄与することを示した。したがって、本発明者らは、次に、IL-12p40+/-マウスおよび-/-マウスを用いることによって、IL-12の関与を調査した。本発明者らは、IL-12p40が抗原特異的なIFNγの相乗的な誘導に必要とされるが、IgG2c抗体の応答の誘導には必要とされないことを見出した(
図4Cおよび
図4D)。本発明者らの全ての結果は、K3 CpGおよびcGAMPの組み合わせは、強力な1型アジュバントであり、IRF3/7、STING、MyD88、IL-12およびI型IFNのシグナル伝達依存的な態様で、抗原特異的IFNγの産生を相乗的に誘導していることを示唆している。
【0148】
(実施例9:IgE抗体の産生の測定)
本実施例は、アレルギー抑制についての実施例である。
【0149】
麻酔後、マウスを、0および10日目に、OVA(10μg)、またはOVAおよびK3 CpG(10μg)、cGAMP(10μM)またはK3 CpG+GAMPで筋肉内に免疫化した。17日目に、OVA特異的血清IgEを、ELISAによって測定した。
【0150】
(結果:STINGアゴニストはIgEを誘導するが、CpGと組み合わせることによりこれを抑制する)
現行のアジュバントの多くは抗体産生を誘導するTh2アジュバントであるが、これらのアジュバントはガンやアレルギーのワクチン療法には不向きであった。さらに、STINGアゴニストは副反応としてIgEを誘導するため、アレルギー性炎症を引き起こす恐れもある。しかしながら本発明では、二種類のアジュバンを組み合わせるだけでIgE誘導を抑えながら強力なTh1アジュバント効果を誘導できる(
図8)。
【0151】
(考察)
細胞内病原体またはガンに対する効率的なワクチンは、1型免疫応答を誘導するアジュバントを必要とする。cGAMPおよびc-di-GMPなどの環状ジヌクレオチドは、膜貫通型分子STINGに直接結合し、TBK1-IRF3依存性シグナル経路を活性化してI型IFNを誘導するので、潜在的なワクチンアジュバントとして注目されてきた[Dubensky et al., Ther. Adv. Vaccines.(2013)1:131-143]。しかし、STING-アゴニストが、1型防御免疫応答よりもむしろ2型免疫応答を誘導するという証拠は[Tang et al., PLoS
One.(2013)8:1-6]、それらの潜在的な治療的適用を制限することを示唆している。この研究において、本発明者らは、STING-アゴニストをTLR9リガンドのK3 CpGと組み合わせることによってこの問題を解決する。この組み合わせは、先天性IFNγおよび適応性IFNγの産生を相乗的に増強する。それは、強力な1型アジュバントとして機能し、抗体ならびにCD4+Th1細胞およびCD8+T細胞を強く誘導し、そしてマウス腫瘍モデルにおける腫瘍の成長を効率的に抑制し得る抗腫瘍剤として機能する。
【0152】
本研究は、K3 CpGおよびcGAMPの組み合わせが、ヒトおよびマウスPBMCの両方において先天性IFNγの産生を相乗的に誘導することを示し(
図1および
図2)、この現象は、ヒトとマウスとの間で保存されていることを示唆している。本発明者らによるin vitroでの結果はまた、作用機序が、IL-12およびI型IFNに関与することを示す。具体的には、K3 CpGとcGAMPとの間の相乗作用の間、I型IFNは、その効果の喪失がIL-12で補填されるため必要とされなかった(
図1C)。以前の報告では、I型IFNおよびIL-12が、リステリア・モノサイトゲネスの感染後、CD4
+T細胞によってIFNγの産生を相乗的に誘導し得ることが示唆された。それらは、両方のサイトカイン非存在下で相乗作用が顕著に減少したことを示したが、サイトカインのいずれか一方の非存在下では部分的に減少し、これは本発明者らの結果と一致する[Way et al., Immunol.(2007)178:4498-4505]。さらに、本発明者らは、PBMCで観察された相乗作用と同様に、本発明の組み合わせは、GM-DCおよびFL-DCにおけるIL-12p40の産生を相乗的に誘導することができ(
図2Cおよび
図2D)、通常の樹状細胞および形質細胞様の樹状細胞が組み合わせによって誘導された相乗作用に果たす潜在的な役割を示唆する。同様のIL-12の相乗作用は、MyD88およびTRIF依存性シグナル経路を必要とする骨髄由来DCにおけるTLRリガンド、CpGおよびポリI:Cの組み合わせにより、Krummenらによって報告された[Krummen et al., J. Leukoc. Biol.(2010)88:189-99]。本発明者らの結果はまた、MyD88依存性(TLR9)および非依存性(STING)シグナル経路を活性化する分子の組み合わせが、強い免疫賦活剤を生じさせ、このような組み合わせは、免疫治療的適用に有用であり得ることを示唆する。
【0153】
本発明者らによる発見によると、NK細胞は、hPBMCの培養、その後の組み合わせによる刺激における主要なIFNγ産生細胞である(
図1B)。他方で、以前の報告では、NK細胞は低いレベルのTLR9を発現するが、CpGの刺激に対して応答する細胞は、hPBMCにおけるTLR9発現pDCおよびB細胞であることが示されている。また、IL-12およびI型IFNは、NK細胞におけるIFNγの産生および細胞障害性を制御することが報告されている[Nguyen et al., J. Immunol.(2002)169:4279-4287;Chace et al., Clin.
Immunol. Immunopathol.(1997)84:185-193]。これらの報告および本発明者らのin vitroのデータを考慮すると、本発明者らが提唱する先天性IFNγの相乗的な誘導の機序は、pDCがK3 CpGに対して応答し、cDCまたはマクロファージなどの他の細胞がcGAMPに対して応答して、多量のI型IFNおよびIL-12を産生し得るというものであり、これは、その後、IL-12レセプターおよびI型IFNレセプターを介してシグナル伝達することによって、協同してNK細胞におけるIFNγの産生を誘導する。
【0154】
2’3’-cGAMPのアジュバント効果についての最初の報告は、筋肉内cGAMP免疫化が、STING依存的な態様で、抗原特異的B細胞およびT細胞の応答を誘導し得ることを示した[Li et al., Science.(2013)341:1390-4]。3’3’-cGAMPを用いた本発明者らのin vivoの免疫化研究はまた、以前の報告と一致する;それは、STING依存的な態様で、強い抗原特異的B細胞およびT細胞の応答を誘導する(
図4Aおよび
図4B)。本発明者らはまた、3’3’-cGAMPは、脾臓細胞において、IgG1だけでなく、IgG2c抗体応答およびTh2型サイトカイン応答を誘導し得る2型アジュバントであることを示した(
図3Bおよび
図3C)。2型アジュバントは通常Th1様Igアイソタイプ(IgG2c)の産生を通常誘導しないが、I型IFNがIgG2c抗体応答を誘導するため、おそらくI型IFNを誘導する能力に起因して、cGAMPはTh1様Igアイソタイプ誘導し得る[Swanson et al., J. Exp. Med.(2010)207:1485-500]。さらに、本発明者らは、別個の機序が、cGAMPによるB細胞およびT細胞の応答の誘導に関与しており、この機序において、cGAMP誘導性の抗体応答は、I型IFNシグナル伝達に依存するが、Th2応答はこれに依存しないことを見出した(
図4B)。さらに、cGAMPは、STING-IRF3軸のみを介してシグナルを伝達して、I型IFNの産生を誘導することが知られているので[Wu et al., Science.(2013)339:826-30]、本発明者らは、IRF3/7DKOマウスにおける抗体およびT細胞の応答の減少が観察されることを予測した。しかし、cGAMP誘導性の抗体応答はIRF3/7DKOマウスにおいてわずかに減少した一方で、cGAMP誘導性のT細胞応答はIRF3/7に部分的に依存し、驚くべきことにMyD88に依存していたが、そのような効果はSTINGに完全に依存していた(
図4Aおよび
図4B)。したがって、本発明者らは、さらに、STING-IRF3経路に加えて、cGAMPが、アダプター分子MyD88に関与する未知のシグナル経路を活性化し得る可能性を調査している。
【0155】
K3 CpGは1型免疫応答を誘導することが可能なアジュバントとして報告されたが[Chu et al., J. Exp. Med.(1997)186:1623-1631]、本発明者らは、K3 CpGが、cGAMPまたは組み合わせによる免疫化群に匹敵するレベルで、抗原特異的な抗体またはT細胞の応答を誘導することができないため、K3 CpGが単独で弱い1型アジュバントであることを見出した。興味深いことに、弱い1型アジュバントK3 CpGの2型アジュバントcGAMPとの組み合わせが、相乗的な抗原特異的IFNγの産生ならびに強いTh1様抗体およびCD8
+T細胞の応答を誘導する強い1型アジュバントを生じさせた(
図3および
図6)。本発明者らの発見はまた、2型アジュバントであるCpGおよびIFAの組み合わせが1型免疫応答を誘導し、他方で2型免疫応答を抑制することを示す以前の研究と一致している[Chu et al., J. Exp. Med.(1997)186:1623-1631]。重要なことに、本発明の組み合わせによる強力な1型免疫応答の誘導に加えて、本発明者らは、本発明の組み合わせが、cGAMPによって誘導される2型免疫応答を抑制し得ることも示した。このことは、優位な2型応答が、アレルギーなどの多くの慢性疾患を引き起こすことが報告されているため、安全性の増加に重要である[Spellberg et al., Clin. Infect. Dis.(2001)90509:76-102;Muller et al., J. Immunol.(1993)150:5576-5584;Seki et al., Nat. Med.(2003)9:1047-1054]。本発明者らの結果はまた、IgG2cの産生が増強され、他方でIgG1の産生がCpGによって抑制されるということにおいて、Linらの発見と一致している[Lin et al., Eur. J. Immunol.(2004)34:1483-7]。さらに、抗原特異的IFNγの誘導に対する本発明の組み合わせの相乗効果は、IRF3およびIRF7に依存しており(
図4Aおよび
図4B)、I型IFNは、この相乗作用において重要な役割を果たし得ることを示している。この考えは、本発明者らがIFNAR KOマウスにおいて観察した相乗作用の完全な消失によってさらに支持される(
図4Aおよび
図4B)。さらに、MyD88は、TLR9の下流シグナル伝達分子であり、cGAMPは、STINGのリガンドであるので、本発明者らは、組み合わせの1型免疫誘導効果が、予測通りMyD88およびSTINGの両方に依存していることを見出した(
図4Aおよび
図4B)。他方で、本発明者らは、IL-12p40がTh1型サイトカイン応答の相乗的な誘導に必要とされるが、IgG2c抗体応答の誘導には必要とされないことを示した(
図4Cおよび
図4D)。IL-12は、Th1細胞の発生およびIFNγの産生に重要であるので、Th1型サイトカイン応答におけるIL-12の依存性を観察することは合理的である。本発明の組み合わせによるIL-12非依存性のIgG2cの誘導について考えられる説明は、KOマウスにおけるI型IFNの産生は、IL-12の非存在を補填し得るということである。以前の報告では、T細胞非依存的な態様で、I型IFNがIgG2c抗体の応答を誘導し得[Swanson et al., J. Exp. Med.(2010)207:1485-500]、他方で、IL-12は、T細胞またはNK細胞からのIFNγ産生を誘導することによって、IgG2c抗体応答を誘導する[Gracie et al., Eur. J. Immunol.(1996)26:1217-1221]。
【0156】
最終的に、本発明者らは、K3 CpGおよびcGAMPの組み合わせが、この組み合わせでの処置だけで、EG-7マウス腫瘍モデルにおける腫瘍の成長を効率的に抑制できたため、強い抗腫瘍効果を有しているということを見出した(
図5)。本発明者らのin vivoでの結果は、組み合わせが、強いCD8
+T細胞の応答を誘導することを示し(
図6)、CpG ODNが、CD8
+細胞傷害性T細胞の精製を誘導するということをすでに報告されているので[Krieg et al., Nat. Rev. Drug Discov.(2006)5:471-84]、本発明の組み合わせの抗腫瘍効果が、強いCD8
+T細胞の活性化の誘導に起因する可能性がある。本発明者らの仮説は、OVAコンジュゲートCpG ODNのワクチン接種もまた、CD8
+T細胞に依存する強力な抗腫瘍効果を有することを示す以前の報告によって支持される[Cho et al., Nat. Biotechnol.(2000)18:509-514]。しかし、本発明の組み合わせ処置によって増強されるNK細胞の活性化の可能性を除外できず、hPBMC培養物中の場合と同様に、本発明者らは、IFNγの相乗効果において主要な役割を果たすものとしてNK細胞を同定した。OVAコンジュゲートCpG ODN[Cho et al., Nat. Biotechnol.(2000)18:509-514]またはナノ粒子コンジュゲートCpG ODN[De et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.(2013)110:19902-7]などの以前報告されたCpGベースの抗腫瘍剤に対する本発明の組み合わせ治療の利点は、それは、K3 CpGとcGAMPとの間の化学的なコンジュゲートを必要としないということである。さらに、これらのシステムとは異なり、本発明のアプローチは、腫瘍抗原の注射またはコンジュゲートを必要としない。それは、予防ワクチンよりはむしろ抗原を含まない抗腫瘍剤として機能する。
【0157】
結論として、本発明者らによる研究は、TLR9-アゴニストおよびSTING-アゴニストの組み合わせは、強い細胞性免疫応答を必要とするワクチンに有利な1型アジュバント、および相乗的なIFNγの産生のためにヒトNK細胞も刺激し得る有望な抗腫瘍剤であることを示唆する。したがって、本発明者らの結果は、TLR9およびSTINGのシグナル経路の組み合わせられた作用機序に対する洞察を提供し、これは、本発明の組み合わせの免疫療法およびアジュバント特性を潜在的に促進する。
【0158】
(実施例10:STINGリガンドの多種類に関する実験)
本実施例では、実施例1~9と同様の実験を行う。cGAMP、c-di-GMP、2’3’-cGAMP、DMXAAを用いて、実施例7~9の条件で、3’3’-cGAMPに代えて、cGAMP、c-di-GMP、2’3’-cGAMP、DMXAAを用いて、同様の実験を行う。
【0159】
そうすると、cGAMP、c-di-GMP、2’3’-cGAMP、DMXAAでも、実施例1~6で見られるように、3’3’-cGAMPと同様の結果が得られることが理解される。
【0160】
(実施例11:CpG(K3以外)の多種類のものに関する実験)
本実施例では、実施例1~9の実験をK3以外のCpG1826、D35 CpGのようなCpGを用いて行った。
【0161】
(材料および方法)
CpG1826(配列番号2=5’-tccatgacgttcctgacgtt-3’)、およびD35 CpG(配列番号3=5’-ggtgcatcgatgcagggggg-3’)を、それぞれInvivogenから購入、およびGene Design(Ibaraki,Osaka,Japan)によって合成された。これらは、合成または購入後、凍結乾燥品を滅菌水にて溶かして使用した。
【0162】
(方法)
マウス(c57BL/6)の脾細胞を1×10
7細胞/mlに調整し、in vitroにおいて上記CpG等の刺激剤で24時間刺激した培養上清中のIFN-γをELISA法にて測定した。これらの方法は、(一般手法)に記載されるように行った。
(結果)
結果を
図12に示す。示されるように、それぞれのCpGは、STINGアゴニストである3’3’-cGAMPと組み合わせた場合に脾臓細胞においてインターフェロン産生において相乗効果が生じることが実証された。したがって、本発明の作用効果は、特定のCpGに限定されず広くCpG一般において発揮されることが実証されたといえる。
【0163】
(参考文献)
1. Kawai et al., Immunity.(2011)34:637-650
2. Trinchieri et al., Nat. Rev. Immunol.
(2007)7:179-190.
3. Seder et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.(1993)90:10188-92.
4. Hsieh et al., Science.(1993)260:547-549.
5. Spellberg et al., Clin. Infect. Dis.(2001)90509:76-102.
6. Mantovani et al., Curr. Opin. Immunol.(2010)22:231-237.
7. Hung et al., J. Exp. Med.(1998)188:2357-68.
8. Vesely et al., Annu. Rev. Immunol.(2011)29:235-271.
9. Vitale et al., Eur. J. Immunol.(2014)44:1582-1592.
10. Hartmann et al., J. Immunol.(2000)164:944-953.
11. Wagner et al., Trends Immunol.(2004)25:1-6.
12. Krieg et al., Nat. Rev. Drug Discov.(2006)5:471-84.
13. Klinman et al., Nat. Rev. Immunol.(2004)4:1-10.
14. Desmet et al., Nat. Rev. Immunol.(2012)12:479-491.
15. Barber et al., Immunol. Rev.(2011)243:99-108.
16. Sun et al., Science.(2013)339:786-91.
17. Wu et al., Science.(2013)339:826-30.18. Zhang et al., Mol. Cell.(2013)51:226-35.
19. Burdette et al., Nature.(2011)478:515-8.
20. Mcwhirter et al., J. Exp. Med.(2009)206:1899-1911.
21. Li et al., Science.(2013)341:1390-4.22. Tang et al., PLoS One.(2013)8:1-6.
23. Hogenesch et al., Front. Immunol.(2013)3:1-13.
24. Macleod et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.(2011)108:7914-7919.
25. Weeratna et al., Vaccine.(2000)18:1755-1762.
26. Verthelyi et al., J. Immunol.(2001)166:2372-2377.
27. Hunter et al., Immunol. Lett.(1997)59:1-5.
28. Nguyen et al., J. Immunol.(2002)169:4279-4287.
29. Kawai et al., Nat. Immunol.(2004)5:1061-8.
30. Dubensky et al., Ther. Adv. Vaccines.(2013)1:131-143.
31. Way et al., Immunol.(2007)178:4498-4505.
32. Krummen et al., J. Leukoc. Biol.(2010)88:189-99.
33. Hornung et al., Immunol.(2002)168:4531-4537.
34. Chace et al., Clin. Immunol. Immunopathol.(1997)84:185-193.
35. Swanson et al., J. Exp. Med.(2010)207:1485-500.
36. Chu et al., J. Exp. Med.(1997)186:1623-1631.
37. Muller et al., J. Immunol.(1993)150:5576-5584.
38. Seki et al., Nat. Med.(2003)9:1047-1054.
39. Lin et al., Eur. J. Immunol.(2004)34:1483-7.
40. Gracie et al., Eur. J. Immunol.(1996)26:1217-1221.
41. Cho et al., Nat. Biotechnol.(2000)18:509-514.
42. De et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.
S. A.(2013)110:19902-7.
43. Sauer et al., Infect. Immun.(2011)79:688-94.
44. Honda et al., Nature.(2005)434:772-777.
45. Kobiyama et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.(2014)111:1-6.
46. Kuroda et al., Immunity.(2011)34:514-526.
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本願は、日本国特願2014-235934号に対して優先権主張をするものであり、その内容は全体が本願において参考として援用される。