(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118404
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20230818BHJP
C08K 5/101 20060101ALI20230818BHJP
C08L 25/08 20060101ALI20230818BHJP
C08L 45/00 20060101ALI20230818BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/101
C08L25/08
C08L45/00
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021344
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100181179
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 洋一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197295
【弁理士】
【氏名又は名称】武藤 三千代
(72)【発明者】
【氏名】酒井 直子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮太
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131BA07
3D131BA18
3D131BC51
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
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4J002AC091
4J002AC111
4J002BB151
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4J002FD026
4J002FD070
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD200
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】本発明は、未加硫ゴムの耐接着性、加硫ゴムとしたときの破断強度が優れる、タイヤ用ゴム組成物の提供を目的とする。
【解決手段】ジエン系ゴムと、オレイン酸2-エチルヘキシル及びスチレン・インデン類縁体を含む特定可塑剤とを含有する、タイヤ用ゴム組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムと、オレイン酸2-エチルヘキシル及びスチレン・インデン類縁体を含む特定可塑剤とを含有する、タイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記オレイン酸2-エチルヘキシルは、植物油由来である、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記オレイン酸2-エチルヘキシルは、オレイン酸エステルを有する植物油を2-エチルヘキサノールでエステル交換した、請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記オレイン酸2-エチルヘキシルの含有量が、前記特定可塑剤中の15~40質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記特定可塑剤の含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対して、5~100質量部である、請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記ジエン系ゴムが、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の枯渇問題や、地球温暖化防止を目的とする炭酸ガス排出の規制などの諸事情により、石油資源に由来しない材料が求められている。タイヤにおいても非石油資源由来の材料開発が行われている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようななか、本発明者らは特許文献1を参考にしてゴム組成物を調製しこれを評価したところ、このようなゴム組成物から得られる、加工時において未加硫ゴムシート同士が接着してはがれにくくなる場合(耐接着性が悪い)、及び/又は、加硫ゴムの破断強度が悪い場合があることが明らかとなった。
そこで、本発明は、未加硫ゴムの耐接着性、加硫ゴムとしたときの破断強度が優れる、タイヤ用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、オレイン酸2-エチルヘキシル及びスチレン・インデン類縁体を含む特定可塑剤を使用することによって所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0006】
[1] ジエン系ゴムと、オレイン酸2-エチルヘキシル及びスチレン・インデン類縁体を含む特定可塑剤とを含有する、タイヤ用ゴム組成物。
[2] 上記オレイン酸2-エチルヘキシルは、植物油由来である、[1]に記載のタイヤ用ゴム組成物。
[3] 上記オレイン酸2-エチルヘキシルは、オレイン酸エステルを有する植物油を2-エチルヘキサノールでエステル交換した、[1]又は[2]に記載のタイヤ用ゴム組成物。
[4] 上記オレイン酸2-エチルヘキシルの含有量が、上記特定可塑剤中の15~40質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
[5] 上記特定可塑剤の含有量が、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、5~100質量部である、[1]~[4]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
[6] 上記ジエン系ゴムが、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、[1]~[5]のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、未加硫ゴムの耐接着性、加硫ゴムとしたときの破断強度が優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について以下詳細に説明する。
本明細書において、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、各成分の製造方法は特に制限されない。例えば、従来公知の方法が挙げられる。
【0009】
本明細書において、未加硫ゴムの耐接着性、及び、加硫ゴムとしたときの破断強度のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れると言うことがある。また、「未加硫ゴムの耐接着性」を単に「耐接着性」と言い、「加硫ゴムとしたときの破断強度」を単に「破断強度」と言うことがある。
【0010】
本発明のゴム組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
本発明のゴム組成物は特定可塑剤がオレイン酸2-エチルヘキシル及びスチレン・インデン類縁体を含むことによって、未加硫ゴムから可塑剤等がブリードアウトすることが抑制され、未加硫ゴムにおける耐接着性が向上すると考えられる。
また、本発明のゴム組成物は特定可塑剤がオレイン酸2-エチルヘキシルを含むことによって、得られる加硫ゴムにおいて、ジエン系ゴムが上記オレイン酸2-エチルへキシルが有する二重結合と結合し、加硫ゴムの破断強度が向上すると考えられる。
以下、本発明のゴム組成物に含有される各成分について詳述する。
【0011】
[ジエン系ゴム]
本発明のゴム組成物に含有されるジエン系ゴムは、ジエン系モノマーに由来する繰り返し単位を有するポリマーであれば特に制限されない。
ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴム、イソプレンゴム(IR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br-IIR、Cl-IIR)、クロロプレンゴム(CR)などの共役ジエン系ゴムが挙げられる。
芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ゴムとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレン共重合体ゴムなどが挙げられる。
ジエン系ゴムは、変性されていてもよい。上記変性は特に制限されない。本明細書において、ジエン系ゴムは、特に断りがない限り、変性されていても、変性されていなくともいなくともよい(以下同様)。
【0012】
ジエン系ゴムは、本発明の効果がより優れるという観点から、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)及びブタジエンゴム(BR)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、SBR及び/又はBRを含むことがより好ましく、SBR及びBRを含むことが更に好ましい。
【0013】
ジエン系ゴムがNRを含む場合、NRの含有量は、ジエン系ゴム中の80~100質量%であることが好ましく、90~100質量%がより好ましい。
【0014】
ジエン系ゴムを組み合わせて使用する場合、上記組合せとしては、例えば、BR及びSBRの組合せが挙げられ、BR及び変性されたSBRの組合せが好ましい態様の1つとして挙げられる。
ジエン系ゴムがBR及びSBRを含む場合、SBRの含有量は、ジエン系ゴム中の70~90質量%であることが好ましい。
ジエン系ゴムがBR及びSBRを含む場合、BR及びSBRの合計含有量は、ジエン系ゴム全量中の90~100質量%であることが好ましい。
【0015】
[特定可塑剤]
本発明において、特定可塑剤は、オレイン酸2-エチルヘキシル、及び、スチレン・インデン類縁体を含む。
特定可塑剤は、オレイン酸2-エチルへキシル及びスチレン・インデン類縁体を予め混合した混合物として使用してもよい。また、オレイン酸2-エチルヘキシル、及び、スチレン・インデン類縁体を別々に使用してもよい。
【0016】
[オレイン酸2-エチルへキシル]
オレイン酸2-エチルへキシル(オレイン酸2-エチルへキシルエステル)は、オレイン酸と2-エチルヘキサノールとのエステルである。
【0017】
オレイン酸2-エチルヘキシルは、本発明の効果がより優れるという観点から、植物油由来であることが好ましい。
オレイン酸2-エチルヘキシルが植物油由来である場合、オレイン酸2-エチルヘキシルの原料となり得る植物油としては、例えば、オレイン酸エステルを有する植物油が挙げられ、具体的には例えば、ヒマワリ油のような種子油、穀類の油、いも類の油、豆類の油、野菜類の油が挙げられる。
植物油は、本発明の効果がより優れるという観点から、植物油を構成する全脂肪酸成分のうち、オレイン酸が70質量%以上を占めることが好ましく、オレイン酸が80質量%以上を占めることがより好ましい。
植物油を構成する脂肪酸成分がオレイン酸を含む場合、オレイン酸以外の脂肪酸成分は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0018】
オレイン酸2-エチルヘキシルは、本発明の効果がより優れるという観点から、オレイン酸エステルを有する植物油を2―エチルヘキサノールでエステル交換して得られたものであることが好ましい。
特定可塑剤に含まれるオレイン酸2-エチルヘキシルが、上記のエステル交換による場合、特定可塑剤はオレイン酸2-エチルヘキシル及びスチレン・インデン類縁体以外に更に、オレイン酸2-エチルヘキシルの原料である植物油の脂肪酸成分の組成(脂肪酸成分の種類及びその量の割合)を反映した、脂肪酸2-エチルヘキシル(脂肪酸2-エチルヘキシルエステル)を含むことができる。
脂肪酸2-エチルヘキシルの種類としては、例えば、ステアリン酸のような飽和脂肪酸の2-エチルヘキシルエステル、オレイン酸以外の一価不飽和脂肪酸の2-エチルヘキシルエステル、リノール酸のような多価不飽和脂肪酸の2-エチルヘキシルエステルが挙げられる。
オレイン酸2-エチルヘキシル及びこれ以外の脂肪酸2-エチルヘキシルの合計量のうち、オレイン酸2-エチルヘキシルの含有量が70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0019】
オレイン酸2-エチルヘキシルの製造方法は特に制限されないが、本発明の効果がより優れるという観点から、オレイン酸エステルを有する植物油を2-エチルヘキサノールでエステル交換する方法が好ましい。上記エステル交換としては、例えば、従来公知の方法が挙げられる。
オレイン酸2-エチルヘキシルを製造した後、反応物を精製してもよい。
オレイン酸エステルを有する植物油を2-エチルヘキサノールでエステル交換し、反応物を精製した場合、得られた精製物は、オレイン酸2-エチルヘキシルを少なくとも含有すればよい。精製物は、原料である植物油に由来するグリセリンやグリセリンエステル、未反応の2-エチルヘキサノールを含まないことが好ましい。
【0020】
(オレイン酸2-エチルへキシルの含有量)
上記オレイン酸2-エチルへキシルの含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、特定可塑剤中の15~40質量%であることが好ましく、20~30質量%がより好ましい。
【0021】
[スチレン・インデン類縁体]
本発明において、スチレン・インデン類縁体は、スチレン類とインデン類との共重合体である。
スチレン・インデン類縁体としては、例えば、アルキルスチレンとインデンとの共重合体が挙げられる。
(スチレン・インデン類縁体の含有量)
スチレン・インデン類縁体の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、特定可塑剤中の60~85質量%であることが好ましく、70~80質量%がより好ましい。
【0022】
(特定可塑剤の含有量)
特定可塑剤の含有量は、本発明の効果がより優れるという観点から、上記ジエン系ゴム100質量部に対して、5~100質量部であることが好ましく、10~25質量部がより好ましく、15~20質量部が更に好ましい。
【0023】
特定可塑剤を原料ゴム(ジエン系ゴム)に後添加する場合、ジエン系ゴム100質量部に対する特定可塑剤の添加量を、上述の特定可塑剤の含有量と同様にできる。
【0024】
(充填剤)
本発明のゴム組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、更に、充填剤を含有することが好ましく、カーボンブラック及び白色充填剤からなる群より選択される少なくとも1種の充填剤を含有することがより好ましく、カーボンブラック及び白色充填剤の両方を含有することが更に好ましい。
【0025】
・カーボンブラック
上記カーボンブラックは特に限定されず、例えば、SAF-HS、SAF、ISAF-HS、ISAF、ISAF-LS、IISAF-HS、HAF-HS、HAF、HAF-LS、FEF、GPF、SRFのような各種グレードのものを使用することができる。
上記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、50~200m2/gであることが好ましく、70~150m2/gであることがより好ましい。
ここで、窒素吸着比表面積(N2SA)は、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0026】
・白色充填剤
上記白色充填剤は特に限定されないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、シリカを含むことが好ましい。
【0027】
上記シリカは特に限定されないが、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、湿式シリカであることが好ましい。
【0028】
上記シリカのセチルトリメチルアンモニウムブロマイド(CTAB)吸着比表面積は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、100~400m2/gであることが好ましく、150~300m2/gであることがより好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面へのCTAB吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0029】
・充填剤の含有量
本発明のゴム組成物が充填剤を更に含有する場合、充填剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、5~100質量部であることが好ましい。
【0030】
本発明のゴム組成物がカーボンブラックを更に含有する場合、カーボンブラックの含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましく、10~50質量部であることがより好ましい。
【0031】
本発明のゴム組成物が白色充填剤(特に、シリカ)を更に含有する場合、白色充填剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、1~100質量部であることが好ましい。
【0032】
(任意成分)
本発明のゴム組成物は、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲で更に他の成分(任意成分)を含有することができる。
上記任意成分としては、例えば、特定可塑剤以外の可塑剤、テルペン樹脂(例えば、芳香族変性テルペン樹脂)、熱硬化性樹脂、熱膨張性マイクロカプセル、加工助剤、老化防止剤、ワックス(なおワックスは可塑剤に含まれない。)、シランカップリング剤、酸化亜鉛(亜鉛華)、ステアリン酸、加硫促進剤、加硫剤(例えば、硫黄)などのゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤などが挙げられる。
【0033】
(特定可塑剤以外の可塑剤)
本発明のゴム組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、特定可塑剤以外の可塑剤を更に含有することができる。
特定可塑剤以外の可塑剤としては、例えば、パラフィンオイル、ナフテンオイル、アロマオイルのような鉱物油;ジイソノニルフタレート、ジオクチルフタレートのような低分子量の合成可塑剤;油添ゴムに伴う伸展油が挙げられる。
【0034】
特定可塑剤以外の可塑剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、0~100質量部であることが好ましく、10~50質量部がより好ましい。
【0035】
本発明のゴム組成物において、特定可塑剤と特定可塑剤以外の可塑剤の合計の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、5質量部以上であることが好ましい。上記合計は、本発明の効果がより優れる理由から、上述したジエン系ゴム100質量部に対して、200質量部以下であることが好ましく、100質量部以下であることがより好ましい。
【0036】
本発明のゴム組成物が特定可塑剤以外の可塑剤を含有する場合、特定可塑剤の含有量は、本発明の効果がより優れる理由から、特定可塑剤と特定可塑剤以外の可塑剤との合計量中の10~90質量%であることが好ましい。
【0037】
なお、本発明のゴム組成物において、可塑剤としての多環式芳香族炭化水素化合物(ただしスチレン・インデン類縁体を除く)の含有量は、可塑剤全量中の0~0.1質量%であることが好ましい。
【0038】
(シランカップリング剤)
本発明のゴム組成物は、本発明の効果がより優れる理由から、シランカップリング剤を更に含有することが好ましい。シランカップリング剤は、加水分解性基および有機官能基を有するシラン化合物であれば特に限定されない。
上記シラン化合物において、加水分解性基は、シラン化合物が有するケイ素原子に結合することができる。
加水分解性基は特に限定されないが、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、アルコキシ基であることが好ましい。加水分解性基がアルコキシ基である場合、アルコキシ基の炭素数は、本発明の効果がより優れる理由から、1~16であることが好ましく、1~4であることがより好ましい。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。
【0039】
上記有機官能基は特に限定されないが、有機化合物と化学結合を形成し得る基であることが好ましく、例えば、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アミノ基、スルフィド基(特に、ポリスルフィド基(-Sn-:nは2以上の整数))、メルカプト基、ブロックメルカプト基(保護メルカプト基)(例えば、オクタノイルチオ基)などが挙げられ、なかでも、本発明の効果がより優れる理由から、スルフィド基(特に、ジスルフィド基、テトラスルフィド基)、メルカプト基、ブロックメルカプト基が好ましい。
シランカップリング剤において、加水分解性基と有機官能基とは連結基を介して結合することができる。上記連結基は特に制限されない。
シランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
シランカップリング剤は、本発明の効果がより優れる理由から、硫黄含有シランカップリング剤を含むことが好ましい。
【0041】
シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル-メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル-メタクリレート-モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイル-テトラスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシランのような硫黄含有シランカップリング剤が挙げられる。
【0042】
本発明のゴム組成物がシランカップリング剤を更に含有する場合において、シランカップリング剤の含有量は特に限定されないが、本発明の効果がより優れる理由から、上述した充填剤(特にシリカ)の含有量に対して2~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0043】
(タイヤ用ゴム組成物の調製方法)
本発明のゴム組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混合する方法などが挙げられる。本発明のゴム組成物が硫黄又は加硫促進剤を含有する場合は、硫黄及び加硫促進剤以外の成分を先に高温(好ましくは100~155℃)で混合し、冷却してから、硫黄又は加硫促進剤を更に混合することが好ましい。
本発明のゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0044】
〔用途〕
本発明のゴム組成物は、加硫ゴムとしたときの破断強度等が優れるため、タイヤ(特にタイヤトレッド)に有用である。
【実施例0045】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
【0046】
<ゴム組成物の製造>
下記表1の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを撹拌機で混合し、各ゴム組成物を製造した。
【0047】
<評価>
上記のとおり製造された各ゴム組成物を用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
[破断強度]
・加硫ゴムシートの作製
上記のとおり製造された各ゴム組成物を、金型(15cm×15cm×0.2cm)中、160℃で20分間プレス加硫して、加硫ゴムシートを作製した。
【0048】
・破断強度の測定
上記のように作製した加硫ゴムシートについて、JIS K6251:2010に準拠し、JIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、温度100℃、引張り速度500mm/分の条件下で破断強度を測定した。
そして、破断強度の結果を、表1(その1)では比較例1の破断強度を100とする指数で表した。表1(その2)では比較例7の破断強度を100とする指数で表した。
・破断強度の評価基準
本発明において、上記指数が100を超えた場合、破断強度が優れると評価した。また、上記指数が100より大きいほど破断強度がより優れる。
一方、上記指数が100以下であった場合、破断強度が悪いと評価した。
【0049】
[耐接着性]
・未加硫ゴム試験片の作製
上記のとおり製造された各ゴム組成物(未加硫)から未加硫ゴムシートを2枚作製して、上記2枚を重ね合わせ、一方の面から垂直方向に1t/m2の荷重をかけ、60℃の雰囲気下で、12時間放置し、未加硫ゴム試験片を作製した。
【0050】
・剥離強度の測定
その後、未加硫ゴム試験片を室温に戻し、引張り試験機(AGS-500D型、SHIMADZU)を用いて23℃、引っ張り速度300mm/minの条件下で180°剥離試験を行い、剥離強度(N/cm)を測定した。
そして、剥離強度の結果を、表1(その1)では比較例1の剥離強度の逆数を100とする指数で表した。表1(その2)では比較例7の剥離強度の逆数を100とする指数で表した。
【0051】
・耐接着性の評価基準
本発明において、上記指数が100を超えた場合、未加硫ゴムの耐接着性が優れる(未加硫ゴムシート同士がはがれやすい)と評価した。また、上記指数が100より大きいほど上記耐接着性がより優れる。
一方、上記指数が100未満であった場合、耐接着性が悪い(未加硫ゴムシート同士がはがれにくい)と評価した。
【0052】
【0053】
【0054】
表1に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
(ジエン系ゴム)
・NR:未変性の天然ゴム。
・SBR(変性):エポキシ基で変性されたスチレンブタジエンゴム。
・SBR(未変性):未変性のスチレンブタジエンゴム。
・BR:未変性のブタジエンゴム。
【0055】
・カーボンブラック:Cabot製N339
・シリカ:Solvay製ZEOSIL1165MP(CTAB吸着比表面積:159m2/g)
【0056】
・オイル1:パラフィン系オイル。シェル製プロセスオイル123
・オイル2:アロマ系オイル。シェル製エキストラクト4号
・オイル3:オレイン酸2-エチルへキシル(脂肪酸成分組成がオレイン酸80質量%以上であるハイオレイン酸ヒマワリ油を2-エチルへキシサノールでエステル交換し、精製して得られたオレイン酸2-エチルへキシル。オレイン酸2-エチルへキシルの純度98質量%)。スチレン・インデン類縁体を含まない。H&R製TP130B。
・オイル4:植物油(パーム油)。Wilmar製
【0057】
・特定可塑剤1:H&R製Vivamax5000。オレイン酸2-エチルへキシル(脂肪酸成分組成がオレイン酸80質量%以上であるハイオレイン酸ヒマワリ油を2-エチルへキシサノールでエステル交換し、精製して得られた。)、及び、スチレン・インデン類縁体を含む混合物。上記混合物中のオレイン酸2-エチルへキシルの含有量は25質量%。上記混合物中のスチレン・インデン類縁体の含有量は74質量%。
【0058】
・スチレン・インデン共重合体1:α-メチルスチレンインデン樹脂(三井化学(株)製FMR0150)
【0059】
・老化防止剤:EASTMAN製6PPD
・ワックス:日本精蝋製OZOACE-0015
・シランカップリング剤:Si69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニックデグッサ社製)
・亜鉛華:酸化亜鉛。正同化学製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日本油脂製ビーズステアリン酸YR
・加硫促進剤:三新化学製サンセラーNS-G
・硫黄:四国化成工業製ミュークロンOT-20
【0060】
表1(その1)に示す結果から、オイル2(アロマ系オイル)を含有する比較例1は、破断強度及び耐接着性が悪かった。
特定可塑剤を含有せず代わりにパラフィンオイルを含有する比較例2は、比較例1よりも破断強度及び耐接着性が悪かった。
スチレン・インデン類縁体を含まない比較例3は、比較例1よりも耐接着性が悪かった。
特定可塑剤を含有せず代わりに植物油を含有する比較例4は、比較例1よりも破断強度及び耐接着性が悪かった。
オレイン酸2-エチルへキシルを含まない比較例5は、比較例1よりも耐接着性が悪かった。オレイン酸2-エチルへキシルを含まない比較例6は、比較例1よりも破断強度及び耐接着性が悪かった。
一方、本発明に該当する実施例1~4は、破断強度及び耐接着性が優れた。
【0061】
また、表1(その2)に示す結果においても、上記とほぼ同様の傾向が見られた。つまり、オイル2(アロマ系オイル)を含有する比較例7を基準にして、特定可塑剤を含有せず代わりにパラフィンオイルを含有する比較例8は、比較例7よりも破断強度及び耐接着性が悪かった。
スチレン・インデン類縁体を含まない比較例9は、比較例7よりも耐接着性が悪かった。
特定可塑剤を含有せず代わりに植物油を含有する比較例10は、比較例7よりも破断強度が悪かった。
一方、本発明に該当する実施例5~6は、破断強度及び耐接着性が優れた。
【0062】
以上の結果から、本発明のゴム組成物は、未加硫ゴムの耐接着性及び得られる加硫ゴムとしたときの破断強度が優れる。