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  • 特開-発電機の製造方法、及び発電機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118416
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】発電機の製造方法、及び発電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
H02K15/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021358
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 悠太
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐次
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB02
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP02
5H615PP06
5H615SS02
5H615SS05
5H615SS18
5H615SS21
5H615SS33
(57)【要約】
【課題】優れた発電性能を有する発電機及びその製造方法を提供する。
【解決手段】発電機の製造方法は、複数の電磁鋼板を準備する工程と、複数の電磁鋼板から選択された電磁鋼板の第1主面及び第2主面の少なくとも一方の全面にピーニングする工程と、ピーニングされた電磁鋼板を含む複数の電磁鋼板を用いて積層体を形成する工程と、を含む。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電磁鋼板を準備する工程と、
前記複数の電磁鋼板から選択された電磁鋼板の第1主面及び第2主面の少なくとも一方の全面にピーニングする工程と、
ピーニングされた前記電磁鋼板を含む前記複数の電磁鋼板を用いて積層体を形成する工程と、
を含む、発電機の製造方法。
【請求項2】
前記電磁鋼板は、前記第1主面及び前記第2主面に絶縁層を有し、
前記ピーニングする工程では、前記ピーニングされる主面の前記絶縁層の表面に、結晶方位を変化させた塑性加工層を形成する、
請求項1に記載の発電機の製造方法。
【請求項3】
前記塑性加工層の厚さは、1μm~50μmである、請求項2に記載の発電機の製造方法。
【請求項4】
前記塑性加工層は、表面に平行な面が(001)面又は(011)面となる結晶が表面全体の30%~100%である、請求項2又は3に記載の発電機の製造方法。
【請求項5】
前記ピーニングする工程では、前記複数の電磁鋼板それぞれの前記第1主面及び前記第2主面に対してピーニングする、請求項1~4の何れか一項に記載の発電機の製造方法。
【請求項6】
複数の電磁鋼板の積層体を有し、
前記複数の電磁鋼板それぞれは、第1主面及び第2主面に絶縁層を有し、
前記複数の電磁鋼板のうちの少なくとも一つの電磁鋼板における前記絶縁層の表面全体は、塑性加工層であり、
前記塑性加工層は、表面に平行な面が(001)面又は(011)面となる結晶が表面全体の30%~100%である、発電機。
【請求項7】
前記塑性加工層の厚さは、1μm~50μmである、請求項6に記載の発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電機の製造方法、及び発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電磁鋼板を積層させた発電機用のコアの製造方法を開示する。製造方法は、永久磁石が配置される電磁鋼板の開口の周囲の一部のみを硬化させる。硬化部分の面積は、電磁鋼板の全体の表面積の1%~20%である。特許文献1は、硬化部分の総和が20%を超えて大きくなると、電磁鋼板を積層した積層体全体の鉄損が多くなることを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-7943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の製造方法は、発電量を向上させる観点から改善の余地がある。本開示は、優れた発電性能を有する発電機及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る発電機の製造方法は、以下の工程を含む。
(1)複数の電磁鋼板を準備する工程
(2)複数の電磁鋼板から選択された電磁鋼板の第1主面及び第2主面の少なくとも一方の全面にピーニングする工程
(3)ピーニングされた前記電磁鋼板を含む前記複数の電磁鋼板を用いて積層体を形成する工程
【0006】
この製造方法によれば、複数の電磁鋼板が準備される。そして、複数の電磁鋼板から選択された電磁鋼板の第1主面及び第2主面の少なくとも一方の全面がピーニングされる。そして、ピーニングされた電磁鋼板を含む複数の電磁鋼板を用いて積層体が形成される。この製造方法は、電磁鋼板の主面がピーニングされていない電磁鋼板を用いる場合と比べて、優れた発電性能を有する発電機を製造できる。
【0007】
一実施形態においては、電磁鋼板は、第1主面及び第2主面に絶縁層を有し、ピーニングする工程では、ピーニングされる主面の絶縁層の表面に、結晶方位を変化させた塑性加工層を形成してもよい。この製造方法は、電磁鋼板の絶縁層の全面が塑性加工層を有する発電機を製造できる。
【0008】
一実施形態においては、塑性加工層の厚さは、1μm~50μmであってもよい。この製造方法は、電磁鋼板の絶縁層の極表面を加工することにより、電磁鋼板の主面がピーニングされていない電磁鋼板を用いる場合と比べて、優れた発電性能を有する発電機を製造できる。
【0009】
一実施形態においては、塑性加工層は、表面に平行な面が(001)面又は(011)面となる結晶が表面全体の30%~100%であってもよい。この製造方法は、塑性加工層の結晶配向を制御することにより、電磁鋼板の主面がピーニングされていない電磁鋼板を用いる場合と比べて、優れた発電性能を有する発電機を製造できる。
【0010】
一実施形態においては、ピーニングする工程では、複数の電磁鋼板それぞれの第1主面及び第2主面に対してピーニングしてもよい。この製造方法は、積層体に含まれる電磁鋼板の全てが塑性加工層を有するため、さらに優れた発電性能を有する発電機を製造できる。
【0011】
本開示の他の側面に係る発電機は、複数の電磁鋼板の積層体を有する。複数の電磁鋼板それぞれは、第1主面及び第2主面に絶縁層を有する。複数の電磁鋼板のうちの少なくとも一つの電磁鋼板における絶縁層の表面全体は塑性加工層である。塑性加工層は、表面に平行な面が(001)面又は(011)面となる結晶が表面全体の30%~100%である。
【0012】
この発電機によれば、複数の電磁鋼板のうちの少なくとも一つの電磁鋼板における絶縁層の表面全体が塑性加工層である。この発電機は、塑性加工層の結晶配向が制御されているため、主面全体に塑性加工層を有さない電磁鋼板のみを有する場合と比べて、優れた発電性能を有する。
【0013】
一実施形態においては、塑性加工層の厚さは、1μm~50μmであってもよい。この発電機は、電磁鋼板の絶縁層の極表面が塑性加工層であり、主面全体に塑性加工層を有さない電磁鋼板のみを有する場合と比べて、優れた発電性能を有する。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、優れた発電性能を有する発電機及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る発電システムの概要図である。
図2】一実施形態に係る発電機のコアの斜視図である。
図3図2の電磁鋼板の一例を示す平面図である。
図4図2の電磁鋼板の一例を示す断面図である。
図5】発電機の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附す。
【0017】
(発電システムの構成)
図1は、一実施形態に係る発電システムの概要図である。発電システム20は、ブレード21、増速機22、ブレーキ装置23、及び、発電機24を備える。ブレード21は、動力伝達軸Mを介して、増速機22、ブレーキ装置23、及び、発電機24に接続される。ブレード21は、水、風、蒸気(温められた空気)などを受けて回転する。増速機22は、動力伝達軸Mの回転速度を増幅する。ブレーキ装置23は動力伝達軸Mの回転速度を低下させる。増速機22及びブレーキ装置23によって動力伝達軸Mの回転が制御される。発電機24は、動力伝達軸Mの運動エネルギーを電気エネルギーに変換する。発電機24は、コア1及びステータ2を備え、逆起電力によって発電を行う。
【0018】
(発電機のコアの構成)
図2は、一実施形態に係る発電機のコアの斜視図である。図2に示されるように、コア1は、ロータコアであり、ステータに対して回転するジェネレータ部品である。コア1は、複数の電磁鋼板10を有する。複数の電磁鋼板10は、圧着、固定又は接着されることによって積層体とされる。積層体は、一例として円筒形状であり、中心には軸穴が設けられる。
【0019】
図3は、図2の電磁鋼板の一例を示す平面図である。図3に示される電磁鋼板10は、軟磁性材料で形成された円盤形状の部材である。電磁鋼板10は、一例として、全方向に磁気特性を有する無方向性電磁鋼板である。電磁鋼板10は、中央に軸穴11が形成される。軸穴11は、発電機24の動力伝達軸Mが配置される貫通穴である。電磁鋼板10の外縁には、ロータスロット12が形成される。ロータスロット12は、永久磁石が配置される貫通穴である。電磁鋼板10は、厚さ0.3mm~1.0mm程度である。
【0020】
図4は、図2の電磁鋼板の一例を示す断面図である。図4に示されるように、電磁鋼板10は、軟磁性材料で形成された本体100を有する。本体100は、第1主面100a及び第2主面100bを有する。第1主面100aには、渦電流の発生を抑制するために第1絶縁層101が形成される。同様に、第2主面100bには、渦電流の発生を抑制するために第2絶縁層102が形成される。
【0021】
第1絶縁層101の表面全体(全面)には、第1塑性加工層101Aが形成される。第1塑性加工層101Aは、第1絶縁層101を塑性加工することによって形成される。塑性加工の一例は、ピーニングである。ピーニングは、例えばショットピーニング、バニシング、又は、レーザピーニングである。第1塑性加工層101Aは、第1絶縁層101の結晶方位を変化させることで形成される。第1塑性加工層101Aは、表面に平行な面が(001)面又は(011)面となる結晶が表面全体の30%~100%である。第1塑性加工層101Aは、表面に平行な面が(001)面又は(011)面となる結晶が表面全体の30%~60%となってもよい。第1塑性加工層101Aの厚さは、1μm~50μmであってもよい。第2絶縁層102の表面全体(全面)には、第1絶縁層101と同様に、第2塑性加工層102Aが形成される。第2塑性加工層102Aは、第2絶縁層102を塑性加工することによって形成される。第2塑性加工層102Aの形成方法や寸法形状などは第1塑性加工層101Aと同一である。
【0022】
(発電機の変形例)
コア1は、ロータコアに限定されず、ステータコアであってもよい。コア1は、モータの回転子として採用されてもよい。電磁鋼板10は、第1絶縁層101及び第2絶縁層102のうちの一方のみを備えてもよい。電磁鋼板10は、第1絶縁層101及び第2絶縁層102を備えなくてもよい。複数の電磁鋼板10のうちの少なくとも一つの電磁鋼板10のみが塑性加工層を有してもよい。
【0023】
(発電機の製造方法)
図5は、発電機の製造方法の一例を示すフローチャートである。製造方法M1においては、最初に、準備工程(S10)が実行される。準備工程(S10)では、複数の電磁鋼板10が準備される。具体的には、準備工程(S10)は、圧延工程(S12)及び絶縁コーティング工程(S14)を含む。
【0024】
圧延工程(S12)では、原料をローラなどで圧延して薄い板(図4の本体100)にする。圧延は、熱間圧延でもよいし、冷間圧延でもよい。また、焼鈍などの工程を適宜組み合わせてもよい。圧延工程(S12)が終了すると、絶縁コーティング工程(S14)が実行される。
【0025】
絶縁コーティング工程(S14)では、板の主面の全面に絶縁層(図4の第1絶縁層101、第2絶縁層102)を形成する。例えば、板の主面に絶縁コーティング液がロータなどによって塗布される。絶縁コーティング液が固化することで絶縁層が形成される。準備工程(S10)が終了すると、打抜工程(S16)が実行される。
【0026】
打抜工程(S16)では、図3に示される軸穴11及びロータスロット12が、例えばパンチング装置などによって打ち抜きで形成される。打抜工程(S16)が終了すると、ピーニング工程(S18)が実行される。
【0027】
ピーニング工程(S18)では、絶縁層の表面がピーニングされ、塑性加工層が絶縁層の表面に形成される(図4の第1塑性加工層101A、第2塑性加工層102A)。ピーニング工程では、例えば、ショットピーニング、バニシング、又は、レーザピーニングが用いられる。ピーニングは、表面に平行な面が(001)面又は(011)面となる結晶が表面全体の30%~100%となるように実施される。そして、ピーニングは、塑性加工層の厚さが1μm~50μmとなるように実施される。ピーニング工程(S18)が終了すると、形成工程(S20)が実行される。
【0028】
形成工程(S20)では、複数の電磁鋼板10を圧着、固定又は接着し、積層体を形成する。以上の工程を経て、電磁鋼板10が形成される。形成工程(S20)の後に、コア1とステータ2とを組み付けて発電機が完成する。
【0029】
(発電機の製造方法の変形例)
ピーニング工程(S18)は、絶縁コーティング工程(S14)と打抜工程(S16)の間に実行されてもよい。ピーニング工程(S18)では、複数の電磁鋼板10それぞれの第1絶縁層101及び第2絶縁層102の全面にピーニングしてもよい。あるいは、複数の電磁鋼板10から選択された電磁鋼板10の第1絶縁層101及び第2絶縁層102の全面にピーニングしてもよい。製造方法M1によって製造されるコア1は、ロータコアに限定されず、ステータコアであってもよい。製造方法M1によって製造されるコア1は、モータの回転子として採用されてもよい。
【0030】
以上、例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。
【実施例0031】
以下、発電機の効果を説明すべく本発明者が実施した実施例及び比較例について述べる。
(実施例1)
複数の電磁鋼板10の両面をショットピーニングし、その後、積層体とした。ショットピーニングは、ガラスビーズを媒体とし、噴射圧力0.2[MPa]、噴射量1.96[kg/min]で行った。
(実施例2)
複数の電磁鋼板10の両面をバニシングし、その後、積層体とした。バニシングは、ガラスビーズで押圧力を付与し、摺動速度13,500[rpm]、クロスフィード50[μm]、噴射量1.96[kg/min]で行った。
(比較例)
未処理の複数の電磁鋼板10を積層体とした。
【0032】
(発電量増加の効果確認)
積層体をコアとし、回転数を制御しながら、電流計及び電圧計で発電量を確認した。実施例1,2は、比較例と比べて、発電量が向上していることが確認された。このように、電磁鋼板10をピーニングすることによって、発電量が向上することが確認された。
【符号の説明】
【0033】
1…コア、10…電磁鋼板、101…第1絶縁層、101A…第1塑性加工層、102…第2絶縁層、102A…第2塑性加工層、24…発電機。
図1
図2
図3
図4
図5