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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118421
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20230818BHJP
   E06B 7/14 20060101ALI20230818BHJP
   E06B 1/70 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B7/14
E06B1/70 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021365
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 純
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 岳宏
(72)【発明者】
【氏名】伊東 輝久
【テーマコード(参考)】
2E011
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E011MA02
2E036RA08
2E036RB03
2E036RC02
2E036TA05
2E239CA02
2E239CA03
2E239CA22
2E239CA29
2E239CA32
2E239CA33
2E239CA35
2E239CA53
2E239CA62
2E239CA67
(57)【要約】
【課題】加熱発泡材の必要量を削減でき、排水性の低下も防止できる建具の提供。
【解決手段】引違い窓1は、中空部226が設けられた下枠22を有する枠体と、枠体内に配置された外障子、内障子を備える。外障子、内障子の少なくとも一方は、下枠22に沿ってスライド移動可能とされ、下枠22の上面には、中空部226に連通する水抜き孔229が形成される。中空部226内には、少なくとも閉鎖位置にある外障子の下側に配置される補強材5が設けられる。補強材5は、外障子の荷重を支持可能な見付け片部51と、見付け片部51の高さ方向の中間位置から室内側に向かって突設された突出片部53とを備える。突出片部53は、見付け片部51側の基端部よりも室内側の先端部が下方となる向きに傾斜された加熱発泡材配置面53Aを有し、加熱発泡材配置面53Aには、加熱により発泡して水抜き孔229を閉塞可能な加熱発泡材6が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って連続する中空部が設けられた下枠を有する枠体と、
前記枠体内に配置された外障子および内障子とを備え、
前記外障子および前記内障子の少なくとも一方は、前記下枠に沿ってスライド移動可能とされ、
前記下枠の上面には、前記中空部に連通する水抜き孔が形成され、
前記中空部内には、少なくとも閉鎖位置にある前記外障子の下側に配置される補強材が設けられ、
前記補強材は、
前記外障子の荷重を支持可能な見付け片部と、
前記見付け片部の高さ方向の中間位置から室内側に向かって突設された突出片部と、を備え、
前記突出片部は、前記見付け片部側の基端部よりも室内側の先端部が下方となる向きに傾斜された加熱発泡材配置面を有し、
前記加熱発泡材配置面には、加熱により発泡して前記水抜き孔を閉塞可能な加熱発泡材が設けられている
ことを特徴とする建具。
【請求項2】
請求項1に記載の建具において、
前記突出片部の基端部の見込み方向の位置は、前記水抜き孔よりも室外側であり、
前記突出片部と前記水抜き孔とが平面視で重なる面積は、前記水抜き孔の面積の半分以下である
ことを特徴とする建具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建具において、
前記補強材は、前記見付け片部の下部から室内側に延出された下部見込み片部を備え、
前記下部見込み片部は、前記下枠の下側に配置される外壁材と平面視で重なる位置まで延長されている
ことを特徴とする建具。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の建具において、
前記下枠は、前記中空部を区画する上面部と、下面部と、室外側面部と、室内側面部とを備え、
前記補強材は、前記見付け片部の上部から室内側に延出された上部見込み片部を備え、
前記上部見込み片部は、前記上面部に締結部材で固定され、かつ、前記水抜き孔と平面視で重なる部分は切り欠かれている
ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具枠内に外障子および内障子の少なくとも一方がスライド可能に配置された建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の開口部に配置される枠体と、枠体内に配置される外障子および内障子とを備える引違い窓では、下枠に中空部を形成し、外レールおよび内レール間の下枠上面に形成した水抜き孔から前記中空部に流入した雨水を、中空部の室外面に開口した排水孔から室外側に排出する構造が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
前記下枠の中空部には、外障子の荷重を支持する補強材が挿入されている。補強材は、見付け片部と、見付け片部の上部から室内側に延出される見込み片部と、見付け片部の下部から室内側に延出される取付け片部を備えて構成されている。取付け片部は、下枠上面の水抜き孔に平面視で重なるように形成され、取付け片部の上面には火災時に水抜き孔を塞ぐ加熱発泡材が貼られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-65565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の補強材は、加熱発泡材が貼られる取付け片部の上面から水抜き孔までの距離が長いので、水抜き孔を塞ぐために必要な加熱発泡材の量が多くなるという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、加熱発泡材の必要量を削減でき、排水性の低下も防止できる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建具は、長手方向に沿って連続する中空部が設けられた下枠を有する枠体と、前記枠体内に配置された外障子および内障子とを備え、前記外障子および前記内障子の少なくとも一方は、前記下枠に沿ってスライド移動可能とされ、前記下枠の上面には、前記中空部に連通する水抜き孔が形成され、前記中空部内には、少なくとも閉鎖位置にある前記外障子の下側に配置される補強材が設けられ、前記補強材は、前記外障子の荷重を支持可能な見付け片部と、前記見付け片部の高さ方向の中間位置から室内側に向かって突設された突出片部と、を備え、前記突出片部は、前記見付け片部側の基端部よりも室内側の先端部が下方となる向きに傾斜された加熱発泡材配置面を有し、前記加熱発泡材配置面には、加熱により発泡して前記水抜き孔を閉塞可能な加熱発泡材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加熱発泡材の必要量を削減でき、排水性の低下も防止できる建具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る建具である引違い窓を示す縦断面図である。
図2】前記引違い窓を示す横断面図である。
図3】前記引違い窓の下枠および補強材の要部を示す平面図である。
図4】前記引違い窓の下枠および補強材を示す側面図である。
図5図3のB-B線に沿った断面図である。
図6図3のC-C線に沿った断面図である。
図7】加熱発泡材の発泡状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~3において、本実施形態に係る建具である引違い窓1は、建具の枠体である窓枠2と、窓枠2内をスライド移動可能に設けられた外障子3、内障子4とを備えている。
窓枠2は、建物の開口部に配置されて建物の躯体に固定されている。窓枠2は、上枠21、下枠22および左右の縦枠24,25を備えて構成される。上枠21、下枠22および左右の縦枠24,25は、アルミ製の押出形材によって構成されている。
外障子3は、上框31、下框32、戸先框33、召合せ框34を枠組みした障子枠と、障子枠内に組み込まれた複層ガラス35とを備えて構成されている。
内障子4は、上框41、下框42、戸先框43、召合せ框44を枠組みした障子枠と、障子枠内に組み込まれた複層ガラス45とを備えて構成されている。
本実施形態では、縦枠24は、内障子4の戸先框43に対向して設けられ、縦枠25は、外障子3の戸先框33に対向して設けられている。
外障子3、内障子4の各框は、召合せ框34を除き、アルミ製の押出形材からなる室外部材と、合成樹脂製の押出形材とを組み合わせたアルミ樹脂複合框で構成されている。
複層ガラス35,45は、室外側は網入りガラス等の防火ガラスで構成され、室内側はLOW-Eガラス等で構成されている。
【0011】
以下の説明においては、図1、2に示すように、引違い窓1の上下方向をY軸とし、外障子3、内障子4のスライド移動方向をX軸とし、X軸およびY軸に直交する方向をZ軸とする。
窓枠2(上枠21、下枠22、縦枠24、25)および外障子3、内障子4の見込み方向は、Z軸方向つまり引違い窓1の室内外方向(奥行き方向)である。また、上枠21、下枠22、上框31、41、下框32、42の見付け方向は、Y軸方向つまり上下方向であり、縦枠24、25、戸先框33、43、召合せ框34、44の見付け方向は、X軸方向つまり外障子3、内障子4の移動方向(左右方向)である。
【0012】
下枠22は、図1,4に示すように、上面部221、下面部222、室外側面部223、室内側面部224および取付け部225を備えて構成されている。上面部221、下面部222、室外側面部223および室内側面部224によって中空部(ホロー部)226が区画されている。上面部221の上面には、室外側の外レール227および室内側の内レール228が立設されている。外レール227は外障子3を左右方向に移動可能に支持し、内レール228は内障子4を左右方向に移動可能に支持している。
【0013】
図3に示すように、上面部221の左右両端部には、内障子4のクレセントや、外障子3の召合せ框が縦枠24、25にぶつかることを防止する障子ストッパー281、282が取り付けられている。さらに、上面部221の左右方向の中間位置における外レール227、内レール228間には、下枠風止板285と、加熱発泡材を備えた補強金具286とが取り付けられている。
また、外レール227および内レール228間において、障子ストッパー281と補強金具286との間には、樹脂製カバー261が取り付けられている。この樹脂製カバー261は、外レール227の室内面と上面部221とに形成された係止突部に係止されている。
【0014】
さらに、上面部221において、樹脂製カバー261で隠される外障子3の室内側には、四角形状の水抜き孔229が左右方向に複数並んで形成されている。本実施形態では、上面部221において、縦枠25側の端部から戸先框33の見付け寸法程度離れた位置に5個の水抜き孔229が形成されている。
下枠22の上面部221における外障子3側には、図1,4に示すように、ビスホール221Aが設けられている。
また、内レール228よりも室内側に位置する上面部221の部分には、図1、4に示すように、上面部221の長手方向全長に渡って樹脂製室内カバー262が取り付けられている。
【0015】
下枠22の下面部222は、図4に示すように、上面部221に対し上下方向に間隔を隔てて配置されている。この下面部222の下側であり、取付け部225の室外側には、図1に示すように、外壁材8が配置されている。
【0016】
室外側面部223は、上面部221および下面部222の室外側端部に一体に連続している。このため、室外側面部223は、外レール227よりも室外側の位置に配置されている。室外側面部223の下部には、図5に示すように、矩形長孔形状の下枠排水孔230が形成されている。本実施形態では、室外側面部223において、縦枠25側の端部近傍に形成されている。具体的に、図3に示すように、下枠22の長手方向(左右方向)において、縦枠25側の端縁と、前記水抜き孔229との間の位置に形成されている。
下枠排水孔230には、図1に示すように、中空部226に溜まった水を排水し且つ室外側からの水の吹き込みを防止する合成樹脂製の排水弁27が装着されている。
【0017】
室内側面部224は、上面部221から下面部222に向かって室外側に傾斜しており、上端で上面部221の内レール228の下方部分に一体に連続し、下端で下面部222の室内側端部に一体に連続している。
取付け部225は、下面部222と室内側面部224との連接部分から下方に延びて形成されており、ビスを介して建物の躯体に取り付けられている。
【0018】
このように構成される下枠22には、図5および図6に示すように、外レール227と内レール228との間に形成された水抜き孔229から中空部226に流入した水を、中空部226から下枠排水孔230を介して下枠22の外部に排水する排水経路231が設けられている。
【0019】
下枠22の中空部226には、補強材5および加熱発泡材6が設けられている。
補強材5は、外障子3の左右方向寸法(X軸方向の寸法)よりも大きい寸法で左右方向(下枠22の長手方向)に延びて形成され、引違い窓1の閉鎖状態における外障子3の下方位置に配置されている。すなわち、図3に示すように、補強材5の縦枠24側の端部5Aは、下枠風止板285の位置よりも縦枠24側の位置に配置され、補強材5の縦枠25側の端部5Bは、下枠22の縦枠25側の端縁に揃う位置に配置されている。
【0020】
次に、補強材5の構造について、図3図6を参照して説明する。なお、図3は、下枠および補強材の要部を示す平面図であり、図4は、下枠22および補強材5の側面図であり、図5は、図3のB-B線に沿った断面図であり、図6は、図3のC-C線に沿った断面図である。
補強材5は、アルミニウム製の押出形材等で形成され、見付け片部51、上部見込み片部52、突出片部53、下部見込み片部54を備えて一体形成されている。
見付け片部51は、補強材5の見付け方向(上下方向)に延びて形成されており、下枠22の上面部221から下面部222までの上下方向の間隔寸法に対応した寸法に設定されている。見付け片部51は、上部見込み片部52および突出片部53間を連結する上部見付け片部511と、突出片部53および下部見込み片部54間を連結する下部見付け片部512とを備えて構成されている。
下部見付け片部512は、見込み方向であるZ方向の位置が上部見付け片部511に比べて室内側に設けられている。
【0021】
上部見込み片部52は、上部見付け片部511の上端から室内側に延出された第一上部見込み片部521と、第一上部見込み片部521の室内側端部から上方に延出された立上り部522と、立上り部522の上端から室内側に延出された第二上部見込み片部523とを備えて構成されている。
第一上部見込み片部521は、ビスホール221Aの下面に当接し、立上り部522は、ビスホール221Aの室内面に当接されている。すなわち、上部見込み片部52は、ビスホール221Aに沿って折曲された形状とされている。このため、補強材5を配置する際に、ビスホール221Aに上部見込み片部52の折曲部分を当接させることで、補強材5を見込み方向に位置決めできる。
第二上部見込み片部523は、上面部221の下面に当接され、上面部221から第二上部見込み片部523にネジ込まれる締結部材である固定ネジ525で固定されている。固定ネジ525は、補強材5の長手方向に沿って複数本設けられ、補強材5は上部見込み片部52が上面部221に当接した状態で固定されている。なお、締結部材としてはリベットでもよい。
【0022】
第二上部見込み片部523の室内側端縁は、水抜き孔229の室内側端縁よりも室外側の位置とされている。また、第二上部見込み片部523には、図3および図6に示すように、第二上部見込み片部523を切り欠いて形成された四角形状の排水孔524が設けられている。排水孔524は、図3に示すように、X軸方向の幅寸法が5つの水抜き孔229に跨がった大きさとなるように形成され、各水抜き孔229に平面視で重なる位置に形成されている。
【0023】
突出片部53は、上部見付け片部511の下端部から室内側に向かって延出されている。突出片部53は、上部見付け片部511側の基端部に対して、室内側の先端部が下方となるように傾斜して配置されている。突出片部53の水平面に対する傾斜角度は、約3度である。このため、突出片部53の上面に水が流れ込んだ場合、その水は突出片部53の室内側端部に向かって流れ、突出片部53の室内側の先端部から落下する。
突出片部53の室内側の先端部の見込み方向の位置は、第二上部見込み片部523の室内側端縁と、水抜き孔229の室外側端縁との間に設定されている。このため、突出片部53は、平面視で水抜き孔229に僅かに重なるように配置される。
【0024】
突出片部53の上面は、加熱発泡材配置面53Aとされ、この加熱発泡材配置面53Aには加熱発泡材6が貼られている。
加熱発泡材6は、見込み方向においては、図4に示すように、突出片部53の基端部から先端部の範囲に貼られ、左右方向においては、図3に示すように、少なくとも平面視で排水孔524に重なる範囲に貼られている。本実施形態では、平面視で排水孔524の全面に重なり、さらに縦枠25側の端縁位置まで貼り付けられている。
この加熱発泡材6は、火災時に水抜き孔229を塞ぐことができる量が設けられ、本実施形態では、2枚の加熱発泡材6が重なって配置されている。
【0025】
下部見付け片部512は、上部見付け片部511よりも室内側の位置で、突出片部53の下面から下方に延出されている。
【0026】
下部見込み片部54は、下部見付け片部512の下部から室内側に向かって延出されている。下部見込み片部54の延出寸法は、上部見込み片部52の延出寸法よりも長い寸法とされている。従って、下部見込み片部54の室内側の先端は、上部見込み片部52の室内側の先端よりも室内側に位置している。
下部見込み片部54の室外側端部は、下部見付け片部512の下端よりも僅かに上側の位置に設けられており、下部見付け片部512の下端は下部見込み片部54から下方に突出した突条部513とされている。また、下部見込み片部54の見込み方向の略中間位置には、前記突条部513と同様に下方に突出した突条部543が、補強材5の長手方向(下枠22の長手方向)に沿って連続して形成されている。これらの突条部513、543により、補強材5を中空部226に挿入する際に、補強材5と下面部222との接触面積を小さくでき、補強材5をスムーズに挿入できる。
【0027】
下部見付け片部512および下部見込み片部54の一部には、図3および図5に示すように、切欠部55が形成されている。切欠部55は、室外側面部223に設けられた下枠排水孔230に対向する位置に形成されている。具体的には、下枠排水孔230に対向する範囲で、下部見付け片部512および下部見込み片部54を切り欠いて切欠部55を形成している。本実施形態では、図3に示すように、補強材5において、上部見込み片部52に形成した排水孔524と、補強材5の縦枠25側の端部との間に形成されている。このため、切欠部55と水抜き孔229とは、下枠22の長手方向の位置が異なるように形成されている。
【0028】
このように構成された補強材5を下枠22に取り付けるには以下の手順で行えばよい。まず、補強材5を、下枠22の中空部226の縦枠25側の端面開口から当該中空部226に挿入する。この際、補強材5の底面は、突条部513、543が突出しているため、下面部222に接触する面積が小さくなり、摩擦抵抗も小さくなるため、補強材5を中空部226にスムーズに挿入できる。
そして、補強材5の上部見込み片部52をビスホール221Aに当接させることでZ軸方向に位置決めし、排水孔524が水抜き孔229と重なる位置でX軸方向に位置決めする。次に、上面部221から上部見込み片部52に固定ネジ525をネジ込んで上部見込み片部52を上面部221に当接させることでY軸方向に位置決めしている。従って、当該補強材5の下枠22への固定ネジ525によるネジ止めの際の当該補強材5の位置決めを容易に行える。
【0029】
上部見込み片部52は、排水孔524から左右方向に外れた位置で下枠22の上面部221に固定ネジ525でネジ止めされており、上面部221に密に接触している。この上部見込み片部52に形成された排水孔524は、複数の水抜き孔229にそれぞれ重なり合って配置され、当該水抜き孔229と下枠排水孔230との間で排水経路231を連通させている。
【0030】
見付け片部51は、室外側面部223よりも室内側に離間して位置しているとともに、水抜き孔229よりも室外側であって下枠排水孔230よりも室内側に位置している。従って、見付け片部51は、水抜き孔229と下枠排水孔230との間で排水経路231を遮断する位置に配置されているが、見付け片部51に形成された切欠部55によって、水抜き孔229と下枠排水孔230との間で排水経路231を連通させている。
中空部226に配置された見付け片部51は、例えば、加熱された上面部221が外障子3の鉛直荷重を支持しきれなくなって熱変形を生じても、補強材5の下部(見付け片部51の下端や、下部見込み片部54)が下面部222に接触し、上面部221にネジ止めされた上部見込み片部52および見付け片部51を介して外障子3の荷重を支持することができる。このため、外障子3の鉛直荷重を補強材5で支持させ、外障子3の垂れ下がりを抑制できる。さらに、下部見込み片部54の室内側端部は、外壁材8の上方位置まで延出されているので、仮に下枠22の下面部222が熱変形しても補強材5に加わる荷重を外壁材8で支持することで、外障子3の垂れ下がりを抑制できる。
【0031】
加熱発泡材6は、矩形状の膨張黒鉛シートによって構成され、本実施形態では、2枚の膨張黒鉛シートが積層されている。この加熱発泡材6は、火災時の熱によって加熱されると発泡し、図7に示すように、水抜き孔229を塞いで排水経路231を遮断する。このため、水抜き孔229、排水孔524、下枠排水孔230を経由する通路が遮断されるので、炎や熱の進入を防止できる。なお、加熱発泡材6の膨張黒鉛シートの枚数は2枚に限らず、各空間を塞ぐことができる量であればよく、発泡倍率が高い加熱発泡材であれば1枚でもよい。
【0032】
[本実施形態の効果]
本実施形態の建具である引違い窓1によれば、補強材5の見付け片部51の高さ方向の中間位置、つまり中段に突出片部53を設け、この突出片部53の加熱発泡材配置面53Aに加熱発泡材6を設けているので、例えば、突出片部53を設けずに、下部見込み片部54に加熱発泡材6を設けた場合に比べて、加熱発泡材配置面53Aから水抜き孔229までの距離を短くできる。このため、水抜き孔229を閉塞するために必要な加熱発泡材6の量を削減でき、コストを低減できる。
また、加熱発泡材配置面53Aは、見付け片部51側の基端部から室内側の先端部に向かって下る傾斜面とされ、加熱発泡材配置面53Aに貼られる加熱発泡材6の上面も傾斜面とされる。このため、水抜き孔229から中空部226に浸入した水は、加熱発泡材配置面53Aや加熱発泡材6の表面に溜まることなく、それらの傾斜面に沿って流れ落ちるため、排水性の低下も防止できる。さらに、加熱発泡材配置面53Aや加熱発泡材6の表面に溜まる水を排出するために、例えば、見付け片部51に水を排出するための孔などを加工する必要が無く、補強材5の加工コストも低減できる。
【0033】
補強材5において、突出片部53の基端部の見込み方向の位置は、水抜き孔229よりも室外側であり、突出片部53と水抜き孔229とが平面視で重なる面積は、水抜き孔229の面積の半分以下である。このため、突出片部53は、下枠22の水抜き孔229の斜め下方に配置されるため、水抜き孔229から中空部226への排水を突出片部53が妨げることを抑制でき、排水性低下をさらに防止できる。
突出片部53の基端部の見込み方向の位置が水抜き孔229よりも室外側にあるため、加熱発泡材配置面53Aに貼られた加熱発泡材6の発泡方向を、加熱発泡材配置面53Aが水平面である場合に比べて水抜き孔229の方向に向けることができ、加熱発泡材6が発泡した際に、水抜き孔229を効率良く塞ぐことができる。
【0034】
下部見込み片部54が外壁材8の上方位置まで延出されているので、下枠22の下面部222が熱変形しても補強材5に加わる荷重を外壁材8が支持することができ、外障子3の垂れ下がりを抑制できる。
【0035】
補強材5は、上部見込み片部52を上面部221に固定ネジ525で固定しているので、下枠22に対して補強材5を容易に固定でき、補強材5に形成した排水孔524を水抜き孔229と平面視で重なる位置に配置でき、補強材5に形成した切欠部55を下枠排水孔230に対向する位置に配置できる。このため、水抜き孔229から下枠排水孔230までの排水経路231に沿って水をスムーズに排出でき、排水性の低下を防止できる。
また、補強材5の上部見込み片部52を上面部221に固定ネジ525で固定しているので、仮に上面部221から固定ネジ525部分を経由して水が漏水しても中空部226に入るだけなので、水抜き孔229からの水と共に排水できる。したがって、固定ネジ525部分に漏水防止用のシール構造などを設ける必要が無く、コストも低減できる。
【0036】
[変形例]
補強材5としては、外障子3の荷重を支持できる見付け片部51と、加熱発泡材6が貼られる突出片部53とを少なくとも備えていればよく、補強材5の具体的な構造は前記実施形態に限定されない。例えば、見付け片部51は、見込み方向の位置が異なる上部見付け片部511および下部見付け片部512で構成されるものに限らず、見込み方向に揃って直線状に配置された上部見付け片部511および下部見付け片部512で構成されるものでもよい。
また、突出片部53と水抜き孔229とが平面視で重なる面積は、水抜き孔229の面積の半分以下としていたが、例えば、突出片部53を見込み方向において水抜き孔229の室外側に配置して水抜き孔229と平面視で重ならないように構成してもよい。また、突出片部53は、水抜き孔229の全面と平面視で重なる位置に配置してもよい。すなわち、突出片部53は、加熱発泡材配置面53Aに設けられた加熱発泡材6で水抜き孔229を閉塞できる位置に設けられていればよい。
下部見込み片部54は、外壁材8と平面視で重なる位置まで延出されたものに限定されない。
【0037】
前記実施形態では、補強材5は、外障子3の左右方向寸法よりも大きくなるように形成されているが、これに限定されず、種々の長さに形成されていてもよい。例えば、補強材5は、外障子3の左右方向(X軸方向)の寸法とほぼ同じ寸法に設定してもよい。
補強材5は、アルミニウム製の押出形材によって形成されるものに限定されず、スチール製の板材を折り曲げ加工したり溶接することで形成してもよい。
前記実施形態では、補強材5は、見付け片部51、上部見込み片部52、突出片部53、下部見込み片部54を一体成形することで構成されているが、これに限定されず、別部材で構成された複数の部品をネジ等によって連結することで、補強材5が構成されていてもよい。
また、建具としては、引違い窓1に限定されず、外障子3または内障子4の一方がスライド移動不能に固定された片引き窓でもよい。
【0038】
[本発明のまとめ]
本発明の建具は、長手方向に沿って連続する中空部が設けられた下枠を有する枠体と、前記枠体内に配置された外障子および内障子とを備え、前記外障子および前記内障子の少なくとも一方は、前記下枠に沿ってスライド移動可能とされ、前記下枠の上面には、前記中空部に連通する水抜き孔が形成され、前記中空部内には、少なくとも閉鎖位置にある前記外障子の下側に配置される補強材が設けられ、前記補強材は、前記外障子の荷重を支持可能な見付け片部と、前記見付け片部の高さ方向の中間位置から室内側に向かって突設された突出片部と、を備え、前記突出片部は、前記見付け片部側の基端部よりも室内側の先端部が下方となる向きに傾斜された加熱発泡材配置面を有し、前記加熱発泡材配置面には、加熱により発泡して前記水抜き孔を閉塞可能な加熱発泡材が設けられていることを特徴とする。
本発明の建具によれば、補強材において、見付け片部の高さ方向の中間位置から突出片部を室内側に向かって突設しているので、この突出片部の加熱発泡材配置面に加熱発泡材を設けているので、従来の構造に比べて、加熱発泡材配置面から下枠上面の水抜き孔までの距離を短くでき、水抜き孔を閉塞するために必要な加熱発泡材の量も削減でき、コストを低減できる。
また、加熱発泡材配置面は、見付け片部側の基端部から室内側の先端部に向かって下る傾斜面とされているので、加熱発泡材配置面に貼られた加熱発泡材の上面も傾斜面とされる。このため、水抜き孔から浸入した水が加熱発泡材配置面や加熱発泡材の上面に流れ込んだ場合、その水は傾斜された加熱発泡材配置面や加熱発泡材の上面に沿って流れ、室内側の先端から排水することができる。このため、加熱発泡材配置面に水が溜まることがないため、加熱発泡材配置面に溜まる水を排出するための水抜き加工を行う必要が無く、加工コストも低減できる。
【0039】
本発明の建具において、前記突出片部の基端部の見込み方向の位置は、前記水抜き孔よりも室外側であり、前記突出片部と前記水抜き孔とが平面視で重なる面積は、前記水抜き孔の面積の半分以下であることが好ましい。
本発明の建具によれば、突出片部が下枠の水抜き孔の斜め下方に配置されるので、水抜き孔から中空部への排水性低下を防止できる。また、突出片部の基端部の見込み方向の位置が水抜き孔よりも室外側にあるため、突出片部の先端部が下方となる向きに傾斜される加熱発泡材配置面に貼られた加熱発泡材の発泡方向を、加熱発泡材配置面が水平面である場合に比べて水抜き孔方向に向けることができ、加熱発泡材が発泡した際に、水抜き孔を効率良く塞ぐことができる。
【0040】
本発明の建具において、前記補強材は、前記見付け片部の下部から室内側に延出された下部見込み片部を備え、前記下部見込み片部は、前記下枠の下側に配置される外壁材と平面視で重なる位置まで延長されていることが好ましい。
本発明の建具によれば、下部見込み片部の室内側端部が、外壁材の上方位置まで延出されるので、下枠の下面部が熱変形しても補強材に加わる荷重を外壁材で支持することで、外障子の垂れ下がりを抑制できる。
【0041】
本発明の建具において、前記下枠は、前記中空部を区画する上面部と、下面部と、室外側面部と、室内側面部とを備え、前記補強材は、前記見付け片部の上部から室内側に延出された上部見込み片部を備え、前記上部見込み片部は、前記上面部に締結部材で固定され、かつ、前記水抜き孔と平面視で重なる部分は切り欠かれていることが好ましい。
本発明の建具によれば、補強材を下枠の下面部にネジ止めする場合にはネジ部分からの漏水を防止する構造が必要となるが、補強材の上部見込み片部を下枠の上面部にネジなどの締結部材で固定する場合は、ネジ部分から漏水しても下枠の中空部に水が浸入するため、水抜き孔から浸入する水と一緒に排水できる。したがって、漏水防止構造も不要にでき、補強材を確実にかつ容易に下枠に固定することができる。
また、補強材の上部見込み片部において水抜き孔と平面視で重なる部分を切り欠いているので、水抜き孔が上部見込み片部で塞がれることを防止でき、排水性の低下を防止できる。
【符号の説明】
【0042】
1…引違い窓、2…窓枠、3…外障子、4…内障子、5…補強材、6…加熱発泡材、8…外壁材、21…上枠、22…下枠、24…縦枠、25…縦枠、27…排水弁、51…見付け片部、52…上部見込み片部、53…突出片部、53A…加熱発泡材配置面、54…下部見込み片部、55…切欠部、221…上面部、221A…ビスホール、222…下面部、223…室外側面部、224…室内側面部、225…取付け部、226…中空部、227…外レール、228…内レール、229…水抜き孔、230…下枠排水孔、231…排水経路、261…樹脂製カバー、286…補強金具、511…上部見付け片部、512…下部見付け片部、513…突条部、521…第一上部見込み片部、522…立上り部、523…第二上部見込み片部、524…排水孔、525…固定ネジ、543…突条部。
図1
図2
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図5
図6
図7