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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118431
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】衛生薄葉紙製品の包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/04 20060101AFI20230818BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
B65D75/04
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021381
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加塩 龍一
(72)【発明者】
【氏名】住田 朋哉
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
【Fターム(参考)】
3E067AA16
3E067AA24
3E067AB76
3E067AB77
3E067AC03
3E067AC14
3E067BA18A
3E067BB01A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067BC04A
3E067CA11
3E067CA24
3E067EA06
3E067EE02
3E067EE12
3E067EE13
3E067FA01
3E067FC01
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BB22
3E086BB51
3E086CA40
(57)【要約】
【課題】低コストかつ簡単な構成で印刷層の剥がれ落ちが防止された、衛生薄葉紙製品の包装体
【解決手段】
衛生薄葉紙製品を包装基材で包装した包装体であって、包装基材は、第1の面と第2の面とを有する紙基材と、紙基材の第1の面全体を覆う透明なヒートシール層と、紙基材とヒートシール層との間の印刷層と、を含み、包装基材は、紙基材の第1の面が包装体の外面側となるように、衛生薄葉紙製品を包装し、包装体は、ヒートシール層を介して紙基材が接合された封止部と、非封止部と、を有し、包装体の外観において、非封止部の領域の印刷層は、ヒートシール層を通して光学的に認識可能であることを特徴とする衛生薄葉紙製品の包装体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生薄葉紙製品を包装基材で包装した包装体であって、
前記包装基材は、第1の面と第2の面とを有する紙基材と、前記紙基材の前記第1の面全体を覆う透明なヒートシール層と、前記紙基材と前記ヒートシール層との間の印刷層と、を含み、
前記包装基材は、前記紙基材の前記第1の面が前記包装体の外面側となるように、前記衛生薄葉紙製品を包装し、
前記包装体は、前記ヒートシール層を介して前記紙基材が接合された封止部と、非封止部と、を有し、
前記包装体の外観において、前記非封止部の領域の前記印刷層は、前記ヒートシール層を通して光学的に認識可能であることを特徴とする衛生薄葉紙製品の包装体。
【請求項2】
前記紙基材は透明であり、前記包装体の外観において、前記衛生薄葉紙製品は、前記非封止部の領域の前記ヒートシール層および前記紙基材を通して視認可能であることを特徴とする請求項1に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【請求項3】
衛生薄葉紙製品を包装基材で包装した包装体であって、
前記包装基材は、第1の面と第2の面とを有する透明な紙基材と、前記紙基材の前記第1の面全体を覆うヒートシール層と、前記紙基材と前記ヒートシール層との間の印刷層と、を含み、
前記包装基材は、前記紙基材の前記第2の面が前記包装体の外面側となるように、前記衛生薄葉紙製品を包装し、
前記包装体は、前記ヒートシール層を介して前記紙基材が接合された封止部と、非封止部と、を有し、
前記包装体の外観において、前記非封止部の領域の前記印刷層は、前記紙基材を通して光学的に認識可能であることを特徴とする衛生薄葉紙製品の包装体。
【請求項4】
前記ヒートシール層は透明であり、前記包装体の外観において、前記衛生薄葉紙製品は、前記非封止部の領域の前記紙基材および前記ヒートシール層を通して視認可能であることを特徴とする請求項3に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【請求項5】
衛生薄葉紙製品を包装基材で包装した包装体であって、
前記包装基材は、第1の面と第2の面とを有する紙基材と、前記紙基材の前記第1の面全体を覆う透明な第1のヒートシール層と、前記紙基材と前記第1のヒートシール層との間の印刷層と、前記紙基材の前記第2の面全体を覆う第2のヒートシール層と、を含み、
前記包装基材は、前記紙基材の前記第1の面が前記包装体の外面側となるように、前記衛生薄葉紙製品を包装し、
前記包装体は、前記第1のヒートシール層および前記第2のヒートシール層のうちの少なくとも一方を介して前記紙基材が接合された封止部と、非封止部と、を有し、
前記包装体の外観において、前記非封止部の領域の前記印刷層は、前記第1のヒートシール層を通して光学的に認識可能であることを特徴とする衛生薄葉紙製品の包装体。
【請求項6】
前記紙基材および前記第2のヒートシール層は透明であり、前記包装体の外観において、前記衛生薄葉紙製品は、前記非封止部の領域の前記第1のヒートシール層、前記紙基材および前記第2のヒートシール層を通して視認可能であることを特徴とする請求項5に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【請求項7】
衛生薄葉紙製品を包装基材で包装した包装体であって、
前記包装基材は、第1の面と第2の面とを有する透明な紙基材と、前記紙基材の前記第1の面全体を覆う第1のヒートシール層と、前記紙基材と前記第1のヒートシール層との間の印刷層と、前記紙基材の前記第2の面全体を覆う透明な第2のヒートシール層と、を含み、
前記包装基材は、前記紙基材の前記第2の面が前記包装体の外面側となるように、前記衛生薄葉紙製品を包装し、
前記包装体は、前記第1のヒートシール層および前記第2のヒートシール層のうちの少なくとも一方を介して前記紙基材が接合された封止部と、非封止部と、を有し、
前記包装体の外観において、前記非封止部の領域の前記印刷層は、前記第2のヒートシール層および前記紙基材を通して光学的に認識可能であることを特徴とする衛生薄葉紙製品の包装体。
【請求項8】
前記第1のヒートシール層は透明であり、前記包装体の外観において、前記衛生薄葉紙製品は、前記非封止部の領域の前記第2のヒートシール層、前記紙基材および前記第1のヒートシール層を通して視認可能であることを特徴とする請求項7に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生薄葉紙製品を包装する包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットペーパー、ティシュペーパー等の衛生薄葉紙製品の包装体の分野では、包装基材としてプラスチックフィルムが用いられ、プラスチックフィルムによって衛生薄葉紙製品が包装された包装体が広く知られている。プラスチックフィルムとしては、透明なものが用いられ、包装体の内側となるプラスチックフィルムの面に文字、図形、記号等の印刷層が形成されている。これにより、包装体の外部から透明なプラスチックフィルムを通して印刷層が視認可能であるとともに、運搬時等に印刷層が擦れて剥がれ落ちないようになっている。
【0003】
ところで、この種の衛生薄葉紙製品の包装体では、環境負荷を低減するため、包装基材としてプラスチックフィルムに代えて紙基材を含む包装基材を用いて、プラスチックの使用を削減することが提案されている。例えば特許文献1は、包装基材として、紙基材に封止用のヒートシール層を積層した包装基材を用いた衛生薄葉紙製品の包装体を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-70501号公報
【特許文献2】特開2021-130470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紙基材に封止用のヒートシール層を積層した包装基材を用い、文字、記号、図形、模様、またはそれらの任意の組み合わせによる結合等を表示する印刷層を当該包装基材に設ける場合、その構造上、印刷層は包装体の外面に露出することとなる。包装体の外面に露出した印刷層が運搬時等に擦れて剥がれ落ちないようにするためには、食品用の包装紙のように、印刷層を覆うコート層を設ける必要があり(引用文献2参照)、コスト高になるという問題がある。
【0006】
本発明は、低コストかつ簡単な構成で印刷層の剥がれ落ちが防止された、衛生薄葉紙製品の包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、衛生薄葉紙製品を包装基材で包装した包装体において、紙基材と、紙基材の一面全体を覆うヒートシール層と、紙基材とヒートシール層との間の印刷層と、を含む包装基材を用い、ヒートシール層によって包装体の封止と印刷層の保護とを行う構成により、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0008】
具体的には、本発明は、以下の構成を有する。
【0009】
[1] 衛生薄葉紙製品を包装基材で包装した包装体であって、包装基材は、第1の面と第2の面とを有する紙基材と、紙基材の第1の面全体を覆う透明なヒートシール層と、紙基材とヒートシール層との間の印刷層と、を含み、包装基材は、紙基材の第1の面が包装体の外面側となるように、衛生薄葉紙製品を包装し、包装体は、ヒートシール層を介して紙基材が接合された封止部と、非封止部と、を有し、包装体の外観において、非封止部の領域の印刷層は、ヒートシール層を通して光学的に認識可能である、衛生薄葉紙製品の包装体。
【0010】
[2] 紙基材は透明であり、包装体の外観において、衛生薄葉紙製品は、非封止部の領域のヒートシール層および紙基材を通して視認可能である、[1]に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【0011】
[3] 衛生薄葉紙製品を包装基材で包装した包装体であって、包装基材は、第1の面と第2の面とを有する透明な紙基材と、紙基材の第1の面全体を覆うヒートシール層と、紙基材とヒートシール層との間の印刷層と、を含み、包装基材は、紙基材の第2の面が包装体の外面側となるように、衛生薄葉紙製品を包装し、包装体は、ヒートシール層を介して紙基材が接合された封止部と、非封止部と、を有し、包装体の外観において、非封止部の領域の印刷層は、紙基材を通して光学的に認識可能である、衛生薄葉紙製品の包装体。
【0012】
[4] ヒートシール層は透明であり、包装体の外観において、衛生薄葉紙製品は、非封止部の領域の紙基材およびヒートシール層を通して視認可能である、[3]に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【0013】
[5] 衛生薄葉紙製品を包装基材で包装した包装体であって、包装基材は、第1の面と第2の面とを有する紙基材と、紙基材の第1の面全体を覆う透明な第1のヒートシール層と、紙基材と第1のヒートシール層との間の印刷層と、紙基材の第2の面全体を覆う第2のヒートシール層と、を含み、包装基材は、紙基材の第1の面が包装体の外面側となるように、衛生薄葉紙製品を包装し、包装体は、第1のヒートシール層および第2のヒートシール層のうちの少なくとも一方を介して紙基材が接合された封止部と、非封止部と、を有し、包装体の外観において、非封止部の領域の印刷層は、第1のヒートシール層を通して光学的に認識可能である、衛生薄葉紙製品の包装体。
【0014】
[6] 紙基材および第2のヒートシール層は透明であり、包装体の外観において、衛生薄葉紙製品は、非封止部の領域の第1のヒートシール層、紙基材および第2のヒートシール層を通して視認可能である、[5]に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【0015】
[7] 衛生薄葉紙製品を包装基材で包装した包装体であって、包装基材は、第1の面と第2の面とを有する透明な紙基材と、紙基材の第1の面全体を覆う第1のヒートシール層と、紙基材と第1のヒートシール層との間の印刷層と、紙基材の第2の面全体を覆う透明な第2のヒートシール層と、を含み、包装基材は、紙基材の第2の面が包装体の外面側となるように、衛生薄葉紙製品を包装し、包装体は、第1のヒートシール層および第2のヒートシール層のうちの少なくとも一方を介して紙基材が接合された封止部と、非封止部と、を有し、包装体の外観において、非封止部の領域の印刷層は、第2のヒートシール層および紙基材を通して光学的に認識可能である、衛生薄葉紙製品の包装体。
【0016】
[8] 第1のヒートシール層は透明であり、包装体の外観において、衛生薄葉紙製品は、非封止部の領域の第2のヒートシール層、紙基材および第1のヒートシール層を通して視認可能である、[7]に記載の衛生薄葉紙製品の包装体。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低コストかつ簡単な構成で印刷層の剥がれ落ちが防止された、衛生薄葉紙製品の包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る、衛生薄葉紙製品の包装体を説明する図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る包装基材を説明する概略展開図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る包装基材の構成を説明する概略断面図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る、衛生薄葉紙製品の包装体を説明する図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係る、衛生薄葉紙製品の包装体を説明する図である。
図6】本発明の第4の実施形態に係る、衛生薄葉紙製品の包装体を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。これらは例示の目的で掲げたものであり、これらにより本発明を限定するものではない。
【0020】
<第1の実施形態>
[包装体]
図1の(a)および(b)は、本発明の第1の実施形態に係る、衛生薄葉紙製品の包装体の概略斜視図である。本発明の第1の実施形態において、包装体1は、衛生薄葉紙製品2と、衛生薄葉紙製品2を包装する包装基材10と、を含む。本発明に係る包装体1は、包装体1の外観において光学的に認識可能な、装飾のためおよび/または識別性を付与するための文字、記号、図形、模様またはこれらの任意の組み合わせによる結合等を表示する印刷層Gを含む。
【0021】
[衛生薄葉紙製品]
図1に示される例において、衛生薄葉紙製品2は、ロール状キッチンペーパー(キッチンタオルともいう)である。包装基材10は、2つのロール状キッチンペーパー2を一纏めに包んでいる。
【0022】
本発明において、包装体1に包装される衛生薄葉紙製品2の例には、非限定的に、(1)トイレットペーパー、キッチンペーパー等の長尺の衛生薄葉紙シートをロール状に巻き取った「ロール状衛生薄葉紙製品」、(2)ティシュペーパー、ワイパー等の複数枚もしくは複数組の衛生薄葉紙シートを積層した積層体の形態の「積層状衛生薄葉紙製品」、(3)ティシュペーパー、ワイパー等の複数枚もしくは複数組の衛生薄葉紙シートを積層した積層体を箱または袋に収容した形態の衛生薄葉紙製品(以下、「箱入り積層状衛生薄葉紙製品」と総称する)等が挙げられる。
【0023】
本発明において、包装体1に包装される衛生薄葉紙製品2の数(個数)または量(枚数、組数)は、衛生薄葉紙製品2の寸法、重さや包装基材10の強度(破けやすさ)などによる、包装体1の取り扱いやすさ、製品販売戦略等により決定されてもよい。包装体1は、例えば、2個から12個のロール状衛生薄葉紙製品、または2個から5個の箱入り積層状衛生薄葉紙製品を含んでいてもよい。あるいはまた、包装体1は、例えば、20枚から400枚(または10組から200組)の衛生薄葉紙シートが積層された1束の積層状衛生薄葉紙製品を含んでいてもよい。
【0024】
[包装基材]
図3の(a)は、包装基材10の層構成を示す概略的部分断面図である。図中の両矢印Tは、包装基材10の厚さ方向を示す。図において、各層の厚さは概略的に示されており、正確な縮尺ではない。
【0025】
図3の(a)を参照して、本実施形態に係る包装基材10は、紙基材100と、ヒートシール層110Hと、紙基材100とヒートシール層110Hとの間の印刷層Gと、を含む。紙基材100は、第1の面101と第2の面102とを有し、印刷層Gおよびヒートシール層110Hは、第1の面101上に、この順に設けられている。
【0026】
図2の(a)は、ヒートシール層110H側から見た包装基材10の展開図であり、図2の(b)は、紙基材100側から見た包装基材10の展開図である。
【0027】
[ヒートシール層]
図2の(a)に示されるように、本実施形態において、ヒートシール層110H(図中、ハッチングで示される)は、紙基材100の第1の面101の一面全体を覆うように設けられている。
【0028】
本明細書において、ヒートシール層とは、ヒートシール性を発現する材料(以下、単に、ヒートシール剤ともいう)により形成された層をいう。本発明の実施形態において、ヒートシール層は、衛生薄葉紙製品2を内包した包装体1を封止するヒートシール機能、および紙基材100に印刷形成された印刷層Gが包装体1の製造時(例えば包装工程)や製造された包装体1の運搬時等に擦れて剥がれ落ちないよう印刷層Gを覆って保護する保護機能を有する。
【0029】
第1の実施形態において、ヒートシール層110Hは印刷層Gよりも包装体1の外面側に設けられている。本実施形態において、ヒートシール層110Hを通して印刷層Gを透かし見ることができるように、ヒートシール層110Hは、透明である。
【0030】
(透明)
一般に、「透明」とは、物体の反対側や内部にあるものが透けて見えることをいい、「半透明」とは、透明の度合の少ないこと、透明と不透明との中間であること、その物の向こうにある物体の形ははっきり見えないが、色彩・明暗などは見える程度であることまたはそのさまをいう。また、「不透明」とは、それを通して向こう側の物を見ることができないさまをいう。本明細書においては、「透明」および「半透明」を総称して、単に「透明」ともいう。
【0031】
[ヒートシール層の材料]
本発明の実施形態において、ヒートシール層を構成する材料としては、ヒートシール性を発現する任意の材料を使用することができる。例えば、ポリオレフィン系樹脂や、他の熱可塑性樹脂を使用することができ、これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。このような材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、アイオノマー、非晶性ポリエステル、ポリプロピレン、スチレン-アクリル共重合体、プロピレン-エチレン共重合体(好ましくはエチレン含有量が10モル%以下の共重合体)、または、ポリプロピレンに不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、エステル単量体等をグラフト重合または共重合したポリプロピレン系樹脂、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。ヒートシール層110H等を構成する材料は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
ただし、第1の実施形態においては、形成されたヒートシール層が透明となることを必須とする。
【0033】
[ヒートシール層の形成方法]
ヒートシール層110H等は、例えば、以下に挙げるような通常用いられる方法により形成することができる。
(1)紙基材100上に、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂を含有する組成物を、押出法によって製膜する方法。
(2)知られているヒートシール加工装置(貼合処理装置)を用いて、紙基材100に熱可塑性樹脂からなるフィルムまたは熱可塑性樹脂を含有するフィルムを貼り付ける方法。
(3)熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性樹脂組成物を水に溶解もしくは分散させた水系ヒートシール剤、または熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性樹脂組成物を溶剤に溶解もしくは分散させた溶剤系ヒートシール剤を、ロールコート、グラビアロールコート、キスコート等の知られている方法で、紙基材100上に塗工する方法。
【0034】
[ヒートシール層の厚さ]
本発明の実施形態において、ヒートシール層110Hの厚さは、2μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0035】
ヒートシール層110Hの厚さは、例えば、包装基材10を切断し、その切断面を光学顕微鏡や電子顕微鏡で観察して測定することができる。この場合、ヒートシール層110Hの厚さは、例えば、塗工処理および/またはヒートシール処理によってヒートシール剤が紙基材100に浸透した後に、ヒートシール剤が紙基材100に浸透せずに紙基材100の表面上に残ったヒートシール層110Hの厚みとして測定することができる。ヒートシール層110Hとして残るヒートシール剤は、接合される封止部12の接着(熱融着)に関与し得るため、ヒートシール処理のための加熱温度がヒートシール層110Hに適切に伝わる限りは、ヒートシール層110Hとして残るヒートシール剤の量を多くする程、接着性が向上する傾向にある。
【0036】
ヒートシール層110Hの厚さが薄すぎると、接着に寄与し得るヒートシール剤の量が少なく、包装体1を封止するために十分なヒートシール性(接着性)が得られない場合がある。また、ヒートシール層110Hの厚さが厚すぎると、接合される封止部12の構成によっては、ヒートシール処理時に熱伝達が不十分となってヒートシール層の加熱温度が低下して良好な接合強度を得ることができない場合がある。
【0037】
ヒートシール層110Hの厚さが上記範囲内であると、包装体1の封止部12における良好なヒートシール性が保証され得る。
【0038】
[印刷層]
本発明において、包装体1は、図1および図2に示されるように、装飾のためおよび/または識別性を付与するためにインクを印刷(塗布)することで形成された印刷層Gを含む。図3の(a)に示されるように、印刷層Gは、紙基材100の第1の面101上に印刷形成される。印刷層Gは、1つまたは複数の印刷部(インク塗布部)として紙基材100上に設けられていてもよい。包装基材10は、平面視において、印刷層Gが設けられた領域と、印刷層Gが設けられていない非印刷領域nGと、を有していてもよい。印刷層Gは、文字、記号、図形、模様またはこれらの任意の組み合わせによる結合等を含んでいてもよい。印刷層Gは、少なくとも、包装体1の外観において光学的に認識可能な位置に配される。
【0039】
本明細書において、「光学的に認識可能」とは、目で見て確認可能(視認可能)であること、および光学式読み取り装置によって読み取り可能であること、を含む。光学式読み取り装置の例は、スキャナー、バーコードリーダーを含む。印刷層Gは、光学的に読み取り可能な情報がコードされた一次元コードおよび二次元コードのうちの少なくとも一方のコードを、当該コードが包装体1の外観において光学的に読み取り可能であるように含んでいてもよい。
【0040】
[インク]
本発明において、印刷層Gの印刷には、様々なインクを用いることができる。インクは、主に樹脂成分、溶剤、着色剤、助剤などから構成される。樹脂成分の例には、硝化綿系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ロジン系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。溶剤の例には、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、IPA、ブタノール、MEK、MIBKなどが挙げられる。印刷層Gの形成に用いられるインクは、バイオマスインク(バイオマスインキともいう)であってもよい。
【0041】
[バイオマスインク]
バイオマスとは、概して、エネルギーや物質に再生が可能な、動植物から生成される有機性の資源であって、石油や石炭などの化石資源を除く資源をいう。本明細書において、バイオマスインクとは、原料の一部にバイオマス由来成分を使用したインクをいう。本発明の実施形態に適用可能なバイオマスインクの例は、綿、パルプ、米ぬか、植物油、被子植物の種などのバイオマスから成分を抽出して製造されたインクを含む。
【0042】
[印刷方法]
印刷層Gの印刷方法は、グラビアロールを用いたグラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷のような公知の印刷方法が採用され得、好ましくはグラビア印刷である。
【0043】
[紙基材]
第1の実施形態において、包装体1の包装基材10の紙基材100としては、種々の紙基材を用いることができる。
【0044】
紙基材100は、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、脱墨パルプのような古紙パルプなどのパルプ成分を主原料として、知られている方法で抄紙機により抄紙をすることにより製造することができる。
【0045】
パルプ成分は1種が単独で用いられていてもよいし、2種以上混合されていてもよい。これらパルプ成分は紙基材の品質に大きく影響するので、要求品質に合わせて所定の種類および配合割合で適宜配合される。
【0046】
例えば、針葉樹クラフトパルプ(NKP)および/または広葉樹クラフトパルプ(LKP)を、好ましくは0~60:100~40、より好ましくは20~60:80~40、さらに好ましくは40~60:60~40の配合率(質量%)で用いてもよい。
【0047】
針葉樹クラフトパルプは、概して、広葉樹クラフトパルプと比べて繊維長が長い。そのため、パルプ原料中において針葉樹クラフトパルプの配合率が高くなると、概して、得られる紙基材100の紙力が強くなる。例えば、MD方向(抄紙方向、または縦方向ともいう)の引張強度が高くなり、MD方向への力が掛かっても破れにくい紙基材100が得られる。
【0048】
包装体1の包装基材10に適用可能な紙基材100は、包装体1を製造する際の加工適性(折り曲げやすさ、折り曲げに対する強度)、印刷層Gを印刷形成する際の印刷適性、包装体1とした際の強度(破けやすさ)および外観(透明度、白色度)等により決定されてもよい。
【0049】
紙基材100には、要求品質および製造時の操業の安定のために、任意成分として、一般的に用いられている様々な薬品が添加されていてもよい。任意成分としては、例えば、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、柔軟剤、嵩高剤、染料、香料、分散剤、濾水向上剤、ピッチコントロール剤、歩留向上剤等を挙げることができる。
【0050】
[坪量]
本発明の実施形態において、紙基材100の坪量は、30g/m以上65g/m以下であることが好ましい。坪量は、JIS P8124に従って測定する1枚当たりの坪量(g/m)である。
【0051】
紙基材100の坪量が低い場合は、概して、紙基材100を構成するパルプ繊維は少なく、繊維間結合も少なく、紙基材100自体の強度が低くて破れ易い傾向にある。このとき、ひいては紙基材100を含む包装基材10もまた、破れやすい傾向にある。したがって、包装基材10の破れにくさの観点からは、紙基材100の坪量は高い方が好ましい。
【0052】
一方、紙基材100の坪量が高い場合、紙基材100、ひいては包装基材10のしなやかさや柔らかさが低下して、包装体1の形成時に包装基材10が折り曲げにくくなったり、折り曲げの際に意図せぬ皺が生じたりするなど、加工適性が低下する傾向がある。また、紙厚が厚くなることなどによりヒートシール処理時に熱伝達が不十分となって、ヒートシール層の加熱温度が低下して良好な接合強度を得ることができない場合がある。したがって、包装体1を製造する際の加工適性、および包装体1の封止部12におけるヒートシール性(接着性)の観点からは、紙基材100の坪量は低い方が好ましい。
【0053】
紙基材100の坪量が上記範囲であると、紙基材100および包装基材10は適度な強度を有して破れにくく、且つ、包装体1の形成時の加工適性および封止部12におけるヒートシール性が保証され得る。
【0054】
第1の実施形態に好適に適用可能な紙基材100の例としては、例えば、グラシン紙およびパーチメント紙のような透明な紙や、純白紙のような片艶紙が挙げられるが、これらに限定されない。図1の例では、紙基材100には、グラシン紙が用いられており、包装体1の内容物である衛生薄葉紙製品2(本例では、2個のエンボス付きロール状キッチンペーパー)が紙基材100を通して透けて見えている。
【0055】
[グラシン紙]
「グラシン紙」は、化学パルプを高度に叩解して抄造した原紙をカレンダーに通して熱と圧力をかけ、繊維間の隙間を潰して製造した透明な薄葉紙である。グラシン紙は、平滑度が高く、光沢があり、高密度で、透気度が高く(すなわち、紙の一定面積を一定量の空気が一定圧力の下で通過するのにかかる時間が長く、換言すると、透気性が低い)、半透明を呈する等の性質を有する。
【0056】
[透明度]
「透明度」とは、光が紙を透過する割合を入射光量の百分率で表したものをいう。透明度の値が大きい程、反対側や内部にあるものが、よりはっきりと透けて見えることを示す。
【0057】
内容物である衛生薄葉紙製品2の視認性の観点からは、本実施形態に好適に適用される透明な紙の透明度は、65%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは78%以上である。また、かかる透明な紙を紙基材100として含む包装基材10の透明度は、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは73%以上である。
【0058】
紙基材100および包装基材10の透明度は、ISO5-2に準じて、拡散光透過率計DOT-5(村上色彩技術研究所社製)で測定することができる。なお、包装基材10の透明度の測定は、包装基材10のうち、印刷層Gのない領域(図3の(a)の非印刷領域nG参照)について行う。
【0059】
[グラシン紙を用いる態様の作用効果]
図1および図3の(a)を参照して、本実施形態において包装基材10の紙基材100としてグラシン紙を用いることにより、例えば次のような作用効果が奏され得る。
(1)グラシン紙およびヒートシール層110Hは透明であるため、包装体1の外観において、非封止部の領域であって、非印刷領域nGにおいて、包装基材10を構成する透明なヒートシール層110Hおよび透明なグラシン紙100を通して、包装体1に包装されている衛生薄葉紙製品2を容易に透かし見て判別することができる(内部可視性がある)。例えば、衛生薄葉紙製品2の種類、数量、色や模様、形状(例えばエンボスの有無)等を、包装体1の外側から確認することができる(図1参照)。
(2)グラシン紙は高い透気度を有するため、包装基材10に包装されている被包装物である衛生薄葉紙製品2が、外部の湿気の影響を受けにくくなる。
【0060】
[パーチメント紙]
「パーチメント紙」は、原紙中のセルロース繊維の一部が不定形のアミロイドに変化した透明な紙であり、セルロース繊維を主成分とする原紙を硫酸、塩酸、蟻酸、酢酸などの酸で処理することによって得ることができる。例えば、原紙を硫酸に浸漬した後、中和および/または水洗を繰り返し、乾燥する一連の工程によってパーチメント紙を作ることができる。浸漬時間は、一概に限定することはできないが、原紙の厚み、密度、サイズ度、洗浄能力、乾燥能力などを考慮して、適宜調節することができる。
【0061】
セルロースからなるパルプ繊維で構成された原紙を硫酸に浸漬することにより、セルロースは膨潤、加水分解して溶解する。溶解したセルロースは粘稠で半透明なゼラチン状の物質となり、原紙表面を被覆し、繊維間を強く結びつけ、さらに紙層中の細孔、空隙を埋め、非常に緻密な紙層構造を形成する。その結果、紙層内での光の乱反射が軽減して、透明化が促進される。
【0062】
セルロースの加水分解により生成したゼラチン状の物質は、中和および/または水洗工程によって加水分解反応が停止し、水和セルロースとなる。したがって、化学的には原紙と同一成分のセルロースによって、紙の空隙が閉塞されるために、透明性が向上するとともに、地合、或いは原紙層中の空隙に起因すると推定される微小な白斑点ムラが軽減され、結果的にムラのない、均一な透明性を有する原紙を得ることができる。
【0063】
使用パルプ中にリグノセルロース原料を化学的処理や解繊処理することで得られる平均繊維幅2~50nmの微細繊維状セルロース含有させることで、より透明度の高い紙とすることも可能である。
【0064】
[パーチメント紙を用いる態様の作用効果]
包装基材10の紙基材100としてパーチメント紙を用いることにより、グラシン紙を用いた場合と同様に、内部可視効果を奏し得る。すなわち、包装体1の外観において、非封止部であって、非印刷領域nGにおいて、包装基材10の透明なヒートシール層110Hおよび透明なパーチメント紙100を通して、包装体1に包装されている衛生薄葉紙製品2を容易に透かし見て判別することができる。例えば、衛生薄葉紙製品2の種類、数量、色や模様、形状(例えばエンボスの有無)等を、包装体1の外側から確認することができる(図1参照)。
【0065】
[片艶紙]
本実施形態の1つの態様において、紙基材100は、片艶紙であってもよい。片艶紙とは、片面の平滑を高め光沢をもたせた紙であり、相対的に平滑度が高くツルツルとした感触の艶面(高平滑面)と、相対的に平滑度が低くザラザラとした感触の非艶面(低平滑面)と、を有する。
【0066】
片艶紙は、パルプ原料から紙を抄造するにあたり、鏡面仕上げしたヤンキードライヤーを備えた抄紙機において抄紙を行い、鏡面仕上げしたヤンキードライヤーの表面に湿紙を圧接して乾燥させることにより、製造することができる。ヤンキードライヤーに接触する面の平滑度および光沢は、ヤンキードライヤーと接触しない面の平滑度および光沢と比べて高くなり、このようにして、艶面と非艶面とを有する紙基材(片艶紙)100を製造することができる。
【0067】
例えば上質紙のような他の紙においては、両面の平滑度を向上させるためにカレンダー処理(両側からの加圧および/または加熱処理)が通常行われるところ、片艶紙では、平滑度の表裏差を得るために、カレンダー処理は施されないかまたはその条件が穏やかである。そのため、片艶紙では、原紙に含まれるパルプ繊維の繊維間結合は相対的に破壊されにくく、その結果、相対的に紙力強度の高い紙を得ることができる。
【0068】
[平滑度]
片艶紙の艶面および非艶面の平滑度は、例えば、JIS P 8155:2010に従って測定することができる。本実施形態において、片艶紙の艶面についてJIS P 8155:2010に従って測定される平滑度は、好ましくは、210秒以上310秒以下である。また、片艶紙の非艶面についてJIS P 8155:2010に従って測定される平滑度は、好ましくは、16秒以上26秒以下である。
【0069】
[片艶紙を用いる態様の作用効果]
印刷適性の観点から、平滑度の高い艶面を、印刷層Gを設ける面である紙基材100の第1の面101とすることが好ましい。
【0070】
印刷層Gを設ける面の平滑度が高い場合、表面凹凸が微小であることにより、版の再現性が高くなる。平滑度が低い面では表面凹凸が顕著であり紙基材100の繊維がインクを余計に吸収してインクの発色を落とす現象が生じやすい傾向にあるところ、平滑度が高い面では、表面凹凸が微小であることにより、かかる現象が防止され、均一なインク層を形成しやすく、滲みやムラが生じにくい。また平滑度が高い面は、入射光を分散させにくいため、光沢があり、印刷を施した場合に発色が鮮やかで見栄えのよい高品位の印刷が得られる。したがって、印刷層Gを形成する包装基材10の紙基材100の第1の面101は、平滑度がある程度高いことが好ましく、艶面とすることが好ましい。
【0071】
片艶紙のような表面凹凸の表裏差が大きい紙は、その表裏差を得るために、原紙に対してカレンダー処理が施されないか、カレンダー処理が施される場合であっても両面を艶面とする紙と比べて緩やかなカレンダー処理条件で製造される。そのため、原紙に含まれるパルプ繊維の繊維間結合は相対的に破壊されにくく、その結果、相対的に紙力強度の高い紙を得ることができる。したがって、紙基材100に片艶紙を用いる態様においては、紙基材100に上質紙等の両面を艶面とする紙を使用する態様と比べて、紙基材100、ひいては包装基材10の強度が高く、これを用いる包装体1は、包装体の持ち運び時に、包装体を摘まみ上げることによって包装体の重さにより指圧の掛かる部分から包装基材10が破けるといった現象が、生じにくい。
【0072】
[純白紙]
本発明の実施形態の1つの態様において、紙基材100は、純白紙であってもよい。純白紙とは、上述した片艶紙の一種であり、漂白パルプのような白色度の高いパルプを用いて製造され、高い白色度を有する。
【0073】
[白色度]
純白紙の白色度は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。白色度は、JIS P8148:2005(ISO2470)に準じて測定することができる。
【0074】
[純白紙を用いる態様の作用効果]
紙基材100に純白紙を用いる態様は、上述の片艶紙の項目で説明した作用効果に加え、その高い白色度により、印刷層Gの背景が白色となって印刷層Gの視認性が向上するという作用効果を奏し得る。
【0075】
[包装体の包装形式および製造方法]
図1および図2を参照して、第1の実施形態に係る包装体1に適用可能な包装形式および包装体1の製造方法の非限定的な例について説明する。
【0076】
図2は、図1に示される包装体1を構成する包装基材10の概略展開図である。図2の(a)は紙基材100の第1の面101側から見た包装基材10の平面図であり、図2の(b)は紙基材100の第2の面102側から見た包装基材10の平面図である。本例において、包装基材10は、矩形OPQRである。
【0077】
包装基材10には、包装体1を封止するためのヒートシール剤(接着剤)が付与されている。図2の(a)および(b)を参照して、図中、ハッチングで示される領域(紙基材100の第1の面101の一面全体)に、ヒートシール剤が付与されており、これにより、包装基材10の紙基材100の第1の面101の一面全体には、ヒートシール層110H(図3の(a)を参照)が形成されている。
【0078】
図1に示される例において、包装体1の包装には、キャラメルのようなソフトキャンディの個別包装や箱たばこのパッケージなどで知られている、いわゆるキャラメル包装形式と呼ばれる包装形式が採用されている。
【0079】
図1に示されるキャラメル包装形式の包装体1は、例えば、以下に示す工程を経て製造することができる。
【0080】
(工程1) 図2に示されるような、包装体1を封止するためのヒートシール剤が包装基材10の所定領域(図中、ハッチングで示される領域)に付与されてヒートシール層110Hが形成された、矩形OPQRの包装基材10を準備する工程。
【0081】
図2の例では、包装基材10のMD方向、ひいては紙基材100のMD方向が、図中のY方向と一致するようにしているが、本実施形態において、包装基材10(紙基材100)を用いる方向は、これに限定されない。包装基材10(紙基材100)を用いる方向は、包装体1を製造する際の加工適性(折り曲げやすさ、折り曲げに対する強度)、包装体1とした際の姿勢や強度(破けやすさ)等の観点から、紙の繊維配向に起因する方向性に応じて決定してもよい。
【0082】
(工程2) 図2の(b)に示される包装基材10の紙基材100の第2の面102上に、被包装物である衛生薄葉紙製品(2つのロール状キッチンペーパーロール)2を、ロールの軸方向が図2の(b)において矢印Yで示される方向と一致するように、配置する工程。
【0083】
(工程3) 包装基材10で、紙基材100の第1の面101が外面となるように被包装物2を巻き込み、包装基材10の両側端部を重ね合わせて、筒状に包装する工程。
【0084】
この工程3により、図2の(a)に示されるヒートシール層110Hのうちの矩形OPPで示される部分と、図2の(b)に示される、紙基材100の矩形RQRで示される部分と、が対接するように重ね合わされる。これにより、包装基材10の両側端部は、紙基材100の第1の面101と第2の面102とが対接するように、第1の面101に設けられたヒートシール層110Hを介して接合されて、封止される。
【0085】
以下、このように紙基材100の異なる面101、102を対接させて貼り合わせる接合方式を、本明細書において、「重ね貼り」とも称するものとする。図3の(c)は、包装体1の封止部12のうち、このようにして重ね貼り封止された包装体1の封止部12S(図1の(b)参照)の概略的な部分断面図である。図中、両矢印Tは、包装基材10の厚さ方向を示す。
【0086】
(工程4) 次いで、工程3により形成された筒状の包装の開口する両端部のそれぞれにおいて、衛生薄葉紙製品2の周面からはみ出た包装基材10の部分を、2対の対向するフラップ状部分が形成されるように互いに折り畳み、衛生薄葉紙製品2の端面に沿わせて接合して、衛生薄葉紙製品2を包封する工程。
【0087】
図2の(a)および(b)において、矩形OORおよび矩形PPQQで示される包装基材10の上下端部の領域が、図中の山折り線UFL(破線)および谷折り線DFL(一点鎖線)に従って折り畳まれて、フラップ状部分が形成される。紙基材100の第1の面101に設けられたヒートシール層110Hを介して、フラップ状部分が包装体1の上下端面に沿って接合されることにより、図1に示される状態が得られる。
【0088】
図3の(d)は、このようにして接合されて封止された、包装基材10の上端部における封止部12Tの概略的な部分断面図を示す。不図示ではあるが、包装基材10の下端部の封止部12Bにおいても、同様の接合および封止がなされている。
【0089】
このように、包装基材10の上下端部では、主に、紙基材100の第1の面101同士が対接するようにそれぞれのヒートシール層110Hを介して接合されて、封止される。以下、このように紙基材100の同一の面同士を対接させて貼り合わせる接合方式を、本明細書において、「合掌貼り」とも称するものとする。
【0090】
なお、本明細書において、包装基材10の「上下端部」および包装体1の「上下端面」における「上下端」とは、図中、矢印Yで示されるY方向における両端を指し、包装基材10の「(両)側端部」とは、図2に矢印Xで示されるX方向のような、Y方向と交差する方向における包装基材10の巻き回しの(両)端部を指すものとする。
【0091】
以上の工程により、ヒートシール層110Hを包装体1の外面側に備える本実施形態においては、重ね貼り封止および合掌貼り封止の両方が行われる。その結果、包装体1は、包装基材10の両側端部が紙基材100の第1の面101と第2の面102とが対接するように重ね合わされて接合される封止部12S(第1の封止部)と、包装基材10の上下端部のそれぞれが主に第1の面101同士が対接するように折り畳まれて接合される封止部12T,12B(第2の封止部)と、を有する封止部12により、封止される。
【0092】
なお、以上に例示した製造工程では、あらかじめ平面視において所定サイズの矩形に切断された包装基材10を準備し、1つの包装体1を形成したが、包装体1の製造方法はこれに限定されない。例えば、包装基材10を長尺の連続シートの形態で準備し、その後の工程で、包装基材10に対して衛生薄葉紙製品2を配置すると共に、または配置した後に、包装基材10を切断して、包装体1を形成してもよい。
【0093】
[第1の実施形態の作用効果]
本発明の第1の実施形態は、衛生薄葉紙製品2を包装基材10で包装した包装体1であって、包装基材10は、第1の面101と第2の面とを有する紙基材100と、紙基材100の第1の面101全体を覆う透明なヒートシール層110Hと、紙基材100とヒートシール層110Hとの間の印刷層Gと、を含み、包装基材10は、紙基材100の第1の面101が包装体1の外面側となるように、衛生薄葉紙製品2を包装し、包装体1は、ヒートシール層110Hを介して紙基材100が接合された封止部12(12S、12T、12B)と、非封止部と、を有し、包装体1の外観において、非封止部の領域の印刷層Gは、ヒートシール層110Hを通して光学的に認識可能であることを特徴とする。
【0094】
第1の実施形態において、包装基材10は、紙基材100の第1の面101が包装体1の外面側となるように衛生薄葉紙製品2を包装するため、印刷層Gは、紙基材100よりも包装体1の外面側となり、ヒートシール層110Hは、印刷層Gよりも包装体1の外面側となる。本実施形態においてヒートシール層110Hは透明であるため、包装体1の外観において、印刷層Gは、ヒートシール層110Hを通して光学的に認識可能となる。
【0095】
また、印刷層Gが紙基材100よりも包装体1の外面側に位置するため、包装体1の外部から見た際に、包装体1の非封止部において、印刷層Gが紙基材100で被覆されることによって見えなくなることはない。したがって、本実施形態において、紙基材100は、透明であっても不透明であってもよく、種々の紙基材を適用することができる。
【0096】
また、印刷層Gは、紙基材100と、紙基材100の第1の面101全体を覆うヒートシール層110Hと、の間に位置しており、紙基材100およびヒートシール層110Hによって両面から挟まれて被覆される。
【0097】
そのため、包装基材10で衛生薄葉紙製品2を包装する包装体1の製造工程や、包装体1の運搬時等において、手や装置などで包装基材10を加工したり包装体1を持ち運んだりした際や、複数の包装体1同士がぶつかり合った際などの、包装基材10に対する包装体1の外側からの外的刺激に対しては、印刷層Gは、ヒートシール層110Hによって保護されて、印刷層Gを形成するインクの擦れや剥がれが生じにくい。
【0098】
また、包装体1の内容物である衛生薄葉紙製品2(例えば、箱入り衛生薄葉紙製品の箱の角など)が包装基材10にぶつかった際などの、包装基材10に対する包装体1の内側からの外的刺激に対しては、印刷層Gは、紙基材100によって保護されて、印刷層Gを形成するインクの擦れや剥がれが防止される。
【0099】
また、上述の積層構成内で、印刷層Gを形成するインクの剥がれ等が生じた場合であっても、印刷層Gを両面から挟んで被覆する紙基材100およびヒートシール層110Hの存在により、剥がれたインクの印刷層Gの所定位置からの離脱(剥がれ落ち)が防止され得る。
【0100】
したがって、本実施形態によれば、従来技術のような印刷層用のコート層を別途設けることなく、それに代わるヒートシール層110Hによって、簡単な構成で低コストに、外的刺激に対する包装基材10の印刷層Gの保護が可能であり、包装体1に施された印刷表示の劣化が防止されるという格別な効果を奏し得る。
【0101】
また、本発明に係る包装基材10において、ヒートシール層110Hは、紙基材100の第1の面101全体を覆っており、この第1の面101は、包装体1の外面側に面している。この構成によると、例えばキャラメル包装のような包装形式により、ヒートシール層110Hを介した紙基材100の接合により包装体1を封止することが可能となる。そのため、ヒートシール層110Hとは別の封止のための接着層を別途設けずともよく、あるいはまた、封止のための付加的な接着剤の使用量を削減することができる。これにより、封止に関しても構成を簡略化することができ、包装体1の製造のための工程の削減や原材料の種類や量の低減につながって、コストを低減させることができる。
【0102】
さらに、紙基材100に、グラシン紙やパーチメント紙のような透明な紙基材を適用した1つの態様では、包装体1の外観において、非封止部の領域であって、印刷層Gが存在しない非印刷領域nGにおいて、透明なヒートシール層110Hと透明な紙基材100とを通して、包装体1の被包装物である衛生薄葉紙製品2を透かし見ることができる。これにより衛生薄葉紙製品2の種類、色や模様、形状(例えばエンボスの有無やパターン)等を、包装体1を開封することなく包装体1の外側から確認することができる。
【0103】
紙基材100に、片艶紙のような艶面と非艶面とを有する紙基材を適用した1つの態様では、その製法に起因する、両面を艶面とする紙基材と比べた際の紙力の強さにより、結果的に包装基材10が破れにくいという作用効果を奏し得る。また、艶面を、印刷層Gを設ける面とすることで、高品位な印刷層が得られる。
【0104】
紙基材100に、純白紙のような不透明で白色度の高い紙基材を適用した1つの態様では、印刷層Gの背景が白色となり、印刷層の視認性が向上する。
【0105】
<第2の実施形態>
図3および図4を参照して、本発明の第2の実施形態に係る、衛生薄葉紙製品の包装体を説明する。特段の記載のない限り、第1の実施形態に適用可能な構成およびその説明は、本実施形態に適用可能である。
【0106】
図4の(a)は、本発明の第2の実施形態に係る、衛生薄葉紙製品の包装体の概略斜視図である。図4の(b)は、図4の(a)に示される包装体1をIVb-IVb線に沿って取った概略断面図であり、被包装物である衛生薄葉紙製品2の図示は省略されている。また、図4の(c)は、図4の(b)において符号IVcで示される部分の概略拡大図である。
【0107】
[包装体]
図4の(a)を参照して、第2の実施形態において、包装体1は、衛生薄葉紙製品2と、衛生薄葉紙製品2を包装する包装基材10と、を含む。包装体1は、包装基材10の接合により封止された封止部12(12S,12T,12B)と、非封止部と、を有する。包装体1は、包装体1の外観において光学的に認識可能な、装飾のためおよび/または識別性を付与するための文字、記号、図形、模様またはこれらの任意の組み合わせによる結合を表示する印刷層Gを含む。
【0108】
[衛生薄葉紙製品]
図4の(a)に示される例において、衛生薄葉紙製品2は、積層状衛生薄葉紙製品であり、具体的には、ポップアップ式に交互に折り畳まれた複数のハンドタオルシートの積層体である。本例において、包装体1は、切り開いた際にハンドタオルシートをポップアップ式に引き出すための開口部となるミシン目(不図示)を、例えば、図4の(a)において包装体1の底面となる面に、例えば、包装体1の封止部12Sに沿ったY方向に延びるように、有していてもよい。なお、本実施形態に適用可能な衛生薄葉紙製品は、これに限定されず、第1の実施形態で説明した任意の衛生薄葉紙製品を適用することができる。
【0109】
[包装基材]
図3の(a)を参照して、第2の実施形態に係る包装基材10の層構成は、第1の実施形態に包装基材10の層構成と同様であり、第1の面101と第2の面102とを有する紙基材100と、紙基材100の第1の面101の一面全体を覆うヒートシール層110Hと、紙基材100とヒートシール層110Hとの間の印刷層Gと、を含む。第1の実施形態のヒートシール層110Hは透明であることを必須とするが、第2の実施形態のヒートシール層110Hは、透明であっても不透明であってもよい。
【0110】
図4の(a)に示される包装体1の封止部12(12S、12T、12B)では、紙基材100は、ヒートシール層110Hを介するヒートシール(熱融着)により接合されている。
【0111】
[包装形式]
第1の実施形態では、包装基材10は、紙基材100の第1の面101が包装体1の外面側となり、紙基材100の第2の面102が包装体1の内側となるように衛生薄葉紙製品2を包装していたが、これに対して、第2の実施形態では、包装基材10は、紙基材100の第1の面101が包装体1の内側となり、紙基材100の第2の面102が包装体1の外面側となるように衛生薄葉紙製品2を包装していることを特徴とする。
【0112】
そのため、図4の(b)の断面図に示されるように、本実施形態に係る包装体1において、印刷層Gは、紙基材100よりも包装体1の内側に位置することとなる。したがって、本実施形態では、包装体1の外観において印刷層Gを光学的に認識可能とするように、紙基材100は透明であることを特徴とする。
【0113】
[紙基材]
紙基材100には、例えばグラシン紙やパーチメント紙のような透明な紙を適用することができる。
【0114】
紙基材100の透明度が高いほど、包装体1の外観において、印刷層Gの印刷を明瞭に認識し得る。紙基材100の透明度が低い場合、包装体1の外観において、印刷層Gの印刷に、すりガラスを透かして見るような独特の風合いを付与し得る。
【0115】
印刷層Gの視認性の観点からは、本実施形態に好適に適用される透明な紙の、ISO5-2に準じて測定される透明度は、65%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは78%以上である。
【0116】
一方、図4の(b)の断面図に示されるように、本実施形態に係る包装体1において、印刷層Gは、ヒートシール層110Hよりも包装体1の外面側に位置することとなる。したがって、本実施形態では、ヒートシール層110Hは、印刷層Gよりも包装体1の内側に位置しているので、包装体1の外観において、ヒートシール層110Hが印刷層Gを被覆することによる印刷層Gの光学的な認識可能性への影響がない。そのため、上述したように、本実施形態において、ヒートシール層110Hは、透明であっても不透明であってもよい。
【0117】
ヒートシール層110Hが透明である本実施形態の1つの態様では、包装体1の外観において、非封止部の領域であって、特には印刷層Gが設けられていない非印刷領域nGでは、紙基材100およびヒートシール層110Hを通して、包装体1に包装されている衛生薄葉紙製品2を容易に透かし見て判別することができる(内部可視性がある)。例えば、衛生薄葉紙製品2の種類、数量、色や模様、形状(例えばエンボスの有無)等を、包装体1の外側から確認することができる(図4の(a)参照)。
【0118】
このような内部可視性を提供するために、ISO5-2に準じて測定される包装基材10の透明度は、好ましくは65%以上であり、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは75%以上である。また、かかる透明な紙を紙基材100として含む包装基材10の透明度は、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは73%以上である。
【0119】
[印刷層]
上述のように、本実施形態に係る包装体1において、印刷層Gは、紙基材100よりも包装体1の内側に位置することとなる(図4の(b)参照)。そのため、本実施形態では、印刷層Gの装飾のためおよび/または識別性を付与するための文字、記号、図形、模様、またはこれらの任意の組み合わせによる結合が、包装体1の外観において意図する態様で表示されるように、向きを反転させて、紙基材100の第1の面101上に印刷形成される。
【0120】
[包装体の製造方法]
本実施形態に係る包装体1の包装形式としては、ピロー包装、ガゼット包装として知られる包装形式を例示することができる。
【0121】
ピロー包装とは、シート状の包装基材10の1つの面に載置された被包装物(衛生薄葉紙製品2)を、筒状に包むように、包装基材10をその幅方向の両側端部において内面同士で重ね合わせ、この重ね合わせた部分をヒートシール等すること(すなわち、合掌貼り)により円筒状に形成し、袋の長さ(図4の(a)における包装体1のY方向の長さに相当する長さ)に合わせて上下端部(長さ方向の両端部)を横一文字にヒートシール等で封止する(すなわち、合掌貼り封止する)と共に、この封止された部分において包装体1を1つずつ(一袋ごと)にカットした包装形式である。変形例として、あらかじめ所定サイズの矩形のシート状包装基材10を準備して、包装体1を1つずつ個別に製造するものであってもよい。ピロー包装は、既知の装置を利用して行うことができる。既知の装置の例には、折り畳み・封止切断装置などが挙げられる。
【0122】
ガゼット包装とは、シート状の包装基材10の1つの面に載置された被包装物(衛生薄葉紙製品2)を、筒状に包むように、包装基材10をその幅方向の両端部において内面同士で重ね合わせ、この重ね合わせた部分をヒートシール等すること(すなわち、合掌貼り)により円筒状に形成し、袋の長さに合わせて上下端部(長さ方向の両端部)を織り込んで横一文字にヒートシール等で封止する(すなわち、合掌貼り封止する)と共に、この封止された部分において一袋ごとにカットした包装形式である。変形例として、あらかじめ所定サイズの矩形のシート状包装基材10を準備して、包装体1を1袋ずつ個別に製造してもよい。ガセット包装は、既知の装置を利用して行うことができる。既知の装置の例には、折り畳み・封止切断装置などが挙げられる。
【0123】
図4に示される例において、包装体1は、ピロー包装形式により製造されており、例えば、以下に示す工程を経て製造することができる。
【0124】
(工程1) 紙基材100の第1の面101に印刷層Gが印刷形成され、および包装体1を封止するためのヒートシール剤が、印刷層Gを覆うように、包装基材10の紙基材100の第1の面101の一面全体に付与されてヒートシール層110Hが形成された包装基材10を、連続シートの形態で搬送方向上流から搬送する工程。
【0125】
(工程2) 包装基材10の紙基材100の第1の面101上に、被包装物である積層状衛生薄葉紙製品2を、その長手方向が、包装基材10の搬送方向(すなわち、包装基材10のMD方向)と一致するように、配置する工程。
【0126】
(工程3) 包装基材10で、紙基材100の第2の面102が外面となるように被包装物2を巻き込み、包装基材10の両側端部(すなわち、包装基材10のCD方向の両端部)を、紙基材100の第1の面101同士が対接するように重ね合わせ、重ね合わされた部分にヒートシール処理を施して、筒状に包装する工程(図4の(b)参照)。
【0127】
この工程3により、包装基材10の両側端部は、紙基材100の第1の面101同士が対接するような合掌貼りにより、第1の面101に設けられたヒートシール層110Hを介して接合されて、封止される(図4の(c)の封止部12S参照)。
【0128】
(工程4) 次いで、工程3により形成された筒状の包装において、被包装物2の周面からはみ出た包装基材10の部分を、搬送方向における包装体1の所望の長さ(図4の(a)に示される完成した包装体1におけるY方向の長さに相当する)に合わせて、両端部(上端となる部分および下端となる部分)をそれぞれ織り込んで、搬送方向と直交する方向(包装基材10のCD方向)に沿って横一文字にヒートシールで接合するとともに切断して、被包装物2を包封した包装体1を形成する工程。
【0129】
この工程4により、包装基材10の両端部は、図4の(a)において封止部12(12T,12B)として示されるように、主に紙基材100の第1の面101同士が対接するように、紙基材100の第1の面101に設けられたヒートシール層110Hを介して接合されて、封止される。
【0130】
以上の製造工程により、図4の(a)に示されるような本実施形態に係る包装体1を製造することができる。ヒートシール層110Hを包装体1の内側に備える本実施形態においては、封止のために、合掌貼り封止を行うことができる。その結果、包装体1の封止部12は、包装基材10の両側端部が紙基材100の第1の面101同士が対接するように重ね合わされて接合される封止部12S(第1の封止部)と、包装基材10の上下端部のそれぞれが主に第1の面101同士が対接するように重ね合わされて接合される封止部12T,12B(第2の封止部)と、を含む。
【0131】
なお、以上に例示した製造工程では包装体1の封止と共に個別切り離しのための切断を行ったが、封止と切断を必ずしも同時に行う必要はなく、切断を、封止の前または封止の後に別々に行ってもよい。例えば、上記の例では、工程1において包装基材10を長尺の連続シートの形態で準備し、その後の工程で、被包装物2を配置した後に、包装基材10を切断したが、あらかじめ平面視において所定サイズの矩形に切断された包装基材10を準備しておき、その後の切断工程を必要とすることなく、包装体1を1つずつ個別に形成してもよい。
【0132】
以上に例示した製造工程では、包装基材10のMD方向が包装体1の長さ方向(図中のY方向)と一致し、包装基材10のCD方向が被包装物2を巻き込む包装体1の周方向と一致するようにしたが、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、包装基材10のCD方向が包装体1の長さ方向と一致し、包装基材10のMD方向が被包装物2を巻き込む包装体1の周方向と一致するようにした構成も、本発明の実施形態の範囲である。
【0133】
包装基材10に含まれる紙基材100は、概して、製造方法に起因するパルプ繊維の配向により、MD方向においてCD方向よりも高い紙力(機械的強度)を示す。そのため、紙基材100を含む包装基材10も同様に、MD方向においてCD方向よりも高い紙力(機械的強度)を示す。
【0134】
包装体1を製造する際の折り曲げに対する包装基材10の強度の観点、および包装体1を持ち運ぶ際の包装体1の姿勢や重さによる破けやすさに対する包装基材10の強度の観点等から、包装基材10の所望の紙力が決定されてもよい。
【0135】
包装体1を製造する際の折り曲げに対する包装基材10の強度の観点からは、例えば、包装基材10のCD方向が被包装物2を巻き込む包装体1の周方向と一致するように包装基材10を用いる構成においては、CD方向のISO耐折回数が50回以上1500回以下である、あるいは、CD方向の曲げこわさが8μN・m以上145μN・m以下である包装基材10を用いることが好ましい。
【0136】
また、例えば、包装基材10のMD方向が被包装物2を巻き込む包装体1の周方向と一致するように包装基材10を用いる構成においては、MD方向のISO耐折回数が200回以上1200回以下である、あるいは、MD方向の曲げこわさが20μN・m以上330μN・m以下である包装基材10を用いることが好ましい。
【0137】
上述のような耐折回数、あるいは曲げこわさの範囲であれば、包装体1の製造工程における折り曲げによって包装基材10が破れたり破れやすくなったりする現象を抑え得る。
【0138】
[耐折回数]
包装基材10のMD方向およびCD方向のISO耐折回数は、JIS P 8115の耐折強さ試験方法に準拠して測定・算出することができる。
【0139】
[曲げこわさ]
包装基材10のMD方向およびCD方向の曲げこわさは、ISO 2493に記載された方法に準拠して、例えばL&W ベンディングテスター(Lorentzen& Wettre社製)のようなベンディングテスターを用いて測定することができる。曲げこわさ(μN・m)は、包装基材10の幅38mm、長さ100mmの試験片について、曲げ角度を15度、曲げ長さ(試料台のスパン)を10mmとしたときの測定値を曲げ抵抗(荷重)とし、次の算出式(I)によって求められる。
【0140】
曲げこわさ(μN・m)=60×曲げ抵抗(mN)×曲げ長10(mm)÷(π×曲げ角度15(°)×サンプル幅38(mm)) ・・・(I)
【0141】
包装基材10のMD方向を試験片の長さ方向とした際の曲げこわさが、包装基材10のMD方向の曲げこわさであり、包装基材10のCD方向を試験片の長さ方向とした際の曲げこわさが、包装基材10のCD方向の曲げこわさである。長さ100mmの試験片を採取できない場合は、試験片の長さを短くすることができる。
【0142】
[第2の実施形態の作用効果]
本発明の第2の実施形態は、衛生薄葉紙製品2を包装基材10で包装した包装体1であって、包装基材10は、第1の面101と第2の面102とを有する透明な紙基材100と、紙基材100の第1の面101全体を覆うヒートシール層110Hと、紙基材100とヒートシール層110Hとの間の印刷層Gと、を含み、包装基材10は、紙基材100の第2の面102が包装体1の外面側となるように、衛生薄葉紙製品2を包装し、包装体1は、ヒートシール層110Hを介して紙基材100が接合された封止部12(12S、12T、12B)と、非封止部と、を有し、包装体1の外観において、非封止部の領域の印刷層Gは、透明な紙基材100を通して光学的に認識可能であることを特徴とする。
【0143】
第2の実施形態において、印刷層Gは、紙基材100と、紙基材100の第1の面101全体を覆うヒートシール層110Hと、の間に位置しており、紙基材100およびヒートシール層110Hによって両面から挟まれて被覆される。また、印刷層Gは、包装体1において、紙基材100よりも包装体1の内面側に位置する。
【0144】
そのため、包装基材10で衛生薄葉紙2を包装する包装体1の製造工程や、包装体1の運搬時等において、手や装置などで包装基材10を加工したり包装体1を持ち運んだりした際や、複数の包装体1同士がぶつかり合った際などの、包装基材10に対する包装体1の外側からの外的刺激に対しては、印刷層Gは、紙基材100によって保護されて、印刷層Gを形成するインクの擦れや剥がれが生じにくい。
【0145】
また、包装体1の内容物である衛生薄葉紙製品2が包装基材10に接触した際などの、包装基材10に対する包装体1の内側からの外的刺激に対しては、印刷層Gは、ヒートシール層110Hによって保護されて、印刷層Gを形成するインクの擦れや剥がれが防止される。
【0146】
また、上述の積層構成内で、印刷層Gを形成するインクの剥がれ等が生じた場合であっても、印刷層Gを両面から挟んで被覆する紙基材100およびヒートシール層110Hの存在により、剥がれたインクの印刷層Gの所定位置からの離脱(剥がれ落ち)が防止され得る。
【0147】
したがって、本実施形態によれば、従来技術のような印刷層用のコート層を別途設けることなく、それに代わるヒートシール層110Hによって、簡単な構成で低コストに、外的刺激に対する包装基材10の印刷層Gの保護が可能であり、包装体1に施された印刷表示の劣化が防止されるという格別な効果を奏し得る。
【0148】
また、本発明に係る包装基材10において、ヒートシール層110Hは、紙基材100の第1の面101全体を覆っており、本実施形態において、この第1の面101は、包装体1の内側に面している。この構成によると、例えばピロー包装やガゼット包装のような包装形式により、ヒートシール層110Hを介した紙基材100の接合により包装体1を封止することが可能となる。そのため、ヒートシール層110Hとは別の封止のための接着層を別途設けずともよく、あるいはまた、封止のための付加的な接着剤の使用量を削減することができる。これにより、封止に関しても構成を簡略化することができ、包装体1の製造のための工程の削減や原材料の種類や量の低減につながって、コストを低減させることができる。
【0149】
さらに、ヒートシール層110Hは、印刷層Gよりも包装体1の内側に位置しているので、包装体1の外観において、ヒートシール層110Hが印刷層Gを被覆することによる印刷層Gの光学的な認識可能性への影響がない。そのため、本実施形態において、ヒートシール層110Hは、透明であっても不透明であってもよく、材料の選択の幅が広がる。
【0150】
ヒートシール層110Hが透明である1つの態様では、包装体1の外観において、包装体1の非封止部の領域であって、印刷層Gが存在しない領域において、透明な紙基材100と透明なヒートシール層110Hとを通して、包装体1の被包装物である衛生薄葉紙製品2を透かし見ることができる。これにより衛生薄葉紙製品2の種類、色や模様、形状(例えばエンボスの有無やパターン)等を、包装体1を開封することなく包装体1の外側から確認することができる。
【0151】
ヒートシール層110Hが不透明である1つの態様では、包装体1の外観において、不透明なヒートシール層110Hを印刷層Gの背景領域とすることができる。すなわち、印刷層において背景領域となる層をインクによって別途印刷形成することなく、それに代わるヒートシール層110Hによって、簡単な構成で低コストに、印刷層Gの明瞭な表示を可能にし得るという格別な効果を奏し得る。また、包装体1の外観において、包装体1の非封止部の領域において、透明な紙基材100を通して、包装体1の被包装物である衛生薄葉紙製品2が透けて見えてしまうことを、防止し得る。
【0152】
紙基材100に、グラシン紙を適用した1つの態様では、グラシン紙は高い透気度を有するため、包装基材10に包装されている被包装物である衛生薄葉紙製品2が、外部の湿気の影響を受けにくくなる。
【0153】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態は、第1の実施形態および第2の実施形態の変形例である。特段の記載のない限り、第1の実施形態および第2の実施形態に適用可能な構成およびその説明は、本実施形態に適用可能である。
【0154】
端的には、第3の実施形態は、包装基材10が、紙基材100の両面にヒートシール層を有することを特徴とし、第1の態様と第2の態様とを有する。
【0155】
[第3の実施形態の第1の態様]
本実施形態の第1の態様は、第1の実施形態の変形例である。すなわち、第3の実施形態の第1の態様は、衛生薄葉紙製品を包装基材で包装した包装体であって、包装基材は、第1の面と第2の面とを有する紙基材と、紙基材の第1の面全体を覆う透明な第1のヒートシール層と、紙基材と第1のヒートシール層との間の印刷層と、紙基材の第2の面全体を覆う第2のヒートシール層と、を含み、包装基材は、紙基材の第1の面が包装体の外面側となるように、衛生薄葉紙製品を包装し、包装体は、第1のヒートシール層および第2のヒートシール層のうちの少なくとも一方を介して紙基材が接合された封止部と、非封止部と、を有し、包装体の外観において、非封止部の領域の印刷層は、第1のヒートシール層を通して光学的に認識可能であることを特徴とする衛生薄葉紙製品の包装体である。
【0156】
[第3の実施形態の第2の態様]
本実施形態の第2の態様は、第2の実施形態の変形例である。すなわち、第3の実施形態の第2の態様は、衛生薄葉紙製品を包装基材で包装した包装体であって、包装基材は、第1の面と第2の面とを有する透明な紙基材と、紙基材の第1の面全体を覆う第1のヒートシール層と、紙基材と第1のヒートシール層との間の印刷層と、紙基材の第2の面全体を覆う透明な第2のヒートシール層と、を含み、包装基材は、紙基材の第2の面が包装体の外面側となるように、衛生薄葉紙製品を包装し、包装体は、第1のヒートシール層および第2のヒートシール層のうちの少なくとも一方を介して紙基材が接合された封止部と、非封止部と、を有し、包装体の外観において、非封止部の領域の印刷層は、第2のヒートシール層および紙基材を通して光学的に認識可能であることを特徴とする衛生薄葉紙製品の包装体である。
【0157】
[包装基材]
図3の(b)は、第3の実施形態に係る包装基材10の概略的断面図である。図3の(a)に示す第1および第2の実施形態に係る包装基材10の層構成と比較して、本実施形態は、紙基材100の第2の面102にもヒートシール層120Hを有する点が異なる。
【0158】
すなわち、図3の(b)を参照して、第3の実施形態に係る包装基材10は、第1の面101と第2の面102とを有する紙基材100と、紙基材100の第1の面101全体を覆う第1のヒートシール層110Hと、紙基材100と第1のヒートシール層110Hとの間の印刷層Gと、紙基材100の第2の面102全体を覆う第2のヒートシール層120Hと、を有する。
【0159】
[第2のヒートシール層]
第2のヒートシール層120Hに適用可能なヒートシール層の材料、ヒートシール層の形成方法、ヒートシール層の厚さ、透明・不透明の別は、第1のヒートシール層110Hに適用可能なヒートシール層の材料、ヒートシール層の形成方法、ヒートシール層の厚さ、および透明・不透明の別と同様であり、ここでの記載を省略する。
【0160】
[包装形式]
本実施形態では、紙基材100は、その両面にヒートシール層110H、120Hを有するため、適用可能な包装形式の自由度が高い。すなわち、封止には、重ね貼り封止および合掌貼り封止のいずれをも採用することができ、包装体1の包装形式として、上述したキャラメル包装方式、ピロー包装方式、ガゼット包装方式、およびそれらの特徴部の任意の組み合わせを採用することができる。したがって、第3の実施形態に係る包装体1の封止部12は、第1のヒートシール層110Hを介した封止部、第1のヒートシール層110Hと第2のヒートシール層120Hを介した封止部、および第2のヒートシール層120Hを介した封止部を含み得る。
【0161】
図5に、第1の実施形態の変形例である本実施形態の第1の態様に係る包装体1の1つの構成例を示す。
【0162】
図5の(a)は、本発明の第3の実施形態の第1の態様に係る、衛生薄葉紙製品の包装体の概略斜視図である。図5の(b)は、図5の(a)に示される包装体1をVb-Vb線に沿って取った概略断面図であり、被包装物である衛生薄葉紙製品2の図示は省略されている。また、図5の(c)は、図5の(b)において符号Vcで示される部分の概略拡大図である。図5の(d)は、図5の(a)に示される包装体1をVd-Vd線に沿って取った概略断面図であり、図5の(e)は、図5の(d)において符号Veで示される部分の概略拡大図である。
【0163】
[包装体]
図5の(a)を参照して、第3の実施形態の第1の態様において、包装体1は、衛生薄葉紙製品2と、衛生薄葉紙製品2を包装する包装基材10と、を含む。包装体1は、包装基材10の接合により封止された封止部12(12S,12T,12B)と、非封止部と、を有する。本実施形態において、包装体1は、包装体1の外観において光学的に認識可能な、装飾のためおよび/または識別性を付与するための文字、記号、図形、模様またはこれらの任意の組み合わせによる結合を表示する印刷層Gを含む。
【0164】
[衛生薄葉紙製品]
図5の(a)に示される例において、衛生薄葉紙製品2は、ロール状衛生薄葉紙製品であり、具体的には、計8個のトイレットロールが、トイレットロールの軸方向が包装体の高さ方向(矢印Yで示される長さ方向)と一致するように、4個×2段に積まれている。なお、本実施形態に適用可能な衛生薄葉紙製品は、これに限定されず、第1の実施形態で説明した任意の衛生薄葉紙製品を適用することができる。
【0165】
[包装形態]
図5の(b)および(c)を参照して、本例において、包装基材10は、4枚のシートを貼り合わせて構成されている。
【0166】
包装基材10の各シートは、紙基材100の第1の面101が包装体1の外面側となるように配置され、衛生薄葉紙製品2を取り囲んで包装している。図5の(a)および(c)に示されるように、包装体1の封止部12Sでは、隣接する包装基材10の各シートは、包装体1の内面側となる紙基材100の第2面102同士が対接するように、ヒートシール層120Hを介して接合されている(すなわち、合掌貼り封止されている)。
【0167】
また、図5の(a)および(d)を参照して、包装体1の封止部12Tでは、4枚のシートは、対向する1対のシートが折り畳まれて、板状となるように接合されている。本例では、板状部分の中央には、一般的な成人の手による把持を可能とするような寸法の穴が形成されており、板状部分は持ち手として機能する。なお、このような持ち手用の穴は、本発明において必須の構成要件ではない。
【0168】
図5の(e)を参照して、封止部12Tでは、板状部分の両面となる2枚の外側の紙基材100のシートと、それらの間に挟まれる中央の紙基材100のシートとが、ヒートシール層120Hを介して接合されている(すなわち、合掌貼り封止されている)。また、中央の紙基材100のシートは、折り畳まれて接することとなった部分において、ヒートシール層110Hを介して接合されている(すなわち、合掌貼り封止されている)。
【0169】
これにより、板状部分を構成する紙基材100のシートは、全体として、ヒートシール層110Hおよびヒートシール層120Hの両方を介して接合されており、封止部12Tは、分離することなく一体的な板状となっている。
【0170】
[第3の実施形態の作用効果]
第3の実施形態の第1の態様においては、上述した第1の実施形態の作用効果に加えて、さらに、包装基材10が紙基材100の両面にヒートシール層110H、120Hを有することにより、ヒートシール層110Hおよび120Hの一方または両方を介した封止が可能となり、適用可能な包装形式の幅が広がる。
【0171】
また、不図示の第3の実施形態の第2の態様においても同様であり、上述した第2の実施形態の作用効果に加えて、さらに、包装基材10が紙基材100の両面にヒートシール層110H、120Hを有することにより、ヒートシール層110Hおよび120Hの一方または両方を介したヒートシールによる封止が可能となり、適用可能な包装形式の幅が広がる。
【0172】
より詳細には、本明細書において、包装体1の包装形式の例として、重ね貼り封止を伴うキャラメル包装形式、合掌貼り封止を伴うピロー包装形式およびガゼット包装形式を挙げてきたが、第3の実施形態においては、典型的なこれらの包装形式に限定されず、知られている他の包装形式や、それらの包装形式の特徴部分を任意に組み合わせた包装形式を適用することができるという格別な効果を奏し得る。
【0173】
例えば、包装体1の封止部12は、紙基材100の第1の面101と第2の面102とがヒートシール層110Hおよびヒートシール層120Hの両方を介して接合される重ね貼り封止であってもよい。また、包装体1の封止部12は、紙基材100の第1の面101同士がヒートシール層110H同士を介して接合される合掌貼り封止であってもよい。また、包装体1の封止部12は、紙基材100の第2の面102同士がヒートシール層120H同士を介して接合される合掌貼り封止であってもよい。
【0174】
本実施形態によれば、封止部12において、対接するように接合される紙基材100の2つの面は、いずれも、ヒートシール層110Hまたはヒートシール層120Hを備える。したがって、本実施形態によれば、2つのヒートシール層を介した接合が可能となり、ヒートシールによる接着に寄与し得るヒートシール剤の量が確保され、包装体1を封止するために十分なヒートシール性(接着性)が得られやすくなる。
【0175】
<第4の実施形態>
図6は、本発明の第4の実施形態に係る包装体1を説明する図である。特段の記載のない限り、上述の実施形態に適用可能な構成および上述の説明は、本実施形態に適用可能である。
【0176】
図6を参照して、第4の実施形態に係る包装体1は、包装体本体1bと、包装体本体1bの外面に両端部が接合された帯状の持ち手20と、を含む。持ち手20は、持ち手紙基材200と、持ち手紙基材200上の持ち手ヒートシール層210Hと、を含み、持ち手20は、持ち手ヒートシール層210Hを介して、包装体本体1bの外面に接合されることを特徴とする。
【0177】
[包装体本体]
本実施形態において、包装体本体1bとして、上述してきた各実施形態に係る包装体1を適用可能である。したがって、以下、本明細書において、包装体本体1bという用語と、包装体1という用語を同じ意味で使用する場合がある。
【0178】
図6の例において、包装体本体1bは、第1の実施形態で説明したキャラメル方式を採用した包装体1である。図6の(a)および(c)を参照して、包装体本体1bの包装基材10は、紙基材100と、紙基材100の一面全体を覆うヒートシール層110Hと、紙基材100とヒートシール層110Hとの間の印刷層Gを含む。
【0179】
包装体本体1bに包装される衛生薄葉紙製品2は、本例では、ティシュペーパーを積層した積層体を箱に収容したティシュボックス(箱入り積層状衛生薄葉紙製品)であり、包装体1には、5つのティシュボックスが積み重ねられ一纏めにして包装されているが、本実施形態においてはこれに限定されない。
【0180】
[持ち手]
図6の(c)に示されるように、持ち手20は、持ち手紙基材200と、持ち手紙基材200上の持ち手ヒートシール層210Hとを含む。図6の(a)および(b)に示されるように、持ち手20は、その両端部が包装体本体1bの外面に接合され、持ち手20の中央部は、手で把持可能であるように、包装体本体1bの外面に接合されずにフリーの状態となっている。
【0181】
本例では、包装体本体1bは、第1の実施形態に係る包装体1であり、外面に、第1のヒートシール層110Hを有する。そのため、持ち手紙基材200は、接合部22において、包装体1の紙基材100と、持ち手紙基材200上の持ち手ヒートシール層210Hおよび包装体1の第1の面101上のヒートシール層110Hを介して接合されている。
【0182】
本実施形態において、持ち手ヒートシール層210Hは、接合部22となる領域に設けられている限りは、持ち手紙基材200の全面ではなく、持ち手紙基材200の一部のみに設けられていてもよい。
【0183】
持ち手ヒートシール層210Hが持ち手紙基材200の全面に設けられている場合、包装体1の製造工程において包装体本体1bに対する持ち手20の取り付けにあたって位置ずれが生じても、接合しようとする部分に持ち手ヒートシール層210Hが存在しないことによる接合の不具合が起きないという利点がある。また、持ち手ヒートシール層210Hが持ち手紙基材200の全面に設けられていることにより、持ち手紙基材200の一部のみに設けられている場合と比べて、持ち手20に、強度の補強効果が得られる。
【0184】
持ち手ヒートシール層210Hが持ち手紙基材200の一部のみに設けられている場合、全面に設けられている場合と比べて、持ち手20における持ち手ヒートシール層210Hの割合が低くなり、持ち手紙基材200の割合が高くなる。そのため、持ち手20におけるプラスチックの使用削減効果が高まり得る。
【0185】
[持ち手ヒートシール層]
持ち手ヒートシール層210Hに適用可能なヒートシール層の材料、ヒートシール層の形成方法、ヒートシール層の厚さは、第1のヒートシール層110Hに適用可能なヒートシール層の材料、ヒートシール層の形成方法、ヒートシール層の厚さと同様であり、ここでの記載を省略する。持ち手ヒートシール層210Hは、透明であっても不透明であってもよい。持ち手紙基材200と持ち手ヒートシール層210Hとの間に印刷層を設けてもよく、その場合は、持ち手ヒートシール層210Hおよび持ち手紙基材200のうちの少なくとも一方を透明とする。
【0186】
[持ち手紙基材]
持ち手紙基材200には、包装体1の包装基材10の紙基材100と同様に、種々の紙基材を用いることができる。
【0187】
持ち手紙基材200には、片艶紙の一種であり白色度の高い純白紙を用いることが好ましい。持ち手紙基材200に純白紙を用いることにより、例えば次のような利点がある。
(1)持ち手紙基材200の紙力が強いため、持ち手20が破れにくい。
(2)持ち手紙基材200の艶面は、光沢があり、白色度も高いため、艶面に印刷を施した場合に、発色に優れた見栄えのよい印刷が得られる。
(3)持ち手紙基材200の非艶面は表面凹凸が多いため、非艶面に持ち手ヒートシール層210Hを積層することにより、持ち手紙基材200の表面凹凸に持ち手ヒートシール層210Hを構成する材料が入り込んで嵌合状態となるアンカー効果が生じ、持ち手紙基材200と持ち手ヒートシール層210Hとの間に高い接着力が得られる。そのため、包装体1の持ち運び時等に持ち手20に引張力が掛かった場合に、持ち手紙基材200と持ち手ヒートシール層210Hとの間で剥離が生じることが防止される。
【0188】
[第4の実施形態の作用効果]
本実施形態の包装体1は、持ち手20を備える構成を有するところ、持ち手用の接着剤を別途用いることなく、それに代わる持ち手ヒートシール層210Hによって、簡単な構成で低コストに、持ち手20を包装体本体1bに取り付けることが可能であるという格別な効果を奏し得る。
【0189】
図6の例において、包装体本体1bは、第1の実施形態に係る包装体1であったが、本実施形態の包装体本体1bに適用可能な包装体1はこれに限定されず、上述のいずれの実施形態に係る包装体1も適用可能である。すなわち、包装体本体1bの外面にヒートシール層を有さない態様も、本実施形態の範囲である。
【0190】
包装体本体1bが、第1の実施形態および第3の実施形態の第1および第2の態様のように、外面にヒートシール層110Hまたは120Hを有する包装体1である場合、持ち手20と包装体本体1bとの接合は、持ち手20のヒートシール層210Hだけでなく、それぞれのヒートシール層(210Hと、110Hまたは120Hと)を介して行われる。そのため、2つのヒートシール層を介した接合が可能となり、ヒートシールによる接着に寄与し得るヒートシール剤の量が確保され、持ち手20と包装体本体1bとを接合するためのより強固なヒートシール性(接着性)が得られやすくなる。
【0191】
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、上述の実施形態の好適な態様である。特段の記載のない限り、上述の実施形態に適用可能な構成および上述の説明は、本実施形態に適用可能である。
【0192】
本実施形態では、印刷層Gは、バイオマスインクを含むインクにより印刷(塗布)形成されていることを特徴とする。本実施形態に適用可能なバイオマスインクの例は、第1の実施形態において上述した通りである。
【0193】
詳細には、本実施形態において、印刷層Gの印刷には、インク成分中の樹脂成分の原料の一部にバイオマス由来成分を使用したインクが用いられる。バイオマス由来成分を使用した樹脂成分は、好ましくは、インク成分中10質量%(乾燥重量比)以上の量で含有される。すなわち、本実施形態において、印刷層Gは、植物由来の原料を使用した成分を固形分中に10質量%以上の量で含む。
【0194】
[第5の実施形態の作用効果]
本発明の実施形態に係る衛生薄葉紙製品の包装体1は、従来のプラスチックフィルムに代えて紙基材100を包装基材に含むため、包装体1の開封後における包装基材10の廃棄焼却時にダイオキシンの発生が抑えられて、従来の衛生薄葉紙製品の包装体と比べて環境負荷が低い。
【0195】
それに加えて、印刷層Gの印刷にバイオマスインクを使用する第5の実施形態の態様においては、石油資源の消費をさらに低減することが可能である。包装体1の開封後における包装基材10の廃棄焼却時にCOが発生したとしても、紙基材100およびバイオマスインクの原料の植物が成長する過程でCOを吸収するため、地球温暖化の原因となる温室効果ガスとも呼ばれるCO量が全体としては増加しない「カーボンニュートラル」が実現可能となる。したがって、バイオマスインクを用いる本態様においては、環境負荷のさらなる低減が可能となる。
【0196】
<その他>
1.印刷層の層構成
本発明の実施形態において、印刷層Gは、装飾のためおよび/または識別性を付与するための文字、記号、図形、模様、またはこれらの任意の組み合わせによる結合を表示する第1の印刷層と、その背景となる色や模様を呈する背景領域を表示する第2の印刷層と、を含む多層構成であってもよい。第1の印刷層および第2の印刷層は、第1の印刷層が第2の印刷層よりも包装体1の外面側となる積層順で、かつ、文字、記号、図形、模様、またはこれらの任意の組み合わせによる結合が包装体1の外観において意図する態様(向き)で表示されるように、紙基材100の第1の面101上に印刷形成される。
【0197】
かかる構成を実現するために、第1の実施形態においては、紙基材100の第1の面101上に、まず第2の印刷層、次いで第1の印刷層の順で、印刷形成される。第2の実施形態においては、第1の実施形態とは逆に、紙基材100の第1の面101上に、まず第1の印刷層、次いで第2の印刷層の順で、印刷形成される。
【0198】
第2の印刷層を、白色を呈する白色領域としてもよい。この態様によれば、第1の印刷層に印刷形成された装飾のためおよび/または識別性を付与するための文字、記号、図形、模様、またはこれらの任意の組み合わせによる結合が、第2の印刷層に印刷形成された白色の背景により、高いコントラストで明瞭に表示され、印刷層Gの優れた光学読み取り適性が得られる。この態様は、例えば、第1の印刷層が、光学読み取り可能な情報がコードされた一次元コードおよび二次元コードのうちの少なくとも一方のコードの表示を含む場合等に、好ましく適用することができる。
【0199】
2.包装基材の層構成
本発明の1つの実施形態では、包装基材10には、印刷層G、およびヒートシール層110H、120Hに加えて、他の層が設けられていてもよい。他の層の例としては、例えば、水蒸気バリア層、酸素バリア層、遮光層のような機能性を有する層が挙げられる。これら他の層は、必要に応じて、例えば、包装体1の外面側となる包装基材10の面、包装体1の内面側となる包装基材10の面、包装基材10とヒートシール層110H、120Hとの間、ヒートシール層の接着性(ヒートシール性)を損なわないような態様でヒートシール層の上面、等に設けられていてもよい。他の層は、1層であってもよく、2以上の複数層であってもよい。
【0200】
また、ヒートシール層110Hおよび第2のヒートシール層120Hは、それぞれ、2以上の複数のヒートシール層が積層された複数層構成であってもよい。複数層構成によれば、ヒートシール層の厚さを厚くすることができ、ヒートシールに寄与し得るヒートシール剤の量を増やすことができる。
【0201】
本発明は、上述した実施形態や、随所に述べた変形例に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適宜の変更や変形が可能である。
【符号の説明】
【0202】
1 包装体
1b 包装体本体
2 衛生薄葉紙製品(被包装物、内容物)
10 包装基材
12(12S、12T、12B) 封止部
20 持ち手
22 接合部
100 紙基材
101 紙基材の第1の面(印刷面)
102 紙基材の第2の面
110H、120H ヒートシール層
200 持ち手紙基材
210H 持ち手ヒートシール層
UFL 山折り線
DFL 谷折り線
図1
図2
図3
図4
図5
図6