(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118445
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】薄肉円筒スリーブ及びトルクセンサ
(51)【国際特許分類】
F16D 1/06 20060101AFI20230818BHJP
G01L 3/10 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
F16D1/06 100
G01L3/10 303A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021401
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】茂山 智史
(72)【発明者】
【氏名】重田 泰志
(57)【要約】
【課題】周方向の張力が作用した場合における接合辺での接合を維持すること。
【解決手段】薄板38が円筒形状に曲げられることにより形成されると共に周方向における薄板38の両側の端部を接合辺40として接合辺40同士を複数の溶接部50で溶接することにより接合し、スタブシャフト87が圧入される薄肉円筒スリーブ30であって、薄板38の両側の接合辺40に現れる嵌め合わせの境界の形状には、軸心方向において折り返されることにより境界の向きが反対方向になる部分である折り返し部45をそれぞれの接合辺40に有し、一方の接合辺40の折り返し部45から周方向の位置にあり、かつ一方の接合辺40の一部分と、一方の接合辺40の折り返し部45との間に、他方の接合辺40の折り返し部45が位置して接合され、溶接部50は、薄肉円筒スリーブ30にスタブシャフト87が圧入された際に接合辺40において圧縮応力が発生する位置に位置する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板が円筒形状に曲げられることにより形成されると共に前記円筒の周方向における前記薄板の両側の端部を接合辺として前記接合辺同士を複数の溶接部で溶接することにより接合し、軸部材が圧入される薄肉円筒スリーブであって、
前記薄板の両側の前記接合辺に現れる嵌め合わせの境界の形状には、前記円筒の軸心方向において折り返されることにより前記境界の向きが反対方向になる部分である折り返し部をそれぞれの前記接合辺に有し、
一方の前記接合辺の前記折り返し部から前記周方向の位置にあり、かつ一方の前記接合辺の一部分と、一方の前記接合辺の前記折り返し部との間に、他方の前記接合辺の前記折り返し部が位置して接合され、
前記溶接部は、前記薄肉円筒スリーブに前記軸部材が圧入された際に前記接合辺において圧縮応力が発生する位置に位置する薄肉円筒スリーブ。
【請求項2】
前記溶接部は、前記折り返し部に位置する請求項1に記載の薄肉円筒スリーブ。
【請求項3】
前記折り返し部は、前記軸心方向に対する前記周方向への傾斜角度が45°以下となる部分を有する請求項1または2に記載の薄肉円筒スリーブ。
【請求項4】
互いに接合される前記接合辺は、凸部側接合辺と凹部側接合辺とからなり、
前記凸部側接合辺は、前記凹部側接合辺と接合する状態において前記凹部側接合辺に近付く方向に凸となる凸部を有し、
前記凹部側接合辺は、前記凸部側接合辺と接合する状態において前記凸部側接合辺から離れる方向に凹んで形成されると共に前記凸部側接合辺との接合時に前記凸部が入り込む凹部を有し、
前記凸部と前記凹部とは、前記凸部が前記凹部に入り込んだ状態で前記接合辺同士が離れる方向の力が作用した際に圧縮応力が発生する部分を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の薄肉円筒スリーブ。
【請求項5】
前記凸部は、前記凸部の付け根の位置での前記軸心方向における幅よりも前記軸心方向における幅が大きくなる部分を有して形成され、
前記凸部側接合辺は、前記凸部における、前記凸部の前記付け根の部分と、前記凸部の前記付け根の位置での前記軸心方向における幅よりも幅が大きくなって形成される部分との間に前記折り返し部が形成され、
前記凹部は、前記凹部の開口部の位置での前記軸心方向における幅よりも前記軸心方向における幅が大きくなる部分を有して形成され、
前記凹部側接合辺は、前記凹部における前記開口部と、前記開口部の位置での前記軸心方向における幅よりも幅が大きくなって形成される部分との間に前記折り返し部が形成される請求項4に記載の薄肉円筒スリーブ。
【請求項6】
回転トルクを伝達する軸部材と、
略円筒形の形状で形成されて前記軸部材が圧入される薄肉円筒スリーブと、
前記薄肉円筒スリーブの周囲に配置される検出部材と、
前記軸部材を中心とする周方向における前記検出部材の動きを検出する検出コイルのインダクタンスの変化に基づいて前記回転トルクを検出する演算素子と、
を備え、
前記薄肉円筒スリーブは、
薄板が円筒形状に曲げられることにより形成されると共に前記円筒の周方向における前記薄板の両側の端部を接合辺として前記接合辺同士が複数の溶接部で溶接されることにより接合され、
前記薄板の両側の前記接合辺に現れる嵌め合わせの境界の形状には、前記円筒の軸心方向において折り返されることにより前記境界の向きが反対方向になる部分である折り返し部をそれぞれの前記接合辺に有し、
一方の前記接合辺の前記折り返し部から前記周方向の位置にあり、かつ一方の前記接合辺の一部分と、一方の前記接合辺の前記折り返し部との間に、他方の前記接合辺の前記折り返し部が位置して接合され、
前記溶接部は、前記薄肉円筒スリーブに前記軸部材が圧入された際に前記接合辺において圧縮応力が発生する位置に位置するトルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薄肉円筒スリーブ及びトルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
回転体に加わるトルクを検出するトルクセンサは、回転体に取り付けられ、回転体に対して回転トルクが作用した際における回転体の回転方向の角度の変位を検出することにより、トルクを検出することが可能になっている。例えば、特許文献1に記載されたトルクセンサでは、検出回路による検出対象となるローターディスクが、円筒状のサポート構造であるスリーブによって軸部材に取り付けられている。これにより、トルクセンサは、回転体である軸部材の回転方向における角度の変位を、検出回路によってローターディスクを介して検出し、軸部材に作用するトルクを検出することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2383558号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、回転体である軸部材に取り付けるスリーブのような薄肉円筒スリーブを製造するための方法は、様々な方法が考えられるが、製造コストを抑えて薄肉円筒スリーブを製造するための一例として、略矩形の薄板を円筒状に丸め、突き合わせ部をレーザー溶接によって溶接することにより接合し、円筒状に形成する手法が考えられる。トルクセンサでは、このように形成した薄肉円筒スリーブに、軸部材を圧入することにより、軸部材における所望の位置に薄肉円筒スリーブを配置する。
【0005】
しかしながら、円筒状に丸めた薄板の突き合わせ部を溶接して接合することによって製造した場合、溶接部分の強度が低いと、薄肉円筒スリーブに軸部材を圧入した際に、圧入時に薄板円筒に作用する周方向の引張応力により、溶接部分が破断してしまう可能性がある。溶接部分が破断すると、薄肉円筒スリーブにおいて接合を行った部分が外れ、軸部材に薄肉円筒スリーブを固定することができなくなる。このため、溶接を行って薄肉円筒スリーブを製造する際における、薄板の両端に位置して互いに接合する辺である接合辺での接合の維持の観点で、改善の余地があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、周方向の張力が作用した場合における接合辺での接合を維持することのできる薄肉円筒スリーブ及びトルクセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の薄肉円筒スリーブは、薄板が円筒形状に曲げられることにより形成されると共に前記円筒の周方向における前記薄板の両側の端部を接合辺として前記接合辺同士を複数の溶接部で溶接することにより接合し、軸部材が圧入される薄肉円筒スリーブであって、前記薄板の両側の前記接合辺に現れる嵌め合わせの境界の形状には、前記円筒の軸心方向において折り返されることにより前記境界の向きが反対方向になる部分である折り返し部をそれぞれの前記接合辺に有し、一方の前記接合辺の前記折り返し部から前記周方向の位置にあり、かつ一方の前記接合辺の一部分と、一方の前記接合辺の前記折り返し部との間に、他方の前記接合辺の前記折り返し部が位置して接合され、前記溶接部は、前記薄肉円筒スリーブに前記軸部材が圧入された際に前記接合辺において圧縮応力が発生する位置に位置する。
【0008】
この構成によれば、溶接部は、薄肉円筒スリーブの接合辺同士を溶接する薄肉円筒スリーブに軸部材が圧入された際に、接合辺において圧縮応力が発生する位置に位置している。これにより、薄肉円筒スリーブに軸部材が圧入されることにより薄肉円筒スリーブに周方向の力が作用した場合でも、溶接部に引張応力が発生することを抑制でき、引張応力によって溶接部が破断することを抑制することができる。この結果、周方向の張力が作用した場合における接合辺での接合を維持することができる。
【0009】
望ましい形態として、前記溶接部は、前記折り返し部に位置する。
【0010】
この構成によれば、溶接部が折り返し部に位置することにより、接合辺同士が周方向に離れる方向への力が薄肉円筒スリーブに作用した場合には、溶接部には、圧縮応力が発生する。従って、薄肉円筒スリーブに軸部材が圧入されることにより薄肉円筒スリーブに周方向の力が作用した場合でも、溶接部が引張応力によって破断することを抑制することができる。この結果、周方向の張力が作用した場合における接合辺での接合を維持することができる。
【0011】
望ましい形態として、前記折り返し部は、前記軸心方向に対する前記周方向への傾斜角度が45°以下となる部分を有する。
【0012】
この構成によれば、薄肉円筒スリーブの軸心方向に対する周方向への折り返し部の傾斜角度が45°以下であるため、対向する折り返し部同士の間でせん断力し易くなることを抑制でき、折り返し部に位置する溶接部にせん断応力や引張応力が発生し易くなることを抑制できる。従って、薄肉円筒スリーブに軸部材が圧入されることにより薄肉円筒スリーブに周方向の力が作用した場合でも、溶接部がせん断応力や引張応力によって破断することを抑制することができる。この結果、周方向の張力が作用した場合における接合辺での接合を維持することができる。
【0013】
望ましい形態として、互いに接合される前記接合辺は、凸部側接合辺と凹部側接合辺とからなり、前記凸部側接合辺は、前記凹部側接合辺と接合する状態において前記凹部側接合辺に近付く方向に凸となる凸部を有し、前記凹部側接合辺は、前記凸部側接合辺と接合する状態において前記凸部側接合辺から離れる方向に凹んで形成されると共に前記凸部側接合辺との接合時に前記凸部が入り込む凹部を有し、前記凸部と前記凹部とは、前記凸部が前記凹部に入り込んだ状態で前記接合辺同士が離れる方向の力が作用した際に圧縮応力が発生する部分を有する。
【0014】
この構成によれば、互いに接合される接合辺は、凸部を有する凸部側接合辺と凹部を有する凹部側接合辺とからなり、凸部と凹部とは、凸部が凹部に入り込んだ状態で接合辺同士が離れる方向の力が作用した際に圧縮応力が発生する部分を有している。接合辺同士を接合する溶接部は、凸部と凹部とにおいて圧縮応力が発生する位置に施されている。これにより、薄肉円筒スリーブに軸部材が圧入されることにより薄肉円筒スリーブに周方向の力が作用した場合でも、溶接部に引張応力が発生することを抑制でき、引張応力によって溶接部が破断することを抑制することができる。この結果、周方向の張力が作用した場合における接合辺での接合を維持することができる。
【0015】
望ましい形態として、前記凸部は、前記凸部の付け根の位置での前記軸心方向における幅よりも前記軸心方向における幅が大きくなる部分を有して形成され、前記凸部側接合辺は、前記凸部における、前記凸部の前記付け根の部分と、前記凸部の前記付け根の位置での前記軸心方向における幅よりも幅が大きくなって形成される部分との間に前記折り返し部が形成され、前記凹部は、前記凹部の開口部の位置での前記軸心方向における幅よりも前記軸心方向における幅が大きくなる部分を有して形成され、前記凹部側接合辺は、前記凹部における前記開口部と、前記開口部の位置での前記軸心方向における幅よりも幅が大きくなって形成される部分との間に前記折り返し部が形成される。
【0016】
この構成によれば、凹部に凸部が入り込んで凸部側接合辺と凹部側接合辺とが接合された際には、凸部側の折り返し部と凹部側の折り返し部とが対向する。従って、接合辺同士が周方向に離れる方向の力が薄肉円筒スリーブに作用した場合には、凸部側の折り返し部と凹部側の折り返し部とが互いに、他方の周方向への移動を規制するため、凸部が凹部から抜けることを抑制でき、接合辺同士が周方向に離れることを抑制できる。この結果、周方向の張力が作用した場合における接合辺での接合を維持することができる。
【0017】
本開示のトルクセンサは、回転トルクを伝達する軸部材と、略円筒形の形状で形成されて前記軸部材が圧入される薄肉円筒スリーブと、前記薄肉円筒スリーブの周囲に配置される検出部材と、前記軸部材を中心とする周方向における前記検出部材の動きを検出する検出コイルのインダクタンスの変化に基づいて前記回転トルクを検出する演算素子と、を備え、前記薄肉円筒スリーブは、薄板が円筒形状に曲げられることにより形成されると共に前記円筒の周方向における前記薄板の両側の端部を接合辺として前記接合辺同士が複数の溶接部で溶接されることにより接合され、前記薄板の両側の前記接合辺に現れる嵌め合わせの境界の形状には、前記円筒の軸心方向において折り返されることにより前記境界の向きが反対方向になる部分である折り返し部をそれぞれの前記接合辺に有し、一方の前記接合辺の前記折り返し部から前記周方向の位置にあり、かつ一方の前記接合辺の一部分と、一方の前記接合辺の前記折り返し部との間に、他方の前記接合辺の前記折り返し部が位置して接合され、前記溶接部は、前記薄肉円筒スリーブに前記軸部材が圧入された際に前記接合辺において圧縮応力が発生する位置に位置する。
【0018】
この構成によれば、溶接部は、薄肉円筒スリーブの接合辺同士を溶接する薄肉円筒スリーブに軸部材が圧入された際に、接合辺において圧縮応力が発生する位置に位置している。これにより、薄肉円筒スリーブに軸部材が圧入されることにより薄肉円筒スリーブに周方向の力が作用した場合でも、溶接部に引張応力が発生することを抑制でき、引張応力によって溶接部が破断することを抑制することができる。この結果、周方向の張力が作用した場合における接合辺での接合を維持することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示に係る薄肉円筒スリーブ及びトルクセンサは、周方向の張力が作用した場合における接合辺での接合を維持することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態に係るステアリング装置の模式図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るステアリング装置における要部斜視図である。
【
図3】
図3は、トルクセンサと、スタブシャフト及びピニオンギアの斜視図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すトルクセンサの構成部材の要部の斜視図である。
【
図5】
図5は、スタブシャフトに入力側ロータが取り付けられた状態を示す説明図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す入力側ロータが有する薄肉円筒スリーブの斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す薄肉円筒スリーブの製造に用いる薄板の平面図である。
【
図10】
図10は、スタブシャフトに入力側ロータが取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図11】
図11は、引張応力が発生する位置に溶接部が位置する場合を示す説明図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る薄肉円筒スリーブの変形例であり、接合辺に1組の凸部と凹部とが形成される形態を示す説明図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る薄肉円筒スリーブの変形例であり、凸部と凹部とがそれぞれ台形状に形成される形態を示す説明図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る薄肉円筒スリーブの変形例であり、凸部と凹部とがそれぞれT字状に形成される形態を示す説明図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係る薄肉円筒スリーブの変形例であり、接合辺が凸部と凹部とを有することなく折り返し部が形成される形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0022】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るステアリング装置80の模式図である。
図1に示すように、ステアリング装置80は、操作者から与えられる力が伝達する順に、ステアリングホイール81と、ステアリングシャフト82と、ユニバーサルジョイント84と、ロアシャフト85と、ユニバーサルジョイント86と、スタブシャフト87と、ステアリングギア88と、タイロッド89とを備える。また、ステアリング装置80は、制御装置(以下、ECU(Electronic Control Unit)という。)90と、トルクセンサ10と、電動モータ92を備える。車速センサ91は、車両に備えられ、CAN(Controller Area Network)通信により車速信号VをECU90に出力する。
【0023】
ステアリングシャフト82は、一方の端部でステアリングホイール81に連結され、他方の端部でユニバーサルジョイント84に連結される。
【0024】
ロアシャフト85は、一方の端部でユニバーサルジョイント84に連結され、他方の端部でユニバーサルジョイント86に連結される。スタブシャフト87は、一方の端部がユニバーサルジョイント86に連結され、他方の端部でトルクセンサ10に連結される。トルクセンサ10は、一方の端部でスタブシャフト87に連結され、他方の端部でステアリングギア88が有するピニオンギア88aに連結されている。
【0025】
詳しくは、スタブシャフト87とピニオンギア88aとは、トーションバー(図示省略)を介して連結されている。トーションバーは、一端がスタブシャフト87に連結され、他端がピニオンギア88aに連結され、トーションバーは、スタブシャフト87とピニオンギア88aとの間で回転トルクを伝達する。トルクセンサ10は、トーションバーを介してスタブシャフト87とピニオンギア88aとの間で伝達される回転トルクを検出する。
【0026】
ステアリングギア88は、ピニオンギア88aと、ラックバー88bとを備える。ピニオンギア88aは、トーションバーを介してスタブシャフト87に連結される。ピニオンギア88aは、一方の端部でトルクセンサ10に連結され、他方の端部からは電動モータ92の駆動力が伝達可能になっている。ラックバー88bは、ピニオンギア88aに噛み合う。ステアリングギア88は、ピニオンギア88aに伝達された回転運動をラックバー88bで直進運動に変換する。タイロッド89は、ラックバー88bに連結される。すなわち、ステアリング装置80は、ラックアンドピニオン式である。
【0027】
図2は、実施形態に係るステアリング装置80における要部斜視図である。ピニオンギア88aは、ピニオンハウジング88s内に配置される。ラックバー88bは、ピニオンハウジング88sと一体に形成されるラックハウジング88h内に配置される。ピニオンハウジング88sには、電動モータ92を取り付けるモータ取付部88mが形成されており、電動モータ92は、モータ取付部88mに取り付けられる。電動モータ92で発生した駆動力は、ピニオンハウジング88s内でピニオンギア88aに対して伝達可能になっている。トルクセンサ10は、ピニオンハウジング88sに取り付けられており、スタブシャフト87と、ピニオンハウジング88s内に配置されるピニオンギア88aとにそれぞれ連結されている。
【0028】
トルクセンサ10は、ステアリングホイール81を介してステアリングシャフト82に伝達された運転者の操舵力を操舵トルクとして検出する。車速センサ91は、ステアリング装置80が搭載される車両の走行速度(車速)を検出する。電動モータ92と、トルクセンサ10と、車速センサ91とがECU90に、電気的に接続される。
【0029】
ECU90は、電動モータ92の動作を制御する。また、ECU90は、トルクセンサ10及び車速センサ91のそれぞれから信号を取得する。すなわち、ECU90は、トルクセンサ10から操舵トルクTを取得し、かつ車速センサ91から車両の車速信号Vを取得する。ECU90は、イグニッションスイッチ98がオンの状態で、電源装置(例えば車載のバッテリ)99から電力が供給される。ECU90は、操舵トルクTと車速信号Vとに基づいてアシスト指令の補助操舵指令値を算出する。そして、ECU90は、その算出された補助操舵指令値に基づいて電動モータ92へ供給する電力値Xを調節する。ECU90は、電動モータ92から誘起電圧の情報又は電動モータ92に設けられたレゾルバ等の回転検出装置から出力される情報を動作情報Yとして取得する。
【0030】
ステアリングホイール81に入力された操作者(運転者)の操舵力は、操舵トルクTとしてトルクセンサ10で検出する。ECU90は、操舵トルクTをトルクセンサ10から取得し、かつ車速信号Vを車速センサ91から取得する。そして、ECU90は、電動モータ92の動作を制御する。電動モータ92で発生した駆動力は、補助操舵トルクとしてピニオンギア88aに伝達される。すなわち、ピニオンギア88aには、ステアリングホイール81に入力された操作者の操舵力がスタブシャフト87からトーションバーを介して伝達されると共に、電動モータ92から補助操舵トルクが伝達される。ピニオンギア88aには、電動モータ92から補助操舵トルクが伝達されるため、ステアリングホイール81の操作に要する力が小さくなる。
【0031】
ピニオンギア88aに伝達された操舵力は、ステアリングギア88を介してタイロッド89に伝達され、車輪を変位させる。
【0032】
図3は、トルクセンサ10と、スタブシャフト87及びピニオンギア88aの斜視図である。トルクセンサ10に連結されるスタブシャフト87とピニオンギア88aとは、トルクセンサ10における互いに反対側から、トルクセンサ10に連結されている。すなわち、スタブシャフト87とピニオンギア88aとは、トルクセンサ10における互いに反対側に配置されており、互いに反対方向に延びて配置されている。
【0033】
このうち、ピニオンギア88aには、ラックバー88bに形成される歯(図示省略)と噛み合うギア部88agが形成されている。また、ピニオンギア88aには、トルクセンサ10に連結される側の端部の反対側の端部に、電動モータ92の出力軸に取り付けられるウォームギア(図示省略)と噛み合うウォームホイール(図示省略)が取り付けられるスプライン88asが形成されている。これにより、ピニオンギア88aは、ウォームギアとウォームホイールとを介して、電動モータ92からの補助操舵トルクが伝達される。
【0034】
図4は、
図3に示すトルクセンサ10の構成部材の要部の斜視図である。トルクセンサ10は、トルクセンサ10に連結される軸部材のうち、一方の軸部材である入力軸に取り付けられる入力側ロータ20と、他方の軸部材である出力軸に取り付けられる出力側ロータ70と、演算素子16が配置されるプリント基板15とを有している。本実施形態では、入力軸はスタブシャフト87になっており、入力側ロータ20は、スタブシャフト87に取り付けられる。また、出力軸はピニオンギア88aになっており、出力側ロータ70は、ピニオンギア88aに取り付けられる。
【0035】
入力側ロータ20は、略円筒形の形状で形成される薄肉円筒スリーブ30と、薄肉円筒スリーブ30の周囲に配置される検出部材である羽根状部材65とを有している。薄肉円筒スリーブ30は、金属材料からなり、内径がスタブシャフト87における入力側ロータ20が取り付けられる位置の外径と同程度の大きさになっている。このため、入力側ロータ20は、スタブシャフト87が薄肉円筒スリーブ30に圧入されることにより、スタブシャフト87に取り付けられる。
【0036】
羽根状部材65は、金属材料からなる薄板状の部材になっており、板の厚み方向が薄肉円筒スリーブ30の軸心方向となる向きで、薄肉円筒スリーブ30の周囲に配置されている。羽根状部材65は、薄肉円筒スリーブ30の周方向に互いに離隔した複数の羽根片を有しており、複数の羽根片が薄肉円筒スリーブ30の周囲に配置されることにより形成されている。薄肉円筒スリーブ30と羽根状部材65とは、樹脂材料からなる樹脂モールド60によって一体に形成されている。つまり、羽根状部材65は、樹脂モールド60によって薄肉円筒スリーブ30の周囲に配置されている。
【0037】
入力側ロータ20が有する羽根状部材65は、薄肉円筒スリーブ30の軸心方向における入力側ロータ20の一方の端部付近に配置されている。入力側ロータ20は、羽根状部材65が配置される側が、出力側ロータ70が位置する側となる向きで、スタブシャフト87に取り付けられる。
【0038】
出力側ロータ70は、略円筒形の形状で形成されるスリーブ部71と、スリーブ部71の周囲に配置される検出部材である羽根状部材72とを有している。スリーブ部71は、金属材料からなり、内径がピニオンギア88aにおける出力側ロータ70が取り付けられる位置の外径と同程度の大きさになっている。このため、出力側ロータ70は、ピニオンギア88aがスリーブ部71に圧入されることにより、ピニオンギア88aに取り付けられる。
【0039】
羽根状部材72は、金属材料からなる薄板状の部材になっており、板の厚み方向がスリーブ部71の軸心方向となる向きで、スリーブ部71の周囲に配置されている。羽根状部材72は、スリーブ部71の周方向に互いに離隔した複数の羽根片を有しており、複数の羽根片がスリーブ部71の周囲に配置されることにより形成されている。
【0040】
出力側ロータ70が有する羽根状部材72と、入力側ロータ20が有する羽根状部材65とでは、1つ1つの羽根片の周方向における大きさと、羽根片同士の周方向における間隔とが、それぞれ異なっている。本実施形態では、出力側ロータ70が有する羽根状部材72は、入力側ロータ20が有する羽根状部材65と比較して、羽根片の周方向における大きさが大きくなっており、羽根片同士の周方向における間隔も大きくなっている。出力側ロータ70では、入力側ロータ20とは異なり、スリーブ部71と羽根状部材72とは、金属材料からなる1つの部材として一体に形成されている。
【0041】
出力側ロータ70が有する羽根状部材72は、スリーブ部71の軸心方向における出力側ロータ70の一方の端部付近に配置されている。出力側ロータ70は、羽根状部材72が配置される側が、入力側ロータ20が位置する側となる向きで、ピニオンギア88aに取り付けられる。
【0042】
プリント基板15は、入力側ロータ20と出力側ロータ70との間に配置される。プリント基板15には、スタブシャフト87を中心とする周方向における、入力側ロータ20が有する羽根状部材65の動きや、ピニオンギア88aを中心とする周方向における、出力側ロータ70が有する羽根状部材72の動きを検出する検出コイル(図示省略)が実装されている。検出コイルは、入力側ロータ20の羽根状部材65や出力側ロータ70の羽根状部材72に対向する位置に配置されている。
【0043】
検出コイルは、入力側ロータ20が有する羽根状部材65と、出力側ロータ70が有する羽根状部材72との周方向における相対的な位置が変化した際に、インダクタンスが変化するように構成されている。プリント基板15に配置される演算素子16は、検出コイル周りのインダクタンスの変化に基づき、入力側ロータ20が有する羽根状部材65と、出力側ロータ70が有する羽根状部材72との周方向における相対変位を演算する演算用のICである。入力側ロータ20が取り付けられるスタブシャフト87と、出力側ロータ70が取り付けられるピニオンギア88aとの間では、トーションバーを介して回転トルクが伝達されるため、回転トルクの伝達時は、トーションバーが僅かに捩じれることによってスタブシャフト87とピニオンギア88aとの周方向における相対的な角度が僅かに変化する。プリント基板15に実装される検出コイル周りのインダクタンスは、スタブシャフト87とピニオンギア88aとの相対角度が変化した際に変化し、演算素子16は、検出コイル周りのインダクタンスの変化からスタブシャフト87とピニオンギア88aとの相対角度を検出し、回転トルクの検出を行う。これにより、トルクセンサ10は、スタブシャフト87とピニオンギア88aとの間で伝達される回転トルクを検出することができる。
【0044】
図5は、スタブシャフト87に入力側ロータ20が取り付けられた状態を示す説明図である。なお、
図5では、入力側ロータ20の羽根状部材65は省略して図示している。また、以下の説明では、薄肉円筒スリーブ30、或いは入力側ロータ20の説明に関して、軸心方向とは、薄肉円筒スリーブ30の形状である円筒の軸心方向になっており、周方向とは、薄肉円筒スリーブ30の形状である円筒の周方向になっている。入力側ロータ20の樹脂モールド60は、薄肉円筒スリーブ30を支持するスリーブ支持部60aと、羽根状部材65を支持する羽根状部材支持部60bとを有している。スリーブ支持部60aは、薄肉円筒スリーブ30の径方向における外側に配置されており、薄肉円筒スリーブ30の外周面32に沿って薄肉円筒スリーブ30の軸心方向に延びる支持部材を有している。スリーブ支持部60aは、支持部材を複数有しており、複数の支持部材は、周方向に並んで配置されている。
【0045】
羽根状部材支持部60bは、樹脂モールド60において鍔状に形成されており、鍔の厚み方向が薄肉円筒スリーブ30の軸心方向となる向きで、周方向における1周に亘って形成されている。羽根状部材65は、このように形成される羽根状部材支持部60bに取り付けられ、羽根状部材支持部60bに支持されている。
【0046】
入力側ロータ20は、薄肉円筒スリーブ30の軸心方向における一方の端部寄りに羽根状部材支持部60bが位置する位置関係で樹脂モールド60が薄肉円筒スリーブ30に取り付けられており、樹脂モールド60と薄肉円筒スリーブ30とは、一体に形成されている。
【0047】
図6は、
図5に示す入力側ロータ20が有する薄肉円筒スリーブ30の斜視図である。薄肉円筒スリーブ30は、略円筒形の形状で形成される金属製の部材になっている。薄肉円筒スリーブ30は、内周面33における、薄肉円筒スリーブ30の軸心方向における一方の端部31寄りの位置に、テーパー部34が形成されている。薄肉円筒スリーブ30の内周面33に形成されるテーパー部34は、薄肉円筒スリーブ30の軸心方向において端部31に近付くに従って、板厚が薄くなる方向に傾斜して形成されている。具体的には、入力側ロータ20は、スタブシャフト87が薄肉円筒スリーブ30に圧入されることにより、スタブシャフト87に取り付けられるが、テーパー部34は、薄肉円筒スリーブ30に対してスタブシャフト87を圧入する側の端部31が位置する側の薄肉円筒スリーブ30の内周面33に形成されている。
【0048】
図7は、
図6に示す薄肉円筒スリーブ30の製造に用いる薄板38の平面図である。薄肉円筒スリーブ30は、薄板38が円筒形状に曲げられることにより形成されている。薄板38は帯状の形状で形成され、薄肉円筒スリーブ30は、薄板38の長さ方向が円筒の周方向になる向きで曲げられることにより形成される。即ち、薄肉円筒スリーブ30の軸心方向は、円筒形状に曲げられる前の帯状の薄板38では薄板38の幅方向に対応し、薄肉円筒スリーブ30の周方向は、円筒形状に曲げられる前の帯状の薄板38では薄板38の長さ方向に対応して、薄肉円筒スリーブ30は形成される。
【0049】
薄肉円筒スリーブ30は、薄板38の長さ方向における両側に位置する端部を接合辺40として周方向に互いに突き合わせ、接合辺40同士を複数の溶接部50で溶接することにより接合する。このため、略円筒形の形状で形成される薄肉円筒スリーブ30では、円筒の周方向において互いに突き合わされて接合される薄板38の接合辺40が、円筒の軸心方向に延びて形成される。接合辺40を溶接する溶接部50は、本実施形態ではレーザー溶接による溶接部50になっており、接合辺40は、複数の溶接部50で溶接される。
【0050】
薄板38の長さ方向における両側に位置する接合辺40は、それぞれ薄肉円筒スリーブ30の形状である円筒の軸心方向に延びる直線部41と、軸心方向に対して円筒の周方向に湾曲する湾曲部42とが組み合わされることにより形成されている。それぞれ直線部41と湾曲部42とを有して互いに接合される接合辺40は、凸部側接合辺40aと凹部側接合辺40bとからなり、凸部側接合辺40aと凹部側接合辺40bとが接合される。即ち、円筒形状に曲げる前の薄板38の長さ方向における両側に位置する接合辺40のうち、一端側に位置する接合辺40は凸部側接合辺40aになっており、他端側に位置する接合辺40は凹部側接合辺40bになっている。
【0051】
凸部側接合辺40aと凹部側接合辺40bとのうち、凸部側接合辺40aは、凹部側接合辺40bと接合する状態において、凹部側接合辺40bに近付く方向に凸となる凸部43を有している。即ち、凸部43は、凸部側接合辺40aにおいて軸心方向に延在する直線部41から、凹部側接合辺40bに近付く方向に湾曲部42で湾曲することにより、凹部側接合辺40bに近付く方向に凸となって形成されている。換言すると、凸部側接合辺40aが有する凸部43は、薄板38が円筒形状に曲げられずに展開された状態においては、接合辺40が有する湾曲部42で湾曲することにより、薄板38の長さ方向において凹部側接合辺40bが位置する側の反対側に向かって凸となって形成されている。
【0052】
凸部側接合辺40aが有する凸部43は、薄板38の長さ方向に凸となって形成されると共に、凸部43の付け根43aの位置での軸心方向における幅よりも、軸心方向における幅が大きくなる部分を有して形成されている。詳しくは、凸部43は、凸部43の付け根43aと凸部43の先端部43bとの間に、凸部43の幅が大きくなる方向に軸心方向に凸となって湾曲する湾曲部42を有している。これにより、凸部43は、凸部43の付け根43aの位置での軸心方向における幅よりも、凸部43の先端部43bと凸部43の付け根43aと間の所定の位置での軸心方向における幅の方が大きくなって形成されている。
【0053】
なお、この場合における付け根43aの位置での軸心方向における幅について説明すると、凸部43は、軸心方向に延びる直線部41に対して湾曲部42によって繋がっているため、凸部43の付け根43aの位置での幅は、凸部43の付け根43aの位置で軸心方向の両側に配置される、湾曲部42同士の距離になっている。
【0054】
一方、凹部側接合辺40bは、凸部側接合辺40aと接合する状態において、凸部側接合辺40aから離れる方向に凹んで形成される凹部44を有している。即ち、凹部44は、凹部側接合辺40bにおいて軸心方向に延在する直線部41から、凸部側接合辺40aから離れる方向に湾曲部42で湾曲することにより、凸部側接合辺40aから離れる方向に凹んで形成されている。換言すると、凹部側接合辺40bが有する凹部44は、薄板38が円筒形状に曲げられずに展開された状態においては、接合辺40が有する湾曲部42で湾曲することにより、薄板38の長さ方向において凸部側接合辺40aが位置する側に向かって凹んで形成されている。
【0055】
凹部側接合辺40bが有する凹部44は、薄板38の長さ方向に凹んで形成されると共に、凹部44の開口部44aの位置での軸心方向における幅よりも、軸心方向における幅が大きくなる部分を有して形成されている。詳しくは、凹部44は、凹部44の開口部44aと、凹部44において最も凹んだ部分である底部44bとの間に、凹部44の幅が大きくなる方向に軸心方向に凹んで湾曲する湾曲部42を有している。これにより、凹部44は、凹部44の開口部44aの位置での軸心方向における幅よりも、凹部44の開口部44aと凹部44の底部44bと間の所定の位置での軸心方向における幅の方が大きくなって形成されている。
【0056】
なお、この場合における開口部44aの位置での軸心方向における幅について説明すると、凹部44は、軸心方向に延びる直線部41に対して湾曲部42によって繋がっているため、凹部44の開口部44aの位置での幅は、凹部44の開口部44aの位置で軸心方向の両側に配置される、湾曲部42同士の距離になっている。
【0057】
これらのよう形成される凸部側接合辺40aの凸部43と、凹部側接合辺40bの凹部44とは、実質的に同じ形状で形成されている。凸部側接合辺40aの凸部43と、凹部側接合辺40bの凹部44とは、薄板38の幅方向、すなわち薄肉円筒スリーブ30の形状である円筒の軸心方向における位置が同じ位置となって形成される。これにより、薄板38の長さ方向における両側に位置する接合辺40同士を突き合わせることにより薄板38を円筒形にする際には、凸部側接合辺40aに形成される凸部43が、凹部側接合辺40bに形成される凹部44に入り込むことにより、接合辺40同士は接合される。
【0058】
その際に、凸部43は、凸部43の付け根43aよりも軸心方向における幅が大きくなる方向に凸となる部分を有しており、凹部44は、凹部44の開口部44aよりも軸心方向における幅が大きくなる方向に凹んで形成される部分を有している。即ち、凸部43における、付け根43aよりも軸心方向における幅が大きくなっている部分は、凹部44の開口部44aよりも、軸心方向における幅が大きくなっている。このため、凸部側接合辺40aの凸部43が凹部側接合辺40bの凹部44に入り込んだ際には、凸部43を凹部44から薄肉円筒スリーブ30の周方向に抜くことが不可の状態となって凸部43と凹部44とは組み合わされる。
【0059】
本実施形態では、これらのように接合辺40に形成される凸部43と凹部44は、2組が形成されている。即ち、凸部側接合辺40aには、凸部43が2つ形成されており、凹部側接合辺40bには、凸部側接合辺40aの2つの凸部43と軸心方向における位置が同じ位置に、2つの凹部44が形成されている。接合辺40同士の接合時には、凸部側接合辺40aが有する2つの凸部43が、凹部側接合辺40bに形成される2つの凹部44に入り込んで接合される。
【0060】
薄板38の長さ方向における両側の端部に位置する接合辺40は、それぞれ折り返し部45を有している。折り返し部45は、接合辺40が薄肉円筒スリーブ30の形状である円筒の軸心方向において折り返されることにより、軸心方向における接合辺40の向きが反対方向になる部分になっている。折り返し部45は、直線部41により形成されていてもよく、湾曲部42により形成されていてもよく、または、直線部41と湾曲部42の組み合わせにより形成されていてもよい。折り返し部45は、凸部側接合辺40aでは凸部43に凸部側折り返し部45aとして形成され、凹部側接合辺40bでは凹部44に凹部側折り返し部45bとして形成されている。
【0061】
詳しくは、凸部側接合辺40aでは、凸部43における、凸部43の付け根43aの部分と、凸部43の付け根43aの位置での軸心方向における幅よりも幅が大きくなって形成される部分との間に、凸部側折り返し部45aが形成されている。即ち、凸部43は、凸部43の先端部43bと付け根43aとの間に、軸心方向における幅が付け根43aの部分の幅よりも大きくなって形成される部分があるため、凸部側接合辺40aの延在方向は、凸部43の付け根43aから先端部43bに向かう位置、または先端部43bから付け根43aに向かう位置で折り返される。凸部側接合辺40aでは、このように凸部43の付け根43aと先端部43bとの間に、凸部側折り返し部45aが形成されている。
【0062】
また、凹部側接合辺40bでは、凹部44における開口部44aと、開口部44aの位置での軸心方向における幅よりも幅が大きくなって形成される部分との間に、凹部側折り返し部45bが形成されている。即ち、凹部44は、凹部44の底部44bと開口部44aとの間に、軸心方向における幅が開口部44aの幅よりも大きくなって形成される部分があるため、凹部側接合辺40bの延在方向は、凹部44の開口部44aから底部44bに向かう位置、または底部44bから開口部44aに向かう位置で折り返される。凹部側接合辺40bでは、このように凹部44の開口部44aと底部44bとの間に、凹部側折り返し部45bが形成されている。
【0063】
図8は、
図6のC部詳細図である。
図9は、
図8のD部詳細図である。薄板38が円筒形状に曲げられることにより形成される薄肉円筒スリーブ30は、薄板38の両側の接合辺40に現れる嵌め合わせの境界の形状が、薄肉円筒スリーブ30の形状である円筒の軸心方向において折り返されることにより、軸心方向における境界の向きが反対方向になる部分である折り返し部45をそれぞれの接合辺40に有する形状になっている。折り返し部45が形成される接合辺40同士は、接合辺40同士を接合した際には、一方の接合辺40の折り返し部45から周方向の位置にあり、かつ一方の接合辺40の一部分と、一方の接合辺40の折り返し部との間に、他方の接合辺40の折り返し部45が位置して接合される。即ち、それぞれ折り返し部45が形成される接合辺40同士は、周方向に互いに噛み合って接合される。この場合における、接合辺40の折り返し部45から周方向の位置にある接合辺40の一部分とは、接合辺40における、軸心方向における位置が折り返し部45と同じ位置になる部分になっている。
【0064】
詳しくは、凸部側接合辺40aと凹部側接合辺40bとを接合する場合、凹部側接合辺40bの凹部44に凸部側接合辺40aの凸部43を入り込ませる。凸部側接合辺40aが有する凸部43と、凹部側接合辺40bが有する凹部44とは、実質的に同じ形状で形成されているため、凹部44に凸部43を入り込ませた場合は、凸部43に形成される凸部側折り返し部45aと、凹部44に形成される凹部側折り返し部45bとは、互いに隣接する状態になる。
【0065】
また、凸部側接合辺40aにおける、凸部側折り返し部45aから周方向の位置にある一部分(
図9・E部参照)は、凸部43の付け根43aに位置する湾曲部42になっている。即ち、凸部側接合辺40aにおける、軸心方向における位置が凸部側折り返し部45aと同じ位置になる一部分(
図9・E部参照)は、凸部43の付け根43aに位置する湾曲部42になっている。このため、凹部側接合辺40bの凹部側折り返し部45bは、凸部側接合辺40aの凸部側折り返し部45aから周方向の位置にある一部分である、凸部43の付け根43aの湾曲部42と、凸部側接合辺40aの凸部側折り返し部45aとの間に位置している。
【0066】
また、凹部側接合辺40bにおける、凹部側折り返し部45bから周方向の位置にある一部分(
図9・F部参照)は、凹部44の開口部44aと底部44bとの間に位置する湾曲部42になっている。即ち、凹部側接合辺40bにおける、軸心方向における位置が凹部側折り返し部45bと同じ位置になる一部分(
図9・F部参照)は、凹部44の開口部44aと底部44bとの間に位置する湾曲部42になっている。このため、凸部側接合辺40aの凸部側折り返し部45aは、凹部側接合辺40bの凹部側折り返し部45bから周方向の位置にある一部分である、凹部44の開口部44aと底部44bとの間の湾曲部42と、凹部側接合辺40bの凹部側折り返し部45bとの間に位置している。
【0067】
接合辺40同士は、これらのように凸部側接合辺40aにおいて凸部側折り返し部45aから周方向の位置にある一部分と凸部側折り返し部45aとの間に凹部側接合辺40bの凹部側折り返し部45bが位置し、凹部側接合辺40bにおいて凹部側折り返し部45bから周方向の位置ある一部分と凹部側折り返し部45bとの間に凸部側接合辺40aの凸部側折り返し部45aが位置して接合される。
【0068】
接合辺40が有する折り返し部45は、薄肉円筒スリーブ30の軸心方向に対する周方向への傾斜角度θが45°以下となる部分を有している。即ち、凸部側接合辺40aが有する凸部側折り返し部45aと、凹部側接合辺40bが有する凹部側折り返し部45bとは、いずれも薄肉円筒スリーブ30の軸心方向に対する周方向への傾斜角度θが45°以下となる部分を有して形成されている。
【0069】
例えば、折り返し部45が直線部41により形成される場合は、薄肉円筒スリーブ30の軸心方向に対する、折り返し部45を形成する直線部41の周方向への傾斜角度θが、45°以下になっている。また、折り返し部45が湾曲部42により形成される場合は、薄肉円筒スリーブ30の軸心方向に対する、折り返し部45を形成する湾曲部42の接線の周方向への傾斜角度θが、45°以下になる部分を有している。つまり、折り返し部45は、折り返し部45を形成する直線部41、または折り返し部45を形成する湾曲部42の接線の、薄肉円筒スリーブ30の軸心方向に対する周方向への傾斜角度θが、45°以下になる部分を有して形成されている。
【0070】
接合辺40を溶接する複数の溶接部50は、折り返し部45を有する接合辺40同士が接合された状態における、折り返し部45の位置に施される。即ち、凸部側接合辺40aと凹部側接合辺40bとは、凸部側接合辺40aの凸部43が凹部側接合辺40bの凹部44に入り込んだ状態における、凸部側折り返し部45aと凹部側折り返し部45bとが隣接している部分に溶接部50が位置して接合される。これらのように、接合辺40に施される複数の溶接部50は、接合辺40同士を接合した状態における折り返し部45の位置に位置し、隣接する折り返し部45同士を溶接することにより、接合辺40同士が離れないように接合する。
【0071】
次に、トルクセンサ10における入力側ロータ20が有する、薄肉円筒スリーブ30へのスタブシャフト87の組み付けまでの手順について説明する。なお、以下に示す手順は製造プロセスの一例であり、製造プロセスの順番は任意に入れ替えることができる。薄肉円筒スリーブ30は、帯状に薄板38の長さ方向における両側の端部を接合辺40とし、直線部41と湾曲部42とによって一方の接合辺40に凸部43を形成し、他方の接合辺40に凹部44を形成する。これにより、双方の接合辺40にそれぞれ折り返し部45を形成する。また、薄板38の幅方向における一方の端部31には、テーパー部34を形成する。
【0072】
凸部43と凹部44とを形成し、テーパー部34も形成したら、薄板38の長さ方向が周方向となり、テーパー部34が形成される側の面が内周面33となるように薄板38を円筒形状に曲げ、凹部側接合辺40bの凹部44に凸部側接合辺40aの凸部43を入り込ませて接合辺40同士を突き合わせる。薄板38は、このように凸部側接合辺40aの凸部43を凹部側接合辺40bの凹部44に入り込ませることにより、凸部43は凹部44から周方向に抜けなくなるため、接合辺40は、接合辺40同士が周方向に離れる方向への相対移動が規制される。
【0073】
凸部側接合辺40aの凸部43を凹部側接合辺40bの凹部44に入り込ませ、凸部側接合辺40aと凹部側接合辺40bの折り返し部45同士を隣接させる状態で接合辺40同士を突き合わせたら、複数の溶接部50によって接合辺40同士を溶接する。溶接部50は、接合辺40同士が周方向に離れる方向の力が薄肉円筒スリーブ30に作用した際に、接合辺40同士が周方向に離れる方向への相対移動を凸部43と凹部44とで規制することにより、凸部43と凹部44との間で圧縮方向の力が発生する位置に施す。即ち、凸部43と凹部44とは、凸部43が凹部44に入り込んだ状態で接合辺40同士が離れる方向の力が作用した際に圧縮応力が発生する部分を有しており、溶接部50は、凸部43と凹部44とにおける、圧縮応力が発生する位置に施す。具体的には、接合辺40同士の溶接を行う複数の溶接部50は、折り返し部45同士が隣接している部分に対して施す。このように、薄板38を円筒形状に曲げ、接合辺40同士を突き合わせて折り返し部45を複数の溶接部50によって溶接することにより、略円筒形の薄肉円筒スリーブ30を形成する。
【0074】
図10は、スタブシャフト87に入力側ロータ20が取り付けられた状態を示す断面図である。薄肉円筒スリーブ30を形成したら、薄肉円筒スリーブ30と、別工程で製造される羽根状部材65とを、樹脂モールド60によって一体に形成する。すなわち、薄肉円筒スリーブ30と羽根状部材65との位置合わせを行った状態で、樹脂モールド60の射出成形を行う。これにより、入力側ロータ20が製造される。その際に、樹脂モールド60によって薄肉円筒スリーブ30と一体に形成される羽根状部材65は、薄肉円筒スリーブ30の軸心方向において、内周面33にテーパー部34が形成される側の端部31の反対側の端部31寄りに配置される。入力側ロータ20は、このように製造される入力側ロータ20の薄肉円筒スリーブ30に対してスタブシャフト87を圧入することにより、スタブシャフト87に取り付けられる。
【0075】
薄肉円筒スリーブ30へのスタブシャフト87の圧入は、薄肉円筒スリーブ30における、内周面33にテーパー部34が形成される側の端部31側から行う。スタブシャフト87には、外径が薄肉円筒スリーブ30の内径とほぼ同じ大きさで形成されて薄肉円筒スリーブ30に対して圧入される部分である圧入部87aが形成されている。薄肉円筒スリーブ30に対するスタブシャフト87の圧入は、スタブシャフト87の圧入部87aを、薄肉円筒スリーブ30におけるテーパー部34が形成される側の端部31側から入り込ませることにより行う。スタブシャフト87は、このように薄肉円筒スリーブ30の内周面33に対して、テーパー部34が形成される側の端部31側から入り込ませることにより、容易に入り込ませることができる。このため、スタブシャフト87は、薄肉円筒スリーブ30に対して容易に圧入することができる。
【0076】
薄肉円筒スリーブ30におけるテーパー部34が形成される側の端部31には、軸心方向に突出する当接部31a(
図6参照)が、周方向に間隔をあけながら複数形成されている。また、スタブシャフト87には、軸心方向における所定の位置に、圧入部87aに隣接すると共に圧入部87aに対して径が大きくなる方向に変化することにより形成される段差部分である段付き部87bが形成されている。薄肉円筒スリーブ30に対して圧入するスタブシャフト87は、段付き部87bが薄肉円筒スリーブ30の当接部31aに当接するまで、薄肉円筒スリーブ30に入り込ませる。これにより、薄肉円筒スリーブ30を有する入力側ロータ20とスタブシャフト87とは、薄肉円筒スリーブ30にスタブシャフト87を圧入した際に、軸心方向における位置決めが行われて互いに固定される。
【0077】
なお、薄肉円筒スリーブ30を、スタブシャフト87に圧入固定するにあたり、固定された薄肉円筒スリーブ30に対し、スタブシャフト87を差し込んでもよいし、固定されたスタブシャフト87に対し、薄肉円筒スリーブ30を嵌め合わせてもよい。
【0078】
ここで、薄肉円筒スリーブ30に対してスタブシャフト87を圧入する場合、薄肉円筒スリーブ30には、周方向へ広がろうとする力が作用する。薄肉円筒スリーブ30にスタブシャフト87を圧入することにより薄肉円筒スリーブ30に作用する、周方向へ広がろうとする力は、接合辺40にも作用する。接合辺40は、薄板38の長さ方向における両側に位置する接合辺40同士が複数の溶接部50により溶接されているため、薄肉円筒スリーブ30に作用する周方向への力は、接合辺40同士を溶接する溶接部50にも作用する。
【0079】
周方向への力が溶接部50に作用した場合、溶接部50に対する力の作用の仕方によっては溶接部50が破断し易くなる可能性があるが、本実施形態では、溶接部50は、薄肉円筒スリーブ30にスタブシャフト87が圧入された際に、接合辺40において圧縮応力が発生する位置に位置している。これにより、薄肉円筒スリーブ30に対してスタブシャフト87を圧入することにより、薄肉円筒スリーブ30に対して周方向の力が作用した場合でも、溶接部50が破断することを抑制することができる。
【0080】
図11は、引張応力が発生する位置に溶接部50が位置する場合を示す説明図である。つまり、薄肉円筒スリーブ30は、薄板38を円筒形状に曲げ、薄板38の長さ方向における両側に位置する接合辺40同士を突き合わせることによって略円筒形の形状にするため、薄肉円筒スリーブ30に周方向へ広がろうとする力が作用した場合、接合辺40には、接合辺40同士が離れる方向の引張応力が多くの位置に発生する。
【0081】
例えば、接合辺40における、薄肉円筒スリーブ30の軸心方向における端部31から延びる直線部41の位置では、薄肉円筒スリーブ30に周方向へ広がろうとする力が発生した場合、対向する直線部41同士が離れる方向の力が作用する。このため、溶接部50が、
図11に示すように、接合辺40における当該直線部41の位置に施されていた場合、溶接部50には、薄肉円筒スリーブ30に周方向へ広がろうとする力が発生した際に、引張応力が発生する。
【0082】
従って、例えば接合辺40に作用する周方向への力が部分的に大きくなり、溶接部50で発生する引張応力が大きくなることにより溶接部50の許容応力を超えた場合、溶接部50は破断してしまう可能性がある。溶接部50が破断した場合、接合辺40を溶接部50によって適切に接合することができなくなる。
【0083】
これに対し、本実施形態では、溶接部50は、薄肉円筒スリーブ30の接合辺40同士を溶接する薄肉円筒スリーブ30にスタブシャフト87が圧入された際に、接合辺40において圧縮応力が発生する位置に位置している。これにより、薄肉円筒スリーブ30にスタブシャフト87が圧入されることにより薄肉円筒スリーブ30に周方向の力が作用した場合でも、溶接部50に引張応力が発生することを抑制でき、引張応力によって溶接部50が破断することを抑制することができる。この結果、周方向の張力が作用した場合における接合辺40での接合を維持することができる。
【0084】
また、薄肉円筒スリーブ30の接合辺40同士は、それぞれの接合辺40の周方向において折り返し部45から周方向の位置にある一部分と折り返し部45との間に、互いに他方の接合辺40の折り返し部45が位置して接合されており、溶接部50は、折り返し部45に位置している。折り返し部45は、接合辺40における折り返し部45から周方向の位置にある一部分と折り返し部45との間に、互いに他方の接合辺40の折り返し部45が位置するため、接合辺40同士が周方向に離れる方向への力が薄肉円筒スリーブ30に作用した際には、対向する折り返し部45同士の間に圧縮方向に力が作用する。
【0085】
このため、溶接部50が、折り返し部45に位置することにより、接合辺40同士が周方向に離れる方向への力が薄肉円筒スリーブ30に作用した場合には、溶接部50には、圧縮応力が発生する。従って、薄肉円筒スリーブ30にスタブシャフト87が圧入されることにより薄肉円筒スリーブ30に周方向の力が作用した場合でも、溶接部50が引張応力によって破断することを抑制することができる。この結果、周方向の張力が作用した場合における接合辺40での接合を維持することができる。
【0086】
また、折り返し部45は、薄肉円筒スリーブ30の軸心方向に対する周方向への傾斜角度θが45°以下となる部分を有しているため、接合辺40同士が周方向に離れる方向への力が薄肉円筒スリーブ30に作用した場合でも、溶接部50の破断を抑制することができる。つまり、薄肉円筒スリーブ30の軸心方向に対する周方向への折り返し部45の傾斜角度θが、45°より大きい場合、折り返し部45には、接合辺40同士が周方向に離れる方向への力が薄肉円筒スリーブ30に作用した際に、対向する折り返し部45同士の間で、折り返し部45の延在方向へのせん断力が発生し易くなる。このため、薄肉円筒スリーブ30の軸心方向に対する折り返し部45の傾斜角度θが、45°より大きい場合、接合辺40同士が周方向に離れる方向への力が薄肉円筒スリーブ30に作用した際に、折り返し部45に位置する溶接部50にもせん断応力が発生し易くなり、溶接部50の破断を抑制し難くなる。
【0087】
これに対し、薄肉円筒スリーブ30の軸心方向に対する周方向への折り返し部45の傾斜角度θが45°以下の場合は、対向する折り返し部45同士の間でせん断力し易くなることを抑制でき、折り返し部45に位置する溶接部50にせん断応力や引張応力が発生し易くなることを抑制できる。従って、薄肉円筒スリーブ30にスタブシャフト87が圧入されることにより薄肉円筒スリーブ30に周方向の力が作用した場合でも、溶接部50がせん断応力や引張応力によって破断することを抑制することができる。この結果、周方向の張力が作用した場合における接合辺40での接合を維持することができる。
【0088】
また、互いに接合される接合辺40は、凸部43を有する凸部側接合辺40aと、凹部44を有する凹部側接合辺40bとからなり、凸部側接合辺40aと凹部側接合辺40bとは、凹部44に凸部43が入り込んで接合される。凹部44に凸部43が入り込んで接合される接合辺40に対し、薄肉円筒スリーブ30に対して作用する周方向へ広がる方向への力は、凸部43を凹部44から周方向に引き抜く方向の力として作用する。
【0089】
一方で、凸部側接合辺40aが有する凸部43と、凹部側接合辺40bが有する凹部44とは、凸部43が凹部44に入り込んだ状態では、接合辺40同士が周方向に離れる方向への相対移動を規制する。即ち、薄肉円筒スリーブ30に、接合辺40同士が周方向に離れる方向の力が作用した際には、接合辺40に形成される凸部43と凹部44とが、互いに周方向への移動を規制することにより、接合辺40同士が周方向に離れる方向への相対移動を規制する。このため、薄肉円筒スリーブ30に、接合辺40同士が周方向に離れる方向の力が作用した場合には、凸部43と凹部44とには、接合辺40に作用する周方向の力によって、圧縮応力が発生する部分が生じる。
【0090】
接合辺40同士を接合する溶接部50は、接合辺40同士が周方向に離れる方向の力が薄肉円筒スリーブ30に作用した際に、凸部43と凹部44との間で圧縮方向の力が発生する位置に施されている。これにより、薄肉円筒スリーブ30にスタブシャフト87が圧入されることにより薄肉円筒スリーブ30に周方向の力が作用した場合でも、溶接部50に引張応力が発生することを抑制でき、引張応力によって溶接部50が破断することを抑制することができる。この結果、周方向の張力が作用した場合における接合辺40での接合を維持することができる。
【0091】
また、凸部43は、凸部43の付け根43aの位置での幅よりも幅が大きくなる部分を有して形成され、凸部側接合辺40aは、凸部43における、凸部43の付け根43aの部分と、凸部43の付け根43aの位置での幅よりも幅が大きくなって形成される部分との間に凸部側折り返し部45aが形成されている。また、凹部44は、凹部44の開口部44aの位置での幅よりも幅が大きくなる部分を有して形成され、凹部側接合辺40bは、凹部44における開口部44aと、開口部44aの位置での幅よりも幅が大きくなって形成される部分との間に凹部側折り返し部45bが形成されている。
【0092】
これにより、凹部44に凸部43が入り込んで凸部側接合辺40aと凹部側接合辺40bとが接合された際には、凸部側折り返し部45aと凹部側折り返し部45bとが対向する。従って、接合辺40同士が周方向に離れる方向の力が薄肉円筒スリーブ30に作用した場合には、凸部側折り返し部45aと凹部側折り返し部45bとが互いに、他方の周方向への移動を規制するため、凸部43が凹部44から抜けることを抑制でき、接合辺40同士が周方向に離れることを抑制できる。この結果、周方向の張力が作用した場合における接合辺40での接合を維持することができる。
【0093】
また、凸部側接合辺40aと凹部側接合辺40bとは、凸部側折り返し部45aと凹部側折り返し部45bとが対向して接合されるため、接合辺40同士が周方向に離れる方向の力が作用した場合には、凸部側折り返し部45aと凹部側折り返し部45bとの間で圧縮応力が発生する。溶接部50は、折り返し部45の位置に施されるため、接合辺40同士が周方向に離れる方向の力が薄肉円筒スリーブ30に作用した場合でも、溶接部50に引張応力が発生することを抑制でき、引張応力によって溶接部50が破断することを抑制することができる。この結果、周方向の張力が作用した場合における接合辺40での接合を維持することができる。
【0094】
[変形例]
上述した実施形態に係る薄肉円筒スリーブ30では、接合辺40には、凸部43と凹部44とは2組が設けられているが、凸部43や凹部44は、これ以外の数で設けられていてもよい。
図12は、実施形態に係る薄肉円筒スリーブ30の変形例であり、接合辺40に1組の凸部43と凹部44とが形成される形態を示す説明図である。接合辺40に設けられる凸部43と凹部44とは、例えば、
図12に示すように、1組であってもよい。即ち、凸部側接合辺40aには、凸部側折り返し部45aを有する凸部43が1つ形成され、凹部側接合辺40bには、凹部側折り返し部45bを有する凹部44が1つ形成され、1つの凹部44に1つの凸部43が入り込むことによって接合辺40同士が接合される形態であってもよい。
【0095】
接合辺40に設けられる凸部43と凹部44とが1組であっても、凸部43と凹部44とに折り返し部45を形成し、折り返し部45に溶接部50を位置させることにより、接合辺40同士が周方向に離れる方向の力が作用した場合でも、溶接部50に引張応力が発生することを抑制することができる。これにより、溶接部50が破断することを抑制でき、接合辺40での接合を維持することができる。
【0096】
また、上述した実施形態に係る薄肉円筒スリーブ30では、接合辺40は、直線部41と湾曲部42とが組み合わされることにより形成されているが、接合辺40は、これ以外の形態で形成されていてもよい。
図13は、実施形態に係る薄肉円筒スリーブ30の変形例であり、凸部43と凹部44とがそれぞれ台形状に形成される形態を示す説明図である。
図14は、実施形態に係る薄肉円筒スリーブ30の変形例であり、凸部43と凹部44とがそれぞれT字状に形成される形態を示す説明図である。接合辺40は、例えば、
図13、
図14に示すように、湾曲部42を有さずに直線部41の組み合わせにより形成されていてもよい。
【0097】
直線部41の組み合わせにより接合辺40が形成される場合、凸部43と凹部44は、
図13に示すように台形状の形状で形成され、台形の平行な2辺のうち長さが短い側の辺が、凸部43の付け根43aや凹部44の開口部44aとなる向きで形成されていてもよい。凸部43と凹部44を台形状の形状で形成することにより、台形の斜辺を折り返し部45にすることができる。これにより、台形状の形状で形成した凸部43と凹部44とにおける台形の斜辺の位置に溶接部50を位置させることにより、接合辺40同士が周方向に離れる方向の力が作用した場合でも、溶接部50に引張応力が発生することを抑制でき、溶接部50が破断することを抑制できる。
【0098】
または、凸部43と凹部44は、
図14に示すようにT字の輪郭状の形状で形成され、T字の縦に延びる部分の下端が、凸部43の付け根43aや凹部44の開口部44aとなる向きで形成されていてもよい。凸部43と凹部44をT字の輪郭状の形状で形成することにより、T字の横方向に延びる部分の輪郭のうち、凸部43の付け根43aや凹部44の開口部44a側に位置する部分を、折り返し部45にすることができる。これにより、T字の輪郭状の形状で形成した凸部43と凹部44とにおける折り返し部45となる部分に溶接部50を位置させることにより、接合辺40同士が周方向に離れる方向の力が作用した場合でも、溶接部50に引張応力が発生することを抑制でき、溶接部50が破断することを抑制できる。
【0099】
また、上述した実施形態に係る薄肉円筒スリーブ30では、接合辺40は凸部43と凹部44とを有し、凸部43や凹部44に折り返し部45を形成しているが、接合辺40には、凸部43や凹部44は形成されていなくてもよい。
図15は、実施形態に係る薄肉円筒スリーブ30の変形例であり、接合辺40が凸部43と凹部44とを有することなく折り返し部45が形成される形態を示す説明図である。接合辺40は、例えば、
図15に示すように、湾曲部42で曲がる方向が、接合辺40の延在方向において交互になることにより波状に形成され、波状の接合辺40に折り返し部45が形成されていてもよい。即ち、波状に形成される接合辺40は、湾曲部42で接合辺40が延びる方向が大きく変化することにより、接合辺40の延在方向が薄肉円筒スリーブ30の軸心方向において折り返される折り返し部45が形成されていてもよい。
【0100】
接合辺40は、凸部43と凹部44とを有していなくても、接合辺40の延在方向が湾曲部42で大きく変化することにより折り返し部45が形成され、このように形成される折り返し部45に溶接部50を位置させてもよい。これにより、接合辺40同士が周方向に離れる方向の力が作用した場合でも、溶接部50に引張応力が発生することを抑制でき、溶接部50が破断することを抑制できる。
【0101】
また、上述した実施形態では、トルクセンサ10は、スタブシャフト87とピニオンギア88aとに連結されているが、トルクセンサ10が連結される軸部材は、スタブシャフト87やピニオンギア88a以外であってもよい。トルクセンサ10は、例えば、ステアリングシャフト82に連結され、ステアリングシャフト82に作用するトルクを検出ものであってもよい。
【0102】
以上、本開示の好適な実施形態を説明したが、本開示は上記の実施形態に記載されたものに限定されない。実施形態や変形例として説明した構成は、適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0103】
10 トルクセンサ
20 入力側ロータ
30 薄肉円筒スリーブ
31 端部
33 内周面
38 薄板
40 接合辺
40a 凸部側接合辺
40b 凹部側接合辺
41 直線部
42 湾曲部
43 凸部
43a 付け根
43b 先端部
44 凹部
44a 開口部
44b 底部
45 折り返し部
45a 凸部側折り返し部
45b 凹部側折り返し部
50 溶接部
60 樹脂モールド
70 出力側ロータ
80 ステアリング装置
81 ステアリングホイール
82 ステアリングシャフト
85 ロアシャフト
87 スタブシャフト
88 ステアリングギア
89 タイロッド