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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118450
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】トレイ
(51)【国際特許分類】
   B65D 21/02 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
B65D21/02 410
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021406
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】小林 章一
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 正裕
【テーマコード(参考)】
3E006
【Fターム(参考)】
3E006AA01
3E006BA02
3E006CA01
3E006DA01
3E006FA02
(57)【要約】
【課題】トレイを上下に積み重ねた状態から、上側のトレイを下側のトレイに対して容易に引き出すことが可能なトレイを提供する。
【解決手段】トレイ100は、脚部20の先端を、このトレイ100よりも下側に位置する他のトレイの脚部20の開口に挿入することにより、上下に積み重ねることが可能である。トレイ100の脚部20は、脚部底壁21と、脚部外壁22と、脚部内壁23と有している。更に、脚部20の開口25側において、板部10の中心から外側に向けて出る第1膨出部40を備えている。脚部内壁23は、脚部外壁22よりも大きな勾配で、脚部底壁21から上方に向けて延びている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第1辺と、前記第1辺と交差する向きに延びる一対の第2辺とを四辺とする平面視において略矩形状の板部と、前記板部から下方に向けて延び、上方に開口を有する中空形状の脚部と、を備えるトレイであって、
前記トレイは、前記脚部の先端を、前記トレイよりも下側に位置する他のトレイの脚部の開口に挿入することにより、上下に積み重ねることが可能であり、
前記脚部は、
脚部底壁と、
前記板部の中央から外周に向かう方向を向き、前記脚部底壁から上方に向けて延びる脚部外壁と、
前記脚部外壁と反対側で、前記脚部底壁から上方に向けて延びる脚部内壁と、を有し、
前記脚部内壁は、前記脚部外壁よりも大きな勾配で、前記脚部底壁から上方に向けて延びており、
前記脚部外壁から上方に向けて延び、前記板部の中央からトレイの外周に向かう方向に膨出する第1膨出部を備える、
トレイ。
【請求項2】
前記脚部外壁は、更に、
前記脚部底壁から上方に向けて延びる下部外壁と、
前記下部外壁と前記第1膨出部との間で延び、前記第1膨出部の出る方向と同じ方向で膨出する第2膨出部と、を有し、
前記第1膨出部は、前記板部の中央から前記トレイの外周に向かう方向において、前記第2膨出部よりも外側に膨出している、請求項1に記載のトレイ。
【請求項3】
前記脚部は、水平方向に延び、前記脚部底壁よりも上方であって、かつ前記第1膨出部よりも下方に位置する脚部中壁を有し、
前記脚部内壁は、前記脚部底壁から前記脚部中壁までの間で延びている、請求項1又は2に記載のトレイ。
【請求項4】
前記板部の中央に、移載装置により保持可能な保持部を備え、
前記脚部は、前記板部における前記保持部よりも外周側で、下方に向けて延びており、
前記保持部は、
上方を向く面を有する保持上壁と、
前記保持上壁よりも下方に位置する保持下壁と、
前記保持下壁から前記保持上壁に向けて延びる保持側壁と、を有し、
前記保持側壁は、前記一対の第1辺側に、第1保持側壁と、前記第1辺の延びる向きで前記第1保持側壁と異なる位置に形成された第2保持側壁と、を有し、
前記第1保持側壁は、前記第2保持側壁よりも大きな勾配で、前記保持下壁から前記保持上壁に向けて延びている、請求項1~3のいずれか一項に記載のトレイ。
【請求項5】
前記保持上壁には、当該保持上壁を上下方向に貫通し、前記移載装置により係止可能な係止孔が形成されており、
前記保持上壁において、前記第1辺の延びる方向で前記第1保持側壁に連なる部位を傾斜側上壁部とすると、前記係止孔は、少なくとも前記傾斜側上壁部に形成されている、請求項4に記載のトレイ。
【請求項6】
前記板部の四辺の延びる方向に沿って、前記板部から上方に向けて延びる側壁を備え、
前記脚部は、前記脚部外壁と前記脚部内壁との間で延びる脚部側壁を有し、
前記板部の四隅の上方に位置し、前記四隅側に位置する前記脚部において、前記脚部外壁と前記脚部側壁、及び前記側壁同士の少なくとも一方を湾曲して連結する湾曲部を備え、
前記湾曲部は、上方に向かって延びるに従い、前記脚部外壁と同じ勾配で、水平方向において前記板部の中央からトレイの外周に向かって延びている、請求項 1~5のいずれか一項に記載のトレイ。
【請求項7】
前記トレイが上下に積み重ねられた状態において、下側の前記トレイの前記第1膨出部と、上側の前記トレイの前記脚部外壁との間に第1隙間が形成され、下側の前記トレイの前記脚部内壁と、上側の前記トレイの前記脚部内壁との間に第2隙間が形成される、請求項1~6のいずれか一項に記載のトレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下に積み重ねることが可能なトレイの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、板部と、この板部から下方に延びる脚部とを備えるトレイが記載されている。脚部の上方には、開口が形成されており、上側のトレイの脚部の先端を、下側のトレイの脚部の開口に挿入することで、トレイ同士を上下に積み重ねることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7-040452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上下に積み重ねられたトレイのうち、上側のトレイを上方に引き出す際に、トレイの外周縁側が下方に向けて垂れる場合がある。この場合、上側のトレイにおける脚部の外周が、この脚部が挿入された下側のトレイの脚部の内周と干渉し、上側のトレイが下側のトレイから引き出しにくくなる場合がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みたものであり、トレイを上下に積み重ねた状態から、上側のトレイを下側のトレイに対して容易に引き出すことが可能なトレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明は、一対の第1辺と、第1辺と交差する向きに延びる一対の第2辺とを四辺とする平面視において略矩形状の板部と、板部から下方に向けて延び、上方に開口を有する中空形状の脚部と、を備えるトレイに関する。トレイは、脚部の先端を、トレイよりも下側に位置する他のトレイの脚部の開口に挿入することにより、上下に積み重ねることが可能であり、脚部は、脚部底壁と、板部の中央から外周に向かう方向を向き、脚部底壁から上方に向けて延びる脚部外壁と、脚部外壁と反対側で、前記脚部底壁から上方に向けて延びる脚部内壁と、を有し、脚部内壁は、脚部外壁よりも大きな勾配で、脚部底壁から上方に向けて延びている。脚部外壁から上方に向けて延び、板部の中央からトレイの外周に向かう方向に膨出する第1膨出部を備えている。
【0007】
上記構成では、トレイの脚部の先端を、このトレイよりも下側に位置する他のトレイの脚部の開口に挿入することにより、トレイ同士を上下に積み重ねることが可能である。上側のトレイと下側のトレイとを上下に積み重ねた状態では、上側のトレイの脚部における脚部外壁と、下側のトレイの第1膨出部との間で、第1隙間が形成され、上側のトレイの脚部内壁と、下側のトレイの脚部内壁との間に第2隙間が形成される。このため、上下に積み重ねられたトレイのうち、上側のトレイを下側のトレイから上方に引き出す際に、トレイの外周縁部が下方に向けて垂れた場合でも、上下に積み重ねられたトレイ同士の脚部外壁の間の第1隙間と、脚部内壁の間の第2隙間とにより、トレイ同士の当接が緩和される。これにより、上側のトレイを下側のトレイから容易に引き出すことができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたトレイであって、脚部外壁は、更に、脚部底壁から上方に向けて延びる下部外壁と、下部外壁と第1膨出部との間で延び、第1膨出部の出る方向と同じ方向に膨出する第2膨出部と、を有する。第1膨出部は、板部の中央から前記トレイの外周に向かう方向において、第2膨出部よりも外側に膨出している。上記構成では、トレイが上下に積み重ねられ場合に、上側のトレイの下部外壁と、下側のトレイの第2膨出部との間に第3隙間が形成され、上側のトレイと下側のトレイとの脚部外壁同士の当接面積を小さくすることができる。これにより、上側のトレイを上方に向けて引き出す際に、脚部外壁同士の当接が緩和され、トレイの引き出しをいっそう容易にすることができる。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のトレイであって、脚部は、水平方向に延び、脚部底壁よりも上方であって、第1膨出部よりも下方に位置する脚部中壁を有し、脚部内壁は、脚部底壁から脚部中壁までの間で延びている。上記構成では、脚部中壁が膨出部よりも下側の位置にあるため、上側のトレイの脚部の先端における、下側のトレイへの挿入量が少なくなる。これにより、上側のトレイを上方に向けて引き出す際に、トレイの引き出しをいっそう容易にすることができる。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載のトレイであって、板部の中央に、移載装置により保持可能な保持部を備え、脚部は、板部における保持部よりも外周側で、下方に向けて延びており、保持部は、上方を向く面を有する保持上壁と、保持上壁よりも下方に位置する保持下壁と、保持下壁から保持上壁に向けて延びる保持側壁と、を有し、保持側壁は、一対の第1辺側に、第1保持側壁と、第1辺の延びる向きで第1保持側壁と異なる位置に形成された第2保持側壁と、を有し、第1保持側壁は、第2保持側壁よりも大きな勾配で、保持下壁から保持上壁に向けて延びている。上記構成では、上側のトレイを下側のトレイに積み重ねた場合に、保持部において、第1保持側壁と第2保持側壁との勾配差により、上側のトレイの第1壁部と下側のトレイの第1壁部との間に隙間が形成される。これにより、移載装置により保持部を保持した状態で、上側のトレイを上方に向けて引き出す際に、上側のトレイを下側のトレイに対して上方に引き出し易くすることができる。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載のトレイであって、保持上壁には、当該保持上壁を上下方向に貫通し、移載装置により係止可能な係止孔が形成されている。保持上壁において、第1辺の延びる方向で第1保持側壁に連なる部位を傾斜側上壁部とすると、係止孔は、少なくとも傾斜側上壁部に形成されている。上記構成では、上側のトレイと下側のトレイとが積み重ねられた場合に、傾斜側上壁部に形成された係止孔が、上側のトレイの第1保持側壁と下側のトレイの第1保持側壁との間に形成された隙間に連通する。これにより、上側のトレイを下側のトレイから上方に引き出す際に、係止孔から空気がトレイの隙間に流入し、トレイの引き出しをいっそう容易にすることができる。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか一項に記載のトレイであって、板部の四辺の延びる方向に沿って、板部から上方に向けて延びる側壁を備え、脚部は、脚部外壁と脚部内壁との間で延びる脚部側壁を有し、板部の四隅の上方に位置し、四隅側に位置する脚部において、脚部外壁と脚部側壁、及び側壁同士の少なくとも一方を湾曲して連結する湾曲部を備え、湾曲部は、上方に向かって延びるに従い、脚部外壁と同じ勾配で、水平方向において板部の中央からトレイの外周に向かって延びている。上記構成では、上側のトレイを下側のトレイに積み重ねた際に、トレイ同士の湾曲部が当接することで、上側のトレイの脚部における、下側のトレイの脚部の開口への挿入量が制限される。これにより、上下に積み重ねられたトレイ同士の、脚部外壁での隙間と、脚部内壁での隙間が形成され易くなる。また、上側のトレイの脚部が、下側のトレイの脚部の開口に嵌りこみ過ぎてしまうのを抑制することができる。これらにより、トレイの引き出しをいっそう容易にすることができる。
【0013】
請求項7に係る発明は、請求項1~6のいずれか一項に記載のトレイであって、トレイが上下に積み重ねられた状態において、下側のトレイの第1膨出部と、上側のトレイの脚部外壁との間に第1隙間が形成され、下側のトレイの脚部内壁と、上側のトレイの脚部内壁との間に第2隙間が形成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、保管時には上下に積み重ねることで保管スペースの増加を抑制でき、使用時には、上側のトレイを下側のトレイから上方に引き出し易いトレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】トレイを上方側から見た斜視図である。
図2】トレイを下方側から見た斜視図である。
図3】トレイの断面図である。
図4】保持部を拡大して示す図である。
図5図4のA-A矢視での断面図である。
図6図4のB-B矢視での断面図である。
図7】湾曲部を拡大して示す図である。
図8図7のC-C矢視での断面図である。
図9図8のD-D矢視での断面図である。
図10】ネスティング状態のトレイを説明する図である。
図11】上側のトレイを下側のトレイから引き出す際の脚部の変位を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態) 本発明のトレイの実施形態について、図面を用いて説明する。本実施形態に係るトレイは、物品を載置して保管、又は搬送するものである。図1はトレイを上方から見た斜視図である。図2は、トレイを下方から見た斜視図である。
【0017】
トレイ100は、保管時には、脚部20の先端を、このトレイよりも下側に位置する他のトレイの脚部の開口に挿入することにより、上下に積み重ねて保管することが可能である。一方、使用時には、上下に積み重ねられたトレイのうち、上側のトレイを上方に引き出して使用する。以下では、複数のトレイが上下に積み重ねた状態を、「ネスティング状態」とも記載する。
【0018】
トレイ100は、板部10と、脚部20と、第1膨出部40と、保持部50と、第1側壁60と、第2側壁61と、湾曲部70とを備えている。トレイ100は、例えば、ポリプロピレン等の樹脂を成形して形成されている。
【0019】
板部10は、平面視において略矩形状の部位であり、載置面13と、裏面14と、挿入部15と、を有している。板部10は、長辺である一対の第1辺11と、この第1辺11と交差する向きに延びる短辺である一対の第2辺12とを四辺とする部位である。載置面13は、トレイ100の使用時において、上方を向く面であり、物品が載置される面である。裏面14は、トレイ100の使用時において、下方を向く面であり、載置面13に対して反対側を向く面でもある。
【0020】
以下では、板部10において第1辺11の延びる方向を第1方向D1と記載し、第2辺12の延びる方向を第2方向D2と記載する。板部10において載置面13及び裏面14の向く方向を高さ方向D3と記載する。
【0021】
板部10には、複数の挿入部15が形成されている。挿入部15は、載置面13側で開口し、載置面13に載置された物品の一部が挿入される窪みである。複数の挿入部15は、板部10において、保持部50が位置する載置面13の中央よりもトレイの外周側に形成されている。本実施形態では、挿入部15は、第1方向D1及び第2方向D2にそれぞれ延び、平面視においてL字状に開口する形状である。挿入部15の形状はこれに限られるものではなく、楕円、四角形、三角形、棒状など、載置面13に載置される物品の一部に適した形状で成形することができる。
【0022】
板部10の裏面14側には、板部10から下方に向けて延びる嵌合突部16が設けられている。嵌合突部16は、トレイ100をパレットのデッキ面に保持するための部位であり、具体的には、パレットのデッキ面に形成された開口に挿入される部位である。本実施形態では、嵌合突部16は、板部10の裏面14側で、保持部50から下方に向けて延びている。
【0023】
板部10における第1辺11側の縁、及び第2辺12側の縁には、第1側壁60及び第2側壁61が上方に向けて延びている。第1側壁60と第2側壁61とは、板部10の四隅の上方に位置する湾曲部70により繋がっている。湾曲部70の形状については後述する。トレイ100において、第1側壁60,第2側壁61及び湾曲部70の各上端により、トレイ100の外周が形成されている。なお、第1,第2側壁60,61は、第1,第2方向D1,D2それぞれに連続して延びていなくともよく、一部が不連続となっていてもよい。
【0024】
図3に示されるように、第1膨出部40は、脚部20(詳しくは、後述する脚部外壁22)から上方に向けて延びる部位である。第1膨出部40は、第1方向D1において、板部10の中央からトレイ100の外周に向けて、脚部20よりも膨出した部位である。具体的には、第1膨出部40における脚部20に繋がる部位40Aは、脚部20の後述する脚部外壁22よりも大きな勾配で、上方に向けて延びている。なお、本実施形態では、「勾配」を、高さ方向D3を基準(即ち、0度)とし、この高さ方向D3から外側又は内側に開く角度により定めている。これにより、脚部20は、第1膨出部40に対してのトレイ100の外周側から板部10の中央に向けて絞られた形状となっている。なお、「トレイ100の外周側から板部10の中央に向けて」とは、脚部20が板部10の第2辺12側で下方に延びている場合は、第1方向D1において、トレイ100の外周を形成する第2側壁61の上端から板部10の中央に向けた方向である。
【0025】
本実施形態では、第1膨出部40は、第2方向D2に沿って延びることで、第2側壁61の一部を形成している。言い換えると、本実施形態では、第2側壁61のうち脚部20の延びる部位が第1膨出部40である。これ以外にも、第1膨出部40は、第2側壁61の一部を形成していなくともよく、この場合において、第1膨出部40は、第2方向D2で第2側壁61に対して不連続に延びている。
【0026】
脚部20は、板部10を支持する部位である。本実施形態では、トレイ100は、板部10の裏面14から下方に向けて延びる6つの脚部20を備えている。各脚部20は、板部10の裏面14において、短辺である第2辺12側から下方に向けて延びている。各脚部20は、第2辺12の延びる第2方向D2に沿って並んで位置している。
【0027】
図3に示されるように、脚部20は、脚部底壁21と、脚部外壁22と、脚部内壁23と、脚部中壁24とを備えている。脚部20は、各壁21,22,23,24が連なることで、上方側に開口25を有する中空形状の部位である。
【0028】
脚部外壁22は、第1方向で、板部10の中央からトレイ100の外周を向き、脚部底壁21から上方に延びる部位である。具体的には、脚部外壁22は、上方に向けて延びるほど、第1方向D1で、板部10の中央からトレイの外周に向かうように傾斜している。脚部外壁22は、下部外壁31と、第2膨出部32とを有している。本実施形態では、脚部外壁22の勾配は、第1側壁60及び第2側壁61の勾配と同じ角度である。
【0029】
下部外壁31は脚部底壁21から上方に向けて延びる部位である。第2膨出部32は、下部外壁31から第1膨出部40までの間で延び、第1方向D1で下部外壁31よりも外側に膨出する部位である。具体的には、第2膨出部32における下部外壁31に繋がる部位32Aは、下部外壁31よりも大きな勾配で、上方に向けて延びている。これにより、下部外壁31は、第2膨出部32に対してトレイ100の外周側から板部10の中央に向けて絞られた形状となっている。脚部外壁22は、上方から下方に向けて、第2膨出部32、下部外壁31の順に移行するほど、第1方向D1で、トレイ100の外周側から板部10の中央に向けて絞られた形状となっている。
【0030】
脚部内壁23は、脚部外壁22に対して、第1方向D1での反対側で、脚部底壁21から上方に延びる部位である。脚部内壁23は、上方に向けて延びるほど、第1方向D1で、トレイ100の外周側から板部10の中央に向かうように傾斜している。具体的には、脚部内壁23は、脚部外壁22よりも大きな勾配で、脚部底壁21から上方に向けて傾斜して延びている。
【0031】
脚部中壁24は、脚部内壁23の上端から水平方向に延びる部位である。脚部中壁24は、脚部底壁21よりも上方であって、第1膨出部40よりも下方に位置している。より具体的には、脚部中壁24は、脚部底壁21よりも上方であって、第2膨出部32よりも下方に位置している。
【0032】
脚部外壁22と、脚部内壁23と脚部中壁24とは脚部側壁27により繋がっている。脚部側壁27は、脚部内壁23及び脚部中壁24と、脚部外壁22との間で、第1方向D1で湾曲して延びる部位である。
【0033】
上記構成の脚部20では、脚部底壁21における第1方向D1のそれぞれの端から、脚部外壁22と脚部内壁23とが上方に向けて延びることで、上方側に開口25を有する中空形状と成っている。また、脚部内壁23と、脚部外壁22の下部外壁31とにより、ネスティング状態において、トレイ100の脚部20の先端が挿入可能な挿入空間26が形成されている。
【0034】
保持部50は、ネスティング状態のトレイから上側のトレイ100を引き出す際に、移載装置により保持される部位である。図4は、ネスティング状態のトレイのうち、保持部50を拡大して示している。図4に示されるように、保持部50は、上方を向く面を有する保持上壁51と、保持上壁51よりも下方に位置する保持下壁52と、高さ方向D3において、保持下壁52から保持上壁51に向けて延びる保持側壁53とを有している。
【0035】
保持部50は、2つの保持上壁51を有している。各保持上壁51は、第1方向D1に並んでおり、連結部59により第1方向D1で連結されている。連結部59は、高さ方向D3において、各保持上壁51よりも下方であって、保持下壁52よりも上方に位置している。各保持上壁51には、当該保持上壁51を貫通し、移載装置が保持部50を保持する際に係止可能な係止孔56が形成されている。なお、係止孔56の形状については後述する。
【0036】
保持側壁53は、第1保持側壁54、及び第2保持側壁55を有している。保持部50において、第1保持側壁54と、第2保持側壁55とは、第1方向D1で異なる位置に形成されている。本実施形態では、2つの第1保持側壁54は、第1方向D1で連結部59を挟んで両側に位置している。また、2つの第2保持側壁55は、第1方向D1で第1保持側壁54よりも外側に位置している。
【0037】
図5は、ネスティング状態での保持部50における、図4のA―A矢視での断面図である。保持部50は、第2方向D2で外側に向く面を有する1対の第1保持側壁54を備えている。各第1保持側壁54は、高さ方向D3で、保持下壁52から上方に延びるほど、第2方向D2で、トレイ100の外周である第1側壁60の上端側から板部10の中央に向けて延びている。
【0038】
図6は、ネスティング状態での保持部50における、図4のB-B矢視での断面図である。保持部50は、第2方向D2で外側に向く面を有する1対の第2保持側壁55を備えている。各第2保持側壁55は、高さ方向D3で、保持下壁52から上方に延びるほど、第2方向D2で、トレイ100の外周である第1側壁60の上端側から板部10の中央に向けて延びている。
【0039】
第1保持側壁54は、第2保持側壁55よりも大きな勾配で、保持下壁52から保持上壁51に向けて延びている。本実施形態では、図6に示されるように、第1保持側壁54は、第2方向D2で、第2保持側壁55よりも外側に膨出しており、第2方向D2に向く面の位置が、第2保持側壁55と異なっている。
【0040】
保持側壁53における、第1保持側壁54と第2保持側壁55との位置関係は、上記の構成に限定されない。例えば、第2保持側壁55は、第1保持側壁54よりも第2方向D2で外側に膨出していてもよい。また、2つの第2保持側壁55は、第1方向D1で連結部59を挟んで両側に位置し、2つの第1保持側壁54は、第1方向D1で第2保持側壁55よりも外側に位置していてもよい。
【0041】
保持上壁51において、第1保持側壁54と連なる側の部位を第1上壁部位57と記載し、第2保持側壁55と連なる側の部位を第2上壁部位58と記載する。保持上壁51には、第1方向D1及び第2方向D2それぞれに広がる略矩形状の係止孔56が形成されている。係止孔56における、第1方向D1での開口端のうち連結部59側(即ち、板部10の中央側)の端は、第1上壁部位57まで位置し、第1方向D1での開口端のうち反対側の端は、第2上壁部位58まで位置している。本実施形態では、第1上壁部位57が、傾斜側上壁部の一例である。
【0042】
ネスティング状態のトレイでは、上側のトレイ100の保持部50と、下側のトレイ100の保持部50とが上下に積み重ねられる。ここで、保持部50の第1保持側壁54は、第2保持側壁55よりも勾配が大きいため、図5に示されるように、第1保持側壁54と第2保持側壁55との勾配差により、第1保持側壁54同士の間に隙間T4が形成される。また、係止孔56は、保持上壁51において第1上壁部位57を貫通しているため、係止孔56と、第1保持側壁54同士の間に形成された隙間T4とが連通する。なお、図6では、上側のトレイ100と下側のトレイ100との第2保持側壁55同士の間に隙間は形成されていないが、若干の隙間が形成されていてもよい。
【0043】
図7は、ネスティング状態のトレイにおいて、湾曲部70を拡大して示す図である。図8は、図7のC-C矢視での断面図である。図9は、図8のD―D矢視での断面図である。
【0044】
湾曲部70は、板部10における四隅上方において、第1側壁60と、第2側壁61とを連結する部位である。図8図9に示されるように、湾曲部70において、上方に向かう部位は、上方に向かって延びるほど、脚部外壁22と同じ勾配で、水平方向において板部10の中央からトレイ100の外周側に向かって延びている。
【0045】
次に、ネスティング状態のトレイについて説明する。図10は、ネスティング状態のトレイの断面図である。ネスティング状態のトレイにおいて、上側のトレイ100を「上側トレイ100A」と記載し、下側のトレイ100を「下側トレイ100B」と記載する。図11は、ネスティング状態のトレイの断面図であって、上側トレイ100Aを下側トレイ100Bに対して白抜き矢印で示す上方に引き出す場面を示している。
【0046】
上側トレイ100Aの脚部20の先端を、下側トレイ100Bの載置面13に向けた状態で、下側トレイ100Bの脚部20の挿入空間26に挿入することで、ネスティング状態にする。このとき、図10に示されるように、脚部外壁22側において、下側トレイ100Bの第1膨出部40と、上側トレイ100Aの第2膨出部32との間に第1隙間T1が形成される。また、脚部内壁23の勾配が、脚部外壁22の勾配よりも大きいため、脚部内壁23側において、各トレイ100A,Bの脚部内壁23同士の間に第2隙間T2が形成される。
【0047】
更に、ネスティング状態のトレイでは、脚部外壁22側で、上側トレイ100Aの下部外壁31と、下側トレイ100Bの第2膨出部32との間に第3隙間T3が形成される。これら、第1~第3隙間T1~T3により、上側トレイ100Aと下側トレイ100Bとの脚部同士の当接面積を小さくすることができる。
【0048】
脚部内壁23側では、脚部中壁24が第1膨出部40よりも下側の位置に形成されているため、上側トレイ100Aの脚部20の先端における、下側トレイ100Bへの挿入量が少なくなり、脚部内壁23において、当接面積を小さくすることができる。
【0049】
更に、ネスティング状態のトレイでは、各トレイ100A,Bの湾曲部70同士が干渉する。本実施形態では、湾曲部70の勾配が、脚部外壁22、第1側壁60、及び第2側壁61の勾配と同じ角度であるため、ネスティング状態のトレイは、第1側壁60同士、第2側壁61同士、湾曲部70同士で当接することとなり、上側トレイ100Aの脚部20における、下側トレイ100Bの挿入空間26への、さらなる嵌まり込み(圧入)が制限される。これにより、上側トレイ100Aを下側トレイ100Bから引き出す際に、上側トレイ100Aの引き出しを容易にすることができる。
【0050】
次に、図11に示されるように、ネスティング状態のトレイに対して、上側トレイ100Aを下側トレイ100Bから上方に引き出す場合、移載装置の係止爪を保持部50の係止孔56に挿入させた状態で、移載装置に板部10の載置面13を吸着させる。このとき、図5で示したように、各トレイ100A,Bの保持部50において、係止孔56から、各トレイ100A,Bの第1保持側壁54同士の間に形成された隙間T4に空気が流入し、上側トレイ100Aと下側トレイ100Bとの密着を緩和させる。
【0051】
移載装置により上側トレイ100Aを上方に引き出す。このとき、上側トレイ100Aにおける第1方向D1での外周縁部が、下方に向けて垂れる場合がある。板部10の垂れにより、上側トレイ100Aの脚部20の先端のうち、脚部外壁22側が、下側トレイ100Bの脚部外壁22から遠ざかり、脚部内壁23側が、下側トレイ100Bの脚部内壁23に近づく。図11では、上側トレイ100Aにおける脚部20の先端での変形方向を、墨付きの矢印により示している。
【0052】
本実施形態では、上側トレイ100Aの脚部20の先端の向きが変形した場合でも、第1~第3隙間T1~T3により、各トレイ100A,B間の脚部内壁23同士の当接が緩和される。これにより、移載装置により上側トレイ100Aを下側トレイ100Bから引き出す際に、上側トレイ100Aの引き出しを容易にすることができる。
【0053】
以上説明した本実施形態では以下の効果を奏することができる。
ネスティング状態のトレイでは、各トレイ100A,B間での脚部外壁22と第1膨出部40との間に第1隙間T1が形成され、各トレイ100A,B間での脚部内壁23の間に第2隙間T2が形成される。このため、上側トレイ100Aを下側トレイ100Bから上方に引き出す際に、上側トレイ100Aの外周縁部が下方に向けて垂れた場合でも、トレイ同士の当接が緩和され、上側トレイ100Aを下側トレイ100Bから容易に引き出すことができる。
【0054】
ネスティング状態のトレイでは、上側トレイ100Aの下部外壁31と下側トレイ100Bの第2膨出部32との間に第3隙間T3が形成される。これにより、脚部外壁22同士の当接が緩和され、上側トレイ100Aを上方に向けて引き出す際に、上側トレイ100Aの引き出しをいっそう容易にすることができる。
【0055】
各トレイ100A,Bの脚部中壁24により、脚部20の下側トレイ100Bへの挿入量が制限され、トレイ同士の当接面積を小さくすることができる。これにより、上側トレイ100Aを上方に向けて引き出す際に、トレイの引き出しをいっそう容易にすることができる。
【0056】
各トレイ100A,Bの保持部50において、第1保持側壁54と第2保持側壁55との勾配差により、各トレイ100A,Bの第1保持側壁54同士の間に隙間T4が形成される。これにより、移載装置により保持部50を保持した状態で、上側トレイ100Aを上方に向けて引き出す際に、上側トレイ100Aを下側トレイ100Bに対して上方に引き出し易くすることができる。
【0057】
保持部50に形成された係止孔56が、各トレイ100A,Bの第1保持側壁54同士の間に形成された隙間T4に連通する。これにより、上側トレイ100Aを下側トレイ100Bから上方に引き出す際に、係止孔56から空気が保持部50同士の隙間T4に流入し、上側トレイ100Aの引き出しをいっそう容易にすることができる。
【0058】
各トレイ100A,Bの湾曲部70同士が当接することで、上側トレイ100Aの脚部20における下側トレイ100Bへの挿入量が制限される。これにより、ネスティング状態のトレイにおいて、第1~第3隙間T1~T3が形成され易くなる。また、上側トレイ100Aの脚部20が、下側トレイ100Bの脚部20に嵌りこみ過ぎてしまうのを抑制することができる。これらにより、上側トレイ100Aの引き出しをいっそう容易にすることができる。
【0059】
(その他の実施形態) 本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上述の実施形態では、脚部外壁22は、第2膨出部32を有していた。これに代えて、脚部外壁22は、第2膨出部32を有しておらず、下部外壁31から第1膨出部40まで膨出することなく延びていてもよい。また、脚部外壁22は、第2膨出部32から第1膨出部40に向けて延びる第3膨出部を有していてもよい。これにより、ネスティング状態のトレイにおいて、上側トレイ100Aと下側トレイ100Bとの脚部外壁22同士での当接をいっそう緩和することができ、上側トレイ100Aを上方に向けていっそう引き出し易くすることができる。
【0060】
上述の実施形態では、保持部50の保持上壁51には、係止孔56が形成されていた。これに代えて、保持部50は、移載装置により保持可能な構成であればよく、係止孔56が形成されていなくともよい。
【0061】
上述の本実施形態では、脚部20は、板部10の第2辺12側の縁において、四隅から離れた位置で下方に向けて延びていた。これに限らず、脚部20の内の一つが、板部10の四隅から下方に向けて延びていてもよい。この場合において、板部10の四隅に位置する脚部20のうち、第1方向D1に延びる脚部側壁27は、脚部外壁22と同様な構成となっていてもよい。更に、脚部側壁27の上方に第1方向D1に延びる第1膨出部40が形成されていてもよい。
【0062】
脚部20の内の一つが、板部10の四隅から下方に向けて延びている場合において、湾曲部70は、脚部外壁22と、脚部側壁27とを繋ぐ部位であってもよい。言い換えると、脚部20において、脚部外壁22と、脚部側壁27とを繋ぐコーナー部が湾曲部70となっていてもよい。
【0063】
上述の実施形態では、トレイ100は、6つの脚部20を有していた。これに代えて、トレイ100は、少なくともとも、4つの脚部を有していればよい。また、上述の実施形態では、第1辺11が第2辺12よりも長く、複数の脚部20は、保持部50から最も離れた位置にあって、移載装置によって移載する際に変形しやすい第2辺12の縁から延びていた。これに限らず、複数の脚部20は、板部10において、第2辺12側の縁から延びていなくともよく、第1辺11側の縁から延びていてもよい。
【0064】
上述の実施形態では、トレイ100は、湾曲部70を備えていた。これに代えて、トレイ100は、湾曲部70を備えていなくともよい。また、トレイ100が湾曲部70を備える構成であっても、湾曲部70の勾配が、脚部外壁22よりも大きな勾配であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…板部、20…脚部、21…脚部底壁、22…脚部外壁、23…脚部内壁、24…脚部中壁、25…開口、31…下部外壁、32…第2膨出部、40…第1膨出部、50…保持部、51…保持上壁、53…保持側壁、56…係止孔、70…湾曲部
図1
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