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特開2023-118455曲がり削孔操作パラメータ算出装置、曲がり削孔操作パラメータ算出方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118455
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】曲がり削孔操作パラメータ算出装置、曲がり削孔操作パラメータ算出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E21B 7/04 20060101AFI20230818BHJP
   E21B 47/02 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
E21B7/04 A
E21B47/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021412
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000115463
【氏名又は名称】ライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋本 哲平
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】上野 一彦
(72)【発明者】
【氏名】江守 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】須田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼原 成彬
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AA09
2D129AB21
2D129BA01
2D129BA28
2D129CA02
2D129CA04
2D129CA18
2D129CA19
2D129CB11
2D129CB12
2D129DC13
2D129FA08
2D129GA07
2D129JA01
(57)【要約】
【課題】機械学習の基礎となる過去の曲がり削孔の操作に不適切な操作が含まれていたとしても、適切な操作パラメータを算出する。
【解決手段】情報処理装置100は、機械学習を用いた操作パラメータの取得とは別に、所定の物理モデルによって操作パラメータを算出し、これら両者の差が閾値を超えない場合には、機械学習から得られた操作パラメータに関する情報を出力し、これら両者の差が閾値を超える場合には、物理モデルから得られた操作パラメータに関する情報を出力する。このようにして出力された操作パラメータを用いて、曲がり削孔機1を用いた曲がり削孔の本作業が行われる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲がり削孔装置の削孔ビットの位置及び姿勢を示す位置姿勢パラメータと、前記曲がり削孔装置を操作するための操作パラメータとを時間経過とともに蓄積した結果を説明変数及び目的変数として機械学習した学習済アルゴリズムに対して、曲がり削孔の或るステップにおける計画削孔ラインに関する情報、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータを入力し、次のステップに対する第1の目標操作パラメータを取得する取得部と、
前記曲がり削孔の或るステップにおける前記計画削孔ラインに関する情報、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータから物理的な計算に基づいて、次のステップに対する第2の目標操作パラメータを算出する算出部と、
前記取得部によって取得された第1の目標操作パラメータと、前記算出部によって算出された第2の目標操作パラメータとの差が閾値を超えない場合には、前記第1の目標操作パラメータに関する情報を出力し、前記差が前記閾値を超える場合には、前記第2の目標操作パラメータに関する情報を出力する出力部と
を備える曲がり削孔操作パラメータ算出装置。
【請求項2】
前記第1の目標操作パラメータ及び前記第2の目標操作パラメータは、曲進割合及び/又は削孔ビットの回転角に関する操作パラメータである
請求項1記載の曲がり削孔操作パラメータ算出装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記次のステップにおける計画削孔ラインと前記削孔ビットの位置の差が、前記或るステップにおける計画削孔ラインと前記削孔ビットの位置の差よりも小さくなるように、前記次のステップに対する削孔ビットの回転角に関する操作パラメータを算出する
請求項2記載の曲がり削孔操作パラメータ算出装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記或るステップにおけるロッドの傾斜角、前記或るステップにおける前記削孔ビットの回転角、前記或るステップにおける曲進割合、及び、前記或るステップから前記次のステップに対する前記ロッドの修正角に基づいて、前記次のステップに対する削孔ビットの曲進割合に関する操作パラメータを算出する
請求項2又は3に記載の曲がり削孔操作パラメータ算出装置。
【請求項5】
曲がり削孔装置の削孔ビットの位置及び姿勢を示す位置姿勢パラメータと、前記曲がり削孔装置を操作するための操作パラメータとを時間経過とともに蓄積した結果を説明変数及び目的変数として機械学習した学習済アルゴリズムに対して、曲がり削孔の或るステップにおける計画削孔ラインに関する情報、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータを入力し、次のステップに対する第1の目標操作パラメータを取得するステップと、
前記曲がり削孔の或るステップにおける前記計画削孔ラインに関する情報、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータから物理的な計算に基づいて、次のステップに対する第2の目標操作パラメータを算出するステップと、
取得された前記第1の目標操作パラメータと、算出された前記第2の目標操作パラメータとの差が閾値を超えない場合には、前記第1の目標操作パラメータに関する情報を出力し、前記差が前記閾値を超える場合には、前記第2の目標操作パラメータに関する情報を出力するステップと
を備える曲がり削孔操作パラメータ算出方法。
【請求項6】
コンピュータに、
曲がり削孔装置の削孔ビットの位置及び姿勢を示す位置姿勢パラメータと、前記曲がり削孔装置を操作するための操作パラメータとを時間経過とともに蓄積した結果を説明変数及び目的変数として機械学習した学習済アルゴリズムに対して、曲がり削孔の或るステップにおける計画削孔ラインに関する情報、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータを入力し、次のステップに対する第1の目標操作パラメータを取得するステップと、
前記曲がり削孔の或るステップにおける前記計画削孔ラインに関する情報、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータから物理的な計算に基づいて、次のステップに対する第2の目標操作パラメータを算出するステップと、
取得された前記第1の目標操作パラメータと、算出された前記第2の目標操作パラメータとの差が閾値を超えない場合には、前記第1の目標操作パラメータに関する情報を出力し、前記差が前記閾値を超える場合には、前記第2の目標操作パラメータに関する情報を出力するステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲がり削孔の施工を管理するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
既設構造物直下の液状化対策工法として、既設構造物から離れた位置の地表から既設構造物直下に向けて削孔し、薬液注入によって地盤改良する工法(曲がり削孔による浸透固化処理工法)が知られている。この工法は、削孔開始位置である地表面から既設構造物直下までの斜線および曲線的なアプローチの削孔が必要となり、その削孔の軌跡に対して、地中埋設物の損傷リスクの回避や品質確保のために、高度な削孔軌跡管理が要求される。
【0003】
例えば特許文献1には、過去に熟練者が曲がり削孔を行った操作によって蓄積されたデータ群を機械学習し、次のステップの最適な操作パラメータを算出することで、操作者の熟練度に依存せずに高品質の削孔を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-167728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、過去の曲がり削孔の操作には不適切な操作が含まれることがあり、当該不適切な操作を含んだ学習モデルにおいては、常に最適な操作パラメータを算出することができない可能性がある。
【0006】
本発明は、機械学習の基礎となる過去の曲がり削孔の操作に不適切な操作が含まれていたとしても、適切な操作パラメータを出力し得る仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、曲がり削孔装置の削孔ビットの位置及び姿勢を示す位置姿勢パラメータと、前記曲がり削孔装置を操作するための操作パラメータとを時間経過とともに蓄積した結果を説明変数及び目的変数として機械学習した学習済アルゴリズムに対して、曲がり削孔の或るステップにおける計画削孔ラインに関する情報、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータを入力し、次のステップに対する第1の目標操作パラメータを取得する取得部と、前記曲がり削孔の或るステップにおける前記計画削孔ラインに関する情報、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータから物理的な計算に基づいて、次のステップに対する第2の目標操作パラメータを算出する算出部と、前記取得部によって取得された第1の目標操作パラメータと、前記算出部によって算出された第2の目標操作パラメータとの差が閾値を超えない場合には、前記第1の目標操作パラメータに関する情報を出力し、前記差が前記閾値を超える場合には、前記第2の目標操作パラメータに関する情報を出力する出力部とを備える曲がり削孔操作パラメータ算出装置を提供する。
【0008】
前記第1の目標操作パラメータ及び前記第2の目標操作パラメータは、曲進割合及び/又は削孔ビットの回転角に関する操作パラメータであってもよい。
【0009】
前記算出部は、前記次のステップにおける計画削孔ラインと前記削孔ビットの位置の差が、前記或るステップにおける計画削孔ラインと前記削孔ビットの位置の差よりも小さくなるように、前記次のステップに対する削孔ビットの回転角に関する操作パラメータを算出するようにしてもよい。
【0010】
前記算出部は、前記或るステップにおけるロッドの傾斜角、前記或るステップにおける前記削孔ビットの回転角、前記或るステップにおける曲進割合、及び、前記或るステップから前記次のステップに対する前記ロッドの修正角に基づいて、前記次のステップに対する削孔ビットの曲進割合に関する操作パラメータを算出するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明は、曲がり削孔装置の削孔ビットの位置及び姿勢を示す位置姿勢パラメータと、前記曲がり削孔装置を操作するための操作パラメータとを時間経過とともに蓄積した結果を説明変数及び目的変数として機械学習した学習済アルゴリズムに対して、曲がり削孔の或るステップにおける計画削孔ラインに関する情報、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータを入力し、次のステップに対する第1の目標操作パラメータを取得するステップと、前記曲がり削孔の或るステップにおける前記計画削孔ラインに関する情報、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータから物理的な計算に基づいて、次のステップに対する第2の目標操作パラメータを算出するステップと、取得された前記第1の目標操作パラメータと、算出された前記第2の目標操作パラメータとの差が閾値を超えない場合には、前記第1の目標操作パラメータに関する情報を出力し、前記差が前記閾値を超える場合には、前記第2の目標操作パラメータに関する情報を出力するステップとを備える曲がり削孔操作パラメータ算出方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、コンピュータに、曲がり削孔装置の削孔ビットの位置及び姿勢を示す位置姿勢パラメータと、前記曲がり削孔装置を操作するための操作パラメータとを時間経過とともに蓄積した結果を説明変数及び目的変数として機械学習した学習済アルゴリズムに対して、曲がり削孔の或るステップにおける計画削孔ラインに関する情報、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータを入力し、次のステップに対する第1の目標操作パラメータを取得するステップと、前記曲がり削孔の或るステップにおける前記計画削孔ラインに関する情報、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータから物理的な計算に基づいて、次のステップに対する第2の目標操作パラメータを算出するステップと、取得された前記第1の目標操作パラメータと、算出された前記第2の目標操作パラメータとの差が閾値を超えない場合には、前記第1の目標操作パラメータに関する情報を出力し、前記差が前記閾値を超える場合には、前記第2の目標操作パラメータに関する情報を出力するステップとを実行させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、機械学習の基礎となる学習データに、過去の曲がり削孔の操作で不適切な操作が含まれていたとしても、適切な操作パラメータを出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る曲がり削孔方法の概要を示す図である。
図2】曲がり削孔システムの概要を示す側面図である。
図3】削孔ビットの進行状態を示す部分拡大断面図である。
図4】情報処理装置の機能構成を示すブロック図である。
図5】削孔ビットのYZ平面における目標修正角を説明する図である。
図6】削孔ビット回転角を説明する図である。
図7】削孔ビットのXY平面における目標修正角を説明する図である。
図8】曲進割合の分類を例示する図である。
図9】次地点の曲進割合と、現地点の傾斜角、削孔ビットの回転角、曲進割合及び削孔ビットの目標修正角との関係を説明する図である。
図10】曲進割合の算出例を説明する図である。
図11】情報処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態の一例について説明する。図1において、情報処理装置100は、過去の曲がり削孔作業において蓄積されたデータから機械学習用のデータを収集するデータ収集と、その収集されたデータ群に基づいた事前学習とを経て、学習済アルゴリズムを生成する。情報処理装置100は、この学習済アルゴリズムに対し、曲がり削孔の現地点に関するデータを入力して、曲がり削孔の次地点における、削孔機1の制御に関する最適な制御値、即ち操作パラメータを目標操作パラメータとして表示、又は、その目標操作パラメータに基づいて削孔機1を自動制御するようになっている。
【0016】
ただし、過去の曲がり削孔の操作には不適切な操作が含まれることもあるから、前記学習済みアルゴリズムでは常に最適な目標操作パラメータを得ることができない可能性がある。
【0017】
そこで、情報処理装置100は、機械学習を用いた目標操作パラメータ(第1の目標操作パラメータ)の算出とは別に、所定の物理モデルによって目標操作パラメータ(第2の目標操作パラメータ)を算出し、これら両者の差が閾値を超えない場合には、機械学習から得られた目標操作パラメータ(第1の目標操作パラメータ)に関する情報を出力し、両者の差が閾値を超える場合には、物理モデルから得られた目標操作パラメータ(第2の目標操作パラメータ)に関する情報を出力する。このようにして出力された目標操作パラメータ(第1の目標操作パラメータ又は第2の目標操作パラメータ)を用いて、曲がり削孔機1を用いた曲がり削孔の本作業が行われる。
【0018】
図1に示した情報処理装置100は、コンピュータを実現するためのハードウェアとして、プロセッサ、メモリ、ストレージ、通信装置、入力装置、出力装置及びこれらを接続するバスなどを備えている。情報処理装置100における各機能は、プロセッサ、メモリなどのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサが演算を行い、通信装置による通信を制御したり、他の装置から送信されてきたデータを取得したり、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。情報処理装置100は、本発明に係る曲がり削孔操作パラメータ算出装置として機能する。
【0019】
削孔機1は、図2に示すように、可撓性を有する掘削ロッド2と、掘削ロッド2の先端に支持された削孔ビット3と、削孔ビット3先端の噴射ノズル4に掘削用水を供給する送水部5と、掘削ロッド2を介して削孔ビット3を回転させる回転駆動部と、掘削ロッド2を介して削孔ビット3を推進させる推進駆動部とを備えている。削孔機本体6には、回転駆動部及び推進駆動部等が含まれる。
【0020】
削孔ビット3には、図3に示すように、片側にテーパ面3aが形成されているとともに、先端にテーパ面3aと平行な延長方向に向けた掘削用ジェット水噴射ノズル4が備えられている。地上の送水部5(掘削用泥水圧送ポンプ)より、ロッド2を通してベントナイト泥水からなる掘削用水が供給され、噴射ノズル4から高圧で噴射されるようになっている。このとき、削孔ビット3を回転させないで押し込むことにより、図3(a)に示すようにテーパ面3aの延長方向に曲がり削孔がなされる。一方、削孔ビット3を回転させつつ押し込むことにより、図3(b)に示すように直進削孔がなされるようになっている。
【0021】
削孔機1には、図2に示すように、掘削ロッド2の先端部に配置され、削孔ビット3の位置及び姿勢を示す位置姿勢パラメータを時間経過とともに測定する位置姿勢測定部7が設けられている。操作者は、削孔ビット3の位置及び削孔ビット3の回転角、傾斜角等の位置姿勢パラメータを情報処理装置100上で逐次確認しつつ、回転駆動部及び推進駆動部を情報処理装置100の制御値等を視認しながら操作又は自動制御し、所定の計画削孔ラインに沿って削孔を行う。
【0022】
位置姿勢測定部7は、ロッド2の先端部、例えば、ロッド2先導部分にジャイロや加速度計等の計測器を内蔵しており、その計測値より削孔ビット3の位置、回転角及び傾斜角を測定する。
【0023】
また、削孔機1は、図4に示すように、送水部5、回転駆動部及び推進駆動部をそれぞれ制御するための制御値(送水圧、ロッド2の回転圧(回転トルク)、回転速度、推進圧等)、即ち、操作パラメータを時間経過とともに測定する操作値測定部8を備えている。
【0024】
この操作値測定部8は、回転駆動部及び推進駆動部を制御する制御部より制御対象となる制御値である操作パラメータ、即ち、送水圧、ロッド2の回転圧、回転速度、推進圧等を取得する。なお、操作パラメータには、削孔機1の操作具、例えば、送水部5、回転駆動部及び推進駆動部を操作するレバー、ダイヤル、スイッチ、数値入力用のテンキー等の操作量を含むようにし、その操作量をセンサやエンコーダ等で定量化して取得するようにしてもよい。
【0025】
削孔機1に接続された情報処理装置100は、位置姿勢パラメータと操作パラメータとを記録するデータロガー9を備えている。データロガー9は、削孔作業の際に計測された削孔ビット3の位置及び削孔ビット3の回転数・回転角・傾斜角等の位置姿勢パラメータを時間経過とともに記録するとともに、回転駆動部及び推進駆動部を制御するための制御値、即ち、操作パラメータを時間経過とともに記録する。
【0026】
また、情報処理装置100は、記録された位置姿勢パラメータ及び操作パラメータのデータ群に基づいて機械学習用データ及び入力用データを生成するデータ生成部10を備えている。データ生成部10は、測定された位置姿勢パラメータと操作パラメータとを同一時刻となるように同期させた機械学習用データ及び入力用データを生成し、そのデータを機械学習部11に出力又は解析部12に出力するようになっている。なお、機械学習部11への出力は、データ転送装置によって送信してもよく、USBメモリ等の着脱式のデータ記憶装置を用いてもよい。
【0027】
機械学習部11は、情報処理装置100に備えられていてもよいし、情報処理装置100とは別体のコンピュータ機器に備えられていてもよいし、クラウド上に設けられていてもよい。機械学習部11は、過去の作業において記録され、蓄積された位置姿勢パラメータ及び操作パラメータのデータ群を基に機械学習することによって、入力された計画削孔ライン、位置姿勢パラメータ及び操作パラメータに対応する次のステップの最適な操作パラメータを目標操作パラメータとして算出する学習済アルゴリズムを生成する。この機械学習は、特に手法は限定されず、例えば、多変量解析の手法、サポートベクターマシーンの手法、ニューラルネットワークの手法等を用いればよい。
【0028】
情報処理装置100に備えられた解析部12は、演算処理を行う演算部12aと、演算部12aによって実行される学習済アルゴリズムを記憶する記憶部12bとを備えている。演算部12aによって学習済アルゴリズムを実行することによって、手動入力、位置姿勢測定部7、操作値測定部8又はデータ生成部10より入力された位置姿勢パラメータ及び操作パラメータに対応する次のステップの最適な操作パラメータを算出し、目標操作パラメータとして操作者に対する操作画面又は自動制御装置に出力されるようになっている。つまり、解析部12は、曲がり削孔装置の削孔ビットの位置及び姿勢を示す位置姿勢パラメータと、前記曲がり削孔装置を操作するための操作パラメータとを時間経過とともに蓄積した結果を説明変数及び目的変数として機械学習した学習済アルゴリズムに対して、曲がり削孔の或るステップにおける計画削孔ラインに関する情報、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータを入力し、次のステップに対する第1の目標操作パラメータを取得する取得部として機能する。
【0029】
前述したように、情報処理装置100は、機械学習を用いて目標操作パラメータ(第1の目標操作パラメータ)を取得するとともに、所定の物理モデルによって目標操作パラメータ(第2の目標操作パラメータ)を算出する。算出部13は、曲がり削孔の或るステップにおける計画削孔ラインに関する情報、位置姿勢パラメータ及び操作パラメータから物理的な計算に基づいて、次のステップに対する目標操作パラメータ(第2の目標操作パラメータ)を算出する。
【0030】
出力部14は、解析部12(取得部)により取得された目標操作パラメータ(第1の目標操作パラメータ)と、算出部13によって算出された目標操作パラメータ(第2の目標操作パラメータ)との差が閾値を超えない場合には、解析部12(取得部)により取得された目標操作パラメータ(第1の目標操作パラメータ)に関する情報を出力し、差が閾値を超える場合には、算出部13によって算出された目標操作パラメータ(第2の目標操作パラメータ)に関する情報を出力する。
【0031】
(A.機械学習)
次に、本実施形態に係る機械学習について説明する。機械学習の具体的な手順は以下のとおりである。
(A-1.データ収集)
過去に行われた複数回の曲がり削孔作業において、削孔ビット3の位置及び姿勢を示す位置姿勢パラメータを時間経過とともに記録し、位置姿勢パラメータのデータを蓄積する位置姿勢パラメータデータ収集と、送水部5、回転駆動部及び推進駆動部を制御するための操作パラメータを時間経過とともに記録し、操作パラメータのデータを蓄積する操作パラメータデータ収集とを行う。
【0032】
通常、実際の曲がり削孔作業は、以下のような手順で行い、その時系列とともに各ステップにおける位置姿勢パラメータ及び操作パラメータを取得し、記録する。
【0033】
先ず、削孔開始位置の地盤表層部に削孔機1を設置するとともに、必要に応じてガイド管を設置し、削孔機本体6の回転駆動軸にロッド2を連結し、削孔ビット3を回転推進または推進のみにより地盤に挿入し、削孔を開始する。また、ロッド2を通して送水部5よりベントナイト泥水等の掘削水の送水を開始する。
【0034】
その際、位置姿勢測定部7による位置姿勢パラメータの測定、即ち、削孔ビット3の三次元位置、回転角及び傾斜角の測定を開始し、随時データロガー9に送信するとともに、操作値測定部8による操作パラメータの測定、即ち、送水部5による掘削水の送水圧、回転駆動部のロッド2の回転圧・回転速度、推進駆動部のロッド2の推進圧の測定を開始し、随時データロガー9に送信する。また、必要に応じて、それらを操作する際の操作具の操作量を測定し、随時データロガー9に送信する。
【0035】
そして、ロッド2構成する管体をそれぞれ継ぎ足しながら、削孔機本体6によりロッド2に回転力および推進力を与え、ロッド2先端の削孔ビット3により削孔しながら所定の位置まで地中を直線的に推進させる。その際、地盤の状態等によって推進方向や推進速度に変化が生じた場合には、操作者は、計画削孔ライン及び削孔速度となるように、回転駆動部のロッド2の回転圧・回転速度、推進駆動部の推進圧及び送水部5の送水圧を調節する。そして、作業が行われている間、位置姿勢測定部7は、位置姿勢パラメータ、即ち、削孔ビット3の位置、回転角及び傾斜角が時間経過とともに随時測定し、データロガー9に送信する。
【0036】
また、操作値測定部8 は、変化する回転駆動部のロッド2の回転圧・回転速度、推進動部の推進圧及び送水部5の送水圧を時間経過とともに測定し、データロガー9に送信する。なお、必要に応じて、調節の際に操作したレバー等の操作具の操作量も定量的に測定し、データロガー9に送信するようにしてもよい。
【0037】
一方、曲線推進を行うときには、回転駆動部のロッド2の回転圧・回転速度を調節して、削孔ビット3の回転角を所望の位置に合わせてロッド2の回転を停止させ、その状態で掘削水を噴射しつつ、推進駆動部の推進圧を調節してロッド2に推進力のみを与える。その際、図3(a)に示すように、削孔ビット3のテーパ面3aに地盤より作用する力により削孔ビット3の推進方向が徐々に変化し、送水部5の送水圧、推進駆動部の推進圧を調節しつつ計画削孔ラインに沿って地中を曲線的に推進させる。また、必要に応じて回転駆動部のロッド2の回転圧・回転速度を調節する。そして、作業が行われている間、位置姿勢測定部7は、位置姿勢パラメータ、即ち、削孔ビット3の位置、回転角及び傾斜角を時間経過とともに随時測定し、データロガー9に送信する。
【0038】
また、操作値測定部は、操作によって変化する回転駆動部のロッド2の回転圧・回転
速度、推進駆動部の推進圧及び送水部5の送水圧を時間経過とともに随時測定し、データロガー9に送信する。なお、必要に応じて、調節の際に操作した操作具の操作量も定量的に測定し、データロガー9に送信する。
【0039】
次に、削孔ビット3が所定の方向に向けられたら、回転駆動部のロッド2の回転圧・回転速度、推進駆動部の推進圧及び送水部5の送水圧を調節し、当該所定の方向に向けた直進的な推進に移行し、同様に位置姿勢パラメータ及び操作パラメータの測定を行う。
【0040】
このように計画された計画削孔ラインに合わせて、直進推進と曲線推進とを行っていき、各時点での位置姿勢パラメータ及び操作パラメータをそれぞれ時間経過とともに測定し、データロガー9に送信して記録する。
【0041】
(A-2.データ生成)
データ生成部10は、別々に測定され、データロガー9に送信された位置姿勢パラメータと操作パラメータとを同一時刻となるように同期させ、機械学習用データを生成し、保存する。そして、上述のデータ取集で収集されたデータ群は、機械学習用データとして生成され、機械学習部11に登録される。
【0042】
(A-3.事前学習)
事前学習において、機械学習部11は、蓄積された過去の作業における位置姿勢パラメータと操作パラメータとのデータ群を機械学習し、本作業の際に入力された計画削孔ライン、位置姿勢パラメータ及び操作パラメータに対応する次のステップにおける最適な目標操作パラメータ(第1の目標操作パラメータ)を取得するための学習アルゴリズムを生成する。
【0043】
この事前学習は、実際の作業におけるいくつもの状況を想定し、当該想定と位置姿勢パラメータ及び操作パラメータのデータ群とを関連づけて機械学習し、各状況における最適な操作パラメータを算出する法則を導き出すようになっている。例えば、データ生成において熟練操作者のデータを分類して集約し、熟練操作者に係る機械学習用データを、ニューラルネットワーク等を用いて機械学習し、入力された計画削孔ライン、位置姿勢パラメータ及び操作パラメータに対する熟練操作者の操作に倣った最適な目標操作パラメータ(第1の目標操作パラメータ)を出力する学習済アルゴリズム(解析式)を生成する。生成された各学習済アルゴリズムは、解析部12の記憶部12bに格納される。
【0044】
(B.物理モデル)
次に、物理モデルを用いて目標操作パラメータ(第2の目標操作パラメータ)を算出する手順について説明する。
【0045】
曲線削孔において操作者が主に操作する、又は主として操作時に注意する内容は、「削孔ビットの回転角」と「曲進割合」に関する操作パラメータである。なぜなら、図3を用いて説明したように、削孔ビットの回転角(つまりテーパ面3aの向き)は、その削孔ビットの進行方向を決める主要因となるからである。また、曲進割合は、例えば削孔が所定距離(例えば1m)進行する期間に操作者が曲進操作をした割合のことであり、この曲線操作を行った割合(曲進割合)は操作者が削孔ビットを曲進させたい意思を反映しているからである。そこで、本実施形態では、この2つの操作パラメータについて物理モデルによって目標操作パラメータ(第2の目標操作パラメータ)を算出する。
【0046】
(B-1.削孔ビット回転角)
まず、削孔ビット回転角を算出するための物理モデルについて説明する。図5は、YZ平面における目標修正角を説明する図であり、計画削孔ラインに対する実際の削孔位置を垂直断面方向から見たときの様子を例示している。ここでは、Z軸を上下方向(鉛直方向)とし、Y方向を削孔方向の水平方向成分としている。図5において、削孔方向のYZ平面における目標修正角θを、削孔方向の所定距離先(例えば3m先)でZ方向の現在のズレ量ΔZを所定割合に減少させるような目標点(例えば所定割合を1/2とすると、Z方向のズレ量が1/2×ΔZとなるような目標点)に対する角度とする。なお、ここでは、曲がり削孔においてロッド1本が3mであり、操作者は通常現地点から3m先を考慮して操作しているため、上記のような削孔方向の所定距離先として、3m先を用いている。
【0047】
次に、図6は、削孔ビット回転角を説明する図である。削孔ビット回転角とは、Z軸正方向と、図3で説明した削孔ビット先端のテーパ面3aが向いている方向(テーパ面3aの法線方向)とがなす角度(Z軸正方向を基準とした時計回りの角度)である。ここでは、削孔ビットの先端が現地点から前述した目標点に向かうような削孔ビット回転角θbを求めることが目的である。
【0048】
ここで、目標修正角θで削孔が1m進行したと仮定したときの、現地点に対するZ座標Zは次式で表される。
=tanθ
【0049】
次に、図7は、XY平面における目標修正角を説明する図であり、計画削孔ラインに対する実際の削孔位置を鉛直方向から見たときの様子を例示している。図7において、削孔方向のXY平面における目標修正角θを、削孔方向の所定距離先(例えば3m先)でX方向の現在のズレ量ΔXを所定割合に減少させるような目標点(例えば所定割合を1/2とすると、X方向のズレ量が1/2×ΔXとなるような目標点)に対する角度とする。そして、目標修正角θと同様の考え方で、目標修正角θで削孔が1m進行したと仮定したときの、現地点に対するX座標Xは次式で表される。
=tanθ
【0050】
以上のことから、目標修正角θ及びθで削孔が1m進行したと仮定したときの、現地点に対するX座標及びZ座標(X、Z)は次式で表される。
(X、Z)=(tanθ、tanθ
つまり、図6において、Z軸正方向と、原点と点(tanθ、tanθ)とを結ぶ線分とがなす角度(Z軸正方向を基準とした時計回りの角度)が、求めるべき削孔ビット回転角θbである。
【0051】
以上が、削孔ビット回転角を算出するための物理モデルである。つまり、この物理モデルは、或るステップ(現地点)の次のステップ(次地点)における計画削孔ラインと削孔ビットの位置の差が、或るステップにおける計画削孔ラインと削孔ビットの位置の差よりも小さくなるように、次のステップに対する削孔ビットの回転角に関する操作パラメータを算出する、というアルゴリズムである。
【0052】
(B-2.曲進割合)
次に、曲進割合を算出するための物理モデルを説明する。曲進割合は、前述したように削孔が所定距離(例えば1m)進行する期間に操作者が曲進操作をした割合のことであり、最小値を「0」とし、最大値を「1」とする。本実施形態では、図8に例示するように、この曲進割合がとり得る値の範囲を、0以上0.25未満、0.25以上0.5未満、0.5以上0.75未満,0.75以上1以下、という0.25刻みの4つに分類した。
【0053】
ここで、本発明者らが熟練操作者の操作を検証することにより、このような削孔の現地点から次地点に対する曲進割合の各分類は、現地点の傾斜角、削孔ビット回転角、現地点における曲進割合及び目標修正角の各平均値と図9に例示するような関係があることが分かった。例えば削孔の現地点から次地点に対する曲進割合が0以上0.25未満に収まる場合、現地点の傾斜角の平均値は「-2.99」であり、削孔ビット回転角の平均値は「0.25」であり、現地点における曲進割合の平均値は「0.28」であり、目標修正角の平均値は「0.65」である。
【0054】
本実施形態では、図9に例示した関係を考慮して、図10に例示する方法で、削孔の現地点から次地点に対する曲進割合を算出する。具体的には、現地点の傾斜角、削孔ビット回転角、現地点における曲進割合及び目標修正角の各々について、曲進割合に対応する4つの閾値を設定し、削孔時に測定又は算出された現地点の傾斜角、削孔ビット回転角、現地点における曲進割合及び目標修正角とこれらの閾値との大小関係でどの曲進割合の分類に該当するかをスコアとしてカウントし、これらスコアの合計に基づいて、最適な曲進割合を判定するというものである。図10の例では、現地点の傾斜角が「-4」であるから、閾値「-3.1」と閾値「-4.5」との間に対応する分類「B」について「1」というスコアがカウントされ、現地点の削孔ビット回転角が「0.3」であるから、閾値「0.26」と閾値「0.34」との間に対応する分類「B」について「1」というスコアがカウントされ、現地点の曲進割合が「0.35」であるから、閾値「0.3」と閾値「0.42」との間に対応する分類「C」について「1」というスコアがカウントされ、目標修正角が「1.7」であるから、閾値「0.8」と閾値「1.9」との間に対応する分類「B」について「1」というスコアがカウントされる。この結果、これらスコアの合計は分類「B」について「3」、分類「C」について「1」となるから、最適な曲進割合として、分類Bの「0.25以上0.5未満」という範囲の例えば中央値「0.375」と判定される。なお、曲進割合の閾値として、分類「A」、「B」についていずれも「0.3」を用いているが、これは曲進割合において、分類「A」、「B」を区別しなかったためであり、あくまで例示である。
【0055】
以上が、曲進割合を算出するための物理モデルである。つまり、この物理モデルは、或るステップ(現地点)におけるロッドの傾斜角、或るステップにおける削孔ビットの回転角、或るステップにおける曲進割合、及び、或るステップから次のステップに対するロッドの修正角に基づいて、次のステップ(次地点)に対する削孔ビットの曲進割合に関する操作パラメータを算出する、というアルゴリズムである。
【0056】
(動作)
次に、図11を参照して本実施形態の動作について説明する。先ず、削孔開始位置の地盤表層部に削孔機本体6を設置するとともに、情報処理装置100に計画削孔ラインを入力する(ステップS11)。また、必要に応じてガイド管を設置し、削孔機本体6の回転駆動軸にロッド2を連結し、削孔ビット3を回転推進または推進のみにより地盤に挿入し、削孔を開始する。また、ロッド2を通して送水部5よりベントナイト泥水等の掘削水の送水を開始する。
【0057】
その際、位置姿勢パラメータ、即ち、削孔ビット3の三次元位置、回転角及び傾斜角を位置姿勢測定部7によって測定を開始し、随時データロガー9に送信するとともに、操作パラメータ、即ち、送水部5による掘削水の送水圧、回転駆動部のロッド2の回転圧・回転速度、推進駆動部のロッド2の推進圧及びそれらを操作する際の操作具の操作量の計測を操作値測定部によって開始し、随時データロガー9に送信する(ステップS12,S13)。
【0058】
データロガー9に送信された位置姿勢パラメータ及び操作パラメータのデータは、データ生成部10によって、同一時刻となるように同期させることによって、機械学習用データ及び入力用データを生成し、機械学習用データを保存するとともに、入力用データを順次リアルタイムに、機械学習の説明変数として解析部12に出力する(ステップS14)。
【0059】
解析部12は、データ生成部10より送信された入力用データを学習済アルゴリズムに入力して、最適な操作パラメータを第1の目標操作パラメータとして取得する(ステップS15、S16)。
【0060】
一方、算出部13は、図5図10に例示したような物理的な計算に従って、ビット回転角及び曲進割合に関する最適な操作パラメータを第2の目標操作パラメータとして算出する(ステップS17、S18)。
【0061】
次に、出力部14は、第1の目標操作パラメータと、第2の目標操作パラメータとの差が閾値を超えるか否かを判断する(ステップS19)。なお、第1の目標操作パラメータのうち、第2の目標操作パラメータであるビット回転角及び曲進割合以外の物理モデルを用いて算出できない目標操作パラメータである推進圧、引抜圧、削孔速度、回転数に関しては、ステップS19の処理をスキップして、ステップS20に遷移する。
【0062】
ステップS19において、より具体的には、削孔ビット回転角に関する第1の目標操作パラメータが、削孔ビット回転角に関する第2の目標操作パラメータの±30度以内に収まっていれば、両者の差が閾値以内であると判断され、±30度以内に収まっていなければ、両者の差が閾値を超えると判断される。なお、この30度という閾値は任意に決められる。また、曲進割合に関する第1の目標操作パラメータが、曲進割合に関する第2の目標操作パラメータで示される分類に含まれていれば、両者の差が閾値以内であると判断され、曲進割合に関する第2の目標操作パラメータで示される分類に含まれていなければ、両者の差が閾値を超えると判断される。
【0063】
そして、出力部14は、第1の目標操作パラメータと、第2の目標操作パラメータとの差が閾値を超えていなければ(ステップS19;YES)、機械学習の精度が高いと判断して、第1の目標操作パラメータを出力する(ステップS20)。一方、出力部14は、第1の目標操作パラメータと、第2の目標操作パラメータとの差が閾値を超えていれば(ステップS19;NO)、機械学習の精度が高くないと判断して、第2の目標操作パラメータを出力する(ステップS21)
【0064】
出力されたこれらの目標操作パラメータは、情報処理装置100に表示され、操作者はその目標操作パラメータに合わせて操作を行う。以上の処理が、削孔作業の行われている期間にわたって繰り返し行われる。
【0065】
本実施形態によれば、作業者は出力された目標操作パラメータに従って作業することによって、熟練度に関係なく、所定の削孔速度で高品質の削孔を行うことができる。さらに、機械学習の基礎となる学習データに過去の曲がり削孔の操作に不適切な操作が含まれていたとしても、適切な操作パラメータを算出、出力することが可能となる。本作業において記録された機械学習用データは、データ転送装置又は着脱式の記憶装置によって機械学習部11に送ることができ、このデータを過去の作業におけるデータとして、上述のデータ収集、事前学習に還元されることによって、構築される学習済アルゴリズムの精度がいっそう向上することになる。
【0066】
なお、本発明は、曲がり削孔装置の削孔ビットの位置及び姿勢を示す位置姿勢パラメータと、前記曲がり削孔装置を操作するための操作パラメータとを時間経過とともに蓄積した結果を説明変数及び目的変数として機械学習した学習済アルゴリズムに対して、曲がり削孔の或るステップにおける計画削孔ラインに関する情報、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータを入力し、次のステップに対する第1の目標操作パラメータを取得するステップと、前記曲がり削孔の或るステップにおける前記計画削孔ラインに関する情報、前記位置姿勢パラメータ及び前記操作パラメータから物理的な計算に基づいて、次のステップに対する第2の目標操作パラメータを算出するステップと、取得された前記第1の目標操作パラメータと、算出された前記第2の目標操作パラメータとの差が閾値を超えない場合には、前記第1の目標操作パラメータに関する情報を出力し、前記差が前記閾値を超える場合には、前記第2の目標操作パラメータに関する情報を出力するステップとを備える曲がり削孔操作パラメータ算出方法であってもよい。また、本発明は、コンピュータが上記方法を実行するためのプログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 削孔機、2 ロッド、3 削孔ビット、4 噴射ノズル、5 送水部、
6 削孔機本体、7 位置姿勢測定部、8 操作値測定部、9 データロガー、
10 データ生成部、11 機械学習部、12 解析部、12a 演算部、
12b 記憶部、13 算出部、14 出力部、100 情報処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
図11