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特開2023-118470寿命予測方法、寿命予測装置及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118470
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】寿命予測方法、寿命予測装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021435
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】大谷 愛
(72)【発明者】
【氏名】下中 保知
(72)【発明者】
【氏名】竹堂 公貴
(72)【発明者】
【氏名】大川内 亮
(72)【発明者】
【氏名】江上 卓也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 崇幸
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和也
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM14
4F206AM19
4F206AM23
4F206AP05
4F206AP15
4F206AP18
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL09
4F206JP13
4F206JT33
(57)【要約】
【課題】成形機の構成部材に設けられているサーボモータを駆動するサーボアンプの寿命を精度良く予測することができる寿命予測方法を提供する。
【解決手段】成形機の構成部材に設けられているサーボモータを駆動するサーボアンプの寿命を予測する寿命予測方法であって、サーボモータの駆動を要した工程数を積算し、1回の工程におけるサーボアンプに生ずる負荷に係る物理量を検出し、検出された物理量に応じたサーボアンプの単位消耗量と、積算された工程数とを乗算することにより、サーボアンプの寿命を予測する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機の構成部材に設けられているサーボモータを駆動するサーボアンプの寿命を予測する寿命予測方法であって、
前記サーボモータの駆動を要した工程数を積算し、
1回の工程における前記サーボアンプに生ずる負荷に係る物理量を検出し、
検出された前記物理量に応じた前記サーボアンプの単位消耗量と、積算された工程数とを乗算することにより、前記サーボアンプの寿命を予測する
寿命予測方法。
【請求項2】
前記物理量は前記サーボアンプに流れる電流又は温度であり、
検出された電流又は温度に基づいて、前記工程における前記サーボアンプの温度変化量を算出し、
前記サーボアンプの温度変化量と、前記サーボアンプの単位消耗量に係る情報とを対応付けた熱疲労寿命データを参照することによって、前記温度変化量に応じた単位消耗量を特定し、
特定された単位消耗量と、積算された工程数とを乗算することにより、前記サーボアンプの寿命を予測する
請求項1に記載の寿命予測方法。
【請求項3】
前記熱疲労寿命データは、
前記サーボアンプの温度変化量と、前記サーボアンプの単位消耗量に係る情報との関係を、周囲温度毎に複数記憶しており、
周囲温度を検出し、
検出された周囲温度と、算出された温度変化量とに基づいて前記熱疲労寿命データを参照することによって、前記温度変化量に応じた単位消耗量を特定する
請求項2に記載の寿命予測方法。
【請求項4】
前記サーボアンプは放熱板に設置された半導体素子を備え、
前記半導体素子のパッケージの温度と、前記放熱板の温度とを検出し、
前記工程における前記パッケージの温度変化量と、前記放熱板の温度変化量とに基づいて、前記半導体素子のジャンクションの温度変化量を算出し、
前記ジャンクションの前記温度変化量に応じた単位消耗量と、積算された工程数とを乗算することにより、前記サーボアンプの寿命を予測する
請求項2又は請求項3に記載の寿命予測方法。
【請求項5】
成形工程サイクルは、少なくとも前記サーボモータの駆動を要する第1工程及び第2工程を含み、
前記第1工程の工程数と、前記第2工程の工程数とをそれぞれ積算し、
前記第1工程における前記サーボアンプに生ずる負荷に係る物理量を検出し、
前記第2工程における前記サーボアンプに生ずる負荷に係る物理量を検出し、
検出された前記第1工程に係る前記物理量に応じた前記サーボアンプの単位消耗量と、積算された前記第1工程の工程数とを乗算して得た乗算値と、検出された前記第2工程に係る前記物理量に応じた前記サーボアンプの単位消耗量と、積算された前記第2工程の工程数とを乗算して得た乗算値とを加算することにより、前記サーボアンプの寿命を予測する
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の寿命予測方法。
【請求項6】
前記成形機は複数のサーボモータを備え、
複数のサーボモータ毎に工程数及び物理量を検出して各サーボモータの寿命を予測する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の寿命予測方法。
【請求項7】
成形機の構成部材に設けられているサーボモータを駆動するサーボアンプの寿命を予測する寿命予測装置であって、
1回の工程における前記サーボアンプに生ずる負荷に係る物理量を検出する検出部と、
演算部と
を備え、
前記演算部は、
前記サーボモータの駆動を要した工程数を積算し、
検出された前記物理量に応じた前記サーボアンプの単位消耗量と、積算された工程数とを乗算することにより、前記サーボアンプの寿命を予測する
寿命予測装置。
【請求項8】
成形機の構成部材に設けられているサーボモータを駆動するサーボアンプの寿命を予測する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記サーボモータの駆動を要した工程数を積算し、
1回の工程における前記サーボアンプに生ずる負荷に係る物理量を検出し、
検出された前記物理量に応じた前記サーボアンプの単位消耗量と、積算された工程数とを乗算することにより、前記サーボアンプの寿命を予測する
処理を前記コンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寿命予測方法、寿命予測装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機の部品情報を管理する射出成形用情報管理装置がある。射出成形用情報管理装置は、1回のショットで射出成形機の部品にかかる負荷を表す物理量の値と、ショット回数との積を消耗量として算出し、部品使用開始時からの消耗量を積算することによって、部品の劣化度を検知する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-087587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ショット単位で計算される消耗量に基づく寿命予測方法においては、成形機に搭載されたサーボアンプの寿命の予測精度が低いという問題があった。
【0005】
サーボアンプを構成する半導体素子のジャンクション温度は、半導体素子に流れる電流によって変化する。この温度変化の繰り返しにより半導体素子のチップ部分が膨張・伸縮を繰り返すことによって、サーボアンプが破損する。半導体素子の消耗量は成形機の使い方によって変わり、ショット単位で計算される消耗量に基づく寿命予測では、精度良くサーボアンプの寿命を予測することが困難である。
【0006】
本開示の目的は、成形機の構成部材に設けられているサーボモータを駆動するサーボアンプの寿命を精度良く予測することができる寿命予測方法、寿命予測装置及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る寿命予測方法は、成形機の構成部材に設けられているサーボモータを駆動するサーボアンプの寿命を予測する寿命予測方法であって、前記サーボモータの駆動を要した工程数を積算し、1回の工程における前記サーボアンプに生ずる負荷に係る物理量を検出し、検出された前記物理量に応じた前記サーボアンプの単位消耗量と、積算された工程数とを乗算することにより、前記サーボアンプの寿命を予測する。
【0008】
本開示の一態様に係る寿命予測装置は、成形機の構成部材に設けられているサーボモータを駆動するサーボアンプの寿命を予測する寿命予測装置であって、1回の工程における前記サーボアンプに生ずる負荷に係る物理量を検出する検出部と、演算部とを備え、前記演算部は、前記サーボモータの駆動を要した工程数を積算し、検出された前記物理量に応じた前記サーボアンプの単位消耗量と、積算された工程数とを乗算することにより、前記サーボアンプの寿命を予測する。
【0009】
本開示の一態様に係るコンピュータプログラムは、成形機の構成部材に設けられているサーボモータを駆動するサーボアンプの寿命を予測する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記サーボモータの駆動を要した工程数を積算し、1回の工程における前記サーボアンプに生ずる負荷に係る物理量を検出し、検出された前記物理量に応じた前記サーボアンプの単位消耗量と、積算された工程数とを乗算することにより、前記サーボアンプの寿命を予測する処理を前記コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、成形機の構成部材に設けられているサーボモータを駆動するサーボアンプの寿命を精度良く予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る射出成形機の構成例を示す模式図である。
図2】実施形態1に係る射出成形機が備える制御装置及びサーボアンプ等の構成例を示す模式図である。
図3】サーボアンプの熱疲労寿命データを示す説明図である。
図4】実施形態1に係るプロセッサの処理手順を示すフローチャートである。
図5】実施形態1に係る工程DBの構成を示す説明図である。
図6】実施形態2に係るプロセッサの処理手順を示すフローチャートである。
図7】実施形態2に係る工程DBの構成を示す説明図である。
図8】実施形態3に係る射出成形機が備える制御装置及びサーボモータ等の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る射出成形機(寿命予測装置)、寿命予測方法及びコンピュータプログラムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0013】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る射出成形機1の構成例を示す模式図、図2は、実施形態1に係る射出成形機1が備える制御装置4及びサーボアンプ11a,12a,…等の構成例を示す模式図である。本実施形態1に係る射出成形機1は、金型21を型締めする型締装置2と、成形材料を溶融して射出する射出装置3と、制御装置4とを備える。制御装置4は、本実施形態1に係る寿命予測装置として機能する。
【0014】
型締装置2はベッド20上に固定された固定盤22と、ベッド20上をスライド可能に設けられた型締ハウジング23と、ベッド20上を同様にスライドする可動盤24とを備える。固定盤22と型締ハウジング23は複数本、例えば4本のタイバー25、25、…によって連結されている。可動盤24は、固定盤22と型締ハウジング23の間でスライド自在に構成されている。型締ハウジング23と可動盤24の間には型締機構26が設けられている。
【0015】
型締機構26は、例えばトグル機構から構成されている。型締装置2は型開閉用サーボモータ13を備え、型締機構26は、型開閉用サーボモータ13が出力するトルクによって動作する。型開閉用サーボモータ13はサーボアンプ13aから供給される電力によって駆動する。固定盤22と可動盤24にはそれぞれ固定金型21aと、可動金型21bが設けられ、型締機構26を駆動すると金型21が型開閉されるようになっている。
【0016】
型締装置2は金型21から成形品を突き出して取り出すための突き出しピン、ボールねじ機構、及びエジェクタ用サーボモータ14を備える。突き出しピンは、エジェクタ用サーボモータ14が出力するトルクによって動作する。具体的には、エジェクタ用サーボモータ14はボールねじ機構等を介して突き出しピンを進退させる。エジェクタ用サーボモータ14はサーボアンプ14aから供給される電力によって駆動する。
【0017】
射出装置3は、基台30上に設けられている。射出装置3は、先端部にノズル31aを有する加熱シリンダ31と、当該加熱シリンダ31内に周方向と軸方向とに回転可能に配されたスクリュ32とを備える。加熱シリンダ31の内部又は外周には、成形材料を溶融させるためのヒータが設けられている。スクリュ32は駆動装置33によって回転方向と軸方向とに駆動する。
【0018】
駆動装置33は、スクリュ32を軸方向に駆動するための射出用サーボモータ11及びボールねじ機構を備える。また、駆動装置33は、スクリュ32を回転駆動させるためのスクリュ回転用サーボモータ12を備える。射出用サーボモータ11及びスクリュ回転用サーボモータ12は、それぞれサーボアンプ11a,12aから供給される電力によって駆動する。
【0019】
加熱シリンダ31の後端部近傍には、成形材料が投入されるホッパ34が設けられている。また、射出成形機1は、射出装置3のユニットを前後方向(図1中左右方向)に移動させるノズルタッチ装置35を備える。ノズルタッチ装置35はユニット進退用サーボモータ15が出力するトルクによって動作する。ユニット進退用サーボモータ15はサーボアンプ15aから供給される電力によって駆動する。ノズルタッチ装置35を駆動すると、射出装置3が前進して加熱シリンダ31のノズル31aが固定盤22の密着部にタッチするように構成されている。
【0020】
上記したサーボアンプ11a,12a,13a,14a,15aは、例えば、インバータ回路を含む。サーボアンプ11a,12a,13a,14a,15aは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、IPM(Intelligent Power Module)又はパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等のパワースイッチング素子で構成され、整流回路で生成された直流電力を再び交流電力に変換し、所要の電力を射出用サーボモータ11、スクリュ回転用サーボモータ12、型開閉用サーボモータ13、エジェクタ用サーボモータ14、ユニット進退用サーボモータ15に供給する。サーボアンプ11a,12a,13a,14a,15aの動作は制御装置4によって制御される。
【0021】
制御装置4は、型締装置2及び射出装置3の動作を制御するコンピュータであり、ハードウェア構成としてプロセッサ(演算部)41、記憶部42、信号入出力部43及び操作パネル40を備える。制御装置4は、サーボアンプ11a,12a,…の寿命を予測する寿命予測方法を実行する装置でもある。なお、制御装置4は、ネットワークに接続されたサーバ装置であっても良い。また、制御装置4は、複数台のコンピュータで構成し分散処理する構成でもよいし、1台のサーバ内に設けられた複数の仮想マシンによって実現されていてもよいし、クラウドサーバを用いて実現されていてもよい。
【0022】
プロセッサ41は、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、NPU(Neural Processing Unit)等の演算回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の内部記憶装置、I/O端子、計時部等を有する。プロセッサ41は、後述の記憶部42が記憶するコンピュータプログラム(プログラム製品)42aを実行することにより、本実施形態1に係る寿命予測方法を実施する。なお、制御装置4の各機能部は、ソフトウェア的に実現しても良いし、一部又は全部をハードウェア的に実現しても良い。
【0023】
記憶部42は、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部42は、寿命予測処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム5を記憶している。また、記憶部42は、サーボアンプ11a,12a,…の寿命を予測するための熱疲労寿命データ6を記憶する。更に、記憶部42は、成形工程サイクルの工程毎にサーボアンプ11a,12a,…の消耗量に関する情報を格納する工程DB7を記憶する。熱疲労寿命データ6及び工程DB7の詳細は後述する。
【0024】
本実施形態1に係るコンピュータプログラム5は、記録媒体50にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でも良い。記憶部42は、読出装置によって記録媒体50から読み出されたコンピュータプログラム5を記憶する。記録媒体50はフラッシュメモリ等の半導体メモリである。また、記録媒体50はCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)等の光ディスクでも良い。更に、記録媒体50は、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク等であっても良い。
【0025】
更にまた、通信網に接続されている外部サーバから本実施形態1に係るコンピュータプログラム5をダウンロードし、記憶部42に記憶させても良い。
【0026】
信号入出力部43は、成形条件に基づくプロセッサ41の制御に従って射出成形機1の動作を制御するための制御信号を射出成形機1へ出力する。例えば、信号入出力部43は、射出用サーボモータ11、スクリュ回転用サーボモータ12、型開閉用サーボモータ13、エジェクタ用サーボモータ14、ユニット進退用サーボモータ15の動作を制御するための駆動制御信号をサーボアンプ11a,12a,…へ出力する。
【0027】
射出成形機1は、サーボアンプ11a,12a,13a,14a,15aに流れる電流を検出する電流センサ11b,12b,13b,14b,15bを備える。電流センサ11b,12b,…は、信号入出力部43に接続されており、各電流センサ11b,12b,…によって検出された電流値を示す電流値信号が入力される。
【0028】
また、射出成形機1は、周囲温度を検出する周囲温度センサ16を備える。周囲温度センサ16は、信号入出力部43に接続されており、周囲温度センサ16によって検出された温度を示す温度信号が入力される。
信号入出力部43は、入力した電流値信号及び温度信号を、電流値データ及び周囲温度データにAD変換し、プロセッサ41に与える。
【0029】
操作パネル40は、射出成形機1の成形条件などを設定し、射出成形機1の動作を操作するためのインタフェースである。操作パネル40は、表示パネル40aと、操作部40bとを備える。
【0030】
表示パネル40aは、液晶表示パネル、有機EL表示パネルなどの表示装置であり、プロセッサ41の制御に従って、射出成形機1の成形条件の設定を受け付ける。また、表示パネル40aは、本実施形態1に係る寿命予測方法にて予測したサーボアンプ11a,12a,…の寿命を表示する。
【0031】
操作部40bは、射出成形機1の成形条件を入力及び調整するための入力装置であり、操作ボタン、タッチパネルなどを有する。操作部40bは受け付けた成形条件を示すデータをプロセッサ41に与える。
【0032】
射出成形機1には、成形条件として、射出開始時点、金型内樹脂温度、ノズル温度、シリンダ温度(ヒータ温度)、ホッパ温度、型締力、射出速度、射出加速度、射出ピーク圧力(射出圧力)、射出ストローク等の成形条件を定める設定値が設定される。
【0033】
また射出成形機1には、成形条件として、シリンダ先端樹脂圧、逆防リング着座状態、保圧圧力、保圧切替速度、保圧切替位置、保圧完了位置、クッション位置、計量背圧、計量トルク等の成形条件を定める設定値が設定される。
【0034】
更に射出成形機1には、成形条件として、計量完了位置、スクリュ後退速度、サイクル時間、型閉時間、射出時間、保圧時間、計量時間、型開時間等の成形条件を定める設定値が設定される。そして、これらの設定値が設定された射出成形機1は、当該設定値に従って動作する。
【0035】
成形工程サイクルの概要は以下の通りである。射出成形に際しては、周知の型閉工程、型締工程、射出ユニット前進工程、射出工程、計量工程、型開工程及びエジェクト工程が順次に行われる。制御装置4は、工程毎に各サーボアンプに流れる電流及び周囲温度を検出し、検出された電流値データ及び周囲温度データを工程DB7に記憶させる。そして、制御装置4は各サーボアンプ11a,12a,…の寿命予測を行う。
【0036】
型閉工程及び型締工程においては、制御装置4は型開閉用サーボモータ13を駆動させる。型開閉用サーボモータ13の駆動により、金型21が閉じ、可動金型21bは固定金型21aに密着する。
【0037】
射出ユニット前進工程においては、制御装置4はユニット進退用サーボモータ15を駆動させる。ユニット進退用サーボモータ15の駆動により、射出ユニットである射出装置3は金型21側へ前進し、射出装置3のノズル31aが金型21の密着部に密着する。
【0038】
射出工程においては、制御装置4は射出用サーボモータ11を駆動させる。射出用サーボモータ11の駆動により、スクリュ32が前進方向へ移動し、加熱シリンダ31の先端領域に溜められた溶融成形材料がノズル31aから金型21へ射出及び充填される。スクリュ32は、設定された保圧切替位置まで移動することによって、一定量の成形材料が金型21に射出される。
【0039】
計量工程においては、制御装置4は射出用サーボモータ11及びスクリュ回転用サーボモータ12を駆動させる。ホッパ34から加熱シリンダ31に供給された成形材料は、ヒータによって加熱され、スクリュ回転用サーボモータ12の駆動により回転したスクリュ32の剪断作用により可塑化され、加熱シリンダ31の先端領域に送り込まれる。射出用サーボモータ11の駆動により、スクリュ32はスクリュ32の先端領域に可塑化した成形材料が溜まるにつれて、徐々に後退方向へ移動する。スクリュ32は設定された計量完了位置まで移動し、一定量の成形材料が計量される。
【0040】
型開工程においては、制御装置4は型開閉用サーボモータ13を駆動させる。型開閉用サーボモータ13の駆動により、金型21が開く。
【0041】
エジェクト工程においては、制御装置4はエジェクタ用サーボモータ14を駆動させる。エジェクタ用サーボモータ14の駆動により、突き出しピンが動作し、金型21から成形品が取り出される。
【0042】
図3は、サーボアンプ11a,12a,…の熱疲労寿命データ6を示す説明図である。横軸は、サーボアンプ11a,12a,…を構成する半導体素子のジャンクションの温度変化量dTを示し、縦軸は破損繰り返し数を示している。熱疲労寿命データ6は、半導体素子の温度変化量dTと、破損繰り返し数との関係を示すデータである。破損繰り返し数は、ある温度変化量dTが繰り返し生じた際に半導体素子が破損すると推定される回数である。破損繰り返し数の逆数は、半導体素子に加わる負荷、又は半導体素子の消耗量に相当する。
【0043】
半導体素子の温度変化量dTと、破損繰り返し数との関係は、半導体素子又はサーボアンプ11a,12a,…の周囲温度にも依存するため、記憶部42は、複数の周囲温度における温度変化量dTと、破損繰り返し数との関係を記憶している。例えば、記憶部42は、25℃、75℃、150℃における温度変化量dTと、破損繰り返し数との関係を記憶している。
【0044】
図4は、実施形態1に係るプロセッサ41の処理手順を示すフローチャートである。プロセッサ41は、成形工程サイクルの各工程の内容に応じて、射出用サーボモータ11、スクリュ回転用サーボモータ12、型開閉用サーボモータ13、エジェクタ用サーボモータ14、又はユニット進退用サーボモータ15を駆動する(ステップS111)。
【0045】
そして、プロセッサ41は、駆動したさせたサーボアンプ11a,12a,…に流れる電流を工程単位で検出する(ステップS112)。プロセッサ41は、周囲温度も合わせて検出する(ステップS113)。
【0046】
次いで、プロセッサ41は、工程単位で、駆動したサーボアンプ11a,12a,…を識別するためのアンプIDと、当該アンプIDが示すサーボアンプ11a,12a,…に流れた電流値を示す電流値データと、このときの周囲温度を示す周囲温度データとを、データIDに対応付けて、工程DB7に記憶させる(ステップS114)。
【0047】
図5は、実施形態1に係る工程DB7の構成を示す説明図である。工程DB7は、データIDと、アンプIDと、電流値データと、周囲温度データとを対応付けたデータベースである。データIDは、各レコードを識別するための一連の番号等である。アンプIDは、サーボアンプ11a,12a,13a,14a,15aを識別するIDである。電流値データは、アンプIDが示すサーボアンプ11a,12a,…に流れた電流値を示す電流値データである。周囲温度データは、当該電流値が検出されたときの周囲温度を示すデータである。これらのデータを含むレコードは、成形工程サイクルの各工程及びサーボアンプ11a,12a,…毎に登録される。
【0048】
プロセッサ41は、工程DB7に登録されているレコードを読み出し、各工程でサーボアンプ11a,12a,…に生ずる温度変化量を算出する(ステップS115)。具体的には、プロセッサ41は、サーボアンプ11a,12a毎に、電流値データを読み出し、読み出された電流値データに基づいて、サーボアンプ11a,12a,…に生ずる温度変化量を算出する。例えば、サーボアンプ11a,12a,…に生ずる温度変化量は、下記式(1)で表される。サーボアンプ11a,12a,…に生ずる温度変化量は、例えば、半導体素子のジャンクションの温度変化量である。
【0049】
ΔT=(a-b×e-t/τ)×I…(1)
但し、
ΔT:サーボアンプ11a,12a,…を構成する半導体素子のジャンクションに生ずる温度変化量
a,b:サーボアンプ11a,12a,…及び放熱部材の特性によって定まる係数
τ:サーボアンプ11a,12a,…及び放熱部材の特性によって定まる時定数
t:時間
I:サーボアンプ11a,12a,…に流れる電流値
【0050】
なお、電流値データに基づいて、温度変化量を算出する例を説明したが、電流値の平均値、最大値など、他の統計量を用いて各工程の電流値を算出し、温度変化量を求めてもよい。
また、電流データと、温度変化量とを対応付けたテーブルを記憶部42に記憶させておき、プロセッサ41は、テーブルを参照することによって、電流を温度変化量に換算するように構成してもよい。
【0051】
次いで、プロセッサ41は、各サーボアンプ11a,12a,…の単位消耗量を算出する(ステップS116)。具体的には、プロセッサ41は、温度変化量をキーにして、熱疲労寿命データ6から対応する破損繰り返し数を読み出す。読み出された破損繰り返し数の逆数が単位消耗量である。
【0052】
ステップS116の処理により、射出用サーボモータ11のサーボアンプ11aの単位消耗量、スクリュ回転用サーボモータ12のサーボアンプ12aの単位消耗量が算出される。また、ステップS116の処理により、型開閉用サーボモータ13のサーボアンプ13aの単位消耗量、エジェクタ用サーボモータ14のサーボアンプ14aの単位消耗量が算出される。更に、ステップS116の処理により、ユニット進退用サーボモータ15のサーボアンプ15aの単位消耗量が算出される。
【0053】
そして、プロセッサ41は、工程DB7に登録されているレコードを読み出し、各サーボアンプ11a,12a,…の延べ工程数を算出する(ステップS117)。つまり、プロセッサ41は、サーボアンプ11a,12a,…の動作回数をサーボアンプ11a,12a,…毎に積算する。
【0054】
次いで、プロセッサ41は、ステップS116及びステップS117で算出した単位消耗量と延べ工程数とを乗算することによって、各サーボアンプ11a,12a,…の消耗量を算出する(ステップS118)。なお、プロセッサ41は、延べ工程数を上記破損繰り返し数で除算することによって、消耗量を算出してもよい。消耗量は、例えば下記式(2)で表される。
【0055】
消耗量=延べ工程数×単位消耗度=延べ工程数/破損繰り返し数…(2)
【0056】
次いで、プロセッサ41は、算出された消耗量に基づいて、各サーボアンプ11a,12a,…の寿命を算出し(ステップS119)、処理を終える。例えば、サーボアンプ11a,12a,…の平均寿命に相当する消耗量から、ステップS118で算出された消耗量を減算することによって、残存耐用時間等を求めることができる。
プロセッサ41は、算出した各サーボアンプ11a,12a,…の寿命予測結果を表示パネル40aに表示する。
【0057】
以上の通り、本実施形態1に係る制御装置4によれば、サーボアンプ11a,12a,…の単位消耗量を工程単位で算出する構成であるため、サーボアンプ11a,12a,…の寿命を精度良く予測することができる。
【0058】
また、制御装置4は、周囲温度も考慮してサーボアンプ11a,12a,…の寿命を予測することができる。
【0059】
なお、各サーボアンプ11a,12a,…に電流が流れる時間tは、成形工程サイクルによって定まる既知のものとして記憶部42が記憶している。なお、各工程で電流が流れた時間tを計測し、計測された時間tを工程IDに対応付けて工程DB7に記憶させるようにしてもよい。
【0060】
なお、本実施形態1では、サーボアンプ11a,12a,…に流れる電流から、温度変化量を算出する例を説明したが、サーボアンプ11a,12a,…の温度を検出する温度センサを設けてもよい。具体的には、プロセッサ41は各工程の開始時及び終了時のサーボアンプ11a,12a,…の温度を示す温度データを工程DB7に記憶させる。プロセッサ41は温度センサを用いて検出された各工程の開始時及び終了時の温度データに基づいて、サーボアンプ11a,12a,…に生ずる温度変化量を算出することができる。
【0061】
(実施形態2)
実施形態2に係る射出成形機1は、寿命予測方法の算出処理方法及び工程DB7の内容が実施形態1と異なる。射出成形機1のその他の構成は、実施形態1に係る射出成形機1と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0062】
図6は、実施形態2に係るプロセッサ41の処理手順を示すフローチャートである。実施形態2に係るプロセッサ41は、実施形態1と同様、各種サーボモータを駆動し(ステップS211)、各サーボアンプ11a,12a,…に流れる電流を工程単位で検出し(ステップS212)、周囲温度を検出する(ステップS213)。
【0063】
次いで、プロセッサ41は、工程単位で、アンプIDと、工程の種類と、電流値データと、周囲温度データとを、データIDに対応付けて、工程DB7に記憶させる(ステップS214)。
【0064】
図7は、実施形態2に係る工程DB7の構成を示す説明図である。実施形態2に係る工程DB7は、データID、アンプID、電流値データ、及び周囲温度データに加え、工程の種類を対応付けたデータベースである。工程の種類には、例えば、型閉工程、型締工程、射出ユニット前進工程、1次射出工程、2次射出工程、計量工程、スクリュ後退工程、型開き工程、突き出し工程、突き戻し工程などがある。
【0065】
そしてプロセッサ41は、工程DB7に登録されているレコードを読み出し、各工程でサーボアンプ11a,12a,…に生ずる温度変化量を工程の種類毎に算出する(ステップS215)。
【0066】
次いで、プロセッサ41は、各サーボアンプ11a,12a,…の単位消耗量を工程の種類毎に算出する(ステップS216)。
【0067】
そして、プロセッサ41は、工程DB7に登録されているレコードを読み出し、各サーボアンプ11a,12a,…の延べ工程数を工程の種類毎に算出する(ステップS217)。つまり、プロセッサ41は、サーボアンプ11a,12a,…の動作回数をサーボアンプ11a,12a,…毎及び工程の種類毎に積算する。
【0068】
次いで、プロセッサ41は、ステップS216及びステップS217で算出した単位消耗量と延べ工程数とを工程の種類毎に乗算し、乗算値の和を算出することによって、各サーボアンプ11a,12a,…の消耗量を算出する(ステップS218)。消耗量は、例えば下記式(3)で表される。
【0069】
消耗量=Σ(第n工程の延べ工程数×第n工程の単位消耗度)
=Σ(第n工程の延べ工程数/第n工程の破損繰り返し数)…(3)
【0070】
なお、Σは、工程の種類毎に算出される消耗量の和を算出することを意味する。例えば、工程の種類がN種類ある場合、消耗量は、第1工程の延べ工程数×第1工程の単位消耗度+第2工程の延べ工程数×第2工程の単位消耗度+…第N工程の延べ工程数×第N工程の単位消耗度のように表される。
【0071】
なお、プロセッサ41は、消耗量を下記式(4)で算出することもできる。Σは、単位工程毎に算出される消耗量の和を算出することを意味する。
消耗量=Σ単位消耗度=Σ(1/破損繰り返し数)…(4)
【0072】
次いで、プロセッサ41は、実施形態1と同様にして各サーボアンプ11a,12a,…の寿命を算出し(ステップS219)、処理を終える。
【0073】
本実施形態2に係る射出成形機1によれば、サーボアンプ11a,12a,…の単位消耗量を工程の種類毎に工程単位で算出する構成であるため、サーボアンプ11a,12a,…の寿命を、より精度良く予測することができる。
【0074】
(実施形態3)
実施形態3に係る射出成形機1は、寿命予測方法の算出処理方法と、寿命予測に用いる物理量が実施形態1及び2と異なる。射出成形機1のその他の構成は、実施形態1及び2に係る射出成形機1と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0075】
図8は、実施形態3に係る射出成形機1が備える制御装置4及びサーボモータ等の構成例を示す模式図である。なお、サーボアンプ11a,12a,…のうち、射出用サーボモータ11を駆動するサーボアンプ11aのみを図示しているが、他のサーボアンプ12a,…の構成も同様である。
【0076】
サーボアンプ11aは、パッケージ11cに包含された半導体素子11dを備える。サーボアンプ11aのパッケージ11cは、当該パッケージ11cの熱を外部へ放出するための放熱板11eに配されている。パッケージ11cと、放熱板11eとは熱的に接続されており、パッケージ11cの熱は放熱板11eへ伝導する。
【0077】
実施形態3に係る射出成形機1は、パッケージ11cの温度を検出する第1温度センサ11fと、放熱板11eの温度を検出する第2温度センサ11gとを備える。プロセッサ41は、信号入出力部43を介して第1温度センサ11f及び第2温度センサ11gから温度データを取得する。
【0078】
プロセッサ41の処理内容は実施形態1又は実施形態2と同様である。但し、プロセッサ41は、ステップS112又はステップS212において、各工程の開始時及び終了時におけるサーボアンプ11a,12a,…の温度を検出する。
【0079】
プロセッサ41は、ステップS114又はステップS214において、電流値データに代えて、温度データを記憶する。
【0080】
プロセッサ41は、ステップS115又はステップS215において、工程DB7に登録されているレコードを読み出し、各工程の開始時及び終了時のサーボアンプ11a,12a,…の温度データに基づいて、半導体素子11dのジャンクションの温度変化量を算出する。例えば、半導体素子11dのジャンクションの温度変化量は、下記式(5)で表される。
【0081】
ΔT=ΔT1+ΔT2…(5)
但し、
ΔT1:一の工程において生ずるパッケージ11cの温度変化量
ΔT2:一の工程において生ずる放熱板11eの温度変化量
【0082】
なお、上記式(5)は一例であり、温度変化量ΔT1及びΔT2の関数であれば、半導体素子11dのジャンクションの温度変化量の算出方法は特に限定されるものでは無い。
その他の処理は実施形態1及び実施形態2と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0083】
実施形態3に係る射出成形機1によれば、サーボアンプ11a,12a,…のパッケージ11c及び放熱板11eの温度を加味して半導体素子11dのジャンクションの温度を推定することにより、サーボアンプ11a,12a,…の寿命を、より精度良く予測することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 射出成形機
2 型締装置
3 射出装置
4 制御装置(寿命予測装置)
5 コンピュータプログラム
6 熱疲労寿命データ
7 工程DB
11 射出用サーボモータ
12 スクリュ回転用サーボモータ
13 型開閉用サーボモータ
14 エジェクタ用サーボモータ
15 ユニット進退用サーボモータ
11a,12a,13a,14a,15a サーボアンプ
11b,12b,13b,14b,15b 電流センサ
11c パッケージ
11d 半導体素子
11e 放熱板
41 プロセッサ
50 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8