(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118477
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 512
H01G4/30 201K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021443
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】水野 拓
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC10
5E001AD03
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AH01
5E001AH05
5E001AH06
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ01
5E001AJ03
5E082AB03
5E082BC19
5E082EE23
5E082EE26
5E082EE35
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG54
5E082GG28
5E082LL02
5E082LL03
5E082MM24
(57)【要約】
【課題】耐湿性の高い積層セラミック電子部品を提供すること。
【解決手段】積層セラミック電子部品1は、複数の積層されたセラミック層20と、セラミック層20上に積層された複数の内部導体層30とを有し、積層方向Tおよび幅方向Wに直交する長さ方向Lに相対する第1の端面LS1および第2の端面LS2を含む積層体10を有し、第1の主面TS1側の第1の外層端面LS131と第1の連結面LS121との境界部P11における、第1の外層端面LS131と第1の連結面LS121とのなす角θは鈍角であり、第2の主面TS2側の第2の外層端面LS132と第2の連結面LS122との境界部P21における、第2の外層端面LS132と第2の連結面LS122とのなす角θは鈍角であり、第1の連結面LS121および第2の連結面LS122にはそれぞれ、複数の内部導体層30が露出する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の積層されたセラミック層と、前記セラミック層上に積層された複数の内部導体層とを有し、積層方向に相対する第1の主面および第2の主面と、積層方向に直交する幅方向に相対する第1の側面および第2の側面と、積層方向および幅方向に直交する長さ方向に相対する第1の端面および第2の端面と、を含む積層体と、
前記第1の端面上に配置され、前記内部導体層に接続された第1の外部電極と、
前記第2の端面上に配置され、前記内部導体層に接続された第2の外部電極と、を有する積層セラミック電子部品であって、
前記積層体は、前記複数のセラミック層の一部と前記内部導体層とを含む内層部と、前記内層部を挟み込むように配置され、前記複数のセラミック層の前記一部以外の部分をそれぞれ含む第1の主面側の第1の外層部および第2の主面側の第2の外層部を有し、
前記第1の端面および前記第2の端面はそれぞれ、前記内層部によって表面が形成される内層端面と、前記第1の外層部によって表面が形成される第1の外層端面と、前記第2の外層部によって表面が形成される第2の外層端面と、を有し、
前記内層端面は、前記第1の外層端面および前記第2の外層端面よりも、前記長さ方向に突出した位置に面を有する突出端面と、前記第1の外層端面と前記突出端面との間を繋ぐ面によって形成された第1の連結面と、前記第2の外層端面と前記突出端面との間を繋ぐ面によって形成された第2の連結面と、を有し、
前記第1の外層端面と前記第1の連結面との境界部における、前記第1の外層端面と前記第1の連結面とのなす角は鈍角であり、前記第2の外層端面と前記第2の連結面との境界部における、前記第2の外層端面と前記第2の連結面とのなす角は鈍角であり、
前記第1の連結面および前記第2の連結面にはそれぞれ、複数の内部導体層が露出する、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記第1の連結面および前記第2の連結面は、曲面または傾斜した平面により形成されている、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記突出端面は略平坦面であり、前記第1の外層端面および前記第2の外層端面は略平坦面を含み、
前記突出端面と、前記第1の連結面を前記突出端面側に延長したときの第1の仮想面とのなす角は、前記突出端面と前記第1の外層端面とのなす角よりも大きく、
前記突出端面と、前記第2の連結面を前記突出端面側に延長したときの第2の仮想面とのなす角は、前記突出端面と前記第2の外層端面とのなす角よりも大きい、請求項1または請求項2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記突出端面と前記第1の外層端面は略平行であり、
前記突出端面と前記第2の外層端面は略平行である、請求項3に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記第1の外層端面に対する、前記突出端面の突出量は、5μm以上50μm以下であり、
前記第2の外層端面に対する、前記突出端面の突出量は、5μm以上50μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記第1の連結面における、最も前記第1の主面側の位置に露出している内部導体層の露出面と、前記第1の主面側から第2の主面側に向かって2番目の位置に露出している内部導体層の露出面とを結ぶ直線の延長線と、前記突出端面とのなす角α1は20°以上60°以下であり、
前記第2の連結面における、最も前記第2の主面側の位置に露出している内部導体層の露出面と、前記第2の主面側から第1の主面側に向かって2番目の位置に露出している内部導体層の露出面とを結ぶ直線の延長線と、前記突出端面とのなす角β1は20°以上60°以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記第1の連結面および前記第2の連結面は、曲面により形成されており、
前記第1の連結面における、最も前記第1の主面側の位置に露出している内部導体層の露出面と、前記第1の主面側から第2の主面側に向かって2番目の位置に露出している内部導体層の露出面とを結ぶ直線の延長線と、前記突出端面とのなす角をα1とし、
前記第1の主面側から第2の主面側に向かって2番目の位置に露出している内部導体層の露出面と、前記第1の主面側から第2の主面側に向かって3番目の位置に露出している内部導体層の露出面とを結ぶ直線の延長線と、前記突出端面とのなす角をα2としたとき、α1>α2であり、
前記第2の連結面における、最も前記第2の主面側の位置に露出している内部導体層の露出面と、前記第2の主面側から第1の主面側に向かって2番目の位置に露出している内部導体層の露出面とを結ぶ直線の延長線と、前記突出端面とのなす角をβ1とし、
前記第2の主面側から第1の主面側に向かって2番目の位置に露出している内部導体層の露出面と、前記第2の主面側から第1の主面側に向かって3番目の位置に露出している内部導体層の露出面とを結ぶ直線の延長線と、前記突出端面とのなす角をβ2としたとき、β1>β2である、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記第1の主面側から第2の主面側に向かって3番目の位置に露出している内部導体層の露出面と、前記第1の主面側から第2の主面側に向かって4番目の位置に露出している内部導体層の露出面とを結ぶ直線の延長線と、前記突出端面とのなす角をα3としたとき、α1>α2>α3であり、
前記第2の主面側から第1の主面側に向かって3番目の位置に露出している内部導体層の露出面と、前記第2の主面側から第1の主面側に向かって4番目の位置に露出している内部導体層の露出面とを結ぶ直線の延長線と、前記突出端面とのなす角をβ3としたとき、β1>β2>β3である、請求項7に記載の積層セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサが知られている。一般に、積層セラミックコンデンサは、素子本体としての積層体と、端子電極としての外部電極と、を備える。例えば特許文献1には、内部電極層と内側誘電体層とが交互に積層された内層部と、外側誘電体層からなる外層部と、から形成される素子本体を備える積層セラミックコンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の積層セラミックコンデンサにおいては、外層部に対して、内層部が素子本体の外側に向かって突き出ており、これにより、端子電極を良好に形成できることが記載されている。しかしながら、特許文献1に記載された構成においては、内層部と外層部の段差が直角に形成されているため、この段差の部分に配置される外部電極に気泡が生じやすい。よって、この気泡の存在により、耐湿性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、耐湿性の高い積層セラミック電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る積層セラミック電子部品は、複数の積層されたセラミック層と、前記セラミック層上に積層された複数の内部導体層とを有し、積層方向に相対する第1の主面および第2の主面と、積層方向に直交する幅方向に相対する第1の側面および第2の側面と、積層方向および幅方向に直交する長さ方向に相対する第1の端面および第2の端面と、を含む積層体と、前記第1の端面上に配置され、前記内部導体層に接続された第1の外部電極と、前記第2の端面上に配置され、前記内部導体層に接続された第2の外部電極と、を有する積層セラミック電子部品であって、前記積層体は、前記複数のセラミック層の一部と前記内部導体層とを含む内層部と、前記内層部を挟み込むように配置され、前記複数のセラミック層の前記一部以外の部分をそれぞれ含む第1の主面側の第1の外層部および第2の主面側の第2の外層部を有し、前記第1の端面および前記第2の端面はそれぞれ、前記内層部によって表面が形成される内層端面と、前記第1の外層部によって表面が形成される第1の外層端面と、前記第2の外層部によって表面が形成される第2の外層端面と、を有し、前記内層端面は、前記第1の外層端面および前記第2の外層端面よりも、前記長さ方向に突出した位置に面を有する突出端面と、前記第1の外層端面と前記突出端面との間を繋ぐ面によって形成された第1の連結面と、前記第2の外層端面と前記突出端面との間を繋ぐ面によって形成された第2の連結面と、を有し、前記第1の外層端面と前記第1の連結面との境界部における、前記第1の外層端面と前記第1の連結面とのなす角は鈍角であり、前記第2の外層端面と前記第2の連結面との境界部における、前記第2の外層端面と前記第2の連結面とのなす角は鈍角であり、前記第1の連結面および前記第2の連結面にはそれぞれ、複数の内部導体層が露出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐湿性の高い積層セラミック電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の積層セラミックコンデンサの外観斜視図である。
【
図2】
図1に示す積層セラミックコンデンサのII-II線に沿った断面図である。
【
図3】
図2に示す積層セラミックコンデンサのIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図2に示す積層セラミックコンデンサのIV-IV線に沿った断面図である。
【
図5】
図2に示す積層セラミックコンデンサのV部の拡大図であって、外部電極を除外した場合の積層体の端面付近の断面を仮想的に示す拡大断面図である。
【
図6】
図5に示す積層体の端面付近のVI部の拡大図であって、第1の連結面周囲の断面を模式的に示す拡大断面図である。
【
図7】
図5に示す積層体の端面付近のVII部の拡大図であって、第2の連結面周囲の断面を模式的に示す拡大断面図である。
【
図8】2連構造の積層セラミックコンデンサの構成の一例を示す模式図である。
【
図9】3連構造の積層セラミックコンデンサの構成の一例を示す模式図である。
【
図10】4連構造の積層セラミックコンデンサの構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下、本開示の第1実施形態に係る積層セラミック電子部品としての積層セラミックコンデンサ1について説明する。
図1は、本実施形態の積層セラミックコンデンサ1の外観斜視図である。
図2は、
図1の積層セラミックコンデンサ1のII-II線に沿った断面図である。
図3は、
図2の積層セラミックコンデンサ1のIII-III線に沿った断面図である。
図4は、
図2の積層セラミックコンデンサ1のIV-IV線に沿った断面図である。
【0010】
積層セラミックコンデンサ1は、積層体10と、外部電極40と、を有する。
【0011】
図1~
図7には、XYZ直交座標系が示されている。積層セラミックコンデンサ1および積層体10の長さ方向Lは、X方向と対応している。積層セラミックコンデンサ1および積層体10の幅方向Wは、Y方向と対応している。積層セラミックコンデンサ1および積層体10の積層方向Tは、Z方向と対応している。ここで、
図2に示す断面はLT断面とも称される。
図3に示す断面はWT断面とも称される。
図4に示す断面はLW断面とも称される。
【0012】
図1~
図4に示すように、積層体10は、積層方向Tに相対する第1の主面TS1および第2の主面TS2と、積層方向Tに直交する幅方向Wに相対する第1の側面WS1および第2の側面WS2と、積層方向Tおよび幅方向Wに直交する長さ方向Lに相対する第1の端面LS1および第2の端面LS2と、を含む。
【0013】
図1に示すように、積層体10は、略直方体形状を有している。なお、積層体10の長さ方向Lの寸法は、幅方向Wの寸法よりも必ずしも長いとは限らない。積層体10の角部および稜線部には、丸みがつけられていることが好ましい。角部は、積層体の3面が交わる部分であり、稜線部は、積層体の2面が交わる部分である。なお、積層体10を構成する表面の一部または全部に凹凸などが形成されていてもよい。
【0014】
積層体10の寸法は、特に限定されないが、積層体10の長さ方向Lの寸法をL寸法とすると、L寸法は、0.2mm以上10mm以下であることが好ましい。また、積層体10の積層方向Tの寸法をT寸法とすると、T寸法は、0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。また、積層体10の幅方向Wの寸法をW寸法とすると、W寸法は、0.1mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0015】
図2および
図3に示すように、積層体10は、内層部11と、積層方向Tにおいて内層部11を挟み込むように配置された第1の外層部としての第1の主面側外層部12Aおよび第2の外層部としての第2の主面側外層部12Bと、を有する。
【0016】
内層部11は、複数のセラミック層としての複数の誘電体層20と、複数の内部導体層としての複数の内部電極層30と、を含む。内層部11は、積層方向Tにおいて、最も第1の主面TS1側に位置する内部電極層30から最も第2の主面TS2側に位置する内部電極層30までを含む。内層部11では、複数の内部電極層30が誘電体層20を介して対向して配置されている。内層部11は、静電容量を発生させ実質的にコンデンサとして機能する部分である。なお、
図2、
図3は、模式的な図である。積層体10の端面と内部電極層30との関係の詳細は、
図5を用いて後述する。
【0017】
複数の誘電体層20は、誘電体材料により構成される。誘電体材料は、例えば、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、またはCaZrO3などの成分を含む誘電体セラミックであってもよい。また、誘電体材料は、これらの主成分にMn化合物、Fe化合物、Cr化合物、Co化合物、Ni化合物などの副成分を添加したものであってもよい。
【0018】
誘電体層20の厚みは、0.2μm以上10μm以下であることが好ましい。積層される誘電体層20の枚数は、15枚以上1200枚以下であることが好ましい。なお、この誘電体層20の枚数は、内層部11の誘電体層の枚数と第1の主面側外層部12Aおよび第2の主面側外層部12Bの誘電体層の枚数との総数である。
【0019】
複数の内部電極層30は、複数の第1の内部電極層31および複数の第2の内部電極層32を有する。複数の第1の内部電極層31は、複数の誘電体層20上に配置されている。複数の第2の内部電極層32は、複数の誘電体層20上に配置されている。複数の第1の内部電極層31および複数の第2の内部電極層32は、積層体10の積層方向Tに誘電体層20を介して交互に配置されている。第1の内部電極層31および第2の内部電極層32は、誘電体層20を挟むようにして配置されている。
【0020】
第1の内部電極層31は、第2の内部電極層32に対向する第1の対向部31Aと、第1の対向部31Aから第1の端面LS1に引き出される第1の引き出し部31Bとを有している。第1の引き出し部31Bは、第1の端面LS1に露出している。
【0021】
第2の内部電極層32は、第1の内部電極層31に対向する第2の対向部32Aと、第2の対向部32Aから第2の端面LS2に引き出される第2の引き出し部32Bとを有している。第2の引き出し部32Bは、第2の端面LS2に露出している。
【0022】
本実施形態では、第1の対向部31Aと第2の対向部32Aが誘電体層20を介して対向することにより容量が形成され、コンデンサの特性が発現する。
【0023】
第1の対向部31Aおよび第2の対向部32Aの形状は、特に限定されないが、矩形状であることが好ましい。もっとも、矩形形状のコーナー部が丸められていてもよいし、矩形形状のコーナー部が斜めに形成されていてもよい。第1の引出き出し部31Bおよび第2の引き出し部32Bの形状は、特に限定されないが、矩形状であることが好ましい。もっとも、矩形形状のコーナー部が丸められていてもよいし、矩形形状のコーナー部が斜めに形成されていてもよい。
【0024】
第1の対向部31Aの幅方向Wの寸法と第1の引き出し部31Bの幅方向Wの寸法は、同じ寸法で形成されていてもよく、どちらか一方の寸法が小さく形成されていてもよい。第2の対向部32Aの幅方向Wの寸法と第2の引き出し部32Bの幅方向Wの寸法は、同じ寸法で形成されていてもよく、どちらか一方の寸法が狭く形成されていてもよい。
【0025】
第1の内部電極層31および第2の内部電極層32は、例えば、Ni、Cu、Ag、Pd、Auなどの金属や、これらの金属の少なくとも一種を含む合金などの適宜の導電材料により構成される。合金を用いる場合、第1の内部電極層31および第2の内部電極層32は、例えばAg-Pd合金等により構成されてもよい。
【0026】
第1の内部電極層31および第2の内部電極層32のそれぞれの厚みは、例えば、0.2μm以上2.0μm以下程度であることが好ましい。第1の内部電極層31および第2の内部電極層32の枚数は、合わせて15枚以上1000枚以下であることが好ましい。
【0027】
第1の主面側外層部12Aは、積層体10の第1の主面TS1側に位置する。第1の主面側外層部12Aは、第1の主面TS1と最も第1の主面TS1に近い内部電極層30との間に位置する複数の誘電体層20の集合体である。第1の主面側外層部12Aで用いられる誘電体層20は、内層部11で用いられる誘電体層20と同じものであってもよいし、違う材料により構成された誘電体層であっても良い。
【0028】
第2の主面側外層部12Bは、積層体10の第2の主面TS2側に位置する。第2の主面側外層部12Bは、第2の主面TS2と最も第2の主面TS2に近い内部電極層30との間に位置する複数の誘電体層20の集合体である。第2の主面側外層部12Bで用いられる誘電体層20は、内層部11で用いられる誘電体層20と同じものであってもよいし、違う材料により構成された誘電体層であっても良い。
【0029】
なお、積層体10は、対向電極部11Eを有する。対向電極部11Eは、第1の内部電極層31の第1の対向部31Aと第2の内部電極層32の第2の対向部32Aが対向する部分である。対向電極部11Eは、内層部11の一部として構成されている。
図4には、対向電極部11Eの幅方向Wおよび長さ方向Lの範囲が示されている。なお、対向電極部11Eは、コンデンサ有効部ともいう。
【0030】
なお、積層体10は、側面側外層部を有する。側面側外層部は、第1の側面側外層部WG1と、第2の側面側外層部WG2を有する。第1の側面側外層部WG1は、対向電極部11Eと第1の側面WS1との間に位置する誘電体層20を含む部分である。第2の側面側外層部WG2は、対向電極部11Eと第2の側面WS2との間に位置する誘電体層20を含む部分である。
図3および
図4には、第1の側面側外層部WG1および第2の側面側外層部WG2の幅方向Wの範囲が示されている。なお、側面側外層部は、Wギャップまたはサイドギャップともいう。
【0031】
なお、積層体10は、端面側外層部を有する。端面側外層部は、第1の端面側外層部LG1と、第2の端面側外層部LG2を有する。第1の端面側外層部LG1は、対向電極部11Eと第1の端面LS1との間に位置する誘電体層20を含む部分である。第2の端面側外層部LG2は、対向電極部11Eと第2の端面LS2との間に位置する誘電体層20を含む部分である。
図2および
図4には、第1の端面側外層部LG1および第2の端面側外層部LG2の長さ方向Lの範囲が示されている。なお、端面側外層部は、Lギャップまたはエンドギャップともいう。
【0032】
外部電極40は、第1の端面LS1側に配置された第1の外部電極40Aと、第2の端面LS2側に配置された第2の外部電極40Bと、を有する。
【0033】
第1の外部電極40Aは、第1の端面LS1上に配置されている。第1の外部電極40Aは、第1の内部電極層31に接続されている。第1の外部電極40Aは、第1の主面TS1の一部および第2の主面TS2の一部、ならびに第1の側面WS1の一部および第2の側面WS2の一部にも配置されていてもよい。本実施形態では、第1の外部電極40Aは、第1の端面LS1上から第1の主面TS1の一部および第2の主面TS2の一部、ならびに第1の側面WS1の一部および第2の側面WS2の一部にまで延びて形成されている。
【0034】
第2の外部電極40Bは、第2の端面LS2上に配置されている。第2の外部電極40Bは、第2の内部電極層32に接続されている。第2の外部電極40Bは、第1の主面TS1の一部および第2の主面TS2の一部、ならびに第1の側面WS1の一部および第2の側面WS2の一部にも配置されていてもよい。本実施形態では、第2の外部電極40Bは、第2の端面LS2上から第1の主面TS1の一部および第2の主面TS2の一部、ならびに第1の側面WS1の一部および第2の側面WS2の一部にまで延びて形成されている。
【0035】
前述のとおり、積層体10内においては、第1の内部電極層31の第1の対向部31Aと第2の内部電極層32の第2の対向部32Aとが誘電体層20を介して対向することにより容量が形成されている。そのため、第1の内部電極層31が接続された第1の外部電極40Aと第2の内部電極層32が接続された第2の外部電極40Bとの間でコンデンサの特性が発現する。
【0036】
第1の外部電極40Aは、第1の下地電極層50Aと、第1の下地電極層50A上に配置された第1のめっき層60Aと、を有する。
【0037】
第2の外部電極40Bは、第2の下地電極層50Bと、第2の下地電極層50B上に配置された第2のめっき層60Bと、を有する。
【0038】
第1の下地電極層50Aは、第1の端面LS1上に配置されている。第1の下地電極層50Aは、第1の内部電極層31に接続されている。本実施形態においては、第1の下地電極層50Aは、第1の端面LS1上から第1の主面TS1の一部および第2の主面TS2の一部、ならびに第1の側面WS1の一部および第2の側面WS2の一部にまで延びて形成されている。
【0039】
第2の下地電極層50Bは、第2の端面LS2上に配置されている。第2の下地電極層50Bは、第2の内部電極層32に接続されている。本実施形態においては、第2の下地電極層50Bは、第2の端面LS2上から第1の主面TS1の一部および第2の主面TS2の一部、ならびに第1の側面WS1の一部および第2の側面WS2の一部にまで延びて形成されている。
【0040】
第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bは、焼き付け層、導電性樹脂層、薄膜層等から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0041】
本実施形態の第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bは、焼き付け層である。焼付け層は、金属成分と、ガラス成分もしくはセラミック成分のどちらか一方を含んでいるか、その両方を含んでいることが好ましい。金属成分は、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等から選ばれる少なくとも1つを含む。ガラス成分は、例えば、B、Si、Ba、Mg、Al、Li等から選ばれる少なくとも1つを含む。セラミック成分は、誘電体層20と同種のセラミック材料を用いてもよいし、異なる種のセラミック材料を用いてもよい。セラミック成分は、例えば、BaTiO3、CaTiO3、(Ba,Ca)TiO3、SrTiO3、CaZrO3等から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0042】
焼き付け層は、例えば、ガラスおよび金属を含む導電性ペーストを積層体に塗布して焼き付けたものである。焼き付け層は、内部電極および誘電体層を有する積層チップと積層チップに塗布した導電性ペーストとを同時焼成したものでもよく、内部電極および誘電体層を有する積層チップを焼成して積層体を得た後に積層体に導電性ペーストを塗布して焼き付けたものでもよい。なお、内部電極および誘電体層を有する積層チップと積層チップに塗布した導電性ペーストとを同時に焼成する場合には、焼付け層は、ガラス成分の代わりにセラミック材料を添加したものを焼き付けて形成することが好ましい。この場合、添加するセラミック材料として、誘電体層20と同種のセラミック材料を用いることが特に好ましい。焼き付け層は、複数層であってもよい。
【0043】
第1の端面LS1に位置する第1の下地電極層50Aの長さ方向の厚みL2は、第1の下地電極層50Aの積層方向Tおよび幅方向Wの中央部において、例えば、3μm以上160μm以下程度であることが好ましい。より好ましくは、10μm以上100μm以下である。
【0044】
第2の端面LS2に位置する第2の下地電極層50Bの長さ方向の厚みL2は、第2の下地電極層50Bの積層方向Tおよび幅方向Wの中央部において、例えば、3μm以上160μm以下程度であることが好ましい。より好ましくは、10μm以上100μm以下である。
【0045】
第1の主面TS1または第2の主面TS2の少なくも一方の面の一部にも第1の下地電極層50Aを設ける場合には、この部分に設けられた第1の下地電極層50Aの積層方向の厚みは、この部分に設けられた第1の下地電極層50Aの長さ方向Lおよび幅方向Wの中央部において、例えば、3μm以上40μm以下程度であることが好ましい。
【0046】
第1の側面WS1または第2の側面WS2の少なくも一方の面の一部にも第1の下地電極層50Aを設ける場合には、この部分に設けられた第1の下地電極層50Aの幅方向の厚みは、この部分に設けられた第1の下地電極層50Aの長さ方向Lおよび積層方向Tの中央部において、例えば、3μm以上40μm以下程度であることが好ましい。
【0047】
第1の主面TS1または第2の主面TS2の少なくも一方の面の一部にも第2の下地電極層50Bを設ける場合には、この部分に設けられた第2の下地電極層50Bの積層方向の厚みは、この部分に設けられた第2の下地電極層50Bの長さ方向Lおよび幅方向Wの中央部において、例えば、3μm以上40μm以下程度であることが好ましい。
【0048】
第1の側面WS1または第2の側面WS2の少なくも一方の面の一部にも第2の下地電極層50Bを設ける場合には、この部分に設けられた第2の下地電極層50Bの幅方向の厚みは、この部分に設けられた第2の下地電極層50Bの長さ方向Lおよび積層方向Tの中央部において、例えば、3μm以上40μm以下程度であることが好ましい。
【0049】
なお、第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bは、焼き付け層に限らない。第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bは、焼き付け層、導電性樹脂層、薄膜層等から選ばれる少なくとも1つを含む。例えば、第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bは、薄膜層であってもよい。薄膜層は、スパッタ法または蒸着法等の薄膜形成法により形成される。薄膜層は、金属粒子が堆積された1μm以下の層である。
【0050】
第1のめっき層60Aは、第1の下地電極層50Aを覆うように配置されている。
【0051】
第2のめっき層60Bは、第2の下地電極層50Bを覆うように配置されている。
【0052】
第1のめっき層60Aおよび第2のめっき層60Bは、例えば、Cu、Ni、Sn、Ag、Pd、Ag-Pd合金、Au等から選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。第1のめっき層60Aおよび第2のめっき層60Bは、それぞれ複数層により形成されていてもよい。第1のめっき層60Aおよび第2のめっき層60Bは、Niめっき層の上にSnめっき層が形成された2層構造が好ましい。
【0053】
本実施形態においては、第1のめっき層60Aは、第1のNiめっき層61Aと、第1のNiめっき層61A上に位置する第1のSnめっき層62Aと、を有する。
【0054】
本実施形態においては、第2のめっき層60Bは、第2のNiめっき層61Bと、第2のNiめっき層61B上に位置する第2のSnめっき層62Bと、を有する。
【0055】
Niめっき層は、第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bが、積層セラミックコンデンサ1を実装する際のはんだによって侵食されることを防止する。また、Snめっき層は、積層セラミックコンデンサ1を実装する際のはんだの濡れ性を向上させる。これにより、積層セラミックコンデンサ1の実装を容易にする。第1のNiめっき層61A、第1のSnめっき層62A、第2のNiめっき層61B、第2のSnめっき層62Bそれぞれの厚みは、2μm以上15μm以下であることが好ましい。
【0056】
なお、本実施形態の第1の外部電極40Aおよび第2の外部電極40Bは、例えば導電性粒子と熱硬化性樹脂を含む導電性樹脂層を有していてもよい。下地電極層(第1の下地電極層50A、第2の下地電極層50B)として導電性樹脂層を設ける場合、導電性樹脂層は、焼き付け層を覆うように配置されてもよいし、焼き付け層を設けずに積層体10上に直接配置されてもよい。導電性樹脂層が焼き付け層を覆うように配置される場合、導電性樹脂層は、下地電極層とめっき層(第1のめっき層60A、第2のめっき層60B)との間に配置される。導電性樹脂層は、焼き付け層上を完全に覆っていてもよいし、焼き付け層の一部を覆っていてもよい。
【0057】
なお、導電性樹脂層は、複数層で形成されていてもよい。導電性樹脂層の最も厚い部分の厚みは、10μm以上150μm以下であることが好ましい。
【0058】
なお、第1の下地電極層50Aおよび第2の下地電極層50Bを設けずに、積層体10上に後述の第1のめっき層60Aおよび第2のめっき層60Bが直接配置される構成であってもよい。すなわち、積層セラミックコンデンサ1は、第1の内部電極層31と、第2の内部電極層32とに、直接電気的に接続されるめっき層を含む構成であってもよい。このような場合、前処理として積層体10の表面に触媒を配設した後で、めっき層が形成されてもよい。
【0059】
この場合においても、めっき層は、複数層であることが好ましい。下層めっき層および上層めっき層はそれぞれ、例えば、Cu、Ni、Sn、Pb、Au、Ag、Pd、BiまたはZnなどから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属を含む合金を含むことが好ましい。下層めっき層は、はんだバリア性能を有するNiを用いて形成されることがより好ましい。上層めっき層は、はんだ濡れ性が良好なSnまたはAuを用いて形成されることがより好ましい。なお、例えば、第1の内部電極層31および第2の内部電極層32がNiを用いて形成される場合は、下層めっき層は、Niと接合性のよいCuを用いて形成されることが好ましい。なお、上層めっき層は必要に応じて形成されればよく、外部電極40は、下層めっき層のみで構成されてもよい。また、めっき層は、上層めっき層を最外層としてもよいし、上層めっき層の表面にさらに他のめっき層を形成してもよい。
【0060】
下地電極層を設けずに配置するめっき層の1層あたりの厚みは、2μm以上15μm以下であることが好ましい。なお、めっき層は、ガラスを含まないことが好ましい。めっき層の単位体積あたりの金属割合は、99体積%以上であることが好ましい。
【0061】
なお、めっき層を積層体10上に直接形成する場合は、下地電極層の厚みを削減することができる。よって、下地電極層の厚みを削減した分、積層セラミックコンデンサ1の積層方向Tの寸法を低減させて、積層セラミックコンデンサ1の低背化を図ることができる。あるいは、下地電極層の厚みを削減した分、第1の内部電極層31および第2の内部電極層32の間に挟まれる誘電体層20の厚みを厚くすることができる。このように、めっき層を積層体10上に直接形成することで、積層セラミックコンデンサの設計自由度を向上させることができる。
【0062】
ここで、第1の外部電極40Aおよび第2の外部電極40Bを構成する各層の基本的な構成は同じである。また、第1の外部電極40Aおよび第2の外部電極40Bは、積層セラミックコンデンサ1の長さ方向Lの中央のWT断面に対して概ね面対称である。よって、第1の外部電極40Aと第2の外部電極40Bとを特に区別して説明する必要のない場合は、第1の外部電極40Aおよび第2の外部電極40Bは、まとめて外部電極40と呼ばれる場合がある。また、積層体10の第1の端面LS1と第2の端面LS2とを特に区別して説明する必要のない場合は、第1の端面LS1および第2の端面LS2は、まとめて端面LSと呼ばれる場合がある。
【0063】
なお、積層体10と外部電極40を含む積層セラミックコンデンサ1の長さ方向の寸法をL寸法とすると、L寸法は、0.2mm以上10mm以下であることが好ましい。また、積層セラミックコンデンサ1の高さ方向の寸法をT寸法とすると、T寸法は、0.1mm以上10mm以下であることが好ましい。また、積層セラミックコンデンサ1の幅方向の寸法をW寸法とすると、W寸法は、0.1mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0064】
以下の
図5~7を用いた説明において、上述のとおり、第1の端面LS1および第2の端面LS2は、まとめて端面LSとして説明される。
図5は、
図2に示す積層セラミックコンデンサのV部の拡大図であって、外部電極を除外した場合の積層体の端面付近の断面を仮想的に示す拡大断面図である。なお、
図5は、端面側を図上側として示される。
図6は、
図5に示す積層体の端面付近のVI部の拡大図であって、第1の連結面周囲の断面を模式的に示す拡大断面図である。
図7は、
図5に示す積層体の端面付近のVII部の拡大図であって、第2の連結面周囲の断面を模式的に示す拡大断面図である。
【0065】
積層体の端面LSは、
図5に示されるように内層部11によって表面が形成される内層端面LS100と、第1の主面側外層部12Aによって表面が形成される第1の外層端面LS131と、第2の主面側外層部12Bによって表面が形成される第2の外層端面LS132と、を有する。
【0066】
第1の外層端面LS131および第2の外層端面LS132は、略平坦面を含むことが好ましい。
図5に示すように、第1の外層端面LS131は、内層端面LS100側に形成された平坦面部LS141と、第1の主面TS1側に形成された丸みを有する曲面部LS151と、を備えていてもよい。第2の外層端面LS132は、内層端面LS100側に形成された平坦面部LS142と、第2の主面TS2側に設けられた丸みを有する曲面部LS152と、を備えていてもよい。
【0067】
内層端面LS100は、第1の外層端面LS131および第2の外層端面LS132よりも、長さ方向に突出した位置に面を有する突出端面LS110と、第1の外層端面LS131と突出端面LS110との間を繋ぐ面によって形成された第1の連結面LS121と、第2の外層端面LS132と突出端面LS110との間を繋ぐ面によって形成された第2の連結面LS122と、を有する。
【0068】
突出端面LS110は、略平坦面であることが好ましい。第1の外層端面LS131に対する、突出端面LS110の突出量L1は、5μm以上50μm以下であることが好ましい。より好ましくは10μm以上40μm以下である。第2の外層端面LS132に対する、突出端面LS110の突出量L1は、5μm以上50μm以下であることが好ましい。より好ましくは10μm以上40μm以下である。これらの突出量は、下地電極層の積層方向Tおよび幅方向Wの中央部における下地電極層の長さ方向の厚みL2の5%以上50%以下であることが好ましい。突出端面LS110には、複数の内部電極層30が露出している。
【0069】
第1の連結面LS121および第2の連結面LS122は、曲面または傾斜した平面により形成されている。本実施形態においては、
図5~7に示すように、第1の連結面LS121および第2の連結面LS122は、膨らみを有する曲面により形成されている。
【0070】
具体的には、第1の連結面LS121は、第1の外層端面LS131との境界部P11から突出端面LS110側に向かって、傾斜角が徐々に小さくなるような曲面により形成されている。ここで、傾斜角は、第1の外層端面LS131を内層端面LS100側に延長した仮想面VS2Aと第1の連結面LS121とのなす角により規定される。第1の外層端面LS131と突出端面LS110が平行である場合は、傾斜角は、突出端面LS110を第1の主面TS1側に延長したときの仮想面VS1Aと第1の連結面LS121とのなす角により規定されるということもできる。
【0071】
第2の連結面LS122は、第2の外層端面LS132との境界部P21から突出端面LS110側に向かって、傾斜角が徐々に小さくなるような曲面により形成されている。ここで、傾斜角は、第2の外層端面LS132を内層端面LS100側に延長した仮想面VS2Bと第2の連結面LS122とのなす角により規定される。第2の外層端面LS132と突出端面LS110が平行である場合は、傾斜角は、突出端面LS110を第2の主面TS2側に延長したときの仮想面VS1Bと第2の連結面LS122とのなす角により規定されるということもできる。
【0072】
なお、
図5~7に示すように、第1の連結面LS121と突出端面LS110は曲面により滑らかに連結されていてもよい。第2の連結面LS122と突出端面LS110は曲面により滑らかに連結されていてもよい。
【0073】
図5に示すように、第1の連結面LS121および第2の連結面LS122は、LT断面視において、飽和曲線状であってもよい。具体的には、第1の連結面LS121は、LT断面視において、第1の外層端面LS131との境界部P11から突出端面LS110側に向かって延びる飽和曲線状であってもよい。第2の連結面LS122は、LT断面視において、第2の外層端面LS132との境界部P21から突出端面LS110側に向かって延びる飽和曲線状であってもよい。なお、飽和曲線には、シグモイド曲線も含まれる。
【0074】
第1の連結面LS121および第2の連結面LS122の積層方向Tの長さT1はそれぞれ、内層端面LS100の積層方向Tの長さT2の2%以上40%以下であることが好ましい。より好ましくは、5%以上40%以下である。
【0075】
第1の連結面LS121および第2の連結面LS122にはそれぞれ、複数の内部電極層30が露出している。第1の連結面LS121および第2の連結面LS122それぞれに、好ましくは3層以上、より好ましくは5層以上、さらに好ましくは7層以上の内部電極層30が露出する。第1の連結面LS121および第2の連結面LS122それぞれに露出する内部電極層30は、50層以下であってもよい。
【0076】
第1の外層端面LS131と第1の連結面LS121との境界部P11における、第1の外層端面LS131と第1の連結面LS121とのなす角θは
図5、6に示すように鈍角であり、第2の外層端面LS132と第2の連結面LS122との境界部P21における、第2の外層端面LS132と第2の連結面LS122とのなす角θは
図5、7に示すように鈍角である。
【0077】
第1の外層端面LS131と第1の連結面LS121との境界部P11における、第1の外層端面LS131と第1の連結面LS121とのなす角θは120°以上170°以下であることが好ましく、より好ましくは120°以上160°以下であり、さらに好ましくは130°以上160°以下である。
【0078】
第2の外層端面LS132と第2の連結面LS122との境界部P21における、第2の外層端面LS132と第2の連結面LS122とのなす角θは120°以上170°以下であることが好ましく、より好ましくは120°以上160°以下であり、さらに好ましくは130°以上160°以下である。
【0079】
突出端面LS110と、第1の連結面LS121を突出端面LS110側に延長したときの第1の仮想面とのなす角Φは、突出端面LS110と第1の外層端面LS131とのなす角よりも大きいことが好ましい。突出端面LS110と、第2の連結面LS122を突出端面LS110側に延長したときの第2の仮想面とのなす角Φは、突出端面LS110と第2の外層端面LS132とのなす角よりも大きいことが好ましい。
【0080】
ここで、
図5に示すように、突出端面LS110と第1の外層端面LS131は略平行であることが好ましい。また、
図5に示すように、突出端面LS110と第2の外層端面LS132は略平行であることが好ましい。なお、第1の外層端面LS131と突出端面LS110が平行の時は、第1の外層端面LS131と突出端面LS110のなす角は0°、第2の外層端面LS132と突出端面LS110が平行の時は、第2の外層端面LS132と突出端面LS110のなす角は0°として考える。
【0081】
なお、第1の連結面LS121が曲面の場合は、第1の連結面LS121と第1の外層端面LS131の境界部P11と、第1の連結面LS121と突出端面LS110の境界部P12とを結ぶ直線LN1に基づき、第1の連結面LS121の角度が規定され、上述のなす角Φが規定される。
【0082】
なお、第2の連結面LS122が曲面の場合は、第2の連結面LS122と第2の外層端面LS132の境界部P21と、第2の連結面LS122と突出端面LS110の境界部P22とを結ぶ直線LN2に基づき、第2の連結面LS122の角度が規定され、上述のなす角Φが規定される。
【0083】
なお、第1の外層端面LS131および第2の外層端面LS132が平坦面部および曲面部を有する場合、該平坦面部に基づき、上述のなす角が測定される。
【0084】
図6に示すように、第1の連結面LS121における、最も第1の主面TS1側の位置に露出している内部電極層30の露出面と、第1の主面TS1側から第2の主面TS2側に向かって2番目の位置に露出している内部電極層30の露出面とを結ぶ直線の延長線LN10と、突出端面LS110を第1の主面TS1側に延長した時の仮想面VS1Aとのなす角α1は20°以上60°以下であることが好ましい。より好ましくは20°以上50°以下である。なお、上述の直線は、積層体10の端面の輪郭線上における、隣り合う誘電体層20によって形成される誘電体層20の開口部の中心位置を、内部電極層30の露出面の代表位置として規定される。すなわち、延長線LN10を規定する前述の直線は、第1の連結面LS121における、最も第1の主面TS1側の位置に露出している内部電極層30の露出面の代表位置としての開口部の中心位置MP10と、第1の主面TS1側から第2の主面TS2側に向かって2番目の位置に露出している内部電極層30の露出面の代表位置としての開口部の中心位置MP11とを結ぶものである。
【0085】
図7に示すように、第2の連結面LS122における、最も第2の主面TS2側の位置に露出している内部電極層30の露出面と、第2の主面TS2側から第1の主面TS1側に向かって2番目の位置に露出している内部電極層30の露出面とを結ぶ直線の延長線LN20と、突出端面LS110を第2の主面TS2側に延長した時の仮想面VS1Bとのなす角β1は20°以上60°以下であることが好ましい。より好ましくは20°以上50°以下である。なお、延長線LN20を規定する前述の直線は、第2の連結面LS122における、最も第2の主面TS2側の位置に露出している内部電極層30の露出面の代表位置としての開口部の中心位置MP20と、第2の主面TS2側から第1の主面TS1側に向かって2番目の位置に露出している内部電極層30の露出面の代表位置としての開口部の中心位置MP21とを結ぶものである。
【0086】
前述のとおり、
図6に示すように、本実施形態の第1の連結面LS121および第2の連結面LS122は、曲面により形成されている。第1の連結面LS121における、最も第1の主面TS1側の位置に露出している内部電極層30の露出面と、第1の主面TS1側から第2の主面TS2側に向かって2番目の位置に露出している内部電極層30の露出面とを結ぶ直線の延長線LN10と、突出端面LS110とのなす角をα1とし、第1の主面TS1側から第2の主面TS2側に向かって2番目の位置に露出している内部電極層30の露出面と、第1の主面TS1側から第2の主面TS2側に向かって3番目の位置に露出している内部電極層30の露出面とを結ぶ直線の延長線LN11と、突出端面LS110とのなす角をα2としたとき、α1>α2であることが好ましい。なお、延長線LN11を規定する前述の直線は、第1の連結面LS121における、第1の主面TS1側から第2の主面TS2側に向かって2番目の位置に露出している内部電極層30の露出面の代表位置としての開口部の中心位置MP11と、第1の主面TS1側から第2の主面TS2側に向かって3番目の位置に露出している内部電極層30の露出面の代表位置としての開口部の中心位置MP12とを結ぶものである。
【0087】
図7に示すように、第2の連結面LS122における、最も第2の主面TS2側の位置に露出している内部電極層30の露出面と、第2の主面TS2側から第1の主面TS1側に向かって2番目の位置に露出している内部電極層30の露出面とを結ぶ直線の延長線LN20と、突出端面LS110とのなす角をβ1とし、第2の主面TS2側から第1の主面TS1側に向かって2番目の位置に露出している内部電極層30の露出面と、第2の主面TS2側から第1の主面TS1側に向かって3番目の位置に露出している内部電極層30の露出面とを結ぶ直線の延長線LN21と、突出端面LS110とのなす角をβ2としたとき、β1>β2であることが好ましい。なお、延長線LN21を規定する前述の直線は、第2の連結面LS122における、第2の主面TS2側から第1の主面TS1側に向かって2番目の位置に露出している内部電極層30の露出面の代表位置としての開口部の中心位置MP21と、第2の主面TS2側から第1の主面TS1側に向かって3番目の位置に露出している内部電極層30の露出面の代表位置としての開口部の中心位置MP22とを結ぶものである。
【0088】
なお、α2、β2は、α1、β1よりも小さな角度であって、5°以上50°以下であることが好ましい。より好ましくは5°以上40°以下である。
【0089】
第1の主面TS1側から第2の主面TS2側に向かって3番目の位置に露出している内部電極層30の露出面と、第1の主面TS1側から第2の主面TS2側に向かって4番目の位置に露出している内部電極層30の露出面とを結ぶ直線の延長線LN12と、突出端面LS110とのなす角をα3としたとき、α1>α2>α3であることが好ましい。なお、延長線LN12を規定する前述の直線は、第1の連結面LS121における、第1の主面TS1側から第2の主面TS2側に向かって3番目の位置に露出している内部電極層30の露出面の代表位置としての開口部の中心位置MP12と、第1の主面TS1側から第2の主面TS2側に向かって4番目の位置に露出している内部電極層30の露出面の代表位置としての開口部の中心位置MP13とを結ぶものである。
【0090】
第2の主面TS2側から第1の主面TS1側に向かって3番目の位置に露出している内部電極層30の露出面と、第2の主面TS2側から第1の主面TS1側に向かって4番目の位置に露出している内部電極層30の露出面とを結ぶ直線の延長線LN22と、突出端面LS110とのなす角をβ3としたとき、β1>β2>β3であることが好ましい。なお、延長線LN22を規定する前述の直線は、第2の連結面LS122における、第2の主面TS2側から第1の主面TS1側に向かって3番目の位置に露出している内部電極層30の露出面の代表位置としての開口部の中心位置MP22と、第2の主面TS2側から第1の主面TS1側に向かって4番目の位置に露出している内部電極層30の露出面の代表位置としての開口部の中心位置MP23とを結ぶものである。
【0091】
なお、α3、β3は、α2、β2よりも小さな角度であって、3°以上40°以下であることが好ましい。より好ましくは3°以上30°以下である。
【0092】
以下、本実施形態における各種パラメータの測定方法について説明する。各種パラメータは、積層セラミックコンデンサをW寸法の1/4の位置まで研磨した断面、積層セラミックコンデンサをW寸法の1/2の位置まで研磨した断面、積層セラミックコンデンサをW寸法の3/4の位置まで研磨した断面をそれぞれ測定して得た測定結果の平均値から取得する。
【0093】
まず、積層セラミックコンデンサを第1の側面WS1側または第2の側面WS2側からW寸法の1/4の位置まで断面研磨し、特定のLT断面を露出させる。そして、研磨により露出させた積層体10のLT断面をSEMにて観察する。SEM像において、下記寸法および角度を測定する。
[1]突出端面LS110の突出量L1(
図5参照)
[2]下地電極層の長さ方向の厚みL2(
図2参照)
[3]第1の連結面LS121および第2の連結面LS122の積層方向Tの長さT1(
図5参照)
[4]内層端面LS100の積層方向Tの長さT2(
図5参照)
[5]境界部P11における第1の外層端面LS131と第1の連結面LS121とのなす角θ(
図5、6参照)
[6]境界部P21における第2の外層端面LS132と第2の連結面LS122とのなす角θ(
図5、7参照)
[7]突出端面LS110と、第1の連結面LS121を突出端面LS110側に延長したときの第1の仮想面とのなす角Φ(
図5、6参照)
[8]突出端面LS110を第1の主面TS1側に延長したときの仮想面VS1Aと第1の外層端面LS131とのなす角
[9]突出端面LS110と、第2の連結面LS122を突出端面LS110側に延長したときの第2の仮想面とのなす角Φ(
図5、7参照)
[10]突出端面LS110を第2の主面TS2側に延長したときの仮想面VS1Bと第2の外層端面LS132とのなす角
[11]複数の内部電極層の露出面を結ぶ直線の延長線LN10、LN11、LN12、LN20、LN21、LN22と、突出端面LS110とのなす角α1、α2、α3、β1、β2、β3(
図6~7参照)
【0094】
なお、[11]のなす角を測定するにあたって、複数の内部電極層の露出面を結ぶ直線は、以下の方法により規定される。
(1)LT断面において、積層体の端面における誘電体層の表面をフィッティングし、積層体の端面の輪郭線を規定する。
(2)積層体の端面の輪郭線上における、隣り合う誘電体層によって形成される誘電体層の開口部の中心位置を、内部電極層の露出面の代表位置とし、前述の直線を規定する。
【0095】
測定後、さらにW寸法の1/2の位置まで断面研磨し、再び同様のSEM像の取得および測定を行う。さらにW寸法の3/4の位置まで断面研磨し、再び同様のSEM像の取得および測定を行う。このように積層セラミックコンデンサのW寸法の1/4、1/2、3/4の3断面について、全部で3枚のSEM像それぞれについて、上記寸法および角度を測定する。各寸法および角度について平均値を求め、これらの測定値の平均値を、本実施形態の寸法および角度とする。
【0096】
次に、本実施形態の積層セラミックコンデンサ1の製造方法について説明する。
【0097】
誘電体層20用の誘電体シートおよび内部電極層30用の導電性ペーストが準備される。誘電体シートおよび内部電極用の導電性ペーストは、バインダおよび溶剤を含む。バインダおよび溶剤は、公知のものであってもよい。
【0098】
誘電体シート上に、内部電極層30用の導電性ペーストが、例えば、スクリーン印刷やグラビア印刷などにより所定のパターンで印刷される。これにより、第1の内部電極層31のパターンが形成された誘電体シートおよび、第2の内部電極層32のパターンが形成された誘電体シートが準備される。
【0099】
内部電極層のパターンが印刷されていない誘電体シートが所定枚数積層されることにより、第1の主面TS1側の第1の主面側外層部12Aとなる部分が形成される。その上に、第1の内部電極層31のパターンが印刷された誘電体シートおよび第2の内部電極層32のパターンが印刷された誘電体シートが順次積層されることにより、内層部11となる部分が形成される。この内層部11となる部分の上に、内部電極層のパターンが印刷されていない誘電体シートが所定枚数積層されることにより、第2の主面TS2側の第2の主面側外層部12Bとなる部分が形成される。これにより、積層シートが作製される。
【0100】
本実施形態においては、外層部(第1の主面側外層部12A、第2の主面側外層部12B)となる部分を形成するための誘電体シートとして、内層部11となる部分を形成する誘電体シートよりも、有機物体積比率の大きい誘電体シートを用いる。
【0101】
積層シートが静水圧プレスなどの手段により積層方向にプレスされることにより、積層ブロックが作製される。
【0102】
積層ブロックが所定のサイズにカットされることにより、積層チップが切り出される。このとき、バレル研磨などにより積層チップの角部および稜線部に丸みがつけられてもよい。
【0103】
積層チップが焼成されることにより、積層体10が作製される。焼成温度は、誘電体層20や内部電極層30の材料にもよるが、900℃以上1400℃以下であることが好ましい。
【0104】
このとき、外層部用の誘電体シートとして、内層部用の誘電体シートよりも有機物体積比の大きいシートを用いているため、焼成時において、外層部となる部分を構成する誘電体シートが、内層部11となる部分を構成する誘電体シートよりも大きく収縮する。これにより、内層部11が外層部よりも突出した構造が得られる。
【0105】
次に、焼成された後、積層体10がバレル研磨により研磨される。このとき、バレル研磨により段差部および角部が選択的に研磨されていくことにより、本実施形態の構造の積層体10が得られる。なお、本実施形態の構造の積層体10を形成するための方法はこれに限らない。例えば、レーザー研磨により積層体10を選択的に研磨するなどの方法も利用して、本実施形態の構造の積層体10を形成してもよい。
【0106】
積層体10の両端面に下地電極層(第1の下地電極層50A、第2の下地電極層50B)となる導電性ペーストが塗布される。本実施形態においては、下地電極層は、焼き付け層である。ガラス成分と金属とを含む導電性ペーストが、例えばディッピングなどの方法により、積層体10に塗布される。その後、焼き付け処理が行われ、下地電極層が形成される。この時の焼き付け処理の温度は、700℃以上900℃以下であることが好ましい。
【0107】
なお、焼成前の積層チップと、積層チップに塗布した導電性ペーストとを同時に焼成する場合には、焼き付け層は、ガラス成分の代わりにセラミック材料を添加したものを焼き付けて形成することが好ましい。このとき、添加するセラミック材料として、誘電体層20と同種のセラミック材料を用いることが特に好ましい。この場合は、焼成前の積層チップに対して、導電性ペーストを塗布し、積層チップと積層チップに塗布した導電性ペーストを同時に焼き付けて、焼き付け層が形成された積層体10を形成する。
【0108】
その後、下地電極層の表面に、めっき層が形成される。本実施形態においては、第1の下地電極層50Aの表面に、第1のめっき層60Aが形成される。また、第2の下地電極層50Bの表面に、第2のめっき層60Bが形成される。本実施形態では、めっき層として、Niめっき層およびSnめっき層が形成される。めっき処理を行うにあたっては、電解めっき、無電解めっきのどちらを採用してもよい。ただし、無電解めっきは、めっき析出速度を向上させるために、触媒などによる前処理が必要となるため、工程が複雑化するというデメリットがある。したがって、通常は、電解めっきを採用することが好ましい。Niめっき層およびSnめっき層は、例えばバレルめっきにより、順次形成される。
【0109】
なお、下地電極層を薄膜層で形成する場合は、マスキングなどを行うことにより、外部電極を形成したい部分に下地電極層としての薄膜層が形成される。薄膜層は、スパッタ法または蒸着法等の薄膜形成法により形成される。薄膜層は、金属粒子が堆積された1μm以下の層である。
【0110】
なお、下地電極層として導電性樹脂層を設ける場合、導電性樹脂層は、焼き付け層を覆うように配置されてもよいし、焼き付け層を設けずに積層体10上に直接配置されてもよい。導電性樹脂層を設ける場合は、熱硬化性樹脂および金属成分を含む導電性樹脂ペーストが焼き付け層上もしくは積層体10上に塗布され、その後、250~550℃以上の温度で熱処理される。これにより、熱硬化樹脂が熱硬化して、導電性樹脂層が形成される。この熱処理時の雰囲気は、N2雰囲気であることが好ましい。また、樹脂の飛散を防ぎ、かつ、各種金属成分の酸化を防ぐため、酸素濃度は100ppm以下であることが好ましい。
【0111】
なお、下地電極層を設けずに、めっき層が積層体10の内部電極層30の露出部に直接配置されてもよい。この場合は、積層体10の第1の端面LS1および第2の端面LS2にめっき処理が施され、内部電極層30の露出部上にめっき層が形成される。めっき処理を行うにあたっては、電解めっき、無電解めっきのどちらを採用してもよい。ただし、無電解めっきは、めっき析出速度を向上させるために、触媒などによる前処理が必要となるため、工程が複雑化するというデメリットがある。したがって、通常は、電解めっきを採用することが好ましい。めっき工法としては、バレルめっきを採用することが好ましい。また、必要に応じて、下層めっき層の表面に形成される上層めっき層を、下層めっき層と同様の工法により形成してもよい。
【0112】
このような製造工程により、積層セラミックコンデンサ1が製造される。
【0113】
なお、積層セラミックコンデンサ1の構成は、
図2に示す構成に限定されない。例えば、積層セラミックコンデンサ1は、
図8、
図9、
図10に示すような、2連構造、3連構造、4連構造の積層セラミックコンデンサであってもよい。
図8は、2連構造の積層セラミックコンデンサの構成の一例を示す模式図である。
図9は、3連構造の積層セラミックコンデンサの構成の一例を示す模式図である。
図10は4連構造の積層セラミックコンデンサの構成の一例を示す模式図である。
【0114】
図8に示す積層セラミックコンデンサ1は、2連構造の積層セラミックコンデンサ1であり、内部電極層30として、第1の内部電極層31および第2の内部電極層32に加えて、第1の端面LS1および第2の端面LS2のどちらにも引き出されない浮き内部電極層35を備える。
図9に示す積層セラミックコンデンサ1は、浮き内部電極層35として、第1の浮き内部電極層35Aおよび第2の浮き内部電極層35Bを備えた、3連構造の積層セラミックコンデンサ1である。
図10に示す積層セラミックコンデンサ1は、浮き内部電極層35として、第1の浮き内部電極層35A、第2の浮き内部電極層35Bおよび第3の浮き内部電極層35Cを備えた、4連構造の積層セラミックコンデンサ1である。このように、内部電極層30として、浮き内部電極層35を設けることにより、積層セラミックコンデンサ1は、対向電極部が複数に分割された構造となる。これにより、対向する内部電極層30間において複数のコンデンサ成分が形成され、これらのコンデンサ成分が直列に接続された構成となる。よって、それぞれのコンデンサ成分に印加される電圧が低くなり、積層セラミックコンデンサ1の高耐圧化を図ることができる。なお、本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、4連以上の多連構造であってもよいことはいうまでもない。
【0115】
なお、積層セラミックコンデンサ1は、2個の外部電極を備える2端子型のものであってもよいし、多数の外部電極を備える多端子型のものであってもよい。
【0116】
なお、上述した実施形態では、積層セラミック電子部品として、誘電体セラミックにより構成される誘電体層20がセラミック層として用いられている積層セラミックコンデンサを例示した。しかしながら、本開示の積層セラミック電子部品はこれに限定されない。例えば、本開示のセラミック電子部品は、セラミック層として圧電体セラミックを用いた圧電部品、セラミック層として半導体セラミックを用いたサーミスタ、およびセラミック層として磁性体セラミックを用いたインダクタ等の種々の積層セラミック電子部品にも適用可能である。圧電体セラミックとしてはPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系セラミック等が挙げられ、半導体セラミックとしてはスピネル系セラミック等が挙げられ、磁性体セラミックとしてはフェライト等セラミックが挙げられる。
【0117】
本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、上記実施形態において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【0118】
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1によれば、以下の効果を奏する。
【0119】
(1)本実施形態の積層セラミックコンデンサ1(積層セラミック電子部品1)は、複数の積層された誘電体層20(セラミック層20)と、誘電体層20上に積層された複数の内部電極層30(内部導体層30)とを有し、積層方向Tに相対する第1の主面TS1および第2の主面TS2と、積層方向Tに直交する幅方向Wに相対する第1の側面WS1および第2の側面WS2と、積層方向Tおよび幅方向Wに直交する長さ方向Lに相対する第1の端面LS1および第2の端面LS2と、を含む積層体10と、第1の端面LS1上に配置され、内部電極層30に接続された第1の外部電極40Aと、第2の端面LS2上に配置され、内部電極層30に接続された第2の外部電極40Bと、を有する積層セラミックコンデンサ1であって、積層体10は、複数の誘電体層20の一部と内部電極層30とを含む内層部11と、内層部11を挟み込むように配置され、複数の誘電体層20の一部以外の部分をそれぞれ含む第1の主面TS1側の第1の主面側外層部12A(第1の外層部)および第2の主面TS2側の第2の主面側外層部12B(第2の外層部)を有し、第1の端面LS1および第2の端面LS2はそれぞれ、内層部11によって表面が形成される内層端面LS100と、第1の主面側外層部12Aによって表面が形成される第1の外層端面LS131と、第2の主面側外層部12Bによって表面が形成される第2の外層端面LS132と、を有し、内層端面LS100は、第1の外層端面LS131および第2の外層端面LS132よりも、長さ方向Lに突出した位置に面を有する突出端面LS110と、第1の外層端面LS131と突出端面LS110との間を繋ぐ面によって形成された第1の連結面LS121と、第2の外層端面LS132と突出端面LS110との間を繋ぐ面によって形成された第2の連結面LS122と、を有し、第1の外層端面LS131と第1の連結面LS121との境界部P11における、第1の外層端面LS131と第1の連結面LS121とのなす角θは鈍角であり、第2の外層端面LS132と第2の連結面LS122との境界部P21における、第2の外層端面LS132と第2の連結面LS122とのなす角θは鈍角であり、第1の連結面LS121および第2の連結面LS122にはそれぞれ、複数の内部電極層30が露出する。
【0120】
前述の特許文献1に記載された構成においては、内層部と外層部の境界部分に設けられた段差が直角に形成されているため、この段差の部分に配置される外部電極に気泡が生じやすい。よって、この気泡の存在により、積層セラミックコンデンサの耐湿性が低下するおそれがある。例えば外部電極の下地電極層として焼き付け層を用いる場合、焼き付け層となる導電性ペーストの塗布時において、この段差の部分に気泡が残りやすい。この場合、焼成時に空気の体積が膨張したり、空気が外部に抜けることにより、焼き付け層内に大きな空隙が形成されたり、ピンホールが発生する可能性がある。これにより、積層セラミックコンデンサの耐湿性が低下するおそれがある。
【0121】
一方、本実施形態によれば、第1の外層端面LS131と内層端面LS100の突出端面LS110との間を繋ぐ面によって形成された第1の連結面LS121が、内層端面LS100の第1の主面TS1側に設けられていることにより、内層部11と外層部の境界部分に導電性ペーストの気泡が発生しにくい。また、第2の外層端面LS132と内層端面LS100の突出端面LS110との間を繋ぐ面によって形成された第2の連結面LS122が、内層端面LS100の第2の主面TS2側に設けられていることにより、内層部11と外層部の境界部分に導電性ペーストの気泡が発生しにくい。よって、内層部11と外層部の境界部分におけるピンホール等の発生が抑制され、積層セラミックコンデンサ1の耐湿性を向上させることができる。
【0122】
このように、本実施形態の構成は、導電性ペーストが塗布されて形成される焼き付け層によって下地電極層が構成されている場合において、より顕著な効果を得ることができる。ただし、外部電極40の構成は、これに限らない。例えば、下地電極層として導電性樹脂層を有する外部電極であってもよい。硬化前の導電性樹脂層は粘性を有するため、内層部11と外層部の境界部分に設けられた段差が直角に形成されている場合、硬化前の導電性樹脂の塗布時において、この段差の部分に気泡が残りやすい。一方、本実施形態の第1の連結面LS121と第2の連結面LS122を有する構成であれば、下地電極層が導電性樹脂層の場合であっても、内層部11と外層部の境界部分に配置される外部電極40内に気泡が生じにくくなるため、積層セラミックコンデンサ1の耐湿性を向上させることができる。
【0123】
また、下地電極層を設けずに、積層体10上にめっき層が直接配置される構成であっても、内層部11と外層部の境界部分に配置される外部電極40内に気泡が生じにくくなるため、積層セラミックコンデンサ1の耐湿性を向上させることができる。
【0124】
また、本実施形態においては、第1の外層端面LS131と第2の外層端面LS132を有する。第1の外層端面LS131と第2の外層端面LS132は、平坦面を含むことが好ましい。本実施形態に示されるような第1の外層端面LS131と第2の外層端面LS132を有することにより、導電性ペーストの塗布時において、導電性ペーストの過剰な流動が抑制される。これにより、内層部11の端面付近の導電ペーストの厚みが薄くなることを抑制することが可能となり、積層セラミックコンデンサ1の耐湿性を向上させることができる。
【0125】
なお、仮に本実施形態に示されるような第1の外層端面LS131と第2の外層端面LS132を有していない場合、例えば、積層体10の端面LSと第1の主面TS1または第2の主面TS2の稜線部に設けられたR面取り部に内部電極層30が露出しているような構成の場合、このR面取り部に位置する外部電極40の厚みは薄くなりやすい。よって、R面取り部に露出する内部電極層30と外部電極40の表面との距離が短くなり、積層セラミックコンデンサ1の耐湿性が低下するおそれがある。
【0126】
また、本実施形態においては、内層端面LS100に突出端面LS110を有する。突出端面LS110は、平坦面によって構成されていることが好ましい。仮に積層体10の端面LSの中央部付近が膨らむようにラウンドしている場合、例えばディッピングにより導電性ペーストを塗布した場合に、導電性ペーストが重力により積層体10の端面の中央部付近に集まりやすくなるため、積層体10の端面LSの中央部付近の外部電極が過剰に厚くなってしまう。また、相対的に内層部11の端面付近の導電性ペーストの厚みが薄くなりやすいため、積層セラミックコンデンサ1の耐湿性が低下するおそれがあった。
【0127】
本実施形態に示されるような突出端面LS110を有することにより、例えばディッピング等によって導電性ペーストを塗布する際に、突出端面LS110の中央付近に導電性ペーストが集まる状況を防ぐことができる。よって、突出端面LS110の中央付近の外部電極40が過剰に厚くなることを抑制できため、積層セラミックコンデンサ1の長さ方向の寸法を小さくすることができる。あるいは、外部電極40の最大厚み部分の厚みを薄くできる分、積層体10の対向電極部11E(コンデンサ有効部)の体積を増やし、静電容量を大きくすることも可能である。このように、積層セラミックコンデンサ1の設計自由度を向上させることが可能となる。また、突出端面LS110の中央付近に導電性ペーストが集まる状況を防ぐことができることから、内層部11を覆う導電性ペーストの厚みの偏りを防ぐことが可能となる。よって、内層部11の端面付近の導電ペーストの厚みが薄くなることを抑制することが可能となり、積層セラミックコンデンサ1の耐湿性を向上させることができる。以上のように、本実施形態の積層セラミックコンデンサ1によれば、耐湿性の高い積層セラミックコンデンサ1を提供できる。
【0128】
(2)本実施形態では、第1の連結面LS121および第2の連結面LS122は、曲面または傾斜した平面により形成されている。これにより、第1の連結面LS121および第2の連結面LS122が傾斜しているので、内部電極層30の露出面積が増え、内部電極層と外部電極とのコンタクト性が向上する。よって、積層セラミックコンデンサ1の信頼性が向上する。また、導電性ペーストの塗布時において、より気泡が残りにくくすることができ、積層セラミックコンデンサ1の耐湿性を向上させることができる。
【0129】
(3)本実施形態では、突出端面LS110は略平坦面であり、第1の外層端面LS131および第2の外層端面LS132は略平坦面を含み、突出端面LS110と、第1の連結面LS121を突出端面LS110側に延長したときの第1の仮想面とのなす角は、突出端面LS110と第1の外層端面LS131とのなす角よりも大きく、突出端面LS110と、第2の連結面LS122を突出端面LS110側に延長したときの第2の仮想面とのなす角は、突出端面LS110と第2の外層端面LS132とのなす角よりも大きい。これにより、導電性ペーストの塗布時において、突出端面LS110の中央付近に導電性ペーストが集まる状況を防ぎつつ、気泡が残りにくくすることができ、積層セラミックコンデンサ1の品質を向上させることができる。
【0130】
(4)本実施形態では、突出端面LS110と第1の外層端面LS131は略平行であり、突出端面LS110と第2の外層端面LS132は略平行である。これにより、導電性ペーストの塗布時において、端面LSにおける導電性ペーストの重力による厚みの偏りを抑制でき、品質を向上させることができる。
【0131】
(5)本実施形態では、第1の外層端面LS131に対する、突出端面LS110の突出量は、5μm以上50μm以下であり、第2の外層端面LS132に対する、突出端面LS110の突出量は、5μm以上50μm以下である。これにより、積層セラミックコンデンサ1は、小さいサイズのときでも導電性ペーストの塗布時における気泡発生を抑制することができる。
【0132】
(6)本実施形態では、第1の連結面LS121における、最も第1の主面TS1側の位置に露出している内部電極層30の露出面と、第1の主面TS1側から第2の主面TS2側に向かって2番目の位置に露出している内部電極層30の露出面とを結ぶ直線の延長線LN10と、突出端面LS110とのなす角α1は20°以上60°以下であり、第2の連結面LS122における、最も第2の主面TS2側の位置に露出している内部電極層30の露出面と、第2の主面TS2側から第1の主面TS1側に向かって2番目の位置に露出している内部電極層30の露出面とを結ぶ直線の延長線LN20と、突出端面LS110とのなす角β1は20°以上60°以下である。これにより、導電性ペーストの塗布時において、突出端面LS110の中央付近に導電性ペーストが集まる状況を防ぎつつ、気泡が残りにくくすることができ、積層セラミックコンデンサ1の品質を向上させることができる。
【0133】
(7)第1の連結面LS121および第2の連結面LS122は、曲面により形成されており、第1の連結面LS121における、最も第1の主面TS1側の位置に露出している内部電極層30の露出面と、第1の主面TS1側から第2の主面TS2側に向かって2番目の位置に露出している内部電極層30の露出面とを結ぶ直線の延長線LN10と、突出端面LS110とのなす角をα1とし、第1の主面TS1側から第2の主面TS2側に向かって2番目の位置に露出している内部電極層30の露出面と、第1の主面TS1側から第2の主面TS2側に向かって3番目の位置に露出している内部電極層30の露出面とを結ぶ直線の延長線LN11と、突出端面LS110とのなす角をα2としたとき、α1>α2であり、第2の連結面LS122における、最も第2の主面TS2側の位置に露出している内部電極層30の露出面と、第2の主面TS2側から第1の主面TS1側に向かって2番目の位置に露出している内部電極層30の露出面とを結ぶ直線の延長線LN20と、突出端面LS110とのなす角をβ1とし、第2の主面TS2側から第1の主面TS1側に向かって2番目の位置に露出している内部電極層30の露出面と、第2の主面TS2側から第1の主面TS1側に向かって3番目の位置に露出している内部電極層30の露出面とを結ぶ直線の延長線LN21と、突出端面LS110とのなす角をβ2としたとき、β1>β2である。これにより、導電性ペーストの塗布時において、突出端面LS110の中央付近に導電性ペーストが集まる状況を防ぎつつ、気泡が残りにくくすることができ、積層セラミックコンデンサ1の品質を向上させることができる。
【0134】
(8)本実施形態では、第1の主面TS1側から第2の主面TS2側に向かって3番目の位置に露出している内部電極層30の露出面と、第1の主面TS1側から第2の主面TS2側に向かって4番目の位置に露出している内部電極層30の露出面とを結ぶ直線の延長線LN12と、突出端面LS110とのなす角をα3としたとき、α1>α2>α3であり、第2の主面TS2側から第1の主面TS1側に向かって3番目の位置に露出している内部電極層30の露出面と、第2の主面TS2側から第1の主面TS1側に向かって4番目の位置に露出している内部電極層30の露出面とを結ぶ直線の延長線LN22と、突出端面LS110とのなす角をβ3としたとき、β1>β2>β3である。これにより、導電性ペーストの塗布時において、突出端面LS110の中央付近に導電性ペーストが集まる状況を防ぎつつ、気泡が残りにくくすることができ、積層セラミックコンデンサ1の品質を向上させることができる。
【0135】
本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、上記実施形態において記載する個々の望ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
【符号の説明】
【0136】
1 積層セラミックコンデンサ(積層セラミック電子部品)
10 積層体
11 内層部
12A 第1の主面側外層部(第1の外層部)
12B 第2の主面側外層部(第2の外層部)
LS 端面
LS1 第1の端面
LS2 第2の端面
LS100 内層端面
LS110 突出端面
LS121 第1の連結面
LS122 第2の連結面
LS131 第1の外層端面
LS132 第2の外層端面
P11 境界部
P12 境界部
P21 境界部
P22 境界部
WS1 第1の側面
WS2 第2の側面
TS1 第1の主面
TS2 第2の主面
20 誘電体層(セラミック層)
30 内部電極層(内部導体層)
40A 第1の外部電極
40B 第2の外部電極
L 長さ方向
W 幅方向
T 積層方向