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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118478
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20230818BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20230818BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230818BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20230818BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
H01L29/78 652K
H01L29/78 653C
H01L29/78 652M
H01L29/78 652T
H01L29/78 658G
H01L29/78 658F
H01L29/44 Y
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021444
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】下村 紗矢
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩朗
(72)【発明者】
【氏名】河井 康宏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕史
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104BB01
4M104DD43
4M104DD65
4M104EE08
4M104FF06
4M104FF10
(57)【要約】
【課題】リーク電流を低減可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る半導体装置は、第1電極と、第1導電形の第1半導体領域と、第2導電形の第2半導体領域と、第1導電形の第3半導体領域と、導電体と、ゲート電極と、第2電極と、を備える。第1半導体領域は、第1電極の上に設けられている。第2半導体領域は、第1半導体領域の上に設けられている。第3半導体領域は、第2半導体領域の一部の上に設けられている。導電体は、第1半導体領域中に絶縁部を介して設けられている。導電体の下面は、第1電極から第1半導体領域に向かう第1方向と直交する第2方向に平行な第1面と、第1面に連なり、第1方向及び第2方向に対して傾斜した第2面と、を含む。ゲート電極は、絶縁部中に設けられ、第2方向において第2半導体領域とゲート絶縁層を介して対面する。第2電極は、第2半導体領域及び第3半導体領域の上に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられ、前記第1電極と電気的に接続された第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の一部の上に設けられた第1導電形の第3半導体領域と、
前記第1半導体領域中に絶縁部を介して設けられた導電体であって、前記導電体の下面は、
前記第1電極から前記第1半導体領域に向かう第1方向と直交する第2方向に平行な第1面と、
前記第1面に連なり、前記第1方向及び前記第2方向に対して傾斜した第2面と、
を含む、前記導電体と、
前記絶縁部中に設けられ、前記第2方向において前記第2半導体領域とゲート絶縁層を介して対面するゲート電極と、
前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域の上に設けられ、前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域と電気的に接続された第2電極と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記導電体は、前記第1面及び前記第2面を有する第1導電部と、前記第1導電部の上に設けられた第2導電部と、を含み、
前記第2方向において、前記第1導電部の長さは前記第2導電部の長さよりも長い、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記導電体は、前記第2導電部の上に設けられた第3導電部をさらに含み、
前記第2方向において、前記第2導電部の長さは、前記第3導電部の長さよりも短い、請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1導電部は、
前記第1面及び前記第2面を有し、上方に向かうほど前記第2方向における長さが長い第1部分と、
前記第1部分の上に設けられ、上方に向かうほど前記第2方向における長さが短い第2部分と、
を含む請求項2又は3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記絶縁部の前記第1面と接する面には、酸化シリコンの{100}面が存在し、
前記絶縁部の前記第2面と接する面には、酸化シリコンの{110}面が存在する、請求項1~4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられ、前記第1電極と電気的に接続された第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の一部の上に設けられた第1導電形の第3半導体領域と、
前記第1半導体領域中に絶縁部を介して設けられた導電体であって、前記導電体の下端に位置する第1導電部と、前記第1導電部の上に設けられた第2導電部と、を含み、前記第1半導体領域から前記第2半導体領域に向かう第1方向と直交する第2方向において前記第1導電部の長さが前記第2導電部よりも長い、前記導電体と、
前記絶縁部中に設けられ、前記第2方向において前記第2半導体領域とゲート絶縁層を介して対面するゲート電極と、
前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域の上に設けられ、前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域と電気的に接続された第2電極と、
を備えた半導体装置。
【請求項7】
前記導電体の下端にはボイドが設けられた、請求項1~6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor(MOSFET)などの半導体装置は、例えば電力変換に用いられる。半導体装置について、リーク電流の低減が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-108322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、リーク電流を低減可能な半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、第1電極と、第1導電形の第1半導体領域と、第2導電形の第2半導体領域と、第1導電形の第3半導体領域と、導電体と、ゲート電極と、第2電極と、を備える。前記第1半導体領域は、前記第1電極の上に設けられ、前記第1電極と電気的に接続されている。前記第2半導体領域は、前記第1半導体領域の上に設けられている。前記第3半導体領域は、前記第2半導体領域の一部の上に設けられている。前記導電体は、前記第1半導体領域中に絶縁部を介して設けられている。前記導電体の下面は、前記第1電極から前記第1半導体領域に向かう第1方向と直交する第2方向に平行な第1面と、前記第1面に連なり、前記第1方向及び前記第2方向に対して傾斜した第2面と、を含む。前記ゲート電極は、前記絶縁部中に設けられ、前記第2方向において前記第2半導体領域とゲート絶縁層を介して対面する。前記第2電極は、前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域の上に設けられ、前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域と電気的に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る半導体装置の一部を示す斜視断面図である。
図2図1の一部を拡大した断面図である。
図3】実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図4】実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図5】実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図6】実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図7】参考例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
図8】半導体装置の特性を模式的に示すグラフである。
図9】実施形態の変形例に係る半導体装置の一部を示す斜視断面図である。
図10】実施形態の変形例に係る半導体装置の一部を示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
以下の説明及び図面において、n、n、p、及びpの表記は、各不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、「+」が付されている表記は、「+」及び「-」のいずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に高く、「-」が付されている表記は、いずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に低いことを示す。これらの表記は、それぞれの領域にp形不純物とn形不純物の両方が含まれている場合には、それらの不純物が補償しあった後の正味の不純物濃度の相対的な高低を表す。
以下で説明する各実施形態について、各半導体領域のp形とn形を反転させて各実施形態を実施してもよい。
【0008】
図1は、実施形態に係る半導体装置の一部を示す斜視断面図である。
図1に示すように、実施形態に係る半導体装置100は、n形(第1導電形)ドリフト領域1(第1半導体領域)、p形(第2導電形)ベース領域2(第2半導体領域)、n形ソース領域3(第3半導体領域)、p形コンタクト領域4、n形ドレイン領域5、導電体10、絶縁部21、ゲート電極30、ドレイン電極41(第1電極)、及びソース電極42(第2電極)を含む。半導体装置100は、例えばMOSFETである。
【0009】
実施形態の説明には、XYZ直交座標系を用いる。ドレイン電極41からn形ドリフト領域1に向かう方向をZ方向(第1方向)とする。Z方向と直交する一方向をX方向(第2方向)とする。X方向及びZ方向と直交する方向をY方向とする。また、ここでは、ドレイン電極41からn形ドリフト領域1に向かう方向を「上」と呼び、これと反対の方向を「下」と呼ぶ。これらの方向は、ドレイン電極41とn形ドリフト領域1との相対的な位置関係に基づく方向であり、重力の方向とは無関係である。
【0010】
ドレイン電極41は、半導体装置100の下面に設けられる。n形ドレイン領域5は、ドレイン電極41の上に設けられ、ドレイン電極41と電気的に接続される。n形ドリフト領域1は、n形ドレイン領域5の上に設けられる。n形ドリフト領域1におけるn形不純物濃度は、n形ドレイン領域5におけるn形不純物濃度よりも低い。n形ドリフト領域1は、n形ドレイン領域5を介してドレイン電極41と電気的に接続される。
【0011】
p形ベース領域2は、n形ドリフト領域1の上に設けられる。n形ソース領域3は、p形ベース領域2の一部の上に設けられる。p形コンタクト領域4は、p形ベース領域2の別の一部の上に設けられる。p形コンタクト領域4におけるp形不純物濃度は、p形ベース領域2におけるp形不純物濃度よりも高い。
【0012】
導電体10は、絶縁部21を介してn形ドリフト領域1中に設けられる。ゲート電極30は、絶縁部21中に設けられ、導電体10の上に位置する。ゲート電極30は、絶縁部21中に設けられ、X方向において、ゲート絶縁層31を介してp形ベース領域2と対面している。ゲート絶縁層31は、絶縁部21の一部である。図示した例では、ゲート電極30は、n形ドリフト領域1の一部及びn形ソース領域3の一部とも対面している。
【0013】
ソース電極42は、n形ソース領域3及びp形コンタクト領域4の上に設けられ、n形ソース領域3及びp形コンタクト領域4と電気的に接続される。図示した例では、ソース電極42の一部が下方に延び、X方向に並ぶ一対のn形ソース領域3同士の間に設けられている。p形ベース領域2は、p形コンタクト領域4を介してソース電極42と電気的に接続される。ゲート電極30は、ゲート絶縁層31により、ソース電極42とは電気的に分離される。
【0014】
p形ベース領域2、n形ソース領域3、p形コンタクト領域4、導電体10、及びゲート電極30のそれぞれは、Y方向に延び、X方向において複数設けられる。導電体10のY方向における端部は、上方に向けて引き上げられ、ソース電極42と電気的に接続される。又は、導電体10とゲート電極30との間に絶縁部21が設けられず、導電体10がゲート電極30と電気的に接続されても良い。
【0015】
図2は、図1の一部を拡大した断面図である。
図2に示すように、導電体10の下面は、第1面S1、第2面S2、及び第3面S3を含む。第1面S1は、X-Y面に平行である。第2面S2及び第3面S3は、第1面S1に連なり、X方向及びZ方向に対して傾斜している。第1面S1のX方向における位置は、第2面S2のX方向における位置と、第3面S3のX方向における位置と、の間にある。
【0016】
導電体10は、より具体的には、第1導電部11、第2導電部12、及び第3導電部13を含む。第1導電部11は、導電体10の下端に位置する。第2導電部12は、第1導電部11の上に設けられる。第3導電部13は、第2導電部12の上に設けられる。
【0017】
第1導電部11は、第1面S1~第3面S3を有する。第1導電部11の幅(X方向における長さ)W1は、第2導電部12の幅W2よりも長い。第2導電部12の幅W2は、第3導電部13の幅W3よりも短い。第2導電部12の幅W2は、第3導電部13の幅W3と同じでも良い。
【0018】
第1導電部11は、第1部分11a及び第2部分11bを含む。第1部分11aは、第1面S1~第3面S3を有する。第2部分11bは、第1部分11aの上に設けられる。第1部分11aの幅は、上方に向かうほど長い。第2部分11bの幅は、上方に向かうほど短い。例えば、第1部分11aのZ方向における長さは、第2部分11bのZ方向における長さよりも短い。
【0019】
図示したように、第1導電部11に、ボイドVが設けられても良い。第1導電部11に設けられたボイドVは、Y方向に延びている。又は、Y方向において、複数のボイドVが点在していても良い。
【0020】
半導体装置100の動作を説明する。
ソース電極42に対してドレイン電極41に正の電圧が印加された状態で、ゲート電極30に閾値以上の電圧が印加される。これにより、p形ベース領域2にチャネル(反転層)が形成され、半導体装置100がオン状態となる。電子は、チャネルを通ってソース電極42からドレイン電極41へ流れる。ゲート電極30に印加される電圧が閾値よりも低くなると、p形ベース領域2のチャネルが消滅し、半導体装置100がオフ状態になる。
【0021】
半導体装置100がオフ状態に切り替わると、ソース電極42に対してドレイン電極41に印加される正の電圧が増大していく。このとき、ドレイン電極41とソース電極42との間の電位差、又はドレイン電極41とゲート電極30との間の電位差により、絶縁部21とn形ドリフト領域1との界面からn形ドリフト領域1に向けて空乏層が広がる。この空乏層の広がりにより、半導体装置100の耐圧を高めることができる。又は、半導体装置100の耐圧を維持したまま、n形ドリフト領域1におけるn形不純物濃度を高め、半導体装置100のオン抵抗を低減できる。
【0022】
半導体装置100の各構成要素の材料の一例を説明する。
形ドリフト領域1、p形ベース領域2、n形ソース領域3、p形コンタクト領域4、及びn形ドレイン領域5は、半導体材料を含む。半導体材料として、シリコン、炭化シリコン、窒化ガリウム、またはガリウムヒ素を用いることができる。半導体材料としてシリコンが用いられる場合、n形不純物として、ヒ素、リン、またはアンチモンを用いることができる。p形不純物として、ボロンを用いることができる。
【0023】
絶縁部21は、絶縁材料を含む。例えば、絶縁部21は、酸化シリコン、窒化シリコン、又は酸窒化シリコンを含む。導電体10及びゲート電極30は、ポリシリコンなどの導電材料を含む。導電体10及びゲート電極30には、n形又はp形の不純物が添加されても良い。ドレイン電極41及びソース電極42は、チタン、タングステン、又はアルミニウムなどの金属を含む。
【0024】
図3図6は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
図3図6を参照して、実施形態に係る半導体装置100の製造方法の一例を説明する。まず、n形半導体層5aを含む半導体基板Subを用意する。図3(a)に示すように、n形半導体層5aの上に、シリコンをエピタキシャル成長させることでn形半導体層1aを形成する。
【0025】
図3(b)に示すように、フォトリソグラフィ及び反応性イオンエッチング(RIE)により、n形半導体層1aの上面に複数のトレンチT1を形成する。RIEの実行時、異方性の緩やかなエッチングガスを用いる。これにより、トレンチT1の下面を湾曲させることができる。この湾曲面には、シリコンの{100}面、{110}面などが現れている。エッチングガスとして、六フッ化硫黄(SF)を用いることができる。
【0026】
図4(a)に示すように、n形半導体層1aの上面及びトレンチT1の内面に沿って、絶縁層21aを形成する。絶縁層21aは、熱酸化により形成される。このとき、シリコンの[100]方向及び[110]方向に沿って、酸化が進行する。これにより、絶縁層21aに囲まれたトレンチT2の下面に、平坦面S1a、傾斜面S2a、及び傾斜面S3aが形成される。平坦面S1aには、酸化シリコンの{100}面が現れている。傾斜面S2a及びS3aには、酸化シリコンの{110}面が現れている。また、絶縁層21aの形成時、トレンチT2の底部の幅が、その上部に比べて広くなる。これは、後述するように、熱酸化時の応力が影響していると考えられる。
【0027】
なお、シリコン及び酸化シリコンについて、{100}面は、互いに等価な(100)面、(010)面、又は(001)面のいずれかを示す。また、{110}面は、互いに等価な(110)面、(011)面、又は(101)のいずれかを示す。
【0028】
絶縁層21aの上に、トレンチT2を埋め込む導電層10aを形成する。導電層10aは、ポリシリコンなどの導電材料の化学気相堆積(CVD)により形成される。導電層10aの形成時、トレンチT2の底部にボイドVが形成される。導電層10aの一部を、ケミカルドライエッチング(Chemical Dry Etching:CDE)などで除去し、導電層10aの上面を後退させる。これにより、複数のトレンチT2内にそれぞれ分断して設けられた複数の導電層10aが形成される。図4(b)に示すように、絶縁層21a及び複数の導電層10aの上に、CVDにより、絶縁層21bを形成する。導電層10aは、平坦面S1aと接する第1面S1を有する。また、導電層10aは、傾斜面S2a及びS3aとそれぞれ接する第2面S2及び第3面S3を有する。
【0029】
ウェットエッチングにより、絶縁層21aの上面及び絶縁層21bの上面を後退させる。これにより、n形半導体層1aの上面及びトレンチT1の側面の一部が露出する。熱酸化により、露出したn形半導体層1aの上面及びトレンチT1の側面に絶縁層31aを形成する。絶縁層31aの厚さは、絶縁層21aの厚さよりも小さい。絶縁層31aの上に、導電層30aを形成する。図5(a)に示すように、CDE又はウェットエッチングにより導電層30aの上面を後退させ、それぞれのトレンチT1の内部に導電層30aを形成する。
【0030】
トレンチT1同士の間のn形半導体層1aの上部に、p形不純物及びn形不純物を順次イオン注入し、p形半導体領域2a及びn形半導体領域3aを形成する。図5(b)に示すように、複数の導電層30aを覆う絶縁層31bを形成する。
【0031】
絶縁層31b、絶縁層31a、及びn形半導体領域3aを貫通し、p形半導体領域2aに達する開口OPを形成する。開口OPを通してp形半導体領域2aにp形不純物をイオン注入し、図6(a)に示すように、p形半導体領域4aを形成する。
【0032】
絶縁層31bの上に、開口OPを埋め込む金属層42aを形成する。その後、n形半導体層5aが所定の厚さになるまで半導体基板Subの下面を研削する。図6(b)に示すように、研削した下面に金属層41aを形成する。以上の工程により、図1に示す半導体装置100が製造される。
【0033】
図6(b)に示すn形半導体層1aは、図1に示すn形ドリフト領域1に対応する。p形半導体領域2aは、p形ベース領域2に対応する。n形半導体領域3aは、n形ソース領域3に対応する。p形半導体領域4aは、p形コンタクト領域4に対応する。n形半導体層5aは、n形ドレイン領域5に対応する。導電層10aは、導電体10に対応する。絶縁層21a及び21aは、絶縁部21に対応する。導電層30aは、ゲート電極30に対応する。絶縁層31a及び31bは、ゲート絶縁層31に対応する。金属層41aは、ドレイン電極41に対応する。金属層42aは、ソース電極42に対応する。
【0034】
実施形態に係る半導体装置の利点を説明する。
図7は、参考例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
図7に示す半導体装置100rにおいて、導電体10rは、底面BS、側面SS1、及び側面SS2を有する。底面BSは、X-Y面に平行である。側面SS1及びSS2は、Y-Z面に平行である。このため、底面BSと側面SS1との間の角と、底面BSと側面SS2との間の角と、は直角となっている。
【0035】
半導体装置100rがオフ状態のとき、ドレイン電極41とソース電極42との間の電位差により、n形ドリフト領域1と導電体10rとの間に電界が発生する。このとき、導電体10r下端の角では、電界集中が発生する。大きな電界により、絶縁部21にリーク電流が流れる。
【0036】
図8は、半導体装置の特性を模式的に示すグラフである。
図8において、横軸は、ソース電極42に対するドレイン電極41の電圧Vdsを示す。縦軸はドレイン電極41とソース電極42との間に流れる電流Idを示す。実線は、参考例に係る半導体装置の特性を示す。破線は、望ましい半導体装置の特性を示す。
【0037】
望ましい半導体装置では、電圧がブレークダウン電圧Vbdに達するまで、電流Idが小さい。電圧がブレークダウン電圧Vbdに達すると、電流Idが急峻に増大する。一方、参考例に係る半導体装置100rでは、電圧V1で電流Idが上昇し始める。電圧V1は、ブレークダウン電圧Vbdよりも小さい。これは、絶縁部21を流れるリーク電流に起因する。また、電圧Vdsがさらに上昇し、電圧V2に達すると、電流Idが急峻に増大する。これは、絶縁部21中の電界強度の高い部分を起点としてアバランシェ降伏が発生することに起因する。図8に示すように、絶縁部21を流れるリーク電流に起因して、半導体装置100の実質的な耐圧が、本来のブレークダウン電圧Vbdから電圧V2へ低下する。
【0038】
この課題について、実施形態に係る半導体装置100では、導電体10の下面が、第1面S1及び第2面S2を含む。第1面S1は、X方向に平行である。第1面S1に連なる第2面S2は、X方向及びZ方向に対して傾斜している。このため、第1面S1と第2面S2との間の角度は、90度未満である。これにより、半導体装置100rに比べて、導電体10の下端近傍での電界強度を低減できる。この結果、絶縁部21にリーク電流が流れることを抑制でき、半導体装置100の耐圧を向上できる。
【0039】
第1面S1と第2面S2との間の角度が大きいと、電界強度の低減の効果が弱まる。一方、角度が小さいと、導電体10下端の幅が長くなる。この結果、導電体10、絶縁部21などの微細化が難しくなり、半導体装置100のオン抵抗が増大しうる。このため、当該角度は、30度よりも大きく60度未満が好ましい。
【0040】
また、導電体10の下面は、第1面S1と連なる第3面S3を含む。第3面S3は、X方向及びZ方向に対して傾斜している。このため、第1面S1と第3面S3との間の角度は、90度未満である。これにより、導電体10の下端近傍での電界強度をさらに低減できる。第1面S1と第3面S3との間の角度は、30度よりも大きく60度未満が好ましい。
【0041】
導電体10は、図2に示すように、第1導電部11及び第2導電部12を含む。X方向において、第1導電部11の長さは、第2導電部12の長さよりも長い。すなわち、導電体10の下端が膨らんでいる。この構造によれば、第1面S1~第3面S3の構造と同様に、第1導電部11近傍の電界強度を低減できる。
【0042】
第1導電部11は、図1及び図2に示すように、ボイドVを含むことが好ましい。ボイドVが設けられる場合、ボイドVが設けられない場合に比べて、導電体10が、絶縁部21の応力に応じて変形し易くなる。これにより、絶縁部21の応力が低下する。絶縁部21からn形ドリフト領域1に加わる応力が低下する。この結果、応力によるn形ドリフト領域1での結晶欠陥の発生を抑制できる。
【0043】
ボイドVは、好ましくは、Y方向に延びている。この場合、複数のボイドVがY方向に点在している場合に比べて、ボイドVの体積が大きくなる。これにより、絶縁部21の応力がさらに低下する。
【0044】
また、半導体装置100では、絶縁部21の底部は、Z方向において、導電体10とn形ドリフト領域1との間に位置する。絶縁部21の側部は、X方向において、導電体10とn形ドリフト領域1との間に位置する。実施形態によれば、絶縁部21の底部の厚さT2aを大きくでき、絶縁部21の側部の厚さT1aと、厚さT2aと、の差を小さくできる。この結果、絶縁部21における電界強度を小さくでき、絶縁部21を流れるリーク電流を低減できる。
【0045】
厚さT2aが増大する理由は、以下の通りと考えられる。絶縁部21を形成する際、絶縁部21の底部には、大きな圧縮応力が発生する。図7に示す半導体装置100rでは、底面BSと側面SS1との間の角度が略直角であり、絶縁部21の底部の圧縮応力が分散し難い。この結果、半導体装置100rでは、絶縁部21の底部の厚さT2bが小さくなり、絶縁部21の側部の厚さT1bと厚さT2bとの差が大きくなる。一方、半導体装置100では、第1面S1と連なる第2面S2が、X方向及びZ方向に対して傾斜している。圧縮応力の分散が、直角の角によって阻害され難い。この結果、絶縁部21の底部の圧縮応力が低下し、厚さT2aが増大する。
【0046】
特に、酸化シリコンについては、[110]方向における圧縮応力が、[100]方向における圧縮応力よりも小さい。絶縁部21が酸化シリコンを含む場合、絶縁部21の第2面S2との接触面には、酸化シリコンの{110}面が存在する。これにより、絶縁部21の第2面S2と接触する部分の圧縮応力が低下する。この結果、絶縁部21の底部の圧縮応力がより分散し易くなり、厚さT2aが増大する。
【0047】
(変形例)
図9及び図10は、実施形態に係る半導体装置の一部を示す斜視断面図である。
導電体10の下端以外の構造、ゲート電極30の構造などについては、図1に示す例に限らず、適宜変更可能である。例えば、図9に示す半導体装置110のように、1つの絶縁部21の中に、複数のゲート電極30が設けられても良い。図示した例では、一対のゲート電極30が、導電体10よりも上方に設けられている。Z方向から見たとき、導電体10は、X方向において一対のゲート電極30の間に位置する。
【0048】
又は、図10に示す半導体装置120のように、導電体10の上部が、X方向において一対のゲート電極30の間に位置しても良い。
【0049】
いずれの形態においても、導電体10の下面が、第1面S1~第3面S3を含むことで、絶縁部21にリーク電流が流れることを抑制でき、半導体装置の耐圧を向上できる。
【0050】
導電体10の下面の具体的な形状は、上述した例に限定されない。例えば、導電体10の下面は、第1面S1、第2面S2、及び第3面S3に代えて、湾曲した形状を有していても良い。この場合も、導電体10の下端近傍での電界強度を低減できる。
【0051】
以上で説明した実施形態について、各半導体領域の間の不純物濃度の相対的な高低については、例えば、走査型静電容量顕微鏡(SCM)を用いて確認することが可能である。なお、各半導体領域におけるキャリア濃度は、各半導体領域において活性化している不純物濃度と等しいとみなすことができる。従って、各半導体領域の間のキャリア濃度の相対的な高低についても、SCMを用いて確認することができる。各半導体領域における不純物濃度については、二次イオン質量分析法(SIMS)により測定することが可能である。
【0052】
導電体10の下面と接する絶縁部21の結晶方位の解析には、電子後方散乱回折法(EBSD)を用いることができる。例えば、EBSDによって導電体10と絶縁部21との界面近傍を分析する。導電体10の下面が、第1面S1~第3面S3を含む場合、分析結果では、酸化シリコンの{100}面に対応するピークの強度が、他の面に対応するピークの強度よりも大きい。導電体10の下面が、湾曲した形状を有する場合、分析結果では、酸化シリコンの複数の面にそれぞれ対応する複数のピークが現れる。
【0053】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0054】
1:n形ドリフト領域、 1a:n形半導体層、 2:p形ベース領域、 2a:p形半導体領域、 3:n形ソース領域、 3a:n形半導体領域、 4:p形コンタクト領域、 4a:p形半導体領域、 5:n形ドレイン領域、 5a:n形半導体層、 10,10r:導電体、 10a:導電層、 11:第1導電部、 11a:第1部分、 11b:第2部分、 12:第2導電部、 13:第3導電部、 21:絶縁部、 21a,21b:絶縁層、 30:ゲート電極、 30a:導電層、 31:ゲート絶縁層、 31a,31b:絶縁層、 41:ドレイン電極、 41a:金属層、 42:ソース電極、 、 42a:金属層、 100,100r:半導体装置、 BS:底面、 OP:開口、 S1:第1面、 S1a:平坦面、 S2:第2面、 S2a:傾斜面、 S3:第3面、 S3a:傾斜面、 SS1,SS2:側面、 Sub:半導体基板、 T1,T2:トレンチ、 T1a,T1b,T2a、T2b:厚さ、 V:ボイド
図1
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