(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118514
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】木質柱鉄骨梁接合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20230818BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20230818BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
E04B1/30 K
E04B1/58 507N
E04B1/94 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021506
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 洋介
(72)【発明者】
【氏名】望月 英二
(72)【発明者】
【氏名】菅野 貴行
(72)【発明者】
【氏名】本山 真帆
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 頌吾
【テーマコード(参考)】
2E001
2E125
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA05
2E001EA08
2E001FA01
2E001FA02
2E001GA05
2E001GA06
2E001GA12
2E001GA63
2E001HA01
2E001HA32
2E001HC01
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB01
2E125AC07
2E125AC15
2E125AC23
2E125AG04
2E125AG47
2E125BB09
2E125BB18
2E125BE05
2E125BE07
2E125BE08
2E125CA78
(57)【要約】
【課題】木質柱と通し鉄骨梁との間で軸力を伝達しつつ、木質柱と通し鉄骨梁との接合作業の手間を低減することを目的とする。
【解決手段】木質柱鉄骨梁接合構造は、内部にコンクリート22が充填された鋼管仕口部20と、鋼管仕口部20の上下の端部にそれぞれ設けられた下側ダイアフラム24及び上側ダイアフラム26と、鋼管仕口部20から張り出す梁部30と、を有する通し鉄骨梁10と、下側ダイアフラム24及び上側ダイアフラム26にそれぞれ設けられた下側接合管40L及び上側接合管40Uと、下側接合管40L及び上側接合管40Uに端部がそれぞれ嵌め込まれる下側木質柱50L及び上側木質柱50Uと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にコンクリートが充填された鋼管仕口部と、前記鋼管仕口部の上下の端部にそれぞれ設けられたダイアフラムと、前記鋼管仕口部から張り出す梁部と、を有する通し鉄骨梁と、
上下の前記ダイアフラムの少なくとも一方に設けられた接合管と、
前記接合管に端部が嵌め込まれる木質柱と、
を備える木質柱鉄骨梁接合構造。
【請求項2】
前記鋼管仕口部の内壁面には、軸力伝達部材が設けられる、
請求項1に記載の木質柱鉄骨梁接合構造。
【請求項3】
前記木質柱は、
端部が前記接合管に嵌め込まれる木質心部と、
前記木質心部を耐火被覆する耐火被覆部と、
を有する、
請求項1又は請求項2に記載の木質柱鉄骨梁接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質柱鉄骨梁接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木質柱と鉄骨梁との接合構造が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に開示された接合構造では、例えば、鋼製の仕口部材から突出する接合プレートが、木質柱の端部に形成されたスリットに挿入され、ドリフトピンによって木質柱に接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-095768号公報
【特許文献2】特開平8-284250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、木質柱と鉄骨梁との間で軸力を伝達しつつ、木質柱と通し鉄骨梁との接合作業の手間を低減したいとの要望がある。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、木質柱と通し鉄骨梁との間で軸力を伝達しつつ、木質柱と通し鉄骨梁との接合作業の手間を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の木質柱鉄骨梁接合構造は、内部にコンクリートが充填された鋼管仕口部と、前記鋼管仕口部の上下の端部にそれぞれ設けられたダイアフラムと、前記鋼管仕口部から張り出す梁部と、を有する通し鉄骨梁と、上下の前記ダイアフラムの少なくとも一方に設けられた接合管と、前記接合管に端部が嵌め込まれる木質柱と、を備える。
【0008】
請求項1に係る木質柱鉄骨梁接合構造によれば、通し鉄骨梁は、鋼管仕口部と、鋼管仕口部の上下の端部にそれぞれ設けられたダイアフラムと、鋼管仕口部から張り出す梁部とを有している。上下のダイアフラムの少なくとも一方には、接合管が設けられている。
【0009】
接合管には、木質柱の端部が嵌め込まれている。これにより、木質柱が、接合管を介して通し鉄骨梁の鋼管仕口部に接合される。したがって、木質柱と通し鉄骨梁との接合作業の手間が低減される。
【0010】
また、鋼管仕口部の内部には、コンクリートが充填されている。これにより、ダイアフラムを介して、鋼管仕口部の内部のコンクリートと、接合管に嵌め込まれた木質柱の端部との間で軸力が伝達される。
【0011】
このように本発明では、木質柱と通し鉄骨梁との間で軸力を伝達しつつ、木質柱と通し鉄骨梁との接合作業の手間を低減することができる。
【0012】
請求項2に記載の木質柱鉄骨梁接合構造は、請求項1に記載の木質柱鉄骨梁接合構造において、前記鋼管仕口部の内壁面には、軸力伝達部材が設けられる。
【0013】
請求項2に係る木質柱鉄骨梁接合構造によれば、鋼管仕口部の内壁面には、軸力伝達部材が設けられている。これにより、木質柱の端部から、鋼管仕口部の内部のコンクリートに伝達された軸力が、軸力伝達部材を介して鋼管仕口部、及び梁部に効率的に伝達される。
【0014】
このように本発明では、木質柱の軸力を通し鉄骨梁に効率的に伝達することができる。
【0015】
請求項3に記載の木質柱鉄骨梁接合構造は、請求項1又は請求項2に記載の木質柱鉄骨梁接合構造において、前記木質柱は、端部が前記接合管に嵌め込まれる木質心部と、前記木質心部を耐火被覆する耐火被覆部と、を有する。
【0016】
請求項3に係る木質柱鉄骨梁接合構造によれば、木質柱は、木質心部と、耐火被覆部とを有している。木質心部の端部は、接合管に嵌め込まれる。これにより、木質柱が、接合管を介して通し鉄骨梁の鋼管仕口部に接合される。したがって、木質柱と通し鉄骨梁との接合作業の手間が低減される。
【0017】
また、木質心部は、耐火被覆部によって耐火被覆されている。これにより、木質柱の耐火性能が高められる。
【0018】
このように本発明では、木質柱と通し鉄骨梁との接合作業の手間を低減しつつ、木質柱の耐火性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、木質柱と通し鉄骨梁との間で軸力を伝達しつつ、木質柱と通し鉄骨梁との接合作業の手間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第一実施形態に係る木質柱鉄骨梁接合構造が適用された通し鉄骨梁、下側木質柱、及び上側木質柱を示す立面図である。
【
図3】第二実施形態に係る木質柱鉄骨梁接合構造が適用された通し鉄骨梁、下側木質柱、及び上側木質柱を示す立面図である。
【
図4】第二実施形態に係る木質柱鉄骨梁接合構造の変形例が適用された通し鉄骨梁、下側木質柱、及び上側木質柱を示す立面図である。
【
図5】第三実施形態に係る木質柱鉄骨梁接合構造が適用された通し鉄骨梁、下側木質柱、及び上側木質柱を示す立面図である。
【
図6】第三実施形態に係る木質柱鉄骨梁接合構造の変形例が適用された通し鉄骨梁及び上側木質柱を示す立面図である。
【
図7】第三実施形態に係る木質柱鉄骨梁接合構造の変形例が適用された通し鉄骨梁及び上側木質柱を示す立面図である。
【
図8】第三実施形態に係る木質柱鉄骨梁接合構造の変形例が適用された通し鉄骨梁及び下側木質柱を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。
【0022】
(木質柱鉄骨梁接合構造)
図1には、第一実施形態に係る木質柱鉄骨梁接合構造が適用された通し鉄骨梁10、下側木質柱50L、及び上側木質柱50Uが示されている。なお、下側木質柱50L、及び上側木質柱50Uは、木質柱の一例である。
【0023】
(通し鉄骨梁)
通し鉄骨梁10は、下側木質柱50Lの柱頭部と上側木質柱50Uの柱脚部(端部)との間に配置されている。この通し鉄骨梁10は、鋼管仕口部20、コンクリート22、下側ダイアフラム24、上側ダイアフラム26、複数の梁部30、下側接合管40L、及び上側接合管40Uを有している。
【0024】
なお、下側ダイアフラム24、及び上側ダイアフラム26は、上下のダイアフラムの一例である。また、下側接合管40L、及び上側接合管40Uは、接合管の一例である。
【0025】
鋼管仕口部20は、通し鉄骨梁10における下側木質柱50L及び上側木質柱50Uとの接合部(仕口部)とされており、下側木質柱50Lの柱頭部(端部)と上側木質柱50Uの柱脚部(端部)との間に配置されている。また、鋼管仕口部20は、角形鋼管によって筒状に形成されており、軸方向を上下方向として配置されている。この鋼管仕口部20の内部には、コンクリート22が充填されている。
【0026】
鋼管仕口部20の下端部には、下側ダイアフラム24が設けられている。一方、鋼管仕口部20の上端部には、上側ダイアフラム26が設けられている。下側ダイアフラム24及び上側ダイアフラム26は、鋼板等によって形成されており、鋼管仕口部20を挟んで互いに対向している。
【0027】
鋼管仕口部20の下端部は、下側ダイアフラム24の上面に突き当てられた状態で、溶接等によって接合されている。これにより、鋼管仕口部20の下端側の開口が下側ダイアフラム24によって閉塞されている。なお、下側ダイアフラム24の下面には、後述する下側接合管40Lが設けられている。
【0028】
鋼管仕口部20の上端部は、上側ダイアフラム26の下面に突き当てられた状態で、溶接等によって接合されている。これにより、鋼管仕口部20の上端側の開口が上側ダイアフラム26によって閉塞されている。なお、上側ダイアフラム26の上面には、後述する上側接合管40Uが設けられている。
【0029】
上側ダイアフラム26の中央部には、鋼管仕口部20の内部に通じる充填孔28が形成されている。充填孔28は、上側ダイアフラム26を厚み方向に貫通する円形状の貫通孔とされている。この充填孔28から、鋼管仕口部20の内部に、前述したコンクリート22が充填されている。なお、コンクリート22の充填孔は、上側ダイアフラム26に限らず、例えば、鋼管仕口部20等に形成しても良い。
【0030】
梁部30は、H形鋼によって形成されており、鋼管仕口部20の側面から両側へそれぞれ張り出している。各梁部30は、上下方向に互いに対向する一対の下側フランジ部32及び上側フランジ部34と、下側フランジ部32及び上側フランジ部34を接続するウェブ部36とを有している。
【0031】
下側フランジ部32の端部は、下側ダイアフラム24の端部に突き当てられた状態で、溶接等によって接合されている。これと同様に、上側フランジ部34の端部は、上側ダイアフラム26の端部に突き当てられた状態で、溶接等によって接合されている。また、ウェブ部36の端部は、鋼管仕口部20の側面に突き当てられた状態で、溶接等によって接合されている。
【0032】
なお、梁部30の長さは、適宜変更である。また、鋼管仕口部20には、少なくとも1本の梁部30を設けることができる。
【0033】
(下側接合管、上側接合管)
下側接合管40L及び上側接合管40Uは、角形鋼管によって筒状に形成されており、軸方向を上下方向として配置されている。また、下側接合管40L及び上側接合管40Uは、鋼管仕口部20の軸方向の両側に、当該鋼管仕口部20と同軸上に配置されている。
【0034】
下側接合管40L及び上側接合管40Uの断面の形状及び大きさは、鋼管仕口部20の断面と同様にされている。これらの下側接合管40L、鋼管仕口部20、及び上側接合管40Uは、軸方向に連続するように配置されている。
【0035】
なお、鋼管仕口部20、下側接合管40L、及び上側接合管40Uの断面の形状及び大きさは、異なっていても良い。
【0036】
下側接合管40Lの上端部は、下側ダイアフラム24の下面に突き当てられた状態で、溶接等によって接合されている。
図2に示されるように、下側接合管40Lの断面形状は、下側木質柱50Lの断面形状と同様とされ、かつ、下側接合管40Lの断面の大きさは、下側木質柱50Lの断面よりも若干大きくされている。この下側接合管40Lの内部には、後述する下側木質柱50Lの柱頭部が嵌め込まれている。
【0037】
図1に示されるように、上側接合管40Uの下端部は、上側ダイアフラム26の上面に突き当てられた状態で、溶接等によって接合されている。また、上側接合管40Uの断面形状は、上側木質柱50Uの断面形状と同様とされ、かつ、上側接合管40Uの断面の大きさは、上側木質柱50Uの断面よりも若干大きくされている。この上側接合管40Uの内部には、後述する上側木質柱50Uの柱脚部が嵌め込まれている。
【0038】
なお、下側接合管40Lの高さ(軸方向の長さ)H1は、例えば、下側木質柱50Lの柱頭部の柱幅W1の1/3以下とされている。これと同様に、上側接合管40Uの高さ(軸方向の長さ)H2は、例えば、上側木質柱50Uの柱頭部の柱幅W2の1/3以下とされている。
【0039】
(下側木質柱、上側木質柱)
下側木質柱50L及び上側木質柱50Uは、木材や木質材によって角柱状に形成されている。下側木質柱50Lは、鋼管仕口部20の下側に配置されている。
【0040】
下側木質柱50Lの柱頭部は、下側接合管40Lの内部に嵌め込まれており、その上端面が下側ダイアフラム24の下面に接触している。これにより、下側木質柱50Lの柱頭部が、下側接合管40Lを介して鋼管仕口部20に接合されている。
【0041】
図1に示されるように、上側木質柱50Uは、鋼管仕口部20の上側に配置されている。また、上側木質柱50U、鋼管仕口部20、及び下側木質柱50Lは、同軸上に配置されている。
【0042】
上側木質柱50Uの柱脚部は、上側接合管40Uの内部に嵌め込まれており、その下端面が上側ダイアフラム26の上面に接触している。これにより、上側木質柱50Uの柱脚部が、上側接合管40Uを介して鋼管仕口部20に接合されている。また、上側木質柱50U及び下側木質柱50Lが、鋼管仕口部20を介して互いに接合されている。
【0043】
なお、下側接合管40Lの内周面と、下側木質柱50Lの柱頭部の外周面との間に隙間が形成される場合は、当該隙間に、フィラープレートや楔等の隙間埋め材を差し込んでも良い。これにより、下側接合管40Lの内周面と、下側木質柱50Lの柱頭部の外周面とが、隙間埋め材を介して密着される。
【0044】
これと同様に、上側接合管40Uの内周面と、上側木質柱50Uの柱脚部の外周面との間に隙間が形成される場合は、当該隙間に、フィラープレートや楔等の隙間埋め材を差し込んでも良い。これにより、上側接合管40Uの内周面と、上側木質柱50Uの柱脚部の外周面とが、隙間埋め材を介して密着される。
【0045】
なお、本実施形態では、下側木質柱50L及び上側木質柱50Uの断面の形状及び大きさが、同じとされている。しかし、下側木質柱50L及び上側木質柱50Uの断面の形状及び大きさは、異なっていても良い。この場合、下側接合管40L及び上側接合管40Uの断面の形状及び大きさは、下側木質柱50L及び上側木質柱50Uの断面に応じて適宜設定される。
【0046】
(作用)
次に、第一実施形態の作用について説明する。
【0047】
図1に示されるように、本実施形態によれば、通し鉄骨梁10は、鋼管仕口部20と、鋼管仕口部20の上下の端部にそれぞれ設けられた下側ダイアフラム24及び上側ダイアフラム26と、鋼管仕口部20から張り出す梁部30とを有している。また、下側ダイアフラム24には、下側接合管40Lが設けられ、上側ダイアフラム26には、上側接合管40Uが設けられている。
【0048】
下側接合管40Lには、下側木質柱50Lの柱頭部が嵌め込まれている。これにより、下側木質柱50Lが、下側接合管40Lを介して通し鉄骨梁10の鋼管仕口部20に接合されている。したがって、下側木質柱50Lと通し鉄骨梁10との接合作業の手間が低減される。
【0049】
また、下側接合管40Lに下側木質柱50Lの柱頭部を嵌め込むことにより、鋼管仕口部20に対する下側木質柱50Lのずれが抑制される。換言すると、下側接合管40Lと下側木質柱50Lの柱頭部との間で、せん断力が伝達される。
【0050】
これと同様に、上側接合管40Uには、上側木質柱50Uの柱脚部が嵌め込まれている。これにより、上側木質柱50Uが、上側接合管40Uを介して通し鉄骨梁10の鋼管仕口部20に接合されている。したがって、上側木質柱50Uと通し鉄骨梁10との接合作業の手間が低減される。
【0051】
また、上側接合管40Uに上側木質柱50Uの柱脚部を嵌め込むことにより、鋼管仕口部20に対する上側木質柱50Uのずれが抑制される。換言すると、上側接合管40Uと上側木質柱50Uの柱脚部との間で、せん断力が伝達される。
【0052】
また、鋼管仕口部20の内部には、コンクリート22が充填されている。これにより、上側木質柱50Uの柱脚部から、上側ダイアフラム26を介して、鋼管仕口部20の内部のコンクリート22に軸力Nが伝達される。コンクリート22に伝達された軸力Nは、下側ダイアフラム24を介して下側木質柱50Lに伝達される。
【0053】
このように本実施形態では、下側木質柱50L及び上側木質柱50Uと通し鉄骨梁10との間で軸力Nを伝達しつつ、下側木質柱50L及び上側木質柱50Uと通し鉄骨梁10との接合作業の手間を低減することができる。
【0054】
また、下側木質柱50Lの柱頭部を下側接合管40Lの内部に嵌め込んだ状態で、下側木質柱50Lの上端面を下側ダイアフラム24の下面に接触させることにより、下側木質柱50Lと下側ダイアフラム24との間で曲げモーメントが伝達される。さらに、下側木質柱50Lの上端面と下側ダイアフラム24の下面との間に発生する摩擦力によってせん断力も伝達される。
【0055】
これと同様に、上側木質柱50Uの柱脚部を上側接合管40Uの内部に嵌め込んだ状態で、上側木質柱50Uの下端面を上側ダイアフラム26の上面に接触させることにより、上側木質柱50Uと上側ダイアフラム26との間で曲げモーメントが伝達される。さらに、上側木質柱50Uの下端面と上側ダイアフラム26の上面との間に発生する摩擦力によってせん断力も伝達される。
【0056】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0057】
(木質柱鉄骨梁接合構造)
図3には、第二実施形態に係る木質柱鉄骨梁接合構造が適用された通し鉄骨梁10、下側木質柱50L、及び上側木質柱50Uが示されている。
【0058】
(通し鉄骨梁)
通し鉄骨梁10の上には、スラブ60が設けられている。スラブ60は、通し鉄骨梁10の上面、及び上側ダイアフラム26の上面を被覆(耐火被覆)している。また、スラブ60は、上側接合管40Uの外周面を被覆(耐火被覆)している。換言すると、上側接合管40Uは、スラブ60に埋設されている。
【0059】
通し鉄骨梁10は、耐火被覆材12によって耐火被覆されている。耐火被覆材12は、例えば、吹付けロックウールや巻付け耐火被覆材とされる。この耐火被覆材12は、通し鉄骨梁10の上面以外を耐火被覆している。また、耐火被覆材12は、鋼管仕口部20の外周面、下側ダイアフラム24の下面、及び下側接合管40Lの外周面を耐火被覆している。
【0060】
(下側木質柱、上側木質柱)
下側木質柱50L及び上側木質柱50Uには、耐火構造が適用されている。なお、下側木質柱50L及び上側木質柱50Uは、同様の構成とされている。そのため、以下では、下側木質柱50Lの構成について説明し、上側木質柱50Uの構成の説明は、適宜省略する。
【0061】
下側木質柱50Lは、荷重(鉛直荷重)を支持する木質心部52と、木質心部52を耐火被覆する耐火被覆部54とを有している。
【0062】
(木質心部)
木質心部52は、木材や木質材によって角柱状に形成されており、下側木質柱50Lの材軸方向に沿って配置されている。この木質心部52は、下側木質柱50Lが負担する荷重(長期荷重及び短期荷重)を支持可能に形成されている。
【0063】
下側木質柱50Lの柱頭部には、後述する耐火被覆部54が設けられておらず、木質心部52が露出している。この木質心部52の柱頭部(端部)は、下側接合管40Lに嵌め込まれている。
【0064】
これと同様に、上側木質柱50Uの柱脚部の木質心部52には、耐火被覆部54が設けられておらず、木質心部52が露出している。この木質心部52の柱脚部(端部)は、上側接合管40Uに嵌め込まれている。
【0065】
(耐火被覆部)
耐火被覆部54は、木質心部52を耐火被覆することにより、木質心部52の耐火性能を高めるものである。この耐火被覆部54は、木質心部52を被覆する燃え止まり層56と、燃え止まり層56を被覆する燃え代層58とを有している。
【0066】
(燃え止まり層)
燃え止まり層56は、木質心部52を取り囲む筒状に形成されており、木質心部52の側面を全面に亘って被覆している。この燃え止まり層56は、火災時における燃え代層58の燃焼を停止(自然鎮火)させ、木質心部52の燃焼を抑制する層とされる。
【0067】
燃え止まり層56は、木質心部52よりも熱容量が大きい高熱容量層(熱容量型)とされている。この燃え止まり層56は、木質心部52の周方向に交互に配列されたセメント硬化体及び木質材を有している。セメント硬化体及び木質材は、下側木質柱50Lの材軸方向に沿って配置され、木質心部52の側面に接着剤等によって接合されている。
【0068】
セメント硬化体は、例えば、硬化したモルタル、グラウト又はコンクリートによって形成されており、木質材よりも熱容量が大きくなっている。このセメント硬化体と木質材とを交互に配置することにより、燃え止まり層56全体の熱容量が、木質心部52及び燃え代層58の熱容量よりも大きくなっている。
【0069】
なお、燃え止まり層56では、セメント硬化体及び木質材に換えて、例えば、石こう及び木質材を交互に配置することも可能である。
【0070】
(燃え代層)
燃え止まり層56の外側には、木質の燃え代層58が設けられている。燃え代層58は、燃え止まり層56を取り囲む筒状に形成されており、燃え止まり層56の側面を全面に亘って被覆している。この燃え代層58は、火災時に燃焼して炭化層(断熱層)を形成することにより、木質心部52への火災熱の浸入を抑制する層とされる。
【0071】
燃え代層58は、集成材等の木質材によって形成されており、燃え止まり層56の側面に接着剤等によって接合されている。この燃え代層58の厚み(層厚)は、下側木質柱50Lに求められる要求耐火性能(耐火時間)、及び燃え代層58の燃焼速度及び遮熱性能に応じて適宜設定されている。
【0072】
なお、耐火被覆部54は、燃え止まり層56及び燃え代層58の少なくとも一方で構成することができる。
【0073】
(作用)
次に、第二実施形態の作用について説明する。
【0074】
図3に示されるように、本実施形態によれば、下側木質柱50Lは、木質心部52と、耐火被覆部54とを有している。木質心部52の柱頭部(上端部)は、下側接合管40Lに嵌め込まれている。これにより、下側木質柱50Lが、下側接合管40Lを介して通し鉄骨梁10の鋼管仕口部20に接合される。したがって、下側木質柱50Lと通し鉄骨梁10との接合作業の手間が低減される。
【0075】
これと同様に、上側木質柱50Uは、木質心部52と、耐火被覆部54とを有している。木質心部52の柱脚部(下端部)は、上側接合管40Uに嵌め込まれている。これにより、上側木質柱50Uが、上側接合管40Uを介して通し鉄骨梁10の鋼管仕口部20に接合される。したがって、上側木質柱50Uと通し鉄骨梁10との接合作業の手間が低減される。
【0076】
また、下側木質柱50L及び上側木質柱50Uの木質心部52は、耐火被覆部54によって耐火被覆されている。これにより、下側木質柱50L及び下側木質柱50Lの耐火性能が高められる。
【0077】
さらに、下側接合管40Lは、通し鉄骨梁10の耐火被覆材12によって耐火被覆され、上側接合管40Uは、スラブ60によって耐火被覆されている。これにより、下側木質柱50L及び上側木質柱50Uの耐火性能がさらに高められる。
【0078】
このように本実施形態では、下側木質柱50L及び上側木質柱50Uと通し鉄骨梁10との接合作業の手間を低減しつつ、下側木質柱50L及び上側木質柱50Uの耐火性能を高めることができる。
【0079】
なお、本実施形態では、スラブ60によって、通し鉄骨梁10の上面、及び上側ダイアフラム26の上面が被覆(耐火被覆)されている。しかし、例えば、
図4に示される変形例のように、スラブ60が存在しない場合は、例えば、通し鉄骨梁10の耐火被覆材12によって、通し鉄骨梁10の上面、及び上側ダイアフラム26の上面を耐火被覆しても良い。
【0080】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態について説明する。なお、第三実施形態において、第一実施形態及び第二実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0081】
(木質柱鉄骨梁接合構造)
図5には、第三実施形態に係る木質柱鉄骨梁接合構造が適用された通し鉄骨梁10、及び上側木質柱50Uが示されている。本実施形態では、下側木質柱50Lが省略されており、上側木質柱50Uがいわゆる丘立ち柱とされている。
【0082】
(通し手鉄骨梁)
前述したように、本実施形態では、下側木質柱50Lが省略されている。そのため、通し鉄骨梁10の下側接合管40Lも省略されている。一方、鋼管仕口部20の内壁面には、複数の鉄筋70が溶接されている。なお、鉄筋70は、軸力伝達部材の一例である。
【0083】
複数の鉄筋70は、鋼管仕口部20の各内壁面に、鋼管仕口部20の周方向に延びるとともに、上下方向の間隔を空けて配置されている。また、各鉄筋70は、鋼管仕口部20の内壁面に突き当てられた状態で、溶接等によって接合されており、鋼管仕口部20の内部に充填されたコンクリート22に埋設されている。これらの鉄筋70によって、鋼管仕口部20とコンクリート22との間の軸力Nの伝達効率が高められている。
【0084】
(作用)
次に、第三実施形態の作用について説明する。
【0085】
図5に示されるように、本実施形態によれば、上側木質柱50Uが丘立ち柱とされている。この場合、上側木質柱50Uの軸力Nは、上側ダイアフラム26を介してコンクリート22に伝達される。コンクリート22に伝達された軸力Nは、複数の鉄筋70、及び下側ダイアフラム24を介して鋼管仕口部20、及び梁部30に伝達される。
【0086】
このように本実施形態では、鋼管仕口部20の内壁面に複数の鉄筋70を設けることにより、上側木質柱50Uと通し鉄骨梁10との軸力Nの伝達効率が高められる。したがって、通し鉄骨梁10のたわみ量を効率的に低減することができる。
【0087】
なお、本実施形態では、軸力伝達部材が、鉄筋70とされている。しかし、軸力伝達部材は、鉄筋70に限らず、例えば、頭付きスタッドや、フラットバー等でも良い。
【0088】
また、
図6及び
図7に示される変形例のように、通し鉄骨梁10を耐火被覆材12及びスラブ60によって耐火被覆するとともに、上側木質柱50Uに耐火構造を適用することも可能である。
【0089】
また、本実施形態では、下側木質柱50Lが省略されているが、例えば、
図8に示される変形例のように、構造物の最上階では、上側木質柱50U及び上側接合管40Uが省略されても良い。この場合、例えば、通し鉄骨梁10の上に設けられたスラブ80の荷重が、鋼管仕口部20の内部のコンクリート22を介して下側木質柱50Lに軸力Nとして伝達される。
【0090】
このように通し鉄骨梁10の鋼管仕口部20には、下側接合管40L及び上側接合管40Uの少なくとも一方を設けることができる。
【0091】
(変形例)
次に、上記第一~第三実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、上記第一実施形態を例に各種の変形例について説明するが、これらの変形例は、上記第二、第三実施形態にも適宜適用可能である。
【0092】
上記第一実施形態では、下側接合管40L及び上側接合管40Uの高さH1,H2が低くされている。しかし、例えば、下側接合管40Lの高さH1を下側木質柱50Lの柱頭部の柱幅W1以上とし、下側接合管40Lと下側木質柱50Lの柱頭部との間で曲げモーメント及びせん断力を伝達することも可能である。これと同様に、例えば、上側接合管40Uの高さH2を上側木質柱50Uの柱脚部の柱幅W2以上とし、上側接合管40Uと上側木質柱50Uの柱脚部との間で曲げモーメント及びせん断力を伝達することも可能である。
【0093】
また、上記第一実施形態では、鋼管仕口部20が角形鋼管によって形成されている。しかし、鋼管仕口部20は、角形鋼管に限らず、例えば、丸形鋼管によって形成されても良い。
【0094】
また、上記第一実施形態では、下側接合管40L及び上側接合管40Uが角形鋼管によって形成されている。しかし、下側接合管40L及び上側接合管40Uの断面の形状及び大きさは、下側木質柱50L及び上側木質柱50Uの断面の形状及び大きさに応じて、適宜変更可能である。
【0095】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0096】
10 通し鉄骨梁
20 鋼管仕口部
22 コンクリート
24 下側ダイアフラム(ダイアフラム)
26 上側ダイアフラム(ダイアフラム)
30 梁部
40L 下側接合管(接合管)
40U 上側接合管(接合管)
50L 下側木質柱(木質柱)
50U 上側木質柱(木質柱)
52 木質心部
54 耐火被覆部
70 鉄筋(軸力伝達部材)