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特開2023-118520電極装置、シート剥離装置、転写装置及び画像形成装置
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  • 特開-電極装置、シート剥離装置、転写装置及び画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118520
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】電極装置、シート剥離装置、転写装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/14 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
G03G15/14 101E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021513
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 和彦
(72)【発明者】
【氏名】仲野 久仁昭
【テーマコード(参考)】
2H200
【Fターム(参考)】
2H200GA23
2H200GA34
2H200JB10
2H200JB18
2H200KA02
2H200KA08
2H200KA28
2H200NA02
2H200NA09
2H200NA15
(57)【要約】
【課題】第1電極の交代で使用される第2電極の劣化を抑止することができる電極装置、シート剥離装置、転写装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】短手方向の一側に所定の間隔をおいて複数の尖鋭状の電極片が並んだ第1電極51と、短手方向の他側に所定の間隔をおいて複数の尖鋭状の電極片が並んだ第2電極52と、を有する電極部材5と、第1電極51及び第2電極52のうちの一方を露出させた状態で電極部材5を着脱可能に保持するケース部材6と、を備えた電極装置であって、ケース部材6には、第1電極51が露出された状態のときに第2電極52を外部空間から遮蔽するための閉空間αが形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
短手方向の一側に所定の間隔をおいて複数の尖鋭状の電極片が並んだ第1電極と、短手方向の他側に所定の間隔をおいて複数の尖鋭状の電極片が並んだ第2電極と、を有する電極部材と、
前記第1電極及び前記第2電極のうちの一方を露出させた状態で前記電極部材を 着脱可能に保持するケース部材と、を備えた電極装置であって、
前記ケース部材には、前記第1電極が露出された状態のときに前記第2電極を外部空間から遮蔽するための閉空間が形成されていることを特徴とする電極装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電極装置であって、
前記電極部材の長手方向の両端部には、手指で摘むことが可能な摘みタブが設けられていることを特徴とする電極装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電極装置であって、
前記電極部材の長手方向において、前記摘みタブは、前記閉空間の外方に突出していることを特徴とする電極装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の電極装置であって、
前記第2電極の表裏面のうち少なくとも一面は、前記閉空間の内面のいずれにも非接触であることを特徴とする電極装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電極装置であって、
前記第2電極は、表裏面とも、前記閉空間の内面のいずれにも非接触であることを特徴とする電極装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の電極装置であって、
前記ケース部材は、ケース本体と、該ケース本体と協働して前記電極部材を保持する電極カバーと、を有する構成とされ、
前記ケース本体と前記電極カバーとには、互いに対向して開口する凹部がそれぞれ設けられ、
前記閉空間は、前記ケース本体と前記電極カバーとのそれぞれにおける前記凹部によって形成されていることを特徴とする電極装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電極装置であって、
前記電極部材と前記電極カバーとには、それぞれ、位置決め被係合部が設けられ、
前記ケース本体には、前記電極部材における前記位置決め被係合部と前記電極カバーにおける前記位置決め被係合部とに係合する位置決め係合部が設けられていることを特徴とする電極装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電極装置であって、
前記位置決めボスは、前記凹部に対して前記電極部材の短手方向の外方に配されたことを特徴とする電極装置。
【請求項9】
請求項6から請求項8までのいずれか1つに記載の電極装置であって、
前記ケース本体には、前記ケース本体から離れる方向への前記電極カバーの移動を規制するカバー移動規制部が設けられていることを特徴とする電極装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1つに記載の電極装置からなるシート剥離装置であって、
前記電極部材は、像担持体と転写部材との間に形成された転写ニップを通過したシートを前記像担持体から剥離するための剥離電極として機能することを特徴とするシート剥離装置。
【請求項11】
請求項6から請求項9までのいずれか1つに記載の電極装置からなるシート剥離装置であって、
前記電極部材は、像担持体と転写部材との間に形成された転写ニップを通過したシートを前記像担持体から剥離するための剥離電極として機能し、
前記電極カバーには、前記電極部材によって前記像担持体から剥離された前記シートを前記シートの搬送方向の下流側に導くガイド部が設けられたことを特徴とするシート剥離装置。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載のシート剥離装置を備えたことを特徴とする転写装置。
【請求項13】
請求項10若しくは請求項11に記載のシート剥離装置及び請求項12に記載の転写装置の両方又はいずれか一方を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極装置、シート剥離装置、転写装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置として、像担持体に形成されたトナー像を転写ニップでシートに転写する転写装置を備えたものが知られている。また、転写装置として、トナー像をシートに転写するために、転写部材に転写バイアスを印加するものが知られている。このような転写装置においては、転写ニップを通過するシートが転写部材によって帯電することから、転写ニップを通過したシートは、像担持体の方へ引き寄せられ易くなる。
【0003】
このため、従来から、転写ニップを通過したシートを像担持体から剥離する技術が提案されている。例えば、電極部材を用いて、シートを静電的に引き寄せて像担持体から剥離する技術が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、画像形成装置において、例えば、像担持体の表面を所定の電位に均一に帯電させる帯電装置等においても、電極部材を用い得る。
【0005】
従来、電極部材として、例えば、コロナ放電装置等で採用される鋸歯状又は櫛歯状の電極が公知である。一般論として、コロナ放電装置等に供される電極部材は、放電生成物等の汚れによって放電特性が劣化する。そこで、電極の寿命を長くするために、一側に並んだ第1電極と他側に並んだ第2電極とを有する電極部材として、第1電極が劣化した後に電極部材の向きを変えて第2電極を交代で使用する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-72824号公報
【特許文献2】特開平10-196798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、画像形成装置においては、特に、像担持体の周辺においては、浮遊しているトナー等によって、転写装置又は帯電装置の電極部材が経時的に汚れて劣化する。そこで、電極部材の寿命を長くするためには、上記の従来の技術に倣い、第1電極と第2電極とを有する電極部材を用いて、第1電極が劣化した後に第2電極を交代で使用することが良いように思える。
【0008】
しかし、上記従来の技術においては、第1電極が使用される際に、第2電極が外部空間に連通した状態となる。このため、画像形成装置において上記の従来の技術をそのまま用いた場合、トナー等が第2電極に付着して、第2電極の劣化を早めてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、第1電極の交代で使用される第2電極の劣化を抑止することができる電極装置、シート剥離装置、転写装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本願記載の電極装置は、短手方向の一側に所定の間隔をおいて複数の尖鋭状の電極片が並んだ第1電極と、短手方向の他側に所定の間隔をおいて複数の尖鋭状の電極片が並んだ第2電極と、を有する電極部材と、前記第1電極及び前記第2電極のうちの一方を露出させた状態で前記電極部材を着脱可能に保持するケース部材と、を備えた電極装置であって、前記ケース部材には、前記第1電極が露出された状態のときに前記第2電極を外部空間から遮蔽するための閉空間が形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、前記電極装置において、前記電極部材の長手方向の両端部には、手指で摘むことが可能な摘みタブが設けられていてもよい。
【0012】
また、前記電極装置において、前記電極部材の長手方向において、前記摘みタブは、前記閉空間の外方に突出していてもよい。
【0013】
また、前記電極装置において、前記第2電極の表裏面のうち少なくとも一面は、前記閉空間の内面のいずれにも非接触であってもよい。
【0014】
また、前記電極装置において、前記第2電極は、表裏面とも、前記閉空間の内面のいずれにも非接触であってもよい。
【0015】
また、前記電極装置において、前記ケース部材は、ケース本体と、該ケース本体と協働して前記電極部材を保持する電極カバーと、を有する構成とされ、前記ケース本体と前記電極カバーとには、互いに対向して開口する凹部がそれぞれ設けられ、前記閉空間は、前記ケース本体と前記電極カバーとのそれぞれにおける前記凹部によって形成されていてもよい。
【0016】
また、前記電極装置において、前記電極部材と前記電極カバーとには、それぞれ、位置決め被係合部が設けられ、前記ケース本体には、前記電極部材における前記位置決め被係合部と前記電極カバーにおける前記位置決め被係合部とに係合する位置決め係合部が設けられていてもよい。
【0017】
また、前記電極装置において、前記位置決めボスは、前記凹部に対して前記電極部材の短手方向の外方に配されていてもよい。
【0018】
また、前記電極装置において、前記ケース本体には、前記ケース本体から離れる方向への前記電極カバーの移動を規制するカバー移動規制部が設けられていてもよい。
【0019】
本願記載のシート剥離装置は、前記電極装置からなるシート剥離装置であって、前記電極部材は、像担持体と転写部材との間に形成された転写ニップを通過したシートを前記像担持体から剥離するための剥離電極として機能することを特徴とするものである。
【0020】
また、前記シート剥離装置において、前記電極部材は、像担持体と転写部材との間に形成された転写ニップを通過したシートを前記像担持体から剥離するための剥離電極として機能し、前記電極カバーには、前記電極部材によって前記像担持体から剥離された前記シートを前記シートの搬送方向の下流側に導くガイド部が設けられていてもよい。
【0021】
本願記載の転写装置は、前記シート剥離装置を備えたことを特徴とするものである。
【0022】
本願記載の画像形成装置は、前記シート剥離装置及び前記転写装置の両方又はいずれか一方を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、第1電極の交代で使用される第2電極の劣化を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施形態1における画像形成装置を正面から視た概略断面図である。
図2】実施形態1における転写装置及びその周辺を示す概略断面図である。
図3】実施形態1における転写装置の一部を示す概略斜視図である。
図4】実施形態1における電極部材を示す概略平面図である。
図5】実施形態1におけるケース部材の構造を示す概略断面斜視図である。
図6図5のケース部材の分解斜視図である。
図7】電極部材をケース部材に取り付ける第1段階を示す概略斜視図である。
図8】電極部材をケース部材に取り付ける第2段階を示す概略斜視図である。
図9】実施形態2における電極部材を示す概略平面図である。
図10】実施形態2におけるケース本体に載置された状態の電極部材の一部を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各実施形態の間で同一の構成要素には同一の符号を付し、それら構成要素について重複する説明は省略する。
【0026】
(実施形態1)
-画像形成装置-
先ず、実施形態1における画像形成装置Aの構成について説明する。
【0027】
図1は、実施形態1における画像形成装置Aを正面から視た概略断面図である。なお、図において、符号Xは、前後方向(奥行き方向)を示しており、符号Yは、幅方向Xに直交する左右方向を示しており、符号Zは、上下方向を示している。これらの設定は、以降の実施形態においても同様である。
【0028】
画像形成装置Aは、画像読取装置27により読み取られた画像データ、又は、外部から伝達された画像データに応じて、シートに対して電子写真方式により単色の画像を形成するカラー画像形成装置である。
【0029】
画像形成装置Aは、原稿送り装置10と、画像形成装置本体11と、を備えている(図1参照)。画像形成装置本体11には、画像形成部12とシート搬送系20とが設けられている。
【0030】
画像形成部12は、露光装置13と、現像装置14と、像担持体15と、クリーナ部16と、帯電器17と、転写装置3と、トナーカートリッジ装置18と、定着装置19と、を備えている(図1参照)。転写装置3は、像担持体15に形成されたトナー像をシートに転写する転写部材として、転写ローラ30を有している。トナー像は、像担持体15との間に形成された転写ニップNでシートに転写される。転写装置3の構成については、後に詳しく説明する。
【0031】
シート搬送系20は、トレイ21と、手差しトレイ22と、排出トレイ23と、シートガイド部24と、シート搬送路Sに沿って設けられた搬送ローラ(図示しない)と、を備えている。
【0032】
画像形成装置本体11の上部には、原稿が載置される透明ガラスからなる原稿載置台26が設けられ、原稿載置台26の下部には、原稿の画像を読み取るための画像読取装置27が設けられている。原稿載置台26の上側には、原稿送り装置10が設けられている。画像読取装置27で読み取られた原稿の画像は、画像データとして画像形成装置本体11に送られ、画像形成装置本体11において画像データに基づき形成された画像がシートに記録されるようになっている。
【0033】
上記の画像形成装置Aは、次のようにシートに対して画像の印刷を実行するようになっている。先ず、トレイ21又は手差しトレイ22からシートが供給される。シートが搬送ローラによって転写装置3に搬送される。次に、転写装置3によって、画像形成部12により形成されたトナー像がシート上に転写される。その後、定着装置19によって、シート上の未定着トナーが熱で溶融、固着され、搬送ローラ及び排出ローラ(図示しない)によって、シートが排出トレイ23上に排出される。こうして、画像形成装置Aによる一連の印刷動作が完了する。
【0034】
-転写装置-
次に、本実施形態における転写装置3について説明する。
【0035】
図2は、実施形態1における転写装置3及びその周辺を示す概略断面図である。図3は、実施形態1における転写装置3の一部を示す概略斜視図である。図2において、破線はシートのシート搬送路Sを示し、矢印は、シートのシート搬送方向Fを示している。また、図2において、像担持体15の周辺に配された現像装置14、クリーナ部16及び帯電器17の図示を省略している。また、図2において、抵抗等の図示を省略している。図3において、電極カバー8の一部を破断して示している。
【0036】
転写装置3は、上記の転写ローラ30と、シート剥離装置4と、を備えている(図2参照)。以下、これらの各構成要素について詳しく説明する。
【0037】
<転写ローラ>
転写ローラ30は、像担持体15に対向するように配されている(図2参照)。転写ローラ30は、金属製の芯金300と、芯金300の外周面に設けられた導電性のスポンジ等からなる外層301と、を含む構成とされている。
【0038】
転写ローラ30は、後述するケース部材6によって、回転軸線δ周りに回動可能に軸受302を介して支持されている(図3参照)。軸受302の外側には、像担持体15に対する転写ローラ30の当接性を安定させるためのカラー部材303が設けられている。
【0039】
転写ローラ30は、給電端子(図示しない)を介してバイアス電源装置(図示しない)に接続されている。転写ローラ30には、トナー像をシートに転写させるために、トナー像の帯電極性(本実施形態では負極性)に対して逆極性(本実施形態では正極性)のバイアス電圧(例えば、5kV程度)が印加される。このバイアス電圧によって、転写ニップNを通過するシートが転写ローラ30によって帯電(本実施形態では正帯電)する。このため、転写ニップNを通過したシートは、像担持体15の方へ引き寄せられ易くなっている。そこで、次に説明するシート剥離装置4が転写ニップNを通過したシートを像担持体15から剥離するようになっている。
【0040】
<シート剥離装置>
図4は、実施形態1における電極部材5を示す概略平面図である。図5は、実施形態1におけるケース部材6の構造を示す概略断面斜視図である。図6は、ケース部材6の分解斜視図である。図5において、像担持体15の図示を省略している。
【0041】
シート剥離装置4は、転写ニップNを通過したシートを像担持体15から剥離するためのものであり、電極部材5と、ケース部材6と、を備えた電極装置からなる(図2参照)。
【0042】
電極部材5は、短手方向の一側に所定の間隔をおいて複数の尖鋭状の電極片が並んだ第1電極51と、短手方向の他側に所定の間隔をおいて複数の尖鋭状の電極片が並んだ第2電極52と、を有している(図4参照)。電極部材5には、位置決め被係合部としての位置決め穴53~55が電極部材5の長手方向に沿って並ぶように穿設されている。位置決め穴55は、丸穴状に形成され、位置決め穴53,54は、電極部材5の長手方向に沿った長穴状に形成されている。
【0043】
電極部材5は、転写ニップNを通過したシートを像担持体15から剥離するための剥離電極として機能するものであり、給電電極50を介して電源装置(図示しない)に接続されている。給電電極50は、電極部材5に当接した状態で、嵌合穴50aを介してケース部材6に固定されている(図3参照)。電極部材5には、シートの帯電極性(本実施形態では正極性)に対して逆極性(本実施形態では負極性)のバイアス電圧(例えば、2~3kV程度)が印加される。このバイアス電圧によって、シートが電極部材5に引き寄せられるようになっている。
【0044】
ケース部材6は、第1電極51及び第2電極52のうちの一方の電極を露出させた状態で電極部材5を着脱可能に保持するものである。本実施形態において、ケース部材6は、転写ローラ30を支持するものでもある。ケース部材6は、付勢部材(図示しない)によって像担持体15に付勢されている。この付勢部材による付勢によって、ケース部材6によって支持された転写ローラ30が像担持体15に当接して、像担持体15との間に転写ニップNを形成するようになっている。
【0045】
ケース部材6は、ケース本体7と、ケース本体7と協働して電極部材5を保持する電極カバー8と、を有している(図3図5参照)。
【0046】
本実施形態において、ケース本体7には、シートを転写ニップNに導くシート導入部70と、像担持体15側に開口する転写ローラ支持部71と、電極部材5が載置される電極部材載置部72と、ケース本体7から離れる方向への電極カバー8の移動を規制するカバー移動規制部73と、給電電極50を固定する給電電極固定部74と、が設けられている(図3図5参照)。
【0047】
シート導入部70は、転写ニップNに向かって傾斜するように形成されている(図2図5参照)。
【0048】
転写ローラ支持部71は、転写ローラ30を収容する収容空間710と、転写ローラ30の軸受302に当接する軸受当接部711と、収容空間710内で転写ローラ30の汚れを除去するクリーニング部材712と、から構成されている(図3図5参照)。
【0049】
電極部材載置部72は、電極部材5の長手方向が転写ローラ30の回転軸線δ方向に沿うように電極部材5を載置可能な部分であり、転写ローラ支持部71に対してシート搬送方向Fの下流側に配されている(図5参照)。本実施形態において、電極部材5の第1電極51及び第2電極52のうち、シートを引き寄せるために使用される電極(以後、単に「使用電極」という)が像担持体15を向くように電極部材載置部72に載置される。電極部材載置部72は、ケース平面部720と、ケース平面部720に対して像担持体15から遠ざかる方向側で転写ローラ30の回転軸線δ方向に沿って凹設されたケース凹部721と、から構成されている(図5図6参照)。ケース凹部721は、第1電極51が像担持体15を向くように電極部材5が電極部材載置部72に載置された状態において、第1電極51の他側の第2電極と対応する位置に配されている。ケース平面部720には、位置決め係合部としての位置決めボス722~724が転写ローラ30の回転軸線δ方向に沿って並ぶように設けられている(図6参照)。換言すると、位置決めボス722~724は、ケース凹部721に対して電極部材5の短手方向の外方に配されている。
【0050】
カバー移動規制部73は、像担持体15から遠ざかる方向側から電極カバー8の上面側に回り込むように延設されている(図5図6参照)。
【0051】
ケース本体7にカバー移動規制部73が設けられていることにより、ケース本体7に対する電極カバー8の浮き上がりを防止することができる。
【0052】
給電電極固定部74は、ケース本体7において像担持体15から遠ざかる方向を向く側面上に設けられ、給電電極50の嵌合穴50aに嵌合可能なボス形状に形成されている(図3図6参照)。
【0053】
電極カバー8は、電極カバー8の長手方向が転写ローラ30の回転軸線δ方向に沿うように電極部材5に被せられている。電極カバー8の短手方向の幅は、電極カバー8が電極部材5に被せられた状態において、第1電極51及び第2電極52のうち使用電極が露出する程度に設定されている。
【0054】
本実施形態において、電極カバー8には、ケース本体7における電極部材載置部72に対向するケース対向部80と、電極部材5によって像担持体15から剥離されたシートをシート搬送方向Fの下流側に導くガイド部81と、が設けられている(図5参照)。
【0055】
ケース対向部80は、カバー平面部800と、長手方向に沿って凹設されたカバー凹部801と、から構成されている(図5図6参照)。カバー凹部801は、ケース本体7における電極部材載置部72のケース凹部721に対向して開口している。カバー平面部800には、位置決め被係合部としての位置決め穴802~804が電極カバー8の長手方向に沿って並ぶように穿設されている。位置決め穴804は、丸穴状に形成され、位置決め穴802,803は、電極部材5の長手方向に沿った長穴状に形成されている。
【0056】
ガイド部81は、電極カバー8においてケース部材6から遠ざかる方向を向く上面からシート搬送方向Fに沿って傾斜するように形成されている(図5参照)。
【0057】
電極カバー8にガイド部81が設けられていることにより、シートをシート搬送方向Fの下流側にスムーズに搬送することができる。
【0058】
上記説明したケース部材6は、ケース本体7における電極部材載置部72と電極カバー8におけるケース対向部80との間で電極部材5を挟持することにより、第1電極51及び第2電極52のうち一方の電極を露出させた状態で電極部材5を保持するようになっている。本実施形態において、ケース部材6は、第1電極51及び第2電極52のうち使用電極を露出させるようになっている。また、電極カバー8を取り外すことにより、電極部材5の着脱が可能となっている。
【0059】
続いて、上記の電極部材5をケース部材6に取り付ける手順を、図7及び図8を用いて説明する。説明の便宜上、第1電極51が使用電極である場合を想定して説明する。
【0060】
図7は、電極部材5をケース部材6に取り付ける第1段階を示す概略斜視図である。図8は、電極部材5をケース部材6に取り付ける第2段階を示す概略斜視図である。図7及び図8において、破線はケース本体7における位置決めボス722~724と電極部材5における位置決め穴53~55(又は電極カバー8における位置決め穴802~804)との対応関係を示すものであって、部品の組付け軌跡を何ら示しているものではない。
【0061】
まず、図7に示すように、電極部材5をケース部材6のケース本体7における電極部材載置部72に載置する。このとき、使用電極である第1電極51が像担持体15を向くように、電極部材5を電極部材載置部72に載置する。電極部材載置部72における位置決めボス722~724を電極部材5における位置決め穴53~55にそれぞれ貫通させて、電極部材5を電極部材載置部72上に位置決めする。続いて、ケース本体7における給電電極固定部74を給電電極50の嵌合穴50aに嵌合させて、給電電極50を給電電極固定部74に固定する。
【0062】
次に、図8に示すように、電極カバー8におけるケース対向部80が電極部材載置部72に対向するように、電極カバー8を電極部材5に被せる。このとき、電極カバー8の短手方向の端縁部82をカバー移動規制部73の下方に差し込む。続いて、電極部材載置部72における位置決めボス722~724をケース対向部80における位置決め穴802~804にそれぞれ貫通させて、電極部材5を電極部材載置部72上に位置決めする。
【0063】
このように、電極部材5における位置決め被係合部(位置決め穴53~55)と電極カバー8における位置決め被係合部(位置決め穴802~804)とに係合する位置決め係合部(位置決めボス722~724)を用いた位置決め構造とすることにより、ケース本体7に対して電極部材5及び電極カバー8を一括して位置決めすることができる。
【0064】
上記説明したシート剥離装置4において、電極部材5にバイアス電圧(本実施形態では負電圧)が印加されることにより、第1電極51及び第2電極52のうち露出した使用電極の先端を起点として集中電界が形成される。この集中電界によって、転写ローラ30によって帯電(本実施形態では正帯電)したシートが電極部材5に引き寄せられる。このようにして、シート剥離装置4は、転写ニップNを通過したシートを像担持体15から剥離するようになっている。
【0065】
ところで、露出した使用電極は、浮遊しているトナー等によって、経時的に汚れて劣化する。このため、上記のシート剥離装置4において、まず第1電極51を使用して、第1電極51の電極が寿命を全うした後に電極部材5の向きを変えることにより、寿命が残っている第2電極52が使用できるようになっている。すなわち、第2電極52は、第1電極51の交代用として存在している。第2電極52によって、電極部材5が第1電極51のみ有している場合と比較して、電極部材5の寿命を長くすることができる。本実施形態において、電極カバー8を取り外して、ケース本体7における電極部材載置部72上で電極部材5を約180度回転することにより、第2電極52を第1電極51の交代で使用することができる。
【0066】
しかし、第2電極52までもが浮遊しているトナー等によって汚れてしまったのでは、電極部材5の寿命を長くするという利益を享受し得ない。そこで、ケース部材6の内部には、第1電極51が露出された状態のときに第2電極52を外部空間から遮蔽するための閉空間αが形成されている(図2図5参照)。ここで、「遮蔽」とは、少なくともトナー等の汚れの進入を阻止する程度の密閉度である状態を意味し、完全に密閉された状態は勿論のこと、微量の空気が流出入する程度の密閉度である状態も含むものとする。
【0067】
本実施形態において、閉空間αは、ケース本体7におけるケース凹部721と電極カバー8とにおけるカバー凹部801とによって形成されている(図5参照)。具体的には、電極カバー8におけるケース対向部80のカバー凹部801が、ケース本体7における電極部材載置部72のケース凹部721に迎合することにより、ケース部材6の内部に閉空間αが形成されている。そして、第1電極51が使用される際に、露出した第1電極51の他側の第2電極52は、ケース本体7におけるケース凹部721と電極カバー8とにおけるカバー凹部801とによって包囲されて、閉空間α内に収容された状態となる。
【0068】
ケース部材6に閉空間αが形成されていることにより、第2電極52がトナー等の汚れから保護されることから、第1電極51の交代で使用される第2電極52の劣化を抑止することができる。
【0069】
また、上記のようなケース本体7と電極カバー8とを有するケース部材6として、閉空間αをケース本体7におけるケース凹部721と電極カバー8とにおけるカバー凹部801とで形成する構成にすることにより、シンプルな構成で閉空間αを形成することができる。
【0070】
また、本実施形態において、ケース凹部721とカバー凹部801とは、いずれも第2電極52から退避した形状になっている。このため、第2電極52は、表裏面とも、閉空間αの内面のいずれにも非接触である。これにより、特に、電極部材5をケース部材6に取り付ける際において、第2電極52の先端(刃先)が他部品と接触する確率が低減することから、第2電極52の損傷を抑止することができる。
【0071】
なお、閉空間αの構成は上記に限られず、例えば、ケース本体7における電極部材載置部72をケース平面部720から構成して、電極カバー8におけるケース対向部80をカバー平面部800と、カバー凹部801と、から構成するようにして、電極カバー8におけるカバー凹部801がケース本体7におけるケース平面部720によって閉塞されることにより、閉空間αが形成された構成であってもよい。また、この場合、電極カバー8におけるカバー凹部801を第2電極52から退避した形状とすると、第2電極52の表面は、閉空間αの内面のいずれにも非接触となる。これにより、第2電極52が表裏面とも閉空間αの内面に接触している場合と比較して、特に、電極部材5をケース部材6に取り付ける際において、第2電極52の先端(刃先)が他部品と接触する確率が低減することから、第2電極52の損傷を抑止することができる。
【0072】
また、本実施形態において、上記の通り、ケース本体7において、位置決めボス722~724は、ケース凹部721に対して電極部材5の短手方向の外方に配されている。これにより、位置決めボス722~724を用いた位置決め構造としながらも、閉空間αの密閉性を保つことができる。
【0073】
なお、ケース部材6の構成は上記に限られず、要は、ケース部材6の内部に閉空間αが形成されていれば足りる。例えば、ケース本体7と電極カバー8とが一体的に形成された構成であってもよい。
【0074】
上記、転写ニップNを通過したシートを像担持体15から剥離するためのシート剥離装置4について説明したが、シート剥離装置4は、電極部材5と、内部に閉空間αが形成されたケース部材6と、を備えた電極装置の一例である。上記のような電極部材5と、内部に閉空間αが形成されたケース部材6と、を備えた電極装置を他の用途に転用してもよく、他の用途においても、閉空間αによって第1電極51の交代用である第2電極52の劣化を抑止することができるという効果に変わりはない。本発明の技術的範囲には、上記のような電極装置が含まれるのは勿論のこと、このような電極装置からなるシート剥離装置4、シート剥離装置4を備えた転写装置3、及びシート剥離装置4又は転写装置3の両方又はいずれか一方を備えた画像形成装置Aも含まれる。
【0075】
なお、上記、シート剥離装置4のケース部材6によって転写ローラ30が支持された転写装置3について説明したが、転写装置3の構成はこれに限られず、例えば、転写ローラ30を支持する支持体が別途設けられた構成であってもよい。
【0076】
(実施形態2)
以下、実施形態2について、上記実施形態1とは異なる点についてのみ説明する。
【0077】
図9は、実施形態2における電極部材5を示す概略平面図である。図10は、実施形態2におけるケース本体7に載置された状態の電極部材5の一部を示す概略斜視図である。
【0078】
実施形態2において、電極部材5の長手方向の両端部には、手指で摘むことが可能な摘みタブ56が設けられている(図9参照)。摘みタブ56は、例えば、長手方向が電極部材5の短手方向に沿う矩形状に形成されている。
【0079】
電極部材5の長手方向の両端部に摘みタブ56が設けられていることにより、電極部材5の向きを変える際等に、電極部材5のハンドリングが容易になる。また、摘みタブ56を摘まんで電極部材5をハンドリングすることにより、電極部材5の劣化の原因となり得る皮脂等が第1電極51又は第2電極52に付着する事態を回避することができる。
【0080】
また、実施形態2において、電極部材5の長手方向において、摘みタブ56は、閉空間αの外方に突出している(図10参照)。換言すると、電極部材5の長手方向において、摘みタブ56は、ケース部材6のケース本体7におけるケース凹部721の外方に突出している。これにより、電極部材5の向きを変える際等に、電極部材5の長手方向の端部がケース本体7におけるケース凹部721内に沈み込む事態が回避されることから、ケース本体7との接触による電極部材5の損傷を回避することができる。
【0081】
上記の実施形態及び実施例はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態及び実施例のみにより解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0082】
A 画像形成装置
15 像担持体
3 転写装置
30 転写ローラ
4 シート剥離装置
5 電極部材
51 第1電極
52 第2電極
53~55 位置決め穴
56 摘みタブ
6 ケース部材
7 ケース本体
70 シート導入部
71 転写ローラ支持部
72 電極部材載置部
720 ケース平面部
721 ケース凹部
722~724 位置決めボス
73 カバー移動規制部
74 給電電極固定部
8 電極カバー
80 ケース対向部
800 カバー平面部
801 カバー凹部
802~804 位置決め穴
81 ガイド部
82 端縁部
F シート搬送方向
N 転写ニップ
S シート搬送路
X 幅方向
Y 左右方向
α 閉空間
δ 回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10