(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118522
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】トナー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20230818BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
G03G9/097 372
G03G9/097 371
G03G9/08
G03G9/097 375
G03G9/097 374
G03G9/097 346
G03G9/08 381
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021515
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 孝雄
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA08
2H500AA09
2H500AA10
2H500AA11
2H500BA14
2H500BA15
2H500BA27
2H500BA31
2H500CA06
2H500CA30
2H500CB04
2H500CB12
2H500EA13D
2H500EA16D
2H500EA21D
2H500EA42C
2H500EA42D
2H500EA47D
2H500EA52D
2H500EA57A
2H500EA62D
(57)【要約】
【課題】低温定着性、保存安定性、耐光性に優れ、ブロッキングやフィルミングを抑制できるトナー及びその製造方法を提供する。
【解決手段】トナーは、トナー粒子の表面に外添剤が付着したものである。外添剤は、疎水化された無機微粒子が表面に付着したワックス微粒子を含む。ワックス微粒子の一次粒子の体積基準のメジアン径は、70nm以上100nm以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子の表面に外添剤が付着したトナーであって、
前記外添剤は、疎水化された無機微粒子が表面に付着したワックス微粒子を含み、
前記ワックス微粒子の一次粒子の体積基準のメジアン径が70nm以上100nm以下であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
請求項1に記載のトナーであって、
前記トナー粒子が、熱球形化トナー粒子であることを特徴とするトナー。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のトナーであって、
前記無機微粒子による前記ワックス微粒子表面の被覆率が、70%以上100%以下であることを特徴とするトナー。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のトナーであって、
前記ワックス微粒子の融点が60℃以上130℃以下であることを特徴とするトナー。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のトナーであって、
前記無機微粒子の平均一次粒子径が12nm以上40nm以下であることを特徴とするトナー。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のトナーであって、
前記無機微粒子が、表面を疎水化処理したシリカ又はチタン酸ストロンチウムであることを特徴とするトナー。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載のトナーであって、
前記無機微粒子が表面に付着したワックス微粒子の含有量は、前記トナー粒子100質量部に対して1.5質量部以上3.0質量部以下であることを特徴とするトナー。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載のトナーであって、
前記ワックス微粒子が、エステルワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス及びホホバ油ワックスからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とするトナー。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1つに記載のトナーであって、
FT-IRのATR法で測定される、前記ワックス微粒子の赤外吸収スペクトルを吸光度表示したときの波数1,512cm-1付近の吸光度ピーク高さをP1、波数2,900cm-1付近の吸光度ピーク高さをP2と定義したとき、P1/P2の値が1.0以下であることを特徴とするトナー。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1つに記載のトナーであって、
ASTM D638規格に基づいて測定される、前記ワックス微粒子の引張弾性率が1.0×103MPa以上であることを特徴とするトナー。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1つに記載のトナーであって、
前記トナー粒子が、離型剤としてのワックスを0質量%以上2.0質量%以下含むことを特徴とするトナー。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1つに記載のトナーの製造方法であって、
ワックスに対してビーズミルを用いて、微粉砕化されたワックススラリーを得るワックス微粉砕工程と、
前記ワックス微粉砕工程で得たワックススラリーに対して、疎水化された無機微粒子を添加して撹拌することにより、前記ワックス表面に前記無機微粒子が付着したワックススラリーを得る被覆工程と、
前記被覆工程で得たワックススラリーを乾燥することにより、疎水化された無機微粒子が表面に付着したワックス微粒子を得る乾燥工程と、
前記乾燥工程で得た前記ワックス微粒子とトナー粒子とを混合して、当該トナー粒子表面に前記ワックス微粒子を付着させたトナーを得る外添工程と、を含み、
前記ワックス微粉砕工程において、湿式ビーズミルを用いることを特徴とするトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式及びトナージェット方式に用いられるトナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フルカラープリンター、フルカラー複写機、フルカラー複合機等の画像形成装置に対して、高画質な印刷物が安定して出力できる高い現像性が要求されてきている。また、画像形成装置に使用される記録媒体の多様化が進み、表面の平滑度が低い紙も多く使用されてきている。そのような紙の場合、トナーは紙表面の凹部へ転写されにくいため、面内均一性の低い画像が出力される画像不良が発生しやすい。
【0003】
これらの事情から、記録媒体への高い転写性を有し、優れた画像品質の得られる画像形成装置を実現するため、凹凸の多い粉砕トナーに対して熱風処理を施し、トナー粒子(トナーコア)の形状を球形に変形させること(熱球形化)によって、転写効率を高めたトナーが提供されている。しかしながら、熱球形化する際に、離型剤として用いられるワックスがブリードアウトしてしまうため(
図1参照)、感光体ドラムに対するワックスの付着(フィルミング)を引き起こすという課題があった。また、これを防ぐために、ワックスの添加量を少なくした場合や、できるだけ高融点のワックスを使用した場合には、高速印刷に対応するための離型性が不足するという問題があった。
【0004】
この課題を解決する技術として、例えば、特開平5-323654号公報(特許文献1)には、体積平均粒子径0.4μm~1.6μmのワックス微粒子及び体積平均粒子径32nm~128nmの非磁性粒子に機械的圧力をかけることで当該ワックス微粒子表面に当該非磁性粒子を付着させ、当該ワックス微粒子をトナー粒子に外添した(トナー粒子表面に付着させた)トナーが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、画像形成装置の省エネ化の動きのなか、トナーの低温定着化のために離型剤としてのワックスの低融点化が進んでいる。低融点のワックスを体積平均粒子径0.4μm~1.6μmというサイズにすることは不可能である。また、トナー粒子の小粒子径化も進んでいるなか、特許文献1の構成を採用すると流動性の悪化を招き、現像性が悪化してしまうという課題があった。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、粉砕トナー粒子を熱風処理で球形化した場合であっても、低温定着性、保存安定性及び耐光性に優れ、ブロッキングやフィルミングを抑制できるトナー及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研鑽した結果、微粒子化したワックスを無機微粒子で被覆したものを外添剤として使用することで、トナー粒子を熱球形化する場合であっても低融点のワックスを採用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、上記課題を解決するためになされた発明は、トナー粒子の表面に外添剤が付着したトナーであって、前記外添剤は疎水化された無機微粒子が表面に付着したワックス微粒子を含み、前記ワックス微粒子の一次粒子の体積基準のメジアン径が70nm以上100nm以下であることを特徴とするトナーである。なお、「疎水化された無機微粒子が表面に付着したワックス微粒子」のことを、以下において「ワックス外添剤」ともいう。
【0010】
上記課題を解決するためになされた別の発明は、上記トナーの製造方法であって、ワックスに対してビーズミルを用いて、微粉砕化されたワックススラリーを得るワックス微粉砕工程と、前記ワックス微粉砕工程で得たワックススラリーに対して、疎水化された無機微粒子を添加して撹拌することにより、前記ワックス表面に前記無機微粒子が付着したワックススラリーを得る被覆工程と、前記被覆工程で得たワックススラリーを乾燥することにより、疎水化された無機微粒子が表面に付着したワックス微粒子を得る乾燥工程と、前記乾燥工程で得た前記ワックス微粒子とトナー粒子とを混合して、当該トナー粒子表面に前記ワックス微粒子を付着させたトナーを得る外添工程と、を含み、前記ワックス微粉砕工程において湿式ビーズミルを用いることを特徴とする、トナーの製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、低温定着性、保存安定性及び耐光性に優れ、ブロッキングやフィルミングを抑制できるトナー及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】低融点のワックスを含む粉砕トナー粒子(左側)と、この粉砕トナー粒子を熱風処理により球形化した熱球形化トナー粒子(右側)とを模式的に示す概念図である。
【
図2】ワックス微粒子(左側)と、このワックス微粒子に対して疎水化された無機微粒子を表面に付着させた本実施形態に係る外添剤(右側)とを模式的に示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.トナー粒子(トナーコア)、内添剤
本発明のトナーは、トナー粒子の表面に外添剤が付着したトナーである。さらに必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、任意成分を含有していてもよい。トナー粒子の一次粒子の体積平均粒子径は、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4μm以上8μm以下が挙げられる。本実施形態において、トナー粒子は結着樹脂と、着色剤や離型剤等の内添剤とを含む。
【0014】
本発明にあっては、トナー粒子が熱球形化したものであることが好ましい。上述したとおり本発明によれば、熱球形化トナーにおいても低温定着性、保存安定性及び耐光性の向上や、ブロッキングやフィルミングの抑制が可能である。
【0015】
<結着樹脂>
本発明のトナー粒子に含まれる結着樹脂としては、ポリエステル系樹脂を好適に用いることができる。
【0016】
結着樹脂に用いられるポリエステル樹脂は、通常、2価のアルコール成分及び3価以上の多価アルコール成分から選ばれる1種以上と、2価のカルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸から選ばれる1種以上とを、公知の方法により、エステル化反応又はエステル交換反応を介して重縮合反応させることにより得られる。
【0017】
縮重合反応における条件は、モノマー成分の反応性により適宜設定すればよく、また重合体が好適な物性になった時点で反応を終了させればよい。例えば、反応温度は170℃~250℃程度、反応圧力は5mmHg~常圧程度である。
【0018】
2価のアルコール成分としては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA;ビスフェノールAのプロピレン付加物;ビスフェノールAのエチレン付加物;水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0019】
3価以上の多価アルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、スクロース(蔗糖)、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
【0020】
本発明のトナーにおいては、上記の2価のアルコール成分及び3価以上の多価アルコール成分のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
2価のカルボン酸として、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、イソオクチルコハク酸、及びこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0022】
3価以上の多価カルボン酸としては、例えば、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、及びこれらの酸無水物、低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0023】
本発明のトナーにおいては、上記の2価のカルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸のうち1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明のトナーにおいては、結着樹脂が9,000~90,000の範囲の質量平均分子量を有し、且つその分子量分布における分子量100,000以上の割合が10%~30%であるのが好ましい。結着樹脂の質量平均分子量及び分子量100,000以上の割合が上記の範囲であれば、ベルト定着装置における低温定着性及び耐ホットオフセット性の両立効果がさらに発揮される。結着樹脂の質量平均分子量が9,000未満の場合、定着高温側での剥離性が悪化するおそれがある。結着樹脂の質量平均分子量が90,000を超える場合、低温定着性が悪化するおそれがある。
【0025】
結着樹脂の質量平均分子量を20,000以上とすることで、定着高温側での剥離性をより一層確実に良好なものにできる。また、結着樹脂の質量平均分子量を70,000以下とすることで、低温定着性をより一層確実に良好なものにできる。したがって、より好ましい結着樹脂の質量平均分子量の範囲は20,000~70,000である。
【0026】
また、結着樹脂の分子量分布における分子量100,000以上の割合が10%未満の場合、定着高温側での剥離性が悪化するおそれがある。結着樹脂の分子量分布における分子量100,000以上の割合が30%を超える場合、低温定着性が悪化するおそれがある。この割合を20%以下とすることで、低温定着性をより一層確実に良好なものにできる。したがって、結着樹脂の分子量分布における分子量100,000以上の割合のより好ましい範囲は10%~20%である。
【0027】
トナー粒子中の結着樹脂の含有量は、60質量%~90質量%であるのが好ましく、70質量%~85質量%であるのがより好ましい。
【0028】
<着色剤>
本発明に係るトナー粒子は、着色剤を含み得る。着色剤としては、電子写真分野で常用される有機系・無機系の様々な種類・色の顔料及び染料を使用でき、例えば、黒色、白色、黄色、橙色、赤色、紫色、青色、緑色の着色剤が挙げられる。
【0029】
黒色の着色剤としては、例えば、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、磁性フェライト、マグネタイト等が挙げられる。
【0030】
白色の着色剤としては、例えば、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等が挙げられる。
【0031】
黄色の着色剤としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0032】
橙色の着色剤としては、例えば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43等が挙げられる。
【0033】
赤色の着色剤としては、例えば、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0034】
紫色の着色剤としては、例えば、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。
【0035】
青色の着色剤としては、例えば、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60等が挙げられる。
【0036】
緑色の着色剤としては、例えば、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マイカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0037】
本発明のトナーにおいては、上記の着色剤の1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、組み合わせは異色であっても同色であってもよい。
【0038】
また、2種以上の着色剤を複合粒子化して用いてもよい。複合粒子は、例えば、2種以上の着色剤に適量の水、低級アルコール等を添加し、ハイスピードミル等の一般的な造粒機で造粒し、乾燥させることによって製造できる。さらに、結着樹脂中に着色剤を均一に分散させるために、マスターバッチ化して用いてもよい。複合粒子及びマスターバッチは、乾式混合の際にトナー組成物に混入される。
【0039】
本発明に係るトナー粒子中の着色剤の含有量は、特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部~20質量部であり、より好ましくは0.2質量部~10質量部である。
【0040】
着色剤の含有量が上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。換算すれば、トナー粒子中の着色剤の含有量は、好ましくは2.5質量%~7.5質量%であり、より好ましくは3.0質量%~6.5質量%である。
【0041】
<帯電制御剤>
本発明に係るトナー粒子は、帯電制御剤を含み得る。帯電制御剤としては、電子写真分野で常用される正電荷制御用及び負電荷制御用の電荷制御剤を用いることができる。
【0042】
正電荷制御用の電荷制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料及びその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、アミジン塩等が挙げられる。
【0043】
負電荷制御用の電荷制御剤としては、例えば、オイルブラック、スピロンブラック等の油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸及びその誘導体の金属錯体及び金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウム等)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸等が挙げられる。
【0044】
本発明のトナーにおいては、上記の電荷制御剤の1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
本発明のトナーにおける帯電制御剤の含有量は、特に限定されないが、結着樹脂100重量部に対して、好ましくは0.5質量部~3.0質量部であり、より好ましくは0.7質量部~2.5質量部である。帯電制御剤の含有量が上記の範囲内であれば、トナーの各種物性を損なうことなしに、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
【0046】
<ワックス(内添剤としてのワックス)>
本発明に係るトナー粒子はワックスを含み得る。ワックスとしては、電子写真分野で離型剤として常用されるものを使用することができる。例えば、パラフィンワックス及びその誘導体等の石油系ワックス;ポリエチレンワックス及びその誘導体等の炭化水素系ワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等が挙げられる。
【0047】
本発明に係るトナー粒子は、離型剤としてのワックスを0質量%以上2.0質量%以下含むことが好ましい。より好ましくは0質量%以上1.5質量%以下である。トナー粒子中のワックスの含有量が上記上限を超えると、ブロッキングやフィルミングが発生するおそれがある。
【0048】
2.外添剤
本発明のトナーは、外添剤として、疎水化された無機微粒子が表面に付着したワックス微粒子(ワックス外添剤)を含む。
図2に、ワックス微粒子(
図2左側)に対して疎水化された無機微粒子を表面に付着させて得た、本実施形態に係るワックス外添剤(
図2右側)を模式的に示す。
【0049】
外添剤は、一般に、トナーの搬送性及び帯電性、並びにトナーを二成分現像剤にする場合のキャリアとの撹拌性等を向上させる機能を有するが、本発明に係る外添剤(ワックス外添剤)においては、特に、トナーの離型性を向上させる機能を有する。
【0050】
ワックス外添剤(疎水化された無機微粒子が表面に付着したワックス微粒子)の含有量は、トナー粒子100質量部に対して1.5質量部以上3.0質量部以下であることが好ましく、1.8質量部以上2.7質量部以下であることがより好ましい。含有量が上記下限未満の場合、トナーの離型性が不足して低温オフセットが発生するおそれがある。含有量が上記上限を超える場合、ブロッキングが発生するおそれがある。
【0051】
<ワックス微粒子(ワックス外添剤中のワックス)>
ワックス微粒子の一次粒子の体積基準のメジアン径は、70nm以上100nm以下であり、より好ましくは80nm以上90nm以下である。
【0052】
ワックス微粒子として使用するワックスは、内添剤としてのワックスと同様に、電子写真分野で離型剤として常用されるワックスを使用することができるが、エステルワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス及びホホバ油ワックスからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。それらのなかでも、チャージが中立に近く、外添剤として使用した場合に帯電をコントロールしやすいポリエチレンワックスが特に好ましい。
【0053】
ワックス微粒子の融点は、60℃以上130℃以下であることが好ましく、70℃以上100℃以下であることがより好ましい。ワックス微粒子の融点が上記下限未満の場合、保存安定性が悪化するおそれがある。ワックス微粒子の融点が上記上限を超える場合、低温定着性が悪化するおそれがある。
【0054】
本発明に係るワックス微粒子にあっては、FT-IRのATR法で測定される、ワックス微粒子の赤外吸収スペクトルを吸光度表示したときの波数1,512cm-1付近の吸光度ピーク高さをP1、波数2,900cm-1付近の吸光度ピーク高さをP2と定義したとき、P1/P2の値が1.0以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましい。P1/P2の値が上記上限を超える場合、耐光性が悪化するおそれがある。
【0055】
本発明に係るワックス微粒子にあっては、ASTM D638規格に基づいて測定される、ワックス微粒子の引張弾性率が1.0×103MPa以上であることが好ましく、1.1×103MPa以上であることがより好ましい。ワックス微粒子の引張弾性率が上記下限未満の場合、低温オフセットが発生するおそれがある。
【0056】
<無機微粒子(ワックス外添剤表面の無機微粒子)>
本発明に係るワックス外添剤は、ワックス微粒子の表面に、疎水化された無機微粒子が付着している。このようにワックス微粒子を被覆する無機微粒子としては、表面を疎水化処理したシリカ、チタン酸ストロンチウム等の無機微粒子が使用できる。
【0057】
本発明に係る無機微粒子は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施すことによって疎水性を付与した無機微粒子であることが、高湿下において電気抵抗や帯電量の低下が少なくなるので好ましい。
【0058】
無機微粒子によるワックス微粒子表面の被覆率は70%以上100%以下であることが好ましく、75%以上95%以下であることがより好ましい。被覆率が上記下限未満の場合、フィルミングが発生するおそれがある。被覆率が上記上限を超える場合、ブロッキングが発生するおそれがある。
【0059】
無機微粒子の平均一次粒子径は12nm以上40nm以下であることが好ましく、15nm以上35nm以下であることがより好ましい。無機微粒子の平均一次粒子径が上記下限未満の場合、ブロッキングが発生するおそれがある。無機微粒子の平均一次粒子径が上記上限を超える場合、保存安定性が悪化するおそれがある。なお、無機微粒子の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて無機微粒子を撮影し、得られた画像から任意に100個の無機微粒子の粒子径を測定したものの平均値である。
【0060】
<その他の外添剤>
本発明のトナーは、上記のワックス外添剤の他に、粉体流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性改善、長期保存性改善、クリーニング特性改善、感光体表面摩耗特性制御等の機能を担う外添剤を含有してもよい。
【0061】
このような外添剤としては、例えば平均一次粒子径が5nm~200nmのシリカ、酸化チタン、アルミナ等の無機微粒子が使用できる。これらの無機微粒子の表面にシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等により表面処理を施すことによって疎水性を付与した無機微粒子が、高湿下において電気抵抗や帯電量の低下が少なくなるので好ましい。当該外添剤の添加量としては、トナー粒子100質量部に対して0.2質量部~3質量部が好ましい。添加量が0.2重量部未満ではトナーに流動性の向上効果を与えることが難しく、添加量が3重量%を超えるとトナーの定着性が低下する。また、外添剤の添加方法としては、一般に行われる、トナーと外添剤とをヘンシェルミキサー等の気流混合機で混合する方法等が採用できる。
【0062】
3.トナーの製造方法
本発明に係るトナーの製造方法としては公知の方法を採用できるが、結着樹脂、着色剤及び帯電制御剤を含むトナー原料を混合する混合工程と、前記混合工程で得られた混合物を微粉砕する微粉砕工程と、前記微粉砕工程で得られた微粉砕物を分級する分級工程と、前記分級工程で得られた分級物を熱風により球形化してトナー粒子を得る熱球形化処理工程と、を含むことが好ましい。
【0063】
また、湿式法と比較して工程数が少なく、設備コストが掛からない等の点で乾式法が好ましく、中でも粉砕法が特に好ましい。上記の各工程における条件は、対象とする材料及び所望の物性により適宜設定すればよい。
【0064】
さらにワックス外添剤を製造してトナー粒子に外添する工程として、ワックスに対してビーズミルを用いて、微粉砕化されたワックススラリーを得るワックス微粉砕工程と、前記ワックス微粉砕工程で得たワックススラリーに対して、疎水化された無機微粒子を添加して撹拌することにより、前記ワックス表面に前記無機微粒子が付着したワックススラリーを得る被覆工程と、前記被覆工程で得たワックススラリーを乾燥することにより、疎水化された無機微粒子が表面に付着したワックス微粒子を得る乾燥工程と、前記乾燥工程で得た前記ワックス微粒子とトナー粒子とを混合して、当該トナー粒子表面に前記ワックス微粒子を付着させてトナーを得る外添工程と、を含むことが好ましい。
【0065】
<混合工程>
混合工程では、結着樹脂、着色剤、必要に応じて配合される帯電制御剤等の公知の添加剤を含むトナー材料を混合・溶融混練し、さらにフィラーと混合し、得られた混練物を冷却固化・粗粉砕して混合物を得る。
【0066】
混合は乾式が好ましく、混合機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、ヘンシェルミキサー(商品名、三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社製)、スーパーミキサー(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)等のヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)といった混合装置等が挙げられる。
【0067】
また、混練機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、二軸押出機、三本ロール、ラボブラストミル等の一般的な混練機が挙げられる。具体的には、例えば、TEM-100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM-65/87、PCM-30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)等の一軸又は二軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)等のオープンロール方式の混練機が挙げられ、これらの中でも、オープンロール方式の混練機は、混練時のシェアが強く顔料等の着色剤を高分散できる点で好ましい。
【0068】
<微粉砕工程>
微粉砕工程では、上記混合工程で得られた混合物を微粉砕する。粉砕機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に固化物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機が挙げられる。
【0069】
<分級工程>
分級工程では、上記微粉砕工程で得られた微粉砕物を分級する。分級には、当該技術分野で常用される公知の装置、特に、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)のような遠心力及び風力により過粉砕トナー粒子を除去できる分級機を好適に使用できる。
【0070】
<熱球形化処理工程>
熱球形化処理工程では、上記分級工程で得られた分級物を熱風により球形化してトナー粒子を得る。熱風装置としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、日本ニューマチック工業株式会社製の球形化装置メテオレインボーが挙げられる。
【0071】
<ワックス微粉砕工程>
ワックスの微粉砕工程では、ビーズミルを用いて微粉砕化されたワックススラリーを得る。微粉砕化装置としては当該技術分野で常用される公知の装置を使用できる。本発明の製造方法におけるビーズミル処理は乾式又は湿式のいずれであってもよいが、湿式ビーズミル処理を採用することが望ましい。この場合の溶媒としては、水のほか、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒を用いることができる。湿式ビーズミルの装置としては、例えばアシザワ・ファインテック株式会社製の湿式ビーズミル・ラボスターが挙げられる。
【0072】
<被覆工程>
ワックス微粒子の表面に無機微粒子を被覆させる工程では、上記ワックス微粉砕工程で得たワックススラリーに対して、疎水化された無機微粒子を添加して撹拌し懸濁液とすることにより、ワックス表面に無機微粒子が付着したワックススラリーを得る。懸濁装置としては当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、日東金属工業株式会社製のアルミエアーモーター竪型撹拌機(ベルヌーイ流撹拌体BEAG E型)が挙げられる。
【0073】
<乾燥工程>
乾燥工程では、上記被覆工程で得たワックススラリーを乾燥することにより、疎水化された無機微粒子が表面に付着したワックス微粒子(ワックス外添剤)を得る。乾燥装置としては、例えば株式会社セイシン企業製のフラッシュジェットドライヤーが挙げられる。
【0074】
<外添工程>
外添工程では、球状化処理工程で得たトナー粒子と、上記乾燥工程で得たワックス外添剤と、任意に上記「その他の外添剤」(疎水性シリカ粒子等)とを混合して、トナー粒子表面に外添剤を付着させてトナーを得る。
【0075】
外添工程における混合機としては、当該技術分野で常用される公知の装置を使用でき、例えば、上記「混合工程」にて例示の混合機が挙げられる。
【0076】
4.現像剤
本発明のトナーは、そのまま一成分現像剤として使用することも、キャリアと混合して二成分現像剤として使用することもできる。一成分現像剤として使用する場合、キャリアを用いることなくトナーのみで使用する。一成分現像剤として使用する場合、ブレード及びファーブラシを用いて摩擦帯電させて現像スリーブ上にトナーを付着させることによってトナーを搬送し、画像形成を行う。
【0077】
本発明のトナーを二成分現像剤として用いる場合、トナーとキャリアとを混合することにより、二成分現像剤を調製することができる。混合に用いる混合装置としては、例えばV型混合機(商品名:V-5、株式会社徳寿工作所製)等の粉体混合機が使用できる。トナーとキャリアの配合比としては、例えば10:90~5:95の質量比とすることが挙げられる。なお、キャリアとしては、特に限定されず、二成分現像剤に通常使用されるキャリアを使用でき、例えば、コートキャリアを使用することも可能である。
【実施例0078】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。まず、実施例及び比較例にて行った測定や評価の方法について説明する。
【0079】
[評価1.トナーの保存安定性の評価方法]
10gのトナーを100mlのガラス瓶に入れて温度50℃の恒温槽内に24時間放置した。そのトナーを400メッシュの超音波フルイ(商品名:デジタル制御式DGS発振器、アーテック ウルトラソニック社製)で1分間のフルイ操作を行った後、凝集トナーの有無を確認した。
【0080】
保存安定性の評価基準は以下のとおりである。
○(良好) :目視で凝集トナーがない。
△(やや良好):超音波フルイで解砕される凝集トナーがある。
×(不良) :超音波フルイで解砕されない凝集トナーがある。
【0081】
[評価2.低温定着性の評価方法]
トナーとコートキャリア(シャープ株式会社製MX-5111FN用純正キャリア)を、トナー濃度が7質量%となるように、V型混合機(商品名:V-5、株式会社徳寿工作所製)にて20分間混合して二成分現像剤を作製した。
【0082】
上記二成分現像剤を、現像装置を有する市販複写機(商品名:MX-5111FN、シャープ株式会社製)に充填し、縦20mm、横50mmの長方形のベタ画像を有するA4テスト原稿をコピーして、記録媒体(商品名:PPC用紙SF-4AM3、シャープ株式会社製)上に、低温オフセットの発生の有無を調べた。この際、ベタ画像部のトナーの付着量を0.5mg/cm2、定着ローラの温度を135℃となるように設定した。なお低温オフセットとは、定着時にトナーが記録用紙に定着せず、定着ローラに付着したまま定着ローラが一周した後に記録用紙にトナーが再付着することである。
【0083】
低温定着性の評価基準は以下のとおりである。
○(良好) :記録用紙へのトナーの再付着は全く確認されない。
△(やや良好):記録用紙へのトナーの再付着がやや確認されるものの、その再付着画像の反射濃度(ID)が0.1未満である。
×(不良) :記録用紙へのトナーの再付着がはっきりと確認され、その再付着画像の反射濃度(ID)が0.1以上である。
【0084】
[評価3.ブロッキングの評価方法]
上記二成分現像剤を、市販複写機(商品名:MX-5111FN、シャープ株式会社製)に充填し、室温20℃、湿度65%の環境下で、カバレージ6%の文字原稿を10万枚、10枚間欠で連続コピーした後、トナー凝集物の発生の有無と、現像ローラで搬送される現像剤の状態を目視で確認した。
【0085】
ブロッキングの評価基準は以下のとおりである。
○(良好):トナー凝集物が確認されず、現像剤が現像ローラで均一に搬送される。
△(実用上問題なし):トナー凝集物は確認されるが、現像ローラ上で現像剤が均一に搬送される。
×(不良):トナー凝集物が確認され、現像ローラ上で現像剤が均一に搬送されない。
【0086】
[評価4.感光体上のフィルミングの評価方法]
上記二成分現像剤を、市販複写機(商品名:MX-5111FN、シャープ株式会社製)に充填し、印字率1%の所定のプリントパターンをHH環境下(温度28℃、湿度80%)で連続印字した。5,000枚連続印字後に、感光体及びベタ画像を目視で観察評価した。
【0087】
フィルミングの評価基準は以下のとおりである。
○(良好):感光体上にフィルミングの発生がなく、画像も問題ない。
△(実用上問題なし):感光体上に若干フィルミングが発生しているが、画像は問題ない。
×(不良):感光体上に多くのフィルミングが発生しており、画像にも問題がある。
【0088】
[評価5.トナーの耐光性の評価方法]
上記評価2.(低温定着性の評価)で得られた画像サンプル1枚に対して、キセノン試験装置(AtlasCi4000、スガ試験機株式会社製)を用いて、照度:波長340nmで0.39W/m2、温度:40℃、相対湿度:70%の条件で、100時間の曝露試験を行った。試験前後で画像サンプルの色度を測定し、下記式で定義されるΔEを測定した。なお、初期の色度がa0
*、b0
*、L0
*であり、曝露後の色度がa*、b*、L*である。
【0089】
【0090】
耐光性の評価基準は以下のとおりである。
○(耐光性に非常に優れる):ΔE<10
△(耐光性に優れる) :10≦ΔE<20
×(耐光性に劣る) :20≦ΔE
【0091】
[総合評価の方法]
上記評価1~5の結果を、「○」を+1、「△」を±0、「×」を-1として評点し、それらの合計点に基づいて、下記の基準で総合判定した。
◎(優秀):合計点が5である(使用可能)。
○(良好):合計点が4である(使用可能)。
△(可) :合計点が2~3である(使用可能)。
×(不可):×が1つ以上ある(使用不可)。
【0092】
次に、実施例及び比較例におけるトナーの製造手順について説明する。
【0093】
[実施例1]
<トナー粒子の製造>
・結着樹脂:ポリエステル樹脂(ピークトップ分子量Mp5,300、溶融温度Tm99℃、ガラス転移温度Tg60℃、三菱ケミカル株式会社製、製品名:ダイヤクロン ER-535) 89.0質量%
・着色剤:カーボンブラック(キャボット株式会社製、製品名:Regal1330) 8.0質量%
・帯電制御剤:サリチル酸系化合物(オリヱント化学工業株式会社、製品名:ボントロンE-84) 2.0質量%
・離型剤:ワックス(三井化学株式会社、製品名:ハイワックスNP105) 1.0質量%
ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製、型式:FM20C)を用いて、上記の材料を5分間、前混合した後、二軸押出機(株式会社池貝製、型式:PCM30)を用い、シリンダ設定温度110℃、バレル回転数200rpm、原料供給速度15kg/hの条件で溶融混練して溶融混錬物を得た[混合・混錬工程]。
【0094】
得られた溶融混練物を、ドラムフレーカーで冷却させた後、カッティングミル(オリエント株式会社製、型式:VM-16)を用いて粗粉砕して粗粉砕品を得た[粗粉砕工程]。
【0095】
次いで、得られた粗粉砕品を、ジェット式粉砕機(日本ニューマチック工業株式会社製、型式:IDS-2)を用いて微粉砕し、微粉砕品を得た[微粉砕工程]。
【0096】
得られた微粉砕品を、エルボージェット分級機(日鉄鉱業株式会社製、型式:EJ-LABO)を用いて分級して、平均一次粒子径5.5μmのトナー粒子を得た[分級工程]。
【0097】
得られたトナー粒子100質量部に、シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製、商品名:RX50)を3.0質量部添加し、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社(現 日本コークス工業株式会社)製、型式:FM-75)で、回転数30s-1、回転時間10min.で混合し、メテオレインボーによって熱処理を行った。運転条件は、フィード量:4kg/hr、熱風温度C:210℃、熱風流量:6m3/min.、冷風温度E:5℃、冷風流量:4m3/min.、冷風絶対水分量:3g/m3、ブロワー風量:20m3/min.、インジェクションエア流量:1m3/min.とした。得られた熱球形化トナー粒子は、平均円形度が0.963、重量平均粒子径(D4)が5.9μmであった[熱球形化処理工程]。
【0098】
<ワックス外添剤の調製>
(ワックススラリーの調製)
Polywax500(トーヨーケム株式会社製、融点90℃)を溶媒に分散させた、ワックススラリー(ワックス分散液)を以下のようにして調製した。
【0099】
このワックス粉末450gをイオン交換水1,050gに投入して得られた混合液に対し、湿式ビーズミル装置ラボスターLMZ06(アシザワ・ファインテック株式会社製)をアジテータ周速12m/s、処理時間25分の条件にて使用して、ワックス微粒子を含む分散液(ワックススラリー)を得た[ワックス微粉砕工程]。
【0100】
(ワックスの粒度測定)
得られた上記ワックススラリーにおけるワックス微粒子の体積基準のメジアン径(D50)を、マイクロトラックUPA-150(日機装株式会社製)にて測定したところ、90nmであった。
【0101】
(無機微粒子による被覆)
得られた上記ワックススラリー1,500mLと、無機微粒子としてのH2000/4(クラリアントケミカルズ株式会社製、一次粒子径18nm)600gとをタンクに投入し、アルミエアーモーター撹拌機で900rpm、30分間撹拌することで、ワックス微粒子表面の無機微粒子による被覆率が85%となった、無機微粒子被覆ワックススラリーを得た[被覆工程]。
【0102】
(乾燥工程)
得られた上記無機微粒子被覆ワックススラリーを、気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)にて乾燥してワックス外添剤(1)を得た。乾燥の条件は、吹き込み温度を60℃、乾燥機出口温度を30℃、ワックススラリーの供給速度を出口温度が30℃から外れない速度に調整した[乾燥工程]。
【0103】
<外添工程>
上記熱球形化処理工程で得た未外添のトナー粒子100質量部、疎水性シリカ微粒子(平均一次粒子径7nm、日本アエロジル株式会社製、商品名:フェームドシリカR976S)1.0質量部、及びワックス外添剤(1)2.5質量部をヘンシェルミキサーに投入し、撹拌羽根先端部の最外周における周速度を40m/sに設定し、1分間撹拌混合し、トナー(1)(体積平均粒子径5.9μm、変動係数24%)約2,000gを得た[外添工程]。
【0104】
[実施例2~22、比較例1~7]
実施例及び比較例のトナーにおいて使用したワックス外添剤中のワックスの種類を以下の表1に、ワックス外添剤中の無機微粒子の種類を以下の表2に示す。これらを以下の表3に示す組み合わせとしたワックス外添剤を、以下の表4に示すように使用した以外は実施例1と同様にして、実施例2~22及び比較例1~7のトナーを得た。
【0105】
実施例及び比較例で使用したワックス外添剤におけるワックス種について、詳しくは、実施例1,6,7,19,20及び比較例2ではポリエチレンワックスであり、実施例2,15,17ではライスワックスであり、実施例3,11ではキャンデリラワックスであり、実施例4,5及び比較例1,4,5,7ではエステルワックスであり、実施例8,10,18ではモンタンワックスであり、実施例9,14ではパラフィンであり、実施例12,16ではカルナウバワックスであり、実施例13ではホホバ油ワックスであり、実施例21では1,3-(ヒドロキシメチル)尿素であり、実施例22及び比較例3ではジフェニルウレタンである。
【0106】
実施例及び比較例で使用したワックス外添剤における無機微粒子種について、詳しくは、実施例5,8,14,16,18及び比較例6では表面を疎水化処理したチタン酸ストロンチウムであり、それ以外の実施例及び比較例では表面を疎水化処理したシリカである。
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
表5に示す評価結果から明らかなように、トナー粒子の表面に外添剤が付着したトナーであって、前記外添剤は疎水化された無機微粒子が表面に付着したワックス微粒子を含み、前記ワックス微粒子の一次粒子の体積基準のメジアン径が70nm以上100nm以下である実施例1~22は、低温定着性、保存安定性、耐光性、ブロッキング及びフィルミングの評価に優れるものであった。
【0113】
これに対して、これらの要件を満たさない比較例1~7は、低温定着性、高温定着性及び耐熱保存性の評価の少なくとも1つが実施例に対して劣っていた。
【0114】
無機微粒子によるワックス微粒子表面の被覆率が70%以上100%以下である実施例1等は、当該被覆率が上記下限未満である実施例8よりも特にフィルミングの評価に優れることがわかる。また、当該被覆率が上記上限を超える実施例9よりも特にブロッキングの評価に優れることがわかる。
【0115】
ワックス微粒子の融点が60℃以上130℃以下である実施例1等は、当該融点が上記下限未満である実施例4よりも特に保存安定性の評価に優れることがわかる。また、当該融点が上記上限を超える実施例7よりも低温定着性の評価に優れることがわかる。
【0116】
無機微粒子の平均一次粒子径が12nm以上40nm以下である実施例1等は、当該平均一次粒子径が上記下限未満である実施例10よりも特にブロッキングの評価に優れることがわかる。また、当該平均一次粒子径が上記上限を超える実施例13よりも特に保存安定性の評価に優れることがわかる。
【0117】
無機微粒子が表面に付着したワックス微粒子(ワックス外添剤)の含有量が、トナー粒子100質量部に対して1.5質量部以上3.0質量部以下である実施例1等は、当該含有量が上記下限未満である実施例14よりも特に低温定着性の評価に優れることがわかる。また、当該含有量が上記上限を超える実施例17よりも特にブロッキングの評価に優れることがわかる。
【0118】
P1/P2の値が1.0以下である実施例1等は、P1/P2の値が上記上限を超える実施例21よりも特に耐光性の評価に優れることがわかる。
【0119】
ASTM D638規格に基づいて測定されるワックス微粒子の引張弾性率が1.0×103MPa以上である実施例1等は、当該引張弾性率が上記下限未満である実施例22よりも特に低温定着性の評価に優れることがわかる。
【0120】
トナー粒子が、離型剤としてのワックスを0質量%以上2.0質量%以下含む実施例1等は、ワックスの含有量が上記上限を超える実施例20よりも特にブロッキングやフィルミングの評価に優れることがわかる。
【0121】
[その他の実施形態]
なお、今回開示した実施形態は、すべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。