(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118532
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】留置針
(51)【国際特許分類】
A61M 5/158 20060101AFI20230818BHJP
A61M 39/02 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
A61M5/158 500T
A61M39/02 112
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021529
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鹿志村 文吾
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066FF04
4C066KK08
4C066LL17
(57)【要約】
【課題】本発明は、構成部材の削れ、及び変形が発生することなく、組み立て状態において構成部材の分離を確実に防ぐ留置針を提供することを目的とする。
【解決手段】発明に係る留置針は、下体部20、及び上体部60を備え、上体部60は、上体部60の半径方向に突出して形成されており、下体部20の第1篏合部25に篏合可能な第1突出部70、上体部60に形成された把持部64に設けられており、上体部60と下体部20とを相対回転させた時に、下体部20に設けられている第2篏合部30に篏合する第2突出部75を備えており、第2突出部75は、第2突出部75の少なくとも一部が、上体部60の半径方向に変位可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上体部、及び
下体部を備える留置針であって、
前記上体部は、前記上体部の半径方向に突出して形成されており、前記下体部の第1篏合部に篏合可能な第1突出部、及び
前記上体部に形成された把持部に設けられており、前記上体部と前記下体部とを相対回転させた時に、前記下体部に設けられている第2篏合部に篏合する第2突出部を有しており、
前記第2突出部は、前記第2突出部の少なくとも一部が、前記上体部の半径方向に変位可能である、留置針。
【請求項2】
前記把持部は、複数形成されており、前記上体部の中心に対し、点対称の位置関係に配置されている、請求項1に記載の留置針。
【請求項3】
前記下体部には、前記第1篏合部に隣接して突条が形成されており、
前記突条は、前記上体部と前記下体部との相対回転にともなって、前記上体部を前記下体部に対して前記下体部の中心軸方向に移動させる傾斜部を有している、請求項1又は2に記載の留置針。
【請求項4】
前記下体部と前記上体部とが組み立てられている状態から、両者を分離する方向に回転させた時、前記第2突出部と前記第2篏合部とは干渉し、両者の干渉部位は平面である、請求項1~3の何れか一項に記載の留置針。
【請求項5】
前記第1突出部が前記第1篏合部に篏合後、前記上体部と前記下体部とのそれぞれの中心軸が一致しない状態において、前記上体部と前記下体部とを相対回転させた時に前記第2篏合部と接触する第3突出部が前記上体部に設けられている、請求項1~4の何れか一項に記載の留置針。
【請求項6】
前記第1突出部は、前記上体部の前記下体部に対する中心軸方向への移動、及び回転方向に対する回転の両方に用いられる、請求項1~5の何れか一項に記載の留置針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を持続的に注射する留置針に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、携帯型のポンプにより微量の薬液を持続的に注射する留置針が利用されている。留置針は、特許文献1に開示されている形態の他、薄い円形形状の留置針が知られている。そのような形態の留置針では、皮膚に固定される下側部分の下体部と、下体部の上部に回転篏合させて組み立てられる上側部分の上体部とを有しているものがある。
【0003】
上記の回転篏合構造において、下体部にかぶせた上体部を回転させると、上体部に設けられた爪部が下体部の上面に設けられた突起を乗り越して、爪部が回転完了位置に到達して、組み立てが完了する。留置針の使用者は、爪部が突起を乗り越す時のクリック感により、組み立て完了を知ることができる。爪部は突起により回転完了位置に保持されて、上体部と下体部とは、外れることなく一体的に維持される。また、上体部を取り外す時には、上体部は、組み立て時に対し逆方向に回転させ、爪部を突起に乗り越させて取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、組み立てと取り外しとを繰り返し、爪部が突起を乗り越すたびに両者がこすれ、突起には削れ、又は変形が発生する。突起に削れ、又は変形が発生するとクリック感がなくなってしまい、取り外し回転方向への回転抵抗が小さくなり、上体部が下体部から外れる可能性が生じる。
【0006】
本発明は、上記問題を解消するためになされたものであり、構成部材の削れ、及び変形を発生することなく、組み立て状態において構成部材の分離を確実に防ぐ留置針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る留置針は、下体部、及び上体部を備え、上体部は、上体部の半径方向に突出して形成されており、下体部の第1篏合部に篏合可能な第1突出部、及び上体部に形成された把持部に設けられており、上体部と下体部とを相対回転させた時に、下体部に設けられている第2篏合部に篏合する第2突出部を有しており、第2突出部は、第2突出部の少なくとも一部が、上体部の半径方向に変位可能である。
【0008】
本発明に係る留置針によれば、組み立て、及び取り外しを繰り返し行っても、構成部材である第2突出部は削れ、及び変形が発生することなく、組み立て状態において構成部材の分離を確実に防ぐことができる。
【0009】
また、本発明に係る留置針は、把持部が複数形成されており、上体部の中心に対し、点対称の位置関係に配置されていることが好ましい。
【0010】
これにより、留置針は、2本の指でつかみやすく、ロック解除時に力を入れやすい留置針とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る留置針の下体部には、第1篏合部に隣接して突条が形成されており、突条は、上体部と下体部との相対回転にともなって、上体部を下体部に対して下体部の中心軸方向に移動させる傾斜部を有していることが好ましい。
【0012】
これにより、留置針は容易、かつ確実に組み立てることができる。
【0013】
また、本発明に係る留置針は、下体部と上体部との組み立て状態から、両者を分離する方向に回転させた時、第2突出部と第2篏合部とは干渉し、両者の干渉部位は平面であることが好ましい。
【0014】
これにより、留置針は、組み立て状態において、第2突出部と第2篏合部とが面あたりで干渉し、構成部材である上体部と下体部との分離を確実に防ぐことができる
【0015】
また、本発明に係る留置針の第1突出部は、上体部の下体部に対する中心軸方向への移動、及び回転方向に対する回転の両方に用いられることが好ましい。
【0016】
これにより、第1突出部は、上体部の下体部に対する中心軸方向へ移動させるための部材、及び回転させるための部材の両方の部材を兼用することができ、それぞれの部材を別個に設ける場合に比べて、小さい留置針とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図1の留置針のチューブとの接続を示す説明図。
【
図10】
図1の上体部と下体部との組み立て時の初期状態を示す説明図。
【
図11】
図1の留置針の第3突出部と第2篏合部との篏合状態を示す説明図。
【
図12】
図1の上体部と下体部との組み立ての初期状態を示す断面図。
【
図13】
図1の上体部と下体部との組み立ての中間状態を示す断面図。
【
図14】
図1の上体部と下体部との組み立ての完了状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施例>
図1、及び
図2を参照して、本発明の実施例に係る留置針の全体構成を説明する。
図1は、留置針を示す正面図である。
図2は、
図1の留置針にチューブ50を取付ける状態を示す説明図である。
【0019】
[留置針の全体構成、及び使用方法]
本発明の実施例に係る留置針は、下体部20、及び上体部60を備えている。留置針を皮膚に取付ける時は、下体部20を皮膚に取付け、下体部20に上体部60が取付けられる。下体部20は、下体部20の外針38に、図示されない補助部材の内針が挿通された状態で外針38が皮膚に刺通される。その状態で、下体部20は下体部20の下面29を皮膚にテープで固定される。
【0020】
上体部60は、あらかじめチューブ50と接続されている。上体部60の外側面61の外側平面66に設けられている後述する中心孔63には、チューブ50の一端部に設けられている接続端子51がはめ込まれている。チューブ体52の他端部は、図示されない携帯ポンプに接続されている。
【0021】
上体部60は、チューブ50が取り付けられている状態で、上体部60の対応する面が下体部20に合わせられる。留置針は、合わせられた両者を相対回転させ相互に固定して組み立てられる。組み立てられた状態では、上体部60の外周端68と、下体部20の外周端37とは接した状態である。留置針は、上記のように取付け、及び組み立てられて、薬液投与が行われる。
[留置針の細部構成]
【0022】
図3~
図6を参照して、上体部60を説明する。
図3~
図5は、上体部60のそれぞれ正面図、上面図、及び底面図である。
図6は、
図4の上体部60の断面F-Fによる断面図であり、上体部60の内部構造を示している。
【0023】
図3と
図4とを参照して、上体部60の外側の構造を説明する。上体部60は、外周端68を有する略円形形状であり、下体部20と接する側に対して反対側が突出した形状の部材である。上体部60は、突出した側に外側面61、その反対側に内側面67を有している。外側面61の中央領域には、円形の外側平面66が設けられている。外側平面66の中央領域には、中心孔63が設けられている。外側平面66、中心孔63の中心は、上体部60の中心位置である中心Pと一致している。外側平面66の外周から外周端68にかけて外周面62が形成されており、外側平面66の外周と外周端68とを接続している。
【0024】
外側平面66、及び外周面62のそれぞれにおいて、略四角形状の貫通孔81、82が設けられている。貫通孔81は後述する第1突出部70、及び貫通孔82は後述する第3突出部73を形成するために金型成型上、それぞれ必要な孔である。貫通孔81、82は、外側平面66の外周側において、中心Pに対して点対称位置である2ケ所に貫通孔81、81が設けられている。また、外周面62において、中心Pに対して点対称位置である2ケ所に貫通孔82、82が設けられている。2組の貫通孔81、82のうち、一方の1組の貫通孔81、81を通して、第1突出部70、70が上面から視認可能である。また、他方の1組の貫通孔82、82を通して、第3突出部73、73が上面から視認可能である。
【0025】
上体部60には、把持部64、及び切欠き65が設けられている。切欠き65は、外周端68から上体部60の中心Pに向かって略半径方向に形成されている半径方向切り欠き部と、半径方向切り欠き部の中心P側の端部から略周方向に形成されている周方向切り欠き部とを含んでいる。把持部64は、切欠き65により形成されている略円弧状の部分である。
図3に示すように、把持部64は、把持部64の外面において、把持部64を指で押す際にすべり止めとなる3本の突条を有している。なお、切欠き65は、上記以外の形状でもよい。切欠き65は、例えば、上記形状に類似した曲線形状でもよく、把持部64が略円弧形状に形成できる形状であればよい。
【0026】
図5と
図6とを参照して、上体部60の内側の構造を説明する。上体部60の内側には、下体部20の対応する部位とそれぞれ篏合する第1突出部70、第2突出部75、及び第3突出部73が設けられている。内側面67の中心孔63の外周には、内側平面69が設けられている。
【0027】
第1突出部70は、内側平面69の外周側における、中心Pに対して点対称位置の2ケ所に設けられている。第1突出部70は、上体部60の上面視で、外側平面66に設けられている略四角形状の貫通孔81、81と重なって配置されている。そのため、使用者は、貫通孔81、81を通して上面から第1突出部70を視認することができる。したがって、使用者は、上体部60を下体部20に組み立てる時に、第1突出部70と、第1突出部70が篏合する下体部20の対応する部位との篏合状態が、視認により確認できる。
【0028】
第1突出部70は、
図6に示されているように、上体部60の内側面67の外周側から垂直に下方に延び、下端部で中心P側に延びて形成された断面L字形状の部材である。第1突出部70は、第1突出部70の下端部の中心P側に延びて形成された部分において、その上面側に第1上面71、その内面側(中心P側)に第1内周面72を有している。
【0029】
第2突出部75は、
図5に示されているように、把持部64の内面側に設けられている。第2突出部75は、周方向に延びて形成されている円弧状の細長い部材である。円弧状の第2突出部75は、切欠き65の周方向切り欠き部に沿って配置されている。第2突出部75と、第1突出部70とは、上体部60の中心Pを中心に点対称の位置に1対ずつ設けられている。第2突出部75と、第1突出部70との位置関係について説明する。第2突出部75と、第1突出部70とは、各1つが隣接し、同じ半径線上に配置されている。すなわち、中心Pから外側をみた場合、隣接する第2突出部75と、第1突出部70とは、少なくとも一部が重なって配置されている。
【0030】
第2突出部75と把持部64とは、一体的につながって形成されている。したがって、把持部64が中心P側に指で押された時には、把持部64の変位とともに、第2突出部75も把持部64と一体的に、半径方向に変位する。第2突出部75は、上体部60と下体部20とを回転篏合された篏合完了状態で、容易、かつ確実にロックできる。また、第2突出部75は半径方向に変位するので、組み立て、及び取り外しを繰り返し行っても、第2突出部が相手部材とこすれることはなく、第2突出部は削れ、及び変形を発生することがない。
【0031】
把持部64と、第2突出部75との変位方向が半径方向であることで、他の変位方向、例えば変位方向が中心軸P方向に比べ、中心軸P方向に第2突出部75が変位するための空間を確保する必要がない。そのため、留置針を薄く構成することができる。したがって、留置針の使用者は留置針の皮膚からの突出を気にすることなく、留置針を使用することができる。
【0032】
第2突出部75は、周方向基端部76、周方向先端部77、先端突起部78、及び周方向先端部端面79を有している。第2突出部75の周方向基端部76は、切欠き65の内側の終端部付近に存在する把持部64の基端部周辺に配置されている。また、第2突出部75の周方向先端部77は、把持部64の先端部周辺に配置されている。周方向先端部77には、外側に向かって形成された突起形状の先端突起部78が設けられている。また、周方向先端部77には、第2突出部75の周方向の終端面である周方向先端部端面79が設けられている。
【0033】
第3突出部73は、外周面62の内面側において、第1突出部70より外周側であり、第2突出部75とほぼ同じ半径方向位置、かつ、周方向基端部76と周方向において隣接して設けられている。第3突出部73は、上体部60の上面視で、外側平面66に設けられている略四角形状の貫通孔82と重なって配置されている。そのため、使用者は、貫通孔82を通して上面から第3突出部73を視認することができる。したがって、使用者は、上体部60を下体部20に組み立てる時に、第3突出部73と、第3突出部73が篏合する下体部20の対応する部位との篏合状態が、視認により確認できる。
【0034】
第3突出部73は、
図6に示されているように、上体部60の内側面67の外周側から垂直に下方に延び、下端部で外側に延びて形成された断面L字形状の部材である。第3突出部73は、第3突出部73の下端部において、下端部から外側に延びて形成された部分の上面に第3上面74を有している。
【0035】
図7~
図9を参照して、下体部20の構造を説明する。
図7~
図9は、下体部20のそれぞれ斜視図、正面図、及び上面図である。下体部20の中心Pは、上体部60の中心Pと一致している。
【0036】
下体部20は、上面21、下面29、及び、外周端37を有する略円形形状の部材である。外周端37の中心Pに関して点対称の位置の2ケ所には、外周端37が中心P側に湾曲して形成されている湾曲部36が形成されている。上面21は、平面部である上側平面28を有している。下体部20は、円筒形状に形成され、皮膚を刺通する外針38を下面29に有している。下体部20を皮膚に取付けるときは、公知のように、内針を有する図示されない補助部材が用いられる。下体部20は、外針38に補助部材の内針が挿通され、その状態で外針38と内針とを皮膚に刺通させて取付けられる。下体部20の取り付け後、内針を有する補助部材は取り外される。下体部20は、外針38を皮膚に刺通した状態で、下面29が皮膚にテープで固定される。
【0037】
下体部20は、下体部20の中心Pと同軸にして、円筒部24、及び円筒部24の内側の中空部分に円筒部23を有している。
図8に示されているように、円筒部23の上面は、円筒部24の上面である上端部22より高く形成されている。また、円筒部23の外径は、上体部60の中心孔63の内径より若干小さく形成されている。この構造により、上体部60を下体部20にかぶせた時には、円筒部23が中心孔63に環状の隙間を有して篏合する。円筒部23の外周面には、中心孔63を通してチューブ50の接続端子51が嵌合する。円筒部24の外周には、傾斜面39が形成されている。傾斜面39は、上端部22と、上側平面28とを接続している。
【0038】
下体部20は、それぞれ上体部60と篏合する部位である第1篏合部25、第2篏合部30、及び突条26が設けられている。
【0039】
第1篏合部25は、傾斜面39上の中心Pに関する点対称位置に1つずつ形成されている。第1篏合部25は、第1突出部70が篏合する溝である。第1篏合部25の周方向幅は、第1突出部70の第1内周面72の周方向幅とほぼ同じ、また第1篏合部25の中心軸P方向長さは所定長さに形成されている。上体部60を下体部20に対応する面に合わせて近づけると、第1突出部70の第1内周面72が第1篏合部25の表面に接触し、上体部60と下体部20とをさらに近づけるにしたがい、第1内周面72は第1篏合部25の表面上を接触しながら移動する。第1篏合部25は曲面に形成されており、第1内周面72は第1篏合部25の表面の曲面に合った曲面に形成されている。
【0040】
突条26は、傾斜面39上の中心Pに関する点対称位置に1つずつ形成されている。突条26は、上体部60と下体部20とを相対回転させた時に、両者を中心軸P方向に近づけて保持する部材である。突条26は、第1篏合部25の上端部の高さ位置に配置されている。突条26は、円筒部24の外側において、周方向所定長さで半径方向外向きに突出して形成されている円弧形状の突条である。1つの突条26は、約30°から約60°の周方向角度範囲で形成されている。2つ設けられている突条26のそれぞれは、第1篏合部25のそれぞれの右側端部に隣接して設けられている。
【0041】
突条26の下面は高さが徐々に変化している。突条26の下面は、傾斜面27が形成されている。第1篏合部25と隣接している突条26の端部における傾斜面27は高く形成されており、少なくとも円弧形状の中間位置まで徐々に低くなるように形成されている。突条26の下面は、第1突出部70の第1上面71が接触する面である。第1突出部70の第1内周面72が中心軸P方向に第1篏合部25の所定位置まで押し込まれた後、上体部60が下体部20に対して右方向に相対回転すると、第1突出部70の第1上面71が突条26の下面に接触しながら移動する。第1上面71が、徐々に低く形成されている傾斜面27を接触しながら移動すると、ねじのねじ山と同じ効果により、上体部60は中心軸P方向において下体部20に接近するように案内される。第1突出部70は、上体部60の下体部20に対する中心軸方向への移動、及び回転方向に対する回転の両方を兼用することができ、それぞれの部材を配置する場合に比べて、小さい留置針とすることができる。
【0042】
第2篏合部30は、外周端37上の中心Pに関する点対称位置に1つずつ形成されている。第2篏合部30は、周方向角度位置において、突条26の始点とほぼ同じ位置に配置されている。第2篏合部30は、第2篏合部先端部31、第2篏合部基端部32、第2篏合部内周面33、第2篏合部凹部34、及び第2篏合部端面35を有している。第2篏合部30は、下体部20と一体的に形成されている。第2篏合部先端部31は、上体部60の対応する篏合穴に入れやすいように、先細に形成されている。第2篏合部先端部31は、第2篏合部先端部31の中心P側の面に第2篏合部内周面33が形成されている。第2篏合部基端部32の中心P側の面は、第2篏合部先端部31の中心P側の面である第2篏合部内周面33より外周側にへこんでおり、第2篏合部凹部34が形成されている。第2篏合部凹部34の回転軸P方向長さは、篏合する第3突出部73の回転軸P方向長さより若干長く形成されており、第3突出部73は第2篏合部凹部34に容易に篏合できる。第2篏合部30の回転方向右側面には、平面部である第2篏合部端面35が形成されている。第2篏合部端面35は、半径方向に平行に形成された平面である。
【0043】
図10~
図11を参照して、上体部60を下体部20に組み立てる際の、対応する部位の篏合の様子を説明する。
図10は、上体部60と下体部20とを組み立てるために、両者の回転方向位置を合わせた状態である初期位置を示している。上体部60の第1突出部70と、下体部20の第1篏合部25とは、同じ回転方向位置である。この状態のまま、上体部60と下体部20とが合わされる。第1突出部70と、第1篏合部25とが篏合するとともに、第2篏合部30が上体部60の対応する穴に差し込まれる。
【0044】
図11は、第3突出部73と、第2篏合部30の第2篏合部凹部34とが篏合する状態を示している。上体部60が下体部20に対して回転すると、第3突出部73は回転しながら第2篏合部凹部34に接近する。そして、上体部60がさらに回転すると、第3突出部73は第2篏合部30に干渉せずに第2篏合部凹部34を通過する。上体部60が下体部20にぴったり接している状態の時には、
図11のように、第3突出部73は回転しながら、容易に第2篏合部凹部34を通過することができる。
【0045】
しかし、上体部60が下体部20に対して傾いており、ぴったり接していない状態の時には、第3突出部73は第2篏合部30に干渉して第2篏合部凹部34を通過することができない。すなわち、上体部60が下体部20に対し、それ以上回転しない。第3突出部73と、第2篏合部30の第2篏合部凹部34とは、それぞれ中心Pに関して点対称位置に1つずつ設けられている。すなわち、下体部20上の最も中心Pから離れた両端位置にそれぞれ配置されている。したがって、上体部60が下体部20に対して少しでも傾いている状態で上体部60と下体部20とを相対回転させると、第3突出部73が第2篏合部30に接触し、第3突出部73が第2篏合部凹部34を通過することができない。上体部60が下体部20に対して傾いている状態とは、上体部60と下体部20のそれぞれの中心軸Pが一致しない状態である。又は、上体部60の外側平面66、又は内側平面69が、上側平面28、又は下面29と平行ではない状態である。第3突出部73と、第2篏合部凹部34を有する第2篏合部30とを備えることにより、上体部60と下体部20とが傾いた状態で組み立てられる可能性を低減することができる。
【0046】
[組み立て方法]
図12~
図14を参照して、上体部60と下体部20との組み立てについて説明する。
図12は、上体部60と下体部20との回転方向位置を合わせた状態である初期位置を示している。
図13は、篏合位置から上体部60を右方向に回転させた状態である中間位置を示している。
図14は、
図13からさらに回転させ、両者の組み立てが完了した完了位置を示している。以下に、1.初期位置、2.中間位置、及び3.完了位置の各段階において説明する。
【0047】
1.初期位置 (
図12)
上体部60と下体部20との組み立てにあたり、まず、上体部60の第1突出部70と、下体部20の第1篏合部25とが、同じ回転方向位置に合わされた状態で、上体部60と下体部20とが近づけられる。第1突出部70の第1内周面72が第1篏合部25に接した後、さらに上体部60は上体部60が下体部20に接するまで押し付けられる。
【0048】
2.中間位置 (
図13)
次に、上体部60が、下体部20に対し右方向に回転操作される。上体部60が下体部20に対して回転すると、第1突出部70の第1上面71が突条26の下面に接触しながら傾斜面27を移動する。これにより、上体部60は、徐々に下体部20に接していく。一方、第3突出部73が第2篏合部30に接近し、第2篏合部凹部34を通過する。上体部60が下体部20に対して回転すると、第2突出部75が第2篏合部30に接近し、周方向基端部76が第2篏合部先端部31の内周面である第2篏合部内周面33の内側を通過する。上体部60がさらに回転すると、周方向先端部77が第2篏合部内周面33に接近する。周方向先端部77は第2篏合部内周面33に接近し、先端突起部78が第2篏合部内周面33に接触することで第2突出部75がたわみ、周方向先端部77が半径方向中心P側に変位する。
【0049】
3.完了位置 (
図14)
上体部60が下体部20に対して、回転完了角度位置まで回転すると、周方向先端部77が第2篏合部内周面33から離れ、第2突出部75の弾性力により、周方向先端部77が矢印L方向に動き、元の半径方向位置に戻る。第2突出部75の周方向先端部端面79は、第2篏合部30の第2篏合部端面35に接触し、周方向先端部端面79と、第2篏合部端面35とが面あたりする。すなわち、周方向先端部端面79と、第2篏合部端面35とが干渉する周方向先端部端面79と、第2篏合部端面35とが面あたりで接触するロック状態となるため、上体部60に逆方向の回転力が働いたとしても、第2突出部75が第2篏合部凹部34から抜け出すことなく、上体部60が下体部20から外れることが防止される。
【0050】
[取り外し方法]
次に、上体部60を下体部20から取り外す方法について、説明する。中心Pに関して点対称位置にある2つの保持部64を両方から指で押圧すると、把持部64は、半径方向中心P方向に変位する。同時に、第2突出部75が半径方向の中心P方向に変位する。第2突出部75の先端突起部78が半径方向の中心P方向に変位して、先端突起部78が第2篏合部端面35から外れる。それにより、第2突出部75と第2篏合部30とのロック状態が解除される。この状態で、上体部60が下体部20に対して左回転方向に回転すると、第1突出部70の第1上面71が突条26の下面に接触しながら傾斜面27を、組付け時と逆方向に移動し、上体部60が下体部20から徐々に離れる。上体部60と下体部20との回転方向角度位置が初期位置まで戻ったら、上体部60を下体部20から取り外す。以上により、上体部60が下体部20から取り外される。
【0051】
なお、入浴等、上体部60を下体部20から外す場合は、下体部20の上面に、上体部60と類似形状の図示されない保護キャップが取り付け可能である。下体部20に取付けられる保護キャップは、一部を除き、上体部60と同じ形状である。保護キャップは、中央孔63は塞がれており、水、ほこり等の異物が侵入しないようになっている。保護キャップは、上体部60と同じ方法で下体部20に取付け、取り外しができるように構成されている。したがって、使用者は保護キャップを上体部60と同じ方法で容易に利用することができる。
【0052】
本発明の留置針は、上記構成により、部材の削れ、及び変形が発生することなく、組付け状態において部材の分離を確実に防ぐことができる。
【符号の説明】
【0053】
20 下体部、25 第1篏合部、26 突条、27 傾斜部、30 第2篏合部、27 把持部、70 第1突出部、73 第3突出部、75 第2突出部。