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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118536
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】温度制御装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20230818BHJP
   H01L 23/467 20060101ALI20230818BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H01L23/46 C
H05K7/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021536
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨永 高広
(72)【発明者】
【氏名】森元 海
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA05
5E322AB02
5E322EA10
5E322FA01
5F136BA08
5F136BA31
5F136BC01
5F136BC07
5F136CA11
5F136CB07
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA55
(57)【要約】
【課題】被熱交換媒体の温度を効率良く調整することができる温度制御装置を提供する。
【解決手段】本開示の温度制御装置は、温度制御装置は、金属製の第1プレートと、第2プレートと、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に挟まれている流路壁部と、前記第1プレートと熱的に接続された金属製の少なくとも1つのフィンと、少なくとも1つの軟質部品と、前記第2プレートを前記第1プレートに固定している樹脂固定部とを備える。熱交換媒体を循環させるための内部流路が、前記第1プレート及び前記第2プレートの少なくとも一方、並びに前記流路壁部によって形成されている。前記少なくとも1つのフィンは、前記内部流路内に配置されている。前記少なくとも1つの軟質部品は、前記内部流路内において、前記少なくとも1つのフィンと前記第2プレートとの間に挟まれて、前記少なくとも1つのフィンの先端と前記第2プレートとの隙間を充填している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの被熱交換体の温度を制御するための温度制御装置であって、
金属製の第1プレートと、
第2プレートと、
前記第1プレートと前記第2プレートとの間に挟まれている流路壁部と、
前記第1プレートと熱的に接続された金属製の少なくとも1つのフィンと、
少なくとも1つの軟質部品と、
前記第2プレートを前記第1プレートに固定している樹脂固定部と
を備え、
熱交換媒体を循環させるための内部流路が、前記第1プレート及び前記第2プレートの少なくとも一方、並びに前記流路壁部によって形成されており、
前記少なくとも1つのフィンは、前記内部流路内に配置されており、
前記少なくとも1つの軟質部品は、前記内部流路内において、前記少なくとも1つのフィンと前記第2プレートとの間に挟まれて、前記少なくとも1つのフィンの先端と前記第2プレートとの隙間を充填している、温度制御装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの軟質部品は、エラストマーを含む、請求項1に記載の温度制御装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのフィンは、複数のスカイブフィンを含む、請求項1又は請求項2に記載の温度制御装置。
【請求項4】
前記第1プレートは、前記樹脂固定部と接触する部位に凹凸構造を有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の温度制御装置。
【請求項5】
前記第2プレートは、金属製であり、
前記第1プレート及び前記第2プレートの一方並びに前記流路壁部は、金属製の一体成形品である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の温度制御装置。
【請求項6】
前記第2プレートは、金属製であり
前記流路壁部は、樹脂製である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の温度制御装置。
【請求項7】
前記流路壁部は、
前記第1プレートと対向する第1主面、及び第1主面とは反対側の第2主面を有する板部と、
前記第2主面に対して突出する、前記内部流路を形成するための環状壁部と
を有し、
前記内部流路が、前記第2プレート及び前記流路壁部によって形成されている、請求項6に記載の温度制御装置。
【請求項8】
前記第2プレートは、前記樹脂固定部と接触する部位に凹凸構造を有する、請求項5~請求項7のいずれか1項に記載の温度制御装置。
【請求項9】
第2プレート及び前記流路壁部は、樹脂製である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の温度制御装置。
【請求項10】
前記樹脂固定部は、インサート成形によって形成されている、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の温度制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータに搭載される中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、又は電気自動車に搭載される二次電池は、作動時に発熱する。このような発熱体を冷却するための手段として、冷却用媒体を用いる冷却装置が種々提案されている。
【0003】
特許文献1は、発熱体を冷却するための冷却構造及びその製造方法を開示している。
特許文献1に開示の冷却構造は、チャンバーと、フィン付き構造体と、物体(以下、「スペーサー」という。)とを備える。チャンバーは、内部空間を有する。チャンバーは、金属製の直方体状物であり、底板と、枠体と、上蓋とを有する。底板、枠体及び上蓋は、ろう付けされている。フィン付き構造体は、電子部品が発生する熱を放熱する。フィン付き構造体は、板形状の基部と、基部に設けられた複数のスカイブフィンとを有する。スカイブフィンは、微細な湾曲フィンであり、スカイブ切削加工によって形成されている。フィン付き構造体及びスペーサーの各々は、チャンバーの内部空間内の特定の位置に配置されている。フィン付き構造体は、チャンバーの底板に固定されている。チャンバーの外からチャンバーの内部に流入した液体(以下、「冷却用媒体」という。)は、複数のスカイブフィンの間のフィン間流路を流れてからチャンバーの外に流出する。
特許文献1に開示の冷却構造の製造方法は、ろう付け工程を含む。ろう付け工程では、フィン付き構造体が固定された底板、枠体、上蓋、及びスペーサーを用いて、ろう付けによって冷却構造を組み立てる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-4667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のスカイブフィンの各々は、スカイブ切削加工により形成される。「スカイブ切削加工」とは、板状基材に対する切り起こしによりフィンを形成する加工方法を示す。そのため、複数のスカイブフィンの各々のフィン高さ寸法は、厳密に制御されにくい。「フィン高さ」とは、フィン付き構造体の基部の厚み方向におけるスカイブフィンの長さを示す。これにより、特許文献1に開示の冷却構造では、複数のスカイブフィンの各々の先端と、チャンバーの上蓋との間に、隙間(以下、「ショートラン隙間」という。)が形成されるおそれがある。そのため、チャンバーの内部に冷却用媒体が供給されると、冷却用媒体の一部は、ショートラン隙間を流通するおそれがある。ショートラン隙間を流通する冷却用媒体は、冷却用媒体は複数のスカイブフィンと物理的に接触しにくい。その結果、電子部品由来の熱は、複数のスカイブフィンを介して、冷却用媒体に熱伝導しにくい。それ故、電子部品と冷却用媒体との間の熱伝導が効率的でないおそれがある。
ショートラン隙間を埋める手段として、軟質部品をショートラン隙間に配置することが考えられる。軟質部品の主成分は、エラストマーである。特許文献1の冷却構造の製造方法は、ろう付け工程を含む。ろう付け工程では、ろう付けの際、冷却構造の構成部品は、高温(例えば、600℃以上)に曝される。そのため、軟質部品がショートラン隙間に配置された冷却構造を特許文献1に開示の製造方法で製造しようとすると、軟質部品は、高温(例えば、600℃以上)に曝されるおそれがある。軟質部品は、高温(例えば、600℃以上)に曝されると、液状になり、その形状を保持できず、ショートラン隙間を埋めることができないおそれがある。その結果、特許文献1に開示の冷却構造の製造方法では、軟質部品がショートラン隙間に配置された冷却構造を製造できないおそれがある。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑み、被熱交換媒体の温度を効率良く調整することができる温度制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 少なくとも1つの被熱交換体の温度を制御するための温度制御装置であって、
金属製の第1プレートと、
第2プレートと、
前記第1プレートと前記第2プレートとの間に挟まれている流路壁部と、
前記第1プレートと熱的に接続された金属製の少なくとも1つのフィンと、
少なくとも1つの軟質部品と、
前記第2プレートを前記第1プレートに固定している樹脂固定部と
を備え、
熱交換媒体を循環させるための内部流路が、前記第1プレート及び前記第2プレートの少なくとも一方、並びに前記流路壁部によって形成されており、
前記少なくとも1つのフィンは、前記内部流路内に配置されており、
前記少なくとも1つの軟質部品は、前記内部流路内において、前記少なくとも1つのフィンと前記第2プレートとの間に挟まれて、前記少なくとも1つのフィンの先端と前記第2プレートとの隙間を充填している、温度制御装置。
<2> 前記少なくとも1つの軟質部品は、エラストマーを含む、前記<1>に記載の温度制御装置。
<3> 前記少なくとも1つのフィンは、複数のスカイブフィンを含む、前記<1>又は<2>に記載の温度制御装置。
<4> 前記第1プレートは、前記樹脂固定部と接触する部位に凹凸構造を有する、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の温度制御装置。
<5> 前記第2プレートは、金属製であり、
前記第1プレート及び前記第2プレートの一方並びに前記流路壁部は、金属製の一体成形品である、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の温度制御装置。
<6> 前記第2プレートは、金属製であり
前記流路壁部は、樹脂製である、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の温度制御装置。
<7> 前記流路壁部は、
前記第1プレートと対向する第1主面、及び第1主面とは反対側の第2主面を有する板部と、
前記第2主面に対して突出する、前記内部流路を形成するための環状壁部と
を有し、
前記内部流路が、前記第2プレート及び前記流路壁部によって形成されている、前記<6>に記載の温度制御装置。
<8> 前記第2プレートは、前記樹脂固定部と接触する部位に凹凸構造を有する、前記<5>~<7>のいずれか1つに記載の温度制御装置。
<9> 第2プレート及び前記流路壁部は、樹脂製である、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の温度制御装置。
<10> 前記樹脂固定部は、インサート成形によって形成されている、前記<1>~<9>のいずれか1つに記載の温度制御装置。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、被熱交換媒体の温度を効率良く調整することができる温度制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態に係る温度制御装置の外観を示す斜視図である。
図2図1のC2-C2線断面斜視図である。
図3図2のC3部位の拡大断面図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る温度制御装置の第2プレートを取り除いた状態の外観を示す上面図である。
図5】本開示の第2実施形態に係る温度制御装置の断面図である。
図6】本開示の第3実施形態に係る温度制御装置の断面図である。
図7】本開示の第4実施形態に係る温度制御装置の断面図である。
図8】本開示の第5実施形態に係る温度制御装置の外観を示す斜視図である。
図9図8のC9-C9線断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
以下、図面を参照して、本開示に係る温度制御装置の実施形態について説明する。図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0012】
(1)温度制御装置
本開示の温度制御装置は、金属製の第1プレート(以下、「第1金属プレート」という。)と、第2プレートと、流路壁部と、金属製の少なくとも1つのフィンと、少なくとも1つの軟質部品と、樹脂固定部とを備える。前記流路壁部は、前記第1金属プレートと前記第2プレートとの間に挟まれている。前記少なくとも1つのフィンは、前記第1金属プレートと熱的に接続されている。前記樹脂固定部は、第2プレートを第1金属プレートに固定している。熱交換媒体を循環させるための内部流路は、前記第1プレート及び前記第2プレートの少なくとも一方、並びに前記流路壁部によって形成されている。前記少なくとも1つのフィンは、前記内部流路内に配置されている。前記少なくとも1つの軟質部品は、前記内部流路内において、前記少なくとも1つのフィンと前記第2プレートとの間に挟まれて、前記少なくとも1つのフィンの先端と前記第2プレートとの隙間(以下、「ショートパス隙間」という。)を充填している。
【0013】
本開示において、「内部流路」とは、熱交換媒体を流通させるための空間を示す。
「軟質部品」とは、軟質部品の溶融温度が160℃以上で、かつ温度制御装置の使用温度(例えば、5℃~60℃)において、少なくとも1つのフィンと第2プレートとの間に挟まれると、フィンの先端の形状に追従して変形し、少なくとも1つのフィンと第2プレートとの間に挟まれた状態において、変形した形状を保持する性質を有する部品を示す。例えば、軟質部品のタイプAデュロメータで測定された硬度(以下、「A硬度」という。)は、A30~A95であってもよい。A硬度は、JIS K 6253-3:2012で規定されるデュロメータ(ゴム硬度計)、又はこの規定に準拠したデュロメータ(ゴム硬度計)で測定した硬度で示す。
「フィン」とは、金属製の突起状物を示し、放熱機能を担う。
「金属製の第1プレート」とは、金属を含むプレートを示し、金属を主成分とするプレートでもよい。主成分とは、第1金属プレートの総質量に対して、90質量%以上であり、好ましくは95質量%以上である。
【0014】
以下、少なくとも1つのフィンが1つのフィンである場合と、少なくとも1つのフィンが複数のフィンである場合とを区別しない場合、「少なくとも1つのフィン」を単に「フィン」という場合がある。
以下、少なくとも1つの軟質部品が1つの軟質部品である場合と、少なくとも1つの軟質部品が複数の軟質部品である場合とを区別しない場合、「少なくとも1つの軟質部品」を単に「軟質部品」という場合がある。
以下、少なくとも1つの被熱交換体が1つの被熱交換体である場合と、少なくとも1つの被熱交換体が複数の被熱交換体である場合とを区別しない場合、「少なくとも1つの被熱交換体」を単に「被熱交換体」という場合がある。
【0015】
本開示の温度制御装置は、上記の構成を有するため、被熱交換媒体の温度を効率良く調整することができる。
この効果は、以下の理由によると推測されるが、これに限定されない。
本開示の温度制御装置では、軟質部品は、内部流路内において、フィンと第2プレートとの間に挟まれて、ショートパス隙間を充填している。これにより、温度制御装置の内部流路を流通する熱交換媒体はショートパス隙間内を流通しにくい。換言すると、熱交換媒体は、複数のフィンと物理的に接触しやすくなる。そのため、被熱交換体が第1金属プレートに熱的に接続されると、被熱交換媒体と熱交換媒体とは、第1金属プレート及びフィンを介して、従来よりも熱伝導しやすくなる。
更に、樹脂固定部は、第2プレートを第1金属プレートに固定している。樹脂固定部は、例えば、インサート成形又は溶着によって、第1金属プレート及び第2プレートの各々に固着している。換言すると、第1金属プレート及び第2プレートの各々は、ろう付けによって固定されていない。インサート成形又は溶着の際、温度制御装置を構成する構成部品が曝される温度は、ろう付けの際の温度(例えば、600℃以上)よりも低い(例えば、160℃程度)。そのため、軟質部品は、温度制御装置の製造過程において、溶融しにくく、フィンの先端の形状に追従して変形した形状を保持することができる。
以上により、本開示の温度制御装置は、熱交換媒体の温度を従来よりも効率良く調整することができると推測される。
【0016】
本開示の温度制御装置は、少なくとも1つの被熱交換体の温度を制御するために用いられる。詳しくは、温度制御装置は、被熱交換体と熱的に接触することで、被熱交換体から熱を奪う、又は被熱交換体に熱を与える。
被熱交換体は、電子デバイスを含む。電子デバイスとしては、特に限定されず、CPU、メモリモジュール、電池モジュール、パワーモジュール等が挙げられる。メモリモジュールとしては、DIMM(Dual Inline Memory Module)等が挙げられる。電池モジュールとしては、リチウムイオン電池モジュール等が挙げられる。
【0017】
温度制御装置の形状及びサイズは、特に限定されず、被熱交換体の種類等に応じて適宜選択され、例えば、直方体状物である。
【0018】
(1.1)第1金属プレート
第1金属プレートは、金属製の板状物である。
第1金属プレートの形状は、例えば、平板状等が挙げられる。第1金属プレートのサイズは、被熱交換体に応じて適宜選択される。
【0019】
第1金属プレートは、樹脂固定部と接触する部位に、凹凸構造を有することが好ましい。これにより、樹脂固定部の一部は、第1金属プレートの凹凸構造の凹部内に入り込む。その結果、第1金属プレートは、樹脂固定部とより強固に接合する。それ故、温度制御装置の気密性は、より長期に亘って保持され得る。
【0020】
凹凸構造の状態は、第1金属プレートと樹脂固定部との接合強度(以下、「接合強度」という。)が充分に得られるのであれば特に制限されない。
凹凸構造における凹部の平均孔径は、好ましくは5nm~500μm、より好ましくは10nm~150μm、さらに好ましくは15nm~100μmである。
凹凸構造における凹部の平均孔深さは、好ましくは5nm~500μmで、より好ましくは10nm~150μm、さらに好ましくは15nm~100μmである。
凹凸構造における凹部の平均孔径又は平均孔深さの少なくとも一方が上記数値範囲内であると、より強固な接合が得られる傾向にある。
凹部の平均孔径及び平均孔深さの測定方法は、JIS B0601-2001に準拠した方法である。
【0021】
凹凸構造は、第1金属プレートの表面に粗化処理が施されることで形成される。金属部材の表面に粗化処理を施す方法は、特に制限されず、様々な公知の方法であってもよい。
第1金属プレートの表面は、接合強度を向上させる観点から、官能基を付加する処理が施されていてもよい。官能基を付加する処理は、様々な公知の方法であってもよい。
【0022】
第1金属プレートを構成する金属は、特に制限されず、例えば、鉄、銅、ニッケル、金、銀、プラチナ、コバルト、亜鉛、鉛、スズ、チタン、クロム、アルミニウム、マグネシウム、マンガン及びこれらの合金(ステンレス、真鍮、リン青銅等)等が挙げられる。なかでも、熱伝導性の観点からは、第1金属プレートを構成する金属は、好ましくはアルミニウム、アルミニウム合金、銅、又は銅合金であり、より好ましくは銅又は銅合金である。軽量化及び強度確保の観点からは、第1金属プレートを構成する金属は、アルミニウム又はアルミニウム合金であることが好ましい。
【0023】
第1金属プレートは、被熱交換体と熱的に接続されることが好ましい。これにより、温度制御装置は、被熱交換媒体の温度を効率良く制御することができる。
第1金属プレートと被熱交換体とは、直接的に接触していてもよいし、熱伝導層を介して間接的に接触していてもよい。
熱伝導層としては、例えば、熱伝導シート、熱伝導材料(TIM:Thermal Interface Material)層等が挙げられる。熱伝導材料層は、熱伝導性材料が塗布されて形成された層を示す。熱伝導性材料は、熱伝導性グリース、熱伝導性ゲル、熱伝導接着剤、フェイズチェンジマテリアル(Phase Change Material)等が挙げられる。
【0024】
(1.2)第2プレート
第2プレートは、板状物である。
第2プレートの形状は、例えば、平板状等が挙げられる。第2プレートのサイズは、被熱交換体に応じて適宜選択される。
第2プレートの材質としては、樹脂、金属等挙げられる。
【0025】
以下、金属製の第2プレートを「第2金属プレート」という場合がある。樹脂製の第2プレートを「第2樹脂プレート」という場合がある。
【0026】
本開示において、「金属製の第2プレート」とは、金属を含むプレートを示し、金属を主成分とするプレートでもよい。主成分とは、第2金属プレートの総質量に対して、90質量%以上であり、好ましくは95質量%以上である。
【0027】
(1.2.1)第2金属プレート
第2金属プレートは、第2樹脂プレートよりも機械的強度に優れる。そのため、第2金属プレートは、第2樹脂プレートを用いる場合よりも、熱交換媒体の循環に起因する内圧に対する温度制御装置の耐圧性能を向上させることができる。
【0028】
第2金属プレートを構成する金属は、特に制限されず、第1金属プレートを構成する金属として例示した金属と同様である。なかでも、熱伝導性の観点からは、第2金属プレートを構成する金属は、好ましくはアルミニウム、アルミニウム合金、銅、又は銅合金であり、より好ましくは銅又は銅合金である。軽量化及び強度確保の観点からは、第2金属プレートを構成する金属は、アルミニウム又はアルミニウム合金であることが好ましい。
【0029】
第2金属プレートは、樹脂固定部と接触する部位に、凹凸構造を有することが好ましい。これにより、樹脂固定部の一部は、第2金属プレートの凹凸構造の凹部内に入り込む。その結果、第2金属プレートは、樹脂固定部とより強固に接合する。それ故、温度制御装置の気密性は、より長期に亘って保持され得る。
凹凸構造の状態は、第2金属プレートと樹脂固定部との接合強度(以下、「接合強度」という。)が充分に得られるのであれば特に制限されず、第1金属プレートの凹凸構造として例示したものと同様である。
【0030】
第2金属プレートは、被熱交換体と熱的に接続されることが好ましい。これにより、温度制御装置は、被熱交換媒体の温度を効率良く制御することができる。
第2金属プレートと被熱交換体とは、直接的に接触していてもよいし、熱伝導層を介して間接的に接触していてもよい。熱伝導層は、第1金属プレートの熱伝導層として例示したものと同様である。
【0031】
(1.2.2)第2樹脂プレート
第2樹脂プレートは、第2金属プレートを用いる場合よりも、温度制御装置を軽量化することができる。
【0032】
第2樹脂プレートは、第1樹脂組成物の成形体である。第2樹脂プレートは、射出成形品又はプレス成形品を含む。
第1樹脂組成物の樹脂成分は、特に制限されず、温度制御装置の用途等に応じて選択できる。第1樹脂組成物の樹脂成分としては、例えば、熱可塑性樹脂(エラストマーを含む)、熱硬化性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂(エラストマーを含む)としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS)樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重体(ABS)樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリケトン系樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。成形性の観点からは、第1樹脂組成物の樹脂成分は、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。第1樹脂組成物は、樹脂成分からなってもよい。
第1樹脂組成物は、必要に応じて、充填材及び配合剤の少なくとも一方を含有してもよい。充填材としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、セルロース繊維などの各種繊維、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、炭素粒子、粘土、タルク、シリカ、ミネラル等が挙げられる。これら充填材は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。配合剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等が挙げられる。これら配合剤は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
(1.3)流路壁部
流路壁部は、内部流路を形成する壁部の一部を構成する。流路壁部は、例えば、筒状物又は板状物である。板状物である流路壁部としては、板部と、内部流路を形成するための環状壁部とを有する流路壁部等が挙げられる。環状壁部は、第1金属プレートと対向する第1主面と、第1主面とは反対側の第2主面とを有する。環状壁部は、板部の第2主面に対して突出している。環状壁部は、筒状である。
流路壁部の形状及びサイズは、被熱交換体の種類に応じて適宜選択される。
流路壁部の材質としては、樹脂、金属等が挙げられる。
【0034】
以下、金属製の流路壁部を「金属流路壁部」という場合がある。樹脂製の流路壁部を「樹脂流路壁部」という場合がある。
【0035】
(1.3.1)樹脂流路壁部
樹脂流路壁部は、金属流路壁部を用いる場合よりも、温度制御装置を軽量化することができるとともに、内部流路の設計の自由度を向上させることができる。
【0036】
樹脂流路壁部は、第2樹脂組成物の成形体である。樹脂流路壁部は、射出成形品又はプレス成形品を含む。
第2樹脂組成物の樹脂成分は、特に限定されず、第1樹脂組成物の樹脂成分として例示した樹脂と同様である。
第2樹脂組成物は、必要に応じて、充填材及び配合剤の少なくとも一方を含有してもよい。充填材及び配合剤としては、樹脂組成物に含まれ得る充填材及び配合剤として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0037】
第2プレートが樹脂製である場合、樹脂流路壁部は、第2樹脂プレートと別体であってもよい。この場合、樹脂流路壁部を第2樹脂プレートに固定する方法は、特に限定されず、溶着、公知の接着剤を用いる方法等が挙げられる。
第2プレートが樹脂製である場合、樹脂流路壁部及び第2樹脂プレートは、樹脂の一体成形品であってもよい。樹脂の一体成形品は、射出成形品、又はプレス成形品を含む。
【0038】
(1.3.2)金属流路壁部
金属流路壁部は、樹脂流路壁部よりも機械的強度に優れる。そのため、金属流路壁部は、樹脂流路壁部を用いる場合よりも、熱交換媒体の循環に起因する内圧に対する温度制御装置の耐圧性能を向上させることができる。
【0039】
金属流路壁部を構成する金属は、特に限定されず、第1金属プレートを構成する金属として例示した金属と同様である。金属流路壁部を構成する金属は、第1金属プレート及び第2金属プレートの各々を構成する金属と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
金属流路壁部は、第1金属プレートと別体であってもよい。第2プレートが金属製である場合、金属流路壁部は、第2金属プレートと別体であってもよい。この場合、金属流路壁部を第1金属プレート及び第2金属プレートの少なくとも一方に固定する固定方法は、特に限定されず、インサート成形、公知の接着剤を用いる方法等が挙げられる。
【0041】
第1金属プレート及び金属流路壁部は、金属の一体成形品であってもよい。第2プレートが金属製である場合、第2金属プレート及び金属流路壁部は、金属の一体成形品であってもよい。第2プレートが金属製である場合、第1金属プレート及び金属流路壁部の一部、並びに第2金属プレート及び金属流路壁部の残部の各々は、金属の一体成形品であってもよい。金属の一体成形品は、ロール成形品、ダイキャスト成形品、切削加工品、圧延材、プレス成形品、又は押出材を含む。
【0042】
金属流路壁部を構成する金属と、第1金属プレートを構成する金属とが異種である場合、温度制御装置は、電気絶縁層を有することが好ましい。電気絶縁層は、金属流路壁部と、第1金属プレートとの間に介在する。これにより、異種の金属同士が、電気的に接触しにくい。そのため、異種の金属間の電食の発生を抑制することができる。その結果、第1金属プレートは腐食しにくい。
第2プレートが金属製である場合、金属流路壁部を構成する金属と、第2金属プレートを構成する金属とが異種である場合、温度制御装置は、電気絶縁層を有することが好ましい。電気絶縁層は、金属流路壁部と、第2金属プレートとの間に介在する。これにより、異種の金属同士が、電気的に接触しにくい。そのため、異種の金属間の電食の発生を抑制することができる。その結果、第2金属プレートは腐食しにくい。
電気絶縁層は、電気絶縁性を有する膜であれば特に限定されず、接着層、インサート接合層、エラストマーパッキン等が挙げられる。
【0043】
(1.4)フィン
フィンは、熱交換媒体に対する伝熱面積を大きくする。これにより、第1金属プレートに熱的に接続される被熱交換体由来の熱は、熱交換媒体と熱伝導しやすい。
【0044】
フィンとしては、特に限定されず、スカイブフィン、プレートフィン(すなわち、切削フィン)、コルゲートフィン、リブフィン、スリットフィン、ディンプルフィン、デルタフィン、ピンフィン、ルーバーフィン、タービュレータ等が挙げられる。スカイブフィンは、スカイブ切削加工が施されている。
【0045】
少なくとも1つのフィンは、複数のスカイブフィンを含むことが好ましい。これにより、フィンの肉厚を薄くできるとともに、単位面積当たりのフィンの数を増やすことができる。そのため、フィンの伝熱面積はより増大する。つまり、フィンの放熱量及び放熱効率は、より向上する。その結果、温度制御装置は、被熱交換媒体の温度をより効率良く調整することができる。
【0046】
フィンの数及びフィンのサイズ等は、温度制御装置のサイズ、内部流路の形状及びサイズ、被熱交換体の種類等に応じて適宜選択される。フィンの数は、放熱量及び放熱効率を向上させる観点から、複数であることが好ましい。
複数のフィンの配置位置は、フィンの形状及び熱交換媒体の流れ方向等に応じて適宜選択される。
【0047】
フィンを構成する金属は、特に制限されず、第1金属プレートを構成する金属として例示した金属と同様である。なかでも、熱伝導性の観点からは、フィンを構成する金属は、好ましくはアルミニウム、アルミニウム合金、銅、又は銅合金であり、より好ましくは銅又は銅合金である。軽量化及び強度確保の観点からは、フィンを構成する金属は、アルミニウム又はアルミニウム合金であることが好ましい。
【0048】
フィンは、基台との金属の一体成形品(以下、「フィン付構造体」という。)であってもよい。基台を構成する材質は、フィンを構成する材質と同一である。基台の形状は、特に限定されず、例えば、平板状等挙げられる。基台のサイズは、温度制御装置のサイズ、内部流路の形状及びサイズ等に応じて適宜選択される。フィン付構造体に含まれるフィンの数は、放熱量及び放熱効率を向上させる観点から、複数であることが好ましい。フィン付構造体の数は、温度制御装置のサイズ、内部流路の形状及びサイズ等に応じて適宜選択される。フィン付構造体は、切削加工品(例えば、スカイブ切削加工等)、ダイキャスト成形品、プレス成形品、又は押出材を含む。
【0049】
フィンは、内部流路内に配置されている。フィンの内部流路内の配置位置は、特に限定されず、内部流路の形状及びサイズ等に応じて適宜選択される。
【0050】
フィン(フィン付構造体を含む。)は、第1金属プレートと別体であってもよい。
フィンは、第1金属プレートと熱的に接続されている。詳しくは、フィンと第1金属プレートとは、直接的に接触していてもよいし、熱伝導層を介して間接的に接触していてもよい。熱伝導層は、第1金属プレートの熱伝導層として例示したものと同様である。
フィンと第1金属プレートとが別体である場合、フィンを内部流路内に固定する方法は、特に限定されず、第1固定方法、第2固定方法、第3固定方法等が挙げられる。第1固定方法では、フィン付構造体は、内部流路を構成する壁部(例えば、第1金属プレート、第2金属プレート、軟質部品、仕切部材等)に挟まれた状態で保持される。第2固定方法では、フィン(フィン付構造体を含む。)は、第1金属プレートに溶接される。溶接は、金属溶接、又はろう接を含む。第3固定方法では、フィン付構造体は、締結用部品を用いる方法(以下、「機械締結」という。)によって、第1金属プレートに固定される。締結用部品は、ボルト、ナット、ネジ、リベット、又はピンを含む。これら固定方法は、1種単独又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0051】
フィン(フィン付構造体を含む。)は、第1金属プレートとの一体成形品であってもよい。つまり、フィンは、第1金属プレートと熱的に接続されている。フィンと第1金属プレートとの一体成形品は、切削加工品(例えば、スカイブ切削加工等)、ダイキャスト成形品、プレス成形品、又は押出材を含む。
【0052】
(1.5)軟質部品
軟質部品は、ショートパス隙間を充填して、熱交換媒体がショートパス隙間内を流通することを妨げる。
【0053】
軟質部品の形状及びサイズは、ショートパス隙間を充填できれば特に限定されない。軟質部品の形状は、フィンの配置位置等に応じて適宜選択され、例えば、シート状、不定形状等が挙げられる。
【0054】
軟質部品の数等は、温度制御装置のサイズ、内部流路の形状、被熱交換体の種類等に応じて適宜選択される。フィンがフィン付構造体に含まれる場合、軟質部品は、1つのフィン付構造体に対応して少なくとも1つ配置されてもよいし、複数のフィン付構造体に対応して1つ配置されてもよい。
【0055】
軟質部品は、フィンと第2金属プレートとの間に載置されていてもよい。軟質部品がフィンと第2プレートとの間に載置されている場合、軟質部品は、第2プレート及びフィンとの間に挟まれた状態で保持されていてもよい。
軟質部品は、フィン又は第2金属プレートの少なくとも一方に固定されていてもよい。軟質部品をフィン又は第2金属プレートの少なくとも一方に固定する方法は、公知の接着剤を用いる方法等が挙げられる。
【0056】
軟質部品は、第3樹脂組成物の成形体であってもよい。軟質部品は、押出成形品、注型成形品、射出成形品、又はコンプレッション成形品であってもよい。
【0057】
(1.5.1)エラストマー
軟質部品(すなわち、第3樹脂組成物)は、エラストマーを含むことが好ましい。これにより、軟質部品は、フィンの先端の形状に追従してより変形しやすくなる。
【0058】
本開示において、「エラストマー」とは、温度制御装置の使用温度(例えば、5℃~60℃)でゴム弾性を示す高分子物質である。例えば、エラストマーの25℃での引張弾性率は、6.0×10Pa未満である。引張弾性率は、JIS K7161-2:2014に準拠した測定値である。
【0059】
エラストマーは、熱可塑性エラストマー、及び熱硬化性エラストマーの少なくとも一方を含む。
【0060】
(1.5.1.1)熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマーは、ゴムのように加硫をする必要のない弾性体材料である。熱可塑性エラストマーは、一般にハード成分(硬く剛直な成分)とソフト成分(軟らかくフレキシブルな成分)とを有する。
熱可塑性エラストマーとしては、ウレタン系熱可塑性エラストマー(以下、「TPU」という場合がある。)、アミド系熱可塑性エラストマー(以下、「TPAE」という場合がある。)オレフィン系熱可塑性エラストマー(以下、「TPO」という場合がある。)、スチレン系熱可塑性エラストマー(以下、「TPS」という場合がある。)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(以下、「TPEE」という場合がある。)等が挙げられる。
なかでも、気密性及び耐熱性の観点から、熱可塑性エラストマーは、TPU、TPAE、TPEEのいずれか一方を含むことが好ましい。
コスト、リペア性(離形容易性)の観点から、熱可塑性エラストマーは、TPO、及びTPSのいずれか一方を含むことが好ましい。
【0061】
第2樹脂組成物がTPU及びTPAEを含む場合、TPU及びTPAEの合計含有量は、第2樹脂組成物の総量に対して、好ましくは60質量%以上100質量%以下、より好ましくは65質量%以上95質量%以下、さらに好ましくは70質量%以上95質量%以下である。
【0062】
(1.5.1.2)ウレタン系熱可塑性エラストマー
TPUは、例えば、ジイソシアナートと短鎖グリコール(鎖延長剤)からなるハードセグメントと、数平均分子量が1000~4000程度のポリマーグリコールを主体とするソフトセグメントとから構成されるマルチブロックポリマーである。
ジイソシアナートとしては、例えば、芳香族イソシアナート、脂肪族イソシアナート等が挙げられる。芳香族イソシアナートは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)を含む。脂肪族イソシアナートは、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)を含む。
短鎖グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ネオペンタルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ビスヒドロキシエチルハイドロキノン、及びそれらの混合物等が挙げられる。
ポリマーグリコールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。ポリエーテルポリオールは、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)を含む。ポリエステルポリオールは、アジピン酸と脂肪族または芳香族グリコールとの縮合系である。ポリカプロラクトンポリオールは、例えば、ε-カプロラクトンを開環重合して得られる。
【0063】
(1.5.1.3)アミド系熱可塑性エラストマー
TPAEは、結晶性で融点の高いハードセグメントと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントとを有する共重合体である。ハードセグメントを構成するポリマーの主鎖は、アミド結合(-CONH-)を有する。
TPAEとしては、例えば、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマーや、特開2004-346273号公報に記載のポリアミド系エラストマー等を挙げることができる。
【0064】
(1.5.2)熱硬化性エラストマー
熱硬化性エラストマーは、1液硬化型エラストマー、2液硬化型エラストマー、又はUV(Ultraviolet)硬化型エラストマーを含む。
1液硬化型エラストマーは、硬化剤によらず、単独で加熱により主剤が硬化するエラストマーを示す。2液硬化型エラストマーは、例えば、主剤と呼ばれる成分と、硬化剤と呼ばれる成分とを、任意の混合比で混合することで、硬化反応が促進するエラストマーを示す。2液硬化型エラストマーを用いる場合、室温で硬化反応を促進させてもよいし、加熱により効果反応を促進させてもよい。UV硬化型エラストマーは、UVが照射されることで主剤の重合反応が進行するエラストマーを示す。UV硬化型エラストマーは、公知の光重合開始剤を含有してもよい。
1液硬化型エラストマーとしては、公知の1液硬化型エラストマーを用いることができる。2液硬化型エラストマーとしては、公知の1液硬化型エラストマーを用いることができる。UV硬化型エラストマーとしては、公知のUV硬化型エラストマーを用いることができる。
具体的に、熱硬化性エラストマーとしては、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。
【0065】
(1.5.3)配合剤
第3樹脂組成物は、種々の配合剤を含んでもよい。配合剤は、被熱交換体の種類等に応じて適宜選択される。配合剤としては、充填材(例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、無機粉末等)、熱安定剤、酸化防止剤、顔料、耐候剤、難燃剤、可塑剤、分散剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0066】
(1.6)樹脂固定部
樹脂固定部は、第2プレートを第1金属プレートに固定している。樹脂固定部は、樹脂製の固定部である。
ことができる。
【0067】
樹脂固定部の形状及びサイズは、特に限定されず、第1金属プレート、第2プレート及び流路壁部等に応じて適宜選択される。
【0068】
樹脂固定部は、インサート成形によって形成されていてもよいし、溶着によって形成されていてもよい。
インサート成形では、第1金属プレート、第2プレート及び流路壁部の重ね合わせ体を金型内にインサートして、樹脂固定部の溶融物を重ね合わせ体の外面の所定の部位に射出して、樹脂固定部を形成する。
溶着は、熱溶着、振動溶着、レーザー溶着、超音波溶着、又は熱板溶着を含む。
樹脂固定部は、インサート成形によって形成されていることが好ましい。これにより、樹脂固定部は、第1金属プレート及び第2プレートの各々と接触する面の凹凸部の隙間に、溶着によって形成される場合よりも確実に入り込んでいる。そのため、樹脂固定部は、第1金属プレート及び第2プレートとより強く固着する。その結果、温度制御装置の気密性は、より長期に亘って保持され得る。
【0069】
樹脂固定部は、第4樹脂組成物の成形体である。
第4樹脂組成物の樹脂成分は、第1樹脂組成物の樹脂成分として例示した樹脂と同様であってもよい。第4樹脂組成物の樹脂成分は、第2樹脂組成物の樹脂成分と相溶性を有する樹脂を含むことが好ましい。これにより、樹脂固定部と樹脂流路壁部とは融着する。
【0070】
「相溶性を有する」とは、樹脂固定部及び樹脂流路壁部の各々を構成する樹脂成分が溶融する雰囲気下において、樹脂固定部及び樹脂流路壁部の各々を構成する樹脂成分同士が分離せずに混ざり合うことを示す。
「樹脂固定部と樹脂流路壁部とは融着している」とは、室温(例えば、23℃)において、接着剤、ねじ等を介さずに、樹脂流路壁部と樹脂固定部とが固着していることを示す。
【0071】
第4樹脂組成物は、必要に応じて、充填材及び配合剤の少なくとも一方を含有してもよい。充填材及び配合剤としては、樹脂組成物に含まれ得る充填材及び配合剤として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0072】
(1.7)内部流路
温度制御装置は、熱交換媒体を循環させるための内部流路を有する。熱交換媒体は、被熱交換体と熱交換する。内部流路は、温度制御装置の内部に位置する。
内部流路の形状は、特に限定されず、被熱交換体等に応じて適宜選択される。
熱交換媒体は、冷却用媒体又は加熱用媒体であり、被熱交換体の種類等に応じて適宜選択される。
冷却用媒体は、被熱交換体から熱を奪うための媒体を示す。冷却用媒体としては、冷却用液体、冷却用気体等が挙げられる。冷却用液体としては、一般に冷却用に用いられる液体であれば特に限定されず、一例として水、油、グリコール系水溶液、エアコン用冷媒、非導電性液体、相変化液体等が挙げられる。冷却用気体としては、空気、窒素ガス等が挙げられる。冷却用媒体の温度は、被熱交換媒体の種類等に応じて、適宜調整される。
加熱用媒体は、被熱交換体に熱を与えるための媒体を示す。加熱用媒体としては、加熱用液体、加熱用気体等が挙げられる。加熱用液体としては、一般に加熱用液体として用いられる液体であれば特に限定されず、一例として水、油、グリコール系水溶液、エアコン用冷媒、非導電性液体、相変化液体等が挙げられる。加熱用気体は、空気、水蒸気等が挙げられる。加熱用媒体の温度は、被熱交換体の種類等に応じて、適宜調整される。
【0073】
温度制御装置が内部流路を有することは、温度制御装置は、供給口及び回収口を有することを示す。供給口と回収口とは、内部流路を介して連通している。
供給口は、外部の供給部と接続される部位である。供給口は、供給部から供給された熱交換媒体を内部流路内に案内する。供給部は、熱交換媒体を温度制御装置に供給する。
回収口は、回収部と接続される部位である。回収口は、内部流路内の熱交換媒体を外部の回収部に案内する。回収部は、熱交換媒体を温度制御装置から回収する。
供給口、及び回収口(以下、「供給口等」という。)の各々は、接続部品を有してもよい。接続部品としては、メイルコネクター(ニップル)等が挙げられる。供給口等の各々が接続部品を有しない場合、温度制御装置には供給部及び回収部の各々を接続するための加工が施されていてもよい。加工方法としては、ネジ切り加工等が挙げられる。
温度制御装置が2つの主面を有する直方体状物である場合、供給口及び回収口の各々は、2つの主面、及び4つの側面のいずれかに配置されていればよい。例えば、供給口及び回収口の各々は、同一の主面に配置されていてもよいし、異なる主面に配置されていてもよいし、温度制御装置の側面のみに配置されていてもよい。
供給口等は、流路壁部によって構成されていてもよいし、第1金属プレート及び第2プレートの少なくとも一方によって構成されていてもよい。
【0074】
(1.8)仕切部材
温度制御装置は仕切部材を更に有してもよい。仕切部材は、内部流路を仕切って、内部流路内を流通する熱交換媒体の流れ方向を制御する。これにより、内部流路はより自由に設計され得る。
【0075】
仕切部材は、内部流路内において、第1金属プレート及び第2プレートの間に配置される。仕切部材は、例えば、第1金属プレート及び第2プレートの少なくとも一方に固定されている。
仕切部材が第1金属プレート及び第2プレートの一方に固定されている場合、仕切部材は、その他方と接触していてもよいし、接触していなくてもよい。仕切部材が第1金属プレート及び第2プレートの他方と接触し、かつ仕切部材の材質が樹脂である場合、仕切部材は、その他方に接合していてもよい
仕切部材の材質は、樹脂であってもよいし、金属であってもよい。仕切部材を構成する樹脂としては、樹脂流路壁部を構成する樹脂として例示した樹脂と同様の樹脂が挙げられる。仕切部材を構成する金属としては、第1金属プレートを構成する金属として例示した金属と同様の金属が挙げられる。
仕切部材を第1金属プレート及び第2プレートの少なくとも一方に固定する固定方法は、仕切部材の材質に応じて適宜選択され、溶着法、公知の接着剤を用いる方法、機械締結、溶接等が挙げられる。これら固定方法は、1種単独又は2種以上を組み合わせてもよい。仕切部材の材質が金属である場合、仕切部材と第1金属プレート及び第2金属プレートの少なくとも一方とは、一体成形品であってもよい。仕切部材の材質が樹脂である場合、仕切部材と、流路壁部とは一体成形品であってもよい。
【0076】
仕切部材が金属製である場合、仕切部材と第1金属プレートとは、金属の一体成形品であってもよい。仕切部材及び第2プレートが金属製である場合、仕切部材と第1金属プレートとは、金属の一体成形品であってもよい。
仕切部材及び第2プレートが樹脂製である場合、仕切部材と第2樹脂プレートとは、樹脂の一体成形品であってもよい。
【0077】
(1.9)変形例
本開示の温度制御装置は、第2プレートが金属製である場合、別のフィン及び別の軟質部品を更に備えていてもよい。別のフィンは、第2金属プレートと熱的に接続されている。別のフィンは、内部流路内に配置されている。別の軟質部品は、別のフィンと第1金属プレートとの間に挟み込まれて、別のフィンの先端と第1金属プレートとの隙間を充填している。
別のフィンは、上述したフィンとして例示したものと同様である。別の軟質部品は、上述した軟質部品として例示したものと同様である。別のフィンを内部流路内に配置する方法は、フィンを内部流路内に配置する方法として例示した方法と同様である。別の軟質部品を、別のフィンと第1金属プレートとの間に配置する方法は、軟質部品を、フィンと第2金属プレートとの間に配置する方法として例示した方法と同様である。
【0078】
(2)実施形態
以下、図1図9を参照して、第1実施形態~第5実施形態に係る温度制御装置について説明する。
【0079】
(2.1)第1実施形態
図1図4を参照して、第1実施形態に係る温度制御装置について説明する。
【0080】
第1実施形態に係る温度制御装置1Aは、図1に示すように、第1金属プレート11と、第2金属プレート12Aと、樹脂流路壁部13A(図2参照)と、仕切部材14A(図2参照)と、2つのフィン付き構造体15(図2参照)と、2つの軟質部品16(図2参照)と、樹脂固定部17と、を備える。樹脂流路壁部13Aと仕切部材14Aとは、樹脂の一体成形品130(図2及び図4参照)である。
樹脂流路壁部13A、仕切部材14A、2つのフィン付き構造体15、及び2つの軟質部品16は、第1金属プレート11、及び第2金属プレート12Aの間に配置されている。樹脂固定部17は、第1金属プレート11及び第2金属プレート12Aの周縁部に接触して、第1金属プレート11に第2金属プレート12Aを固定している。2つのフィン付き構造体15、及び2つの軟質部品16は、樹脂流路壁部13A、仕切部材14A、第1金属プレート11、及び第2金属プレート12Aに挟み込まれた状態で保持されている。
第2金属プレート12Aは、一対の接続部121(供給口及び回収口に相当)を有する。
【0081】
温度制御装置1Aの一対の接続部121が配置される側を温度制御装置1Aの後側とし、その反対側を温度制御装置1Aの前側と規定する。温度制御装置1Aを前側から観たときの右側を温度制御装置1Aの右側とし、その反対側を温度制御装置1Aの左側と規定する。温度制御装置1Aの前後方向及び左右方向と直交する方向において、第2金属プレート12Aが配置される側を温度制御装置1Aの上側とし、その反対側を温度制御装置1Aの下側と規定する。なお、これらの向きは、本開示の温度制御装置の使用時の向きを限定するものではない。
なお、図1図4において、前側はX軸正方向に、後側はX軸負方向に、右側はY軸正方向に、左側はY軸負方向に、上側はZ軸正方向に、下側はZ軸負方向に、それぞれ対応する。
【0082】
温度制御装置1Aは、直方体状物である。図1に示すように、温度制御装置1Aの上側主面TS1側には、第2金属プレート12Aの一対の接続部121が配置されている。温度制御装置1Aの下側主面BS1は、平面状である。
温度制御装置1Aの寸法は、特に制限されず、温度制御装置1Aの用途等に応じて選択され得る。例えば、温度制御装置1Aの下側主面BS1の面積は、50cm2以上5,000cm2以下の範囲内であってもよい。例えば、温度制御装置1Aの上下方向(Z軸方向)の厚みは、1mm以上50mm以下の範囲内であってもよい。
【0083】
(2.1.1)第1金属プレート
第1金属プレート11は、平板状物である。上方(Z軸正方向)から下方(Z軸負方向)に観た第1金属プレート11の形状は、前後方向(X軸方向)を長辺とする略長方形状である。
第1金属プレート11の材質は、第1金属プレートの材質として例示した金属と同様である。
【0084】
(2.1.2)第2金属プレート
第2金属プレート12Aは、平板状物である。上方(Z軸正方向)から下方(Z軸下方向)に観た第2金属プレート12Aの形状は、前後方向(X軸方向)を長辺とする略長方形状である。
第2金属プレート12Aは、図1に示すように、一対の接続部121を有する。一対の接続部121は、第2金属プレート12Aの上側主面TS12から上方(Z軸正方向)に突出している。第2金属プレート12Aの上側主面TS12は、温度制御装置1Aの上側主面TS1を構成している。
第2金属プレート12Aの材質は、第2金属プレートの材質として例示した金属と同様である。第2金属プレート12Aの材質は、第1金属プレート11の材質と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0085】
(2.1.3)樹脂流路壁部
樹脂流路壁部13Aは、図4に示すように、樹脂製の筒状物である。樹脂流路壁部13Aは、第1金属プレート11の周縁P11に沿って、周縁P11の全周に亘って形成されている。樹脂流路壁部13Aは、内部流路R1を形成する壁部の一部を構成する。
樹脂流路壁部13Aの材質は、第1熱可塑性樹脂組成物として例示したものと同様である。
【0086】
(2.1.4)仕切部材
仕切部材14Aは、図4に示すように、樹脂の長板状物である。樹脂流路壁部13Aは、前側壁部13A1及び後側壁部13A2を有する。仕切部材14Aは、後側壁部13A2の左右方向(Y軸方向)の中央部から前側壁部13A1に向けて延在している。仕切部材14Aの前側(X軸正方向)の端部141と、前側壁部13A1とは離間している。
第1実施形態では、仕切部材14Aの材質は、樹脂流路壁部13Aの材質と同一である。
仕切部材14Aと樹脂流路壁部13Aとは、樹脂の一体成形品130である。樹脂の一体成形品130は、射出成形品、又はプレス成形品を含む。
【0087】
(2.1.5)フィン付き構造体
フィン付き構造体15は、図3に示すように、複数のスカイブフィン151と、基部(図示せず)とを有する。複数のスカイブフィン151と基部とは、金属の一体成形品である。上方(Z軸正方向)から下方(Z軸負方向)に観た基部の形状は、前後方向(X軸方向)を長辺とする略長方形状である。
【0088】
樹脂流路壁部13Aは、図4に示すように、右側壁部13A3及び左側壁部13A4を有する。2つのフィン付き構造体15は、図4に示すように、第1金属プレート11の上側主面TS11上に載置されている。詳しくは、一方のフィン付き構造体15は、樹脂流路壁部13Aの右側壁部13A3及び仕切部材14Aの間に載置されている。他方のフィン付き構造体15は、樹脂流路壁部13Aの左側壁部13A4及び仕切部材14Aの間に載置されている。
【0089】
複数のスカイブフィン151の各々は、基部の上側(Z方向正方向)の主面から、上側(Z軸方向正方向)に向けて突出している。スカイブフィン151の根元は、上下方向(Z軸方向)に対して曲がっている。スカイブフィン151の先端は、尖っている。複数のスカイブフィン151は、スカイブ切削加工により形成されている。スカイブフィン151の高さL1(すなわち、上下方向(Z軸方向)の長さL1)(図3参照)は、温度制御装置1Aのサイズ等に応じて選択される。高さL1は、好ましくは1mm以上20mm以下、より好ましく2mm以上10mm以下である。スカイブフィン151の肉厚L2(すなわち、左右方向(Y軸方向)の長さL2)(図3参照)は、温度制御装置1Aのサイズ等に応じて選択される。肉厚L2は、好ましくは0.05mm以上0.8mm以下、より好ましく0.1mm以上0.5mm以下である。
複数のスカイブフィン151の各々は、左右方向(Y軸方向)に沿って、所定の間隔を空けて、配置されている。隣接するスカイブフィン151同士の左右方向(Y軸方向)の間隔L3(図3参照)は、温度制御装置1Aのサイズ等に応じて選択される。間隔L3は、好ましくは0.05mm以上0.8mm以下、より好ましくは0.1mm以上0.5mm以下である。
フィン付き構造体15の材質は、フィンの材質として例示した金属と同様である。
【0090】
(2.1.6)軟質部品
軟質部品16は、シート状物である。上方(Z軸正方向)から下方(Z軸負方向)に観た軟質部品16第の形状は、前後方向(X軸方向)を長辺とする略長方形状であり、フィン付き構造体15の基部と同様である。
【0091】
2つの軟質部品16は、図4に示すように、2つのフィン付き構造体15上に載置されている。詳しくは、一方の軟質部品16は、一方のフィン付き構造体15を覆っている。他方の軟質部品16は、他方のフィン付き構造体15を覆っている。軟質部品16の内部には、スカイブフィン151の先端の一部が入り込んでいる。
【0092】
軟質部品16の厚みL4(上下方向(Z軸方向)の長さL4)(図3参照)は、複数のスカイブフィン151の各々の先端と第2金属プレート12Aとの間の隙間を充填する厚みであればよい。厚みL4は、好ましくは0.5mm以上10mm以下、より好ましくは1mm以上5mm以下である。
軟質部品16の材質は、エラストマーの成形体である。軟質部品16に含まれるエラストマーは、第2樹脂組成物に含まれ得るエラストマーとして例示した材質と同様である。
【0093】
(2.1.7)樹脂固定部
樹脂固定部17は、第1金属プレート11に第2金属プレート12Aを固定している。つまり、樹脂固定部17は、第1金属プレート11、第2金属プレート12A、樹脂流路壁部13A、及び仕切部材14Aを一体にしている。
樹脂固定部17の材質は、第3熱可塑性樹脂組成物として例示したものと同様である。第3樹脂組成物の樹脂成分は、第1樹脂組成物の樹脂成分と相溶性を有する。つまり、樹脂固定部17と樹脂流路壁部13Aとは、融着している。そのため、樹脂固定部17は、樹脂流路壁部13Aにより強く固着している。その結果、温度制御装置1Aの気密性は、より長期に亘って保持され得る。
【0094】
第1金属プレート11及び第2金属プレート12Aの間には、図2に示すように、空隙R10が形成されている。詳しくは、空隙R10は、第1金属プレート11及び第2金属プレート12Aの各々の周縁部と、樹脂流路壁部13Aの外周面とによって形成されている。空隙R10は、第1金属プレート11及び第2金属プレート12Aの周縁部の全周に亘って形成されている。
樹脂固定部17は、空隙R10に充填されている。つまり、樹脂固定部17は、第1金属プレート11の上側主面TS11の周縁部、第2金属プレート12Aの下側主面BS12の周縁部、及び樹脂流路壁部13Aの外周面と物理的に接触している。
【0095】
第1金属プレート11の樹脂固定部17と接触している面、及び第2金属プレート12Aの樹脂固定部17と接触している面は、凹凸構造を有する。
樹脂固定部17は、インサート成形によって形成されている。樹脂固定部17は、樹脂流路壁部13Aに含まれる樹脂と相溶性を有する樹脂を含む。
【0096】
(2.1.8)内部流路
温度制御装置1Aは、その内部に、内部流路R1を有する。内部流路R1は、第1金属プレート11、第2金属プレート12A、樹脂流路壁部13A及び仕切部材14Aによって形成されている。内部流路R1には、冷却用媒体(熱交換媒体の一例)が流通する。
【0097】
(2.1.9)冷却用媒体の流れ
温度制御装置1Aは、例えば、発熱体(被熱交換体の一例)が下側主面BS1に熱的に接触するように設置されて、使用される。この際、一方の接続部121には、外部の供給部が接続される。他方の接続部121には、外部の回収部が接続される。発熱体の熱は、第1金属プレート11を介して、内部流路R1に充填された冷却用媒体に伝導する。
【0098】
冷却用媒体は、供給部によって一方の接続部121から内部流路R1に供給される。冷却用媒体は、ショートパス隙間を流通せずに、他方の接続部121に向けて移動する。この際、冷却用媒体は、第1金属プレート11及び2つのフィン付き構造体15と熱交換をする。
次いで、冷却用媒体は、他方の接続部121を介して、外部の回収部に回収される。
このようにして、冷却用媒体は、温度制御装置1Aの内部で発熱体から熱を吸収し、温度制御装置1Aの外部に排出される。これにより、温度制御装置1Aは、発熱体の放熱を促進させる。つまり、温度制御装置1Aは、発熱体の温度を制御する。
【0099】
(2.1.10)作用効果
図1図4を参照して説明したように、温度制御装置1Aは、第1金属プレート11と、第2金属プレート12Aと、樹脂流路壁部13Aと、仕切部材14Aと、2つのフィン付き構造体15と、2つの軟質部品16と、樹脂固定部17と、を備える。フィン付き構造体15は、複数のスカイブフィン151を有する。2つの軟質部品16は、内部流路R1内において、複数のスカイブフィン151と第2金属プレート12Aとの間に挟まれて、ショートパス隙間を充填している。
これにより、温度制御装置1Aの内部流路R1に冷却用媒体が供給されると、冷却用熱媒体はショートパス隙間内を流通しにくい。換言すると、冷却用媒体は、複数のスカイブフィン151と物理的に接触しやすくなる。冷却用媒体が第1金属プレート11に熱的に接続されると、発熱体と冷却用媒体とは、第1金属プレート12A及び複数のスカイブフィン151を介して、従来よりも熱伝導しやすくなる。
更に、樹脂固定部17は、第2金属プレート12Aを第1金属プレート11にインサート成形によって固定している。インサート成形の際、温度制御装置1Aを構成する構成部品が曝される温度は、ろう付けの際の温度(例えば、600℃以上)よりも低い(例えば、160℃程度)。そのため、軟質部品16は、温度制御装置1Aの製造過程において、溶融しにくく、スカイブフィン151の先端の形状に追従して変形した形状を保持することができる。
以上により、温度制御装置1Aは、冷却用媒体の温度を従来よりも効率良く調整することができる。
【0100】
図1図4を参照して説明したように、軟質部品16は、エラストマーを含む。これにより、軟質部品16は、スカイブフィン151の先端の形状に追従してより変形しやすい。
【0101】
図1図4を参照して説明したように、温度制御装置1Aは、複数のスカイブフィン151を備える。これにより、冷却用媒体に対する伝熱面積は、増大する。その結果、温度制御装置1Aは、発熱体の温度をより効率良く調整することができる。
【0102】
図1図4を参照して説明したように、第1金属プレート11及び第2金属プレート12Aの各々は、樹脂固定部17と接触する部位に、凹凸構造を有する。これにより、樹脂固定部17の一部は、第1金属プレート11及び第2金属プレート12Aの各々に凹凸構造の凹部内に入り込む。その結果、第1金属プレート11及び第2金属プレート12Aの各々は、樹脂固定部17とより強固に接合する。それ故、温度制御装置1Aの気密性は、より長期に亘って保持され得る。
【0103】
図1図4を参照して説明したように、樹脂固定部17は、インサート成形によって形成されている。これにより、樹脂固定部17は、第1金属プレート11及び第2金属プレート12Aの各々と接触する面の凹凸部の隙間に、溶着によって形成される場合よりも確実に入り込んでいる。そのため、樹脂固定部17は、第1金属プレート11及び第2金属プレート12Aとより強く固着する。その結果、温度制御装置1Aの気密性は、より長期に亘って保持され得る。
【0104】
図1図4を参照して説明したように、第2金属プレート12Aは、金属製であり、樹脂流路壁部13Aは、樹脂製である。これにより、冷却媒体の循環に起因する内圧に対する温度制御装置1Aの耐圧性能は、第2金属プレート12Aの代わりに樹脂プレートを用いる場合よりも優れる。すなわち、温度制御装置1Aは、被熱交換媒体の温度を効率良く調整することができるとともに、耐圧性能に優れる。
【0105】
(2.2)第2実施形態
図1、及び図5を参照して、第2実施形態に係る温度制御装置について説明する。
なお、図5は、図1に示す切断線C2-C2と同様の切断線で切断した第2実施形態に係る温度制御装置1Bの断面である。
【0106】
第2実施形態に係る温度制御装置1Bは、主として、流路壁部が金属製であることの他は、第1実施形態に係る温度制御装置1Aと同じである。
温度制御装置1Bは、図5に示すように、第1金属プレート11と、第2金属プレート12Aと、金属流路壁部13Bと、仕切部材14Bと、2つのフィン付き構造体15と、2つの軟質部品16と、樹脂固定部17と、電気絶縁層18とを備える。第1金属プレート11と、金属流路壁部13Bと、仕切部材14Bとは、金属の一体成形品101である。金属の一体成形品101としては、例えば、ロール成形品、ダイキャスト成形品、切削加工品、圧延材、プレス成形品、又は押出材である。
【0107】
金属流路壁部13Bは、金属製であることの他は、樹脂流路壁部13Aと同様である。
金属流路壁部13Bを構成する金属は、第1金属プレート11を構成する金属と同一である。第2実施形態では、金属流路壁部13Bを構成する金属と、第2金属プレート12Aを構成する金属とは、異種である。
【0108】
仕切部材14Bは、金属製であることの他は、仕切部材14Aと同様である。
仕切部材14Bを構成する金属は、第1金属プレート11を構成する金属と同一である。第2実施形態では、仕切部材14Bを構成する金属と、第2金属プレート12Aを構成する金属とは、異種である。
【0109】
電気絶縁層18は、金属流路壁部13B及び仕切部材14Bの各々と、第2金属プレート12Aとの間に介在している。これにより、金属流路壁部13B及び仕切部材14Bの各々と第2金属プレート12Aとの電食の発生を抑制することができる。その結果、金属流路壁部13B、仕切部材14B及び第2金属プレート12Aは腐食しにくい。電気絶縁層18としては、電気絶縁層として例示したものと同様である。
【0110】
(1.3)第3実施形態
図1及び図6を参照して、第3実施形態に係る温度制御装置ついて説明する。
なお、図6は、図1に示す切断線C2-C2と同様の切断線で切断した第3実施形態に係る温度制御装置1Cの断面である。
【0111】
第3実施形態に係る温度制御装置1Cは、主として、第2プレートが樹脂製であることの他は、第1実施形態に係る温度制御装置1Aと同じである。
温度制御装置1Cは、図6に示すように、第1金属プレート11と、第2樹脂プレート12Bと、樹脂流路壁部13Aと、仕切部材14Aと、2つのフィン付き構造体15と、2つの軟質部品16と、樹脂固定部17とを備える。第2樹脂プレート12Bと、樹脂流路壁部13Aと、仕切部材14Aとは、樹脂の一体成形品102である。樹脂の一体成形品102としては、例えば、射出成形品、又はプレス成形品である。
【0112】
第2樹脂プレート12Bは、樹脂製であることの他は、第2金属プレート12Aと同様である。第2樹脂プレート12Bを構成する樹脂は、樹脂流路壁部13Aを構成する樹脂と同一である。
【0113】
(1.4)第4実施形態
図1、及び図7を参照して、第4実施形態に係る温度制御装置について説明する。
なお、図7は、図1に示す切断線C2-C2と同様の切断線で切断した第4実施形態に係る温度制御装置1Dの断面である。
【0114】
第4実施形態に係る温度制御装置1Dは、主として、流路壁部が金属製であることと、第2プレートが樹脂製であることとの他は、第1実施形態に係る温度制御装置1Aと同じである。
温度制御装置1Dは、図7に示すように、第1金属プレート11と、第2樹脂プレート12Bと、金属流路壁部13Bと、仕切部材14Bと、2つのフィン付き構造体15と、2つの軟質部品16と、樹脂固定部17とを備える。第1金属プレート11と、金属流路壁部13Bと、仕切部材14Bとは、金属の一体成形品101である。
【0115】
(1.5)第5実施形態
図8及び図9を参照して、第5実施形態に係る温度制御装置1Eについて説明する。
【0116】
第5実施形態に係る温度制御装置1Eは、主として、第2金属プレート及び樹脂流路壁部の形状が異なること、及び仕切部材を備えないことの他は、第1実施形態に係る温度制御装置1Aと同様である。
温度制御装置1Eは、図8に示すように、第1金属プレート11と、第2金属プレート12Eと、樹脂流路壁部13E(図9参照)と、1つのフィン付き構造体15(図9参照)と、1つの軟質部品16(図9参照)と、樹脂固定部17と、を備える。
樹脂流路壁部13E、フィン付き構造体15、及び軟質部品16は、第1金属プレート11、及び第2金属プレート12Eの間に配置されている。樹脂固定部17は、第1金属プレート11及び第2金属プレート12Eの周縁部に接触して、第1金属プレート11に第2金属プレート12Eを固定している。フィン付き構造体15、及び軟質部品16は、樹脂流路壁部13E及び第1金属プレート11に挟み込まれた状態で保持されている。
【0117】
樹脂流路壁部13Eは、一対の接続部131(供給口及び回収口に相当)を有する。一対の接続部131は、外部の供給部品又は回収部に接続され、外部と温度制御装置1Eとの間で冷却用媒体を供給又は排出する。
【0118】
温度制御装置1Eの一方の接続部131が配置される側を温度制御装置1Eの後側とし、その反対側を温度制御装置1Eの前側と規定する。温度制御装置1Eを前側から観たときの右側を温度制御装置1Eの右側とし、その反対側を温度制御装置1Eの左側と規定する。温度制御装置1Eの前後方向及び左右方向と直交する方向において、第1金属プレート11が配置される側を温度制御装置1Eの上側とし、その反対側を温度制御装置1Eの下側と規定する。なお、これらの向きは、本開示の温度制御装置の使用時の向きを限定するものではない。
なお、図8及び図9において、前側はX軸正方向に、後側はX軸負方向に、右側はY軸正方向に、左側はY軸負方向に、上側はZ軸正方向に、下側はZ軸負方向に、それぞれ対応する。
【0119】
(1.5.1)第2金属プレート
第2金属プレート12Eは、一対の接続部121の代わりに一対の貫通孔を有することの他は、第2金属プレート12Aと同様である。
第2金属プレート12Eは、図8に示すように、一対の貫通孔HAを有する。一方の貫通孔HAは、第2金属プレート12Eの左右方向(Y軸方向)の中央部で、かつ前後方向(X軸方向)の後部に位置する。他方の貫通孔HAは、第2金属プレート12Eの左右方向(Y軸方向)の中央部で、かつ前後方向(X軸方向)の前部に位置する。
貫通孔HAは、上下方向(Z軸方向)に沿って、第2金属プレート12Eを貫通している。貫通孔HAは、温度制御装置1Eにおいて、内部流路R1(図9参照)と連通する。
【0120】
(1.5.2)樹脂流路壁部
樹脂流路壁部13Eは、形状が異なる他は、樹脂流路壁部13Aと同様である。
樹脂流路壁部13Eは、板状物である。樹脂流路壁部13Eには、外部の供給部品及び外部の排出部が接続される。樹脂流路壁部13Eは、第2金属プレート12Eとの間に内部流路R1(図9参照)を形成する。
詳しくは、樹脂流路壁部13Eは、図9に示すように、一対の接続部131と、板部132と、内部流路R1を形成するための環状壁部133とを有する。一対の接続部131、板部132、及び環状壁部133は、樹脂の一体成形品である。
板部132は、上側主面TS132(第1主面に対応)と、下側主面BS132(第2主面に対応)を有する。上側主面TS132は、第2金属プレート12Eの下側主面BS12と対向している。一対の接続部131は、板部132の上側主面TS132に対して上側(Z軸正方向)に突出している。環状壁部133は、板部132の下側主面BS132に対して下側(Z軸負方向)に突出している。環状壁部133は、筒状である。
【0121】
接続部131は、図8及び図9に示すように、貫通孔HAから露出している。接続部131は、開口H131及び中空部R131(図9参照)を有する。
開口H131には、冷却用媒体が供給される。開口H131は、樹脂流路壁部13Eの上面に位置する。開口H131は、上方(Z軸正方向)を向いている。
中空部R131は、図9に示すように、開口H131と、内部流路R1とを連結するために形成されている。中空部R131は、一方の接続部131の内部に形成されている。
【0122】
樹脂流路壁部13Eの板部132の上側主面TS132のうち少なくとも接続部131を囲う部位は、第2金属プレート12Eの下側主面BS12と物理的に接触している。そのため、第2金属プレート12Eの一対の貫通孔HAの各々は、樹脂流路壁部13Eで塞がれている。
【0123】
樹脂流路壁部13Eは、図8及び図9に示すように、凹み部R132を更に有する。凹み部R132は、板部132の下側主面BS132と、環状壁部133の内周面とによって形成されている。凹み部R132は、樹脂流路壁部13Eの下面側の前後方向(X軸方向)及び左右方向(Y軸方向)における中央部に位置する。
凹み部R132は、第1金属プレート11の上側主面TS11との間に冷却用媒体が流通する内部流路R1を形成するために形成されている。
樹脂流路壁部13Eの下側面のうち少なくとも凹み部R132を囲う部位(すなわち、環状壁部133の先端部)は、第1金属プレート11の上側主面TS11と物理的に接触している。そのため、凹み部R132と、第1金属プレート11の上側主面TS11との間には、内部流路R1が形成されている。
【0124】
図8及び図9を参照して説明したように、第2金属プレート12Eは、金属製であり、樹脂流路壁部13Eは、樹脂製である。これにより、冷却媒体の循環に起因する内圧に対する温度制御装置1Eの耐圧性能は、第2金属プレート12Eの代わりに樹脂プレートを用いる場合よりも優れる。すなわち、温度制御装置1Eは、被熱交換媒体の温度を効率良く調整することができるとともに、耐圧性能に優れる。
【0125】
図8及び図9を参照して説明したように、樹脂流路壁部13Eは、板部132と、環状壁部133とを有する。内部流路R1は、第2金属プレート12E及び樹脂流路壁部13Eによって形成されている。これにより、温度制御装置1Eは、被熱交換媒体の温度を効率良く調整することができるとともに、耐圧性能により優れる。
【符号の説明】
【0126】
1A~1E 温度制御装置
11 第1プレート
12A、12B、12E 第2プレート
121、131 接続部
13A、13B、13E 流路壁部
14A、14B 仕切部材
15 フィン付き構造体
16 軟質部品
17 樹脂固定部
18 電気絶縁層
R1 内部流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9