(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011854
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】センサ構造、センサ構造付部材
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20230117BHJP
【FI】
G01B7/00 103R
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177015
(22)【出願日】2022-11-04
(62)【分割の表示】P 2021078332の分割
【原出願日】2016-09-09
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.スタイロフォーム
2.コロニアル
(71)【出願人】
【識別番号】511025411
【氏名又は名称】株式会社NejiLaw
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
(57)【要約】
【課題】様々な部材の状況を客観的に測定可能にすることで、建造物全体の保守管理、メンテナンス時期の判断や或いは優先的補修建造物や部位を明確化する。
【解決手段】本発明のセンサ構造は、第一導電材で構成されるベース路と、当該ベース路の裏側の表面に接触するように複数配設され、当該第一導電材と比較して電気抵抗率が小さい導電材で構成される低抵抗部分通電区と、を有し、当該低抵抗部分通電区が測定対象となる部材に直接形成され、前記ベース路及び前記低抵抗部分通電区の双方を含む範囲の電気抵抗値の変化によって、物理現象を検出する。
【選択図】
図1E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一導電材で構成されるベース路と、
当該ベース路の内部に埋設され、当該第一導電材と比較して電気抵抗率が小さい第二導電材で構成される低抵抗部分通電区と、を有し、
上記ベース路及び上記低抵抗部分通電区の双方を含む範囲の電気抵抗値の変化によって、物理現象を検出することを特徴とするセンサ構造。
【請求項2】
第一導電材で構成されるベース路と、
当該ベース路の表面に積層されて、上記第一導電材と比較して電気抵抗率が小さい第二導電材によって構成され、互いに間隔を存して配置される複数の低抵抗部分通電区と、
上記低抵抗部分通電区の表面に形成されて、上記第二導電材と比較して電気抵抗率が小さい導電材によって構成される第二低抵抗部分通電区と、を有し、
上記ベース路、上記低抵抗部分通電区及び上記第二低抵抗部分通電区を含む範囲の電気抵抗値の変化によって、物理現象を検出することを特徴とするセンサ構造。
【請求項3】
前記ベース路の変形に起因する前記電気抵抗値の変化を検出することを特徴とする、
請求項1又は2記載のセンサ構造。
【請求項4】
電圧が印加される両端間において分岐及び合流する複数の並列通電部を有しており、
複数の当該並列通電部のそれぞれに、前記ベース路及び複数の前記低抵抗部分通電区が配設されることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれかに記載のセンサ構造。
【請求項5】
互いに隣接されて電圧が印加される一対の端子を有すると共に、
一方の当該端子から離反して他方の当該端子に戻る通電経路を有するようになっており、
当該通電経路の途中に、前記ベース路及び複数の前記低抵抗部分通電区が配設されることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載のセンサ構造。
【請求項6】
前記ベース路の層厚が、前記低抵抗部分通電区の層厚よりも大きいことを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれかに記載のセンサ構造。
【請求項7】
測定対象となる部材の全部又は一部に、請求項1乃至6のいずれかに記載のセンサ構造が配設されることを特徴とするセンサ構造付部材。
【請求項8】
前記部材の表面の異なる場所に、複数の前記センサ構造が配設されることを特徴とする、
請求項7記載のセンサ構造付部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅家屋や集合住宅、ビル等の建物、橋梁や鉄塔、鉄道、パイプライン、プラント、発電所や風力発電装置、太陽光発電装置等の建築物や建造物(以下、建築物と建造物を合わせて単に建造物と称する。)やそれらに用いる建材や構造材等の各種部材、建設機械、工作機械等の産業機械やその他の機械装置類やそれらを構成する締結部材や刃物、保持部材等の消耗品類、或いは、スプリング、ベアリング、リニアガイド等の要素部品等、ロケットや航空機、潜水艦、船舶、電車やバス、トラック、乗用車、オートバイ、自転車、エレベータ等の各種移動手段、また、オフィスや家庭用の機器類、日用品等の様々な場面で用いられる部材、それらの部材にパターニングする通電路の形成方法、更にはこれらの部材の変形等を検出するセンサ構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ビル、家屋、集合住宅、ホール等の空間を形成する建築物や橋梁、ダム、ケーソン、消波ブロック、水門等の建造物(以下、これらを建造物と呼ぶ)、自動車や自転車、鉄道等の乗物を含む各種移動手段、機械設備、電気機器、発電設備、化学プラント等、様々な場面で多種多様な部材が用いられている。また、その素材にも、鉄、樹脂、ゴム、石、コンクリート、アスファルト、木、紙、セラミック、ガラス等様々な物が使用されている。
【0003】
例えば建造物だけをとっても、家屋、集合住宅、学校の校舎、駅舎、空港のターミナル、病院、市区町村の庁舎、橋梁、トンネルなど、社会インフラ等に関連する様々なものが存在し、これらの建造物は、柱、梁や床、天井、ボルト、ナット、鉄筋コンクリート等の様々な構造材によって、その形状が保たれている。また、構造材に限らず、窓ガラスやドア等の各種部材や設備が用いられ、様々な材料によって多様な形状、構造に構成されている。
【0004】
構造材は、長期間に亘って利用されることが前提となるが、寒暖による熱伸縮、経年劣化や震災等の振動や衝撃等の外力に曝されるため、老朽化は避けられない。老朽化を放置すれば、人為的な災害が発生する虞もある。
【0005】
また、今後より大型化が予想される台風や竜巻、地震の災害等は、窓ガラスにさえ過度の応力や負荷を与え、亀裂が生じたり、一部が欠けたりする場合がある。これらを放置すれば、窓ガラスの割れに繋がり、怪我をする虞も生じる。
【0006】
従って、今後は、このような建造材等の様々な部材を定量的且つ広範に監視可能とし、メンテナンスすることで、事故や災害を未然に防ぎ、減災・防災等を実現すること(ナショナル・レジリエンス)が重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、現在、建造物を例にとっても、膨大な数が存在しており、メンテナンスを行うべき建造材に優先順位をつけたり、一つの建造物の中で、どこの構造材を集中的にメンテナンスすべきかを判断したりすることが、現実的には不可能な状況である。
【0008】
ところで現在も、例えば、橋梁の維持管理を行うために橋梁管理カルテを作成し、都道府県・市区町村の担当者が、橋梁を定期点検している。しかし、人間による目視外観検査を中心とした点検であるため、個人差が生じ易く客観性に欠け、またリアルタイムの点検も出来ないということから、抜本的なメンテナンスの判断には利用できないという問題があった。
【0009】
構造材以外の様々な部材においても、故障や破損が生じてから、修理・交換等を行うのが一般であり、それによって生じる事故や経済的ロスを未然に防ぐことが困難であるという問題があった。
【0010】
他方、従来、歪みゲージと称する歪みセンサ素子が存在し、測定対象となる物体に接着剤を用いて取り付けることで、被測定対象体に生じる歪み、若しくは応力を間接的に計測していた。ところが、この方法の場合、測定対象体への接着剤による難しい取付け作業が必要な上、接着剤の伸びなのか、被測定対象体の伸びなのかの判別が不可能な上、温度や湿度、熱影響、熱膨張率の違い、繰り返しの伸縮による疲労強度、耐候性や耐久性の問題で劣化が生じたり、剥がれが生じたりするなどの問題があり、長期間に亘って、被測定対象体に生じる歪みの歪みの正確な測定結果を得ることが、本質的に出来ないという問題があった。
【0011】
また、従来の歪みゲージは、検出感度に限界が存在する為、例えば、巨大建造物の全体に亘って生じる、局所的には極めて小さな変形や振動揺動等を検出することは非常に困難であった。
【0012】
より具体的には、従来の歪みゲージは、小さい検出領域において、蛇腹状に往復する抵抗配線を高精度に形成した構造となっており、この歪みゲージを測定対象物に貼り付けて、その変形レベルを検知する。結果、一つの歪みゲージによる検出領域は極めて小さい。従って、例えば大きな構造物において、どこに生じるか事前に判別できないような変形等を歪みゲージで検知しようとすると、膨大な数の歪みゲージを、構造物に張り付ける必要が生じ、量産性や製造コスト等の観点から、現実的ではないという問題があった。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑みて本発明者の鋭意研究により成されたものであり、様々な部材の状況を客観的に測定可能にすることで、建造物全体の保守管理、メンテナンス時期の判断や或いは優先的補修建造物や部位を明確化することやより優れた設計に繋げること、或いは、工場建屋はもとより、工場内設備、特に生産設備や産業機械、装置、或いはそれらに用いる消耗品のリアルタイムの計測やこれによる状態把握、或いは、飛行機や船舶、鉄道や鉄道車両、自動車等を含む各種の乗物若しくは移動体等の状態把握やこれによる未然の事故防止等を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する本発明は、第一導電材で構成され、互いに間隔を存して配置される複数の高抵抗部分通電区と、当該第一導電材と比較して電気抵抗率が小さい第二導電材によって構成され、各々が、対となる当該高抵抗部分通電区を繋ぐように配置されると共に、互いに間隔を存して配置される複数の低抵抗部分通電区と、を備え、当該高抵抗部分通電区及び当該低抵抗部分通電区の双方を含む範囲の電気抵抗値の変化によって、物理現象を検出することを特徴とするセンサ構造である。
【0015】
当該センサ構造に関連して、前記高抵抗部分通電区及び前記低抵抗部分通電区はそれぞれ平面状となっており、前記高抵抗部分通電区と前記低抵抗部分通電区が重なるようにして、互いに面接触することを特徴とする。
【0016】
当該センサ構造に関連して、前記第二導電材と比較して電気抵抗率が大きい導電材で構成され、各々が、対となる前記高抵抗部分通電区を繋ぐように配置される補助通電区を備えることを特徴とする。
【0017】
当該センサ構造に関連して、第一導電材で構成されるベース路を備え、前記低抵抗部分通電区が、互いに間隔を存して当該ベース路の表面に接触するように複数配設され、前記ベース路における、複数の前記低抵抗部分通電区の間隔に相当する領域の少なくとも一部が、前記高抵抗部分通電区となり、前記ベース路における前記低抵抗部分通電区と当接する領域が前記補助通電区となることを特徴とする。
【0018】
上記目的を達成する本発明は、測定対象となる部材の全部又は一部に、上記のいずれかに記載のセンサ構造が配設されることを特徴とするセンサ構造付部材である。
【0019】
当該センサ構造付部材に関連して、前記高抵抗部分通電区又は前記低抵抗部分通電区が前記部材の表面に直接形成されることを特徴とする。
【0020】
当該センサ構造付部材に関連して、前記部材の表面の異なる場所に、複数の前記センサ構造が配設されることを特徴とする。
【0021】
当該センサ構造付部材に関連して、前記部材の表面における一端近傍から他端近傍までの全域に亘って、前記センサ構造が配接されることを特徴とする。
【0022】
当該センサ構造付部材に関連して、前記部材の表面における一端近傍から他端近傍までの全域に亘って、単一通電経路となる前記センサ構造が配接されることを特徴とする。
【0023】
当該センサ構造付部材に関連して、前記部材が導電材で構成されることで前記高抵抗通電区を兼ねるようになっており、前記部材の表面に前記低抵抗部分通電区が間隔を存して配設されることで、前記センサ構造が形成されることを特徴とする。
【0024】
上記目的を達成する本発明は、第一導電材で構成されるベース路と、当該ベース路の表面に接触するように複数配設され、当該第一導電材と比較して電気抵抗率が小さい導電材で構成される低抵抗部分通電区と、を有し、前記ベース路及び前記低抵抗部分通電区の双方を含む範囲の電気抵抗値の変化によって、物理現象を検出することを特徴とするセンサ構造である。
【0025】
当該センサ構造に関連して、前記ベース路の少なくとも一方の表面に、複数の前記低抵抗部分通電区が配設されることを特徴とする。
【0026】
当該センサ構造に関連して、前記ベース路の変形に起因する前記電気抵抗値の変化を検出することを特徴とする。
【0027】
当該センサ構造に関連して、電圧が印加される両端間において分岐及び合流する複数の並列通電部を有しており、複数の当該並列通電部のそれぞれに、前記ベース路及び複数の前記低抵抗部分通電区が配設されることを特徴とする。
【0028】
当該センサ構造に関連して、互いに隣接されて電圧が印加される一対の端子を有すると共に、一方の当該端子から離反して他方の当該端子に戻る通電経路を有するようになっており、当該通電経路の途中に、前記ベース路及び複数の前記低抵抗部分通電区が配設されることを特徴とする。
【0029】
当該センサ構造に関連して、前記ベース路の層厚が、前記低抵抗部分通電区の層厚よりも大きいことを特徴とする。
【0030】
上記目的を達成する本発明は、測定対象となる部材の全部又は一部に、上記のいずれかに記載のセンサ構造が配設されることを特徴とするセンサ構造付部材である。
【0031】
当該センサ構造付部材に関連して、前記ベース路又は前記低抵抗部分通電区が前記部材の表面に直接形成されることを特徴とする。
【0032】
当該センサ構造付部材に関連して、前記部材の表面の異なる場所に、複数の前記センサ構造が配設されることを特徴とする。
【0033】
当該センサ構造付部材に関連して、前記部材が導電材で構成されることで前記ベース路を兼ねるようになっており、前記部材の表面に前記低抵抗部分通電区が配設されることで、前記センサ構造が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、部材に生じる変形や歪み、温度状態、微小クラック等の物理状体及び/又は錆びや腐食等の物質表面状態等の化学的状態等の変化や、部材を取り巻く物理的、化学的な環境変化を客観的に把握することを極めて低コストに実現可能であり、また大量生産可能なことから広範な対象を客観的に且つ遠隔で監視する事が可能となる。また、本発明は、多種多様の、しかも大量な部材への適用が極めて低コストで実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1A】本発明の実施形態に係るセンサ構造付部材を用いた構造物の計測システムの全体構成を示す図である。
【
図1B】本発明の実施形態に係るセンサ構造を示す(A)は平面図、(B)は平面図のB-B矢視断面図、(C)は内部構造を説明する断面図、(D)及び(E)は変形時の状態を示す断面図である。
【
図1C】本発明の実施形態に係るセンサ構造を母材に適用する際の平面図である。
【
図1D】本発明の実施形態に係るセンサ構造を母材に適用する際の平面図である。
【
図1E】本発明の実施形態に係るセンサ構造の他の事例を示す(A)は平面図、(B)は平面図のB-B矢視断面図である。
【
図1F】本発明の実施形態に係るセンサ構造の他の事例を示す断面図である。
【
図1G】本発明の実施形態に係るセンサ構造の他の事例を示す断面図である。
【
図1H】本発明の実施形態に係るセンサ構造を棒状母材に適用する際の斜視図である。
【
図1I】本発明の実施形態に係るセンサ構造の他の事例を示す平面図である。
【
図2】センサ構造付部材が適用される建造物を拡大して示す斜視図である。
【
図3】同計測システムで利用されるセンサ構造付部材の例となる雄ねじ体を示す(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は背面図、(D)は(B)におけるD-D矢視断面図である。
【
図4A】同センサ構造付部材の一部を拡大して示す斜視図である。
【
図4B】同センサ構造付部材の一部を拡大して示す正面図であり、(B)及び(C)は(A)のB-B矢視断面図である。
【
図4C】同センサ構造付部材の変形例を示す(A)正面図、(B)断面図、(C)センサ構造のみを示す展開図である。
【
図5A】同雄ねじ体の変形例を示す(A)上面図、(B)正面図、(C)底面図である。
【
図5B】同雄ねじ体の変形例を示す(A)一部を拡大して示す斜視図、(B)部分断面図、(C)乃至(I)は積層工程を示す部分断面図である。
【
図5C】同雄ねじ体の変形例を示す(A)正面図、(B)正面断面図である。
【
図5D】同雄ねじ体の変形例を示す(A)正面図、(B)は、(A)のB-B矢視断面図である。
【
図5E】同雄ねじ体の変形例を示す(A)正面図、(B)は、(A)のB-B矢視断面図である。
【
図6A】同雄ねじ体に内蔵される基板の構成を示すブロック図である。
【
図6B】(A)乃至(D)同雄ねじ体にの通電路に適用されるブリッジ回路の構成を示す回路図である。
【
図6C】(A)及び(B)同雄ねじ体にの通電路に適用されるブリッジ回路の構成を示す回路図である。
【
図7】(A)は同計測システムの情報収集装置のハード構成を示すブロック図であり、(B)は情報収集装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図8A】同雄ねじ体の変形例となるねじ部の緩み防止構造を示す正面図である。
【
図8B】同ねじ部を拡大して示す(A)正面図、(B)底面図、(C)側面図であるである。
【
図8C】(A)乃至(C)は同ねじ部に通電路を形成する状態を示す正面図である。
【
図9】同雄ねじ体のねじ部の緩み防止構造の例を示す正面図である。
【
図10】同雄ねじ体のねじ部の緩み防止構造の例を示す正面図である。
【
図11】(A)乃至(C)は同センサ構造付部材の変形例を示す正面図である。
【
図12】同センサ構造付部材が適用される建造物を拡大して示す斜視図である。
【
図13】同センサ構造付部材の変形例を示す図である。
【
図14】同センサ構造付部材の変形例を示す図である。
【
図15】同センサ構造付部材の変形例を示す図である。
【
図16】同センサ構造付部材の変形例を示す図である。
【
図17】同センサ構造付部材の変形例を示す図である。
【
図18】(A)は同センサ構造付部材の通電路の変形例を示す図であり(B)は(A)のB-B矢視断面図である。
【
図19A】同センサ構造付部材の変形例を示す図である。
【
図19B】同センサ構造付部材の変形例を示す図である。
【
図19C】同センサ構造付部材の変形例を示す図である。
【
図19D】同センサ構造付部材において多層構造の通電路を示す図である。
【
図19E】同センサ構造付部材における電力の供給配線の配設例を示す図である。
【
図19F】同センサ構造付部材における電力の供給配線の配設例を示す図である。
【
図19G】同センサ構造付部材の変形例を示す図である。
【
図20】(A)は同センサ構造付部材の通電路の変形例を示す図であり、(B)及び(C)は(A)のB-B矢視断面図である。
【
図21】(A)及び(B)は同センサ構造付部材の通電路の変形例を示す図である。
【
図22】同センサ構造付部材の通電路の変形例を示す図である。
【
図23】(a)及び(b)は複数の通電路からなる通電回路を示す説明図である。
【
図24】(a)及び(b)は2次元マトリックス状の通電回路を示す説明図である。
【
図25】(a)乃至(i)は同通電回路の形成するためのパターン情報を示す説明図である。
【
図26】は同パターン情報を組み合わせた通電回路パターンを示す説明図である。
【
図27】(a)は同センサ構造付部材の変形例を示す斜視図であり、(b)同センサ構造付部材の通電回路の部分断面図である。
【
図28】(a)及び(b)は帯状のセンサ構造付部材の使用形態を示す斜視図であり、(b)は同センサ構造付部材の検出態様を示す概念図である。
【
図29】センサ構造付部材の母材自体をベース路とする場合を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
図1Aには、本発明の実施形態に係るセンサ構造付部材が用いられる建造物の計測システム1が示されている。この計測システム1は、ビルや橋梁、鉄道レール、道路、高架道路等の複数の建造物10と、この建造物10に建設時の構造を画定する部材として利用されるセンサ構造付部材(例えば、H形鋼、C形鋼、T形鋼、I形鋼、円形や角形等の管状鋼等の構造材やねじ締結部材やリベット等の接合部材、壁材、コンクリート材等)30と、このセンサ構造付部材30に対して有線又は無線によって接続される情報収集装置100を備えて構成される。
【0038】
図1B(A)には、センサ構造付部材30の母材32に適用されるセンサ構造500が示される。このセンサ構造500は、導電材で構成される帯状のベース路95Pの表面に、複数の低抵抗部分通電区(導電片)95Qが配置されて構成される。本実施例では、ベース路95Pの一方の表面に、複数の方形(勿論、必ずしも方形でなければならないというものではなく、断続的に、比較的良導性の導電部として設けられていればよい。)の低抵抗部分通電区95Qが、帯長手方向に広がるように互いに間隔を存して配置される。また、ベース路95Pは比較的高抵抗値(高抵抗率)となる導体材料で構成される。一方、低抵抗部分通電区95Qは、ベース路95Pの材料と比較して低抵抗値(低抵抗率)の導体(良導体)となる。なお、特に図示しないが、ベース路95Pの下層には絶縁層が形成される。ここで、ベース路95Pの層厚は、特に限定されるものではないが、厚めに設定することで、母材32の歪みに対するベース路95Pの変形量を増大させることが可能であり、検出感度を向上させることが可能となる。しかしながらベース路95Pの層圧が、厚過ぎると、熱膨張や熱収縮の影響が大きく成り易いので、厚過ぎない設定とすることが好ましく、例えば、低抵抗部分通電区95Qの厚みに比して、より厚くなる程度に設定することが好ましい。なお、低抵抗部分通電区95Qの層厚は、1mm以下に設定するのが、好ましく、母材32の変形への追従性や熱膨張、熱収縮、材料使用量、製作性等を加味すれば、数百μm以下、望ましくは0.1μm~数十μm程度とする。勿論、薄過ぎれば、ベース路95P自体の断裂や抵抗値の増大が起こってしまうことを加味した設定とすることが好ましい。
【0039】
このベース路95Pの両端に電圧を印加すると、
図1B(B)の矢印に示すように、電子は、できる限り低抵抗の場所を選択しながら流れると推察される。具体的には、低抵抗部分通電区95Qが存在しない場所(つまり、低抵抗部分通電区95Qの間隔d0の領域)は、ベース路95Pの内部を電荷(電子など)が移動する。また、低抵抗部分通電区95Qが存在する場所は、低抵抗部分通電区95Q内又はベース路95Pと低抵抗部分通電区95Qの境界近傍を電子が移動する。
【0040】
このセンサ構造500を別の観点から説明すると、
図1B(C)に示すように、ベース路95P内には、高抵抗率となる導電材で構成される複数の高抵抗部分通電区95Tが、互いに間隔d1を存して配置される。この間隔d1は、低抵抗部分通電区95Qの存在する範囲に相当する。また、低抵抗率となる導電材で構成される低抵抗部分通電区95Qは、対となって隣接する高抵抗部分通電区95Tを繋ぐように配置される。同時に、複数の低抵抗部分通電区95Qは、高抵抗部分通電区95T上において、互いに間隔d0を存して配置される。この間隔d0は、高抵抗部分通電区95Tが存在する範囲に相当する。このように構成すると、高抵抗部分通電区95Tと低抵抗部分通電区95Qが交互に連続する結果となり、両端に電圧を印加すると、電子が、高抵抗部分通電区95Tと低抵抗部分通電区95Qを交互に選択しながら流れると推察する。
【0041】
ベース路95P内における、高抵抗部分通電区95Tが存在しない領域は、補助通電区95Uと定義される。この補助通電区95Uは、低抵抗部分通電区95Qと併設され、かつ、低抵抗部分通電区95Qの導電材と比較して高抵抗率となる材料(ここでは低抵抗部分通電区95Qと同一の導電材)で構成される。この補助通電区95Uも、仮想的には、対となって隣接する高抵抗部分通電区95Tを電気的に繋ぐことになるが、低抵抗部分通電区95Qが並行するので、電子は低抵抗部分通電区95Q側を移動することになる。即ち、この補助通電区95Uは、多少の電流が流れる可能性はあるものの、支配的な導電をもたらすものではない配線として機能すると推察される。
【0042】
結果として、ベース路95Pにおける、複数の低抵抗部分通電区95Qの間隔d0に相当する領域が、高抵抗部分通電区95Tとなり、ベース路95Pにおける、低抵抗部分通電区95Qと当接している領域の少なくとも一部が補助通電区95Uとなる。
【0043】
以上のように構成されるセンサ構造500を、
図1B(D)に示すように、母材32の表面が凸となることで、ベース路95Pが長手方向に伸びるように一方向に湾曲させると、隣接する低抵抗部分通電区95Qの距離がd0からd+に広がる。本発明者らによる検証の結果、ベース路95Pが伸長すると、その両端間の抵抗値が増大し、母材32の凸湾曲状態を検知できる。
【0044】
また、
図1B(E)に示すように、母材32の表面が凹となることで、ベース路95Pが長手方向に縮むように他方向に湾曲させると、隣接する低抵抗部分通電区95Qの距離がd0からd-に縮む。本発明者らによる検証の結果、この場合は、ベース路95Pの両端間の抵抗値が減少し、母材32の凹湾曲状態を検知できる。即ち、本構造のセンサ構造500によれば、長手方向の伸縮、曲げ等の物理現象を、抵抗値変化によって好感度で検出できる。なお、この際、低抵抗部分通電区95Qに比して、高抵抗値のベース路95Pの厚みを、より厚く設定し、母材32の歪みに対するベース路95Pの変形が、当該厚みを薄く設定した場合よりも増大するように構成することも好ましい。
【0045】
このセンサ構造500は、比較的簡易に形成することが可能となるので、様々な母材32に対して広範囲に形成して、母材32の物理現象を検出できる。例えば、
図1C(A)に示すように、壁面、床、天井、柱等の広範囲な平面を有する母材32の場合は、平面における一方向Xにおいて、一端近傍から他端近傍となる全域に亘って、単一回路となるセンサ構造500が延びるように形成する。本事例では、単一回路が、特定方向Xに対して直角となる他方向Yにおいて、一旦近傍から他端近傍となる全域に亘って、複数回に往復して蛇腹状に広がる。即ち、単一回路が、X方向とY方向の双方向において、一端近傍から他端近傍の全域に配置される構造となる。なお、
図1C(B)に示すように、一方向Xにおいて一端近傍から他端近傍となる全域に亘って広がるセンサ構造500が、Y方向に複数配置されることで、平面全体の物理現象を検知するようにしても良い。
【0046】
また例えば、
図1D(A)に示すように、梁等の骨組、鉄道レール等のように、一方向に長い帯状面を有する母材32の場合は、その長手方向Xにおいて、一端近傍から他端近傍となる全域に亘って、単一回路となるセンサ構造500が延びるように形成する。ちなみに、本事例では、単一回路を長手方向Zに一往復させている。更に
図1D(B)に示すように、一方向Xにおいて一端近傍から他端近傍となる全域に亘って広がるセンサ構造500が、Y方向に蛇行することで、平面全体の物理現象を検知するようにしても良い。
【0047】
次にセンサ構造の他の構成例を説明する。
図1E(A)及び(B)に示すセンサ構造500は、低抵抗部分通電区95Qが下層側(母材32側)となり、ベース路95Pを上層とすることもできる。つまり、ベース路95Pの裏側の表面に低抵抗部分通電区95Qが形成される。この場合であっても、
図1Aのセンサ構造500と略同じ出力を得ることが出来る。また、本構造の場合、先に低抵抗部分通電区95Qを形成しておき、これらの全体を覆うようにして、ベース路95Pを形成することができる。結果、複数の低抵抗部分通電区95Qの間隔d0の空間に、ベース路95Pの導電材が充填されるので、その空間自体が高抵抗部分通電区95Tとなる。
【0048】
また
図1F(A)に示すセンサ構造500は、ベース路95Pの内部(本実施形態では厚み方向の内部)に、低抵抗部分通電区95Qが埋設される構造となっている。この構造の場合、複数の低抵抗部分通電区95Qの間隔d0に相当する部分が、高抵抗部分通電区95Tとなる。
【0049】
更に
図1F(B)に示すセンサ構造500は、一連となるベース路95Pが存在しておらず、高抵抗部分通電区95Tと低抵抗部分通電区95Qが交互に連なる様に形成される。この場合、高抵抗部分通電区95Tと低抵抗部分通電区95Qの端縁同士が電気的に接合されており、電子は、高抵抗部分通電区95Tと低抵抗部分通電区95Qを交互に流れていくことになる。この応用として、
図1F(C)に示すように、高抵抗部分通電区95Tと低抵抗部分通電区95Qがそれぞれ平面状となっており、高抵抗部分通電区95Tと低抵抗部分通電区95Qが重なることで、(端部ではなく)平面同士が互いに面接触しても良い。ここで、高抵抗部分通電区95Tの層厚は、特に限定されるものではないが、厚めに設定することで、母材32の歪みに対する高抵抗部分通電区95Tの変形量を増大させることが可能であり、検出感度を向上させることが可能となる。しかしながら高抵抗部分通電区95Tの層厚が厚過ぎると、熱膨張や熱収縮の影響が大きく成り易いので、厚過ぎない設定とすることが好ましく、例えば、低抵抗部分通電区95Qの厚みに比して、より厚くなる程度に設定することが好ましい。なお、低抵抗部分通電区95Qの層厚は、1mm以下に設定するのが、好ましく、母材32の変形への追従性や熱膨張、熱収縮、材料使用量、製作性等を加味すれば、数百μm以下、望ましくは0.1μm~数十μm程度とする。勿論、薄過ぎれば、ベース路95P自体の断裂や抵抗値の増大が起こってしまうことを加味した設定とすることが好ましい。
【0050】
図1G(A)乃至(C)に示すように、センサ構造500を多層化することもできる。具体的にベース路95P内には、高抵抗率となる導電材で構成される複数の高抵抗部分通電区95Tが、互いに間隔を存して配置される。ベース路95Pの表面に積層される低抵抗部分通電区95Qによって、対となる高抵抗部分通電区95Tが電気的に繋げられる。なお、ベース路95P内における、高抵抗部分通電区95Tが存在しない領域は、補助通電区95Uとなる。低抵抗部分通電区95Qの表面には、更に、その一部として第二低抵抗部分通電区95Hが形成される。この第二低抵抗部分通電区95Hは、低抵抗部分通電区95Qと比較して一層低抵抗率となる導電材で構成される。従って、
図1G(C)に示すように、低抵抗部分通電区95Qを移動する電子は、その途中で更に第二低抵抗部分通電区95H側を移動して、低抵抗部分通電区95Qに戻る。
【0051】
即ち、低抵抗部分通電区95Qと第二低抵抗部分通電区95Hのみに着目すると、低抵抗部分通電区95Qが所謂ベース路となって、その中に少なくとも一対の高抵抗部分通電区95T´と、その間に介在する補助通電区95U´を有する。第二低抵抗部分通電区95Hは、対となる高抵抗部分通電区95T´を電気的に繋ぐように設けられる。結果、本事例のセンサ構造500では、相対的に高抵抗となる高抵抗部分通電区と、相対的に低抵抗となる低抵抗部分通電区が、多層状態で形成されるので、感度を一層高めることが可能になると考え得る。
【0052】
勿論、このセンサ構造500において、低抵抗部分通電区95Qと第二低抵抗部分通電区95Hを一体的にとられて、これら全体が低抵抗部分通電区と定義すれば、
図1Bのセンサ構造500と略同一視することができる。
【0053】
また、
図1H(A)に示すように、母材32が棒状部材(断面の形状は円形に限られず、角柱等でも良い)となる場合、周方向に延びる環状の高抵抗部分通電区95Tと、周方向に延びる環状の低抵抗部分通電区Qが、軸方向に交互に配置されていても良い。軸方向の両端に電圧を印加すれば、棒状部材となる母材の曲げ、ねじり、引っ張り等の挙動を高精度で検知することが可能となる。更に
図1H(B)に示すように、高抵抗部分通電区95Tは、周方向にも一定の間隔を存して複数配置するようにしても良い。
【0054】
更に
図1I(A)に示すように、面(平面又は曲面)を有する母材32において、その面全体に広がる面状のベース路95Pを形成し、このベース路95Cの表面に、複数の低抵抗部分通電区95Qを配置することもできる。本事例では、複数の方形(必ずしも方形でなければ成らないというものではなく、断続的に比較的良好な抵抗値の導電区を設ければよい)の低抵抗部分通電区95Qを、面方向に広がるように(例えばマトリクス状、ハニカム状、ランダム状)に互いに間隔を存して配置する。このセンサ構造500において、離れた二か所から電圧を印加すれば、母材32の変形等を検知することが可能になる。面状の配線を構築すると、断線等の心配がなくなり、長期的に安定したセンシングが実現される。また、低抵抗部分通電区95Qは、マトリクス状に配置する場合に限られず、
図1I(B)に示すように、帯状の低抵抗部分通電区95Qを、帯幅方向に間隔を存しながら複数配置することで、面全体のセンシングを実現しても良い。
【0055】
次に、ねじ体に対してセンサ構造500を適用する事例を説明する。
【0056】
センサ構造付部材30は、ここでは雄ねじ体又は雌ねじ体であり、好ましくは、建造物10の基本的な構造材に用いられる。
【0057】
具体的には、
図2に示すように、建造物10の鉛直方向に延びる角形筒状の鋼材からなる支柱12を連結する接合部位や、この支柱12から水平方向に延びるH形鋼材、所謂H鋼となる梁14を連結する接合部位の複数箇所に、接続プレート17を利用して、ねじ締結部材となるセンサ構造付部材30が締結される。このセンサ構造付部材30は、建造物10の構造材(骨組み材)を接合する部位となる。このように、センサ構造付部材30が、構造材同士の接合に関与することにより、構造材に生じる内部応力を間接的に受けることができる。勿論、支柱12や梁14、接続プレート17自体も構造材である。
【0058】
図2に示すように、複数のセンサ構造付部材30において、その軸方向(締結方向)が互いに異なる場所を選定しておくことが好ましい。このようにすることで、建造物10の構造材に対して前後、左右、上下から作用する応力状態を、三次元的に計測して、状態把握することが可能になる。
【0059】
図3及び
図4Aに、センサ構造付部材30として雄ねじ体40を採用した場合の基本構造を示す。雄ねじ体40は所謂ボルトであり、頭部42と軸部44を有する。軸部44には、円筒部44aとねじ部44bとが形成される。勿論、円筒部44aは必須ではない。
【0060】
頭部42内には、頭部収容空間48が形成されており、軸部44内には、軸方向に延びる軸部収容空間46が形成される。頭部収容空間48と軸部収容空間46は連通しており、頭部収容空間48が軸部収容空間46よりも径方向に拡張した構造となっている。ここでは、これらの頭部収容空間48及び軸部収容空間46を総称して内部空間49と呼ぶ。
【0061】
円筒部44aは、外周面に凹部90が形成され、凹部90における円筒状の底面に、歪み計測用の通電路92が形成される。この通電路92は、金属材料によって構成され、センサ構造付部材30が変形することに伴って自身も変形し、それにより抵抗値等の電気的特性が変化することで、センサ構造付部材30に生じる歪み状態を出力する。凹部90の底面には、電気絶縁層91が直接形成され、この電気絶縁層91の上に、通電路92が直接形成される。
【0062】
電気絶縁層91は、例えば、積層印刷、パット印刷、塗装、メッキ、インクジェット印刷等を採用できる。また例えば、所定のマスクを配置した状態で、絶縁材料をスパッタリングによって被膜形成したり、シリカ材料を塗布して加熱処理したり、ポリイミド系、エポキシ系、ウレタン系、シリコーン系等の有機絶縁材を塗布するなどの様々な手法を採用できる。なお、通電路92を形成する母材そのものが電気伝導性を有する場合には、その母材表面を酸化処理することによって、酸化被膜化し、電気絶縁層91としたり、母材がアルミニウム系の場合には、アルマイト処理によって電気絶縁層91を設けることも有効である。勿論、電気絶縁層91は、これらに限定されるものではない。
【0063】
通電路92は、互いに独立して併設される第一通電路93と第二通電路94を有する。第一通電路93は、第一方向となる軸方向Jに沿って、往復するように延びており、センサ構造付部材30の表面が第一方向に沿って変形する状態を検出する。第二通電路94は、第一方向に対して直角の第二方向となる周方向Sに沿って、往復するように延びており、センサ構造付部材30の表面が第二方向に沿って変形する状態を検出する。なお、ここでは第一通電路93を一つだけ配置する場合を例示したが、周方向に一定の位相差(例えば90°、180°)を有する場所に複数配置することも好ましく、軸方向に間隔を空けて複数配置してもよい。第二通電路94に関しても同様である。通電路92は、導電性ペーストを利用した積層印刷、パット印刷、塗装、メッキ、インクジェット印刷、スパッタリング等によって凹部90又は電気絶縁層91に直接形成される。通電路92の形状に合わせてマスキングを施してエッチングすることで、配線の形状を設定しても良い。このように通電路92を直接形成することで、長期間に亘って、通電路92が剥離しないようになっている。因みに、接着材によって構成される接着層等によって所謂従来の歪みゲージ等を計測対象物に設置すると、接着剤の厚み相当の誤差が出たり、計測対象物に対する設置向きや設置角度等によって誤差が大きくでたりする原因となるため不合理である上、接着剤の経時劣化によって正確な歪みの計測ができなくなるので、本実施形態のように直接形成が好ましい。一方、シール形式によって、センサ構造を着脱(転着)自在にする場合は、下層側に粘着性を設けて、その表面に剥離シート層を設けることが好ましい。
【0064】
第一通電路93及び第二通電路94の外表面は、凹部90から突出しないように設定される。即ち、第一通電路93及び第二通電路94の配線の厚さに対して、凹部90の深さが同等以上となるように設定される。このようにすることで、第一通電路93及び第二通電路94が、他の部材と接触して損傷することを回避するように構成してもよい。なお、第一通電路93及び第二通電路94の外表面にカバー層を形成して保護することも好ましい。カバー層も絶縁材料を用いるようにする。勿論、その他に耐油性、耐水性、耐熱性、耐蒸気性、耐候性等の高いバリア層を設けてもよい。
【0065】
頭部42の座面42A及び周面42Bにも、凹部96が形成される。この凹部46内に、後述するバッテリ52から通電路92まで電気を供給する配線97が形成される。従って、座面42Aによって、接続プレート17を締結しても、配線97は、接続プレート17に接触することを回避できる。また、スパナ等の工具によって頭部42を回転させても、工具と配線97が接触することを回避できる。
【0066】
内部空間49内には、配線97が接続される基板54と、基板54に電力を供給するバッテリ52が収容されるが、近距離無線通信タグの場合には、バッテリや蓄電器の類は必ずしも必要な訳ではない。なお、本実施形態ではバッテリ52を内蔵する場合を例示するが、外部にバッテリボックスが配置され、このバッテリボックスからセンサ構造付部材30に電力が有線及び/又は無線方式によって供給されるようにしても良い。また、本実施形態ではバッテリ52を利用して雄ねじ体40が稼動する場合を示すが、例えば、外部から有線の電力配線によって電力が供給される場合は、このバッテリを省略することも可能である。更に、外部のリーダ等からの電波をエネルギーとして受信し、このエネルギーを電源として動作するRFID等のパッシブ構造の場合も、バッテリ52を省略できる。
【0067】
更に内部空間49に異物や水分が進入するのを防止するために、内部空間49の開口部分にはキャップ50が設置される。頭部収容空間48側のキャップ50をとりはずせば、建造物10から雄ねじ体40を取り外すことなく、バッテリ52の交換や、基板54等のメンテナンスが可能となっている。勿論、キャップ50で閉塞するのではなく、樹脂やゴム、パテ等で埋設してもよい。
【0068】
図4B(A)に、通電路92(第一通電路93及び第二通電路94)の詳細構造を拡大して示す。通電路92にはセンサ構造500が形成される。このセンサ構造500は、導電材で構成される帯状のベース路95Pの表面に、複数の低抵抗部分通電区(導電片)95Qが配置されて構成される。本実施例では、ベース路95Pの一方の表面に、複数の方形(勿論、必ずしも方形でなければならないというものではなく、断続的に、比較的良導性の導電部として設けられていればよい。)の低抵抗部分通電区95Qが、帯長手方向に広がるように互いに間隔を存して配置される。また、ベース路95Pは比較的高抵抗値材料の導体となり、低抵抗部分通電区95Qは比較的低抵抗値の導体(良導体)となる。なお、特に図示しないが、ベース路95Pの下層には絶縁層が形成される。
【0069】
このベース路95Pの両端に電圧を印加すると、
図4B(B)の矢印に示すように、ベース路95Pの内部と、距離d0で隣接する低抵抗部分通電区95Qの間のベース路95Pの一方の表層を電子が移動して電流が流れる。従って、ベース路95Pの一方の表層側に限定して電流を流すことができる。
【0070】
従って、
図4B(C)に示すようにベース路95Pの一方の表面が伸びるように通電路92を一方向に湾曲させると、隣接する低抵抗部分通電区95Qの距離がd0からdに広がる。本発明者らによる検証の結果、ベース路95Pの両端間の抵抗値が増大し、湾曲状態を検知できる。即ち、本構造の通電路92によれば、長手方向の伸縮(特に、伸長)、曲げ等による抵抗値変化の感度を高めることが可能となる。特に、ベース路95Pの低抵抗部分通電区95Q側表面(即ち、本図示の上側面)が凸となるように湾曲すると、低抵抗部分通電区95Q側が長手方向に伸びる結果、ベース路95Pの両端間の抵抗値が増大しやすい。
【0071】
なお、
図4Bでは、第一通電路93が、第一方向となる軸方向Jに延びて往復しつつ、周方向Sの一部範囲に拡がるように形成される場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図4Cに示すように、通電路92(第一通電路93)が、第一方向となる軸方向Jに延びて往復しつつ、周方向Sの略全周に亘って形成されても良い。このようにすると、センサ構造付部材30が様々な方向に曲がったり、振動(軸ずれ)したりする場合でも、単一の通電路93でその挙動を検知できる。
【0072】
図5Aに、雄ねじ体40の他の構成例を示す。電気絶縁性の素材から成る雄ねじ体40の軸部44の外周面には、断面が非円形となるような凹部(平面)60が形成される。この凹部(平面)60は軸方向に延びており、そこに、通電路92が直接形成される。ただし、雄ねじ体40の素材外表面が導電性を有する場合には、電気絶縁層を介することが出来る。凹部60は、中心軸線を境とした直径方向両側に配置される。このようにすると、例えば雄ねじ体40の軸部44に曲げモーメントが作用した場合、一方の軸方向通電路92は圧縮力、他方の通電路92には伸長力が作用するので、抵抗値に差が生じ得る。この差によって雄ねじ体40に作用する曲げモーメントの変化を検知することができる。なお、ここでは軸部44の軸方向全域に平面60を形成する場合を例示したが、円筒部44aの領域に限って凹部(平面)60を形成することも好ましい。
【0073】
図5Bに、雄ねじ体40の他の構成例を示す。雄ねじ体40の軸部44の外周面には、通電路92を画成する溝(凹部)90Aが形成される
図5B(B)に示すように、溝90Aの内周面には、下地層となる電気絶縁層91が形成され、電気絶縁層91の上に通電路92が直接的に形成される。結果、通電路92が、外部部材と接触しないで済むので、通電路92の断線や剥離等を抑制できる上、対象部材である雄ねじ体40の変形を直接計測することが可能となる。
【0074】
通電路92の具体的な形成手順として、まず、
図5B(C)に示すように、軸部44の外周面全体に電気絶縁層91を被膜形成し、
図5B(D)に示すように、溝90Aの外にはみ出している電気絶縁層91を除去してから、更に
図5B(E)に示すように、軸部44の外周面全体にベース路95Pに用いる高抵抗値導電材を被膜形成することが出来る。その後、
図5B(F)に示すように、溝90Aの外にはみ出しているベース路95Pを除去すると共に、更に
図5B(G)に示すように、ベース路95P内に対して、エッチング処理等によって微細凹部90Xを長手方向に間隔を存して連続形成する。次いで、
図5B(H)に示すように、この微細凹部90X内を含むように、低抵抗部分通電区95Qに用いる低抵抗値導電材を被膜形成する。その後、
図5B(I)に示すように、微細凹部90Xから外にはみ出している低抵抗値導電材を除去することで、微細凹部90X内に低抵抗部分通電区95Qが形成される。結果、溝90A内に、電気絶縁層91及び通電路92を形成できる。
【0075】
図5Cに、雄ねじ体40の他の構成例を示す。この雄ねじ体40は、軸部44におけるねじ部44bに通電路92が形成される。具体的には、
図5C(A)の部分拡大図に示すように、隣接する条211の間のねじ溝の底部(谷底)211uに沿って、電気絶縁層91及び通電路92を螺旋状に形成する。底部211uは、螺合する雌ねじ体70のねじ山と間に隙間を有しているので、その隙間を有効活用して電気絶縁層91及び通電路92を形成すれば、雌ねじ体70と干渉することはない。また、通電路92は、ベース路95Pの表面に複数の低抵抗部分通電区(導電片)95Qが配置されて構成される。勿論、通電路92を形成するために、ねじ溝の底部211uをより深く設定しておくことも好ましい。勿論、フランク面に通電路92を形成してもよく、特に、フランク面表面から凹設した凹部に通電路92を形成すれば、繰り返しの着脱や摩擦等によって通電路92が断線することなく長期間に亘って安定的に測定することが出来て好適である。また、通電路92表面に耐摩耗性の高いトップコートを施せば、耐摩耗性を向上させることが可能となる。
【0076】
ねじ溝に沿って螺旋状に通電路を形成することにより、通電路92の一端92aは頭部42側に位置し、他端92bは軸部44の先端側に位置する。従って、
図5C(B)に示すように、通電路92の一端92aは、頭部42又は軸部44に形成される貫通孔49aを経由して、内部空間49まで延長される。他端92bは、軸部収容空間46を経由して内部空間49に延長される。
【0077】
図5Dに、雄ねじ体40の他の構成例を示す。この雄ねじ体40は、軸部44におけるねじ部44bに、一対の通電路92が形成される。具体的には、
図5D(A)の部分拡大図に示すように、隣接する条211の間のねじ溝の底部(谷底)211uに沿って、電気絶縁層91及び一対の通電路93a、93bを螺旋状に形成する。一対の通電路93a、93bは、電気絶縁層91が介在することで互いに離反している。
【0078】
図5D(B)に示すように、一対の通電路93a、93bにおける軸方向の先端側は、電気的に接続される。従って、この一対の通電路93a、93bは、螺旋状に往復する一本の通電路92を構成する。従って、この通電路92の一端92aと他端92bを、頭部42側に集約させることができる。結果、これらの両端92a、92bは、頭部42又は軸部44に形成される貫通孔49aを経由して、内部空間49まで延長できる。勿論、軸部44の先端側に両端92a、92bを集約しても良い。一対の通電路93a、93bは、それぞれ、ベース路95Pの表面に複数の低抵抗部分通電区(導電片)95Qが配置されて構成される。
【0079】
図5E(A)に、雄ねじ体40の他の構成例を示す。この雄ねじ体40は、軸部44におけるねじ部44bに、長手方向に沿って通電路92が形成される。具体的には、
図5E(B)の拡大断面図に示すように、ねじ部44bに対して、長手方向に延びる溝(凹部)90Aが形成され、この溝90Aの内周面には、下地層となる電気絶縁層の上に通電路92が直接的に形成される。従って、通電路92は、ねじ部44bのねじ山を乗り越えるように延びるが、溝(凹部)90A内に形成されているので、雌ねじと螺合しても干渉することを回避できる。
【0080】
<電気絶縁層や通電路の形成手法の提示>
電気絶縁層91や通電路92の形成手法には様々存在するが、大きくは成膜法(勿論、通電路以外をマスキングして被服した上で導電性の層を成膜し、マスキングを除去することで通電路としたり、逆に通電路にも絶縁層を成膜することで通電路に電気絶縁層を形成したりすることをパターン形成と呼ぶことも可能である。)とパターン形成法がある。成膜法の代表的なものとして気相成膜法、液相成膜法などがある。また、パターン形成法の代表的なものとしては印刷法(例えばスクリーン印刷、転写、インク吹付け)、ペン等で書く、箔押しなどがある。
【0081】
気相成膜法は、真空蒸着(例えば抵抗加熱型真空蒸着、電子ビーム蒸着・クラスタービーム蒸着、フラッシュ蒸着)、イオンプレーティング(例えば高周波励起型イオンプレーティング、活性化反応性蒸着)、スパッタリング(例えば直流(DC)スパッタリング、高周波(RF)スパッタリング、平板型マグネトロンスパッタリング、デュアルイオンビームスパッタリング)、分子線エピタキシー(MBE)、パルスレーザデポジション等のPVD法(物理蒸着)や、熱CVD、プラズマCVD (PECVD)、有機金属気相堆積法 (MOCVD)、クロライドCVD、光 (化学反応) CVD、レーザCVD、原子層成長法 (ALE)等のCVD法(化学蒸着)がある。
【0082】
液相成膜法には、めっき、塗布、ゾルゲル法、スピンコート法等がある。
【0083】
なお、これらの成膜法は、パターンを形成することができない場合があるので、例えばレジストによってパターニングすることも可能である。例えば、フォトレジスト(フォトリソグラフィ)やスクリーン印刷等によってパターニングすれば、高精度且つ高密度なパターンを形成できる。レジストは、成膜法の種類によって適宜選択すればよいが、例えば、エッチングレジスト、ソルダーレジスト、めっきレジストなどがある。レジストを除去する際は、例えば電気分解法等を用いる。
【0084】
なお、ここでは特に図示しないが、通電路92の外表面を更にカバー層で覆うこともできる。このカバー層は、電気絶縁層と同様の手法で形成すれば良い。
【0085】
図6Aに基板54の構成を示す。基板54は、所謂RFIDであり、アナログ回路及び/又はICチップ等から構成されており、全ての処理を制御する中央演算処理装置となるCPUと、一時的なデータを読み書きするための高速メモリRAMと、プログラムを格納するために使用する読み出し専用メモリROMと、データを格納するために書き込み可能なメモリEPROMと、基板と外部の通信制御を行うインタフェースと、外部と無線通信したり、外部電波を利用して電力を供給したりするアンテナと、抵抗値検出部を有するように構成することが出来る。なお、本実施形態では、基板54に加速度センサも設けられている。
【0086】
抵抗値検出部は、配線97が接続されて、電圧値及び/又は電流値の計測による通電路92の抵抗値を検出すると同時に、この値をデジタル情報(勿論、アナログ信号処理であってもよい。)に変換してCPUに提供する。結果、抵抗値データはEPROMに格納される。
【0087】
加速度センサは、基板54の振動や変位及び/又は変形等を検知して、雄ねじ体40の変位量データを算出する。これにより、建造物10の構造体が曲がったり、揺れたり、変形したりする動きを把握できる。変位量データは、EPROMに格納される。勿論、通電路を歪みゲージとして活用する場合、この歪みゲージとしての通電路から得られる情報を、時間情報等と関連付けて加速度や速度データを生成することも可能である。なお、加速度センサとしては、一般的に知られている振動方式、光学的方式の他、静電容量型、ピエゾ抵抗型、ガス温度分布型等の半導体方式等の各種の方式を採り得る。
【0088】
EPROMに格納される抵抗値データや変位量データは、管理者が情報収集する随時タイミングや、定期的なタイミング或いは不定期なタイミングにより、アンテナを介して外部(情報収集装置100)に送信される。勿論、各種の取得データの送信は、有線方式か無線方式かは問わない上、アナログ信号方式であってもデジタル信号方式であってもよい。
【0089】
ROM又はEPROMには、この雄ねじ体40の個体を識別するための情報(個体識別情報)が格納されており、情報収集装置100側においては、個体識別情報に対応付けて、建造物10の所在地(住所)、名称、構造体への設置場所等を登録しておく。これにより、各雄ねじ体40を個別に管理することが出来る。なお、本実施形態では、この基板54の一部は、ICチップを利用した所謂RFID技術を採用しているが、本発明はこれに限定されず、他の技術を用いてもよい。
【0090】
<ブリッジ回路の構成>
【0091】
通電路92の結線は、必須ではないが、
図6B及び
図6Cに示すように、ブリッジ回路を用いることが出来る。このブリッジ回路の配線又は抵抗Rは、配線97の途中及び/又は基板54内に構成すればよく、入力電圧をE、出力電圧をeとして、出力電圧の変化量から、歪み量を算出することができる。勿論、このブリッジ回路自体も測定対象であるセンサ構造付部材に対して直接的にパターン形成(パターニング)してもよい。
【0092】
図6B(A)は、一つの通電路92を用いる場合の一ゲージ法のブリッジ回路となる。
図6B(B)は、二つの通電路92を直列に配置して一ゲージとして用いる場合の二系列一ゲージ法のブリッジ回路となる。この二つの通電路92は、例えば部材の表裏に同方向に配置して、曲げ成分を除去しながら、引張・圧縮成分を計測する場合などに用いられる。
図6B(C)は、直列に配置される二つの通電路92をセットにして、二セットを並列に配置した四ゲージ法のブリッジ回路となる。例えば、四個の通電路92を、柱状部材の周方向の均等間隔となる四か所に、軸方向に沿って配置することで、引張・圧縮成分を検出する場合などに用いることが出来る。
図6B(D)は二つの通電路92を用いる場合の二ゲージ法のブリッジ回路となる。二ゲージ法では、二つの通電路92の測定方向(伸縮方向)を異ならせて、それぞれの応力を測定する二ゲージ二アクティブ法や、二つの通電路92の測定方向(伸縮方向)を一緒にして、一方をダミーとして用いる二ゲージ一アクティブ一ダミー法などで利用できる。
【0093】
図6C(A)は二つの通電路92をブリッジの対辺に結線する対辺二ゲージ法のブリッジ回路となる。例えば、二つの通電路92を、部材の表裏に同方向に配置することで、曲げ成分を除去しながら、引張・圧縮成分を計測する場合などに用いることが出来る。
図6C(B)は、四つの通電路92をブリッジの各辺に結線する四ゲージ法のブリッジ回路となる。四つの通電路92のうちの二つを円柱状部材の周方向に沿って配置し、他の二つを軸方向に配置することで、軸力を計測する場合等に用いることが出来る。この四ゲージ法は、トルク等や曲げ等を計測する際にも用いることができる。
【0094】
なお、ここではホイートストンブリッジ回路を例示したが、その他のブリッジ回路として、ウィーンブリッジ発振回路、マクスウェルブリッジ交流回路、ヘビサイドブリッジ交流回路、ゾーベルネットワークブリッジ高周波回路、シェーリングブリッジ回路、カーレフォスタブリッジ交流回路、アンダーソンブリッジ回路等を用いてもよいが、直流としての利用では、ホイートストンブリッジ回路を選定するとよい。
【0095】
図7(A)に情報収集装置100のハード構成を示す。この情報収集装置100は、所謂サーバであり、中央演算処理装置となるCPU、一時的なデータを読み書きするための高速メモリRAMと、マザーボードプログラムを格納するために使用する読み出し専用メモリROMと、データを格納するために書き込み可能なハードディスクHDDと、外部の通信制御を行うインタフェースと、雄ねじ体40と無線通信するアンテナを有する。なお、このアンテナは、情報収集装置100のハードウエアを構成するサーバ内に配置されている場合に限られず、各建造物10の雄ねじ体40の近辺に配置されたアンテナ或いは中継アンテナであっても良い。
【0096】
図7(B)に情報収集装置100のプログラム構成を示す。情報収集装置100は、情報整理部、情報分析部、アラーム表示部、メンテナンス履歴保持部を有する。情報整理部は、既に述べた雄ねじ体40の個体識別情報に対応付けて、建造物10の名称、所在地(住所)、構造体の設置場所、設置方角、センサ構造付部材30のサイズ、管理者(連絡先)等の他、各雄ねじ体40から収集された抵抗値データ及び変位量データを時系列で蓄積する。
【0097】
情報分析部は、収集された抵抗値データ及び変位量データを解析し、異常判断を行う。異常判断は、例えば時間の推移に伴って異常な数値が現れていないかや、複数のセンサ構造付部材30から収集されたデータに基づいて建造物10の全体の力学バランスが崩れていないかなどを解析・判定することが出来る。アラーム表示部は、情報分析部が、その分析結果に異常データが含まれると判断した際に、オペレータにメンテナンスアラーム、アラートを出力(画面、文字、発光、音等によって通知)する処理を行うように構成してもよい。メンテナンス履歴保持部が、建造物10のメンテナンス履歴を保存するようにしてもよい。
【0098】
特に本実施形態の情報分析部は、単一の雄ねじ体40に含まれる複数の通電路92の出力値を定期的に計測することで、例えば、一部の通電路92の故障を把握できる。
【0099】
以上によれば、建造物10の構造体中に複数のセンサ構造付部材30を配設することで、センサ構造付部材30に生じる歪み及び/又は変位(歪み情報から換算し得る各種情報やデータ)を検知することが可能となる。この検知結果は、情報収集装置100によって、有線及び/又は無線で接続されて回収されるので、客観的なデータとして活用できる。また例えば、データ回収を自動化できると同時に、略リアルタイムに観測・収集することが可能となり、地震等が生じた際の建造物10の変形量や歪み、内部応力変化等を把握できる。この状況に基づいて、メンテナンスの優先順位や、重要箇所を判断することもできるようになる。なお、通電路の電気抵抗値に紐付けられた歪みデータや応力データの取得は、加速度センサや振動計等の各種センサから取得される情報と異なり、測定対象物の加速度的変位や振動が納まった後の静止状態であっても、歪みの現在値情報(残留歪みを含む)や歪み履歴情報から、測定対象物の現在状態をより正確に把握することが可能となる。
【0100】
特に本実施形態のセンサ構造付部材30は、通電路92が印刷等によって直接形成されるので、剥離等が生じ難く、長期間(例えば数十年)に亘って安定して内部応力を把握できる。更に、一つのセンサ構造付部材30に対して、複数の通電路92が形成されるので、例えば、同一方向に配置される複数の通電路92(詳細は後述)の出力が得られないなどと言った場合は、センサ構造付部材30の該当箇所が損傷或いは破損したり、一方の通電路92が断線したり、一部に損傷を受けたりして、障害が生じていると判断できる。結果、確認すべきカ所の特定が容易となり、更に確認すべき事項の明確化や事前対策の検討等が出来るようになり、素早くメンテナンスができる。また、一方の通電路92が故障している間も、他方の通電路92を用いて歪みを検出することができるので、この多重化構造によって、計測を長期間に亘って安定継続できる。
【0101】
また、電気絶縁層91も、印刷やスパッタリング等によって、部材表面に直接形成されるので、長期間(例えば数十年)に亘って剥離や脱落等が生じ難くなる。結果、この電気絶縁層91の外表面に直接形成される通電路92により、安定して内部応力を把握できる。
【0102】
更に本実施形態のセンサ構造付部材30は、第一通電路93と第二通電路94を有するので、多方向の歪み、若しくは応力を同時に計測できる。従って、構造物10に作用する外力や応力、応力分布等をより詳細に把握することが可能となり、分析することが可能となる。
【0103】
なお、本実施形態ではセンサ構造付部材30として雄ねじ体40を採用したが、その締結方法は様々である。本計測システム1の目的からして、雄ねじ体40が絶対的に緩まない構造であることが好ましい。
【0104】
この構造について例示すると、例えば
図8Aには、雄ねじ体40のねじ部40bに、二種類の雄ねじ螺旋溝を形成することで、一方の螺旋溝と螺合する第一雌ねじ体70Aと、他方の螺旋溝と螺合する第二雌ねじ体70Bを螺合させると同時に、両者の相対回転を防止する機構を組み込むことで、完全に緩まないセンサ構造付部材30を構築することができる。この雄ねじ体40の円筒部44aに通電路92を形成すればよい。
【0105】
この雄ねじ体40のねじ部40bは、
図8B(A)又は
図8B(C)に示すように、平面に展開した状態における外形が略菱形状を成す条211を、180°相当の位相差で軸方向に交互に形成する。また、方向の異なる通電路を絶縁層を介して積層してもよい。
【0106】
図8B(B)に示すように、略菱形条を成す条211は、一方の軸方向列を成す条211aと、これと180°相当の位相差をもって軸方向列を成す他方の条211bを交互に備える。
図8B(B)に示すように、この条211は、周方向に沿って中央が最も高く、周方向の両端が低くなるように稜線部が形作られて構成される。従って、ねじ部40bの条211は、軸心(ねじ軸)に垂直となる面方向において、周方向に延びる略三日月状のねじ山及び/又は谷となり、一方側(図の左側)及び他方側(図の右側)に交互に配置される。この周条構造は、矢印Aに示す第一螺旋溝と、この第一螺旋溝とリード方向が反対となる矢印Bに示す第二螺旋溝が、重畳された構造となる。結果、このねじ部40bは、右ねじと成る第一雌ねじ体70Aと、左ねじと成る第二雌ねじ体70Bの双方に対して螺合自在である。
【0107】
このように、
図8Bに示す雄ねじ体40のねじ部40bの構造を採用する場合、
図8C(A)に示すように、一方の螺旋溝と他方の螺旋溝の溝内に通電路92を形成しても良い。このようにすると、一方の螺旋溝に沿って、通電路92が軸方向の一方に進み(矢印A参照)、他方の螺旋溝に沿って通電路92が軸方向の他方に進む(矢印B参照)ことができるので、一本の連続する通電路92で軸方向を往復することが可能となる。結果、通電路92の両端を、頭部側又は軸端側に集中させることができる。
【0108】
また更に、
図8C(B)に示すように、一方の条211aと他方の条211bの境界をジグザグ状に通電路92を形成することもできる。この場合は、
図8C(B)の図の表側の境界に位置するジグザグ状の通電路Aと、同図の裏側の境界に位置するジグザグ状の通電路Bによって、軸方向に往復するようにしても良い。
【0109】
更にまた
図8C(C)に示すように、軸方向に配列される一方の条211aの略菱形形状の周囲をジグザグ状に進展する通電路92を形成することもできる。このようにすると、一方のジグザグ状の通電路92によって軸方向の一方の進み(矢印A参照)、他方のジグザグ状の通電路92によって軸方向の他方に進む(矢印B参照)ことができるので、一本の連続する通電路92で軸方向を往復することが可能となる。この通電路92は、8字形状の通電路92が軸方向に連続する構造となる。
【0110】
また例えば
図9に示すように、ワッシャ150を利用して緩み止めを行う手法も採用できる。例えば、雄ねじ体40の頭部42の下部乃至付け根に相当する部位にねじ体側座部122を形成し、ワッシャ150の一方側(
図9の上面側)に第一受部160を形成し、両者の間に、第一係合機構Aを構成する。この第一係合機構Aは、ラチェット機構等になっており、雄ねじ体40を緩める方向に回転しようとすると互いに係合して、当該回転方向に対する第一受部160とねじ体側座部122との相対回転を防止する。
【0111】
更にワッシャ150の他方側(
図9の下面側)には、第二受部170が形成される。この第二受部170は、建造物10の構造体(支柱又は梁)12、14と対向する。構造体12、14には、ワッシャ150の第二受部170に対向する部材側座部182が孔として形成される。この部材側座部182と、ワッシャ150の第二受部170の間には、第二係合機構Bが構成される。具体的には、部材側座部182及び第二受部17の外形が、軸心に対して非正円形状となっており、この第二係合機構Bは、少なくともワッシャ150が緩める方向に回転しようとすると、第二受部170と部材側座部182が互いに係合して、当該回転方向に対する第二受部170と部材側座部182との相対回転を防止する。この第一係合機構Aと第二係合機構Bの作用により、雄ねじ体40が緩み方向に回転しようとすると、ワッシャ150の介在によって、雄ねじ体40と構造体12、14の相対回転が規制される。
【0112】
この際、雄ねじ体40の円筒部に通電路92を形成しても良く、また、ワッシャ150の第二受け部170に通電路92を形成しても良く、ワッシャ150の外周面に通電路92を形成しても良い。
【0113】
更に
図10に示すように、雌ねじ体70とワッシャ50を利用して緩み止めとすることもできる。雄ねじ体40の軸部44に、軸方向から視て断面非円形となる雄ねじ側連携領域80を形成する。この雄ねじ側連携領域80は、既に述べた平面60を兼ねることもできる。
【0114】
ワッシャ50と雌ねじ体70が互いに対向する面には、第一係合機構Aが構成される。この第一係合機構Aは、例えばラチェット機構となっており、少なくとも雌ねじ体70が、螺合する雄ねじ体40に対して緩まる方向に回転しようとすると、互いに係合して、当該回転方向に対する雄ねじ体40とワッシャ50の相対回転を防止する。ワッシャ50の他方側はセンサ構造付部材12、14と対向する。
【0115】
ワッシャ50における雄ねじ体の貫通孔82は、軸方向から視た場合に非正円形となっている。従って、この貫通孔82は、雄ねじ体40の雄ねじ側連携領域80に対して周方向に係合する(これを補助係合機構Bと定義する)。
【0116】
以上の通り、第一係合機構A及び補助係合機構Bによって、雌ねじ体70が緩むことができない構造にすることができる。
【0117】
この際、雄ねじ体40の軸部44に通電路92を形成しても良く、雌ねじ体70の外周面や、雌ねじ部の溝内に通電路92を形成しも良く、ワッシャ150の座面に通電路92を形成しても良い。
【0118】
また、上記実施形態では、部材となる雄ねじ体40に通電路92を形成する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば
図11(A)に示す金属や強化樹脂等のプレート材300に対して、通電路92を形成することもできる。プレート材300には、少なくとも二か所に、ボルトやリベット、溶接等によって相手部材に接合するための係合部302が形成される。従って、このプレート材300は、相手部材の変形に連動して、伸長、収縮、ねじれ等が生じる。このプレート材300には、第一方向Xに往復する第一通電路93が複数(ここでは、四個)、マトリクス状に配置される。具体的には、第一方向Xに離れた複数と、第一方向Xと直角となる第二方向Yに離れた複数個所によって構成される格子状に配置される。このように、第一通電路93をマトリクス状に配置すると、各第一通電路93の出力の差分から、プレート材300の第一方向Xを軸とするねじれ(矢印P参照)に関しても検知することが可能となる。また、第一方向Xの応力に関しては、第一通電路93の一部が故障しても、他の第一通電路93で検知できる。
【0119】
例えば
図11(B)に示すプレート材300のように、第一方向Xに往復する第一通電路93を複数(ここでは、二個)、第二方向Yに往復する第二通電路94を複数(ここでは、二個)、マトリクス状に配置しても良い。第一通電路93は、第二方向Yに離れた場所に一対配置される。第二通電路94は、第一通電路93に対して第一方向Xに離れた場所で、かつ、互いに第二方向Yに離れた場所に一対配置される。プレート材300には、両端近傍において、第二方向Yに離れた箇所に一対の係合孔302が形成される。このようにすると、第一方向Xの伸縮に加えて、第二方向Yの伸縮を検出することが可能となる。なお、第一方向Xと第二方向Yの双方に直角となる第三方向Z回りの曲げモーメント(矢印Q参照)についても、検知することができる。
【0120】
また例えば
図11(C)に示すプレート材300のように、第一方向Xに往復する第一通電路93を複数(ここでは、二個)、第二方向Yに往復する第二通電路94を複数(ここでは、二個)を、互いに千鳥状態でマトリクス状に配置しても良い。具体的には、第一通電路93は、第一方向X且つ第二方向Yに離れた場所に一対配置される。第二通電路94も、第一方向X且つ第二方向Yに離れた場所に一対配置される。このようにすると、第一方向Xの伸縮、第二方向Yの伸縮、第一方向Xを軸とするねじれ(矢印P参照)、第二方向Yを軸とするねじれ(図示省略)、第一方向Xと第二方向Yの双方に直角となる第三方向Z回りの曲げモーメント(矢印Q参照)等、様々応力を検知できる。
【0121】
これらのセンサ構造付部材(プレート材300)は、例えば
図12に示すように、ボルトによって鋼材等に締結する際に、接続プレートとして活用できる。従って、これらの複数のプレート材300を、様々な方向に沿って配置することで、より多様な応力計測を実現できる。
【0122】
なお、本発明のセンサ構造付部材は、上記実施形態で示した部材に限定されない。以下、様々な観点から、本発明が適用され得る部材を提示する。なお、本発明が適用されるのは、ここで提示する部材に限られず、その他の部材に適用可能であることは言うまでもない。
【0123】
<素材の観点からの部材提示>
部材の素材には金属、非金属を含む。金属には、アルミ、銅、銀、金、鉄、ニッケル、タングステン、チタン、亜鉛等の純物質系やそれらを成分に含んで成る混合物や化合物、例えば、真鍮、ステンレス、マグネシウム合金等の合金等を含む。非金属には、非金属には、木、プラスチック、紙、難燃処理した木、合板、ガラス、セラミック、陶器、磁器、ゴム、天然樹脂、合成樹脂、コンクリート、アスファルト等を含み、またこれらの複合材料を含む。
【0124】
鉄系の金属には、鋼(炭素量<0.02%)、鋳鉄(炭素量>2.14%)等を含む。鋼には、一般構造用圧延鋼材(SS)、溶接構造用圧延鋼材(SM)、冷間圧延鋼材(SPCC)等の普通鋼や、機械構造用合金鋼、工具鋼、特殊用途鋼等の特殊鋼を含む。機械構造用合金鋼炭素鋼は、クロム鋼(SCr)、ニッケルクロム鋼(SNC)等の合金鋼を含み、工具鋼は炭素工具鋼(SK)、合金工具鋼(SKD)、高速度工具鋼(SKH)を含み、特殊用途鋼は低合金系のバネ鋼(SUP)、軸受け鋼(SUJ)、快削鋼(SUM)、高合金系のステンレス鋼(SUS)、耐熱鋼(SUH)、高マンガン鋼を含む。鋳鉄は、ねずみ鋳鉄(FC)、球状黒鉛鋳鉄(FCD)を含む。
【0125】
非鉄系の金属には、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リチウムチタン等の軽金属、銅、スズ、亜鉛、鉛等のベースメタル、ニッケル、クロム、マンガン、モリブデン、タングステン、ビスマス、カドミニウム、コバルト等のレアメタル、セリウム、ネオジム、プラセオジム等のレアアース、金、銀、白金等の貴金属、ウラン、プルトニウム等の放射性金属が含まれ、またそれらを成分とする合金も含まれる。
【0126】
木には、ツバキ、タブノキ、クスノキ、モミ、トウヒその他の常緑樹、カエデ、サクラ、カラマツ、ブナ、ミズナラその他の落葉樹を含み、またそれらの他、合板や集成材、樹脂複合材、樹脂強化や難燃処理を施した特殊仕様の木等も含まれる。
【0127】
プラスチック(合成樹脂)には、フェノール樹脂 (PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂、UF)、不飽和ポリエステル樹脂 (UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン (PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン (PP)、ポリ塩化ビニル (PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン (PS)、ポリ酢酸ビニル (PVAc)、ポリウレタン(PUR)、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂 (PMMA)等の熱可塑性樹脂(汎用プラスチック)、各種ナイロン即ちポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO)、ポリエチレンテレフタレート (PET)、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート (GF-PET)、ポリブチレンテレフタレート (PBT)を含むボリエステル、環状ポリオレフィン (COP)等の熱可塑性樹脂(エンジニアリング・プラスチック)、ポリフェニレンスルファイド (PPS)、ポリサルフォン (PSF)、ポリエーテルサルフォン (PES)(Polyethersulfone)、非晶ポリアリレート (PAR)、液晶ポリマー (LCP)、ポリエーテルエーテルケトン (PEEK)、熱可塑性ポリイミド (PI)、ポリアミドイミド (PAI)(Polyamide-imide)等の熱可塑性樹脂(スーパーエンジニアリングプラスチック)等を含み、またこれらの複合物であるポリマーアロイを含み、また、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ素繊維、アラミド繊維、金属繊維等の強化材を混合して成る所謂FRPや各種の強化材料を含む。
【0128】
紙には、アサ、カジノキ、ガンピ、コウゾ、マユミ、ミツマタ、竹、藁(稲わら、麦わら)、亜麻、木綿、サトウキビインド、マニラアサ、ケナフ、バナナ、アブラヤシ、その他の非木材植物の紙原料からなるものや、広葉樹、針葉樹、木材チップ、古紙、再生紙、その他の木材の紙原料から成るものを含み、樹脂強化や難燃処理を施した特殊仕様の紙類を含む。
【0129】
難燃材料には、難燃処理木、難燃合板、難燃繊維板、難燃プラスチック板を含む。合板は、構造用合板、コンクリート型枠用合板(コンパネ)、普通合板、難燃合板、化粧合板、湾曲合板を含む。
【0130】
ガラスは、ソーダ石灰ガラス、カリガラス、クリスタルガラス、石英ガラス、偏光ガラス、複層ガラス(エコガラス)、強化ガラス、合わせガラス、耐熱ガラス・硼珪酸ガラス、防弾ガラス、ガラス繊維、表面に酸化チタン層を設けたり、極微細凹凸構造を形成するなどして構成される物を含む所謂光触媒クリーニングガラスや水ガラス、ウランガラス、アクリルガラス、ダイクロ、ゴールドストーン・茶金石・砂金石・紫金石、ガラスセラミックス、低融点ガラス、金属ガラス、サフィレット、分相ガラス、多孔質ガラス、リキッドガラスまたは液体ガラス、ハイブリッドガラス、有機ガラス、鉛ガラスを含む。
【0131】
セラミックは、酸化物系、水酸化物系、炭化物系、炭酸塩系、窒化物系、ハロゲン化物系、リン酸塩系等の元素系セラミック、チタン酸バリウム、高温超伝導セラミックス、窒化ホウ素、フェライト、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ステアタイト、酸化亜鉛、ジルコニア等のファインセラミックスを含む。
【0132】
陶磁器は、土器、せっ器(例えば半磁器、焼締め)、陶器、磁器を含む。
【0133】
合成ゴムは、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ポリイソブチレン(ブチルゴム IIR)等のRグループ(天然ゴムを除く)、エチレンプロピレンゴム(EPM, EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等のMグループ、エピクロルヒドリンゴム(CO, ECO)等のOグループ、ウレタンゴム(U)等のUグループ、シリコーンゴム(Q)等のQグループを含む。
【0134】
コンクリートは、普通コンクリート、高強度コンクリート、早強コンクリート、遮蔽コンクリート、軽量コンクリート、緑化コンクリート、水密コンクリート、補強コンクリート等を含む。補強コンクリートには、鉄筋コンクリート、竹筋コンクリート、コンクリート充填鋼管構造(CFT)、スチール繊維補強コンクリート(SFRC)、ガラス繊維補強コンクリート(GFRC, GRC)、炭素繊維補強コンクリート(CFRC)、ローマンコンクリートに代表される所謂古代コンクリートを含む。
【0135】
アスファルトは、ストレート・アスファルト(straight asphalt)、ブローン・アスファルト(blown asphalt)、防水工事用・アスファルト、舗装用改質アスファルト等を含む。
【0136】
<用途の観点からの部材提示>
部材の用途には、乗物(移動手段)、建造物(建築物)、家電機器、農業機械、建設機械(一般建設機械や特殊建設機械を含む)、工作機械等の機械類等を含む。
【0137】
乗物又は移動体は、有人移動若しくは無人移動を含め、陸用として、多輪乗物と無輪乗物を含む。四輪以上の多輪乗物には、トラック、バス、消防車、はしご車、ポンプ車、トレーラー、タンクローリー、ミキサー車、クレーン車、路面清掃車、バキュームカー、牽引車、除雪車、電車、モノレール、新幹線、路面電車、機関車、ケーブルカー、装甲車、戦車等を含み、四輪乗物には、自動車、パトカー、救急車、キャンピングカー等を含み、三輪乗物には三輪車、自動三輪車を含み、二輪乗物には、オートバイ、スクーター、自転車、電動アシスト自転車、車椅子、ベビーカー、人力車等を含み、一輪乗物には、一輪車を含む。無輪乗物は、リニアモーターカー、ホバークラフト、エレベータ、エスカレーター、リフト、ゴンドラ、ロープウェイ、観覧車、メリーゴーランド、ブランコ、シーソー等を含む。その他の車輪付乗物には、ホイール・ローダ、タイヤ・ローラ、ロード・ローラ、グレーダ、アスファルト・フィニッシャ、モータ・スイーパ、ダンプカー、ホイール・クレーン、フォークリフト、ストラドル・キャリヤ、ターレット式構内運搬車、農耕トラクタ、農業用薬剤散布車、刈取脱穀作業車、田植機、コンバイン、ショベルカー、バックホー、ローディングショベル、スノーモービル、ローラースケート、ローラーシューズ、スケートボード、キックボード、スキー、スノーボード、スケートシューズ等を含む。空用乗物又は移動体は、有人飛行若しくは無人飛行を問わず、気球、飛行船等の軽飛行機、飛行機、回転翼飛行機、グライダー、ヘリコプター、ドローン、ロケット、垂直離着陸機等の重飛行機を含む。海用乗物は、船ボート、ヨット、船舶客船、客船、貨客船、貨物船、タンカー、漁船、軍艦、潜水艦等を含む。また、乗物に用いられる部品としては、モノコック、ボディシェル、ボンネット、ドア、テールゲート、フロントフェンダー、ラジエーターグリル、バンパー、メーター、ヒーター、ウインドシールドグラス、ドアウインドグラス、エンジン、ラジエーター、マフラー、ブレーキペダル、アクセルペダル、クラッチペダル、シート、エグゾーストパイプ、テールランプ、ヘッドランプ、ホイール、タイヤ、線路、プロペラ、タンク、シリンダ、ピストン、アクチュエータ、ダンパ、リニアガイド、ベアリング、シャーシ、シャフト等を含む。
【0138】
建造物には、建物と土木建造物(工作物)を含む。建物は住居、商業施設、公共施設、文化施設、教育施設、医療施設、娯楽施設、交通施設、工業施設、宗教施設、軍事施設、プラント施設を含む。建物は更に、戸建住宅、連棟住宅(テラスハウス)、集合住宅、共同住宅、シェアハウス、オフィスビル、教会、修道院、寺院、神社、城、宮殿、御所、庭園、公園、病院、診療所、駅、駅舎、空港、官公庁宿舎、官公庁舎、警察署、消防署、交番、競技場、球場、運動場、プール、学校、体育館、劇場、映画館、演舞場、演芸場、観覧場、公会堂、集会場、ホテル、旅館、工場、倉庫、物流倉庫、ロジスティクスセンター、下宿、寄宿舎、児童福祉施設、助産所、身体障害者更生支援施設、精神障害者社会復帰施設、保護施設、婦人保護施設、知的障害者援護施設、老人福祉施設、有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、デイサービスセンター、母子保健施設、映画館、博物館、美術館、図書館、公衆便所、スポーツ練習場、ボウリング場、スキー場、百貨店、スーパーマーケット、雑貨屋、展示場、キャバレー、カフェ、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、待合室、料理店、飲食店、店舗、自動車車庫、自動車修理工場、映画スタジオ、テレビスタジオ等を含む。
【0139】
土木建造物(工作物)は橋梁、金属構造物、鉄道、道路、港湾、海岸、河川、発電施設や発電設備、ダム、トンネル、土地改良建造物、防災建造物、農業土木建造物を含む。橋梁は、桁橋、斜張橋、トラス橋、アーチ橋、ラーメン橋、吊橋を含み、金属構造物は、塔状構造物、貯蔵用構造物、水門・閘門、水圧鉄管、合成構造物、上水道、下水道、ガスや石油等の配送用途の物を含む各種のパイプラインを含み、鉄道は、線路、軌道構造、路盤、鉄道停車場、信号・保安・通信設備、高速鉄道、特殊鉄道、索道、市街鉄道を含み、道路は、路床・路盤、舗装、アスファルト系舗装、コンクリート系舗装、砂利道、防じん処理道等を含み、港湾は、泊地、防波堤、護岸、突堤、埠頭、岸壁、桟橋、上屋、荷役・陸上設備、船車連絡設備、漁港、航路標識等を含み、海岸は海岸構造物を含み、河川は堤防・護岸、砂防、河川構造物、運河を含み、発電施設や設備は取水設備、貯水池、調整池、原子力発電所、火力発電所、水力発電所、潮力発電、地熱発電、波力発電、風力発電を含み、ダムは重力ダム、フィルタイプダム、アーチダムを含み、トンネルはトンネル構造物を含み、土地改良構造物は、土地造成、干拓、浚渫、かんがい、排水、開墾、客土を含む。
【0140】
また、建造物で用いられる部材は、自然石、人造石、砕石を含む石類、木材、プレカット材、無垢材、機械等級製材、目視等級製材、無等級製材、甲種構造材、乙種構造材、集成材、エンジニアリングウッド、構造用集成材、合板、木質製品、樹脂製品、金属製品、鋼材、鋼板、鉄骨、有機系材料、塗装材料、防水材料、セメントペースト、のろ、モルタル、コンクリート、タイル、磁器質タイル、せっ器質タイル、陶器質タイル、畳、軽量気泡コンクリート、コンパネ、耐水合板、石膏ボード、耐火ボード、珪酸カルシウム板、断熱材、グラスウール、ロックウール、硬質ウレタンフォーム、スタイロフォーム、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、セルロースファイバー、プレストレストコンクリート、プレキャストコンクリート、水中コンクリート、ポリマーコンクリート、レジンコンクリート、マスコンクリート、膨張コンクリート、低収縮コンクリート、無収縮コンクリートを含む。
【0141】
建造物の部位は、構造材、締結部材、仕上げ材、下地材、内装材、外装材、面材、保温材、基礎、土台、壁、柱(通柱、管柱、隅柱、添え柱、大黒柱)、梁(小屋梁、火打梁、丸太梁、登り梁)、屋根、天井、床、階段、束、小屋束、窓、窓ガラス、窓枠、ドア、ドア枠、扉、棚、巾木、框(上り框)、化粧柱、床の間、床框、床板、床柱、欄間、鴨居、付鴨居、胴差、火打梁、筋交い、貫、間柱、束、軒、軒天井、野縁、ひさし、とい、フローリング、カーペット、クッションフロア、クロス、壁紙、障子、障子紙、サイディング、エキスパンションジョイント、瓦、セメント瓦、スレート瓦、コロニアル、波板鋼板、手摺を含む。
【0142】
建造物の各部材が実現する構造は、石積、レンガ造、木造、木質構造、土蔵構造、鉄骨造(S造)、軽量鉄骨造(LGS)、重量鉄骨造、無筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、コンクリート充填鋼管構造、コンクリートブロック造(CB造)、補強コンクリートブロック造、鋼・コンクリート合成構造、プレストレストコンクリート構造(PC)、膜構造、壁構造、架構構造、組積造、空気膜構造(一重膜)、空気膜構造(二重膜)、空気膜構造(エアービーム)、純ラーメン構造、有壁ラーメン、筋違付きラーメン、ブレース構造、コア構造、チューブ構造、トラス構造、ボールト構造、シェル構造、ケーブル(吊り)構造、ピン構造、スペースフレーム、アーチ、ドームシェル、耐震構造、免震構造、制振構造、剛構造、柔構造、断震構造を含む。
【0143】
建造物の工法は、組積式、軸組式、パネル式、木質パネル構法、吊り式、枠組構法、丸太組構法、重量鉄骨構造、軽量鉄骨構造、平面トラス、立体トラスを含む。
【0144】
建造物の形式は、平屋、低層、中層、高層、超高層、塔等を含む。
【0145】
家電機器は、テレビ、プロジェクター等の映像機器(表示装置)、ビデオテープレコーダー、DVDレコーダー、Blue-rayDiscレコーダー、HDDレコーダー、DVDプレイヤー、Blue-rayDiscプレイヤー等の映像機器(記録・再生装置)、ビデオカメラ、デジタルカメラ等の映像機器(撮影装置)、ワイヤーレコーダー、テープレコーダー、ミニディスクレコーダー、ラジカセ、ICレコーダー等の音響機器(録音・再生装置)、アナログプレーヤー、CDプレイヤー、アンプ、ラジオ等の音響機器(再生装置)、スピーカー、ヘッドホン等の音響機器(再現装置)、白物家電、情報家電等を含む。
【0146】
所謂白物家電等を含む電化製品は、洗濯機、掃除機、アイロン、ミシン、布団乾燥機、毛玉取り機、衣類乾燥機、ハンガースチーマー、ズボンプレッサー、くつ乾燥機、タオルヒーター、裁縫こて、オーブンレンジ・電子レンジ、炊飯器、ミキサー・フードプロセッサー、ガステーブル・コンロ、トースター、IH調理器、ホットプレート・グリル鍋、ホームベーカリー・製パン用具、卓上調理器具、湯沸かし器、揚げ物、電気圧力鍋・電気煮込み鍋、フィッシュロースター、スチームクッカー、スープメーカー・豆乳メーカー、もちつき機、ドライフードメーカー、冷蔵庫・冷凍庫、ケトル・ポット、コーヒーメーカー、浄水器、食器洗い乾燥機、食器乾燥器、炭酸水メーカー、整水器、お茶メーカー、生ゴミ処理機、カプセル式ティーマシン、タオル蒸し器・温蔵庫、暖房器具、空気清浄機、エアコン、加湿器、除湿機、扇風機、イオン発生機、サーキュレーター、浴室乾燥機、冷風扇、ドライヤー、ヘアアイロン、電動バリカン、電気髭剃り、ホットカーラー、美顔器、マイクロスコープ、電動歯ブラシ、口腔洗浄器、ステインクリーナー、アルコールチェッカー、ブレスチェッカー、脱毛器、光脱毛器、レーザー脱毛器、高周波脱毛器、電動角質リムーバー、デスクスタンド、玄関用照明、シーリング照明、インテリアスタンド、スポットライト、スライド照明、シーリングファン、シャンデリア、施設・屋外用照明、浴室用照明、ダウンライト、ブラックライト、ブラケットライト、フットライト、ガーデンライト、誘導灯、マッサージ機器、ヘルスケア・計測、温水洗浄便座、電気・低周波治療器、補聴器、電子タバコ、吸入器、鼻洗浄器、酸素エアチャージャー、家庭用紫外線治療器、温熱治療器、電球・蛍光灯、LED電球、直管蛍光灯、電球形蛍光灯、白熱電球、丸形蛍光灯(FCL)、LED蛍光灯、丸形スリム蛍光灯(FHC)、コンパクト形蛍光灯、ハロゲン電球、点灯管(グロー球)、二重環形蛍光灯(FHD)、豆球、電子点灯管、HIDランプ、電球口金形スリム蛍光灯(EFC)、角形スリム蛍光灯(FHG)、保温電球、電話機・ファックス、電話機、ファックス、複合型ファックス、増設子機、人感センサー付LED電球、一般電球タイプ(LED電球)を含む。
【0147】
情報家電は、パーソナルコンピュータ、ディスプレイ、キーボード、マウス、プリンター、3Dプリンター、タブレット、USBメモリー、外付けHDD、カードリーダー、ファクシミリ、携帯電話、スマートフォン、携帯ゲーム、家庭用ゲーム機、知育玩具を含む。
【0148】
農業機械は、トラクター等の汎用的な農業機械、プラウ(すき)、ハロー、ローラー、ロータリー耕耘機、代かき機、鎮圧機、均平機、うね立機、みぞ切り機等の耕耘・整地に用いる農業機械、抜根機、心土破砕機、みぞ掘り機、モールドレイナ(暗渠せん孔機)、穴掘機、バックホー等の耕土・造成・改良に用いる農業機械、マニュアスプレッダー(たい肥散布機)、スラリースプレッダー、ライムソーワー(石灰散布機)、プランタ(点播機)、施肥播種機等の施肥に用いる機械、田植機、野菜移植機、トランスプランタ(移植機)、散播機等の播種・移植に用いる農業機械、噴霧機、動力噴霧機、ミスト機、散粉機、動力散粉機、散粒機、動力散粒機、煙霧機、航空散布機・ヘリコプター(航空防除)、土壌消毒機、刈払機、管理機、スピードスプレーヤー、凍霜害防除機、中耕除草機、シンナ(間引機)、動力ポンプ、スプリンクラー(潅水装置)等の防除・管理に用いる農業機械、バインダー、コンバイン、野菜収穫機、モーアー、ヘイベーラー、ロールベーラー、ウィンドローワ、脱穀機、ビーンカッター(豆類収穫機)、とうもろこし収穫機、コーンシェラ、ばれいしょ収穫機、ビート収穫機、甘藷堀取り機、甘藷つる切り機、さとうきび収穫機、らっかせい収穫機、亜麻収穫機、たまねぎ堀取り機、栗用脱穀機、らっかせい脱穀機、摘採機、条桑刈取機、特用作物堀取り機、振動収穫機、ホップ摘花機等の収穫に用いる農業機械、乾燥機、籾すり機、選別機、精米機、牧草乾燥機、鶏糞乾燥機、特用作物乾燥機、精穀機、ディスクモアー、モア—コンディショナー、テッダー、レーキ、フォレージハーベスター、ヘーベーラ、ヘープレス、ロードワゴン、ヘーローダ、ベールローダー、飼料さい断機、フォレージブローワ、サイレージアンローダー、飼料粉砕機、フィードチョッパー、ルートカッター、飼料配合機、飼料成形機等の収穫物の乾燥と調製に用いる農業機械、自動給餌機、搾乳機械、牛乳冷却機、給水機、温水機、尿散布機、畜舎清掃機、固液分離機、糞尿処理装置、保温機、エッグリフター、洗卵選別機、畜舎消毒機等の家畜の管理に用いる農業機械、稚蚕共同飼育濕温調整装置、動力ざ桑機、稚蚕用自動飼育装置、壮蚕用自動飼育装置、条ばらい機、収けん機、まゆ毛羽取り機等の育蚕に用いる農業機械、マルチャ、磔耕栽培装置、ハウス暖房機、蔬菜洗浄機、深層施肥機、動力剪定機、ツリータワー、果樹園用ロータリーカッター、選果機、樹園地内運搬用機、管理機等の蔬菜果樹園芸(畑作)に用いる農業機械、蒸し機、粗じゅう機、じゅうねん機、中じゅう機、精じゅう機等の製茶に用いる農業機械、剪枝機、ラミー剥皮機、い草選別機、チューリップ選別機、らっかせい脱皮機等の花卉特用作物に用いる農業機械、刈払機、チェーンソー、集材機等の林業に用いる農業機械、トレーラー、穀物用搬送機、フロントローダー等の運搬搬送に用いる農業機械等を含む。
【0149】
一般建設機械は、ブルドーザ、リッパドーザ(リッパ付ブルドーザ)、スクレイプドーザ、被けん引式スクレイパー、モータスクレイパー等のブルドーザ・スクレイパー、油圧ショベル(ユンボ、バックホー、パワーショベル)、ドラグライン、クラムシェル、泥上掘削機、トラクタショベル、ホイールローダー、トレンチャ、バケットホイールエクスカベーター等の掘削機・積み込み機、トラック、ダンプトラック、クレーン装置付トラック、トレーラー、機関車、ズリ鋼車、シャトルカー、不整地運搬車(特装運搬車)、ショベルローダー、フォークローダー、総輪駆動車、ベルトコンベア、バケットホイールエクスカベーター等の運搬機械、クローラークレーン、トラッククレーン、ホイールクレーン(オールテレーンクレーン、ラフテレーンクレーン)、タワークレーン、ジブクレーン、鉄道クレーン、浮きクレーン、パイプレイヤ、建設用リフト、エレベータ、門型クレーン、フォークリフト、ストラドルキャリア、コンテナキャリア、トップリフタ、クランプリフト、高所作業車(リフト車)、コンクリート床仕上げロボット、玉掛け外しロボット、アンローダー等のクレーン・荷役機械、杭打ち機、ディーゼルハンマ、油圧ハンマ、バイブロハンマ、ウォータージェット(ウォータージェットカッタ)、アースオーガ、アースオーガ中掘り機、モンケン、油圧式鋼管圧入引き抜き機、サンドパイル打ち機、粉体噴射攪拌機、オールケーシング掘削機、穴掘建柱車、アースドリル、リバースサーキュレーションドリル、地下連続壁施工機、泥排水処理設備(アルカリ水中和装置、汚泥吸排車(バキュームカー)含む)、グラウトポンプ、グラウトミキサ(モルタルプラント含む)、ニューマチックケーソン施工機器、深層混合処理機、高圧噴射攪拌用地盤改良機、薬液注入施工機器、深礎工用機械(ロータリー吹き付け機、水中切断機等)、杭抜き機等の基礎工事用機械、ボーリングマシン、ダウンザホールハンマ、さく岩機(ハンドハンマ、レッグハンマ、ドリフタ、ピックハンマ、ベビーハンマ、リベッティングハンマ、チッピングハンマ、コーキングハンマ、スケーリングハンマ、サンドランマ、コンクリートブレーカ、大型ブレーカ等)、ドリルジャンボ、クローラドリル、トンネル掘削機・切削機、グラブホッパ、グラブリフタ、トンネル施工機器、シールド工事用機器等のせん孔機械・トンネル工事用機械、モータグレーダ、スタビライザ、ミキシングプラント、超軟弱地盤用混合機等のモータグレーダ・路盤用機械、ロードローラー(マカダムローラ、タンデムローラ)、タイヤローラ、タンピングローラ、振動ローラ、タンパ、ランマ、振動コンパクタ等の締固め機械、コンクリートプラント、トラックミキサ(アジテータトラック)、コンクリートポンプ車、コンクリートポンプ、コンクリートプレーサ、スクリュークリート、アジテータカー、コンクリート圧砕機等のコンクリート機械、アスファルトプラント、リサイクルプラント、アスファルトフィニッシャ、アスファルトケットル、ディストリビュータ、チップスプレッダ、アスファルトクッカ、コンクリートスプレッダ、コンクリートフィニッシャ、コンクリートレベラ(コンクリート縦仕上げ機)、コンクリート簡易仕上げ機、コンクリート横取り機、振動目地切り機、コンクリートカッタ、インナーバイブレータ、アスファルトエンジンスプレーヤ、アスファルトカーバ、ジョイントシーラ、プレーサスプレッタ、スリップフォームベーパ、キュアリングマシン等の舗装機械、路面ヒータ、ジョイントクリーナ、路面清掃車、ラインマーカ、溶解槽、区画線消去機、路面切削機、路上表層再生機、ガードレール清掃車、路面安全溝切削機(グルービング機)、散水車、ガードレール支柱打ち込み機、区画線施工機、床版上面増厚機、マイクロサーフェースマシン、排水性舗装機能回復機等の道路維持用機械、空気圧縮機(コンプレッサ)、送風機(ファン)等の空気圧縮機・送風機、小型うず巻きポンプ、小型多段遠心ポンプ(タービンポンプ)、深井戸用水中モータポンプ、真空ポンプ、工事用水中モータポンプ(潜水ポンプ)、水中サンドポンプ(攪拌装置付工事用水中ポンプ)、スラリーポンプ等のポンプ、変圧器(トランス)、高圧気中開閉器、キュービクル式高圧受変電設備、発動発電機等の電気機器、ウインチ、ホイスト、チェーンブロック等のウインチ、トラックスケール、計量器、コア採取器(コアボーリングマシン)、CBR試験器、平板載荷試験装置、グラウト流量・圧力測定装置、ガス検知器、騒音計、振動計測機器、沈下・傾斜測定機器、粉塵計、濁度計、自動測量装置、光波測定器等の試験測定機器、架設桁、ベント、門型クレーン、ホイスト、チェーンブロック、ギヤードトロリー、ウインチ、ジャッキ、油圧ポンプ、重量台車、送り出し装置、鉄塔、キャリア、サドル、バックステイ調整装置、ケーブル定着装置、ターンバックル、ロープハンガ、アンリーラー、送り出し装置、横取り装置、降下装置、トラベラクレーン、桁吊り装置、桁吊り門構え移動装置、ターンテーブル、移動支保、地覆高欄作業車等の鋼橋・PC橋 架設用仮設備機器、コンクリートミキサ、骨材計量器、コンクリートバケット、コンクリートバイブレータ、コンクリート破砕器、ジョークラッシャ、インパクトクラッシャ、溶接機、溶接棒乾燥機、油圧ジャッキ、モンケン、軌条、ターンテーブル、モルタルコンクリート吹付機、コンクリート吹付機、急結剤供給装置、種子吹付機、ベントナイトミキサ、水槽、刈払機、芝刈機、チェーンソー、フロート、工事用信号機、工事用高圧洗浄機、薬剤散布機、集草機、ジェットヒータ、パッカー車、自走式破砕機、自走式土質改良機、自走式木材破砕機等のその他陸上用一般建設機械を含む。
【0150】
また、本発明は、特殊建設機械への適用も可能であり、特殊建設機械としては、主作業船、付属作業船、作業船用付属設備、港湾工事用付属機器等の港湾・河川・海岸工事用機械、コンクリート生産設備、コンクリート運搬設備、コンクリート冷却設備、骨材生産設備、セメント輸送・貯蔵設備、給水設備、公害対策設備、その他ダム施工機械等のダム工事用機械、雪上車、除雪装置、除雪用アタッチメント、散布車等の除雪機械、推進工事用機械等の下水道工事用機械、地雷除去機械等を含む。
【0151】
工作機械は、汎用又はNCのタレット旋盤等の旋盤、フライス、エンドミル等を用いるフライス盤、バイト等を用いる形削り盤、バイト等を用いる平削り盤、ドリル、リーマー、タップ等を用いるボール盤、バイト等を用いる中ぐり盤、ワイヤーカット放電加工機、形彫放電加工機等の放電加工機、ブローチ等を用いるブローチ盤、ボブ盤(ボブ)、歯車形削り盤(ラックカッタ、ピニオンカッタ)等の歯切り盤、砥石等を用いる研削盤、コンターマシン、帯鋸盤、マシニングセンタ、ウォータージェット加工機、レーザー加工機、電子ビーム加工機、ホーニング加工機、電解加工機、バリ取り・面取り機、電解バリ取り機、裁断機、転造機、ナットフォーマやパーツフォーマ等のフォーミング装置等を含む。また、これらの工作機械に含まれる、ドリル、エンドミル、バイト、チップ、タップ、鋸歯状ツール類、ダイス、金型等の各種加工工具、工具ホルダも含む。
【0152】
その他、部材の一般的な用途として、躯体の構造材、建築物の構造材、外装材、内装材、風力発電のプロペラ、ソーラーパネル、シリンダ、ピストン、アクチュエータ、ダンパ、リニアガイド、ベアリング、エンジンブロック、シャーシ、シャフト、ロッド、L字金具、カーテン、ロールカーテン、ベランダ/バルコニ/出窓等の手摺/格子/サッシ、廊下や通路や階段やベッドサイドやトイレ内壁等の手摺、椅子、机、書棚、食器棚、ベッド、浴槽、便座、便器等を含む。
【0153】
<形状の観点からの部材提示>
【0154】
部材の形状は様々である。例えば、鋼材の形状は、鋼板、八角鋼、六角鋼、平鋼、角鋼、丸鋼、線材、不等辺山形鋼、直線形鋼矢板、U形鋼矢板、等辺山形鋼、溝形鋼、I形鋼、H形鋼、鉄道用レールやカーテンレールを含むレール、鋼管等を含む。
【0155】
また、鋼材に限られない形状として、プロペラ、スクリュ、断面H形、全体形状、断面形状、円環状、角環状、円管状、角管状、球状、立方体、直方体、板状、シート状、チューブ、軟質チューブ、硬質チューブ、螺旋状、平面螺旋(渦巻き状)、立体螺旋(コイル状)、多孔質、軟性多孔質、硬性多孔質、円錐、角錐、ホーン形、流線形、中空形等を含む。
【0156】
<製法や形状等を含む汎用名称の観点からの部材提示>
【0157】
例えば鋼材の汎用名称には、薄鋼板(厚さ3mm未満)、厚鋼板(厚さ3mm以上)等の鋼板、電縫鋼管、鍛接鋼管、継目無鋼管、スパイラル鋼管、UOE鋼管(=大型溶接鋼管)、板巻鋼管等の鋼管、H形鋼、山形鋼、I形鋼、溝形鋼、鋼矢板、レール、軽量形鋼、デッキプレート、軽量鋼矢板等の形鋼、丸棒、四角棒、六角棒、八角棒、平鋼、異形棒鋼等の棒鋼、軟鋼線材、硬鋼線材、ピアノ線材、特殊線材等の線材、鋼を鋳型に鋳込んで所要形状の製品とした鋳鋼品や、適当な鍛練成形比を与えるように鋼塊または鋼片を鍛錬成形し、通常、所定の機械的性質を与えるために熱処理を施した鍛鋼品等の鋳鍛鋼品等を含む。
【0158】
また、鋼材に限られない汎用名称として、瓦、柱、梁、タイル、窓ガラス、ドア、扉、引き戸、建具、スクリュやプロペラ、インペラ等を含む各種羽、ホイール、リーンホース、ボンネット、壁紙、棚、テーブル、H鋼、煙突、はしご等を含む。
【0159】
次に、上記の部材に直接的に形成される通電路の各種詳細について説明する。なお、本発明が適用されるのは、ここで提示する内容に限られない。
【0160】
<通電路が形成される場所>
部材に対して通電路が形成される場所は、部材の表面、裏面、表裏面の双方、側面、周面などである。内部空間を有する部材の場合は、内周面或いは内側表面と外周面の一方又は双方である。また、部材の肉部内に溝又は孔が存在する場合に、その溝又は孔に通電材料を積層したり、充填することで、部材の肉部内に通電路を形成することも可能である。
【0161】
<通電路の層状態>
通電路の層状態は、
図3等で示すような単層、
図5Dで示すような二層に限られず、三層以上の多層構造を採用することができる。通電路を複数層の積層構造にする際は、中間層として電気絶縁材料を介在させることが出来る。最も外側の通電路には保護層を形成することが好ましい。保護層は、通電路に対する外部からの干渉によって、当該通電路が損傷することを防護するための保護層、紫外線等による劣化を防ぐための耐候層、空気や蒸気或いは腐食性のガス等から気体透過や酸化、腐食等を防ぐための耐ガス層、酸性や塩基性或いは溶剤、油、薬液類等からの影響を防ぐ耐薬品層等々を単層形成又は積層形成することも好ましい。
【0162】
<通電路の形状>
通電路の形状は、直線や曲線等の線状、平面や曲面等の面状、複数の平面や曲面、その他の面を組み合わせた立体形状(中空、中実の双方を含む)等がある。面状の通電路の場合、通電路自体を面状に構成する場合の他、ジグザグ形状やマトリクス形状、格子形状、螺旋形状のように、線状の配線を平面・曲面領域内に広がるように配置する又は積層することによって、実質的に面状とする場合も含む。この面状の通電路には、円柱の部分又は全部表面、円錐の部分又は全部表面、球体の部分又は全部表面によって、曲面形状とすることもできる。面状の通電路の外形は、リング形状(環状)、筒形状(内周面、外周面)、四角形状、多角形状、円又は楕円形状、異形形状、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0163】
<通電路の数>
通電路の配置数は、単数の場合と、複数の場合がある。また、通電路が面状となる場合、これを複数配置するパターンとして、直線状に沿って複数の通電路を並べて配置する場合、曲線状(円状を含む)に沿って複数の通電路を並べて配置する場合、螺旋状に沿って複数の通電路を並べて配置する場合、マトリクス・格子状の複数の通電路を配置する場合、多層に複数の通電路を配置する場合、立体的に複数の通電路を配置する場合等がある。また、通電路がリング形状(環状)となる場合は、例えば、同心状(同心円状又は略相似形状等)に複数の通電路を配置することもできる。勿論、同心でなければならないというものではないことは言うまでもない。同様に、複数の素線を平行状態又は積層状態に配置することにより、複数の通電路を隣接配置することもできる。
【0164】
<通電路の素材>
通電路の素材には、アルミニウム、銅、銀、金、白金、鉄、炭素等を主成分とする材料及び/又はこれらの複合材料、或いは、これらを主成分としない材料を含む。またこの他、PVC法やCVD法等の成膜法によって、通電路や絶縁層を形成することが出来、それらには、例えば、酸化物の薄膜、フッ化物の薄膜、窒化膜、炭化膜等がある。酸化物の薄膜は、Al2O3(酸化アルミニウム、アルミナ)、CeO2(酸化セリウム)、Cr2O3(酸化クロム)、Ga2O3(酸化ガリウム)、HfO2(酸化ハフニウム、ハフニア)、NiO(酸化ニッケル)、MgO(酸化マグネシウム、マグネシア) 、ITO(In2O3+SnO2)酸化インジウムスズ、Nb2O5(五酸化ニオブ)、Ta2O5(五酸化タンタル)、Y2O3(酸化イットリウム、イットリア)、WO3(酸化タングステン)、TiO(一酸化チタン) 、Ti3O5(五酸化チタン)、TiO2(二酸化チタン、チタニア) 、ZnO(酸化亜鉛)、ZrO2+TiO2(複合酸化物)、ZrO2(酸化ジルコニウム、ジルコニア)等を含む。
【0165】
フッ化物の薄膜は、AlF3(フッ化アルミニウム) 、CaF2(フッ化カルシウム)、CeF3(フッ化セリウム)、LaF3(フッ化ランタン)、LiF(フッ化リチウム)、NaF(フッ化ナトリウム)、MgF2(フッ化マグネシウム)、NdF3(フッ化ネオジウム)、SmF3(フッ化サマリウム)、YbF3(フッ化イッテルビウム)、YF3(フッ化イットリウム)、GdF3(フッ化ガドリニウム)等を含む。
【0166】
窒化膜は、TiN(窒化チタン)、CrN(窒化クロム)、TiCN(炭窒化チタン)、TiAlN(窒化チタンアルミ)、BN(窒化ホウ素)、AlN(窒化アルミニウム)、CN(窒化炭素)、BCN(窒化ホウ素炭素)等を含む。
【0167】
炭化膜は、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、TiC(炭化チタン)、SiC(炭化ケイ素)、BC(炭化ホウ素)、WC(炭化タングステン)等を含む。
【0168】
他にも、iZO、グラフェン、ポリアセチレン、SnO2(二酸化スズ)等もある、
【0169】
通電路の色としては、透明、不透明、半透明、白色、灰色、銀色、黒色、赤色、茶色等様々多様な色を採り得る。部材がガラス等の透明、半透明の場合は、通電路も透明又は半透明とすることが好ましい。
【0170】
<通電路の機能>
通電路によって実現されるセンシング機能として、機械量計測、熱・温度計測、光・放射線計測、電気計測、磁気計測、化学計測等がある。機械量計測は、加速度センサ等の加速度、ストレインゲージ(歪みゲージ)、ロードセル、半導体圧力センサ等の力、音波(マイクロフォン)、超音波等の振動等を含む。熱・温度計測は、サーミスタ、抵抗測温体、熱電対(この場合、相異なる電気伝導性の通電路の両端に接点を形成して、温接点と冷接点とすることによって実現することが出来る。)等の接触式センシング、放射温度計等の非接触式センシング等を含む。光・放射線計測は、光センサ、光電素子、フォトダイオード等の光検知 、赤外線検知、放射線検知等を含む。電気計測は、電場、電流、電圧、電力等を含む。磁気計測は磁気センサ等を含む。化学計測は、におい検知、イオン濃度検知、ガス濃度検知等を含む。
【0171】
更に、通電路単独若しくは他の回路や素子との連携によって実現されるセンサは、時間を測る時計センサ、光位置センサ (PSD)、リミットスイッチ等の位置センサ、超音波距離計、静電容量変位計、光学式測距、電磁波測距等の距離センサ、差動トランス、リニアエンコーダ等の変位センサ、レーザードップラー振動速度計、レーザドップラー流速計等の速度センサ、ポテンショメータ、回転角センサ等の回転角センサ、タコジェネレータ、ロータリエンコーダ等の回転数センサ、ジャイロセンサ、一次元画像 リニアイメージセンサ等の角速度センサ、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等の二次元画像センサ、ステレオ画像センサ、漏液センサ(リークセンサ)、液検知センサ(レベルセンサ)等の液センサ、硬度センサ、湿度センサ、流量センサ、傾斜センサ、地震センサ等を含む。
【0172】
更に、通電路で実現される歪みセンサの用い方には、荷重測定(ロードセル)、変位測定、振動測定、加速度測定、トルク測定(トランスデューサー)、圧力測定、コリオリの力計測等を含む。また、この他、通電路の電気抵抗値の変化から環境温度を計測するようにしてもよい。この場合、通電路は所謂抵抗温度計として利用することを意味し、当該通電路の配設対象である母材の配設部位が、熱伸縮や変形の影響を受け難いところを選定することが好ましい。
【0173】
例えば、有限の所定の温度範囲における熱膨張係数が実質的に零となる素材、具体的にはペロブスカイト系の素材やビスマス・ランタン・ニッケル酸化物系の素材であってもよく、また負の熱膨張係数を有する素材と、これと絶対値がほぼ等しく正の熱膨張係数を有する素材を組み合わせたり、或いは正の熱膨張材料と負の熱膨張材料とを微細構造として組み合わせてナノコンポジット化させるなどして熱膨張率を零とするように構成した材料を組み合わせて用いてもよい。このようにすると、外力に起因した母材の変形に伴う通電路の電気抵抗値変化と、環境温度の変化に伴う通電路の電気抵抗値変化を、明確に区分することが可能となる。
【0174】
また更に、通電路内又はこの通電路とは別の場所となる母材上に、圧電素子を配置すること、若しくは、圧電素子構造を有する通電路を設けることが可能である。通電路内に圧電素子若しくは圧電素子構造を有する通電路を設ければ、圧電素子若しくは圧電素子構造を有する通電路に加わる外力をセンシングしたり、圧力変化に伴って生じるピエゾ電流(起電力)を、通電路や回路等の作動に供することができる。例えば、母材と外部部材によって挟持され得る場所に圧電素子若しくは圧電素子構造を有する通電路を設け、その挟持力の変化(例えば振動)を利用して圧電素子に起電力を生じさせ、その起電力を、通電路のセンシングの電源として活用することもできる。
【0175】
同様に、通電路内又はこの通電路とは別の場所となる母材上に、ペルチェ素子若しくはペルチェ素子構造を有する通電路を設けることも可能である。通電路内にペルチェ素子若しくはペルチェ素子構造を有する通電路を設ければ、母材内又は母材と外部部材との間に温度差を生じさせることができる。例えば、温度変化が生じやすい場所にペルチェ素子若しくはペルチェ素子構造を有する通電路を設け配置し、場所による温度差をペルチェ素子若しくはペルチェ素子構造を有する通電路に対する通電によって強制的に当該温度差を無くすことができる。つまり、温度差が発生している場所において、発生している温度差の高温側にペルチェ素子若しくはペルチェ素子構造を有する通電路の吸熱部を設け、低温側に発熱部を設けてペルチェ素子若しくはペルチェ素子構造を有する通電路に給電することで元々の高温側を冷却し、同時に、低温側を加熱して温度差を解消するのであるが、高温側と低温側が入れ替わる場合には、通電方向を逆転させることで、吸熱側と発熱側を交番させることが可能となる。従って、この交番を制御すれば、適宜の部位を温めたり、冷却したりして所望の温度に制御することが可能となる。勿論、元々の高温側を加熱し、低温側を冷却するように構成してもよい。また、ペルチェ素子若しくはペルチェ素子構造を有する通電路の発熱部にはヒートシンク構造を設けて熱放散を向上させることができる。ペルチェ素子構造を有する通電路は、P型半導体とN型半導体とによるPN接合を直列接続させ、通電方向がN→Pとなる接合部同士の集合による領域と、通電方向がP→Nとなる接合部同士の集合による領域とを設けることで構成でき、例えば、P型半導体とN型半導体の各種の従来公知の半導体素材を適宜領域に積層するなどして形成しつつ、N→Pの接合部と、P→Nの接合部のそれぞれに金属等の導電性素材、若しくは半導体素材を積層過程で設けることでも構成することが可能である。
【0176】
次に、上記の通り提示した部材を含む、本発明が適用され得る部材を形態的観点からその一部を紹介する。なお、通電路については、応力の検出方向を矢印で示すことで、詳細な配線構造の図示は省略する。
【0177】
図13(A)のセンサ構造付部材400Aは、断面四角又は菱型、台形等の軸部材410Aに対して、通電路92が周方向及び軸方向に複数配置されたものである。この態様の具体例として、ねじ、支柱、レール、ガイド軸、木材等が挙げられる。勿論、センサ構造付部材400Aの周囲の全面に広がるように、
図1I等で示すセンサ構造500を形成しても良い。
【0178】
図13(B)のセンサ構造付部材400Bは、断面円又は楕円形状等の軸部材410Aに対して、通電路92が周方向及び軸方向に複数配置されたものである。この態様の具体例として、ねじ(座面、円筒部、頭部周面、頭部表面、ねじ山の溝等)、ボールねじ、モータ軸等を含む様々な駆動軸、減速機や増速機の軸部材、プロペラ軸、クランク軸、ピストン軸、車輪軸、各種軸要素、シャフト、ロッド、ワイヤ等の各種線材、棒状の木材等が挙げられる。
【0179】
図13(C)のセンサ構造付部材400Cは、断面がI字形状等のレール部材410Cに対して、通電路92が周方向及び軸方向に複数配置されたものである。このような、長尺状のレール部材は、使用中において、撓みや捩れなどによって応力が生じ、破断等の可能性があることから、通電路92によって状態変化を検知することが好ましい。勿論、断面がI字形状の場合に限られず、H型鋼、C型鋼、L型鋼などにも適用できる。勿論、センサ構造付部材400Cの側面の全面に広がるように、
図1I等で示すセンサ構造500を形成しても良い。
【0180】
図14(A)のセンサ構造付部材500Aは、面方向に広がる板状のプレート材510Aに対して通電路92が面方向に複数配置されたものである。この態様の具体例として、壁紙を含む壁材、床材、天井材、ボディー、カバー、ケース、リム、容器、天板、板状のフレーム、タイル、木製・石膏等のボード、窓ガラス、ドア、ヒンジプレート等が挙げられる。なお、ここでは特に図示しないが、このプレート材510Aに開口が形成されるグレーチング、パンチングメタル等もセンサ構造付部材として用いることができる。なお、プレート材510Aの外形は特に限定されず、方形、円形、楕円形、長円形、台形等、様々な形状にできる。円形等の場合は、弁体として利用することもできる。また、面全体に対して、均等又は分散させるように、多数の通電路92を形成することも好ましい。勿論、センサ構造付部材500Aの全面に広がるように、
図1I等で示すセンサ構造500を形成しても良い。
【0181】
図14(B)のセンサ構造付部材500Bは、面方向に広がる帯状のプレート材510Bに対して通電路92が面方向に複数配置されたものである。この態様の具体例として、
図14(A)に挙げたものの他、板ばね、棚板等が挙げられる。勿論、センサ構造付部材500Bの全面に広がるように、
図1I等で示すセンサ構造500を形成しても良い。
【0182】
図14(C)のセンサ構造付部材500Cは、板状のプレートを断面L字形状に屈曲させたL字プレート材510Cに対して、通電路92が複数配置されたものである。この場合、通電路92は、L字プレート材510Cの屈曲線に跨るように配置することも好ましい。この態様の具体例として、L型鋼、L型ブラケット、L字プレート、ステー等が挙げられる。勿論、センサ構造付部材500Cの全面に広がるように、
図1I等で示すセンサ構造500を形成しても良い。
【0183】
図14(D)のセンサ構造付部材500Dは、板状のプレートを湾曲させたL字プレート材510Cに対して、通電路92が複数配置されたものである。この態様の具体例として、配管や支柱の固定治具、雨樋の固定治具、各種ステー等が挙げられる。勿論、センサ構造付部材500Dの全面に広がるように、
図1I等で示すセンサ構造500を形成しても良い。
【0184】
図15(A)のセンサ構造付部材600Aは、四角筒状の部材610Aに対して、内周側及び/又は外周側に通電路92が複数配置されたものである。この態様の具体例として、ロ型鋼、角パイプ、配管等が挙げられる。なお、ここでは特に図示しないが、この部材610Aの一部を開放した断面コ字形状の部材を用いることもできる。具体的にはC型鋼、用水路、排水溝等が挙げられる。勿論、特に図示しないが、センサ構造付部材600Aの内周又は外周の全面に広がるように、
図1I等で示すセンサ構造500を形成しても良い。
【0185】
図15(B)のセンサ構造付部材600Bは、円筒状の部材610Bに対して、内周側及び/又は外周側に通電路92が複数配置されたものである。ここでは特に、フランジ又はリムが形成されており、このフランジに対しても通電路92が形成される。この態様の具体例として、丸パイプ、配管(ガス等の気体配管、液体配管)、パイプライン、圧力容器、雌ねじ、スリーブ、各種中空軸、シリンダ、ロケット等のボディ、燃料タンク、ガスタンク、タイヤホイール等が挙げられる。勿論、特に図示しないが、センサ構造付部材600Bの内周又は外周の全面に広がるように、
図1I等で示すセンサ構造500を形成しても良い。
【0186】
図16(A)のセンサ構造付部材700Aは、中空又は中実となる略立方体、略円筒体、略球体の部材710Aに対して、内周側及び/又は外周側に通電路92が複数配置されたものである。この態様の具体例として、略円筒型若しくは略球殻型の圧力容器等を含む各種容器、ケース、ブロック等が挙げられる。勿論、特に図示しないが、センサ構造付部材700Aの外周の全面に広がるように、
図1I等で示すセンサ構造500を形成しても良い。
【0187】
図16(B)のセンサ構造付部材700Bは、中空又は中実となる球状の部材710Bに対して、内周側及び/又は外周側に通電路92が複数配置されたものである。球状の部材710Bの場合は、緯度方向と、経度方向に沿って応力が計測できるように配置することが好ましい。この態様の具体例として、弁体、各種ボール、カプセル、ガスタンク等が挙げられる。勿論、特に図示しないが、センサ構造付部材700Bの全面に広がるように、
図1I等で示すセンサ構造500を形成しても良い。
【0188】
図17(A)のセンサ構造付部材800Aは、断面積の変化等によって剛性が変化する部材810Aに対して、通電路92が複数配置されたものである。この場合は、剛性又は断面積が変化する箇所、あるいは剛性又は断面積が減少から増加又は増加から減少に転じる経常的な変曲点に通電路92を配置することが好ましい。この態様の具体例として、振動ホーン、各種ステー、支柱、フレーム等が挙げられる。勿論、特に図示しないが、センサ構造付部材800Aの全面に広がるように、
図1I等で示すセンサ構造500を形成しても良い。
【0189】
図17(A)の具体例となる
図17(B)のセンサ構造付部材800Bは、羽根車における羽根の付け根に相当する断面積が変化する部材810Bに対して、通電路92が配置されたものである。羽根の付け根は、応力集中が生じやすく、破断すると大きな事故につながる。従って、事前に歪み状況を検知することで、メンテナンスを可能にする。勿論、センサ構造付部材800Bの羽根の全面に広がるように、
図1I等で示すセンサ構造500を形成しても良い。
【0190】
なお、上記具体例は、本発明の一部であり、他の部材にも適用可能である。例えば、雄ねじにおける座面、円筒部、頭部周面、頭部表面、ねじ山の溝等、雌ねじの座面、外周面、ねじ山の溝等、ワッシャの座面、単一の孔を有するもの、複数の穴を有して複数の雄ねじが締結されるもの、長穴を有するもの、フック、鉄筋、コンクリート、木材(柱、はり)、石(大理石、人口大理石を含む)、タービン(ブレードを含む)、エンジン、ゴムチューブ、シリコンチューブ、風力発電や水力発電等の羽根の表面、回転軸、支柱など、リーンフォースメント、構造躯体等を含むことができる。
【0191】
本実施形態では、通電路92によって部材の応力を計測する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。部材の変化に伴って通電路92が一緒に変化し、通電路92の電気的変化によって検知できるものであれば、他の計測に利用できる。具体的には、変位(加速度、回転)、温度変化、表面の圧力変化等が挙げられる。
【0192】
また、本発明のセンサ構造付部材の材料は、金属以外にも様々に選択できる。例えば、プラスチック又は複合材料(炭素繊維強化プラスチック、シリカ繊維強化プラスチック等)であっても良い。
【0193】
<通電路の具体例>
次に、部材表面に形成される通電路及びセンサ構造の他の構成について更に説明する。複数の方向の応力を検知する場合、第一方向に往復するように延びる第一通電路93と、第二方向に往復するように延びる第二通電路94を互いに独立(離反)して形成しても良いが、本発明はこれに限定されない。例えば
図18(A)及び(B)の通電路92は、第一通電路93と第二通電路94が重なるように形成される。なお、第一通電路93と第二通電路94の間には電気絶縁層91が介在するようになっている。このようにすると、狭い場所であっても、多方向の複数の通電路又はセンサ構造を重畳形成できることになる。
【0194】
また、
図19A(A)に示すセンサ構造ように、ベース路95Pを並列回路とし、帯幅方向(横方向)に隣接配置される並列配線部を有する並列領域X内に、複数の低抵抗部分通電区95Qを配置しても良い。このようにすると、並列領域Xの帯長手方向の検出感度を高めることができる。この際、更に
図19A(B)に示すセンサ構造のように、低抵抗部分通電区95Qが形成される並列領域X近傍のみを、高抵抗値となるベース路95Pとし、このベース路95Pに電力を供給する供給配線95Rは良導体(低抵抗値材料)で形成することも望ましい。このようにすると、センサ構造付部材30の変形時に、供給配線95Rの抵抗値変動が小さくなるので、並列領域X内に限定して変形等を検出することが可能となり、検出信号のノイズを抑制できる。なお、並列領域Xを形成する場所(範囲)が限られる場合は、例えば
図19Bに示すように、並列配線部Xを帯長手方向(縦方向)に並べて配置することもできる。
【0195】
更に、例えば
図19Cに示すセンサ構造のように、低抵抗部分通電区95Qを下層とし、ベース路95Pを上層とすることもできる。つまり、ベース路95Pの裏側表面に低抵抗部分通電区95Qを形成することもできる。
【0196】
更に、
図19Dに示すセンサ構造のように、電気絶縁層91を介在させた状態で上層側通電路92T及び下層側通電路92Uを積層しても良い。上層側通電路92Tは、ベース路95Pが下層となり、低抵抗部分通電区95Qが上層となる。一方、下層側通電路92Uは、ベース路95Pが上層となり、低抵抗部分通電区95Qが下層となる。なお、ここでは二層構造の場合を例示したが、三層以上の構造を採用しても良い。
【0197】
更に
図19E(A)(B)に示すように、センサ構造を備える通電路92に対して電力を供給する供給配線95Rは、センサ構造付部材30における通電路92が配される平面30Aと同一面又は平行面30Bに形成されることが好ましい。供給配線95Rは低抵抗値材料が用いられるものの、センサ構造付部材30が変形又は変位すると、多少の抵抗値変化が生じ得る。そこで、本事例のように構成すると、センサ構造付部材30の通電路92の大きな抵抗値変化と、供給配線95Rの抵抗値の微細変化の挙動特性が近似するので、供給配線95Rの微細抵抗値変化が、通電路92の検出信号に対するノイズ成分になりにくい。
【0198】
図19Fに示すように、センサ構造を備える通電路92を並列状態で配設し、一方の通電路92に対して一方向に電流を流す第一整流手段95Wを直列状態で接続し、他方の通電路92に対して他方向に電流を流す第二整流手段95Vを直列状態で接続することも好ましい。このようにすると、供給配線95Rに流す電流方向(印加する電圧の正負)を切り替えるだけで、一方の通電路92によるセンシングと、他方の通電路92によるセンシングを選択することができる。例えば、共通の電源又は検出手段によって、交番電流(交番電圧)を印加することで、複数の通電路92から別々の検出結果を得ることが可能になる。
【0199】
図19Gに示すように、通電路92を放射状に配設することも好ましい。具体的には、半径方向に往復する通電路92を周方向に一定の間隔で設けて、互いに直列接続する。このようなパターンを、母材となる円盤表面や球状表面に形成すると、この円盤等が面直角方向の圧力を受けて、半径方向に延出するような変形を、高感度で検出することが可能となる。
【0200】
更に上記実施形態では、ベース路95Pが帯状配線となる場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。
図20(A)及び(B)に示す通電路92のように、ベース路として面状抵抗配線95Cを配設し、その両外縁に電極95A、95Bを配置しておき、この面状抵抗配線95Cの表面に、複数の低抵抗部分通電区95Qを配置することもできる。本実施例では、面状抵抗配線95Cの一方の表面に、複数の方形(必ずしも方形でなければ成らないというものではなく、断続的に比較的良好な抵抗値の導電部95Dを設けて構成するすればよい)の低抵抗部分通電区95Qを、面方向に広がるように(例えばマトリクス状、ハニカム状)に互いに間隔を存して配置する。電極95A、95Bは、例えば、一方向に一対(A1、A2)、他方向に一対(B1、B2)となるように合計四か所に配置する。
【0201】
二対の電極95A、95Bのそれぞれに電圧を印加すると、
図20(B)の矢印に示すように、低抵抗部分通電区95Qの内部と、距離d0で隣接する低抵抗部分通電区95Qの間の面状抵抗配線95Cの一方の表層を電子が移動して電流が流れる。従って、面状抵抗配線95Cの一方の表層側に対する電流を支配的なものとして電流を流すことができる。
【0202】
従って、
図20(C)に示すように面状抵抗配線95Cの面方向一方の表面が伸びるように通電路92を一方向に湾曲させると、隣接する低抵抗部分通電区95Qの距離がd0からdに広がる。結果、一方向の一対(A1、A2)の電極95A、95Bの間の抵抗値が増大し、湾曲状態を検知できる。特に図示しないが、面状抵抗配線95Cを面方向他方向に湾曲させると、他方向の一対(B1、B2)の電極95A、95Bの間の抵抗値が増大する。
【0203】
なお、ここでは低抵抗部分通電区95Qが正方形となる場合を例示したが、三角形、長方形、五角形、六角形、八角形等の多角形、楕円、正円等の円形の他、様々な形状を採用できる。例えば六角形の場合は、
図21(A)に示すように、所謂ハニカム状に低抵抗部分通電区95Qを配置しても良い。その際は、周囲に三対(A1、A2)(B1、B2)(C1、C2)以上の電極を対向配置しても良い。また、
図21(B)に示すように、所謂サッカーボールのように、球状の面状抵抗配線95Cの表面に、五角形と六角形の低抵抗部分通電区95Qを組み合わせて配置することも可能である。また、面状抵抗配線95Cを半導体又は絶縁体として、電極間の静電容量の変化を検知することも可能である。
【0204】
また、本発明は、通電路92において、応力を検出するセンサ構造を実現することに加えて、他の機能を付加することができる。例えば
図22に示すように、第一の抵抗率値(若しくは、仕事関数値)を有する第一部分通電路92Xと、第二の抵抗率値(若しくは、仕事関数値)を有する第二部分通電路92Yの両端を接続して、一方の接続点を温接点T1、他方の接続点を冷接点T2とすることができる。、この場合、起電力を得ることが可能となる。これは、抵抗率値を異ならせること、つまり、第一の抵抗率を有する第一部分通電路92Xと、第二の抵抗率値を有する第二部分通電路92Yの素材(材料)を異ならせることで、簡単に実現することができる。この温接点T1と冷接点T2に温度差が生じると、所謂ゼーベック効果により、温接点T1と冷接点T2の間に電圧Vが生じて電流が流れる。従って、この通電路92に対して既に説明したセンサ構造を形成すれば、センサ構造付部材に生じる温度変化を検知したり、センサ構造用の起電力を自ら得たりすることが可能となる。
【0205】
次に、本実施形態において、複数の通電路92(複数のセンサ構造)を形成する際の通電回路の構成を
図23から
図27を用いて示す。
【0206】
図23は、センサ構造付部材202に形成される通電回路201を示す。通電回路201は、電気抵抗となる複数の通電路92が並列に接続されて構成される(
図23(a)参照)。これにより、例えば、センサ構造付部材202が壁紙や板材などのように所望の広域な面積を有する場合、多数の通電路92を分散配置できるので、各通電路92近傍の歪み等を検知することが可能となる。また、全ての通電路92に対して、共通の端子A、端子Bとなる一対(又は複数対)の良導体から電圧が印加されるので、通電回路201の回路構成を単純化できる。
【0207】
この際、各通電路92は、それぞれ抵抗値R1,R2,R3,R4に設定されており、これらの四つの通電路92は、良導体を経由して端子A、端子Bに両端が接続される。なお、通電路92の数は四つに限らず幾つでも構わない。また抵抗を測定できる端子の数も二つに限らない。抵抗値R1,R2,R3,R4は、互いに異なる抵抗値に設定されており、お互いの抵抗値R1,R2,R3,R4の差は、各通電路92が規格内の歪み等をセンシングする際に生じる得る最大抵抗値変化量(δR1,δR2,δR3,δR4)よりも大きく設定されている。
【0208】
【0209】
通電回路201はセンサ構造付部材202に直接的に形成されている。通電路92を形成する方法としては、塗布、転写、リソグラフィー、切削、蒸着、印刷、半導体プロセスなどが考えられる。電気抵抗となる部分は、高抵抗率の電導性塗料又はペーストを用いることも出来、また、ニクロムなど抵抗率の高い金属の薄膜を通電路92として形成しても良い。良導体としては銅、アルミなど抵抗率の低い金属の薄膜を形成することも考えられる。なおセンサ構造付部材202が電気伝導体である場合は、下地として絶縁体を塗布した上に通電回路201を形成することが望ましい。下地としては例えばポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)等が考えられる。
【0210】
図23(a)の場合、端子Aと端子Bの間の合成抵抗Rは、センサ構造付部材202に何ら支障が無く定常状態であり、回路パターンが全て接続されている場合には、1/R=1/R1+1/R2+1/R3+1/R4の関係が成り立ち、計算により求めることができる。
【0211】
また、センサ構造付部材202に変形、変温等が生じた場合、通電路92の抵抗値等が変化することによって、その変化をセンシングすることが可能となる。例えば、抵抗値R1となる通電路92が、歪み等によって変形して抵抗値がδR1だけ増大した場合は、1/R=1/(R1+δR1)+1/R2+1/R3+1/R4の関係が成り立つ。この合成抵抗Rの変化によって各種現象或いは物理状態の変化をセンシングできる。
【0212】
これに対して、センサ構造付部材202が振動や経年劣化等で損傷を生じ、
図23(b)のように切断部位203を生じる場合を仮定すると、端子Aと端子Bの間の合成抵抗R´は、1/R´= 1/R2+1/R3+1/R4となり、端子Aと端子Bの間の抵抗を図ることで、センサ構造付部材202に支障が生じたことがわかる。さらにR1~R4を異なる抵抗値にしているので、どの通電路92に繋がる経路に支障が生じたかを、端子Aと端子Bの間の電気抵抗を測定するだけで検知することができる。本実施形態としては、単純に電気抵抗が並列に並んだ形態を示したが、通電回路201としては、電気抵抗が直列接続された構造であっても良く、直列接続と並列接続が入り交じった構造であっても良い。
【0213】
図24は、
図23で示した通電回路201の変形例である二次元マトリックス状の通電回路204の例を示す。
図24(a)の二次元マトリックス通電回路204は、電気抵抗となる複数の通電路92が、メッシュ状(格子状)に相互接続して構成される。通電路92と通電路92の間は良導体で形成された回路パターンで接続されている。通電回路204は、電気抵抗を測定するための端子A、端子B、端子C、端子Dを備えており、例えば端子Aと端子Cの間の抵抗を測定することで、センサ構造付部材202の変化をセンシングすることができる。
【0214】
また、通電路92が全て同じ電気抵抗だとしても、複数の通電路92のいずれかが断線や故障した場合、一個所の接続が切れたのか、二個所以上の接続が切れたのかといった大まかな故障情報を簡単に得ることができる。また各通電路92については、それぞれ例えばキロオーム単位で異なる抵抗値、例えば素数の抵抗値、すなわち2キロオーム、3キロオーム、5キロオームといった異なる値の電気抵抗を備えていれば、通電路92が形成されたセンサ構造付部材202のどの部分に破断等の支障が起こったのか、端子間の抵抗を測定すれば推定することが可能である。例えば、全ての抵抗値を素数に設定すれば、並列回路における合成抵抗値に含まれる素数積の因数分解(の一意)性から、断線した抵抗値を推測することができ、結果として、断線した通電路205の場所を特定できる。
【0215】
図24(b)には二次元マトリックス状の通電回路204の更なる変形例を示す。この通電回路204では、マトリックス状に配置される通電路92が、互いに直列接続される。この直列回路の場合、どこかで断線が生じると、通電回路204の全体でセンシングができなくなるので、断線によって異常を検知することが可能になる。一方で、
図23(a)や
図24(a)で示した並列接続を含む通電回路の方が、一部が断線しても残部でセンシングが可能となり、長期間に亘る計測用途に好適となる。
【0216】
また、
図24(b)では端子A、端子Bのみを図示しているが、各通電路92(又はある特定の複数の通電路92群)を測定する端子を設けることで、構造体のどこに損傷が生じているかを、事後的に特定できるようにしてもよい。従って定期センシングでは端子Aと端子Bの間の抵抗を測定することで、センサ構造付部材202全体についての安全性を容易にチェックできるとともに、何らかの異常を検知した後や、地震等の突発的な事象後の詳細検査時には、各通電路92間を個別測定することで、センサ構造付部材202のどの部分で損傷が生じているかを特定しても良い。
【0217】
図23及び
図24のように、通電路92が二次元平面に広がった通電回路は、長さ、細さ、厚さ等が変化すれば電気抵抗も変化する。従って、この通電回路が形成されたシート状又はメッシュ状の通電路形成部材を、道路、床、壁等の建造物等に埋設することで、アスファルトやコンクリート等の硬化時、硬化後に生じる歪みをリアルタイムにセンシングすることができる。またこのようなシート状の部材を埋設又は貼り付ける用途の応用として、ダム、空港滑走路、港湾、高層建築物、上下水道網、高速道路、鉄道の高架橋等巨大構造物の建設工程解析、故障解析等に特に好適である。また、各通電回路の一部にメモリを配置しておき、センシング履歴データを保存するようにすれば、建設工程時に生じる振動現象等の履歴を正確に蓄積することができ、事後的なデータ改ざん等を防止できる。
【0218】
また、上記
図23及び
図24の事例では、通常、センサ構造付部材の歪等を検知している。更に、通電回路に切断部位が生じた場合は、その位置を容易に特定できる。一方で、そもそもセンサ構造付部材の切断現象(即ち、通電回路の断線現象)を限定的に検知する目的で活用することもできる。
【0219】
更に
図24では、複数の通電路92を二次元マトリクス状に相互接続する場合を例示したが、三次元マトリクス状(立体状)に相互接続しても良い。センサ構造付部材が立体構造物の場合に好適である。
【0220】
また、
図23、
図24のように多数の異なる抵抗値を持つ通電路92を、センサ構造付部材に直接設けるためには、その回路パターンを予め設計する必要がある。この際、計算機等のメモリに、所定の抵抗値を持つ基本的なパターン情報を複数用意しておき、この計算機で実行される回路生成プログラムによって、これらのパターン情報を組み合わせることで回路データを生成し、この回路データを印刷機や半導体成膜装置に伝送して、導電性塗料や金属ペーストを塗布・プリント等したり、半導体プロセスのレジスト被膜を描写したりすることで実際の通電回路を形成する手法が好ましい。この種の設計工程例を
図25に示す。
【0221】
図25(a)は、正方形(正方形に限らず、例えば、正三角形、長方形、菱形、正六角形、その他、適宜の幾何学的形状)等の一定の面積を有する基準枠において、対辺の中央に配置される一対の端子207と、一対の端子207の間に配置される単位抵抗体208とを有するパターン情報206aを示す。単位抵抗体208は、例えば1キロオームの基準抵抗値に設定される、結果、プリントパターン情報206aは1キロオームパターンとなる。
【0222】
図25(b)のパターン情報206bは、一対の端子207の間に、単位抵抗体208が直接に二個配置されるので2キロオームパターンとなる。
図25(c)のパターン情報206cは3キロオームパターンとなり、
図25(d)のパターン情報206dは5キロオームパターンとなり、
図25(e)のパターン情報206eは7キロオームパターンとなる。
【0223】
また、
図25(f)のパターン情報206fは、正方形の基準枠の各四辺の中央に計四個の端子207が配置され、それらの全端子207と接続される位置に、単位抵抗体208が配置される。このようにすると、計4個の端子207の中から任意の二個の端子207を利用すれば、1キロオームの抵抗を得ることができる。その他にも、
図25(g)(h)(i)のパターン情報206g、206h、206iのように、良導体のみの連結用パターンも用意しておくことが好ましい。これらのパターン情報206a~206iを計算機のメモリに蓄積しておき、これらをプログラム上で組み合わせることで、所望の抵抗値のパターン情報(回路情報)を容易に生成できる。なお、ここでは正方形の基準枠の各辺の中央に隣接するパターンと連続する端子を配置する場合を例示したが、正方形の基準枠の各角部に、隣接するパターンと連続する端子を配置しても良い。
【0224】
図26は、15個のパターン情報を組み合わせて生成した回路情報を描写したものである。ここでは、複数のパターン情報を直列配置した4キロオームの通電回路と、13キロオームの通電回路と、14キロオームの通電回路が、互いに並列接続される。例えば、この回路情報を塗布装置にインプットし、塗布装置が、良導体ペースト又は抵抗体ペーストをセンサ構造付部材に塗布して通電回路を形成すれば良い。また、フォトレジスト等により、センサ構造付部材に対して同パターンを描写してマスキングし、半導体や蒸着等の成膜プロセスによって所望の通電回路を形成しても良い。
【0225】
次に、
図27及び
図28を参照して、センサ構造付部材の使用例を説明する。
図27(a)は橋梁等の柱状構造体にセンサ構造(通電回路)を形成する場合の概念図である。通電回路213は、柱212(橋脚)上に形成される。このとき通電回路213としては、有機導電材を直接プリントすることが考えられる。このようにすると、柱212上にアクティブな電気回路を容易に形成できる。具体的には、既に説明したセンサ構造に加えて、アンテナ構造、共振回路、増幅回路、制御回路、変調回路、送受信インタフェース等を更にプリントできる。柱212に、歪、変形、伸縮、ひび等の物理的な現象が生じると、例えば柱の表面に形成されたアンテナ構造が変位又は損傷されて、共振周波数が変化することが考えられる。通常は応答が可能だった通電回路213が、十全に応答することができなくなることで、それによっても物理現象を検知できる。また柱212が膨張するとアンテナの面積が大きくなり、共振周波数が低くなる等の現象が生じることが予想され、その周波数変化により、柱212の物理変化について定量的な情報も得ることができる。
【0226】
図27(b)に、
図27(a)にA-A'の断面図を示す。通電回路213は、柱212の表面に絶縁体の下地214を塗布した上で、センサ構造を有する回路パターン層215を形成し、防水性を有する保護層216で表面を覆うことが望ましい。ただし、コンクリートの柱212等のように、検出したいセンサ構造付部材が絶縁体であるときには下地214を省略することも考えられる。特に、プレキャストコンクリートやプレカット材木等如くの製造工場の工程と、その後の現場施工の工程の双方を経ることとなる対象の場合には、製造工場にてパターニング工程によってパターニングを施すことが可能となり、現場における施工性を大幅に向上させることが出来る。勿論、回路については既存の電子回路(ICチップ)を用い、物理現象を検出するためのセンサ構造のみを柱212等のセンサ構造付部材に直接プリントすることも考えられる。フォトリソグラフィなどの半導体プロセスを使用することや、プリント基板を作成する場合のように金属膜を形成した後にエッチングをおこなうことで形成しても良い。
【0227】
次に
図28を参照して、センサ217と、測定対象となる部材(構造物212)が別部材となる事例を説明する。本実施形態のセンサ217は、複数のセンサ構造(通電回路)を内蔵する帯状の材料となる。このセンサ217は、所謂スマート包帯であり、
図28(a)のように、橋脚等の柱状の構造物212にらせん状に巻きつけられて、構造物212を補強すると同時に、補強後の自身の変形等によって物理現象を検出する。センサ217への通電回路のプリント方法は、転写、エッチング、塗布、半導体プロセス等でもよい。センサ217の材質は、布、不織布、樹脂、炭素繊維、金属繊維、ケイ素繊維、ガラス繊維等の各種強化繊維を含む繊維強化合成樹脂、紙、ゴム、シリコーン等、様々である。通電路の材質はアルミでも銅でも有機電導体でもその他の電気伝導体でも良い。個別にセンサ構造を実現する通電回路213には、ID信号発信回路が形成されており、それぞれ独立した個別IDを発信できる。このID信号発信回路は、ICチップを事後的に貼り付ける等によって配置しても良い。この結果、各通電回路213が、センサ217全体のどの場所に位置するかを予め把握(識別)できる。例えば、このスマート包帯を用いた補強後に、
図28(b)のように、無線アクセス手段218により、全ての通電回路213から個別IDを受信して、構造物212のどの場所に、どの個別ID(通電回路213)が配置されているかを確認してデータとして保存しておく。その後、柱212に変形や異常が生じると、各通電回路213の抵抗値変化によって、その変形量を検知できる。また例えば、柱212に亀裂が入ると各通電回路213のアンテナ構造の一部が破壊される。アクセス可能であった通電回路213がアクセス不能になったり、特定のアンテナの共振周波数が変化したりする。そのアクセス不能又は周波数変化の情報と共に、通電回路213から個別IDを収集することにより、柱212のどの部分に支障が生じているか、補強材を剥がしたり、除去したりすることなく検知するように構成することもできる。なお、ここでは通電回路213毎に個別IDを付与する場合を例示しているが、例えば、スマート包帯となるセンサ217単位で部分IDを付与しても良く、その他のルールでIDを付与することも可能である。
【0228】
また、通電路形成部材として、高圧用、中圧用、低圧用を含めた各種の送電線等の電線、上水道用、下水道用、ガス用、蒸気用、各種薬品用、オイル用等の各種配管、配管用のジョイントの各種部材等を採用することも可能である。
【0229】
<その他の観点>
上記以外にも、本発明は、多用な機械部品に適用することが可能である。例えば、直動部品としては、リニアシャフト、シャフトホルダ、セットカラー、リニアブッシュ、ボールガイド、スプライン、無給油ブッシュ・ワッシャ、無給油ブッシュ、無給油ワッシャ、無給油素材(丸棒・パイプ)、無給油プレート・ガイドレール、無給油プレート、無給油ガイドレール、無給油素材(プレート)、リニアガイド、ケーブルキャリア、ボールねじ、サポートユニット、台形ねじ・すべりねじ、台形ねじ用ナット、すべりねじ、クロスローラー、クロスローラーテーブル、クロスローラーリング、リニアボールスライド、リニアレール、アクチュエータ、インデックステーブル、パワーシリンダ・ジャッキ、ジャバラ等を挙げることが出来る。また、回転部品としては、例えば、ベアリング、ベアリングホルダ、カムフォロア、ローラフォロア、回転軸、駆動軸等を挙げることが出来る。連結・リンク機構部品としては、例えば、支点用段付ねじ、ヒンジピン、ヒンジベース、ヒンジボルト、リンク、ロッドエンドベアリング、連結棒、リンクケーブル、リンクワイヤ等を挙げることが出来る。また、伝動部品としては、例えば、リジット形、ユニバーサルジョイント、チェーンカップリング、フランジ形等のカップリング軸継手やタイミングベルト、丸ベルト、Vベルト、プーリ、チェーン、スプロケット、チェーンボルト、ターンバックル、テンショナー、平歯車、かさ歯車、はすば歯車、ねじ歯車、ウォームギア、ラックギア、内歯車等の歯車やラチェット、リングレールギア等を挙げることが出来る。また、動力源としては、内燃機関や外燃機関等のエンジンの他、小型ACモータ、ステッピングモータ、サーボモータ、ブラシレスモータ、ブラシ付きDCモータ、汎用モータ、ギアモータ等を含むモータ、またクラッチやブレーキを含む変速機や減速機等を挙げることが出来る。また、コンベヤやローラ等を含む搬送部品やテーブルリフター、エアーリフト等を含めた昇降機、運搬機類等を挙げることが出来る。また、ステージ部品としては、X軸、Z軸、XY軸、XYZ軸、回転、ゴニオ、チルト、多軸等の移動ステージであって、手動又は自動のステージ等を含めて挙げることが出来る。空圧機器としては、シリンダ、アクチュエータ、バルブ、レギュレータ、ルブリケータ、空圧用電磁弁、流体用電磁弁、エアオペレイト弁、配管用継手等を挙げることが出来る。また、真空部品としては、例えば、真空配管、真空ポンプ、真空発生器、エジェクタ、真空バルブ、真空フィルタ、真空用圧力調整弁、吸着パッド、真空タンク、チャンバー等を挙げることが出来る。油圧用機器としては、例えば、油圧アクチュエータ、油圧ポンプ、オイルフィルタ、油圧シリンダ、油圧ロータリーアクチュエータ、油圧クランプ、油圧ポンプ、オイルフィルタ、油圧バルブ、油圧ホース、オイルキャップ等を挙げることが出来る。配管部品としては、鋼管、銅管・ステンレス管、樹脂管等を挙げることが出来、継手としては、ねじ込み継手、ねじ込み式フランジ、ホース用継手、ステンレス管用継手、銅管用継手、鋼管用継手、溶接式継手、溶接式フランジ、ロータリージョイント、スイベルジョイント、メカニカル式管継手、樹脂管継手、伸縮管継手、塩ビ管用継手、カプラジョイント、ワンタッチジョイント等を挙げることが出来、バルブとしては、ボールバルブ、ニードルバルブ、流体用チェックバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブ、バタフライバルブ、ダイヤフラムバルブ、ピンチバルブ、空気操作弁、安全弁、調整弁等を挙げることが出来、配管支持具としては、例えば、吊配管金具、立配管金具、床貫通用金具、フロアーバンド、U字金具、サドルバンド、ブラケット等を挙げることが出来、配管用クランプとしては、例えば、マニホールド、ブロックマニホールド、ロータリーマニホールド、継手付ブラケット、マグネット付マニホールド等を挙げることが出来、樹脂ホース類としては、例えば、樹脂ホース、ホースバンド、ホースリール、ダクトホース等を挙げることが出来、またダクト配管部品としては、ダクト管、フレキシブルホース、サニタリー配管、サニタリーバルブ、サニタリー管、サニタリー継手、クランプ、ガスケット等を含み、シール材としては、Oリング、オイルシール、ガスケット、シールワッシャ、シールキャップ、パッキン等を挙げることが出来、排水関連部品としては、排水マス、雨水マス、ふた、防護蓋、溝用蓋、脱気筒等を挙げることが出来る。また、棚関連部品としては、例えば、棚、棚受、棚柱、棚板等を挙げることが出来る。蝶番としては、例えば、ピボット形、ロータリー形、リーフ形等であってもよく、平蝶番、旗蝶番、自由蝶番、裏蝶番、隠し蝶番、スプリング蝶番、ガラス蝶番等を挙げることが出来る。締結部材としては、例えば、ねじ、ボルト、座金、ナット等を挙げることが出来、それぞれ例えば、マイクロねじ、微細ねじ、座金組込みねじ、タッピングねじ・タップタイト・ハイテクねじ、ドリルねじ、いたずら防止ねじ、六角ボルト、六角穴付ボルト(キャップボルト)、低頭ボルト、小径ボルト、貫通穴付ボルト、六角穴付ボタンボルト、六角穴付皿ボルト、ユニファイねじ、インチねじ、ウィットねじ、止めねじ、全ねじ、スタッドボルト、蝶ボルト、つまみねじ、化粧ビス、四角ボルト、丸ボルト、樹脂ねじ、セラミックねじ、脱落防止ねじ、ショルダーボルト、アイボルト、でんでんボルト、配管Uボルト、木ねじ、コーチスクリュー、コーススレッド、鬼目ナット、軽天ビス、万能ビス、ジョイントコネクタ、連結金具ボルト、その他木工用ねじ、その他コンクリート用ねじ、その他石膏ボード用ねじ、波板用ねじ、釘、鋼板用ねじ、スタッド締結用ねじ、座金、ねじ用ワッシャ、平座金、ばね座金、歯付座金(菊座)、ロゼットワッシャ、片・両舌付座金、テーパ座金、球面座金、化粧ビス座金等を挙げることが出来る。また、本発明は、発電プラント、混合プラント、粉砕プラント、分離プラント、鋳造プラント、金属加工プラント、木工プラント、原子力プラント、蒸気発生プラント、蒸気動力プラント、太陽発電プラント、蓄熱プラント、冷却プラント、液化プラント、電解被覆プラント、石油化学プラント、ガスプラント、給水プラント、汚水処理プラント、廃棄物処理プラント、樹脂プラント、金属プラント、コンクリートプラント、アスファルトプラント等の各種プラントの適宜の部位に適用することが出来る。プラントの一種として、原子力発電所を挙げることが出来、例えば、原子炉容器(原子炉圧力容器)、冷却材配管(再循環配管)、冷却材ポンプ(再循環ポンプ)、蒸気発生器、タービン等の機械設備の他、発電機、変圧器、ケーブル等の電気・計装設備、原子炉建屋、タービン架台等のコンクリート構造物等を挙げることが出来る。その他、プラントの一種としては、水力発電所、風力発電所、潮力発電所、地熱発電所、太陽熱発電所、海洋温度差発電所、火力発電所、原子力発電所には核分裂型プラントと核融合型プラントを挙げることが出来、太陽光発電プラント、燃料電池発電プラント等を挙げることが出来る。また、本発明は各種乗物(その構成部品)に適用することが可能であり、例えば、車椅子、ベビーカー、ロープーウェイ、リフト、ゴンドラ、エレベーター、エスカレーター、自転車、自動車、産業機械、建設機械、農業機械、オートバイ、雪上、水陸両用車、戦車や装甲車等の軍事車両、鉄道車両、客船、貨物船、漁船、ヨット、ボート、水上バイク、競艇、艦艇、潜水艦、グライダー、気球、飛行機、垂直離着陸機、ヘリコプター、オートジャイロ、ロケット、人工衛星等を挙げることが出来る。車椅子としては、フレーム、主輪、キャスター、シート、バックサポート、フットサポート、アームサポート、ブレーキ、ハンドル、ティッピングレバー等を挙げることが出来る。ロープーウェイ、リフト、ゴンドラ等への適用としては、例えば、索条、搬器、支柱等を挙げることが出来る。エレベーターとしての適用としては、例えば、制御盤、巻上機、調速機、メインロープ、ガバナーロープ、かご、テールコード、ガバナテンショナー等を挙げることが出来る。エスカレーターとしての適用としては、踏板、ライザ、ステップチェーン、駆動ローラ、追従ローラ、駆動レール、追従レール、車椅子専用ステップ、スカートガード、コームプレート、駆動ユニット、駆動チェーン、手すり駆動ローラ、手すりチェーン、加圧ローラ、手すり案内レール、インレット等を挙げることが出来る。自転車としての適用としては、例えば、フレーム、ホイール等を挙げることが出来る。バス、トラック、乗用車、オートバイ等の車両としての適用としては、シャーシやフレーム、リインフォースやボディ等の車体構造の他、原動機、動力伝達装置、操舵装置、制動・拘束装置、運転装置、タイヤホイール、荷台、サスペンション等を挙げることが出来る。鉄道車両としての適用としては、例えば、台枠、側構、妻構、屋根構、運転台、扉、窓、座席、照明、空調装置、トイレ、連結器、貫通路、車輪、車軸、軸受、軸箱支持装置、台車枠、車体支持装置、駆動装置、制動装置、動力機構、パンタグラフ等を挙げることが出来る。船舶としての適用としては、例えば、甲板、エンジン、モーター、スクリュー、舵、錨、錨鎖、レーダー、アンテナ、煙突、燃料タンク、バラストタンク、帆、帆柱、船底、櫂、船橋等を挙げることが出来る。飛行機としての適用としては、例えば、レドーム、車輪、ギャレー、客席、主翼、水平尾翼、垂直尾翼、フラップ、スポイラー、ジェットエンジン、ナビゲーションライト、燃料タンク、エルロン、エレベーター、ラダー、主円筐、縦通材、カウリング、主翼桁、翼端版、胴体外板、円筐、水平安定板、圧力隔壁、垂直安定板、カナード、窓、ドア、化粧室、貨物室、非常用設備、プロペラ、スタックディスチャージャー、ピトー管等を挙げることが出来る。また、各種機械装置類としての適用としては、冷蔵庫、ベルトコンベア、充填機、オーブン、貯蔵庫、かくはん機、泡だて器、釜、圧力釜、凍結機、揚げ機(フライヤー)、乾燥機、選別機、切断機、燻製機、瓶詰め機、缶詰め機、洗浄機、削り機、ジューサー、粉砕機(ミル)、発酵機、バーナー、蒸し器、噴霧機、しぼり機、伸ばし機、紡績機、織機、編機、縫製機、染色機、化学繊維機械、準備機(糸つなぎ機)、研磨機、ワインダー、プリンタ、製材機、ロータリーレース(丸太のかつらむき機)、ホットプレス、木材乾燥機、チップ製造機、原木仕分装置、原木送材機、バンドソー、リッパー、カンナ盤、ノミ盤、フライス盤、ほぞ取り盤、せん孔盤、ダンダー、圧締機械等を挙げることが出来る。また、本発明の適用対象としては、野球のバット、グローブ、ミット、ボールやサッカーのシューズ、ボール、ゴール、剣道の防具や竹刀、テニスのラケット等のスポーツ用品等を挙げることが出来る。また、ピアノ、エレクトーンや各種の管楽器、弦楽器を含む楽器を本発明の対象としても好い。
【0230】
次に、センサ構造付部材30における母材そのものが、センサ構造の通電路92のベース路95Pを兼ねる場合を例示する。
図29(A)に示すセンサ構造付部材30は、被検出対象物となる母材32の表面32A自体が、低抵抗部分通電区95Qと比較して電気抵抗率並びに電気抵抗値が高い導電材で構成されており、この表面32Aに、電気抵抗率並びに電気抵抗値が比較的低い良導体となる複数の低抵抗部分通電区95Qが互いに間隔を存して直接形成される。なお、高抵抗母材の材料例としては、FRP等の導電性が極めて低い樹脂材料に対して、導電性粒子(例えば炭素粉末)等を混ぜて導電性を付与したものなどが好適である。結果、表面32Aそのものをベース路95Pとして活用できる。この場合は、表面32Aにおいて、低抵抗部分通電区95Pを挟み込む両外側(電極32X,32Y参照)に電圧を印加して、表面32Aに電流を流せば、表面32Aの変形等に対して、抵抗値(電流値)を高感度に変化させることができる。
【0231】
更に
図29(B)に示すように、表面32Aに対して、複数の低抵抗部分通電区95Qが面方向に拡がるように(例えばマトリクス状に)配置しても良い。この低抵抗部分通電区95Qを一方向から挟み込む一方の良導体の対電極32X、32Yと、多方向からは挟み込む他方の良導体の対電極32V,32AWのそれぞれに電圧を印加することで、双方向の変形を検出することが可能となる。
【0232】
本発明の実施例は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0233】
1 計測システム
10 建造物
12 構造体
14 梁
30 センサ構造付部材
32 母材
40 雄ねじ体
42 頭部
44 軸部
50 ワッシャ
54 基板
91 電気絶縁層
92 通電路
92T 上層側通電路
92U 下層側通電路
92X 第一部分通電路
92Y 第二部分通電路
95P ベース路
95Q 低抵抗部分通電区
95T 高抵抗部分通電区
95U 補助通電区
100 情報収集装置
400A センサ構造付部材
400B センサ構造付部材
400C センサ構造付部材
410A 軸部材
410C レール部材
500 センサ構造