(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118544
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】コンクリートの評価方法およびそれに用いるコンクリート供試体
(51)【国際特許分類】
G01N 33/38 20060101AFI20230818BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
G01N33/38
G01N1/28 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021548
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】竹下 永造
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA16
2G052AD34
2G052AD52
2G052FD12
2G052JA08
(57)【要約】
【課題】膨張材を含むコンクリートの特性をより正確に測定するためのコンクリート供試体と、評価方法の提供。
【解決手段】拘束鉄筋と、コンクリート組成物から形成されたコンクリートとにより構成されてなり、
前記拘束鉄筋が、
コイルばね形状に成型された帯筋と、
直線部分、および前記直線部分の両側末端にフック状に成型された折り返し部分を具備する、複数の主筋と
が、前記直線部分が、前記コイルばねの中心軸と平行に、かつ前記折り返し部分が前記コイルばねの内側に向けて配置され、接合された構造を有しており、
前記拘束鉄筋が、前記コンクリートにより内包された、中実である、コンクリート供試体と、そのコンクリート供試体を用いたコンクリートの評価方法。このコンクリート供試体は、コンクリートの透水性を評価するのに適している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート組成物から形成されるコンクリートを評価する方法であって、
コイルばね形状に成型された帯筋と、
直線部分、および前記直線部分の両側末端にフック状に成型された折り返し部分を具備する、複数の主筋と
が、前記直線部分が、前記コイルばねの中心軸と平行に、かつ前記折り返し部分が前記コイルばねの内側に向けて配置され、接合された構造を有する拘束鉄筋を準備し、
前記コンクリート組成物により、前記拘束鉄筋を内包させた、中実なコンクリート供試体を調製し、
前記コンクリート供試体を用いて前記コンクリートを評価することを含んでなる、方法。
【請求項2】
コンクリート組成物から形成されるコンクリートの透水性を評価する方法であって、
コイルばね形状に成型された帯筋と、
直線部分、および前記直線部分の両側末端にフック状に成型された折り返し部分を具備する、複数の主筋と
が、前記直線部分が、前記コイルばねの中心軸と平行に、かつ前記折り返し部分が前記コイルばねの内側に向けて配置され、接合された構造を有する拘束鉄筋を準備し、
前記コンクリート組成物により、前記拘束鉄筋を内包させた、中実である、コンクリート供試体を調製し、
前記コンクリート供試体を養生し、強制乾燥させた後、
前記コンクリート供試体の底面から水を透水させることを含んでなる、方法。
【請求項3】
コンクリートを評価する方法に用いられる、コンクリート供試体であって、
拘束鉄筋と、コンクリート組成物から形成されたコンクリートとにより構成されてなり、
前記拘束鉄筋が、
コイルばね形状に成型された帯筋と、
直線部分、および前記直線部分の両側末端にフック状に成型された折り返し部分を具備する、複数の主筋と
が、前記直線部分が、前記コイルばねの中心軸と平行に、かつ前記折り返し部分が前記コイルばねの内側に向けて配置され、接合された構造を有しており、
前記拘束鉄筋が、前記コンクリートにより内包された、中実である、コンクリート供試体。
【請求項4】
前記主筋を2~8本含む、請求項3に記載のコンクリート供試体。
【請求項5】
前記帯筋の中心軸方向の長さが7~11cmであり、前記帯筋の円形底面の直径が8~12cmである、請求項3または4に記載のコンクリート供試体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの評価方法およびそれに用いるコンクリート供試体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物の耐久性を高めるためにはコンクリートのひび割れを抑止することが有効である。近年、土木分野および建築分野において、乾燥収縮ひび割れの抑制を目的としてコンクリート組成物にコンクリート用膨張材を使用することが増加している。
【0003】
このような膨張材を使用して膨張コンクリートを形成する場合には、通常、その内部に拘束鉄筋(鉄筋等)が配設される。このため、膨張コンクリートの評価を行う場合は、拘束条件下で評価することが望ましい。このような拘束鉄筋を備えた膨張コンクリートの評価方法としては、JIS A 6202の附属書B(参考)に規定された一軸拘束状態における膨張コンクリートの拘束膨張試験方法(A法)が広く知られている。この試験方法は、コンクリート供試体の両端の鉄板によって拘束して試験を行うものである。しかし、実際の膨張コンクリートは内部に配設された鉄筋によって内部からの拘束を受けるのが一般的であり、JIS規格で定められた方法のように、両端が鉄板で固定されているような完全拘束条件で使用されることは稀である。したがって、そのような方法は現実的な試験方法とはいいにくく、評価として適当ではないことがある。このため、実際の膨張コンクリートの利用状態を想定して、内部拘束鉄筋を用いて膨張コンクリートを評価する方法も提案されている(特許文献1)。
【0004】
一方、内部に拘束鉄筋を有する膨張コンクリートは、コンクリートが圧密され、水密性の高い硬化体が形成されるとの報告もある。しかし、膨張コンクリートの水密性の評価方法は未だ標準化されておらず、報告毎に評価方法が完全に同一でないために相互に十分に比較することが困難であり、十分な知見が得られていないのが現状である。拘束鉄筋を有する膨張コンクリートの評価方法については、いくつかの提案が為されていて、例えば非特許文献1において、膨張コンクリートの透水性について検討された事例が紹介されている。この透水試験は、中空部を有する円筒状供試体を作製し、その中空部に水を通し、コンクリート供試体内側から外側方向への透水性を評価するものである。しかしながら、特殊な形状を有する供試体での試験であり、この方法により得られた結果を、一般的な膨張コンクリートの水密性の評価とすることは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「膨張コンクリートの水密性について」、コンクリート構造物のひび割れに関するシンポジウム論文集、日本コンクリート工学協会、1977年、p177-180
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、拘束状態にあるコンクリートをより適切に評価する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による、コンクリート組成物から形成されるコンクリートを評価する方法は、
コイルばね形状に成型された帯筋と、
直線部分、および前記直線部分の両側末端にフック状に成型された折り返し部分を具備する、複数の主筋と
が、前記直線部分が、前記コイルばねの中心軸と平行に、かつ前記折り返し部分が前記コイルばねの内側に向けて配置され、接合された構造を有する拘束鉄筋を準備し、
前記コンクリート組成物により、前記拘束鉄筋を内包させた、中実なコンクリート供試体を調製し、
前記コンクリート供試体を用いて前記コンクリートを評価することを含んでなるものである。
【0009】
また、本発明による、コンクリート組成物から形成されるコンクリートの透水性を評価する方法は、
コイルばね形状に成型された帯筋と、
直線部分、および前記直線部分の両側末端にフック状に成型された折り返し部分を具備する、複数の主筋と
が、前記直線部分が、前記コイルばねの中心軸と平行に、かつ前記折り返し部分が前記コイルばねの内側に向けて配置され、接合された構造を有する拘束鉄筋を準備し、
前記コンクリート組成物により、前記拘束鉄筋を内包させた、中実である、コンクリート供試体を調製し、
前記コンクリート供試体を養生し、強制乾燥させた後、
前記コンクリート供試体の底面から水を透水させることを含んでなるものである。
【0010】
また、本発明によるコンクリート供試体は、コンクリートを評価する方法に用いられるものであって、
拘束鉄筋と、コンクリート組成物から形成されたコンクリートとにより構成されてなり、
前記拘束鉄筋が、
コイルばね形状に成型された帯筋と、
直線部分、および前記直線部分の両側末端にフック状に成型された折り返し部分を具備する、複数の主筋と
が、前記直線部分が、前記コイルばねの中心軸と平行に、かつ前記折り返し部分が前記コイルばねの内側に向けて配置され、接合された構造を有しており、
前記拘束鉄筋が、前記コンクリートにより内包された、中実である、ものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、拘束状態におけるコンクリートの、水密性、耐凍害性、中性化抵抗性、鋼材を保護する性能、塩化物侵入抵抗性、アルカリ骨材反応抵抗性、ひび割れ抵抗性、耐火性、すりへり抵抗性、強度、耐久性、耐候性、膨張性、耐薬品抵抗性、耐海水性および収縮性などの性質を、より適切に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一態様による拘束鉄筋の斜視図である。
【
図2】本発明の一態様による拘束鉄筋の側面図である。
【
図3】本発明の一態様によるコンクリート供試体を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0014】
<コンクリート供試体>
本発明によるコンクリート供試体は、特定の形状の拘束鉄筋を含んでいる。
図1は、本発明に用いることができる拘束鉄筋の一実施態様の斜視図、
図2は側面図である。この拘束鉄筋10は
コイルばね形状に成型された帯筋11と、
直線部分、および前記直線部分の両側末端にフック状に成型された折り返し部分を具備する、複数の主筋12と
から構成される。
【0015】
帯筋はコイルばね形状を有している。コイルばね形状とは、圧縮コイルばねと類似する形状を意味する。具体的には、鉄筋が中心軸を中心としてらせん状に巻かれており、末端部がリング状の上下面を形成している形状である。このような構成は、一本の鉄筋を成型することで実現できるので好ましい。なお、鉄筋で形成された二つのリングをらせん状に形成された鉄筋で連結することによって形成してもよい。このような態様によれば、コンクリート組成物からコンクリートが形成される際の変形に対する追従性が良く、またスプリング効果によって上下方向への膨張がより有効的に拘束されるので好ましい。
【0016】
また、主筋は直線部分と、その両側末端に折り返し部分とを具備する。折り返し部分はフック状に成型されており、この折り返し部分がコンクリートの上下方向への膨張を拘束する。主筋の直線部分の長さは、帯筋が形成するコイルばね形状の中心軸方向の長さよりも長いことが好ましい。折り返し部分の形状は、コンクリートの膨張を拘束する形状であれば特に限定されないが、例えば半円状、鍵状等が選択される。折り返し部分の形状が例えば、半円状である場合には、その半径は10~50mmであることが好ましい。また折り返し部分を含め、主筋は平面内に成型されている、すなわちねじれ形状ではないことが好ましい。このような形状とすることで、コンクリートが形成される際の変形に対する追従性が向上するため好ましい。
【0017】
主筋は、その直線部分が、帯筋が構成するコイルばね形状の中心軸と平行に、かつその折り返し部分がコイルばねの内側に向けて配置され、接合されている。主筋は、コイルばね形状の内側に配置されることが好ましく、主筋の直線部分が帯筋の内側に接合されていることが好ましい。帯筋と主筋とは任意の方法で接合することができる。具体的には、留め具による固定、鉄線による拘束、または溶接等の方法が挙げられる。
【0018】
拘束鉄筋は、主筋を複数具備している。拘束鉄筋ひとつに帯する主筋の数は、2~8本とすることが好ましく、3~6本がより好ましい。また、この拘束鉄筋を用いてコンクリート供試体を作製したときの鉄筋比が、0.5~1%であることが好ましい。
【0019】
本発明に用いる拘束鉄筋を構成する鉄筋としては、例えば、丸鋼鉄筋、異形鉄筋、ステンレス鋼鉄筋等を使用できるが、これらに限定されるものではない。また、鉄筋の材質としては、SR235、SD295A、SD345など、公知の材料から適当なものを選択して用いることができる。鋼材の太さは、本発明の機能を妨げない範囲で適宜選択することができるが、例えば、直径6mmの丸鋼等が挙げられる。
【0020】
また、拘束鉄筋の大きさも、評価の方法などに応じて任意に決定することができるが、例えば帯筋の中心軸方向の長さが7~11cmであり、帯筋のリング状底面の直径が8~12cmであることが好ましい。
【0021】
図3に本発明によるコンクリート供試体20の模式図である。一般に、コンクリート供試体は、コンクリート組成物から形成されるものであるが、本発明によるコンクリート供試体20は、上記した拘束鉄筋10がコンクリート組成物から形成されるコンクリート21に内包された、中実のものである。コンクリート供試体の大きさおよび形状は、評価を行う試験に合わせて自由に設定することができる。
【0022】
拘束鉄筋はコンクリート供試体の略中央に配置されることが好ましい。これはコンクリート供試体全体に均等に拘束力が及ぶためである。コンクリート供試体中における拘束鉄筋の位置を調整するには、型枠に針金や結束線で固定するのが好ましい。針金や結束線は、拘束鉄筋をコンクリート供試体の略中央に固定できるものであれば特に限定されない。
【0023】
本発明によるコンクリート供試体は、例えば以下の手順で製造される。まず、コンクリート供試体用型枠と、拘束鉄筋と、コンクリート組成物とを用意する。コンクリート組成物は、セメント、骨材、水、混和材料、および混和剤等が配合され、コンクリートミキサ等で十分練り混ぜられ調製される。膨張コンクリートの特性を評価する場合は、混和材料として、JIS A 6202に規定するコンクリート用膨張材が使用される。次いで型枠内に、拘束鉄筋を配置し、そこへコンクリート組成物を流し込んでコンクリート組成物によって拘束鉄筋を内包させた状態で硬化させることで、コンクリート供試体が製造される。コンクリート組成物の型枠内への充填は、テーブルバイブレーターなどを用いて、振動を与えながら充填することが好ましい。鉄筋のかぶりは1~3cm、例えば2cm程度とするのが好ましい。コンクリート組成物を充填する際に、拘束鉄筋と型枠との間に骨材が入る隙間を有する大きさであることが好ましく、かぶりをこのような大きさとすることで、コンクリート供試体中における骨材の偏在を防止し得る。
【0024】
コンクリート供試体は、十分に硬化させた後に型枠から取り出し、必要に応じて所定期間養生した後に、評価に用いられる。なお、型枠から取り外した後、コンクリート供試体からの水分の逸散を防ぐために、型枠内に予めポリエステルシートなどの非透湿性シートを設置しておき、供試体の作製直後にそのシートで供試体を被覆してもよい。
【0025】
<コンクリートの評価方法>
本発明によるコンクリートの評価方法は、特定の形状を有するコンクリート供試体を調製し、それを用いてコンクリートを評価することを含んでなる。ここで、「コンクリートの評価」とは、コンクリートの水密性、耐凍害性、中性化抵抗性、鋼材を保護する性能、塩化物侵入抵抗性、アルカリ骨材反応抵抗性、ひび割れ抵抗性、水密性、耐火性、すりへり抵抗性、強度、耐久性、耐候性、膨張性、耐薬品抵抗性、耐海水性および収縮性などの性質を評価するものを包含する。本発明によれば、コンクリート供試体に拘束鉄筋が内包されることから、特に、拘束状態にある膨張コンクリートの評価に好適である。
【0026】
ここで性能や特性の評価方法は、上記したコンクリート供試体を用いることの他は、特に限定されない。例えば、コンクリート原材料の品質保証などのために評価を行う場合は、上記したコンクリート供試体を用いて独自に標準化された方法で評価することで品質管理をすることができる。しかしながら、より汎用性の高い評価結果を得るためには、JIS規格などに準じた評価方法に本発明によるコンクリート供試体を組み合わせることが好ましい。
【0027】
<コンクリートの透水性評価方法>
本発明におけるコンクリート供試体を用いることで、コンクリートの透水性を評価できる。具体的には、JIS A 1404「建築用セメント防水剤の試験方法」に準じて評価する。以下、詳しく説明する。
1)拘束鉄筋を内包したコンクリート供試体(φ15cm×12cm)を作製する。
2)所定の材齢養生したコンクリート供試体を、一定質量となるまで(約80℃の乾燥機で7日間)強制乾燥させる。乾燥後の供試体の質量(m0)を測定する。
3)透水試験装置にコンクリート供試体を設置する。供試体の上下両面に、中央に直径5cmの透水円孔をもつ、厚さ約1cm以上のゴムガスケットを当て、透水試験装置に設置し、均一に締め付ける。なお、試験装置としては、JIS A 1404「建築用セメント防水剤の試験方法」において使用する透水試験装置を使用することができる。
4)供試体の下面側に水圧(3.0×105Pa)をかけ、所定の時間、保持する。
5)試験終了後の供試体を試験装置から取り外し、手早く供試体表面の余剰水分をふき取り、直ちに供試体の質量(mt:tは水圧をかけた時間)を測定する。
6)供試体の透水量(p)は次の式で求める。
p=mt-m0
7)水圧をかけた時間と透水量の関係から、コンクリートの透水性を評価する。
【0028】
以下、本発明を諸例により説明すると以下のとおりである。なお、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【実施例0029】
1.コンクリート供試体の作製
表1に記載の使用材料を用いて、コンクリート供試体の作製に用いるコンクリート組成物を調製した。また、それら使用材料を用いて、表2に記載したコンクリート組成物(EX-RC)を調製した。膨張材は細骨材置換とし、標準添加量である20kg/m3にて使用した。また、比較のために、表2に記載した、膨張材を使用しないプレーンコンクリート組成物(PL)を調製した。それぞれのコンクリート組成物のフレッシュ性状は、目標スランプ12±2.5cm、目標空気量4.5±1.5%と設定した。
【0030】
【0031】
【0032】
図1に示す拘束鉄筋(φ10cm×9cm;鉄筋径6mm)を内部に設置した型枠を準備し、その型枠中に、コンクリートミキサで2分間練り混ぜたコンクリート組成物(EX-RC)をテーブルバイブレーターを用いて、振動を与えながら型枠中に充填し、硬化させて、供試体を作製した。供試体のサイズはφ15cm、高さ12cmとし、拘束鉄筋のかぶりは2cmに設定した。また、比較のコンクリート組成物(PL)を拘束鉄筋なしの型枠に充填し、硬化させて、比較の供試体を作製した。
【0033】
2.試験結果
2-1 透水試験
材齢2日で型枠から脱型したコンクリート供試体を、材齢7日まで水中養生し、その後14日間封かん養生した。養生終了後、コンクリート供試体を、約80℃の乾燥機で7日間強制乾燥させた。強制乾燥後の供試体の質量(m
0)を測定し、水密性評価試験(透水試験)に供した。コンクリート供試体の上下両面に、中央に直径5cmの透水円孔をもつ、厚さ約1cm以上のゴムガスケットを当て、透水試験装置に設置し、均一に締め付けた。供試体の下面側に水圧(3.0×10
5Pa)をかけた。1時間後、供試体を試験装置から取り外し、供試体の質量(m
1h)を測定した。供試体の透水量(p:m
1h-m
0)を求めた。さらに、所定の時間(3時間から7日)、水圧をかけた試験を実施した。水圧をかけた時間と透水量の関係から、コンクリートの水密性を評価した。結果を表3に示す。透水試験開始後1日までは膨張コンクリート(EX-RC)の透水量は大きいが、その後の透水量の増加は僅かであり、3日以降の透水量はプレーンコンクリートより小さい値となった。透水量が異なるのは、拘束鉄筋によってコンクリートの膨張が抑制されるためと考えられ、本発明によるコンクリートの評価方法は、より妥当な結果を与えるものと考えられる。
【表3】
【0034】
2-2 透水領域の観察
7日間の透水試験を行った後、コンクリート供試体を割って、水分と反応して桃色に発色する現像剤を塗布し、透水した領域を観察した。透水した領域は現像剤によって発色することで確認し、拘束鉄筋を使用して透水性試験を行った結果、膨張コンクリート(EX-RC)はプレーンコンクリート(PL)に比べて、透水した領域が少ないことが分かった。