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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118561
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】情報処理装置および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/30 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
G01C21/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021571
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱岡 達哉
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB20
2F129BB33
2F129BB49
2F129BB56
2F129EE02
2F129FF02
2F129FF11
2F129FF15
2F129FF20
2F129FF37
2F129FF41
2F129FF43
2F129HH02
2F129HH12
2F129HH18
2F129HH19
2F129HH20
2F129HH21
(57)【要約】
【課題】マップマッチングの精度を向上させること。
【解決手段】実施形態に係る情報処理装置は、車両に搭載される情報処理装置であって、マップマッチング処理を実行する制御部を備え、制御部は、上記マップマッチング処理における地図データ上に複数のリンクと各リンクの速度分布とが紐付けられた特定エリアを設定し、上記特定エリアを通過した際の上記車両の速度分布と上記特定エリアに紐付けられた上記各リンクの速度分布とを比較することで、上記車両が走行中であるリンクを識別する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される情報処理装置であって、
マップマッチング処理を実行する制御部を備え、
前記制御部は、
前記マップマッチング処理における地図データ上に複数のリンクと各リンクの速度分布とが紐付けられた特定エリアを設定し、
前記特定エリアを通過した際の前記車両の速度分布と前記特定エリアに紐付けられた前記各リンクの速度分布とを比較することで、前記車両が走行中であるリンクを識別する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記車両が前記特定エリアに進入したと判定された時点から前後の決められた時間分の前記車両の速度分布を生成し、前記各リンクの速度分布と比較する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記車両が確実に前記特定エリアを通過したことが見込まれる時間を前記決められた時間とする、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記特定エリアに対し、前記車両の進行方向の前後について前記特定エリアを拡張した範囲である判定エリアをさらに設定し、前記車両が前記判定エリアに進入したと判定された時点から前記車両が前記判定エリアを通過したと判定された時点までの前記車両の速度分布を生成し、前記各リンクの速度分布と比較する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記判定エリアが、前記車両が確実に前記特定エリアを通過したことが見込まれる時間に相当する範囲となるように設定する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記車両の速度分布と前記各リンクの速度分布との類似度に応じて前記車両が走行中であるリンクを識別する、
請求項1~5のいずれか一つに記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記類似度が予め決められた閾値を超えた場合に、当該類似度に対応する速度分布に紐付けられたリンクを前記車両が走行中であるリンクとして識別する、
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、
リアルタイムの道路状況に応じて、前記特定エリア、前記各リンクの速度分布、および、前記閾値の少なくともいずれかを変更する、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記制御部は、
料金所の周辺の領域、分岐地点の周辺の領域、合流地点の周辺の領域、および、高架上下の各リンクを含む領域の少なくともいずれかに前記特定エリアを設定する、
請求項1~8のいずれか一つに記載の情報処理装置。
【請求項10】
車両に搭載される情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
マップマッチング処理を実行することと、
前記マップマッチング処理における地図データ上に複数のリンクと各リンクの速度分布とが紐付けられた特定エリアを設定することと、
前記特定エリアを通過した際の前記車両の速度分布と前記特定エリアに紐付けられた前記各リンクの速度分布とを比較することで、前記車両が走行中であるリンクを識別することと、
を含む、情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、情報処理装置および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置では、GPS(Global Positioning System)によって測位された自車位置を地図上の道路に対応するリンク上にマップマッチングさせることで、自車位置を道路上に正確に表示させている。
【0003】
ただし、マップマッチングにおいては、都市部でよく見られるように、高架道の都市高速道路とその下に国道が並走する場合などに、一般に最大で10mほどの誤差を持ち得る。また、誤差が小さい場合であっても、高速道路の料金所への側道など、隣接して並走した道路がある場合には、かかる道路へ誤マッチングされてしまうことも多々ある。
【0004】
このように、GPS測位された位置情報から車両がどの道路を走行しているかを正確に識別することは困難であり、近年でも、数々のマップマッチングの手法が提案されている。
【0005】
たとえば、特許文献1に開示の従来技術では、料金所のレーン情報に基づき、料金所のある側道のリンク位置を本線に接近する方向に補正し、補正されたリンクを候補リンクとしてマップマッチングを行っている。これにより、料金所のある側道側に自車が進入した場合に、誤マッチングが起きる可能性を低下させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-134309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来技術には、マップマッチングの精度を向上させるうえで、さらなる改善の余地がある。
【0008】
具体的には、従来技術は、周囲が開けた道路であれば有効であるが、たとえば首都高速道路などでは、高架下に設置された料金所も存在するため、この場合には本線側に側道リンクを接近させると、本線側に誤マッチングされてしまう可能性が高い。
【0009】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、マップマッチングの精度を向上させることができる情報処理装置および情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の一態様に係る情報処理装置は、車両に搭載される情報処理装置であって、マップマッチング処理を実行する制御部を備え、前記制御部は、前記マップマッチング処理における地図データ上に複数のリンクと各リンクの速度分布とが紐付けられた特定エリアを設定し、前記特定エリアを通過した際の前記車両の速度分布と前記特定エリアに紐付けられた前記各リンクの速度分布とを比較することで、前記車両が走行中であるリンクを識別する。
【発明の効果】
【0011】
実施形態の一態様によれば、マップマッチングの精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係るマップマッチング方法の概要説明図(その1)である。
図2図2は、実施形態に係るマップマッチング方法の概要説明図(その2)である。
図3図3は、実施形態に係るマップマッチング方法の概要説明図(その3)である。
図4図4は、実施形態に係るマップマッチング方法の概要説明図(その4)である。
図5図5は、実施形態に係るマップマッチング方法の概要説明図(その5)である。
図6図6は、実施形態に係るマップマッチングシステムの構成例を示す図である。
図7図7は、実施形態に係る車載装置の構成例を示すブロック図である。
図8図8は、実施形態に係る車載装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
図9図9は、変形例に係る速度分布の生成処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する情報処理装置および情報処理方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
また、以下では、実施形態に係る情報処理方法が、マップマッチング方法であるものとする。また、以下では、実施形態に係る情報処理装置が、車載装置10であるものとする。車載装置10は、たとえばナビゲーション装置である。
【0015】
はじめに、実施形態に係るマップマッチング方法の概要について、図1図5を用いて説明する。図1図5は、実施形態に係るマップマッチング方法の概要説明図(その1)~(その5)である。
【0016】
まず、以下の説明でマップマッチング処理の対象とする道路状況について、図1および図2を用いて説明する。図1に示すように、かかる道路状況は、高速道路の本線100に対し、料金所200のある側道が隣接している。
【0017】
具体的には、高速道路の本線100から側道120が分岐し、側道120が料金所200の入口側に接続されている。料金所200の出口側にはさらに側道140が接続され、側道140は、一般道あるいは有料道路等である別の道路160に接続される。料金所200は、通常、複数の車両が同時に進入できるように複数レーンに対応している。よって、側道120,140は、料金所200に接続する部分おいて道幅が拡張されている。
【0018】
かかる道路状況は、マップマッチング処理における地図データ情報では、図2に示すリンクL1,L2,L3,L4,L5およびノードN1,N2,N3からなるトポロジカルなネットワークとして表される。
【0019】
リンクL1,L2は、高速道路の本線100に対応する。リンクL3は、側道120に対応する。リンクL4は、側道140に対応する。リンクL5は、別の道路160に対応する。また、ノードN1は、リンクL1の分岐点である。ノードN2は、料金所200のレーン中央位置である。ノードN3は、側道140と別の道路160の接続点である。そして、リンクL3の一端がノードN1に接続され、他端がノードN2に接続される。また、リンクL4の一端がノードN2に接続され、他端がノードN3に接続される。
【0020】
ところで、既存技術では、料金所200のレーン情報に基づき、リンクL3,L4を本線100に接近する方向に補正し、補正されたリンクL3,L4を候補リンクとしてマップマッチングを行うことで、側道120側に自車が進入した場合に、誤マッチングが起きる可能性を低下させている。
【0021】
ただし、既存技術は、周囲が開けた道路であれば有効であるが、たとえば側道120,140が狭かったり、料金所200が高架下に設置されていたりすれば、図中に破線の矢印で示すように、自車は本線100に近い側に進入することとなる。加えて、図2に示すように、GPS測位された自車位置Mに大きく誤差が出ている場合、本線100側に誤マッチングされてしまう可能性が高い。
【0022】
そこで、実施形態に係るマップマッチング方法では、マップマッチング処理における地図データ上に複数のリンクと各リンクの速度分布とが紐付けられた特定エリアを設定し、特定エリアを通過した際の車両の速度分布と特定エリアに紐付けられた上記各リンクの速度分布とを比較することで、車両が走行中であるリンクを識別することとした。
【0023】
より具体的に説明する。実施形態に係るマップマッチング方法では、車載装置10の備える制御部13(図7参照)が、GSP測位された位置情報と車載センサによる車速情報とを取得し、取得した位置情報と車速情報とを紐付け、一時保存することを繰り返す。
【0024】
そして、制御部13は、位置情報に基づき、予め設定された特定エリアSAへ自車が進入したか否かを判定する内外判定を常時行う。図3に示すように、特定エリアSAは、たとえば料金所200のレーン方向について本線100側のリンクL2および側道120,140側のリンクL3,L4を共に含むように設定された帯状の領域である。すなわち、特定エリアSAには、これらリンクL2およびリンクL3,L4というリンク情報が紐付けられている。
【0025】
また、特定エリアSAには、リンクL2側を走行する車両の速度分布と、リンクL3,L4側を走行する車両の速度分布とがそれぞれ予め紐付けられている。
【0026】
そして、制御部13は、前述の内外判定により、自車が特定エリアSAへ進入した場合、一時保存された位置情報および速度情報に基づき、自車についての前後n秒の速度分布を生成する(ステップS1)。
【0027】
そして、制御部13は、生成した自車の速度分布を予め特定エリアSAに紐付いた速度分布と比較し、類似度に応じて自車が走行中のリンクを識別する(ステップS2)。なお、図4には、側道進入時の速度分布のイメージを示している。
【0028】
ETC(Electronic Toll Collection system)のゲートを通過時は、図4に示すように、車両は特定エリアSAを通過する際、20km/h前後の速度で通過することとなる。また、図示は略しているが、ETCゲートに対し一般ゲートを通過する場合、車両は特定エリアSAで一時停止することとなる。
【0029】
これに対し、図5には、本線走行時の速度分布のイメージを示している。図5に示すように、本線走行時は、車両は特定エリアSAにおいても速度を緩めることは少ない。前述のステップS2において、自車の速度分布が図4のイメージに近ければ、制御部13は、自車が側道120,140側を走行中であると識別し、リンクL3,L4へマッチングを補正する。また、自車の速度分布が図5のイメージに近ければ、制御部13は、自車が本線100側を走行中であると識別し、リンクL2へマッチングを補正する。
【0030】
以降、制御部13は、補正後のリンクに接続されたリンクに対し、順次マップマッチングを行っていくこととなる。
【0031】
このように、実施形態に係るマップマッチング方法では、マップマッチング処理における地図データ上に複数のリンクと各リンクの速度分布とが紐付けられた特定エリアSAを設定し、特定エリアSAを通過した際の車両の速度分布と特定エリアSAに紐付けられた上記各リンクの速度分布とを比較することで、車両が走行中であるリンクを識別することとした。
【0032】
これにより、側道が狭かったり、料金所200が高架下に設置されていたりするような場合でも、誤マッチングが起きる可能性を低下させることができる。すなわち、実施形態に係るマップマッチング方法によれば、マップマッチングの精度を向上させることができる。
【0033】
以下、上述した実施形態に係るマップマッチング方法を適用したマップマッチングシステム1の構成例について、より具体的に説明する。
【0034】
図6は、実施形態に係るマップマッチングシステム1の構成例を示す図である。図6に示すように、マップマッチングシステム1は、1以上の車載装置10と、サーバ装置300とを含む。
【0035】
車載装置10とサーバ装置300とは、ネットワークNを介し、相互に通信可能に設けられる。ネットワークNは、インターネットやC-V2X(Cellular Vehicle to Everything)通信網等である。
【0036】
車載装置10は、車両に搭載されるコンピュータである。上述したように、車載装置10は、たとえばナビゲーション装置である。
【0037】
サーバ装置300は、車載装置10がマップマッチング処理に用いる地図データに関する地図データ情報や、特定エリアSAに関する特定エリア情報等を生成または更新する装置である。特定エリア情報は、各特定エリアSAに含まれる各リンクに紐付く速度分布等を含む。
【0038】
また、サーバ装置300は、生成または更新した各種情報を車載装置10へ適宜提供する装置である。サーバ装置300は、たとえば交通情報センター等から提供される交通情報、渋滞情報、工事規制情報等に基づき、特定エリアSAの各リンクに紐付く速度分布を随時更新する。
【0039】
なお、特定エリアSAは、図3に示したように、料金所200の周辺の領域に限られない。特定エリアSAは、たとえば他にも、合流地点周辺の領域や、分岐地点周辺の領域、高架上下の各道路を含む領域など、誤マッチングが起きやすい異なる複数のリンクを含む領域に適宜設定可能である。
【0040】
次に、図7は、実施形態に係る車載装置10の構成例を示すブロック図である。なお、図7では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0041】
換言すれば、図7に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0042】
また、図7を用いた説明では、既に説明済みの構成要素については、説明を簡略するか、説明を省略する場合がある。
【0043】
図7に示すように、実施形態に係る車載装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを有する。また、車載装置10には、図示略のCAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークを介し、車載センサ部3が接続される。また、車載装置10には、HMI(Human Machine Interface)部5が接続される。
【0044】
車載センサ部3は、車両に搭載される各種のセンサ群である。車載センサ部3は、少なくともGPSセンサ3aと、車速センサ3bとを含む。GPSセンサ3aは、GPS測位を行い、測位した位置情報を制御部13に対し出力する。車速センサ3bは、車両の車速を測定し、測定した車速情報を制御部13に対し出力する。
【0045】
HMI部5は、ユーザと車載装置10が情報(たとえば、ナビゲーション情報)をやり取りするための手段や、そのための装置、ソフトウェアなどを含むヒューマンマシンインターフェイス部品である。HMI部5は、液晶タッチパネルや、スピーカー、マイクといったハードウェア部品のほか、GUI(Graphical User Interface)といったソフトウェア部品を含む。
【0046】
通信部11は、ネットワークアダプタ等によって実現される。通信部11は、前述のネットワークNと無線接続され、サーバ装置300との間で情報の送受信を行う。
【0047】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の記憶デバイス、または、ハードディスク装置、光ディスク装置等のディスク装置などによって実現される。図7の例では、記憶部12は、地図データ情報12aと、位置・車速情報12bと、特定エリア情報12cと、速度分布情報12dと、処理パラメータ情報12eとを記憶する。
【0048】
地図データ情報12aは、マップマッチング処理における地図データに関する情報である。地図データ情報12aは、リンク情報およびノード情報を含む。地図データ情報12aは、サーバ装置300から適宜提供される。
【0049】
位置・車速情報12bは、制御部13によって常時取得され、紐付けられて一時保存される自車の位置情報および車速情報である。
【0050】
特定エリア情報12cは、特定エリアSAに関する情報である。特定エリア情報12cは、特定エリアSAの位置情報、設定範囲、および、特定エリアSAに含まれる各リンクのリンク情報、かかる各リンクに紐付く速度分布等を含む。特定エリア情報12cは、サーバ装置300から適宜提供される。
【0051】
速度分布情報12dは、自車が特定エリアSAを通過する際の速度分布である。処理パラメータ情報12eは、マップマッチング処理において用いられる各種の閾値やパラメータ等に関する情報である。
【0052】
制御部13は、コントローラ(controller)であり、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、記憶部12に記憶されている図示略の各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部13は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現することができる。
【0053】
制御部13は、取得部13aと、紐付け部13bと、判定部13cと、生成部13dと、比較部13eと、補正部13fと、更新部13gとを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。
【0054】
取得部13aは、車載センサ部3から自車の位置情報および車速情報を常時取得する。また、取得部13aは、通信部11を介し、サーバ装置300から提供される各種情報を取得する。
【0055】
紐付け部13bは、取得部13aによって取得された位置情報および車速情報を紐付け、位置・車速情報12bに一時保存させる。判定部13cは、自車の位置情報および特定エリア情報12cに基づき、前述の内外判定を常時行う。
【0056】
生成部13dは、判定部13cによって自車が特定エリアSAへ進入したと判定された場合に、位置・車速情報12bに基づいて、前後n秒の自車の速度分布を生成し、速度分布情報12dへ格納する。なお、ここに言う前後n秒は、自車が確実に特定エリアSAを通過したことが見込まれる予め決められた秒数である。
【0057】
かかる前後n秒は、「特定エリアSAの外から特定エリアSAへ進入するまでの時間+特定エリアSAを通過する時間+特定エリアSAを通過後の決められた経過時間」と言い換えてもよい。この前後n秒を確保することにより、時系列の速度分布の変化を明瞭にでき、特定エリアSAの各リンクに紐付いた速度分布との比較において、精度を向上させることができる。
【0058】
比較部13eは、生成部13dによって生成された自車の速度分布と、特定エリア情報12cに含まれる特定エリアSAの各リンクに紐付いた速度分布とを比較する。比較部13eは、かかる比較において、特定エリアSAの各リンクの速度分布との類似度を算出する。
【0059】
補正部13fは、比較部13eの比較結果による速度分布の類似度に応じて、自車が走行中のリンクを識別し、識別したリンクへマッチングを補正する。補正部13fは、比較部13eによって算出された類似度が予め決められた閾値を超えた場合に、かかる閾値を超えたリンクを、自車が走行中のリンクであると判定する。また、補正部13fは、マッチングを補正したナビゲーション情報をHMI部5へ表示させる。
【0060】
更新部13gは、交通情報、渋滞情報、工事規制情報等に基づいてサーバ装置300によって更新され、通信部11を介して提供された地図データ情報12aや特定エリア情報12cを更新する。
【0061】
すなわち、更新部13gは、リアルタイムの道路状況に応じて、特定エリアSAの設定内容や、各リンクの速度分布を変更する。また、更新部13gは、やはりリアルタイムの道路状況に応じて、前述の類似度の閾値等を変更してもよい。これにより、リアルタイムの道路状況に応じつつ、精度よく柔軟性の高いマップマッチングを行うことが可能となる。
【0062】
次に、車載装置10が実行する処理手順について、図8を用いて説明する。図8は、実施形態に係る車載装置10が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0063】
図8に示すように、取得部13aは、位置情報と車速情報を取得する(ステップS101)。そして、紐付け部13bが、取得された位置情報と車速情報を紐付け、一時保存させる(ステップS102)。
【0064】
また、判定部13cは、自車が特定エリアSA内に進入したか否かを判定する(ステップS103)。進入していない場合(ステップS103,No)、ステップS101からの処理を繰り返す。
【0065】
進入した場合(ステップS103,Yes)、生成部13dが、自車について、一時保存された位置情報と車速情報に基づき前後n秒の速度分布を生成する(ステップS104)。
【0066】
そして、比較部13eが、生成部13dによって生成された自車の速度分布を、予め特定エリアSAに紐付いた速度分布と比較する(ステップS105)。そして、補正部13fが、比較部13eによる比較において算出された類似度に応じてマップマッチングを補正する(ステップS106)。
【0067】
そして、制御部13は、マップマッチングの機能が終了するか否かを判定する(ステップS107)。機能の終了は、たとえば自車の電源がオフされたことなどを指す。機能が終了しない場合(ステップS107,No)、ステップS101からの処理を繰り返す。機能が終了する場合(ステップS107,Yes)、処理を終了する。
【0068】
ところで、図3を用いた説明では、自車が特定エリアSAへ進入する前後n秒の速度分布を生成することとしたが、速度分布の生成処理は、かかる例に限られるものではない。図9は、変形例に係る速度分布の生成処理の説明図である。
【0069】
図9に示すように、変形例では、制御部13は、特定エリアSAに対し、自車の進行方向の前後について特定エリアSAを拡張した範囲である判定エリアDAをさらに設定するようにしてもよい。
【0070】
かかる場合、判定部13cは、常時取得される自車の位置情報に基づいて、かかる判定エリアDAへ自車が進入したか否かを判定する。そして、自車が進入した場合、生成部13dは、常時取得され、紐付けられて一時保存されている位置情報および速度情報に基づいて自車の速度分布の生成を開始する(ステップS11)。
【0071】
そして、生成部13dは、自車が判定エリアDAを通過したならば、速度分布の生成を終了する(ステップS12)。ここで、特定エリアSAの拡張方向における幅である判定エリアDAの横幅は、前述の前後n秒に相当する長さであることが好ましい。これにより、前述の前後n秒を確保することにより得られる効果と同様の効果を得ることが可能となる。なお、図9を用いた説明では、判定エリアDAが特定エリアSAを二次元的に拡張した範囲である例を挙げたが、判定エリアDAは、特定エリアSAを三次元的に拡張した範囲であってもよい。たとえば、自車が高架下方向へ進行する場合などには、判定エリアDAは、特定エリアSAを三次元的に拡張した範囲となる。かかる場合、判定エリアDAは、車両が確実に特定エリアSAを通過したことが見込まれる時間に相当する範囲となるように設定される。
【0072】
上述してきたように、実施形態に係る車載装置10は、車両に搭載される情報処理装置であって、マップマッチング処理を実行する制御部13を備える。制御部13は、上記マップマッチング処理における地図データ上に複数のリンクと各リンクの速度分布とが紐付けられた特定エリアSAを設定し、特定エリアSAを通過した際の上記車両の速度分布と特定エリアSAに紐付けられた上記各リンクの速度分布とを比較することで、上記車両が走行中であるリンクを識別する。
【0073】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、マップマッチングの精度を向上させることができる。
【0074】
また、制御部13は、上記車両が特定エリアSAに進入したと判定された時点から前後の決められた時間分の上記車両の速度分布を生成し、上記各リンクの速度分布と比較する。
【0075】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、前述の前後n秒分の速度分布の変化に基づいて精度の高い比較を行うことが可能となる。
【0076】
また、制御部13は、上記車両が確実に特定エリアSAを通過したことが見込まれる時間を上記決められた時間とする。
【0077】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、かかる時間を確保することにより、時系列の速度分布の変化を明瞭にでき、特定エリアSAの各リンクに紐付いた速度分布との比較において、精度を向上させることができる。
【0078】
また、制御部13は、特定エリアSAに対し、上記車両の進行方向の前後について特定エリアSAを拡張した範囲である判定エリアDAをさらに設定し、上記車両が判定エリアDAに進入したと判定された時点から上記車両が判定エリアDAを通過したと判定された時点までの上記車両の速度分布を生成し、上記各リンクの速度分布と比較する。
【0079】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、車両の速度分布の生成範囲を判定エリアDAとして明瞭に示すことができる。
【0080】
また、制御部13は、判定エリアDAが、上記車両が確実に特定エリアSAを通過したことが見込まれる時間に相当する範囲となるように設定する。
【0081】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、かかる時間に相当する範囲を判定エリアDAとして確保することにより、時系列の速度分布の変化を明瞭にでき、特定エリアSAの各リンクに紐付いた速度分布との比較において、精度を向上させることができる。
【0082】
また、制御部13は、上記車両の速度分布と上記各リンクの速度分布との類似度に応じて上記車両が走行中であるリンクを識別する。
【0083】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、基準値となる上記各リンクの速度分布との類似度評価に基づくマップマッチングを行うことが可能となる。
【0084】
また、制御部13は、上記類似度が予め決められた閾値を超えた場合に、当該類似度に対応する速度分布に紐付けられたリンクを上記車両が走行中であるリンクとして識別する。
【0085】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、類似度の高さに基づいて精度よく自車が走行中であるリンクを識別することができる。
【0086】
また、制御部13は、リアルタイムの道路状況に応じて、特定エリアSA、各リンクの速度分布、および、上記閾値の少なくともいずれかを変更する。
【0087】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、リアルタイムの道路状況に応じつつ、精度よく柔軟性の高いマップマッチングを行うことが可能となる。
【0088】
また、制御部13は、料金所200の周辺の領域、分岐地点の周辺の領域、合流地点の周辺の領域、および、高架上下の各リンクを含む領域の少なくともいずれかに特定エリアSAを設定する。
【0089】
したがって、実施形態に係る車載装置10によれば、誤マッチングが起こりやすい場所で誤マッチングが行われてしまう可能性を低下させることができる。
【0090】
また、実施形態に係るマップマッチング方法は、車載装置10が実行する情報処理方法であって、マップマッチング処理を実行することと、上記マップマッチング処理における地図データ上に複数のリンクと各リンクの速度分布とが紐付けられた特定エリアSAを設定することと、特定エリアSAを通過した際の上記車両の速度分布と特定エリアSAに紐付けられた上記各リンクの速度分布とを比較することで、上記車両が走行中であるリンクを識別することと、を含む。
【0091】
したがって、実施形態に係るマップマッチング方法によれば、マップマッチングの精度を向上させることができる。
【0092】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 マップマッチングシステム
3 車載センサ部
3a GPSセンサ
3b 車速センサ
5 HMI部
10 車載装置
11 通信部
12 記憶部
12a 地図データ情報
12b 位置・車速情報
12c 特定エリア情報
12d 速度分布情報
12e 処理パラメータ情報
13 制御部
13a 取得部
13b 紐付け部
13c 判定部
13d 生成部
13e 比較部
13f 補正部
13g 更新部
100 本線
120 側道
140 側道
160 道路
200 料金所
300 サーバ装置
DA 判定エリア
SA 特定エリア
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図9