(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118590
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】電気回路遮断装置
(51)【国際特許分類】
H01H 39/00 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
H01H39/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021605
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尭
(57)【要約】
【課題】作動後に発射体が点火器側へ戻ることを防止し、絶縁抵抗値の低下を抑制する。
【解決手段】電気回路遮断装置は、外殻部材として、一方向に延在する収容空間を内包するハウジングと、点火器と、点火器から受けるエネルギーによって収容空間の一端側から発射され、収容空間の延在方向に沿って移動する発射体と、電気回路の一部を形成する導体片であって、収容空間を横切るように配置された導体片と、を備え、ハウジングは、収容空間のうち、導体片を保持したハウジングの内壁によって画定される領域を保持領域とし、発射体は、収容空間の延在方向に沿って延伸すると共に、保持領域に挿嵌されるロッド部と、弾性を有する部材であって、発射後に保持領域の内壁と対向するロッド部の外周に設けられ、発射体が発射された際に保持領域の内壁と接して、当該保持領域の内壁とロッド部との間で圧縮される弾性部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻部材として、一方向に延在する収容空間を内包するハウジングと、
前記ハウジングに設けられた点火器と、
前記ハウジング内に配置され、前記点火器から受けるエネルギーによって前記収容空間の一端側から発射され、前記収容空間の延在方向に沿って移動する発射体と、
前記ハウジングに保持され、電気回路の一部を形成する導体片であって、一方の第一接続端部と他方の第二接続端部との間に、前記発射体の移動によって切除される被切除部を有し、当該被切除部が前記収容空間を横切るように配置された導体片と、
を備え、
前記ハウジングは、前記収容空間のうち、前記導体片を保持した前記ハウジングの内壁によって画定される領域を保持領域とし、
前記発射体は、
前記収容空間の延在方向に沿って延伸すると共に、前記保持領域に挿嵌されるロッド部と、
弾性を有する部材であって、発射後に前記保持領域の前記内壁と対向する前記ロッド部の外周に設けられ、前記発射体が発射された際に前記保持領域の前記内壁と接して、当該保持領域の前記内壁と前記ロッド部との間で圧縮される弾性部と、を有する
電気回路遮断装置。
【請求項2】
前記ハウジングに保持された前記導体片の前記第一接続端部において、前記被切除部が切除される前記被切除部との境界部分を第一切断エッジ部とし、前記第二接続端部において、前記被切除部が切除される前記被切除部との境界部分を第二切断エッジ部とし、
前記弾性部が、前記発射体の発射後に、少なくとも前記第一切断エッジ部と前記第二切断エッジ部とを覆う位置に設けられている請求項1に記載の電気回路遮断装置。
【請求項3】
前記弾性部が、前記ロッド部に外嵌された筒状の部材である請求項2に記載の電気回路遮断装置。
【請求項4】
前記弾性部が、前記ロッド部の外周面に形成された凹部に嵌合され、外側の端面が前記外周面から突出して設けられている請求項1~3の何れか1項に記載の電気回路遮断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気回路遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路には、その電気回路を構成する機器の異常時や、該電気回路が搭載されたシステムの異常時に作動することによって該電気回路での導通を緊急に遮断する遮断装置が設けられる場合がある。その一態様として、点火器等から付与されるエネルギーによって発射体を高速で移動させて、電気回路の一部を形成する導体片を強制的に且つ物理的に切断する電気回路遮断装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。また、近年では、高電圧の電源を搭載する電気自動車に適用される電気回路遮断装置の重要性が益々高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国実用新案第212019000419号明細書
【特許文献2】米国特許第10418212号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気回路遮断装置において、作動時に発射された発射体は、導体片を切断後、ハウジングの一部に突き当ることで停止するが、その後、点火器のガスが温度低下により内圧が下がることで発射体が押し戻されてしまうことがあった。発射体が押し戻されると、切断時のアーク放電によって蒸発した導体をハウジング内に拡散させ、切断後の絶縁抵抗値を低下させる可能性がある。このため、導体片の切断後に発射体が押し戻されないように停止させることが望ましい。
【0005】
本開示の技術は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、導体片の切断後に発射体が押し戻されることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の電気回路遮断装置は、
外殻部材として、一方向に延在する収容空間を内包するハウジングと、
前記ハウジングに設けられた点火器と、
前記ハウジング内に配置され、前記点火器から受けるエネルギーによって前記収容空間の一端側から発射され、前記収容空間の延在方向に沿って移動する発射体と、
前記ハウジングに保持され、電気回路の一部を形成する導体片であって、一方の第一接続端部と他方の第二接続端部との間に、前記発射体の移動によって切除される被切除部を有し、当該被切除部が前記収容空間を横切るように配置された導体片と、
を備え、
前記ハウジングは、前記収容空間のうち、前記導体片を保持した前記ハウジングの内壁によって画定される領域を保持領域とし、
前記発射体は、
前記収容空間の延在方向に沿って延伸すると共に、前記保持領域に挿嵌されるロッド部と、
弾性を有する部材であって、発射後に前記保持領域の前記内壁と対向する前記ロッド部の外周に設けられ、前記発射体が発射された際に前記保持領域の前記内壁と接して、当該保持領域の前記内壁と前記ロッド部との間で圧縮される弾性部と、を有する。
【0007】
前記電気回路遮断装置は、前記ハウジングに保持された前記導体片の前記第一接続端部において、前記被切除部が切除される前記被切除部との境界部分を第一切断エッジ部とし、前記第二接続端部において、前記被切除部が切除される前記被切除部との境界部分を第二切断エッジ部とし、
前記弾性部が、前記発射体の発射後に、少なくとも前記第一切断エッジ部と前記第二切断エッジ部とを覆う位置に設けられてもよい。
【0008】
前記電気回路遮断装置は、前記弾性部が、前記ロッド部に外嵌された筒状の部材であってもよい。
【0009】
前記電気回路遮断装置は、前記弾性部が、前記ロッド部の外周面に形成された凹部に嵌合され、外側の端面が前記外周面から突出して設けられてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、導体片の切断後に発射体が押し戻されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電気回路遮断装置(以下、単に「遮断装置」とも称す)の内部構造を説明する図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る導体片の上面図である。
【
図3】
図3は、発射体の縦断面図(XY断面図)である。
【
図4】
図4は、
図3のA-A線における発射体の横断面図(XZ断面図)である。
【
図5】
図5は、弾性部が設けられた箇所の一部を拡大して模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る遮断装置の作動状況を説明する図である。
【
図7】
図7は、電気回路遮断試験に用いた試験装置の概略を示す図である。
【
図8】
図8は、変形例1に係る発射体の縦断面図(XY断面図)である。
【
図9】
図9は、
図8のB-B線における発射体の横断面図(XZ断面図)である。
【
図10】
図10は、変形例2に係る発射体の縦断面図(XY断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第一実施形態>
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係る電気回路遮断装置について説明する。なお、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0013】
<構成>
図1は、実施形態に係る電気回路遮断装置(以下、単に「遮断装置」という)1の内部構造を説明する図である。遮断装置1は、例えば、自動車や家庭電化製品、太陽光発電システム等に含まれる電気回路や、当該電気回路のバッテリー(例えば、リチウムイオンバッテリー)を含むシステムの異常時に、電気回路を遮断することで大きな被害を未然に防止するための装置である。本明細書においては、
図1に示す高さ方向(後述する収容空間13が延在する方向)に沿った断面を遮断装置1の縦断面といい、高さ方向と直交する方向の断面を遮断装置1の横断面という。
図1は、遮断装置1の作動前の状態を示している。
【0014】
遮断装置1は、ハウジング10、点火器20、発射体40、導体片50、クーラント材60等を含んでいる。ハウジング10は、外殻部材として、上端側の第1端部11から下端側の第2端部12の方向に延在する収容空間13を内包している。この収容空間13は、発射体40が移動可能なように直線状に形成された空間であり、遮断装置1の上下方向に沿って延在している。
図1に示すように、ハウジング10の内部に形成された収容空間13の上下方向(延在方向)における上端側には、発射体40が収容されている。本明細書では、上下方向をY軸方向、左右方向をX軸方向、奥行き方向をZ方向とも称す。但し、本明細書において遮断装置1の上下方向及びXYZ方向は、実施形態の説明の便宜上、遮断装置1における各要素の相対的な位置関係を示すものに過ぎない。例えば、遮断装置1を設置する際の姿勢が図に示した方向に限定されるものではない。
【0015】
[ハウジング]
ハウジング10は、ハウジング本体100、トップホルダ110、ボトム容器120を含む。ハウジング本体100には、トップホルダ110およびボトム容器120が結合されており、これによって一体のハウジング10が形成されている。
【0016】
ハウジング本体100は、例えば、概略角柱形状の外形を有している。但し、ハウジング本体100の形状は特に限定されない。また、ハウジング本体100には、上下方向に沿って空洞部145が貫通するように形成されており、この空洞部145は収容空間13の一部を形成している。更に、ハウジング本体100は、トップホルダ110のフランジ部111が固定される上面101と、ボトム容器120のフランジ部121が固定される下面102を有する。本実施形態においては、ハウジング本体100における上面101の外周側には、当該上面101から上方に向けて筒状の上筒壁103が立設されている。本実施形態において、上筒壁103は、例えば角筒形状を有しているが、他の形状を有していてもよい。また、ハウジング本体100における下面102の外周側には、当該下面102から下方に向けて筒状の下筒壁104が垂設されている。本実施形態において、下筒壁104は、例えば角筒形状を有しているが、他の形状を有していてもよい。以上のように構成されるハウジング本体100は、例えば、合成樹脂等といった絶縁部材によって形成することができる。例えば、ハウジング本体100は、ポリアミド合成樹脂の一種であるナイロンによって形成されていてもよい。
【0017】
[トップホルダ]
次に、トップホルダ110について説明する。トップホルダ110は、例えば、段付き円筒形状を有するシリンダ部材であり、内側が空洞状になっている。トップホルダ110は、上側(第1端部11側)に位置する小径シリンダ部112と、下側に位置する大径シリンダ部113と、これらを接続する接続部114と、大径シリンダ部113の下端から外側に向かって延在するフランジ部111等を含んで構成されている。例えば、小径シリンダ部112および大径シリンダ部113は同軸に配置されており、大径シリンダ部113は小径シリンダ部112よりも直径が一回り大きい。
【0018】
また、トップホルダ110におけるフランジ部111の輪郭は、ハウジング本体100における上筒壁103の内側に収まるような概略四角形を有している。フランジ部111は、例えば、上筒壁103の内側に配置された状態で、ハウジング本体100における上面101にネジ等を用いて一体に締結されていてもよいし、リベット等によって固定されていてもよい。また、ハウジング本体100の上面101とトップホルダ110におけるフランジ部111の下面との間にシーラントを塗布した状態でトップホルダ110をハウジング本体100に結合してもよい。これにより、ハウジング10内に形成される筒状空間(収容空間13の一部)の気密性を高めることができる。また、シーラントの代わりに、或いはシーラントと併用してハウジング本体100の上面101とトップホルダ110のフランジ部111との間にOリングを介在させることによって筒状空間の気密性を高め
るようにしてもよい。
【0019】
トップホルダ110における小径シリンダ部112の内側に形成される空洞部は、
図1に示すように点火器20の一部を収容する収容空間として機能する。また、トップホルダ110における大径シリンダ部113の内側に形成される空洞部は、下方に位置するハウジング本体100の空洞部と連通しており、筒状空間の一部を形成している。上記のように構成されるトップホルダ110は、例えば、強度、耐久性に優れたステンレス、アルミニウム等といった適宜の金属製部材によって形成することができる。但し、トップホルダ110を形成する材料は特に限定されない。また、トップホルダ110の形状についても上記態様は一例であり、他の形状を採用してもよい。
【0020】
[ボトム容器]
次に、ボトム容器120について説明する。ボトム容器120は、内部が空洞状の概略有底筒形状を有し、側壁部122、側壁部122の下端に接続される底壁部123、側壁部122の上端に接続されるフランジ部121等を含んで構成されている。側壁部122は、例えば円筒形状を有しており、フランジ部121は側壁部122における上端から外側に向かって延在している。ボトム容器120におけるフランジ部121の輪郭は、ハウジング本体100における下筒壁104の内側に収まるような概略四角形を有している。フランジ部121は、例えば、下筒壁104の内側に配置された状態で、ハウジング本体100における下面102にネジ等を用いて一体に締結されていてもよいし、リベット等によって固定されていてもよい。ここで、ハウジング本体100の下面102とボトム容器120におけるフランジ部121の上面との間にはシーラントが塗布された状態でボトム容器120がハウジング本体100に結合されてもよい。これにより、ハウジング10内に形成される筒状空間(収容空間13の一部)の気密性を高めることができる。また、シーラントの代わりに、或いはシーラントと併用してハウジング本体100の下面102とボトム容器120のフランジ部121との間にOリングを介在させることによって筒状空間の気密性を高めるようにしてもよい。
【0021】
なお、ボトム容器120の形状に関する上記態様は一例であり、他の形状を採用してもよい。また、ボトム容器120の内側に形成される空洞部は、上方に位置するハウジング本体100と連通しており、筒状空間の一部を形成している。上記のように構成されるボトム容器120は、例えば、強度、耐久性に優れたステンレス、アルミニウム等といった適宜の金属製部材によって形成することができる。但し、ボトム容器120を形成する材料は特に限定されない。また、ボトム容器120は複層構造となっていてもよい。例えば、ボトム容器120は、外部に面する外装部を強度、耐久性に優れたステンレス、アルミニウム等といった適宜の金属製部材によって形成し、筒状空間側に面する内装部を合成樹脂等といった絶縁部材によって形成してもよい。勿論、ボトム容器120の全体を絶縁部材によって形成してもよい。
【0022】
上記のように、実施形態におけるハウジング10は、一体に組み付けられるハウジング本体100、トップホルダ110、およびボトム容器120を含んで構成され、その内側に第1端部11から第2端部12の方向に延在する筒状空間が形成される。この筒状空間には、以下に詳述する点火器20、発射体40、導体片50における被切除部53、クーラント材60等が収容される。
【0023】
[点火器]
次に、点火器20について説明する。点火器20は、点火薬を含む点火部21と、点火部21に接続された一対の導電ピン(図示せず)を有する点火器本体22を備えた電気式点火器である。点火器本体22は、例えば、絶縁樹脂によって包囲されている。また、点火器本体22における一対の導電ピンの先端側は外部に露出しており、遮断装置1の使用
時に電源と接続される。
【0024】
点火器本体22は、トップホルダ110における小径シリンダ部112の内部に収容された概略円柱状の本体部221と、本体部221の上部に位置するコネクタ部222を備えている。点火器本体22は、例えば、本体部221を小径シリンダ部112の内周面に圧入することによって小径シリンダ部112に固定されている。また、本体部221の軸方向中間部には、外周面が他所に比べて窪んだ括れ部が本体部221の周方向に沿って環状に形成されており、この括れ部にOリング223が嵌め込まれている。Oリング223は、例えば、ゴム(例えばシリコーンゴム)や合成樹脂によって形成されており、小径シリンダ部112における内周面と本体部221との間の気密性を高めるように機能する。
【0025】
点火器20におけるコネクタ部222は、小径シリンダ部112の上端に形成された開口部112Aを通じて外部に突出して配置されている。コネクタ部222は、例えば、導電ピンの側方を覆う円筒形状を有しており、電源側のコネクタと接続できるように構成されている。
【0026】
図1に示すように、点火器20の点火部21は、ハウジング10の収容空間13(より詳しくは、大径シリンダ部113の内側に形成される空洞部)を臨むようにして配置されている。点火部21は、例えば、点火器カップ内に点火薬を収容する形態として構成されている。例えば、点火薬は、一対の導電ピンの基端同士を連結するように連架されたブリッジワイヤ(抵抗体)に接触した状態で点火部21における点火器カップ内に収容されている。点火薬としては、例えば、ZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジル
コニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、THPP(水素化チタン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等を採用してもよい。
【0027】
点火器20を作動させる際、点火薬を点火するための作動電流が電源から導電ピンに供給されると、点火部21におけるブリッジワイヤが発熱する結果、点火器カップ内の点火薬が着火、燃焼し、燃焼ガスが生成される。そして、点火部21の点火器カップ内における点火薬の燃焼に伴って当該点火器カップ内の圧力が上昇し、点火器カップの開裂面21Aが開裂し、点火器カップから燃焼ガスが収容空間13へと放出される。より具体的には、点火器カップからの燃焼ガスは、収容空間13内に配置された発射体40の後述するピストン部41における窪み部411に放出される。これにより発射体40は、
図1の初期位置から収容空間13に沿って下側へ発射される。
【0028】
[導体片]
次に、導体片50について説明する。
図2は、実施形態に係る導体片50の上面図である。導体片50は、遮断装置1の構成要素の一部を構成すると共に、遮断装置1を所定の電気回路に取り付けたときに当該電気回路の一部を形成する導電性の金属体であり、バスバー(bus bar)と呼ばれる場合がある。導体片50は、ハウジング本体100における
一対の導体片保持孔51A,52Aに通され、ハウジング本体内の空洞部145を横切るように配置されている。本実施形態では、このように導体片50を保持したハウジング本体100の内壁によって画定される領域(空洞部145)を保持領域としている。
【0029】
導体片50は、例えば、銅(Cu)等の金属によって形成することができる。但し、導体片50は、銅以外の金属で形成されていてもよいし、銅と他の金属との合金で形成されてもよい。なお、導体片50に含まれる銅以外の金属としては、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)等が例示できる。
【0030】
図2に示す一態様において、導体片50は全体として細長い平板片として形成されており、両端側の第一接続端部51および第二接続端部52と、これらの中間部分に位置する
被切除部53等を含んでいる。導体片50における第一接続端部51および第二接続端部52には、それぞれ接続孔51A,52Aが設けられている。これら接続孔51A,52Aは、電気回路において他の導体(例えば、リードワイヤ)と接続するために使用される。なお、
図1においては、導体片50における接続孔51A,52Aの図示を省略している。また、導体片50の被切除部53は、遮断装置1が適用される電気回路に過大電流等の異常が生じた場合に、発射体40のロッド部42によって強制的に且つ物理的に切断され、第一接続端部51および第二接続端部52から切除される部位である。
【0031】
ここで、導体片50は種々の形態を採用することができ、その形状は特に限定されない。
図2に示す例では、第1接続端部51、第2接続端部52および被切除部53の表面が同一面を形成しているが、これには限られない。例えば、導体片50は、第1接続端部51および第2接続端部52に対して被切除部53が直交、或いは、傾斜した姿勢で接続されていてもよい。また、導体片50における被切除部53の平面形状についても特に限定されない。勿論、導体片50における第1接続端部51、第2接続端部52の形状も特に限定されない。
【0032】
また、実施形態に係るハウジング本体100には、一対の導体片保持孔105A,105Bが形成されている。一対の導体片保持孔105A,105Bは、ハウジング本体100の上下方向(軸方向)に直交する横断面方向に延在している。より詳しくは、一対の導体片保持孔105A,105Bが、ハウジング本体100の空洞部(収容空間13)を挟んで一直線上に延在している。上記のように構成される導体片50は、ハウジング本体100に形成された一対の導体片保持孔105A,105Bに挿通された状態でハウジング本体100に保持されている。
図1に示す例では、導体片50の第1接続端部51が導体片保持孔105Aに挿通された状態で保持され、第2接続端部52が導体片保持孔105Bに挿通された状態で保持されている。また、この状態において、導体片50の被切除部53がハウジング本体100の空洞部(収容空間13)に位置付けられている。
【0033】
上記のように、ハウジング本体100に装着された導体片50は、被切除部53が収容空間13を横切るようにして、当該収容空間13の延在方向(軸方向)に直交する姿勢に保持される。なお、
図2に示す符号L1は、遮断装置1のハウジング本体100に装着された状態における導体片50の上部に位置するロッド部42の外周位置を示す。ロッド部42は、点火器20の作動時に被切除部53を切除するための切除面420を先端側に有し、このロッド部42の外周位置L1が切除面420の輪郭でもある。このため、導体片50において、ロッド部42の外周位置L1と重なる位置が、切除予定位置である。導体片50の第一接続端部51において、被切除部53が切除される被切除部53との境界部分を第一切断エッジ部511とし、第二接続端部52において、被切除部53が切除される被切除部53との境界部分を第二切断エッジ部521とする。
【0034】
[クーラント材]
次に、ハウジング10における収容空間13に配置されるクーラント材60について説明する。ここで、
図1に示すように、遮断装置1(点火器20)の作動前において、ハウジング本体100における一対の導体片保持孔51A,52Aに保持された状態の導体片50の被切除部53は、ハウジング10の収容空間13を横切るように横架されている。以下、ハウジング10における収容空間13のうち、導体片50の被切除部53を挟んで発射体40が配置されている方の領域(空間)を「発射体初期配置領域R1」と呼び、発射体40とは反対側に位置する領域(空間)を「消弧領域R2」と呼ぶ。なお、上記のように、収容空間13を横切るように配置された被切除部53の側方に隙間が形成されているため、発射体初期配置領域R1および消弧領域R2は被切除部53によって完全に隔離されているのではなく、双方は連通している。勿論、被切除部53の形状および大きさ次第では、発射体初期配置領域R1および消弧領域R2が被切除部53によって完全に隔離
されていてもよい。
【0035】
収容空間13の消弧領域R2は、遮断装置1(点火器20)の作動時に発射される発射体40のロッド部42によって切除された被切除部53を受けるための領域(空間)である。この消弧領域R2には、消弧材としてのクーラント材60が配置されている。クーラント材60は、発射体40が導体片50の被切除部53を切除した際に生じたアークおよび被切除部53の熱エネルギーを奪い、冷却することによって電流遮断時におけるアーク発生の抑制、或いは、発生したアークを消弧(消滅)させるための冷却材である。
【0036】
遮断装置1における消弧領域R2は、発射体40によって導体片50における第一接続端部51および第二接続端部52から切除された被切除部53を受け入れるための空間であると同時に、発射体40が被切除部53を切除した際に生じたアークを効果的に消弧するための空間としての意義を有する。そして、導体片50から被切除部53を切除する際に生じたアークを効果的に消弧するために、消弧領域R2に消弧材としてクーラント材60が配置されている。
【0037】
実施形態の一態様として、クーラント材60は、固形状である。また、実施形態の一態様として、クーラント材60が保形体によって形成されている。ここでいう保形体とは、例えば、外力が加わっていないときは一定の形状を保ち、外力が加わったときには変形が起こり得るとしても一体性を保持可能(バラバラにならない)な材料である。例えば、繊維体を所望の形状に成形したものが保形体として例示できる。本実施形態においては、クーラント材60を保形体である金属繊維によって形成している。ここで、クーラント材60を形成する金属繊維としては、スチールウールおよび銅ウールの少なくとも何れか一方を含む態様が挙げられる。但し、クーラント材60における上記態様は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0038】
クーラント材60は、例えば、概略円盤形状に成形されており、ボトム容器120の底部に配置されている。
【0039】
[発射体]
次に、発射体40について説明する。発射体40は、例えば、合成樹脂等の絶縁部材によって形成されており、ピストン部41と、当該ピストン部41に接続されたロッド部42と、ロッド部42の外周に設けられた弾性部44を含んでいる。ピストン部41は概略円柱形状を有し、トップホルダ110における大径シリンダ部113の内径と概ね対応する外径を有している。例えば、ピストン部41の直径は、大径シリンダ部113の内径に比べて僅かに小さくてもよい。また、ピストン部41は、ハウジング本体100における空洞部145の直径よりも大きい外径を有しており、空洞部145内には進入せず、空洞部145を形成する周囲の部材、例えばハウジング本体100の上面101に突き当たる構成である。即ち、ピストン部41は、ロッド部42と接続している先端側において移動方向(軸方向)と直交する横断面積が、ロッド部42における前記後端側の横断面積及び空洞部145の横断面積よりも大きく形成されている。発射体40の形状はハウジング10の形状等に応じて適宜変更することができる。例えば、本実施形態において、発射体40のピストン部41は、概略円柱形状であるが、その形状は特に限定されない。ピストン部41の外形は、大径シリンダ部113の内壁面の形状および大きさに応じて適切な形状および大きさを採用し得る。
【0040】
また、ピストン部41の上面には、例えば、円柱形状を有する窪み部411が形成されており、この窪み部411に点火部21を受け入れている。窪み部411の底面は、点火器20の作動時に当該点火器20から受けるエネルギーを受圧する受圧面411Aとして形成されている。また、ピストン部41の軸方向中間部には、外周面が他所に比べて窪ん
だ括れ部がピストン部41の周方向に沿って環状に形成されており、この括れ部にOリング43が嵌め込まれている。Oリング43は、例えば、ゴム(例えばシリコーンゴム)や合成樹脂によって形成されており、大径シリンダ部113における内周面とピストン部41との間の気密性を高めるように機能する。
【0041】
発射体40のロッド部42は、例えば、ピストン部41に比べて小径の外周面を有し、収容空間13の延在方向に沿って延伸するロッド状部材であり、ピストン部41の下端側に一体に接続されている。ロッド部42は、点火器20の作動時に収容空間13の延在方向に沿って移動し、ハウジング本体100の空洞部145内に挿嵌される。ロッド部42の下端面は、遮断装置1の作動時に導体片50から被切除部53を切除するための切除面420として形成されている。なお、本実施形態におけるロッド部42は概略円筒形状を有しているが、その形状は特に限定されず、遮断装置1の作動時に導体片50から切除すべき被切除部53の形状や大きさに応じて変更し得る。ロッド部42は、例えば、円柱、楕円柱、若しくは角柱などの柱形状、又は、楕円筒、若しくは角筒などの筒形状を有していてもよい。なお、
図1に示す発射体40の初期位置においては、発射体40のロッド部42における切除面420を含む先端側の領域は、ハウジング本体100の空洞部(保持領域)145の上部に配置されている。
【0042】
弾性部44は、ゴム等の絶縁性及び弾性を有する材料によって形成されている。弾性部44は、例えば、ロッド部42と比べて、弾性限界が高い又は弾性率が低い部材であってもよい。
【0043】
上記のように構成される発射体40は、点火器20の作動時に当該点火器20からのエネルギーを、受圧面411Aを含むピストン部41の上面が受圧することで、発射体40が
図1に示す初期位置から発射され、収容空間13に沿って第2端部12側(下方)に向かって高速で移動する。具体的には、
図1に示すように、発射体40のピストン部41は、トップホルダ110における大径シリンダ部113の内側に収容されており、大径シリンダ部113の内壁面に沿って軸方向に摺動可能である。発射後の発射体40は、ピストン部41の下端面がハウジング本体100の上面101に当接(衝突)することで停止する。即ちロッド部42が、後端まで空洞部145に嵌め込まれた状態となる。
【0044】
図3は、発射体40の縦断面図(XY断面図)、
図4は、
図3のA-A線における発射体40の横断面図(XZ断面図)、
図5は、弾性部44が設けられた箇所の一部を拡大して模式的に示す図である。
図3に示すように、発射体40のロッド部42は、発射後に保持領域の内壁と対向する外周面421に凹部422が設けられ、この凹部422に筒状の弾性部44が外嵌されている。ここで、弾性部44は、外周側の一部がロッド部42の外周面421から突出するように凹部422に嵌合される。即ち、弾性部44は、外径がロッド部42の外径より大きく形成されている。なお、発射体40のロッド部42は空洞部145より小径に形成されており、空洞部145に挿嵌された際、ロッド部42の外周面421と空洞部145を画する内周面1430(
図1)との間に所定のクリアランスW0(
図5)を有するように構成されている。これに対し、弾性部44は、収容空間13の延在方向と直交する幅方向WAにおいて、弾性部44の外周面441とロッド部42の外周面421との距離W1が、ロッド部42のクリアランス(隙間)W0より長く形成されている。また、弾性部44は、幅方向WAにおいて外周面441と反対側に位置する内周面442が、ロッド部42の凹部422における凹部周面423と当接し、幅方向WAにおける位置が決められている。弾性部44は、発射体40が発射され、ロッド部42と共に空洞部145内に挿嵌されると、外周面441が空洞部145の内周面1430と接し、当該内周面1430とロッド部42の凹部周面423との間で圧縮される。
【0045】
<動作>
次に、遮断装置1を作動させて電気回路を遮断する際の動作内容について説明する。上記のように、
図1は、遮断装置1の作動前の状態(以下、「作動前初期状態」ともいう)を示している。この作動前初期状態において、遮断装置1における発射体40は、ピストン部41が収容空間13における第1端部11側(上端側)に位置付けられると共にロッド部42の下端に形成された切除面420が、導体片50における被切除部53の上面に位置付けられた初期位置にセットされている。
【0046】
更に、実施形態に係る遮断装置1は、遮断する電気回路が接続された装置(車両、発電設備、蓄電設備など)の異常状態を検知する異常検知センサー(図示せず)、および、点火器20の作動を制御する制御部(図示せず)を更に備えている。異常検知センサーは、導体片50を流れる電流の他に、電圧や導体片50の温度に基づいて異常状態を検知することができてもよい。また、異常検知センサーは、例えば衝撃センサー、温度センサー、加速度センサー、振動センサーなどであって、車両等の装置における衝撃、温度、加速度、振動に基づいて事故や火災などの異常状態を検知してもよい。遮断装置1の制御部は、例えば所定の制御プログラムを実行することで所定の機能を発揮できるコンピュータである。制御部による所定の機能は、対応するハードウェアで実現することもできる。そして、遮断装置1が適用される電気回路の一部を形成する導体片50に過大な電流が流れると、その異常電流が異常検知センサーによって検出される。検出された異常電流に関する異常情報は、異常検知センサーから制御部に引き渡される。例えば、制御部は、異常検知センサーによって検出された電流値に基づいて、点火器20の導電ピンに接続された外部電源(図示せず)から通電を受け、点火器20を作動させる。ここで、異常電流とは、所定の電気回路の保護のために設定された所定の閾値を超える電流値であってもよい。なお、上述した異常検知センサーおよび制御部は、遮断装置1の構成要素に含まれていなくても良く、例えば遮断装置1とは別の装置に含まれていてもよい。また、上記異常検知センサーや制御部は、遮断装置1に必須の構成ではない。
【0047】
例えば、電気回路の異常電流を検知する異常検知センサーによって電気回路の異常電流が検知されると、遮断装置1の制御部は点火器20を作動させる。すなわち、外部電源(図示せず)から点火器20の導電ピンに作動電流が供給される結果、点火部21内の点火薬が着火、燃焼し、燃焼ガスが生成される。そして、点火部21内の圧力上昇に起因して開裂面21Aが開裂し、点火部21内から点火薬の燃焼ガスが収容空間13へと放出される。
【0048】
ここで、点火器20の点火部21はピストン部41における窪み部411に受け入れられており、点火部21の開裂面21Aは、発射体40における窪み部411の受圧面411Aに対向して配置されている。そのため、点火部21からの燃焼ガスは窪み部411に放出されると共に、燃焼ガスの圧力(燃焼エネルギー)が受圧面411Aを含むピストン部41の上面に伝えられる。その結果、発射体40は、収容空間13の延在方向(軸方向)に沿って収容空間13を下方に移動する。
【0049】
図6は、実施形態に係る遮断装置1の作動状況を説明する図である。
図6の上段には遮断装置1の作動途中の状況を示し、
図6の下段には遮断装置1の作動が完了した状況を示す。上記のように、点火器20の作動によって、点火薬の燃焼ガスの圧力(燃焼エネルギー)を受けた発射体40は勢いよく下方に押し下げられ、その結果、ロッド部42の下端側に形成された切除面420によって導体片50における第一接続端部51および第二接続端部52と被切除部53との間の各境界部を剪断によって押し切る。その結果、導体片50から被切除部53が切除される。なお、発射体40は、点火器20の作動時に収容空間13の延在方向(軸方向)に沿って円滑に移動することができる限りにおいて、発射体40の形状、寸法を自由に決定することができ、例えば発射体40におけるピストン部41の外径はトップホルダ110における大径シリンダ部113の内径と等しい寸法に設定
されていてもよい。
【0050】
そして、発射体40は、
図6の下段に示すように、ハウジング本体100の上面101にピストン部41の下端面が当接(衝突)するまで、所定のストロークだけ収容空間13の延在方向(軸方向)に沿って下方に移動する。この状態において、発射体40におけるロッド部42によって導体片50から切除された被切除部53は、クーラント材60が配置されている消弧領域R2内に受け入れられる。その結果、導体片50の両端に位置する第一接続端部51および第二接続端部52は電気的に不通状態となり、遮断装置1が適用される所定の電気回路が強制的に遮断される。なお、ロッド部42によって導体片50から被切除部53が切除された際、切り離されつつある被切除部53と第一及び第二接続端部51,52との間でアークが発生し易いが、アークが発生した場合でも、クーラント材60が、アークおよび被切除部53の熱エネルギーを奪い、冷却することによって速やかにアークを消滅させ、アークの影響を抑制する。更に、発射体40が点火器20の作動によって移動して被切除部53を切除する際、ピストン部41は、大径シリンダ部113内を移動するのに伴って発射体初期配置領域R1側の気体をアーク熱によって蒸散した導体片50の粒子等と共に消弧領域R2側へ押し込むことで、アークを消弧領域R2側へ誘導し、クーラント材60等によって消弧されるようにしている。
【0051】
本実施形態の遮断装置1は、ロッド部42の外周にロッド部42より大径の弾性部44を有しているため、上述のように遮断装置1の作動によってロッド部42が空洞部145に挿入され、ピストン部41の下端面がハウジング本体100の上面101に当接して停止した際に、弾性部44が、空洞部145の内周面1430と接して、当該内周面1430と、ロッド部42との間で圧縮される。このため、圧縮された弾性部44が、元の状態に戻ろうとする弾性力により空洞部145の内周面1430に圧接するので、例えば点火器の作動によって生じたガスの温度が低下して内圧が下がったとしても発射体が押し戻されることなく停止する。
【0052】
<電気回路遮断試験>
次に、遮断装置1に対して行った電気回路遮断試験について説明する。本遮断試験において、弾性部44は、株式会社十川ゴム製のシリコーンゴムで形成され、硬さが、JIS
K6253準拠のタイプAデュロメータで48ポイント、引張強さが7.9MPaであ
る。また、弾性部44は、収容空間13の延在方向と直交する方向における外周面441から内周面442までの厚みW2(
図5)が1mmとされている。
【0053】
図7は、電気回路遮断試験に用いた試験装置の概略を示す図である。符号1000は電源、符号2000は絶縁抵抗計、符号3000は作動用電源である。また、符号4000は、遮断装置1における導体片50と協働して電気回路ECを形成するための配線である。また、符号5000は、遮断装置1の点火器20における導電ピンに作動用電源3000から供給される作動用電流を流すための配線である。
【0054】
次に、電気回路遮断試験の手順について説明する。
(手順1)
図7に示すように、遮断装置1における導体片50の第1接続端部51および第2接続端部52をそれぞれ配線4000によって電源1000に接続し、遮断装置1における点火器20を配線5000によって作動用電源3000に接続する。
(手順2)電源1000からの電流を電気回路ECに流す。
(手順3)作動用電源3000をオンにし、遮断装置1における点火器20に作動用電流を通電することによって点火器20を作動させる。
(手順4)電源1000、作動用電源3000をオフにする。
【0055】
本遮断試験では、上記手順に従って試験を行い、発射体40によって導体片50から被
切除部53を切除したときの第1接続端部51および第2接続端部52間における絶縁抵抗値を、市販の絶縁抵抗計2000(横河電機株式会社製のMY40)によって測定した。
【0056】
当該試験の結果、遮断装置1の第1接続端部51と第2接続端部52との間における絶縁抵抗値が2000MΩ以上となり、良好な絶縁性能が得られることが確認できた。
【0057】
<実施形態の効果>
本実施形態における遮断装置1は、作動によって発射体40が収容空間13に沿って移動し、導体片50を切断した後、発射体40のロッド部42が収容空間13(空洞部145)に挿入され、弾性部44が収容空間13を画する内周面1430と、ロッド部42との間で圧縮され、この弾性部44の弾性力が、発射体40の保持力として働くため、発射体40が点火器側へ押し戻されることを抑制することができる。これにより、本実施形態における遮断装置1は、導体片50の切断時に蒸散した導体片50が発射体40と共に押し戻されて収容空間内に拡散させることが防止され、切断後における絶縁抵抗値の低下を抑制できる。更に、発射体40の発射後において、第一切断エッジ部511と第二切断エッジ部521とを覆う位置に弾性部44が設けられたことにより、弾性部44が、ロッド部42の外周面421と収容空間13を画する内周面1430との隙間を埋め、切断時のアークによって蒸発した導体片50が、第一切断エッジ部511及び第二切断エッジ部521付近から拡散することを抑制できる。このため、切断後における絶縁抵抗値の低下を抑制できる。
【0058】
なお、弾性部44が設けられる位置は、第一切断エッジ部511と第二切断エッジ部521とを覆う位置に限らず、発射体40の発射後に第一切断エッジ部511及び第二切断エッジ部521より上側となる位置や、第一切断エッジ部511及び第二切断エッジ部521より下側となる位置など、ロッド部42の外周における他の部分に設けられてもよい。
【0059】
<変形例1>
図8は、変形例1に係る発射体40Aの縦断面図(XY断面図)、
図9は、
図8のB-B線における発射体40Aの横断面図(XZ断面図)である。本変形例の発射体40Aは、弾性部44Aが、筒状ではなく、第一切断エッジ部511と第二切断エッジ部521とを覆う位置であって、ロッド部42Aにおける周方向の一部に設けられている。なお、その他の構成は、前述の実施形態と同じであるため、同一の要素に同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0060】
図9に示すように、発射体40Aのロッド部42Aは、周方向の一部に凹部422Aが設けられ、この凹部422Aに弾性部44Aが嵌合されている。弾性部44Aは、収容空間13の延在方向と直交する断面(XZ断面)において円弧状に形成されている。なお、弾性部44Aの外周部が、ロッド部42Aの外周面421から突出して設けられ、発射体の発射後に、収容空間13を画する内周面1430と、ロッド部42Aとの間で圧縮される構成は、前述と同様である。
【0061】
このように本変形例の遮断装置1は、ロッド部42Aの外周に弾性部44Aが設けられ、点火器20の作動によって発射体40Aのロッド部42Aが導体片50を切断し、空洞部145に挿入された際、前述の実施形態と同様に、弾性部44が収容空間13を画する内周面1430と、ロッド部42Aとの間で圧縮され、この弾性部44Aの弾性力が、発射体40Aの保持力として働くため、発射体40Aが点火器側へ押し戻されることを抑制できる。これにより、切断された際に蒸散した導体片50が発射体40Aと共に押し戻されて収容空間内に拡散することが防止され、切断後における絶縁抵抗値の低下を抑制でき
る。更に、発射体40Aが発射された場合に、第一切断エッジ部511及び第二切断エッジ部521を覆う位置に弾性部44Aが設けられたことにより、作動時に、弾性部44Aが、ロッド部42Aの外周面421と収容空間13を画する内周面1430との隙間を埋め、切断時のアークによって蒸発した導体片50の拡散を抑制できる。このため、切断後における絶縁抵抗値の低下を抑制できる。
【0062】
<変形例2>
図10は、変形例2に係る発射体40Bの縦断面図(XY断面図)、
図11は、
図10のC-C線における発射体40Bの横断面図(XZ断面図)である。本変形例の発射体40Bは、弾性部44Bが、第一切断エッジ部511と第二切断エッジ部521と接触せず、その周囲を覆う位置に設けられている。なお、その他の構成は、前述の変形例1と同じであるため、同一の要素に同符号を付すなどして再度の説明を省略する。
【0063】
図10,
図11に示すように、発射体40Bのロッド部42Bは、周方向の一部に凹部422Bが設けられ、この凹部422Bに弾性部44Bが嵌合されている。弾性部44Bは、第一切断エッジ部511及び第二切断エッジ部521が設けられた位置に空隙443を有し、第一切断エッジ部511及び第二切断エッジ部521との間に空隙443を介して第一切断エッジ部511及び第二切断エッジ部521を覆っている。
【0064】
このように本変形例の遮断装置1は、ロッド部42Bの外周に弾性部44Bを備えたことにより、前述の変形例1と同様に、発射体40Bが点火器側へ押し戻されることを抑制できると共に、切断後における絶縁抵抗値の低下を抑制できる。なお、本変形例では、弾性部44Bを変形例1と同様に、ロッド部42Bの外周の一部に設けたが、前述の実施形態と同様に円筒形状としてもよい。
【0065】
以上、本開示に係る電気回路遮断装置の実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0066】
1: 遮断装置
10: ハウジング
100: ハウジング本体
110: トップホルダ
111: フランジ部
120: ボトム容器
121: フランジ部
122: 側壁部
123: 底壁部
13: 収容空間
143: 内壁
1430: 内周面
145: 空洞部
20: 点火器
40,40A,40B: 発射体
41: ピストン部
42,42A,42B: ロッド部
420: 切除面
421: 外周面
422,422A,422B: 凹部
44,44A,44B: 弾性部
50: 導体片
51: 第一接続端部
511: 第一切断エッジ部
51A: 導体片保持孔
52: 第二接続端部
521: 第二切断エッジ部
53: 被切除部
60: クーラント材