(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118604
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】ドアホールカバー
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20230818BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
B60J5/00 501E
F16B5/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021632
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小田 廣
(72)【発明者】
【氏名】西 彩花
【テーマコード(参考)】
3J001
【Fターム(参考)】
3J001FA03
3J001GA01
3J001GA06
3J001GB01
3J001HA04
3J001HA07
3J001HA10
3J001JC00
3J001JC02
3J001JC06
3J001JC07
3J001JC13
3J001KA12
3J001KB01
(57)【要約】
【課題】重ね合わせたドアホールカバーの間隔を維持しつつ、位置ずれを低減する。
【解決手段】ドアホールカバー(101a)は、複数のドアホールカバー(101a・101b)を厚さ方向(T)へ重ね合わせた状態で、隣り合う他のドアホールカバー(101b)との間隔を維持するスペーサ構造体(140)を備え、スペーサ構造体(140)は、他のドアホールカバー(101b)の一部と嵌合する凹部(141)を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアのドアインナーパネルに取り付けられるドアホールカバーであって、
複数の前記ドアホールカバーを厚さ方向へ重ね合わせた状態で、隣り合う他のドアホールカバーとの間隔を維持するスペーサ構造体を備え、
前記スペーサ構造体は、前記他のドアホールカバーの一部と嵌合する嵌合部を含む、ドアホールカバー。
【請求項2】
前記スペーサ構造体は、前記厚さ方向における前記ドアホールカバーの一方の面側に設けられる凸部をさらに含み、
前記嵌合部には、前記厚さ方向における前記ドアホールカバーの他方の面側に、前記凸部と嵌合する凹型形状を有する凹部が設けられており、
前記凸部と前記凹部とは、前記厚さ方向へ伸びる同心軸上に設けられる、請求項1に記載のドアホールカバー。
【請求項3】
前記ドアインナーパネルのサービスホールを塞ぐ本体部と、
前記ドアインナーパネルに前記本体部を固定するクリップ部と、を備え、
前記スペーサ構造体は、前記クリップ部に設けられる、請求項2に記載のドアホールカバー。
【請求項4】
前記ドアインナーパネルのサービスホールを塞ぐ本体部を備え、
前記スペーサ構造体は、前記本体部から前記他のドアホールカバー側へ向けて延在する延在部をさらに含み、
前記嵌合部は、前記延在部に設けられ、前記他のドアホールカバーの外縁部を前記厚さ方向に挟持する、請求項1に記載のドアホールカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアホールカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ドアのドアインナーパネルに形成されたサービスホールを塞ぐために、ドアホールカバーが使用されている。ドアホールカバーは、複数のドアホールカバーを重ね合わせた状態で運搬されることが一般的である。このため、ドアホールカバーを運搬するための通函には、運搬時にドアホールカバー同士が接触して損傷しないように仕切りが設けられる。この仕切りを設けることにより通函に収容可能なドアホールカバーの数が少なくなるため、ドアホールカバーの輸送コストが高くなるという課題があった。
【0003】
この課題に関連し、例えば特許文献1には、スペーサ(凸部)を備えたドアホールカバーが開示されている。特許文献1に記載のドアホールカバーによれば、厚さ方向へ重ね合わせたドアホールカバーの間隔がスペーサによって維持される。このため、前記通函に仕切りを設ける必要性がなくなり、ドアホールカバーの輸送コストを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のドアホールカバーでは、重ね合わせたドアホールカバーが、例えば運搬時の振動等に起因して、一方のドアホールカバー上を他方のドアホールカバーが摺動して位置ずれが生じる可能性があった。このため、重ね合わせたドアホールカバーの位置ずれを低減する技術の開発が望まれていた。
【0006】
本発明の一態様は、前記課題に鑑みてなされたものであって、重ね合わせたドアホールカバーの間隔を維持しつつ、位置ずれを低減可能なドアホールカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の一態様に係るドアホールカバーは、車両用ドアのドアインナーパネルに取り付けられるドアホールカバーであって、複数の前記ドアホールカバーを厚さ方向へ重ね合わせた状態で、隣り合う他のドアホールカバーとの間隔を維持するスペーサ構造体を備え、前記スペーサ構造体は、前記他のドアホールカバーの一部と嵌合する嵌合部を含む。
【0008】
前記構成では、スペーサ構造体が隣り合う他のドアホールカバーの一部と嵌合する。このため、重ね合わせたドアホールカバー同士の摺動を抑え、位置ずれを低減することができる。従って、前記構成によれば、重ね合わせたドアホールカバーの間隔を維持しつつ、位置ずれを低減可能なドアホールカバーを実現することができる。
【0009】
また、本発明の一態様に係るドアホールカバーでは、前記スペーサ構造体は、前記厚さ方向における前記ドアホールカバーの一方の面側に設けられる凸部をさらに含み、前記嵌合部には、前記厚さ方向における前記ドアホールカバーの他方の面側に、前記凸部と嵌合する凹型形状を有する凹部が設けられており、前記凸部と前記凹部とは、前記厚さ方向へ伸びる同心軸上に設けられていてもよい。
【0010】
前記構成では、スペーサ構造体は、厚さ方向へ伸びる同心軸上に設けられた凸部と凹部とを含む。このため、例えば同じスペーサ構造体を備える複数のドアホールカバーを厚さ方向へ重ね合わせた場合、重ね合わせた一方のドアホールカバーの凸部と他方のドアホールカバーの凹部とが嵌合する。従って、前記構成によれば、重ね合わせたドアホールカバー間の位置ずれを低減することができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係るドアホールカバーは、前記ドアインナーパネルのサービスホールを塞ぐ本体部と、前記ドアインナーパネルに前記本体部を固定するクリップ部と、を備え、前記スペーサ構造体は、前記クリップ部に設けられていてもよい。
【0012】
前記構成では、スペーサ構造体がクリップ部に設けられるため、ドアホールカバーの本体部にスペーサ構造体を付加する必要性がない。従って、前記構成によれば、従来のドアホールカバーの本体部をそのまま使用しつつ、重ね合わせたドアホールカバー間の位置ずれを低減することができる。
【0013】
また、本発明の一態様に係るドアホールカバーは、前記ドアインナーパネルのサービスホールを塞ぐ本体部を備え、前記スペーサ構造体は、前記本体部から前記他のドアホールカバー側へ向けて延在する延在部をさらに含み、前記嵌合部は、前記延在部に設けられ、前記他のドアホールカバーの外縁部分を前記厚さ方向に挟持してもよい。
【0014】
前記構成では、複数のドアホールカバーを重ね合わせた際、スペーサ構造体の嵌合部は、他のドアホールカバーの外縁部分に嵌合する。従って、前記構成によれば、他のドアホールカバーとの間隔を延在部によって確保しつつ、ドアホールカバー間の位置ずれを抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、重ね合わせたドアホールカバーの間隔を維持しつつ、位置ずれを低減可能なドアホールカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態1に係るドアホールカバーが取り付けられた車両用ドアの車内側の構造を示す模式図である。
【
図2】
図1に示されるドアホールカバーの車外側の構造を示す模式図である。
【
図4】
図3に示されるドアホールカバーを複数重ね合わせた状態を示す断面図である。
【
図5】
図2に示されるクリップ部の変形例を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係るドアホールカバーの車外側の構造を示す模式図である。
【
図8】
図7に示されるドアホールカバーを重ね合わせた状態を示す断面図である。
【
図9】本発明の実施形態3に係るドアホールカバーの車外側の構造を示す模式図である。
【
図10】
図9に示されるC-C線矢視断面図である。
【
図11】
図10に示されるドアホールカバーを重ね合わせた状態を示す断面図である。
【
図12】
図11に示されるスペーサ構造体を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図5に基づいて説明する。ただし、以下の説明は本発明に係るドアホールカバーの一例であり、本発明の技術的範囲は図示例に限定されるものではない。
【0018】
<ドアホールカバーの取付け例>
先ず、
図1を参照して、本実施形態に係るドアホールカバー101が取り付けられる車両用のドア(車両用ドア)Dの構造について説明する。
図1は、本実施形態に係るドアホールカバー101が取り付けられたドアDの車内側の構造を示す模式図である。ドアDは、車両のドア用開口部に開閉可能に設けられる例えばフロントドアまたはリアドア等である。なお、
図1の例において、紙面へ向かって右側が前側(フロント側)に対応し、左側が後ろ側(リア側)に対応している。
【0019】
図1に示すように、ドアDは、車内側に取り付けられるドアインナーパネルPを備える。ドアインナーパネルPには、例えばドアD内部の部品を組付け、修理等を行うために、作業者が手または工具等を入れるためのサービスホールP1が形成される。
【0020】
ドアインナーパネルPには、サービスホールP1を塞ぐように、ドアホールカバー101が取り付けられる。ドアホールカバー101は、クリップ部130を介してドアインナーパネルPに取り付けられる。このドアホールカバー101によってサービスホールP1を車内側から塞ぐことにより、例えばドアガラスとドアアウターパネルとの間からドアDの内部へ浸入した雨水等が、サービスホールP1を通ってさらに車内に浸入することを防止する。
【0021】
なお、ドアDは、サービスホールP1が形成されたドアインナーパネルPを備えるものであればその種類は限定されない。また、本発明の一実施形態に係るドアホールカバー101の取付け対象となる車両についても、ハードトップ車またはコンバーチブル車等、その種類は限定されない。
【0022】
<ドアホールカバー101の構造>
次に、
図2および
図3を参照して、ドアホールカバー101の構造について説明する。
図2は、
図1に示されるドアホールカバー101の車外側(ドアインナーパネルP側)の構造を示す模式図である。
図3は、
図2に示されるA-A線矢視断面図である。
【0023】
図2に示すように、ドアホールカバー101は、サービスホールP1を塞ぐ本体部110と、本体部110の車外側の面に配置される止水部120と、ドアインナーパネルPに本体部110を固定するクリップ部130とを備える。また、
図3に示すように、ドアホールカバー101は、複数のドアホールカバー101を厚さ方向Tへ重ね合わせた状態でドアホールカバー101同士の間隔を維持するためのスペーサ構造体140を備える。本実施形態に係るドアホールカバー101では、スペーサ構造体140はクリップ部130に設けられる。
【0024】
(本体部110)
本体部110は、サービスホールP1を塞ぐためのカバー部材である。本体部110には、クリップ部130を取り付けるためのクリップ取付部112が複数設けられる。クリップ取付部112は、外縁部分111から本体部110の面内方向外側へ突出するように設けられる。クリップ取付部112の各々には、クリップ部130が挿入可能な貫通孔112aが形成される。
【0025】
本実施形態に係るドアホールカバー101では、4つのクリップ取付部112が、本体部110の外縁部分111に設けられる。図示の例では、本体部110の外縁部分111のうち、上方かつ前方寄りの位置、本体部110の上方かつ後方寄りの位置、下方かつ前方寄りの位置、および下方かつ後方寄りの位置の各々にクリップ取付部112が設けられる。
【0026】
なお、本体部110の形状は、ドアインナーパネルPの種類等に応じて適宜変更可能である。また、クリップ取付部112の位置および数は、ドアホールカバー101の形状、寸法、使用されるクリップ部130の数等に応じて適宜変更可能である。
【0027】
本体部110の材質は、限定するものではないが、例えば樹脂または金属である。樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂を挙げることができる。熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルアルコール(PVA)およびABS樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、発泡体であってもよく、または他の材料との複合体であってもよい。複合体を構成する他の材料としては、エラストマー、例えばエチレン-プロピレン-ジエン系三元共重合体ゴム(EPDM)を挙げることができる。また、金属としては、例えばアルミニウムを挙げることができる。
【0028】
本体部110が熱可塑性樹脂により構成される場合、例えば真空成形によって、簡便に第1ドアホールカバー101を製造することができる。また、本体部110の厚さは、限定するものではないが、例えば約0.05mm以上2mm以下である。本体部110の厚さが2mm以下である場合、真空成形によって簡便にドアホールカバー101を製造することができる。なお、本体部110の厚さが例えば0.5mm程度の場合、補強のためにリブ、ビード等を本体部110に設けてもよい。
【0029】
(止水部120)
止水部120は、弾性材料からなる環状のシール部材である。止水部120は、ドアホールカバー101の外縁部分111に沿って、サービスホールP1を取り囲むように配置される。止水部120は、本体部110の車外側の面に形成される環状の収容凹部113に圧入され、先端部120aが車外側へ突出するように配置される(
図3参照)。具体的には、止水部120は、その先端部120aが、ドアインナーパネルPに当接するクリップ部130の当接面133よりも車外側へ向けて突出するように配置される。これにより、ドアホールカバー101がドアインナーパネルPに取り付けられた状態で、止水部120の先端部120aが弾性変形してドアインナーパネルPと密着する。
【0030】
(クリップ部130)
クリップ部130は、本体部110をドアインナーパネルPに取り付けるための係合部材である。クリップ部130は、本体部110のクリップ取付部112に形成された貫通孔112aに挿入され状態で、クリップ取付部112に貫設される。このクリップ部130は、ドアインナーパネルPに係合する係合部131と、クリップ取付部112を挟み込む挟込部132とを含む。
【0031】
係合部131は、ドアインナーパネルPに形成される被係合孔(図示省略)に挿入され、ドアインナーパネルPに係合する。係合部131は、挟込部132から車外側へ向かって拡径する逆テーパ部131aと、逆テーパ部131aに繋がり車外側へ向かって縮径するテーパ部131bとを含む。係合部131の最大径、つまり逆テーパ部131aとテーパ部131bとの接続部分の径は、ドアインナーパネルPの被係合孔よりも大径に形成される。車内側からクリップ部130を押し込むことにより、弾性変形を伴ってテーパ部131bがドアインナーパネルPの被係合孔を通過し、逆テーパ部131aが該被係合孔に係合する。これにより、クリップ部130を介して、本体部110がドアインナーパネルPに取り付けられる。
【0032】
挟込部132は、本体部110のクリップ取付部112に形成される貫通孔112aに挿入され、クリップ取付部112を厚さ方向Tに挟み込む。挟込部132は、クリップ部130の周方向に形成される第1フランジ132aと第2フランジ132bとを含む。第1フランジ132aは、クリップ部130の車内側の端部から径方向外側へ突出する。第2フランジ132bは、本体部110が挿入可能な隙間をあけて、第1フランジ132aよりも車外側で径方向外側へ突出する。第1フランジ132aはドアインナーパネルPに形成される被係合孔よりも大径に形成され、第2フランジ132bは第1フランジ132aよりも大径に形成される。車外側からクリップ部130を押し込むことにより、弾性変形を伴って第1フランジ132aがドアインナーパネルPの被係合孔を通過し、第1フランジ132aと第2フランジ132bとの間にクリップ取付部112が配置される。これにより、挟込部132によって本体部110を厚さ方向Tに挟み込み、クリップ取付部112にクリップ部130が取り付けられる。
【0033】
なお、クリップ130の位置および数は、クリップ取付部112の位置および数に準ずるが、クリップ130は、例えばドアホールカバー101の重心(中心)を囲むように、少なくとも3つ以上配置されることが好ましい。これにより、ドアインナーパネルPにドアホールカバー101を適切に取り付けることができると共に、後述するように複数のドアホールカバー101を厚さ方向Tへ重ね合わせた場合に、隣接する他のドアホールカバー101を安定的に支えることができる。
【0034】
(スペーサ構造体140)
スペーサ構造体140は、複数のドアホールカバー101を厚さ方向Tへ重ね合わせた状態で、ドアホールカバー101同士の間隔S(
図4参照)を維持するスペーサ部材である。スペーサ構造体140は、クリップ部130の車内側の面(ドアホールカバー101の他方の面)に設けられる凹部(嵌合部)141と、クリップ部130の車外側の面(ドアホールカバー101の一方の面)に設けられる凸部142とを含む。
【0035】
凹部141は、クリップ部130の車内側に、車外側へ向かって凹型形状を有するように設けられる。また、凸部142は、クリップ部130の車外側に、凸型形状を有するように設けられる。凹部141と凸部142とは、各々の中心軸が一致するように設けられる。換言すれば、凹部141と凸部142とは、ドアホールカバー101(本体部110)の厚さ方向T、つまりクリップ部130の中心軸方向へ伸びる同心軸C上に設けられる。
【0036】
凹部141と凸部142とは、互いに嵌合可能なように各々の形状が設計される。本実施形態では、凹部141と凸部142とは、同心軸Cに対して垂直な平面で切断した場合の断面形状が円形に形成される。ただし、凹部141および凸部142の前記断面形状は、互いに嵌合可能な形状であれば円形に限定されない。
【0037】
<ドアホールカバー101の積層構造>
次に、
図4を参照して、ドアホールカバー101の積層構造について説明する。
図4は、
図3に示されるドアホールカバー101を複数重ね合わせた状態を示す断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、紙面下側に位置するドアホールカバー101を第1ドアホールカバー101a、紙面上側に位置するドアホールカバー101を第2ドアホールカバー101bと称する場合がある。
【0038】
図4に示すように、第1ドアホールカバー101aと第2ドアホールカバー101bとは、厚さ方向Tへ重ね合わせた状態で互いに隣り合っている。第1ドアホールカバー101aと第2ドアホールカバー101bとを厚さ方向Tへ重ね合わせた場合、第2ドアホールカバー101bの凸部142が第1ドアホールカバー101aの凹部141に挿入される。これにより、凹部141と凸部142とが互いに嵌合する。
【0039】
凸部142の厚さ方向Tの寸法(長さ)は、凹部141の厚さ方向Tの寸法(深さ)よりも大きくなっている。このため、第2ドアホールカバー101bの凸部142が支えとなって、第1ドアホールカバー101aと第2ドアホールカバー101bとの間に間隔Sが確保される。これにより、第2ドアホールカバー101bの止水部120の先端部120aが、隣接する第1ドアホールカバー101aに接触することが妨げられる。また、第1ドアホールカバー101aの凹部141と第2ドアホールカバー101bの凸部142とが嵌合しているため、第1ドアホールカバー101aと第2ドアホールカバー101bとの摺動を抑え、互いの位置ずれが低減される。従って、第1ドアホールカバー101aと第2ドアホールカバー101bとの間隔Sを維持しつつ、位置ずれを低減することができる。
【0040】
<ドアホールカバー101のまとめ>
このように、本実施形態に係るドアホールカバー101は、ドアDのドアインナーパネルPに取り付けられるドアホールカバー101であって、複数のドアホールカバー101を厚さ方向Tへ重ね合わせた状態で、隣り合う他のドアホールカバー101との間隔Sを維持するスペーサ構造体140を備える。このスペーサ構造体140は、他のドアホールカバー101の一部と嵌合する凹部141を含む。
【0041】
ドアホールカバー101では、スペーサ構造体140が隣り合う他のドアホールカバー101の一部と嵌合するため、重ね合わせたドアホールカバー101同士の摺動を抑え、位置ずれを低減することができる。従って、本実施形態によれば、重ね合わせたドアホールカバー101の間隔Sを維持しつつ、位置ずれを低減可能なドアホールカバー101を実現することができる。
【0042】
また、ドアホールカバー101では、スペーサ構造体140がクリップ部130に設けられる。このため、ドアホールカバー101の本体部110にスペーサ構造体を付加する必要性がない。従って、本実施形態によれば、従来のドアホールカバーの本体部をそのまま使用しつつ、重ね合わせたドアホールカバー101間の位置ずれを低減することができる。
【0043】
さらに、本実施形態によれば、ドアホールカバー101を運搬するための通函に仕切りを設ける必要性がなくなる。このため、一度に運搬可能なドアホールカバー101の数が増え、運搬に要すエネルギー消費を低減することができる。これにより、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献できる。
【0044】
<変形例>
図5は、
図2に示されるクリップ部130の変形例であるクリップ部130Aを示す断面図である。
図5に示すように、クリップ部130Aは、スペーサ構造体140Aとして、凹部141Aおよび凸部142Aに加えて、挟込部132から車内側へ向かって、厚さ方向Tへ延在する延在部143を含む。この延在部143の車内側の面(ドアホールカバー101の一方の面)に凹部141Aが設けられる。
【0045】
クリップ部130Aでは、延在部143の厚さ方向Tにおける長さを変更することによって、ドアホールカバー101同士の間隔Sを調整することができる。つまり、延在部143がスペーサとして機能する。従って、クリップ部130Aによれば、凹部141Aおよび凸部142Aの厚さ方向Tの寸法を、上述したクリップ部130の凹部141および凸部142に比べて小さくしつつ、ドアホールカバー101同士の間隔Sを確保することができる。
【0046】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、
図6~
図8に基づいて以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0047】
<ドアホールカバー102の構造>
先ず、
図7および
図8を参照して、ドアホールカバー102の構造について説明する。
図7は、本実施形態に係るドアホールカバー102の車外側(ドアインナーパネルP側)の構造を示す模式図である。
図8は、
図7に示されるB-B線矢視断面図である。
【0048】
図7および
図8に示すように、ドアホールカバー102は、スペーサ構造体150が本体部110に設けられる点が、上述したドアホールカバー101と主に異なっている。
【0049】
ドアホールカバー102は、複数のドアホールカバー102を厚さ方向Tへ重ね合わせた状態でドアホールカバー102同士の間隔を維持するためのスペーサ構造体150を備える。本実施形態に係るドアホールカバー102において、スペーサ構造体150は本体部110に設けられる。
【0050】
(スペーサ構造体150)
スペーサ構造体150は、複数のドアホールカバー102を厚さ方向Tへ重ね合わせた状態で、ドアホールカバー102同士の間隔S(
図8参照)を維持するスペーサ部材である。スペーサ構造体150は、本体部110の車内側の面(ドアホールカバー102の他方の面)に設けられる凹部(嵌合部)151と、本体部110の車外側の面(ドアホールカバー102の一方の面)に設けられる凸部152とを含む。
【0051】
凹部151は、本体部110の車内側に、車外側へ向かって凹型形状を有するように設けられる。また、凸部152は、本体部110の車外側に凸型形状を有するように設けられる。凸部152は、熱可塑性樹脂を用いた真空成形によって本体部110と一体的に形成された構成であってもよく、本体部110に別途取り付けられる構成であってもよい。
【0052】
凹部151と凸部152とは、ドアホールカバー102(本体部110)の厚さ方向Tへ伸びる同心軸C上に設けられる。つまり、凹部151と凸部152とは、本体部110を挟んで互いに対向するように同心軸C上に設けられる。凹部151と凸部152の先端部151aとは、互いに嵌合可能なように、各々の形状が設計される。
【0053】
ドアホールカバー102では、4つの凹部151と凸部152とが、本体部110に形成される。図示の例では、本体部110のうち、上方かつ前方寄りの位置、本体部110の上方かつ後方寄りの位置、下方かつ前方寄りの位置、および下方かつ後方寄りの位置の各々に凹部151と凸部152とが形成される。
【0054】
なお、凹部151および凸部152の位置および数は、ドアホールカバー102の形状、寸法等に応じて適宜変更可能である。ただし、凹部151および凸部152は、ドアホールカバー102の重心(中心)を囲むように、少なくとも3つ以上配置されることが好ましい。これにより、後述するように複数のドアホールカバー102を厚さ方向Tへ重ね合わせた場合に、隣接する他のドアホールカバー102を安定的に支えることができる。
【0055】
<ドアホールカバー102の積層構造>
次に、
図8を参照して、ドアホールカバー102の積層構造について説明する。
図8は、
図7に示されるドアホールカバー102を複数重ね合わせた状態を示す断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、紙面下側に位置するドアホールカバー102を第1ドアホールカバー102a、紙面上側に位置するドアホールカバー102を第2ドアホールカバー102bと称する場合がある。
【0056】
図8に示すように、第1ドアホールカバー102aと第2ドアホールカバー102bとを厚さ方向Tへ重ね合わせた場合、第2ドアホールカバー102bの凸部152が第1ドアホールカバー102aの凹部151に挿入される。これにより、凹部151と凸部152とが互いに嵌合する。
【0057】
凸部152の厚さ方向Tの寸法(長さ)は、凹部151の厚さ方向Tの寸法(深さ)よりも大きくなっている。このため、第2ドアホールカバー102bの凸部152が支えとなって、第1ドアホールカバー102aと第2ドアホールカバー102bとの間に間隔Sが確保される。これにより、第2ドアホールカバー102bの止水部120の先端部120aが、隣接する第1ドアホールカバー102aに接触することが妨げられる。また、第1ドアホールカバー102aの凹部151と第2ドアホールカバー102bの凸部152とが嵌合しているため、第1ドアホールカバー102aと第2ドアホールカバー102bとの摺動を抑え、互いの位置ずれが低減される。従って、第1ドアホールカバー102aと第2ドアホールカバー102bとの間隔Sを維持しつつ、位置ずれを低減することができる。
【0058】
<ドアホールカバー102のまとめ>
このように、本実施形態に係るドアホールカバー102は、ドアDのドアインナーパネルPに取り付けられるドアホールカバー102であって、複数のドアホールカバー102を厚さ方向Tへ重ね合わせた状態で、隣り合う他のドアホールカバー102との間隔Sを維持するスペーサ構造体150を備える。このスペーサ構造体150は、本体部110に設けられ、他のドアホールカバー102の一部と嵌合する凹部151を含む。
【0059】
ドアホールカバー102では、スペーサ構造体150が本体部110に設けられる。このため、ドアホールカバー102のクリップ部130にスペーサ構造体を付加する必要性がない。従って、ドアホールカバー102によれば、従来のドアホールカバーのクリップ部をそのまま使用しつつ、重ね合わせたドアホールカバー102間の位置ずれを低減することができる。
【0060】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、
図9~
図12に基づいて以下に説明する。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0061】
<ドアホールカバー103の構造>
先ず、
図9および
図10を参照して、本実施形態に係るドアホールカバー103の構造について説明する。
図9は、本実施形態に係るドアホールカバー103の車外側(ドアインナーパネルP側)の構造を示す模式図である。
図10は、
図9に示されるC-C線矢視断面図である。
【0062】
図9および
図10に示すように、ドアホールカバー103は、スペーサ構造体160が隣り合う他のドアホールカバー103の外縁部分111に嵌合する点(
図11参照)が、上述したドアホールカバー101・102と主に異なっている。
【0063】
ドアホールカバー103は、複数のドアホールカバー103を厚さ方向Tへ重ね合わせた状態でドアホールカバー103同士の間隔を維持するためのスペーサ構造体160を備える。本実施形態に係るドアホールカバー103において、スペーサ構造体160は、本体部110の外縁部分111に設けられる。
【0064】
(スペーサ構造体160)
スペーサ構造体160は、複数のドアホールカバー103を厚さ方向Tへ重ね合わせた状態で、ドアホールカバー103同士の間隔S(
図11参照)を維持するスペーサ部材である。スペーサ構造体160は、本体部110の車内側の面(ドアホールカバー103の一方の面)の外縁部分111から車内側へ向かって突設される。スペーサ構造体160は、熱可塑性樹脂を用いた真空成形によって本体部110と一体的に形成された構成であってもよく、本体部110に別途取り付けられる構成であってもよい。
【0065】
スペーサ構造体160は、本体部110の外縁部分111から車内側へ向かって厚さ方向Tへ延在する延在部163を含む。この延在部163の車内側に、隣り合う他のドアホールカバー103の外縁部分111に嵌合するフック形状の嵌合部161が設けられる。換言すれば、嵌合部161は延在部163に設けられ、延在部163によって所定の高さ位置に支持される。
【0066】
嵌合部161は、第1爪部161aと、第2爪部161bと、第1爪部161aと第2爪部161bとを連結する連結部161cとを含む。第1爪部161aと第2爪部161bとは、本体部110の本体部110の面内方向外側へ突出するように設けられる。第1爪部161aと第2爪部161bとは、本体部110が挿入可能な隙間をあけて互いに略平行に配置される。また、連結部161cは、厚さ方向Tに延在し、第1爪部161aと第2爪部161bとを連結する。
【0067】
ドアホールカバー103では、4つのスペーサ構造体160が、本体部110に設けられる。図示の例では、本体部110のうち、上方かつ前方寄りの位置、本体部110の上方かつ後方寄りの位置、下方かつ前方寄りの位置、および下方かつ後方寄りの位置の各々にスペーサ構造体160が設けられる。
【0068】
なお、スペーサ構造体160の位置および数は、ドアホールカバー103の形状、寸法等に応じて適宜変更可能である。ただし、スペーサ構造体160は、ドアホールカバー103の重心(中心)を囲むように、少なくとも3つ以上配置されることが好ましい。これにより、後述するように複数のドアホールカバー103を厚さ方向Tへ重ね合わせた場合に、隣接する他のドアホールカバー103を安定的に支えることができる。
【0069】
<ドアホールカバー103の積層構造>
次に、
図11および
図12を参照して、ドアホールカバー103の積層構造について説明する。
図11は、
図10に示されるドアホールカバー103を複数重ね合わせた状態を示す断面図である。
図12は、
図11に示されるスペーサ構造体160を示す背面図である。なお、以下では、説明の便宜上、紙面下側に位置するドアホールカバー103を第1ドアホールカバー103a、紙面上側に位置するドアホールカバー103を第2ドアホールカバー103bと称する場合がある。
【0070】
図11に示すように、第1ドアホールカバー103aと第2ドアホールカバー103bとを厚さ方向Tへ重ね合わせた場合、第2ドアホールカバー103bの外縁部分111に第1ドアホールカバー103aの嵌合部161が嵌合する。具体的には、第1ドアホールカバー103aの第1爪部161aと第2爪部161bとが、第2ドアホールカバー103bの外縁部分111を厚さ方向T側から挟持する。
図12に示すように、延在部163の本体部110側には、第1爪部161aを挿入可能な爪部挿入孔163aが形成される。このため、第1ドアホールカバー103aの第1爪部161aは、爪部挿入孔163aを介して第2ドアホールカバー103bの本体部110に当接することができる。これにより、第1爪部161aと第2爪部161bとによって本体部110の外縁部分111を厚さ方向Tに挟み込み、本体部110を挟持する。
【0071】
この時、第1ドアホールカバー103aの延在部163が支えとなって、第1ドアホールカバー103aと第2ドアホールカバー103bとの間に間隔Sが確保される。このため、第2ドアホールカバー103bの止水部120の先端部120aが、隣接する第1ドアホールカバー103aに接触することが妨げられる。また、第1ドアホールカバー103aの嵌合部161の連結部161cが第2ドアホールカバー103bの外縁部分111に当接することで、第1ドアホールカバー103aと第2ドアホールカバー103bとの摺動を抑え、互いの位置ずれが低減される。従って、第1ドアホールカバー103aと第2ドアホールカバー103bとの間隔Sを維持しつつ、位置ずれを低減することができる。
【0072】
<ドアホールカバー103のまとめ>
このように、本実施形態に係るドアホールカバー103はスペーサ構造体160を備え、スペーサ構造体160、本体部110から他のドアホールカバー103側へ向けて延在する延在部163を含む。嵌合部161は、延在部163に設けられ、他のドアホールカバー103の外縁部分111を厚さ方向Tに挟持する。
【0073】
ドアホールカバー103では、複数のドアホールカバー103を重ね合わせた際、スペーサ構造体160の嵌合部161は、他のドアホールカバー103の外縁部分111に嵌合する。従って、ドアホールカバー103によれば、他のドアホールカバー103との間隔Sを延在部163によって確保しつつ、ドアホールカバー103間の位置ずれを抑えることができる。
【0074】
なお、本実施形態では、スペーサ構造体160が、本体部110の外縁部分111に嵌合するフック形状の嵌合部161を備える構成例について説明した。しかしながら、嵌合部161の形状は、本体部110の外縁部分111に嵌合して本体部110を保持可能な形状であれば、特に限定されない。例えば、嵌合部161は、外縁部分111を厚さ方向T側から挟持する部分の一方に半球形状の凸部が設けられており、他方に前記凸部を受け入れ可能な半球形状の凹部が設けられた形状等であってもよい。
【0075】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
101,101a,101b,102,102a,102b,103,103a,103b ドアホールカバー
110 本体部
111 外縁部分
130 クリップ部
140,140A,150,160 スペーサ構造体
141,141A,151 凹部(スペーサ構造体・嵌合部)
142,142A,152 凸部(スペーサ構造体)
161 嵌合部(スペーサ構造体・嵌合部)
161a 第1爪部(スペーサ構造体・嵌合部)
161b 第2爪部(スペーサ構造体・嵌合部)
161c 連結部(スペーサ構造体・嵌合部)
143,163 延在部
C 同心軸
D ドア(車両用ドア)
P ドアインナーパネル
S 間隔
T 厚さ方向