(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118608
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】物体検知システム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20230818BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20230818BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/89
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021636
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】久保庭 拓也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 修
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA12
2F112CA03
2F112DA09
2F112DA15
2F112DA25
2F112DA28
2F112EA05
2F112FA03
2F112FA21
2F112FA23
2F112FA35
2F112FA45
2F112GA01
5J084AA04
5J084AA05
5J084AA10
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA20
5J084BA36
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5J084BB28
5J084CA31
5J084CA80
5J084EA08
(57)【要約】
【課題】 物体の検知精度の低下を抑制し得る物体検知システムを提供する。
【解決手段】 物体検知システム10は、それぞれの検知領域21aの少なくとも一部が互いに重なる一対のLiDARユニット20a,20bと、一対のLiDARユニット20a,20bにおけるそれぞれの検知領域21a,21bが互いに重なる重畳領域23に配置されるマーカ30と、一対のLiDARユニット20a,20bのうちの一方のLiDARユニット20aによって計測された各座標を示す第1点群データと一対のLiDARユニット20a,20bのうちの他方のLiDARユニット20bによって計測された各座標を示す第2点群データとを、マーカ30の座標を示すマーカ点群データを基準にして、統合する統合部41とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの検知領域の少なくとも一部が互いに重なる一対のLiDARユニットと、
前記一対のLiDARユニットにおけるそれぞれの前記検知領域が互いに重なる重畳領域に配置されるマーカと、
前記一対のLiDARユニットのうちの一方の前記LiDARユニットによって計測された各座標を示す第1点群データと前記一対のLiDARユニットのうちの他方の前記LiDARユニットによって計測された各座標を示す第2点群データとを、前記マーカの座標を示すマーカ点群データを基準にして、統合する統合部と、
を備える
ことを特徴とする物体検知システム。
【請求項2】
それぞれの前記LiDARユニットが出射する出射光に対する前記マーカの反射率は、当該出射光に対する前記重畳領域における前記マーカ以外の物体の反射率より高い
ことを特徴とする請求項1に記載の物体検知システム。
【請求項3】
前記マーカ及び前記重畳領域における前記マーカ以外の前記物体は、前記重畳領域における地面または床に配置される
ことを特徴とする請求項2に記載の物体検知システム。
【請求項4】
前記マーカは、複数設けられており、前記重畳領域において互いに離れて配置される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の物体検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物体がLiDAR(Light Detection and Ranging)ユニットによって検知されることが増えてきており、下記特許文献1には2つのLiDARユニットを用いて物体を検知する物体検知装置が開示されている。この物体検知装置では、それぞれのLiDARユニットの検知領域の一部が互いに重なっており、それぞれのLiDARユニットの検知領域が互いに重なる重畳領域に位置する物体が検知されている。具体的には、物体検知装置は、それぞれのLiDARユニットによって計測される各座標を示す点群データを互いに統合し、統合後の点群データから物体を検知している。これにより1つのLiDARユニットによって計測された各座標を示す点群データから物体を検知する場合と比べ、物体が正確に検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数のLiDARユニットを用いる物体検知装置では、それぞれのLiDARユニットが風等を受けて位置や向きがずれてしまうことがある。この場合、それぞれのLiDARユニットの検知領域が相対的にずれ、それぞれの点群データも相対的にずれてしまうことがある。これにより、物体の検知精度が低下することがある。
【0005】
そこで本発明は、物体の検知精度の低下を抑制し得る物体検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的の達成のため、本発明の物体検知システムは、それぞれの検知領域の少なくとも一部が互いに重なる一対のLiDARユニットと、前記一対のLiDARユニットにおけるそれぞれの前記検知領域が互いに重なる重畳領域に配置されるマーカと、前記一対のLiDARユニットのうちの一方の前記LiDARユニットによって計測された各座標を示す第1点群データと前記一対のLiDARユニットのうちの他方の前記LiDARユニットによって計測された各座標を示す第2点群データとを、前記マーカの座標を示すマーカ点群データを基準にして、統合する統合部と、を備えることを特徴とするものである。
【0007】
この物体検知システムでは、マーカが重畳領域に配置されるため、マーカの座標は一対のLiDARユニットのそれぞれによって計測される。従って、第1点群データ及び第2点群データには、マーカの座標を示すマーカ点群データが含まれる。ところで、それぞれのLiDARユニットが例えば屋外に設置された際、それぞれのLiDARユニットが風等を受けて、位置や向きがずれてしまうことがある。この場合、それぞれのLiDARユニットの検知領域が相対的にずれ、第1点群データ及び第2点群データも相対的にずれてしまうことがある。このため、相対的にずれた第1点群データ及び第2点群データを統合しても、物体の検知精度は低下してしまう。しかし、この物体検知システムでは、統合部は、第1点群データ及び第2点群データを互いに統合する際、第1点群データ及び第2点群データのそれぞれに含まれるマーカ点群データを位置合わせの基準に用いる。このため、この物体検知システムでは、それぞれのLiDARユニットの検知領域が相対的にずれたとしても、第1点群データ及び第2点群データが互いに統合する際に、マーカ点群データが位置合わせの基準に用いられない場合に比べ、第1点群データ及び第2点群データの相対的なずれが抑制され得る。従って、この物体検知システムによれば、物体の検知精度の低下を抑制し得る。
【0008】
また、それぞれの前記LiDARユニットが出射する出射光に対する前記マーカの反射率は、当該出射光に対する前記重畳領域における前記マーカ以外の物体の反射率より高くてもよい。
【0009】
この構成によれば、マーカが重畳領域におけるマーカ以外の物体と同じで反射率である場合に比べ、マーカをそれぞれのLiDARユニットによって検知し易くし得、マーカ点群データを生成し易くし得る。
【0010】
また、前記マーカ及び前記重畳領域における前記マーカ以外の前記物体は、前記重畳領域における地面または床に配置されてもよい。
【0011】
また、前記マーカは、複数設けられており、前記重畳領域において互いに離れて配置されてもよい。
【0012】
この構成によれば、マーカが1つである場合に比べて、マーカからそれぞれのLiDARユニットに進行する反射光の光量が増える。従って、重畳領域におけるマーカをLiDARユニットによって検知し易くし得、マーカ点群データを生成し易くし得る。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によれば、物体の検知精度の低下を抑制し得る物体検知システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態における物体検知システムの概略図である。
【
図2】実施形態におけるLiDARユニットの概略図である。
【
図4】物体検知システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る物体検知システムの好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができる。また、本発明は、以下に例示する実施形態における構成要素を適宜組み合わせてもよい。なお、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、各部材の寸法を変えて示す場合がある。また、図面では、見易さのため、同様の構成要素については一部にのみ参照符号が付され、一部参照符号が省略される場合がある。
【0016】
図1は、本実施形態における物体検知システムの概略斜視図である。物体検知システム10は、一対のLiDARユニット20a,20bと、マーカ30と、制御部COと、提示部50とを備える。
【0017】
それぞれのLiDARユニット20a,20bは、例えば、道路近傍の支柱に個別に設置されている。また、それぞれのLiDARユニット20a,20bは、それぞれの位置や向きが互いに異なるが、それぞれの検知領域21a,21bの一部が互いに重なるように、設置されている。なお、それぞれの検知領域21a,21bの少なくとも一部が互いに重なってもよい。
図1では、それぞれのLiDARユニット20a,20bの検知領域21a,21bが互いに重なる領域を重畳領域23として示している。
【0018】
図2は、LiDARユニット20aの概略図である。LiDARユニット20aは、LiDARユニット20aの周囲の所定領域に位置する物体を検知する。物体としては、路面や建物が挙げられる。検知により、LiDARユニット20aは、例えば、路面の勾配や建物の形状を検知することができる。本実施形態のLiDARユニット20aとしては、例えばラスタースキャン方式のLiDARユニットが用いられる。LiDARユニット20aは、筐体71と、筐体71の内部に収容されるドライバ回路72、レーザ光源73、H方向スキャン用駆動ミラー74、V方向スキャン用駆動ミラー75、受光素子76、及び画像処理回路77とを備える。なお、
図2の例では、LiDARユニット20aは、メカニカル式のLiDARユニットであるが、後述する不図示の駆動部を含まないフェイズドアレイ方式のLiDARユニットであってもよい。
【0019】
筐体71は、レーザ光源73から所定領域に向けて出射するレーザ光Ld及び所定領域に位置する物体からの反射光Lrを透過する。
【0020】
ドライバ回路72は、例えば複数のロジック回路から構成され、レーザ光源73、H方向スキャン用駆動ミラー74、及びV方向スキャン用駆動ミラー75に電気的に接続されて、これらを制御する。
【0021】
レーザ光源73は、電磁波としての所定波長のレーザ光LdをLiDARユニット20aの周囲の所定領域に出射する。このレーザ光Ldは、例えば、波長が905nmや1550nmといった近赤外線である。
【0022】
H方向スキャン用駆動ミラー74は、レーザ光源73から出射するレーザ光Ldを反射する不図示のミラーと、ドライバ回路72により制御される不図示の駆動部とを有する。H方向スキャン用駆動ミラー74は、レーザ光Ldを反射する際、上記駆動部により水平方向に反射角度を変化させながらレーザ光Ldを反射する。このH方向スキャン用駆動ミラー74の反射角度の変化により、LiDARユニット20aは水平方向のスキャニングを行う。当該スキャニングにおけるラインを水平方向のスキャンラインと呼ぶ場合がある。
【0023】
V方向スキャン用駆動ミラー75は、H方向スキャン用駆動ミラー74で反射されたレーザ光Ldを反射する不図示のミラーと、ドライバ回路72により制御される不図示の駆動部とを有する。V方向スキャン用駆動ミラー75は、レーザ光Ldを反射する際、上記駆動部により鉛直方向に反射角度を変化させながらレーザ光Ldを反射する。このV方向スキャン用駆動ミラー75の反射角度の変化により、LiDARユニット20aが行う水平方向のスキャンラインの位置を鉛直方向に変化させる。V方向スキャン用駆動ミラー75で反射されたレーザ光Ldは、筐体71を透過し、LiDARユニット20aの前方に照射される。
【0024】
H方向スキャン用駆動ミラー74及びV方向スキャン用駆動ミラー75は、例えば、ポリゴンミラーやガルバノミラーを含んで構成される。また、H方向スキャン用駆動ミラー74及びV方向スキャン用駆動ミラー75は、MEMSミラーによりそれぞれ構成されてもよい。また、H方向スキャン用駆動ミラー74とV方向スキャン用駆動ミラー75とが、二軸スキャンタイプのミラーにより1つに纏められてもよく、H方向スキャン用駆動ミラー74とV方向スキャン用駆動ミラー75とにおいてレーザ光Ldを反射する順番が入れ替わってもよい。
【0025】
受光素子76は、レーザ光Ldと同波長の光を受光することができるフォトダイオード等から成る素子である。このため、受光素子76は、レーザ光Ldが所定領域に位置する物体で反射した反射波としての反射光Lrを受光することができる。受光素子76により受光される反射光Lrには、所定領域に位置する物体に係る情報が含まれる。この情報としては、例えば、物体の三次元の各座標が挙げられる。受光素子76は画像処理回路77に電気的に接続されており、物体に係る情報は、電気信号として画像処理回路77に入力される。画像処理回路77は、ドライバ回路72にも電気的に接続されている。画像処理回路77では、ドライバ回路72がレーザ光源73にレーザ光Ldを出射させる旨の制御信号を送信するタイミング、及びその際のH方向スキャン用駆動ミラー74及びV方向スキャン用駆動ミラー75の傾き等といったドライバ回路72からの信号と、受光素子76から入力する信号とに、所定の処理がなされ、受光素子76が受光する反射光Lrの反射点の座標を特定して、これら信号に基づく画像信号が出力される。このとき、画像処理回路77は、受光素子76から入力する物体に係る情報つまり物体の三次元の各座標から各座標を示す点群データを生成する。従って、LiDARユニット20aは、レーザ光Ldを所定領域に向けて出射し、所定領域に位置する物体からの反射光Lrを受光することによって、物体の三次元の各座標を計測して当該各座標を示す点群データを生成する。このようなLiDARユニット20aは、レーザ光Ldを所定領域に出射して所定領域に位置する物体からの反射光を基に所定領域に位置する物体を検知する検知ユニットと理解できる。また、所定領域は、レーザ光Ldの照射領域であり、LiDARユニット20aの検知領域21aでもあると理解できる。
【0026】
画像処理回路77は無線又は有線の不図示のネットワーク等を通じて制御部COに接続されており、点群データが画像処理回路77から制御部COに入力される。
【0027】
ドライバ回路72はネットワーク等を通じて制御部COに接続されており、制御部COからドライバ回路72に入力される信号により、H方向スキャン用駆動ミラー74の水平方向の角度及びV方向スキャン用駆動ミラー75の鉛直方向に対する角度が調節される。従って、制御部COは、LiDARユニット20aから出射するレーザ光Ldの鉛直方向及び水平方向のそれぞれの角度を調節することで、LiDARユニット20aの検知領域21aの上下左右方向の長さ及び位置を調節することができる。水平方向の角度とはH方向スキャン用駆動ミラー74の反射角度であり、鉛直方向の角度とはV方向スキャン用駆動ミラー75の反射角度である。
【0028】
LiDARユニット20bは、LiDARユニット20aと同じ構成とされるため、説明を省略する。なお、以下では、一対のLiDARユニット20a,20bのうちの一方のLiDARユニット20aによって計測された各座標を示す点群データを、第1点群データと呼ぶ場合がある。また、他方のLiDARユニット20bによって計測された各座標を示す点群データを、第2点群データと呼ぶ場合がある。
【0029】
図1に示すように、マーカ30は、それぞれのLiDARユニット20a,20bの検知領域21a,21bが互いに重なる重畳領域23に配置される。マーカ30は、重畳領域23に配置されるため、LiDARユニット20a,20bのそれぞれによって検知される。従って、第1点群データ及び第2点群データには、マーカ30の座標を示すマーカ点群データが含まれる。マーカ30は、LiDARユニット20a,20bの検知対象となる物体ではない。マーカ30の構成については、後述する。
【0030】
制御部COは、例えば、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路やNC(Numerical Control)装置から成る。また、制御部COは、NC装置を用いた場合、機械学習器を用いたものであってもよく、機械学習器を用いないものであってもよい。制御部COは、それぞれのLiDARユニット20a,20bのレーザ光の出射の有無、提示部50の駆動、及び、上記したH方向スキャン用駆動ミラー74の水平方向の角度及びV方向スキャン用駆動ミラー75の鉛直方向に対する角度を制御する。このような制御部COは、統合部41、メモリ42、及び出力部43を含む。
【0031】
統合部41には、第1点群データがLiDARユニット20aから入力され、第2点群データがLiDARユニット20bから入力される。統合部41は、第1点群データと第2点群データとのそれぞれに含まれるマーカ点群データを位置合せの基準にして、第1点群データと第2点群データとを統合し、これら点群データが統合された統合点群データを生成する。第1点群データと第2点群データとの統合については、後述する。そして、統合部41は、統合点群データを出力部43に出力する。
【0032】
メモリ42は、マーカ30に係る情報を記憶し、当該記憶した情報を読み出し可能に構成される。メモリ42は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体記録媒体が好適であるが、光学式記録媒体や磁気記録媒体等の任意の形式の記録媒体を包含し得る。なお、「非一過性」の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く全てのコンピュータで読み取り可能な記録媒体を含み、揮発性の記録媒体を除外するものではない。なお、メモリ42は制御部COの外部に設けられてもよい。メモリ42が記憶するマーカ30に係る情報については、後述する。
【0033】
出力部43は、ネットワーク等を通じて統合点群データを提示部50に出力する。なお、出力部43は必ずしも設けられている必要はなく、出力部43が設けられていない場合には、統合点群データは統合部41から提示部50に直接出力されればよい。
【0034】
提示部50は、出力部43から出力された統合点群データを提示する。このような提示部50としては、例えば、ディスプレイが挙げられる。提示部50に提示される統合点群データは、物体検知システム10を管理する管理人によって管理される。
【0035】
図3は、本実施形態におけるマーカ30の概略図である。マーカ30は、複数設けられ、重畳領域23において互いに離れている。それぞれのマーカ30は、格子状に配置されているが配置の仕方は特に限定されない。マーカ30はレーザ光Ldを照射されると共にレーザ光Ldを反射する反射面を含み、それぞれのマーカ30の反射面は、所定形状に予め設定されている。この形状として例えば正方形形状が挙げられるが、特に限定されず、またそれぞれの形状は互いに異なっていてもよい。それぞれのLiDARユニット20a,20bが出射するレーザ光Ldに対するマーカ30の反射面の反射率は、レーザ光Ldに対する重畳領域23における物体32の反射面の反射率よりも高い。物体32は、重畳領域23のうちのマーカ30以外の領域全体にわたって位置する物体である。物体32の反射面は、マーカ30の反射面と同様に、レーザ光Ldを照射されると共にレーザ光Ldを反射する。マーカ30及び物体32のそれぞれの反射面は、平面または曲面である。このようなマーカ30及び物体32は、例えば、重畳領域23における地面または建物の床に配置されるが、配置される場所は特に限定されない。地面としては、例えば、路面や、公園の敷地等が挙げられる。上記のように、それぞれのLiDARユニット20a,20bが出射するレーザ光Ldは近赤外線である。この場合、マーカ30としては、例えば、アルミニウムなどの金属物体や白色タイル、自ら発光せず自身を照射する光を所定の広がり角度で再帰反射する再帰反射物体、反射面をメッキ処理または鏡面化処理された物体等が挙げられる。また、物体32の材料としては、例えば、アスファルト、コンクリート、木材等が挙げられる。
【0036】
それぞれのマーカ30の反射面の形状、マーカ30の数、マーカ30の配置の仕方は、マーカ30に係る情報に含まれる。このようなマーカ30に係る情報は、メモリ42に記憶される。
【0037】
次に、物体検知システム10の動作について説明する。
【0038】
図4は、物体検知システム10の動作を示すフローチャートである。
図4に示すように、物体検知システム10の動作は、ステップSP101からステップSP104を含む。
図4に示す開始の状態では、制御部COは、LiDARユニット20a,20bからレーザ光を検知領域21a,21bに出射させる。このとき、マーカ30は、重畳領域23に配置されるため、LiDARユニット20a,20bからのレーザ光を照射される。
【0039】
(ステップSP101)
本ステップでは、制御部COは、検知領域21a及び重畳領域23に位置する物体からの反射光をLiDARユニット20aで受光させて、これら領域に位置する物体の三次元の各座標をそれぞれのLiDARユニット20aに計測させる。そして、制御部COは、LiDARユニット20aで計測された各座標から第1点群データをLiDARユニット20aで生成させる。また、制御部COは、検知領域21b及び重畳領域23に位置する物体からの反射光をLiDARユニット20bで受光させる。そして、制御部COは、LiDARユニット20aと同様に、第2点群データをLiDARユニット20bで生成させる。上記したように、マーカ30が重畳領域23に配置されるため、第1点群データ及び第2点群データのそれぞれにはマーカ30の座標を示すマーカ点群データが含まれる。従って、第1点群データ及び第2点群データが生成されると、第1点群データ及び第2点群データのそれぞれにおいて、マーカ点群データが生成される。制御部COは、生成された第1点群データ及び第2点群データをLiDARユニット20a,20bから統合部41に入力させる。制御部COは、第1点群データ及び第2点群データが統合部41に入力されると、フローをステップSP102に進める。
【0040】
(ステップSP102)
本ステップでは、制御部COの統合部41は、第1点群データと第2点群データとのそれぞれに含まれるマーカ点群データを位置合せの基準にして、第1点群データと第2点群データとを統合する。具体的には、統合部41は、メモリ42に記憶されるマーカ30に係る情報を読み出し、第1点群データにおけるマーカ点群データと第2点群データにおけるマーカ点群データとを認識する。統合部41は、マーカ30に係る情報を読み出すことによって、重畳領域23におけるマーカ30とマーカ30以外の物体32との違いを認識し易くなる。従って、統合部41は、メモリ42に記憶されるマーカ30に係る情報から、第1点群データにおけるマーカ30と第2点群データにおけるマーカ30とを特定すると理解できる。ところで、それぞれのLiDARユニット20a,20bが出射する出射光であるレーザ光Ldに対するマーカ30の反射率は、レーザ光Ldに対する物体32の反射率よりも高い。このため、LiDARユニット20a,20bは当該物体よりマーカ30から多くの反射光Lrを受光する。そして、LiDARユニット20a,20bは、受光した反射光Lrの光量に係る情報を電気信号として統合部41に出力する。マーカ30からの反射光Lrの光量が物体32からの反射光Lrの光量より多いため、統合部41は、反射光Lrの光量に係る情報によって、マーカ30が物体32よりも明るいと認識し易くなり、当該物体よりもマーカ30を認識し易くなる。また、統合部41は、反射光Lrの光量に係る情報の中から所定閾値以上の光量に係る情報を抽出してもよく、この場合にはマーカ30をより認識し易くなる。次に、統合部41は、第1点群データに含まれるマーカ点群データと第2点群データに含まれるマーカ点群データとを互いに位置合せし、第1点群データと第2点群データとを統合し、統合点群データを生成する。そして、統合部41は、生成された統合点群データを統合部41から出力部43に入力する。制御部COは、統合点群データが出力部43に入力されると、フローをステップSP103に進める。
【0041】
(ステップSP103)
本ステップでは、制御部COの出力部43は、統合点群データを提示部50に出力させる。制御部COは、統合点群データが提示部50に入力されると、フローをステップSP104に進める。
【0042】
(ステップSP104)
提示部50は、統合点群データを三次元画像として提示する。統合点群データが提示されると、動作が終了する。ステップSP104の動作が終了すると、フローはステップSP101に戻ってもよい。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の物体検知システム10は、一対のLiDARユニット20a,20bと、マーカ30と、第1点群データと第2点群データとを、マーカ30の座標を示すマーカ点群データを基準にして、統合する統合部41とを備える。
【0044】
この物体検知システム10では、マーカ30が重畳領域23に配置されるため、マーカ30の座標は一対のLiDARユニット20a,20bのそれぞれによって計測される。従って、第1点群データ及び第2点群データには、マーカ30の座標を示すマーカ点群データが含まれる。ところで、それぞれのLiDARユニット20a,20bが例えば屋外に設置された際、それぞれのLiDARユニット20a,20bが風等を受けて、位置や向きがずれてしまうことがある。この場合、それぞれのLiDARユニット20a,20bの検知領域21a,21bが相対的にずれ、第1点群データ及び第2点群データも相対的にずれてしまうことがある。このため、相対的にずれた第1点群データ及び第2点群データを統合しても、物体の検知精度は低下してしまう。しかし、この物体検知システム10では、統合部41は、第1点群データ及び第2点群データを互いに統合する際、第1点群データ及び第2点群データのそれぞれに含まれるマーカ点群データを位置合わせの基準に用いる。このため、この物体検知システム10では、検知領域21a,21bが相対的にずれたとしても、第1点群データ及び第2点群データが互いに統合する際に、マーカ点群データが位置合わせの基準に用いられない場合に比べ、第1点群データ及び第2点群データの相対的なずれが抑制され得る。従って、この物体検知システム10によれば、物体の検知精度の低下を抑制し得る。
【0045】
また、それぞれのLiDARユニット20a,20bが出射する出射光に対するマーカ30の反射率は、当該出射光に対する重畳領域23におけるマーカ30以外の物体32の反射率より高い。この構成によれば、マーカ30が物体32と同じで反射率である場合に比べ、マーカ30をそれぞれのLiDARユニット20a,20bによって検知し易くし得、マーカ点群データを生成し易くし得る。なお、出射光に対するマーカ30の反射率は、当該出射光に対する物体32の反射率以下であってもよい。
【0046】
また、マーカ30は、複数であり、互いに離れて配置される。この構成によれば、マーカ30が1つである場合に比べて、重畳領域23におけるマーカ30をLiDARユニット20a,20bによって検知し易くし得、マーカ点群データを生成し易くし得る。なお、マーカ30の数は特に限定されず、マーカ30は少なくとも1つ配置されていればよい。
【0047】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
例えば、制御部COは、LiDARユニット20a,20bや提示部50とネットワークを通じて接続している必要はない。例えば、制御部COは、これらに電気的に接続され、第1点群データ及び第2点群データをLiDARユニット20a,20bから入力され、統合点群データを提示部50に出力できればよい。
【0049】
第1点群データは、LiDARユニット20aで生成されるがこれに限定される必要はない。例えば、LiDARユニット20aは、検知領域21aに位置する物体の三次元の各座標を計測し、計測した各座標に係るデータを制御部COや統合部41に出力し、制御部COや統合部41が計測された各座標に係るデータから第1点群データを生成してもよい。或いは、制御部COは、計測された各座標に係るデータから第1点群データを生成する生成部を含んでもよい。ここでは、第1点群データ及びLiDARユニット20aを用いて説明したが、第2点群データ及びLiDARユニット20bについても同様とされる。
【0050】
物体検知システム10は、検知領域が重畳領域23と重なる他のLiDARユニットを更に備えてもよい。この場合、統合部41は、第1点群データと第2点群データと他のLiDARユニットによって計測される各座標を示す第3点群データとを、マーカ点群データを基準にして、統合すればよい。他のLiDARユニット数は、複数であってもよい。
【0051】
LiDARユニット20a,20bのそれぞれから出射される出射光は、レーザ光に限らず、例えば、共振器構造を持たない発光ダイオードから出射される光であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、物体の検知精度の低下を抑制し得る物体検知システム10を提供され、物体を監視する分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
10・・・物体検知システム
20a,20b・・・LiDARユニット
21a,21b・・・検知領域
30・・・マーカ
CO・・・制御部
41・・・統合部