(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118611
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】標尺
(51)【国際特許分類】
G01C 15/06 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
G01C15/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021641
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】520192429
【氏名又は名称】有限会社テラ
(74)【代理人】
【識別番号】100121795
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴亀 國康
(72)【発明者】
【氏名】寺川 忍
(57)【要約】
【課題】容易に垂直に立設することができる標尺を提供することを目的とする。また、レベル担当者のみで標尺を所定の位置に垂直に自立させるとともに、レベルによる高低差測量を行うことを可能とする標尺を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る高低差を測定する測定方法は、レベル用のターゲット及び下端に錘を備える振り竿と、測点Pを傾動中心として所定の傾動方向に立設固定され、前記振り竿を揺動自在に支持する支持スタンドを有してなる標尺を用い、先ず、前記スタンドの測点Pを測定対称面の測点Xに合致させるとともに、該スタンドの傾動方向を前記振り竿が示す鉛直方向に合致させて前記スタンドを立設固定し、次に、前記ターゲットを視準して前記測点Xの高低差を測定することによって行われる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レベル用のターゲット及び下端に錘を備える振り竿と、該振り竿を揺動自在に支持する支持スタンドを有する標尺であって、
前記支持スタンドは、基台と、該基台上に載置される球面座と、該球面座上に立設するスタンド本体であって、該スタンド本体上部から前記スタンド本体の中心線Sに直交する方向に張出し前記振り竿を揺動自在に支持する竿支持腕及び前記スタンド本体下部から前記中心線Sに直交する方向に張出すマーカー板を備えるスタンド本体と、上端部が前記スタンド本体の上端部を押圧する締付ナットに螺結され前記基台を貫通した下端に、該基台の底面側に設けられた球状滑面に係合するエンド部材を備え前記中心線Sを中心線とするスタンド軸と、を有し、
前記エンド部材は、前記基台の底面上に設けられた測点Pを傾動中心として傾動し、
前記マーカー板はその板面上に鉛直点Mを有し、該鉛直点Mと前記竿支持腕の振り竿支持部の支持中心Cは、前記中心線Sからの距離Lが等しく該中心線Sを含む同一平面上に設けられてなる標尺。
【請求項2】
支持スタンドは、スタンド軸のねじ込みによりスタンド本体が所定の押圧力で球面座を押圧する圧縮ばねを有することを特徴とする請求項1に記載の標尺。
【請求項3】
マーカー板は、鉛直点Mと、該鉛直点Mを中心とする円、および前記鉛直点Mを原点とし、中心線Sに直行する横軸laとこれに直交する縦軸maを示す表示が設けられてなる請求項1又は2に記載の標尺。
【請求項4】
基台は、該基台の中心線上に設けられる測点P通る鉛直線が前記基台の上面と交わる点を原点とし、該原点を通って前記基台の中心線に平行な横軸lb及びこれに直交する縦軸mcを示す表示と、前記原点から距離Lにある横軸lb上の点を補助点Q及び該補助点Qにおいて前記横軸lbに直交する縦軸mbを示す表示が前記基台上面に設けられてなる請求項1~3のいずれかに記載の標尺。
【請求項5】
レベル用のターゲット及び下端に錘を備える振り竿と、測点Pを傾動中心として所定の傾動方向に立設固定され、前記振り竿を揺動自在に支持する支持スタンドと、を有する標尺であって、
前記支持スタンドは、該支持スタンドの中心線方向V1と前記振り竿が示す鉛直方向V0とのずれを表すマーカー板部を有する標尺。
【請求項6】
支持スタンドは、測点Pを有し該測点Pを測定対象箇所に設定される測点Xに合致させて固定される基台と、該基台を貫通して前記基台の下面側に設けられた球状滑面に係合するエンド部材を備えるスタンド本体と、前記基台の上面側に設けられたくさび面に係合して前記スタンド本体を基台に固着する締付部材と、を有することを特徴とする請求項5に記載の標尺。
【請求項7】
レベル用のターゲット及び下端に錘を備える振り竿と、測点Pを傾動中心として所定の傾動方向に立設固定され、前記振り竿を揺動自在に支持する支持スタンドを有する標尺を用い、
先ず、前記支持スタンドの測点Pを測定対象箇所の測点Xに合致させるとともに、該支持スタンドの傾動方向を前記振り竿が示す鉛直方向に合致させて前記支持スタンドを立設固定し、次に、前記ターゲットを視準して前記測点Xの高低差を測定する測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベルによる高低差測量に用いられる標尺にかかり、測定対象箇所が傾斜面等であってもその設定された測点の高低差測量を行うことができる標尺に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤の高低差測量、水平床面又は定盤の設置においては、自動レベル、電子レベル又はレーザーレベルなどのレベルが用いられる。かかるレベルは基準位置に設置され、所定位置に設置された標尺を視準することにより高低差測量が行われる。このため、所定位置に設置された標尺の位置の特定及び垂直であるかが重要であり、精確な高低差測量を行うための種々の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1に、測点に設置され、測量装置から出射された光を反射する反射体を有する測量用ターゲットにおいて、上記反射体を支持する支持体と、該支持体に一体に設けられ上記測点に対する上記反射体の位置決めを行うための求心手段を有する測量用ターゲットが提案されている。この測量用ターゲットによると、レーザースキャナーによる測量でも、レーザースキャナーが測点を正確に検出できる。また、作業員が測量用ターゲットの求心作業を正確にしかも短時間で容易に行うことができるとされる。
【0004】
特許文献2に、水準器に視準される標尺であって、前記水準器と正対する面に該水準器の視準線に対する傾斜に対応して表示が変化する傾斜方向判断部材が設けられた標尺が提案されている。この標尺によると、標尺側の作業者が標尺を前後方向に揺らし、水準器から視準する作業者が読み取れる最も小さい数値を視準高さとする(ウェービング法)において、視準線に対して垂直な位置を確実に通過させることができるとされる。
【0005】
特許文献3には、前後に揺動させている標尺の目盛を所定周期で読み取って、前記標尺上の視準位置を自動的に演算する電子レベルであって、前記標尺を揺動するタイミングを標尺側作業者に報知するように構成された報知手段を備える電子レベルが提案されている。この電子レベルによれば、ウェービング法により高低差を測定する場合において、標尺側作業者が報知された揺動タイミングに合わせて標尺を揺動するだけで、最適なタイミングで標尺を揺動することができるので、標尺側作業者の勘や熟練に頼らず、精度よく高低差を測定することができるとされる。
【0006】
一方、標尺の傾斜角度測定手段を用いて電子レベルで視準された測定値を補正することにより、精度よく高低差を測定する方法が提案されている。例えば、特許文献4に、床の平滑性を計測するシステムであって、計測対象の床の上に立てられる円柱状の標尺と、この標尺の外面に設けられた受光センサと、標尺の傾斜を検出する傾斜センサと、計測対象の床から離れた基準位置に設置され、水平方向にレーザ光を照射して標尺の受光センサに当たって跳ね返った光を検出して測距データを取得する測域センサと、受光センサで検出したレーザ光検出位置と、測域センサで取得した測距データと、傾斜センサで検出した標尺の傾斜とに基づいて、標尺が立てられた床の三次元位置を演算する演算手段と、を備えることを特徴とする床の平滑性計測システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-220476号公報
【特許文献2】特開2017-44610号公報
【特許文献3】特開2019-138745号公報
【特許文献4】特開2018-185181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
高低差測量等においては一般にレベル担当者と標尺担当者の少なくとも2名を必要とするところ、標尺担当者の負担を軽減するための提案がなされている。すなわち、特許文献1に記載の測量用ターゲットは、反射体の位置決めを行うための求心手段が設けられており、標尺担当者はこの求心手段に基づいて標尺を設置することができる。特許文献2、3に記載の電子レベルは、高低差をウェービング法により測定するとき、標尺を操作する標尺担当者の負担が少なく熟練を要求されないという利点がある。特許文献4に記載の平滑性計測システムにおける標尺は、傾斜センサを有し、作業員によって支持されるが必ずしも垂直に保持する必要がないとされる。
【0009】
しかしながら、高低差測量において標尺担当者に熟練が求められることなく、さらなる負担軽減が求められる。また、高価なレベルでなくとも高精度の高低差測量が可能な測定方法が求められる。本来、高低差測量は標尺が所定位置に垂直に立設された状態で行われてこそ、さらに精確な高低差測量が可能となる。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点及び要請に鑑み、容易に垂直に立設することができる標尺を提供することを目的とする。また、レベル担当者のみで標尺を所定の位置に垂直に自立させるとともに、レベルによる高低差測量を行うことを可能とする標尺を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る標尺は、レベル用のターゲット及び下端に錘を備える振り竿と、該振り竿を揺動自在に支持する支持スタンドを有する標尺であって、前記支持スタンドは、基台と、該基台上に載置される球面座と、該球面座上に立設するスタンド本体であって、該スタンド本体上部から前記スタンド本体の中心線Sに直交する方向に張出し前記振り竿を揺動自在に支持する竿支持腕及び前記スタンド本体下部から前記中心線Sに直交する方向に張出すマーカー板を備えるスタンド本体と、上端部が前記スタンド本体の上端部を押圧する締付ナットに螺結され前記基台を貫通した下端に、該基台の底面側に設けられた球状滑面に係合するエンド部材を備え前記中心線Sを中心線とするスタンド軸と、を有し、前記エンド部材は、前記基台の底面上に設けられた測点Pを傾動中心として傾動し、前記マーカー板はその板面上に鉛直点Mを有し、該鉛直点Mと前記竿支持腕の振り竿支持部の支持中心Cは、前記中心線Sからの距離Lが等しく該中心線Sを含む同一平面上に設けられてなる。
【0012】
上記発明において、支持スタンドは、スタンド軸のねじ込みによりスタンド本体が所定の押圧力で球面座を押圧する圧縮ばねを有するのがよい。
【0013】
また、マーカー板は、鉛直点Mと、該鉛直点Mを中心とする円、および前記鉛直点Mを原点とし、中心線Sに直行する横軸laとこれに直交する縦軸maを示す表示が設けられているのがよい。
【0014】
また、基台は、該基台の中心線上に設けられる測点P通る鉛直線が前記基台の上面と交わる点を原点とし、該原点を通って前記基台の中心線に平行な横軸lb及びこれに直交する縦軸mcを示す表示と、前記原点から距離Lにある横軸pr上の点を補助点Q及び該補助点Qにおいて前記横軸prに直交する縦軸mbを示す表示が前記基台上面に設けられているのがよい。
【0015】
また、本発明に係る標尺は、レベル用のターゲット及び下端に錘を備える振り竿と、測点Pを傾動中心として所定の傾動方向に立設固定され、前記振り竿を揺動自在に支持する支持スタンドと、を有する標尺であって、前記支持スタンドは、該支持スタンドの中心線方向V1と前記振り竿が示す鉛直方向V0とのずれを表すマーカー板部を有するものとすることができる。これにより簡便な標尺を構成することができる。
【0016】
上記簡便な標尺において、支持スタンドは、測点Pを有し該測点Pを測定対象箇所に設定される測点Xに合致させて固定される基台と、該基台を貫通して前記基台の下面側に設けられた球状滑面に係合するエンド部材を備えるスタンド本体と、前記基台の上面側に設けられたくさび面に係合して前記スタンド本体を基台に固着する締付部材と、を有してなるものとすることができる。
【0017】
また、本発明に係る高低差を測定する測定方法は、レベル用のターゲット及び下端に錘を備える振り竿と、測点Pを傾動中心として所定の傾動方向に立設固定され、前記振り竿を揺動自在に支持する支持スタンドを有する標尺を用い、先ず、前記支持スタンドの測点Pを測定対象箇所の測点Xに合致させるとともに、該支持スタンドの傾動方向を前記振り竿が示す鉛直方向に合致させて前記支持スタンドを立設固定し、次に、前記ターゲットを視準して前記測点Xの高低差を測定することによって行われる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る標尺は、標尺を垂直に立設するために複雑な調整機構や操作を要せず所定の位置に垂直に自立させることができる。そして、この標尺により、レベルを用いた高低差測量において高精度の測量ができるとともに、標尺担当者がいない状態でもレベル担当者のみによる測量が可能である。また、測定対象箇所が傾斜面等であってもその設定された測点の高低差測量を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る測点Xの高低差の測定方法を説明する模式図である
【
図3】
図2に示す標尺のスタンド本体部分の詳細を示す断面図である。
【
図4】
図2に示す標尺の振り竿の支持部分等の詳細を示す模式図である。
【
図5】本発明に係る標尺の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を基に説明する。
図1に基づいて、本発明に係る測定対象箇所GPに設定された測点Xの高低差を測定する測定方法を説明する。本測定方法は、
図1に示すレベル用のターゲット及び下端に錘を備える振り竿と、測点Pを傾動中心として所定の傾動方向に立設固定され、前記振り竿を揺動自在に支持する支持スタンドを有する標尺を用いる。そして、先ず、前記支持スタンドの測点Pを測定対象箇所の測点Xに合致させるとともに、該支持スタンドの傾動方向を前記振り竿が示す鉛直方向に合致させて前記支持スタンドを立設固定する。次に、前記ターゲットを視準して前記測点Xの高低差を測定する。
【0021】
上記支持スタンドは、
図1に示すように、これに設けた測点Pを傾動中心として傾動させることができ、所定の傾動方向に立設固定することができる。例えば、測定対象箇所(地盤)GPが傾斜面になっていると、標尺は
図1の実線で示すように設置される。標尺の支持スタンドは、その竿支持腕の振り竿支持部の支持中心Cにおいて振り竿を揺動自在に支持しており、振り竿は鉛直方向V0を向いている。このとき支持スタンドの中心線方向V1は鉛直方向V0に対して傾斜し、方向のずれを生じている。中心線方向V1と鉛直方向V0を含む面内においてその両者が平行になり、方向のずれがなくなるように支持スタンドを傾動させると、標尺は
図1の破線で示すように、支持スタンドが水平線HPに対して垂直状態になる。かかる状態において、振り竿に設けたレベル用のターゲットを視準することにより、測点Xの高低差を測定することができる。
【0022】
ところで、この測定方法において、標尺の支持スタンドに竿支持腕の下方にあって平行に張り出すマーカー板を設け、支持スタンドが水平線HPに対して垂直状態になるとき、振り竿の中心線(鉛直方向V0)がマーカー板と交わる交点を鉛直点Mとすれば、錘と鉛直点Mを指標に、支持スタンドの中心線方向V1が鉛直方向V0に平行になるように支持スタンドの傾動操作を行うことができる。かかる測定方法によれば、必ずしも測点X上に振り竿を立設する必要がないので、測点Xが設定された測定対象域に合わせて標尺を設置することができる。なお、上記標尺においては、支持スタンドの中心線、支持中心C及び鉛直点Mは同一平面上にあり、支持中心Cと鉛直点Mの支持スタンドの中心線までの距離Lは等しい。支持スタンドの中心線、支持中心C及び鉛直点Mにより形成される平面は、いわば標尺の基準構成面を形成する。距離Lは、測点Xの測定対象域に合わせた大きさにすることができ、効率的な測定をすることができる。
【0023】
本発明に係る標尺の例を
図2~4に示す。
図2は、標尺の全体構成を示し、
図3は標尺の支持スタンド部分の詳細、
図4は振り竿の支持部分等の詳細を示す。本発明に係る標尺10は、
図2に示すように、振り竿15とその振り竿15を揺動自在に支持する支持スタンド11を有する。そして、振り竿15は、レベル用のターゲット15aとその下端に錘16を有し、支持スタンド11(スタンド本体110)の上部から張出す竿支持腕115に支持されている。振り竿15は、錘16により常に鉛直方向V0を向くようになっている。
【0024】
振り竿15は、アルミ円管等の軽く円管状のものがよい。また、振り竿15は一体型でもよいが、竿支持腕115に上部が支持され下端に錘16が脱着可能に装着された振り竿本体150と、その上部にターゲット151が継手153を介して連結される分割型とすることができる(
図2、
図4)。これにより振り竿15に所用のターゲット151又は錘16を連結することができる。ターゲットは、計測用のスケールが設けられるが、視認しやすいように目印15bを設けることができる。スケールは、バーコードでもよく、また、光を反射する反射部とすることができる。これにより、自動レベル、電子レベル又はレーザーレベル用の標尺として使用することができる。円管状の振り竿15であって、竿支持腕115の上部に起立するターゲット部分を有する標尺においては、振り竿15の竿支持腕115から上部と下部の長さ・重量バランスを適度な構成にすることにより、強風に対して振り竿の振れが少なく安定した標尺を形成することができる。なお、スケールは、振り竿本体150にも設けることができる。
【0025】
支持スタンド11は、基台12と、該基台上に載置される球面座13と、該球面座上に立設するスタンド本体110であって、該スタンド本体上部からスタンド本体110の中心線Sに直交する方向に張出し振り竿15を揺動自在に支持する竿支持腕115及びスタンド本体下部から前記中心線Sに直交する方向に張出すマーカー板116を備えるスタンド本体110と、上端部がスタンド本体110の上端部を押圧する締付ナット145に螺結され基台12を貫通した下端に、該基台12の底面側に設けられた球状滑面12aに係合するエンド部材141を備え前記中心線Sを中心線とするスタンド軸14と、を有している(
図2、
図3)。エンド部材141は、基台12の底面上に設けられる測点Pを傾動中心として傾動する。なお、エンド部材141は、スタンド軸14のナット142を介して脱着可能にすることができる。このエンド部材141を介して、スタンド軸14及びスタンド本体110の基台12への取付け又は取外しを行うことができる。傾動とは、スタンド軸14等の中心線方向の向きを変える(傾斜させる)ことをいう。
【0026】
図3に示すように、支持スタンド11のスタンド本体110とスタンド軸14は、中心線Sを共用しており、エンド部材141の球状滑面12aにおける球面滑りにより、基台12の底面側に設けられた測点Pを中心に傾動する。すなわち、スタンド本体110、スタンド軸14又は支持スタンド11の中心線は、中心線Sに一致する。スタンド本体110は、球面座13の上に配設されており、所定の方向に傾動する。スタンド本体110を所定の方向に傾動させるとともに基台12に立設固定されるには、スタンド本体110が所定の押圧力で球面座13を押圧するように圧縮ばね136を設けるのが好ましい。このとき、
図3に示すように、スタンド本体110がばね座135を介して球面座13を押圧させるようにするのがよい。ばね座135は、圧縮ばね136の座面になっているとともに、スタンド本体110の下端部を嵌入させ、スタンド本体110と球面座13の係合部として機能する。
【0027】
支持スタンド11の組付けは、先ずスタンド軸14の適当な位置にナット137を固定し圧縮ばね136の圧縮しろを確保する。次に、エンド部材141を除いた状態の支持スタンド11において、スタンド軸14の下端をばね座135、球面座13及び基台12を貫通させ、ナット142にエンド部材141を螺結する。このとき、支持スタンド11に振り竿15を取り付けた状態の標尺10が自立するようにエンド部材141を締め付ける。最後に、支持スタンド11を所定方向に傾動させ、締付ナット145を調整して標尺10を測点上に固定したうえで高低差測定を行う。締付ナット145の調整量は、1~2ピッチであるのがよい。なお、標尺10の自立性又は傾動性は、ナット137の高さ位置の調整、エンド部材141又はスタンド軸14(締付ナット145)のねじ込み量によって調整することができる。
【0028】
分割型の振り竿15において、振り竿15がスタンド本体110の竿支持腕115に支持されている部分の詳細を
図4(a)に示す。竿支持腕115は、球面継手部115aを有しており、この球面継手部115aにより振り竿15を揺動自在に支持することができる。球面継手部115aは、ロッドエンド形球面滑り軸受けを利用することができる。本例の振り竿15は、上述のように、下部の振り竿本体150と上部のターゲット151が継手153及び止めナット155を介して連結されている。そして、継手153の中央部分が球面継手部115aに支持されている。振り竿15は、球面継手部115aの支持中心Cを中心に揺動する。
【0029】
マーカー板116は、
図1及び
図4(b)に示すように、スタンド本体110の下部からスタンド本体110又は支持スタンド11の中心線Sに直交する方向に張出すように設けられ、竿支持腕115と平行に設けられる。マーカー板116の板面上には、中心線Sから距離Lの位置に鉛直点M、該鉛直点Mを中心とする円、および前記鉛直点Mを原点とし、中心線Sに直行する横軸laとこれに直交する縦軸maを示す表示を設けるのがよい。マーカー板116は、支持スタンド110から突出する支持腕部116aに表示部116bが脱着可能に設けられる構成にすることができ、表示部116bは透明で、基台12の上面を見通すことができるのがよい。
【0030】
マーカー板116の鉛直点M、支持スタンドの中心線S、竿支持腕115の振り竿支持部の支持中心Cは、標尺の基準構成面を形成し、中心線Sが水平線HPに対して垂直状態にあれば、振り竿支持部の支持中心Cと鉛直点Mは、支持中心Cを通る鉛直線上にある。すなわち、振り竿15の錘16の先端が鉛直点Mに対しどのような位置にあるか(鉛直点Mに対するずれ)により、支持スタンドの傾斜の方向及び度合いを検知することができる。マーカー板116の表示部116bが透明であれば、以下に説明する基台12に設けられた補助点Qと鉛直点Mとの関係(鉛直方向からのずれの程度及び方向)を検知することができる。なお、この場合、マーカー板116は、支持スタンド11の基台12に対して好適な位置及び高さに設ける必要がある。
【0031】
基台12は、基台底面側に測点Pが設けられ(
図2、
図3)、支持スタンド11は測点Pを傾動中心として傾動する。この測点Pは、基台12の中心線と、支持スタンド11の中心線Sの交点上に設けられる。基台12の上面側には、
図4(c)に示すように、基台12の中心線上に設けられる測点P通る鉛直線が基台12の上面と交わる点を原点とし、該原点を通って基台12の中心線に平行な横軸lb及びこれに直交する縦軸mcを示す表示と、前記原点から距離Lにある横軸pr上の点を補助点Q及び該補助点Qにおいて前記横軸lbに直交する縦軸mbを示す表示を設けるのがよい。これにより、基台底面側に設けられる測点Pの位置を推測することができる。なお、上記測点Pは設計上の点とされるが、測点Pを示す表示を設けてもよい。
【0032】
以上、本発明に係る標尺について説明したが、本発明に係る標尺は、
図5に示す構成のものであってもよい。かかる標尺は、軽量で簡便な標尺を構成することができる。すなわち、
図5に示すように、この標尺10は、レベル用のターゲット30a及び下端に錘30bを備える振り竿30と、測点Pを傾動中心として所定の傾動方向に立設固定され、振り竿30を揺動自在に支持する支持スタンド20と、を有する。そして、支持スタンド20は、該支持スタンドの中心線方向V1と振り竿30が示す鉛直方向V0とのずれを表すマーカー板部20bを有する。本標尺10においては、マーカー板部20bにより示される支持スタンドの中心線方向V1と振り竿30の鉛直方向V0とのずれがなくなるように支持スタンド20を傾動する。すなわち、支持スタンド20が水平線HPに対して垂直状態になるように傾動し、これを立設固定する。そして、ターゲット30aを視準することにより測点P(測点X)における高低差を測定する。
【0033】
かかる標尺において、支持スタンド20は、上述のように振り竿30を揺動自在に支持し、測点Pを傾動中心として所定の傾動方向に立設固定されるようになっている。支持スタンド20は以下に示す構成にするのがよい。すなわち、支持スタンド20は、測点Pを有し該測点Pを測定対象箇所50に設定される測点Xに合致させて固定される基台22と、該基台22を貫通して基台22の下面側に設けられた球状滑面22aに係合するエンド部材20cを有するスタンド本体21と、基台22の上面側に設けられたくさび面22bに係合してスタンド本体21を基台22に固着する締付部材23と、を有している。そして、スタンド本体21は、振り竿30を揺動自在に支持する竿支持部20aとマーカー板部20bを有している。締付部材23は、くさび面22bに係合するくさび部23aとこれをスタンド本体21に対して前後進・固定するナット部23bを有するものとすることができる。なお、マーカー板部20bには支持スタンド20が水平線に対して垂直状態にあるときの鉛直方向V0を示す鉛直点Mを設けるのがよい。かかる標尺において、支持スタンド20(スタンド本体21)の中心線、竿支持部20aの振り竿30の支持中心C及び鉛直点Mは、標尺の基準構成面を構成する。また、スタンド本体21を所定の傾動方向に立設固定する方法は、上記のくさび面-くさび部による係合方法に限定されず、他の方法であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 標尺
11 支持スタンド
110 スタンド本体
115 竿支持腕
116 マーカー板
12 基台
13 球面座
135 ばね座
136 圧縮ばね
137 ナット
14 スタンド軸
141 エンド部材
142 ナット
145 締付ナット
15 振り竿
150 振り竿本体
151 ターゲット
153 継手
155 止めナット
16 錘
20 支持スタンド
21 スタンド本体
22 基台
23 締付部材
30 振り竿
50 測定対象箇所