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2023-118621積層セラミックコンデンサおよび積層セラミックコンデンサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118621
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサおよび積層セラミックコンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01G4/30 512
H01G4/30 515
H01G4/30 517
H01G4/30 311Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021676
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100158207
【弁理士】
【氏名又は名称】河本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】村松 諭
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD04
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG22
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造が容易で、生産性が高い積層セラミックコンデンサ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】積層セラミックコンデンサ100は、積層された複数のセラミック層と第1内部電極と第2内部電極を有する容量素子1を備え、第1側面、第2側面、第1端面1C及び第2端面1Dの一部分に、SiO膜が形成され、第1側面に形成されたSiO膜が、第1側面及び第2側面に露出した第1内部電極及び第2内部電極を覆い、少なくとも第1端面のSiO膜が形成されていない外表面及び第1端面に形成されたSiO膜の外表面に、第1外部電極5が形成され、少なくとも第2端面のSiO膜が形成されていない外表面及び第2端面に形成されたSiO膜の外表面に、第2外部電極が形成され、第1端面に引き出された第1内部電極と、第1外部電極とが、電気的に接続され、第2端面に引き出された第2内部電極と、第2外部電極6とが、電気的に接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数のセラミック層と複数の第1内部電極と複数の第2内部電極とを有し、高さ方向において相互に対向する第1主面および第2主面と、前記高さ方向に直交する長さ方向において相互に対向する第1端面および第2端面と、前記高さ方向および前記長さ方向に直交する幅方向において相互に対向する第1側面および第2側面とを有する容量素子を備え、
前記第1内部電極は、前記幅方向において相互に対向する2つの端部と前記長さ方向において相互に対向する2つの端部とを有する矩形であり、前記幅方向に対向する前記端部の一方が前記第1側面に露出し、前記幅方向に対向する前記端部の他方が前記第2側面に露出し、前記長さ方向に対向する前記端部の一方が前記第1端面に引き出され、
前記第2内部電極は、前記幅方向において相互に対向する2つの端部と前記長さ方向において相互に対向する2つの端部とを有する矩形であり、前記幅方向に対向する前記端部の一方が前記第1側面に露出し、前記幅方向に対向する前記端部の他方が前記第2側面に露出し、前記長さ方向に対向する前記端部の一方が前記第2端面に引き出され、
前記第1側面の少なくとも一部分、前記第2側面の少なくとも一部分、前記第1端面の一部分、前記第2端面の一部分に、それぞれ、SiO膜が形成され、
前記第1側面に形成された前記SiO膜が、前記第1側面に露出した前記第1内部電極および前記第2内部電極を覆い、
前記第2側面に形成された前記SiO膜が、前記第2側面に露出した前記第1内部電極および前記第2内部電極を覆い、
少なくとも、前記第1端面の前記SiO膜が形成されていない外表面、および、前記第1端面に形成された前記SiO膜の外表面に、第1外部電極が形成され、
少なくとも、前記第2端面の前記SiO膜が形成されていない外表面、および、前記第2端面に形成された前記SiO膜の外表面に、第2外部電極が形成され、
前記第1端面に引き出された前記第1内部電極と、前記第1外部電極とが、電気的に接続され、
前記第2端面に引き出された前記第2内部電極と、前記第2外部電極とが、電気的に接続された、
積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記SiO膜が、前記第1側面の全面、および、前記第2側面の全面に形成された、
請求項1に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記SiO膜が、前記第1主面の全面、および、前記第2主面の全面に形成された、
請求項1または2に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記第1外部電極、または/および、前記第2外部電極を取り除き、
前記第1端面、または/および、前記第2端面を見たとき、
前記SiO膜が、前記第1端面、または/および、前記第2端面に、環状に形成された、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記第1側面に形成された前記SiO膜、および、前記第2側面に形成された前記SiO膜の最大厚さ寸法が、1μm以上、5μm以下である、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記SiO膜の外表面の少なくとも一部分に、TiO膜が形成された、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
前記第1外部電極の外表面、および、前記第2外部電極の外表面に、少なくとも1層のめっき層が形成された、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載された積層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
積層された複数のセラミック層と複数の第1内部電極と複数の第2内部電極とを有し、高さ方向において相互に対向する第1主面および第2主面と、前記高さ方向に直交する長さ方向において相互に対向する第1端面および第2端面と、前記高さ方向および前記長さ方向に直交する幅方向において相互に対向する第1側面および第2側面とを有する容量素子を作製する工程と、
前記容量素子の外表面の所望の部分に、テトラエトキシシランを含んだ溶液を塗布する工程と、
前記テトラエトキシシランを加水分解し、前記容量素子の外表面の所望の部分にSiO膜を形成する工程と、
第1外部電極および第2外部電極を形成する工程と、を備えた、
積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項9】
前記容量素子の外表面の所望の部分に前記テトラエトキシシランを含んだ溶液を塗布する工程が、
前記容量素子の前記SiO膜を形成しない部分にマスキングをしたうえで、テトラエトキシシランを含んだ溶液に前記容量素子を浸漬する工程である、
請求項8に記載された積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項10】
前記容量素子を作製する工程が、
未焼成の容量素子を作製する工程と、
前記未焼成の容量素子をバレル研磨する工程と、
前記未焼成の容量素子を焼成する工程をと、を含む、
請求項8または9に記載された積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項11】
前記容量素子を作製する工程よりも後、
前記容量素子の外表面の所望の部分にテトラエトキシシランを含んだ溶液を塗布する工程よりも前に、
前記容量素子をバレル研磨する工程を備えた、
請求項8ないし10のいずれか1項に記載された積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項12】
前記容量素子の外表面の所望の部分にSiO膜を形成する工程よりも後、
前記第1外部電極および第2外部電極を形成する工程よりも前に、
前記SiO膜の外表面の少なくとも一部分に、TiO膜を形成する工程を備えた、
請求項8ないし11のいずれか1項に記載された積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項13】
前記TiO膜を形成する工程が、
前記SiO膜の外表面に、TiO膜を蒸着させ、さらに加熱する工程である、
請求項12に記載された積層セラミックコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量素子の外表面にSiO膜が形成された、積層セラミックコンデンサに関する。また、本発明は、本発明の積層セラミックコンデンサを製造するのに適した、積層セラミックコンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサが、電子機器、電気機器などに、広く使用されている。
【0003】
一般的な積層セラミックコンデンサは、複数のセラミック層と複数の第1内部電極と複数の第2内部電極とが積層された容量素子を備え、容量素子の一方の端面に第1外部電極が形成され、容量素子の他方の端面に第2外部電極が形成されている。そして、第1内部電極が、容量素子の一方の端面に引き出されて第1外部電極と電気的に接続され、第2内部電極が、容量素子の他方の端面に引き出されて第2外部電極と電気的に接続されている。
【0004】
このような構造からなる積層セラミックコンデンサにおいて、従来は、第1内部電極、第2内部電極が容量素子の側面に露出しないように、第1内部電極、第2内部電極の幅方向の寸法を、セラミック層の幅方向の寸法よりも小さくしていた。そして、第1内部電極、第2内部電極を、セラミック層の幅方向の中央に配置していた。この場合、容量素子の側面を見たとき、第1内部電極、第2内部電極は容量素子の内部に入り込んでいるため、容量素子の側面に第1内部電極、第2内部電極は露出していない。
【0005】
しかし、近時、この構造とは異なり、特許文献1(特開2012-142451号公報)などに開示されるように、第1内部電極、第2内部電極の幅方向の寸法を、セラミック層の幅方向の寸法と同じにした積層セラミックコンデンサも、広く使用されるようになってきている。第1内部電極、第2内部電極の幅方向の寸法を、セラミック層の幅方向の寸法と同じにして、第1内部電極、第2内部電極の面積を大きくすれば、積層セラミックコンデンサの静電容量を大きくすることができるからである。
【0006】
しかしながら、第1内部電極、第2内部電極の幅方向の寸法を、セラミック層の幅方向の寸法と同じにすると、第1内部電極、第2内部電極が容量素子の側面に露出してしまう。そこで、特許文献1の積層セラミックコンデンサでは、容量素子の側面に、容量素子に積層したセラミック層とは別のセラミック層を設け、そのセラミック層によって、容量素子の側面に露出した第1内部電極、第2内部電極を覆っている。なお、以下において、容量素子の側面に設けられるセラミック層を、サイドギャップ・セラミック層と呼ぶ場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-142451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の積層セラミックコンデンサには、サイドギャップ・セラミック層を形成する工程が煩雑であり、生産性が高くないという問題があった。特許文献1の積層セラミックコンデンサは、たとえば、次の工程を経て製造される。
【0009】
まず、多数の積層セラミックコンデンサを一括して製造するために、複数のマザーセラミックグリーンシートを作成する。次に、マザーセラミックグリーンシートの主面に、第1内部電極、または、第2内部電極を形成するための導電性ペーストを、所望の形状に塗布する。次に、第1内部電極を形成するための導電性ペーストが塗布されたマザーグリーンシート、および、第2内部電極を形成するための導電性ペーストが塗布されたマザーグリーンシートを、たとえば交互に積層し、加圧(加圧および加熱)して一体化させて、未焼成のマザー容量素子を作製する。次に、未焼成のマザー容量素子を、個片化された未焼成の容量素子にカットする。この段階では、未焼成の容量素子の側面に、第1内部電極を形成するための導電性ペーストの層、および、第2内部電極を形成するための導電性ペーストの層が露出している。
【0010】
次に、未焼成の容量素子の側面に、サイドギャップ・セラミック層を形成するためのセラミックペーストを塗布する、または、サイドギャップ・セラミック層を形成するためのセラミックグリーンシートを貼着する。この結果、未焼成の容量素子の側面に露出した、第1内部電極を形成するための導電性ペーストの層、および、第2内部電極を形成するための導電性ペーストの層が、塗布されたセラミックペースト、または、貼着されたセラミックグリーンシートによって覆われる。
【0011】
次に、側面に、セラミックペーストを塗布された、または、セラミックグリーンシートが貼着された、未焼成の容量素子を、所望のプロファイルで焼成する。この結果、未焼成の容量素子は、焼成された容量素子となり、側面に塗布されたセラミックペースト、または、側面に貼着されたセラミックグリーンシートは、サイドギャップ・セラミック層になる。なお、焼成された容量素子の内部には、第1内部電極、および、第2内部電極が形成されている。
【0012】
最後に、焼成された容量素子に、第1外部電極、および、第2外部電極を形成することにより、特許文献1の積層セラミックコンデンサが完成する。
【0013】
以上の工程を含む特許文献1の積層セラミックコンデンサにおいては、未焼成の容量素子の側面に、サイドギャップ・セラミック層を形成するためのセラミックペーストを塗布する、または、サイドギャップ・セラミック層を形成するためのセラミックグリーンシートを貼着する工程が、極めて煩雑である。すなわち、個片化された、1個、1個の極めて小さい未焼成の容量素子の側面に、セラミックペーストを塗布するか、または、セラミックグリーンシートを貼着しなければならず、困難で、時間を要する工程となっていた。そして、積層セラミックコンデンサの生産性を低下させる要因となっていた。
【0014】
そこで、本発明は、第1内部電極、第2内部電極の幅方向の寸法を、セラミック層の幅方向の寸法と同じにしているにもかかわらず、製造が容易で、生産性が高い積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した従来の問題を解決するために、本発明の一実施態様にかかる積層セラミックコンデンサは、積層された複数のセラミック層と複数の第1内部電極と複数の第2内部電極とを有し、高さ方向において相互に対向する第1主面および第2主面と、高さ方向に直交する長さ方向において相互に対向する第1端面および第2端面と、高さ方向および長さ方向に直交する幅方向において相互に対向する第1側面および第2側面とを有する容量素子を備え、第1内部電極は、幅方向において相互に対向する2つの端部と長さ方向において相互に対向する2つの端部とを有する矩形であり、幅方向に対向する端部の一方が第1側面に露出し、幅方向に対向する端部の他方が第2側面に露出し、長さ方向に対向する端部の一方が第1端面に引き出され、第2内部電極は、幅方向において相互に対向する2つの端部と長さ方向において相互に対向する2つの端部とを有する矩形であり、幅方向に対向する端部の一方が第1側面に露出し、幅方向に対向する端部の他方が第2側面に露出し、長さ方向に対向する端部の一方が第2端面に引き出され、第1側面の少なくとも一部分、第2側面の少なくとも一部分、第1端面の一部分、第2端面の一部分に、それぞれ、SiO膜が形成され、第1側面に形成されたSiO膜が、第1側面に露出した第1内部電極および第2内部電極を覆い、第2側面に形成されたSiO膜が、第2側面に露出した第1内部電極および第2内部電極を覆い、少なくとも、第1端面のSiO膜が形成されていない外表面、および、第1端面に形成されたSiO膜の外表面に、第1外部電極が形成され、少なくとも、第2端面のSiO膜が形成されていない外表面、および、第2端面に形成されたSiO膜の外表面に、第2外部電極が形成され、第1端面に引き出された第1内部電極と、第1外部電極とが、電気的に接続され、第2端面に引き出された第2内部電極と、第2外部電極とが、電気的に接続されたものとする。
【0016】
また、本発明の一実施態様にかかる積層セラミックコンデンサの製造方法は、積層された複数のセラミック層と複数の第1内部電極と複数の第2内部電極とを有し、高さ方向において相互に対向する第1主面および第2主面と、高さ方向に直交する長さ方向において相互に対向する第1端面および第2端面と、高さ方向および長さ方向に直交する幅方向において相互に対向する第1側面および第2側面とを有する容量素子を作製する工程と、容量素子の外表面の所望の部分に、テトラエトキシシランを含んだ溶液を塗布する工程と、テトラエトキシシランを加水分解し、容量素子の外表面の所望の部分にSiO膜を形成する工程と、第1外部電極および第2外部電極を形成する工程と、を備えたものとする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の積層セラミックコンデンサは、第1内部電極、第2内部電極の幅方向の寸法を、セラミック層の幅方向の寸法と同じにしているにもかかわらず、製造が容易で、生産性が高い。
【0018】
また、本発明の積層セラミックコンデンサは、容量素子の第1側面および第2側面において、SiO膜が第1内部電極、第2内部電極を覆っているため、第1内部電極、第2内部電極が外表面に露出していない。
【0019】
また、本発明の積層セラミックコンデンサは、SiO膜によって、容量素子の第1側面、第2側面、第1端面、第2端面から容量素子の内部への水分の浸入が抑制されている。
【0020】
本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法によれば、本発明の積層セラミックコンデンサを、容易に、かつ、高い生産性で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100の斜視図である。
図2図2(A)、(B)は、それぞれ、積層セラミックコンデンサ100の分解斜視図である。
図3図3(A)、(B)は、それぞれ、積層セラミックコンデンサ100の分解正面図である。
図4】積層セラミックコンデンサ100の断面図である。
図5】積層セラミックコンデンサ100の要部断面図である。
図6図6(A)、(B)は、それぞれ、積層セラミックコンデンサ100の製造方法の一例において実施する工程を示す説明図である。
図7図7(C)、(D)は、図6(B)の続きであり、それぞれ、積層セラミックコンデンサ100の製造方法の一例において実施する工程を示す説明図である。
図8図8(A)~(C)は、それぞれ、積層セラミックコンデンサ100の製造方法の一例において、容量素子1の外表面にテトラエトキシシランを塗布する工程を示す説明図である。
図9】第2実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ200の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0023】
なお、各実施形態は、本発明の実施の形態を例示的に示したものであり、本発明が実施形態の内容に限定されることはない。また、異なる実施形態に記載された内容を組合せて実施することも可能であり、その場合の実施内容も本発明に含まれる。また、図面は、明細書の理解を助けるためのものであって、模式的に描画されている場合があり、描画された構成要素または構成要素間の寸法の比率が、明細書に記載されたそれらの寸法の比率と一致していない場合がある。また、明細書に記載されている構成要素が、図面において省略されている場合や、個数を省略して描画されている場合などがある。
【0024】
[第1実施形態]
図1図2(A)、(B)、図3(A)、(B)、図4図5に、第1実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100を示す。なお、図中に、積層セラミックコンデンサ100の高さ方向T、長さ方向L、幅方向Wを示しており、以下の説明において、これらの方向に言及する場合がある。本実施形態においては、後述する容量素子1におけるセラミック層1aの積層方向を、高さ方向Tとしている。
【0025】
図1は、積層セラミックコンデンサ100の斜視図である。図2(A)は、分解斜視図であり、積層セラミックコンデンサ100から、後述する第1外部電極5、第2外部電極6を省略した状態を示している。図2(B)も、分解斜視図であり、積層セラミックコンデンサ100から、第1外部電極5、第2外部電極6、後述するSiO膜4を省略した状態を示している。図3(A)は、分解正面図であり、積層セラミックコンデンサ100から、第1外部電極5、第2外部電極6を省略し、後述する容量素子1の第1端面1Cを示している。図3(B)も、分解正面図であり、積層セラミックコンデンサ100から、第1外部電極5、第2外部電極6、SiO膜4を省略し、容量素子1の第1端面1Cを示している。図4は、積層セラミックコンデンサ100の断面図であり、図1に一点鎖線矢印で示したX-X部分を示している。図5は、積層セラミックコンデンサ100の要部断面図である。
【0026】
積層セラミックコンデンサ100は、図2(B)などから分かるように、複数のセラミック層1aと、複数の第1内部電極2と、複数の第2内部電極3とが積層された、容量素子1を備えている。
【0027】
セラミック層1aの層数、第1内部電極2の層数、第2内部電極3の層数は、それぞれ、任意である。第1内部電極2および第2内部電極3は、それぞれ、セラミック層1aどうしの層間に積層される。原則として、第1内部電極2と第2内部電極3とは交互に積層されるが、例外があってもよい。また、第1内部電極2および第2内部電極3のいずれもが積層されない、セラミック層1aどうしの層間があってもよい。
【0028】
容量素子1は、高さ方向Tにおいて相互に対向する第1主面1Aおよび第2主面1Bと、高さ方向Tに直交する長さ方向Lにおいて相互に対向する第1端面1Cおよび第2端面1Dと、高さ方向Tおよび長さ方向Lに直交する幅方向Wにおいて相互に対向する第1側面1Eおよび第2側面1Fと、を有している。
【0029】
図2(B)に示すように、第1内部電極2は、幅方向Wにおいて相互に対向する2つの端部と長さ方向Lにおいて相互に対向する2つの端部とを有する矩形であり、幅方向Wに対向する端部の一方が第1側面1Eに露出し、幅方向Wに対向する端部の他方が第2側面1Fに露出し、長さ方向Lに対向する端部の一方が第1端面1Cに引き出されている。
【0030】
第2内部電極3は、幅方向Wにおいて相互に対向する2つの端部と長さ方向Lにおいて相互に対向する2つの端部とを有する矩形であり、幅方向Wに対向する端部の一方が第1側面1Eに露出し、幅方向Wに対向する端部の他方が第2側面1Fに露出し、長さ方向Lに対向する端部の一方が第2端面1Dに引き出されている。
【0031】
第1内部電極2の幅方向Wの寸法、第2内部電極3の幅方向Wの寸法は、それぞれ、セラミック層1aの幅方向Wの寸法と同じである。第1内部電極2の長さL方向の寸法、第2内部電極3の長さL方向の寸法は、それぞれ、セラミック層1aの長さL方向の寸法よりも小さい。
【0032】
容量素子1(セラミック層1a)の材質は任意であり、たとえば、BaTiOを主成分とする誘電体セラミックを使用することができる。ただし、BaTiOに代えて、CaTiO、SrTiO、CaZrOなど、他の材質を主成分とする誘電体セラミックを使用してもよい。セラミック層1aの厚さ寸法は任意であるが、たとえば、0.1~1.0μmである。
【0033】
第1内部電極2、第2内部電極3の主成分は任意であり、たとえば、Niを使用することができる。ただし、Niに代えて、Pd、Ag、Cuなど、他の金属を使用してもよい。また、NiやPd、Ag、Cuなどは、他の金属との合金であってもよい。第1内部電極2、第2内部電極3の厚さ寸法は任意であるが、たとえば、0.1~1.0μmである。
【0034】
図2(A)などから分かるように、容量素子1の外表面に、SiO膜4が形成されている。本実施形態においては、SiO膜4は、容量素子1の第1主面1Aの全面、第2主面1Bの全面、第1側面1Eの全面、第2側面1Fの全面、第1端面1Cの一部分、第2端面1Dの一部分に形成されている。
【0035】
容量素子1の第1側面1E、第2側面1Fに形成されたSiO膜4は、それぞれ、第1内部電極2および第2内部電極3を覆い、第1内部電極2および第2内部電極3が外表面に露出しないようにするために設けられている。また、容量素子1の第1側面1E、第2側面1Fに形成されたSiO膜4は、それぞれ、容量素子1の第1側面1E、第2側面1Fから、容量素子1の内部に、水分が浸入することを抑制するために設けられている。本実施形態おいては、容量素子1の第1側面1Eの全面および第2側面1Fの全面にSiO膜4が形成されているが、上記の機能を果たすのであれば、部分的に形成されたものであってもよい。
【0036】
容量素子1の第1端面1C、第2端面Dに形成されたSiO膜4は、それぞれ、容量素子1の第1端面1C、第2端面Dから、容量素子1の内部に、水分が浸入することを抑制するために設けられている。しかしながら、第1端面1Cにおいては、第1内部電極2と、後述する第1外部電極5との電気的接続をはかり、第2端面1Dにおいては、第2内部電極3と、後述する第2外部電極6との電気的接続をはかる必要がある。そこで、SiO膜4は、これらの電気的接続を阻害しないように、容量素子1の第1端面1Cの一部分、第2端面1Dの一部分に形成されている。
【0037】
図2(A)、図3(A)に示すように、本実施形態においては、SiO膜4は、容量素子1の第1端面1Cに、環状に形成されている。図示はしていないが、SiO膜4は、容量素子1の第2端面1Dにも、同様に環状に形成されている。すなわち、第1端面1C、第2端面1Dに形成されたSiO膜4は、中央部分にSiO膜4の非形成部4Nを備えている。本実施形態においては、非形成部4Nは四角形であるが、この形状は任意であり、円形や、楕円形や、四角形以外の多角形などであってもよい。
【0038】
本実施形態においては、上述したとおり、容量素子1の第1主面1Aの全面および第2主面1Bの全面にも、SiO膜4が形成されている。これは、第1側面1E、第2側面1F、第1端面1C、第2端面1Dに加えて、第1主面1Aおよび第2主面1Bにも一体的にSiO膜4を形成し、SiO膜4を容量素子1に強力に接合させるために設けられたものである。また、第1主面1Aおよび第2主面1Bに形成されたSiO膜4は、容量素子1の内部に水分が浸入することを抑制する機能も果たしている。なお、第1主面1Aおよび第2主面1Bに形成されたSiO膜4は、本発明において必須の構成ではなく、省略することもできる。また、第1主面1Aおよび第2主面1Bに形成されたSiO膜4は、全面ではなく、一部分に形成されたものであってもよい。
【0039】
SiO膜4の厚さ寸法は任意であるが、強度を維持でき、かつ、耐湿性を維持できるならば、出来るだけ小さい方が好ましい。この観点からは、SiO膜4の各形成ヵ所における最大厚さ寸法は、1μm以上、5μm以下であることが好ましい。1μm未満であると、強度、または/および、耐湿性が低下するからである。5μmを超えると、必要以上に大きいからである。
【0040】
なお、従来の第1内部電極、第2内部電極の幅方向の寸法と、セラミック層の幅方向の寸法とが同じ大きさの積層セラミックコンデンサにおいて、容量素子の側面に形成されるサイドギャップ・セラミック層の厚さ寸法は、たとえば、15μm~20μm程度であった。したがって、本発明のように、容量素子1の第1側面1E、第2側面1Fに、サイドギャップ・セラミック層に代えて、SiO膜4を形成すれば、積層セラミックコンデンサの幅方向Wの寸法を小さくすることができる。あるいは、積層セラミックコンデンサの幅方向Wの寸法が一定であれば、第1内部電極2の幅方向Wの寸法、第2内部電極の幅方向Wの寸法、セラミック層1aの幅方向Wの寸法を、それぞれ、大きくすることができるため、静電容量を大きくすることができる。
【0041】
図1図4などに示すように、容量素子1の第1端面1CのSiO膜4が形成されていない外表面、および、第1端面1Cに形成されたSiO膜の外表面に、第1外部電極5が形成されている。同様に、容量素子1の第2端面1DのSiO膜4が形成されていない外表面、および、第2端面1Dに形成されたSiO膜4の外表面に、第2外部電極6が形成されている。
【0042】
本実施形態においては、第1外部電極5は、キャップ状に形成されており、第1端面1Cから、第1主面1A、第2主面1B、第1側面1E、第2側面1Fにそれぞれ形成されたSiO膜4上に、延出して形成されている。同様に、第2外部電極6も、キャップ状に形成されており、第2端面1Dから、第1主面1A、第2主面1B、第1側面1E、第2側面1Fにそれぞれ形成されたSiO膜4上に、延出して形成されている。
【0043】
容量素子1の第1端面1Cに引き出された第1内部電極2と、第1外部電極5とが電気的に接続されている。容量素子1の第2端面1Dに引き出された第2内部電極3と、第2外部電極6とが電気的に接続されている。
【0044】
第1外部電極5と第2外部電極6とは、同じ材質(主成分)を使って、同じ構造に形成されている。第1外部電極5、第2外部電極6の材質、構造は任意であるが、本実施形態においては、下地外部電極層7と、第1めっき層8と、第2めっき層9との3層構造に形成されている。
【0045】
本実施形態においては、下地外部電極層7の主成分に、Cuおよびガラスを使用した。ただし、Cuに代えて、Ag、Niなど、他の金属を使用してもよい。また、CuやAg、Niなどは、他の金属との合金であってもよい。なお、下地外部電極層7は、ガラスが含まれていないものであってもよい。下地外部電極層7の厚さ寸法は任意であるが、たとえば、2μm~100μmである
【0046】
本実施形態においては、第1めっき層8をNiめっき層、第2めっき層9をSnめっき層とした。第1めっき層8、第2めっき層9の厚さ寸法は任意であるが、たとえば、0.1μm~5.0μmである。
【0047】
本実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100は、容量素子1の第1側面1Eおよび第2側面1Fにおいて、SiO膜4が第1内部電極2、第2内部電極3を覆っているため、第1内部電極2、第2内部電極3が外表面に露出していない。
【0048】
また、本実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100は、SiO膜4によって、容量素子1の第1主面1A、第2主面1B、第1側面1E、第2側面F、第1端面C、第2端面Dから、容量素子1の内部への水分の浸入が抑制されている。
【0049】
(積層セラミックコンデンサ100の製造方法の一例)
第1実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100は、たとえば、図6(A)~図7(D)に示す方法で製造することができる。
【0050】
(1)容量素子1の作製
図6(A)に示す容量素子1を作製する。容量素子1は、たとえば、次の方法で作製することができる。
【0051】
図示しないが、まず、誘電体セラミックスの粉末、バインダ樹脂、溶剤などを用意し、これらを湿式混合してセラミックスラリーを作製する。
【0052】
次に、キャリアフィルム上に、セラミックスラリーをダイコータ、グラビアコーター、マイクログラビアコーターなどを用いてシート状に塗布し、乾燥させて、マザーセラミックグリーンシートを作製する。マザーセラミックグリーンシートは、多数の積層セラミックコンデンサを一括して製造するために、セラミック層1a用のセラミックグリンシートを、平面方向に、多数、含んだセラミックグリーンシートである。
【0053】
次に、所定のマザーセラミックグリーンシートの主面に、第1内部電極2を形成するために、予め用意した導電性ペーストを所望のパターン形状に印刷する。また、別の所定のマザーセラミックグリーンシートの主面に、第2内部電極3を形成するために、予め用意した導電性ペーストを所望のパターン形状に印刷する。なお、容量素子1において、上下に積層される保護層用のセラミック層1aを作製するためのマザーセラミックグリーンシートには、導電性ペーストは印刷しない。
【0054】
次に、マザーセラミックグリーンシートを所定の順番に積層し、加熱圧着して一体化させ、未焼成のマザー容量素子を作製する。
【0055】
次に、未焼成のマザー容量素子を、個片化した複数の未焼成の容量素子にカットする。
【0056】
次に、未焼成の容量素子にバレル研磨をおこなう。このバレル研磨は、未焼成の容量素子の稜線に丸みを与え、未焼成の容量素子どうしが衝突しても、相互に傷まないようにするためにおこなうものである。このとき、未焼成の容量素子の端面を見ると、端面の中央領域の高さが、端面の外側領域の高さよりも、高くなる。
【0057】
次に、未焼成の容量素子を、所望のプロファイルで焼成する。この結果、未焼成の容量素子は、複数のセラミック層1aと複数の第1内部電極2と複数の第2内部電極3とが積層された容量素子1になる。容量素子1の第1側面1E、第2側面1Fには、第1内部電極2と第2内部電極3とが露出している。
【0058】
(2)(任意の工程)容量素子1へのバレル研磨
次に、必要があれば、焼成後の容量素子1にバレル研磨をおこなう。バレル研磨後に、容量素子1の第1端面1C、第2端面1Dを見ると、中央領域の高さが、外側領域の高さよりも、さらに高くなっている。
【0059】
(3)容量素子1の外表面へのテトラエトキシシラン(TEOS)の塗布
次に、図6(B)に示すように、容量素子1の第1主面1Aの全面、第2主面1Bの全面、第1側面1Eの全面、第2側面1Fの全面、第1端面1Cの一部分、第2端面1Dの一部分に、それぞれ、テトラエトキシシラン(tetraethoxysilane;TEOS)14を塗布する。テトラエトキシシラン14は、たとえば、図8(A)~(C)に示す方法で、容量素子1の外表面に塗布することができる。
【0060】
まず、図8(A)に示すように、複数の容量素子1を、1対の治具15a、15bの間に保持する。より具体的には、容量素子1の第1端面1C、第2端面1Dを、治具15a、15bに当接させて保持する。治具15a、15bの詳細については任意であるが、容量素子1に当接する表面に、粘着性を有していることが好ましい。治具15a、15bは、たとえば、金属板の表面に粘着層を形成したものからなる。あるいは、治具15a、15bは、たとえば、表面に粘着性を有する、ある程度の硬度を備えた板状のゴムからなる。あるいは、治具15a、15bは、たとえば、表面に粘着性を有する、ある程度の硬度を備えた粘着シートであってもよい。
【0061】
複数の容量素子1の治具15a、15bによる保持は、たとえば、次の方法でおこなうことができる。まず、主面に複数の収納部が形成されたプレート(図示せず)を用意する。次に、複数の収納部に、それぞれ、容量素子1を収納する。このとき、収納部の底に、容量素子1の第1端面1Cまたは第2端面1Dが当接するようにする。次に、収納部に収容した複数の容量素子1の、収納部から露出している第1端面1Cまたは第2端面1Dに、治具15aを取り付ける(治具15aの表面の粘着性により両者は相互に付着する)。次に、治具15aに取り付けられた複数の容量素子1を、プレートから取り出す。次に、複数の容量素子1の治具15aに取り付けられていない第1端面1Cまたは第2端面1Dに、治具15bを取り付ける。以上により、複数の容量素子1を、1対の治具15a、15bの間に保持することができる。
【0062】
なお、上述したとおり、容量素子1を作製した時の未焼成の容量素子へのバレル研磨、および/または、容量素子1を作製した後の容量素子1へのバレル研磨により、容量素子1の第1端面1C、第2端面1Dは、中央領域の高さが、外側領域の高さよりも、高くなっている。したがって、容量素子1の第1端面1C、第2端面1Dは、中央領域において治具15a、15bに付着され、外側領域は治具15a、15bに付着されず、隙間が空いている。
【0063】
次に、図8(B)に示すように、テトラエトキシシラン14を用意し、浴16に収容する。テトラエトキシシラン14は、単独で用意されていてもよい。あるいは、テトラエトキシシラン14は、他の液体と混合された状態で用意されてもよい。たとえば、テトラエトキシシラン14は、エトキシ基の一部をメチル基で置換したメチルトリエトキシラン(MTES)などと混合された状態で用意されてもよい。
【0064】
続いて、同じく図8(B)に示すように、浴16に収容されたテトラエトキシシラン14に、治具15a、15bの間に保持された複数の容量素子1を浸漬する。
【0065】
次に、浴16に収容されたテトラエトキシシラン14から、治具15a、15bの間に保持された複数の容量素子1を取り出す。続いて、図8(C)に示すように、治具15a、15bから容量素子1を取り外す。
【0066】
この結果、図6(B)に示すように、容量素子1の第1主面1Aの全面、第2主面1Bの全面、第1側面1Eの全面、第2側面1Fの全面、第1端面1Cの一部分、第2端面1Dの一部分に、テトラエトキシシラン14が塗布される。なお、容量素子1の第1端面1C、第2端面1Dにおいては、治具15a、15bとの間に隙間が空いていた外側領域にのみ、環状に、テトラエトキシシラン14が塗布される。
【0067】
このことから分かるように、治具15a、15bの間に容量素子1を保持させることにより、容量素子1は、テトラエトキシシラン14を塗布する部分が外部に露出し、テトラエトキシシラン14を塗布しない部分が、治具15a、15bによって塞がれたことになる。すなわち、治具15a、15bは、容量素子1を、浴16に収容されたテトラエトキシシラン14に浸漬するときのマスキングとして機能したことになる。
【0068】
(4)SiO膜4の形成(テトラエトキシシラン(TEOS)の加水分解)
次に、図7(A)に示すように、容量素子1の外表面に塗布されたテトラエトキシシランを加水分解し、容量素子1の第1主面1Aの全面、第2主面1Bの全面、第1側面1Eの全面、第2側面1Fの全面、第1端面1Cの一部分、第2端面1Dの一部分に、SiO膜4を形成する。加水分解の条件は任意であるが、本実施形態においては、テトラエトキシシランが塗布された容量素子1を、温度60℃以上、湿度90%以上の環境下に、60分間、放置した。この結果、容量素子1に塗布されたテトラエトキシシランは、エタノールと、SiOとに分解し、容量素子1の第1主面1Aの全面、第2主面1Bの全面、第1側面1Eの全面、第2側面1Fの全面、第1端面1Cの一部分、第2端面1Dの一部分に、SiO膜4が形成された。
【0069】
(5)第1外部電極5、第2外部電極6の形成
次に、図7(B)に示すように、容量素子1の一方の端部に第1外部電極5を形成し、他方の端部に第2外部電極6を形成する。本実施形態においては、まず、容量素子1の両端部に、それぞれ、Cuを主成分とする導電性ペーストを塗布し、焼き付けて、下地外部電極層7を形成する。次に、下地外部電極層7上に、第1めっき層8としてNiめっき層を形成する。次に、第1めっき層8上に、第2めっき層9としてSnめっき層を形成する。以上により、第1実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100が完成する。
【0070】
本実施形態の積層セラミックコンデンサ100の製造方法によれば、積層セラミックコンデンサ100が、第1内部電極2、第2内部電極3の幅方向Wの寸法と、セラミック層1aの幅方向Wの寸法とが同じであるにもかかわらず、積層セラミックコンデンサ100を、容易、かつ、高い生産性で製造することができる。これは、従来の容量素子の側面にサイドギャップ・セラミック層を形成する方法に比べて、本実施形態の積層セラミックコンデンサ100の製造方法では、容量素子1の第1側面1E、第2側面1Fに、極めて容易に、SiO膜4を形成することができるからである。本実施形態の積層セラミックコンデンサ100の製造方法によれば、多数の容量素子1の第1側面1E、第2側面1Fに、一括してSiO膜4を形成することができる
【0071】
[第2実施形態]
図9に、第2実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ200を示す。なお、図9は、積層セラミックコンデンサ200の断面図である。
【0072】
第2実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ200は、上述した第1実施形態の積層セラミックコンデンサ100の構成に、新たな構成を追加した。具体的には、積層セラミックコンデンサ100では、容量素子1の第1主面1Aの全面、第2主面1Bの全面、第1側面1Eの全面、第2側面1Fの全面、第1端面1Cの一部分、第2端面1Dの一部分に、SiO膜4を形成した。積層セラミックコンデンサ200では、このSiO膜4上に、さらに、TiO膜24を形成した。なお、本実施形態においては、SiO膜4上の全面にTiO膜24を形成したが、TiO膜24はSiO膜4上の全面に形成する必要はなく、少なくとも一部分に形成すればよい。
【0073】
SiO膜4上へのTiO膜24の形成は、たとえば、次の方法でおこなうことができる。まず、上述した積層セラミックコンデンサ100の製造方法により、容量素子1の第1主面1Aの全面、第2主面1Bの全面、第1側面1Eの全面、第2側面1Fの全面、第1端面1Cの一部分、第2端面1Dの一部分に、SiO膜4を形成する。次に、再び、治具15a、15bを用意し、SiO膜4が形成された複数の容量素子1を、治具15a、15bの間に保持する。次に、治具15a、15bの間に保持された容量素子1のSiO膜4上に、TiO膜を蒸着させる。そして最後に、治具15a、15bの間に保持された容量素子1を加熱し、蒸着させたTiO膜を定着させて、SiO膜4上へTiO膜24を形成する。
【0074】
SiO膜4は、耐湿性は高いが、溶剤や、めっき液による腐食には弱い場合がある。積層セラミックコンデンサ200は、溶剤や、めっき液による容量素子1(第1内部電極2、第2内部電極3を含む)の腐食を、TiO膜24によって抑制することができる。
【0075】
以上、実施形態にかかる積層セラミックコンデンサ100、200について説明した。しかしながら、本発明が上述した内容に限定されることはなく、発明の趣旨に沿って種々の変更をなすことができる。
【0076】
たとえば、積層セラミックコンデンサ100、200では、容量素子1の第1端面1C、第2端面1Dに、環状に形成されたSiO膜4の非形成部4Nの形状が四角形であったが、非形成部4Nの形状は任意であり、円形や、楕円形や、四角形以外の多角形などであってもよい。
【0077】
また、積層セラミックコンデンサ100、200では、容量素子1の第1主面1Aおよび第2主面1BにもSiO膜4を形成したが、これらのSiO膜4は省略してもよい。
【0078】
また、積層セラミックコンデンサ100、200では、容量素子1の第1側面1Eの全面および第2側面1Fの全面にSiO膜4を形成したが、これらのSiO膜4は、第1内部電極2および第2内部電極3を覆うことができるものであれば、部分的に形成されたものであってもよい。
【0079】
本願発明の一実施態様にかかる積層セラミックコンデンサは、「課題を解決するための手段」の欄に記載したとおりである。
【0080】
この積層セラミックコンデンサにおいて、SiO膜が、第1側面の全面、および、第2側面の全面に形成されることも好ましい。この場合には、容量素子の第1側面、第2側面から、容量素子の内部に、水分が浸入することを、より確実に抑制することができる。
【0081】
SiO膜が、容量素子の第1主面の全面、および、第2主面の全面に形成されることも好ましい。この場合には、SiO膜4で容量素子1を包み込むことができ、SiO膜4が容量素子1に強力に接合される。
【0082】
第1外部電極、および、第2外部電極を取り除き、容量素子の第1端面、または/および、第2端面を見たとき、SiO膜が、第1端面、または/および、第2端面に、環状に形成されることも好ましい。この場合には、第1内部電極と第1外部電極との電気的接合、および、第2内部電極と第2外部電極との電気的接合の劣化を抑制しつつ、容量素子の第1端面、第2端面から、容量素子の内部に、水分が浸入することを抑制することができる。
【0083】
容量素子の第1側面に形成されたSiO膜、および、第2側面に形成されたSiO膜の最大厚さ寸法が、1μm以上、5μm以下であることも好ましい。1μm未満であると、SiO膜の強度や、耐湿性が低下するからである。5μmを超えると、必要以上に大きくなってしまうからである。
【0084】
SiO膜の外表面の少なくとも一部分に、TiO膜が形成されることも好ましい。この場合には、TiO膜によって、溶剤や、めっき液による容量素子(第1内部電極、第2内部電極を含む)の腐食を抑制することができる。
【0085】
第1外部電極の外表面、および、第2外部電極の外表面に、少なくとも1層のめっき層が形成されることも好ましい。たとえば、下地電極層の上に、第1めっき層としてNiめっき層、第2めっき層としてSnめっき層を形成すれば、Niめっき層によってはんだ耐熱性を向上させ、Snめっき層によってはんだ付け性を向上させることができる。
【0086】
本願発明の一実施態様にかかる積層セラミックコンデンサの製造方法は、「課題を解決するための手段」の欄に記載したとおりである。
【0087】
この積層セラミックコンデンサの製造方法において、容量素子の外表面の所望の部分にテトラエトキシシランを含んだ溶液を塗布する工程が、容量素子のSiO膜を形成しない部分にマスキングをしたうえで、テトラエトキシシランを含んだ溶液に容量素子を浸漬する工程であることも好ましい。この場合には、極めて効率的に、容量素子の外表面の所望の部分に、テトラエトキシシランを塗布することができる。
【0088】
容量素子を作製する工程が、未焼成の容量素子を作製する工程と、未焼成の容量素子をバレル研磨する工程と、未焼成の容量素子を焼成する工程をと、を含むことも好ましい。この場合には、容量素子の第1端面、第2端面において、中央領域の高さが、外側領域の高さよりも、高くなる。
【0089】
容量素子を作製する工程よりも後、容量素子の外表面の所望の部分にテトラエトキシシランを含んだ溶液を塗布する工程よりも前に、容量素子をバレル研磨する工程を備えることも好ましい。この場合には、容量素子の第1端面、第2端面において、中央領域の高さが、外側領域の高さよりも、さらに高くなる。
【0090】
容量素子の外表面の所望の部分にSiO膜を形成する工程よりも後、第1外部電極および第2外部電極を形成する工程よりも前に、SiO膜の外表面の少なくとも一部分に、TiO膜を形成する工程を備えることも好ましい。この場合には、TiO膜によって、溶剤や、めっき液による容量素子(第1内部電極、第2内部電極を含む)の腐食を抑制することができる。なお、TiO膜を形成する工程は、たとえば、SiO膜の外表面に、TiO膜を蒸着させ、さらに加熱する工程とすることができる。
【符号の説明】
【0091】
1・・・容量素子
1a・・・セラミック層
2・・・第1内部電極
3・・・第2内部電極
4・・・SiO
5・・・第1外部電極
6・・・第2外部電極
7・・・下地外部電極層
8・・・第1めっき層
9・・・第2めっき層
14・・・テトラエトキシシラン(TEOS)
15a、15b・・・治具(マスキング)
16・・・浴
24・・・TiO
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9