(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118622
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】電磁超音波探触子および電磁超音波探傷装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
G01N29/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021677
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝明
(72)【発明者】
【氏名】大島 佑己
(72)【発明者】
【氏名】大城戸 忍
(72)【発明者】
【氏名】平野 明彦
(72)【発明者】
【氏名】沖田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】福原 良純
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA07
2G047AB01
2G047AC01
2G047BA03
2G047BB01
2G047BC09
2G047BC18
2G047CA02
2G047EA16
2G047EA21
2G047GA09
(57)【要約】
【課題】運転中の原子力プラントの高温配管等のモニタリングに用いる等、高温環境下での利用が検討されており、高温環境で利用可能で、製造コストを抑制できる電磁超音波探触子を提供する。
【解決手段】被検体1に静磁場を形成する磁石11と、被検体1に渦電流を発生させるコイル12とを有する電磁超音波探触子10であって、コイル12は、巻きされた導線12aと、耐熱性を備えた糸状の絶縁体である絶縁糸12bとを備え、絶縁糸12bは、複数巻きされた導線12aの隣合う2本の導線12aの間に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に静磁場を形成する磁石と、前記被検体に渦電流を発生させるコイルとを有する電磁超音波探触子であって、
前記コイルは、複数巻きされた導線と、耐熱性を備えた糸状の絶縁体である絶縁糸とを備え、
前記絶縁糸は、前記複数巻きされた導線の隣合う2本の導線の間に配置されていることを特徴とする電磁超音波探触子。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁超音波探触子であって、
前記コイルは、前記導線が所定の平面上に渦巻き状に巻回された渦巻き部を有することを特徴とする電磁超音波探触子。
【請求項3】
請求項2に記載の電磁超音波探触子であって、
前記被検体と前記コイルの間に配置された第1絶縁膜と、
前記磁石と前記コイルの間に配置された第2絶縁膜とを備えることを特徴とする電磁超音波探触子。
【請求項4】
請求項3に記載の電磁超音波探触子であって、
前記絶縁糸の直径が、前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜の距離から前記導線の半径を減算した値よりも大きいことを特徴とする電磁超音波探触子。
【請求項5】
請求項3に記載の電磁超音波探触子であって、
前記コイルは、前記導線が前記渦巻き部の中央から前記渦巻き部の外径側に延伸する延伸部を有し、
前記渦巻き部と前記延伸部との間には、第3絶縁膜が設けられていることを特徴とする電磁超音波探触子。
【請求項6】
請求項3に記載の電磁超音波探触子であって、
前記コイルには、前記渦巻き部を複数積み重ねた複数層の渦巻き部が設けられ、
前記複数層の渦巻き部は、同じ向きの電流が流れるように電気的に接続され、
前記複数層の渦巻き部の隣合う2層の渦巻き部の間には、第4絶縁膜が設けられていることを特徴とする電磁超音波探触子。
【請求項7】
請求項3に記載の電磁超音波探触子であって、
前記渦巻き部には、前記導線を直線状に配列させた直線部が設けられていることを特徴とする電磁超音波探触子。
【請求項8】
請求項7に記載の電磁超音波探触子であって、
前記渦巻き部が長円形状に形成されていることを特徴とする電磁超音波探触子。
【請求項9】
請求項7に記載の電磁超音波探触子であって、
前記コイルには2つの前記渦巻き部が設けられ、
前記2つの渦巻き部は、平面上で前記直線部が隣合うように配列され、さらに、互いの導線の巻回方向が逆方向であることを特徴とする電磁超音波探触子。
【請求項10】
請求項1に記載の電磁超音波探触子であって、
前記導線が、前記磁石の前記被検体に対向する面に配列されるように、前記磁石に螺旋状に巻回されていることを特徴とする電磁超音波探触子。
【請求項11】
請求項1に記載の電磁超音波探触子であって、
前記絶縁糸が、ガラス繊維により形成されていることを特徴とする電磁超音波探触子。
【請求項12】
請求項3に記載の電磁超音波探触子であって、
前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜が、セラミックシートにより形成されていることを特徴とする電磁超音波探触子。
【請求項13】
請求項1に記載の電磁超音波探触子であって、
前記磁石が、サマリウムコバルト磁石であることを特徴とする電磁超音波探触子。
【請求項14】
請求項1に記載の電磁超音波探触子を有することを特徴とする電磁超音波探傷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁超音波探触子および電磁超音波探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラント等において構成機器の保全は、正常な運転を維持するために重要である。そのため、構成機器を破壊することなく検査できる非破壊検査技術の果たす役割の重要性は高くなっている。
【0003】
特に原子力プラントでは、原子炉圧力容器(RPV)や再循環系配管などの原子炉一次系機器の健全性確保が重要であり、非破壊検査の1つである超音波探傷試験(UT)が実施されている。
【0004】
超音波探傷試験に用いられる超音波探触子として、被検査体に非接触で超音波探傷ができる電磁超音波探触子(EMAT:Electro Magnetic Acoustic Transducer)が知られている。
【0005】
電磁超音波探触子は、電磁気的な作用を利用することで、接触媒質を介することなく直接被検体内に超音波を発生させ伝播させることができ、近年、運転中の原子力プラントの高温配管等のモニタリングに用いる等、高温環境下での利用が検討されている。
【0006】
高温環境下(具体的には製鉄工程の熱間スラブの探傷)で利用される電磁超音波探触子(電磁超音波探傷トランスジューサ)として、特許文献1には、熱遮蔽ケースに収納した絶縁コイルの間に耐熱性樹脂を充填し、前記熱遮蔽ケースをリングガードで覆うとともに、ハウジングを水密接着させたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の電磁超音波探触子は特殊な絶縁コイルを用いているので、製造コストが増加してしまう。すなわち、当該絶縁コイルの形成には、ポリイミド絶縁電線を使用し、これに耐熱性と耐電圧性を付加するためにフッ素樹脂を被覆し、さらに充填された耐熱性樹脂と接合させるため、フッ素衝脂被覆表面部分にプラズマ処理または化学薬品処理を施すことが必要である。
【0009】
本発明の目的は、高温環境で利用可能で、製造コストを抑制できる電磁超音波探触子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、被検体に静磁場を形成する磁石と、前記被検体に渦電流を発生させるコイルとを有する電磁超音波探触子であって、前記コイルは、複数巻きされた導線と、耐熱性を備えた糸状の絶縁体である絶縁糸とを備え、前記絶縁糸は、前記複数巻きされた導線の隣合う2本の導線の間に配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高温環境で利用可能な電磁超音波探触子の製造コストを抑制できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電磁超音波探触子を用いた電磁超音波探傷装置の構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る電磁超音波探触子の構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るコイルの渦巻き部と延伸部との間に設けられた第3絶縁膜の拡大図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る電磁超音波探触子の導線と絶縁糸の線径と、第1絶縁膜と第2絶縁膜の隙間の幅との関係を説明するための断面模式図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る電磁超音波探触子において、コイルの渦巻き部に電流を流した状態の一例を示す断面模式図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る電磁超音波探触子において、超音波によりコイルの渦巻き部に誘導電流が発生する状態の一例を示す断面模式図である。
【
図8】本発明の第2形態に係る電磁超音波探触子の構成を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第2形態に係る電磁超音波探触子の他の構成を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第3形態に係るコイルの斜視図である。
【
図11】本発明の第4形態に係るコイルの斜視図である。
【
図12】本発明の第5実施形態に係る電磁超音波探触子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて、本発明の第1~第5実施形態に係る電磁超音波探触子の構成及び動作について説明する。なお、各図において、同一符号は同一部分を示す。また、図面の各々は、互いに直交するXYZ軸により方向を特定し、+Xを「右」、-Xを「左」、+Yを「後」、-Yを「前」、+Zを「上」、-Zを「下」と規定する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る電磁超音波探触子を用いた電磁超音波探傷装置の構成を示す模式図である。電磁超音波探傷装置100は、原子炉圧力容器(RPV)や再循環系配管等に用いられ高温となる鋼鉄製の部品である被検体1を電磁超音波探触子10により探傷部を検出する装置である。
【0015】
図1に示すように、電磁超音波探傷装置100は、電磁超音波探触子10と、超音波探傷器20と、計算装置30と、表示装置40と、記憶装置50と、入力装置60とを有する。
【0016】
電磁超音波探触子10は、測定対象物である被検体1の表面に配置され、被検体1に対して直接超音波を発生させるとともに被検体1から戻ってきた超音波を検知するセンサーである。
【0017】
超音波探傷器20は、電磁超音波探触子10を制御して波形信号を収録する機器である。超音波探傷器20には、コイル12に信号を出力するパルサ21と、被検体1から戻ってきた超音波を受信するレシーバ22と、レシーバ22で受信した波形信号を収録するデータ収録部23とが設けられている。なお、データ収録部23は、ハードディスクまたはメモリ等の記録装置により構成することが好ましい。
【0018】
計算装置30は、パルサ21によりコイル12へ信号を出力するとともに、超音波探傷器20に収録された波形信号により探傷画像を演算・生成等する装置で、例えばPC(personal computer)を用いることができる。計算装置30には、プログラムを記憶するROM(Read only memory)と、プログラムに従って処理を実行するCPU(Central Processing Unit)が設けられている。
【0019】
表示装置40は、計算装置30で演算された探傷結果を表示する装置、例えばLCD(liquid crystal display:液晶ディスプレイ)であり、計算装置30で生成された探傷画像を表示する。
【0020】
記憶装置50は、計算装置30で演算された探傷結果を保存する装置、例えばRAM(Random Access Memory)を備えた記憶媒体である。記憶装置50には、データ収録部23に収録された波形データや計算装置30で生成された探傷画像が記憶される。
【0021】
入力装置60は、計算装置30に指示を入力し、操作するためのする装置であり、例えばキーボードやマウスである。
【0022】
図2は、第1実施形態に係る電磁超音波探触子10の構成を示す斜視図である。
図2に示すように、電磁超音波探触子10は、マグネット11と、コイル12と、絶縁膜13とを有する。
【0023】
マグネット11は、被検体1に静磁場を形成するための部品、例えば永久磁石であり、熱耐性の高い磁石、例えば、サマリウムコバルト磁石が用いることが好ましい。
【0024】
コイル12は、被検体1の表層に誘導電流を発生させるための部品で、マグネット11の磁化方向に直交する平面に沿って配置されることが好ましい。コイル12は、複数巻きされた導線12aと、耐熱性を備えた糸状の絶縁体である絶縁糸12bとを備える。
【0025】
導線12aは、糸状の電流伝導線、例えば銅線で、被検体1とマグネット11との間の複数巻きされ、超音波探傷器20に、例えば同軸ケーブル14を介して電流的に接続されている。
【0026】
コイル12は、導線12aが所定の平面(例えば、被検体1の表面に沿った平面)上で渦巻き状に巻回された渦巻き部を有することが好ましい。なお、
図2に示す渦巻き部12cの巻き数は、実施形態の一例を示すものであり、これに制限されるものではない。
【0027】
絶縁糸12bは、耐熱性を備えた糸状の絶縁体、例えばガラス繊維により形成された糸で、複数巻きされた導線12aの隣合う2本の導線12aの間に配置されている。複数巻きされた導線12aの隣合う2本の導線12aは、絶縁糸12bによって絶縁され、短絡することを抑制される。
【0028】
即ち、絶縁糸12bは、複数巻きされた導線12a同士の離隔を保つように、導線12aに沿うように形成され、絶縁糸12bにより複数巻きされた導線12a同士は短絡することを抑制される。
【0029】
絶縁膜13は、被検体1とコイル12の間に配置され、被検体1とコイル12とを絶縁する第1絶縁膜13aと、磁石11とコイル12の間に配置され、磁石11とコイル12とを絶縁する第2絶縁膜13bである。第1絶縁膜13aと第2絶縁膜13bは、セラミックシートにより形成されることが好ましく、ガラスシートにより形成されることがさらに好ましい。
【0030】
これらの部品は、電磁超音波探触子10において、
図2に示すように、上方から下方(z軸負方向)に向かって、マグネット11、第1絶縁膜13a、コイル12、第2絶縁膜13bの順に配置されている。なお、
図2は電磁超音波探触子10の構成を明らかにするため、マグネット11と、第1絶縁膜13aと、コイル12と、第2絶縁膜13bとの間隔を大きくして示すものであり、実際の電磁超音波探触子10では各々の間隔は小さい。
【0031】
また、コイル12は、導線12aが渦巻き部12cの中央から渦巻き部12cの外径側に延伸する延伸部12dを有していることが好ましい。延伸部12dは、同軸ケーブル14に電流的に接続する。
【0032】
図3は、本実施形態に係るコイル12の渦巻き部12cと延伸部12dとの間に設けられた第3絶縁膜13cの拡大図である。
【0033】
図3に示すように、渦巻き部12cと延伸部12dの間には、渦巻き部12cの導線12aと延伸部12dとを絶縁するシート状の第3絶縁膜13cが設けられていることが好ましい。なお、第3絶縁膜13cは、第1絶縁膜13aと第2絶縁膜13bと同様に、セラミックシートにより形成されることが好ましく、 ガラスシートにより形成されることがさらに好ましい。
【0034】
なお、
図3において、第3絶縁膜13cがシート状の絶縁膜の実施形態を示した。しかし、これに限定されず、第3絶縁膜13cは延伸部12dにコーティングされた絶縁膜であっても良い。
【0035】
図4は、
図2のA-A断面図である。
図4に示すように、導線12aと絶縁糸12bは、第1絶縁膜13aと第2絶縁膜13bの間に、交互に配置されている。これにより、導線12aは、絶縁糸12bと第1絶縁膜13aと第2絶縁膜13bにより絶縁されている。
【0036】
図5は、本実施形態に係る電磁超音波探触子10の、導線12aの線径d1と、絶縁糸12bの線径d2と、第1絶縁膜13aと第2絶縁膜13bの隙間の距離Dとの関係を説明するための断面模式図である。
【0037】
図5を用いて、隣り合う2つの導線12aの短絡を抑制するための、導線12aの線径d1と、絶縁糸12bの線径d2と、第1絶縁膜13aと第2絶縁膜13bの隙間の距離Dとの関係を説明する。
【0038】
導線12aの線径d1と、絶縁糸12bの線径d2と、第1絶縁膜13aと第2絶縁膜13bの隙間の距離Dとが、
図4のように同一であれば、隣り合う2つの導線12aの短絡は抑制できる。しかし、導線12aの線径d1は、細いものでは数十マイクロメートルであり、第1絶縁膜13aと第2絶縁膜13bの隙間の距離Dが導線12aの線径d1より大きくなってしまう場合がある。さらに絶縁糸12bの線径d2が導線12aの線径d1より小さい場合、隣り合う2つの導線12aが短絡してしまう虞がある。そこで、隣り合う2つの導線12aの短絡を抑制するための条件を以下に検討する。
【0039】
隣り合う2つの導線12aが短絡しないように絶縁糸12bにより隣り合う2つの導線12aを隔てるためには、隣り合う2つの導線12aの断面の中心点Oの間に絶縁糸12bが配置されるようにすればよい。
【0040】
なお、隣り合う2つの導線12aの断面の中心点Oの間に絶縁糸12bを配置させなくても、隣り合う2つの導線12aの間に絶縁糸12bを配置させれば、隣り合う2つの導線12aが接触しない場合もある。しかし、この場合、隣り合う2つの導線12aの最も接近する外周面の間に絶縁糸12bが存在せず、短絡してしまう虞がある。
【0041】
これらのことから、
図5に示す隣り合う2つの導線12aの断面中心点Oを結ぶ線分Lに絶縁糸12bが交わるということを隣り合う2つの導線12aの短絡を抑制するための条件することができる。
【0042】
上記の条件を、
図5を用いて数式に示すと下記の式(1)となる。
【0043】
【0044】
即ち、第1絶縁膜13aと第2絶縁膜13bの隙間の距離Dから、第2絶縁膜13bから導線12aの中心点Oまでの距離d1/2を減算した値(D-d1/2)より、絶縁糸12bの線径d2が大きいことが好ましい。
【0045】
ここで、第1絶縁膜13aと第2絶縁膜13bの間の距離Dが、例えば、導線12aの直径d1の1.5倍となっている場合について計算すると、導線12aの直径d1、絶縁糸12bの直径d2の関係は下記の式(2)となる。
【0046】
【0047】
このことから、第1絶縁膜13aと第2絶縁膜13bの間の距離Dが、導線12aの直径d1の1.5倍となっている場合、絶縁糸12bの直径d2を導線12aの直径d1より大きくしなければならないことがわかる。
【0048】
次に、本実施形態に係る電磁超音波探触子10により被検体1に超音波を発生させる方法を説明する。
図6は、本実施形態に係る電磁超音波探触子10において、コイル12の渦巻き部12cに電流を流した状態の一例を示す断面模式図である。
【0049】
図6に示すように、電磁超音波探触子10では、マグネット11は、磁化方向がz軸方向(上下方向)になるように配置され、磁場は、マグネット11から被検体1に向かって形成されている。
【0050】
また、渦巻き部12cの各導線12aに流れる電流の方向は、上記のとおり渦巻き部12cでは導線12aが被検体1の表面に沿った平面上に渦巻き状に巻回されているため、渦巻き部12cの中央を境に逆向きになっている。なお、
図6は、渦巻き部12cの中央に対して、右側の導線12aでは電流が手前に流れ、左側の導線12aでは電流が後方に流れる実施形態を示す。
【0051】
渦巻き部12cにパルサ21により電流を流すことにより、被検体1の表層には、渦巻き部12cに流れる電流の方向に対して逆方向に流れる渦電流が発生する。そして、渦電流と磁場の相互作用によって、被検体1の表層にはローレンツ力が発生する。
【0052】
そして、渦巻き部12cに流れる電流の方向を経時的に逆転させ、ローレンツ力の方向を経時的に逆転させることで、超音波が発生する。このとき、超音波の振動は、渦電流と磁場の双方に垂直な方向、すなわち、渦巻き部12cの径方向(
図6ではx軸方向)に発生する。
【0053】
また、超音波は、被検体1の表面から被検体1の内部に、3次元かつ等方的に広がる。このとき、下方(
図6に示すz軸負方向)において超音波の位相は一致する。そのため、合成された超音波は平面波となって被検体1内を下方に伝播する。
【0054】
被検体1内を下方に伝播する超音波は、被検体1内部の欠陥(傷や亀裂)や被検体1の裏面等により反射する。電磁超音波探傷装置100は、この反射した超音波を電磁超音波探触子10で検出し、欠陥の有無や板厚等を算出する。
【0055】
図7は、本実施形態に係る電磁超音波探触子10において、超音波によりコイル12の渦巻き部12cに誘導電流が発生する状態の一例を示す断面模式図である。
【0056】
被検体1の裏面で反射してきた超音波により被検体1の表層には、渦巻き部12cの中央に対して左右対称に変位が発生する。(なお、
図7は、一例として、渦巻き部12cの中央に対して、左側に右方向(x軸正方向)の変位、右側に左方向(x軸負方向)の変位が発生した状態を示すものである。)
【0057】
また、超音波の振動は上記のとおり経時的に変化する。そのため、変位の方向は経時的に渦巻き部12cの径方向(
図7ではx軸方向)に連続的に変化する。このとき、変位と磁場の相互作用によって、被検体1の表層には渦電流が発生する。そして、被検体1の表層に発生した渦電流により、コイル12の渦巻き部12cには渦電流に対して逆方向に流れる誘導電流が発生し、レシーバ22に送信される。
【0058】
なお、上記では、超音波を発生させる渦巻き部12cに、反射してきた超音波により誘導電流を発生させ、深傷検出する実施形態を示した。しかし、この実施形態に限定されず、1つの電磁超音波探触子10に、超音波を発生させる渦巻き部12cとは別に、反射してきた超音波により誘導電流を発生させる渦巻き部12cを備えても良い。また、超音波を発生させる渦巻き部12cを有する電磁超音波探触子10とは別に、反射してきた超音波により誘導電流を発生させる渦巻き部12cを有する電磁超音波探触子10を備えても良い。
【0059】
[効果]
本実施形態の電磁超音波探触子では、コイル12が、複数巻きされた導線12aと、耐熱性を備えた糸状の絶縁体である絶縁糸12bとを備え、絶縁糸12bが、複数巻きされた導線12aの隣合う2本の導線12aの間に配置されている。
【0060】
そのため、本実施形態の電磁超音波探触子10では、導線の隣合う2つの導線12aを絶縁する絶縁糸12bが高温環境に置かれても、導線を樹脂で覆うコイルのように溶融する虞がなく、高温環境でも使用可能である。つまり、本実施形態では特許文献1のように特殊な絶縁コイルを用いないので、電磁超音波探触子の製造コストを抑制できる。
【0061】
さらに、特許文献1の電磁超音波探触子では、冷却用の付帯部材を用いているが、本実施形態の電磁超音波探触子10では、冷却用の付帯部材を用いずに高温環境で探傷ができる。
【0062】
また、本実施形態の電磁超音波探触子10では、コイル12は、導線12aが、所定の平面(例えば、被検体1の表面に沿った平面)上に渦巻き状に巻回された渦巻き部12cを有することが好ましい。これにより、被検体1の表層に略均一に渦電流を発生させることができるので、電磁超音波探触子10の検出精度を高めることができる。
【0063】
また、本実施形態の電磁超音波探触子10では、被検体1とコイル12との間に配置された第1絶縁膜13aと、磁石11とコイル12との間に配置された第2絶縁膜13bとを備えることが好ましい。これにより、コイル12は被検体1と磁石11とから絶縁され、コイル12が被検体1と磁石11とに短絡することを抑制できる。
【0064】
また、本実施形態の電磁超音波探触子10では、絶縁糸12bの直径d2が、第1絶縁膜13aと第2絶縁膜13bの距離Dから導線12aの半径d1/2を減算した値よりも大きいことが好ましい。これにより、第1絶縁膜13aと第2絶縁膜13bの間に配置された隣り合う2つの導線12aの断面の中心点Oの間に、絶縁糸12bを配置させることができるので、隣り合う2つの導線12aの短絡を抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態の電磁超音波探触子10では、コイル12は、導線12aが渦巻き部12cの中央から渦巻き部12cの外径側に延伸する延伸部12dを有し、渦巻き部12cと延伸部12dとの間には、第3絶縁膜13cが設けられていることが好ましい。これにより、渦巻き部12cと延伸部12dとの短絡を抑制できるので、電磁超音波探触子10の検出精度の低下を抑制できる。
【0066】
また、本実施形態の電磁超音波探触子10は、絶縁糸12bが、ガラス繊維により形成されていることが好ましい。ガラス繊維は耐熱性に優れるので、電磁超音波探触子10は高温環境でも使用できる。
【0067】
本実施形態の電磁超音波探触子10では、第1絶縁膜13aと第2絶縁膜13bが、セラミックシートにより形成されていることが好ましい。セラミックシートは耐熱性に優れるので、電磁超音波探触子10は高温環境でも使用できる。
【0068】
また、本実施形態の電磁超音波探触子10では、磁石(マグネット11)が、サマリウムコバルト磁石であることが好ましい。サマリウムコバルト磁石は耐熱性に優れるので、電磁超音波探触子10は高温環境でも使用できる。
【0069】
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2形態に係る電磁超音波探触子の構成を示す斜視図である。また、
図9は、本発明の第2形態に係る電磁超音波探触子の他の構成を示す斜視図である。
【0070】
本実施形態に係る電磁超音波探触子210が第1実施形態に係る電磁超音波探触子10と異なる点は、次のとおりである。即ち、本実施形態に係る電磁超音波探触子210のコイル211には、渦巻き部212を複数積み重ねた複数層の渦巻き部212が設けられ、複数層の渦巻き部212は同じ向きの電流が流れるように接続され、複数層の渦巻き部212の隣合う2層の渦巻き部212の間には、第4絶縁膜213が設けられている。なお、第4絶縁膜213は、第1絶縁膜13aと第2絶縁膜13bと同様に、セラミックシートにより形成されることが好ましく、ガラスシートにより形成されることがさらに好ましい。
【0071】
このように構成された複数層の渦巻き部212では、第4絶縁膜213によって、隣合う2層の渦巻き部212が絶縁されるとともに、複数層の渦巻き部12cの各々が同じ向きの磁場を形成させる。
【0072】
図8は、2層の渦巻き部212を備える電磁超音波探触子210を示す。
図8に示すように、2層の渦巻き部212を備える電磁超音波探触子210は、上方から下方(z軸負方向)に向かって、マグネット11、第2絶縁膜13b、第1渦巻き部212a、第4絶縁膜213、第2渦巻き部212b、第1絶縁膜13aを備える。
【0073】
第1渦巻き部212aでは、同軸ケーブル14に電気的に接続する導線12aが、所定の平面(例えば、第2絶縁膜13bに沿った平面)上に、外周側から中央に向かって所定の巻回方向(
図8では時計回り)に渦巻き状に巻回されている。第1渦巻き部212aの中央の導線12aは、第4絶縁膜213に設けられた貫通孔213aを介して、下方の第1絶縁膜13a上に延伸し、第2渦巻き部212bに電気的に接続する。
【0074】
第2渦巻き部212bでは、第1渦巻き部212aと接続する導線12aが、所定の平面(例えば、第1絶縁膜13aに沿った平面)上に、中央から外周側に向かって第1渦巻き部212aと同じ巻回方向(時計回り)に渦巻き状に巻回されている。これにより、第1渦巻き部212aと第2渦巻き部212bには同じ向きの電流が流れ、同じ向きの磁場を形成させる。
【0075】
図9は、3層の渦巻き部212を備える電磁超音波探触子210を示す。
図9に示すように、3層の渦巻き部212を備える電磁超音波探触子210は、上方から下方(z軸負方向)に向かって、マグネット11、第2絶縁膜13b、第1渦巻き部212a、第4絶縁膜213、第2渦巻き部212b、第4絶縁膜213、第3渦巻き部212c、第1絶縁膜13aを備える。
【0076】
第1渦巻き部212aでは、同軸ケーブル14に接続する導線12aが、所定の平面(例えば、第2絶縁膜13bに沿った平面)上に、外周側から中央に向かって所定の巻回方向(
図9では時計回り)に渦巻き状に巻回されている。第1渦巻き部212aの中央の導線12aは、第4絶縁膜213の中央に設けられた貫通孔213aを介して、下方の第4絶縁膜213上に延伸し、第2渦巻き部212bに電気的に接続する。
【0077】
第2渦巻き部212bでは、第1渦巻き部212aの中央と電気的に接続する導線12aが、所定の平面(例えば、第4絶縁膜213に沿った平面)上に、中央から外周側に向かって第1渦巻き部212aと同じ巻回方向(時計回り)に渦巻き状に巻回されている。第2渦巻き部212bの外周側の導線12aは、第4絶縁膜213の辺縁に設けられた貫通孔213bを介して、下方の第1絶縁膜13a上に延伸し、第3渦巻き部212cに電気的に接続する。
【0078】
第3渦巻き部212cでは、第2渦巻き部212bの外周側と電気的に接続する導線12aが、所定の平面(例えば、第1絶縁膜13aに沿った平面)上に、外周側から中央に向かって第1渦巻き部212a及び第2渦巻き部212bと同じ巻回方向(時計回り)に渦巻き状に巻回されている。第3渦巻き部212cの中央の導線12aは、第3渦巻き部212cの外径側に延伸する延伸部12dを介して同軸ケーブル14に電流的に接続する。
【0079】
これにより、第1渦巻き部212aと第2渦巻き部212bと第3渦巻き部212cとには同じ向きの電流が流れ、同じ向きの磁場を形成させる。
【0080】
なお、複数層の渦巻き部212が
図8に示す2層の渦巻き部212のように偶数層の場合、同軸ケーブル14に電気的に接続する2本の導線12aは、渦巻き部212の外径側に配置されるため、延伸部12dと第3絶縁膜13cを設ける必要がない。一方、複数層の渦巻き部212が
図9に示す3層の渦巻き部212のように奇数層の場合、同軸ケーブル14と電気的に接続する2本の導線12aの一方は、渦巻き部212の中央に配置されるため、延伸部12dと第3絶縁膜13cを設ける必要がある。
【0081】
[効果]
本実施形態の電磁超音波探触子210のコイル211では、渦巻き部212を複数積み重ねた複数層の渦巻き部212が設けられ、複数層の渦巻き部212は同じ向きの電流が流れるように電気的に接続され、複数層の渦巻き部212の隣合う2層の渦巻き部212の間には、第4絶縁膜213が設けられていることが好ましい。これにより、被検体1の表層に発生する渦電流を大きくすることができ、被検体1に発生する超音波を大きくすることができるので、電磁超音波探触子210の検出精度を高めることができる。
【0082】
(第3実施形態)
図10は、本発明の第3実施形態に係るコイル311の斜視図である。本実施形態に係るコイル311が第1実施形態に係るコイル12と異なる点は、渦巻き部312に直線部313を備える点である。
【0083】
即ち、第1実施形態に係るコイル12の渦巻き部12cと異なり、本実施形態に係るコイル311の渦巻き部312には、導線12aを直線状に配列させた直線部313が設けられている。
【0084】
具体的には、
図10に示すように、本実施形態に係るコイル311は、長円形状に形成され、2つの直線部313を備える。なお、コイル311は、長方形状に形成されてもよい。
【0085】
[効果]
実施形態1の渦巻き部12cは、直線部313を備えず、円形状に形成されているので、被検体1の表層には渦巻き部12cに流れる電流とは逆向きの円形状の渦電流が発生する。ローレンツ力は、渦電流と磁場に直交する方向に発生するため、渦巻き部12cの径方向に発生する。また、超音波はローレンツ力により発生し、被検体1の表層には、超音波の振動が放射状に励振される。
【0086】
一方、本実施形態の渦巻き部312は、導線12aを直線状に配列された直線部313を備える。直線部313に対向する被検体1の表層には、直線部313に流れる電流とは逆向きに直線状の誘導電流が発生する。ローレンツ力は、誘導電流と磁場に直交する方向に発生するため、被検体1の表層に直線部313に直交する方向に発生する。また、超音波はローレンツ力により発生し、被検体1の表層には、超音波の振動が、直線部313に直交する方向に直線部313の幅L1の範囲に励振される。つまり、超音波の振動が同一方向の検出範囲が得られる電磁超音波探触子を作製できる。
【0087】
(第4実施形態)
図11は、本発明の第4実施形態に係るコイル411の斜視図である。本実施形態に係るコイル411が第3実施形態に係るコイル311と異なる点は、渦巻き部412の数である。
【0088】
即ち、第3実施形態に係るコイル311は、長円形状に形成された渦巻き部312を1つ備える。それに対し、本実施形態に係るコイル411は、長円形状に形成された渦巻き部412を2つ備える。そして、2つの渦巻き部412は、平面上に直線部413(第1直線部413aと第3直線部413c)が隣合うように配列される。さらに、2つの渦巻き部412は、隣合う直線部413(第1直線部413aと第3直線部413c)の導線12aが電気的に接続するとともに、互いの導線12aの巻回方向が逆方向である。なお、コイル411は、長方形状に形成された渦巻き部を2つ備えてもよい。
【0089】
図11を用いて以下に、本実施形態に係るコイル411について詳細に説明する。コイル411は、第1渦巻き部412aと第2渦巻き部412bと第1延伸部414aと第2延伸部414bとを備える。
【0090】
第1渦巻き部412aは、第1直線部413aと第2直線部413bを備え、第2渦巻き部412bは、第3直線部413cと第4直線部413dとを備える。
【0091】
第1渦巻き部412aと第2渦巻き部412bとは、(同一)平面上に第1直線部413aと第3直線部413cとが隣合うように配列され、第1直線部413aと第3直線部413cの導線12aが電気的に接続するとともに、互いの導線12aの巻回方向が逆方向(
図11では、第1渦巻き部412aは反時計回りで第2渦巻き部412bは時計回り)である。これにより、第1直線部413aと第3直線部413cとには同じ向きの電流が流れる。
【0092】
第1延伸部414aは、第1渦巻き部412aの中央から第1渦巻き部412aの外径側に延伸し、同軸ケーブル14に電気的に接続する。また、第2延伸部414bは、第2渦巻き部412bの中央から第2渦巻き部412bの外径側に延伸し、同軸ケーブル14に電気的に接続する。
【0093】
第1渦巻き部412aと第1延伸部414aとの間には、第3絶縁膜13cが設けられ、第1渦巻き部412aと第1延伸部414aを絶縁する。また、第2渦巻き部412bと第2延伸部414bの間にも、第3絶縁膜13cが設けられ、第2渦巻き部412bと第2延伸部414bとを絶縁する。
【0094】
[効果]
本実施形態に係るコイル411には、長円形状に形成された2つの渦巻き部412が設けられ、2つの渦巻き部412は、平面上で直線部413(第1直線部413aと第3直線部413c)が隣合うように配列され、さらに、互いの導線12aの巻回方向が逆方向であることが好ましい。
【0095】
これにより、隣合う直線部413には同じ向きの電流が流れるので、隣合う直線部413に対向する被検体1の表層には、超音波の振動が、隣合う直線部413に直交する方向に縦幅Lyの範囲に励振される。つまり、超音波の振動が同一方向の検出範囲が得られる電磁超音波探触子を作製できる。
【0096】
また、隣合う直線部413(第1直線部413aと第3直線部413c)の横幅Lxは、第3実施形態の直線部313の横幅Lxよりも広いので、電磁超音波探触子の検出範囲を第3実施形態より広げることができる。
【0097】
(第5実施形態)
図12は、本発明の第5実施形態に係る電磁超音波探触子510の斜視図である。本実施形態に係る電磁超音波探触子510が第1実施形態に係る電磁超音波探触子10と異なる点は、導線12aが複数巻きされる場所と導線12aの巻き方である。
【0098】
即ち、第1実施形態に係るコイル12では、導線12aが被検体1とマグネット11の間の所定の平面上に渦巻き状に巻回されている。それに対し、本実施形態に係るコイル512では、導線12aがマグネット511に螺旋状に巻回されている。
【0099】
次に、
図12を用いて、本実施形態に係る電磁超音波探触子510を詳細に説明する。電磁超音波探触子510は、角柱状のマグネット511と、マグネット511を覆う絶縁膜513と、絶縁膜513を介してマグネット511に螺旋状に巻回されたコイル512と、第1絶縁膜13a(図示せず)とを備える。また、コイル512は、螺旋状に巻回された導線12aと、隣合う2本の導線12aの間に配置された絶縁糸12bを備える。なお、絶縁膜513は、第1絶縁膜13aと第2絶縁膜13bと同様に、セラミックシートにより形成されることが好ましく、ガラスシートにより形成されることがさらに好ましい。
【0100】
導線12aは、マグネット511の被検体1に対向する面に配列されるように、マグネット511に螺旋状に巻回されていることが好ましい。これにより、マグネット511の被検体1に対向する面には、複数の導線12aが直線状に配列された直線部512aが形成され、直線部512aには同じ向きの電流が流れる。
【0101】
なお、絶縁膜513は、マグネット511の導線12aが巻かれた面のみを覆うことが好ましい。また、絶縁膜513を介してマグネット511に螺旋状に巻回されたコイル512をさらに絶縁膜513で覆い、コイル512をさらに螺旋状に巻回し、被検体1とマグネット11との間に複数の層の直線部512aを設けても良い。
【0102】
[効果]
本実施形態では、導線12aがマグネット511の被検体1に対向する面に配列されるように、マグネット511に螺旋状に巻回さているので、マグネット511の被検体1に対向する面には、直線部512aが形成される。そして、直線部512aには、電流が同じ向きに流れ、同じ向きのローレンツ力が発生する。
【0103】
ローレンツ力により超音波が発生し、被検体1の表層には、超音波の振動が、直線部512aに直交する方向に直線部512aの幅Lyの範囲に励振される。したがって、本実施形態では、超音波の振動は、一方向にのみ励振され、他の実施形態のように異なる方向に励振されることを抑制できる。つまり、被検体1の形状に適合する電磁超音波探触子を作製できる。
【0104】
また、被検体1に対向するマグネット511の対向面を覆うように直線部512aを設けることができるので、検出できない部分を減少できる。これにより、本実施形態は、電磁超音波探触子の被検体1に対向する対向面において、探傷部を有効に検出する有効検出面積を他の実施形態よりも増加させることができるので、超音波探触子を小型化できる。
【0105】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0106】
なお、本発明の実施形態は、以下の態様であってもよい。上記実施形態では、ローレンツ力を用いて検出するローレンツ型超音波探触子を示した。しかし、これに限定されず、磁性体の磁歪効果を利用した磁歪型超音波探触子にも適応することができる。
【0107】
また、上記の実施形態は、高温環境で動作可能な電磁超音波探触子の基本的な構成を示しているものであり、例えば、マグネットにより発生する磁場の向きや発生する超音波の振動方向、偏向方向、超音波探傷条件として送受信する超音波の波形や周波数、探傷結果の表示方法などは限定されるものではない。また、各装置構造あるいは手法を限定するものではなく、同一の効果が得られる他の構造あるいは手法に置き換えて良い。
【符号の説明】
【0108】
1…被検体、10,210,510…電磁超音波探触子、11,511…マグネット、12,211,311,411,512…コイル、12a…導線、12b…絶縁糸、12c、212,312,412…渦巻き部、212a,412a…第1渦巻き部、212b,412b…第2渦巻き部、212c…第3渦巻き部、12d…延伸部、13,513…絶縁膜、13a…第1絶縁膜、13b…第2絶縁膜、13c…第3絶縁膜、213…第4絶縁膜、313,413,512a…直線部、100…電磁超音波探傷装置