(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118631
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】陶器の流通管理鑑定システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0601 20230101AFI20230818BHJP
【FI】
G06Q30/06 322
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022032990
(22)【出願日】2022-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】522083558
【氏名又は名称】福島 英忠
(72)【発明者】
【氏名】福島 英忠
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB24
(57)【要約】
【課題】簡易で鑑定精度の高い陶器の鑑定、流通管理システムを提供することにより、陶器の作品のデータベースを充実させ、陶器のインターネット商取引を拡大する。
【解決手段】陶器の作品7の3次元形状などの撮像情報やブランド情報などの作品情報を記憶し、販売用情報として使用すると共に、購入者12からの鑑定要求がある場合には、作品情報の一部の情報である鑑定問合せ情報を元に鑑定し、デジタル鑑定書14を表示、発行することにより、簡易で高精度の鑑定ができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陶器の流通システムにおいて、制作された作品の3次元形状などを流通前に撮像する撮像部と、撮像された撮像情報を作品情報の一つとして記憶する記憶部と、前記作品の制作に関連する付帯情報を前記作品情報に追加する入力制御部を有し、
前記入力制御部は、更に前記作品が制作された地域や制作方法などの情報をブランド情報として前記作品情報に追加し、販売情報表示部は前記記憶部に記憶された前記撮像情報、前記付帯情報、前記ブランド情報を含む前記作品情報を元に販売に必要な販売用情報を作成、表示し、
前記作品の流通後、鑑定要求がある場合には、前記作品情報のうちの一部の情報である鑑定問合せ情報を元に、問い合わせのあった、問合せ作品の真贋を判定し、デジタル鑑定書を表示、発行する判定部を備えた、
陶器の流通管理、鑑定システム。
【請求項2】
前記撮像情報には前記作品の3次元形状の情報である肉厚と体積を含み、前記入力制御部は前期付帯情報として測定された重量と前記撮像情報の前記体積を元に前記作品の密度を算出し、
前記ブランド情報には作家と釉薬を含む材料の情報を含み、
前記問合せ作品の前記鑑定問合せ情報には、2次元外形形状と重量を含む、
請求項1に記載の陶器の流通管理、鑑定システム。
【請求項3】
前記撮像情報はX線CT装置を用いて撮像された、
請求項1又は2に記載の陶器の流通管理、鑑定システム。
【請求項4】
前記作品あるいは収納箱には、前記作品を識別する前記作品情報の識別番号が記憶されたICタグを付着し、
前記作品の流通後、デジタル鑑定書の発行を依頼する場合には、前記問合せ作品の前記識別番号を入力するか、あるいは、前記問合せ作品の前記ICタグに記憶された前記識別番号を読みとり、前記記憶部に記憶された該当作品の前記作品情報を元に、前記デジタル鑑定書を表示、発行する判定部を備えた、
請求項1~3のいずれかに記載の陶器の流通管理、鑑定システム。
【請求項5】
前記ICタグの表面には前記ブランド情報が印字されることを特徴とする、
請求項4に記載の陶器の流通管理、鑑定システム。
【請求項6】
鑑定要求がある場合には、前記問合せ作品の3次元形状などを流通後に撮像する第2の撮像部により撮像された第2の撮像情報と前記鑑定問合せ情報を元に、前記判定部は、問合せ作品の真贋を判定し、デジタル鑑定書を表示、発行する、
請求項1又は2に記載の陶器の流通管理、鑑定システム。
【請求項7】
制作された作品の3次元形状などを流通後に撮像する撮像部を有し、記憶部は撮像された撮像情報を作品情報の一つとして記憶し、
鑑定要求がある場合には、前記作品情報のうちの一部の情報である鑑定問合せ情報、又は、前記撮像部と同様な方法により、第2の撮像部で撮像された第2の撮像情報と前記鑑定問合せ情報を元に、問合せ作品の真贋を判定し、デジタル鑑定書を表示、発行する判定部を備えた、陶器の流通管理、鑑定システム。
【請求項8】
制作された作品の3次元形状などを流通前または流通後に撮像するステップと、撮像された撮像情報を作品情報の一つとして記憶するステップと、前記作品の制作に関連する付帯情報を前記作品情報に追加するステップを有し、
更に前記作品が制作された地域や制作方法などの情報をブランド情報として前記作品情報に追加するステップと、前記記憶部に記憶された前記撮像情報、前記付帯情報、前記ブランド情報を含む前記作品情報を元に販売に必要な販売用情報を作成、表示するステップを有し、
鑑定要求がある場合には、前記作品情報のうちの一部の情報である鑑定問合せ情報、又は、前記撮像部と同様な方法で撮像された第2の撮像情報と前記鑑定問合せ情報を元に、問合せ作品の真贋を判定し、デジタル鑑定書を表示、発行するステップを備えた、
陶器の流通管理、鑑定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一品一品手作りで造形される陶器において、作品の真贋を判定する陶器の流通管理、鑑定システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陶磁器などを含む美術品において、著名な作家の作品の真贋を鑑定する際には、過去の作品制作時代の歴史的な経緯などの専門的知識を持つ鑑定者が、その作品と作品が収納されている収納箱などの情報に基づいてその作品の真贋を鑑定することが多い。(特許文献1、2)しかしながら、それらの真贋鑑定において、それらの作品の作家を特定して、客観的な査定をおこなうことは難しく、又手続きも複雑なため、鑑定書を用いた作品の流通は一部の高価な作品に限られている。
【0003】
絵画、彫刻、工業品などの美術品の内、優れた美術品の画像などの登録情報を記録する情報管理システムがあり、登録機関に登録された美術品の作者、美術品の仕様、寸法、重量、材料などを含んだ登録情報、及び登録後の履歴情報を確認することができる。(特許文献3)登録情報として美術品の画像データも記録されるが、美術品が複製された場合などにおいては、登録美術品であるかの真贋を判定する鑑定をおこなうことはできない。
【0004】
美術品の鑑定において、作品と作家が特定できる情報をあらかじめ記録し、鑑定する作品の情報をあらかじめ記録された情報と照合して真贋を判定することにより、鑑定の精度を高めることができる。美術品の中でも陶器は一品一品手作りで造形され、作品形状の自由度は高い。産業用X線CT装置は、この様な作品の内部構造や寸法を明らかにし、形状を3次元の数値データとして記録できる。(特許文献4)産業用X線CT装置を陶器などの作品の鑑定に使用すれば、真贋の判定精度を高めることができるが、作品の鑑定の都度、産業用X線CT装置を用いて確認することは、費用と時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-146272号公報
【特許文献2】特開2020-155022号公報
【特許文献3】特開2002-109143号公報
【特許文献4】特開2000-298106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方日本には、
図10に示すように伝統的工芸品の指定を受けた産地を含む多くの陶芸産地があり、各々の地域の作家(制作者、陶芸作家)がその地域の伝統に基づいた独創的な陶芸作品を制作している。
【0007】
また近年陶磁器においてもインターネットを用いた商取引が始まっているが、陶芸産地(陶芸地域ブランド)と作家、作品を網羅した一元的なデータベースが確立しているとは言えず、陶芸地域ブランドと作家を体系的に知る機会は少なく、購入者は実際に作品を見たことのある作家の作品を中心に購入の検討をすることが多い。陶磁器のインターネット商取引を拡大するためには、陶芸地域ブランドと作家、作品を網羅したデータベースを更に充実させることが望ましい。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、費用と時間をかけずに簡易に、作品の鑑定精度の高い鑑定が可能な陶器の流通管理、鑑定システムおよび鑑定方法を提供し、これにより陶芸地域ブランドと作家、作品を網羅したデータベースを更に充実させて、陶磁器のインターネット商取引での作品の信用と陶芸産地の価値を高め、陶磁器のインターネット商取引を拡大することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る陶器の流通管理、鑑定システムは、制作された作品の3次元形状などを流通前に撮像する撮像部と、撮像された撮像情報を作品情報の一つとして記憶する記憶部と、前記作品の制作に関連する付帯情報を前記作品情報に追加する入力制御部を有し、前記入力制御部は、更に前記作品が制作された地域や制作方法などの情報をブランド情報として前記作品情報に追加し、販売情報表示部は前記記憶部に記憶された前記撮像情報、前記付帯情報、前記ブランド情報を含む前記作品情報を元に販売に必要な販売用情報を作成、表示し、前記作品の流通後、鑑定要求がある場合には、前記作品情報のうちの一部の情報である鑑定問合せ情報を元に、問い合わせのあった、問合せ作品の真贋を判定し、デジタル鑑定書を表示、発行する判定部を備える。
【0010】
好ましくは、前記撮像情報には前記作品の3次元情報である肉厚と体積を含み、前記入力制御部は前期付帯情報として測定された重量と前記撮像情報の前記体積を元に前記作品の密度を算出し、前記ブランド情報には作家と釉薬を含む材料の情報を含み、前記問合せ作品の前記鑑定問合せ情報には、2次元外形形状と重量を含む。
【0011】
好ましくは、前記撮像情報はX線CT装置を用いて撮像される。
【0012】
好ましくは、本発明に係る陶器の流通管理、鑑定システムは、制作された作品の3次元形状などを流通後に撮像する撮像部を有し、記憶部は撮像された撮像情報を作品情報の一つとして記憶し、鑑定要求がある場合には、前記作品情報のうちの一部の情報である鑑定問合せ情報、又は、前記撮像部と同様な方法により、第2の撮像部で撮像された第2の撮像情報と前記鑑定問合せ情報を元に、問合せ作品の真贋を判定し、デジタル鑑定書を表示、発行する判定部を備える。
【0013】
好ましくは、制作された作品の3次元形状などを流通前または流通後に撮像するステップと、撮像された撮像情報を作品情報の一つとして記憶するステップと、前記作品の制作に関連する付帯情報を前記作品情報に追加するステップを有し、更に前記作品が制作された地域や制作方法などの情報をブランド情報として前記作品情報に追加するステップと、前記記憶部に記憶された前記撮像情報、前記付帯情報、前記ブランド情報を含む前記作品情報を元に販売に必要な販売用情報を作成、表示するステップを有し、鑑定要求がある場合には、前記作品情報のうちの一部の情報である鑑定問合せ情報、又は、前記撮像部と同様な方法で撮像された第2の撮像情報と前記鑑定問合せ情報を元に問合せ作品の真贋を判定し、デジタル鑑定書を表示、発行するステップを備えた、陶器の流通管理、鑑定方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、費用と時間をかけずに簡易に、作品の鑑定精度の高い鑑定が可能であり、これにより陶芸地域ブランドと作家、作品を網羅したデータベースを更に充実させて、陶磁器のインターネット商取引を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に基づく陶器の流通管理、鑑定システム1の全体構成を示す説明図である。
【
図2】実施形態に基づく陶器の流通管理、鑑定システム1の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態の管理システム2に記憶される作品情報の例を示す図である。
【
図5】実施形態の鑑定問合せ情報の例を示す図である。
【
図6】実施形態に基づく陶器の流通管理、鑑定システム1への作品情報の登録について説明するフロー図である。
【
図7】実施形態に基づく陶器の流通管理、鑑定システム1への販売情報の作成について説明するフロー図である。
【
図8】実施形態に基づく、鑑定問合せ情報による鑑定問い合わせについて説明するフロー図である。
【
図9】実施形態に基づく、3次元外形形状を含む第2の撮像情報による鑑定問い合わせについて説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付して、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態に基づく陶器の流通管理、鑑定システム1の構成を説明する図である。この図において、管理システム2は、陶器の流通管理、鑑定システム1のサーバコンピュータであり、撮像装置4と入力端末5に接続されている。管理システム2は、インターネット等のネットワーク3を介して、1又は複数の顧客端末11と第2の撮像装置6に接続され、通信可能である。
【0018】
管理システム2は、陶器の流通管理、鑑定システム1において、例えば、撮像装置4と入力端末5により入力され、管理システム2に送信された作者8により制作された陶器の作品7に関する作品情報を記憶し、これらの情報を元に販売に必要が販売情報を作成し、ネットワーク3を介して顧客端末11に通知する。管理システム2は、顧客端末11からの鑑定要求により発信された鑑定問合せ情報を受信し、記憶された作品情報と鑑定問合せ情報を照合し、真贋を判定する。
【0019】
撮像装置4は、管理システム2に接続され、通信可能である。撮像装置4は、作者8により制作された作品7の3次元形状などを撮像する撮像機能を備え、撮像した作品7の撮像情報を管理システム2に送信する。
【0020】
撮像装置4は、例えば、3次元形状測定器や、産業用に用いられるX線CT装置などである。3次元形状測定器は、袋状ではない開口形状の作品7を計測し、肉厚や体積を含む形状を3次元の数値データとして記憶できる。産業用X線CT装置は、袋状などの複雑な形状の作品7の内部構造や寸法を明らかにし、作品7の肉厚や体積を含む形状を3次元の数値データとして記憶できる。撮像装置4により得られた作品7の肉厚や体積を含む撮像情報は、撮像装置4から管理システム2に記憶される。
【0021】
入力端末5は、管理システム2に接続され、通信可能である。入力端末5は、例えば、デスクトップパソコンやワークステーションなどの固定端末などにより、構成されている。作品7の制作に関連する付帯情報や、作品7が制作された地域や制作方法などの情報であるブランド情報は、入力端末5から入力され、管理システム2に送信される。
【0022】
顧客端末11は、例えば、デスクトップパソコンやワークステーションなどの固定端末や、携帯端末、スマートフォン、タブレット端末などの可搬型端末などにより、構成され、インターネット等のネットワーク3を介して、管理システム2に接続され、通信可能である。陶器の購入者12は、問い合わせしたい作品(以下、問合せ作品13)の鑑定やデジタル鑑定書の発行を要求する場合は、顧客端末11により、管理システム2に伝える。顧客端末11は、2次元形状や重量などを鑑定問合せ情報として管理システムに送信する。
【0023】
第2の撮像装置6は、インターネット等のネットワーク3を介して、管理システム2に接続され、通信可能である。第2の撮像装置6は問合せ作品13の3次元形状などを、撮像装置4と同様な方法により撮像する撮像機能を備え、購入者12が問合せ作品13の鑑定を要求する場合は、撮像した問合せ作品13の第2の撮像情報を管理システム2に送信する。
【0024】
図2は、本発明の実施形態に基づく陶器の流通管理、鑑定システム1の構成を説明するブロック図である。管理システム2は、入力制御手段21、出力制御手段22、記憶手段23、販売情報表示手段24、判定手段25を備えている。管理システム2の記憶手段23は、撮像装置4により撮像され、管理システム2に送信された、作品7の撮像情報を作品情報の一つとして記憶する。
【0025】
管理システム2の入力制御手段21は、入力端末5により入力され、管理システム2に送信された、作品7の制作に関連する付帯情報と、作品7が制作された地域や制作方法などの情報であるブランド情報を、作品情報に追加する。送信される付帯情報には、作品7の重量を含む。入力制御手段21は、撮像情報の一つである作品7の体積と付帯情報の一つである作品7の重量より、作品7の密度を算出する。記憶手段23は、入力制御手段21により算出された作品7の密度を含む付帯情報とブランド情報を、作品7の作品情報として記憶する。入力制御手段21は、撮像装置4、入力端末5、顧客端末11、第2の撮像装置6から送信された情報を受信し、記憶手段23や判断手段25に送信する。記憶手段23は、受信した情報を記憶する。
【0026】
管理システム2の販売情報表示手段24は、記憶手段23に記憶された作品7の撮像情報、付帯情報、ブランド情報を含む作品情報を元に、販売に必要な販売用情報を作成する。作成された販売情報は、管理システム2の出力制御手段22により、例えば、ネットワーク3を介して顧客端末11に送信され、表示される。出力制御手段22は、管理システム2の出力を制御する。
【0027】
管理システム2の判定手段25は、陶器の購入者12からの鑑定要求がある場合には、顧客端末11からネットワーク3を介して管理システム2に送信された、問合せ作品13の、作品情報のうちの一部の情報である鑑定問合せ情報と、事前に記憶手段23に記憶された作品情報とを対比、照合して、問い合わせのあった作品の真贋を判定する。問合せ作品13の鑑定問合せ情報と事前に記憶された作品7の作品情報とが一致する場合には、
判定手段25は、デジタル鑑定書14を表示、発行する。作成されたデジタル鑑定書14は、管理システム2の出力制御手段22により、例えば、ネットワーク3を介して顧客端末11に送信され、表示される。
【0028】
管理システム2の判定手段25は、陶器の購入者12からの鑑定要求がある場合には、問合せ作品13の3次元形状などを撮像する第2の撮像部により撮像された第2の撮像情報と鑑定問合せ情報を含む作品情報と、事前に記憶手段23に記憶された作品情報とを対比、照合して、問合せ作品13の真贋を判定する。問合せ作品13の鑑定問合せ情報と事前に記憶された作品7の作品情報とが一致する場合には、判定手段25は、デジタル鑑定書14を表示、発行する。作成されたデジタル鑑定書14は、管理システム2の出力制御手段22により、例えば、ネットワーク3を介して顧客端末11に送信され、表示される。
【0029】
図3は、本実施形態の管理システム2に記憶される作品情報を示す図である。
図3(a)において、作品情報は、撮像情報、付帯情報、ブランド情報により構成される。作品情報は、作者8により制作された作品7に関する情報であり、鑑定をおこなう時の作品7の元となる情報であり、管理システム2の記憶手段23に記憶される。撮像情報、付帯情報、ブランド情報それぞれには、作品7共通の識別番号10が含まれ、識別番号10は作品7の識別に用いられる。
【0030】
図3(b)は、作品情報の一つである撮像情報の例を示す図である。撮像情報は、作品7の肉厚を含む3次元形状と体積などである。撮像情報は、撮像装置4により撮像された、作品7の各部の肉厚を含む形状や体積を3次元の数値データとして記憶した情報で、作品7の形状を識別するために用いられる。撮像情報は、作品7の撮像装置4により撮像され、管理システム2に送信された後、記憶手段23に記憶される。
【0031】
図3(c)は、作品情報の一つである付帯情報の例を示す図である。付帯情報は、作品7の作家(制作者)、制作年月日、情報の入力年月日、重量、密度、色彩などである。付帯情報は、作品の制作に関連する情報で、作品7を識別するために用いられる。作品7の重量は、別に定められる図示しない計量器により計測され、入力端末5により入力される。入力制御手段21は、撮像情報の一つである作品7の体積と付帯情報の一つである作品7の重量より、作品7の密度を算出する。陶器は一品一品手作りで造形され、作品形状の自由度は高い。また、材料として密度の異なる種々の陶土や釉薬が使用され、それらの厚さや構成量も一定ではないので、作品全体の密度は一定ではない。作品の密度を算出することにより、作品7をより高精度で識別することができる。入力手段5により追加された作品7の付帯情報は、管理システム2の入力制御手段21で算出された密度とともに、記憶手段23に記憶される。
【0032】
図3(d)は、作品情報の一つであるブランド情報の例を示す図である。ブランド情報は、作品7の陶芸産地(ブランド)、制作方法(製法)、陶土の材料、釉薬の材料などである。日本には、伝統的工芸品の指定を受けた産地を含む多くの陶芸産地があり、各々の地域の作家(制作者、陶芸作家)がその地域の伝統に基づいた制作方法や材料を用いて、独創的な陶芸作品を制作している。ブランド情報は、作品が制作された地域や制作方法などの情報で、作品7を識別するために用いられる。入力手段5により追加された作品7のブランド情報は、管理システム2の入力制御手段21を介して、記憶手段23に記憶される。
【0033】
図4は、本実施形態の販売用情報の例を示す図である。販売用情報は、撮像情報の3次元形状、2次元外形形状や、付帯情報の作家(制作者)、制作年月日、情報の入力年月日、重量、色彩、ブランド情報の陶芸産地(ブランド)、制作方法(製法)、陶土の材料、釉薬の材料などである。販売用情報は、記憶手段23に記憶された撮像情報、付帯情報、前記ブランド情報を含む作品7の作品情報を元に作成され、インターネットを用いた商取引、詳しくは、作品7を販売するための情報として使用される。販売情報表示手段24は、記憶手段24に記憶されている作品7の作品情報から販売に必要な情報を販売用情報として抽出し、ネットワーク3を介して一般にWebページなどで閲覧できるようにする。
【0034】
図5は、本実施形態の鑑定問合せ情報の例を示す図である。鑑定問合せ情報は、作品情報のうちの一部の情報で、2次元外形形状と重量などを含む。購入者12の保有する陶器について、購入者12が鑑定要求をおこなう場合に、購入者12は問合せ作品13の2次元外形形状をカメラなどにより撮像し、問合せ作品13の重量を計量した後、鑑定問合せ情報として、顧客端末11により、ネットワーク3を介して管理システム2に送信する。
【0035】
識別番号10は、作品7の管理システム2登録時に付与され、撮像情報、付帯情報、ブランド情報それぞれには、作品7共通の識別番号10が含まれて、作品7の識別と特定に用いられる。図示しないICタグ9には、作品7の識別番号10が記憶され、ICタグ9は、作品7あるいはその収納箱に付着される。ICタグ9には、作品7の識別番号10と共に管理システム2のURLアドレスなど連絡先が記憶され、購入者が容易に流通管理、鑑定システム1の管理システム2と通信ができる。
【0036】
ICタグ9の表面には、ブランド情報などが印字される。ブランド情報などが表面に見えることにより、作品7のブランドなどに関する情報がわかる。
【0037】
図示しないデジタル鑑定書14は、作品7の鑑定結果を記したインターネット経由などで入手可能な書類で、作品7の識別番号10、写真、作家の情報、ブランド情報などを含んでいる。
【0038】
図6は、実施形態に基づく陶器の流通管理、鑑定システム1への作品情報の登録について説明するフロー図である。
【0039】
図6に示されるように、まず、作家8により制作された作品7が販売、流通される前に、撮像装置4により、作品7の3次元形状などの撮像情報を撮像する。(ステップS1)次に、作品7の識別番号10を付与した後、撮像情報を撮像装置4から管理システム2に送信し、管理システム2の入力制御手段21を介して記憶手段23に記憶する。(ステップS2)撮像情報には、3次元形状の情報である肉厚や体積を含む。
【0040】
入力端末5により、作品7の制作に関連する付帯情報を追加入力する。(ステップS3)入力端末5により、作品7が制作された地域や制作方法などの情報であるブランド情報を追加入力する。(ステップS4)
【0041】
入力端末5は、作品7の付帯情報とブランド情報を管理システム2に送信し、入力制御手段21は、撮像情報の一つである作品7の体積と付帯情報の一つである作品7の重量より、作品7の密度を算出する。(ステップS5)記憶手段23は、入力制御手段21により算出された作品7の密度を含む付帯情報とブランド情報を、作品7の作品情報として管理システム2の記憶手段23に記憶する。(ステップS6)付帯情報、ブランド情報ともに撮像情報に付与されたものと共通の識別番号10が使われる。
【0042】
図7は、実施形態に基づく陶器の流通管理、鑑定システム1への販売情報の作成について説明するフロー図である。
【0043】
図7に示されるように、販売情報表示手段24は、記憶手段24に記憶されている作品7の作品情報の撮像情報から販売に必要な情報を販売用情報として抽出する。(ステップS11)次に、販売情報表示手段24は、記憶手段24に記憶されている作品7の作品情報の付帯情報から販売に必要な情報を販売用情報として抽出する。(ステップS12)更に、販売情報表示手段24は、記憶手段24に記憶されている作品7の作品情報のブランド情報から販売に必要な情報を販売用情報として抽出する。(ステップS13)
【0044】
販売用情報は、記憶手段23に記憶された撮像情報、付帯情報、前記ブランド情報を含む作品7の作品情報を元に作成され、インターネットを用いた商取引、詳しくは、作品7を販売するための情報として使用される。販売情報表示手段24は販売用情報を、出力制御手段22とネットワーク3を介して顧客端末11に表示できるようにすると共に、一般にWebページなどで閲覧できるようにする。(ステップS14)作品7の作品情報の登録と同時に、ブランド情報を含んだ作品の販売用情報ができるので、陶芸地域ブランドと作家、作品を網羅したデータベースが更に充実する。
【0045】
図8は、実施形態に基づく、鑑定問合せ情報による鑑定問い合わせについて説明するフロー図である。
【0046】
図8に示されるように、購入者12の保有する陶器について、購入者12から鑑定要求をおこなう場合には、購入者12は問合せ作品13の2次元外形形状をカメラなどにより撮像し、問合せ作品13の重量を計量した後、鑑定問合せ情報として、顧客端末11により、ネットワーク3を介して管理システム2に送信する。(ステップS21)問合せ作品13の鑑定問合せ情報は、管理システム2の入力制御手段21から判定手段25に送信され、判定手段25は鑑定問合せ情報の2次元外形形状と類似の形状である候補作品を、記憶手段23に記憶された作品情報から抽出する。(ステップS22)
【0047】
次に、判定手段25は抽出された候補作品の2次元外形形状が、顧客端末11より送信された問合せ作品13の鑑定問合せ情報にある2次元外形形状と一致するか、判断する。(ステップS23)判断する際、2次元外形形状の寸法には、計測誤差などの幅があることが考慮される。
【0048】
ステップS23において、抽出された候補作品と問合せ作品13の2次元外形形状が一致すると判断された場合(ステップS23においてYes)には、ステップS24に進む。ステップS24において、ステップS23において2次元外形形状が一致すると判断された作品の重量を抽出し、ステップS26に進む。
【0049】
一方、ステップS23において、抽出された候補作品と問合せ作品13の2次元外形形状が一致しないと判断された場合(ステップS23においてNo)には、ステップS25に進む。ステップS25において、鑑定システム2の記憶手段23は、候補作品は問合せ作品13と一致する作品ではないと判断し、除外される。
【0050】
ステップS26において、判定手段25は、ステップS23において2次元外形形状が一致すると判断された候補作品の重量が、顧客端末11より送信された問合せ作品13の鑑定問合せ情報の重量と一致するか、判断する。判断する際、重量には、計測誤差などの幅があることが考慮される。
【0051】
ステップS26において、抽出された候補作品と問合せ作品13の重量が一致すると判断された場合(ステップS26においてYes)には、ステップS28に進む。ステップS28において、ステップS26において抽出された作品が一つか判断する。抽出された作品は一つと判断された場合(ステップS28においてYes)には、ステップS29に進む。
【0052】
一方、ステップS26において、重量が一致しないと判断された場合(ステップS26においてNo)には、ステップS27に進む。ステップS27において、鑑定システム2の記憶手段23は、問合せ作品13と一致する作品はないと判断する。
【0053】
ステップS29において、判定手段25は、ステップS28において抽出された作品が一つと判断された候補作品は、問合せ作品13と合致すると判断する。次に、判定手段25は、合致した作品の記憶手段23に記憶されている作品情報を元に、デジタル鑑定書14を作成する。作成されたデジタル鑑定書14は、管理システム2の出力制御手段22により、ネットワーク3を介して顧客端末11に送信され、表示される。(ステップS30)これにより、費用と時間をかけずに簡易に、作品の鑑定精度の高い鑑定が可能となる。
【0054】
一方、ステップS29において、抽出された作品は一つではなく複数と判断された場合(ステップS29においてNo)には、ステップS31に進む。ステップS31において、抽出された複数の候補作品について、外形形状と重量以外の項目について詳細鑑定をおこなう。
【0055】
これまでは、2次元外形形状を含む鑑定問合せ情報を元にした鑑定問い合わせの説明をおこなってきたが、3次元外形形状を含む第2の撮像情報を元に鑑定問い合わせをおこなっても良い。
図9は、実施形態に基づく、3次元外形形状を含む第2の撮像情報による鑑定問合せについて説明するフロー図である。
【0056】
図9に示されるように、購入者12の保有する陶器について、購入者12から鑑定要求をおこなう場合に、購入者12は保有する問合せ作品13の2次元外形形状をカメラなどにより撮像し、作品の重量を計量する。更に、問合せ作品13の3次元形状を第2の撮像装置6により撮像する。次に、顧客端末11よりネットワーク3を介して管理システム2に、撮像された問合せ作品13の3次元形状を含む第2の撮像情報と鑑定問い合せ情報を送信する。(ステップS41)第2の撮像情報は、第2の撮像装置6から送信される。送信された情報は、管理システム2の入力制御手段21から判定手段25に送信され、管理システム2の判定手段25は、問合せ作品13の第2の撮像情報と類似の形状である候補作品を、記憶手段23に記憶された作品情報から抽出する。(ステップS42)
【0057】
図8のステップ22からステップ24においては、2次元外形形状を元に問合せ作品13の照合をおこなうのに対して、
図9のステップ42からステップ44においては、3次元外形形状を元に問合せ作品13の照合をおこなうこと以外、
図9の鑑定の手順は、
図8と同じである。3次元外形形状を鑑定に用いることにより、より精度の高い鑑定が可能となる。
【0058】
購入者12の保有する陶器について、購入者12がデジタル鑑定書14の発行を依頼する場合には、問合せ作品13の識別番号10がわかっている時は、識別番号10を用いてデジタル鑑定書14の発行を依頼できる。購入者12がデジタル鑑定書14の発行を依頼する場合には、顧客端末11から管理システム2にデジタル鑑定書14の発行依頼とともに作品の識別符号10を送信する。
【0059】
管理システム2の判定手段25は、受信した問合せ作品13の識別番号10に該当する、記憶手段23に記憶されている作品7の作品情報を元に、デジタル鑑定書14を作成する。作成されたデジタル鑑定書14は、管理システム2の出力制御手段22により、ネットワーク3を介して顧客端末11に送信され、表示される。これにより、より簡易に、作品のデジタル鑑定書14が作成、表示可能である。
【0060】
作品7とその収納箱には、ICタグ9が付着されていても良い。ICタグ9には、作品の識別番号10などが記憶されており、作品7の流通、購入後、購入者12がデジタル鑑定書14の発行を依頼する場合には、ICタグ9の識別符号10を読み取り、顧客端末11から管理システム2にデジタル鑑定書14の発行依頼とともに作品の識別符号10を送信する。
【0061】
管理システム2の判定手段25は、受信した問合せ作品13の識別番号10に該当する、記憶手段23に記憶されている作品の作品情報を元に、デジタル鑑定書14を作成する。作成されたデジタル鑑定書14は、管理システム2の出力制御手段22により、ネットワーク3を介して顧客端末11に送信され、表示される。ICタグ9には、作品7の識別番号10と共に管理システム2のURLアドレスなど連絡先が記憶され、購入者が容易に流通管理、鑑定システム1の管理システム2と通信ができる。これにより、より簡易に、作品のデジタル鑑定書14が作成可能である。
【0062】
また、ICタグ9の表面には、ブランド情報などが印字される。ブランド情報などが表面に見えることにより、作品7のブランドなどに関する情報がわかる。
【0063】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。これまで説明した第1実施形態においては、作家8により制作された作品7の販売、流通前に、作品7の3次元形状などの撮像情報を撮像し作品情報を登録したが、第2実施形態においては、作品7の販売、流通後に撮像情報を撮像し、付帯情報とブランド情報を追加入力して、作品7の作品情報を流通管理、鑑定システム1に登録する。作品情報の登録手順、販売情報の作成手順、鑑定問い合わせの手順は、
図6から
図9と同じである。
【0064】
美術館の展示品、収蔵品や販売店の商品など既に流通、販売された作品7は数多くある。これらの作品7の3次元形状などの撮像情報を撮像し、付帯情報とブランド情報を可能な限り入力し、作品情報を記憶していくことにより、陶器などの美術品のより詳細なデータベースを充実させることができる。また、鑑定が必要となった場合には従来の収納箱などの情報に基づいてその作品の真贋を鑑定することに比べて、より精度の高い鑑定をおこなうことができる。
【0065】
上記実施形態では、撮像装置4が撮像部、第2の撮像装置4が第2の撮像部、入力制御手段21が入力制御部、記憶手段23が記憶部、販売情報表示手段24が販売情報表示部、判定手段25が判定部として機能する。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、費用と時間をかけずに簡易に、作品の鑑定精度の高い鑑定が可能であるので、陶器の流通管理、鑑定システムに登録する作者、作品が増える。同時に、ブランド情報を含んだ作品の販売用情報ができるので、陶芸地域ブランドと作家、作品を網羅したデータベースが更に充実する。これにより、購入者は統合的なデータベースを通じて、陶芸地域ブランドと作家、作品をより詳しく知ることができるので、購入機会が増え、陶器のインターネット商取引を拡大することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態として陶器の流通管理、鑑定システムについて説明したが、磁器を含む陶磁器、美術品の流通管理、鑑定システムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 陶器の流通管理、鑑定システム、2 管理システム、3 ネットワーク、4 撮像装置、5 入力端末、6 第2の撮像装置、7 作品、8 作者、ICタグ、10 識別番号、11 顧客端末、12 購入者、13 問合せ作品、14 デジタル鑑定書、21 入力制御手段、22 出力制御手段、23 記憶手段、24 販売情報表示手段、25 判定手段。