(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118668
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】ポリウレタン弾性繊維及びそれを含む布帛
(51)【国際特許分類】
D01F 6/94 20060101AFI20230818BHJP
D01F 6/70 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
D01F6/94 A
D01F6/70 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206825
(22)【出願日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2022021356
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】河原 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】森 孝正
(72)【発明者】
【氏名】山本 太郎
【テーマコード(参考)】
4L035
【Fターム(参考)】
4L035AA04
4L035BB02
4L035BB63
4L035CC13
4L035EE11
4L035JJ04
4L035JJ05
4L035JJ06
4L035JJ08
4L035KK05
4L035MH02
4L035MH13
(57)【要約】
【課題】抗菌性能、及び消臭性能に優れ、染色処理や洗濯を経てもその抗菌性能が維持されるポリウレタン弾性繊維の提供。
【解決手段】Ag含有化合物、該Ag含有化合物とは異なるリン酸ジルコニウム含有化合物、及びポリウレタン重合体を含み、Ag元素に対するZr元素の質量比が25以上100以下であることを特徴とするポリウレタン弾性繊維、並びに該ポリウレタン弾性繊維を含む布帛。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ag含有化合物、該Ag含有化合物とは異なるリン酸ジルコニウム含有化合物、及びポリウレタン重合体を含み、Ag元素に対するZr元素の質量比が25以上100以下であることを特徴とするポリウレタン弾性繊維。
【請求項2】
Ag元素に対するZr元素の質量比が25以上55以下である、請求項1に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項3】
前記Ag含有化合物が、Ag元素と、Na、Zr、Cu、Zn、Al、Mg、Ti、P、Sc、Pt、及びSiからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含む、請求項1又は2に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項4】
Ag元素の含有量が、ポリウレタン弾性繊維対して0.015質量%以上0.200質量%以下である、請求項1又は2に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項5】
Ag元素の含有量が、ポリウレタン弾性繊維対して0.030質量%以上0.090質量%以下である、請求項1又は2に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項6】
前記Ag含有化合物がAg元素、Na元素、及びZr元素を全て含む、請求項1又は2に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項7】
耐塩素剤を0.1質量%以上1質量%未満でさらに含む、請求項1又は2に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項8】
前記耐塩素剤がハイドロタルサイト、及び/又はハンタイトである、請求項7に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項9】
Zr元素の含有量が、ポリウレタン弾性繊維対して1.00質量%以上である、請求項1又は2に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項10】
ポリウレタン弾性繊維中に含まれるジメチルアセトアミド(DMAc)濃度が2.00質量%以下である、請求項1又は2に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項11】
Ag含有化合物を含む抗菌剤と該Ag含有化合物とは異なるリン酸ジルコニウム含有化合物を含む消臭剤の総量が5.00質量%以上9.00質量%以下である、請求項1又は2に記載のポリウレタン弾性繊維。
【請求項12】
請求項1又は2に記載のポリウレタン弾性繊維を含む、布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン弾性繊維及びそれを含む布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン弾性繊維は、高伸度かつ伸縮性に富み、その優れた物性のためインナーウェア、マスク、パンティストッキング、水着、ジーンズ、スポーツウェア、オムツ等に幅広く利用されている。
これらの用途において、消費者の清潔志向の高まりから抗菌性能や消臭性能に対する需要が増加しており、マスク、衣類、寝具、日用品等において数多くの抗菌性能、消臭性能を有する製品が出回っている。
【0003】
以下の特許文献1には、抗菌剤の後加工により抗菌性能を付与する方法が提案されている。具体的には、縫製品に抗菌剤と形態安定の効果を奏する薬剤とを併用して付着或いは浸透させた後に、加熱処理工程を行うことにより制菌・抗菌剤と形態安定の効果を奏する薬剤とを縫製品に定着させる手法が提案されている。
【0004】
以下の特許文献2には、抗菌剤と2種類の消臭剤を含有したポリウレタン弾性体及び弾性繊維に関する報告がなされている。上記ポリウレタン弾性繊維は抗菌性、消臭性に優れるものであり、これらのポリウレタン弾性繊維を用いることで後加工を行う必要がないため、作業工程数を低減し風合いの優れた生地を得ることができる。
【0005】
以下の特許文献3には、金属リン酸塩と4級アンモニウム塩系化合物を含有する紡糸原液から紡糸されるポリウレタン弾性糸に関する報告がなされている。当該特許文献中のポリウレタン弾性糸は、分子量120以下のモノアミン化合物を放出することにより抗菌性を示すものであり、上記ポリウレタン弾性糸は抗菌性、消臭性に優れるものとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-248058号公報
【特許文献2】特開2006-28453号公報
【特許文献3】国際公開第2012/053401号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された発明は、後加工によって性能を付与するものであり、洗濯により生地表面に付着した抗菌剤が脱落してしまい性能が低下するといった問題が生じる。
特許文献2に記載された発明は、多種類の無機化合物をポリウレタン溶液に添加することによって性能を実現している。特許文献2に記載された発明においても、洗濯後の大幅な抗菌性低下が見られる。
特許文献3に記載された発明は、分子量120以下のモノアミン化合物のような低分子有機化合物を放出することにより抗菌性能を発現するものであるが、アミン等の低分子有機化合物は揮発しやすく、揮発が起こらない無機化合物と比較して抗菌性能の維持という観点で課題がある。
【0008】
かかる従来技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、抗菌性能、及び消臭性能に優れ、染色処理や洗濯を経てもその抗菌性能が維持されるポリウレタン弾性繊維を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意検討し実験を重ねた結果、Ag含有化合物と該Ag含有化合物とは異なるリン酸ジルコニウム含有化合物を含有するポリウレタン弾性繊維中のAgとZrの比率を特定の範囲とすることで上記課題を解決できることを予想外に発見し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]Ag含有化合物、該Ag含有化合物とは異なるリン酸ジルコニウム含有化合物、及びポリウレタン重合体を含み、Ag元素に対するZr元素の質量比が25以上100以下であることを特徴とするポリウレタン弾性繊維。
[2]前記Ag元素に対するZr元素の質量比が25以上55以下である、前記[1]に記載のポリウレタン弾性繊維。
[3]前記Ag含有化合物が、Ag元素と、Na、Zr、Cu、Zn、Al、Mg、Ti、P、Sc、Pt、及びSiからなる群から選択される少なくとも1種以上の元素を含む、前記[1]又は[2]に記載のポリウレタン弾性繊維。
[4]Ag元素の含有量が、ポリウレタン弾性繊維に対して0.015質量%以上0.200質量%以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
[5]Ag元素の含有量が、ポリウレタン弾性繊維に対して0.030質量%以上0.090質量%以下である、前記[1]~[4]のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
[6]前記Ag含有化合物がAg元素、Na元素、及びZr元素を全て含む、前記[1]~[5]のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
[7]耐塩素剤を0.1質量%以上1質量%未満でさらに含む、前記[1]~[6]のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
[8]前記耐塩素剤がハイドロタルサイト、及び/又はハンタイトである、前記[7]に記載のポリウレタン弾性繊維。
[9]Zr元素の含有量が、ポリウレタン弾性繊維対して1.00質量%以上である、前記[1]~[8]のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
[10]ポリウレタン弾性繊維中に含まれるジメチルアセトアミド(DMAc)濃度が2.00質量%以下である、前記[1]~[9]のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
[11]Ag含有化合物を含む抗菌剤と該Ag含有化合物とは異なるリン酸ジルコニウム含有化合物を含む消臭剤の総量が5.00質量%以上9.00質量%以下である、前記[1]~[10]のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維。
[12]前記[1]~[11]のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維を含む、布帛。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るポリウレタン弾性繊維は、高い抗菌性能、及び消臭性能を発現し、さらに、染色処理や洗濯を経てもその抗菌性能が持続するものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態は、Ag含有化合物と該Ag含有化合物とは異なるリン酸ジルコニウム含有化合物を含有し、Ag元素に対するZr元素の質量比が25以上100以下であることを特徴とするポリウレタン弾性繊維である。
【0013】
<Ag含有化合物>
本実施形態のポリウレタン弾性繊維は、Ag含有化合物を含有する。Ag含有化合物とは、Ag元素を有する無機化合物のことであり、Ag含有化合物の形態に特に限りはなく、Ag単体やAgイオンが構造式に組み込まれている無機化合物であっても、Agが担持されている無機化合物であってもよく、上記両方を含有してもよい。
【0014】
Ag含有化合物は、Ag元素と、Na、Zr、Cu、Zn、Al、Mg、Ti、P、Sc、Pt、及びSiからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むことが好ましい。より具体的にはAg元素に加えて、ゼオライト、酸化亜鉛と酸化ジルコニウムからなる複合酸化物、二酸化ケイ素と酸化ジルコニウムからなる複合酸化物、リン酸ジルコニウム、銅担持リン酸ジルコニウム、白金担持リン酸ジルコニウム、水素化ナトリウム、酸化銅、酸化チタン、酸化マグネシウムなど及びその組み合わせから構成される化合物を含むことが好ましい。又は、Ag含有化合物は、銀担持リン酸ジルコニウムや銀担持ゼオライトのように化合物自体にAg元素を含むものを含んでも構わない。Ag含有化合物は、抗菌性能を更に高めるといった観点からは、特に銀担持リン酸ジルコニウムを含むことが好ましい。
【0015】
Ag含有化合物は、Ag含有化合物がAg、Na、及びZrを全て含む複合金属酸化物であることが好ましい。本実施形態のポリウレタン弾性繊維は、これら3つの元素を全て含有したAg含有化合物を含むことで、優れた抗菌性能を発現しつつ、染色後や洗濯後においても抗菌性能が維持されるものである。その理由は次のとおり考察される:
Ag含有化合物から溶出するAgイオンが抗菌作用の主成分となり、リン酸ジルコニウムが繊維系内で発生したAgイオンを捕捉する。Agイオンが捕捉されることにより、染色や洗濯処理中における繊維系外へのAgイオンの溶出、すなわち、抗菌成分の溶出を抑制することが可能となる;
また、Ag含有化合物より溶出するNaイオンが菌の細胞膜外の浸透圧の上昇へ影響を及ぼし、細胞膜外から細胞内へのAgイオンを効率的に輸送し、結果として従来の技術と比較して染色後や洗濯後においても高い抗菌性能を発現する。Naイオンを効率的に溶出するために、Ag含有化合物はNa塩の形態であることが好ましい。
【0016】
<Ag含有化合物とは異なるリン酸ジルコニウム含有化合物>
本実施形態のポリウレタン弾性繊維は、前記Ag含有化合物とは異なるリン酸ジルコニウム含有化合物(以下、単に「リン酸ジルコニウム含有化合物」ともいう。)を含有する。リン酸ジルコニウム含有化合物の形態に特に限りはなく、リン酸ジルコニウム単体であっても、他の化学種を担持したリン酸ジルコニウムであってもよく、上記両方を含有してもよい。リン酸ジルコニウムは、α型、γ型、又は他の結晶構造を有していてもよい。
【0017】
<Ag元素に対するZr元素の質量比>
本実施形態のポリウレタン弾性繊維は、蛍光X線分析(XRF)によって特定されるAgに対するZrの重量比が、25以上、好ましくは26以上、より好ましくは27以上、さらに好ましくは28以上、また、100以下、好ましくは80以下、より好ましくは60以下、さらに好ましくは55以下、特に好ましくは50以下、である。AgとZrの質量比を上記範囲内にすることで、Ag含有化合物から遊離したAgイオンをリン酸ジルコニウムが捕捉することでAgイオンが繊維外へ溶出しないため、少量の添加量であっても効率的にAgイオンの抗菌性能を持続的に利用でき、洗濯後であっても高い抗菌性能を維持できる。
【0018】
<ポリウレタン重合体>
本実施形態のポリウレタン弾性繊維はポリウレタン重合体を含有する。前記ポリウレタン重合体は、高分子ジオールとジイソシアネートとの反応により得られるプレポリマーに、鎖伸長剤として多官能性活性水素含有化合物で鎖伸長反応を行う公知のウレタン化反応の技術を採用することで得られる。
【0019】
前記高分子ジオールとしてポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリアクリルジオール、ポリチオエステルジオール等を挙げることができ、好ましくはポリエーテルジオールであり、より好ましくはポリアルキレンエーテルジオールである。
【0020】
前記ポリアルキレンエーテルジオールは、炭素数2~10の直鎖上又は分岐状の炭化水素鎖がエーテル結合により結合しており、ポリウレタン弾性繊維の優れた伸縮性能を発現するためにはポリアルキレンエーテルジオールの水酸基価から算出される数平均分子量が500以上であることが好ましく、より好ましくは1000以上、さらに好ましくは1500以上のものである。一方で、製品糸の耐熱性や耐摩耗性の観点から5000以下が好ましく、3000以下がより好ましく、さらに好ましくは2500以下のものである。
【0021】
前記ジイソシアネートとしては、分子内に2つのイソシアネート基を有する、脂肪族、脂環族、芳香族のジイソシアネートが挙げられる。例としては、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート、m-又はp-フェニレンジイソシアネート、1,5-又は2,6-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、これらの混合物、これらの共重合体等が挙げられる。また、ジイソシアネート基に変換される封鎖されたイソシアネート基を有する化合物を使用してもよい。
【0022】
ポリウレタン重合体を合成する上で、ゲルの少ない、均一な重合体を得られる観点から、高分子ジオールとジイソシアネートのモル比(ジイソシアネート/高分子ジオール)は、1.20以上1.80以下であることが好ましく、より好ましくは1.30以上1.70以下、さらに好ましくは1.40以上1.60以下である。
【0023】
前記多官能性活性水素含有化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリレンジアミン、m-キシリレンジアミン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ヒドラジン、4,4′-ジアミノジフェニルメタン、ジヒドラジド、ピペラジン等の低分子ジアミン類や、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の低分子ジオール類が挙げられる。これらの鎖伸長剤は単独で又は混合物として用いることができる。
【0024】
ポリウレタン重合体の合成時、単官能性活性水素原子を有する末端停止剤を用いてもよい。前記末端停止剤としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジイソプロピルアミン、2-エチルヘキシルアミン等の1級アミン類や、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2-メチル2-プロパノール、1-ブタノール等の1級アルコール類が挙げられる。これらの末端停止剤は単独で又は混合物として用いることができる。
【0025】
ポリウレタン重合体の合成時には、高分子ジオールとジイソシアネートからなるプレポリマー合成時やプレポリマーと活性水素含有化合物との反応時に、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒を用いることができ、好ましくはジメチルアセトアミド(DMAc)である。
【0026】
ポリウレタン重合体には、各種安定剤や顔料などが含有されていてもよい。例えば、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、リン酸系、及びヒンダードアミン系等の酸化防止剤、各種薬剤、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化チタン、及び酸化マグネシウム等の無機物、カーボンブラック、各種顔料、光安定化剤、酸化窒素捕捉材、熱安定化剤、並びに各種樹脂等を含有してもよい。
【0027】
<ポリウレタン弾性繊維>
本実施形態のポリウレタン弾性繊維は、前記ポリウレタン重合体を、公知の乾式紡糸、湿式紡糸、溶融紡糸等で繊維状に成形することで製造することができる。乾式紡糸は、湿式紡糸や溶融紡糸に比べて、ハードセグメント間の水素結合による物理架橋を強固に形成させることができるため、好ましい。乾式紡糸の場合、アミド系極性溶媒を用いることができる。
【0028】
ポリウレタン弾性繊維は、使用時の摩擦性を低減させるために任意の滑剤を含有することができる。前記滑剤は、ポリウレタン重合体に予め練り込んでおいてもよく、また、紡糸時に糸に塗布してもよい。滑剤の具体例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、鉱物油、シリカ、コロイダルアルミナ、及びタルク等の鉱物性微粒子、ステアリン酸マグネシウム、及びステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩粉末、高級脂肪族カルボン酸、高級脂肪族アルコール、パラフィン、並びにポリエチレン等が挙げられ、これらを単独、又は任意の組合せで付与してもよい。
【0029】
本実施形態のポリウレタン弾性繊維は、ICP発光分光分析法(ICP-AES)によって特定されるポリウレタン弾性繊維に対するAg元素の含有量が好ましくは0.015質量%以上、より好ましくは0.030質量%以上、さらに好ましくは0.040質量%以上であり、また、好ましくは0.200質量%以下、より好ましくは0.150質量%以下、さらに好ましくは0.100質量%以下、特に好ましくは0.090質量%以下である。Ag元素の含有量が0.015質量%以上であると、Ag元素に由来する抗菌性が十分となる。Ag元素の含有量が0.200質量%以下であると、Agイオンの効率的な捕捉を行うことを目的として多量のリン酸ジルコニウムを用いる必要がないため、製造工程での無機物の添加が減り、フィルター詰まりや糸切れといった紡糸安定性が向上する。
【0030】
本実施形態のポリウレタン弾性繊維は、十分な耐塩素変色性能の発現の観点から、耐塩素剤添加量を0.1質量%以上1質量%未満含有することが好ましい。
【0031】
前記耐塩素剤はハイドロタルサイト及び/又はハンタイトであることが好ましい。ハイドロタルサイト、及びハンタイトは、ポリウレタン重合溶液中へ均一に分散するため、効率的に塩化物イオンを捕捉し、高い耐塩素変色性能を発現することができる。
【0032】
本実施形態のポリウレタン弾性繊維は、ICP発光分光分析法(ICP-AES)によって特定されるポリウレタン弾性繊維に対するZr元素の含有量が好ましくは1.00質量%以上、より好ましくは1.50質量%以上、さらに好ましくは2.00質量%以上であり、また、好ましくは4.00質量%以下、より好ましくは3.00質量%以下である。ポリウレタン弾性繊維に対するZr元素の含有量が1.00質量%以上であると、該Ag含有化合物とは異なるリン酸ジルコニウム含有化合物によるAg元素の効率的な捕捉が可能となり、4.00質量%以下であると、Agイオンの効率的な捕捉を行うことを目的として多量のリン酸ジルコニウムを用いる必要がないため、製造工程での無機物の添加が減り、フィルター詰まりや糸切れといった問題を回避できるため、紡糸安定性が向上する。
【0033】
本実施形態のポリウレタン弾性繊維は、ポリウレタン弾性繊維中に含まれるジメチルアセトアミド(DMAc)濃度が、好ましくは2.00質量%以下、より好ましくは1.00%以下、さらに好ましくは0.500%以下である。ポリウレタン弾性繊維中に含まれるジメチルアセトアミド(DMAc)濃度が2.00質量%以下であると、長期保管時における原糸の物性低下を抑制でき、製品保管時の安定性に優れる。
【0034】
本実施形態のポリウレタン弾性繊維は、Ag含有化合物を含む抗菌剤と該Ag含有化合物とは異なるリン酸ジルコニウム含有化合物を含む消臭剤の合計量が好ましくは5.00質量%以上、より好ましくは5.50質量%以上、さらに好ましくは6.00質量%以上であり、また、好ましくは9.00質量%以下、より好ましくは8.00質量%以下、さらに好ましくは7.00質量%以下である。Ag含有化合物を含む抗菌剤と該Ag含有化合物とは異なるリン酸ジルコニウム含有化合物を含む消臭剤の総量を上記範囲内とすることで、抗菌性能や消臭性能を備えつつ、製造工程での無機物の添加量が減り、フィルター詰まりや糸切れといった問題を回避できるため、紡糸安定性が向上する。
【0035】
ポリウレタン弾性繊維は、目的に合わせてポリウレタン弾性繊維以外の素材(以下、「他の素材」ともいう。)との交編や、他の素材による被覆、又は他の素材との交絡、若しくは合撚等による加工糸として使用されてもよい。前記他の素材の種類は適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、具体例として、綿、絹、羊、及び麻等の天然繊維、ポリエステル繊維、カチオン可染ポリエステル繊維、ナイロン6繊維、及びナイロン66繊維等のポリアミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアクリル繊維、キュプラレーヨン、ビスコースレーヨン、並びにアセテートレーヨン等の化学繊維が挙げられる。
【0036】
<布帛>
本発明の別の実施形態は、上述のポリウレタン弾性繊維を含有する布帛である。前記布帛は織物、編物、不織布であることができる。前記布帛は、目的に合わせて前記他の素材を含んでもよい。
【0037】
前記布帛は、紙おむつ、水着、タイツ、パンティストッキング、ファウンデーション、靴下留め、口ゴム、コルセット、紙おむつ、包帯、インナー、アウター、レッグ、スポーツウェア、ジーンズ、又はその他衛生材料等として用いられることができる。
【実施例0038】
以下、実施例、比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。また、本発明には衣料品や衛生材料等の製品から単離したポリウレタン弾性繊維も含まれる。
まず、実施例、比較例で用いた測定方法、各種評価方法等について説明する。
【0039】
(1)抗菌性能の評価方法
実施例で作製した布帛サンプル、及び該布帛サンプルを洗濯したサンプルについて、一般社団法人繊維評価技術協議会が指定した抗菌性試験手順(JIS L 1902(ISO 20743)で規定される菌液吸収法)に準拠して黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)の生菌数測定結果からA(抗菌活性値)を求めた。
A(抗菌活性値)は、抗菌性の強さの指標となり、その数値が大きいもの程効果が大きい。本実施例においては、製品間の抗菌性能のバラつきを考慮し、洗濯前後でともにA(抗菌活性値)≧4.5であるものについて抗菌性能が十分であると定義した。
【0040】
(2)消臭性能の評価方法
JEC301 SEKマーク繊維製品認証基準に準拠し、下記の手順で実施した。
実施例で作製した布帛サンプルについて、20℃、相対湿度65%RH環境下で24時間以上調湿した後、生地を100cm2切り出し、テドラーバッグに入れる(サンプル重量が1gに満たない場合は200cm2以下の範囲内でサンプル重量を1gに調整する。)。濃度100ppmのアンモニアガス3Lをテドラーバッグに注入し、20℃の環境下で2時間保管後の残存ガス濃度を検知管(光明理化学工業会社製)で測定する。濃度100ppmのアンモニアガスは、乾燥空気を利用して希釈調整する。サンプルを用いずに同様の評価を行い空試験とし、下記の式:
アンモニア消臭率 [%] =100×(空試験の残留アンモニアガス濃度-サンプルのガス残留ガス濃度)÷空試験の残留アンモニアガス濃度
に従って、残存ガス濃度の減少率を算出し、アンモニア消臭率[%]とした。本実施例においては、アンモニア消臭率[%]≧70[%]であるものについて消臭性が十分であると判断した。
【0041】
(3)抗菌性評価、消臭性評価時の洗濯方法
洗濯方法は JEC326「SEK マーク繊維製品の洗濯方法」に準拠し、洗剤として「JAFET 標準配合洗剤」を使用した。
【0042】
(4)Ag元素に対するZr元素の質量比の測定方法
ポリウレタン弾性繊維について、蛍光X線分析装置:EDX-8000(島津製作所製)による測定を行い、各元素の蛍光X線強度比から算出される定量比をポリウレタン弾性繊維中の各元素の質量比として、Agに対するZrの重量比を求めた。
(測定条件)
使用装置:EDX-8000(島津製作所製)
電圧:50kV、15kv
分析径:10mm
測定雰囲気:真空
【0043】
(5)Ag元素含有量の測定方法
ポリウレタン弾性繊維を溶解させた溶液について、ICP発光分光分析法(ICP-AES)による測定を行い、ポリウレタン弾性繊維中のAg元素含有量を求めた。また、ポリウレタン弾性繊維の溶液化にはマイクロウェーブ分解を用いた。
【0044】
(6)Zr元素含有量の測定方法
ポリウレタン弾性繊維を溶解させた溶液について、ICP発光分光分析法(ICP-AES)による測定を行い、ポリウレタン弾性繊維中のZr元素含有量を求めた。また、ポリウレタン弾性繊維の溶液化にはマイクロウェーブ分解を用いた。
【0045】
(7)耐塩素剤含有量の測定方法
ポリウレタン弾性繊維について、X線回折測定(XRD)を用いた分析を行い、耐塩素剤のスペクトルと比較することで同定を行う。続いて、ポリウレタン弾性繊維の蛍光X線分析により耐塩素剤を構成する金属元素の各定量比を測定し、別途作成した、耐塩素剤を規定量添加したポリウレタン弾性繊維を測定した結果から得られる検量線から、耐塩素剤含有量を特定する。
【0046】
(8)Na元素の検出方法
ポリウレタン弾性繊維若しくはAg含有化合物について、走査電子顕微鏡:JSM-IT500(JEOL製)を用いた元素分析を行うことでNa元素の有無を求めることができる。
【0047】
(9)ジメチルアセトアミド(DMAc)濃度の測定方法
ガスクロマトグラフィー(島津製作所製:GC-2014)を使用してポリウレタン弾性繊維中のジメチルアセトアミド(DMAc)濃度[%]を以下のように測定した。
カラムはRESTEK社製Stabilwax(長さ:30 mm、内径:0.53mm)を使用した。
ポリウレタン弾性繊維を0.20g切り出し、アセトン7.0g中に浸漬させ、室温下2時間振とう抽出を行った。その後、抽出した溶液に対して、ガスクロマトグラフィー測定を行いジメチルアセトアミド(DMAc)とアセトンのピークエリア面積を求めた。別途、ジメチルアセトアミド(DMAc)をアセトンにて希釈した4つの標品(DMAc濃度:50ppm、250ppm、500ppm、1000ppm)についてガスクロマトグラフィー測定を行い、得られたピーク面積を用いて検量線を作成した。得られた検量線を用いて、抽出した溶液中のジメチルアセトアミド(DMAc)量[ppm]を算出し、下記式:
ポリウレタン弾性繊維中ジメチルアセトアミド(DMAc)濃度[%] = [(アセトン重量[g] x 検量線より算出したジメチルアセトアミド(DMAc)量[ppm]) ÷ 切り出したポリウレタン弾性繊維重量[g]] ÷ 10000
を用いてジメチルアセトアミド(DMAc)濃度[%]を求めた。
ポリウレタン弾性繊維中のジメチルアセトアミド(DMAc)濃度[%]は低いほど好ましく、長期保管時における原糸の物性低下への影響を考慮し、ジメチルアセトアミド(DMAc)濃度が0.5質量%以下のものをA評価、0.5質量%超1.0質量%以下のものをB評価、1.0質量%超2.0質量%以下のものをC評価、2.0質量%超のものをD評価と定義し、A評価又はB評価のサンプルを合格とした。
【0048】
(10)紡糸安定性評価
単エンド紡糸機にて、以下実施例及び比較例に記載の条件で24時間の紡糸を行い、糸切れが発生せず、かつ、紡糸圧力変動が1kg/cm2以下であったものについて紡糸安定性が良好である「〇」と判断した。
【0049】
[実施例1]
数平均分子量1800のポリテトラメチレンエーテルグリコール2000g、N,N-ジメチルアセトアミド2800g、及び4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート445gを、窒素ガス気流下60℃において90分間攪拌しつつ反応させて、両末端にイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーを得た。これに対しエチレンジアミン32g及びジエチルアミン6gをジメチルアセトアミド(DMAc)2000gに溶解したものを添加して、粘度4,200ポイズ(30℃)のポリウレタンウレタン重合体溶液を得た。
【0050】
ポリウレタン重合体の固形分に対し、ハイドロタルサイトを0.7質量%、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)を1.0質量%、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールを0.5質量%、銀担持リン酸ジルコニウム(化学式:Ag・NaH・Zr(H3PO4)、東亞合成社製「ノバロン」(登録商標)、グレード:AG300)を2.0質量%、リン酸ジルコニウム(化学式:Zr(HPO4)2・nH2O(式中、nは0~2である)、東亞合成社製「ケスモン」(登録商標)、グレード:NS-10)を5.0質量%、及びステアリン酸マグネシウムを0.1質量%になるように秤量し、そこへジメチルアセトアミド(DMAc)を加え、ホモミキサーで分散させ、20質量%の分散液を作製した後で、ポリウレタン溶液と混合して、均一な溶液とした後、室温、減圧下で脱泡し、これを紡糸原液とした。
この紡糸原液を、巻き取り速度800m/分、熱風温度300℃で、真円形状の孔2個からなる紡口を用いて乾式紡糸し、圧縮空気による仮撚装置で集束した後、表面処理剤をポリウレタン弾性繊維に対して4.0質量%付与し、紙管に巻き取り、22dtex/2フィラメントのポリウレタン弾性繊維の巻き取りパッケージを得た。尚、表面処理剤としては、ポリジメチルシロキサン67質量%、鉱物油30質量%、アミノ変性シリコーン3.0質量%からなる油剤を用いた。
【0051】
このポリウレタン弾性繊維を用いて、3.5インチ18ゲージ針本数200本のシングル丸編機にて、ポリエステル84dtex/36フィラメントとともに編成したベア天竺編地を作成した。前記編地中のポリウレタン弾性繊維の含有率は10%であった。次いで、前記編地の染色加工を行って、ストレッチ布帛を得た。
得られたポリウレタン弾性繊維の各種評価解析結果及びストレッチ布帛の抗菌性評価、消臭性評価の結果を、以下の表1に示す。
【0052】
[実施例2、8]
銀担持リン酸ジルコニウムとハイドロタルサイトの添加量を変更した以外は、実施例1と同様に、ポリウレタン弾性繊維及びストレッチ布帛を得た。
得られたポリウレタン弾性繊維の各種評価解析結果及びストレッチ布帛の抗菌性評価、消臭性評価の結果を、以下の表1に示す。
【0053】
[実施例3]
ハイドロタルサイトを用いなかった以外は、実施例2と同様に、ポリウレタン弾性繊維及びストレッチ布帛を得た。
得られたポリウレタン弾性繊維の各種評価解析結果及びストレッチ布帛の抗菌性評価、消臭性評価の結果を、以下の表1に示す。
【0054】
[実施例4]
銀担持リン酸ジルコニウムとしてNa元素を含まないものを用いた以外は、実施例2と同様に、ポリウレタン弾性繊維及びストレッチ布帛を得た。
得られたポリウレタン弾性繊維の各種評価解析結果及びストレッチ布帛の抗菌性評価、消臭性評価の結果を、以下の表1に示す。
【0055】
[実施例5]
ハイドロタルサイトの代わりにハンタイトを用いた以外は、実施例2と同様に、ポリウレタン弾性繊維及びストレッチ布帛を得た。
得られたポリウレタン弾性繊維の各種評価解析結果及びストレッチ布帛の抗菌性評価、消臭性評価の結果を、以下の表1に示す。
【0056】
[実施例6]
ハイドロタルサイトの添加量を変更し、更にハンタイトを加えた以外は、実施例2と同様に、ポリウレタン弾性繊維及びストレッチ布帛を得た。
得られたポリウレタン弾性繊維の各種評価解析結果及びストレッチ布帛の抗菌性評価、消臭性評価の結果を、以下の表1に示す。
【0057】
[実施例7]
リン酸ジルコニウムの添加量を変更した以外は、実施例2と同様に、ポリウレタン弾性繊維及びストレッチ布帛を得た。
得られたポリウレタン弾性繊維の各種評価解析結果及びストレッチ布帛の抗菌性評価、消臭性評価の結果を、以下の表1に示す。
【0058】
[実施例9、10]
銀担持リン酸ジルコニウム、リン酸ジルコニウムの添加量を変更した以外は、実施例2と同様に、ポリウレタン弾性繊維及びストレッチ布帛を得た。
得られたポリウレタン弾性繊維の各種評価解析結果及びストレッチ布帛の抗菌性評価、消臭性評価の結果を、以下の表1に示す。
【0059】
[比較例1]
リン酸ジルコニウムを用いず、銀担持リン酸ジルコニウムとハイドロタルサイトの添加量を変更した以外は、実施例1と同様に、ポリウレタン弾性繊維及びストレッチ布帛を得た。
得られたポリウレタン弾性繊維の各種評価解析結果及びストレッチ布帛の抗菌性評価、消臭性評価の結果を、以下の表1に示す。
【0060】
[比較例2]
銀担持リン酸ジルコニウムとしてNa元素を含まないものを用い、ハイドロタルサイトを用いず、リン酸ジルコニウムの添加量を変更し、かつ、酸化亜鉛がポリウレタン重合体に対し0.5質量%となるよう添加した以外は、実施例8と同様に、ポリウレタン弾性繊維及びストレッチ布帛を得た。
得られたポリウレタン弾性繊維の各種評価解析結果及びストレッチ布帛の抗菌性評価、消臭性評価の結果を、以下の表1に示す。
【0061】
[比較例3]
銀担持リン酸ジルコニウムとリン酸ジルコニウムの添加量を変更した以外は、実施例2と同様に、ポリウレタン弾性繊維及びストレッチ布帛を得た。
得られたポリウレタン弾性繊維の各種評価解析結果及びストレッチ布帛の抗菌性評価、消臭性評価の結果を、以下の表1に示す。
【0062】
[比較例4]
銀担持リン酸ジルコニウムを用いなかった以外は、実施例2と同様に、ポリウレタン弾性繊維及びストレッチ布帛を得た。
得られたポリウレタン弾性繊維の各種評価解析結果及びストレッチ布帛の抗菌性評価、消臭性評価の結果を、以下の表1に示す。
なお、ポリウレタン弾性繊維中からAg元素は検出されず、Ag元素に対するZr元素の質量比は算出不可であった。
【0063】
【0064】
表1から、実施例1~10のポリウレタン弾性繊維とその布帛は抗菌性能、消臭性能に優れ、かつ、抗菌性能が洗濯後でも維持されるポリウレタン弾性繊維及び布帛であることが分かる。
本発明に係るポリウレタン弾性繊維及びそれを含む布帛は抗菌性能、及び消臭性能に優れ、かつ、抗菌性能が染色処理や洗濯を経ても維持されることから、紙おむつ、水着、タイツ、パンティストッキング、ファウンデーション、靴下留め、口ゴム、コルセット、紙おむつ、包帯、インナー、アウター、レッグ、スポーツウェア、ジーンズ、又はその他衛生材料等として好適に利用可能である。