(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118682
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】不混和性溶媒スラリーを使用した多層コーティング
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20230818BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20230818BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20230818BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230818BHJP
H01M 4/1391 20100101ALI20230818BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20230818BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20230818BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/1393
H01M4/587
H01M4/36 D
H01M4/1391
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 E
H01M4/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023018957
(22)【出願日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】17/672,164
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503136222
【氏名又は名称】フォード グローバル テクノロジーズ、リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】ピエトラシュ、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】イ、ウンソン
(72)【発明者】
【氏名】クァク、ガンホ
(72)【発明者】
【氏名】リー、フォン
(72)【発明者】
【氏名】パイク、チー
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB08
5H050DA02
5H050DA03
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050FA16
5H050GA22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リチウムイオン電池のアノードまたはカソード用の基材をコーティングする方法を提供する。
【解決手段】第1の溶媒及び第1の活物質24を含む第1の混合物を調製することと、第2の溶媒及び第2の活物質26を含む第2の混合物を調製することと、第1の混合物と第2の混合物を組み合わせてスラリー22を形成することと、基材20をスラリー22でコーティングすることとを含む。第1の溶媒と第2の溶媒は混和しない。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池のアノードまたはカソード用の基材をコーティングする方法であって、
複数の不混和性溶媒を組み合わせることであって、第1の溶媒が第1の活物質を含み、第2の溶媒が第2の活物質を含む、前記組み合わせることと、
前記基材を前記複数の不混和性溶媒でコーティングすることと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記第1の溶媒が水性ベースの溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の溶媒が、油ベースの溶媒または炭化水素ベースの溶媒を含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基材がアノードである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記基材がアノードであり、前記第1の活物質が天然グラファイトを含み、前記第2の活物質が天然グラファイトまたは人造グラファイトのうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基材がカソードである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記基材がカソードであり、前記第1の活物質が、ニッケルコバルトマンガン(NCM)523及び原子組成で約50%以下のニッケル含有量を有するNCMのうちの少なくとも1つを含み、前記第2の活物質が、NCM Ni88+またはリチウムリッチマンガンリッチ層のうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
複数の基材をさらに含み、
第1の基材がアノードであり、第2の基材がカソードである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の基材が、天然グラファイトを含む第1の活物質を含むアノードである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の基材が、天然グラファイトまたは人造グラファイトのうちの少なくとも1つを含む第2の活物質を含むアノードである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の基材が、NCM523及び原子組成で約50%以下のニッケル含有量を有するNCMのうちの少なくとも1つを含む第1の活物質を含むカソードである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の基材が、NCM Ni88+またはリチウムリッチマンガンリッチ層のうちの少なくとも1つを含む第2の活物質を含むカソードである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の混合物及び前記第2の混合物のうちの少なくとも1つが、結合剤及び導電性材料のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記導電性材料が、グラフェンまたはグラフェンナノチューブのうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アノードまたはカソード用の基材上に多層コーティングを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このセクションの記述は、本開示に関連する背景情報を提供するだけであり、先行技術を構成しない場合がある。
【0003】
リチウムイオン電池の多層コーティングは、異種材料の効率的な物質輸送と負荷を提供できる。これらのコーティングは、導電性と電池の寿命と性能も向上させる。しかしながら、そのような従来の多層コーティングの調製は、多数のステップを含み、費用及び処理時間を増加させるツール及び設備を必要とする。
【0004】
本開示は、リチウムイオン電池の多層コーティングに関連するこれらの問題及び他の問題に対処する。
【発明の概要】
【0005】
このセクションは、本開示の一般的な概要を提供するものであり、その全範囲またはすべての特徴を包括的に開示するものではない。
【0006】
本開示の一形態は、アノードまたはカソード用の基材上に多層コーティングを生成する方法を提供する。この方法は、第1の溶媒と第1の活物質とを含む第1の混合物を調製することと、第2の溶媒と第2の活物質とを含む第2の混合物を調製することと、第1の混合物と第2の混合物を組み合わせてスラリーを形成することと、基材をスラリーでコーティングすることとを含む。第1の溶媒と第2の溶媒は混和しない。
【0007】
個別にまたは任意の組み合わせで使用できるこの方法の変形では、第1の溶媒は水ベースの溶媒であり、第2の溶媒は油ベースの溶媒または炭化水素ベースの溶媒であり、基材はアノードであり、第1の活物質は天然グラファイトであり、第2の活物質は天然グラファイトまたは人造グラファイトのうちの少なくとも1つであり、基材はカソードであり、第1の活物質はNCM(ニッケルコバルトマンガン)523及び原子組成で約50%以下のニッケル含有量を有するNCMのうちの少なくとも1つであり、第2の活物質がNCM Ni88+またはリチウムリッチマンガンリッチ層のうちの少なくとも1つであり、第1の混合物及び第2の混合物のうちの少なくとも1つは、結合剤と導電性材料のうちの少なくとも1つをさらに含み、導電性材料は、グラフェンまたはグラフェンナノチューブのうちの少なくとも1つである。
【0008】
本開示の別の形態は、リチウムイオン電池のアノードまたはカソード用の基材上をコーティングする方法を提供する。この方法は、第1の活物質を含む水性ベースの混合物を調製することと、第2の活物質を含む油ベースまたは炭化水素ベースの混合物を調製することと、水性ベースの混合物と油ベースまたは炭化水素ベースの混合物を組み合わせてスラリーを形成することと、基材をスラリーでコーティングすることとを含む。
【0009】
個別にまたは任意の組み合わせで使用できるこの方法の変形では、基材はアノードであり、第1の活物質は天然グラファイトであり、第2の活物質は天然または人造グラファイトであり、水性ベースの混合物はさらに結合剤を含み、油ベースまたは炭化水素ベースの混合物は結合剤をさらに含み、基材はカソードであり、第1の活物質は、NCM523及び原子組成で約50%以下のニッケル含有量を有するNCMのうちの少なくとも1つであり、第2の活物質は、NCM Ni88+またはリチウムリッチマンガンリッチ層のうちの1つである。
【0010】
本開示のさらなる形態は、リチウムイオン電池のアノードまたはカソード用の基材をコーティングする方法を提供する。この方法は、第1の溶媒が第1の活物質を含み、第2の溶媒が第2の活物質を含む、複数の不混和性溶媒を組み合わせること、及び基材を複数の不混和性溶媒でコーティングすることを含む。
【0011】
個別にまたは任意の組み合わせで使用できるこの方法の変形では、第1の溶媒は水性ベースの溶媒であり、第2の溶媒は油ベースの溶媒または炭化水素ベースの溶媒であり、基材はアノードであり、第1の活物質は天然グラファイトであり、第2の活物質は天然グラファイトまたは人造グラファイトのうちの少なくとも1つであり、基材はカソードであり、第1の活物質は、NCM523及び原子組成で約50%以下のニッケル含有量を有するNCMのうちの少なくとも1つであり、第2の活物質は、NCM Ni88+またはリチウムリッチマンガンリッチ層のうちの少なくとも1つである。
【0012】
適用可能なさらなる領域は、本明細書で提供される説明から明らかになるであろう。説明及び特定の例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。
【0013】
本開示を十分に理解できるようにするために、例として与えられたその様々な形態について、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】本開示による、スラリーでコーティングされた基材を示す。
【
図1B】スラリーが複数の層に分離した、本開示によるコーティングされた基材を示す。
【
図1C】乾燥して第1の溶媒及び第2の溶媒を除去した後の、本開示によるコーティングされた基材を示す。
【
図1D】
図1Cに示した多層コーティングされた基材の断面図を示す。
【
図2】本開示による、調製されたスラリーの概略図である。
【
図3】本開示の一形態による、アノードまたはカソード用の基材上に多層コーティングを生成する方法を示す。
【
図4】本開示の別の形態による、リチウムイオン電池のアノードまたはカソード用の基材をコーティングする方法を示す。
【
図5】本開示のさらなる形態による、リチウムイオン電池のアノードまたはカソード用の基材をコーティングする方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に記載の図面は、説明のみを目的としており、いかなる方法でも本開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【0016】
以下の説明は、本質的に単なる例示であり、本開示、適用、または使用を限定することを意図するものではない。図面全体を通して、対応する参照番号は、同様または対応する部品及び特徴を示すことを理解されたい。
【0017】
不混和性溶媒を使用して、スラリー内の複数の活物質間の層分離を自然に作成することにより、電池の基材をコーティングするための効率的な方法が提供される。
図1Aを参照すると、リチウムイオン電池の基材20(例えば、アノードまたはカソード)が示されている。基材20は、とりわけ、銅、アルミニウム、ニッケル、及びステンレス鋼を含むことができる。示されるように、基材20は、スラリー22でコーティングされる。
【0018】
スラリー22は、基材20の全表面をコーティングするように示されているが、スラリー22は、基材20の全表面未満をコーティングしてもよいことを理解されたい。例えば、スラリー22は、基材20の表面の約25%をコーティングしてもよく、基材20の表面の約50%をコーティングしてもよく、または基材20の表面の約75%をコーティングしてもよい。本開示の一態様では、スラリー22は、基材20の表面の約100%以下をコーティングすることができる。
【0019】
図2を参照すると、スラリー22は、第1の混合物36及び第2の混合物38を含む。第1の混合物36は、第1の溶媒40及び第1の活物質24を含む。第2の混合物38は、第2の溶媒42及び第2の活物質26を含む。非限定的な例として、第1の溶媒40は、とりわけ、水性の溶媒であってもよい。第1の活物質24は、例えば、とりわけ、天然グラファイト、NCM523、原子組成で約50%以下のニッケル含有量を有するNCMを含むことができる。第2の溶媒42は、とりわけ、油ベースの溶媒、炭化水素ベースの溶媒、または他の不混和性溶媒であってもよい。第2の活物質26は、とりわけ、天然グラファイト、人造グラファイト、NCM Ni88+、及びリチウムリッチマンガンリッチ層のうちの少なくとも1つを含むことができる。第1の溶媒40及び第2の溶媒42は、少なくとも不混和性の溶媒のペアを含む。例えば、不混和性のペアは、とりわけ、水-ヘプタン、水-油、水-ヘキサン、水-ペンタン、水-ジエチルエーテル、水-四塩化炭素、ヘプタン-アセトニトリル、またはシクロヘキサン-ジメチルホルムアミドを含み得る。
【0020】
一態様では、スラリー22は、少なくとも第1の活物質24、第2の活物質26、第1の溶媒40、及び第2の溶媒42をプラネタリーミキサーに分散させ、プラネタリーミキサーの攪拌速度に応じて、室温で約5分間以上から約120分以下の間混合することによって調製することができる。本開示の一態様では、スラリー22は、毎分約10回転(RPM)以上から約40RPM以下で撹拌される。別の態様では、スラリーを第1の速度で第1の期間撹拌し、次に第2の速度で第2の期間撹拌し、次に第3の速度で第3の期間撹拌することができる。本明細書では、第1、第2、及び第3の期間ならびに第1、第2、及び第3の速度が開示されているが、本開示はこれらに限定されないことを理解されたい。非限定的な例として、一変形では、スラリー22を約10RPMで約10分間撹拌し、次に約30RPMで約10分間撹拌し、次に約10RPMで約5分間撹拌する。プラネタリーミキサーの攪拌速度は、スラリー22の組成に依存する。必要に応じて、結合剤と導電性材料もプラネタリーミキサーに分散させることができる。
【0021】
上記は例として提供され、本開示の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。非限定的な例として、各混合物が他の各混合物と混和しない限り、追加の混合物を提供することができる。したがって、活物質の3つ以上の層が基材上に形成されてもよく、それでも本開示の範囲内であることが企図される。
【0022】
本開示の変形では、第1の混合物及び第2の混合物のうちの少なくとも1つは、結合剤及び導電性材料のうちの少なくとも1つをさらに含む。第1の混合物及び第2の混合物のうちの少なくとも1つは、それぞれ約80重量%以上から約99重量%以下の第1の活物質または第2の活物質、約1重量%以上から約10重量%以下の結合剤、及び約1重量%以上から約10重量%以下の導電性材料を含むことができ、第1の活物質、第2の活物質、結合剤、及び導電性材料を合計すると100%になる。一態様では、第1の混合物及び第2の混合物のうちの少なくとも1つは、それぞれ約90重量%の第1の活物質または第2の活物質、約5重量%の結合剤、及び約5重量%の導電性材料を含むことができる。結合剤は、コーティングが基材20に接着するのを助け、溶媒中での粒子(例えば、活物質)の良好な分散を達成するのを助ける。結合剤は、電池の過酷な環境に耐え、クラックを防ぐためにある程度の柔軟性も備えている必要がある。結合剤は、とりわけ、純粋なポリフッ化ビニレン(PVdF)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)で架橋されたPVdF、s-ブチルゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)で架橋されたPVdF、またはポリビニルアルコール(PVA)で架橋されたPVdF、及びそれらの混合物を含み得る。
【0023】
導電性材料は、電極層内の電子輸送を提供し、これにより、電極の導電性が向上する。導電性材料は、カーボンブラック、グラフェン、及びグラフェンナノチューブのうちの少なくとも1つであってもよい。しかしながら、本開示はこれに限定されない。
【0024】
一定時間後、例えば、約2分以上から約180分以下の後、スラリー22の第1の混合物と第2の混合物は、
図1Bに示すように、別個の層28、30に自然に分離する。第1の混合物と第2の混合物とのこの分離は、第1の溶媒と第2の溶媒の不混和性に起因する。
【0025】
図3に示される本開示の一形態では、アノードまたはカソード用の基材(例えば、基材20)上に多層コーティングを生成する方法100は、ステップ102で、第1の活物質を含む第1の溶媒を含む第1の混合物(前述の第1の混合物など)を調製することを含む。
【0026】
ステップ104で、第2の混合物(前述の第2の混合物など)が調製される。第2の混合物は、第2の溶媒及び第2の活物質を含む。
【0027】
基材がアノードであると考えられる場合、第1の活物質は天然グラファイトを含み得、第2の活物質は天然グラファイト及び人造グラファイトのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0028】
基材がカソードであると考えられる場合、第1の活物質は、とりわけ、NCM523及び原子組成で約50%以下のニッケル含有量を有するNCMのうちの少なくとも1つを含むことができ、第2の活物質は、とりわけ、NCM Ni88+及びリチウムリッチマンガンリッチ層のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0029】
第1の混合物及び第2の混合物の両方は、ほぼ室温で調製される。第1の混合物及び第2の混合物が調製された後、ステップ106で、第1及び第2の混合物が組み合わされて、スラリー(例えば、スラリー22)が形成される。ステップ108で、基材はスラリーでコーティングされる。一定時間後、第1の混合物と第2の混合物は分離して、第1の溶媒と第2の溶媒の不混和性の結果として別個の層を形成する。ステップ110で、スラリーを載せた基材を次に約120℃に加熱して第1の溶媒と第2の溶媒を除去し、それによって
図1Cに例として示すように多層コーティングを形成する。第1の活物質は多層コーティングの第1の層32を形成し、第2の活物質は多層コーティングの第2の層34(仮想線で示す)を形成すると考えられる。必要に応じて、多層コーティングを有する基材は、その後、ほぼ室温まで冷却される。プロセスはステップ112で終了する。ステップ112の後の多層コーティングを有する基材の断面図が、
図1Dに示されている。
【0030】
ここで
図4を参照すると、本開示の別の形態では、リチウムイオン電池のアノードまたはカソード用の基材をコーティングする方法200は、ステップ202で、前述のように第1の活物質を含む水性ベースの混合物を調製することを含む。
【0031】
ステップ204で、方法200は、前述のように、第2の活物質を含む油ベースまたは炭化水素ベースの混合物を調製することをさらに含む。水性ベースの混合物及び油ベースまたは炭化水素ベースの混合物の両方は、ほぼ室温で調製される。
【0032】
水性ベースの混合物と油ベースまたは炭化水素ベースの混合物とが調製された後、ステップ206で、水性ベースの混合物と油ベースまたは炭化水素ベースの混合物とを組み合わせてスラリーを形成する。ステップ208で、基材はスラリーでコーティングされる。一定時間後、水性ベースの混合物と油ベースまたは炭化水素ベースの混合物は分離して、水性ベースの混合物と油ベースまたは炭化水素ベースの混合物との不混和性の結果として別個の層を形成する。ステップ210では、次にスラリーを載せた基材を約120℃に加熱して水性ベースの溶媒と油ベースまたは炭化水素ベースの溶媒を除去し、それにより多層コーティングを形成する。必要に応じて、多層コーティングを有する基材は、その後、ほぼ室温まで冷却される。プロセスはステップ212で終了する。
【0033】
本開示の方法200の変形では、基材はアノードであり、第1の活物質はグラファイトである。本開示の方法200の別の変形では、基材はカソードであり、第1の活物質は、NCM523及び原子組成で約50%以下のニッケル含有量を有するNCMのうちの少なくとも1つである。本開示の方法200のさらなる変形では、第2の活物質は天然グラファイトまたは人造グラファイトである。本開示の方法200のさらに別の変形では、第2の活物質は、NCM Ni88+またはリチウムリッチマンガンリッチ層のうちの1つである。
【0034】
水性ベースの混合物及び油ベースまたは炭化水素ベースの混合物の少なくとも1つは、前述のように結合剤及び導電性材料のうちの少なくとも1つをさらに含んでもよい。
【0035】
図5に示されている本開示のさらなる形態では、リチウムイオン電池のアノードまたはカソード用の基材をコーティングする方法300は、ステップ302で、複数の不混和性溶媒を組み合わせることと、ステップ304で、基材を複数の非混和性溶媒でコーティングすることとを含む。第1の溶媒は第1の活物質を含み、第2の溶媒は第2の活物質を含み、例えば前述のものである。
【0036】
一定時間後、不混和性溶媒が分離して複数の層が形成され、各層は第1の活物質と第2の活物質のうちの1つを含む。ステップ306で、次に複数の不混和性溶媒をその上に有する基材を約120℃で加熱して不混和性溶媒を除去し、それによって多層コーティングを形成する。必要に応じて、多層コーティングを有する基材は、その後、ほぼ室温まで冷却される。プロセスはステップ308で終了する。
【0037】
本明細書において特に明示的に示されない限り、機械的/熱的特性、組成パーセンテージ、寸法及び/または公差、または他の特徴を示すすべての数値は、本開示の範囲を説明する際に「約」または「およそ」という言葉によって修正されるものとして理解されるべきである。この修正は、工業的実施、材料、製造、及び組み立て公差、ならびに試験能力を含む様々な理由から望まれる。
【0038】
本明細書で使用される場合、A、B、及びCのうちの少なくとも1つ、という語句は、非排他的な論理ORを使用した論理(A OR B OR C)を意味すると解釈されるべきであり、「Aのうちの少なくとも1つ、Bのうちの少なくとも1つ、及びCのうちの少なくとも1つ」を意味すると解釈されるべきではない。
【0039】
本開示の説明は本質的に単なる例示であり、したがって、本開示の内容から逸脱しない変形は、本開示の範囲内にあることが意図される。そのような変形は、本開示の趣旨及び範囲からの逸脱と見なされるべきではない。
【0040】
本発明によれば、アノードまたはカソード用の基材上に多層コーティングを生成する方法が提供され、この方法は、第1の溶媒及び第1の活物質を含む第1の混合物を調製することと、第2の溶媒及び第2の活物質を含む第2の混合物を調製することと、第1の混合物と第2の混合物を組み合わせてスラリーを形成することと、基材を溶媒でコーティングすることとを含み、第1の溶媒と第2の溶媒は不混和性である。
【0041】
本発明によれば、リチウムイオン電池のアノードまたはカソード用の基材をコーティングする方法が提供され、この方法は、第1の活物質を含む水性ベースの混合物を調製することと、第2の活物質を含む油ベースまたは炭化水素ベースの混合物を調製することと、水性ベースの混合物と油ベースまたは炭化水素ベースの混合物とを組み合わせてスラリーを形成することと、基材をスラリーでコーティングすることとを含む。