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特開2023-11870開花を変化させるための組成物及び方法ならびに生産力を向上させるためのアーキテクチャー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011870
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】開花を変化させるための組成物及び方法ならびに生産力を向上させるためのアーキテクチャー
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/29 20060101AFI20230117BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20230117BHJP
   A01H 6/54 20180101ALI20230117BHJP
   A01H 5/02 20180101ALI20230117BHJP
   A01H 5/10 20180101ALI20230117BHJP
   A01H 5/08 20180101ALI20230117BHJP
【FI】
C12N15/29 ZNA
A01H1/00 A
A01H6/54
A01H5/02
A01H5/10
A01H5/08
【審査請求】有
【請求項の数】43
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022177575
(22)【出願日】2022-11-04
(62)【分割の表示】P 2019520896の分割
【原出願日】2017-10-18
(31)【優先権主張番号】62/410,355
(32)【優先日】2016-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/411,408
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501231613
【氏名又は名称】モンサント テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブラウワー-トゥーランド ブレント
(72)【発明者】
【氏名】ダイ シュンホン
(72)【発明者】
【氏名】ガバート カレン
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドシュミット アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル ミヤ
(72)【発明者】
【氏名】マクディル ブラッド
(72)【発明者】
【氏名】オヴァディア ダン
(72)【発明者】
【氏名】サバッジ ベス
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ ヴィジャ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、低分子RNA分子のターゲティング配列を用いて花成性FT遺伝子または導入遺伝子の発現を減弱及び/または改良するのに有用な組換えDNA構築物、ベクター及び分子を提供する。
【解決手段】第1の発現カセット及び第2の発現カセットを含む組換えDNA構築物であって、第1の発現カセットが、第1の植物発現性プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有し、第2の発現カセットが、第1の発現カセットのポリヌクレオチド配列の少なくとも15連続ヌクレオチドに少なくとも80%相補的であるターゲティング配列を含むRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を有し、転写可能なDNA配列が、第2の植物発現性プロモーターに作動可能に連結される、組換えDNA構築物、該組換えDNA構築物を少なくとも1つの細胞のゲノムへ挿入したトランスジェニック植物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発現カセット及び第2の発現カセットを含む組換えDNA構築物であって、前記第1の発現カセットが、第1の植物発現性プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有し、前記第2の発現カセットが、前記第1の発現カセットの前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも15連続ヌクレオチドに少なくとも80%相補的であるターゲティング配列を含むRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を有し、前記転写可能なDNA配列が、第2の植物発現性プロモーターに作動可能に連結される、前記組換えDNA構築物。
【請求項2】
前記RNA分子の前記ターゲティング配列が、前記第1の発現カセットの前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも15連続ヌクレオチドまたは前記第1の発現カセットの前記ポリヌクレオチド配列によってコードされるmRNAに少なくとも85%相補的である、請求項1に記載の組換えDNA構築物。
【請求項3】
前記転写可能なDNA配列が、配列番号65、68、または69に対して少なくとも80%相補的な配列を有する、請求項1に記載の組換えDNA構築物。
【請求項4】
前記花成性FTタンパク質が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、及び30、またはその機能的断片からなる群から選択される配列に対して少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の組換えDNA構築物。
【請求項5】
前記花成性FTタンパク質が、以下のアミノ酸:配列番号14のアミノ酸位置85に対応する前記花成性FTタンパク質のアミノ酸位置におけるチロシンまたは他の非荷電極性または非極性残基;配列番号14のアミノ酸位置128に対応する前記花成性FTタンパク質のアミノ酸位置におけるロイシンまたは他の非極性残基;及び配列番号14のアミノ酸位置138に対応する前記花成性FTタンパク質のアミノ酸位置におけるトリプトファンまたは他の大きな非極性残基のうちの1つ以上をさらに含む、請求項4に記載の組換えDNA構築物。
【請求項6】
前記花成性FTタンパク質が、以下のアミノ酸:配列番号14の85位に対応するアミノ酸位置のリジンまたはアルギニンに対応するアミノ酸位置のヒスチジン;配列番号14の128位に対応するアミノ酸位置のリジンまたはアルギニン;及び配列番号14の138位に対応するアミノ酸位置のセリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニンのうちの1つ以上を有さない、請求項4に記載の組換えDNA構築物。
【請求項7】
前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、及び29からなる群から選択される配列に対し、少なくとも60%同一である、請求項1に記載の組換えDNA構築物。
【請求項8】
前記第1の植物発現性プロモーターが、配列番号31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63及び64、またはその機能的部分からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列に対し、少なくとも70%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、請求項1に記載の組換えDNA構築物。
【請求項9】
前記第2の植物発現性プロモーターが、配列番号49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、またはその機能的部分からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列に対し、少なくとも70%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、請求項1に記載の組換えDNA構築物。
【請求項10】
前記第2の植物発現性プロモーターが、配列番号70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、及び94、またはその機能的部分からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列に対し、少なくとも70%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、請求項1に記載の組換えDNA構築物。
【請求項11】
前記第1の植物発現性プロモーターが栄養期プロモーターであり、前記第2の植物発現性プロモーターが後期栄養期プロモーター及び/または生殖期プロモーターである、請求項1に記載の組換えDNA構築物。
【請求項12】
前記第1の植物発現性プロモーターが早期栄養期プロモーターである、請求項11に記載の組換えDNA構築物。
【請求項13】
前記第2の植物発現性プロモーターが生殖期優先型プロモーターである、請求項11に記載の組換えDNA構築物。
【請求項14】
前記第2の植物発現性プロモーターが前記転写可能なDNA配列の検出可能な発現を開始するよりも早い発育段階において、前記第1の植物発現性プロモーターが、前記花成性FTタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチド配列の検出可能な発現を開始する、請求項1に記載の組換えDNA構築物。
【請求項15】
トランスジェニック植物の少なくとも1つの細胞のゲノムへの、請求項1に記載の組換えDNA構築物の挿入を含む、前記トランスジェニック植物。
【請求項16】
前記トランスジェニック植物がダイズである、請求項15に記載のトランスジェニック植物。
【請求項17】
前記トランスジェニックダイズ植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、結節あたりのさやをより多く産生する、請求項16に記載のトランスジェニック植物。
【請求項18】
前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、結節あたりの花をより多く産生する、請求項15に記載のトランスジェニック植物。
【請求項19】
前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、前記トランスジェニック植物の結節あたりの種子、丸莢、長角果、果実、木の実またはさやをより多く産生する、請求項15に記載のトランスジェニック植物またはその一部。
【請求項20】
前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて早く開花する、請求項15に記載のトランスジェニック植物またはその一部。
【請求項21】
前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、結節あたりの総状花序をより多く有する、請求項15に記載のトランスジェニック植物またはその一部。
【請求項22】
植物発現性プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む組換えDNA構築物であって、前記ポリヌクレオチド配列が、前記ポリヌクレオチド配列によってコードされるmRNA転写産物中の標的部位をコードする配列を含み、前記mRNA転写産物の前記標的部位が内在性RNA分子に対して少なくとも80%相補的である、前記組換えDNA構築物。
【請求項23】
前記mRNA転写産物の前記標的部位が少なくとも17ヌクレオチド長である、請求項22に記載の組換えDNA構築物。
【請求項24】
前記mRNA転写産物の前記標的部位が前記内在性RNA分子に対して少なくとも80%相補的である、請求項22に記載の組換えDNA構築物。
【請求項25】
前記mRNA転写産物の前記標的部位が、配列番号95、96、97、103、104、または105に対して少なくとも80%相補的である、請求項22に記載の組換えDNA構築物。
【請求項26】
前記花成性FTタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号98、99、100、101、106、107、108、109または110に対して少なくとも80%同一である配列を有する、請求項22に記載の組換えDNA構築物。
【請求項27】
前記mRNA転写産物の前記標的部位が、配列番号99または107と少なくとも80%同一である、請求項22に記載の組換えDNA構築物。
【請求項28】
前記花成性FTタンパク質が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、及び30、またはその機能的断片からなる群から選択される配列に対して少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の組換えDNA構築物。
【請求項29】
前記植物発現性プロモーターが栄養期プロモーターである、請求項22に記載の組換えDNA構築物。
【請求項30】
前記植物発現性プロモーターが、分裂組織優先型または分裂組織特異的プロモーターである、請求項22に記載の組換えDNA構築物。
【請求項31】
前記植物発現性プロモーターが、配列番号31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63または64、またはその機能的部分からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列と少なくとも70%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、請求項22に記載の組換えDNA構築物。
【請求項32】
トランスジェニック植物の少なくとも1つの細胞のゲノムへの、請求項22に記載の組換えDNA構築物の挿入を含む、前記トランスジェニック植物。
【請求項33】
前記トランスジェニック植物がダイズである、請求項32に記載のトランスジェニック植物。
【請求項34】
前記トランスジェニックダイズ植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、結節あたりのさやをより多く産生する、請求項33に記載のトランスジェニック植物。
【請求項35】
前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、結節あたりの花をより多く産生する、請求項32に記載のトランスジェニック植物。
【請求項36】
前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、前記トランスジェニック植物の結節あたりの丸莢、長角果、果実、木の実またはさやをより多く産生する、請求項32に記載のトランスジェニック植物またはその一部。
【請求項37】
前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて早く開花する、請求項32に記載のトランスジェニック植物またはその一部。
【請求項38】
前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、結節あたりの総状花序をより多く有する、請求項32に記載のトランスジェニック植物またはその一部。
【請求項39】
栄養期プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物であって、前記花成性FTタンパク質の発現が、後期栄養組織及び/または生殖組織において抑制される、前記トランスジェニック植物。
【請求項40】
前記花成性FTタンパク質の発現が、低分子RNA分子によって抑制される、請求項39に記載のトランスジェニック植物。
【請求項41】
花成性FTタンパク質をコードし、栄養期プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列、及び前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的なターゲティング配列を含むRNA分子をコードする少なくとも1つの転写可能なDNA配列を有する組換えDNA構築物。
【請求項42】
トランスジェニック植物の少なくとも1つの細胞のゲノムへの、請求項41に記載の組換えDNA構築物の挿入を含む、前記トランスジェニック植物。
【請求項43】
栄養期プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードする組換えポリヌクレオチド配列を含み、前記ポリヌクレオチド配列の発現が、低分子RNA分子によって空間的及び時間的に制限される、トランスジェニック植物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照 本出願は、2016年10月19日に出願された米国仮出願第62/410,355号及び2016年10月21日に出願された米国仮出願第62/411,408号の優先権の利益を主張し、両文献はその全体を参照として本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、作物植物の遺伝子改変によって花芽発達及び栄養生長を調節し、収量を増加させるための組成物及び方法に関する。
【0003】
配列表の援用 2017年10月18日に作成された177,799バイト(MS-Windows(登録商標)で測定)のP34461WO00_SEQ.txtという名称のファイルに含まれる配列表は、110個のヌクレオチド配列を有し、配列表は、その全体を参照として本明細書に援用する。
【背景技術】
【0004】
栄養生長から開花への転換は、植物発生中の極めて重要なプロセスであり、作物植物における穀粒収量の生産に必要である。自律的な(環境的に独立した)経路に加えて、光周期性(すなわち日長)、春化(すなわち冬の寒さに対する応答)、及び植物ホルモン(例えば、ジベレリンまたはGA)を含む、陸生植物の開花時期を制御するいくつかの主要な経路が存在する。植物の開花時期を制御する分子ネットワークには、春化経路及び光周期性経路が含まれる。誘導光周期条件下では、ソース葉におけるCONSTANS(CO)活性はFLOWERING LOCUS T(FT)の発現を増加させ、これは分裂組織に移行してLEAFY(LFY)、APETALA1(AP1)及びSUPPRESSOR OF OVEREXPRESSION OF CO1(SOC1)を含む下流の開花活性化遺伝子の発現を誘発する。FLOWERING LOCUS C(FLC)及びTERMINAL FLOWER1(TFL1)などの他の遺伝子は、これらの遺伝子の発現または活性を阻害するように作用する。
【0005】
中日性植物を除くほとんどの顕花植物は一日の光周期に応答し、開花の誘導に必要とされる光周期条件に基づいて短日(SD)または長日(LD)植物として分類される。光周期とは、24時間周期内の明期間と暗期間の相対的な長さまたは期間を指す。一般的に、長日植物は、日長が光周期の閾値を上回る場合に(例えば、春期において日が長くなるにつれて)開花する傾向にあり、短日植物は、日長が光周期の閾値を下回る場合に(例えば、夏至以降、日が短くなるにつれて)開花する傾向にある。言い換えれば、SD植物は日が短くなるにつれて開花するのに対し、LD植物は日が長くなるにつれて開花する。ダイズは、植物がより短い日光条件にさらされると開花が誘発される短日(SD)植物の一例である。
【0006】
植物農家は、植物の収量を操作する、特に農学的に重要な作物の種子収量を高める新しい方法を常に模索している。したがって、当技術分野においては、様々な作物の収量を増加させる改良された組成物及び方法が常に求められている。現在、開花及び生殖発育に関連する農業形質を高めることにより、作物収量を向上させ得ることが提案されている。
【発明の概要】
【0007】
一態様によれば、本開示は、第1の発現カセット及び第2の発現カセットを有する組換えDNA構築物を提供し、第1の発現カセットは、第1の植物発現性プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含み、第2の発現カセットは、第1の発現カセットのポリヌクレオチド配列の少なくとも15連続ヌクレオチドに対し、少なくとも80%相補的なターゲティング配列を含むRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含み、転写可能なDNA配列は、第2の植物発現性プロモーターに作動可能に連結される。
【0008】
一態様によれば、本開示は、植物発現性プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む組換えDNA構築物を提供し、ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列によってコードされるmRNA転写産物中の標的部位またはセンサーをコードする配列を含み、mRNA転写産物の標的部位は、内在性RNA分子、例えば、内在性miRNAまたはsiRNA分子に対して少なくとも80%相補的である。
【0009】
一態様によれば、本開示は、花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の少なくとも15連続ヌクレオチドに対し、少なくとも80%相補的なターゲティング配列を含むRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む組換えDNA構築物を提供し、転写可能なDNA配列は、植物発現性プロモーターに作動可能に連結される。
【0010】
一態様によれば、本開示は、本開示の組換えDNA構築物を、植物、植物細胞、植物組織、及び植物部分のゲノムへ挿入したトランスジェニック植物、植物細胞、植物組織、及び植物部分を提供する。
【0011】
一態様によれば、本開示は、(a)本開示の組換えDNA構築物を用いて外植片の少なくとも1つの細胞を形質転換し、(b)形質転換した外植片からトランスジェニック植物を再生または発生させることを含む、トランスジェニック植物の産生方法を提供する。本方法はさらに、(c)組換えDNA構築物を有さない対照植物と比較して、以下の形質または表現型:早い開花、長い生殖期間または開花期間、結節あたりの花の数の増加、結節あたりの総状花序の数の増加、結節あたりのさや、丸莢、長角果、果実、または木の実、及び結節あたりの種子の数の増加の1つ以上を有するトランスジェニック植物を選択することを含み得る。
【0012】
一態様によれば、本開示は、農場においてトランスジェニック作物をより高密度で栽培することを含む、トランスジェニック作物の栽培方法を提供し、その場合、トランスジェニック作物には本開示の組換えDNA構築物を挿入する。
【0013】
一態様によれば、本開示は、第1の植物発現性プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列をコードするポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物を提供し、第2の発現カセットは、第1の発現カセットの少なくとも15連続ヌクレオチドに対し、少なくとも80%相補的なターゲティング配列を含むRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含み、転写可能なDNA配列は、第2の植物発現性プロモーターに作動可能に連結される。一態様によれば、本開示は、花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の少なくとも15連続ヌクレオチドに対し、少なくとも80%相補的なターゲティング配列を含むRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を有するトランスジェニック植物を提供し、転写可能なDNA配列は植物発現性プロモーターに作動可能に連結される。
【0014】
一態様によれば、本開示は、非トランスジェニック対照植物に比べて、平均で、結節あたりより多くの種子、さや、丸莢、長角果、果実、木の実または塊茎、例えば、非トランスジェニック対照植物に比べて、結節あたり、平均で少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、または少なくとも400%多くの種子、さや、丸莢、長角果、果実、木の実または塊茎を有し得るトランスジェニック植物を提供する。一態様によれば、トランスジェニック植物は、非トランスジェニック対照植物に比べて、結節あたり平均で、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10以上の種子、さや、丸莢、長角果、果実、木の実または塊茎を有し得る。一態様によれば、トランスジェニック植物は、非トランスジェニック対照植物に比べて、結節あたり平均で、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、2~3、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、または4~5以上の種子、さや、丸莢、長角果、果実、木の実または塊茎を有し得る。一態様によれば、トランスジェニック植物は、野生型または非トランスジェニック対照植物に比べて、結節あたり平均で、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、または少なくとも10以上の種子、さや、丸莢、長角果、果実、木の実または塊茎を有し得る。一態様によれば、トランスジェニック植物は、非トランスジェニック対照植物に比べて、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも20日、少なくとも25日、少なくとも30日、少なくとも35日、少なくとも40日、または少なくとも45日早く開花し得る。
【0015】
一態様によれば、本開示は、栄養期プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物を提供し、花成性FTタンパク質の発現は、後期の栄養組織及び/または生殖組織において抑制される。
【0016】
一態様によれば、本開示は、花成性FTタンパク質をコードし、栄養期プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列、及びそのポリヌクレオチド配列の少なくとも一部に相補的なRNAターゲティング配列をコードする少なくとも1つの配列を含む組換えDNA構築物を提供する。
【0017】
一態様によれば、本開示は、栄養期プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードする組換えポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物を提供し、そのポリヌクレオチド配列の発現は、低分子RNA分子によって空間的及び時間的に制限される。
【0018】
一態様によれば、本開示は、発現カセットを含む組換えDNA構築物を提供し、発現カセットは、プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含み、プロモーターは、配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53または54、またはそれらの機能部分からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列に対し、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】様々なFT遺伝子の各組み合わせについてのそれらの同一性の割合を含むヌクレオチド配列の比較を示すマトリックス表を提供する。
図1B】様々なFTタンパク質の各組合せについてのそれらの同一性の割合を含むタンパク質配列の比較を示すマトリックス表を提供する。
図1C-1】配列番号2のGm.FT2a、配列番号6のGm.FT2b、配列番号12のLe.FT、及び配列番号20のPt.FT、配列番号18のOs.HD3a、配列番号14のAt.FT、配列番号16のAt.TSF、配列番号10のNt.FT、配列番号4のGm.FT5a及び配列番号8のZm.ZCN8として識別される様々なFTタンパク質のCLUSTAL2.0.9多重配列アラインメントを提供する。
図1C-2】図1C-1の続きである。
図2】短日または長日の光照射の1、3及び5日後に収集したダイズの葉及び頂端組織における全FT転写レベルを示す。
図3-1】早期ダイズ発育時のGUS活性のモニタリングによるpAt.Erectaプロモーターの発現パターンを示す。A~Oは染色組織の白黒画像のセットである。A~Cは、3日齢の発芽苗における発現を示す。D~Iは、10日齢の栄養シュート(14時間の明期/10時間の暗期の光周期で生長)における発現を示す。J~Lは、16日齢の生殖シュートにおける発現を示す。M~Oは、30日齢の生殖シュートの成熟葉及び未成熟葉における発現を示す。バーは100μmである。
図3-2】図3-1の続きである。
図3-3】図3-2の続きである。
図4-1】早期ダイズ発育時のGUS活性のモニタリングによるpAt.Erectaプロモーターの発現パターンを示す。A~Oは、図3A~Oに対応しているが、青色GUS染色に対してフィルタリングしている。A~Cは、3日齢の発芽苗における発現を示す。D~Iは、10日齢の栄養シュート(14時間の明期/10時間の暗期の光周期で生長)における発現を示す。J~Lは、16日齢の生殖シュートにおける発現を示す。M~Oは、30日齢の生殖シュートの成熟葉及び未成熟葉における発現を示す。バーは100μmである。
図4-2】図4-1の続きである。
図4-3】図4-2の続きである。
図5】A~Fは、発育のR1期及び開花期(発芽後35~40日)の間のpAT.Erectaプロモーター存在下でのGUS発現パターンを示す。染色組織の白黒画像のセットである。Aは、花序の茎または小花柄での発現を示す(矢印)。Bは、花梗での発現を示す(矢印)。脈管構造及び柔組織細胞においても発現は示される(図5C)。雄ずいの花糸(矢印)においても発現は示される(図5D)。非受粉胚珠(矢印)においても発現は示される(図5E図5F)。バーは1mmである。
図6】発育のR1期及び開花期(発芽後35~40日)の間のpAT.Erectaプロモーター存在下でのGUS発現パターンを示す。A~Fは、図5A~Fに対応しているが、青色GUS染色に対してフィルタリングしている。Aは、花序の茎または小花柄での発現を示す(矢印)。Bは、花梗での発現を示す(矢印)。脈管構造及び柔組織細胞においても発現は示される(図6C)。雄ずいの花糸(矢印)においても発現は示される(図6D)。非受粉胚珠(矢印)においても発現は示される(図6E図6F)。バーは1mmである。
図7】走査型電子顕微鏡(eSEM)分析を用いた、植え付け後7日目の野生型対GmFT2a発現トランスジェニック植物由来の茎頂分裂組織(SAM)の切片画像を示す。
図8】Gm.FT2aを発現するトランスジェニック事象由来の腋生花序原基(植え付けの9日後に収集)と比較した、野生型植物由来の腋生花序原基(植え付けの27日後に収集)の走査型電子顕微鏡(eSEM)顕微鏡写真を示す。
図9】ダイズにおけるAt.Erectaプロモーターによって駆動されるGm.FT2a発現の効果を示す。Aは、正常な腋芽を示すヌル分離体を示す。それに対してB及びC(Gm.FT2a導入遺伝子についてホモ接合性またはヘミ接合性の植物に対応する)は、ヌル分離個体に比べて、早期開花及び結節あたりのさやの増加を示す。
図10】示すように、Gm.FT2a導入遺伝子についてヘミ接合性及びホモ接合性の植物の隣に、野生型ヌル分離個体の植物全体画像を示す。
図11】示すように、pAt.Erecta-Gm.FT2a導入遺伝子についてホモ接合性またはヘミ接合性の植物の主茎の画像を、ヌル分離個体と比較して示す。
図12】pAt.Erecta::Gm.FT2aまたはpAt.Erecta::Gm.FT2a/pAP1::miRNA-FT2a::T-Apxのいずれかで形質転換した植物の植物全体画像を示す。
図13】pAt.Erecta::Gm.FT2a単独またはpAt.Erecta::Gm.FT2a+miR172標的部位のいずれかで形質転換した植物の植物全体画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
収量を向上させるという目標は、農業全般にわたって全ての作物に共通である。本発明は、開花時期、生殖発育、及び栄養生長に関連する形質を改変し、一つ以上の開花及び/または収量関連形質または表現型、例えば、植物あたりの花、種子及び/またはさやの数、及び/または植物の結節あたりの(及び/または主茎あたりの)花、種子及び/またはさやの数を改善することによって、開花(被子植物)または種子植物の収量を向上させる方法及び組成物を含む。いかなる理論にも拘泥するものではないが、本発明の組成物及び方法は、花の分裂組織の数を増加させ、側生分裂組織の解放の同期を高め、及び/または植物のさやまたは種子の発育期間(生殖期間など)を延長することによって、植物の収量を向上させるように作用し得る。
【0021】
従前に、ダイズなどの短日植物を長日条件下(例えば、1日あたり約14~16時間の光照)で生長させ、次いでそれらの植物を短日生長条件(例えば、約3~21日間にわたって1日当たり約9~11時間の光照)にさらした後、植物を長日(無誘導)生長条件に戻すと、植物あたりのさや/種子数(ならびに結節あたり及び/または枝あたりのさや/種子数)が増加した植物が産生されたことが見出された。例えば、その全体の内容及び開示を参照として本明細書に援用する、米国特許第8,935,880号及び米国特許出願公開第2014/0259905号参照。栄養生長期における人工的な「短日」誘導光照射は、一つ以上の収量関連形質または表現型を変化させる(例えば、植物の結節あたりのさやまたは種子の数を増加させることによって)ように開花時期を変更することができるだけでなく、これらの照射の効果が、植物あたりの(及び/または植物の結節あたりの)花、種子及び/またはさやの数について、(i)短日曝露期間(すなわち、花成誘導シグナル用量)及び(ii)長日条件下での短日後の光周期の長さ(すなわち、短日誘導シグナル後の栄養生長誘導シグナルの用量または長さ)に応じた用量依存的なものであったことも明らかにした。より弱いかまたはより延長期間の短い早期短日誘導(eSDI)照射を受けている(長日生長条件に戻す前に)ダイズ植物は、植物あたりの花、さや及び種子が多く、より正常な草高及び成熟度を有していた一方で、より強いかまたはより長期間のeSDI照射に曝露させたダイズ植物では、植物あたりのさや及び種子の数がより少なく(おそらくは、結節あたりのさや及び/または種子の数は増加しているにもかかわらず)、より短く、より早く生長が停止する植物が生じた。
【0022】
ダイズにおけるこの短日誘導表現型を用いて、これらの植物において発現が変化した遺伝子を転写プロファイリングにより同定した。これらの研究により、短日誘導照射に応答して発現が増加した内在性FT遺伝子Gm.FT2aを含む、これらの照射ダイズ植物において発現が変化したいくつかの遺伝子を同定した。したがって、トランスジェニックFT発現を短日誘導の代わりに用いて、種子の収量を増加させるか、植物の生殖形質もしくは表現型を改変するか、またはその両方を成し得ることが提案される。顕花植物または種子植物におけるGm.FT2a導入遺伝子もしくは他のFT配列、またはその機能的断片、ホモログもしくはオルソログの異所性発現を用いて、種子の収量を増加させ、及び/または植物あたりのさや/種子の数(及び/または植物の結節もしくは主茎あたりのさや/種子の数)の増加を含み得る1つ以上の生殖表現型もしくは形質を改変してもよい。以下にさらに説明するように、特定の植物種に応じて、これらの収量関連のまたは生殖の表現型または形質は、マメ科植物のさやに類似する他の植物構造、例えば、丸莢、長角果、果実、木の実、塊茎などにも適用し得る。したがって、FT配列を異所的に発現する植物は、代わりに、植物の結節(複数可)、主茎、及び/または枝(複数可)あたり、より多くの丸莢、長角果、果実、木の実、塊茎などを、または植物あたり、より多くの丸莢、長角果、果実、木の実、塊茎などを有し得る。
【0023】
Flowering Locus T(FT)遺伝子は、高等植物において重要な役割を果たし、開花経路を統合するように機能する。FTタンパク質は、葉から茎頂端に移動し、多様な種における生殖発育の開始を誘発する移動性シグナルまたはフロリゲンとして機能することが示されている。例えば、その内容及び開示の全体を参照として本明細書に援用する、Jaeger,K.E.et al.,“Interlocking feedback loops govern the dynamic behavior of the floral transition in Arabidopsis,”The Plant Cell,[25]:820-833(2013);Corbesier,L et al.,“FT protein movement contributes to long distance signaling in floral induction of Arabidopsis,”Science [316]:1030-1033(2007);Jaeger,KE et al.,“FT protein acts as a long range signal in Arabidopsis,”Curr Biol [17]:1050-1054(2007);及びAmasino,R.M.et al.,“The Timing of Flowering,”Plant Physiology,[154](2):516-520(2010)参照。Arabidopsisでは、FTタンパク質は、分裂組織内の14-3-3及びFlowering Locus D(FD)タンパク質と結合して開花複合体を形成し、茎頂でAPETATAL1(AP1)及びSOC1などの主要な開花分裂組織の同一性遺伝子の活性化を引き起こす。例えば、Taoka,K.et al.,“14-3-3 protein act as intracellular receptors for rice Hd3a florigen.”Nature [476]:332-335(2011)参照。TERMINAL FLOWER1(TFL1)遺伝子は、茎頂分裂組織(SAM)の中心を栄養状態に維持するFT標的の重要なリプレッサーである。TFL1は、LEAFY(LFY)及びAP1遺伝子を抑制することによって作用する。したがって、標的組織中のFT及びTFL1の相対濃度が競合的に作用して、分裂組織の栄養相から、さらなる栄養生長を停止させ得る生殖相への転換のタイミングを制御する。例えば、Abe,M et al.,Science [309]:1052-1055(2005);及びMcGarry,RC et al.,Plant Science [188]/[189]:71-81(2012)参照。
【0024】
FT遺伝子は多くの様々な種から同定されており、異所性FT発現は早期開花を誘導することが報告されている。例えば、その内容及び開示の全体を参照として本明細書に援用する、Kong,F.et al.,“Two Coordinately Regulated Homologs of Flowering Locus T Are Involved in the Control of Photoperiodic Flowering in Soybean,”Plant Physiology [154]:1220-1231(2010);Turck,F.et al.,“Regulation and identity of florigen:Flowering Locus T moves center stage,”Ann Rev Plant Biol [59]:573-594(2008);Blackman,BK et al.,“The role of recently derived FT paralogs in sunflower domestication,”Curr Biol [20]:629-635(2010);Lifschitz,E.et al.,“The tomato FT orthologs triggers systemic signals that regulate growth and flowering and substitute for diverse environmental stimuli,”PNAS [103]:6398-6403(2006);Trankner,C.et al.,“Over-expression of an FT-homologous gene of apple induces early flowering in annual and perennial plants,”Planta [232]:1309-1324(2010);及びXiang,L.et al.,“Functional analysis of Flowering Locus T orthologs from spring orchid (Cymbidium goeringii Rchb.f.)that regulates the vegetative to reproductive transition,”Plant Cell & Biochem [58]:98-105(2012)参照。しかしながら、FT導入遺伝子の発現を用いた先行研究は、非常に重度の表現型、非細胞自律(全身)表現型、または対照よりも早く開花し、発育の早期に生長が停止する植物または実生を伴う自律葉特異的表現型のいずれかを生じる構成的または組織特異的プロモーターを使用していた。これらの知見をもとに、異所性FT発現は、開花の誘導または開花時期の変更による植物の収量増加の実行可能なアプローチとして一般的に見なされてはいなかった。
【0025】
理論に拘泥するものではないが、早期花成シグナル(例えば、ダイズ及び他のSD植物については短日)は、植物における栄養相から生殖相への早期の転換を誘発し得るが、その主要な分裂組織のサブセットの生長停止も引き起こし得る。しかしながら、これらの植物を初期SDシグナルの後に非誘導的生長条件(例えば、SD植物については長日)に戻すことによって、植物の残りの分裂組織の予備を保存して植物の継続的な栄養生長を可能にし得る。したがって、より長期の生殖相の間に、結節あたり(及び/または植物あたり)の生産的な花、さや及び/または種子がより多く発育し得る。早期花成誘導では、植物の生殖発育と栄養生長との間に、より大きな重複もまた生成される場合があり、それはさらに生殖期間及び/または開花期間の延長を促進するかまたはそれと同時に起こり得る。本明細書中で使用する場合、「生殖期間」とは、開花の開始から種子/さやの発育の終了及び/または結莢までの期間の長さを指し、「開花期間」または「開花の期間」とは、最初の開花の出現から、最後の開花が閉じるまでの期間の長さを指す。分裂生長の停止及び植物の成熟に起因して、後に植物資源の減少と同時に起こり得る、短日植物における通常の花芽発達とは異なり、早期の花成誘導後に非誘導的な生長条件に戻すことによって、より豊富な資源が利用可能であり、より早期に同期化した成功裏の(すなわち、生長停止しない)花、さや及び/または種子を、植物あたり、より多く産生することに向かわせ得る。
【0026】
しかしながら、上述のように、花成誘導シグナル(例えば、早期の短日条件)はまた、早期開花に加えて植物の早期生長停止を引き起こし得る。したがって、花成誘導シグナルの最適な用量及びタイミングは、(i)早期花成誘導シグナルによる栄養相から生殖相への早期転換及び/または開花の同期(植物の各結節での潜在的な収量をもたらす)を、(ii)より早期の生長停止(節間部の数が少なく、分枝が少なく、植物あたりの結節及び/または花がより少ない、より小さな植物をもたらす)に対してバランスさせることによって収量を最大にするために必要とされ得る。植物の早期生長停止を低減または最小化する一方で開花を誘導するのに、より低い用量の花成誘導シグナルで十分である可能性があり、それにより、結節あたり(及び/または植物あたり)の花、さや及び/または種子の数が増加してより大きな植物が産生される。他方、より高い用量の花成誘導シグナルは、(早期開花に加えて)植物の早期生長停止を引き起こして、通常の生長条件下での野生型または対照植物に比べて、おそらく結節あたり(及び/または植物あたり)の花、さや及び/または種子の数が多いにもかかわらず、植物あたりの節間部及び/または枝がより少ない、より小さい植物サイズであるために、植物あたりの花、さや及び/または種子が比較的少ない、より小さい植物を産生し得る。上記のように、異所性FT発現のこれらの効果には、特定の植物種に応じて、結節あたり(及び/または植物あたり)の、より多くの丸莢、長角果、果実、木の実、塊茎などが含まれ得る。
【0027】
ダイズにおける上記の「短日」光誘導表現型を用いて、転写プロファイリングを介してそれらの植物において発現が変化した遺伝子をスクリーニングし、その結果、短日誘導処理に応答して発現が増加した内在性FT遺伝子Gm.FT2aを同定した。したがって、Gm.FT2aのような植物由来のFT導入遺伝子の発現を花成誘導シグナルとして使用することにより、FT導入遺伝子を有さない野生型または対照植物に比べて、早期開花ならびに結節あたり(及び/または植物あたり)の花、さや及び/または種子の増加を引き起こし得る。本発明の実施形態によれば、栄養生長期の間の花成性FT発現のタイミング、位置及び用量の適切な制御を用いて、開花を誘導し、FT導入遺伝子を有さない野生型または対照植物に比べて結節あたりの花、さや及び/または種子が増加した植物を産生することができる。eSDI光線照射の代わりに、FTを栄養芽分裂組織において低レベルで発現させ、早期花成誘導シグナルを提供してもよい。したがって、栄養生長期の間により低い分裂組織発現を有するErecta遺伝子由来のプロモーター(pErectaまたはpEr)を、Gm.FT2a導入遺伝子を用いた初期試験のために選択した。しかしながら、構成的FT発現が重度の早期生長停止表現型を有する植物を産生すること、さらには末梢で産生され葉から転位するFTの作用部位が分裂組織内にあることを示した先行研究を考慮すると、分裂組織でFTを直接発現させることにより、構成的FT発現に比べて、さらに強力で重度の表現型(及び/または生存不能な植物)を生み出し得る可能性があった。
【0028】
pErectaプロモーターを用いたGm.FT2a過剰発現の効果はR0形質転換ダイズ植物において直ちに認められ、このダイズ植物が、早期開花、種子収量の減少(例えば、約8種子/植物のみ)、及び非常に早期の生長停止を示したことは、花成誘導と花成抑制/栄養生長のバランスが開花と早期生長停止を強く選好していたことを示唆した。しかしながら、これらの植物から、さらなる実験を実施できる、十分なR1種子を回収した。温室内で長日(花成抑制)の光周期条件下でR1ダイズ種子を生長させることにより、R0植物で観察される早期開花及び生長停止表現型を遅延させ得ることを提案した。理論的な用量反応を考慮し、FT2aホモ接合型、ヘミ接合型、及びヌルダイズ植物の分離を温室内で一緒に試験し、FT過剰発現から生じる用量反応を評価することをさらに提案した。これらの実験において(以下にさらに記載するように)、分離植物は異なる表現型を有することが観察された:ヌル植物が、植物アーキテクチャー及び結節あたり(及び植物あたり)のさやの点で野生型植物と類似していた一方で、ホモ接合型は、重度の矮性表現型を伴って(おそらくは結節あたりのさや数の増加を伴うが)早期に生長停止した。しかしながら、ヘミ接合型植物は、より大きく、ヌルまたは野生型植物とより類似していたが、結節あたり(及び/または植物あたり)のさやの数の増加と共に開花表現型の増加を示した。これらの知見は、花成性FT導入遺伝子の栄養相及び/または分裂期発現を用いて高収量植物(eSDI照射と同様)を産生し得ること、ならびに、弱い分裂促進プロモーターの制御下にあるFT2a導入遺伝子についてヘミ接合型であるダイズ植物が、長日(栄養相)条件下で生長させた場合にホモ接合型FT2a植物で観察される、より重度の早期生長停止及び短い草高表現型を伴わずに、結節あたりのさやの増加の高収率表現型を示したことから、FT発現の効果が用量依存的であり得ることを示す。
【0029】
したがって、適切な用量レベルでのFT導入遺伝子の栄養期での発現を用いて、FT導入遺伝子を有さない野生型または対照植物に比べて、早期の開花を誘導し、結節あたりの花、さや、丸莢、長角果、果実、木の実、塊茎及び/または種子を増加させる植物を産生し得る。FTの適切な用量レベルは、FT導入遺伝子の発現を駆動するために選択するプロモーターに基づいて達成され得る。栄養芽分裂組織におけるより弱いかまたはより低い発現レベルのFT導入遺伝子を用いて、生殖発育及び/または花芽発達の持続期間を維持または延長し、植物生長の停止を早めさせすぎないようにする一方で、早期花成誘導シグナルを提供し得る。ここでも、栄養生長期の間に低い分裂組織発現を有するErecta遺伝子由来のプロモーター(pErectaまたはpEr)を、ダイズ植物におけるGm.FT2a導入遺伝子を用いた初期試験のために選択した。以下にさらに記載するように、栄養芽分裂組織において類似のパターン及び発現レベルを有する他のプロモーターは、ダイズ植物において早期開花及び/または結節あたりのさやの増加などの類似の効果を有していた。導入遺伝子の発現レベルに影響を及ぼすためのプロモーター選択とは別に、またはそれに加えて、ダイズまたは他の種由来の異なるFT導入遺伝子を使用してもよく、それは植物細胞におけるトランスジェニックFTタンパク質の活性のレベルに応じて栄養芽分裂組織に送達される早期FTシグナルの「用量」を減らし得る。実際、ダイズ及び他の植物種由来のいくつかのFT導入遺伝子を試験し、ダイズ植物においてトランスジェニック発現させると開花及び他の生殖形質に様々な影響を与えることが示された。
【0030】
理論に拘泥するものではないが、トランスジェニックFT植物における結節あたりのさやの数の増加は、影響を受けたそれぞれの結節(複数可)における栄養茎頂及び腋芽分裂組織から誘導される花序及び花芽分裂組織の数の増加に少なくとも部分的には起因する可能性があり、それは、それらの結節(複数可)においてより多くの花及び/または総状花序の解放を生じさせ得る。FT過剰発現に応答して植物の各結節で誘導される花芽分裂組織の数のそのような増加は、開花時期及び/または生殖期間とは無関係であり得る1つ以上の機構または経路を通じて作用し得る。しかしながら、分裂組織の変化は、最初は微視的である可能性があるため、分裂組織への生殖変化がすでに生じ始めている場合でも、単純な目視検査ではそのような段階で「早期開花」の誘発は観察されない。早期の栄養相でのFT発現は、トランスジェニック植物の1つ以上の結節(複数可)において、より生殖性の分裂組織を正常より早く形成及び発生させる可能性がある。その後、これらの生殖分裂組織は、各結節において、より多くの総状花序を形成させ、花と共に伸長させることができる可能性がある。理論に拘泥するものではないが、生殖相の間の後期FT発現は、各結節でのさらなる花芽発達を抑制するように機能し得ることがさらに理論づけられる。したがって、それぞれの総状花序内で後期に発達する花は生長停止する可能性があり、したがって、より多くの植物資源を総状花序内でより早く発達する花及び生殖構造に向かわせ、より大型のさやをより効果的に産生し得る。早期花成誘導シグナルはまた、既存の潜在的分裂組織の大部分を生殖性にし、花芽発達を引き起こし得る。したがって、花芽発達の同調性の増加が、植物の結節あたりに形成されるより多数の成熟型のさやと共に生じ得る。
【0031】
しかしながら、上記のように、花成誘導シグナルはまた、早期開花に加えて植物発育の早期生長停止を引き起こす。pErectaプロモーターなどの栄養期分裂組織プロモーターを有する様々なFT導入遺伝子(複数可)を発現するダイズ植物は、植物の主茎上に結節あたりのさやをより多く有するが、これらのトランスジェニックFT植物の多くは、依然として植物の草高及び/または分枝の低下を示し、その結果、植物、主茎及び/または枝(複数可)あたりの結節数の低下を示す。したがって、植物におけるFT発現のレベルを、特定の栄養期プロモーターの選択によって制御し、発育異型を軽減し、早期生長停止を遅らせることによって収量を増強し得る一方で、トランスジェニックFT発現ダイズ植物では依然として開花結節数が減少する可能性があり、それは、主茎上に存在する結節あたりのさやの数を増加させるものの、植物の全体的な収量を低下させ得る。
【0032】
したがって、現在、栄養期にFT発現を有するダイズ植物において、結節あたりのさやの増加は観察されるものの、FT導入遺伝子発現のレベルをさらに減弱、制御または制限し、これらの早期生長停止表現型を軽減し、それによってより最適な収率を達成する必要があり得ることを提案する。早期生長停止を回避または遅延することなどによって、植物あたりの結節数を増加させる一方で、植物の結節あたりのさや(または他の植物構造、例えば、丸莢、長角果、果実、木の実、塊茎など)の数の増加を維持できる場合、その結果として植物の全収量はさらに最適化または向上する可能性がある。
【0033】
本発明の実施形態により、現在、サプレッションによりFT導入遺伝子発現のレベル及び/またはタイミングを減弱または改変することによって、植物の収量を増加または増強し得ることを提案する。以下にさらに記載するように、サプレッションのためにトランスジェニックFTを標的とする天然及び/または人工的に作製されたRNA分子を介して、トランスジェニックFTの量及び/または時空間パターンを低減及び/または改良してもよい。腋芽分裂組織及び頂端分裂組織におけるトランスジェニックFT発現は、それらの花芽分裂組織への転換を開始し得るが、生殖生長期の間などにおける継続的なFT発現は、分裂組織の早期生長停止ならびに全体的な草高及び分枝の阻害を引き起こし得ると考えられる。FT導入遺伝子を発現するための栄養期プロモーターを選択して使用し、早期生長停止表現型を減少させ、植物の栄養生長及び生殖期間を維持または延長し得るが、FT導入遺伝子のさらなるサプレッションは、早期生長停止表現型をさらに軽減し、植物の生長、発育及び生殖期間を向上または強化し得る。実際、本発明者らは、ダイズにおけるFT導入遺伝子のサプレッションが、トランスジェニックFT発現単独(すなわち、サプレッションなし)に比べて、より正常な草高及び植物あたりのより多数の結節を有する分枝をもたらし得ることを観察した。FT導入遺伝子の複合発現/サプレッションを有するこれらのダイズ植物は、結節あたりのより多数のさやを依然として維持する一方で、トランスジェニックFT発現のみで早期生長停止表現型をさらに軽減する。
【0034】
FT導入遺伝子のサプレッションは様々な方法で達成し得る。第1のアプローチによれば、第1の発現カセットのFT導入遺伝子を、サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする第2の発現カセットによって抑制してもよい。RNA分子は、植物発現性プロモーターに作動可能に連結された転写可能なDNA配列によってコードされていてもよく、転写可能なDNA配列は、FT導入遺伝子の少なくとも一部及び/またはそれに相補的な配列に対応するターゲティング配列を含む。第2のアプローチによれば、FT導入遺伝子は、内在性RNA分子の標的部位をコードしていてもよく、標的部位は内在性RNA分子と相補的であり、それにより、内在性RNA分子はサプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とする。内在性RNA分子は、FT導入遺伝子を発現する植物細胞中に天然に存在し得る。このアプローチによれば、サプレッションのために第2の発現カセットはなくてもよい。これらの抑制アプローチは、両方を一緒に使用してもよい。例えば、FT導入遺伝子が第1の発現カセット中に存在し、これを、FT導入遺伝子の少なくとも一部(及び/またはそれに相補的な配列)(すなわち、第1の標的部位)に対応するターゲティング配列を含むRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む第2の発現カセットと組み合わせて使用してもよく、それによりRNA分子はサプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とし、FT導入遺伝子は、サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とする内在性RNA分子のための第2の標的部位をさらに含む。第1及び第2の標的部位は、配列が同じでも異なっていてもよく、FT転写産物内の同じまたは異なる位置(複数可)に存在してもよい。本明細書中で使用する場合、第1の配列または分子が第2の配列または分子と類似、同一、及び/または相補的である場合、例えば、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超または100%同一及び/または相補的である場合、第1のポリヌクレオチド配列または分子は、第2のポリヌクレオチド配列または分子に「対応する」。
【0035】
本発明の一態様によれば、第1の発現カセット及び第2の発現カセットを含む少なくとも2つの発現カセットを有する組換えDNA分子、ベクターまたは構築物を提供し、第1の発現カセットは、第1の植物発現性プロモーターに作動可能に連結されたFTタンパク質(すなわち、FT導入遺伝子)を含み、第2の発現カセットは、第2の植物発現性プロモーターに作動可能に連結された転写可能DNA配列を含み、転写可能なDNA配列は、FT導入遺伝子の少なくとも一部に対応する配列を有する。転写可能なDNA配列は、第1の発現カセットのFTタンパク質(すなわち、FT導入遺伝子)をコードするポリヌクレオチド配列によってコードされるRNA前駆体または成熟mRNAの少なくとも一部に相補的なターゲティング配列を含むRNA分子をコードしていてもよく、それにより、RNA分子はFT導入遺伝子を抑制するように機能する。転写可能なDNA配列によってコードされるRNA分子の「ターゲティング配列」は、RNA分子の全部または一部を有していてもよく、FT導入遺伝子の少なくとも一部及び/またはそれに相補的な配列に対応する転写可能なDNA配列の配列によってコードされる。したがって、転写可能なDNA配列は、FT導入遺伝子のmRNA転写産物の少なくとも一部に相補的なターゲティング配列を含むRNA分子をコードしていてもよい。特定のFT導入遺伝子及び/または転写可能なDNA配列によってコードされるRNA分子のターゲティング配列に応じて、内在性FT遺伝子は、FT導入遺伝子に加えて第2の発現カセットによっても抑制され得るか、または内在性FT遺伝子は、FT導入遺伝子の代わりに第2の発現カセットによって抑制され得る。FT遺伝子及びタンパク質配列の多くは、形質転換される植物中の1つ以上の天然または内在性FT遺伝子(複数可)と同一であるかまたは類似していてもよく、したがってRNA分子の設計及びそれらの天然及び内在性遺伝子(複数可)のサプレッションのためのターゲティング配列の基礎として役立ち得る。転写可能なDNA配列が、FT導入遺伝子、内在性FT遺伝子、またはその両方を標的とし、抑制するRNA分子をコードするかどうかにかかわらず、FT遺伝子及び導入遺伝子の全発現レベル及び活性を、トランスジェニック植物の1つ以上の組織において制御、制限または低減してもよい。一態様では、ターゲティング配列を含む核酸分子は、相補的核酸配列(例えば標的部位)とハイブリダイズして二本鎖核酸(例えばdsRNA)を形成することができる。一態様では、第1の核酸分子(例えば、サプレッションRNA分子)のターゲティング配列の第2の核酸分子(例えば、FT導入遺伝子のmRNA転写産物)の標的部位配列へのハイブリダイゼーションは、第2の核酸分子のサプレッションをもたらすことができる。例えば、FT導入遺伝子のポリヌクレオチド配列が、それを発現する植物に固有の(または密接に関連する)ものである場合、特にRNA分子がFT導入遺伝子のコード(エキソン)配列を標的とする場合、RNA分子はさらに、対応する天然FT遺伝子をサプレッションのために標的とする。そのような場合、転写可能なDNA配列によってコードされるRNA分子を介した天然及びトランスジェニックFT遺伝子の複合的なサプレッションは、植物の関連する組織におけるFTタンパク質の用量をさらに低減する可能性がある。しかしながら、天然FT遺伝子のトランスジェニック発現を用いても、5’UTR、3’UTR、リーダー、及び/またはイントロン配列(複数可)などの非タンパク質コード配列は、そのコードされたFTタンパク質の配列に影響を及ぼすことなく変化させることができる。本明細書中で使用する場合、導入遺伝子の「ポリヌクレオチドコード配列」または「ポリヌクレオチド配列」は、タンパク質コード(またはエキソン)配列(複数可)だけでなく、コードされたRNA前駆体または成熟mRNA配列の一部、例えば、5’UTR、3’UTR、リーダー、及び/またはイントロン配列(複数可)などを形成し得る、導入遺伝子のコード配列に関連する他の転写可能な配列も含み得る。したがって、本明細書中で使用する場合、FT導入遺伝子の「ポリヌクレオチドコード配列」及びFTタンパク質をコードする「ポリヌクレオチド配列」は同じ意味で使用され得る。
【0036】
本発明の実施形態によれば、第1の発現カセットと第2の発現カセットを、同じ組換えDNA分子、ベクターまたは構築物中に存在させてもよく、あるいは第1の発現カセットと第2の発現カセットを、別々の組換えDNA分子、ベクター及び/または構築物中に存在させてもよい。したがって、いくつかの実施形態によれば、第1の組換えDNA分子、ベクターまたは構築物、及び第2の組換えDNA分子、ベクターまたは構築物を含む、2つの組換えDNA分子、ベクターまたは構築物を提供してもよく、その場合、第1の組み換えDNA分子、ベクターまたは構築物は、第1の植物発現性プロモーターに作動可能に連結されたFTタンパク質(すなわちFT導入遺伝子)をコードするポリヌクレオチド配列を有する第1の発現カセットを含み、第2の組み換えDNA分子、ベクターまたは構築物は、第2の植物発現性プロモーターに作動可能に連結された転写可能なDNA配列を有する第2の発現カセットを含み、転写可能なDNA配列は、FT導入遺伝子の少なくとも一部、及び/またはそれに相補的な配列に対応する。転写可能なDNA配列は、第1の発現カセットのFT導入遺伝子によってコードされるRNA前駆体または成熟mRNAの少なくとも一部に相補的なターゲティング配列を含むRNA分子をコードしていてもよく、それにより、RNA分子は、FT導入遺伝子を抑制するように機能する。
【0037】
本明細書中に提供するようなFT導入遺伝子を含む組換えDNA分子、ベクターまたは構築物を植物の形質転換に用いて、FT導入遺伝子を有するトランスジェニック植物を生成してもよい。いくつかの実施形態によれば、FT導入遺伝子は、第1の発現カセット中に存在し、これを、FT導入遺伝子の少なくとも一部及び/またはそれに相補的な配列に対応するターゲティング配列を有するRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む第2の発現カセットと組み合わせて用いてもよく、その場合、第1及び第2の発現カセットの両方を、同じまたは別々の形質転換事象(複数可)として植物に形質転換する。いくつかの実施形態によれば、植物に形質転換されたFT導入遺伝子は、FT導入遺伝子を標的とし、サプレッションを引き起こし得る内在性RNA分子の標的部位を有していてもよい。
【0038】
FT導入遺伝子のポリヌクレオチドコード配列は、Gm.FT2a(配列番号1)、またはGm.FT2aタンパク質をコードする任意のポリヌクレオチド配列(配列番号2)を有していてもよい。FT導入遺伝子のポリヌクレオチドコード配列はまた、ダイズまたは他の植物における他のFT遺伝子に対応していてもよい。例えば、本実施形態によるFT導入遺伝子として使用してもよいダイズ由来の他のポリヌクレオチドコード配列として:Gm.FT5a(配列番号3)もしくはGm.FT5aタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号4)、またはGm.FT2b(配列番号5)もしくはGm.FT2bタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号6)が挙げられる。さらに、使用してもよい他の植物種由来のポリヌクレオチドコード配列の例として:トウモロコシ由来のZm.ZCN8(配列番号7)もしくはZm.ZCN8タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号8)、タバコ由来Nt.FT様もしくはNt.FT4(配列番号9)またはNt.FT様もしくはNt.FT4タンパク質(配列番号10)をコードするポリヌクレオチド配列、トマト由来Le.FTもしくはSFT(配列番号11)またはLe.FTもしくはSFTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号12)、Arabidopsis由来At.FT(配列番号13)またはAt.FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号14)、Arabidopsis由来At.TSF(配列番号15)またはAt.TSFタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号16)、イネ由来Os.HD3a(配列番号17)またはOs.HD3aタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号18)、あるいはPopulus trichocarpa由来Pt.FT(配列番号19)またはPt.FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(配列番号20)が挙げられる。使用してもよいFT導入遺伝子及びタンパク質のポリヌクレオチドコード配列のさらなる例として、以下のものが挙げられる:ダイズ由来Gm.FT5b(配列番号21)、またはGm.FT5bタンパク質をコードする任意のポリヌクレオチド配列(配列番号22);ワタ由来Gh.FT1(配列番号23)、またはGh.FT1タンパク質をコードする任意のポリヌクレオチド配列(配列番号24);キャノーラ由来Bn.FTA2a(配列番号25)、またはBn.FTA2aタンパク質をコードする任意のポリヌクレオチド配列(配列番号26);コムギ由来Ta.FT3B1(配列番号27)、またはTa.FT3B1タンパク質をコードする任意のポリヌクレオチド配列(配列番号28)、あるいはエンドウ由来Ps.FTa1(配列番号29)、またはPs.FTa1タンパク質をコードする任意のポリヌクレオチド配列(配列番号30)。公知のアミノ酸配列を有する他の種由来のさらなるFTタンパク質をコードするFT導入遺伝子のポリヌクレオチドコード配列もまた、本発明の実施形態に従って使用してもよく、これには例えば以下のもの:リンゴ(Malus domestica)由来Md.FT1及びMd.FT2;オオムギ(Hordeum vulgare)由来Hv.FT2及びHv.FT3;キク由来Cs.FTL3;レタス(Lactuca sativa)由来Ls.FT;セイヨウハコヤナギ(Populus nigra)由来Pn.FT1及びPn.FT2;モミジバスズカケノキ(Platanus acerifolia)由来Pa.FT;リュウガン(Dimocarpus longan)由来Dl.FT1;エンドウ(Pisum sativum)由来Ps.FTa1、Ps.FTa2、Ps.FTb1、Ps.FTb2、及びPs.FTc;パイナップル(Ananas comosus)由来Ac.FT;カボチャ(Cucurbita maxima)由来のCm-FTL1及びCm-FTL2;バラ由来Ro.FT;シュンラン(Cymbidium)由来Cg.FT;イチゴ(Fragaria vesca)由来Fv.FT1;サトウダイコン(Beta Vulgaris)由来Bv.FT2;ヒマワリ(Helianthus annuus)由来Ha.FT4;及びコムギ(Triticum aestivum)由来Ta.FTまたはTaFT1、ならびにそのような公知のポリヌクレオチド及び/またはタンパク質配列のうちの1つ以上と少なくとも60%同一、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一であるか、または少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である配列が含まれ得る。例えば、その内容及び開示を参照として本明細書に援用するWickland,DP et al.,“The Flowering Locus T/Terminal Flower 1 Gene Family:Functional Evolution and Molecular Mechanisms”,Molecular Plant [8]:983-997(2015)参照。
【0039】
特に明記しない限り、本明細書中に記載の核酸またはポリヌクレオチド配列は5’から3’方向に提供する(左から右へ)ものとし、アミノ酸またはタンパク質配列はN末端からC末端方向に提供する(左から右へ)ものとする。本発明の実施形態によれば、これらの種または他の種由来のさらなる公知のまたは後に発見されるFT遺伝子及びタンパク質もまた使用してもよい。これらのFT遺伝子は、公知であるかまたはそれらのヌクレオチド及び/またはタンパク質配列から推測してもよく、それらは、目視検査によって、または公知のFT配列、構造ドメインなどとの比較アルゴリズムに基づく、及びBLAST、FASTAなどの任意の公知の配列アラインメント技術による、コンピュータベースの検索及び同定ツールもしくはソフトウェア(及びデータベース)を使用することによって決定してもよい。
【0040】
本発明の実施形態によれば、組換えDNA分子、ベクターまたは構築物のFT導入遺伝子は、上記のポリヌクレオチドFTコード配列(例えば、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、または29)に対し、または任意の他の公知の花成性FTコード配列に対し、少なくとも60%同一、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、または少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一(最適にアラインメントした場合に)のポリヌクレオチド配列を含み得る。上記のFT遺伝子の全長コード配列のポリヌクレオチド配列間の配列同一性の割合を図1Aに示す。図1Aの表の各セルは、対応する列(対象配列)のFT遺伝子と比較した対応する行(クエリ配列)のFT遺伝子の同一性の割合を、クエリ配列の全長で割ったものを示し、括弧内の数字はクエリ配列と対象配列の間の同一塩基の総数である。この図に示すように、これらのサンプリングしたFT遺伝子についてのポリヌクレオチド配列間の同一性の割合は、約60%~約90%の同一性の範囲である。したがって、これらの配列同一性範囲のうちの1つ以上の範囲内にあるか、またはより高い配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を本発明の実施形態に従って使用して、開花を誘導し、収量を増加させ、及び/または植物の1つ以上の生殖形質を改変してもよい。FTについての類似のポリヌクレオチドコード配列を、公知のFTタンパク質配列、保存されたアミノ酸残基及びドメイン、遺伝暗号の縮重、ならびに形質転換する特定の植物種についての任意の公知のコドン最適化に基づいて設計または選択してもよい。
【0041】
本発明の実施形態によれば、FT導入遺伝子は、上記のFTタンパク質もしくはアミノ酸配列(例えば、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、または30)または任意の他の公知の花成性FTタンパク質配列、またはその機能断片に対し、少なくとも60%同一、少なくとも65%同一、少なくとも70%同一、少なくとも75%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、または少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%同一(最適にアラインメントした場合に)のアミノ酸またはタンパク質配列をコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。そのような「機能断片」は、植物においてトランスジェニックに発現する場合に、全長タンパク質と同様の1つ以上の表現型効果または変化を引き起こすことについて断片が活性を維持する限り、全長FTタンパク質と同一または非常に類似しているが、全長FTタンパク質の1つ以上のアミノ酸残基、部分、タンパク質ドメインなどを欠くポリペプチド配列を有するタンパク質として定義される。上記の全長FTタンパク質の間の配列同一性の割合を、図1Bに示す。割合は、図1Aを参照して、クエリと対象のFTタンパク質配列との間の同一アミノ酸残基の数(括弧内)に基づいて上記のように計算される。これらのFTタンパク質の多重配列アラインメントもまた図1Cに示す。これらの図から分かるように、これらのFT遺伝子についてのタンパク質配列間の同一性の割合は、約60%~約90%の同一性の範囲である。したがって、これらの配列同一性範囲の1つ以上の範囲内にあるか、またはより高い配列同一性を有するアミノ酸またはタンパク質配列をコードするポリヌクレオチド配列を本発明の実施形態に従って使用して、開花を誘導し、種子収量を増加させ、及び/または植物の1つ以上の生殖形質を変化させてもよい。本発明のポリヌクレオチド配列によってコードされるこれらのFTタンパク質配列を、公知のFTタンパク質配列ならびにそれらの保存されたアミノ酸残基及びドメインに基づいて設計または選択してもよい。
【0042】
以下に記載するように、上記のコード配列のいずれか1つを含むFT導入遺伝子は、エンハンサー(複数可)、プロモーター(複数可)、リーダー(複数可)、イントロン(複数可)などの1つ以上の発現及び/または調節エレメント(複数可)をさらに有してもよく、FT導入遺伝子は、FTタンパク質をコードするゲノム配列もしくはアミノ酸配列、またはその断片もしくは一部を含み得る。
【0043】
本明細書中で使用する場合、用語「配列同一性」または「同一性の割合」とは、2つの最適にアラインメントしたDNAまたはタンパク質配列が同一である程度を指す。2つ以上の配列間、例えば、2つ以上のFT遺伝子もしくはタンパク質間、またはFT遺伝子(ヌクレオチド)もしくはタンパク質配列と他のヌクレオチドもしくはタンパク質配列との間の配列同一性または類似性を比較するために使用され得る、ClustalWなどの様々なペアワイズ配列アラインメントまたは多重配列アラインメントアルゴリズム及びプログラムが当該分野で公知である。例えば、1つの配列(クエリ)と他の配列(対象)との同一性の割合は、図1A及び図1Bを参照して上述したように計算してもよい(すなわち、配列を最適にアラインメントした状態で、クエリ配列について同一の塩基または残基の数を塩基または残基の総数で除算し、100%を掛ける)。他のアラインメント及び比較方法が当該分野で公知であるものの、2つの配列間のアラインメント及び同一性の割合(上記の同一性の割合の範囲を含む)は、ClustalWアルゴリズムによって決定される通りであってもよく、例えば、その内容及び開示の全体を参照として本明細書に援用するChenna R.et al.,“Multiple sequence alignment with the Clustal series of programs,”Nucleic Acids Research [31]:3497-3500(2003);Thompson JD et al.,“Clustal W:Improving the sensitivity of progressive multiple sequence alignment through sequence weighting, position-specific gap penalties and weight matrix choice,”Nucleic Acids Research [22]:4673-4680(1994);及びLarkin MA et al.,“Clustal W and Clustal X version 2.0,”Bioinformatics [23]:2947-48(2007)参照。本発明の目的のために、2つの配列を最適にアラインメントする場合(それらのアラインメントにおけるギャップを考慮して)、クエリ配列についての「同一性の割合」は、図1A及び1Bを参照して上述したように計算される。すなわち、同一性の割合=(クエリ配列と対象配列との間の同一位置の数/クエリ配列中の位置の総数)×100%であり、各配列は一連の位置(ヌクレオチド塩基またはアミノ酸残基)からなる。2つの最適にアラインメントされた配列はまた、一定の同一性の割合として記載され得る。場合により、2つの配列間の定義された比較ウィンドウ(例えば、アラインメントウィンドウ)に関して同一性の割合を代わりに記載してもよく、その場合、比較ウィンドウ内の同一位置の数を比較ウィンドウのヌクレオチド長で除算し、100%を掛ける。アラインメントウィンドウは、2つの配列間の同一、類似または重複領域として定義してもよい。
【0044】
組換えポリヌクレオチドもしくはタンパク質分子、構築物またはベクターは単離されていてもよい。本明細書中で使用する場合、用語「単離された」とは、分子を、その天然状態で通常それと会合している他の分子から少なくとも部分的に分離することを指す。一実施形態では、用語「単離された」とは、その天然状態のDNA分子に通常隣接する核酸から分離されているDNA分子を指す。例えば、細菌中に天然に存在するタンパク質をコードするDNA分子は、そのタンパク質をコードするDNA分子が天然に見出される細菌のDNA内にそのDNA分子がない場合、単離されたDNA分子であろう。したがって、例えば組換えDNAまたは植物形質転換技術の結果として、自然界では関連しないであろう1つ以上の他のDNA分子(複数可)に融合または作動可能に連結されたDNA分子は、本明細書中では単離されていると見なされる。そのような分子は、宿主細胞の染色体に組み込まれている場合、または他のDNA分子と共に核酸溶液中に存在している場合でも単離されていると見なされる。
【0045】
本発明のポリヌクレオチド配列または導入遺伝子によってコードされるFTタンパク質配列はまた、化学的及び/または構造的に保存的であることが知られている1つ以上のアミノ酸置換(複数可)(例えば、類似の化学的または物理的特性、例えば、疎水性、極性、電荷、立体効果、酸/塩基化学、類似の側鎖基、例えば、ヒドロキシル、スルフヒドリル、アミノなどを有する別のアミノ酸への置換)を有するように設計または選択し、その機能に影響を与える可能性があるタンパク質への構造変化を回避または最小化させてもよい。例えば、バリンはしばしばアラニンの保存的置換基であり、トレオニンはセリンの保存的置換基であり得る。タンパク質中の保存的アミノ酸置換のさらなる例として:バリン/ロイシン、バリン/イソロイシン、フェニルアラニン/チロシン、リジン/アルギニン、アスパラギン酸/グルタミン酸、及びアスパラギン/グルタミンが挙げられる。本発明のポリヌクレオチド配列または導入遺伝子によってコードされるFTタンパク質配列はまた、1つ以上のアミノ酸を含む欠失(複数可)及び/または挿入(複数可)の結果として公知のFTタンパク質または類似の配列のものとは1つ以上のアミノ酸が異なるタンパク質を含み得る。
【0046】
本発明において使用するために、異なる植物種由来の様々なFT遺伝子及びタンパク質を同定し、それらが少なくとも1つの公知のFT遺伝子またはタンパク質と類似の核酸及び/またはタンパク質配列を有し、保存されたアミノ酸及び/または構造ドメイン(複数可)を共有する場合、それらをFT相同体またはオルソログとみなしてもよい。本明細書中で使用する場合、FT遺伝子またはタンパク質に関する用語「相同体」は、FT遺伝子またはタンパク質の任意の相同体、類似体、オルソログ、パラログなどを集合的に含むことを意図し、FT遺伝子またはタンパク質配列に関する用語「相同的な」は、合成、人工または改変ポリヌクレオチドまたはタンパク質配列を含む類似または同一の配列を意味することを意図している。そのようなFT相同体はまた、公知のFT遺伝子と同じまたは類似の生物学的機能を有する(例えば、植物において異所性に発現する場合、開花及び/または他の生殖または収量関連形質または表現型に同様に影響を及ぼすように作用する)ものと定義され得る。
【0047】
異なる植物種由来のFTタンパク質配列の配列分析及びアラインメントはさらに、多数の保存アミノ酸残基及び少なくとも1つの保存構造ドメインを明らかにする。Pfamデータベース(例えば、2011年11月にリリースされたPfamバージョン26.0、またはそれ以降のバージョン)を使用して、様々なアラインメントFTタンパク質配列(例えば、図1B及び1C参照)をタンパク質ドメイン同定ツールに供することによって、これらのFTタンパク質が、推定ホスファチジルエタノールアミン結合タンパク質(PEBP)ドメイン(Pfamドメイン名:PBP_N;登録番号:PF01161)の少なくとも一部を含み、共有することがわかっている。例えば、その内容及び開示の全体を参照として本明細書に援用するBanfield,MJ et al.,“The structure of Antirrhinum centroradialis protein (CEN) suggests a role as a kinase inhibitor,”Journal of Mol Biol.,[297](5):1159-1170(2000)参照。このPEBPドメインは、例えば全長Gm.FT2aタンパク質のアミノ酸28~162に対応することが判明した(下記表5参照)。したがって、本発明の実施形態によって包含されるFTタンパク質は、Pfam分析に従って少なくともPEBPドメイン(登録番号:PF01161)を有するかまたは含むとして同定または特徴付けられるものを含み得る。したがって、本発明は、少なくともPEBPドメインを有するFTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(複数可)をさらに含み得る。当技術分野において公知のように、「Pfam」データベースは、多数の一般的なタンパク質ファミリーをカバーし、様々なタンパク質ファミリー及びそれらのドメイン構造(複数可)に関する情報を含む多数の配列アラインメント及び隠れマルコフモデルの大規模なコレクションである。所与のタンパク質配列について推定上のPfam構造ドメイン(複数可)を同定することによって、タンパク質の分類及び機能を推測または決定してもよい。例えば、その内容及び開示の全体を参照として本明細書に援用するFinn,RD et al.,“The Pfam protein families database,”Nucleic Acids Research (Database Issue),[42]:D222-D230(2014)参照。
【0048】
本発明の実施形態はさらに、誘導性または花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(複数可)を含み得る。ポリヌクレオチド配列によってコードされるFTタンパク質は、そのFTタンパク質が植物中で異所性に発現する場合に、早期開花、及び/または植物の1つ以上の結節(複数可)あたりの花、さや、丸莢、長角果、果実、木の実、塊茎、及び/または種子の数についての多産性の増加を生じ得る場合、「誘導性」または「花成性」であり得る。理論に拘泥するものではないが、植物の結節(複数可)あたりの花、さや、丸莢、長角果、果実、木の実、塊茎、及び/または種子の数のそのような多産性の増加は、栄養相から生殖相への転換を経て花を産生するそれらの結節(複数可)における分裂組織数の増加から生じ得る。「花成性」FTの異所性発現による各結節でのそのような多産性の増加は、各結節での早期総状花序及び側生分裂組織の解放及び花芽発達の同時性の増加に起因し得る。「花成性」FTタンパク質は、植物中で異所性に発現する場合に早期開花を誘導するように機能し得るが、トランスジェニックに発現する「花成性」FTタンパク質は、開花時期及び/または生殖期間に関連する任意の花成性の効果とは独立した、またはそれに加えて、1つ以上の経路または機構を介して、植物の結節(複数可)あたりの花、さや、丸莢、長角果、果実、木の実、塊茎及び/または種子の数を増加させ得る。
【0049】
様々な植物種由来の花成性FT様遺伝子は一般的によく保存されている。しかしながら、PEBPファミリーの多くのタンパク質は、花成性FTタンパク質と実質的に類似しているが、フロリゲンとして挙動しないアミノ酸配列を有する。例えば、様々な植物種由来のTerminal Flower(TFL)遺伝子は、花成性FT遺伝子と同様のタンパク質配列を有するが、実際には開花を遅延させる。最近の研究において、花成性FTタンパク質とTFLなどの他のPEBPタンパク質との間で一般的に共有されていない特定のアミノ酸残基が同定され、これらの位置の多くにおける置換が花成性FTタンパク質を花成レプレッサータンパク質に変換することが示された。例えば、その内容及び開示の全体を参照として本明細書に援用するHo and Weigel,Plant Cell 26:552-564(2014);Danilevskaya et al.,Plant Physiology [146](1):250-264(2008);Harig et al.,Plant Journal [72]:908-921(2012);Hsu et al.,Plant Cell [18]:1846-1861(2006);Kojima et al.,Plant Cell Physiology [43](10):1096-1105(2002);Kong et al.,Plant Physiology [154]:1220-1231(2010);Molinero-Rosales et al.,Planta [218]:427-434(2004);Zhai et al.,PLoS ONE,[9](2):e89030 (2014)、及びWickland DP et al.(2015)、上記参照。したがって、これらのアミノ酸残基を、本発明の花成性FTタンパク質をさらに定義及び識別するためのシグネチャーとして役立てることができる。
【0050】
本発明の実施形態によれば、「誘導性」または「花成性」FTタンパク質は、さらに、以下のアミノ酸残基(複数可)のうちの1つ以上を含むものとして定義されるかまたは特徴付けられ得る(アミノ酸位置とは、Arabidopsisの全長FTタンパク質(配列番号14)の対応する位置または最適にアラインメントした位置を指す):アミノ酸位置21のプロリン(P21);アミノ酸位置44のアルギニンまたはリジン(R44またはK44);アミノ酸位置57のグリシン(G57);アミノ酸位置59のグルタミン酸またはアスパラギン酸(E59またはD59);アミノ酸位置85のチロシン(Y85);アミノ酸位置128のロイシン(L128);アミノ酸位置129のグリシン(G129);アミノ酸位置132のトレオニン(T132);アミノ酸位置135のアラニン(A135);アミノ酸位置138のトリプトファン(W138);アミノ酸位置146のグルタミン酸またはアスパラギン酸(E146またはD146);及び/またはアミノ酸位置164のシステイン(C164)。他のFTタンパク質の対応するアミノ酸位置は、ArabidopsisのFT配列とのアラインメントによって決定することができる(例えば、図1C参照)。当業者であれば、それらの配列アラインメントに基づいて他のFTタンパク質の対応するアミノ酸位置を同定することができよう。これらの重要な残基のいくつかは、Arabidopsisの全長FT配列(配列番号14)のアミノ酸128~145及び他のFTタンパク質の対応する配列として定義される、FT様タンパク質の外部ループドメイン内に位置する(例えば、図1C)。したがって、本発明のポリヌクレオチドは、これらの保存されたアミノ酸残基のうちの1つ以上を有する花成性FTタンパク質をコードし得る。
【0051】
本発明の花成性FTタンパク質はまた、上記で同定した残基位置のうちの1つ以上に、1つ以上の他のアミノ酸を有してもよい。例えば、ArabidopsisのFT(At.FT)タンパク質配列(配列番号14)の上記のアミノ酸位置に関して、花成性FTタンパク質は、代替的に、以下のアミノ酸のうちの1つ以上を有してもよい:At.FTタンパク質配列の21位に対応する位置のアラニン(プロリンに代えて)(P21A)、またはこの位置のグリシンもしくはバリンなどのおそらく他の小さい非極性残基;At.FTタンパク質配列の44位に対応するアミノ酸位置のヒスチジン(リジンまたはアルギニンに代えて)、またはこの位置の他の極性アミノ酸;At.FTタンパク質配列の57位に対応するアミノ酸位置のアラニンもしくはシステイン(グリシンに代えて)、またはこの位置のプロリンもしくはバリンなどのおそらく他の小さい非極性残基;At.FTタンパク質配列の59位に対応するアミノ酸位置のアスパラギンまたはセリン(グルタミン酸またはアスパラギン酸に代えて)、またはこの位置のグルタミン、システイン、またはトレオニンなどの他の小さい極性残基;At.FTタンパク質配列の85位に対応するアミノ酸位置の様々な極性及び非極性非荷電残基(チロシン以外);At.FTタンパク質配列の128位に対応するアミノ酸位置のイソロイシン、バリン、またはメチオニンなどの無極性または疎水性の非荷電残基(ロイシン以外);At.FTタンパク質配列の129位に対応するアミノ酸位置のアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニンなどの様々なより小さな非極性及び非荷電残基(グリシン以外)、ただしいくつかの極性及び荷電残基がこの位置で許容され得る;At.FTタンパク質配列の132位に対応するアミノ酸位置の極性非荷電残基(トレオニン以外);At.FTタンパク質配列の135位に対応するアミノ酸位置のトレオニンなどのプロリン以外の様々なアミノ酸;At.FTタンパク質配列の138位に対応するアミノ酸位置のメチオニンまたはフェニルアラニンなどの様々な他のかさばらない非極性または疎水性アミノ酸(トリプトファンに代えて);At.FTタンパク質配列の146位に対応するアミノ酸位置のアスパラギンまたはセリンなどの様々な他の極性または非荷電アミノ酸;及び/またはAt.FTタンパク質配列の164位に対応するアミノ酸位置のイソロイシンなどの様々な他の極性または非極性アミノ酸(システインに代えて)。当業者であれば、FTタンパク質の対応するアミノ酸位置及び置換を、ArabidopsisのFTタンパク質配列に対するこれらの配列アラインメントに基づいて同定することができよう。さらに、タンパク質生化学の当業者の知識に基づいて、花成性FTタンパク質の範囲内において他の化学的に保存的なアミノ酸置換もまた企図される。実際、本発明のポリヌクレオチドによってコードされる花成性FTタンパク質には、天然配列及び1つ以上の保存的アミノ酸置換を含む人工的な配列、ならびにその機能的断片が含まれる。
【0052】
本発明の花成性FTタンパク質はまた、TFLまたは他の非花成性または抗花成性タンパク質に特徴的であるかまたは関連し得る1つ以上のアミノ酸置換を除外する(すなわち、有さない)ものとして定義され得る。例えば、ArabidopsisのFTタンパク質配列(配列番号14)のアミノ酸位置に関して、花成性FTタンパク質は、以下のアミノ酸の1つ以上を除外し得る(すなわち、花成性FTタンパク質配列の対応する位置または最適にアラインメントした位置において):At.FTタンパク質配列の21位に対応する位置のフェニルアラニンまたはセリン(例えば、プロリンまたはアラニンに代えて);At.FTタンパク質配列の44位に対応する位置のフェニルアラニン(例えば、アルギニンまたはリジンに代えて);At.FTタンパク質配列の57位に対応する位置のヒスチジン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸(例えば、グリシンに代えて);At.FTタンパク質配列の59位に対応する位置のグリシンまたはアラニン(例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸に代えて);At.FTタンパク質配列の85位に対応する位置のヒスチジン(例えば、チロシンに代えて);At.FTタンパク質配列の109位に対応する位置のリジン、アルギニン、アラニン、またはメチオニン;At.FTタンパク質配列の128位に対応する位置のリジンまたはアルギニン(例えば、ロイシンに代えて);At.FTタンパク質配列の129位に対応する位置のグルタミンまたはアスパラギン(例えば、グリシンに代えて);FTタンパク質配列の132位に対応する位置のバリンまたはシステイン(例えば、トレオニンに代えて);At.FTタンパク質配列の134位に対応する位置のリジン、アルギニン、またはアラニン(例えば、チロシンに代えて);At.FTタンパク質配列の135位に対応する位置のプロリン(例えば、アラニンまたはトレオニンに代えて);At.FTタンパク質配列の138位に対応する位置のセリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、リジン、またはアルギニン(例えば、トリプトファンまたはメチオニンに代えて);At.FTタンパク質配列の140位に対応する位置のリジンまたはアルギニン;At.FTタンパク質配列の146位に対応する位置のリジンまたはアルギニン(例えば、酸性または非荷電極性残基に代えて);At.FTタンパク質配列の152位に対応する位置のリジンまたはアルギニン;At.FTタンパク質配列の164位に対応する位置のアラニン(例えばシステインまたはイソロイシンに代えて)。当業者であれば、他のFTタンパク質の対応するアミノ酸位置及び置換を、これらの配列アラインメントに基づいて同定することができよう。したがって、本発明の実施形態は、TFLまたは他の抗フロリゲンに関連する上記のアミノ酸置換のうちの1つ以上を有するFT様タンパク質をコードするポリヌクレオチドを除外し得る。しかしながら、FTタンパク質は、依然として花成活性を維持する一方で、これらのアミノ酸置換のうちの1つまたはいくつかを許容し得る。
【0053】
本発明の花成性FTタンパク質はまた、上記のシグネチャーまたは保存されたアミノ酸残基のうちの1つ以上を有することに加えて、公知のFTタンパク質と同様であると定義され得る。例えば、花成性タンパク質は、以下のシグネチャー残基の1つ以上に加えて、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、及び30、またはその機能断片からなる群から選択される配列に対して、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するものとして定義され得る:At.FTタンパク質配列の85位に対応するアミノ酸位置のチロシンまたは他の非荷電の極性もしくは非極性残基(例えば、アラニン、トリプトファン、メチオニン、ロイシン、トレオニン、システイン、セリン、またはアスパラギン);At.FTタンパク質配列の128位に対応するアミノ酸位置のロイシンまたは他の非極性または疎水性残基(例えば、イソロイシン、バリン、またはメチオニン);At.FTタンパク質配列の138位に対応するアミノ酸位置のトリプトファンまたは他の大きな非極性もしくは疎水性残基(例えば、メチオニンまたはフェニルアラニン)。そのような花成性FTタンパク質はさらに、以下の1つ以上のようなさらなるシグネチャーアミノ酸残基(複数可)を有するものとして定義され得る:AT.FTタンパク質配列の129位に対応するアミノ酸位置のグリシンまたは他の小さい非極性及び非荷電残基(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、またはメチオニン);及び/またはAT.FTタンパク質配列の132位に対応するアミノ酸位置のトレオニン。
【0054】
本発明の花成性FTタンパク質はまた、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、及び30からなる群から選択される配列に対し、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するが、以下のうちの1つ以上のような、1つ以上の非花成性または抗花成性残基を有さない(すなわち除外する)ものとして定義され得る:At.FTタンパク質配列の85位に対応するアミノ酸位置のヒスチジン;At.FTタンパク質配列の128位に対応するアミノ酸位置のリジンまたはアルギニン;AT.FTタンパク質配列の138位に対応するアミノ酸位置のセリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニン。そのような花成性FTタンパク質はさらに、以下の1つ以上のような、1つ以上の追加の残基を有さない(すなわち除外する)ものとして定義され得る:At.FTタンパク質の129位に対応するアミノ酸位置のグルタミンまたはアスパラギン;及び/またはAT.FTタンパク質配列の132位に対応するアミノ酸位置のバリンまたはシステイン。
【0055】
本発明の実施形態により、植物に形質転換した場合にFT発現のタイミング及び/または位置を制御するかまたは偏らせるために植物細胞内で作動可能な、1つ以上のプロモーター(複数可)及び/または他の調節エレメント(複数可)に作動可能に連結されたFTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有する組換えDNA分子、ベクターまたは構築物を提供する。いくつかの実施形態によれば、FT導入遺伝子は第1の発現カセット中に存在し、FT導入遺伝子の少なくとも一部、及び/またはそれに相補的な配列に対応し、サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む第2の発現カセットと共に使用してもよい。いくつかの実施形態によれば、FT導入遺伝子は、FT導入遺伝子を標的とし、サプレッションを引き起こし得る内在性RNA分子の標的部位を含み得る。
【0056】
当技術分野で一般的に理解されているように、用語「プロモーター」とは、一般的に、RNAポリメラーゼ結合部位、転写開始部位、及び/またはTATAボックスを含み、関連する転写可能なポリヌクレオチド配列及び/または遺伝子(または導入遺伝子)の転写及び発現を、引き起こし、開始し、指示し、支援し、及び/または促進するDNA配列を指し得る。プロモーターは、公知のまたは天然のプロモーター配列または他のプロモーター配列(例えば本明細書に提供するような)をもとに、合成的に製造、改変、変更、及び/またはそれに由来し得る。プロモーターはまた、2つ以上の異種配列の組み合わせを含むキメラプロモーターを含み得る。したがって、本発明のプロモーターは、組成は類似しているが、公知のまたは本明細書において提供する他のプロモーター配列(複数可)と同一ではないプロモーター配列の変異体を含み得る。本明細書中で使用する場合、用語「作動可能に連結された」とは、プロモーターまたは他の調節エレメントと、関連する転写可能なポリヌクレオチド配列または遺伝子(または導入遺伝子)のコード配列との間の機能的連結を指し、その結果、それらのプロモーター類は、少なくとも特定の組織(複数可)、発育段階(複数可)、及び/または特定の条件(複数可)下で、関連するコードまたは転写可能なポリヌクレオチド配列の転写及び発現を、開始し、支援し、影響を及ぼし、引き起こし、指示し、及び/または促進するために作動する。「植物発現性プロモーター」とは、植物、植物細胞及び/または植物組織において、プロモーターに作動可能に連結された関連するコード配列、導入遺伝子または転写可能なポリヌクレオチド配列を発現させるために使用し得るプロモーターを指す。
【0057】
プロモーターは、構成的、発生的、組織特異的、誘導性などの、プロモーターに作動可能に連結されたコード配列または遺伝子(導入遺伝子を含む)の発現パターンに関する様々な基準に従って分類し得る。植物の全てまたはほとんどの組織において転写を開始するプロモーターは、「構成的」プロモーターと呼ばれる。発生の特定の期間または段階の間に転写を開始するプロモーターは、「発生的」プロモーターと呼ばれる。その発現が他の植物組織と比較して植物の特定の組織において増強されるプロモーターは、「組織増強型」または「組織優先型」プロモーターと呼ばれる。したがって、「組織優先型」プロモーターは、植物の特定の組織(複数可)において比較的高いまたは優先的な発現を引き起こすが、植物の他の組織(複数可)においてはより低いレベルの発現を伴う。植物の特定の組織内で発現し、他の植物組織ではほとんどまたは全く発現しないプロモーターは、「組織特異的」プロモーターと呼ばれる。植物の特定の細胞型において発現するプロモーターは、「細胞型特異的」プロモーターと呼ばれる。「誘導性」プロモーターは、寒さ、干ばつ、熱もしくは光などの環境刺激、または創傷もしくは化学的塗布などの他の刺激に応答して転写を開始するプロモーターである。プロモーターはまた、その起源に関して、例えば、異種、同種、キメラ、合成などで分類され得る。関連ポリヌクレオチド配列に関連するプロモーターまたは他の調節配列に関しての用語「異種」(例えば、転写可能なDNA配列、コード配列、遺伝子または導入遺伝子)は、天然においては実際にそのような関連ポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されていないプロモーターまたは調節配列である―例えば、プロモーターまたは調節配列はその関連ポリヌクレオチド配列に対して異なる起源を有し、及び/またはそのプロモーターまたは調節配列を形質転換しようとする植物種において天然には存在しない。用語「異種」は、2つ以上のDNA分子または配列の組み合わせを、そのような組み合わせが通常天然には見られない場合、より広く含む。本明細書中で使用するように、語句「通常天然に見出されない」とは、人の手によって導入されなければ自然界に見出されることがないことを意味する。例えば、2つ以上のDNA分子または配列は、それらが異なるゲノムまたは同じゲノム内の異なる遺伝子座に通常見出される場合、またはそれらが本質的に同一に組み合わされていない場合、互いに対して異種であろう。多くの実施形態によれば、FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結された植物発現性プロモーターは、FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列に関して異種である。
【0058】
本発明の実施形態により、植物の、開花、生殖及び/または収量に関連した形質または表現型を変化させるために植物に導入または形質転換し得る、植物内で機能するプロモーターに作動可能に連結された花成性FT導入遺伝子またはコード配列を含む組換えDNA分子、ベクターまたは構築物を提供する。本発明の実施形態は、植物への導入または形質転換時に植物の発育の早い段階で(すなわち、植物の栄養成長期の間に)FT導入遺伝子の発現を引き起こし、同じ発育段階の野生型植物においてそうでなければ生じるであろうレベルよりも高いレベルのFTを標的組織中に生成するための「栄養期」プロモーターに機能的に連結されたFT導入遺伝子またはコード配列を含む組換えDNA分子を提供する。栄養生長期(複数可)におけるFT導入遺伝子発現のタイミングは、植物の1つ以上の結節(複数可)においてより多数の花芽分裂組織を産生し、首尾よく花を産生するために適時の誘導シグナルを提供することによって1つ以上の生殖、開花及び/または収量関連形質または表現型に影響を及ぼすために重要であり得る。栄養期発現は、早期開花を引き起こし、植物の結節あたりの生殖、開花及び/または収量関連形質または表現型の改良、例えば花、さやなどの増加を可能にするために必要であり得る。いかなる理論にも拘泥するものではないが、植物におけるFT導入遺伝子の栄養期発現は、1つ以上の結節(複数可)において早期開花を同期化及び/または増加させるように作用し、植物の結節あたりの花をより多く産生し得る。本発明の一部として以下に記載するプロモーターは、FT発現をタイミング調整するための選択肢を提供する。
【0059】
本明細書中で使用する場合、「栄養期」プロモーターには、植物発育の1つ以上の栄養期(複数可)の間、例えば、Ve、Vc、V1、V2、V3、V4などのうちの1つ以上、及び/または後期の任意のまたは全ての栄養生長期(例えば、最大Vn期)の間に、その関連遺伝子、導入遺伝子または転写可能なDNA配列の転写または発現を開始する、引き起こす、駆動するなどを行う任意のプロモーターが含まれる。言い換えれば、用語「栄養期」は、植物全体の栄養生長期(複数可)を指す。そのような「栄養期」プロモーターはさらに、植物の1つ以上の栄養組織(複数可)、例えば、1つ以上の栄養芽分裂組織(複数可)におけるその関連遺伝子/導入遺伝子または転写可能なDNA配列の転写または発現を、開始する、引き起こす、駆動するなどを行うものとして定義され得る。そのような「栄養期」プロモーターは、さらにその関連遺伝子、導入遺伝子または転写可能なDNA配列の転写または発現を、少なくとも優先的に、または多くの場合、排他的でないにしても、植物発育の1つ以上の栄養期(複数可)の間に、開始する、引き起こす、駆動するなどを行う「栄養期優先型」プロモーターとして定義される(生殖期とは対照的に)。しかしながら、「栄養期」及び「栄養期優先型」プロモーターはまた、それぞれが、植物の1つ以上の細胞または組織において、例えば、1つ以上の花芽組織または生殖組織(複数可)において、生殖相(複数可)または生殖生長期(複数可)の間のその関連遺伝子、導入遺伝子または転写可能なDNA配列の転写または発現を、可能にし、許容し、引き起こし、駆動するなどを行い得る。実際、植物発育の1つ以上の栄養期(複数可)の間に、「栄養期」プロモーターがその関連遺伝子、導入遺伝子または転写可能なDNA配列の転写または発現をも、開始し、引き起こし、駆動するなどする限りにおいて、「栄養期」プロモーターは、1つ以上の生殖組織または花芽組織において、栄養組織(複数可)におけるよりも高いレベルまたは程度で、その関連遺伝子、導入遺伝子または転写可能なDNA配列の転写または発現などを許容し、可能にし、引き起こし、駆動することさえ行い得る。
【0060】
所与の植物種についての栄養生長期に関連する特性及び特徴は、当技術分野において公知である。双子葉植物の場合、栄養生長期における植物の栄養形態学的特性及び特徴として、子葉形態、栄養芽分裂組織(頂端、側生/腋芽、及び根端)、葉序、葉形、葉縁、葉脈、葉柄、托葉、葉鞘、胚軸、及び根が挙げられる。本発明の実施形態によれば、「栄養期」プロモーターはまた、その関連遺伝子(または導入遺伝子)の観察可能な、または明白な転写または発現が最初に引き起こされる、開始されるなどの特定の栄養期によってさらに定義され得る。例えば、栄養期プロモーターは、Vc期プロモーター、V1期プロモーター、V2期プロモーター、V3期プロモーターなどであり得る。かくして、「Vc期」プロモーターは、その関連遺伝子、導入遺伝子または転写可能なDNA配列の、植物発育のVc期中の転写を最初に開始するかまたは引き起こす栄養期プロモーターとして定義され、「V1期」プロモーターは、その関連遺伝子、導入遺伝子または転写可能なDNA配列の、植物発育のV1期中の転写を最初に開始または引き起こす栄養期プロモーターとして定義され、「V2期」プロモーターは、その関連遺伝子、導入遺伝子または転写可能なDNA配列の、植物発育のV2期中の転写を最初に開始または引き起こす栄養期プロモーターとして定義される、などであるが、関連遺伝子、導入遺伝子または転写可能なDNA配列の発現は、後の栄養生長期(及び/または生殖期)(複数可)の間における1つ以上の組織において連続的または不連続的に存在し得る。当業者であれば、当技術分野において公知の様々な分子アッセイ及び技術を使用して、植物発育中の所与の遺伝子、導入遺伝子または転写可能なDNA配列の発現のタイミングを決定することができるだろう。
【0061】
本発明の実施形態によれば、「栄養期」プロモーターには、構成的プロモーター、組織優先型プロモーター、または組織特異的プロモーターが含まれ得る。例えば、栄養期プロモーターは、その関連するFT遺伝子/導入遺伝子または転写可能なDNA配列の発現を、植物発育の栄養期(複数可)中に、1つ以上の根(複数可)、茎(複数可)、葉(複数可)、分裂組織(複数可)などの1つ以上の植物組織(複数可)において駆動し得る。しかしながら、そのような栄養期プロモーターは、その関連するFT導入遺伝子またはコード配列または転写可能なDNA配列の発現を、好ましくは植物の1つ以上の分裂組織(複数可)において駆動し得る。多くの実施形態によれば、「栄養期」プロモーターは、「分裂組織特異的」または「分裂組織優先型」プロモーターであり、分裂組織においてFT導入遺伝子またはコード配列もしくは転写可能なDNA配列の発現を引き起こし得る。FTタンパク質は、植物の分裂組織内で、葉からのFTタンパク質の移行後に作用し、栄養生長から生殖生長への転換を引き起こすことを補助することが知られている。対照的に、本発明の実施形態は、植物の分裂組織内で直接FT導入遺伝子の発現を提供し、開花を誘導し、生殖及び/または収量関連形質の変化または表現型の変化を植物に誘導する。したがって、本発明の実施形態により、植物に形質転換した場合に植物の1つ以上の分裂組織において少なくとも優先的にFT導入遺伝子の発現を駆動する「分裂組織特異的」または「分裂組織優先型」プロモーターに作動可能に連結されたFT導入遺伝子またはコード配列を含む組換えDNA分子、構築物またはベクターを提供する。本明細書中で使用する場合、「分裂組織優先型プロモーター」とは、植物の少なくとも1つの分裂組織、例えば、頂端分裂組織、及び/または腋芽分裂組織において、関連遺伝子、導入遺伝子または転写可能なDNA配列の発現を、他の植物組織に比べて優先的に引き起こすプロモーターを指し、一方、「分裂組織特異的プロモーター」とは、関連遺伝子、導入遺伝子または転写可能なDNA配列を植物の少なくとも1つの分裂組織において排他的に(またはほぼ排他的に)発現させるプロモーターを指す。
【0062】
本発明の実施形態により、分裂組織優先型及び/または分裂組織特異的プロモーターでもあり得る栄養期プロモーターに作動可能に連結されたFTコード配列を含む組換えDNA分子を提供する。例えば、プロモーターは、Arabidopsis由来pAt.Erectaプロモーター(配列番号31)、またはその機能的断片もしくは部分を有していてもよい。本発明の実施形態によるpAt.Erectaプロモーターの短縮部分の2つの例を、配列番号32及び配列番号48として提供する。例えば、Yokoyama,R.et al.,“The Arabidopsis ERECTA gene is expressed in the shoot apical meristem and organ primordia,”The Plant Journal [15](3):301-310(1998)参照。pAt.Erectaは、分裂組織優先型でもある栄養期プロモーターの一例である。他の栄養期、分裂組織優先型または分裂組織特異的プロモーターは、それらの特徴付けられた発現特性(例えば、下記の実施例4及び7参照)に基づいて同定されており、それらもまた、本発明の実施形態に従ってFT発現を駆動するために用いてもよい。例えば、栄養期分裂組織優先型プロモーターとして使用することができる以下のダイズ受容体様キナーゼ(RLK)遺伝子由来プロモーター:Glyma10g38730(配列番号33)、Glyma09g27950(配列番号34)、Glyma06g05900(配列番号35)、及びGlyma17g34380(配列番号36)、ならびにその任意の機能的部分が同定された。本発明の実施形態による栄養期、分裂組織優先型プロモーターには、ジャガイモ由来受容体様キナーゼ(RLK)遺伝子プロモーター:PGSC0003DMP400032802(配列番号37)及びPGSC0003DMP400054040(配列番号38)、ならびにその任意の機能的部分が含まれ得る。FT発現を駆動するpAt.Erectaプロモーター及び他のRLK、ErectaまたはErecta様(Erl)遺伝子について同定された類似の発現特性の本明細書中に提供する特徴付けを考慮すると、本発明の栄養期、分裂組織優先型または分裂組織特異的プロモーターはさらに、植物の分裂組織において栄養期の発現パターンを有する他の双子葉種由来のRLK、Erecta及びErecta様遺伝子の任意の公知のまたは後に同定されるプロモーター配列を有していてもよい。
【0063】
栄養期、分裂組織優先型または分裂組織特異的プロモーターのさらなる例として、以下のArabidopsis遺伝子:Pinhead(At.PNH)(配列番号39)、Angustifolia3またはAt.AN3(配列番号40);AT.MYB17(At.LMI2またはLate Meristem Identity2;At3g61250)(配列番号41)、キネシン様遺伝子(At5g55520)(配列番号42)、At.REM17(配列番号43)またはAt.REM19、ならびにErecta様1及び2遺伝子、At.Erl1(配列番号44)及びAt.Erl2(配列番号45)を含むAP2/B3様遺伝子に由来するプロモーター、ならびにその任意の機能的部分が挙げられ得る。別の例は、Arabidopsis(配列番号49)由来のAt.AP1プロモーター(pAt.AP1またはpAP1)、またはその機能的部分である。しかしながら、pAt.AP1プロモーターは、むしろ、より後期の栄養期及び生殖期プロモーターであるとみなし得る。後期の栄養期及び生殖期発現のパターンを考えると、pAt.AP1及び関連プロモーターは、FT導入遺伝子及び/またはFTサプレッションエレメントの発現を駆動するのに有用であり得る。同様の遺伝子及び/またはそれらの天然植物種におけるpAt.AP1プロモーターと同様の発現パターンを有する遺伝子から同定されるさらなる例として、以下の遺伝子:Arabidopsis由来のAT1G26310.1(配列番号50)、AT3G30260.1(配列番号51)、もしくはAT5G60910.1(配列番号52);ダイズ由来のGlyma01g08150(配列番号53)、Glyma02g13420(配列番号54)、Glyma08g36380(配列番号55)、もしくはGlyma16g13070(配列番号56);トマト由来のSolyc02g065730(配列番号57)、Solyc02g089210(配列番号58)、Solyc03g114830(配列番号59)、もしくはSolyc06g069430(配列番号60);またはトウモロコシ由来のGRMZM2G148693(配列番号61)、GRMZM2G553379(配列番号62)、GRMZM2G072582(配列番号63)、もしくはGRMZM2G147716(配列番号64)のうちの1つに由来するプロモーター、またはその任意の機能的部分が挙げられ得る。
【0064】
分裂組織優先型プロモーターまたは分裂組織特異的プロモーターでもあり得る栄養期プロモーターには、栄養生長期の間のそれらの発現パターンに応じた早期及び後期両方の栄養期プロモーターが含まれ得る。「早期栄養期」プロモーターは、1つ以上の早期栄養期(すなわち、Ve~V5期)の間に、最初にその関連遺伝子/導入遺伝子または転写可能なDNA配列の観察可能または検出可能な転写または発現を開始するかまたは引き起こすが、一方、「後期栄養期」プロモーターは、1つ以上の後期栄養期(すなわちV6期以降)の間に、最初にその関連遺伝子/導入遺伝子または転写可能なDNA配列の観察可能または検出可能な転写または発現を開始するかまたは引き起こす。早期または後期栄養期プロモーターはまた、早期または後期栄養期優先型プロモーターでもあり得る。「早期栄養期優先型」プロモーターは、1つ以上の早期栄養期(すなわちVe~V5)の間に、その関連遺伝子/導入遺伝子または転写可能なDNA配列の転写または発現を、後期栄養期に比べてより優先的にまたは大規模に、開始する、引き起こす、駆動する、などを行う。同様に、「後期栄養期優先型」プロモーターは、1つ以上の後期栄養期(すなわちV6期以降)の間に、その関連遺伝子/導入遺伝子または転写可能なDNA配列の転写または発現を、早期栄養期に比べてより優先的にまたは大規模に、開始する、引き起こす、駆動する、などを行う。したがって、早期栄養期の間にプロモーターがその関連遺伝子/導入遺伝子または転写可能なDNA配列の観察可能または検出可能な転写または発現を最初に開始するかまたは引き起こすが、後期栄養期の間にも、その関連遺伝子/導入遺伝子または転写可能なDNA配列の転写または発現をより優先的にまたはより大規模に開始する、引き起こす、駆動する、などを行う場合、早期栄養期プロモーターは後期栄養期優先型プロモーターでもあり得る。上記の栄養期プロモーターの例には、早期及び後期栄養期プロモーターが含まれてもよく、それらはまた、早期栄養期優先型または後期栄養期優先型でもあり得る。
【0065】
栄養期プロモーター(またはその機能的断片もしくは部分)のポリヌクレオチド配列はまた、プロモーターに機能的に連結された関連する転写可能なDNA配列、遺伝子または導入遺伝子の類似または同一の発現パターンを依然として維持する一方で、その配列同一性は前述の栄養期プロモーターのいずれかに対して緩和されていてもよい。例えば、栄養期プロモーターは、上記の配列番号31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、もしくは64、またはその機能的部分から選択されるポリヌクレオチド配列に対し、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一のポリヌクレオチド配列を有していてもよい。公知のまたは提供するプロモーター配列の「機能的部分」とは、その関連遺伝子、導入遺伝子または転写可能なDNA配列の発現を、公知のまたは提供するプロモーター配列と同一または類似の様式で機能的に駆動する、引き起こす、促進する、などを行い得る、公知のまたは提供するプロモーター配列の1つ以上の連続または不連続部分(複数可)として定義される。本開示に基づいて、当業者であれば、公知のまたは提供するプロモーター配列、及び/またはより短い配列及び/または公知のまたは提供するプロモーター配列に比べて緩和された配列同一性を有する配列のうちの1つ以上の部分(複数可)を含むプロモーターが、その関連するレポーター遺伝子またはFT導入遺伝子の植物内での発現に際して、公知のまたは提供するプロモーター配列に比べて類似の発現パターン及び/または類似の表現型もしくは効果を引き起こすかどうかを判断することができよう。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、「生殖期」プロモーター(下記に定義)は、栄養生長期(複数可)の間に生殖期プロモーターが少なくともある程度のレベルのFT導入遺伝子の発現を提供する(すなわち、開始する、引き起こす、駆動する、など)限り、これを作動可能に連結して使用し、FT導入遺伝子またはFTコード配列を発現させ、早期花成誘導シグナルを提供してもよい。生殖期プロモーターの例を以下に提供する。所与のプロモーターを、早期または後期栄養期プロモーター及び/または生殖期プロモーターとして分類すべきかどうかは、そのプロモーターを使用する特定の植物種に依存する。所与のプロモーターを用いた発現パターンは、異なる植物種の間でほとんどの場合類似している(同一ではないにしても、ほぼ同一である)と予想されるものの、1つの植物種、例えばその天然植物種において、規定された発現パターンを有するプロモーターは、異なる植物種において(例えば、異なる植物種において異種的に)発現する場合、異なった、変化したまたはシフトした発現パターンを有する場合がある。例えば、1つの植物種における生殖期プロモーターは、別の植物種において導入遺伝子または転写可能なDNA配列を発現させるために使用する場合、早期栄養期プロモーターとして機能し得る。したがって、いくつかの場合には生殖期プロモーターを異種的に使用し、FT導入遺伝子を発現させ、早期開花を誘導してもよい。例えば、pAt.AP1プロモーター(配列番号49)は、その野生型Arabidopsis植物種においては、より生殖期優先型の発現パターンを有するが、ダイズ植物において異種的に使用する場合、生殖期の発現を駆動することに加えて、分裂組織において早期栄養期の発現パターンを駆動し得る。
【0067】
上記のように、本発明の組換えDNA分子、構築物またはベクターは、分裂組織優先型または分裂組織特異的プロモーターでもあり得る栄養期プロモーターに作動可能に連結されたFTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(すなわちFT導入遺伝子)を含む発現カセットを有していてもよい。FT導入遺伝子または発現カセットのポリヌクレオチドコード配列はまた、FT導入遺伝子またはカセットの発現を調節するかまたは可能にして植物細胞内で効果的にFTタンパク質を産生するのに適しているかまたは必要な、エンハンサー(複数可)、リーダー、転写開始部位(TSS)、リンカー、5’及び3’非翻訳領域(複数可)、イントロン(複数可)、ポリアデニル化シグナル、終止領域または終止配列などの1つ以上のさらなる調節エレメントに作動可能に連結させてもよい。そのような追加の調節エレメント(複数可)は任意であってよく、導入遺伝子の発現を増強または最適化するために使用してもよい。本発明の目的のために、「エンハンサー」は、エンハンサーが一般的に、転写開始部位、TATAボックス、または同等の配列を欠き、したがって転写を駆動するのに十分ではないという点において「プロモーター」と区別され得る。本明細書中で使用する場合、「リーダー」は、一般的に、転写開始部位(TSS)とタンパク質コード配列開始部位との間の遺伝子(または導入遺伝子)の非翻訳5’領域(5’UTR)のDNA配列として定義され得る。
【0068】
ポリヌクレオチドに関して本明細書中で使用する場合、「構築物」は、コード配列または転写可能なDNA配列などの1つ以上の配列エレメントと、プロモーター、エンハンサーなどの1つ以上の発現または調節エレメントとを含むポリヌクレオチドセグメントまたは配列である。「発現カセット」は、植物または細菌細胞などの適切な宿主細胞においてコード配列または転写可能なDNA配列を発現することができるコード配列または転写可能なDNA配列、ならびにコード配列または転写可能なDNA配列に作動可能に連結された1つ以上のプロモーター及び/または調節エレメントを含む構築物の一種である。「ベクター」は、1つ以上の構築物及び/または発現カセットを有し得るとともに、安定性、保存、または他の用途もしくは目的、例えば、植物または宿主細胞への送達、形質転換、及び/または維持に適するポリヌクレオチドまたはDNA分子である。「ベクター」には、プラスミドまたは環状DNA分子、直鎖状DNA分子、植物の形質転換に適した形質転換ベクターなどが含まれ得る。DNA分子またはベクターは、1つ以上の構築物(複数可)、発現カセット(複数可)、選択可能なマーカー(複数可)、複製及び/または維持エレメント(複数可)などを含み得る。
【0069】
本発明の実施形態によれば、ポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)分子、タンパク質、構築物、ベクターなどに関しての用語「組換え」とは、ヒトの介入を伴わなければ天然には連続してまたは近接して一緒には存在しないであろう2つ以上のポリヌクレオチドまたはタンパク質配列の組み合わせを有するポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)分子、タンパク質、構築物など、及び/または互いに対して異種である少なくとも2つのDNA配列を有するDNA分子、構築物などを含む、通常、天然に見出されず、及び/または通常、天然に見出されない状況で存在する、ポリヌクレオチドまたはタンパク質分子もしくは配列を指す。組換えDNA分子、構築物などは、天然においてそのようなDNA配列(複数可)に近接して存在する他のポリヌクレオチド配列(複数可)から分離されているDNA配列(複数可)、及び/または天然には互いに近接していない他のポリヌクレオチド配列(複数可)に近接する(または連続する)DNA分子を含み得る。組換えDNA分子、構築物などはまた、遺伝子改変され、細胞の外側で構築されたDNA分子または配列を指す場合もある。例えば、組換えDNA分子は、任意の適切なプラスミド、ベクターなどを含み得、直鎖状または環状のDNA分子を含み得る。そのようなプラスミド、ベクターなどは、おそらく植物選択マーカー遺伝子などに加えて、原核生物の複製起点及び選択マーカー、ならびにFT発現導入遺伝子または発現カセットを含む、様々な維持エレメントを含み得る。
【0070】
本発明の実施形態により、植物発現性プロモーターに作動可能に連結された転写可能なポリヌクレオチドまたはDNA配列を含む第2の発現カセットを提供し、転写可能なDNA配列は、FT導入遺伝子の少なくとも一部に対応する配列及び/またはそれに相補的な配列を有し、サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とする。転写可能なDNA配列は、FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(すなわち、FT導入遺伝子)によってコードされるRNA前駆体または成熟mRNAの少なくとも一部に相補的なターゲティング配列を含むRNA分子をコードしてもよく、それにより、RNA分子はFT導入遺伝子を抑制する。したがって、組換えDNA分子、構築物またはベクターを、第2の発現カセットを有する植物への形質転換のために提供する。そのような組換えDNA分子、構築物またはベクターは、第1の植物発現性プロモーターに作動可能に連結されたFTタンパク質をコードするポリヌクレオチドコード配列(すなわちFT導入遺伝子)を含む第1の発現カセットをさらに有してもよく、その場合、第2の発現カセットは、第2の植物発現性プロモーターに作動可能に連結された転写可能なDNA配列を含む。あるいは、第1の組換えDNA分子、構築物またはベクターと、第2の組換えDNA分子、構築物またはベクターを含む、2つの組換えDNA分子、構築物またはベクターを、植物の形質転換のために提供してもよく、第1の組換えDNA分子、構築物またはベクターは、FT導入遺伝子を含む発現カセットを有し、第2の組換えDNA分子、構築物またはベクターは、FT導入遺伝子の少なくとも一部に対応する配列及び/またはそれに相補的な配列を含む転写可能なDNA配列を有する第2の発現カセットを含む。いくつかの実施形態によれば、FT遺伝子または導入遺伝子のサプレッションのためのRNA分子をコードする転写可能なDNA配列に作動可能に連結された植物発現性プロモーターは、転写可能なDNA配列に関して異種である。
【0071】
本発明の実施形態により、アンチセンスRNA、二本鎖RNA(dsRNA)または逆方向反復RNA配列の発現、または、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、トランス作用性siRNA(ta-siRNA)、またはマイクロRNA(miRNA)の発現によるコサプレッションすなわちRNA干渉(RNAi)を含む、標的遺伝子のサプレッションのための当技術分野で公知の任意の方法を使用して、FT導入遺伝子を抑制してもよい。例えば、その内容及び開示を参照として本明細書に援用する、米国特許出願公開第2009/0070898号、第2011/0296555号、及び第2011/0035839号参照。したがって、転写可能なDNA配列によってコードされるRNA分子は、アンチセンスRNA、二本鎖RNA(dsRNA)または逆方向反復RNA、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、トランス作用性siRNA(ta-siRNA)、またはマイクロRNA(miRNA)であってもよく、成熟siRNAまたは成熟miRNAなどの成熟RNA分子にプロセシングまたは切断され得るsiRNA前駆体またはmiRNA前駆体などのRNA前駆体が含まれる。本明細書中で使用する用語「サプレッション」とは、植物、植物細胞または植物組織における標的遺伝子及び/または導入遺伝子によってコードされるmRNA及び/またはタンパク質の発現レベルの低下、減少または排除を指し、RNA分子を発現するために使用するプロモーターに依存して、特定の組織及び/または植物発育期に限定され得る。
【0072】
本発明の実施形態により、サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子もしくはRNA配列をコードする転写可能なDNA配列及び/またはサプレッションエレメント(複数可)を含む、組換えDNA分子、構築物またはベクターを提供し、転写可能なDNA配列は、植物発現性プロモーターに作動可能に連結される。RNA分子はサプレッション用であるため、転写可能なDNA配列によってコードされるRNA分子は非コードRNA分子であってもよい。本発明の目的のために、「非コードRNA分子」は、タンパク質をコードしないRNA分子である。いくつかの実施形態によれば、組換えDNA分子、構築物またはベクターは、FT導入遺伝子を含む第1の発現カセット及びサプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む第2の発現カセットを有してもよい。あるいは、FT導入遺伝子を含む第1の発現カセット、及びFT導入遺伝子のサプレッションのための転写可能なDNA配列を含む第2の発現カセットを、2つの異なる組換えDNA分子、構築物またはベクター中に存在させてもよい。
【0073】
転写可能なDNA配列は、少なくとも15ヌクレオチド長、例えば約15ヌクレオチド長~約27ヌクレオチド長、または15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、または27ヌクレオチド長のサプレッションエレメントを含む場合があり、サプレッションエレメントは、抑制する標的FT導入遺伝子の少なくとも一部、及び/またはそれに相補的なDNA配列に対応する。多くの実施形態において、転写可能なDNA配列またはサプレッションエレメントは、少なくとも17、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、または少なくとも23ヌクレオチド長(またはそれ以上)であり得る(例えば、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも500、少なくとも1000、少なくとも1500、少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、または少なくとも5000ヌクレオチド長)。転写可能なDNA配列またはサプレッションエレメントの長さ及び配列に応じて、1つ以上の配列ミスマッチまたは非相補的塩基がサプレッションを失うことなく許容され得る。実際、長さが約15ヌクレオチド~約27ヌクレオチドの範囲のより短いRNAiサプレッションエレメントでさえも、1つ以上のミスマッチまたは非相補的塩基を有し得るが、それでもなお標的FT導入遺伝子の抑制に有効である。したがって、センスまたはアンチセンスサプレッションエレメントは、標的とするFT導入遺伝子の少なくとも1つのセグメントもしくは部分の対応する配列、またはその相補的配列に対して、それぞれ、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%同一または相補的な配列を有してもよい。
【0074】
FT導入遺伝子を標的とするサプレッションのための本発明の転写可能なDNA配列は、以下のサプレッションエレメント(複数可)及び/または標的配列(複数可)のうちの1つ以上を含み得る:(a)標的とするFT導入遺伝子の少なくとも1つのセグメントもしくは部分に対し、アンチセンスすなわち相補的である少なくとも1つのアンチセンスDNA配列を含むDNA配列;(b)標的とするFT導入遺伝子の少なくとも1つのセグメントもしくは部分に対し、アンチセンスすなわち相補的である少なくとも1つのアンチセンスDNA配列の複数のコピーを含むDNA配列;(c)標的とするFT導入遺伝子の少なくとも1つのセグメントまたは部分を含む少なくとも1つのセンスDNA配列を含むDNA配列;(d)それぞれ、標的とするFT導入遺伝子の少なくとも1つのセグメントまたは部分を含む少なくとも1つのセンスDNA配列の複数のコピーを含むDNA配列;(e)標的とするFT導入遺伝子のセグメントまたは部分の逆方向反復配列を有し、及び/または二本鎖RNAを形成することによって標的とするFT導入遺伝子を抑制するためにRNAに転写されるDNA配列であり、転写されるRNA配列が、標的とするFT導入遺伝子の少なくとも1つのセグメントまたは部分に対してアンチセンスすなわち相補的である少なくとも1つのアンチセンスDNA配列、及び標的とするFT導入遺伝子の少なくとも1つのセグメントまたは部分を含む少なくとも1つのセンスDNA配列を含み;(f)単一の二本鎖RNAを形成することによって標的とするFT導入遺伝子を抑制するためにRNAに転写され、それぞれが標的とするFT導入遺伝子の少なくとも1つのセグメントまたはその一部に対してアンチセンスすなわち相補的な複数の連続的なアンチセンスDNA配列、及びそれぞれが標的とするFT導入遺伝子の少なくとも1つのセグメントまたは部分を含む複数の連続的なセンスDNA配列を含むDNA配列;(g)複数の二本鎖RNAを形成することによって標的とするFT導入遺伝子を抑制するためにRNAに転写され、それぞれが標的とするFT導入遺伝子の少なくとも1つのセグメントまたはその一部に対してアンチセンスすなわち相補的な複数の連続的なアンチセンスDNA配列、及びそれぞれが標的とするFT導入遺伝子の少なくとも1つのセグメントまたは部分を含む複数の連続的なセンスDNA配列を含むDNA配列であって、複数のアンチセンスDNAセグメント及び複数のセンスDNAセグメントは、一連の逆方向反復配列として配置され;(h)miRNA、好ましくは植物miRNAに由来するヌクレオチドを含むDNA配列;(i)siRNAのヌクレオチドを含むDNA配列;(j)リガンドに結合することができるRNAアプタマーに転写されるDNA配列;ならびに(k)リガンドに結合することができるRNAアプタマーに転写されるDNA配列、及び標的とするFT導入遺伝子の発現を調節することができる調節RNAに転写されるDNAであり、標的とするFT導入遺伝子の調節は、調節RNAの立体構造に依存し、調節RNAの立体構造は、リガンドによるRNAアプタマーの結合状態によってアロステリックに影響を受ける。転写可能なDNA配列は、1つ以上の上記サプレッションエレメント及び/またはターゲティング配列(複数可)を有してもよく、それらは、FT導入遺伝子の1つ以上の配列及び/またはその相補的配列に対応するものであってよい。
【0075】
1つより多いFT導入遺伝子標的配列についての転写可能なDNA配列の複数のセンス及び/またはアンチセンスサプレッション配列は、直列に連続して配置するか、または直列逆方向反復配列などの直列セグメントまたは反復配列として配置してもよく、それらはさらに、1つ以上のスペーサー配列(複数可)によって中断されていてもよい。さらに、転写可能なDNA配列またはサプレッションエレメントのセンスまたはアンチセンス配列は、転写可能なDNA配列またはサプレッションエレメントの配列及び長さに応じて、標的FT導入遺伝子配列と完全に一致または完全に相補的でなくてもよい。実際、約15ヌクレオチド~約27ヌクレオチド長のより短いRNAiサプレッションエレメントは、サプレッションエレメントまたはターゲティング配列の長さに応じて、1つ以上のミスマッチまたは非相補的塩基、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個(またはそれ以上)のミスマッチを有してもよく、それでもなお標的FT導入遺伝子を抑制するのに有効である。したがって、センスまたはアンチセンスサプレッションエレメントは、標的FT導入遺伝子の少なくとも1つのセグメントもしくは部分の対応する配列、またはその相補的配列に対して、それぞれ、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%同一または相補的な配列を含み得る。
【0076】
アンチセンスサプレッションのために、転写可能なDNA配列は、標的とするFT導入遺伝子の少なくとも一部またはセグメントに対し、アンチセンスすなわち相補的な配列を含み得る。転写可能なDNA配列及び/またはサプレッションエレメント(複数可)は、標的とするFT導入遺伝子の1つ以上の部分またはセグメントに相補的な複数のアンチセンス配列、または標的とするFT導入遺伝子に相補的な複数コピーのアンチセンス配列を含み得る。アンチセンス配列は、標的とするFT導入遺伝子のmRNAの少なくとも一部またはセグメントに相補的なDNA配列に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%同一であってもよい。言い換えれば、アンチセンス配列は、標的とするFT導入遺伝子に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%相補的であってもよい。
【0077】
2つのヌクレオチド配列に関して本明細書中で使用する用語「相補性の割合」または「~の割合で相補的な」とは、同一性の割合の概念に類似しているが、2つの配列を直線的に配置し、ループ、ステムまたはヘアピンなどの二次折り畳み構造を伴わずに最適に塩基対を形成させるが、2つの配列間の塩基対形成におけるミスマッチ及びギャップを許容する場合の、ヌクレオチド参照配列に対して最適に塩基対形成またはハイブリダイズする配列のヌクレオチドの割合を指す。そのような相補性の割合は、2本のDNA鎖、2本のRNA鎖、または1本のDNA鎖と1本のRNA鎖の間であってもよい。「相補性の割合」は、(i)比較ウィンドウ(例えば、アラインメントウィンドウ)にわたって、直線的かつ完全に伸ばした配置(すなわち、折り畳み構造または二次構造を伴わない)で2つのヌクレオチド配列を最適に塩基対形成またはハイブリダイズさせ;(ii)比較ウィンドウにわたって2つの配列間の塩基対形成の位置の数を測定して相補的な位置の数を取得し、(iii)相補的な位置の数を、比較ウィンドウにおける位置の総数で割り、及び(iv)この商に100%を掛けて、2つの配列の相補性の割合を得る。これらの目的のために、アラインメントウィンドウを、2つの配列間の相補性の領域として定義する。2つの配列の最適な塩基対合は、水素結合を介したG-C、A-T、及びA-Uなどのヌクレオチド塩基の既知の対合に基づいて決定してもよい。参照またはクエリ配列に関して特定の比較ウィンドウを指定せずに「相補性の割合」を計算している場合、同一性の割合は、2つの直線配列間の相補的な位置の数を参照配列の全長で割ることによって決定される。本発明の目的のために、2つの配列(クエリ及び対象)を最適に塩基対合させる場合(ギャップ及びミスマッチまたは非塩基対形成ヌクレオチドを考慮して)、クエリ配列の「相補性の割合」(比較ウィンドウを定義しない場合)は、その長さにわたる2つの配列間の塩基対合の位置の数を、クエリ配列内の位置の総数で割り、その後100%を掛けたものに等しい。
【0078】
逆方向反復配列または転写されたdsRNAを用いたFT導入遺伝子のサプレッションのために、転写可能なDNA配列は、標的とするFT導入遺伝子のセグメントまたは部分を含むセンス配列及び標的とするFT導入遺伝子のセグメントまたは部分に相補的なアンチセンス配列を有してもよく、その場合、センス及びアンチセンスDNA配列を直列に配置する。センス及び/またはアンチセンス配列はそれぞれ、上記のように標的とするFT導入遺伝子のセグメントまたは部分に対して100%未満の同一性または相補性であってよい。センス及びアンチセンス配列をスペーサー配列によって分離してもよく、それにより、転写可能なDNA配列から転写されたRNA分子は、センス配列とアンチセンス配列との間にステム、ループまたはステム-ループ構造を形成する。転写可能なDNA配列は、直列に配置された複数のセンス及びアンチセンス配列を代わりに含んでもよく、それらもまた1つ以上のスペーサー配列によって分離されていてもよい。複数のセンス及びアンチセンス配列を含む転写可能なDNA配列は、一連のセンス配列とそれに続く一連のアンチセンス配列として、または一連の直列に配列されたセンス及びアンチセンス配列として配置してもよい。
【0079】
マイクロRNA(miRNA)を用いたFT導入遺伝子のサプレッションのために、転写可能なDNA配列は、ウイルスもしくは真核生物、例えば動物もしくは植物の天然のmiRNA配列に由来するか、またはそのような天然miRNA配列を改変するかもしくはそれに由来するDNA配列を有していてもよい。そのような天然または天然由来のmiRNA配列は、フォールドバック構造を形成し、miRNA前駆体のための骨格として機能する場合があり、例えば天然(または天然由来)pri-miRNAまたはpre-miRNA配列に由来する天然miRNA前駆体配列のステム領域に対応し得る。しかしながら、これらの天然または天然由来のmiRNA骨格またはプレプロセシングされた配列に加えて、本発明の遺伝子改変miRNAはさらに、標的とするFT導入遺伝子のセグメントまたは部分に対応する配列を含む。したがって、プレプロセシングされた配列または骨格配列に加えて、1つ以上の配列ミスマッチを許容し得るものの、標的とするFT導入遺伝子のセグメントまたは部分に対応するセンス及び/またはアンチセンス配列、及び/またはそれに相補的な配列を含むように、サプレッションエレメントをさらに改変してもよい。
【0080】
遺伝子改変型miRNAは、高い特異性での標的遺伝子のサプレッションに有用である。例えば、その内容及び開示を参照として本明細書に援用するParizotto et al.,Genes Dev.18:2237-2242(2004)、ならびに米国特許出願公開第2004/0053411号、第2004/0268441号、第2005/0144669号、及び第2005/0037988号参照。miRNAは非コードRNAである。miRNA前駆体分子が切断されると成熟miRNAが形成され、これは、一般的に約19~約25ヌクレオチド長(通常、植物では約20~約24ヌクレオチド長)、例えば、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチド長であり、サプレッションの標的となる遺伝子に対応する配列及び/またはその相補配列を有する。成熟miRNAは、標的mRNA転写産物とハイブリダイズし、標的転写産物へのタンパク質複合体の結合を誘導し、これは翻訳を阻害し、及び/または転写産物の分解をもたらすように機能し、したがって標的遺伝子の発現を負に調節または抑制し得る。miRNA前駆体はまた、植物において、標的遺伝子のサプレッションを引き起こすためにRNA依存性RNAポリメラーゼを必要とするプロセスにおいてsiRNA、トランス作用性siRNA(ta-siRNA)をインフェーズ産生するうえで有用である。例えば、その内容及び開示を参照として本明細書に援用するAllen et al.,Cell 121:207-221(2005),Vaucheret Science STKE,2005:pe43(2005)、及びYoshikawa et al.Genes Dev.,19:2164-2175(2005)参照。
【0081】
本発明の実施形態によれば、FT導入遺伝子の標的化サプレッションのためのmiRNAまたは前駆体miRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む組換えDNA分子、構築物またはベクターを提供する。そのような転写可能なDNA配列は、FT導入遺伝子に対応する少なくとも19ヌクレオチド長の配列及び/またはFT導入遺伝子に相補的な配列を有し得るが、1つ以上の配列ミスマッチ及び/または非塩基対ヌクレオチドを許容し得る。
【0082】
FT導入遺伝子はまた、1つ以上の低分子干渉RNA(siRNA)を使用して抑制してもよい。siRNA経路は、より長い二本鎖RNA中間体(「RNA二本鎖」)から低分子干渉RNA(siRNA)への非段階的切断を含む。siRNAのサイズまたは長さは、一般的には約19~約25ヌクレオチドまたは塩基対の範囲であるが、一般的なクラスのsiRNAは21塩基対または24塩基対を有する。したがって、本発明の転写可能なDNA配列は、少なくとも約19~約25ヌクレオチド長、例えば、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチド長のRNA分子をコードしてもよい。siRNAサプレッションについては、FT導入遺伝子の標的化サプレッションのためのsiRNA分子をコードする転写可能なDNA配列及び/またはサプレッションエレメントを含む、組換えDNA分子、構築物またはベクターを提供する。
【0083】
本発明の実施形態により、植物細胞中の標的mRNAの配列、例えば、標的mRNAのコード(エキソン)配列及び/または非翻訳(UTR)配列に、結合またはハイブリダイズする非コードRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む組換えDNA分子、ベクターまたは構築物を提供し、標的mRNA分子はFTタンパク質をコードし、転写可能なDNA配列は植物発現性プロモーターに作動可能に連結される。成熟mRNA配列を標的とすることに加えて、転写可能なDNA配列によってコードされる非コードRNA分子は、FT導入遺伝子または転写産物のイントロン配列を標的としてもよい。他の実施形態により、植物細胞内で標的mRNAに結合またはハイブリダイズする成熟非コードRNA分子に切断またはプロセシングされる非コードRNA(前駆体)分子をコードする転写可能なDNA配列を含む組換えDNA分子、ベクターまたは構築物を提供し、標的mRNA分子はFTタンパク質をコードし、転写可能なDNA配列は、組織特異的、組織優先的、発生的、及び/または他のプロモーター型であり得る植物発現性プロモーターに作動可能に連結される。
【0084】
本発明の実施形態により、非コードRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む組換えDNA分子、ベクターまたは構築物を提供し、(i)FT導入遺伝子から発現し、及び/または(ii)植物または植物細胞中のFTタンパク質をコードするmRNA分子の少なくともセグメントまたは部分に対し、非コードRNA分子は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%相補的であり、転写可能なDNA配列は植物発現性プロモーターに作動可能に連結される。非コードRNA分子は、成熟mRNAもしくはmRNA前駆体配列、5’もしくは3’非翻訳領域(UTR)、コード(エキソン)配列及び/またはFT導入遺伝子もしくは転写産物のイントロンもしくはイントロン配列を標的とし得る。いくつかの実施形態によれば、非コードRNA分子は、サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とし、FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド(コード)配列(例えば、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、または29)、または任意の他の公知の花成性FTコード配列の、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、または少なくとも27連続ヌクレオチドに対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%相補的である。他の実施形態によれば、非コードRNA分子は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、もしくは30、または他の任意の公知の花成性FTタンパク質、あるいはその機能的断片に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%同一のFTタンパク質をコードするmRNA分子の、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、または少なくとも27連続ヌクレオチドに対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%相補的である。本明細書中で使用する場合、ポリヌクレオチドまたはタンパク質配列に関しての用語「連続的」とは、その配列中に欠失またはギャップがないことを意味する。本発明の実施形態によれば、本明細書において提供する組換えDNA分子、ベクターまたは構築物の転写可能なDNA配列によってコードされる非コードRNA分子は、成熟miRNAもしくはsiRNA、または植物細胞内でプロセシングもしくは切断されて成熟miRNAまたはsiRNAを形成し得るmiRNAもしくはsiRNAの前駆体であり得る。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態によれば、転写可能なDNA配列は、RNA分子のターゲティング配列をコードする配列を有し、この配列は、特定のGm.FT2a遺伝子または導入遺伝子のmRNAに相補的であり、及び/またはハイブリダイズし、サプレッションのためにGm.FT2a遺伝子または導入遺伝子を標的とする。転写可能なDNA配列は、転写可能なDNA配列によってコードされ、それから転写されるRNA分子のターゲティング配列(例えば、配列番号66)をコードする配列(例えば、配列番号65)を有してもよい。RNA分子のターゲティング配列は、FT導入遺伝子によってコードされるmRNAのセグメントまたは部分に相補的な、十分な長さの任意の配列であってよく、転写可能なDNA配列は、RNA分子のターゲティング配列をコードするかまたは転写元となる配列を有してもよい。例えば、miRNA前駆体をコードする転写可能なDNA配列は配列番号67を有してもよく、転写可能なDNA配列は、サプレッションのためにGm.FT2a遺伝子または導入遺伝子を標的とする、配列番号67を有する成熟miRNAへとプロセシングされ得る。標的とするFT遺伝子または導入遺伝子によってコードされるmRNAは、転写可能なDNA配列によってコードされるRNA分子のための標的部位を有してもよい。FT導入遺伝子のmRNA中のそのような標的部位は、例えば、FT遺伝子または導入遺伝子の配列(例えば、配列番号69)によってコードされ得る配列番号68を有してもよい。したがって、FT導入遺伝子のポリヌクレオチドコード配列は、RNA分子の標的部位をコードする配列を有してもよい。
【0086】
植物発現性プロモーターに加えて、FT導入遺伝子のサプレッションのための非コードRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む組換えDNA分子、構築物、ベクターまたは発現カセットもまた、植物細胞または組織中の転写可能なDNA配列の発現を調節または可能にするために適切な、必要な、または好適な1つ以上のさらなる調節エレメント(複数可)、例えばエンハンサー(複数可)、転写開始部位(TSS)、リンカー、ポリアデニル化シグナル、5’及び/または3’骨格または骨格配列、終止領域または終止配列などに作動可能に連結させてもよい。そのような追加の調節エレメント(複数可)は任意であってよく、転写可能なDNA配列の発現を増強または最適化するために使用してもよい。
【0087】
いくつかの実施形態によれば、転写可能なDNA配列は、FT導入遺伝子の非コード配列の少なくとも部分に対応する配列及び/またはそれに相補的な配列、例えばFT導入遺伝子の5’または3’非翻訳領域(UTR)の配列またはイントロン配列を有してもよく、これは内在性FT遺伝子よりもFT導入遺伝子を選択的にサプレッションすることを可能にし得る。FT導入遺伝子の「非コード」配列(FT遺伝子または導入遺伝子のサプレッションのために、転写可能なDNA配列によってコードされる「非コードRNA分子」と混同しないように)は、転写されるFT導入遺伝子の配列であり、プレmRNA及び/または成熟mRNAの一部を形成するが、トランスジェニックFTタンパク質をコードしない。したがって、転写可能なDNA配列は、FT導入遺伝子の非コード配列の少なくとも部分に対応するターゲティング配列及び/またはそれに相補的な配列を含むRNA分子をコードしてもよい。したがって、転写可能なDNA配列は、FT導入遺伝子によってコードされるプレmRNAまたは成熟mRNAの少なくとも部分に対応する配列を含み得る。転写可能なDNA配列の配列及びコードされたRNA分子のターゲティング配列は、FT導入遺伝子の特定の非コード配列に依存し、これは、内在性FT遺伝子(複数可)と同じかまたは異なるもしくは固有であり得る。いくつかの実施形態により、FT導入遺伝子の非コード配列の少なくとも部分に対応する配列及び/またはそれに相補的な配列を有する転写可能なDNA配列を含む発現カセットを含む、組換えDNA分子、ベクターまたは構築物を提供する。上記と同様に、第1の発現カセット及び第2の発現カセットを含む2つ以上の発現カセットを提供してもよく、第1の発現カセットは、第1の植物発現性プロモーターに作動可能に連結されたFTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(すなわちFT導入遺伝子)を含み、第2の発現カセットは、第2の植物発現性プロモーターに作動可能に連結された転写可能なDNA配列を含み、転写可能なDNA配列は、FT導入遺伝子の非コード配列の少なくとも部分に対応する配列及び/またはそれに相補的な配列を有する。第1及び第2の発現カセットは、同じDNA分子、ベクターもしくは構築物中に、または別々のDNA分子、ベクターもしくは構築物中に存在してもよい。
【0088】
サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列は、植物発現性プロモーターに作動可能に連結させてもよい。RNA分子の発現パターンは、特定の植物発現性プロモーターに依存し得る。上記のように、栄養期プロモーターの制御下でのFT導入遺伝子の発現を用いて、早期開花を引き起こし、植物の結節あたりの花、さやなどの数を増加させ得るが、同時に、植物の早期生長停止を引き起こし得る。サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子のさらなる発現を用いて、FT導入遺伝子の発現のパターン及びレベルを改良及び/または減弱させて早期生長停止表現型をさらに緩和することが現在提案されている。これは、FT導入遺伝子由来の転写産物及びタンパク質の量の減少(すなわちその発現レベルの減少)及び/またはその発現パターンの改変(すなわちトランスジェニックFT発現パターンの改良または制限)によって起こり得る。理論に拘泥するものではないが、FT導入遺伝子の発現低下は、早期生長停止表現型を軽減する一方で早期開花を誘導するのに十分であり得る。同様に、FT発現の時空間パターンの制限は、トランスジェニックFTが早期生長停止を引き起こし得る特定の組織及び/または発育段階におけるFT発現を減少させ得る。したがって、本発明の実施形態によれば、FT導入遺伝子及びRNA分子(サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とする)の発現のタイミング及びパターンは、同じであっても、重なっていても、またはより明確であってもよい。
【0089】
上述の多くの実施形態によれば、第1の発現カセット及び第2の発現カセットを含む、少なくとも2つの発現カセットを提供してもよく、第1の発現カセットは第1の植物発現性プロモーターに作動可能に連結されたFT導入遺伝子を含み、第2の発現カセットは、第2の植物発現性プロモーターに作動可能に連結された転写可能なDNA配列を含み、転写可能なDNA配列は、サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする。2つの発現カセットは、同じ組換えDNA分子、構築物またはベクター中に存在してもよく、または別々の組換えDNA分子、構築物またはベクター中に存在してもよい。上記のように、FT導入遺伝子に作動可能に連結された第1の植物発現性プロモーターは栄養期プロモーターであってもよく、これは分裂組織特異的または分裂組織優先型プロモーターでもあり得る。転写可能なDNA配列に作動可能に連結された第2の植物発現性プロモーターは、構成的、誘導的、発生的、組織特異的、組織優先型、栄養期、生殖期などを含む様々な異なるプロモーター型を有してもよいが、RNA分子の発現のタイミング及びパターンは、FT導入遺伝子の発現のタイミング及びパターンと少なくとも部分的に重複すべきである。いくつかの実施形態によれば、第2の植物発現性プロモーターは、構成的または栄養期プロモーターであり、FT導入遺伝子の発現レベルを低下させ得る。そのような構成的または栄養期プロモーターはまた、組織特異的または組織優先型プロモーターであってもよく、及び/またはFT導入遺伝子の発現のタイミング及びパターンと広範に重複し得る。実際、FT導入遺伝子に関する転写可能なDNA配列(及びRNAサプレッション分子)の構成的または重複する発現パターンは、特にFT導入遺伝子のサプレッションが不完全または不十分である場合、FT発現の量または用量を減らすのに有効であり得る。いくつかの場合では、FT導入遺伝子及びサプレッション構築物を、同一または類似のプロモーターに作動可能に連結させてもよい。例えば、FT導入遺伝子の発現を駆動する第1の植物発現性プロモーターは、早期または後期栄養期及び/または生殖期プロモーターであってもよく、サプレッションのためのRNA分子をコードする転写可能なDNA配列の発現を駆動する第2の植物発現性プロモーターもまた、早期または後期栄養期及び/または生殖期プロモーターであってよい。
【0090】
構成的プロモーターの多くの例、例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S及び19Sプロモーター(例えば、米国特許第5,352,605号参照)、オメガ領域を有するCaMV 35Sプロモーターなどの増強型CaMV 35Sプロモーター(例えば、Holtorf,S. et al.,Plant Molecular Biology,29:637-646(1995)参照、または二重増強CaMVプロモーター(例えば、米国特許第5,322,938号参照)、ゴマノハグサモザイクウイルス(FMV)35Sプロモーター(例えば米国特許第6,372,211号参照)、ミラビリスモザイクウイルス(MMV)プロモーター(例えば米国特許第6,420,547号参照)、ピーナッツ退緑条斑カリモウイルスプロモーター(例えば米国特許第5,850,019号参照)、ノパリンまたはオクトピンプロモーター、ダイズポリユビキチンプロモーターなどのユビキチンプロモーター(例えば、米国特許第7,393,948号参照)、Arabidopsis S-アデノシルメチオニンシンテターゼプロモーター(例えば、8,809,628号参照)など、または前述のプロモーターのいずれかの機能的部分が当技術分野で公知であり、上記参考文献のそれぞれの内容及び開示は参照として本明細書に援用される。あるいは、第2の植物発現性プロモーターは、栄養期及び/または生殖期プロモーターであってもよく、その例を本明細書中に提供する。
【0091】
他の実施形態によれば、第2の植物発現性プロモーターは、異なる植物組織及び/または発育段階などにおいて、FT導入遺伝子に比べてより明確なタイミング及び/または発現パターンを有してもよい。したがって、FT導入遺伝子と、FT導入遺伝子のサプレッションのためのRNA分子(ならびにRNA分子の特異的ターゲティング配列)をコードする転写可能なDNA配列との相対的発現タイミング及びパターンに応じて、FT導入遺伝子の有効な時空間発現パターンを改変、変更及び/または改良してもよい。しかしながら、多くの実施形態によれば、転写可能なDNA配列(及びRNA分子)は、FT導入遺伝子の発現の開始に比べて、後期の発育段階または組織において発現させてもよく、それにより、FT導入遺伝子は、RNAサプレッション分子のその後の発現によって抑制される前に、依然として早期花成誘導シグナルを提供することができ、または別の言い方をすれば、早期花成誘導シグナルの後にFT導入遺伝子を抑制して早期生長停止を低減または軽減してもよい。例えば、FT導入遺伝子の発現を駆動する第1の植物発現性プロモーターは早期栄養期プロモーターであってもよく、サプレッションのためにRNA分子をコードする転写可能なDNA配列の発現を駆動する第2植物発現性プロモーターは後期栄養期及び/また生殖期プロモーターであってもよく、または第1の植物発現性プロモーターは後期栄養期プロモーターであってもよく、第2の植物発現性プロモーターは生殖期プロモーターであってもよい。より広くは、第2の植物発現性プロモーターは、第1の植物発現性プロモーターよりも後の発育段階において、その関連する導入遺伝子または転写可能なDNA配列の発現を開始し、引き起こし、及び/または駆動してもよく、それにより、通常、サプレッション構築物は、早期の栄養生長期(複数可)における初期FT花成誘導シグナルの後に発現する。したがって、第2の植物発現性プロモーターは、第1の植物発現性プロモーターよりも後期の発育段階のプロモーターであり得る。例えば、第2の植物発現性プロモーターは、第1の植物発現性プロモーターよりも後期の発育段階において、しかし第1の植物発現性プロモーターと同じ組織型または発生系統で(例えば分裂組織内で)発現を駆動し得る。そのような後期栄養期及び/または生殖期プロモーターはまた、組織特異的または組織優先型プロモーター、例えば、分裂組織特異的または分裂組織優先型プロモーターであってもよい。後期栄養期プロモーターの例は上記に提供されている。
【0092】
FT導入遺伝子に対する植物発育の1つ以上の後期の段階(複数可)において、FT導入遺伝子のサプレッションのための転写可能なDNA配列及びRNA分子を発現させることによって、FT導入遺伝子の有効発現特性を、FT導入遺伝子単独の発現に比べて、より早い発育段階及び/または組織へと改変、変更及び改良してもよい。いくつかの場合では、FT導入遺伝子の栄養期の発現は、植物における後期栄養期及び/または生殖期または組織において、持続するかまたは継続し得る。したがって、サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子の後期の発現は、それらの後期の段階(複数可)及び/または組織(複数可)中のFT導入遺伝子のレベルを低下させて、FT導入遺伝子の発現レベルをより早い発育段階(複数可)及び/または組織(複数可)に効果的に限定または制限し得る。結果として、早期花成誘導シグナルを維持または保存し得る一方で、後期のFT発現を減弱または減少させて、植物の残存する分裂組織の早期生長停止を回避または遅延させ、植物の栄養生長及び発育を開花後に継続させ得る。
【0093】
本明細書中で使用する場合、「生殖期」プロモーターは、植物の1つ以上の生殖生長期(複数可)の間、例えば、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、及び/またはR8の発育段階のうちの1つ以上の間にその関連遺伝子、導入遺伝子、または転写可能なDNA配列の転写または発現を、開始する、引き起こす、駆動する、などを行う任意のプロモーターとして定義される。そのような「生殖期」プロモーターは、その関連遺伝子/導入遺伝子または転写可能なDNA配列の転写または発現を、少なくとも優先的に、または多くの場合、排他的でないにしても、植物発育の1つ以上の生殖期(複数可)の間に(栄養期とは対照的に)、開始する、引き起こす、駆動する、などを行う「生殖期優先型」プロモーターとしてさらに定義され得る。しかしながら、「生殖期」及び「生殖期優先型」プロモーターはまた、それぞれが、植物の1つ以上の細胞または組織において、栄養生長相(複数可)または栄養生長期(複数可)におけるその関連遺伝子、導入遺伝子、または転写可能なDNA配列の転写または発現を、開始する、許可する、許容する、引き起こす、駆動する、などを行い得る。したがって、生殖期プロモーターはまた、両方の発育相の間(すなわち、栄養生長期と生殖生長期の両方の間)に発現する場合、栄養期プロモーターでもあり得る。そのような生殖期プロモーターはまた、組織特異的または組織優先型プロモーター、例えば、分裂組織特異的または分裂組織優先型プロモーターであってもよい。「生殖期」プロモーターは、植物の1つ以上の生殖組織(複数可)におけるその関連遺伝子/導入遺伝子または転写可能なDNA配列の転写または発現を、開始する、引き起こす、駆動する、などを行うものとしてさらに定義され得る。そのような「生殖期」プロモーターはまた、少なくとも1つの花成または生殖組織、例えば花芽分裂組織において、その関連遺伝子/導入遺伝子または転写可能なDNA配列の転写または発現を、少なくとも優先的に、または多くの場合、排他的でないにしても、開始する、引き起こす、駆動する、などを行う「花成優先型」プロモーターとして、あるいは少なくとも1つの花成または生殖組織において、その関連遺伝子/導入遺伝子または転写可能なDNA配列の転写または発現を、排他的に(またはほとんど排他的に)開始する、引き起こす、駆動する、などを行う「花成特異的」プロモーターとしても定義され得る。所与の植物種に対するこれらの生殖期の特性及び特徴は、当技術分野において公知である。
【0094】
所定の植物種におけるそれらの発現パターンに応じて早期または後期栄養期プロモーターでもあり得る生殖期プロモーターの例として、トマト遺伝子由来の以下のプロモーターが挙げられ得る:Sl.Nodプロモーター(pSl.Nod、pLe.NodまたはpNod)(配列番号70)、Sl.MADS5プロモーター(pSl.MADS5、pLe.MADS5またはpMADS5)(配列番号71)、またはSl.MADS-RINプロモーター(pSl.MADS-RIN、pLe.MADS-RINもしくはpMADS-RIN)(配列番号72)、またはその任意の機能的部分。それらの天然植物種においてpSl.MADS5及び/またはpSl.MADS-RINプロモーターと相同及び/または類似の発現パターンを有すると同定されたさらなる例として、以下の遺伝子のうちの1つに由来するプロモーターが挙げられ得る:Arabidopsis由来のAT1G24260.1(配列番号73)、AT2G45650.1(配列番号74)、AT3G02310.1(配列番号75)、もしくはAT5G15800.1(配列番号76)、もしくはAT2G03710.1(配列番号77);ダイズ由来のGlyma05g28140(配列番号78)、Glyma08g11120(配列番号79)、Glyma11g36890(配列番号80)、Glyma08g27670(配列番号81)、Glyma13g06730(配列番号82)、もしくはGlyma19g04320(配列番号83);トマト由来のSolyc02g089200(配列番号84)、Solyc03g114840(配列番号85)、Solyc12g038510(配列番号86)、Solyc04g005320(配列番号87)もしくはSolyc05g056620(配列番号88);またはトウモロコシ由来のGRMZM2G159397(配列番号89)、GRMZM2G003514(配列番号90)、GRMZM2G160565(配列番号91)、GRMZM2G097059(配列番号92)、GRMZM2G099522(配列番号93)もしくはGRMZM2G071620(配列番号94)、または前述のプロモーターのいずれかの機能的部分。
【0095】
本発明の実施形態によれば、「生殖期」プロモーターはまた、その関連遺伝子、導入遺伝子、または転写可能なDNA配列の観察可能な、または顕著な転写または発現が最初に引き起こされる、開始される、などの特定の生殖期によってさらに定義してもよい。例えば、生殖期プロモーターは、R1期プロモーター、R2期プロモーター、R3期プロモーターなどであってもよい。したがって、「R1期」プロモーターは、植物発育のR1期中に、その関連遺伝子、導入遺伝子、または転写可能なDNA配列の転写を、最初に開始するか引き起こす生殖期プロモーターとして定義され、「R2期」プロモーターは、植物発育のR2期中に、その関連遺伝子、導入遺伝子、または転写可能なDNA配列の転写を、最初に開始するか引き起こす生殖期プロモーターとして定義され、以下も同様であるが、関連遺伝子、導入遺伝子、または転写可能なDNA配列の発現は、後期生殖生長期(複数可)において、1つ以上の組織で継続的または断続的に存在し得る。栄養生長期から生殖期への転換(及びR1期の開始)は、所与の作物植物について当技術分野における標準的な慣例(すなわち、一般的にはダイズと同様に、植物上の最初の開花の目に見える外観)に従って定義される。そのような発現のタイミングが未知である場合、当業者であれば、当技術分野で公知の様々な分子アッセイ及び技術を用いて、植物発育中の所与の遺伝子、導入遺伝子、または転写可能なDNA配列の発現のタイミングを決定できよう。
【0096】
本発明の実施形態によれば、「生殖期」プロモーターには、構成的プロモーター、組織優先型プロモーター、または組織特異的プロモーターが含まれ得る。例えば、生殖期プロモーターは、植物の生殖生長期(複数可)の間に、1つ以上の植物組織(複数可)、例えば、1つ以上の根(複数可)、茎(複数可)、葉(複数可)、分裂組織(複数可)などにおけるその関連遺伝子、導入遺伝子または転写可能なDNA配列の発現を駆動し得る。しかしながら、そのような生殖期プロモーターは、好ましくは、植物の1つ以上の分裂組織(複数可)におけるその関連遺伝子、導入遺伝子または転写可能なDNA配列の発現を駆動し得る。多くの実施形態によれば、「生殖期」プロモーターは、「分裂組織特異的」または「分裂組織優先型」プロモーターであり、分裂組織におけるその関連遺伝子、導入遺伝子または転写可能なDNA配列の発現を引き起こし、FT導入遺伝子の発現パターンに少なくとも部分的に対応し、FT導入遺伝子の発現を減弱及び/または改良し得る。
【0097】
これらのプロモーターのポリヌクレオチド配列(またはその機能的部分)はまた、プロモーターに作動可能に連結された関連遺伝子、導入遺伝子または転写可能なDNA配列の類似または同一の発現パターンをなお維持する一方で、緩和された配列同一性を有してもよい。例えば、後期栄養期及び/または生殖期プロモーターは、配列番号70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、もしくは94、またはその任意の機能的部分から選択されるポリヌクレオチド配列に対し、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有してもよい。本明細書で公知のまたは提供するプロモーター配列の「機能的部分」は上記に定義されている。
【0098】
本発明の実施形態によれば、第2の植物発現性プロモーターに作動可能に連結された転写可能なDNA配列を含む第2の発現カセットによってコードされるRNA分子は、1つ以上の植物組織において、FT導入遺伝子のサプレッションを介して、FT導入遺伝子によってコードされるmRNA転写産物及び/またはタンパク質の発現レベルの低下または排除を引き起こし得る。第2の発現カセットを用いると、トランスジェニックFT転写産物及び/またはタンパク質の発現レベルは、1つ以上の植物組織、例えば1つ以上の分裂組織において、第2の発現カセットなしで同じ植物組織(複数可)に存在するであろうFT導入遺伝子のmRNA転写産物及び/またはタンパク質レベル(複数可)に比べて、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%低下し得る。FT導入遺伝子のmRNA転写産物及び/またはタンパク質レベル(複数可)は、1つ以上の植物組織において、第2の発現カセットなしで同じ植物組織(複数可)に存在するであろうFT導入遺伝子のmRNA転写産物及び/またはタンパク質レベル(複数可)に比べて、1%~100%、1%~75%、1%~50%、1%~25%、5%~100%、5%~95%、5%~90%、5%~85%、5%~80%、5%~75%、5%~70%、5%~65%、5%~60%、5%~55%、5%~50%、5%~45%、5%~40%、5%~35%、5%~30%、5%~25%、5%~20%、5%~15%、5%~10%、10%~100%、10%~90%、10%~80%、10%~70%、10%~60%、10%~50%、10%~40%、10~30%、10%~20%、25%~100%、25%~75%、25%~50%、50%~100%、50%~75%、または75%~100%低下し得る。
【0099】
なおさらなる実施形態によれば、第2の発現カセットは、代わりに、サプレッションのために内在性FT遺伝子を標的とするRNA分子をコードするように設計してもよい。FT導入遺伝子が内在性遺伝子とは異なるコード配列を有する場合、そのコード配列を標的とすることによって内在性FT遺伝子の選択的サプレッションが達成され得る(すなわち、RNA分子は内在性FT遺伝子のコード配列の少なくとも部分に相補的なターゲティング配列を含み得る)。あるいは、FT導入遺伝子と内在性FT遺伝子のコード配列が同一または類似である場合でさえ、第2の発現カセットは、それらの配列がFT導入遺伝子において異なるか、または欠けている場合、内在性FT遺伝子によってコードされるmRNAの、例えば、内在性FT mRNA転写産物の5’UTR、3’UTR、イントロン、及び/またはリーダー配列(複数可)内の非翻訳配列または非コード配列を標的とするRNA分子をコードするように設計してもよい(すなわち、RNA分子は、内在性FT遺伝子の非翻訳配列または非コード配列の少なくとも部分に相補的なターゲティング配列を含み得る)。これらの実施形態によれば、第2の発現カセットの転写可能なDNA配列は、FT導入遺伝子によってコードされるmRNA配列の代わりに、サプレッションのために内在性FT遺伝子によってコードされるmRNAの特定のコードまたは非翻訳(非コード)配列を標的とするように、本明細書に提供する原理に従って設計してもよい。
【0100】
本発明の別の広い態様により、植物発現性プロモーターに作動可能に連結されたFTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列(すなわちFT導入遺伝子)を含む、組換えDNA分子、構築物またはベクターを提供し、ポリヌクレオチド配列は、内在性RNA分子、例えば、内在性miRNAまたはsiRNAに対する標的部位またはセンサーをコードする配列をさらに含み、標的部位またはセンサーは、FT導入遺伝子によってコードされるプレmRNA及び/または成熟mRNA転写産物内、例えば、5’UTR、3’UTR、イントロン、及び/またはリーダー配列(複数可)内に存在する。本明細書中で使用する場合、「センサー」は、内在性RNA分子、例えば、内在性miRNAまたはsiRNAに相補的な、FT導入遺伝子のmRNA転写産物中の短い非コードRNA標的部位である。内在性RNA分子は、植物細胞または組織中に天然に存在し得、内在性RNA分子のための標的部位を有する1つ以上の標的遺伝子を抑制するように機能し得る。mRNA標的部位または内在性RNA分子のセンサーをコードする配列を有するようにFT導入遺伝子をさらに改変してもよく、それにより、FT導入遺伝子を内在性RNA分子によって抑制することが現在提案されている。したがって、FT導入遺伝子のサプレッションを用いて、RNAサプレッション分子をコードする第2の発現カセットによるサプレッションと同様に、トランスジェニックFT発現単独で(すなわちサプレッションを伴わずに)観察される早期生長停止表現型を軽減し得る。内在性RNA分子は、植物細胞中の1つ以上の標的遺伝子のサプレッションを誘発するように機能する、miRNA、siRNAなどの任意の公知の天然の低分子RNA分子であり得る。多くの実施形態によれば、内在性RNA分子を、後期栄養生長及び/または生殖生長期の間(例えば、1つ以上の後期栄養、生殖、及び/または花成組織(複数可))において天然に発現させてもよく、それにより、内在性RNA分子は、最初の花成誘導シグナルを提供した後にFT導入遺伝子のサプレッションを引き起こす。多くの実施形態によれば、FT導入遺伝子の植物発現性プロモーター、標的部位、またはその両方は、FT導入遺伝子のポリヌクレオチドコード配列に関して異種である。
【0101】
いくつかの実施形態によれば、内在性RNA分子は、1つ以上の内在性miRNA分子、例えば、1つ以上のmiR156及び/またはmiR172RNA分子(複数可)であってもよい。内在性miR156及びmiR172分子(複数可)の配列は、FT導入遺伝子が発現するであろう特定の植物種に依存するであろう。FT導入遺伝子は、目的の植物種に存在するmiR156またはmiR172分子のmRNA標的部位またはセンサーをコードするように設計してもよく、これは、1つ以上のmiR156及びmiR172分子(複数可)の発現レベル及びタイミングに基づいて選択してもよい。ダイズには、栄養相から生殖相への転換に近いタイミングでより高レベルに発現する3つのmiR172分子、miRNA172a(配列番号95)、miRNA172c(配列番号96)、またはmiRNA172k(配列番号:97)が存在し、幼若相から花熟相への転換において豊富な3つのmiR156分子、miR156a(配列番号103)、miR156c(配列番号104)、またはmiR156q(配列番号105)が存在する。したがって、FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、そのような内在性miR156またはmiR172RNA分子(複数可)のうちの1つ以上のための1つ以上の標的部位(複数可)またはセンサー(複数可)をコードする配列をさらに有してもよい。miR156またはmiR172標的部位(複数可)またはセンサー(複数可)のそれぞれは、FT導入遺伝子によってコードされるプレmRNA及び/または成熟mRNA転写産物内、例えば、FT導入遺伝子のポリヌクレオチド配列によってコードされる、コーディング、5’UTR、3’UTR、及び/またはイントロンmRNA配列内に存在し得るが、より一般的には、miR156またはmiR172標的部位(複数可)またはセンサー(複数可)は、非コード及び/または非翻訳配列内に存在するであろう。ダイズmiR156分子についての標的部位またはセンサーをコードする配列の例として、配列番号106、108、109、及び110が挙げられ、これらは1つ以上のmiR156分子に相補的である。例えば、配列番号106として示す配列は、miR156のmRNA標的部位またはセンサーとして、配列番号107をコードする。ダイズmiR172の標的部位またはセンサーをコードする配列の例として、配列番号98、100、及び101が挙げられ、これらは1つ以上のmiR172分子に相補的である。例えば、配列番号98として示す配列は、miR172のmRNA標的部位またはセンサーとして、配列番号99をコードする。しかしながら、FT導入遺伝子の標的部位またはセンサーの配列は、公知のmiR156またはmiR172分子の相補的配列に基づいて決定してもよい。実際、所与の植物種に天然に存在する1つ以上の内在性miR156、miR172及び/または他の低分子RNA分子(複数可)の配列に応じて、そのような植物種に形質転換したトランスジェニックFT発現カセットを改変し、そのような内在性miR156、miR172、または他の低分子RNA分子のための標的部位またはセンサーをコードする配列を含ませてもよい。いくつかの実施形態によれば、サプレッションのために同じFT導入遺伝子をさらに標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む第2の発現カセットが同じ組換えDNA分子構築物もしくはベクター、または同じトランスジェニック植物中に存在する場合でも、FT導入遺伝子を含む第1の発現カセットを改変して、内在性miR156、miR172、または他の低分子RNA分子に対する標的部位またはセンサーをコードする配列を含ませてよい。
【0102】
本発明の実施形態によれば、内在性RNA分子の標的部位は、FT導入遺伝子を発現させる植物に依存するであろう。miR156及びmiR172配列(及びそれらの標的部位またはセンサー)は、様々な双子葉植物種について知られている。内在性RNA分子に相補的なトランスジェニックFT mRNAの標的部位またはセンサーは、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26または27ヌクレオチド長(またはそれ以上)であり得る。一般的には、FT導入遺伝子の標的部位またはセンサーは、内在性miR156またはmiR172に対して100%相補的であるように設計されるであろう。しかしながら、内在性RNAサプレッション分子の標的部位またはセンサーは、有効であるために(すなわち、miR156またはmiR172によってハイブリダイズされ、サプレッションのための標的となるために)内在性miR156またはmiR172に対して100%相補的である必要はない場合がある。例えば、完全な相補性を下回ることにより、複数のmiR156、miR172及び/または他の内在性RNA分子が、標的部位またはセンサーにハイブリダイズできるようになる可能性がある。任意の所与の植物種について、FT導入遺伝子のポリヌクレオチドコード配列によってコードされる標的部位またはセンサーは、多少のばらつきがあってもよく、それでもなお、植物細胞内で発現する場合に、内在性RNA分子、例えば内在性miR156またはmiR172RNA分子によって結合またはハイブリダイズされるようになり得る。したがって、FT導入遺伝子によってコードされるmRNA転写産物の標的部位は、内在性RNA分子(例えば、miR156、miR172)とmRNA転写産物とのアラインメントの長さに応じて、1つ以上のミスマッチ、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8個またはそれ以上のミスマッチを含んでいてもよい。実際、FT導入遺伝子のポリヌクレオチドコード配列によってコードされる標的部位は、内在性RNA分子(例えば、miR156またはmiR172)の標的配列、例えばダイズ中のmiR172分子に対する標的部位もしくはセンサー(配列番号98、100または101)、またはダイズ中のmiR156分子に対する標的部位またはセンサー(配列番号106、108、109または110)に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.9%または100%相補的であり得る。
【0103】
本発明の別の広い態様によれば、トランスジェニック植物を産生するために、本明細書において提供する組換えDNA分子、構築物またはベクターを用いて、植物細胞、組織または外植片を形質転換する方法を提供する。組換えDNA分子、構築物またはベクターは、FT導入遺伝子または発現カセットを含み得る。サプレッションの様式に応じて、FT導入遺伝子は内在性RNA分子のための標的部位をさらに有してもよい。組換えDNA分子、構築物またはベクターは、サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む第2の発現カセットを有してもよい。あるいは、FT導入遺伝子及びRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を、代わりに、植物に同時に形質転換するかまたは別々に形質転換し得る2つの別々のDNA分子、構築物またはベクター中に存在させてもよい。FT導入遺伝子及びサプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む組換えDNA分子、構築物またはベクターを植物に形質転換してもよい。他の実施形態によれば、FT導入遺伝子を含む第1の組換えDNA分子、構築物またはベクターと、サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む第2の組換えDNA分子、構築物またはベクターを、それぞれ同時に植物に形質転換してもよい。他の実施形態によれば、FT導入遺伝子を含む第1の発現カセットで形質転換した植物を、サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む第2の発現カセットで形質転換してもよく、または、サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む第1の発現カセットで形質転換した植物を、FT導入遺伝子を含む第2の発現カセットで形質転換してもよい。なおさらなる実施形態によれば、(i)FT導入遺伝子、または(ii)サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む第1の発現カセットを有する第1のトランスジェニック植物を、(i)サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列、または(ii)FT導入遺伝子を含む第2の発現カセットを有する第2の植物と交雑してもよく、それにより、第1及び第2の発現カセットの両方(すなわち、FT導入遺伝子及び転写可能なDNA配列の両方)を含む1つ以上の子孫植物を産生してもよい。
【0104】
組換えDNA分子、構築物またはベクターを用いて植物細胞中の染色体を形質転換するための多数の方法が当技術分野で公知であり、これらを本発明の方法に従って使用して、トランスジェニック植物細胞、植物部分及び植物を産生してもよい。当技術分野で公知の植物細胞の形質転換のための任意の適切な方法または技術を、本方法に従って使用してもよい。植物の形質転換のための有効な方法として、細菌を介した形質転換、例えば、Agrobacterium媒介性またはRhizhobium媒介性の形質転換、及び微粒子銃を介した形質転換が挙げられる。細菌を介した形質転換または微粒子銃により、外植片を形質転換ベクターで形質転換し、続いてそれらの外植片を培養してトランスジェニック植物を再生または発育させるための様々な方法が当技術分野において公知である。マイクロインジェクション、電気穿孔法、減圧浸潤、加圧、超音波処理、炭化ケイ素繊維撹拌、PEGを介した形質転換などの植物形質転換のための他の方法もまた当技術分野で公知である。これらの形質転換方法によって産生されるトランスジェニック植物は、方法及び使用する外植片に応じて、形質転換事象についてキメラまたは非キメラであり得る。組換えDNA分子または構築物によるプラスチド形質転換のための適切な方法もまた当技術分野において公知である。
【0105】
分裂組織優先型プロモーターまたは分裂組織特異的プロモーターでもあり得る栄養期プロモーターの制御下で、1つ以上の植物細胞または組織においてFT導入遺伝子を発現させるための方法をさらに提供する。FT導入遺伝子の発現は、FT導入遺伝子によってコードされるmRNA中の、内在性RNA分子に対する標的部位またはセンサーの存在によって、改変、減弱、及び/または改良してもよく、その結果、内在性RNA分子はサプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とする。FT導入遺伝子に加えて、サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子もまた、植物に形質転換した転写可能なDNA配列から発現させることができる。そのような方法を用いて、FT導入遺伝子を有さない野生型または対照植物に比べて、植物の開花時期及び/または植物の結節あたりの生産的もしくは成功裏の花、果実、さや、及び/または種子の数を変化させてもよい。実際、本発明の方法を用いて、トランスジェニック植物の生殖または収量に関連する表現型(複数可)または形質(複数可)を改変してもよい。
【0106】
標的植物物質または外植片の形質転換は、例えば細胞をin vitroで増殖させることを可能にする栄養素の混合物などの栄養培地上での組織培養において実施してもよい。レシピエント細胞標的または外植片として、分裂組織、茎端、プロトプラスト、胚軸、カルス、未成熟または成熟胚、茎、芽、結節部、葉、小胞子、配偶子細胞、例えば、花粉細胞、精細胞及び卵細胞など、またはその任意の適切な部分が挙げられるがこれらに限定されない。稔性植物を再生または生長/発育させることができる任意の形質転換可能な細胞または組織を、形質転換のための標的として使用し得ることが企図される。形質転換した外植片、細胞または組織を、当技術分野において公知のように、カルス誘導、選択、再生などのさらなる培養工程に供してもよい。組換えDNAインサートを有する形質転換細胞、組織または外植片を、当技術分野で公知の方法に従って、培養、プラグまたは土壌中において、トランスジェニック植物に生長、発育または再生させてもよい。トランスジェニック植物を、それら自体または他の植物とさらに交雑させ、トランスジェニック種子及び子孫を産生してもよい。トランスジェニック植物はまた、組換えDNA配列または形質転換事象を有する第1の植物を、インサートを欠く第2の植物と交雑することによって調製してもよい。例えば、組換えDNA配列を、形質転換を受けやすい第1の植物系統に導入してもよく、次いでこれを第2の植物系統と交雑させ、組換えDNA配列を第2の植物系統に遺伝子移入してもよい。これらの交雑の子孫に対し、さらに複数回の戻し交雑、例えば6~8世代の戻し交雑を行ってより望ましい系統とし、組換えDNA配列が導入されていることを除けば元の親の系統と実質的に同じ遺伝子型を有する子孫植物を産生することができる。
【0107】
本発明の組換えDNA構築物または発現カセットは、標的植物細胞、組織または外植片の形質転換に使用するためのDNA形質転換ベクター内に含まれていてもよい。本発明のそのような形質転換ベクターは、一般的に、転写可能なDNA配列及び/またはFT導入遺伝子または発現カセットに加えて、効果的な形質転換に必要または有益な配列またはエレメントを含み得る。Agrobacteriumを介した形質転換の場合、形質転換ベクターは、少なくとも転写可能なDNA配列及び/またはFT導入遺伝子に隣接する、2つの境界配列、左境界(LB)及び右境界(RB)を有する改変型の転移DNA(またはT-DNA)セグメントまたは領域を有してもよく、それにより、植物ゲノムへのT-DNAの挿入は、転写可能なDNA配列及び/またはFT導入遺伝子についての形質転換事象を生じさせるであろう。言い換えれば、転写可能なDNA配列及び/またはFT導入遺伝子は、おそらくは追加の導入遺伝子(複数可)または発現カセット(複数可)、例えば、農学的に関心のある形質または表現型を植物に付与し得る、植物選択マーカー導入遺伝子及び/または農学的に関心のある他の遺伝子(複数可)とともに、T-DNAの左右の境界の間に位置するであろう。タンパク質コード配列に加えて、農学的に関心のある遺伝子は、RNAサプレッションエレメントをコードするポリヌクレオチド配列をさらに含み得る。いくつかの実施形態によれば、転写可能なDNA配列及び/またはFT導入遺伝子ならびに植物選択マーカー導入遺伝子(または農学的に関心のある他の遺伝子)は、例えば同時形質転換のための、同じまたは異なる組換えDNA分子(複数可)上の別々のT-DNAセグメントに存在し得る。形質転換ベクターまたは構築物は、Agrobacteriumを介した形質転換ではT-DNA領域(複数可)の外側のベクター骨格に位置し得る原核生物維持エレメントをさらに含み得る。
【0108】
いくつかの実施形態によれば、FT導入遺伝子を含む第1の発現カセット及びサプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む第2の発現カセットは、形質転換ベクターの同じT-DNA中に(すなわち、同じ左右のT-DNA境界の間に)存在してもよく;またはFT導入遺伝子を含む第1の発現カセットは、第1のT-DNA(第1の右境界及び第1の左境界を含む)に存在してもよく、サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む第2の発現カセットは、第2のT-DNA(第2の右境界と第2の左境界を含む)に存在してもよく、第1と第2のT-DNAは同じ形質転換ベクター中に存在し;またはFT導入遺伝子を含む第1の発現カセットは、第1の形質転換ベクターの第1のT-DNAに存在してもよく、サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む第2の発現カセットは、第2の形質転換ベクターの第2のT-DNAに存在してもよい。1つまたは2つの形質転換ベクター中に存在する第1及び第2の発現カセットを植物細胞に同時形質転換してもよく、または第1及び第2の発現カセットを2つの別々の形質転換ベクターに存在させて別々に植物細胞に形質転換してもよい。第1または第2の発現カセットは、もう一方の発現カセットに対する形質転換事象をすでに有する1つ以上の植物細胞に形質転換してもよく、または第1及び第2の発現カセットを、第1及び第2のトランスジェニック植物へ発育もしくは再生し得る異なる植物細胞に形質転換してもよい。第1及び第2のトランスジェニック植物及び/またはそれらの子孫を互いに交雑させ、それにより、第1及び第2の発現カセットを一緒にし、同じ植物中に存在させてもよい。
【0109】
本発明の形質転換ベクターまたは構築物中の植物選択マーカー導入遺伝子を用いて、抗生物質または除草剤などの選択剤の存在による形質転換細胞または組織の選択を補助してもよく、選択マーカー導入遺伝子は、選択剤に対する耐性または抵抗性を提供する。したがって、選択剤は、植物選択マーカー遺伝子を発現する形質転換細胞の生存、発生、成長、増殖などを偏らせる、すなわち有利にして、例えばR0植物中の形質転換細胞または組織の割合を増加させ得る。一般的に使用される植物選択マーカー遺伝子として、例えば、カナマイシン及びパロモマイシン(nptII)、ハイグロマイシンB(aph IV)、ストレプトマイシンもしくはスペクチノマイシン(aadA)ならびにゲンタマイシン(aac3及びaacC4)などの抗生物質に対する耐性もしくは抵抗性を付与するもの、またはグルホシネート(barまたはpat)、ジカンバ(DMO)及びグリホサート(aroAまたはEPSPS)などの除草剤に対する耐性もしくは抵抗性を付与するものが挙げられる。形質転換体を視覚的にスクリーニングする能力を提供する植物スクリーニング可能なマーカー遺伝子、例えば、ルシフェラーゼもしくは緑色蛍光タンパク質(GFP)、または様々な発色基質が知られているβグルクロニダーゼもしくはuidA遺伝子(GUS)を発現する遺伝子もまた使用してもよい。
【0110】
本発明の実施形態によれば、植物細胞、組織または外植片を組換えDNA分子または構築物で形質転換する方法は、部位特異的組込みまたは標的化組込みをさらに含み得る。これらの方法によれば、組換えDNAドナー鋳型分子の一部(すなわち挿入配列)を植物ゲノム内の所望の部位または遺伝子座に挿入または組み込むことができる。ドナー鋳型の挿入配列は、導入遺伝子または構築物、例えば(i)栄養期プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むFT導入遺伝子または構築物、及び/または(ii)サプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とし、分裂組織優先型プロモーターまたは分裂組織特異的プロモーターでもあり得る栄養期プロモーター及び/または生殖期プロモーターに作動可能に連結されたRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を有してもよい。ドナー鋳型はまた、相同組換え及び/または相同組換え修復を介して標的化挿入事象を促進するための挿入配列に隣接する1つまたは2つの相同アームを有してもよい。したがって、本発明の組換えDNA分子は、導入遺伝子または構築物、例えば、FT導入遺伝子または構築物の、植物のゲノムへの部位特異的または標的化組込みのためのドナー鋳型をさらに有してもよい。
【0111】
本発明の導入遺伝子または構築物の部位特異的組込みのために、植物のゲノム内の任意の部位または遺伝子座を潜在的に選択し得る。部位特異的組込みのために、部位特異的ヌクレアーゼ、例えばジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、転写アクチベーター様ヌクレアーゼ(TALEN)、アルゴノート(アルゴノートタンパク質の非限定的な例として、Thermus thermophilusアルゴノート(TtAgo)、Pyrococcus furiosusアルゴノート(PfAgo)、Natronobacterium gregoryiアルゴノート(NgAgo)が挙げられる)、RNA誘導ヌクレアーゼ(RNA誘導ヌクレアーゼの非限定的な例として、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9 (Csn1及びCsx12としても知られる)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、Cpf1、その同族体、もしくはその改変体が挙げられる);リコンビナーゼ(限定するものではないが、例えば、DNA認識モチーフに結合したチロシンリコンビナーゼ(例えば、Creリコンビナーゼ、Flpリコンビナーゼ、Tnp1リコンビナーゼ)、DNA認識モチーフに結合したセリンリコンビナーゼ(例えば、PhiC31インテグラーゼ、R4インテグラーゼ、TP-901インテグラーゼ);トランスポザーゼ(限定するものではないが、例えば、DNA結合ドメインに結合したDNAトランスポザーゼ);またはその任意の組み合わせを用いて、選択したゲノム遺伝子座に最初に二本鎖切断またはニックを作成してもよい。RNA誘導ヌクレアーゼを使用する方法に有用なガイドRNA(例えば、CRISPR RNA(crRNA)、トランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)、ガイドRNA(gRNA)、シングルガイドRNA(sgRNA))もまた提供する。部位特異的組込みについて当技術分野において公知の任意の方法を使用してもよい。次いで、ドナー鋳型分子の存在下で、二本鎖切断またはニックを、ドナー鋳型の相同性アーム(複数可)と植物ゲノムとの間の相同組換えによって、または非相同末端結合(NHEJ)によって修復し、植物ゲノムへの挿入配列の部位特異的組込みをもたらし、二本鎖切断またはニックの部位またはその付近に標的化挿入事象を生じさせてもよい。このようにして、導入遺伝子または構築物の部位特異的挿入または組込みが達成され得る。
【0112】
本明細書中で使用する場合、植物の形質転換または部位特異的組込みに関する用語「挿入」は、外来性ポリヌクレオチドまたはDNA構築物、DNA分子もしくはDNA配列、例えば形質転換ベクターまたはT-DNA配列またはドナー鋳型の挿入配列の、植物のゲノムへの挿入または組込みを指す。これに関連して、用語「外来性」とは、当技術分野において公知の任意の適切な植物形質転換方法もしくはゲノム編集方法または技術を用いて植物細胞または組織に導入するポリヌクレオチドまたはDNA構築物、DNA分子もしくはDNA配列を指す。
【0113】
本発明の実施形態によれば、FT導入遺伝子及び/またはサプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む組換えDNA分子または形質転換ベクターで形質転換し得る植物として様々な顕花植物または被子植物、例えば、ダイズ、ワタ、アルファルファ、キャノーラ、テンサイ、アルファルファ及び他のマメ科植物が挙げられ、これらは、様々な双子葉類の(双子葉)植物種を含むものとしてさらに定義され得る。双子葉植物は、Brassica種の一員(例えば、B.napus、B.rapa、B.juncea)、特に種子油の供給源として有用なBrassica種であるアルファルファ(Medicago sativa)、ヒマワリ(Helianthus annuus)、ベニバナ(Carthamus tinctorius)、アブラヤシ(Elaeis菌種)、ゴマ(Sesamum菌種)、ココナッツ(Cocos菌種)、ダイズ(Glycine max)、タバコ(Nicotiana tabacum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、ピーナッツ(Arachis hypogaea)、ワタ(Gossypium barbadense、Gossypium hirsutum)、サツマイモ(Ipomoea batatus)、キャッサバ(Manihot esculenta)、コーヒー(Coffea菌種)、茶(Camellia菌種)、果樹、例えば、リンゴ(Malus菌種)、セイヨウスモモ、アンズ、モモ、サクランボなどのPrunus菌種、セイヨウナシ(Pyrus菌種)、イチジク(Ficus casica)、バナナ(Musa菌種)など、柑橘類(Citrus菌種)、ココア(Theobroma cacao)、アボカド(Persea americana)、オリーブ(Olea europaea)、アーモンド(Prunus amygdalus)、クルミ(Juglans菌種)、イチゴ(Fragaria菌種)、スイカ(Citrullus lanatus)、コショウ(Capsicum菌種)、テンサイ(Beta vulgaris)、ブドウ(Vitis,Muscadinia)、トマト(Lycopersicon esculentum,Solanum lycopersicum)、及びキュウリ(Cucumis sativis)とすることができる。マメ科植物には、マメ及びエンドウマメが含まれる。マメには、例えば、グアー、イナゴマメ、コロハ、ダイズ、ソラマメ、ササゲマメ、リョクトウ、アオイマメ、ソラマメ、レンズマメ、及びヒヨコマメが含まれる。本発明が広範囲の植物種に適用し得ることを考慮すると、本発明はさらに、マメ科植物のさやに類似する他の植物構造、例えば、丸莢、長角果、果実、木の実、塊茎などにも適用される。
【0114】
本発明の実施形態によれば、形質転換した特定の植物種に応じて、本明細書で提供するように、サプレッションを介して改変し得る花成性FT配列を異所的に発現する植物は、FT導入遺伝子を有さない野生型または対照植物に比べて、植物の結節(複数可)、主茎、及び/または枝(複数可)あたりの、変更されたまたはより多数の丸莢、長角果、果実、木の実、塊茎など、及び/または植物あたりの変更されたまたはより多数の丸莢、長角果、果実、木の実、塊茎などを有し得る。
【0115】
本発明の別の広い態様によれば、その少なくとも1つの植物細胞の1つ以上の形質転換事象またはゲノムへの挿入を含むトランスジェニック植物(複数可)、植物細胞(複数可)、種子(複数可)、及び植物部分(複数可)を提供し、形質転換事象または挿入は、(i)Flowering LocusT(FT)導入遺伝子を含む組換えDNA配列、構築物またはポリヌクレオチドを含み、FT導入遺伝子は、分裂組織優先型プロモーターまたは分裂組織特異的プロモーターであり得る栄養期プロモーターに作動可能に連結されたFTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含み、及び/または(ii)分裂組織優先型または分裂組織特異的プロモーターでもあり得る栄養期及び/または生殖期プロモーターに作動可能に連結され、サプレッションのためのFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を有する。本明細書中に提供するように、FT導入遺伝子は、トランスジェニック発現性及び/または内在性RNA分子により、サプレッションのために標的化され得る。RNA分子は、転写可能なDNA配列によってコードされていてもよく、これもまた、植物、植物部分、植物種子または植物細胞に形質転換する。ポリヌクレオチド配列によってコードされるFTタンパク質は、ポリヌクレオチドコード配列で形質転換したトランスジェニック植物中の天然のFT遺伝子に対応するか、またはトランスジェニック植物に固有のFTタンパク質と相同であるか、そうでなければ類似のものである(すなわち、トランスジェニック植物に対して異種であるが、天然または内在性のFTタンパク質と同様である)か、またはトランスジェニック植物に対して異種であってもよい。そのようなトランスジェニック植物を任意の適切な形質転換方法によって産生してもよく、所望により、または必要に応じて、続けて選択、培養、再生、発育などを行い、トランスジェニックR0植物を産生してもよく、その後、自家交配または他の植物と交雑させてR1植物を生成し、さらなる交雑により、続く子孫世代及び種子を生成してもよい。同様に、本発明の実施形態は、FT導入遺伝子及び/またはサプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む組換えDNAまたはポリヌクレオチド配列の形質転換事象またはゲノム挿入を有する1つ以上のトランスジェニック細胞を含む植物細胞、組織、外植片などをさらに含む。
【0116】
本発明のトランスジェニック植物、植物細胞、種子、及び植物部分は、その少なくとも1つの植物細胞のゲノムへのFT導入遺伝子及び/または転写可能なDNA配列のトランスジェニック事象または挿入に関して、ホモ接合性またはヘミ接合性であってよく、あるいは、FT導入遺伝子及び/または転写可能なDNA配列を含むトランスジェニック事象(複数可)または挿入物(複数可)の任意の数のコピーを含んでいてもよい。FT導入遺伝子の用量または発現量は、その接合性及び/またはコピー数によって変更してもよく、それはトランスジェニック植物などにおける表現型の変化の程度または範囲に影響を与え得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書に提供するように改変、減弱及び/または改良してもよいFT導入遺伝子及び/またはFTサプレッションエレメントを有するトランスジェニック植物を、1つ以上の改変した開花または生殖表現型または形質を有するものとしてさらに特徴付けてもよく、それは、FT導入遺伝子を有さない(及び/またはFTサプレッションエレメントを有さない)野生型または対照植物に比べて、改変された収量関連表現型または形質、例えば、植物あたり(及び/または植物の結節あたり)の花、さやなど、及び/または種子の数の増加を有する。そのようなトランスジェニック植物は、野生型または対照植物に比べて、植物の草高、分枝パターン、花の結節数などが変化したために、構造、形態、及び/またはアーキテクチャーが変化しているとさらに特徴付けてもよい。実際、トランスジェニック植物におけるFT過剰発現によって改変される収量関連表現型または形質として:FT導入遺伝子を有さない(及び/またはFTサプレッションエレメントを有さない)野生型または対照植物に比べての、開花時期、生殖期間、開花期間、花、さや、長角果、丸莢、果実、木の実などの落ちる量または時期、結節あたりの花の数、結節あたりの総状花序の数、植物あたりの枝の数、植物あたりの結節の数、主茎上の結節の数、枝の結節の数、植物あたりのさや、丸莢、長角果、果実、木の実などの数、結節あたりのさや、丸莢、長角果、果実、木の実などの数、主茎上のさや、丸莢、長角果、果実、木の実などの数、枝上のさや、種子、丸莢、長角果、果実、木の実などの数、種子の重さ(1000種子重など)、植物あたりの種子の数、主茎上の種子の数、結節あたりの種子の数、及び/または改変された植物アーキテクチャーが挙げられる。本明細書中で使用する場合、FT導入遺伝子に関しての用語「過剰発現」は、導入遺伝子の異所性発現を含む。
【0117】
本発明の目的のために、「植物」には、再生または発育の任意の段階における外植片、実生、小植物または植物全体が含まれ得る。本明細書中で使用する場合、「トランスジェニック植物」とは、そのゲノムが組換えDNA分子、構築物または配列の組込みまたは挿入によって改変されている植物を指す。トランスジェニック植物には、最初に形質転換した植物細胞(複数可)から発育または再生させたR0植物、ならびにR0トランスジェニック植物に由来する後の世代または交雑種における子孫トランスジェニック植物が含まれる。本明細書中で使用する場合、「植物部分」とは、植物の任意の器官またはインタクトな組織、例えば、分裂組織、シュート器官/構造(例えば、葉、茎及び塊茎)、根、花もしくは花器/構造(例えば、包葉、萼片、花弁、雄ずい、心皮、葯及び胚珠)、種子(例えば、胚、胚乳、及び種皮)、果実(例えば、成熟卵巣)、ムカゴ、または他の植物組織(例えば、脈管組織、基本組織など)、あるいはその任意の部分を指す。本発明の植物部分は、生存可能、生存不可能、再生可能、及び/または再生不可能であってもよい。「ムカゴ」は、植物全体に生長することができる任意の植物部分を含み得る。本発明の目的のために、本発明の実施形態によるFT導入遺伝子及び/またはFTサプレッションエレメントで形質転換する植物細胞には、形質転換方法に基づいて当技術分野で理解されているように、形質転換に適格な任意の植物細胞、例えば、分裂細胞、胚細胞、カルス細胞などが含まれ得る。本明細書中で使用する場合、「トランスジェニック植物細胞」とは、単に、安定に組み込まれた組換えDNA分子または配列で形質転換した任意の植物細胞を指す。トランスジェニック植物細胞は、最初に形質転換した植物細胞、再生もしくは発育したR0植物のトランスジェニック植物細胞、または、植物の種子もしくは胚、または培養植物もしくはカルス細胞などの細胞(複数可)を含む、任意の子孫植物もしくは形質転換したR0植物の子孫に由来するトランスジェニック植物細胞を含み得る。
【0118】
多くの実施形態によれば、トランスジェニック植物は、栄養期プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。いくつかの実施形態によれば、トランスジェニック植物における花成性FTタンパク質の発現は、トランスジェニック植物の栄養及び/または生殖期及び/または組織において、例えば内在性の、及び/またはトランスジェニックにまたは異所的に発現するRNA分子を介して抑制され得る。いくつかの実施形態によれば、トランスジェニック植物における花成性FTタンパク質の発現は、低分子RNA分子によって空間的及び/または時間的に制限され得る。いくつかの実施形態によれば、トランスジェニック植物は、花成性FT遺伝子またはサプレッションのために導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含み得る。
【0119】
本発明の実施形態は、形質転換、交雑などによって、生殖及び/または収量関連形質または表現型が変化したトランスジェニック植物を作製または産生するための方法をさらに含んでもよく、その方法は、FT導入遺伝子及び/またはサプレッションのためにFT導入遺伝子を標的とするRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む組換えDNA分子、構築物または配列を、植物細胞へ導入し、次いで形質転換した植物細胞からトランスジェニック植物を再生または発育させることを含み、その場合、それをトランスジェニック事象に有利な選択圧で行ってもよい。そのような方法は、FT導入遺伝子及び/または転写可能なDNA配列を含む組換えDNA分子または配列で植物細胞を形質転換し、1つ以上の改変された表現型または形質、例えば以下の1つ以上を有する植物を選択することを含み得る:FT導入遺伝子を有さない(及び/またはFTサプレッションエレメントを有さない)野生型または対照植物に比べての、開花時期、生殖期間、開花期間、花、さや、丸莢、長角果、果実、木の実などの落ちる量または時期、結節あたりの花の数、結節あたりの総状花序の数、植物あたりの枝の数、植物あたりの結節の数、主茎上の結節の数、枝の結節の数、植物あたりのさや、丸莢、長角果、果実、木の実などの数、結節あたりのさや、丸莢、長角果、果実、木の実などの数、主茎上のさや、丸莢、長角果、果実、木の実などの数、枝上のさや、種子、丸莢、長角果、果実、木の実などの数、種子の重さ(1000種子重など)、植物あたりの種子の数、主茎上の種子の数、結節あたりの種子の数、及び/または改変された植物アーキテクチャー。例えば、本発明の実施形態は、植物あたりの花、さや、及び/または種子の数が増加した(及び/または植物の結節あたりの花、さや、及び/または種子の数が増加した)トランスジェニック植物の作製方法を含んでもよく、その方法は、FT導入遺伝子及び/または転写可能なDNA配列を含む組換えDNA分子を植物細胞に導入し、次いで植物細胞からトランスジェニック植物を再生または発育させることを含む。次いで、トランスジェニック植物を、上記の生殖及び/または収量関連形質または表現型のうちの1つ以上に基づいて選択してもよい。トランスジェニック植物、植物細胞または植物組織はまた、DNA配列決定、ハイブリダイゼーション、抗体結合、及び/または他の分子技術などの当技術分野において公知の1つ以上の方法またはキットを用いて、FT導入遺伝子及び/またはFTサプレッションエレメントの存在に基づいて選択してもよい。
【0120】
本発明の実施形態によれば、トランスジェニック植物は、非トランスジェニック対照植物に比べて、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、または少なくとも400%多くの花、さや、丸莢、長角果、果実、木の実または塊茎を有し得る。いくつかの実施形態によれば、トランスジェニック植物は、非トランスジェニック対照植物に比べて、平均で少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、または少なくとも400%多くの結節あたりの花、さや、種子、丸莢、長角果、果実、木の実または塊茎を有し得る。トランスジェニック植物は、結節あたり、平均で、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個のさや、丸莢、長角果、果実、木の実または塊茎を有し得る。トランスジェニック植物は、結節あたり、平均で、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、2~3、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、または4~5個のさや、丸莢、長角果、果実、木の実または塊茎を有し得る。トランスジェニック植物は、非トランスジェニック対照植物に比べて、結節あたり、平均で、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個またはそれ以上の花、さや、種子、丸莢、長角果、果実、木の実または塊茎を有し得る。トランスジェニック植物はダイズ植物であってもよく、トランスジェニック植物は非トランスジェニック対照植物に比べて、平均で、結節あたりのより多くのさや及び/または種子を有し得る。トランスジェニック植物は、非トランスジェニック対照植物に比べて、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも20日、少なくとも25日、少なくとも30日、少なくとも35日、少なくとも40日、または少なくとも45日早く開花し得る。
【0121】
本発明の実施形態により、栄養期プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物を提供し、ポリヌクレオチドコード配列の発現を、低分子非コードRNA分子であってもよいRNA分子によって、空間的及び/または時間的に減弱し、制限し、修飾し、及び/または改良する。トランスジェニック植物における花成性FT mRNA及び/またはタンパク質の発現または翻訳のレベルは、1つ以上の分裂組織、生殖組織及び/または花芽組織において及び/または1つ以上の生殖期の間に抑制または低下させてもよい。いくつかの実施形態によれば、本明細書において提供するようなFT導入遺伝子及び/またはFTサプレッションエレメントを有するトランスジェニック植物の生殖期間及び/または開花期間は、野生型植物または対照植物の生殖期間及び/または開花期間に比べて、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも20日、少なくとも25日、少なくとも30日、少なくとも35日、少なくとも40日、または少なくとも45日長くてもよいが、野生型または対照植物の生殖期間及び/または開花期間に比べて、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60日長いだけ(すなわち、それ以下であるかまたはそれ以内)であってもよい。いくつかの実施形態によれば、本明細書において提供するようなFT導入遺伝子及び/またはFTサプレッションエレメントを有するトランスジェニック植物の開花の開始(すなわち、最初の開花の出現)は、例えば、野生型もしくは対照植物に比べて、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも20日、少なくとも25日、少なくとも30日、少なくとも35日、少なくとも40日、もしくは少なくとも45日早いか、または早く生じ得るが、野生型または対照植物の開花の開始に比べて、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60日前を超えない範囲(すなわち、それ以下であるかまたはそれ以内)であってもよい。
【0122】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に提供するようなFT導入遺伝子及び/またはFTサプレッションエレメントを有するトランスジェニック植物上の花、種子、丸莢、長角果、果実、木の実、さやまたは塊茎の数は、野生型または対照植物に比べて、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、または少なくとも400%多くなり得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書に提供するようなFT導入遺伝子及び/またはFTサプレッションエレメントを有するトランスジェニック植物の主茎上の花、種子、丸莢、長角果、果実、木の実またはさやの数は、野生型または対照植物に比べて、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、または少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、または少なくとも400%多くなり得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書に提供するようなFT導入遺伝子及び/またはFTサプレッションエレメントを有するトランスジェニック植物の主茎上の結節あたりの花、種子、丸莢、長角果、果実、木の実またはさやの数は、野生型または対照植物に比べて、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、または少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、または少なくとも400%多くなり得る。
【0123】
植物、主茎または枝あたりのこれらの形質の量または数、例えば、植物、主茎または枝あたりの花、丸莢、種子、長角果、果実、木の実またはさやの数は、2つ以上の植物の平均として計算するか、または1つの植物について測定してもよく、結節あたりの花、丸莢、種子、長角果、果実、木の実またはさやの量または数は、1つ以上の植物についての平均として計算してもよい。したがって、変化率は、2つの植物間、1つの植物と2つ以上の植物の平均との間、または2つの平均間(各平均は2つ以上の植物からなる)で計算してもよい。
【0124】
いくつかの実施形態によれば、本明細書において提供するようなFT導入遺伝子及び/またはFTサプレッションエレメントを有するトランスジェニック植物上の結節あたりの花、丸莢、種子、長角果、果実、木の実、さやまたは塊茎の数は、野生型または対照植物に比べて、平均で、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、または少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、または少なくとも400%多くなり得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書において提供するようなFT導入遺伝子及び/またはFTサプレッションエレメントを有するトランスジェニック植物は、結節あたり、平均で、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個の花、さや、丸莢、種子、長角果、果実、木の実、さやまたは塊茎を有し得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書において提供するようなFT導入遺伝子及び/またはFTサプレッションエレメントを有するトランスジェニック植物は、平均で、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、2~3、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、または4~5個のさや、または結節あたり、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10個の花、丸莢、長角果、果実、木の実、さやまたは塊茎を有し得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書において提供するようなFT導入遺伝子及び/またはFTサプレッションエレメントを有するトランスジェニック植物は、非トランスジェニック野生型または対照植物に比べて、平均で、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個多くの、花、丸莢、種子、長角果、果実、木の実、さやまたは塊茎を有し得る。
【0125】
いくつかの実施形態によれば、結節あたりの丸莢、長角果、種子、果実、木の実、さやまたは塊茎の平均数、及び/または結節あたりの花、丸莢、長角果、種子、果実、木の実、さやまたは塊茎の平均数は、本明細書において提供するようなFT導入遺伝子及び/またはFTサプレッションエレメントを有するトランスジェニック植物上(またはそのようなトランスジェニック植物の主茎上)において、野生型または対照植物に比べて、1%~400%、1%~350%、1%~300%、1%~250%、1%~200%、1%~150%、1%~100%、1%~75%、1%~50%、1%~25%、5%~400%、5%~350%、5%~300%、5%~250%、5%~200%、5%~150%、5%~100%、5%~95%、5%~90%、5%~85%、5%~80%、5%~75%、5%~70%、5%~65%、5%~60%、5%~55%、5%~50%、5%~45%、5%~40%、5%~35%、5%~30%、5%~25%、5%~20%、5%~15%、5%~10%、10%~400%、10%~350%、10%~300%、10%~250%、10%~200%、10%~150%、10%~100%、10%~90%、10%~80%、10%~70%、10%~60%、10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、25%~400%、25%~350%、25%~300%、25%~250%、25%~200%、25%~150%、25%~100%、25%~75%、25%~50%、50%~400%、50%~350%、50%~300%、50%~250%、50%~200%、50%~150%、50%~100%、50%~75%、75%~400%、75%~350%、75%~300%、75%~250%、75%~200%、75%~150%、75%~100%、100%~400%、100%~350%、100%~300%、100%~250%、100%~200%、または100%~150%多くなり得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書において提供するようなFT導入遺伝子及び/またはFTサプレッションエレメントを有するトランスジェニック植物の生殖期間は、野生型または対照植物に比べて、日数に関して、1%~400%、1%~350%、1%~300%、1%~250%、1%~200%、1%~150%、1%~100%、1%~75%、1%~50%、1%~25%、5%~400%、5%~350%、5%~300%、5%~250%、5%~200%、5%~150%、5%~100%、5%~95%、5%~90%、5%~85%、5%~80%、5%~75%、5%~70%、5%~65%、5%~60%、5%~55%、5%~50%、5%~45%、5%~40%、5%~35%、5%~30%、5%~25%、5%~20%、5%~15%、5%~10%、10%~400%、10%~350%、10%~300%、10%~250%、10%~200%、10%~150%、10%~100%、10%~90%、10%~80%、10%~70%、10%~60%、10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、25%~400%、25%~350%、25%~300%、25%~250%、25%~200%、25%~150%、25%~100%、25%~75%、25%~50%、50%~400%、50%~350%、50%~300%、50%~250%、50%~200%、50%~150%、50%~100%、50%~75%、75%~400%、75%~350%、75%~300%、75%~250%、75%~200%、75%~150%、75%~100%、100%~400%、100%~350%、100%~300%、100%~250%、100%~200%、または100%~150%長くなり得る。いくつかの実施形態によれば、本明細書において提供するようなFT導入遺伝子及び/またはFTサプレッションエレメントを有するトランスジェニック植物の開花の開始は、野生型または対照植物に比べて、日数に関して、1%~400%、1%~350%、1%~300%、1%~250%、1%~200%、1%~150%、1%~100%、1%~75%、1%~50%、1%~25%、5%~400%、5%~350%、5%~300%、5%~250%、5%~200%、5%~150%、5%~100%、5%~95%、5%~90%、5%~85%、5%~80%、5%~75%、5%~70%、5%~65%、5%~60%、5%~55%、5%~50%、5%~45%、5%~40%、5%~35%、5%~30%、5%~25%、5%~20%、5%~15%、5%~10%、10%~400%、10%~350%、10%~300%、10%~250%、10%~200%、10%~150%、10%~100%、10%~90%、10%~80%、10%~70%、10%~60%、10%~50%、10%~40%、10%~30%、10%~20%、25%~400%、25%~350%、25%~300%、25%~250%、25%~200%、25%~150%、25%~100%、25%~75%、25%~50%、50%~400%、50%~350%、50%~300%、50%~250%、50%~200%、50%~150%、50%~100%、50%~75%、75%~400%、75%~350%、75%~300%、75%~250%、75%~200%、75%~150%、75%~100%、100%~400%、100%~350%、100%~300%、100%~250%、100%~200%、または100%~150%早くなり得る。
【0126】
本発明の実施形態によれば、本明細書において提供するトランスジェニック植物は、本明細書に記載する2つ以上の形質または表現型の組み合わせ、例えば、野生型植物または対照植物に比べて、増加した結節あたりのさや、丸莢、長角果、種子、果実、木の実もしくは塊茎、増加した主茎上のさや、丸莢、長角果、種子、果実、木の実もしくは塊茎、増加した生殖期間、より早期の開花開始、最低草高、例えば、ダイズの場合、少なくとも900ミリメートル以上(すなわち0.9メートル以上)、及び/または減少した分枝のうちの2つ以上を有し得る。いくつかの実施形態によれば、トランスジェニック植物は、野生型植物または対照植物に比べて、結節あたりのさや、丸莢、長角果、種子、果実、または木の実の平均数が増加し、開花がより早期に開始する場合がある。そのようなトランスジェニック植物はさらに、野生型または対照植物に比べて、主茎上のさや、丸莢、長角果、種子、果実、木の実または塊茎の数の増加及び/または生殖期間の増加を有し得る。
【0127】
例えば、本明細書において提供するトランスジェニック植物は、野生型または対照植物に比べて、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、または少なくとも400%多くの結節あたりの花、さや、種子、丸莢、長角果、果実、木の実を有し、開花の開始が、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも20日、少なくとも25日、少なくとも30日、少なくとも35日、少なくとも40日、または少なくとも45日早くなり得る。本明細書において提供するトランスジェニック植物は、野生型または対照植物に比べて、平均で、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個多くの、結節あたりの花、さや、種子、丸莢、長角果、果実、木の実または塊茎を有し、開花の開始が、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも20日、少なくとも25日、少なくとも30日、少なくとも35日、少なくとも40日、または少なくとも45日早くなり得る。そのようなトランスジェニック植物はさらに、野生型または対照植物の生殖期間及び/または開花期間に比べて、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも20日、少なくとも25日、少なくとも30日、少なくとも35日、少なくとも40日、または少なくとも45日長い生殖期間及び/または開花期間を有し、及び/または野生型または対照植物に比べて、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、または少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、または少なくとも400%多い、トランスジェニック植物の主茎上の花、さや、種子、丸莢、長角果、果実または木の実の数の増加を有し得る。
【0128】
本発明の実施形態によれば、本明細書において提供するトランスジェニック植物は、最小の草高及び減少した分枝を有する改変された植物アーキテクチャーを有してもよく、それは植物あたりの結節数の減少の緩和を伴い得る。FT導入遺伝子単独を発現するトランスジェニック植物は、早期生長停止に起因する重度の矮性表現型を有する場合があり、それは植物あたりの分枝及び結節の減少と共に、短い草高を有する。FT導入遺伝子を、miRNAセンサー、またはFT導入遺伝子を標的とする第2のサプレッションエレメントと共に発現させることによって、これらの重度の早期生長停止表現型は、結節あたりのさやの増加を維持する一方で、より正常な草高を生じるように緩和され得る。これらの実施形態によれば、トランスジェニック植物は、(i)野生型または対照植物に比べて、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、または40%以下の最小草高の減少(すなわち、トランスジェニック植物と野生型または対照植物との間の草高の差は、これらの割合のうちの1つ以上を超えない)、(ii)野生型または対照植物に比べて、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%少ない枝の総数、及び/または(iii)野生型または対照植物に比べて、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、または40%以下の範囲で少ない植物あたり(及び/または主茎あたり)の結節数の最小数(すなわち、トランスジェニック植物と野生型または対照植物との間の植物あたり(及び/または主茎あたり)の結節数の差は、これらの割合のうちの1つ以上を超えない)を有し得る。ダイズの場合、本明細書において提供するトランスジェニック植物は、少なくとも700ミリメートル(mm)、少なくとも750mm、少なくとも800mm、少なくとも850mm、少なくとも900mm、少なくとも950mm、少なくとも1000mm、少なくとも1050mm、少なくとも1100mm、少なくとも1150mm、少なくとも1200mm、少なくとも1250mm、少なくとも1300mm、少なくとも1350mm、または少なくとも1400mmの最小草高;少なくとも100、少なくとも125、少なくとも150、少なくとも175、少なくとも200、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300、少なくとも325、少なくとも350、少なくとも375、または少なくとも400以上の植物あたりの結節の総数;及び/または野生型もしくは対照植物に比べて、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%少ない枝の総数を有し得る。植物についての前述の数、割合、及び差異のすべては、同じ種類の複数の植物の平均から計算した値をさらに含む。
【0129】
本発明の別の広い態様によれば、本発明のトランスジェニック植物を圃場で通常の密度または高密度で植えるための方法を提供する。いくつかの実施形態によれば、本発明のトランスジェニック植物をより高い密度で圃場に植えることにより、1エーカーあたり(または土地面積あたり)の作物植物の収量を高め得る。本明細書中に記載するように、栄養生長期(複数可)の間に、及び/またはFT導入遺伝子のサプレッションの存在下で、花成性FTタンパク質を発現する本発明のトランスジェニック植物は、結節あたり(特に主茎上)のさや及び/または種子の増加を示し得るが、分枝数の減少及び枝あたりの結節数の減少を伴う植物アーキテクチャーの変化も有し得る。したがって、本発明のトランスジェニック植物をより高い密度で植えて、圃場における1エーカーあたりの収量を高め得ると提案されている。条播作物では、列の長さあたりに多数の種子/植物を植えることによって、及び/または列間の間隔を狭めることによって、より高い密度を達成し得る。いくつかの実施形態によれば、本発明のトランスジェニック作物植物を、標準的な農学的慣行によるその作物植物の通常の植栽密度に比べて、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、50%、75%、100%、125%、150%、175%、200%、225%、または250%高いかまたは大きい密度(1土地/圃場面積あたりの植物)で圃場に植栽してもよい。
【0130】
ダイズの場合、一般的な植栽密度は、1エーカー当たり約100,000~150,000種子の範囲内であり、一般的な列間隔は、約26~約40インチの範囲内、例えば、30インチまたは36インチの列間隔である。所与の列内には、通常、1フィートあたり約6~8個のダイズ種子を植え付け得る。対照的に、ダイズの高密度植栽は、1エーカーあたりおよそ150,000~250,000個の種子の範囲を有してもよく、列間隔は、約10インチ以下~約25インチの範囲内、例えば、10インチ、15インチまたは20インチの間隔であってもよい。高密度植栽の場合、おそらくはより狭い列間隔と組み合わせて、1フィートあたり約9~12個のダイズ種子を各列に植え付け得る。しかしながら、高い作物密度は、各列内の植栽密度を増加させずに狭い列間隔によって達成してもよい。
【0131】
ワタについては、一般的な植栽密度は、1エーカーあたり約28,000~45,000種子の範囲であり、一般的な列間隔は、約38~約40インチの範囲、例えば、38インチまたは40インチの列間隔である。所与の列内には、通常、1フィートあたり約2~3個の綿実を植え付け得る。対照的に、ダイズの高密度植栽は、1エーカーあたりおよそ48,000~60,000個の種子の範囲を有してもよく、列間隔は、約30インチ以下~約36インチの範囲内であってよい。高密度植栽の場合、おそらくはより狭い列間隔と組み合わせて、1フィートあたり約3~5個の綿実を各列に植え付け得る。しかしながら、ワタの高い作物密度は、各列内の植栽密度を増加させずに狭い列間隔によって達成してもよい。
【0132】
キャノーラの場合、一般的な栽植密度は1エーカーあたり約360,000~550,000種子の範囲であり、オープナーの間の一般的な列間隔は約6インチ~約16インチの範囲である。所与の列内には、通常、1フィートあたり約8~12個のキャノーラ種子を植え付け得る。対照的に、ダイズの高密度植栽は、1エーカーあたり約450,000~680,000個の種子の範囲を有してもよく、列間隔は、約5インチ以下~約10インチの範囲内であってよい。高密度植栽の場合、おそらくはより狭い列間隔と組み合わせて、1フィートあたり約10~16個のキャノーラ種子を各列に植え付け得る。しかしながら、キャノーラの高い作物密度は、各列内の植栽密度を増加させずに狭い列間隔によって達成してもよい。
【0133】
以下は、本開示の非限定的な例示的実施形態である: 1.第1の発現カセット及び第2の発現カセットを含む組換えDNA構築物であって、前記第1の発現カセットが、第1の植物発現性プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を有し、前記第2の発現カセットが、前記第1の発現カセットの前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも15連続ヌクレオチドに対して少なくとも80%相補的であるターゲティング配列を含むRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を有し、前記転写可能なDNA配列が、第2の植物発現性プロモーターに作動可能に連結される、前記組換えDNA構築物。
【0134】
2.前記RNA分子の前記ターゲティング配列が、約15~約27ヌクレオチド長である、実施形態1の組換えDNA構築物。
【0135】
3.前記RNA分子の前記ターゲティング配列が、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26または27ヌクレオチド長である、実施形態1または2に記載の組換えDNA構築物。
【0136】
4.前記RNA分子の前記ターゲティング配列が、前記第1の発現カセットの前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも15連続ヌクレオチドに対し、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%相補的である、実施形態1~3のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0137】
5.前記RNA分子の前記ターゲティング配列が、前記第1の発現カセットの前記ポリヌクレオチド配列によりコードされるmRNA転写産物の少なくとも15連続ヌクレオチドに対して少なくとも80%相補的である、実施形態1~4のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0138】
6.前記RNA分子の前記ターゲティング配列が、前記mRNA転写産物のエキソン配列またはコード配列の少なくとも15連続ヌクレオチドに対して少なくとも80%相補的である、実施形態1~5のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0139】
7.前記RNA分子の前記ターゲティング配列が、前記mRNA転写産物の非コード配列の少なくとも15連続ヌクレオチドに対して少なくとも80%相補的である、実施形態1~5のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0140】
8.前記転写可能なDNA配列によってコードされる前記RNA分子が、miRNAまたはsiRNA前駆体である、実施形態1~7のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0141】
9.前記転写可能なDNA配列が、配列番号68または69に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%相補的である配列を有する、実施形態1~8のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0142】
10.前記転写可能なDNA配列が、配列番号65に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を有する、実施形態1~9のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0143】
11.前記第1の発現カセットの前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号69に対し、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を有する、実施形態1~10のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0144】
12.前記花成性FTタンパク質が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、及び30からなる群から選択される配列、またはその機能的断片に対して、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態1~11のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0145】
13.前記花成性FTタンパク質が、さらに、以下のアミノ酸:配列番号14のアミノ酸位置85に対応する前記花成性FTタンパク質のアミノ酸位置におけるチロシンまたは他の非荷電極性または非極性残基;配列番号14のアミノ酸位置128に対応する前記花成性FTタンパク質のアミノ酸位置におけるロイシンまたは他の非極性残基;及び配列番号14のアミノ酸位置138に対応する前記花成性FTタンパク質のアミノ酸位置におけるトリプトファンまたは他の大きな非極性残基のうちの1つ以上をさらに含む、実施形態12に記載の組換えDNA構築物。
【0146】
14.前記花成性FTタンパク質が、以下のアミノ酸:配列番号14の85位に対応するアミノ酸位置のリジンまたはアルギニンに対応するアミノ酸位置のヒスチジン;配列番号14の128位に対応するアミノ酸位置のリジンまたはアルギニン;及び配列番号14の138位に対応するアミノ酸位置のセリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニンのうちの1つ以上を有さない、実施形態12に記載の組換えDNA構築物。
【0147】
15.前記花成性FTタンパク質が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、及び30、またはその機能的断片からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、実施形態12に記載の組換えDNA構築物。
【0148】
16.前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、及び29からなる群から選択される配列に対し、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性である、実施態様1~15のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0149】
17.前記第1の植物発現性プロモーターが栄養期プロモーターである、実施形態1~16のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0150】
18.前記第1の植物発現性プロモーターが、分裂組織優先型または分裂組織特異的プロモーターである、実施形態1~17のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0151】
19.前記第1の植物発現性プロモーターが、配列番号31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45または48からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列、またはその機能的部分と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、実施形態1~18のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0152】
20.前記第1の植物発現性プロモーターが、配列番号31に記載の化合物、またはその機能的部分と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、実施形態19に記載の組換えDNA構築物。
【0153】
21.前記第1の植物発現性プロモーターが、配列番号32または配列番号48と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、実施形態19に記載の組換えDNA構築物。
【0154】
22.前記第1の植物発現性プロモーターが、配列番号44、またはその機能的部分と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、実施形態19に記載の組換えDNA構築物。
【0155】
23.前記第1の植物発現性プロモーターが、配列番号49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63または64からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列、またはその機能的部分と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、実施形態1~22のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0156】
24.前記第1の植物発現性プロモーターが、配列番号49、またはその機能的部分と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、実施形態23に記載の組換えDNA構築物。
【0157】
25.前記第2の植物発現性プロモーターが、配列番号49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63または64からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列、またはその機能的部分と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、実施形態1~24のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0158】
26.前記第2の植物発現性プロモーターが、配列番号49、またはその機能的部分と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%、少なくとも99.5% %または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、実施態様1~25のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0159】
27.前記第2の植物発現性プロモーターが、配列番号70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、もしくは94からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列、またはその機能部分と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%、少なくとも99.5%%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、実施形態1~26のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0160】
28.前記第1の植物発現性プロモーターが栄養期プロモーターであり、前記第2の植物発現性プロモーターが後期栄養期プロモーター及び/または生殖期プロモーターである、実施形態1~27のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0161】
29.前記第1の植物発現性プロモーターが早期栄養期プロモーターである、実施形態28の組換えDNA構築物。
【0162】
30.前記第2の植物発現性プロモーターが生殖期優先型プロモーターである、実施形態28の組換えDNA構築物。
【0163】
31.前記第2の植物発現性プロモーターが前記転写可能なDNA配列の検出可能な発現を開始するよりも早い発育段階において、前記第1の植物発現性プロモーターが、前記花成性FTタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチド配列の検出可能な発現を開始する、実施形態1~30のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0164】
32.実施形態1~31のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物を含むDNA分子またはベクター。
【0165】
33.実施形態1~31のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物を含む、Agrobacteriumを介した形質転換用のプラスミドベクター。
【0166】
34.実施形態1~31のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物を含む部位特異的組込みのためのドナーテンプレート分子。
【0167】
35.トランスジェニック植物の少なくとも1つの細胞のゲノムへの、実施形態1~31のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物の挿入を含む、前記トランスジェニック植物。
【0168】
36.前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物の前記挿入に関してホモ接合性である、実施形態35のトランスジェニック植物。
【0169】
37.前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物の前記挿入に関してヘミ接合性である、実施形態35のトランスジェニック植物。
【0170】
38.前記トランスジェニック植物が短日植物である、実施形態35~37のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0171】
39.前記トランスジェニック植物が双子葉植物である、実施形態35~38のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0172】
40.前記トランスジェニック植物がマメ科植物である、実施形態35~39のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0173】
41.前記トランスジェニック植物がダイズである、実施形態35~40のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0174】
42.前記トランスジェニックダイズ植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、結節あたりのさやをより多く産生する、実施形態41のトランスジェニック植物。
【0175】
43.前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、結節あたりの花をより多く産生する、実施形態35~42のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0176】
44.前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、前記トランスジェニック植物の結節あたりの種子、丸莢、長角果、果実、木の実またはさやをより多く産生する、実施形態35~43のいずれか一項のトランスジェニック植物またはその一部。
【0177】
45.前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて早く開花する、実施形態35~44のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物またはその一部。
【0178】
46.前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、結節あたりの総状花序をより多く有する、実施形態35~45のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物またはその一部。
【0179】
47.トランスジェニック植物部分の少なくとも1つの細胞のゲノムへの、実施形態1~31のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物の挿入を含む、前記トランスジェニック植物部分。
【0180】
48.前記トランスジェニック植物部分が:種子、果実、葉、子葉、胚軸、分裂組織、胚、胚乳、根、シュート、茎、さや、花、花序、葉柄、小花柄、花柱、柱頭、花床、花弁、萼片、花粉、葯、花糸、卵巣、胚珠、果皮、師部、または脈管組織のうちの1つである、実施形態44~47のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物部分。
【0181】
49.植物発現性プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含む組換えDNA構築物であって、前記ポリヌクレオチド配列が、前記ポリヌクレオチド配列によってコードされるmRNA転写産物中の標的部位をコードする配列を含み、前記mRNA転写産物の前記標的部位が、内在性RNA分子に対して少なくとも80%相補的である、前記組換えDNA構築物。
【0182】
50.前記mRNA転写産物の前記標的部位が、少なくとも17ヌクレオチド長である、実施形態49に記載の組換えDNA構築物。
【0183】
51.前記mRNA転写産物の前記標的部位が、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26または27ヌクレオチド長である、実施形態49または50に記載の組換えDNA構築物。
【0184】
52.前記mRNA転写産物の前記標的部位が、前記内在性RNA分子に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%相補的である、実施形態49~51のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0185】
53.前記標的部位が、前記mRNA転写産物の非コード配列中に存在する、実施形態49~52のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0186】
54.前記mRNA転写産物の前記標的部位が、配列番号95、96、97、103、104、または105に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%相補的である、実施形態49~53のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0187】
55.前記mRNA転写産物の標的部位が、配列番号95または103に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%相補的である、実施形態49~54のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0188】
56.前記花成性FTタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号98、99、100、101、106、107、108、109または110と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である配列を有する、実施形態49~55のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0189】
57.前記mRNA転写産物の前記標的部位が、配列番号99または107と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一である、実施形態49~54または56のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0190】
58.前記花成性FTタンパク質が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、及び30からなる群から選択される配列、またはその機能的断片に対して、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態49~57のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0191】
59.前記花成性FTタンパク質が、以下のアミノ酸:配列番号14のアミノ酸位置85に対応する前記花成性FTタンパク質のアミノ酸位置のチロシンまたは他の非荷電極性または非極性残基;配列番号14のアミノ酸位置128に対応する前記花成性FTタンパク質のアミノ酸位置のロイシンまたは他の非極性残基;配列番号14のアミノ酸位置138に対応する前記花成性FTタンパク質のアミノ酸位置のトリプトファンまたは他の大きな非極性残基のうちの1つ以上をさらに含む、実施形態49~58のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0192】
60.前記花成性FTタンパク質が、以下のアミノ酸:配列番号14の85位に対応するアミノ酸位置のリジンまたはアルギニンに対応するアミノ酸位置のヒスチジン;配列番号14の128位に対応するアミノ酸位置のリジンまたはアルギニン;配列番号14の138位に対応するアミノ酸位置のセリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニンのうちの1つ以上を有さない、実施形態49~58のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0193】
61.前記花成性FTタンパク質が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、及び30、またはその機能的断片からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、実施形態49~61のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0194】
62.前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、及び29からなる群から選択される配列に対して、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性である、実施形態49~62のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0195】
63.前記植物発現性プロモーターが栄養期プロモーターである、実施形態49~62のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0196】
64.前記植物発現性プロモーターが分裂組織優先型または分裂組織特異的プロモーターである、実施形態49~63のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0197】
65.前記植物発現性プロモーターが、配列番号31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45または48からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列、またはその機能的部分と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、実施形態49~64のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0198】
66.植物発現性プロモーターが、配列番号31、またはその機能的部分と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、実施形態49~65のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0199】
67.前記植物発現性プロモーターが、配列番号32または配列番号48と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、実施形態49~65のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0200】
68.前記植物発現性プロモーターが、配列番号44、またはその機能的部分と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、実施形態49~65のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0201】
69.前記植物発現性プロモーターが、配列番号49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63または64からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列、またはその機能的部分と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、実施形態49~68のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0202】
70.実施形態49~69のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物を含むDNA分子またはベクター。
【0203】
71.実施形態49~69のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物を含む、Agrobacteriumを介した形質転換用のプラスミドベクター。
【0204】
72.実施形態49~69のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物を含む、部位特異的組込み用のドナー鋳型分子。
【0205】
73.トランスジェニック植物の少なくとも1つの細胞のゲノムへの、実施形態49~69のいずれか一項の組換えDNA構築物の挿入を含む、前記トランスジェニック植物。
【0206】
74.前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物の挿入に関してホモ接合性である、実施形態73のトランスジェニック植物。
【0207】
75.前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物の挿入に関してヘミ接合性である、実施形態73のトランスジェニック植物。
【0208】
76.前記トランスジェニック植物が短日植物である、実施形態73~75のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0209】
77.前記トランスジェニック植物が双子葉植物である、実施形態73~76のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0210】
78.前記トランスジェニック植物がマメ科植物である、実施形態73~77のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0211】
79.前記トランスジェニック植物がダイズである、実施形態73~78のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0212】
80.前記トランスジェニックダイズ植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、結節あたりのさやをより多く産生する、実施形態73~79のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0213】
81.前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、結節あたりの花をより多く産生する、実施形態73~80のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0214】
82.前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、トランスジェニック植物の結節あたりの丸莢、長角果、果実、木の実またはさやをより多く産生する、実施形態73~81のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物またはその一部。
【0215】
83.前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて早く開花する、実施形態73~82のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物またはその一部。
【0216】
84.前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、結節あたりの総状花序をより多く有する、実施形態73~83のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物またはその一部。
【0217】
85.トランスジェニック植物部分の少なくとも1つの細胞のゲノムへの、実施形態49~69のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物の挿入を含む、前記トランスジェニック植物部分。
【0218】
86.前記トランスジェニック植物部分が:種子、果実、葉、子葉、胚軸、分裂組織、胚、胚乳、根、シュート、茎、さや、花、花序、葉柄、小花柄、花柱、柱頭、花床、花弁、萼片、花粉、葯、花糸、卵巣、胚珠、果皮、師部、または脈管組織のうちの1つである、実施形態82~85のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物部分。
【0219】
87.前記花成性FTタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも15連続ヌクレオチドに対して少なくとも80%相補的なターゲティング配列を含むRNA分子をコードする転写可能なDNA配列を含む組換えDNA構築物であって、前記転写可能なDNA配列が植物発現性プロモーターに作動可能に連結される、前記組換えDNA構築物。
【0220】
88.前記RNA分子の前記ターゲティング配列が約15~約27ヌクレオチド長である、実施形態87に記載の組換えDNA構築物。
【0221】
89.前記RNA分子の前記ターゲティング配列が、前記花成性FTタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも15連続ヌクレオチドに対し、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%相補的である、実施形態87または88に記載の組換えDNA構築物。
【0222】
90.前記RNA分子の前記ターゲティング配列が、前記花成性FTタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチド配列によってコードされるmRNA転写産物の少なくとも15連続ヌクレオチドに対して少なくとも80%相補的である、実施形態87~89のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0223】
91.前記RNA分子の前記ターゲティング配列が、前記mRNA転写産物のエキソン配列またはコード配列の少なくとも15連続ヌクレオチドに対して少なくとも80%相補的である、実施形態87~90のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0224】
92.前記RNA分子のターゲティング配列が、前記mRNA転写産物の非コード配列の少なくとも15連続ヌクレオチドに対して少なくとも80%相補的である、実施形態87~91のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0225】
93.前記転写可能なDNA配列によってコードされる前記RNA分子が、miRNAまたはsiRNA前駆体である、実施形態87~92のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0226】
94.前記ポリヌクレオチド配列によってコードされる前記花成性FTタンパク質が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、及び30からなる群から選択される配列、またはその機能的断片に対して、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態87~93のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0227】
95.前記花成性FTタンパク質が、以下のアミノ酸:配列番号14のアミノ酸位置85に対応する前記花成性FTタンパク質のアミノ酸位置のチロシンまたは他の荷電極性残基または非極性残基;配列番号14のアミノ酸位置128に対応する前記花成性FTタンパク質のアミノ酸位置のロイシンまたは他の非極性残基;配列番号14のアミノ酸位置138に対応する前記花成性FTタンパク質のアミノ酸位置のトリプトファンまたは他の大きな非極性残基のうちの1つ以上をさらに含む、実施形態87~94のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0228】
96.前記花成性 FTタンパク質が、以下のアミノ酸:配列番号14の85位に対応するアミノ酸位置のリジンまたはアルギニンに対応するアミノ酸位置のヒスチジン;配列番号14の128位に対応するアミノ酸位置のリジンまたはアルギニン;配列番号14の138位に対応するアミノ酸位置のセリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジンまたはアルギニンのうちの1つ以上を有さない、実施形態87~94のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0229】
97.前記花成性FTタンパク質が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、及び30からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはその機能的断片を有する、実施形態87~96のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0230】
98.前記花成性FTタンパク質をコードする前記ポリヌクレオチド配列が、配列番号1、3、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、及び29からなる群から選択される配列に対し、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性である、実施形態87~97のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0231】
99.前記植物発現性プロモーターが、配列番号49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63または64からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列、またはその機能的部分と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、実施形態87~98のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0232】
100.前記植物発現性プロモーターが、配列番号49、またはその機能的部分と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、実施形態87~99のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0233】
101.前記植物発現性プロモーターが、配列番号70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、もしくは94からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列、またはその機能的部分と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%、少なくとも99.5%または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、実施形態87~100のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0234】
102.前記植物発現性プロモーターが栄養期プロモーターである、実施形態87~101のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0235】
103.前記植物発現性プロモーターが、後期栄養期プロモーター及び/または生殖期プロモーターである、実施形態87~102のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0236】
104.前記植物発現性プロモーターが、前記転写可能なDNA配列に関して異種である、実施形態87~103のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物。
【0237】
105.実施形態87~104のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物を含む、DNA分子またはベクター。
【0238】
106.トランスジェニック植物の少なくとも1つの細胞のゲノムへの、実施形態87~104のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物の挿入を含む、前記トランスジェニック植物。
【0239】
107.前記トランスジェニック植物が短日植物である、実施形態106に記載のトランスジェニック植物。
【0240】
108.前記トランスジェニック植物が双子葉植物である、実施形態106または107に記載のトランスジェニック植物。
【0241】
109.前記トランスジェニック植物がマメ科植物である、実施形態106~108のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0242】
110.前記トランスジェニック植物がダイズである、実施形態106~109のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0243】
111.トランスジェニック植物部分の少なくとも1つの細胞のゲノムへの、実施形態87~103のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物の挿入を含む、前記トランスジェニック植物部分。
【0244】
112.前記トランスジェニック植物部分が:種子、果実、葉、子葉、胚軸、分裂組織、胚、胚乳、根、シュート、茎、さや、花、花序、葉柄、小花柄、花柱、柱頭、花床、花弁、萼片、花粉、葯、花糸、卵巣、胚珠、果皮、師部、または脈管組織のうちの1つである、実施形態111に記載のトランスジェニック植物部分。
【0245】
113.(a)外植片の少なくとも1つの細胞を、実施形態1~31、49~69または87~104のいずれか一項に記載の組換えDNA構築物で形質転換し;及び (b)前記形質転換外植片からトランスジェニック植物を再生または発育させることを含む、前記トランスジェニック植物の産生方法。
【0246】
114.(c)以下の形質または表現型:前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、より早い開花、より長い生殖または開花期間、結節あたりの花の数の増加、結節あたりの総状花序の数の増加、結節当たりのさや、丸莢、長角果、果実、または木の実の数の増加、及び結節あたりの種子の数の増加のうちの1つ以上を有するトランスジェニック植物を選択することをさらに含む、実施形態113に記載の方法。
【0247】
115.前記形質転換工程(a)を、前記外植片のAgrobacteriumを介した形質転換または微粒子銃を介して実施する、実施形態113または114に記載の方法。
【0248】
116.前記形質転換工程(a)が、前記組換えDNA構築物の部位特異的組込みを含む、実施形態113~115のいずれか一項に記載の方法。
【0249】
117.圃場においてトランスジェニック作物植物をより高密度で植え付けることを含む、前記トランスジェニック作物植物の植栽方法であって、前記トランスジェニック作物植物が、実施形態1~31、49~69または87~104のうちのいずれか1つの組換えDNA構築物の挿入を含む、前記植栽方法。
【0250】
118.前記トランスジェニック作物植物がダイズであり、前記トランスジェニックダイズ植物の約150,000~250,000個の種子を1エーカーあたりに植え付ける、実施形態117に記載の方法。
【0251】
119.前記トランスジェニック作物植物がワタであり、前記トランスジェニックワタ植物の約48,000~60,000個の種子を1エーカーあたりに植え付ける、実施形態117に記載の方法。
【0252】
120.前記トランスジェニック作物植物がキャノーラであり、前記トランスジェニックキャノーラ植物の約450,000~680,000個の種子を1エーカーあたりに植え付ける、実施形態117に記載の方法。
【0253】
121.前記トランスジェニック植物が、非トランスジェニック対照植物に比べて、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、または少なくとも400%多くの種子、さや、丸莢、長角果、果実、木の実または塊茎を有する、実施形態35~46、73~84、または106~110のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0254】
122.前記トランスジェニック植物が、結節あたりの種子、さや、丸莢、長角果、果実、木の実または塊茎を、非トランスジェニック対照植物に比べて、平均で、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150%、少なくとも175%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、または少なくとも400%多く有する、実施形態35~46、73~84、または106~110のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0255】
123.前記トランスジェニック植物が、結節あたりのさや、丸莢、長角果、果実、木の実または塊茎を、平均で、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個有する、実施形態35~46、73~84または106~110のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0256】
124.前記トランスジェニック植物が、結節あたりのさや、丸莢、長角果、果実、木の実または塊茎を、平均で、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、4~10、4~9、4~8、4~7、4~6、または4~5個有する、実施形態35~46、73~84または106~110のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0257】
125.前記トランスジェニック植物が、結節あたりの丸莢、長角果、果実、木の実またはさやを、非トランスジェニック対照植物に比べて、平均で、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個多く有する、実施形態35~46、73~84、または106~110のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0258】
126.前記トランスジェニック植物が、非トランスジェニック対照植物に比べて、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも7日、少なくとも8日、少なくとも9日、少なくとも10日、少なくとも11日、少なくとも12日、少なくとも13日、少なくとも14日、少なくとも15日、少なくとも20日、少なくとも25日、少なくとも30日、少なくとも35日、少なくとも40日、または少なくとも45日早く開花する、実施形態35~46、73~84または106~110のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0259】
127.前記トランスジェニック植物がダイズ植物であり、前記トランスジェニック植物が、非トランスジェニック対照植物に比べて、結節あたりのさやを平均でより多く有する、実施形態121、122、123、124、125または126のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0260】
128.栄養期プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物であって、前記花成性FTタンパク質の発現が、後期栄養組織及び/または生殖組織において抑制される、前記トランスジェニック植物。
【0261】
129.前記花成性FTタンパク質の発現が低分子RNA分子によって抑制される、実施形態128に記載のトランスジェニック植物。
【0262】
130.花成性FTタンパク質をコードし、栄養期プロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列、及び前記ポリヌクレオチド配列の少なくとも部分に相補的なターゲティング配列を有するRNA分子をコードする少なくとも1つの転写可能なDNA配列を含む、組換えDNA構築物。
【0263】
131.トランスジェニック植物の少なくとも1つの細胞のゲノムへの、実施形態130に記載の組換えDNA構築物の挿入を含む、前記トランスジェニック植物。
【0264】
132.栄養期プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードする組換えポリヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物であって、前記ポリヌクレオチド配列の発現が、低分子RNA分子によって空間的及び時間的に制限される、前記トランスジェニック植物。
【0265】
133.発現カセットを含む組換えDNA構築物であって、前記発現カセットが、植物発現性プロモーターに作動可能に連結された花成性FTタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含み、前記植物発現性プロモーターが、配列番号49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63または64からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列、またはその機能的部分と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるポリヌクレオチド配列を有する、前記組換えDNA構築物。
【0266】
134.前記花成性FTタンパク質が、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28及び30からなる群から選択される配列、またはその機能的断片に対し、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を有する、実施形態130または133に記載の組換えDNA構築物。
【0267】
135.実施形態130または133に記載の組換えDNA構築物を含む、DNA分子またはベクター。
【0268】
136.実施形態130または133に記載の組換えDNA構築物を含む、Agrobacteriumを介した形質転換用のプラスミドベクター。
【0269】
137.実施形態130または133に記載の組換えDNA構築物を含む、部位特異的組込み用のドナー鋳型分子。
【0270】
138.トランスジェニック植物の少なくとも1つの細胞のゲノムへの、実施形態130または133に記載の組換えDNA構築物の挿入を含む、前記トランスジェニック植物。
【0271】
139.前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物の挿入に関してホモ接合性である、実施形態131、132、または138のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0272】
140.前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物の挿入に関してヘミ接合性である、実施形態131、132、138、または139のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0273】
141.前記トランスジェニック植物が短日植物である、実施形態131、132、または138~140のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0274】
142.前記トランスジェニック植物が双子葉植物である、実施形態131、132、または138~141のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0275】
143.前記トランスジェニック植物がマメ科植物である、実施形態131、132、または138~142のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0276】
144.前記トランスジェニック植物がダイズである、実施形態131、132、または138~143のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0277】
145.前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて、前記トランスジェニック植物の結節あたりの種子、丸莢、長角果、果実、木の実またはさやをより多く産生する、実施形態35~46、73~84、106~110、131、132、または138~144のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0278】
146.前記トランスジェニック植物が、前記組換えDNA構築物を有さない対照植物に比べて早く開花する、実施形態35~46、73~84、106~110、131、132、または138~145のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0279】
147.前記トランスジェニック植物が、R8期において少なくとも700ミリメートルの草高を有するダイズ植物である、実施形態35~46、73~84、106~110、131、132、または138~146のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0280】
148.前記トランスジェニック植物が、R8期において植物あたり少なくとも100個の結節を有するダイズ植物である、実施形態35~46、73~84、106~110、131、132、または138~147のいずれか一項に記載のトランスジェニック植物。
【0281】
149.トランスジェニック植物部分の少なくとも1つの細胞のゲノムへの、実施形態130または133の組換えDNA構築物の挿入を含む、前記トランスジェニック植物部分。
【実施例0282】
実施例1.ダイズ短日誘導処理及び転写プロファイリングによるFlowering LocusT(FT)遺伝子の同定
本実施例は、同時係属中の米国特許出願第15/131,987号及び国際出願第PCT/US2016/028130号において以前に記載されており、それらの全体を参照として本明細書に援用する。光周期光照射(すなわち、植物における開花の短日誘導)のための方法は、参照としてその全体を本明細書に援用する米国特許第8,935,880号及び米国特許出願公開第2014/0259905号に記載されている。前記文献にさらに記載されているように、早期短日誘導照射により、植物あたりのさや/種子数の増加を含む、生殖形質が変化したダイズ植物が産生した。遺伝子発現マイクロアレイを用いて転写プロファイリング実験を行い、これらの光誘導植物において特定の転写産物が上方制御されたかどうかを決定して短日誘導表現型の媒介を担い得る遺伝子を同定した。これらの実験では、短日誘導光照射を受けた植物(短日)から1、3及び5日後に採取したダイズの葉及び花の花茎頂組織について、誘導照射を受けなかった植物(長日)由来の組織と比較して、転写産物の分析を行った。
【0283】
図2に示すように、早期短日誘導(eSDI)照射の3日後及び5日後に収穫した葉組織において、(i)同じ短日誘導植物の花茎頂組織、または(ii)代わりに長日処理を行ったダイズ植物の葉の組織及び花茎頂組織のいずれかから採取した試料に比べて、特定のFlowering LocusT遺伝子Gm.FT2a(配列番号1)について、転写産物の蓄積の増加が観察された。これらのデータは、eSDI照射を受けている植物の葉組織においてGm.FT2a発現が誘導されるという結論を支持しており、これは長日条件下で生長した植物においては認められなかった。Gm.FT2a発現はeSDI照射植物の花茎頂においても観察されず、これは、誘導光周期条件に応答して末梢の葉の組織において誘導され、次いで分裂組織内のその作用部位に移動して開花を誘導するというFTタンパク質発現のモデルと一致する。しかしながら、転写産物のより高感度のRNA配列決定分析を用いたさらなる実験により、茎頂及び腋芽において、eSDI照射に応答していくらかのGm.FT2a誘導が示された(データは示さず)。
【0284】
実施例2.ダイズにおけるpAt.Erectaプロモーター発現パターンの特徴付け
トランスジェニックアプローチによって望ましい形質または表現型を達成するには、異所性FT遺伝子発現の時間的及び空間的パターンの制御が必要であり得る。短日導入処理後の栄養組織におけるGm.FT2a発現を同定するダイズ生理学実験(図2参照)により、収量陽性形質の達成が栄養期中の早期FT発現に依存し得ることが示された。他方では、たとえFT転写産物が栄養茎頂で検出されなくても、FTタンパク質は、葉から頂端組織まで長距離移動し、そこで栄養相から生殖相への転換を引き起こすことが示されている。例えば、上記のLifschitz,E.et al.,(2006);及びCorbeiser,L.et al.,“FT Protein Movement Contributes to Long-Distance Signaling in Floral Induction of Arabidopsis”,Science [316]:1030-1033(2007)参照。したがって、本発明者ら自身の観察によると、本発明者らは、植物における異所性FT発現を制御するために、分裂組織において活性である栄養期プロモーターを用いることを提案した。所望の発育段階で分裂組織において形態形成FTシグナルを直接発現させることによって、複数の内在性経路及び調節フィードバック(例えば、葉におけるFT伝達の制御及びFTシグナルの長距離の移行)を迂回または回避し得る。短日誘導照射(実施例1で上述した)を用いた以前の実験により、ダイズ植物の分裂組織におけるGm.Erecta遺伝子の上方制御が明らかになった。Arabidopsis由来pErectaプロモーター(配列番号31)は、栄養生長期の間に植物の分裂組織(複数可)において弱い発現を有することが示されていた。したがって、最初のFT発現実験にpAt.Erectaプロモーターを選択した。
【0285】
追加の実験を行い、GUSレポーター遺伝子に融合させたpAt.Erectaの栄養及び花芽分裂組織における発現パターンをさらに特徴付けた。ダイズ実生の発育中のGUS発現パターンの分析により、pAt.Erectaプロモーターが、好ましくは栄養生長期の間の分裂組織において時間的及び空間的発現パターンを示すことが明らかになった。図3A~3O、及び4A~4Oならびに図5A~5F及び6A~6Fは、2組の画像を含み、GUS染色のパターンを示す。図3A~3O及び5A~5Fは、染色した組織の白黒画像を示す。図4A~4O及び6A~6Fは、それぞれ、図3A~3O及び5A~5Fに対応する白黒画像を示し、図4A~4O及び6A~6Fは、それぞれ、図3A~3O及び5A~5Fに対応する白黒画像を示すが、青色GUS染色のパターン及び強度を示すために色分けされている。したがって、これらの白黒画像を用いて、図3A~3O及び4A~4Oまたは図5A~5F及び6A~6Fの対応する画像を比較することによって、発現のGUS染色パターンを見ることができる。図3A~3O及び4A~4Oに示すように、播種/発芽後3日目に、GUS染色が、ダイズ未成熟単葉の葉身及び葉柄において検出された(図4A及び4B)。pAt.Erecta::GUS発現はまた、この早期栄養期における三小葉原基、茎頂分裂組織(SAM)及び腋芽分裂組織部位において広く検出された(図4C)。GUS活性は、発芽または植栽後10日目に、完全に拡大した単葉及び三小葉において検出されなかった(図4D及び4E)。しかしながら、GUS活性は、未成熟、未拡大の、しかし完全に発育した三小葉の葉身の近位部、及び葉柄の向軸側で検出された(図4F)。発育中の頂端組織の詳細な観察により、発育中の未成熟葉原基、腋芽分裂組織及び茎頂分裂組織において広範な発現が保持されていることが示された(図4G~I)。
【0286】
早期生殖期においては、pAt.Erectaプロモーター活性は成熟した葉身では検出されず、発育中の葉原基では減少した。GUSシグナルは、いったんこれらの組織が花序を形成し始めると、茎頂分裂組織(SAM)または腋芽分裂組織(AM)の未決定の栄養茎頂では検出されなかった(図4J~4L)。その後のすべての段階で、頂端、腋生または花の原基では、追加の分裂活性は検出できなかった。しかしながら、GUS発現は、葉柄の向軸側及び未成熟葉身の近位部分(図4M及び4N)では継続したが、完全に拡大した葉身(図4O)では継続しなかった。pAt.Erectaプロモーターを用いたGUS発現パターンもまた、後期R1生長期(発芽後35~40日)において分析した。早期生長期と同様に、成熟した葉または茎には発現は検出されなかった。しかしながら、強いプロモーター活性が、花序の茎(図5A及び6A;矢印参照)及び花の小花柄(図5B及び6B;矢印参照)において検出された。両方の組織において、脈管構造及び柔組織細胞で発現が検出された(図5C及び6C)。この段階では、雄ずいの花糸(図5D及び6D;矢印参照)及び非受粉胚珠でも発現が検出された(図5E、5F、6E及び6F;6Fの矢印参照)。
【0287】
以前に、pAt.ErectaプロモーターがArabidopsisにおいて特徴付けられた。興味深いことに、ArabidopsisのpAt.Erectaの発現パターンは栄養期の間にダイズで観察されたパターンと同等であったが、後期生殖期の間では同等ではなかった。対照的に、ダイズにおけるpAt.Erectaの発現パターンは、早期の生殖組織では減少するが、花序の茎や花の小花柄を含むいくつかの後期の生殖器官や組織では再出現する。例えば、その内容及び開示の全体を参照として本明細書に援用する、Chen,M-K et al.,FEBS Letters [588]:3912-17(2014);Yokoyama,R et al.;Shpak,ED et al.,Science [309]:290-293(2005);及びYokoyama,R et al.,Plant J [15](3):301-310(1998)参照。したがって、pAt.Erectaプロモーターはダイズにおいて新規発現パターンを提供する。
【0288】
実施例3.pAt.Erectaプロモーターの制御下でのFlowering LocusT遺伝子Gm.FT2aの発現は、ダイズの開花時期及び結節あたりのさやを変化させる
Gm.FT2a遺伝子に作動可能に連結されたpAt.Erectaプロモーターを含む組換えDNA分子(すなわち、T-DNA形質転換ベクター)を用いて、Agrobacterium媒介形質転換を介してダイズ外植片を形質転換することによってトランスジェニックダイズ植物を産生し、4つのpAt.Erecta::Gm.FT2a事象を生成し、これをさらなる試験のために繰り越した。FT2a過剰発現の効果はR0植物において直ちに認められ、それは非常に早い開花と、種子収量の減少(例えば、わずかに約8種子/植物)を伴う生長停止を示した。これらのトランスジェニックGm.FT2a植物はまた、草高が低く、枝があるとしてもごくわずかであった。分離したR1植物及びそれらの子孫を、その後、最初の研究及び特徴決定のために、長日条件下で温室内において生長させた。これらの植物を長日の条件下で生長させることによって、Gm.FT2aトランスジェニックR0植物で観察された重度の矮性表現型が改善された。これらの実験では、16時間の長日条件下(すなわち、16/8時間の日中/夜間の光周期)で温室内において生長させたホモ接合性及びヘミ接合性植物の両方が野生型ヌル分離個体よりもはるかに早く開花した。Gm.FT2aトランスジェニック植物は、植栽または播種の約19~22日後に開花した)。(例えば、図9A~9C参照)。これらの生長条件下で、Gm.FT2aを発現するトランスジェニックダイズ植物では、野生型対照に比べて、主茎上の結節あたりのさやの数がさらに増加した(例えば、以下でさらに考察する図10及び11参照)。
【0289】
制御された環境条件下で生長させたpAt.Erecta::Gm.FT2aトランスジェニック事象(事象1)の1つを含む植物を、走査電子顕微鏡分析(eSEM)によってさらに分析した。これらのトランスジェニック植物の茎頂分裂組織(SAM)(植栽後7日目に集めた)の分析により、SAMの花序分裂組織(IM)及び花芽分裂組織(FM)への早期転換が明らかになった(図7)。対照的に、野生型ダイズ植物のSAMは、この成育段階ではIMに分化しなかった。同様に、FT2a形質転換体の腋生分裂組織(植栽後9日目に集めた)の画像化の結果、休眠花序分裂組織(dIM)(または側生総状花序原基)からIM及びFMへ発育させることにより、これらのトランスジェニック植物において結節あたりの花の枝(総状花序)がより早く発育することが示された(図8)。さらなる表現型の特徴付けにより、Gm.FT2aを発現するダイズ植物におけるV1期での早期開花が明らかになり、それはヌル分離植物において花成が生じるよりもずっと前であった(図9A~9C)。上記のpAt.Erecta::GUS発現パターンと組み合わせたこれらのデータは、早期開花、そしてより詳細には花序及び花芽分裂組織の形成が、実生の葉原基ならびに茎頂分裂組織及び腋生分裂組織における栄養期の間のGm.FT2aの異所性発現によって誘導されたことを示す。より多数の花序及び花芽分裂組織が形成されることにより、二次及び三次総状花序の早期の解放及び伸長がさらに引き起こされ、結節あたりの生産的な花及びさやがより多く形成されると考えられる。
【0290】
Gm.FT2aトランスジェニックダイズ植物が、より早い開花を経験し、主茎上の結節あたりのさやをより多く産生する(ヌル植物を分離することに比べて)だけでなく、トランスジェニック植物における異所性Gm.FT2a発現の効果が用量依存的であることも明らかになった。ホモ接合型植物とヘミ接合型植物のいずれも、草高が低く分枝が少なかったが、おそらくは、ヘミ接合型植物が1コピーである(すなわち低用量である)のに対し、ホモ接合型植物が2コピーの導入遺伝子を含む(すなわち、より高用量である)ことから、Gm.FT2a導入遺伝子に関してホモ接合型の植物は、ヘミ接合型植物よりも重度の影響を受けた。長日生長条件下では、導入遺伝子に関してヘミ接合型である植物に比べて、ホモ接合型植物は、より早く生長停止し、全体の高さはより短く、主茎上の結節及び枝はより少なかった(図10)。野生型及びホモ接合型植物に比べて主茎上の枝が非常に少ない(存在する場合)いくつかの最適以下の矮性表現型を示したホモ接合型植物とは異なり、ヘミ接合型植物は、それらの栄養生長、草高、及び主茎上に存在する結節数に関して、野生型及びホモ接合型植物に比べて中間的な表現型を有していた。16時間の長日条件下では、ヘミ接合型植物は、ホモ接合型植物に比べて、ある程度の分枝度及びより長い開花期間とともに、より正常な草高を有していた(図10)。ヘミ接合型植物はまた、R1の開始後40~64日間、開花したが、ホモ接合型植物は、それらがより早期に生長停止したためにわずか16~24日間の開花であった。
【0291】
長日(16時間)制御環境条件においてGm.FT2a構築物(3事象)で形質転換した植物を用いてさらなる実験を行い、ヘミ接合型植物とホモ接合型植物との間の用量応答をさらに特徴付けた。3つのホモ接合型事象(Homo-Event2、Homo-Event3、Homo-Event4)及び3つのヘミ接合型事象(Hemi-Event2、Hemi-Event3、Hemi-Event4)について、主茎及び枝上の結節及びさやの数、ならびに結節あたりの平均さや数と植物あたりの平均草高における差異を表1に示す。これらの事象は上記の事象1とは区別される。
【表1】
【0292】
表2に示すように、へテロ接合型植物は、主茎(MS)及び枝(BR)上に一貫してより多数の結節を有し、ホモ接合型植物よりも高い草高を有していた。このように、ヘミ接合型植物は一般的にホモ接合型植物よりも影響が少なく、野生型植物により類似していた。ヘミ接合型植物はまた、ホモ接合型植物に比べて、結節あたりのさやをより多く、また、主茎及び枝上により多数のさやを有していた。したがって、ヘミ接合型植物は一般的に、おそらくそれらのより低いGm.FT2a導入遺伝子用量に起因して、結節あたり(及び植物あたり)のさやをより多く有する、より標準に近い植物アーキテクチャーを有していた。導入遺伝子の接合性に基づくGm.FT2aの相対用量レベルは、Gm.FT2a転写産物レベルがヘミ接合型植物由来の組織よりもホモ接合型植物由来の組織においてより高いことを示すさらなる実験によってさらに確認された(データは示さず)。
【0293】
これらのGm.FT2aトランスジェニック植物における開花の早期誘導は、ヘミ接合型及びホモ接合型植物の両方において、主茎上の結節あたりのより多くのさや(及び種子)と関連していた。Gm.FT2a導入遺伝子を含むホモ接合型及びヘミ接合型植物はそれぞれ、野生型分離個体に比べて植物の主茎上の結節あたりのさや/種子の数が増加していた(図11)。主茎上のさやの分布はまた、Gm.FT2aトランスジェニック植物と野生型ヌル植物との間で異なることが見出された。野生型ヌル植物に比べて、長日条件下で生育させたホモ接合型植物及びヘミ接合型植物の両方が、少なくとも主茎のより低い結節により多くのさや及び平均で結節あたりのより多くのさやを有することがわかった(データは示さず)。Gm.FT2a導入遺伝子に関してヘミ接合型の植物は、主茎の長さにわたって結節あたり最高数のさやを有していた。しかしながら、これらの効果は日長などを含む特定の生育条件に依存していた。一般的に、より長日条件下でダイズを用いて行った実験はトランスジェニック植物とヌル植物との間により大きな差異を生じる傾向があった。
【0294】
トランスジェニックGm.FT2a発現の用量依存的効果もまた圃場試験において観察した。圃場試験では、2つのGm.FT2a事象(上記の事象1及び2)についてヘミ接合型のダイズ植物は、主茎上の結節あたり平均約2.68個のさやを示し、これらの事象についてホモ接合型の植物は、結節あたり平均約1.40個のさやを示したが、一方、ヌル分離植物は結節あたり約1.63個のさやを有していた。しかしながら、早期の圃場試験では、トランスジェニックGm.FT2a(事象2)についてヘミ接合型の植物は、ホモ接合型植物における結節あたり約3.05個及びヌル分離植物における結節あたり約2.19個のさやの平均に比べて、結節あたり約3.21個のさやの平均数を有することがわかった。異なる圃場で実施した別のマイクロプロット実験では、Gm.FT2a導入遺伝子(事象1)についてヘミ接合型の植物は、ホモ接合型植物における結節あたり約2.05個のさや、及びヌル分離植物における結節あたり約1.30個のさやの平均に比べて、結節あたり平均約2.17個のさやを有することがわかった。したがって、Gm.FT2a導入遺伝子について、Gm.FT2a導入遺伝子を有する植物の結節あたりのさやの数は、FT導入遺伝子の用量、環境条件及び圃場条件、ならびにおそらく農学的慣習の違いなど、さまざまな要因に左右される可能性がある。しかしながら、温室内で生育させたトランスジェニックGm.FT2a植物と同様に、圃場条件下で生育させたホモ接合型及びヘミ接合型Gm.FT2aトランスジェニック植物は、主茎上の結節がより少なく、全体の草高が短く、及び/またはトランスジェニック植物の分枝がより少なかった。実際、野生型植物は、通常、ヘミ接合型及びホモ接合型のGm.FT2a植物に比べて、植物あたりの分枝数がより多く、全結節数がより多かった。
【0295】
14時間の長日条件下で温室内において生育させたホモ接合型Gm.FT2aトランスジェニック植物及び野生型(WT)対照植物から、追加の生理学的データを収集した(表2参照)。これらのデータは、各事象についての6つのGm.FT2aトランスジェニック植物、または8つの野生型植物から得られた測定値の平均を示す。
【0296】
これらの植物の表現型の特徴付けのために、以下のマトリックスを収集した:R1で開花するまでの日数(DOFR1);R7までの日数(DOR7);R1からR7までの日の生殖期間(PDR1R7);植物あたりの枝数(BRPP);枝の稔性結節の合計(FNBR);植物あたりの稔性結節の合計(FNLP);主茎上の稔性結節の合計(FNST);枝上の結節数(NDBR);主茎上の結節数(NDMS);結節/植物数(NDPL);枝上の稔性結節の割合(PFNB);稔性結節の合計の割合(PFNN);主茎上の稔性結節の割合(PFNS);植物あたりのさやの数(PDPP);主茎上のさやの数(PODMS);枝上のさやの数(PODBR);平均さや/結節数;R8での植物あたりの種子(SDPPR8);及び1000種子の重量(SW1000)。別の時点が指定されていない限り、これらの測定値はそれぞれ収穫時に取得したものである。
【表2】
【0297】
上記の観察と一致して、ホモ接合型Gm.FT2aトランスジェニック植物はWT植物に比べて早期に花成誘導を受けた(DOFR1 野生型植物での約33~34日に代わって、植栽の約21日後)。これらの測定はさらに、枝の数(及び枝上の結節またはさやの数などの分枝に関連する他の測定)が大幅に減少したことを示した。トランスジェニック植物は非常に少ない分枝でより短い草高を有するため、植物あたりの結節またはさやの合計数もまた大幅に減少した。しかしながら、主茎上の結節あたりのさやの数は、野生型ヌル植物(例えば、約2.4個のさや/結節)に比べてトランスジェニック植物(例えば、約3.8個の平均さや/結節)において増加した。
【0298】
いかなる理論にも拘泥するものではないが、栄養生長期の間に分裂組織においてFT2aを発現するトランスジェニックダイズ植物で観察される結節あたりのより多数のさやは、少なくとも部分的には、早期開花と、早期二次及び/または三次総状花序の解放及び/またはより良い資源利用との同期によって引き起こされ得るものであって、結節あたりのさやをより多く産生する花を産生する。分裂組織における早期のFT発現(例えば、図3及び4参照)は、休眠花序分裂組織の早期解放を引き起こして、植物の結節あたりの総状花序の数を高め、その結果、より多くの総状花序が、成熟した花及び各結節において完全に発育したさやを産生する。しかしながら、生殖組織におけるその後のFT発現(例えば、図5及び6参照)は、各結節において後に発育する花の花成を生長停止させ、より早く発育する総状花序、花及びさやへのより効率的な資源配分をもたらし得る。野生型ダイズ植物では、一次総状花序に比べてはるかに低い割合の二次及び三次総状花序が花及び十分に発達したさやを産生し、後期発育中の一次総状花序の花は、通常、落花前に成熟した花及び/またはフルサイズのさやを産生しない。このように、植物の1つ以上の結節(複数可)における花の早期発育を側生総状花序の早期解放と同期させることによって、結節あたりより多くのさやが栄養芽分裂組織においてFTタンパク質を発現する植物において生成され得ると理論づけられる。少なくともpAt.ErectaプロモーターがFT発現を駆動する場合、後に発育する花(さもなければ完全に発育した、すなわちフルサイズのさやを産生しない可能性がある)もFTの後期生殖期発現によって生長停止するようになり、より早く発育する花へと資源を向かわせ得る。
【0299】
実施例4.ダイズにおける代替的栄養期プロモーターの制御下でのFlowering LocusT遺伝子Gm.FT2aの発現
前述の実施例3で観察された表現型に基づいて、栄養期葉優先型プロモーターと考えられたGm.FT2a導入遺伝子発現を駆動するための2つのプロモーター:pAt.BLS(配列番号46)及びpAt.ALMT6(配列番号47)も提案した。本明細書中で使用する場合、「葉優先型」プロモーターとは、他の植物組織に比べて葉組織においてその関連遺伝子の転写を優先的に開始するプロモーターを指す。FTは可動性フロリゲンとして機能すると考えられているため、葉優先型または葉特異的プロモーターを有する葉などの末梢組織における栄養期中の早期FT発現は、分裂組織優先型pAt.Erecta::Gm.FT2a発現と同様の表現型をもたらし得る。栄養期葉プロモーターを用いたFT発現もまた花成誘導シグナルを減弱させ、それにより分裂組織におけるホモ接合型FT発現で観察される早期生長停止表現型を緩和し、草高及び分枝を増加させ得る。
【0300】
これらの実験において、pAt.ALMT6::Gm.FT2a及びpAt.BLS::Gm.FT2aのための形質転換ベクターを構築し、Agrobacteriumを介した形質転換によってダイズ系統を形質転換するために使用した。pAt.BLSプロモーターを用いた発現は、葉原基数5(p5)で始まり、開花への転換までの間だけソース葉脈において発現することが示されており、pAt.ALMT6プロモーターもまた、pAt.BLSに比べて後期の発育段階での発現を伴う栄養葉プロモーターである。例えば、Efroni et al.,“A Protracted and Dynamic Maturation Schedule Underlies Arabidopsis Leaf Development,”The Plant Cell [20](9):2293-2306(2008);及びShani et al.,“Stage-Specific Regulation of Solanum lycopersicum Leaf Maturation by Class 1 KNOTTED1-LIKE HOMEOBOX Proteins,”The Plant Cell [21](10):3078-3092(2009)参照。トランスジェニックダイズ植物をこれらのベクター構築物のそれぞれについて作製し、14時間の光周期条件下、グロースチャンバー中で、表現型について野生型植物と比較して特徴付けた。各pAt.BLSプロモーター構築物については、6つのトランスジェニック事象を試験し(1事象あたり5植物)、pAt.ALMT6プロモーターについては、7つのトランスジェニック事象(1事象につき5植物)を試験した。これらの構築物のそれぞれについて、対照データを5つの野生型植物から収集した。
【0301】
これらのトランスジェニック植物の表現型の特徴付けのために、以下のマトリックスを集めた(表3及び4)。個々の測定値は上に定義した通りであり、表現型の特徴付けは導入遺伝子についてホモ接合型の植物について行った。
【表3】
【表4】
【0302】
代替のpAt.ALMT6及びpAt.BLSプロモーターの制御下でGm.FT2aを発現するトランスジェニック植物は、pAT.Erecta::Gm.FT2aトランスジェニック植物よりも表現型的に野生型(WT)植物と類似していた。pAt.ALMT6::Gm.FT2a及びpAt.BLS::Gm.FT2a構築物で形質転換した植物は、野生型対照植物と同様の開花時期及び栄養生長特性を有し、おそらくは野生型植物に比べて枝上の結節数がわずかに増加していた(表3及び4)。これらのデータは、野生型植物とは異なる生殖及び収量関連形質または表現型を産生するために、トランスジェニックFT発現のタイミング及び位置の両方が重要であることを示すと解釈され得る。より早期の栄養生長期の間に(例えば、葉の組織において)FT導入遺伝子を単に発現させることは、植物の生殖または収量関連表現型(例えば、結節あたりのさや)を改変するのに十分ではない可能性がある。したがって、本発明の実施形態によれば、花成性FT導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモーターは、植物の栄養生長期中に発現を駆動することに加えて、好ましくは分裂組織特異的または分裂組織優先型プロモーターであってもよい。しかしながら、上記の2つの葉優先型プロモーターの発現特性をダイズ植物において試験した場合、発育中の葉においてpAt.BLSプロモーターによるGUS染色は観察されず、また、pAt.ALMT6プロモーターは、葉において後期栄養期まで検出可能なGUS発現を生じさせることはなく、早期生殖期の間にはるかに高い発現を有していた。したがって、異なる組織特異的プロモーターを用いた早期栄養期の間の末梢(葉)組織におけるFT導入遺伝子の発現は、いくつかの場合には早期開花を誘発し、及び/または他の生殖または収量関連形質または表現型を引き起こすのに十分であり得、これはまた試験する特定の植物種にも依存し得る。
【0303】
実施例5.Pfam分析によるFT相同体のタンパク質ドメインの同定
配列分析及び文献レビューによってGm.FT2aオルソログを同定し、これらのFT相同体のいくつかの例をGm.FT2aと共に表5に記載する。これらは他のダイズFT遺伝子及び他の植物種由来のいくつかのFT遺伝子を含んでいた。HMMERソフトウェア及びPfamデータベース(バージョン27.0)を使用して、これらのFTタンパク質のアミノ酸配列を分析して、任意のPfamタンパク質ドメインを同定した。これらのFTタンパク質配列(配列番号2、4、6、8、10及び12)は、Pfamドメイン名「PBP_N」及びPfam登録番号PF01161を有するホスファチジルエタノールアミン結合ドメインタンパク質(PEBP)と同じ同定されたPfamドメインを有することが見出された。これらの各FTタンパク質配列中のPBP_Nドメインの位置も表5に記載する。他のFTタンパク質中のPBP_Nドメインの位置は配列アラインメントにより決定することができる。したがって、対応するFTタンパク質を植物の分裂組織内で異所性に発現させた場合に、それが花成活性を有する限り、PBP_Nドメインを含む少なくとも1つのFTタンパク質をコードする任意のDNA配列を、本発明の組換えDNA分子に使用してもよい。
【表5】
【0304】
実施例6.ダイズにおけるpAt.Erectaプロモーターの制御下でのFT相同体の発現
pAt.Erectaプロモーターの制御下にある他のFT相同体(表6)を含む追加の形質転換ベクターを構築し、これを用いてAgrobacteriumを介した形質転換によりダイズを形質転換した。これらの事象から生成されたトランスジェニック植物を、それらの表現型について、14~14.5時間の自然昼光期間を用いて温室内で特徴決定した。各構築物について、6つの事象を試験した(1事象あたり6植物)。野生型(WT)対照植物についても6つの植物を試験し、平均化した。表6に示すように、別々の野生型対照を用いて異なる実験群(A~E)を実施した。
【表6】
【0305】
上記のGm.FT2a構築物について収集したデータに加えて、pAt.Erectaプロモーターを用いて他のFT相同体を発現させるために表6に記載した構築物のそれぞれで形質転換した植物の表現型の特徴決定のために、以下のマトリックスを収集した。個々の測定は上記で定義した通りであり、形質転換体の表現型の特徴決定は、導入遺伝子についてホモ接合型の植物で行った。
【0306】
pAt.Erectaプロモーターの制御下でZm.ZCN8及びNt.FT様導入遺伝子を発現する植物について、表現型データを収集した(表7及び8参照)。表7及び8の各事象についての形質値は、その事象を含む試験した全植物の平均である。また、各形質の事象値の平均を示す列も提供する。
【表7】
【表8】
【0307】
Zm.ZCN8及びNt.FT様タンパク質を発現するトランスジェニックダイズ植物は、野生型対照植物よりも早く開花し、結節あたりのさやの数が増加していた(Gm.FT2a導入遺伝子を発現する植物と同様に)。実際、Zm.ZCN8及びNt.FT様導入遺伝子を発現するダイズ植物は、野生型対照に比べて、結節あたりのさや数の増加と、植物あたりの種子数の減少とともに、開花までの日数(DOFR1)の減少、枝数の減少(BRPP)、植物あたりの結節(NDPL)が少ない、枝上の結節(NDBR)が少ない、枝あたりのさや数(PDPP)の減少、及び枝上のさや数(PODBR)の減少などの、Gm.FT2aトランスジェニック植物と同様のいくつかの表現型を有していた(表7及び8)。しかしながら、ホモ接合型Gm.FT2a植物において観察されたいくつかのネガティブ表現型は、Zm.ZCN8及びNt.FT様発現トランスジェニック植物においてはそれほど顕著ではなかった。全体として、Zm.ZCN8導入遺伝子を発現する植物は、より短い草高及びより少ない分枝を有していたが、主茎上に結節あたりのさやをより多く有していた。同様に、Nt.FT様導入遺伝子を発現する植物は、野生型の対照植物に比べて、草高が短く、主茎上の分枝が減少し、結節あたりのさやが増加していた。
【0308】
上記の2つのトランスジェニックZm.ZCN8事象及び4つのNt.FT様事象についても、2つの異なる場所での圃場試験において試験した。pAt.Erectaプロモーターの制御下でZm.ZCN8及びNt.FT様導入遺伝子を発現する植物について、表現型データを収集した(表9及び10)。圃場測定の場合、形質は、DOR8及びPDR1R8が、R8までの日数及びR1とR8の間の生殖期間であることを除いて、温室でのデータ表について上記に記載したものと同様である。さらに、他のすべての形質は、R7期ではなく収穫時(すなわち、R8期)に測定する。表9の事象1と2は表7の事象2と3に対応し、表10の事象1~4は表8の事象1~4にそれぞれ対応する。R1で開花するまでの日数(DOFR1)及びR1からR8までの日における生殖期間(PDR1R8)を除いて、すべての表現型の測定値は2つの場所から収集したデータに基づいて導き出した。温室での観察と同様に、Zm.ZCN8及びNt.FT様タンパク質を発現するトランスジェニックダイズ植物もまた、圃場において野生型対照植物より早く開花した。Zm.ZCN8トランスジェニック植物では、結節あたりのさや数が増加していた一方で、Nt.FT様植物では、圃場試験において結節あたりのさやの増加が明白に示されることはなかった。
【表9】
【表10】
【0309】
pAt.Erectaプロモーターの制御下でGm.FT2b導入遺伝子を発現する植物について追加の表現型データを収集した(表11)。
【表11】
【0310】
Gm.FT2b導入遺伝子を発現するトランスジェニックダイズ植物は、より早く開花し、野生型対照植物よりも分枝が少なかった。Gm.FT2bを発現するダイズ植物は、開花までの日数(DOFR1)の減少、植物の枝数(BRPP)の減少、植物あたりの結節(NDPL)の減少、植物あたりの結節(NDBR)の減少、植物あたりのさや数(PDPP)の減少、及び枝上のさや(PODBR)の減少を有していた(表9)。しかしながら、トランスジェニックGm.FT2b植物は、結節あたりのさや数の増加を示さなかった。全体として、Gm.FT2b導入遺伝子を発現する植物は、野生型の対照植物に比べて、草高が短く、分枝が少なかった。Gm.FT2b導入遺伝子の4つの異なる事象を発現するトランスジェニックダイズ植物もまた、圃場試験において試験した。pAt.Erectaプロモーターの制御下でGm.FT2b導入遺伝子を発現する植物について、表現型データを収集した(表12)。表11の事象1~4は、表12の事象3、2、1、及び4にそれぞれ対応する。温室での観察と同様に、ダイズ植物を発現するGm.FT2bは、圃場での開花までの日数(DOFR1)の減少を示した。他の表現型の測定もまた、野生型の対照植物と比較して温室で観察されたものと同様の形質を示した。
【表12】
【0311】
pAt.Erectaプロモーターの制御下でLe.SFT導入遺伝子を発現する植物からさらなる表現型データを収集した(表13)。
【表13】
【0312】
全体として、Le.SFT導入遺伝子を発現するダイズ植物は、野生型植物に比べて、草高が低く、分枝が少なく、結節あたりの平均さや数が増加していた(表13)。しかしながら、これらの影響は様々で事象特異的なものであった。例えば、事象1、3及び4が早期開花(DOFR1)を示した一方で、他の事象は中立であるかまたは実際には開花が遅れていた。さらに、いくつかのLe.SFTトランスジェニック事象が様々な程度で結節あたりのさやの平均を増加させていた一方で、2つの事象は結節あたりのさやの平均数に関して中立的であった。興味深いことに、2つの事象(事象5及び6)は、開花に遅延があったにも関わらず、結節あたりのさや数の平均が最大であった。
【0313】
pAt.Erectaプロモーターの制御下でGm.FT5a導入遺伝子を発現する植物からさらなる表現型データを収集した(表14)。
【表14】
【0314】
Gm.FT5a導入遺伝子を発現するトランスジェニックダイズ植物は、野生型対照植物に比べて有意に早く開花し、結節あたりのさやの数が増加していた(Gm.FT2a導入遺伝子を発現する植物と同様に)。実際、Gm.FT5a導入遺伝子を発現するダイズ植物は、結節あたりのさや数の増加、植物あたりの種子数の減少とともに、開花までの日数(DOFR1)の減少、枝数(BRPP)の減少、植物あたりの結節(NDPL)の減少、枝上の結節(NDBR)の減少、植物あたりのさや数(PDPP)の減少、及び枝上のさや(PODBR)の減少などのいくつかの表現型を有していた(Gm.FT2aトランスジェニック植物と同様に)(表14)。全体として、Gm.FT5a導入遺伝子を発現する植物は、野生型対照植物に比べて、より低い草高及びより少ない分枝を有していたが、結節あたりの(特に主茎上の)さやをより多く有していた。
【0315】
いかなる理論にも拘泥するものではないが、これらのデータは、(i)FT発現のレベル及びタイミング、(ii)FT発現の組織特異性、及び(iii)発現している特定のFTタンパク質の相対活性及び標的特異性に依存した関連する表現型(例えば、早期開花、結節あたりのさやの増加、及び植物アーキテクチャーの変化)の程度または範囲で用量依存的に作用するFT過剰発現のモデルを裏付けるものである。例えば、ダイズにおける他の植物種由来のFTタンパク質オルソログの発現は、ダイズにおける内在性FTタンパク質(Gm.FT2a)の過剰発現に比べて、より減弱化された効果を生じる場合があり、これはダイズにおいてより低い活性を有する非天然FTタンパク質相同体に起因し得る。しかしながら、いくつかの天然FTタンパク質の発現は、それらがそれらの天然の状態または状況において異なるまたは特殊な役割を有する場合、有意な表現型効果を生じない場合がある。異なるFTタンパク質はまた、異なる組織標的及び受容体に作用する場合があり、したがって、様々な植物アーキテクチャーならびに開花形質及び表現型に対して異なる効果を及ぼし得る。
【0316】
特定のFT相同体の活性レベルにかかわらず、変化した生殖表現型及び植物アーキテクチャー表現型は、FT発現のタイミング及び位置と相関するように思われる。FT導入遺伝子の栄養期における発現は、早期開花を誘導し、及び/または植物の節あたりの花芽分裂組織、花、さやなどの数を増加させるために必要であり得る。実際、栄養生長期における分裂組織のFT発現は、FT導入遺伝子の適切な投与により、結節あたりの花、さや、及び/または種子の数の増加をもたらす植物の生殖変化を引き起こすことが示されている。対照的に、葉優先型プロモーターの制御下でのGm.FT2a導入遺伝子の発現は、野生型植物に比べて、表現型の変化があったとしても非常にわずかしか生じなかった。これらのデータは、FT発現のタイミング及び組織特異性(または組織優先性)の両方が、トランスジェニック植物における生殖及び/または収量に関連する表現型の変化に影響を与える重要な要因であることを示している。
【0317】
本データは、同じpErectaプロモーターを用いて発現させているにもかかわらず、異なるFTタンパク質が異なる活性レベル及び/または標的特異性を有する可能性があることを示唆している。Gm.FT2a、Zm.ZCN8、Nt.FT様、及びGm.FT5aを発現するいくつかの構築物はそれぞれ、結節あたりのさや数の増加に加えて早期の開花及び生長停止を引き起こしたが、Gm.FT2b及びLe.SFTを発現する他の構築物は開花に対する異なる相関効果を有していた。Gm.FT2bの発現は、植物の早期開花及び生長停止を引き起こしたが、結節あたりのさや数の有意な増加はなかった。一方、Le.SFT発現は、開花を遅延させたにもかかわらず、結節あたりのさや数の増加及び早期生長停止を示した。興味深いことに、トランスジェニックFT植物における結節あたりのさやの数の増加は、生殖期間(PDR1R7)の延長と相関せず、また上記のように早期開花(DOFR1)と必ずしも一致しなかった。これらのデータは、分裂組織におけるFTタンパク質の栄養期における発現に応じた生殖変化が、1つ以上の独立したメカニズムまたは経路を介して機能している可能性があることを示唆している。トランスジェニックFT植物における結節あたりのさやの数の増加は、各結節における栄養芽分裂組織から誘導される花序分裂組織及び花芽分裂組織の数に依存する可能性があり、それは開花時期及び/または生殖期間とは無関係に生じ得る。しかしながら、上記のように、生殖期間は必ずしも開花期間と相関しない場合がある。
【0318】
実施例7.追加の栄養期分裂組織プロモーターの同定
栄養期の分裂組織優先型プロモーターpAt.Erectaの制御下でのGm.FT2aの発現による表現型効果が観察されたことから、他の栄養期、分裂組織優先型(または分裂組織特異的)プロモーターを用いて、FTタンパク質の発現を駆動し、植物における生殖または収量関連形質または表現型、例えば、結節あたり(及び/または植物または主茎あたり)のさやの数の増加などを引き起こしてもよい。pAt.Erectaプロモーターの特徴的な発現パターン(実施例2参照)を用いて、他の栄養期、分裂組織優先型(または分裂組織特異的)プロモーターをダイズ、ジャガイモ、及びArabidopsisから同定した。2つのバイオインフォマティクスアプローチ:BAR Espressolog及びExpression Anglerを利用し、例えば、Arabidopsis、ダイズ、Medicago、ジャガイモ及びトマトを含む、pAt.Erectaと同様の発現特性を有する他の双子葉植物種由来の候補遺伝子を同定した。例えば、BAR expressolog identification:expression profile similarity ranking of homologous genes in plant species,”Plant J [71](6):1038-50(2012);及びToufighi,K et al.,“The Botany Array Resource:e-Northerns,Expression Angling,and promoter analyses,”Plant J [43](1):153-163(2005)参照。したがって、これらの遺伝子由来のプロモーター配列を、本発明の実施形態によるFT導入遺伝子の発現における使用のために提案する。
【0319】
この分析によって同定された遺伝子プロモーターの例として、以下のもの:Glyma10g38730(配列番号33)、Glyma09g27950(配列番号34)、Glyma06g05900(配列番号35)、及びGlyma17g34380(配列番号36)を含むダイズ由来の4つの受容体様キナーゼ(RLK)遺伝子が挙げられる。さらなる例として、ジャガイモ由来の受容体様キナーゼ(RLK)遺伝子プロモーターPGSC0003DMP400032802(配列番号37)及びPGSC0003DMP400054040(配列番号38)が挙げられる。これらのRLK遺伝子は、Arabidopsis及び他の種由来のErecta及びErecta様遺伝子に構造的及び/または機能的に関連している可能性があり、なぜならそれらはRLK遺伝子でもあるからである。Arabidopsis遺伝子由来の他の栄養期、分裂組織優先型プロモーターとして以下のもの:At.MYB17(At.LMI2;At3g61250)(配列番号41)、キネシン様遺伝子(At5g55520)(配列番号42)、At.REM17(配列番号43)またはAt.REM19を含むAP2/B3様遺伝子、ならびにErecta様1及び2遺伝子At.Erl1(配列番号44)及びAt.Erl2(配列番号45)が挙げられる。これらのプロモーター及び類似の機能的配列のそれぞれは、FT遺伝子に作動可能に連結し、少なくとも栄養生長期(複数可)の間、植物の1つ以上の分裂組織(複数可)においてFT遺伝子の異所性発現を引き起こし得る。
【0320】
At.MYB17(At.LMI2)遺伝子に関しては、その内容及び開示の全体を参照として本明細書に援用するPastore,JL et al.,“LATE MERISTEM IDENTITY 2 acts together with LEAFY to activate APETALA1,”Development [138]:3189-3198(2011)参照。キネシン様遺伝子に関しては、その内容及び開示の全体を参照として本明細書に援用するFleury,D et al.,“The Arabidopsis thaliana Homolog of Yeast BRE1 Has a Function in Cell Cycle Regulation during Early Leaf and Root Growth,”Plant Cell,[19](2):417-432(2007)参照。REM17及びREM19 Arabidopsis遺伝子に関しては、その内容及び開示の全体を参照として本明細書に援用するMantegazza,O et al.,“Analysis of the Arabidopsis REM gene family predicts functions during flower development,”Ann Bot [114](7):1507-1515(2014)参照。さらに、At.Erl2遺伝子については、その内容及び開示の全体を参照として本明細書に援用する“Special Issue: Receptor-like Kinases,”JIPB [55](12):1181-1286 (2013)、及び特に、Shpak,E.,“Diverse Roles of ERECTA Family Genes in Plant Development,”JIPB [55](12):1251-1263(2013)参照。
【0321】
実施例8:pAt.Erl1プロモーターの制御下でのFlowering LocusT遺伝子、Gm.FT2aの発現は、ダイズの開花時間及び結節あたりのさやを変化させる
栄養期、分裂組織優先型pAt.Erl1プロモーター(配列番号44)の制御下でGm.FT2aを含有する形質転換ベクターを構築し、これを用いてAgrobacteriumを介した形質転換によりダイズを形質転換した。これらの事象から生成したトランスジェニック植物を、それらの表現型について、14~14.5時間の自然昼光期間を用いて温室内で特徴決定した。各pAt.Erl1::Gm.FT2a構築物について、温室内で6つの事象を試験した(1事象あたり6植物)。野生型(WT)対照植物についても、6つの植物を試験し、平均した。1事象あたり12の複製圃場プロットで4つの事象を圃場試験し、同じ圃場での野生型対照と比較した。これらの植物の表現型の特徴決定のために、以下のマトリックスを収集し、温室内(表15参照)及び圃場内(表16参照)で生長させた各事象(及び野生型植物)の平均として表した。形質ごとのすべての事象の平均を示す列をさらに提供する。
【表15】
【表16】
【0322】
pAt.Erl1::Gm.FT2a構築物を発現するトランスジェニックダイズ植物は野生型対照植物より早く開花し、結節あたりのさやの数が増加した(pAt.Erectaプロモーターの制御下でGm.FT2a導入遺伝子を発現する植物と同様に)。実際、pAt.Erl1::Gm.FT2aを発現するダイズ植物は、pAt.Erecta::Gm.FT2aトランスジェニック植物と同様のいくつかの表現型を有し、これには、野生型対照植物に対する、結節あたりのさや数の増加とともに、開花までの日数(DOFR1)の減少、R7までの日数(DOR7)の減少、植物あたりの枝数(BRPP)の減少、植物あたりの節(NDPL)の減少、植物あたりのさや数(PDPP)の減少が含まれる(表15)。しかしながら、pAt.Erecta::Gm.FT2a植物で観察されたいくつかの表現型、例えば、主茎上のさやの数(PODMS)、枝上のさやの数(PODBR)、及び1000個の種子の重量(SW1000)は、pAt.Erl1::Gm.FT2aを発現するトランスジェニック植物ではあまり明白ではなかった。2年目の圃場試験での早期の結果もまた、早期開花を示し、同様の生殖形質を示している。推測されるように、これらの形質測定値は、植物あたりのさやについてはPDPPまたはPODPP、主茎上のさやについてはPDMSまたはPODMS、枝上のさやについてはPDBRまたはPODBR、枝上のさやの合計についてはTPBRなど、異なって省略される場合がある。
【0323】
GUS染色によって測定された、ダイズにおけるArabidopsis Erecta様1プロモーター(pAt.Erl1)の発現パターンは、上記のダイズにおけるpAt.Erectaの発現パターンよりも制限されている。pAt.Erl1は、栄養腋芽分裂組織において、及び腋生組織由来の早期花芽分裂組織において、GUS発現を駆動する。しかしながら、GUS染色は、発育中の植物の他の分裂組織と区別することができる任意の段階の茎頂分裂組織において観察されない。pAt.Erl1プロモーターの制御下にあるGUSレポーターの発現は、任意の段階の葉組織、茎または根において観察されない(データは示さず)。pAt.ErectaまたはpAt.Erl1プロモーターのいずれかの制御下でのFT発現が早期開花及び結節あたりのさやの増加を誘導したと仮定すると、植物の分裂組織(複数可)またはその近傍でのFT導入遺伝子の栄養期発現は、通常、これらの生殖及び収量関連表現型または形質の誘導に十分であり得る。
【0324】
実施例9.サプレッションのためのGm.FT2aを標的とするmiRNAの発現
RNAサプレッションによる生殖組織または花芽組織における栄養期プロモーターの制御下でのGm.FT2a導入遺伝子の発現レベルの低下は、ダイズ植物における生殖期間を延長し得ると仮定される。内在性Gm.FT2aのサプレッションがダイズ植物の生殖表現型または形態学的表現型に影響を及ぼすかどうかを試験するために、後期栄養期及び/または生殖期プロモーターpAt.AP1プロモーター(配列番号49)またはpSl.MADS-RINプロモーター(配列番号72)のいずれかの制御下で、内在性Gm.FT2a発現を標的とするmiRNA分子をコードする転写可能なDNA配列(miRNA-FT2a;配列番号67)を含む形質転換ベクターを構築し、これを用いてAgrobacteriumを介した形質転換によりダイズ植物を形質転換した。これらの事象から生成されたトランスジェニック植物を、14~14.5時間の昼光の光周期条件下、温室内で特徴決定した。1事象あたり6つの植物を試験し、平均化して、野生型(WT)対照植物と比較した。温室内のpAP1::miRNA-FT及び野生型植物から収集した平均表現型データを表17に示す。表18は、温室内のトランスジェニックpMADS-RIN::miRNA-FT及び野生型植物から収集し、各事象の平均として、及び事象と野生型植物にわたっての平均として表した表現型観察結果を示す。
【表17】
【0325】
温室条件下でのpAP1::miRNA-FT2a構築物を発現する植物における開花のタイミング及び開始は、野生型対照植物とほぼ同じであった。pAP1::miRNA-FT2aまたはpMADS-RIN::miRNA-FT2a構築物を発現するトランスジェニック植物は、圃場条件下でも生長させた。pAP1::miRNA-FT2a構築物の4つの異なる事象を含む6つの植物を試験し、平均化して野生型(WT)対照植物と比較した。圃場実験の場合、他に示されない限り、測定は収穫時(R8期)に行った。SDARR8は、R8期における面積あたり(すなわち平方フィートあたり)の種子である。圃場栽培植物から収集した平均表現型データを、pAP1::miRNA-FT2a構築物については表18に、及びpMADS-RIN::miRNA-FT2a構築物については表20に示す。
【表18】
【0326】
圃場条件下では、トランスジェニックpAP1::miRNA-FT2a構築物で形質転換したダイズ植物は、この場合も、野生型対照植物とほぼ同じ開花及び生殖形質を有していたが、トランスジェニックpAP1::miRNA-FT2a植物は、R8期での野生型対照植物に比べて、わずかに少ないさや(PDPPR8、PDMSR8、TPBR8、さや/結節)を有していた可能性がある。
【0327】
実施例10.pAP1プロモーターによって駆動される人工miRNAによるGm.FT2a発現の改変は、温室条件下での生殖表現型を変化させる
トランスジェニックGm.FT2aの初期異所性発現後の後期栄養及び/または生殖組織におけるGm.FT2aのサプレッションが、ダイズ植物における生殖期間を延ばし、及び/または早期生長停止に対抗し得ることを示すために、栄養期分裂組織優先型pAt.Erectaプロモーター(配列番号31)の制御下、ApxまたはLhcb2ターミネーター領域(T-Apx及びT-Lhcb2)のいずれかを有するGm.FT2a、ならびにサプレッションのためにGm.FT2aを標的とし、pAt.AP1プロモーター(配列番号:49)の制御下、GAPDHターミネーター領域を有する人工miRNAをコードする転写可能なDNA配列(配列番号67)を含む形質転換ベクター(各構築物をpAt.Erecta::Gm.FT2a|pAP1::miRNA-FT2aと命名する)を構築し、これを用いてAgrobacteriumを介した形質転換によりダイズを形質転換した。これらの事象から生成されたトランスジェニック植物を、14~14.5時間の昼光の光周期を用いて温室内で特徴決定した。各pAt.Erecta::Gm.FT2a|pAP1::miRNA-FT2a構築物について、6つの事象を試験し(1事象あたり6植物)、データを平均化した。各構築物についての平均データは、すべての事象にわたっても平均化した。6つの野生型(WT)対照植物もまた試験し、対照として平均化した。6つの事象について収集した表現型データ、ならびに野生型及び2つの異なるターミネーター領域(T-Apx及びT-Lhcb2)を有するpAt.Erecta::Gm.FT2a|pAP1::miRNA-FT2a植物の平均値を表19及び表20に示す。
【表19】
【表20】
【0328】
この温室実験では、pAt.Erecta::Gm.FT2a|pAP1::miRNA-FT2a構築物のいずれかを含むトランスジェニックダイズ植物は、野生型対照植物に比べて、開花開始(DOFR1)が早く、結節あたり(及び主茎あたり)のさや数(さや/結節、PODMS)が増加していた。pAt.Erecta::Gm.FT2a|pAP1::miRNA-FT2aの組み合わせ構築物を有するトランスジェニック植物は、miRNAサプレッションカセットを含まないpAt.Erecta::Gm.FT2a導入遺伝子のみを有するダイズ植物に比べて、草高及び分枝の増加、ならびに植物あたり(及び主茎あたり)の結節数の増加、及び植物あたり(及び主茎あたり)の結節の増加を有していた(例えば表2参照)。図12は、pAt.Erecta::Gm.FT2aまたはpAt.Erecta::Gm.FT2a/pAP1::miRNA-FT2aのいずれかについてホモ接合性の植物の全体画像を示しており、Gm.FT2a導入遺伝子のさらなるサプレッションが、pAt.Erecta::Gm.FT2a導入遺伝子単独で観察される低い草高及び分枝の減少を含む早期生長停止表現型の緩和に有効であることを示している。
【0329】
このデータは、Gm.FT2a導入遺伝子の早期異所性投与後の後期栄養及び/または生殖組織におけるGm.FT2aのサプレッションが、Gm.FT2a導入遺伝子単独を有する植物で観察される早期生長停止表現型を緩和する一方で、早期開花の誘発及び結節あたりのさや数の増加の維持に有効であることを示している。興味深いことに、これらの植物の結節あたりのさやの数の増加は、生殖期間の明白な増加を伴わずに観察された。
【0330】
実施例11.pAP1プロモーターにより駆動される人工miRNAによるGm.FT2a発現の改変は、圃場条件下での生殖表現型を変化させる
実施例10に記載のpAt.Erecta::Gm.FT2a::T-Apx|pAP1::miRNA-FT2a::T-GAPDH構築物の3つまたは4つの形質転換事象(年に応じて)を2年連続して圃場条件下で栽培及び試験した。各事象及び野生型対照について、表現型データを収集して平均化した(一貫性のために事象を番号付けしている)。表21及び22は、これらの植物から収集した表現型データの平均、ならびに3つの事象にわたる平均を示す。
【0331】
実施例10に記載したpAt.Erecta::Gm.FT2a::T-Lhbc2|pAP1::miRNA-FT::T-GAPDH構築物の4つの形質転換事象を、圃場条件下で2年間連続して栽培し、試験した。各事象及び野生型対照について、複数の植物から表現型データを収集し、平均化した。表23及び24に、これらの植物から収集した表現型データの平均、ならびに4つの事象にわたる平均を示す。
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【0332】
pAt.Erecta::Gm.FT2a|pAP1::miRNA-FT2a構築物のいずれか(いずれかのターミネーターを含む)を有するダイズ植物は、圃場条件下で生長させた場合、野生型対照植物に比べて、より早く開花し(DOFR1)、R1期とR8期の間の生殖期間(日)(PDR1R8)がわずかに延長され、R8期における結節あたり(及び植物あたり)のさや数(PDPPR8、さや/結節)が増加していた。しかしながら、pAt.Erecta::Gm.FT2a|pAP1::miRNA-FT2a::T-GAPDH構築物を有するダイズ植物もまた、野生型対照植物に比べて分枝(BRPPR8)が減少していた。pAt.Erecta::Gm.FT2a|pAP1::miRNA-FT2a::T-GAPDH構築物を有する植物の3年目の圃場試験の早期の結果もまた、早期開花を示しており、このことは同様の生殖形質であることを示している。
【0333】
これらの圃場試験の結果は、異なるターミネーターを有するpAt.Erecta::Gm.FT2a|pAP1::miRNA-FT2a::T-GAPDH構築物の両方が、圃場条件下で収量形質を高め、早期生長停止表現型を緩和することができることを示しており(例えば、上記実施例3参照)、これは実施例10で示した温室データと一致する。このデータはさらに、Gm.FT2a導入遺伝子のサプレッションが、Gm.FT2a導入遺伝子単独の発現に比べて、草高、植物あたりの(または主茎あたりの)分枝及び結節数の減少を含む、早期生長停止及び植物アーキテクチャー表現型の軽減または緩和に役立つというモデルを裏付けるものである。
【0334】
実施例12.pSl.MADS5プロモーターによって駆動される人工miRNAによるGm.FT2a発現の改変は、温室条件下での生殖表現型を変化させる
pAP1プロモーターに加えて、他の生殖期プロモーターを用いて、サプレッションのためにGm.FT2a導入遺伝子を標的とするmiRNA分子を発現させた。一組の実験において、pAt.Erectaプロモーターの制御下にあるGm.FT2a、及びGm.FT2aを標的とする人工miRNAをコードし、Solanum lycopersicum MADS5プロモーター(pSl.MADS5;配列番号71)の制御下にある転写可能なDNA配列を含む形質転換ベクターを構築し、これを用いてAgrobacteriumを介した形質転換によりダイズを形質転換した。これらの事象から生成されたトランスジェニック植物を、それらの温室内での表現型について、14~14.5時間の昼光の光周期を用いて温室内で特徴決定した。pAt.Erecta::Gm.FT2a::T-Lhcb2|pSl.MADS5::miRNA-FT2a::T-GAPDH構築物については、6つの事象を試験した(1事象あたり6植物)。野生型(WT)対照植物についても6つの植物を試験し、平均化した。
【0335】
表25は、各事象及び野生型植物についての表現型データの平均、ならびに試験した全事象にわたる各形質の平均を示す。(“--”は未収集データを意味する。)
【表25】
【0336】
前述の実施例と同様に、生殖組織において発現させた人工miRNAを用いてGm.FT2aの異所性発現を制限することにより、野生型対照植物に比べてより早く開花する(DOFR1)ダイズ植物が得られた。しかしながら、pAt.Erecta::Gm.FT2a::T-Lhcb2|pSl.MADS5::miRNA-FT2a::T-GAPDH構築物を含むトランスジェニックダイズ植物は、野生型対照植物に比べて、植物あたりのさや(PDPP)の減少、植物あたりの結節(NDPL)の減少、枝数(BRPP)の減少、R8期における植物あたりの種子(SDPP8)の減少、R1期とR7期の間の生殖期間(PDR1R7)の減少を有していたが、これらのトランスジェニック植物は、野生型対照植物に比べて、結節あたりの(及び主茎あたりの)さや数(さや/結節、PODMS)をより多く有し、また、pAt.Erecta::Gm.FT2a発現単独に比べて改善された植物アーキテクチャー表現型を有していた(例えば表2参照)。
【0337】
このデータは、Gm.FT2a導入遺伝子単独を用いる場合の早期生長停止表現型の軽減または緩和にGm.FT2a導入遺伝子のサプレッションが役立つというモデルをさらに裏付けるものであるが、pMADS5プロモーターを用いたmiRNA-FT2aの発現は、早期生長停止表現型の緩和においてpAP1プロモーターほど効果的ではない可能性がある。
【0338】
実施例13.pSl.MADS5プロモーターにより駆動される人工miRNAによるGm.FT2a発現の改変は、圃場における生殖表現型を変化させる
実施例12に記載したpAt.Erecta::Gm.FT2a|pSl.MADS5::miRNA-FT2a構築物の3つまたは4つの事象を含むトランスジェニック植物を、圃場条件下で2年間連続して栽培し、試験した。各事象及び野生型対照について6つの植物でデータを収集した(一貫性のために事象を番号付けしている)。表26及び27は、各事象及び野生型対照から収集した表現型データの平均、ならびに全事象にわたる各形質の平均を示す。
【表26】
【表27】
【0339】
pAt.Erecta::Gm.FT2a|pSl.MADS5::miRNA-FT2a構築物を有するダイズ植物は、圃場条件下で、野生型対照植物に比べて、より早く開花し(DOFR1)、R1期とR8期の間の生殖期間(日)(PDR1R8)がわずかに延長され、R8期における結節あたりのさや数(さや/結節)が増加していた。しかしながら、pAt.Erecta::Gm.FT2a|pSl.MADS5::miRNA-FT2a構築物を有するダイズ植物もまた、野生型対照植物に比べて分枝(BRPPR8)が減少していた。
【0340】
実施例14.pSl.NODプロモーターによって駆動される人工miRNAによるGm.FT2a発現の改変は、温室条件下での生殖表現型を変化させる
miRNA-FT2aの発現を制御する第3のプロモーター(pSl.NOD)も温室条件下で試験した。pAt.Erectaプロモーター(配列番号31)の制御下にあるGm.FT2a、及びSolanum lycopersicum NODプロモーター(pSl.NOD;配列番号70)の制御下にあるmiRNA-FT2aをコードする転写可能なDNA配列(配列番号67)を含む形質転換ベクターを構築し、これを用いてAgrobacteriumを介した形質転換によりダイズを形質転換した。このpAt.Erecta::Gm.FT2a|pSl.NOD::miRNA-FT2a構築物の6つの事象を含むトランスジェニック植物(1事象あたり6つの植物)を、14~14.5時間の昼光の光周期を用いて温室内で生長させた。各事象及び野生型(WT)対照について6つの植物からデータを収集した。表28は、各事象及び野生型対照から収集した表現型データの平均、ならびに全事象にわたる各形質の平均を示す。
【表28】
【0341】
pAt.Erecta::Gm.FT2a|pSl.NOD::miRNA-FT2a構築物を含むダイズ植物は、野生型対照植物に比べてより早く開花し(DOFR1)、野生型対照植物に比べて温室内で、生殖期間(PDR1R7)がより短く、植物あたりの枝(BRPP)がより少なく、植物あたりの結節(NDPL)がより少なく、植物あたりのさや(PDPP)がより少なかった。しかしながら、これらのトランスジェニック植物は、野生型植物に比べて、結節あたり(及び主茎あたり)のさや(さや/結節、PODMS)をより多数有しており、pAt.Erecta::Gm.FT2a発現単独に比べて改善された植物アーキテクチャー表現型を有していた(例えば、表2参照)。
【0342】
このデータは、Gm.FT2a導入遺伝子のサプレッションが早期生長停止表現型の軽減または緩和に役立つというモデルをさらに裏付けるものであるが、これらのトランスジェニック植物が野生型対照植物に比べて結節あたりの(及び主茎あたりの)さや(さや/結節、PODMS)をより多数有していたという事実にもかかわらず、pSl.NODプロモーター下でのmiRNA-FT2aの発現は、早期生長停止表現型の緩和においてpAP1プロモーターほど効果的ではない可能性がある。
【0343】
実施例15.異種miR172標的部位を用いた異所性Gm.FT2a発現の改変は温室条件下での生殖表現型を変化させる
Gm.FT2aをサプレッションするための代替的アプローチとして、Gm.FT2a導入遺伝子及びダイズの内在性miRNAによって認識される遺伝子改変されたmiRNA標的もしくは結合部位(またはセンサー)を含み、Gm.FT2a導入遺伝子の異所性発現を減弱及び/または改良するように機能する構築物を作製した。ApxまたはLhcb2ターミネーター領域(T-ApxまたはT-Lhcb2)のいずれかを有するpAt.Erectaプロモーター(配列番号31)の制御下にあるGm.FT2a導入遺伝子を含み、さらにトランスジェニックGm.FT2a mRNA中のmiR172 miRNA標的部位(配列番号99)をコードする配列(配列番号98)を含む形質転換ベクターを構築し、これを用いてAgrobacteriumを介した形質転換によりダイズを形質転換した。これらの事象から生成されたトランスジェニック植物を、それらの表現型について、14~14.5時間の昼光の光周期を用いて温室内で特徴決定した。miR172結合部位を有する2つのpAt.Erecta::Gm.FT2a構築物のそれぞれについて、6つの事象を試験した(1事象あたり6植物)。野生型(WT)対照植物についても、6つの植物を試験し、平均化した。表29及び30は、2つの構築物のそれぞれについて各事象及び野生型対照から収集した表現型データの平均、ならびに試験した全事象にわたる各形質の平均を示す。
【表29】
【表30】
【0344】
2つのpAt.Erecta::Gm.FT2a/miR172標的部位構築物のいずれかを含むダイズ植物は、野生型対照植物に比べて、より早く開花した(DOFR1)が、植物あたりの分枝(BRPP)が減少し、植物あたりのさや及び結節(PDPP、NDPL)が少なかった。しかしながら、これらのトランスジェニック植物は、野生型対照植物に比べて結節あたりの(及び主茎あたりの)さや(さや/結節、PODMS)をより多数有しており、pAt.Erecta::Gm.FT2a発現単独に比べて改善された植物アーキテクチャー表現型を有していた(表2参照)。
【0345】
このデータは、内在性miR172の標的部位を介したGm.FT2a導入遺伝子のサプレッションが、Gm.FT2a導入遺伝子の発現で観察される早期生長停止の軽減または緩和に有効であるという仮説を裏付けるものであるが、miR172標的部位を含むGm.FT2aトランスジェニック植物が野生型対照植物に比べて結節あたりの(及び主茎あたりの)さや(さや/結節、PODMS)をより多数有し、Gm.FT2a発現単独に比べて植物アーキテクチャー表現型が改善されたという事実にもかかわらず、改変されたmiR172標的部位を介したGm.FT2a導入遺伝子のサプレッションは、早期生長停止表現型の緩和において、pAP1プロモーターなどの後期栄養期及び/または生殖期プロモーターを用いてGm.FT2aをサプレッションするための人工miRNAの発現ほど効果的ではない可能性がある(少なくともいくつかの場合では)。図13は、pAt.Erecta::Gm.FT2aまたはpAt.Erecta::Gm.FT2a/miR172標的部位のいずれかについてホモ接合性の植物の全画像を示しており、内在性miR172標的部位を介したさらなるサプレッションが、低い草高及び分枝の減少を含む、pAt.Erecta::Gm.FT2a導入遺伝子単独で観察される早期生長停止表現型の緩和に有効であることを示している。
【0346】
実施例16.miR172標的部位を用いた異所性Gm.FT2a発現の改変は圃場条件下での生殖表現型を変化させる
実施例15に記載のpAt.Erecta::Gm.FT2a::T-Apx/miR172標的部位構築物の4つの事象を含むトランスジェニック植物を、圃場条件下で生長させ、試験した。表29の事象1~4は、表31の事象1~4にそれぞれ対応する。各事象及び野生型対照について6つの植物でデータを収集した。表31は、各事象及び野生型対照から収集した表現型データの平均、ならびに全事象にわたる各形質の平均を示す。
【表31】
【0347】
温室データと同様に、pAt.Erecta::Gm.FT2a::T-Apx/miR172標的部位構築物を有するダイズ植物は、野生型対照植物に比べて、圃場条件下で、より早く開花し(DOFR1)、R8期における結節あたりの(及び主茎あたりの)さや(PDPPR8、さや/結節)数が増加していた。しかしながら、pAt.Erecta::Gm.FT2a::T-Apx/miR172標的部位構築物を有するこれらのダイズ植物はまた、野生型対照植物に比べて、分枝(BRPPR8)が減少し、植物あたりのさや及び結節(PDPPR8、NDPLR8)が減少していた。
【0348】
実施例17.短縮型pAt.Erectaプロモーター及び異種miR172標的部位を用いた異所性Gm.FT2a発現の改変は温室条件下での生殖表現型を変化させる
短縮型pAt.Erectaプロモーターを用いてGm.FT2a導入遺伝子の発現レベルを減弱させ、場合により、miR172 miRNA標的部位とカップリングさせてGm.FT2a導入遺伝子の異所性発現をさらに減弱させ、及び/または改良した。Lhcb2ターミネーター領域(T-Lhcb2)を有する短縮型pAt.Erectaプロモーター(配列番号32)の制御下のGm.FT2a導入遺伝子を含み、さらにmiR172標的部位(配列番号99)をコードする配列(配列番号98)を含む形質転換ベクターを構築し、これを用いてAgrobacteriumを介した形質転換によりダイズ植物を形質転換した。これらの事象から生成されたトランスジェニック植物を、それらの表現型について、14~14.5時間の昼光の光周期を用いて温室内で特徴決定した。miR172標的部位を有するpAt.Erecta_truncated::Gm.FT2a構築物について、6つの事象を試験した(1事象あたり6植物)。野生型(WT)対照植物についても、6つの植物を試験し、平均化した。表32は、各事象及び野生型対照から収集した表現型データの平均、ならびに試験した事象にわたる各形質についての平均を示す。
【表32】
【0349】
pAt.Erecta_truncated::Gm.FT2a/miR172標的部位構築物を含むダイズ植物は、野生型対照植物に比べて、より早く開花した(DOFR1)が、分枝(BRPP)がわずかに減少し、植物あたりの結節(NDPL)が減少していた。しかしながら、これらのトランスジェニック植物は、野生型対照植物に比べて結節あたりの(及び主茎あたりの)さや(さや/結節、PODMS)をより多数有し、pAt.Erecta::Gm.FT2a発現単独に比べて改善された植物アーキテクチャー表現型を有していた(例えば、表2参照)。
【0350】
このデータは、内在性miR172の標的部位を有するGm.FT2a導入遺伝子のサプレッションが、Gm.FT2a導入遺伝子の発現で観察される早期生長停止の軽減または緩和に有効であり、及び/または短縮型pAt.Erectaプロモーターを有するGm.FT2a導入遺伝子の発現が、Gm.FT2a発現単独での早期生長停止表現型をさらに緩和し得るという仮説をさらに裏付けるものである。
【0351】
実施例18.短縮型pAt.Erectaプロモーター及びmiR172標的部位を用いた異所性Gm.FT2a発現の改変は圃場での生殖表現型を変化させる
実施例18に記載したpAt.Erecta_truncated::Gm.FT2a::T-Lhbc2/miR172標的部位構築物の3つの事象についてのトランスジェニック植物を、圃場条件下で生長させ、試験した。表32の事象1、2、及び5は、それぞれ表33の事象1~3に対応する。各事象及び野生型対照について6つの植物でデータを収集した。表33は、各事象及び野生型対照についての表現型データの平均、ならびに全事象にわたる各形質の平均を示す。
【表33】
【0352】
温室データと同様に、pAt.Erecta_truncated::Gm.FT2a/miR172標的部位構築物を有するダイズ植物は、野生型対照植物に比べて、圃場条件下で、より早く開花し(DOFR1)、R8期において結節あたり(及び主茎あたり)のさや数(PDMSR8、さや/結節)が増加していた。しかしながら、pAt.Erecta_truncated::Gm.FT2a/miR172標的部位構築物を有するダイズ植物はまた、野生型対照植物に比べて、分枝(BRPPR8)の減少及び植物あたりの結節(NDPLR8)の減少も有していた。
【0353】
実施例19.人工miRNAによるダイズにおける異所性Gm.FT2aならびに天然Gm.FT2a、Gm.FT5a及びGm.FT5bの発現の改変は生殖表現型を変化させる
形質転換ベクターを構築し、これを用いてAgrobacteriumを介した形質転換によりダイズ植物を形質転換したが、そのベクターは、栄養期分裂組織優先型pAt.Erectaプロモーター(配列番号31)の制御下で上記のようなGm.FT2a導入遺伝子を有し、それと共に、Lhcb2ターミネーター領域(T-Lhcb2)を、ならびにサプレッションのためにGm.FT2a(異所性及び内在性)だけでなく内在性Gm.FT5a及びGm.FT5b遺伝子も標的とする人工miRNA(配列番号102)をコードする転写可能なDNA配列を有し、そのmiRNAをコードする転写可能なDNA配列は、pAt.AP1プロモーター(配列番号49)の制御下にあり、それと共に、GAPDHターミネーター領域を有する。これらの事象から生成されたトランスジェニック植物を、14~14.5時間の昼光の光周期条件下、温室内で特徴決定した。各事象及び野生型対照について6つの植物でデータを収集した。表34は、各事象及び野生型対照から収集した表現型データの平均、ならびに全事象にわたる各形質の平均を示す。
【表34】
【0354】
R8期におけるPDNDBRR8(枝上の結節あたりのさや)及びPDNDMSR8(主茎上の結節あたりのさや)、PHTR8(R8期におけるミリメートルでの草高)、SDPDR8(R8期におけるさやあたりの種子)、及びSNUM(植物あたりの種子数)を含む、いくつかの追加の形質測定値を表34に示す。Gm.FT2a、Gm.FT5a、及びGm.FT5bの複合サプレッションとともにpAt.Erecta::Gm.FT2aカセットを発現するダイズ植物は、野生型対照植物に比べて、より早く開花し(DOFR1)、結節あたりのさや数が有意に増加していた(及び主茎上のさやが増加していた)が、分枝は減少していた。
【0355】
実施例20.pAP1プロモーターの制御下での異所性Gm.FT2aの発現はダイズの開花時間及び結節あたりのさやを変化させる
pAt.AP1プロモーターの制御下にあり、Lhcb2ターミネーター領域を有するGm.FT2aを含む形質転換ベクターを構築し、Agrobacteriumを介した形質転換によりダイズを形質転換した。これらの事象から生成されたトランスジェニック植物を、14~14.5時間の昼光の光周期を用いて温室内で特徴決定した。各事象及び野生型対照について6つの植物でデータを収集した。表35は、各事象及び野生型対照から収集した表現型データの平均、ならびに全事象にわたる各形質の平均を示す。
【表35】
【0356】
pAt.AP1::Gm.FT2a::T-Lhbc2カセットを発現するダイズ植物は、野生型対照植物に比べて、より早く開花し(DOFR1)、結節あたりのさやの数が有意に増加していた(及び主茎のさやが増加していた)が、分枝は減少していた。この構築物を用いた早期の圃場試験結果もまた、早期開花を示しており、したがって圃場条件下で生長させた植物において同様の生殖形質が観察されるであろうことを示している。
【0357】
実施例21.ダイズにおけるpSl.Nodプロモーターの制御下での異所性Gm.FT2aの発現 pSl.Nodプロモーターの制御下にあり、Lhcb2ターミネーター領域を有するGm.FT2aを含む形質転換ベクターを構築し、これを用いてAgrobacteriumを介した形質転換によりダイズを形質転換した。これらの事象から生成されたトランスジェニック植物を、14~14.5時間の昼光の光周期を用いて温室内で特徴決定した。各事象及び野生型対照について6つの植物でデータを収集した。表36は、各事象及び野生型対照から収集した表現型データの平均、ならびに全事象にわたる各形質の平均を示す。
【表36】
【0358】
これらの実験において、pSl.Nod::Gm.FT2a::T-Lhbc2植物とWT植物との間に有意な変化は観察されなかった。この構築物を用いた早期の圃場試験結果はさらに、開花の開始に変化がないことを示している。
【0359】
実施例22.ダイズにおいてpSl.MADS-RINプロモーターにより駆動される人工miRNAを用いたpAt.Erl1プロモーターの制御下でのGm.FT2aの改変
トランスジェニックGm.FT2aの初期異所性発現後の後期栄養及び/または生殖組織におけるGm.FT2aのサプレッションが、ダイズ植物における生殖期間を延長し得るという仮説を検証するために、栄養期分裂組織優先型pAt.Erl1プロモーター(配列番号44)の制御下にあり、GAPDHターミネーター領域(T-GAPDH)を有するGm.FT2aを含む形質転換ベクター、及びサプレッションのためにGm.FT2aを標的とする人工miRNA(配列番号67)をコードし、pSl.MADS-RINプロモーター(配列番号72)の制御下にあり、T-Apxターミネーター領域を有する転写可能なDNA配列を構築し、これを用いてAgrobacteriumを介した形質転換によりダイズを形質転換した。これらの事象から生成されたトランスジェニック植物を、14~14.5時間の昼光の光周期を用いて温室内で特徴決定した。各事象及び野生型対照について6つの植物でデータを収集した。表37は、各事象及び野生型対照から収集した表現型データの平均、ならびに全事象にわたる各形質の平均を示す。
【表37】
【0360】
pAt.Erl1::Gm.FT2a::T-GAPDH|pSl.MASS-RIN::miRNA-FT2aカセットを発現するダイズ植物は、野生型対照植物に比べて、わずかに早く開花し(DOFR1)、結節あたりのさや数がわずかに増加し(及び主茎上のさやがわずかに増加し)、分枝が中程度に減少していた。この構築物を用いた早期の圃場試験結果もまた、中程度に早い開花を示しており、これは圃場条件下で生長させた植物において、生殖形質における同様の中程度の変化がこの構築物を用いて観察されることを示している。
【0361】
実施例23.pAt.Erl1プロモーター及びmiR156センサーによる異所性Gm.FT2a発現の改変は開花時期を変化させる
栄養期分裂組織優先型pAt.Erl1プロモーター(配列番号44)の制御下にあり、miR156標的部位(配列番号106)及びGAPDHターミネーター領域(T-GAPDH)を有するGm.FT2aを含む形質転換ベクターを構築し、これを用いてAgrobacteriumを介した形質転換によりダイズを形質転換した。これらの事象から生成されたトランスジェニック植物を圃場で試験した。各事象及び野生型対照について6つの植物でデータを収集した。この構築物による早期の圃場試験結果は早期開花を示しており、これは圃場または温室で生長させる植物において、結節あたりのさやの増加を含む生殖形質の中程度の変化が、この構築物を用いて観察され得ることを示している。
【0362】
実施例24.短縮型pAt.Erectaプロモーターを用いた異所性Gm.FT2a発現の改変は開花時期を変化させる
より短い短縮型pAt.Erectaプロモーター(配列番号48)の制御下にあり、Lhcb2ターミネーター領域(T-Lhcb2)を有するGm.FT2aを含む形質転換ベクターを構築し、これを用いてAgrobacteriumを介した形質転換によりダイズを形質転換した。これらの事象から生成されたトランスジェニック植物を圃場で試験した。各事象及び野生型対照について6つの植物でデータを収集した。この構築物を用いた早期の圃場試験結果はわずかに早い開花の開始を示しており、これは、圃場または温室で生長させる植物において、結節あたりのさやのわずかな増加を含む、生殖形質のわずかなまたは中程度の変化がこの構築物を用いて観察され得ることを示している。したがって、このより最小化された短縮型pAt.Erectaプロモーターを用いて、より弱毒化された生殖表現型及び早期生長停止効果の緩和を達成し得る(実施例3及び17を比較されたい)。
【0363】
本開示を詳細に説明してきたが、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、修正、改変、及び均等な実施形態が可能であることは明らかであろう。さらに、本開示における全ての実施例は、非限定的な例として提供されることを理解されたい。
図1A
図1B
図1C-1】
図1C-2】
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2023011870000001.app
【外国語明細書】