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特開2023-118712判定システム、判定方法、判定装置及び判定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118712
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】判定システム、判定方法、判定装置及び判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20230818BHJP
   A61G 7/05 20060101ALI20230818BHJP
   G16H 10/00 20180101ALI20230818BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
A61G12/00 B
A61G7/05
G16H10/00
A61B5/00 102A
A61B5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093094
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2022578846の分割
【原出願日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2021154639
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】白坂 康之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 哲裕
(72)【発明者】
【氏名】葛山 裕太
(72)【発明者】
【氏名】廣野 優李
(72)【発明者】
【氏名】竹内 壯一郎
(57)【要約】
【課題】対象者が起き上がり動作を開始したことを報知することが可能な判定システム、判定装置、判定方法及び判定プログラムを提供する。
【解決手段】検出装置は、対象者に基づき発生する波動を検出し、検出した波動に基づく電気信号を出力する。判定装置2は、検出装置の検出に基づく電気信号に係る信号値について、所定の上限基準値以上又は下限基準値以下の状態の時間が所定の時間基準値を超える状態判定条件を充足するか否かを判定する。判定装置2は、状態判定条件を充足すると判定した場合、対象者が臥位状態から座位状態へ遷移する起き上がり動作を開始したと判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者に基づき発生する波動を検出し、検出した波動に基づく電気信号を出力する検出部と、
前記検出部が出力した電気信号に係る信号値について、所定の上限基準値以上又は下限基準値以下の状態の時間が所定の時間基準値を超える状態判定条件を充足する場合に、対象者が起き上がり動作を開始したと判定する判定部と
を備えることを特徴とする判定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の判定システムであって、
前記判定部は、対象者の体位が、臥位であると判定している状態から、前記状態判定条件を充足した場合に、対象者が臥位から座位へ遷移する起き上がり動作を開始したと判定する
ことを特徴とする判定システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の判定システムであって、
前記信号値は、前記検出部が出力した電気信号の波形の形状を維持した信号波形に係る値である
ことを特徴とする判定システム。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の判定システムであって、
前記信号値は、前記検出部が出力した電気信号からハムノイズを除去した値である
ことを特徴とする判定システム。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の判定システムであって、
前記信号値は、前記検出部が出力した電気信号から4Hz以下の周波数帯を通過させて得られた信号波形に係る値である
ことを特徴とする判定システム。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の判定システムであって、
前記信号値は、前記検出部が出力した電気信号に基づいて、5sec 以下の期間で移動平均をとった値である
ことを特徴とする判定システム。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載の判定システムであって、
前記検出部が出力した電気信号は、アナログ電気信号であり、
前記信号値は、前記アナログ電気信号から変換されたデジタル電気信号に係る値である
ことを特徴とする判定システム。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の判定システムであって、
前記検出部は、
シート状に形成された圧電センサを含む
ことを特徴とする判定システム。
【請求項9】
検出部が、対象者に基づき発生する波動を検出して、検出した波動に基づく電気信号を出力し、
前記検出部が出力した電気信号に係る信号値について、所定の上限基準値以上又は下限基準値以下の状態の時間が所定の時間基準値を超える状態判定条件を充足するか否かを判定する
ことを特徴とする判定方法。
【請求項10】
対象者に基づき発生する波動の検出に基づく電気信号の入力を受け付ける入力部と、
前記入力部が受け付けた電気信号に係る信号値について、所定の上限基準値以上又は下限基準値以下の状態の時間が所定の時間基準値を超える状態判定条件を充足する否かを判定する判定部と
を備える判定装置。
【請求項11】
コンピュータに、対象者の状態を判定させる判定プログラムであって、
コンピュータに、
対象者に基づき発生する波動に基づく信号値の入力を受け付ける入力ステップと、
入力を受け付けた信号値について、所定の上限基準値以上又は下限基準値以下の状態の時間が所定の時間基準値を超える状態判定条件を充足する否かを判定する判定ステップと
を実行させる判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の状態を判定する判定システム、判定方法、判定装置及び判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院、老人ホーム、介護施設等の施設内において、看護師、介護士等の担当者は、患者、入居者等の要介護者が、病室内のベッドで在床しているか、離床しているか等の状態を確認する見回り業務を行っている。このような見回り業務を支援すべく、例えば、本願出願人は、ベッド上に載置して、要介護者の存否を検出する圧電シートを用いた生体検出システムを提案している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-154926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、優れた生体検出システムを提案しているが、更なる看護及び介護の質の向上等を目的として、要介護者等の対象者がどのような状態にあるかを判定することが求められている。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、対象者の状態を判定する判定システムの提供を主たる目的とする。
【0006】
また、本発明は、本発明に係る判定システムを用いた判定方法の提供を他の目的とする。
【0007】
更に、本発明は、本発明に係る判定システムにて用いられる判定装置の提供を他の目的とする。
【0008】
更に、本発明は、本発明に係る判定装置を実現するための判定プログラムの提供を更に他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本願開示の判定システムは、対象者に基づき発生する波動を検出し、検出した波動に基づく電気信号を出力する検出部と、前記検出部が出力した電気信号に係る信号値について、所定の上限基準値以上又は下限基準値以下の状態の時間が所定の時間基準値を超える状態判定条件を充足する場合に、対象者が起き上がり動作を開始したと判定する判定部とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記判定システムにおいて、前記判定部は、対象者の体位が、臥位であると判定している状態から、前記状態判定条件を充足した場合に、対象者が臥位から座位へ遷移する起き上がり動作を開始したと判定することを特徴とする。
【0011】
また、前記判定システムにおいて、前記信号値は、前記検出部が出力した電気信号の波形の形状を維持した信号波形に係る値であることを特徴とする。
【0012】
また、前記判定システムにおいて、前記信号値は、前記検出部が出力した電気信号からハムノイズを除去した値であることを特徴とする。
【0013】
また、前記判定システムにおいて、前記信号値は、前記検出部が出力した電気信号から4Hz以下の周波数帯を通過させて得られた信号波形に係る値であることを特徴とする。
【0014】
また、前記判定システムにおいて、前記信号値は、前記検出部が出力した電気信号に基づいて、5sec 以下の期間で移動平均をとった値であることを特徴とする。
【0015】
また、前記判定システムにおいて、前記検出部が出力した電気信号は、アナログ電気信号であり、前記信号値は、アナログ電気信号から変換されたデジタル電気信号に係る値であることを特徴とする。
【0016】
また、前記判定システムにおいて、前記検出部は、シート状に形成された圧電センサを含むことを特徴とする。
【0017】
更に、本願開示の判定方法は、検出部が、対象者に基づき発生する波動を検出して、検出した波動に基づく電気信号を出力し、前記検出部が出力した電気信号に係る信号値について、所定の上限基準値以上又は下限基準値以下の状態の時間が所定の時間基準値を超える状態判定条件を充足するか否かを判定することを特徴とする。
【0018】
また、前記判定方法において、対象者の体位が、臥位であると判定している状態から、前記状態判定条件を充足した場合に、対象者が臥位から座位へ遷移する起き上がり動作を開始したと判定することを特徴とする。
【0019】
また、前記判定方法において、前記信号値は、前記検出部が出力した電気信号の波形の形状を維持した信号波形に係る値であることを特徴とする。
【0020】
また、前記判定方法において、前記信号値は、前記検出部が出力した電気信号からハムノイズを除去した値であることを特徴とする。
【0021】
また、前記判定方法において、前記信号値は、前記検出部が出力した電気信号から4Hz以下の周波数帯を通過させて得られた信号波形に係る値であることを特徴とする。
【0022】
また、前記判定方法において、前記信号値は、前記検出部が出力した電気信号に基づいて、5sec 以下の期間で移動平均をとった値であることを特徴とする。
【0023】
また、前記判定方法において、前記検出部が出力した電気信号は、アナログ電気信号であり、前記信号値は、前記アナログ電気信号から変換されたデジタル電気信号に係る値であることを特徴とする。
【0024】
また、前記判定方法において、前記検出部は、シート状に形成された圧電センサを含むことを特徴とする。
【0025】
更に、本願開示の判定装置は、対象者に基づき発生する波動の検出に基づく電気信号の入力を受け付ける入力部と、前記入力部が受け付けた電気信号に係る信号値について、所定の上限基準値以上又は下限基準値以下の状態の時間が所定の時間基準値を超える状態判定条件を充足する否かを判定する判定部とを備える。
【0026】
また、前記判定装置において、前記判定部は、対象者の体位が、臥位であると判定している状態から、前記状態判定条件を充足した場合に、対象者が臥位から座位へ遷移する起き上がり動作を開始したと判定することを特徴とする。
【0027】
また、前記判定装置において、前記信号値は、前記入力部が受け付けた電気信号の波形の形状を維持した信号波形に係る値であることを特徴とする。
【0028】
また、前記判定装置において、前記信号値は、前記入力部が受け付けた電気信号からハムノイズを除去した値であることを特徴とする。
【0029】
また、前記判定装置において、前記信号値は、前記入力部が受け付けた電気信号から4Hz以下の周波数帯を通過させて得られた信号波形に係る値であることを特徴とする。
【0030】
また、前記判定装置において、前記信号値は、前記入力部が受け付けた電気信号に基づいて、5sec 以下の期間で移動平均をとった値であることを特徴とする。
【0031】
また、前記判定装置において、前記入力部が受け付けた電気信号は、アナログ電気信号であり、前記信号値は、前記アナログ電気信号から変換されたデジタル電気信号に係る値であることを特徴とする。
【0032】
更に、本願開示の判定プログラムは、コンピュータに、対象者の状態を判定させる判定プログラムであって、コンピュータに、対象者に基づき発生する波動に基づく信号値の入力を受け付けるステップと、入力を受け付けた信号値について、所定の上限基準値以上又は下限基準値以下の状態の時間が所定の時間基準値を超える状態判定条件を充足する否かを判定する判定ステップとを実行させる。
【0033】
また、前記判定プログラムにおいて、前記判定ステップは、対象者の体位が、臥位であると判定している状態から、前記状態判定条件を充足した場合に、対象者が臥位から座位へ遷移する起き上がり動作を開始したと判定することを特徴とする。
【0034】
また、前記判定プログラムにおいて、前記信号値は、前記入力ステップにて受け付けた電気信号の波形の形状を維持した信号波形に係る値であることを特徴とする。
【0035】
また、前記判定プログラムにおいて、前記信号値は、前記入力ステップにて受け付けた電気信号からハムノイズを除去した値であることを特徴とする。
【0036】
また、前記判定プログラムにおいて、前記信号値は、前記入力ステップにて受け付けた電気信号から4Hz以下の周波数帯を通過させて得られた信号波形に係る値であることを特徴とする。
【0037】
また、前記判定プログラムにおいて、前記信号値は、前記入力ステップにて受け付けた電気信号に基づいて、5sec 以下の期間で移動平均をとった値であることを特徴とする。
【0038】
また、前記判定プログラムにおいて、前記入力ステップにて、受け付けた電気信号は、アナログ電気信号であり、前記信号値は、前記アナログ電気信号から変換されたデジタル電気信号に係る値であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る判定システム、判定方法、判定装置及び判定プログラムは、対象者の状態を判定することが可能である等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本願開示の判定システムの構成例を模式的に示す概略図である。
図2】本願開示の判定システムが備える検出装置等の装置の構成例を示すブロック図である。
図3A】本願開示の判定システムが備える検出装置の検出部にて用いられる圧電センサの一例を概念的に示す模式図である。
図3B】本願開示の判定システムが備える検出装置の検出部にて用いられる圧電センサの一例を概念的に示す模式図である。
図4】本願開示の判定システムが備える判定装置及び通信装置等の装置の構成例を示すブロック図である。
図5】本願開示の判定システムが備える検出装置の検出処理の一例を示すフローチャートである。
図6】本願開示の判定システムが備える判定装置の信号処理の一例を示すフローチャートである。
図7】本願開示の判定システムが備える判定装置の判定処理の一例を示すフローチャートである。
図8】本願開示の判定システムが備える判定装置の判定部に入力されるデジタル電気信号の波形の一例を示すグラフである。
図9】本願開示の判定システムが備える判定装置の判定部に入力されるデジタル電気信号の波形の一例を示すグラフである。
図10】本願開示の判定システムが備える判定装置の判定部に入力されるデジタル電気信号の波形の一例を示すグラフである。
図11】本願開示の判定システムが備える判定装置の判定部に入力されるデジタル電気信号の波形の一例を示すグラフである。
図12】本願開示の判定システムが備える判定装置の判定部に入力されるデジタル電気信号の波形の一例を示すグラフである。
図13】本願開示の判定システムが備える判定装置の判定部に入力されるデジタル電気信号の波形の一例を示すグラフである。
図14】本願開示の判定システムの構成例を示す概略ブロック図である。
図15】本願開示の判定システムの構成例を示す概略ブロック図である。
図16】本願開示の判定システムが備える判定装置等の装置の構成例を示すブロック図である。
図17】本願開示の判定システムが備える判定装置等の装置の構成例を示すブロック図である。
図18】本願開示の判定システムが備える判定装置等の装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
<適用例>
本願開示の判定システムは、検出装置、判定装置等の各種装置を用いたシステムであり、対象者の状態、例えば、呼吸の状態、心拍の状態、姿勢の状態等の状態の検知を目的として用いられる。姿勢の状態としては、例えば、臥位、座位等の姿勢を例示することができる。本願では、臥位から座位へ遷移する際の初動、即ち、起き上がり動作を開始した状態の検知等の目的に用いた形態を主として説明する。以下では、図面を参照しながら、図面に例示された検出装置1、判定装置2等の装置の具体例について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具現化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0042】
<判定システム>
図1は、本願開示の判定システムの構成例を模式的に示す概略図である。本願開示の判定システムは、病院、老人ホーム、介護施設等の施設内に設置される。施設内には、モニタリングを要する患者、入居者等の要介護者(対象者)が入る病室、介護室等の部屋が設置されており、部屋内には要介護者が使用するベッド3が配置されている。また、施設内には、要介護者の看護、介護等のケアを行う医療関係者等、例えば、看護師、介護士、医師等の職員が待機するナースステーション等の待機所が設置されている。
【0043】
要介護者が使用するベッド3は、床板30を備え、床板30の上には、寝具としてマット31が載置されており、マット31の上には、必要に応じてシーツ等の寝具が敷かれる。ベッド3には、検出装置1が取り付けられている。検出装置1は、シート状の圧電センサ10a(図2等参照)を用いた検出部10を備えている。検出装置1は、要介護者が発生源である多様な周波数域の振動を検出し得る。それゆえ、検出装置1から出力される信号は、様々な周波数特性を有する複数の振動が互いに重なり合った信号である。一例において、検出装置1は、周波数が20Hz以上である体内音信号と、周波数が20Hz以下である心拍信号、呼吸振動信号、体動信号、及び周波数が20Hz以上である鼾信号のうち少なくとも1つを取得することが可能であってもよい。なお、周波数が20Hz以上である体内音信号と、周波数が20Hz以上である鼾信号とは、周波数成分(スペクトル)に基づいて区別可能である。検出装置1の検出部10は、例えば、要介護者が使用するベッド3のマット31、シーツ等の寝具の下に敷かれる。即ち、検出部10は、マット31、シーツ等の寝具を介して、対象者に関する検出を行う。図1では、ベッド3の床板30の上に検出部10を載置し、その上に、マット31を載置した形態を例示している。なお、検出部10は、シーツの上に載置し、要介護者に直接接するようにしてもよい。
【0044】
検出装置1には、判定装置2が接続されており、検出装置1から出力される電気信号は通信線を介して判定装置2に入力される。なお、検出装置1と判定装置2との間は、Bluetooth(登録商標)等の無線通信規格に基づく無線通信により、通信を行うようにすることも可能である。
【0045】
判定装置2と通信可能な装置として、看護師が所持するナースコール受信装置、ナースステーションに配備されたモニタ、外部の関係者が保持する携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末等の各種通信装置4が用いられている。判定装置2及び通信装置4は、無線LAN(Local Area Network)、有線LAN、WAN(Wide Area Network )、専用通信線等の通信網NWにて通信可能に接続されている。判定装置2は、後述する判定処理等の処理による報知情報等の各種情報を、通信網NWを介して通信装置4へ送信する。判定装置2から通信装置4への各種情報の送信は、略実時間で情報を送信するプッシュ型であってもよく、通信網NW上のデータサーバに情報を蓄積し、蓄積された情報を必要に応じて通信装置4にて取得するプル型であってもよい。更には、プッシュ型とプル型とを併用する等、様々な形態に展開することも可能である。本願で説明する報知情報等の情報は、速報性が要求されるためプッシュ型で通知される。
【0046】
<各種装置の構成>
次に、本願開示の判定システムが備える各種装置のハードウェア構成について説明する。図2は、本願開示の判定システムが備える検出装置1等の装置の構成例を示すブロック図である。検出装置1は、センサを用いた前述の検出部10の他、振幅増幅器11、前処理LPF(Low Pass Filter )12、出力部13等の各種構成を備えている。なお、本願では、検出部10が備えるセンサの一例として、シート状の圧電センサ10aを用いた形態を例示して説明する。
【0047】
検出部10は、圧電センサ10aにて、音、振動等の波動を検出し、検出した波動をアナログ電気信号に変換して振幅増幅器11へ出力する機能を有している。図3A及び図3Bは、本願開示の判定システムが備える検出装置1の検出部10にて用いられる圧電センサ10aの一例を概念的に示す模式図である。図3A及び図3Bは、圧電センサ10aの断面を模式的に示しており、図3Aは圧力を受けていない状態を示しており、図3Bは圧力を受けた状態を示している。圧電センサ10aは、超緻密発泡構造を有するポリオレフィン系材料を用いたエレクトレットフォームを用いてシート状に形成されている。圧電センサ10aは、圧力を受けると図3Aに示す状態から図3Bに示す状態に遷移して内部の気泡が変形し電位差が発生する。発生した電位差はアナログ電気信号として振幅増幅器11へ出力される。このような圧電センサ10aに用いられるエレクトレットシートとしては、例えば、本願出願人の特許第5926860号に記載のエレクトレットシートが用いられる。
【0048】
図2のブロック図に戻り、振幅増幅器11は、例えば、電気信号の電圧を増幅する信号増幅アンプを用いて構成される。振幅増幅器11は、アナログ電気信号として受け付けた波動電圧の振幅を増幅し、前処理LPF12へ出力する。前処理LPF12は、増幅した波動のハムノイズ等の高周波ノイズを除去し、出力部13へ出力する。前処理LPF12は、検出部10が出力した電気信号の波形の形状を維持させる観点から、5Hzより高い周波数帯のアナログ電気信号を除去するものであることが好ましい。更に、前処理LPF12は、10Hzより高い周波数帯のアナログ電気信号を除去し、10Hz以下の周波数帯のアナログ電気信号を通過させるものであることがより好ましい。
【0049】
出力部13は、前処理LPF12を通過したアナログ電気信号を判定装置2へ出力する。
【0050】
振幅増幅器11及び前処理LPF12は、入力された電気信号を、判定装置2が処理可能な電気信号とする前処理を行う回路であり、振幅増幅及び高周波ノイズ除去後も、実質的に、電気信号の波形の形状は維持されている。即ち、検出装置1は、検出部10が検出した所謂生データの状態の信号波形の電気信号を判定装置2へ出力する。
【0051】
図4は、本願開示の判定システムが備える判定装置2及び通信装置4等の装置の構成例を示すブロック図である。判定装置2は、例えば、各種電気回路及びマイコン(マイクロコンピュータ)を搭載して構成されている。判定装置2は、入力部20、信号処理部21、判定部22等の各種構成を備えている。
【0052】
入力部20は、検出装置1から出力されたアナログ電気信号の入力を受け付ける入力用ユニットである。
【0053】
信号処理部21は、受け付けた電気信号を処理し、又は未処理で判定部22へ出力するユニットである。信号処理部21は、入力部20が受け付けたアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するA/D変換部210を備え、変換したデジタル電気信号を処理する複数のルートを備えている。A/D変換部210では、アナログ電気信号を、例えば、100Hz等のサンプリング周期でサンプリングしてデジタル信号に変換する。
【0054】
第1ルート21aは、対象者の心拍信号を検知するための信号処理をするルートであり、検波回路21a1、HPF(High Pass Filter)回路21a2、第1LPF回路21a3等の回路を含んでいる。HPF回路21a2は、例えば、0.01Hz以下の周波数帯の電気信号を除去する回路であり、0.6Hz以下の周波数帯の電気信号を除去する回路とすることが、より好ましい。HPF回路21a2は、0.01Hz以下の周波数帯の電気信号を除去する場合、0.01Hzより高い周波数帯の電気信号を通過させ、0.6Hz以下の周波数帯の電気信号を除去する場合、0.6Hz以下の周波数帯の電気信号を通過させる。第1LPF回路21a3は、例えば、4.0Hzより高い周波数帯の電気信号を除去する回路であり、2.2Hzより高い周波数帯の電気信号を除去する回路とすることが、より好ましい。第1LPF回路21a3は、4.0Hzより高い周波数帯の電気信号を除去する場合、4.0Hz以下の周波数帯の電気信号を通過させ、2.2Hzより高い周波数帯の電気信号を除去する場合、2.2Hz以下の周波数帯の電気信号を通過させる。第1ルート21aを通過した電気信号は、判定部22へ出力される。
【0055】
第2ルート21bは、対象者が起き上がり動作の最中であること又は起き上がり動作をし終えたことを検出するための信号処理をするルートであり、第2LPF回路21b1、検波回路21b2等の回路を含んでいる。第2LPF回路21b1は、例えば、10Hzより高い周波数帯の電気信号を除去する回路であり、1Hzより高い周波数帯の電気信号を除去する回路とすることが、より好ましい。第2LPF回路21b1は、10Hzより高い周波数帯の電気信号を除去する場合、10Hz以下の周波数帯の電気信号を通過させ、1Hzより高い周波数帯の電気信号を除去する場合、1Hz以下の周波数帯の電気信号を通過させる。第2ルート21bを通過した電気信号は、判定部22へ出力される。
【0056】
第3ルート21cは、対象者の呼吸信号を検知するための信号処理をするルートであり、第3LPF回路21c1等の回路を含んでいる。第3LPF回路21c1は、例えば、2.0Hzより高い周波数帯の電気信号を除去する回路であり、0.5Hzより高い周波数帯の電気信号を除去する回路とすることが、より好ましい。第3LPF回路21c1は、2.0Hzより高い周波数帯の電気信号を除去する場合、2.0Hz以下の周波数帯の電気信号を通過させ、0.5Hzより高い周波数帯の電気信号を除去する場合、0.5Hz以下の周波数帯の電気信号を通過させる。第3ルート21cを通過した電気信号は、判定部22へ出力される。
【0057】
第4ルート21dは、対象者の体位が、臥位から座位へと遷移する起き上がり動作を開始したことを検出するための信号処理をするルートであり、受け付けた電気信号を処理せずに判定部22へ出力する。第4ルート21dを通る電気信号は、A/D変換部210により変換したデジタル電気信号の信号波形の形状を維持した状態の電気信号である。なお、信号処理部21が備える各種回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ハードウェア及びソフトウェアの混成回路等の様々な形態で構成することが可能である。
【0058】
判定部22は、例えば、VLSI(超大規模集積回路:Very Large-Scale IC)等の半導体チップを搭載したマイコンを用いて構成されており、制御部220、記録部221、出力部222、通信部223等の構成を備えている。
【0059】
制御部220は、情報処理回路、計時回路、レジスタ回路等の各種回路を備え、全体を制御する処理を実行するプロセッサである。
【0060】
記録部221は、不揮発性メモリ及び揮発性メモリを用いて構成される回路であり、各種プログラム、各種基準値等の様々なデータを記録している。記録部221に記録されているプログラムとしては、判定処理を行うための判定プログラム221a等のプログラムを例示することができる。記録部221に記録されている基準値としては、判定処理に用いられる上限基準値、下限基準値、時間基準値等の様々な基準値を例示することができる。
【0061】
制御部220が、記録部221に記録している判定プログラム221aに含まれる各種ステップを実行することにより、判定装置2は、検出部10が検出した波動に基づくデジタル電気信号から対象者の状態を判定する機能を発揮する。
【0062】
出力部222は、液晶ディスプレイ、スピーカ等の出力用ユニットである。
【0063】
通信部223は、通信網NWを介して通信装置4と無線通信又は有線通信をするためのアンテナ、LANアダプタ、制御回路等の各種構成を含む通信用ユニットである。
【0064】
通信装置4は、通信網NWを介して判定装置2と通信する通信部40、各種出力を行う出力部41等の構成を備えている。出力部41による出力とは、光の出力、画像の表示、音声の出力、鳴動、振動等の処理である。
【0065】
<各種装置の処理>
次に、本願開示の判定システムにおける各種装置の処理について説明する。図5は、本願開示の判定システムが備える検出装置1の検出処理の一例を示すフローチャートである。検出装置1の検出部10は、圧電センサ10aにて、対象者に関する振動等の波動を検出し(S101)、検出した波動をアナログ電気信号に変換する。検出装置1は、振幅増幅器11により、アナログ電気信号の振幅を増幅し(S102)、前処理LPF12により、高周波ノイズを除去する(S103)。検出装置1は、出力部13により、アナログ電気信号を判定装置2へ出力する(S104)。
【0066】
以上のようにして、検出装置1は、検出処理を実行する。
【0067】
図6は、本願開示の判定システムが備える判定装置2の信号処理の一例を示すフローチャートである。判定装置2は、入力部20により、検出装置1からアナログ電気信号の入力を受け付ける(S201)。判定装置2の信号処理部21は、A/D変換部210にてデジタル電気信号に変換する(S202)。更に、信号処理部21は、デジタル電気信号を信号処理し、又は処理せずに(S203)、判定部22へ出力する。ステップS203において、信号処理部21は、第1ルート21a乃至第3ルート21cを通るデジタル電気信号に対しては、特定の周波数帯の信号を取り出す信号処理を行い、第4ルート21dを通るデジタル電気信号に対しては、信号波形を維持した処理しないデータとして判定部22へ出力する。
【0068】
以上のようにして、検出装置1は、信号処理を実行する。
【0069】
図7は、本願開示の判定システムが備える判定装置2の判定処理の一例を示すフローチャートである。判定装置2の判定部22は、第1ルート21aを通ったデジタル電気信号に基づいて、対象者の心拍の状態を判定する処理を行う。また、判定部22は、第2ルート21bを通ったデジタル電気信号に基づいて、対象者の起き上がり動作の最中であること又は起き上がり動作をし終えたことを検出するための信号の状態を判定する処理を行う。また、判定部22は、第3ルート21cを通ったデジタル電気信号に基づいて、対象者の呼吸の状態を判定する処理を行う。また、判定部22は、第4ルート21dを通ったデジタル電気信号、即ち、検出部10が出力した電気信号の波形の形状を維持したデジタル電気信号に対し、対象者が臥位から座位へ遷移する起き上がり動作を開始したか否かを判定する処理を行う。更に、判定部22は、第1ルート21a、第2ルート21b及び第3ルート21cを通ったデジタル電気信号を総合して、対象者の姿勢の状態、例えば、臥位、座位等の状態を判定する処理を行う。図7を用いて、臥位から座位へ遷移する起き上がり動作を開始したか否かを判定する判定処理について説明する。
【0070】
判定装置2の判定部22が備える制御部220は、記録部221に記録されている判定プログラム221aを実行することにより、判定処理を実行する。制御部220は、第4ルート21dを通って受け付けたデジタル電気信号の信号値について、移動平均値を算出する(S301)。ステップS301では、例えば、5sec 以下の期間で移動平均値を算出する。なお、起き上がり動作の開始の判定は、速報性が要求されるため、移動平均の対象となる期間を長くすることは好ましくない。また、速報性が重視される判定処理については、ステップS301の移動平均の算出を省略し、以下に示すステップS302以降の処理を実行するようにしてもよい。即ち、ステップS301の処理は、速報性の要求が低い場合に実施される処理であり、速報性の要求が高い程、対象となる期間は短くすべきであり、速報性を重視する場合、移動平均の算出を省略したデジタル電気信号の信号値を用いることが好ましい。
【0071】
制御部220は、対象者の状態が臥位、即ち、ベッド3上で寝た状態を維持しているか否かを判定する(S302)。臥位であるか否かの判定自体は、第1ルート21a等の他のルートを通ったデジタル電気信号に基づいて実行される。ステップS302では、例えば、本願出願人が出願した国際公開第2021/112131号公報に記載の臥位を判定する方法が用いられる。
【0072】
ステップS302にて臥位であると判定した場合(S302:YES)、制御部220は、デジタル電気信号の信号値が、記録部221に記録されている所定の上限基準値以上又は下限基準値以下であるか否かを判定する(S303)。上限基準値及び下限基準値は、予め記録部221に状態判定条件として記録されている。
【0073】
ステップS303において、信号値が、所定の上限基準値以上又は下限基準値以下であると判定した場合(S303:YES)、制御部220は、上限基準値以上又は下限値以下の状態を継続している継続時間が、記録部221に記録されている時間基準値を超えるか否かを判定する(S304)。ステップS304において、信号値は、ノイズ等の要因により、瞬間的に変動する場合があるため、所定の上限基準値以上又は下限基準値以下である状態から、一時的に上限基準値を下回り、かつ下限基準値を上回る状態となった場合であっても、その状態が所定の瞬時基準値以下であるとき、制御部220は、上限基準値以上又は下限基準値以下である状態が継続していると判定するように設定してもよい。また、上限基準値以上の状態から瞬時に下限値以下の状態に切り替わる場合で、切り替わり途中の信号値を検出したときも同様であり、制御部220は、瞬時基準値に基づいて、上限基準値以上又は下限基準値以下の状態が継続しているか否かを判定するように設定してもよい。
【0074】
ステップS303にて判定の基準となる上限基準値及び下限基準値、ステップS304にて判定の基準となる時間基準値及び瞬時基準値等の基準値は、予め記録部221に、状態判定条件として記録されている。
【0075】
ステップS304において、信号値が、上限基準値以上又は下限値以下の状態を継続している時間が、記録部221に記録されている時間基準値を超えると判定した場合(S304:YES)、制御部220は、状態判定条件を充足しており、対象者の状態が臥位から座位へ遷移する起き上がり動作を開始した状態であると判定する(S305)。
【0076】
状態判定条件を充足しており、対象者の状態が臥位から座位へ遷移する起き上がり動作を開始した状態であると判定した制御部220は、起き上がり動作の開始を報知する報知処理を行う(S306)。ステップS306の報知処理は、起き上がり動作の開始を報知する報知情報を、出力部222から出力する処理、通信部223から通信網NWを介して通信装置4へ送信する処理等の処理である。なお、ステップS306において、報知処理と共に又は報知処理に代替して、状態判定条件を充足したことを、例えば、記録部221に記録する記録処理を実行するようにしてもよい。
【0077】
ステップS302において、臥位ではないと判定した場合(S302:NO)、ステップS303において、信号値が上限基準値を下回り、かつ下限基準値を上回ると判定した場合(S303:NO)、又はステップS304において、継続時間が時間基準値を超えていないと判定した場合(S304:NO)、制御部220は、状態判定条件を充足しておらず、対象者の状態が臥位から座位へ遷移する起き上がり動作を開始した状態ではないと判定する(S307)。
【0078】
状態判定条件を充足しておらず、対象者の状態が臥位から座位へ遷移する起き上がり動作を開始した状態ではないと判定した制御部220は、次に判定対象となるデジタル電気信号の信号値を取り込み、ステップS301へ戻り、以降の処理を繰り返す。
【0079】
以上のようにして、判定装置2の判定処理が実行される。なお、図7を用いて説明した判定装置2の判定処理は、第4ルート21dを通った生データであるデジタル電気信号に対して実行するものとして説明したが、第1ルート21a乃至第3ルート21cを通ったデジタル電気信号に対して行ってもよい。即ち、判定装置2の判定処理は、第1LPF回路21a3、第2LPF回路21b1、第3LPF回路21c1等の回路を通過させた電気信号に対しても実行することが可能である。
【0080】
通信装置4は、判定装置2から通信網NWを介して送信される報知情報を通信部40にて受信した場合、受信した報知情報を出力部41から出力する。報知情報の出力は、看護師が所持するナースコール受信装置、ナースステーションに配備されたモニタ、外部の関係者が所持する携帯電話等の各種通信装置4からの光の出力、画像の表示、音声の出力、鳴動、振動等の通報処理として実行される。通信装置4から出力される報知情報を確認した看護師、介護士、医師等の職員、家族等の関係者は、対象者の状態に応じて適切な対応をとることできる。
【0081】
<実施例>
次に、本願開示の判定システムの実施例について説明する。図8は、本願開示の判定システムが備える判定装置2の判定部22に入力されるデジタル電気信号の波形の一例を示すグラフである。図8は、横軸に時間をとり、縦軸にデジタル電気信号の信号値をとって、第4ルート21dを通ったデジタル電気信号の信号値の経時変化を示している。図中、P1は、対象者が離床状態にある期間、P2は、対象者が入床動作をしている期間、P3は、対象者が臥位状態にある期間、P4は、対象者が臥位から座位へ遷移する起き上がり動作を行っている期間、そして、P5は、対象者が座位状態にある期間を示している。また、図中一点鎖線は、上限基準値(図中ULと表記)及び下限基準値(図中LLと表記)を示している。
【0082】
図8に例示するように、デジタル電気信号の信号値は、対象者が入床後、臥位状態となる期間P3の間、上限基準値及び下限基準値内で安定している。そして、信号値は、対象者が起き上がり動作を行う期間P4の間、信号値が正負に大きく変化し、上限基準値及び下限基準値の範囲を超える状態が継続する。従って、上限基準値及び下限基準値並びに時間基準値を適切に設定することにより、起き上がり動作が始まった状態を検出することが可能となる。
【0083】
図9は、本願開示の判定システムが備える判定装置2の判定部22に入力されるデジタル電気信号の波形の一例を示すグラフである。図9は、図8に例示した上限基準値及び下限基準値の設定を、上限基準値を下げ、下限基準を上げるように変更した形態を示している。図9のように設定を変更することにより、図8に例示した形態の設定と比べ、より早く起き上がりの初動の判定が可能となる。図8及び図9に例示するように、上限基準値及び下限基準値は、実施時の状況、対象者の状態等の実装環境に応じて適宜変更することが好ましい。
【0084】
図10は、本願開示の判定システムが備える判定装置2の判定部22に入力されるデジタル電気信号の波形の一例を示すグラフである。図10は、横軸に時間をとり、縦軸にデジタル電気信号の信号値をとって、信号値の経時変化を示している。図10は、実線にて示す生データのデジタル電気信号の波形に、破線にて示す1Hzより高い周波数帯の信号値を除去するLPFを通したデジタル電気信号の波形を比較のために重畳している。生データのデジタル電気信号と比較し、1HzのLPFを通したデジタル電気信号の波形は、信号値が正負に大きくなるピークの発生が遅く、かつ上限基準値及び下限基準値を超える時間が短くなる。
【0085】
図11は、本願開示の判定システムが備える判定装置2の判定部22に入力されるデジタル電気信号の波形の一例を示すグラフである。図11は、横軸に時間をとり、縦軸にデジタル電気信号の信号値をとって、信号値の経時変化を示している。図11は、実線にて示す生データのデジタル電気信号の波形に、破線にて示す0.5Hzより高い周波数帯の信号値を除去するLPFを通したデジタル電気信号の波形を比較のために重畳している。生データのデジタル電気信号と比較し、0.5HzのLPFを通したデジタル電気信号の波形は、信号値が正負に大きくなるピークの発生が遅く、かつ正負の最大値が小さくなる。
【0086】
図12は、本願開示の判定システムが備える判定装置2の判定部22に入力されるデジタル電気信号の波形の一例を示すグラフである。図12は、横軸に時間をとり、縦軸にデジタル電気信号の信号値をとって、信号値の経時変化を示している。図12は、実線にて示す生データのデジタル電気信号の波形に、破線にて示す移動平均を算出したデジタル電気信号の波形を比較のために重畳している。図12の移動平均は、100Hzで100回分の信号値の平均値、即ち、1sec の間の移動平均の算出値を示している。生データのデジタル電気信号と比較し、1sec の移動平均の波形は、信号値が正負に大きくなるピークの発生が遅く、かつ上限基準値及び下限基準値を超える時間が短くなる。
【0087】
図13は、本願開示の判定システムが備える判定装置2の判定部22に入力されるデジタル電気信号の波形の一例を示すグラフである。図13は、横軸に時間をとり、縦軸にデジタル電気信号の信号値をとって、信号値の経時変化を示している。図13は、実線にて示す生データのデジタル電気信号の波形に、破線にて示す移動平均を算出したデジタル電気信号の波形を比較のために重畳している。図13の移動平均は、100Hzで200回分の信号値の平均値、即ち、2sec の間の移動平均の算出値を示している。生データのデジタル電気信号と比較し、2sec の移動平均の波形は、信号値が正負に大きくなるピークの発生が遅く、かつ上限基準値及び下限基準値を超える時間が短くなる。
【0088】
図8乃至図13に例示したように、判定処理の対象となるデジタル電気信号は、検出部10が出力した電気信号の波形の形状を維持した信号波形に係る生データを用いた場合、速やかな判定が可能となる。また、図10乃至図13に例示するように、判定処理の対象となるデジタル電気信号は、LPFを通したデジタル電気信号、移動平均をとったデジタル電気信号等の電気信号を用いることも可能である。
【0089】
本願開示の判定システムの構成例は、図1等に例示した構成に限るものではなく、ハードウェア構成及びソフトウェアによる処理は、適宜、設計することが可能である。即ち、本願開示の判定システムは、少なくとも、対象者に基づき発生する波動を検出する検出機能、検出した波動に基づく電気信号に対する信号処理を行う信号処理機能及びデジタル電気信号に基づいて、対象者の状態を判定する判定機能を備える様々な構成として実現することができる。
【0090】
<他のシステム構成例1>
図14は、本願開示の判定システムの構成例を示す概略ブロック図である。図14は、判定システムの他の構成例の概略を示している。図14に記載の判定システムは、検出装置1、判定装置2及び通信装置4を備えており、更に、信号処理装置5を備えている。信号処理装置5は、判定装置2が備える信号処理部21等の信号処理に関する回路を独立した装置として実装した形態であり、VLSI等の半導体チップを用いて構成されている。信号処理装置5には、更に、検出装置1が備える前処理LPF12を組み込むようにしてもよい。更に、信号処理に関する構成を信号処理装置5として独立させることにより、パーソナルコンピュータ等の汎用型のコンピュータを用いて判定装置2を構成することも可能である。
【0091】
以上のように、システム構成例1に係る判定システムは、判定装置2が備える信号処理に関する機能を信号処理装置5として独立させた形態である。
【0092】
<他のシステム構成例2>
図15は、本願開示の判定システムの構成例を示す概略ブロック図である。図15は、判定システムの更に他の構成例の概略を示している。システム構成例2は、判定装置2を通信網NWに接続するサーバコンピュータを用いて構成した形態である。システム構成例2において、信号処理装置5は、信号処理部21等の信号処理に関する回路を備えており、処理後のデジタル電気信号を、通信網NW上の判定装置2へ送信する処理を行う。判定装置2は、受信したデジタル電気信号に基づく判定処理等の各種処理を実行して、判定した結果に基づく報知情報を、通信網NWを介して通信装置4へ送信する。ナースコール受信装置、モニタ、携帯電話等の装置を用いて構成された通信装置4は、受信した結果を示す情報に基づいて、対象者の状態を示す情報の表示、音声の出力等の出力処理を行う。
【0093】
本願開示の判定システムが備える判定装置2の構成例も、図4等に例示した構成に限るものではなく、適宜設計することが可能である。図4等を用いて説明した本願開示の判定装置2は、判定処理の対象となる第4ルート21dを通るデジタル電気信号に対し、信号波形を維持した未処理の所謂生データとして判定部22へ出力する形態である。しかしながら、本願開示の判定装置2は、以下に例示するように、第4ルート21dを通る電気信号を処理して判定部22へ出力する形態に展開することも可能である。
【0094】
<判定装置2の他の構成例1>
図16は、本願開示の判定システムが備える判定装置2等の装置の構成例を示すブロック図である。図16に例示する他の構成例1は、図4に例示する構成例において、判定装置2の信号処理部21が備える第4ルート21dの設計を変更した構成例である。第4ルート21d以外の構成については、前述の説明を参照するものとし、詳細な説明を省略する。
【0095】
他の構成例1において、第4ルート21dは、ノイズ除去回路21d1を含んだ構成例となっている。ノイズ除去回路21d1は、10Hz以上のハムノイズを除去する回路である。第4ルート21dにノイズ除去回路21d1を配置することにより、判定装置2は、判定精度を向上させ、誤判定を抑制することが可能となる。
【0096】
<判定装置2の他の構成例2>
図17は、本願開示の判定システムが備える判定装置2等の装置の構成例を示すブロック図である。図17に例示する他の構成例2は、図4に例示する構成例において、第4ルート21dに、第4LPF回路21d2を含んだ構成となっている。第4ルート21d以外の構成については、図4を用いて説明した前述の構成例と同様である。第4LPF回路21d2は、例えば、4Hzより高い周波数帯の電気信号を除去し、4Hz以下の周波数帯の電気信号を通過させる回路である。第4ルート21dに第4LPF回路21d2を配置することにより、判定装置2は、判定精度を向上させ、誤判定を抑制することが可能となる。なお、第3LPF回路21c1が0.5Hzより高い周波数帯の電気信号を除去するのに対し、第4LPF回路21d2は、3Hzより高い周波数帯の電気信号を除去する。従って、第4ルート21dを通った電気信号の方が、第3ルート21cを通った電気信号と比べて、元の波形を維持した電気信号となる。
【0097】
<判定装置2の他の構成例3>
図18は、本願開示の判定システムが備える判定装置2等の装置の構成例を示すブロック図である。図18に例示する他の構成例3は、図4に例示する構成例において、第4ルート21dに、移動平均回路21d3を含んだ構成となっている。第4ルート21d以外の構成については、図4を用いて説明した前述の構成例と同様である。移動平均回路21d3は、入力を受け付けたデジタル電気信号に対し、5sec以下に設定された単位時間における移動平均をとって出力する回路である。第4ルート21dに移動平均回路21d3を配置することにより、判定装置2は、判定精度を向上させ、誤判定を抑制することが可能となる。
【0098】
上述した判定装置2の他の構成例、即ち、第4ルート21dに、ノイズ除去回路21d1、第4LPF回路21d2又は移動平均回路21d3を配置する形態は、適宜、組み合わせて実施することも可能である。具体的には、判定装置2の他の構成例は、第4ルート21dに、ノイズ除去回路21d1及び第4LPF回路21d2を配置する構成、ノイズ除去回路21d1及び移動平均回路21d3を配置する構成等の様々な構成に展開することが可能である。
【0099】
以上のように、本願開示の判定システムは、対象者の波動を検出し、所定の上限基準値以上又は下限基準値以下の状態の時間が所定の時間基準値を超える場合に、対象が起き上がり動作を開始したと判定して報知する。これにより、事故が発生し易い起き上がり動作の開始を早期に検知し、補助等の対応を行うことが可能である等、優れた効果を奏する。
【0100】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、他の様々な形態で実施することが可能である。そのため、かかる実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。更に、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0101】
例えば、前記実施形態では、上限基準値及び下限基準値の両方を状態判定条件として設定する形態を示したが、本発明はこれに限らず、上限基準値及び下限基準値のいずれか一方のみを状態判定条件として設定する等、様々な形態に展開することが可能である。
【0102】
また、例えば、前記実施形態では、上限基準値以上又は下限基準値以下の状態の時間を纏めて基準時間と比較する形態を示したが、本発明はこれに限らず、上限基準値及び下限基準値のそれぞれに基準時間を設定する等、様々な形態に展開することが可能である。
【0103】
また、例えば、前記実施形態では、検出装置1が備える検出部10として圧電センサ10aを用いる形態を示したが、本発明はこれに限らず、波動を検出することが可能であれば、マイクロフォンセンサ等の様々なセンサを用いることが可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 検出装置
10 検出部
10a 圧電センサ
2 判定装置
22 判定部
220 制御部
221 記録部
221a 判定プログラム
3 ベッド
30 床板
31 マット
4 通信装置
5 信号処理装置
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18