(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118733
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】不正通信防止システム及び不正通信防止方法
(51)【国際特許分類】
E05B 49/00 20060101AFI20230818BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20230818BHJP
G06F 21/35 20130101ALI20230818BHJP
【FI】
E05B49/00 J
B60R25/24
G06F21/35
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023094588
(22)【出願日】2023-06-08
(62)【分割の表示】P 2019076304の分割
【原出願日】2019-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大橋 洋介
(57)【要約】
【課題】端末及び通信機の間で行われる位置関係を確認する通信の際に、他の通信機からの不要な干渉を抑制可能にした不正通信防止システム及び不正通信防止方法を提供する。
【解決手段】端末2の測定部22bは、通信機13との測距通信の際、UWB帯の測距信号Saを通信機13に送信する。このとき、通知部26は、端末2に登録されている認証情報Didを通信機13に通知する。認証情報Didは、例えば車両1の個別IDである。通信機13の作動部27は、測距信号Saを受信すると、端末2から受信した認証情報Didを、自身に登録されている認証情報Didと比較する。通信機13の測定部22aは、これら認証情報Didが一致する場合に、UWB帯の測距信号Sbを端末2に返信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末との間の無線を通じた認証の成立を経て作動が許可又は実行される操作対象に、前記認証の通信とは別通信を実行可能な複数の通信機を設け、前記通信機と前記端末との通信を通じて、前記操作対象に対する前記端末の位置関係を判定する不正通信防止システムであって、
前記端末と前記操作対象の各通信機との間の暗号鍵を用いた測距通信時に、測距信号を通知する通知部と、
自身の組をなす相手との通信であるか否かを、前記測距信号に基づき確認する確認部と、
前記確認部の確認結果を基に前記判定の処理を作動させる作動部と
を備えた不正通信防止システム。
【請求項2】
端末との間の無線を通じた認証の成立を経て作動が許可又は実行される操作対象に、前記認証の通信とは別通信を実行可能な複数の通信機を設け、前記通信機と前記端末との通信を通じて、前記操作対象に対する前記端末の位置関係の妥当性を判定する不正通信防止方法であって、
前記端末と前記操作対象の各通信機との間の暗号鍵を用いた測距通信時に、測距信号を通知するステップと、
自身の組をなす相手との通信であるか否かを、前記測距信号に基づき確認するステップと、
前記測距信号に基づく確認結果を基に前記判定の処理を作動させるステップと
を備えた不正通信防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信の不正成立を防止する不正通信防止システム及び不正通信防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信する機器の間でUWB(Ultra Wide Band)帯の電波を送受信し、このときの電波送受信に要した伝搬時間から機器間の距離を測定して、2者間の距離の妥当性を判定する技術が周知である(特許文献1等参照)。この技術を用いれば、例えば中継器等を用いた通信によって通信を不正に確立しようとしても、測定された距離が閾値以上となることをもって通信が不正であると認識でき、不正通信による通信確立を未然に防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、「端末との間の無線を通じた認証の成立を経て作動が許可又は実行される操作対象に、前記認証の通信とは別通信を実行可能な複数の通信機を設け、前記通信機と前記端末との通信を通じて、前記操作対象に対する前記端末の位置関係を判定する不正通信防止システムであって、前記端末と前記操作対象の各通信機との間の暗号鍵を用いた測距通信時に、測距信号を通知する通知部と、自身の組をなす相手との通信であるか否かを、前記測距信号に基づき確認する確認部と、前記確認部の確認結果を基に前記判定の処理を作動させる作動部とを備えた不正通信防止システム」を提供するとともに、「端末との間の無線を通じた認証の成立を経て作動が許可又は実行される操作対象に、前記認証の通信とは別通信を実行可能な複数の通信機を設け、前記通信機と前記端末との通信を通じて、前記操作対象に対する前記端末の位置関係の妥当性を判定する不正通信防止方法であって、前記端末と前記操作対象の各通信機との間の暗号鍵を用いた測距通信時に、測距信号を通知するステップと、自身の組をなす相手との通信であるか否かを、前記測距信号に基づき確認するステップと、前記測距信号に基づく確認結果を基に前記判定の処理を作動させるステップとを備えた不正通信防止方法」を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する不正通信防止システムは、端末との間の無線を通じた認証の成立を経て作動が許可又は実行される操作対象に、前記認証の通信とは別通信を実行可能な複数の通信機を設け、前記通信機と前記端末との通信を通じて、前記操作対象に対する前記端末の位置関係を判定する不正通信防止システムであって、前記端末と前記操作対象の各通信機との間の暗号鍵を用いた測距通信時に、測距信号を通知する通知部と、自身の組をなす相手との通信であるか否かを、前記測距信号に基づき確認する確認部と、前記確認部の確認結果を基に前記判定の処理を作動させる作動部とを備えた。
【0006】
前記課題を解決する不正通信防止方法は、端末との間の無線を通じた認証の成立を経て作動が許可又は実行される操作対象に、前記認証の通信とは別通信を実行可能な複数の通信機を設け、前記通信機と前記端末との通信を通じて、前記操作対象に対する前記端末の位置関係の妥当性を判定する不正通信防止方法であって、前記端末と前記操作対象の各通信機との間の暗号鍵を用いた測距通信時に、測距信号を通知するステップと、自身の組をなす相手との通信であるか否かを、前記測距信号に基づき確認するステップと、前記測距信号に基づく確認結果を基に前記判定の処理を作動させるステップとを備えた。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、「端末との間の無線を通じた認証の成立を経て作動が許可又は実行される操作対象に、前記認証の通信とは別通信を実行可能な複数の通信機を設け、前記通信機と前記端末との通信を通じて、前記操作対象に対する前記端末の位置関係を判定する不正通信防止システムであって、前記端末と前記操作対象の各通信機との間の暗号鍵を用いた測距通信時に、測距信号を通知する通知部と、自身の組をなす相手との通信であるか否かを、前記測距信号に基づき確認する確認部と、前記確認部の確認結果を基に前記判定の処理を作動させる作動部とを備えた不正通信防止システム」を提供することができるとともに、「端末との間の無線を通じた認証の成立を経て作動が許可又は実行される操作対象に、前記認証の通信とは別通信を実行可能な複数の通信機を設け、前記通信機と前記端末との通信を通じて、前記操作対象に対する前記端末の位置関係の妥当性を判定する不正通信防止方法であって、前記端末と前記操作対象の各通信機との間の暗号鍵を用いた測距通信時に、測距信号を通知するステップと、自身の組をなす相手との通信であるか否かを、前記測距信号に基づき確認するステップと、前記測距信号に基づく確認結果を基に前記判定の処理を作動させるステップとを備えた不正通信防止方法」を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態の不正通信防止システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、不正通信防止システム及び不正通信防止方法の一実施形態を
図1~
図4に従って説明する。
図1に示すように、車両1は、無線を通じて端末2を認証することにより車載装置3の作動を許可又は実行する電子キーシステム4を備える。本例の電子キーシステム4は、車両1からの通信を契機に狭域無線によってID照合(スマート照合)を実行するスマート照合システムであることが好ましい。車載装置3は、例えば車両ドアを開閉するドアロック装置や、車両1のエンジンなどがある。端末2は、主にキー機能を備える電子キーや、キー機能を登録した高機能携帯電話のいずれでもよい。
【0010】
電子キーシステム4は、車両1において電子キーシステム4を作動させるシステム装置5を備える。システム装置5には、スマート照合で使用する電子キーID及びキー固有鍵が登録されている。システム装置5には、端末2とID照合の通信時に各種電波を送受信する車両通信部6が設けられている。システム装置5から端末2への電波送信は、LF(Low Frequency)帯の電波が使用され、端末2からシステム装置5への電波送信は、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波が使用されている。
【0011】
端末2は、端末2の作動を制御する端末制御部7と、端末2において電波を送受信する端末通信部8とを備える。端末制御部7には、各端末2の固有のキーID及びキー固有鍵が登録されている。端末通信部8は、端末2において電波受信する受信部と、端末2において電波送信する送信部とを備える。
【0012】
車両1が駐車状態の際に、車両通信部6としての室外送信部からLF送信された電波(ウェイク信号)を端末2が受信して、その応答を端末2がUHF送信によって車両1に返信したとき、室外スマート照合が開始される。室外スマート照合では、キーID照合や、キー固有鍵を用いたチャレンジレスポンス認証等が実行される。室外スマート照合の成立は、ドア施解錠の許可又は実行の1条件となる。また、車両通信部6としての室内送信部からLF送信された電波(ウェイク信号)を端末2が受信して、その応答を端末2がUHF送信によって車両1に返信したとき、室内スマート照合が開始される。室内スマート照合は、室外スマート照合と同様の処理である。室内スマート照合の成立は、車両電源の遷移操作(エンジン始動操作等)の許可の1条件となる。
【0013】
車両1は、端末2の認証の通信とは別の通信を通じて測定した端末2と操作対象11との間の距離から、操作対象11の不正使用に対するセキュリティを確保する機能(不正通信防止システム12)を備える。本例の操作対象11は、端末2を車両キーとして作動される車両1である。車両1に不正通信防止システム12を搭載するのは、遠く離れた場所に位置する端末2を中継器等で不正に車両1に繋げて、ユーザの意図しないところでスマート照合が成立に移行させられるのを防止するためである。
【0014】
不正通信防止システム12は、車両1側において測距の作動を実行する通信機13と、端末2側において測距の作動を実行する無線部14とを備える。通信機13及び無線部14は、UWB(Ultra Wide Band)帯の電波を送受信して、2者間の位置を測定する。測距の電波にUWB電波を使用すれば、高い分解能(例えば数十cm間隔)で通信機13及び無線部14の間の距離を測定することができる。
【0015】
通信機13は、UWB電波を送受信するアンテナ15と、アンテナ15の作動を制御する通信制御部16とを備える。通信機13の通信制御部16には、各通信機13の固有のID情報として識別IDがメモリ等に書き込み保存されている。通信機13は、システム装置5に有線によって接続されている。無線部14も、通信機13と同様にアンテナ17及び通信制御部18を備える。無線部14の通信制御部18には、通信する各通信機13の識別IDが書き込み保存されている。無線部14は、端末制御部7に有線によって接続されている。
【0016】
図2に示すように、通信機13は、車体19に複数(本例は4つ)設けられている。本例の通信機13は、車体19の4隅に配置されている。本例の場合、通信機13は、車体右前に配置されたものを「第1通信機13a」とし、車体右後に配置されたものを「第2通信機13b」とし、車体左前に配置されたものを「第3通信機13c」とし、車体左後に配置されたものを「第4通信機13d」とする。
【0017】
また、本例の場合、第1通信機13aの識別IDを「識別ID1」とし、第2通信機13bの識別IDを「識別ID2」とし、第3通信機13cの識別IDを「識別ID3」とし、第4通信機13dの識別IDを「識別ID4」とする。また、無線部14には、第1通信機13a~第4通信機13dと測距通信を行うために、第1通信機13a~第4通信機13dの識別IDである「識別ID1~ID4」がメモリ等に登録されている。
【0018】
図1に戻り、不正通信防止システム12は、通信機13及び無線部14の位置関係を確認する際に用いるパラメータを測定する測定部22を備える。本例の測定部22は、通信機13側(各々の通信機13)に設けられた「22a」と、無線部14側に設けられた「22b」とを備える。測定部22aは、通信機13の通信制御部16に設けられている。測定部22bは、無線部14の通信制御部18に設けられている。本例の測定部22は、通信機13及び無線部14の間でUWB電波を送受信する測距通信を実行し、このときの通信に要する伝搬時間を求め、この伝搬時間から、互いの位置関係を確認するパラメータとして、2者間の距離に準じた測定値Dxを測定する。測定部22は、所定の暗号鍵を用いた通信(暗号通信)を介して、UWB電波の送受信の通信を実行する。測定値Dxは、通信機13及び無線部14がどれだけ離れているかの距離を表す測距値であることが好ましい。
【0019】
不正通信防止システム12は、測定部22によって求められた測定値Dxを基に通信機13及び無線部14の位置関係の妥当性を判定する距離判定部23を備える。距離判定部23は、各々の通信機13(通信制御部16)に設けられている。距離判定部23は、測定部22により求められた測定値Dxと、予め設定された閾値Dkとを比較することにより、通信機13及び無線部14の位置関係の妥当性を確認する測距判定を実行する。距離判定部23は、測定値Dxが閾値Dk未満であれば、通信機13と無線部14との位置関係が妥当であると判定し、測定値Dxが閾値Dk以上であれば、通信機13と無線部14との位置関係が妥当ではないと判定する。
【0020】
ところで、自車の近傍に他車が存在する場合、他車に通信機13が搭載されていると、端末2が自車の通信機13と測距通信を実施した際に、端末2から送信されたUWB電波が、他車の通信機13に届いてしまうことがある。こうなると、自車の通信機13ではなく、他車の通信機13から返信されたUWB電波で測距判定を行う可能性があり、正確な測距判定を行うのに支障が出る。本例は、この問題に対する対処策である。
【0021】
本例の場合、通信機13及び無線部14には、測距通信時に通信機13が自他(自車及び他車)のいずれかに搭載されたものかを判定する際に用いる認証情報Didが登録されている。認証情報Didは、例えば各車両1に各々登録された個別ID(車両個別ID)であることが好ましい。認証情報Didは、例えば車両1に設けられた電子キーシステム4を利用して、通信機13及び無線部14の両者に登録されることが好ましい。
【0022】
不正通信防止システム12は、端末2及び通信機13の通信時に、車両1が有する固有の認証情報Didを通知する通知部26を備える。通知部26は、無線部14(通信制御部18)に設けられている。通知部26は、車両1と端末2との間で実行される測距通信の際に、相手側(通信機13)に認証情報Didを通知する。
【0023】
不正通信防止システム12は、自身の組をなす相手との通信であるか否かを認証情報Didに基づき確認する確認部28を備える。確認部28は、通信機13(通信制御部16)に設けられている。確認部28は、通信機13が自他いずれ(自車及び他車のどちら)の車両1に搭載されているのかを認証情報Didに基づき確認する。確認部28は、端末2から取得した認証情報Didと、通信機13に登録されている認証情報Didとを比較することにより、認証情報Didの正否を確認する。
【0024】
不正通信防止システム12は、認証情報Didの確認結果に基づき測距判定の処理を作動させる作動部27を備える。作動部27は、通信機13(通信制御部16)に設けられている。作動部27は、認証情報Didが一致することを確認すると、端末2及び通信機13の通信、すなわち測距通信を継続させる。一方、作動部27は、認証情報Didの一致を確認できないと、端末2及び通信機13の通信、すなわち測距通信を終了する。
【0025】
次に、
図3及び
図4を用いて、本実施形態の不正通信防止システムの作用及び効果について説明する。
図3に、認証情報Didを端末2及び通信機13に登録する際の手順を図示する。まず、ステップ101において、システム装置5は、システム装置5に端末2を登録する処理(端末登録処理)が実行されるとき、車両1に登録されている認証情報Didを車体19から読み出し、この認証情報Didを端末2に送信する。端末登録処理は、端末2に書き込み保存されている電子キーIDやキー固有鍵を、例えば電子キーシステム4の通信網を通じて、車両1のシステム装置5に登録する処理である。認証情報Didは、この端末登録処理の実施過程で、例えば車両通信部6から端末2にLF送信されることにより、端末2に取送される。
【0026】
ステップ102において、端末2は、システム装置5から認証情報Didを受信すると、この認証情報Didを無線部14のメモリ(図示略)に書き込み保存する。これにより、端末2に認証情報Didが登録された状態となる。
【0027】
ステップ103において、システム装置5は、端末2への認証情報Didの送信の際、通信機13にも認証情報Didを通知する。このとき、通信機13が車内の通信線を介してシステム装置5と接続されていれば、この通信線を介して、認証情報Didがシステム装置5から通信機13に出力される。通信線には、例えばLIN(Local Interconnect Network)やCAN(Controller Area Network)がある。システム装置5は、車両1に設けられた各々の通信機13に対して認証情報Didを出力する。
【0028】
ステップ104において、各通信機13は、システム装置5から認証情報Didを取得すると、これをメモリ(図示略)に書き込み保存する。これにより、通信機13に認証情報Didが登録された状態となる。
【0029】
図4に、測距判定(測距通信)の手順を図示する。ステップ201において、無線部14の測定部22bは、測距開始の指令である測距開始要求を入力すると、車両1及び端末2の間の距離測定として測距通信を開始する。測距開始入力は、例えば車両1及び端末2が行うスマート通信のときに、このスマート通信を介して車両1(システム装置5)から入力することが好ましい。このため、測距通信は、スマート通信と並行して実施されることが好ましい。
【0030】
ステップ102において、無線部14の測定部22bは、測距通信のとき、無線部14のアンテナ17からUWB帯の測距信号Saを通信機13に向けて送信する。本例の場合、測定部22bは、車体19に複数配置された各通信機13に対し、順番に測距通信を実行する。本例では、例えば第1通信機13a→第2通信機13b→第3通信機13c→第4通信機13dの順に測距通信が実行されるとする。
【0031】
無線部14の測定部22bは、まず通信相手を第1通信機13aとした測距信号Saを送信する。このとき、通知部26は、測距信号Saが第1通信機13aに送信されるにあたり、端末2に登録されている認証情報Didを第1通信機13aに通知する。よって、第1通信機13aを通信の相手とする測距信号Saには、測距通信の開始を指示する測距要求と、このときの通信相手である第1通信機13aの識別ID1と、端末2に登録された認証情報Didとが含まれる。測距信号Saは、例えば第1通信機13a及び無線部14の間で予め登録された暗号鍵によって暗号化されて送信される。
【0032】
第1通信機13aの測定部22aは、無線部14から測距信号Saを受信した場合、測距信号Saに含まれる識別ID1を確認することにより、このときに無線部14から送信された測距信号Saを取得する。すなわち、測距信号Saに含まれる識別ID1が一致する第1通信機13aが、無線部14から送信された測距信号Saを受信する。
【0033】
また、第1通信機13aの確認部28は、無線部14から測距信号Saを受信したとき、測距信号Sa内の認証情報Didを、第1通信機13aに登録された認証情報Didと比較することにより、認証情報Didの正否を確認する。車両1と組をなす端末2の無線部14から送信された認証情報Didであれば、第1通信機13aでの認証情報Didの確認において、認証情報Didが一致する。よって、作動部27は、認証情報Didが一致すれば、測距通信の継続を許可する。
【0034】
一方、端末2とは組をなしていない別の車両1に測距信号Saが届いた場合、その車両1の通信機13では、認証情報Didの判定が成立しない。すなわち、車両1と端末2とが別の組み合わせの場合、端末2の認証情報Didと、他車の通信機13の認証情報Didとは異なるので、認証情報Didが一致しない。このため、他車の通信機13は、仮に測距信号Saを受信したとしても、測距通信を継続することができない。なお、測距通信を継続できない状態は、例えば認証情報Didの判定が成立しないこと、或いはデータフォーマット等の違いなどから認証情報Didを解読できないことのいずれが契機となってもよい。
【0035】
ステップ203において、第1通信機13aの測定部22aは、測距信号Saに含まれる認証情報Didの一致を確認できた場合、測距通信の応答として、同様のUWB帯の測距信号Sbをアンテナ15からUWB送信する。この測距信号Sbは、少なくとも測距通信の応答を示す測距応答を含む。測距信号Sbは、例えば第1通信機13a及び無線部14の間で予め登録された暗号鍵によって暗号化されて送信される。
【0036】
ステップ204において、無線部14の測定部22bは、第1通信機13aから測距信号Sbを受信すると、測距信号Sa,Sbの往復に要した伝搬時間に係る測距データScを、UWB通信を通じて第1通信機13aに送信する。伝搬時間は、例えば信号送信時に付したタイムスタンプを確認することにより行う。
【0037】
ステップ205において、第1通信機13aの距離判定部23は、無線部14から測距データScを受信すると、この測距データScを基に算出された測定値Dx(端末2及び第1通信機13aの間の距離)の妥当性を判定する。距離判定部23は、算出された測定値Dxと閾値Dkとを比較することにより、測距判定の正否を確認する。距離判定部23は、測定値Dxが閾値Dk未満であれば、測距判定を成立とし、一方で測定値Dxが閾値Dk以上であれば、測距判定を不成立とする。測距判定が不成立となる場合、スマート照合の成立/不成立に関わらず、端末2による車両1の作動が不許可(禁止)とされる。
【0038】
続いて、ステップ206において、無線部14の測定部22bは、通信相手を第2通信機13bとした測距信号Saを送信する。第2通信機13bを通信の相手とする測距信号Saには、測距通信の開始を指示する測距要求と、このときの通信相手である第2通信機13bの識別ID2と、端末2に登録された認証情報Didとが含まれる。測距信号Saは、例えば第2通信機13b及び無線部14の間で予め登録された暗号鍵によって暗号化されて送信される。この測距信号Saは、識別ID2が一致する第2通信機13bで受信される。
【0039】
ステップ207において、第2通信機13bの測定部22aは、測距信号Saに含まれる認証情報Didの一致が確認された場合、測距通信の応答として、同様のUWB帯の測距信号Sbをアンテナ15からUWB送信する。測距信号Sbは、例えば第2通信機13b及び無線部14の間で予め登録された暗号鍵によって暗号化されて送信される。
【0040】
ステップ208において、無線部14の測定部22bは、第2通信機13bから測距信号Sbを受信すると、測距信号Sa,Sbの往復に要した伝搬時間に係る測距データScを、UWB通信を通じて第1通信機13aに送信する。そして、第2通信機13bの距離判定部23によって測距データScが判定され、測距判定が成立すれば、処理が継続され、測距判定が不成立となれば、端末2による車両1の作動が不許可(禁止)とされる。
【0041】
前述の測距判定は、無線部14(端末2)と、車両1側の他の通信機13(第3通信機13c、第4通信機13d)との間でも同様に実行される。本例の場合、第1通信機13aとの測距通信後、第2通信機13b→第3通信機13c→第4通信機13dの順で測距通信が実行される。なお、端末2の位置によっては、車体19や人体等に影響を受けて測距通信が確立しない通信機13もあるので、測距通信を開始して一定時間通信が確立しなければ、通信を強制終了して、他の通信機13に作動が移行するようにしてもよい。
【0042】
また、測距通信は、端末2及びシステム装置5の間で実行されるスマート通信(スマート照合)の実施後に実行されることに限定されない。すなわち、測距通信は、スマート通信後(スマート照合確立後)に限らず、スマート通信の最中や、スマート通信の開始前に実行されてもよい。
【0043】
以上、本例によれば、端末2(無線部14)と通信機13とが位置関係を確認する通信(測距通信)を行った場合に、端末2とは関係の無い別の他車(通信機13)が周囲に存在したとしても、その通信時に通知される車両1の認証情報Didを基に、端末2と組をなす自車に設けられた通信機13との間でのみ、位置関係を確認する通信を遂行することが可能となる。よって、端末2及び通信機13の間で行われる位置関係を確認する通信(測距通信)の際に、他の通信機13からの不要な干渉を生じ難くすることができる。
【0044】
通知部26は、車両1と端末2との間で行われる測距通信の際に、認証情報Didを相手側(通信機13)に通知する。このため、本例では、測距通信の過程で認証情報Didを通信機13に通知することができる。よって、通信に要する処理時間を短く抑えるのに有利となる。
【0045】
認証情報Didは、車両1の各々付与された個別IDである。よって、車両1の個別IDを確認する簡素な処理により、組をなす通信機13か否かの判定を行うことができる。
通信機13は、操作対象11である車両1において認証を実行するシステム装置5から認証情報Didを取得する。よって、通信機13は、車載されているシステム装置5から簡便に認証情報Didを取得することができる。
【0046】
通信機13は、車両1に複数設けられている。また、測距通信は、複数設けられた通信機13の各々と端末2とが実行する。よって、端末2を複数の通信機13と通信させて位置関係の妥当性を判定するので、車両1に対する端末2の位置を精度よく検出するのに有利となる。
【0047】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・端末2側の認証情報Didは、例えば端末制御部7のメモリに書き込み保存されてもよい。
【0048】
・認証情報Didは、測距通信時に相手側に通知されることに限定されず、測距通信とは別のタイミングの際に相手側に通知されてもよい。
・認証情報Didの登録は、電子キーシステム4の通信網を使用した態様に限定されず、例えばツール(登録ツール)を用いた態様としてもよい。この場合、例えば車両1にツールを接続して車両1から認証情報Didを取得する。そして、このツールを端末2に接続して、ツールから端末2に認証情報Didを付与することにより、端末2に認証情報Didを登録する。
【0049】
・端末2が他車の通信機13に測距信号Saを送信した場合、端末2は、測距信号Saを送信しても、測距応答の測距信号Sbを受信することができない。よって、端末2は、測距信号Saを送信後、一定時間内に測距信号Sbを受信することができなければ、測距通信を強制終了(停止)してもよい。
【0050】
・車両1側の認証情報Didは、例えば車体19において照合ECU等の種々のECUに登録されていてもよい。
・測距通信は、通信機13から端末2にUWB電波を送信し、UWB電波を受信した端末2から同様のUWB電波を通信機13に返信させる通信としてもよい。
【0051】
・距離判定(端末2-通信機13の距離判定)は、例えば1つのECU等で統括して実施してもよい。この場合、各通信機13は、距離測定のみ行い、その測定値Dxを他ECUに出力する。
【0052】
・測距通信は、端末2及び通信機13の間でUWB電波が1往復のみ通信されるシーケンスでもよい。例えば、実施例の場合、端末2側で測距判定を行うのであれば、測距データScの送信は省略されてもよい。
【0053】
・通信機13は、無線によってシステム装置5と接続されてもよい。
・通信機13は、車外に配置されたものに限らず、車内に配置されたものを使用してもよい。
【0054】
・スマート通信を行う前に測距通信を実施し、通信機13の認証情報Didを端末2に送信して、端末2側で認証情報Didの確認を実行してもよい。
・複数の通信機13は、特定の1つがマスタ通信機となって、他のスレーブ通信機の作動を管理する構成としてもよい。この場合、例えばマスタ通信機で認証情報Didの確認を実行してもよい。
【0055】
・作動部27や確認部28は、通信機13に設けられることに限らず、他の箇所に設けられてもよい。
・認証情報Didの確認は、例えばシステム装置5で行ってもよい。
【0056】
・端末2の認証は、スマート照合に限定されず、端末2の正否を確認できる方式のものであればよい。
・電子キーシステム4は、スマート照合システムに限定されず、他システムに変更可能である。また、電子キーシステム4で使用する電波の周波数や通信方式も、種々の態様に変更可能である。
【0057】
・測距通信で使用する電波は、UWB帯の電波に限らず、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)の電波など、他の周波数の電波に変更してもよい。
・認証情報Didは、車両1が有する固有IDに限定されず、車両1を識別できる情報であれば、種々の情報が採用可能である。
【0058】
・車両1の操作対象は、車両ドアの施解錠や、車両電源の電源遷移操作に限定されない。
・操作対象11は、車両1に限定されず、他の機器や装置としてもよい。
【0059】
次に、上記実施形態及び変更例ら把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記不正通信防止システムにおいて、前記通信機は、前記操作対象に複数設けられ、前記端末及び前記通信機の間の位置関係を確認する通信は、前記端末と各通信機との間で各々実行されることが好ましい。
【0060】
以下に技術的思想について記載する。
・ところで、機器間でUWB通信を行う場合に、距離判定の対象となっていない別の機器が存在することがある。このとき、自身と組をなす機器に端末がUWB電波を送信したにも拘わらず、自身と組をなす機器のみならず、自身と組をなさない機器もUWB電波を返信する作動をとるので、これが通信に干渉してしまう可能性があった。
【0061】
以下の技術的思想の目的は、端末及び通信機の間で行われる位置関係を確認する通信の際に、他の通信機からの不要な干渉を抑制可能にした不正通信防止システム及び不正通信防止方法を提供することにある。
【0062】
・不正通信防止システムは、端末との間の無線を通じた認証の成立を経て作動が許可又は実行される操作対象に、前記認証の通信とは別通信を実行可能な通信機を設け、前記通信機と前記端末との通信を通じて、前記操作対象に対する前記端末の位置関係を判定する構成であって、前記端末及び前記通信機の通信時に、各操作対象が有する固有の認証情報を通知する通知部と、自身の組をなす相手との通信であるか否かを、前記認証情報に基づき確認する確認部と、前記確認部の確認結果を基に前記判定の処理を作動させる作動部とを備えた。
【0063】
・不正通信防止方法は、端末との間の無線を通じた認証の成立を経て作動が許可又は実行される操作対象に、前記認証の通信とは別通信を実行可能な通信機を設け、前記通信機と前記端末との通信を通じて、前記操作対象に対する前記端末の位置関係の妥当性を判定する方法であって、前記端末及び前記通信機の通信時に、各操作対象が有する固有の認証情報を通知するステップと、自身の組をなす相手との通信であるか否かを、前記認証情報に基づき確認するステップと、前記認証情報の確認結果を基に前記判定の処理を作動させるステップとを備えた。
【符号の説明】
【0064】
1…車両、2…端末、11…操作対象、12…不正通信防止システム、13…通信機、13a…第1通信機、13b…第2通信機、13c…第3通信機、14d…第4通信機、26…通知部、27…作動部、28…確認部、Sa,Sb…測距信号、Did…認証情報。