(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011877
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】放射線で誘発された粘膜炎、食道炎、小腸炎、大腸炎、及び胃腸管急性放射線症候群を予防又は治療するための胃腸管投与多孔質消化管吸着剤ポリマーの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/745 20060101AFI20230117BHJP
A61K 31/765 20060101ALI20230117BHJP
A61K 31/78 20060101ALI20230117BHJP
A61K 31/785 20060101ALI20230117BHJP
A61K 9/02 20060101ALI20230117BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20230117BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230117BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230117BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230117BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20230117BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230117BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20230117BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230117BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230117BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20230117BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20230117BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20230117BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230117BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
A61K31/745
A61K31/765
A61K31/78
A61K31/785
A61K9/02
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/70
A61P1/00
A61P1/04
A61P1/08
A61P1/12
A61P25/04
A61P29/00
A61P31/04
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022177886
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2020115831の分割
【原出願日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】62/058,864
(32)【優先日】2014-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512254586
【氏名又は名称】サイトソーベンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】アリ,フマイラ・ベガム
(72)【発明者】
【氏名】ゴロビシュ,トーマス・ディー
(72)【発明者】
【氏名】カポニ,ヴィンセント・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,フィリップ・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,ウェイ-タイ
(72)【発明者】
【氏名】シェイラー,アンドリュー・ロバート
(57)【要約】 (修正有)
【課題】放射線被曝の急性及び遅発性の有害作用の両方を予防及び緩和するための処置法並びに組成物を提供する。
【解決手段】放射線被爆によって引き起こされる急性又は慢性の口腔粘膜炎、食道炎、小腸炎、大腸炎、又は胃腸管急性放射線症候群(GI-ARS)を予防又は治療する方法であって、消化管投与(例えば、経口で、栄養管若しくは胃経管で、造瘻経路で、又は直腸で投与)される1又はそれを越える消化管吸着剤ポリマーを用いる方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線被爆によって引き起こされる急性又は慢性の口腔粘膜炎、食道炎、小腸炎、大腸炎、又は胃腸管急性放射線症候群(GI-ARS)を予防又は治療する方法であって、消化管投与(例えば、経口で、栄養管若しくは胃経管で、造瘻経路で、又は直腸で投与)される1又はそれを越える消化管吸着剤ポリマーを用いる方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、放射線癌治療の合併症(特に、胃腸管合併症、粘膜炎、食道炎、小腸炎、大腸炎、及び胃腸管組織に対する損傷)を予防又は治療のために用いられる方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、該放射線源が、放射線によるか、或いは空気、食品、又は水の汚染によって伝達される、ガンマ線、X線、又は宇宙線(例えば宇宙旅行又は飛行機旅行中、或いは太陽フレアからの被爆)である方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、1又はそれを越える次の重合性モノマー:スチレン、エチルスチレン、アクリロニトリル、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、セチルメタクリレート、セチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルベンジルアルコール、ビニルホルムアミド、メチルメタクリレート、及びメチルアクリレートと、架橋剤との反応から誘導される架橋ポリマー材料を含む方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、直径10~250,000Åの気孔の全容積として0.3~3.0cc/g乾燥ポリマーを有する気孔構造を有することを特徴とし;該架橋ポリマー材料の直径10~250,000Åの気孔容積の、直径250~250,000Åの気孔容積に対する比率が7:1より小さく、該架橋ポリマー材料の直径10~250,000Åの気孔容積の、直径50~250,000Åの気孔容積に対する比率が2:1より小さい方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、カプセル、錠剤、膏薬、湿布、スラリー形態、坐薬、又は注腸、経口、経直腸、経鼻胃又は胃経管、或いは造瘻経路によって投与される方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、サイトカイン、スーパー抗原、モノカイン、ケモカイン、インターフェロン、フリーラジカル、プロテアーゼ、アラキドン酸代謝産物、プロスタサイクリン、βエンドルフィン、アナンジミド、2-アラカドニルグリセロール、テトラヒドロビオプテリン、セロトニン、ヒスタミン、ブラジキニン、可溶性CD40リガンド、生理活性脂質、酸化脂質、無細胞ヘモグロビン、成長因子、糖タンパク質、プリオン、毒素、細菌及びウィルス毒素、内毒素、薬物、血管作動性物質、外来抗原、及び腸管内腔からの抗体を含むがこれらに限定されない炎症メディエーターを除去する方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが生体適合性である方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、粉末、懸濁液、ビーズ、又は他の規則的若しくは不規則形状の粒子の形態である方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが0.1ミクロン~2センチメートルの範囲の直径を有する方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、胃腸管粘膜破壊を予防するか、又は胃腸管粘膜の治癒を促進するか、又は両方を行う方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、腸炎、腸管透過性を減少させ、腸管内腔から身体への細菌、内毒素、及び毒素の移動を予防し、全身性炎症反応症候群(SIRS)を予防する方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、ヘム急性放射線症候群(Heme-ARS)、急性放射線被爆の後遺症(DEARE)、又は肺のような他の臓器に対する急性放射線症候群の影響の危険性を減少させる方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、GI-ARS又は急性放射線小腸炎若しくは大腸炎における生存率を向上させる方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、GI-ARS又は急性放射線小腸炎若しくは大腸炎における体重減少、下痢、嘔吐、疼痛、体液喪失のような症状を軽減する方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーがガンマ線安定性である方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、ガンマ線安定性であり、放射線治療の前又はそれと同時に投与することができる方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、放射線を吸収しないか又は極僅か吸収し(放射線透過性)、したがって癌のような疾患を治療するための放射線治療線量に影響を与えない方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、放射線を吸収し(放射線不透過性)、追加の放射線防護を与える方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、急性放射線小腸炎又は大腸炎を予防又は軽減しながら癌のような疾患を治療するための、放射線治療のより高くかつ潜在的により有効な線量、或いは放射線治療のより多い線量を可能にするところの放射線防護剤として機能する方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、放射線吸収(放射線不透過性)に関係する合併症を予防又は治療し、追加の放射線防護を提供するために使用される方法。
【請求項22】
放射線被曝によって引き起こされる急性又は慢性の口腔粘膜炎、食道炎、小腸炎、大腸炎、又は胃腸管急性放射線症候群(GI-ARS)を予防又は治療するための組成物であって、1又はそれを越える消化管吸着剤ポリマーを含み;
(a)該消化管吸着剤ポリマーが、生体適合性の多孔質ポリマー吸着剤であり;又は
(b)該消化管吸着剤ポリマーが、本明細書において開示する任意の粒径範囲を含み;又は
(c)該消化管吸着剤ポリマーが、急性及び/又は遅発性/慢性放射線小腸炎及び放射線症候群のための放射線防護剤(予防療法)として役立つことができ;又は
(d)該消化管吸着剤ポリマーが、急性又は遅発性/慢性放射線小腸炎若しくは放射線
症候群のための放射線被曝後の放射線緩和剤(動的療法)として役立つことができ;又は
(e)該消化管吸着剤ポリマーが、放射線介在性肺症候群に対して正の効果を有し;又は
(f)該消化管吸着剤ポリマーが、放射線介在性ヘム症候群に対して正の効果を有し;又は
(g)該消化管吸着剤ポリマーが、宇宙線又は宇宙放射線の合併症(例えば宇宙においてガンマ線に被爆した宇宙飛行士)を予防及び治療するために用いられ;
(h)該消化管吸着剤ポリマーが、放射線癌治療の合併症(特に胃腸管合併症)を予防及び治療するために用いられ;又は
(i)併用療法としての該消化管吸着剤ポリマーが、有効な癌治療のための放射線治療の線量を促進、維持、及び/又は増加させることができ;又は
(j)該消化管吸着剤ポリマーが、放射能爆弾の爆発、不測の原子力発電所の異常、及びテロ行為による放射線災害の合併症を予防及び治療するために用いられ;又は
(k)該消化管吸着剤ポリマーが、生存帰還を向上させ;又は
(l)該消化管吸着剤ポリマーが、体重維持を助け;又は
(m)該消化管吸着剤ポリマーが、腸炎、腸透過性を減少させ、腸上皮を保護又は治療し、細菌、内毒素、及び毒素の移動を予防し、全身性炎症反応症候群(SIRS)、及び敗血症を予防し;又は
(n)該消化管吸着剤ポリマーが、下痢、嘔吐、及び腹痛の重篤度及び期間の症状改善を与え;又は
(o)該消化管吸着剤ポリマーが、1又はそれを越える次の重合性モノマー:スチレン、エチルスチレン、アクリロニトリル、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、セチルメタクリレート、セチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルベンジルアルコール、ビニルホルムアミド、メチルメタクリレート、及びメチルアクリレートと、架橋剤との反応から誘導される架橋ポリマー材料を含み;又は
(p)該消化管吸着剤ポリマーの固体形態が、直径10~250,000Åの気孔の全容積として0.3~3.0cc/g乾燥ポリマーを有する気孔構造を有することを特徴とし;該架橋ポリマー材料の直径10~250,000Åの気孔容積の、直径250~250,000Åの気孔容積に対する比率が7:1より小さく、該架橋ポリマー材料の直径10~250,000Åの気孔容積の、直径50~250,000Åの気孔容積に対する比率が2:1より小さく;又は
(q)該消化管吸着剤ポリマーが、炎症メディエーター及び毒素を吸着し、該炎症メディエーター及び刺激物質は、サイトカイン、スーパー抗原、モノカイン、ケモカイン、インターフェロン、フリーラジカル、プロテアーゼ、アラキドン酸代謝産物、プロスタサイクリン、βエンドルフィン、アナンジミド、2-アラカドニルグリセロール、テトラヒドロビオプテリン、セロトニン、ヒスタミン、ブラジキニン、可溶性CD40リガンド、生理活性脂質、酸化脂質、無細胞ヘモグロビン、成長因子、糖タンパク質、プリオン、毒素、細菌及びウィルス毒素、内毒素、薬物、血管作動性物質、外来抗原、及び抗体を含み;又は
(r)該消化管吸着剤ポリマーが、経口、栄養管、胃経管、造瘻経路によって、又は直腸経路によって投与することができる形態であり;又は
(s)該消化管吸着剤ポリマーが、カプセル、錠剤、膏薬、湿布、注腸剤、坐薬、又はスラリー形態であり;又は
(t)(a)~(s)の2又はそれを越える任意の組合せである
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2014年10月2日出願の米国仮出願62/058,864の利益を主張する。その開示事項はその全部を参照として本明細書中に包含する。
[0002]本発明は多孔質消化管吸着剤ポリマー(enteron sorbent polymers)の分野に存する。本発明はまた、口腔粘膜炎、食道炎、放射線小腸炎、大腸炎、及び胃腸管急性放射線症候群を低減、予防、及び/又は治療することの分野にも存する。
【背景技術】
【0002】
[0003]治療、エネルギー、又は武器のための放射性物質が広く存在することにより、不測又は意図的のいずれかの被爆を有効に治療するための医学的準備の必要性が強調されている。癌の放射線治療から、或いは水又は空気中に放射線物質が広く散布されること(例えば、放射能爆弾、原子力発電所災害、又は核爆発)のような急性放射線被曝からの高エネルギー放射線(例えばガンマ線又はX線)の被爆は、身体を貫通して、細胞死及び組織損傷のような有害な影響を引き起こす可能性がある。宇宙線及び太陽フレアは、高高度及び大気圏外において太陽フレア中に体験する高エネルギー放射線の他の形態であり、同様の組織障害を引き起こす可能性がある。胃腸(GI)管に影響が与えられる場合には、放射線は、口腔粘膜炎(頭部及び頸部の照射)、食道炎(通常は胸部の照射)、並びに放射線小腸炎及び大腸炎(腹部及び骨盤の照射による)、並びにより広範には胃腸管急性放射線症候群(GI-ARS)を引き起こす可能性がある。現時点においては、二次医療及び対症療法の他には、被爆後の照射毒性を予防、治療、又は軽減するための認可されている薬物療法又は対応策は存在しない。
【0003】
[0004]照射の急性生理学的効果の1つは急性放射線症候群(ARS)であり、これはまず胃腸管において現れる(GI-ARS)。急性期は放射線被曝の数日以内に起こり、これは上皮の陰窩及び潰瘍の消失を引き起こす腸のクローン化可能細胞の消失によって引き起こされる。症状及び合併症としては、腸粘膜バリアが傷つけられるにつれて、体重減少、下痢、脱水、感染症への感受性、並びに細菌及び毒素の移動が挙げられる。腸から血液への細菌の移動及び内毒素血症は、敗血性ショック及び死亡を引き起こす可能性がある。
【0004】
[0005]放射線障害はまた、急性放射線被曝の後遺症(DI-DEARE)を引き起こす可能性もある。ARSと同様に、放射線被曝の後遺症も有害な健康への影響を有する。これは、日本の高線量放射線被曝の生存者から、及びまた放射線腫瘍治療からも明らかである。放射線癌治療を受けた患者は、治療の数ヶ月後及び数年後にしばしば急性及び遅発性のGI腸疾患の両方を発症する。後遺症においては、下痢、便秘、閉塞症、瘻孔、重傷の炎症反応症候群、及び敗血症のGI症状が高い発生率で存在し、骨盤腫瘍の治療を受けた患者の50%において発生している。
【0005】
[0006]GI-ARSのキャラクタリゼーションは、造血系(H-ARS)のような他の症候群にリンクする。GI-ARSを誘発する全ての放射線量は骨髄に大きな影響を与える。これは、損傷した腸上皮を通って細菌が移動することによって、GI炎症及び感染症の重篤度に影響を与える。高線量放射線に対する主要な臓器の後遺症は、他の臓器の損傷も伴う。例えば、DEAREによって肺の損傷が起こる。サイトカイン、細菌毒素、及び他の炎症メディエーターは、疾患において重要な役割を果たす。炎症を減少させることは、期待される治療を与える可能性がある。例えば、数多くの研究は、抗癌効果を有する炎症の減少に関するものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0007]これらの疾患のそれぞれは、通常は高い罹病率及び死亡率を伴う。したがって、放射線被曝の急性及び遅発性の有害作用の両方を予防(放射線防護剤と呼ばれる)及び緩和(緩和剤と呼ばれる)するための処置法を想到することが不可欠である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0008]消化管吸着剤ポリマーは、これらの疾患を予防又は治療するのに比類なく適している。消化管吸着剤ポリマーは、非吸収性で高多孔質の消化管吸着剤ポリマーを用いるGI管のための新規な胃腸管投与(例えば、経口、経鼻胃管又は胃経管、造瘻経路、又は直腸経路による投与)の局所的抗炎症療法である。消化管吸着剤ポリマーは、気孔捕捉及び表面吸着に基づいて管腔内サイトカイン、細菌毒素、及び他のメディエーターを封鎖して、それらを身体から排出する。消化管吸着剤ポリマーは、腸炎、腸透過性、腸管内腔から体循環への細菌及び毒素の移動、下痢のような腸炎の症状、全身性炎症反応症候群、及び敗血症を減少させることによって、GI-ARSにおける死亡の危険性を潜在的に減少させることができる。
【0008】
[0009]放射線癌治療においては、消化管吸着剤ポリマーはガンマ線安定性及び放射線透過性であり、安定状態で維持され、放射線治療を阻害しない。GI小腸炎及び他の関連する疾患を軽減することによって、消化管吸着剤ポリマーは、放射線治療のデ・エスカレーションに関係する有害事象を最小にすることを可能にすることができる。或いは、これは、腫瘍致死を向上させる目的の放射線量及び同時に行う化学療法のエスカレーションに役立てることができる。消化管吸着剤ポリマーは、放射線防護剤及び/又は被爆後の放射線緩和剤として機能することができる。
【0009】
[0010]全身放射線被曝によるか又は宇宙飛行中の放射線小腸炎の予防においては、消化管吸着剤ポリマーは自己投与することができる。これらはまた、高線量被爆後のGI放射線緩和剤として機能させることもできる。
【0010】
[0011]好ましい消化管吸着剤ポリマーとしては、架橋剤と、1又はそれを越える次の重合性モノマー:ジビニルベンゼン、スチレン、エチルスチレン、アクリロニトリル、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、セチルメタクリレート、セチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルベンジルアルコール、ビニルホルムアミド、メチルメタクリレート、及びメチルアクリレートとの反応から誘導される架橋ポリマー材料が挙げられる。
【0011】
[0012]幾つかの態様においては、消化管吸着剤ポリマーの固体形態は特徴として多孔質である。幾つかの固体形態は、消化管吸着剤ポリマーが、直径10~250,000Åの気孔の全容積として0.3~3.0cc/g乾燥ポリマーを有する気孔構造を有することを特徴とし;その架橋ポリマー材料の直径10~250,000Åの気孔容積の、直径250~250,000Åの気孔容積に対する比率が7:1より小さく、その架橋ポリマー材料の直径10~250,000Åの気孔容積の、直径50~250,000Åの気孔容積に対する比率が2:1より小さい。
【0012】
[0013]幾つかの態様においては、消化管吸着剤ポリマーは、0.1ミクロン~2センチメートルの範囲の直径を有するビーズ形態で製造することができる。幾つかのポリマーは、粉末、ビーズ、又は他の規則的若しくは不規則形状の粒子の形態である。
【0013】
[0014]幾つかの方法においては、望ましくない分子は炎症メディエーターであり、刺激
物質は、サイトカイン、スーパー抗原、モノカイン、ケモカイン、インターフェロン、フリーラジカル、プロテアーゼ、アラキドン酸代謝産物、プロスタサイクリン、βエンドルフィン、アナンジミド(anandimide)、2-アラカドニルグリセロール(arachadonylglycerol)、テトラヒドロビオプテリン、セロトニン、ヒスタミン、ブラジキニン、可溶性CD40リガンド、生理活性脂質、酸化脂質、無細胞ヘモグロビン、成長因子、糖タンパク質、プリオン、毒素、細菌及びウィルス毒素、内毒素、薬物、血管作動性物質、外来抗原、及び抗体を含む。
【0014】
[0015]本発明の幾つかの方法は、消化管吸着剤ポリマーを(例えば、経口、経直腸、経鼻胃管又は胃経管経由、或いは人体内の造瘻経路で)胃腸管投与するように実施することができる。
【0015】
[0016]幾つかの態様においては、消化管吸着剤ポリマーの複数の固体形態は、0.1ミクロン~2センチメートルの範囲の直径を有する粒子を含む。
[0017]好ましい消化管吸着剤ポリマーは生体適合性である。
【0016】
[0018]更に他の更なる態様においては、本発明は、重合性モノマー及び少なくとも1種類の開始剤を含む有機相を形成し;少なくとも1種類の分散剤、少なくとも1種類の遊離基開始剤、及び少なくとも1種類の緩衝剤を含む水相を形成し;撹拌することによって有機相を水相中に分散させて有機液滴の懸濁液を形成し;そして、分散剤で被覆された有機相液滴の懸濁液を加熱することによって有機相を重合して、それによって消化管吸着剤ポリマー上に生体適合性の表面被覆を形成する;ことを含む、有機相及び水相を含む生体適合性表面被覆ポリマー系を含む消化管吸着剤ポリマーを製造する方法に関する。
【0017】
[0019]他の態様においては、本発明は、消化管吸着剤ポリマーを製造するための少なくとも1種類の架橋剤及び少なくとも1種類の分散剤を含み、分散剤が消化管吸着剤ポリマー上に生体適合性の表面を形成している、生体適合性の被覆を有する消化管吸着剤ポリマーに関する。
【0018】
[0020]他の態様においては、生体適合化ポリマーはポリ(N-ビニルピロリジノン)を含む。更に他の態様においては、生体適合化ポリマーは、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸)の塩、ポリ(メタクリル酸)の塩、ポリ(ジエチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルアクリレート)、ポリ(N-ビニルピロリジノン)、ポリ(ビニルアルコール)、及びこれらの混合物を含む群から選択される。他の態様においては、塩はナトリウム及びカリウム塩であり、更に他の態様においては、塩は水溶性の塩である。
【0019】
[0021]更に他の態様においては、分散剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルアクリレート)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ジメチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(ジエチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ジエチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(メタクリル酸)の塩、及びポリ(アクリル酸)の塩、並びにこれらの混合物を含む群から選択される。
【0020】
[0022]本発明において有用な幾つかの消化管吸着剤ポリマーは、下記において製造者別にリストされているもののような、スチレン、ジビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン、並びにアクリレート及びメタクリレートモノマーの重合性及び共重合性モノマーから製造される多孔質ポリマーである:Rohm and Haas Company(現在はDow Chemical Companyの一部):(i)Amberlite(登録商標)XAD-1、 Amberlite(登録商標)XAD-2, Amberlite(登録商標)XAD- 4、Amberlite(登録商標)XAD-7、Amberlite(登録商標)XAD-7HP、Amberlite(登録商標)XAD-8、Amberlite(登録商標)XAD-16、Amberlite(登録商標)XAD-16HP、Amberlite(登録商標)XAD-18、Amberlite(登録商標)XAD-200、Amberlite(登録商標)XAD-1180、Amberlite(登録商標)XAD-2000、Amberlite(登録商標)XAD-2005、Amberlite(登録商標)XAD-2010、Amberlite(登録商標)XAD-761、及びAmberlite(登録商標)XE-305のような多孔質消化管吸着剤ポリマー、並びにAmberchrom(登録商標)CG 71s、m、c、Amberchrom(登録商標)CG 161s、m、c、Amberchrom(登録商標)CG 300s、m、c、及びAmberchrom(登録商標)CG 1000s、m、cのようなクロマトグラフィーグレードの消化管吸着剤ポリマー。Dow Chemical Company: Dowex(登録商標)Optipore(登録商標)L-493、Dowex(登録商標)Optipore(登録商標)V-493、Dowex(登録商標)Optipore(登録商標)V-502、Dowex(登録商標)Optipore(登録商標)L-285、Dowex(登録商標)Optipore(登録商標)L-323、及びDowex(登録商標)Optipore(登録商標)V-503。Lanxess (以前はBayer and Sybron):Lewatit(登録商標)VPOC 1064 MD PH、Lewatit(登録商標)VPOC 1163、Lewatit(登録商標)OC EP 63、Lewatit(登録商標)S 6328A、Lewatit(登録商標)OC 1066、及びLewatit(登録商標)60/150 MIBK。Mitsubishi Chemical Corporation:Diaion(登録商標)HP 10、Diaion(登録商標)HP 20、Diaion(登録商標)HP 21、Diaion(登録商標)HP 30、Diaion(登録商標)HP 40、Diaion(登録商標)HP 50、Diaion(登録商標)SP70、Diaion(登録商標)SP 205、Diaion(登録商標)SP 206、Diaion(登録商標)SP 207、Diaion(登録商標)SP 700、Diaion(登録商標)SP 800、Diaion(登録商標)SP 825、Diaion(登録商標)SP 850、Diaion(登録商標)SP 875、Diaion(登録商標)HP 1MG、Diaion(登録商標)HP 2MG、Diaion(登録商標)CHP 55A、Diaion(登録商標)CHP 55Y、Diaion(登録商標)CHP 20A、Diaion(登録商標)CHP 20Y、Diaion(登録商標)CHP 2MGY、Diaion(登録商標)CHP 20P、Diaion(登録商標)HP 20SS、Diaion(登録商標)SP 20SS、Diaion(登録商標)SP 207SS。Purolite Company:Purosorb(登録商標)AP 250、及びPurosorb(登録商標)AP 400。並びにKaneka Corp.:Lixelleビーズ。
【0021】
本発明の開示には、下記の態様も含まれる。
態様1
放射線被爆によって引き起こされる急性又は慢性の口腔粘膜炎、食道炎、小腸炎、大腸炎、又は胃腸管急性放射線症候群(GI-ARS)を予防又は治療する方法であって、消化管投与(例えば、経口で、栄養管若しくは胃経管で、造瘻経路で、又は直腸で投与)される1又はそれを越える消化管吸着剤ポリマーを用いる方法。
態様2
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、放射線癌治療の合併症(特に、胃腸管合併症、粘膜炎、食道炎、小腸炎、大腸炎、及び胃腸管組織に対する損傷)を予防又は治療のために用いられる方法。
態様3
態様1に記載の方法であって、該放射線源が、放射線によるか、或いは空気、食品、又は水の汚染によって伝達される、ガンマ線、X線、又は宇宙線(例えば宇宙旅行又は飛行機旅行中、或いは太陽フレアからの被爆)である方法。
態様4
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、1又はそれを越える次の重合性モノマー:スチレン、エチルスチレン、アクリロニトリル、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、セチルメタクリレート、セチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルベンジルアルコール、ビニルホルムアミド、メチルメタクリレート、及びメチルアクリレートと、架橋剤との反応から誘導される架橋ポリマー材料を含む方法。
態様5
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、直径10~250,000Åの気孔の全容積として0.3cc/gより大きく~3.0cc/g乾燥ポリマーを有する気孔構造を有することを特徴とし;該架橋ポリマー材料の直径10~250,000Åの気孔容積の、直径250~250,000Åの気孔容積に対する比率が7:1より小さく、該架橋ポリマー材料の直径10~250,000Åの気孔容積の、直径50~250,000Åの気孔容積に対する比率が2:1より小さい方法。
態様6
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、カプセル、錠剤、膏薬、湿布、スラリー形態、坐薬、又は注腸、経口、経直腸、経鼻胃又は胃経管、或いは造瘻経路によって投与される方法。
態様7
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、サイトカイン、スーパー抗原、モノカイン、ケモカイン、インターフェロン、フリーラジカル、プロテアーゼ、アラキドン酸代謝産物、プロスタサイクリン、βエンドルフィン、アナンジミド、2-アラカドニルグリセロール、テトラヒドロビオプテリン、セロトニン、ヒスタミン、ブラジキニン、可溶性CD40リガンド、生理活性脂質、酸化脂質、無細胞ヘモグロビン、成長因子、糖タンパク質、プリオン、毒素、細菌及びウィルス毒素、内毒素、薬物、血管作動性物質、外来抗原、及び腸管内腔からの抗体を含むがこれらに限定されない炎症メディエーターを除去する方法。
態様8
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが生体適合性である方法。
態様9
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、粉末、懸濁液、ビーズ、又は他の規則的若しくは不規則形状の粒子の形態である方法。
態様10
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが0.1ミクロン~2センチメートルの範囲の直径を有する方法。
態様11
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、胃腸管粘膜破壊を予防するか、又は胃腸管粘膜の治癒を促進するか、又は両方を行う方法。
態様12
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、腸炎、腸管透過性を減少させ、腸管内腔から身体への細菌、内毒素、及び毒素の移動を予防し、全身性炎症反応症候群(SIRS)、敗血症を予防する方法。
態様13
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、ヘム急性放射線症候群(Heme-ARS)、急性放射線被爆の後遺症(DEARE)、又は肺のような他の臓器に対する急性放射線症候群の影響の危険性を減少させる方法。
態様14
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、GI-ARS又は急性放射線小腸炎若しくは大腸炎における生存率を向上させる方法。
態様15
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、GI-ARS又は急性放射線小腸炎若しくは大腸炎における体重減少、下痢、嘔吐、疼痛、体液喪失のような症状を軽減する方法。
態様16
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーがガンマ線安定性である方法。
態様17
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、ガンマ線安定性であり、放
射線治療の前又はそれと同時に投与することができる方法。
態様18
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、放射線を吸収しないか又は極僅か吸収し(放射線透過性)、したがって癌のような疾患を治療するための放射線治療線量に影響を与えない方法。
態様19
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、放射線を吸収し(放射線不透過性)、追加の放射線防護を与える方法。
態様20
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、急性放射線小腸炎又は大腸炎を予防又は軽減しながら癌のような疾患を治療するための、放射線治療のより高くかつ潜在的により有効な線量、或いは放射線治療のより多い線量を可能にするところの放射線防護剤として機能する方法。
態様21
態様1に記載の方法であって、該消化管吸着剤ポリマーが、放射線吸収(放射線不透過性)に関係する合併症を予防又は治療し、追加の放射線防護を提供するために使用される方法。
態様22
放射線被曝によって引き起こされる急性又は慢性の口腔粘膜炎、食道炎、小腸炎、大腸炎、又は胃腸管急性放射線症候群(GI-ARS)を予防又は治療するための組成物であって、1又はそれを越える消化管吸着剤ポリマーを含み;
(a)該消化管吸着剤ポリマーが、生体適合性の多孔質ポリマー吸着剤であり;又は
(b)該消化管吸着剤ポリマーが、本明細書において開示する任意の粒径範囲を含み;又は
(c)該消化管吸着剤ポリマーが、急性及び/又は遅発性/慢性放射線小腸炎及び放射線症候群のための放射線防護剤(予防療法)として役立つことができ;又は
(d)該消化管吸着剤ポリマーが、急性又は遅発性/慢性放射線小腸炎若しくは放射線症候群のための放射線被曝後の放射線緩和剤(動的療法)として役立つことができ;又は
(e)該消化管吸着剤ポリマーが、放射線介在性肺症候群に対して正の効果を有し;又は
(f)該消化管吸着剤ポリマーが、放射線介在性ヘム症候群に対して正の効果を有し;又は
(g)該消化管吸着剤ポリマーが、宇宙線又は宇宙放射線の合併症(例えば宇宙においてガンマ線に被爆した宇宙飛行士)を予防及び治療するために用いられ;又は
(h)該消化管吸着剤ポリマーが、放射線癌治療の合併症(特に胃腸管合併症)を予防及び治療するために用いられ;又は
(i)併用療法としての該消化管吸着剤ポリマーが、有効な癌治療のための放射線治療の線量を促進、維持、及び/又は増加させることができ;又は
(j)該消化管吸着剤ポリマーが、放射能爆弾の爆発、不測の原子力発電所の異常、及びテロ行為による放射線災害の合併症を予防及び治療するために用いられ;又は
(k)該消化管吸着剤ポリマーが、生存転帰を向上させ;又は
(l)該消化管吸着剤ポリマーが、体重維持を助け;又は
(m)該消化管吸着剤ポリマーが、腸炎、腸透過性を減少させ、腸上皮を保護又は治療し、細菌、内毒素、及び毒素の移動を予防し、全身性炎症反応症候群(SIRS)、及び敗血症を予防し;又は
(n)該消化管吸着剤ポリマーが、下痢、嘔吐、及び腹痛の重篤度及び期間の症状改善を与え;又は
(o)該消化管吸着剤ポリマーが、1又はそれを越える次の重合性モノマー:スチレン、エチルスチレン、アクリロニトリル、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、セチルメタクリレート、セチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルベンジルアルコール、ビニルホルムアミド、メチルメタクリレート、及びメチルアクリレートと、架橋剤との反応から誘導される架橋ポリマー材料を含み;又は
(p)該消化管吸着剤ポリマーの固体形態が、直径10~250,000Åの気孔の全容積として0.3cc/gより大きく~3.0cc/g乾燥ポリマーを有する気孔構造を有することを特徴とし;該架橋ポリマー材料の直径10~250,000Åの気孔容積の、直径250~250,000Åの気孔容積に対する比率が7:1より小さく、該架橋ポリマー材料の直径10~250,000Åの気孔容積の、直径50~250,000Åの気孔容積に対する比率が2:1より小さく;又は
(q)該消化管吸着剤ポリマーが、炎症メディエーター及び毒素を吸着し、該炎症メディエーター及び刺激物質は、サイトカイン、スーパー抗原、モノカイン、ケモカイン、インターフェロン、フリーラジカル、プロテアーゼ、アラキドン酸代謝産物、プロスタサイクリン、βエンドルフィン、アナンジミド、2-アラカドニルグリセロール、テトラヒドロビオプテリン、セロトニン、ヒスタミン、ブラジキニン、可溶性CD40リガンド、生理活性脂質、酸化脂質、無細胞ヘモグロビン、成長因子、糖タンパク質、プリオン、毒素、細菌及びウィルス毒素、内毒素、薬物、血管作動性物質、外来抗原、及び抗体を含み;又は
(r)該消化管吸着剤ポリマーが、経口、栄養管、胃経管、造瘻経路によって、又は直腸経路によって投与することができる形態であり;又は
(s)該消化管吸着剤ポリマーが、カプセル、錠剤、膏薬、湿布、注腸剤、坐薬、又はスラリー形態であり;又は
(t)(a)~(s)の2又はそれを越える任意の組合せである
組成物。
[0023]概説及び以下の詳細な説明は例示及び例証のみのものであり、添付の特許請求の範囲において規定される発明を限定するものではない。本発明の他の形態は、ここに与える発明の詳細な説明を考慮すれば当業者に明らかになるであろう。
【0022】
[0024]概要及び以下の詳細な説明は、添付の図面と組み合わせて読むと更に理解される。本発明を例示する目的で本発明の代表的な態様を図面において示すが、本発明は、開示されている具体的な方法、組成、及び装置に限定されない。更に、図面は必ずしも等縮尺ではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】[0025]
図1は、窒素脱着等温線によって測定された吸着剤CY12030に関する気孔容積vs気孔径のプロット(dV/dD vs D)を示す。
【
図2】[0026]
図2は、窒素脱着等温線によって測定された吸着剤CY12030に関する気孔容積vs気孔径のプロット(dV/dlogD vs D)を示す。
【
図3】[0027]
図3は、水銀圧入によって測定された吸着剤CY12031に関する気孔容積vs気孔径のプロット(dV/dD vs D)を示す。
【
図4】[0028]
図4は、水銀圧入によって測定された吸着剤CY12031に関する気孔容積vs気孔径のプロット(dV/dD vs D)を示す。
【
図5】[0029]
図5は群平均体重の変化を示す。1群あたり20匹のC57BL/6マウスに、13.5Gyの部分照射(骨髄の5%を遮蔽した)で照射した。マウスを、24時間被爆後の15日間の間、1日に2回、150μLの水(対照)又は150μLの50%消化管吸着剤ポリマースラリー(治療)のいずれかで処置した。最初の強制投与の直後に、追加の補水及び/又は最初の強制投与からのビーズを洗い流すために、対照群及び治療群の両方に対して滅菌水の第2の強制投与を行った。生存しているマウスの平均体重をプロットし(上図)、標準偏差を示す同じプロット(下図)と一緒に示す
【
図6】[0030]
図6は、相対的な体重の変化を示す。1群あたり20匹のC57BL/6マウスに、13.5Gyの部分照射(骨髄の5%を遮蔽した)で照射した。マウスに、15日間の間、1日に2回、150μLの水(対照)又は150μLの50%消化管吸着剤ポリマースラリー(治療)のいずれかを投与した。最初の強制投与の直後に、追加の補水及び/又は最初の強制投与からのビーズを洗い流すために、対照群及び治療群の両方に対して滅菌水の第2の強制投与を行った。照射0日目における体重の割合としての生存しているマウスの体重をプロットし(上図)、標準偏差を示す同じプロット(下図)と一緒に示す。
【
図7】[0037]
図7は、時間(日数)の関数としての、25%体重減少閾値よりも更に高い対照動物vs治療動物の割合(Y軸)を示す。25%の体重減少においては、動物は安楽死させた。
【
図8】[0038]
図8は、骨髄の5%を遮蔽した部分照射の後の動物の生存数を示す。1群あたり20匹のC57BL/6マウスに照射して、酸性水を給餌した。マウスに、24時間被爆後の15日間の間、1日に2回、150μLの水(対照)又は150μLの50%消化管吸着剤ポリマースラリー(治療)のいずれかを投与した。最初の強制投与の直後に、追加の補水及び/又は最初の強制投与からのビーズを洗い流すために、対照群及び治療群の両方に対して滅菌水の第2の強制投与を行った。マウスを毎日チェックし、瀕死になったか、又は基準線から25%の体重減少を超えた場合には安楽死させた。
【
図9】[0033]
図9は、対照及び治療群における死亡までの期間のカプランマイヤー生存曲線を示す。
【
図10】[0034]
図10は、13.5Gyの部分照射(骨髄の5%を遮蔽した)の後の動物の下痢に関するデータを示す(ビヒクルは上図、消化管吸着剤ポリマーは下図)。これらのプロットは、4~8日目からのスコア1(軽度)又は2(重症)の下痢を示すマウスの数を示す(D4a、D4p、D5a、D5p等によって午前及び午後の観察を示した)。灰色のバーは、実験中に生き残ったマウスの下図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[0035]本発明は、本明細書の一部を形成する添付の図面及び実施例に関連して与えられている以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解することができる。本発明は、ここに記載及び/又は示した具体的な材料、装置、方法、用途、条件、又はパラメーターに限定されず、ここで用いる技術用語は例のみの意図で特定の態様を説明する目的のためであり、特許請求する発明を限定することは意図しないことを理解すべきである。本明細書において用いる「複数」という用語は、1つより多いことを意味する。値の範囲が示されている場合には、他の態様は1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までを包含する。同様に、先行詞の「約」を用いることによって値が概算値として表されている場合には、この特定の値は他の態様を形成することが理解される。全ての範囲は包含的であり、組み合わせることができる。
【0025】
[0036]明確にするために別の態様の関連で本明細書において記載する本発明の幾つかの特徴はまた、単一の態様において組み合わせて与えることもできることを認識すべきである。これとは逆に、簡潔にするために単一の態様の関連で記載する本発明の種々の特徴はまた、別々か又は任意のサブコンビネーションで与えることもできる。範囲において示した値に対する更なる言及は、その範囲内のありとあらゆる値を包含する。
【0026】
[0037]以下の規定は、本発明の理解を促進することを意図する。
[0038]「生体適合性」という用語は、消化管吸着剤ポリマーが生理液、生体組織、又は生物と接触している時間中に許容できない臨床的変化を生起させることなく、消化管吸着剤ポリマーを生理液、生体組織、又は生物と接触させることができることを意味するように定義される。幾つかの態様においては、消化管吸着剤ポリマーは、生物の腸及び消化管によって許容されると意図される。本発明の消化管吸着剤ポリマーは、好ましくは非毒性である。生体適合性の吸着剤は、非生分解性、生分解性、又は吸収性ポリマーであってよい。
【0027】
[0039]本明細書において用いる「消化管吸着剤ポリマー」という用語は、腸内(adenteron)吸着剤ポリマー及び腸外吸着剤ポリマーを包含する。
[0040]多孔質のST/DVBコポリマー樹脂上の被覆/分散剤によって、材料に向上した生体適合性を与えることができる。
【0028】
[0041]幾つかの好ましい消化管吸着剤ポリマーは、ジビニルベンゼン及びエチルビニルベンゼン、スチレン、エチルスチレン、アクリロニトリル、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、セチルメタクリレート、セチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルベンジルアルコール、ビニルホルムアミド、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリビニルシクロヘキサン、ジビニルスルホン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリトリトールジメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールジメタクリレート、ジペンタエリトリトールトリメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールジアクリレート、ジペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、及びジビニルホルムアミドから選択される1又はそれを越えるモノマーから、又はモノマー若しくはその混合物を含む残渣を含む。
【0029】
[0042]幾つかの態様においては、消化管吸着剤ポリマーは、少なくとも1種類の架橋剤及び少なくとも1種類の分散剤を含む被覆ポリマーである。分散剤は生体適合性であってよい。分散剤は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシプロピルアクリレート)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ジメチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(ジエチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ジエチルアミノエチルアクリレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(N-ビニルピロリジノン)、ポリ(メタクリル酸)の塩、及びポリ(アクリル酸)の塩、並びにこれらの混合物のような化学物質、化合物、又は材料から選択することができ;架橋剤は、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、トリビニルシクロヘキサン、ジビニルスルホン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリトリトールジメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールジメタクリレート、ジペンタエリトリトールトリメタクリレート、ジペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールジアクリレート、ジペンタエリトリトールトリアクリレート、ジペンタエリトリトールテトラアクリレート、ジビニルホルムアミド、及びこれらの混合物を含む群から選択することができる。好ましくは、消化管吸収剤ポリマーを被覆の形成と同時に成長させて、分散剤を消化管吸収剤ポリマーの表面に化学結合させることができる。
【0030】
[0043]本発明の幾つかの態様は、ポロゲン又は気孔形成剤として有機溶媒及び/又はポリマーポロゲンを用い、その結果として重合中に誘発される相分離によって多孔質ポリマーが生成する。幾つかの好ましいポロゲンは、ベンジルアルコール、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、シクロヘキサノール/トルエン混合物、シクロヘキサノン、デカン、デカン/トルエン混合物、ジ-2-エチルヘキシルリン酸、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、2-エチル-1-ヘキサン酸、2-エチル-1-ヘキサノール、2-エチル-1-ヘキサノール/n-ヘプタン混合物、2-エチル-1-ヘキサノール/トルエン混合物、イソアミルアルコール、n-ヘプタン、n-ヘプタン/エチルアセテート、n-ヘプタン/イソアミルアセテート、n-ヘプタン/テトラリン混合物、n-ヘプタン/トルエン混合物、n-ヘキサン/トルエン混合物、ペンタノール、ポリ(スチレン-co-メチルメタクリレート)/ジブチルフタレート、ポリスチレン/2-エチル-1-ヘキサノール混合物、ポリスチレン/ジブチルフタレート、ポリスチレン/n-ヘキサン混合物、ポリスチレン/トルエン混合物、トルエン、トリ-n-ブチルホスフェート、1,2,3-トリクロロプロパン/2-エチル-1-ヘキサノール混合物、2,2,4-トリメチルペンタン(イソオクタン)、トリメチルペンタン/トルエン混合物、ポリ(プロピレングリコール)/トルエン混合物、ポリ(プロピレングリコール)/シクロヘキサノール混合物、及びポリ(プロピレングリコール)/2-エチル-1-ヘキサノール混合物である。
【0031】
[0044]ここに本発明の詳細な態様を開示するが、開示された態様は単に本発明の例示であり、これらは種々の形態で具現化することができることを理解すべきである。したがって、ここに開示する具体的な構造的及び機能的詳細は限定として解釈すべきではなく、単に当業者に本発明の使用を教示するための基礎として解釈すべきである。下記の具体的な例により本発明をより良好に理解することが可能になる。しかしながら、これらは単に指針の目的で与えるものであり、いかなる限定も与えない。
【0032】
[0045]本発明の生体適合性の吸着剤組成物は複数の気孔を含む。かかる生体適合性消化管吸着剤ポリマーは、1kDa未満から1,000kDaまでの広範囲の毒素を吸着するように設計される。理論によって縛られることは意図しないが、消化管吸着剤ポリマーは所定の分子量の分子を気孔内に封鎖することによって機能すると考えられる。消化管吸着剤ポリマーによって吸着することができる分子の寸法は、消化管吸着剤ポリマーの気孔径が増加するにつれて増加する。逆に、気孔径が所定の分子の吸着のために最適な気孔径を超えて増加すると、かかるタンパク質の吸着は減少する可能性があるか、或いは減少する。
【0033】
[0046]本発明において用いる消化管吸着剤ポリマーは、好ましくは生体適合性の外表面被覆を有するが、これは特に経口又は直腸投与のような幾つかの状況においては絶対に必要という訳ではない。これらの被覆の幾つかは、遊離基グラフトによって消化管吸着剤ポリマー粒子(例えばビーズ)に共有結合させる。遊離基グラフトは、例えばモノマー液滴がポリマービーズに変化する間に起こすことができる。モノマー液滴を被覆して安定化する分散剤は、液滴内のモノマーが重合してポリマーに変化するにつれて液滴表面と共有結合するようになる。懸濁重合において用いる分散剤が生体適合性を与えるものではない場合には、予め形成されたポリマービーズ上に生体適合性の外表面被覆を共有結合でグラフトすることができる。予め形成されたポリマービーズ上への生体適合性被覆のグラフトは、表面被覆に生体適合性を与える消化管吸着剤ポリマーのモノマー又は低分子量のオリゴマーのいずれかの存在下で遊離基開始剤を作用させることによって行う。
【実施例0034】
実施例1:消化管吸着剤ポリマーの合成:
[0047]反応器の構成:塔頂スターラー、バッフル、多段階スターラーブレード、水冷凝縮器、熱電対、バブラー、及びガスケット(適当な場合)をジャケット付きケトル(5L)に取り付けた。全ての使用しないポートは適当な栓でキャップした。上記の熱電対を取り付けた温度制御装置を有する加熱/冷却ユニットを用いて温度を制御した。
【0035】
[0048]重合:ポリビニルアルコール(PVA)を室温(RT)において仕込水(water c
harge)中に分散し、次に70℃に加熱した。次に、残りの塩(表1を参照;MSP、D
SP、TSP、及び亜硝酸ナトリウム)を仕込水中に溶解した。PVA及び塩の溶液を撹拌しながら80℃に加熱した。適当な液滴寸法を形成するためのrpmに設定した撹拌速度を用いて、開始剤を含む予め混合した有機相を反応器中の水相の上に注ぎ入れた。温度が80℃に達したら、反応タイマー(16時間)を始動させた。
【0036】
【0037】
[0049]仕上げ,溶媒レベルの印付け:冷却した後、溶媒をビーズのレベルまで吸い出した。反応器に室温(RT)水を印まで仕込み、50℃~70℃に加熱して30分間撹拌し、3~5分間沈降させ、次にビーズレベルまで吸い出した。このようにしてビーズを5回洗浄した。消化管吸着剤ポリマーを6時間水蒸気ストリッピングし、次にオーブン内で一晩乾燥した(約100℃)。このプロセスによって、球状のジビニルベンゼン多孔質ポリマービーズの形態の清浄な乾燥多孔質吸着剤が得られた。水性条件下で更に反応させるために、このビーズを70%のIPAで再び湿潤し、IPAを水と交換した。
【0038】
実施例2:
[0050]反応器の構成:塔頂スターラー、バッフル、水冷凝縮器、多段階スターラーブレード、熱電対、及びバブラーを、5Lのケトル反応器に取り付けた。頂部の蓋と底部のケトルの間にガスケットを取り付けた。全ての使用しないポートは適当な栓でキャップした。上述の熱電対を取り付けた温度制御装置によって調節した加熱マントルを用いて温度を制御した。
【0039】
[0051]重合:ポリビニルアルコール(PVA)を室温(RT)において仕込水の1/2中に分散し、次に70℃に加熱した。次に、残りの塩(表2を参照;MSP、DSP、TSP、及び亜硝酸ナトリウム)を仕込水の残りの中に溶解した。PVA及び塩溶液を反応器に加え、撹拌しながら87℃に加熱した。適当な液滴寸法を形成するための毎分回転数(rpm)(CY12030、480rpm)に設定した撹拌速度を用いて、開始剤を含む予め
混合した有機相を反応器中の水相の上に注ぎ入れた。温度が87℃に達したら、反応タイマーを16時間に設定して始動させ、反応を進行させた。
【0040】
【0041】
[0052]仕上げ,溶媒レベルの印付け:冷却した後、溶媒をビーズのレベルまで吸い出した。反応器に(RT)水を印まで仕込み、50℃~70℃の間に加熱して30分間撹拌した。次に3~5分間沈降させ、次に液体をビーズレベルまで吸い出した。このようにしてビーズを5回洗浄した。次に、反応器にRTのメタノールを印まで仕込み、RTにおいて5分間撹拌した。ビーズを3~5分間沈降させた。このようにしてビーズを3回洗浄した。消化管吸着剤ポリマーを、ソックスレー装置によってアセトンと共に一晩抽出した。消化管吸着剤ポリマーを8時間水蒸気ストリッピングし、次にオーブン内で約100℃において一晩乾燥した。このプロセスによって、球状の多孔質ポリマービーズの形態の清浄な乾燥多孔質吸着剤が得られた。この材料をCY12001と呼ぶ。
【0042】
[0053]変更した反応:仕込物に関しては表3を参照。ポリマーを、イソプロピルアルコールによって約1ベッドボリューム/時で10回洗浄し、次に精製水によって約1ベッドボリューム/時で10回洗浄した。消化管吸着剤ポリマーを所望の粒径(CY12030、-106/+45ミクロン)に篩別し、反応器装置に加えた。過剰の水を床レベルの直上まで吸い出し、次に仕込水を加えた。温度制御装置を40℃に設定した後に始動させた。塔頂スターラーも同様に始動させた。それぞれの試薬は、システムを40℃の設定点まで昇温している間に加えた。温度が30℃~34℃の間である時点で、水中の過硫酸アンモニウム(AMPS)を加えた。N,N,N,N-テトラメチルエチレンジアミン(TMED)及び水は35℃~36℃の間で加えた。ビニルピロリジノン(VP)は、39℃~40℃の間で加えた。温度が40℃に達した時点で2時間の反応タイマーを始動させて反応を進行させた。冷却した後、溶媒をビーズのレベルまで吸い出した。次に、ビーズをRT水によって30分あたり1ベッドボリュームの速度で3回洗浄した。ビーズを6時間水蒸気ストリッピングした。ビーズをイソプロピルアルコールで再湿潤し、精製H2O中で10回洗浄した。次に、消化管吸着剤ポリマーをオーブン内で100℃において乾燥した。
【0043】
[0054]このプロセスによって、球状の多孔質ポリマービーズの形態の洗浄な乾燥吸着剤が得られた。この材料をCY14149と呼ぶ。
【0044】
【0045】
実施例3:気孔構造の特性分析:
[0055]消化管吸着剤ポリマーの気孔構造を、Micromeritics AutoPore IV9500 V1.09水
銀透過度計(Hg圧入装置)又はMicromeritics ASAP 2010装置(N
2脱着)のいずれか
で分析した。
図1~4を参照。
【0046】
【0047】
【0048】
更なる実施例及び代表的な態様:
[0056]電離放射線に被爆すると急性放射線症候群(ARS)がもたらされる。Epistem
社は胃腸管症候群(GI-ARS)に対する影響を調査した経験があり、これは概して(
健康状態/マウスの種/大きさ等に依存して)12Gyを超える放射線量において起こる。GI-ARSは、通常は重篤な体重減少、下痢、及び最終的には被爆の10日以内の死亡を引き起こす。この研究においては、部分照射(PBI)モデルを用いた。5%の骨髄線量抑制(sparing)のレベル(PBI-BM5)を選択し、照射中において下肢(脛骨、腓骨、及び脚部)を鉛遮蔽した。PBIモデル(2.5~5%の遮蔽)は不測又はテロリストが引き起こす被爆に関する現実的なモデルであると考えられており、即ちかかる場合においては骨髄の少量が何らかの形で遮蔽されるであろうと思われる。このモデルはまた、幾つかのマウスを血液症候群(H-ARS)に入るのに十分に長く生存させることができる利益も有しており、したがって最終的には両方の症候群の緩和剤を評価するために用いることができる。
【0049】
[0057]現時点の研究においては、消化管吸着剤ポリマーの50%スラリーの有効性を評価して、高線量被爆後のC57BL/6マウスの生存期間に対する効果を求めた。13.5Gy
のLD5010放射線量を選択した。これは、投与していない動物において10日目までに50%死亡率を引き起こす線量である。
【0050】
[0058]目的:高線量(13.5Gy)の部分照射後のC57BL/6マウスの生存期間を増加
させる消化管吸着剤ポリマーの50%スラリーの有効性を求めることである。
[0059]方法:40匹の雄の8~10週齢のC57BL/6マウスを購入し、次に20匹の2つ
の群にランダムに分けた。2週間馴致した後、300kVのX線源を用い、骨髄の約5%(両下肢の脛骨、腓骨、及び脚部)を遮蔽して、これらを13.5Gyの部分照射に被爆させた。次に、照射の24時間後から開始して、マウスに0.15mLの水又は0.15mLの消化管吸着剤ポリマーの50%スラリーを一日二回経口で強制投与した。投与の直後に、更に0.15mLの水を全てのマウスに強制投与して、治療剤(スラリー)の投与の移行を促進した。投与量は実験全体にわたって一定に維持した。15日間の実験全体にわたって、動物の生存数、体重、及び下痢の発症を追跡した。
【0051】
[0060]結果:照射後には、予測されるように急激な体重減少があった。次に群平均は水平状態になり、その後、生存しているマウスにおいて体重の回復が起こった。消化管吸着剤ポリマーを摂取した群はビヒクル群よりも体重減少が少なく、最大体重減少は消化管吸着剤ポリマー治療群においては約5%少なかった。更に、25%体重減少(安楽死に関してしばしば定められている基準)に達する時間は、消化管吸着剤ポリマー群においては2日間増加した。25%体重減少までの時間の中央値は、ビヒクル群における5.5日間と比べて7.5日間であり、統計的に有意であった(p=0.03)。
【0052】
[0061]選択した放射線量は、LD5010を与えるが、実際にはLD8510をもたらすと評価された。この増加した死亡率は、経口投与に関連する過度の処理/ストレスの結果であると思われる(LD5010は、未治療のマウスにおける放射線生存曲線を基準としている)。消化管吸着剤ポリマーを投与することによって、GI-ARS期間中(即ち10日目まで)の生存数が向上し、生存期間の平均値及び中央値は1日間シフトした。しかしながら、これは統計的に有意ではなかった(p=0.1045)。生存している動物の割合における群の間の差は、7~9日目(即ちGI-ARSの期間中)において最も大きく;特に、8日目までに生存している動物の割合は、消化管吸着剤ポリマー群に関しては85%であり、ビヒクル群に関しては55%であった。しかしながら、この差は統計的有意には完全には達しなかった(p=0.0824)。
【0053】
[0062]7~9日目に安楽死させた治療マウスの小腸及び大腸の両方を検査したところ、残留している消化管吸着剤ポリマービーズの痕跡は観察されなかった。群あたりの下痢スコアの合計は、対照群において1匹の重症の動物によって少し歪められたが、ビヒクル群においては43(1匹の極端なマウスを含めないと30)、消化管吸着剤ポリマー群にお
いては14であった。群の平均スコアは、ビヒクル群においては2.1(極端なマウスを含めないと1.6)、消化管吸着剤ポリマー群においては0.7であった。消化管吸着剤ポリマー群における8匹と比べて、ビヒクル群における14匹のマウスは下痢を発症した。これらの動物の中で、ビヒクル群においては35(極端なマウスを含めないと28)、消化管吸着剤ポリマー群においては12のインシデントが観察された。これらは、ビヒクル群においては27の軽度のケース及び8の重度のケース(極端なマウスを含めないと26及び2)、消化管吸着剤ポリマー群においては10の軽度のケース及び2の重度のケースを含んでいた。統計分析によって、最大スコア及び平均スコアは消化管吸着剤ポリマー群においてより少なかったことが確認された。更に、下痢を発症していた期間の平均割合は、ビヒクル群における約22%と比べて、消化管吸着剤ポリマー群においては約7%であった。治療の間の差は、最大スコア及び平均スコアに関して完全には統計的に有意ではなかった(それぞれp=0.08及び0.06)。しかしながら、下痢を発症していた期間の割合における治療の間の差は、統計的に有意であった(p=0.02)。
【0054】
[0063]この初期の概念実証研究において、消化管吸着剤ポリマーは、高線量部分照射モデルにおいてGI-ARS期間中に有効性を示した。おそらくは消化管吸着剤ポリマー治療の後の減少した体重減少に直接関係して生存期間が増加し、下痢の重篤度及び期間も減少した。これらの全てが統計的有意性を達成した訳ではなく、観察された死亡率のレベルは強制投与しなかった動物において観察されたものよりも高かった(動物の生存数における有意な向上を達成する能力に影響を与える可能性がある)が、データは非常に有望であり、消化管吸着剤の多孔質ポリマーをGI-ARS緩和剤として用いる可能性を更に調べる正当な理由となる。
【0055】
2.手順
2.1.動物及び飼育:
[0064]この実験のために、合計で40匹のC57BL/6の雄のマウス(Harlan Laboratories,英国)を購入した。動物は供給時に8~10週齢であり、10~12週齢において用いた。全てのマウスを、SPF(特定病原体未感染)バリヤユニット内の個別換気ケージ(IVC)内に保持した。動物は、付番したケージ及び耳のパンチによって識別した。これらのケージの外側でのマウスの取扱いは、常に滅菌状態の層流装置内で行った。1回では最大で2つのケージを開放した。
【0056】
2.2.飼料及び動物の健康:
[0065]動物には、通常飼料(2918x押出飼料、Harlan UK)を不断で給餌した。動物には、到着時から実験の間中にわたって酸性水を与えた。酸性水はまた、4日目から飼料を湿潤させるのにも用いた。21±2℃の一定の室温、及び55±10%の平均相対湿度を存在させた。昼夜サイクルは、それぞれ12時間の明期及び暗期で一定にした(07:00/19:00に切り替えた)。動物の健康を毎日監視し、ケージは一定間隔で清掃した。
【0057】
2.3.放射パラメーター及び線量測定:
[0066]従前の研究に基づいて、LD5010線量を達成する目的で13.5Gyの線量を選択した。
【0058】
[0067]15:00±1時間において、動物に照射した。照射は、300kV、10mAで操作するXstrahl RS320X線セットを用いて行った。X線管は、2.3mmのCu半値
層(HVL)の線質を与えるために更なる濾波器を有していた。マウスに麻酔をかけ、プレキシガラス治具内に下肢部を遮蔽して配置し、X線管の焦点から700mmの距離に配置した。部分照射(PBI-BM5)を0.812Gy/分の線量率で行った。
【0059】
[0068]マウス拘束具内に配置した電離チャンバーを用いて一連の照射中のX線出力チェ
ックを測定したところ、13.5Gyの所期の装置線量に関して実際に加えられた線量は13.48~13.58の範囲であり、したがって十分に許容できるとみなされる2%の変動限界の範囲内であった。
【0060】
2.4.ビヒクルの調製及び投与:
[0069]ビヒクルは滅菌水であり、予め調製したアリコートとして供給された。
[0070]投与の前に、シリンジを逆さまにして気泡を強制投与針に向かって上昇させることによってシリンジ内の気泡を除去した後に、押出して0.15mLの水を排出した。
【0061】
[0071]ビヒクルは、照射の24~25時間後に経口(p.o.)で投与し、次に実験の間中にわたって一日2回(10時間離して)投与した。この0.15mLの量は、体重減少にかかわらず実験の間中にわたって調節しなかった。ビヒクルのそれぞれの投与の直後に、更に0.15mLの水をこれも経口強制投与によって投与した。この量も、実験の間中にわたって調節しなかった。
【0062】
2.5.消化管吸着剤ポリマーの調製及び投与:
[0072]消化管吸着剤多孔質ポリマービーズは、予め調製したアリコートとして供給された。消化管吸着剤多孔質ポリマービーズ(試料番号:CY14149)は、70本の2mLポリ
プロピレンチューブ内で供給され、到着したら4℃において貯蔵した。投与の前に、表面上に空のビーズが浮遊するのを回避するために、懸濁液を引き抜く前にチューブを数回逆さまにしてチューブの底部付近に強制投与針を配した。シリンジを逆さまにして気泡を強制投与針に向かって上昇させることによってシリンジ内の気泡を除去した後に、押出して0.15mLの消化管吸着剤ポリマーを排出した。
【0063】
[0073]消化管吸着剤ポリマービーズは、照射の24~25時間後に経口(強制投与によるp.o.)で投与し、次に実験の間中にわたって一日2回(10時間離して)投与した。この0.15mLの量は、体重減少にかかわらず実験の間中にわたって調節しなかった。ビヒクルのそれぞれの投与の直後に、更に0.15mLの水をこれも経口強制投与によって投与した。この量も、実験の間中にわたって調節しなかった。
【0064】
2.6.臨床観察及び体重測定:
[0074]マウスは毎日体重測定し、4日目から臨床観察(下痢)を毎日記録した。マウスは、瀕死になったら安楽死させた。15%を超える体重減少を示した動物は具合が悪いとみなし、体重減少が24時間の間20%より大きい値で持続し、マウスが瀕死状態の兆候(内向挙動、触って冷たい感触によって判断される減少した体温、毛繕いの消失、及びつまんだ際の持続的な皮膚のテンティングによって判断される脱水)も示した場合には、人道的に安楽死させた。7~9日目に消化管吸着剤ポリマー群からの6匹の瀕死のマウスを剖検のためにランダムに選択して、腸内における試験物の存在を調べた。
【0065】
3.結果及び議論:
3.1.体重減少:
[0075]照射後には、予測されるように急激な体重減少があった。次に群平均は水平状態になり、その後、生存しているマウスにおいて体重の回復が起こった。消化管吸着剤ポリマーを摂取した群はビヒクル群よりも体重減少が少なく、最大体重減少は消化管吸着剤ポリマー治療群においては約5%少なかった。
【0066】
[0076]体重、及び0日目における体重のパーセントしてプロットした相対体重を、
図5及び6に示す。
[0077]体重が少なくとも25%減少するまでの0日目からの日数を、死亡までの期間と同様の方法で分析した(下記を参照)。25%体重減少は、しばしば安楽死基準として用
いられているレベルであり、したがって多くの者による動物の生存プロットを反映している。広範囲の経験から動物はしばしば被爆後のこの体重減少のレベルから回復することが知られているので、Epistemにおいてはこれを他の苦痛の兆候と組み合わせている。それ
らの体重の25%より多くを失わなかった動物を治療群vs対照群ごとにプロットし(
図7)、25%体重減少までの期間をまとめた(表1)。これは、25%体重減少までの期間が、消化管吸着剤ポリマー群においては2日間増加したことを示した。25%体重減少までの期間の中央値は、ビヒクル群における5.5日間と比べて7.5日間であった。この差は統計的に有意であった(p=0.03;ログランク検定)。
【0067】
【0068】
3.2.動物の生存率:
[0078]選択した放射線量は、非投与のマウスにおけるLD50線量の従前の評価値に基づいた。線量応答曲線は非常に急勾配であり、したがって実験がこれらのレベルの生存率を実際に与える可能性は低い。現時点での研究において用いた一日2回の経口強制投与は、水によってマウスに潤いを与える一方で、増加した処理及び投与のストレスによって(特に不健康なマウスにおいて)死亡率が大きく増加する可能性があるので、致死性のレベルに更に影響を与えると思われる。
【0069】
[0079]照射したマウスにおける生存数のレベルを
図8にプロットし、これはLD50
10を与えると評価された線量が実際にはLD85
10を与えたことを示す。1匹を除く全てのマウスは安楽死させた。1ビヒクル群中の1匹は死亡しているのが発見された(マウス18)。
【0070】
[0080]死亡までの時間のカプランメイヤー生存曲線を治療群ごとにプロットし(
図9)、生存期間をまとめた(表2)。これは、消化管吸着剤ポリマー群において死亡までの期間が僅かに増加したことを示した。死亡までの期間の平均値及び中央値は両方とも、ビヒクル群における9日間と比べて10日間であった。しかしながら、この差は統計的に有意ではなかった(p=0.11;ログランク検定)。
【0071】
【0072】
[0081]未だ生存している動物の割合における群の間の差は、ほぼ7~9日目、即ちGI-ARSの期間中において最も大きく現れ;特に8日目までに生存している動物の割合は
、消化管吸着剤ポリマー群に関しては85%、ビヒクル群に関しては55%であった。しかしながら、この差は完全には統計的有意には達していなかった(p=0.08;フィッシャー正確検定)。
【0073】
[0082]7~9日目に安楽死させた治療マウスの小腸及び大腸の両方を検査したところ、消化管吸着剤ポリマービーズの痕跡は観察されなかった。
3.3.下痢:
[0083]下痢は4日目から観察され、これを段階付けた(0は通常の便の硬さであり、1は緩い便であり、2は重症の顕在化した下痢であり;3のスコアは広く肛門周囲/尾の汚れを伴う液体状の糞である)。データを付表中において一覧にし、下
図10においてプロットした。
【0074】
[0084]群あたりの下痢スコアの合計は、対照群において1匹の重症の動物によって少し歪められているが、ビヒクル群においては43(1匹の極端なマウスを含めないと30)、消化管吸着剤ポリマー群においては14であった。群の平均スコアは、ビヒクル群においては2.1(極端なマウスを含めないと1.6)、消化管吸着剤ポリマー群においては0.7であった。
【0075】
[0085]消化管吸着剤ポリマー群における8匹と比べて、ビヒクル群における14匹のマウスは下痢を発症した。これらの動物の中で、ビヒクル群においては35(極端なマウスを含めないと28)、消化管吸着剤ポリマー群においては12のインシデントが観察された。これらは、ビヒクル群においては27の軽度のケース及び8の重度のケース(極端なマウスを含めないと26及び2)、消化管吸着剤ポリマー群においては10の軽度のケース及び2の重度のケースを含んでいた。
【0076】
[0086]更なる統計分析のために、毎日の下痢スコアを用いて、それぞれの動物に関して3つの集約尺度:最大の下痢スコア;平均の下痢スコア;及び下痢が存在した(即ち>0のスコアを有していた)期間(この場合には半日単位)の割合;を導いた。これらの集約尺度を治療群ごとにまとめ(表3)、t検定を用いて治療群を比較した。これにより、最大スコア及び平均スコアは、消化管吸着剤ポリマー群においてはより少なかったことが示された。更に、下痢を伴った期間の割合の平均値は、ビヒクル群における約22%と比べて、消化管吸着剤ポリマー群においては約7%であった。
【0077】
[0087]治療の間の差は、最大スコア及び平均スコアに関しては完全には統計的に有意ではなかった(それぞれ、p=0.08及び0.06)。しかしながら、下痢を伴った期間の割合における治療の間の差は、統計的に有意であった(p=0.02)。
【0078】
【0079】
4.結論:
[0088]この初期の概念実証研究において、消化管吸着剤ポリマーは、高線量部分照射モデルにおいてGI-ARS期間中に有効性を示した。おそらくは消化管吸着剤ポリマー治療の後の減少した体重減少に直接関係して生存期間が増加し、下痢の重篤度及び期間も減少した。これらのデータは有益な統計的傾向を示し、非常に有望で、消化管吸着剤ポリマーをGI-ARS緩和剤又は防護剤として用いる可能性を更に調べる正当な理由となる。
【0080】
[0089]更なる研究に関しては種々のオプションがあり、それぞれは主として与えられた時点における動物の生存数に対する増加した有効性を示すことを目的とする(実際の時点は、GI-ARS中の適当な時点として規定することができ、通常はTBIモデルにおいては6~8日目、PBI-BM5モデルにおいては10日目まで延びる)。而して、8日目において与えられたLD(例えばLD50)(LD508として規定される)からの満足できる大きな増加が示されなければならない。GI-ARSのTBIモデルにおいては、全ての動物は、多少緩和された場合であってもH-ARSのために最終的に死亡する。而して、PBIモデルは、初期段階のGI-ARSを生き延びる動物が後期段階のH-ARSも生き延びるのに十分な骨髄機能を維持するように設計される。いずれも、GI-ARS期間中に有効性を示すために適切で許容しうるモデルである。
【0081】
[0090]有効性を増加させるために、オプションとしては下記のものが挙げられる。
[0091]1.強制投与(これは弱ったマウスにおける処理ストレスのために死亡率を増加させると仮定して)の数又は時間を減少させること。処理ストレスの厳しさは、補水効果によって少し弱めることができ、したがって両方を考慮する必要がある。
【0082】
[0092]2.放射線量を減少させること(GI毒性範囲内に維持するが、より低い線量はLD508~10に近づけることができ、「救出する」ことが期待される緩和剤に関する課題がより少なくなることが認められる)。明らかに、動物の生存線量応答曲線はこの投与スケジュールに関しては未知であるが、本発明者らは、LD曲線は急勾配であり、したがって13Gyへの少しの減少が十分である可能性があることを確信している。
【0083】
[0093]3.PBIからTBIモデルに移行すること。一般に救出するのはより厳しいが、免疫能の欠如(骨髄の生存)及び増加する敗血症の危険性を考慮すると、消化管吸着剤ポリマービーズはこのモデルにおいては異なって挙動する可能性がある。サイトカイン及び細菌毒素の両方の封鎖のプロファイルは異なる可能性がある。
【0084】
[0094]最後に、更なる有効性が示されたら、作用機序を確認すること(向上した組織病理の実証、細菌毒素の減少、向上したサイトカインプロファイルの実証等)が必要である。
【0085】
【0086】
【0087】