(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118779
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】フレキシブルディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20230818BHJP
C08J 7/046 20200101ALI20230818BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20230818BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230818BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
C08J7/046
B32B27/36
B32B27/40
B32B27/30 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023101751
(22)【出願日】2023-06-21
(62)【分割の表示】P 2018137017の分割
【原出願日】2018-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西尾 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉野 賢二
(57)【要約】
【課題】ハードコート層を積層した場合に高い鉛筆硬度となるポリエステルフィルムを安価に提供すること。
【解決手段】厚みが25-100μmであり、試験力除荷後の押し込み深さが1.4μm以下のフレキシブルディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム。前記フレキシブルディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルムを用いたフレキシブルディスプレイの表面保護フィルム用ハードコートフィルム、及びその表示体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度法によるフィルムの結晶化度が48%以上65%以下であり、フィルム表面の結晶化度が1.20以上3.0以下である、フレキシブルディスプレイの保護フィルム用ポリエステルフィルムであって、
ダイナミック超微小硬度計を用いて下記の測定条件で測定した、フィルム厚み方向の試験力除荷後の押し込み深さが1.4μm以下であるフレキシブルディスプレイの保護フィルム用ポリエステルフィルム。
≪測定条件≫
試験モード :負荷-除荷試験
使用圧子 :稜間角115度、三角錐圧子
圧子弾性率:1.140×106N/mm2
圧子ポアソン比:0.07
試験力:50mN
負荷速度 :4.44mN/sec
負荷保持時間:2sec
除荷保持時間:0sec
【請求項2】
全光線透過率が85%以上でありヘイズが3%以下である、請求項1に記載のフレキシブルディスプレイの保護フィルム用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
厚みが25~100μmであり、極限粘度が0.50dl/g以上1.00dl/g以下である、請求項1に記載のフレキシブルディスプレイの保護フィルム用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
面配向係数ΔPが0.160以上である、請求項1に記載のフレキシブルディスプレイの保護フィルム用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
2軸延伸ポリエステルフィルムであり、前記2軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着層を有し、
易接着層は水溶性ポリウレタン樹脂を含む請求項1に記載のフレキシブルディスプレイの保護フィルム用ポリエステルフィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のフレキシブルディスプレイの保護フィルム用ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面にハードコート層を有し、
ハードコート層は分子内に3以上の反応性基を有するアクリレート系樹脂を含み、
ハードコート層の鉛筆硬度は2H以上であるフレキシブルディスプレイの保護フィルム用ハードコートフィルム。
【請求項7】
請求6に記載のフレキシブルディスプレイの保護フィルム用ハードコートフィルムを保護フィルムとして用いた表示体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステルフィルムに関し、ハードコート層などを積層した場合に高い鉛筆硬度が得られるポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイやスマートフォンなどの携帯端末機器は薄膜軽量化が進んでいる。現在、いずれもリジッドな筺体を使用しているため、表示体の保護には一般に強化ガラスが用いられている。一方、近年ではデザインを重視したディスプレイが好まれている。例えば、円形などの特殊な形状のディスプレイが好まれる。特に近年では、曲面へのディスプレイ設置を目的とした屈曲性のディスプレイが求められている。
【0003】
しかしながら、屈曲性のあるディスプレイではガラス素材を用いることができないため、アクリル板などが用いられてきたが、薄膜のアクリル板は傷や衝撃性に弱い問題があった。また、衝撃性に強く耐光性の高いポリカーボネートが用いられることもあるが、高価であり、鉛筆硬度が弱いとの問題があった。一方、ポリエステルフィルムは、安価で、耐衝撃性に優れる一方、鉛筆硬度が不十分との問題があった。
【0004】
これらを達成するため、特許文献1ではハードコート材料として、高硬度で屈曲性のある素材を提案している。しかしながら、素材が高価であり汎用性に問題がある他、表面の耐擦傷性が低いとの問題もある。
【0005】
また、特許文献2のように、ハードコート材料に依存せず高い鉛筆硬度を実現できる透明なポリイミド材料も提案されている。しかしながら、この材料は非常に高価であり量産性に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-008148号公報
【特許文献2】特開2016-222797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような透明フィルムの課題を解決しようとするものであって、ハードコート層を積層した場合に高い鉛筆硬度となるポリエステルフィルムを安価に提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. 厚みが25~100μmであり、試験力除荷後の押し込み深さが1.4μm以下のフレキシブルディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム。
2. 面配向係数ΔPが0.160以上である上記第1に記載のフレキシブルディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム。
3. 2軸延伸ポリエステルフィルムであり、前記2軸延伸ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に易接着層を有する請求項1または2に記載のフレキシブルディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルム。
4. 上記第1~第3のいずれかに記載のフレキシブルディスプレイの表面保護フィルム用ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面にハードコート層を有するフレキシブルディスプレイの表面保護フィルム用ハードコートフィルム。
5. 上記第4に記載のフレキシブルディスプレイの表面保護フィルム用ハードコートフィルムを表面保護フィルムとして用いた表示体。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリエステルフィルムは、ハードコート層などを積層した場合に表面硬度が一般的なポリエステルフィルムよりも高くなり、ハードコートフィルムが表示体の表面保護フィルムとして用いられることにより、表示体表面の傷、衝撃、変形などに強く、デザイン性にも優れた表示体の提供を可能とした。前記表示体は美しい画像を提供できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(表示体)
本発明で言う表示体とは、表示装置を全般に指すものであり、ディスプレイの種類としては、LCD、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、LED、FEDなどがあるが、折曲げ可能な構造であるLCDや、有機EL、無機ELが好ましい。特に層構成を少なくし、色域の広い有機ELがさらに好ましい。
【0011】
表示体の形態としては、大型スクリーン、ディスプレイ、デジタルサイネージ、屈曲型携帯端末、PCなどあり、限定なく使用できる。特に、直接触れて操作するタッチパネル機能があるタッチパネル付きディスプレイ、デジタルサイネージ、屈曲型携帯端末、PCなどに用いることが好ましい。そして、表示体は以下のようなフレキシブルディスプレイであることが特に好ましい。
【0012】
(フレキシブルディスプレイ)
フレキシブルディスプレイは、連続した1枚のディスプレイが、用途に従って屈曲できる構造となっているものであり、同時に薄型、軽量化されているものが望ましい。特に折り曲げ型ディスプレイであるフォルダブルディスプレイや、巻取り型ディスプレイであるローラブルディスプレイなどの他、ペーパーライクに使用できるものなどが挙げられる。
【0013】
(ポリエステルフィルム)
透明フィルムは、PIフィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、TACフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなど光透過性が高く、ヘイズが低いフィルムがあるが、その中でも耐衝撃性が高く、適度な鉛筆硬度を有するポリエステルフィルムが好ましく、安価で製造できるポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0014】
本発明において、ポリエステルフィルムは、1以上のポリエステル樹脂からなる単層構成のフィルムでもよいし、2種類以上のポリエステルを使用する場合、多層構造フィルムでも良いし、繰り返し構造の超多層積層フィルムでもよい。
【0015】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、またはこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体からなるポリエステルフィルムが挙げられる。なかでも、力学的性質、耐熱性、透明性、価格などの点から、2軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0016】
基材フィルムにポリエステルの共重合体を用いる場合、ポリエステルのジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの多官能カルボン酸が挙げられる。また、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪酸グリコール;p-キシレングリコールなどの芳香族グリコール;1,4-シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール;平均分子量が150~20,000のポリエチレングリコールが挙げられる。好ましい共重合体の共重合成分の質量比率は20質量%未満である。20質量%未満の場合には、フィルム強度、透明性、耐熱性が保持されて好ましい。
【0017】
また、ポリエステルフィルムの製造において、少なくとも1種類以上の樹脂ペレットの極限粘度は、0.50~1.0dl/gの範囲が好ましい。極限粘度が0.55dl/g以上であると、ハードコート加工後の鉛筆硬度が向上するため好ましい。更に好ましくは0.58dl/g以上、特に好ましくは0.63dl/g以上である。一方、極限粘度が1.00dl/g以下であると、溶融流体の濾圧上昇が大きくなり過ぎることなく、フィルム製造を安定的に操業し易く好ましい。
【0018】
フィルムが単層構成、積層構成であることに関わらず、フィルムの極限粘度は、0.50dl/g以上であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量が上がることでフィルムの弾性挙動が向上し、鉛筆硬度測定時の鉛筆の荷重に対して、変形を効果的に抑制することができるため好ましい。更に好ましくは0.55dl/g以上、特に好ましくは0.63dl/g以上である。一方、極限粘度が高くなることで鉛筆硬度も向上するが、生産性が低下する懸念があるため、極限粘度が1.00dl/g以下では、操業性よく製造できるため好ましい。
【0019】
ポリエステルフィルムの厚みは、25~100μmであることが好ましく、30~75μmであることがさらに好ましい。厚みが25μm以上であるとハンドリング性、耐衝撃性が向上し好ましく、厚みが100μm以下であると軽量化に有利である他、可撓性、加工性に優れ好ましい。
【0020】
本発明のポリエステルフィルムの表面は、平滑であっても凹凸を有していても良いが、表示体表面の保護フィルム用途に用いられることから、凹凸由来の光学特性低下は好ましくない。ヘイズとしては、3%以下が好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が最も好ましい。ヘイズが3%以下であれば、画像の視認性を向上させることができる。ヘイズの下限は小さいほどよいが、0.1%以上でも構わず、0.3%以上でも構わない。
【0021】
前記のようにヘイズを低下させる目的からはあまりフィルム表面の凹凸は大きくない方がよいが、ハンドリング製の観点から程度な滑り性を与えるために、凹凸を形成する方法としては、表層のポリエステル樹脂層にフィラーを配合したり、フィラー入りのコート層を製膜途中でコーティングすることで形成することができる。
【0022】
基材フィルムに粒子を配合する方法としては、公知の方法を採用できる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、またはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階で、エチレングリコールなどに分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行うことができる。
【0023】
なかでも、ポリエステル原料の一部となるモノマー液中に凝集体無機粒子を均質分散させた後、濾過したものを、エステル化反応前、エステル化反応中またはエステル化反応後のポリエステル原料の残部に添加する方法が好ましい。この方法によると、モノマー液が低粘度であるので、粒子の均質分散やスラリーの高精度な濾過が容易に行えると共に、原料の残部に添加する際に、粒子の分散性が良好で、新たな凝集体も発生しにくい。かかる観点より、特に、エステル化反応前の低温状態の原料の残部に添加することが好ましい。
【0024】
また、予め粒子を含有するポリエステルを得た後、そのペレットと粒子を含有しないペレットとを混練押出しなどする方法(マスターバッチ法)により、さらにフィルム表面の突起数を少なくすることができる。
【0025】
また、ポリエステルフィルムは、全光線透過率の好ましい範囲を維持する範囲内で、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、UV吸収剤、安定剤が挙げられる。
【0026】
ポリエステルフィルムの全光線透過率は、85%以上が好ましく、87%以上がさらに好ましい。85%以上の透過率があれば、視認性を十分に確保することができる。ポリエステルフィルムの全光線透過率は高いほどよいと言えるが、99%以下でも構わず、97%以下でも構わない。
【0027】
本発明のポリエステルフィルムの表面に、ハードコート層などを形成する樹脂との密着性を向上させるための処理を行うことができる。
【0028】
表面処理による方法としては、例えば、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理や、コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が挙げられ、特に限定なく使用できる。
【0029】
また、易接着層などの接着向上層により、密着性を向上させることもできる。易接着層としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂など特に限定なく使用でき、一般的なコーティング手法、好ましくはいわゆるインラインコート処方により形成できる。
【0030】
上述のポリエステルフィルムは、例えば、ポリエステル原料の一部となるモノマー液中に無機粒子を均質分散させて濾過した後、ポリエステル原料の残部に添加してポリエステルの重合を行う重合工程と、そのポリエステルをフィルターを介してシート状に溶融押し出し、これを冷却後、延伸して、基材フィルムを形成するフィルム形成工程を経て、製造することができる。
【0031】
次に、2軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す場合がある)のペレットを基材フィルムの原料とした例について詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。また、単層構成、多層構成など層数を限定するものではない。
【0032】
PETのペレットを所定の割合で混合、乾燥した後、公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押し出し、キャスティングロール上で冷却固化させて、未延伸フィルムを形成する。単層の場合は1台の押し出し機でよいが、多層構成のフィルムを製造する場合には、2台以上の押出機、2層以上のマニホールドまたは合流ブロック(例えば、角型合流部を有する合流ブロック)を用いて、各最外層を構成する複数のフィルム層を積層し、口金から2層以上のシートを押し出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを形成することができる。
【0033】
この場合、溶融押出しの際、溶融樹脂が約280℃程度に保たれた任意の場所で、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行うことが好ましい。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定されないが、ステンレス焼結体の濾材は、Si、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物および高融点有機物の除去性能に優れるため好ましい。
【0034】
さらに、濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、20μm以下が好ましく、特に15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μmを超えると、20μm以上の大きさの異物が十分除去できない。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μm以下の濾材を用いて溶融樹脂の高精度濾過を行うことにより、生産性が低下する場合があるが、粗大粒子による突起の少ないフィルムを得る上で好ましい。
【0035】
具体的には、例えば、PETのペレットを十分に真空乾燥した後、押出し機に供給し、約280℃でシート状に溶融押し出し、冷却固化させて、未延伸PETシートを形成する。得られた未延伸シートを80~120℃に加熱したロールで長手方向に3.1~5.0倍延伸して、一軸配向PETフィルムを得る。さらに、フィルムの端部をクリップで把持して、80~180℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後、幅方向に2.5~5.0倍に延伸する。引き続き、160~250℃の熱処理ゾーンに導き、1~60秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させる。この熱処理工程中で、必要に応じて、幅方向または長手方向に1~12%の弛緩処理を施してもよい。
【0036】
(結晶化度)
結晶化度は主に熱処理ゾーンでのフィルムにかかる熱量によって決まる。熱量は、製膜設備条件、製膜速度、フィルム厚さなど種々条件によって決まるため、熱処理温度だけで結晶化度が決まるものでもないが、熱処理温度としては、160~250℃が好ましく、200~240℃がさらに好ましいと言える。160℃以上とすることで結晶化を促進させることができて好ましい。250℃以下で熱処理することで、ポリエステルの再溶融による結晶化低下を抑制することができて好ましい。
【0037】
ハードコート加工後の十分な鉛筆硬度を確保するためには、密度法によるフィルムの結晶化度が48%以上であることが好ましく、ATR法によるフィルム表面の結晶化度が1.20以上であることが好ましい。
【0038】
密度法によるポリエステルフィルムの結晶化度は、48%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、52%以上であることが更に好ましい。結晶化度は高いことが好ましいが、製造できるフィルムの上限は65%程度である。
【0039】
ATR法によるフィルム表面の結晶化度は1.20以上であることが好ましく、1.25以上であることがより好ましく、1.27以上であることが更に好ましい。ATR法によるフィルム表面の結晶化度についても高いことが好ましいが、製造できるフィルムの上限は3.0程度である。
【0040】
ダイナミック超微小硬度計によるフィルム厚み方向の試験力除荷後の押し込み深さは1.4μm以下であることが好ましく、1.35μm以下であることがより好ましく、1.30μm以下であることが更に好ましい。試験力除荷後の押し込み深さ(負荷をかけた最終的な変形量)を低くすることで鉛筆硬度評価後の変形を抑制することができ、鉛筆硬度を向上させることができる。
【0041】
面配向ΔPは0.160以上であることが好ましく、0.163以上であることがより好ましく、0.165以上であることが更に好ましい。面配向を高めることで厚み方向の負荷に対して強くなり、除荷時の変形量を抑制することができる。高いことが好ましいが、製膜できるフィルムの上限は0.170程度である。
【0042】
面積延伸倍率は12.5倍以上が好ましく、13倍以上であることがより好ましく、14倍以上であることが更に好ましい。面積倍率を高くすることでフィルムの面方向の配向を強めることができ、ΔPを高めることができる。
【0043】
延伸方法は同時二軸延伸、逐次二軸延伸など特に限定なく製膜できる。
【0044】
(易接着層)
易接着層は、前記塗布液を未延伸又は縦方向の1軸延伸フィルムの片面または両面に塗布した後、75~150℃で乾燥し、さらに1方向または2方向に延伸して得ることができる。最終的な易接着層の塗布量は、0.05~0.20g/m2に管理することが好ましい。塗布量が0.05g/m2以上であると、接着性が満たされて好ましい。一方、塗布量が0.20g/m2以下であると、耐ブロッキング性が得られて好ましい。
【0045】
易接着層に用いられる樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリカーボネートポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等、特に限定なく使用できる。易接着層の架橋剤としては、メラミン系、イソシアネート系、オキサゾリン系、エポキシ系などの架橋剤が挙げられる。2種以上を混合して使用することもできる。これらはインラインコートの性質上、水系塗布液によって塗工されることが好ましく、前記の樹脂や架橋剤は水溶性又は水分散性の樹脂や化合物であることが好ましい。
【0046】
易接着層には易滑性を付与するために粒子を添加することが好ましい。微粒子の平均粒径は2μm以下であることが好ましい。粒子の平均粒径が2μmを超えると、粒子が易接着層から脱落しやすくなる。易接着層に含有させる粒子としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレー、リン酸カルシウム、雲母、ヘクトライト、ジルコニア、酸化タングステン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム等の無機粒子や、スチレン系、アクリル系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、シリコーン系等の有機ポリマー系粒子等が挙げられる。これらは、単独で易接着層に添加されてもよく、2種以上を組合せて添加することもできる。
【0047】
また、塗布液を塗布する方法としては、上記の塗布層と同様に公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
【0048】
(ハードコート層)
ハードコート層を形成する樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステル、シロキサン系、無機ハイブリッド系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシ系など特に限定なく使用できる。また、2種類以上の材料を混合して用いることもできるし、無機フィラーや有機フィラーなどの粒子を添加することもできる。その中でも、(メタ)アクリル酸エステルや、アクリレート系樹脂が好ましく、必須成分として分子内に3以上の反応性基を有する樹脂が好ましい。
【0049】
(3以上の反応性基を有する樹脂)
3以上の反応性基を有する樹脂としては、例えばトリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(3-アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(2-メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(3-メタクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレートなどのトリス[(メタ)アクリロイルオキシアルキル]イソシアヌレート、さらにはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
そのほか、市販品のハードコート剤なども使用できる。例えば、荒川化学工業社製ビームセット(登録商標)シリーズ、アイカ工業社製アイカアイトロン(登録商標)シリーズ、東洋インキ社製Lioduras(登録商標)シリーズなど、特に限定なく使用でき、他の(メタ)アクリル酸エステル化合物類と混合して使用することもできる。
【0051】
(光重合開始剤)
本発明のハードコート層を、紫外線を用いて硬化する場合には、光重合開始剤を添加することが必要となる。光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサンソン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β-クロールアンスラキノン、(2,4,6-トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2-ベンゾチアゾール-N,N-ジエチルジチオカルバメート等が挙げられる。特に、表面硬化性に優れるとされる、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンが好ましく、中でも2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンが特に好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
光重合開始剤の添加量は、特に限定されない。例えば、用いられる樹脂に対して1~10質量%程度を用いることが好ましい。1質量%以上添加することで十分な硬化性を得ることができ、10質量%以下とすることで3以上の反応性基を有する樹脂の含有比率が高く、高架橋密度で高硬度なハードコート膜にすることができる。
【0053】
(膜厚)
ハードコート層の膜厚としては、1~55μmが好ましい。1μmより厚ければ十分に硬化し、良好な鉛筆硬度が得られる。また厚みを55μm以下にすることで、ハードコートの硬化収縮によるカールを抑制し、フィルムのハンドリング性を向上させることができる。
【0054】
(塗布方法)
ハードコート層の塗布方法としては、マイヤーバー、グラビアコート、ダイコーター、ナイフコーターなど特に限定なく使用でき、粘度、膜厚に応じて適宜選択できる。乾燥温度は60~100℃が好ましく、60~90℃がさらに好ましい。60℃以上であれば短時間で十分に乾燥でき、100℃以下であればポリエステルフィルムの変形など発生せず好ましい。
【0055】
(硬化条件)
ハードコート層の硬化方法としては、紫外線、電子線などのエネルギー線や、熱による硬化方法など使用できるが、フィルムへのダメージを軽減させるため、紫外線や電子線などが好ましい。
【0056】
(紫外線)
紫外線ランプとして、高圧水銀ランプ、無電極ランプなどあるが適宜選択して使用することができる。紫外線の積算光量としては、50~500mJ/cm2が好ましく、100~200mJ/cm2がさらに好ましい。50mJ/cm2以上の積算光量を照射すれば十分な鉛筆硬度が得られ、500mJ/cm2以下の積算光量であれば加工速度を上げることができ、経済性が向上し好ましい。窒素、アルゴン、二酸化炭素などの不活性ガス中で紫外線を照射することで硬化性を向上することもでき、適宜選択できる。
【0057】
(電子線)
電子線照射装置は、エリア型、走査型などあるが、適宜選択して使用することができる。電子線の積算照射量としては、25~500kGyが好ましく、50~300kGyがさらに好ましい。25kGy以上の積算照射量を照射すれば十分な鉛筆硬度が得られ、500kGy以下であれば加工速度を上げることができ、経済性が向上し好ましい。窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で、酸素濃度500ppm以下で照射することが好ましい。酸素濃度を500ppm以下とすることでオゾン発生を抑制し、作業時の安全性を向上することができる。
【0058】
(鉛筆硬度)
ハードコート層の鉛筆硬度としては、2H以上が好ましく、3H以上が更に好ましく、4H以上が特に好ましい。2H以上の鉛筆硬度があれば、容易に変形することはなく、視認性を低下させない。一般にハードコート層の鉛筆硬度は高い方が好ましいが10H以下で構わず、8H以下でも構わず、6H以下でも実用上は問題なく使用できる。
【0059】
(ハードコート層の種類)
本発明におけるハードコート層は、上述のような表面の鉛筆硬度を高めてディスプレイの保護をする目的に使用できるものであれば、他の機能が付加されたものであってもよい。例えば、上記のような一定の鉛筆硬度を有する防眩層、防眩性反射防止層、反射防止層、低反射層および帯電防止層などの機能性が付加されたハードコート層も本発明おいては好ましく適用される。
【実施例0060】
次に、本発明の効果を実施例および比較例を用いて説明する。まず、本発明で使用した特性値の評価方法を下記に示す。
【0061】
(1)極限粘度
フィルムまたはポリエステル樹脂を粉砕して乾燥した後、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(質量比)の混合溶媒に溶解した。この溶液に遠心分離処理を施して無機粒子を取り除いた後に、ウベローデ粘度計を用いて、30℃で0.4(g/dl)の濃度の溶液の流下時間及び溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用い、Hugginsの定数が0.38であると仮定して極限粘度を算出した。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの該当するポリエステル層を削り取ることで、各層単体の極限粘度を評価した。
【0062】
(2)試験力除荷後の押し込み深さ
試料を約2cm角に切り取り、マイクロカバーガラス18×18mm(マツナミカ゛ラス社製)上に、測定面の反対面を接着剤(セメダインハイスーパー30)にて固定した。貼着固定後、12時間以上室温で放置し、その後、ダイナミック超微小硬度計「DUH-211」(島津製作所製)を用いて、次の条件で、試験力除荷後の押し込み深さ(μm)を測定した。
≪測定条件≫
試験モード :負荷-除荷試験
使用圧子 :稜間角115度、三角錐圧子
圧子弾性率:1.140×106N/mm2
圧子ポアソン比:0.07
試験力 :50mN
負荷速度 :4.44mN/sec
負荷保持時間 :2sec
除荷保持時間 :0sec
【0063】
(3)面配向係数ΔP
5点サンプルを採取し、JIS K7142:1996の5.1(A法)により、ナトリウムD線を光源としてアッベ屈折計によりフィルム長手方向の屈折率(Nx)、幅方向の屈折率(Ny)、厚み方向の屈折率(Nz)を測定し、下記式によって面配向係数(ΔP)を算出した。なお、得られた面配向係数の平均値を面配向係数とした。
ΔP=(Nx+Ny)/2-Nz
(4)鉛筆硬度
JIS K 5600-5-4:1999に準拠し、荷重750g、速度1.0mm/sで測定し、変形の有無を目視確認した。変形が無いものをOKとした。5回測定し、OKの評価が4回以上の鉛筆硬度を測定値とした。
【0064】
(ウレタン樹脂の重合)
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン72.96質量部、ジメチロールプロピオン酸12.60質量部、ネオペンチルグリコール11.74質量部、数平均分子量2000のポリカーボネートジオール112.70質量部、及び溶剤としてアセトニトリル85.00質量部、N-メチルピロリドン5.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン9.03質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマーD溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して攪拌混合しながら、イソシアネート基末端プレポリマーを添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトニトリルおよび水の一部を除去することにより、固形分35質量%の水溶性ポリウレタン樹脂(A)を調製した。
【0065】
(水溶性カルボジイミド化合物の重合)
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロート、および攪拌機を備えたフラスコにイソホロンジイソシアネート200質量部、カルボジイミド化触媒の3-メチル-1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド4質量部を投入し、窒素雰囲気下、180℃において10時間撹拌し、イソシアネート末端イソホロンカルボジイミド(重合度=5)を得た。次いで、得られたカルボジイミド111.2g、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量400)80gを100℃で24時間反応させた。これに水を50℃で徐々に加え、固形分40質量%の黄色透明な水溶性カルボジイミド化合物(B)を得た。
(易接着層塗布液の調製)
【0066】
下記の塗剤を混合し、塗布液を作製した。
水 16.97質量部
イソプロパノール 21.96質量部
水溶性ポリウレタン樹脂(A) 3.27質量部
水溶性カルボジイミド化合物(B) 1.22質量部
粒子 0.51質量部
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量部
(シリコーン系、固形分濃度100質量%)
【0067】
(ハードコート塗布液10の調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学工業社製、A-TMM-3、固形分濃度100%)95重量部、光重合開始剤(BASFジャパン社製、イルガキュア(登録商標)907、固形分濃度100%)5重量部、レベリング剤(ビックケミージャパン社製、BYK307、固形分濃度100%)0.1重量部を混合し、トルエン/MEK=1/1の溶媒で希釈して、濃度40%の塗布液10を調製した。
【0068】
(ハードコート塗布液11の調製)
ウレタンアクリレート(共栄社化学社製、UA-306H、固形分濃度100%)50重量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学工業社製、A-TMM-3、固形分濃度100%)45重量部、光重合開始剤(BASFジャパン社製、イルガキュア(登録商標)907、固形分濃度100%)5重量部、レベリング剤(ビックケミージャパン社製、BYK307、固形分濃度100%)0.1重量部を混合し、トルエン/MEK=1/1の溶媒で希釈して、濃度40%の塗布液11を調製した。
【0069】
(ポリエチレンテレフタレートペレットの調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口および生成物取り出し口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用い、TPAを2トン/hrとし、EGをTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間で、255℃で反応させた。次いで、上記第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成ポリマー(生成PET)に対し8質量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウムを含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が20ppmのとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1.5時間で、260℃で反応させた。次いで、上記第2エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、さらに生成PETに対してP原子が20ppmとなる量のTMPAを含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間0.5時間で、260℃で反応させた。上記第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、さらに、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度5μm粒子90%カット)で濾過し、極限粘度0.58dl/gのポリエチレンテレフタレートペレットを得た。
【0070】
(実施例1)
上記のポリエチレンテレフタレートペレットを180℃で8時間減圧乾燥(3Torr)した後、押出機に、ポリエチレンテレフタレートのペレットを押出機にそれぞれ供給し、285℃で融解した。このポリマーを、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに接触させ冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この未延伸フィルムを長手方向に85℃で3.4倍に延伸した。前記易接着層塗布液をロールコート法でPETフィルムの片面に塗布した後、80℃で20秒間乾燥した。なお、最終(二軸延伸後)の乾燥後の塗布量が0.06g/m2になるように調整した。この一軸延伸フィルムをテンターを用いて幅方向に95℃で4.3倍延伸し、235℃にて5秒間熱処理し、ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
【0071】
前記のポリエチレンテレフタレートフィルムの易接着層上にマイヤーバーを用いて、ハードコート塗布液10を乾燥後の膜厚が5.0μmになるように塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、紫外線を照射し(積算光量200mJ/cm2)、ハードコートフィルムを得た。
【0072】
(実施例2~4、比較例1~3)
延伸倍率を表1のように変更した以外は実施例1と同様に延伸し、実施例2~4、比較例1~3のポリエチレンテレフタレートフィルム及びハードコートフィルムを得た。
【0073】
(実施例5、6)
表1のように厚みを変更した以外は実施例1と同様に延伸し、実施例5、6のポリエチレンテレフタレートフィルム及びハードコートフィルムを得た。
【0074】
(実施例7)
固有粘度0.62dl/gのポリエチレン-2,6-ナフタレート(PEN)を用いて、延伸倍率を変更した他は実施例1と同様に延伸しポリエチレンナフタレートフィルム及びハードコートフィルムを得た。
【0075】
(実施例8、9)
実施例1と同一のポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、表1に記載したハードコート条件を採用して、ハードコートフィルムを作製した。
【0076】
作製したハードコートフィルムを、25μm厚の粘着層を介して、有機ELモジュールに貼合し、フレキシブルディスプレイを作製した。各実施例においては、ハードコートフィルムにより、外部衝撃から有機ELモジュールを保護することができ、良好な視認性を得ることができた。
【0077】
本発明によれば、ハードコート層などを積層した場合に表面硬度が高くなるポリエステルフィルムを提供でき、本発明のポリエステルフィルムの表面にハードコート層を積層したハードコートフィルムは、フレキシブルディスプレイ等の表示体の表面保護フィルムとして用いられることにより、表示体表面の傷、衝撃、変形などに強く、デザイン性にも優れた表示体の提供を可能とした。