(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023011881
(43)【公開日】2023-01-24
(54)【発明の名称】癌の処置におけるジヒドロテストステロンならびにジヒドロテストステロン誘導体および促進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/58 20060101AFI20230117BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230117BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230117BHJP
A61K 31/569 20060101ALI20230117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230117BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230117BHJP
A61K 31/37 20060101ALI20230117BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20230117BHJP
A61K 31/4166 20060101ALI20230117BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20230117BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20230117BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20230117BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230117BHJP
【FI】
A61K31/58
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/569
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/37
A61K38/12
A61K31/4166
A61K31/19
A61K31/198
A61K31/436
A61K38/16
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022178011
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2018560496の分割
【原出願日】2017-05-18
(31)【優先権主張番号】62/338,122
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514182366
【氏名又は名称】タイム,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【弁理士】
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,スティーブン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非小細胞肺癌、卵巣癌、乳癌、子宮頸癌、膵臓癌、前立腺癌、胃癌、結腸癌、脳癌、肝臓癌、精巣癌、白血病、又はリンパ腫等の癌を石灰化し、癌を外科的に切除するための方法を提供する。
【解決手段】患者において癌を処置する方法は、患者に有効量のジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、又はそれらの組み合わせを投与することを含む。ジヒドロテストステロン誘導体が、スタノゾロールであることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に有効量のジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせを投与することを含む、患者において癌を処置する方法。
【請求項2】
ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせの量が、癌の少なくとも一部の石灰化をもたらすための十分量である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ジヒドロテストステロン誘導体が、スタノゾロールである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
さらに有効量のチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤を投与することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
さらに有効量のメラニン、メラニン促進剤、もしくはそれらの組み合わせ;p450 3A4促進剤;ロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤;またはそれらの組み合わせを投与することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
さらに成長ホルモン阻害剤を投与することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤が、メチル(2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、D-チロシン エチルエステル塩酸塩、メチル(2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート、H-D-Tyr(TBU)-アリルエステルHCl、メチル(2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4,5-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル(2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル(2R)-2-アミノ-3-(4-[(2-クロロ-6-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル)プロパノエート、メチル(2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル(2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、ジエチル2-(アセチルアミノ)-2-(4-[(2-クロロ-6-フルオロベンジル)オキシ]ベンジルマロネート、メチル(2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル(2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル(2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル(2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、H-DL-tyr-OMe HCl、H-3,5-ジヨード-tyr-OMe HCl、H-D-3,5-ジヨード-tyr-OMe HCl、H-D-tyr-OMe HCl、D-チロシン メチルエステル塩酸塩、D-チロシン-OMe HCl、メチル D-チロシネート塩酸塩、H-D-tyr-OMe HCl、D-チロシン メチルエステル HCl、H-D-Tyr-OMe HCl、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)メチルエステル塩酸塩、メチル(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート塩酸塩、メチル(2R)-2-アザニル-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート塩酸塩、3-クロロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン エチルエステル塩酸塩、DL-m-チロシン、DL-o-チロシン、Boc-Tyr(3,5-I2)-OSu、Fmoc-tyr(3-NO2)-OH、
α-メチル-DL-チロシン、またはそれらの組み合わせである、請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
メラニン促進剤が、メトキサレンまたはメラノタンIIである、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
p450 3A4促進剤が、5,5-ジフェニルヒダントイン、バルプロ酸、またはカルバマゼピンである、請求項5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤が、N-[(2S,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブチリル]-L-ロイシンである、請求項5~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤が、ラパマイシンである、請求項5~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
成長ホルモン阻害剤が、膵臓成長ホルモン阻害剤である、請求項6~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
成長ホルモン阻害剤が、オクトレオチドまたはソマトスタチンである、請求項6~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
療法剤のいずれかの投与が、経口、皮下、静脈内、経皮、膣内、直腸、またはそれらのあらゆる組み合わせである、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
癌が、アンドロゲン受容体陽性癌である、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
癌が、非小細胞肺癌、卵巣癌、乳癌、子宮頸癌、膵臓癌、前立腺癌、胃癌、結腸癌、脳癌、肝臓癌、精巣癌、白血病、またはリンパ腫である、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
さらに石灰化した癌を患者から外科的に切除することを含む、請求項2~16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2016年5月18日に出願された米国仮出願第62/338,122号の利益を主張し、その全体が、参照により本明細書に援用される。
【0002】
[0002] 本開示は、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせを、処置を必要とする患者に投与することを含む、癌を処置する方法に向けられている。
【背景技術】
【0003】
[0003] 米国国立癌研究所の2008年に関する監視疫学および最終結果(SEER)データベースによれば、1200万人近いアメリカ人が浸潤癌を有する。癌は、米国における2番目に一般的な死因であり(上は心疾患のみ)、4件の死亡中1件を占めている。およそ1600人のアメリカ人が毎日癌で死んでいると推定されている。癌の医学的、感情的および心理的コストに加えて、癌は、個人および社会の両方に対して重大な金銭的コストを有する。国立衛生研究所により、2010年における癌の全体的なコストは2638億ドルであったと推定されている。加えて、さらに1401億ドルが、早期死亡により生産性において失われていると推定されている。
【0004】
[0004] 今日の癌処置は、外科手術、ホルモン療法、放射線、化学療法、免疫療法、標的療法、およびそれらの組み合わせを含む。癌の外科的除去は、著しく進歩してきた;しかし、依然として疾患の再発の高い可能性がある。薬物、例えばアロマターゼ阻害剤ならびに黄体形成ホルモン放出ホルモン類似体および阻害剤を用いるホルモン療法は、前立腺癌および乳癌の処置において比較的有効であった。放射線ならびにコンフォーマル陽子線放射療法、定位放射線手術、定位放射線療法、術中放射線療法、化学修飾剤、および放射線増感剤の関連技法は、癌性細胞の殺傷において有効であるが、周囲の正常組織も殺傷し、変化させ得る。単独および組み合わせでの化学療法薬、例えば、アミノプテリン、シスプラチン、メトトレキセート、ドキソルビシン、ダウノルビシン等が、しばしばDNA複製プロセスを変化させることにより、癌細胞の殺傷において有効である。生物学的反応調節剤(BRM)療法、生物学的療法、生物療法、または免疫療法は、癌細胞の増殖を変化させ、または自然免疫反応に影響を及ぼし、生物学的薬剤、例えば、インターフェロン類、インターロイキン類、および他のサイトカイン類、ならびに抗体、例えば、リツキシマブおよびトラスツズマブ、ならびにさらには癌ワクチン、例えば、シプロイセル-Tの患者への投与を含む。
【0005】
[0005] 最近、新規の標的療法が、癌と戦うために開発されている。化学療法は癌性細胞および正常細胞両方を殺傷することにより作用し、癌性細胞に対してより大きな作用を有するため、これらの標的療法は化学療法とは異なる。標的療法は、癌細胞の増殖、分裂および拡散を制御するプロセスならびに癌細胞を自然に死滅させるシグナルに影響を及ぼすことにより作用する。あるタイプの標的療法は、増殖シグナル阻害剤、例えばトラスツズマブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、セツキシマブ、ダサチニブおよびニロチニブを含む。別のタイプの標的療法は、癌が周囲の血管系および血液供給を増大させるのを阻害する血管新生阻害剤、例えばベバシズマブを含む。さらに別のタイプの標的療法は、直接的な癌細胞の死を誘導することができるアポトーシス誘導薬を含む。
【0006】
[0006] これらの処置の全ては程度の差はあれ有効であったが、それらは全て、欠点お
よび限界を有する。処置の多くが高価であるであることに加えて、それらはしばしば不正確すぎ、または癌がそれらに適応して耐性になりうる。
【0007】
[0007] 従って、追加の癌処置に関する強い必要性が存在する。特に、他の形態の処置に耐性になっている癌に関する処置に関する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
[0008] 本開示は、患者において癌を処置する方法であって、患者に有効量のジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせを投与することを含む方法に向けられている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】[0009]
図1は、イヌの遠位橈骨上の癌性腫瘍を示すX線写真である。
【
図2】[0010]
図2は、本開示の好ましい側面に従う処置後の
図1において示された癌性腫瘍の石灰化を示すX線写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0011] 本主題は、本開示の一部を形成する以下の詳細な記載への参照により、より容易に理解されうる。本発明は、本明細書において記載される、および/または示される特定の製品、方法、条件またはパラメーターに限定されないこと、ならびに本明細書で用いられる用語法は、特定の態様を例としてのみ記載する目的のためのものであり、特許請求される発明を限定することは意図されていないことは理解されるべきである。
【0011】
[0012] 別途本明細書で定義されない限り、本出願に関連して用いられる科学用語および技術用語は、当業者により一般的に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈により別途要求されない限り、単数形の用語は複数を含むものとし、複数形の用語は単数を含むものとする。
【0012】
[0013] 上記で、そして本開示全体にわたって用いられる際、以下の用語および略語は、別途示されない限り、以下の意味を有するように理解されるものとする。
[0014] 本開示において、単数形“a”、“an”および“the”は、複数形を含み、特定の数値への言及は、文脈がそうではないと明確に示さない限り、少なくともその特定の値を含む。従って、例えば“化合物(a compound)”への言及は、そのような化合物(compounds)および当業者に既知のその均等物等の1以上への言及である。用語“複数”は、本明細書で用いられる際、1より多くを意味する。値の範囲が表現されている場合、別の態様は、その1つの特定の値からおよび/またはその他の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞“約”の使用により近似値として表されている場合、その特定の値は別の態様を形成することが理解されている。全ての範囲は、包含的かつ組み合わせ可能である。
【0013】
[0015] 本明細書で用いられる際、用語“構成要素”、“組成物”、“化合物の組成物”、“化合物”、“薬物”、“薬理学的に有効な薬剤”、“有効薬剤”、“療法薬”、“療法”、“処置”、または“医薬品”は、本明細書において対象(ヒトまたは動物)に投与された際に局所性および/または全身性作用により所望の薬理学的および/または生理的作用を誘導する化合物(単数または複数)または物質の組成物を指すために互換的に用いられている。
【0014】
[0016] 本明細書で用いられる際、用語“処置”または“療法”(ならびにそれらの異なる形態)は、防止的(例えば予防的)、治療的または姑息的処置を含む。本明細書で用いられる際、用語“処置すること”は、病気、疾患または障害の少なくとも1種類の有害
な、または負の作用または症状を緩和または低減することを含む。この病気、疾患または障害は、癌であることができる。この病気、疾患または障害は、癌の症状または副作用でもありうる。
【0015】
[0017] 上記で、そして本開示全体にわたって用いられる際、用語“有効量”または“療法上有効量”は、関連する障害、病気または副作用の処置に関して所望の結果を達成するために必要な投与量において、および期間に関して有効な量を指す。本発明の構成要素の有効量は、個人における選択される特定の化合物、構成要素または組成物、投与経路、および所望の結果を引き出す構成要素の能力によってだけでなく、個人の緩和されるべき疾患状態または病気の重症度、ホルモンレベル、年齢、性別、体重、患者の体の状態、および処置されている病理学的状態の重症度、その時その特定の患者が従っている同時薬物療法または特別な食事のような要因、ならびに当業者が認識するであろう他の要因によっても、患者ごとに異なると考えられ、適切な投与量は、主治医の裁量におけるものであることは、理解されるであろう。投与計画は、向上した療法的応答を提供するように調節されることができる。有効量は、構成要素のあらゆる毒性または有害作用が療法的に有益な作用により上回られる量でもある。
【0016】
[0018] “薬学的に許容可能な”は、妥当な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織との接触に適しており、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題、厄介な問題(complications)を伴わず、合理的な利益/リスク比と釣り合っている化合物、材料、組成物および/または剤形を指す。
【0017】
[0019] 本発明の範囲内で、(記載される促進剤および阻害剤を含む)開示される化合物は、薬学的に許容可能な塩類の形態で調製されることができる。“薬学的に許容可能な塩類”は、開示される化合物の誘導体を指し、ここで、親化合物が、その酸または塩基塩類を作ることにより修飾されている。薬学的に許容可能な塩類の例は、塩基性残基、例えばアミンの鉱酸または有機酸塩類;酸性残基、例えばカルボン酸のアルカリまたは有機塩類;等を含むが、それらに限定されない。薬学的に許容可能な塩類は、例えば非毒性の無機または有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩類または第四級アンモニウム塩類を含む。例えば、そのような従来の非毒性塩類は、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸等に由来する塩類;および有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸等から調製された塩類を含む。これらの生理的に許容可能な塩類は、当該技術で既知の方法により、例えば遊離アミン塩基を水性アルコール中で過剰量の酸により溶解させる、または遊離カルボン酸をアルカリ金属塩基、例えば水酸化物で、もしくはアミンで中和することにより調製される。
【0018】
[0020] 試薬、反応条件等に応じて、本明細書で記載される化合物は、例えばそれらの塩酸塩またはトシル酸塩として使用または調製されることができる。同形の結晶形態、全キラルおよびラセミ体、N-酸化物、水和物、溶媒和物、および酸塩水和物も、本発明の範囲内であることが意図されている。
【0019】
[0021] 本発明の特定の酸性または塩基性化合物は、双性イオンとして存在することができる。遊離酸、遊離塩基および双性イオンを含む化合物の全ての形態は、本発明の範囲内であることが意図されている。アミノおよびカルボキシ基の両方を含有する化合物は、しばしばそれらの双性イオン形態との平衡状態で存在することは、当該技術において周知である。従って、例えばアミノおよびカルボキシ基の両方を含有する本明細書で記載され
る化合物の全ては、それらの対応する双性イオンへの言及も含む。
【0020】
[0022] 用語“立体異性体”は、同一の化学構成を有するが空間における原子または基の配置に関して異なる化合物を指す。
[0023] 用語“投与すること”は、本発明の化合物もしくは組成物を直接投与すること、または体内で同等の量の有効化合物もしくは物質を形成するプロドラッグ、誘導体もしくは類似体を投与することの両方を意味する。
【0021】
[0024] 用語“対象”、“個人”、および“患者”は、本明細書において互換的に用いられており、本発明に従う医薬組成物を用いた予防的処置を含む処置が提供される動物、例えばヒトを指す。本明細書で用いられる用語“対象”は、ヒトおよび非ヒト動物を指す。用語“非ヒト動物”および“非ヒト哺乳類”は、本明細書において互換的に用いられており、全ての脊椎動物、例えば哺乳類、例えば非ヒト霊長類(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、齧歯類(例えばマウスまたはラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマおよび非哺乳類、例えば爬虫類、両生類、ニワトリおよびシチメンチョウを含む。
【0022】
[0025] 用語“阻害剤”は、本明細書で用いられる際、タンパク質、ポリペプチドまたは酵素の発現または活性を阻害する化合物を含み、発現および/または活性の完全な阻害を必ずしも意味しない。むしろ、阻害は、タンパク質、ポリペプチドまたは酵素の発現および/または活性の所望の作用をもたらすために十分な程度、および時間の阻害を含む。
【0023】
[0026] 用語“促進剤”は、本明細書で用いられる際、タンパク質、ポリペプチドまたは酵素の発現または活性を促進する化合物を含み、発現および/または活性の完全な促進を必ずしも意味しない。むしろ、促進は、タンパク質、ポリペプチドまたは酵素の発現および/または活性の所望の作用をもたらすために十分な程度、および時間の促進を含む。
【0024】
[0027] 用語“石灰化する”および“石灰化”は、組織中、特に癌性腫瘍組織中のカルシウム塩の蓄積を指す。これらのカルシウム塩は、例えばリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、およびそれらの組み合わせを含む。石灰化は、当該技術で既知の画像化法、例えば超音波、X線(コンピュータ断層撮影法(CT))を含む)または磁気共鳴画像法(MRI)を用いて検出されることができる。
【0025】
[0028] 用語“アンドロゲン受容体陽性”癌は、アンドロゲン類に結合する癌細胞を含む癌を指す。個々の癌がアンドロゲン受容体陽性であるかどうかは、当該技術で既知の方法を用いて、例えばアンドロゲン受容体に対する抗体を用いて実施される免疫組織化学アッセイを用いて決定されることができる。
【0026】
[0029] 本開示は、患者において癌を処置する方法であって、その患者に結果として患者の血液中のジヒドロテストステロン(“DHT”または5α-ジヒドロテストステロンまたは5α-アンドロスタン-17β-オール-3-オン)の量における増大をもたらす有効量の薬剤を投与することを含む方法に向けられている。例えば、本開示の典型的な側面は、患者に有効量のDHT、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせを投与することを含む。本開示によれば、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせの投与は、結果として患者の癌の処置を、癌の進行を遅くするかもしくは止めることにより、癌の退縮を開始することにより、または癌の寛解を開始することによりもたらす。
【0027】
[0030] ある側面において、本開示の方法は、患者に有効量のDHTを投与することを含む。
[0031] 他の側面において、本開示の方法は、患者に有効量のジヒドロテストステロン誘導体を投与することを含む。ジヒドロテストステロン誘導体は、当該技術で既知であり、例えば次のA-B-C-Dコア構造を含むステロイド系化合物を含み:
【0028】
【0029】
式中、A-B-C-Dコア構造は、あらゆる位置において置換基部分、例えばC1-6直鎖または分枝状アルキル部分、C6-10アリール部分、または窒素、酸素および硫黄から選択される1または2個の複素原子を含む5もしくは6員ヘテロアリール部分で置換されている。
【0030】
[0032] ジヒドロテストステロン誘導体は、例えばメステロロンおよびドロスタノロンを含む。特に好ましいジヒドロテストステロン誘導体は、スタノゾロールである。
【0031】
【0032】
[0033] 他の側面において、本開示の方法は、患者に有効量のジヒドロテストステロン促進剤を投与することを含む。ジヒドロテストステロン促進剤は、当該技術で既知であり、例えば患者の血液中のDHTの量を増大させる化合物を含む。血液中のDHTを検出する方法は、当該技術で既知である。
【0033】
[0034] 記載された方法および組成物は、癌を処置するために用いられることができる。例えば、本明細書で記載される方法に従って処置される癌は、例えば非小細胞肺癌、卵巣癌、乳癌、子宮頸癌、膵臓癌、前立腺癌、胃癌、結腸癌、脳癌、肝臓癌、精巣癌、白血病およびリンパ腫を含む。記載された方法は、乳癌の処置において特に有効である。
【0034】
[0035] 好ましい側面において、癌は、アンドロゲン受容体陽性癌である。
[0036] いずれかの特定の理論に縛られることを望むわけでは一切ないが、有効量のジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせの対象への投与は、結果として対象の癌性腫瘍(単数または複数)の石灰化をもたらすと推測されている。記載された方法は、アンドロゲン陽性癌である癌における石灰化の開始において特に有効である。好ましい方法において、有効量のジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせは、癌の少なくとも一部において石灰化をもたらすであろう。癌が十分に石灰化した後、例えば腫瘍の少なくとも約20%が石灰化した後、石灰化
した組織は、当該技術で既知の方法を用いて外科的に切除されることができる。ある側面において、石灰化した組織は、腫瘍の少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または少なくとも約100%が石灰化した後外科的に切除されることができる。
【0035】
[0037] 本開示によれば、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせは、患者に経口、皮下、静脈内、経皮、膣内、直腸、またはそれらのあらゆる組み合わせで投与されることができる。ある側面において、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせは、経口投与される。他の側面において、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせは、皮下投与される。他の側面において、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせは、静脈内投与される。他の側面において、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせは、経皮投与される。他の側面において、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせは、膣内投与される。他の側面において、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせは、直腸投与される。ある側面において、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせは、経皮投与される。他の側面において、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせは、経口投与される。
【0036】
[0038] 本開示のある側面において、その方法は、さらに有効量のチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤を、有効量のジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせと共に含む。チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤は、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせと同時に(simultaneously)、または少なくとも同時期に(contemporaneously)投与されることができる。他の側面において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤は、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせと別々に投与される。
【0037】
[0039] チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤は、チロシン誘導体であることができる。チロシン誘導体は、以下の1以上であることができる:メチル(2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、D-チロシン エチルエステル塩酸塩、メチル(2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート H-D-Tyr(TBU)-アリルエステル HCl、メチル(2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4,5-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル(2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル(2R)-2-アミノ-3-(4-[(2-クロロ-6-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル)プロパノエート、メチル(2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル(2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、ジエチル 2-(アセチルアミノ)-2-(4-[(2-クロロ-6-フルオロベンジル)オキシ]ベンジルマロネート、メチル(2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル(2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル(2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノ
エート、メチル(2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、H-DL-tyr-OMe HCl、H-3,5-ジヨード-tyr-OMe HCl、H-D-3,5-ジヨード-tyr-OMe HCl、H-D-tyr-OMe HCl、D-チロシン メチルエステル塩酸塩、D-チロシン-OMe HCl、メチルD-チロシネート塩酸塩、H-D-tyr-OMe・HCl、D-チロシン メチルエステル HCl、H-D-Tyr-OMe-HCl、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)メチルエステル塩酸塩、メチル(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート塩酸塩、メチル(2R)-2-アザニル-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート塩酸塩(methyl (2R)-2-azanyl-3-(4-hydroxyphenyl) propanoate hydrochloride)、3-クロロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン エチルエステル塩酸塩、DL-m-チロシン、DL-o-チロシン、Boc-Tyr(3,5-I2)-OSu、Fmoc-tyr(3-NO2)-OHおよびα-メチル-DL-チロシン。特に好ましいチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤は、α-メチル-DL-チロシンである。
【0038】
[0040] 本開示によれば、チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤は、患者に経口、皮下、静脈内、経皮、膣内、直腸、またはそれらのあらゆる組み合わせで投与されることができる。ある側面において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤は、経口投与される。他の側面において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤は、皮下投与される。他の側面において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤は、静脈内投与される。他の側面において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤は、経皮投与される。他の側面において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤は、膣内投与される。他の側面において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤は、直腸内投与される。
【0039】
[0041] 当業者は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤の療法上有効量を決定することができるであろう。例えば、約10~2000mg、好ましくは150~300mgのチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤(例えばα-メチル-DL-チロシン)が、毎日経口投与されることが、想定されている。ある側面において、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、525、550、575、600、625、650、675、700、725、750、775、800、825、850、875、900、925、950、975、または約1000mgのチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤(例えばα-メチル-DL-チロシン)が、毎日投与される。チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤(例えばα-メチル-DL-チロシン)の1日投与量は、1回量として、または実質的に等しい用量でその日全体にわたって投与されることができる。例えば、チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤は、患者に1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回投与されることができる。
【0040】
[0042] 本開示のある側面において、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせ(および任意のチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤)の療法上有効量は、療法上有効量のメラニン、メラニン促進剤、またはそれらの組み合わせとの組み合わせで投与される。従って、メラニンが、用いられることができ、1種類以上のメラニン促進剤が、用いられることができ、そしてメラニンおよび1種類以上のメラニン促進剤の両方が、(別々の剤形中でも同じ剤形中でも)用いられることができる。本開示に従うメラニン促進剤は、メラニンの産生および/または活性を増大させる化学化合物である。メラニン促進剤は、当該技術で既知であり、例えばメトキサレンおよびメラノタンIIを含む。
【0041】
[0043] メラニン、メラニン促進剤、またはそれらの組み合わせは、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせ(および任意のチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤)と同時に、または少なくとも同時期に投与されることができる。他の側面において、メラニン、メラニン促進剤、またはそれらの組み合わせは、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせ(および任意のチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤)と別々に投与される。
【0042】
[0044] 本開示によれば、メラニンおよび/またはメラニン促進剤は、患者に経口、皮下、静脈内、経皮、膣内、直腸、またはそれらのあらゆる組み合わせで投与されることができる。ある側面において、メラニンおよび/またはメラニン促進剤は、経口投与される。他の側面において、メラニンおよび/またはメラニン促進剤は、皮下投与される。他の側面において、メラニンおよび/またはメラニン促進剤は、静脈内投与される。他の側面において、メラニンおよび/またはメラニン促進剤は、経皮投与される。他の側面において、メラニンおよび/またはメラニン促進剤は、膣内投与される。他の側面において、メラニンおよび/またはメラニン促進剤は、直腸内投与される。
【0043】
[0045] 当業者は、メラニンおよび/またはメラニン促進剤の療法上有効量を決定することができるであろう。例えば、約10~150mcgのメラニン、例えば約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140または約150mcgのメラニンが、毎日経口投与されることが、想定されている。10~100mg、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または約100mgのメラニン促進剤(例えばメトキサレンまたはメラノタン)が、毎日投与されることが、想定されている。メラニンおよび/またはメラニン促進剤の1日投与量は、1回量として、または実質的に等しい用量でその日全体にわたって投与されることができる。例えば、メラニンおよび/またはメラニン促進剤は、患者に1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回投与されることができる。
【0044】
[0046] 本開示のある側面において、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせ(ならびに任意のチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤、メラニンおよび/またはメラニン促進剤)の療法上有効量は、療法上有効量のp450 3A4促進剤との組み合わせで投与される。“シトクロムp450 3A4”(“p450 3A4”と略されることができる)は、シトクロムp450スーパーファミリーの酵素の一員であり、体内の生体異物の代謝に関わっている混合機能オキシダーゼである。p450 3A4促進剤は、当該技術で既知であり、例えば5,5-ジフェニルヒダントイン、バルプロ酸およびカルバマゼピンを含む。
【0045】
[0047] 本開示によれば、p450 3A4促進剤は、患者に経口、皮下、静脈内、経皮、膣内、直腸、またはそれらのあらゆる組み合わせで投与されることができる。ある側面において、p450 3A4促進剤は、経口投与される。他の側面において、p450
3A4促進剤は、皮下投与される。他の側面において、p450 3A4促進剤は、静脈内投与される。他の側面において、p450 3A4促進剤は、経皮投与される。他の側面において、p450 3A4促進剤は、膣内投与される。他の側面において、p450 3A4促進剤は、直腸内投与される。
【0046】
[0048] 当業者は、p450 3A4促進剤の療法上有効量を決定することができるであろう。例えば、約1~100mgのp450 3A4促進剤(例えば5,5-ジフェニルヒダントイン、バルプロ酸またはカルバマゼピン)、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、
65、70、75、80、85、90、95または約100mgのp450 3A4促進剤(例えば5,5-ジフェニルヒダントイン、バルプロ酸またはカルバマゼピン)が、毎日投与されることが、想定されている。p450 3A4促進剤の1日投与量は、1回量として、または実質的に等しい用量でその日全体にわたって投与されることができる。例えば、p450 3A4促進剤は、患者に1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回投与されることができる。
【0047】
[0049] p450 3A4促進剤は、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせ(ならびに任意のチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤、メラニンおよび/またはメラニン促進剤)と同時に、または少なくとも同時期に投与されることができる。他の側面において、p450 3A4促進剤は、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせ(ならびに任意のチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤、メラニンおよび/またはメラニン促進剤)と別々に投与される。
【0048】
[0050] 本開示のある側面において、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせ(ならびに任意のチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤、メラニン、メラニン促進剤、および/またはp450
3A4促進剤)の療法上有効量は、療法上有効量の成長ホルモン阻害剤との組み合わせで投与される。(例えば膵臓成長ホルモンのような)成長ホルモンは、細胞複製を誘導する。成長ホルモン阻害剤は、当該技術で既知であり、例えばオクトレオチド、ソマトスタチンおよびセグリチドを含む。
【0049】
[0051] 本開示によれば、成長ホルモン阻害剤は、患者に経口、皮下、静脈内、経皮、膣内、直腸、またはそれらのあらゆる組み合わせで投与されることができる。ある側面において、成長ホルモン阻害剤は、経口投与される。他の側面において、成長ホルモン阻害剤は、皮下投与される。他の側面において、成長ホルモン阻害剤は、静脈内投与される。他の側面において、成長ホルモン阻害剤は、経皮投与される。他の側面において、成長ホルモン阻害剤は、膣内投与される。他の側面において、成長ホルモン阻害剤は、直腸内投与される。
【0050】
[0052] 当業者は、成長ホルモン阻害剤の療法上有効量を決定することができるであろう。例えば、1mcg~100mgの成長ホルモン阻害剤が毎日経口、皮下または静脈内投与されることが、想定されている。成長ホルモン阻害剤の1日投与量は、1回量として、または実質的に等しい用量でその日全体にわたって投与されることができる。例えば、成長ホルモン阻害剤は、患者に1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回投与されることができる。
【0051】
[0053] 本開示のある側面において、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせ(ならびに任意のチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤、メラニン、メラニン促進剤、p450 3A4促進剤、および/または成長ホルモン阻害剤)の療法上有効量は、療法上有効量のD-ロイシンとの組み合わせで投与される。D-ロイシンは、ロイシン不足を模倣する生理的環境を作り出すと信じられている。
【0052】
[0054] 本開示によれば、D-ロイシンは、患者に経口、皮下、静脈内、経皮、膣内、直腸、またはそれらのあらゆる組み合わせで投与されることができる。ある側面において、D-ロイシンは、経口投与される。他の側面において、成長ホルモン阻害剤は、皮下投与される。他の側面において、D-ロイシンは、静脈内投与される。他の側面において、D-ロイシンは、経皮投与される。他の側面において、D-ロイシンは、膣内投与される
。他の側面において、D-ロイシンは、直腸内投与される。
【0053】
[0055] 当業者は、D-ロイシンの療法上有効量を決定することができるであろう。例えば、約1~2000mgのD-ロイシンが毎日経口投与されることが、想定されている。D-ロイシンの1日投与量は、1回量として、または実質的に等しい用量でその日全体にわたって投与されることができる。例えば、D-ロイシンは、患者に1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回投与されることができる。
【0054】
[0056] 本開示の好ましい側面において、患者の癌は、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせ(ならびに任意のチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤、メラニン、メラニン促進剤、p450 3A4促進剤、成長ホルモン阻害剤、および/またはD-ロイシン)の投与の前に、癌の病期を決定するために評価される。他の好ましい側面において、患者の癌は、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせ(ならびに任意のチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤、メラニン、メラニン促進剤、p450 3A4促進剤、成長ホルモン阻害剤、および/またはD-ロイシン)の投与の後に、癌の進行または退縮を決定するために評価される。
【0055】
[0057] 本明細書において、記載された方法における使用のためのキットも、提供される。本開示のキットは、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせ(例えばN-[(2S,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブチリル]-L-ロイシンまたはラパマイシン)を、同じものに関する包装と一緒に含むであろう。キットは、場合によりチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤(例えばα-メチル-DL-チロシン)、メラニンおよび/またはメラニン促進剤(例えばメラニン、メトキサレンおよび/またはメラノタンII)、p450 3A4促進剤(例えば5,5-ジフェニルヒダントイン、バルプロ酸またはカルバマゼピン)、ロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤(例えばラパマイシンおよび/またはN-[(2S,3R)-3-アミノ-2-ヒドロキシ-4-フェニルブチリル]-L-ロイシン)、成長ホルモン阻害剤(例えば膵臓成長ホルモン阻害剤、ソマトスタチンまたはオクトレオチド)および/またはD-ロイシンを、同じものに関する包装と一緒に含むことができる。キットは、1個以上の別々の容器、分割器または区画、ならびに場合により情報資料、例えば投与のための説明書を含むことができる。例えば、それぞれの阻害剤または促進剤(またはそれらの様々な組み合わせ)は、ボトル、バイアルまたは注射器中に収容されることができ、情報資料は、プラスチックのスリーブもしくは小包中に収容されることができ、またはラベルにおいて提供されることができる。ある態様において、キットは、それぞれが本明細書で記載される化合物の1以上の単位剤形を収容している複数の個々の容器(例えば個々の容器のパック)を含む。例えば、キットは、それぞれが本明細書で記載される化合物の単一の単位用量を収容している複数の注射器、アンプル、ホイルの小包、もしくはブリスターパックまたはそれらの様々な組み合わせのいずれかを含むことができる。キットの容器は、気密、防水(例えば水分における変化または蒸発に対して不透過性)および/または遮光であることができる。キットは、場合により組成物の投与に適したデバイス、例えば注射器、吸入器、ピペット、ピンセット、計量スプーン、点滴器(例えば点眼器)、スワブ(例えば綿棒または木製スワブ)またはあらゆるそのような送達デバイスを含む。
【0056】
[0058] 記載された方法による使用のための医薬組成物も、提供される。医薬組成物は、記載された有効薬剤のあらゆる組み合わせを、1種類以上の薬学的に許容可能な賦形剤との組み合わせで含むであろう。薬学的に許容可能な賦形剤は、当該技術で既知である。例えば、Remington’s 第17版Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company (1985)を参照。
【0057】
[0059] 本開示の医薬組成物は、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせを、チロシンヒドロキシラーゼ阻害剤;メラニン、メラニン促進剤、もしくはそれらの組み合わせ;p450 3A4促進剤、またはそれらの組み合わせとの組み合わせで含むことができる。他の医薬組成物は、さらに成長ホルモン阻害剤、例えば膵臓成長ホルモン阻害剤、オクトレオチド、またはソマトスタチンを含むことができる。さらなる医薬組成物は、さらにD-ロイシンを含むことができる。
【0058】
[0060] ある側面において、医薬組成物は、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせおよび例えばα-メチル-DL-チロシンのようなチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤の組み合わせを含むことができる。
【0059】
[0061] ある側面において、医薬組成物は、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせおよびメラニン、メラニン促進剤、またはそれらの組み合わせの組み合わせを含むことができる。
例えば、医薬組成物は、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせ、ロイシンアミノペプチダーゼ阻害剤、およびメラニン、メトキサレン、メラノタンII、またはそれらの組み合わせの組み合わせを含むことができる。
【0060】
[0062] ある側面において、医薬組成物は、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせおよびp450 3A4促進剤の組み合わせを含むことができる。例えば、医薬組成物は、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせおよび5,5-ジフェニルヒダントイン、バルプロ酸、またはカルバマゼピンの組み合わせを含むことができる。
【0061】
[0063] ある側面において、医薬組成物は、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせおよび例えば膵臓成長ホルモン阻害剤、オクトレオチド、またはソマトスタチンのような成長ホルモン阻害剤の組み合わせを含むことができる。
【0062】
[0064] ある側面において、医薬組成物は、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせおよびD-ロイシンの組み合わせを含むことができる。
【0063】
[0065] 本明細書で記載されるように、本開示の特定の好ましい方法は、記載された有効薬剤のいずれかの経皮投与を含む。例えば、ある側面において、ジヒドロテストステロン、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせおよび場合により本明細書で記載された他の有効薬剤のいずれかは、経皮投与される。有効薬剤は、同じ経皮配合物中で経皮投与されることができる。あるいは、有効薬剤は、別々の経皮配合物中で投与されることができる。経皮配合物は、当該技術で既知である。好ましい配合物は、例えば2015年12月23日に出願された国際出願第PCT/US2015/000302号において記載されている配合物を含み、その全体が、参照により本明細書に援用される。例えば、記載された方法のいずれかによる使用のための適切な経皮配合物は、ノナエチレングリコール モノドデシルエーテル、1-メチル-2-ピロリジノン、エタノール、およびオレイン酸を、記載された有効薬剤のいずれかとの組み合わせで含むことができる。記載された方法のいずれかによる使用のための他の適切
な経皮配合物は、ノナエチレングリコール モノドデシルエーテル、1-メチル-2-ピロリジノン、エタノール、およびリノール酸を、記載された有効薬剤のいずれかとの組み合わせで含むことができる。
【0064】
[0066] 以下の実施例は、先行する開示を補うためおよび本明細書で記載された主題のよりよい理解を提供するために提供されている。これらの実施例は、記載された主題を限定するものと考えられるべきではない。本明細書で記載された実施例および態様は、説明目的のためだけのものであること、そしてそれを考慮した様々な修正および変更が、当業者には明らかであると考えられ、それは本発明の真の範囲内に含まれるはずであり、本発明の真の範囲から逸脱することなくなされることができることは、理解されている。
【実施例0065】
実施例1-癌を処置する方法
[0067] 患者が、癌、例えば非小細胞肺癌、卵巣癌、乳癌、子宮頸癌、膵臓癌、前立腺癌、胃癌、結腸癌、脳癌、肝臓癌、精巣癌、白血病およびリンパ腫に関してスクリーニングされる。DHT、ジヒドロテストステロン誘導体、ジヒドロテストステロン促進剤、またはそれらの組み合わせが、それぞれの患者に、療法的作用を達成するために十分な量で、かつ十分な時間の間投与される。好ましくは、患者には、ジヒドロテストステロン誘導体であるスタノゾロールが投与される。その方法は、場合により有効量のチロシンヒドロキシラーゼ阻害剤(例えばα-メチル-DL-チロシン);有効量のメラニン、メラニン促進剤、またはそれらの組み合わせ(例えばメラニン、メトキサレン、またはメラノタンII);有効量のp450 3A4促進剤(例えば5,5-ジフェニルヒダントイン、バルプロ酸、またはカルバマゼピン);有効量の成長ホルモン阻害剤(例えば膵臓成長ホルモン阻害剤、オクトレオチド、ソマトスタチン);有効量のD-ロイシン;およびそれらのあらゆる組み合わせの投与を含めることができる。
【0066】
実施例2-癌を処置する方法
[0068] 遠位橈骨の癌性腫瘍を示すイヌ(
図1参照)に、スタノゾロールが投与された。スタノゾロール投与後、癌性腫瘍は石灰化した(
図2参照)。