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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118855
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】ひずみゲージ
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/16 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
G01B7/16 R
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110045
(22)【出願日】2023-07-04
(62)【分割の表示】P 2018017052の分割
【原出願日】2018-02-02
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】戸田 慎也
(72)【発明者】
【氏名】美齊津 英司
(72)【発明者】
【氏名】北村 厚
(57)【要約】
【課題】ひずみ検出精度を向上したひずみゲージを提供する。
【解決手段】本ひずみゲージは、可撓性を有する基材と、前記基材上に、クロムとニッケルの少なくとも一方を含む材料から形成された抵抗体と、を有し、前記抵抗体は、並置された複数の抵抗パターンと、隣接する前記抵抗パターンの端部同士を接続する折り返し部分と、を含み、前記折り返し部分には、前記抵抗体よりもゲージ率が低い材料からなる第1金属層が積層され、前記折り返し部分上の前記第1金属層の抵抗値が前記折り返し部分の抵抗値よりも低い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する基材と、
前記基材上に、クロムとニッケルの少なくとも一方を含む材料から形成された抵抗体と、を有し、
前記抵抗体は、並置された複数の抵抗パターンと、隣接する前記抵抗パターンの端部同士を接続する折り返し部分と、を含み、
前記折り返し部分には、前記抵抗体よりもゲージ率が低い材料からなる第1金属層が積層され、前記折り返し部分上の前記第1金属層の抵抗値が前記折り返し部分の抵抗値よりも低いひずみゲージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひずみゲージに関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物に貼り付けて、測定対象物のひずみを検出するひずみゲージが知られている。ひずみゲージは、ひずみを検出する抵抗体を備えており、抵抗体の材料としては、例えば、Cr(クロム)やNi(ニッケル)を含む材料が用いられている。又、抵抗体は、例えば、ジグザグに折り返すパターンに形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-74934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、抵抗体がジグザグに折り返すパターンに形成されると、検出したい方向(以降、検出方向とする)を向くパターンと、検出したい方向とは異なる方向(以降、誤検出方向とする)を向くパターンとが混在する。その結果、一軸(検出方向)のひずみのみを検出することができず、検出方向のひずみと誤検出方向のひずみとの合計を検出することになり、ひずみ検出精度が低下する。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、ひずみ検出精度を向上したひずみゲージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本ひずみゲージは、可撓性を有する基材と、前記基材上に、クロムとニッケルの少なくとも一方を含む材料から形成された抵抗体と、を有し、前記抵抗体は、並置された複数の抵抗パターンと、隣接する前記抵抗パターンの端部同士を接続する折り返し部分と、を含み、前記折り返し部分には、前記抵抗体よりもゲージ率が低い材料からなる第1金属層が積層され、前記折り返し部分上の前記第1金属層の抵抗値が前記折り返し部分の抵抗値よりも低い。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、ひずみ検出精度を向上したひずみゲージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図2】第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する断面図である。
図3】第1の実施の形態に係るひずみゲージの製造工程を例示する図である。
図4】第1の実施の形態の変形例1に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図5】第1の実施の形態の変形例2に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図6】第1の実施の形態の変形例3に係るひずみゲージを例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。図2は、第1の実施の形態に係るひずみゲージを例示する断面図であり、図1のA-A線に沿う断面を示している。図1及び図2を参照するに、ひずみゲージ1は、基材10と、抵抗体30と、電極40Aと、金属層43とを有している。
【0011】
なお、本実施の形態では、便宜上、ひずみゲージ1において、基材10の抵抗体30が設けられている側を上側又は一方の側、抵抗体30が設けられていない側を下側又は他方の側とする。又、各部位の抵抗体30が設けられている側の面を一方の面又は上面、抵抗体30が設けられていない側の面を他方の面又は下面とする。但し、ひずみゲージ1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。又、平面視とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基材10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0012】
基材10は、抵抗体30等を形成するためのベース層となる部材であり、可撓性を有する。基材10の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材10の厚さが5μm~200μmであると、接着層等を介して基材10の下面に接合される起歪体表面からの歪の伝達性、環境に対する寸法安定性の点で好ましく、10μm以上であると絶縁性の点で更に好ましい。
【0013】
基材10は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成することができる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0014】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材10が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材10は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
【0015】
抵抗体30は、基材10上に所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体30は、基材10の上面10aに直接形成されてもよいし、基材10の上面10aに他の層を介して形成されてもよい。
【0016】
抵抗体30は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体30は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0017】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、CrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。
【0018】
抵抗体30の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体30の厚さが0.1μm以上であると抵抗体30を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましく、1μm以下であると抵抗体30を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材10からの反りを低減できる点で更に好ましい。
【0019】
例えば、抵抗体30がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上することができる。又、抵抗体30がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50質量%以上を占めることを意味するが、ゲージ特性を向上する観点から、抵抗体30はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0020】
電極40Aは、抵抗体30の両端部から延在しており、平面視において、抵抗体30よりも拡幅して略矩形状に形成されている。電極40Aは、ひずみにより生じる抵抗体30の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のリード線等が接合される。抵抗体30は、例えば、電極40Aの一方からジグザグに折り返しながら延在して他方の電極40Aに電気的に接続されている。
【0021】
電極40Aは、複数の金属層が積層された積層構造とすることができる。具体的には、電極40Aは、抵抗体30の両端部から延在する端子部41と、端子部41の上面に形成された金属層42とを有している。なお、抵抗体30と端子部41とは便宜上別符号としているが、同一工程において同一材料により一体に形成することができる。
【0022】
金属層42の材料としては、端子部41よりもはんだ濡れ性の良好な材料を選択することができる。例えば、抵抗体30がCr混相膜である場合、金属層42の材料として、Cu、Ni、Al、Ag、Au、Pt等、又は、これら何れかの金属の合金、これら何れかの金属の化合物、或いは、これら何れかの金属、合金、化合物を適宜積層した積層膜が挙げられる。金属層42の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.01μm~30μm程度とすることができる。はんだ食われを考慮すると、金属層42の厚さは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上である。なお、金属層42を電解めっきにより形成する場合には、電解めっきの容易性から、金属層42の厚さは30μm以下であることが好ましい。
【0023】
但し、はんだ濡れ性やはんだ食われが問題とならない場合には、金属層42を積層せずに、端子部41自体を電極として用いてもよい。
【0024】
抵抗体30は、長手方向を同一方向(図1の例ではX方向)に向けて並置された複数の抵抗パターン31と、隣接する抵抗パターン31の端部の外側同士を接続する折り返し部分33とを含んでいる。
【0025】
折り返し部分33には、抵抗体30よりもゲージ率が低い材料からなる金属層43が積層されている。そして、折り返し部分33上の金属層43の抵抗値が折り返し部分33の抵抗値よりも低くなるように、金属層43の材料や厚さが選択されている。
【0026】
なお、図1では、抵抗体30の折り返し部分33は直線状であるが、抵抗体30の折り返し部分は直線状には限定されず、任意の形状として構わない。例えば、抵抗体30の折り返し部分は曲線状であってもよいし、直線状の部分と曲線状の部分とが混在してもよい。
【0027】
金属層43の材料は、抵抗体30よりもゲージ率が低い材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、抵抗体30がCr混相膜である場合、金属層43の材料として、Cu、Ni、Al、Ag、Au、Pt等、又は、これら何れかの金属の合金、これら何れかの金属の化合物、或いは、これら何れかの金属、合金、化合物を適宜積層した積層膜が挙げられる。金属層43の厚さは、折り返し部分33上の金属層43の抵抗値を折り返し部分33の抵抗値よりも低くできれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.01μm~30μm程度とすることができる。
【0028】
金属層43は、金属層42と同一材料を用い、金属層42と同一工程において形成しても構わない。又、金属層43は、金属層42と異なる材料を用い、金属層42と別工程において形成しても構わない。この場合、金属層43の厚さは、金属層42の厚さと同じにする必要はない。なお、図1では、便宜上、抵抗パターン31、金属層42、及び金属層43を異なる梨地模様で示している。
【0029】
抵抗体30及び金属層43を被覆し電極40Aを露出するように基材10の上面10aにカバー層60(絶縁樹脂層)を設けても構わない。カバー層60を設けることで、抵抗体30及び金属層43に機械的な損傷等が生じることを防止できる。又、カバー層60を設けることで、抵抗体30及び金属層43を湿気等から保護することができる。なお、カバー層60は、電極40Aを除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0030】
カバー層60は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成することができる。カバー層60は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層60の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。
【0031】
図3は、第1の実施の形態に係るひずみゲージの製造工程を例示する図であり、図2に対応する断面を示している。ひずみゲージ1を製造するためには、まず、図3(a)に示す工程では、基材10を準備し、基材10の上面10aに金属層300を形成し、更に、金属層300上に金属層310を形成する。
【0032】
金属層300は、最終的にパターニングされて抵抗体30及び端子部41となる層である。従って、金属層300の材料や厚さは、前述の抵抗体30及び端子部41の材料や厚さと同様である。金属層310は、最終的にパターニングされて金属層42及び43となる層である。従って、金属層310の材料や厚さは、前述の金属層42及び43の材料や厚さと同様である。
【0033】
金属層300は、例えば、金属層300を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜することができる。金属層300は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0034】
ゲージ特性を安定化する観点から、金属層300を成膜する前に、下地層として、基材10の上面10aに、例えば、コンベンショナルスパッタ法により膜厚が1nm~100nm程度の機能層を真空成膜することが好ましい。
【0035】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である金属層300(抵抗体30)の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材10に含まれる酸素や水分による金属層300の酸化を防止する機能や、基材10と金属層300との密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0036】
基材10を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に金属層300がCrを含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層が金属層300の酸化を防止する機能を備えることは有効である。
【0037】
機能層の材料は、少なくとも上層である金属層300(抵抗体30)の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0038】
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。又、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si、TiO、Ta、SiO等が挙げられる。
【0039】
機能層は、例えば、機能層を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜することができる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材10の上面10aをArでエッチングしながら機能層が成膜されるため、機能層の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0040】
但し、これは、機能層の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層を成膜してもよい。例えば、機能層の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材10の上面10aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層を真空成膜する方法を用いてもよい。
【0041】
機能層の材料と金属層300の材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、機能層としてTiを用い、金属層300としてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜することが可能である。
【0042】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、金属層300を成膜することができる。或いは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、金属層300を成膜してもよい。
【0043】
これらの方法では、Tiからなる機能層がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。又、機能層を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、ひずみゲージ1のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。なお、機能層がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0044】
なお、金属層300がCr混相膜である場合、Tiからなる機能層は、金属層300の結晶成長を促進する機能、基材10に含まれる酸素や水分による金属層300の酸化を防止する機能、及び基材10と金属層300との密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0045】
このように、金属層300の下層に機能層を設けることにより、金属層300の結晶成長を促進することが可能となり、安定な結晶相からなる金属層300を作製できる。その結果、ひずみゲージ1において、ゲージ特性の安定性を向上することができる。又、機能層を構成する材料が金属層300に拡散することにより、ひずみゲージ1において、ゲージ特性を向上することができる。
【0046】
金属層310は、例えば、金属層310を形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜することができる。金属層310は、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、めっき法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。金属層310を厚く形成する場合には、めっき法を選択することが好ましい。
【0047】
次に、図3(b)に示す工程では、フォトリソグラフィによって金属層310をパターニングし、図1に示す平面形状の金属層42及び43を形成する。次に、図3(c)に示す工程では、フォトリソグラフィによって金属層300をパターニングし、図1に示す平面形状の抵抗体30及び端子部41を形成する。これにより、抵抗体30の折り返し部分33に金属層43が積層される。又、端子部41に金属層42が積層され、電極40Aが形成される。
【0048】
図3(c)に示す工程の後、必要に応じ、基材10の上面10aに、抵抗体30及び金属層43を被覆し電極40Aを露出するカバー層60を設けることで、ひずみゲージ1が完成する。カバー層60は、例えば、基材10の上面10aに、抵抗体30及び金属層43を被覆し電極40Aを露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製することができる。カバー層60は、基材10の上面10aに、抵抗体30及び金属層43を被覆し電極40Aを露出するように液状又はペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。
【0049】
なお、以上の工程では、金属層42と金属層43とを同一材料を用いて形成する例を示したが、これは一例であり、前述のように、金属層42と金属層43とを異なる材料を用いて別工程で形成しても構わない。又、金属層42を設けなくても構わない。
【0050】
このように、抵抗体30の折り返し部分33に、抵抗体30よりもゲージ率が低い材料からなる金属層43を積層し、かつ折り返し部分33上の金属層43の抵抗値を折り返し部分33の抵抗値よりも低くすることで、誤検出方向の感度を下げ、ひずみゲージ1のひずみ検出精度を向上することができる。
【0051】
すなわち、抵抗体30の折り返し部分33では、折り返し部分33よりも抵抗値が低い金属層43側に多くの電流が流れる。そのため、抵抗体30の折り返し部分33が延在する誤検出方向(この場合はY方向)にひずみが生じても、抵抗体30よりもゲージ率が低い金属層43側からの出力が主となるため、電極40Aからは大きな出力は得られない。一方、抵抗体30の折り返し部分33以外では、ゲージ率が高い抵抗体30に全電流が流れるため、抵抗体30のグリッド方向(この場合はX方向)にひずみが生じると、電極40Aから大きな出力を得られる。その結果、グリッド方向(この場合はX方向)のひずみ検出精度を向上することができる。
【0052】
この効果は、抵抗体30の材料には依存せずに得られるが、抵抗体30としてゲージ率が大きいCr混相膜を用いた場合に、特に顕著な効果が得られる。
【0053】
〈第1の実施の形態の変形例1〉
第1の実施の形態の変形例1では、第1の実施の形態とは折り返し部分及び金属層の形状が異なる例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0054】
図4は、第1の実施の形態の変形例1に係るひずみゲージを例示する平面図である。図4を参照するに、ひずみゲージ1Aは、折り返し部分33が折り返し部分34に置換され、かつ、金属層43が金属層44に置換された点がひずみゲージ1(図1等参照)と相違する。
【0055】
抵抗体30は、長手方向を同一方向(図4の例ではX方向)に向けて並置された複数の抵抗パターン31と、隣接する抵抗パターン31の端部の対向する側同士を接続する折り返し部分34とを含んでいる。
【0056】
折り返し部分34には、抵抗体30よりもゲージ率が低い材料からなる金属層44が積層されている。そして、折り返し部分34上の金属層44の抵抗値が折り返し部分34の抵抗値よりも低くなるように、金属層44の材料や厚さが選択されている。金属層44の材料や厚さは、例えば、金属層43と同様とすることができる。
【0057】
図1に示す折り返し部分33のように、隣接する抵抗パターン31の端部の外側同士を接続する部分を抵抗体30の折り返し部分と考えてもよいし、図4に示す折り返し部分34のように、隣接する抵抗パターン31の端部の対向する側同士を接続する部分を抵抗体30の折り返し部分と考えてもよい。
【0058】
上記の何れの場合も、抵抗体30の折り返し部分に、抵抗体30よりもゲージ率が低い材料からなる金属層を積層し、かつ折り返し部分上の金属層の抵抗値を折り返し部分の抵抗値よりも低くすることで、誤検出方向の感度を下げ、ひずみゲージのひずみ検出精度を向上することができる。
【0059】
〈第1の実施の形態の変形例2〉
第1の実施の形態の変形例2では、第1の実施の形態とは折り返し部分上の金属層の形成位置が異なる例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例2において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0060】
図5は、第1の実施の形態の変形例2に係るひずみゲージを例示する平面図である。図5を参照するに、ひずみゲージ1Bは、金属層43が金属層45に置換された点がひずみゲージ1(図1等参照)と相違する。
【0061】
金属層45は、抵抗体30の折り返し部分33に積層されており、更に、折り返し部分33上から抵抗パターン31上の一部に延在し、全体としてコの字型に形成されている。金属層45の材料や厚さは、例えば、金属層43と同様とすることができる。
【0062】
このように、金属層45の一部が折り返し部分33上から抵抗パターン31上の一部に延在してもよい。この場合には、製造上のばらつきを考慮しても確実に折り返し部分33に金属層45を積層することができる。その結果、誤検出方向の感度を確実に下げ、ひずみゲージ1Bのひずみ検出精度を確実に向上することができる。
【0063】
但し、ひずみゲージ1Bでは、ひずみゲージ1よりも抵抗パターン31のグリッド方向の長さ(金属層45が積層されていない部分の長さ)が若干短くなるため、検出感度の若干の低下が見込まれる。
【0064】
〈第1の実施の形態の変形例3〉
第1の実施の形態の変形例3では、第1の実施の形態とは折り返し部分の形状が異なる例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例3において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0065】
図6は、第1の実施の形態の変形例3に係るひずみゲージを例示する平面図である。図6を参照するに、ひずみゲージ1Cは、折り返し部分33が折り返し部分36に置換され、かつ、金属層43が金属層46に置換された点がひずみゲージ1(図1等参照)と相違する。
【0066】
抵抗体30は、長手方向を同一方向(図6の例ではX方向)に向けて並置された複数の抵抗パターン31と、隣接する抵抗パターン31の端部の外側同士を接続する折り返し部分36とを含んでいる。
【0067】
折り返し部分36には、抵抗体30よりもゲージ率が低い材料からなる金属層46が積層されている。そして、折り返し部分36上の金属層46の抵抗値が折り返し部分36の抵抗値よりも低くなるように、金属層46の材料や厚さが選択されている。金属層46の材料や厚さは、例えば、金属層43と同様とすることができる。
【0068】
折り返し部分36は、折り返し部分33(図1参照)とは異なり、曲線状(例えば、U字型)に形成されている。この場合も、抵抗体30の折り返し部分36に、抵抗体30よりもゲージ率が低い材料からなる金属層46を積層し、かつ折り返し部分36上の金属層46の抵抗値を折り返し部分36の抵抗値よりも低くすることで、誤検出方向の感度を下げ、ひずみゲージ1Cのひずみ検出精度を向上することができる。
【0069】
なお、ひずみゲージ1Cにおいて、ひずみゲージ1Bと同様に、金属層46の一部が折り返し部分36上から抵抗パターン31上の一部に延在してもよい。この場合には、製造上のばらつきを考慮しても確実に折り返し部分36に金属層46を積層することができる。その結果、誤検出方向の感度を確実に下げ、ひずみゲージ1Cのひずみ検出精度を確実に向上することができる。但し、抵抗パターン31のグリッド方向の長さ(金属層46が積層されていない部分の長さ)が若干短くなるため、検出感度の若干の低下が見込まれる。
【0070】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0071】
1、1A、1B、1C ひずみゲージ、10 基材、10a 上面、30 抵抗体、31 抵抗パターン、33、34、36 折り返し部分、40A 電極、41 端子部、42、43、44、45、46 金属層、60 カバー層
図1
図2
図3
図4
図5
図6