(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118923
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】アルファ-シヌクレインの調節因子
(51)【国際特許分類】
A61K 31/415 20060101AFI20230818BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230818BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
A61K31/415
A61P25/28
A61P25/16
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023111393
(22)【出願日】2023-07-06
(62)【分割の表示】P 2019569256の分割
【原出願日】2018-06-19
(31)【優先権主張番号】62/521,758
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516142104
【氏名又は名称】カイノス・メディスン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】KAINOS MEDICINE, INC.
【住所又は居所原語表記】4F, Institut Pasteur Korea, 16, Daewangpangyo-ro 712beon-gil, Bundang-gu, Seongnam-si, Gyeonggi-do 13488, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】ジェムン・リー
(72)【発明者】
【氏名】キム・ウンヒ
(72)【発明者】
【氏名】チャン・テイク
(72)【発明者】
【氏名】キム・ボクソク
(72)【発明者】
【氏名】ユ・チャンスン
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ソンウン
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ヨンテ
(57)【要約】
【課題】
アルファ-シヌクレイン症から生じる症状の治療のための診断方法および方法を提供する。
【解決方法】
4-[2-(4-ブロモ-フェニルスルファニル)-アセチルアミノ]-1-フェネチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸であるアミノピラゾールまたはそのエステルもしくはアミドを用いて、被験体の細胞におけるα-シヌクレインの量を低下させて、そのような症状を治療することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シヌクレイノパシーから生じる疾患または状態を治療する医薬であって、
対象の細胞において、少なくとも10nMの濃度を提供する量の4-[2-(4-ブロモ-フェニルスルファニル)-アセチルアミノ]-1-フェネチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸であるアミノピラゾールまたはそのエステルもしくはアミドを含む、医薬。
【請求項2】
対象の細胞において、前記量は20nMから10μMの濃度を提供する、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
前記量は、対象に1~10 mg/kg/日の用量を提供する、請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
シヌクレイノパシーから生じる疾患または状態が、
ミスフォールドアルファ-シヌクレインの蓄積および、その凝集体によって引き起こされる神経変性疾患群であるもの;または
アルファ-シヌクレイン遺伝子(SNCA)、グルコセレブロシダーゼ遺伝子(GBA)、パーキン遺伝子、LRRK2遺伝子、DJ-遺伝子1およびPINK1遺伝子の1以上における突然変異に起因するもの;または
LC-3およびp62の量を調節するFAF1活性によって、もしくはアルファ-シヌクレインの量を調節するFAF1活性によって、媒介されるもの;または
凝集したアルファ-シヌクレインの量によって媒介されるもの;または
対象の細胞においてアミノ酸S129にてリン酸化されたα-シヌクレインの量によって媒介されるもの;または
対象の細胞において、ミスフォールドアルファ-シヌクレインの蓄積またはアルファ-シヌクレインの凝集体の蓄積に起因するもの
である、請求項1~3いずれかに記載の医薬。
【請求項5】
経口的に、または脳への注射もしくは点滴によって、または血液への注射もしくは点滴によって投与される、請求項1~4いずれかに記載の医薬。
【請求項6】
対象におけるシヌクレイノパシーから生じる疾患または状態を治療する医薬を調剤する方法であって、
ある量の4-[2-(4-ブロモ-フェニルスルファニル)-アセチルアミノ]-1-フェネチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸またはそのエステルもしくはアミドと、医薬上許容される担体と、を混合することを含み、ここに、前記量の4-[2-(4-ブロモ-フェニルスルファニル)-アセチルアミノ]-1-フェネチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸またはそのエステルもしくはアミドは、対象の細胞において、少なくとも10nMの濃度を提供する、方法。
【請求項7】
前記量の4-[2-(4-ブロモ-フェニルスルファニル)-アセチルアミノ]-1-フェネチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸またはそのエステルもしくはアミドは、対象の細胞において、20nMから10μMの濃度を提供する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記量は、対象に1~10 mg/kg/日の用量を提供する、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
シヌクレイノパシーから生じる疾患または状態が、
ミスフォールドアルファ-シヌクレインの蓄積および、その凝集体によって引き起こされる神経変性疾患群であるもの;または
アルファ-シヌクレイン遺伝子(SNCA)、グルコセレブロシダーゼ遺伝子(GBA)、パーキン遺伝子、LRRK2遺伝子、DJ-遺伝子1およびPINK1遺伝子の1以上における突然変異に起因するもの;または
LC-3およびp62の量を調節するFAF1活性によって、もしくはアルファ-シヌクレインの量を調節するFAF1活性によって、媒介されるもの;または
凝集したアルファ-シヌクレインの量によって媒介されるもの;または
対象の細胞においてアミノ酸S129にてリン酸化されたα-シヌクレインの量によって媒介されるもの;または
対象の細胞において、ミスフォールドアルファ-シヌクレインの蓄積またはアルファ-シヌクレインの凝集体の蓄積に起因するもの
である、請求項6~8いずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記医薬が、経口投与用に、または脳への注射もしくは点滴による投与用に、または血液への注射もしくは点滴による投与用に調剤される、請求項6~9いずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2017年6月19日に出願され、その全体が出典明示して本明細書の一部とみなされる米国仮出願第62/521,758号の利益を享受する。
【0002】
本開示は、FAF1遺伝子およびタンパク質を介してアルファ-シヌクレインタンパク質レベルを調節するための組成物および方法、ならびにアルファ-シヌクレイン媒介性シヌクレイン病を治療または予防するためにアルファ-シヌクレインレベルまたは凝集もしくは変性を調節するためのFAF1活性の阻害剤に関する。本開示は、関連する診断方法、およびFAF1の量または活性を調節する活性を有する化合物を使用する治療方法を含む。
【背景技術】
【0003】
FAF1はアポトーシス受容体Fasに結合するタンパク質であり、Fas関連因子1と呼ばれる。FAF1は、FasがFasリガンド (FasL)と呼ばれるリガンドと会合するとFasに結合し、アポトーシスを促進する。このように、FAF1はアポトーシス促進タンパク質である。FAF1は、Fasに結合するN末端200アミノ酸領域を有する (Ryu SW et al. 2003, Yu C et al. 2016)。次に、FAF1は、カスパーゼカスケードを活性化することによって、カスパーゼ‐8とアポトーシス経路を活性化する。また、FAF1はJNKを活性化してPARP1に結合し、このようにして、壊死経路を刺激する (Yu C et al. 2016)。しかしながら、非活性状態では、FAF1はHSP70に結合され、不活性形態として維持される (Kim HJ et al, 2005, Gao X et al, 2015)。FAF1はパーキンソン病患者の死後組織で過剰発現されることが報告されている (Betarbet R et al. 2008)。
【0004】
シヌクレイノパシー (Synucleinopathy)は、ミスフォールドアルファ-シヌクレインの蓄積および、その凝集体であるレビー小体 (LB)またはレビー神経突起 (LN)封入体などによって引き起こされる神経変性疾患群である。例として、パーキンソン病 (PD)、レビー小体型認知症 (DLB)、多発性全身性萎縮症 (MSA)がある (Spillantini MG and Goedert M 2000, Marti MJ et al. 2003)。
【0005】
SNCAという遺伝子名をもつアルファ-シヌクレインは、サイズが14kDaの小さな細胞質タンパク質であり、大部分がニューロン細胞のシナプス小胞に存在し、シグナル伝達と伝播に機能している (Snead D and Eliezer D 2014)。このタンパク質は三つのドメインからなっている。一つは両親媒性へリックスをもつN末端ドメイン、もう一つは柔軟なβシート構造をもつ中間ドメイン、そしてもう一つは多くの酸性残基をもつC末端尾部である (Gallegos S et al. 2015)。このタンパク質は、モノマーまたはテトラマーとして可溶性形態で存在することが知られている。しかしながら、アルファ-シヌクレインはミスフォールディングされ、凝集してオリゴマーや、さらにはマルチマーを形成し、さまざまな不明な理由で凝集して、レビー小体およびレビー神経突起と呼ばれる線維構造になる。この過程は、C末端タンパク質分解、129位のセリンのリン酸化、モノユビキチン化および他の変性を含む (Sato H et al. 2013, Oueslati A 2016)。アルファ-シヌクレインのミスフォールディングおよび凝集の理由には、遺伝子重複または分解の減少によるタンパク質の過剰発現によるタンパク質の蓄積、または突然変異によるタンパク質自体の特性の変化がある。しかしながら、環境毒素、細胞毒性などの細胞ストレス、ERストレスおよび酸化ストレスなどの他の非遺伝的理由も知られている (Rockenstein E et al. 2014, Ingelsson M 2016)。さらに、SNCA遺伝子座多型変異はアルファ‐シヌクレインレベルおよび凝集に影響する (Mata IF et al., 2010)。
【0006】
アルファ‐シヌクレインミスフォールデッドマルチマーおよびレビー小体の毒性が研究されており、種々の病原性プロセス、特に、エキソサイトーシス、ERからゴルジ体への輸送、ERストレス、ゴルジ体ホメオスタシス、エンドサイトーシス、オートファジーおよび酸化ストレスを含む膜輸送における機能不全に関連している可能性がある (Wang T and Hay JC 2016, Snead D et al. 2014)。さらに、アルファ-シヌクレイン毒性には、ミトコンドリア毒性および炎症も含まれ得る (Ingelsson M, 2016)。アルファ-シヌクレインオリゴマーおよびレビー小体はプロテアソーム経路を妨害し、細胞膜破壊および細孔形成と関連し、細胞におけるアポトーシス活性化を導く (Gallegos S et al. 2015)。
【0007】
「シヌクレイノパシー」は、パーキンソン病 (PD)、認知症を伴うパーキンソン病 (PDD)、レビー小体型認知症 (DLB)、多系統萎縮症 (MSA)、非定型パーキンソン病、非定型パーキンソン病、および純粋自律神経障害 (PAF)などの一連の臨床症状を有する神経変性疾患群である (Spillantini MG and Goedert M 2000, Marti MJ 2003)。これらの疾患はレビー小体やレビー神経突起、あるいはニューロンやグリアにおけるアルファ-シヌクレインの凝集によって引き起こされる。臨床的には、病変の分布に応じて、運動機能、認知機能および自律機能の慢性的かつ進行性の低下を特徴とする。
【0008】
パーキンソン病はADに次いで一般的な神経変性疾患であり (Feng LR et al. 2010)、一般に運動障害と考えられている。PDの病理学的特徴は、黒質 (SNc)、特に運動障害に関与する中脳の黒質緻密部 (SNPC) (Luk KC et al. 2012)におけるドーパミン作動性ニューロンの選択的進行性変性と消失である。しかしながら、症状はしばしば自律神経、認知、および精神の問題の出現を伴う (Jankovic J 2008)。
【0009】
PDのもう一つの特徴は、ドーパミン作動性神経細胞にレビー小体 (LB)およびレビー神経突起 (LN)とよばれる細胞質封入体が存在することであり、これらは90%以上のパーキンソン病患者の死後組織に認められる。LBの主要タンパク質成分はミスフォールドされかつ凝集したアルファ‐シヌクレイン (Angot E et al. 2012) (Angot E et al.2012)である。
【0010】
SNCA遺伝子のいくつかの遺伝子変化、点変異および遺伝子重複は、家族性パーキンソン病 (PD)を生じる、すなわち、PDの原因となると考えられている。これらの遺伝子変異の優性遺伝は、タンパク質特性の変化またはタンパク質レベルの増加による凝集のような機能獲得機構を示唆する (Devine MJ et al. 2011, Appel-Cresswell S et al. 2013, Kasten M and Klein C 2013, Petrucci S et al. 2016)。SNCA遺伝子内の特定の多型または遠位エンハンサー領域の変異はその発現、かくして凝集を増加させる可能性があり、PDに関連することが報告されている (Mata IF et al. 2010, Soldner F et al. 2016)。
【0011】
SNCA遺伝子のもの以外にも、多くの変異がパーキンソン病および関係のあるシヌクレイノパシーと関連している (Wang C-D and Chan P 2014, Kalinderi K et al. 2016, Federoff M 2015, Nussbaum R 2017)。これらの遺伝子のいくつかはアルファ‐シヌクレインのプロセシングとその蓄積に関与していることが示唆されている。例えば、GBA(グルコセレブロシダーゼ遺伝子)における突然変異は、レビー小体型認知症症例の23%およびPD症例の21%である (Sidransky E et al. 2009, Jesus S et al. 2016)。GBA変異体はアルファ‐シヌクレインプロセシングを変化させることによってSNCA蓄積を増加させることが報告されている (Cullen V et al. 2011, Fernandes HJ 2016)。これらの疾患に関連するその他の既知遺伝子は、パーキン、LRRK2、DJ-1およびPINK1である。パーキンソン病および他のシヌクレイノパシーの病因におけるこれらの遺伝子の役割はほとんど知られていないが、これらの遺伝子はユビキチン化、膜輸送、オートファジー、およびタンパク質フォールディングなどのタンパク質の翻訳後変性およびプロセシングにおいて機能を有し、アルファ-シヌクレインの過剰発現はこれらの遺伝子のいくつかにおける突然変異に起因する (Walden H and Muqit MMK 2017, Galegos S 2015)。
【0012】
レビー小体型認知症 (DLB)は認知症の二番目に一般的な型であり、認知症および動揺性認知、特に幻視を伴う進行性認知力低下の臨床症状を伴う。死後組織には黒質に加えて大脳皮質に多数のレビー小体 (LB)が見られ、これらのLBにはアルファ-シヌクレインが含まれる (Gaser F et al. 2005, Goeder M et al. 2017)。
【0013】
多系統萎縮症 (MSA)は、様々な組み合わせで自律神経不全、パーキンソン症候群、および小脳性運動失調の症状を伴う致死的な神経変性疾患である (Daniela Kuzdas-Wood et al. 2014)。り患率が1.9~4.9/10万、生存期間が6~9歳であり (Stefanova et al. 2009)、成人発症の平均年齢が57歳である、希な病気である。病理学的には、CNS全体のグリアに広範な細胞質封入体 (GCI)が認められ (Trojanowski JQ and Revesz T 2007)、これは糸状のアルファ-シヌクレインから構成される。新たに提案された基準は、主な運動特徴を伴う主な小脳性運動失調、および、線条体黒質またはオリーブ橋小脳構造における神経変性変化を伴うCNSアルファ‐シヌクレイン陽性グリア細胞質封入体の神経病理学的証明である (Gilman S 2008)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Appel-Cresswell S, Vilarino-Guell C, Encarnacion M, Sherman H, Yu I, Shah B, Weir D, Thompson C, Szu-Tu C, Trinh J, Aasly JO, Rajput A, Rajput AH, Jon StoessI A, Farrer MJ. 2013. Alpha-synuclein p.H50Q, a novel pathogenic mutation for Parkinson's disease. Mov. Disord. 28, 811-3.
【非特許文献2】Angot E, Steiner JA, Lema Tome CM, Ekstrom P, Mattsson B, Bjorklund A, Brundin P. 2012. Alpha-synuclein cell-to-cell transfer and seeding in grafted dopaminergic neurons in vivo. PloS ONE 7:e39465.
【非特許文献3】Betarbet R, Anderson LR, Gearing M, Hodges TR, Fritz JJ, Lah JJ, Levey Al. 2008. Fas-associated factor 1 and Parkinson's disease. Neurobiol. Dis. 31, 309-15.
【非特許文献4】Cullen V, Sardi SP, Ng J, Xu YH, Sun Y, Tomlinson JJ, Kolodziej P, Kahn I, Saftig P, Woulfe J, Rochet JC, Glicksman MA, Cheng SH, Grabowski GA, Shihabuddin LS, Schlossmacher MG. 2011. Acid β-glucosidase mutants linked to Gaucher disease, Parkinson disease, and Lewy body dementia alter α-synuclein processing. Ann. Neurol. 69, 940-53.
【非特許文献5】Devine MJ, Gwinn K, Singleton A, Hardy J. 2011. Parkinson's disease and α-synuclein expression. Mov. Disord. 26, 2160-8.Federoff M, Schottlaender LV, Houlden H, and Singleton A. 2015 Multiple system atrophy: the application of genetics in understanding etiology. Clin. Auton. Res. 25, 19-36.
【非特許文献6】Feng LR, Federoff HJ, Vicini S, and Maguire-Zeiss KA. 2010. Alpha-synuclein mediates alterations in membrane conductance: a potential role for alpha-synuclein oligomers in cell vulnerability. Eur. J. Neurosci. 32, 10-17.
【非特許文献7】Fernandes HJ, Hartfield EM, Christian HC, Emmanoulidou E, Zheng Y, Booth H, Bogetofte H, Lang C, Ryan BJ, Sardi SP, Badger J, Vowles J, Evetts S, Tofahs GK, Vekrellis K, Talbot K, Hu MT, James W, Cowley SA, Wade-Martins R. 2016. ER stress and autophagic perturbations lead to elevated extracellular α-synuclein in GBA-N370S Parkinson's iPSC-derived dopamine neurons. Stem Cell Reports. 6, 342-56.
【非特許文献8】Gallegos S, Pacheco C, Peters C, Opazo CM2, Aguayo LG. 2015. Features of alpha-synuclein that could explain the progression and irreversibility of Parkinson's disease. Front Neurosci. 9, 59.
【非特許文献9】Gao X, Liu W, Huang L, Zhang T, Mei Z, Wang X, Gong J, Zhao Y, Xie F, Ma J, Qian L. 2015. HSP70 inhibits stress-induced cardiomyocyte apoptosis by competitively binding to FAF1. Cell Stress Chaperones. 20, 653-61.
【非特許文献10】Geser F, Wenning GK, Poewe W, McKeith I. 2005. How to diagnose dementia with Lewy bodies: state of the art. Mov. Disord. 12, S11-20.
【非特許文献11】Gilman S, Wenning GK, Low PA, Brooks DJ, Mathias CJ, Trojanowski JQ, Wood NW, Colosimo C, Durr A, Fowler CJ, Kaufmann H, Klockgether T, Lees A, Poewe W, Quinn N, Revesz T, Robertson D, Sandroni P, Seppi K, Vidailhet M. 2008. Second consensus statement on the diagnosis of multiple system atrophy. Neurology 71, 670-676.
【非特許文献12】Goedert M, Jakes R, and Spillantinib MG. 2017. The Synucleinopathies: twenty years on. J. Parkinsons Dis. 7, S51-S69.
【非特許文献13】Ingelsson M. 2016. Alpha-synuclein oligomers-neurotoxic molecules in Parkinson's Disease and other Lewy Body disorders. Frontiers in Neuroscience Volumel O, Article408Jankovic J. 2008. Parkinson's disease: clinical features and diagnosis. J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry 79, 368-376.
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【非特許文献15】Jesus S, Huertas I, Bernal-Bernal I, Bonilla-Toribio M, Caceres-Redondo MT, Vargas-Gonzalez L, Gomez-Llamas M, Carrillo F, Calderon E, Carballo M, Gomez-Garre P, Mir P. 2016. GBA variants Influence motor and non-motor features of Parkinson's disease. PLoS One. 11:e0167749.
【非特許文献16】Kalinderi K, Bostantjopoulou S, Fidani L. 2016. The genetic background of Parkinson's disease: current progress and future prospects. Acta Neurol. Scand. 134: 314-326.
【非特許文献17】Kasten M, Klein C. 2013. The many faces of alpha-synuclein mutations. Mov. Disord. 28, 697-701.
【非特許文献18】Kim HJ, Song EJ, Lee YS, Kim E, Lee KJ. 2005. Human Fas-associated factor 1 interacts with heat shock protein 70 and negatively regulates chaperone activity. J. Biol. Chem. 280, 8125-33.
【非特許文献19】Kuzdas-Wood D, Stefanova N, Jellinger KA, Seppi K, Schlossmacher MG, Poewe W, Wenning GK. 2014. Towards translational therapies for multiple system atrophy. Progress in Neurobiology 1 18, 19-35.
【非特許文献20】Lee MK, Stirling W, Xu Y, Xu X, Qui D, Mandir AS, Dawson TM, Copeland NG, Jenkins NA, Price DL. 2002. Human-synuclein-harboring familial Parkinson's disease-linked Ala-53 Thr mutation causes neurodegenerative disease with alpha-synuclein aggregation in transgenic mice. PNAS 99, 8968-8973.
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【非特許文献22】Luk KC, Kehm V, Carroll J, Zhang B, O'Brien P, Trojanowski JQ, Lee VM. 2012. Pathological a-synuclein transmission initiates Parkinson-like neurodegeneration in nontransgenic mice. Science 338, 949-953.
【非特許文献23】Marti MJ, Tolosa E, Campdelacreu J. 2003. Clinical overview of the synucleinopathies. Mov. Disord. 6:S21-7.
【非特許文献24】Mata IF, Shi M, Agarwal P, Chung KA, Edwards KL, Factor SA, Galasko DR, Ginghina C, Griffith A, Higgins DS, Kay DM, Kim H, Leverenz JB, Quinn JF, Roberts JW, Samii A, Snapinn KW, Tsuang DW, Yearout D, Zhang J, Payami H, Zabetian CP. 2010. SNCA variant associated with Parkinson disease and plasma-synuclein level. Arch Neurol. Nov;67(11): 1350-6.
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【非特許文献27】Rockenstein E, Nuber S, Overk CR, Ubhi K, Mante M, Patrick C, Adame A, Trejo-Morales M, Gerez J, Picotti P, Jensen PH, Campioni S, Riek R, Winkler J, Gage FH, Winner B, Masliah E. 2014. Accumulation of oligomer-prone a-synuclein exacerbates synaptic and neuronal degeneration in vivo. Brain 137, 1496-1513.
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【非特許文献35】Sidransky E, Nails MA, Aasly JO, Aharon-Peretz J, Annesi G, Barbosa ER, Bar-Shira A, Berg D, Bras J, Brice A, Chen CM, Clark LN, Condroyer C, De Marco EV, Durr A, Eblan MJ, Fahn S, Farrer MJ, Fung HC, Gan-Or Z, Gasser T, Gershoni-Baruch R, Giladi N, Griffith A, Gurevich T, Januario C, Kropp P, Lang AE, Lee-Chen GJ, Lesage S, Marder K, Mata IF, Mirelman A, Mitsui J, Mizuta I, Nicoletti G, Oliveira C, Ottman R, Orr-Urtreger A, Pereira LV, Quattrone A, Rogaeva E, Rolfs A, Rosenbaum H, Rozenberg R, Samii A, Samaddar T, Schulte C, Sharma M, Singleton A, Spitz M, Tan EK, Tayebi N, Toda T, Troiano AR, Tsuji S, Wittstock M, Wolfsberg TG, Wu YR, Zabetian CP, Zhao Y, Ziegler SG. 2009. Multicenter analysis of glucocerebrosidase mutations in Parkinson's disease. N. Engl. J. Med. 361, 1651-1661.
【非特許文献36】Trojanowski JQ, Revesz T. 2007. Proposed neuropathological criteria for the post mortem diagnosis of multiple system atrophy. Neuropathol. Appl. Neurobiol. 33, 615-620.
【非特許文献37】Walden H, and Muqit MMK. 2017. Ubiquitin and Parkinson's disease through the looking glass of genetics. Biochemical Journal 474, 1439-1451.
【非特許文献38】Soldner F, Stelzer Y, Shivalila CS, Abraham BJ, Latourelle JC, Barrasa Ml, Goldmann J, Myers RH, Young RA, Jaenisch R. 2016. Parkinson-associated risk variant in distal enhancer of a-synuclein modulates target gene expression. Nature 533, 95-9.
【非特許文献39】Wang T, Hay JC. 2015. Alpha-synuclein toxicity in the early secretory pathway: How it drives neurodegeneration in Parkinsons disease. Frontiers in Neuroscience Volume 9, Article 433.
【非特許文献40】Wang C, Chan P. 2014. Clinicogenetics of Parkinson's disease: a drawing but not completed picture. Neuroimmunol. Neuroinflammation 1, 115-126.
【非特許文献41】Yoo SE, Yu C, Jung S, Kim E, Kang NS. 2016. Design and synthesis of fluorescent and biotin tagged probes for the study of molecular actions of FAF1 inhibitor. Bioorg. Med. Chem. Lett. 26, 1169-72.
【非特許文献42】Yu C, Kim BS, Kim E. 2016. FAF1 mediates regulated necrosis through PARP1 activation upon oxidative stress leading to dopaminergic neurodegeneration. Cell Death Differ. 23, 1873-1885.
【発明の概要】
【0015】
本発明は、FAF1が神経細胞におけるアルファ-シヌクレインの蓄積およびその凝集を増加させるという驚くべき発見によって開示される。これらに続けて、本研究はアミノピラゾール誘導体FAF1阻害剤が神経細胞におけるアルファ‐シヌクレインの蓄積とその凝集を実際に減少させることを確認した。本発明は、FAF1がp62タンパク質の増加およびLC3の減少を介してオートファジーを阻害するという発見によっても開示される。本発明者らの研究は、アミノピラゾール誘導体FAF1阻害剤が実際にFAF1活性を逆転させ、p62タンパク質の減少とLC3の増加を介してオートファジーを増強することを確認した。FAF1は細胞死を促進するアポトーシス促進タンパク質であり、オートファジーに対するFAF1活性は新しい発見であるため、これらの知見は予想外である。
【0016】
本発明は、アルファ-シヌクレイン媒介性シヌクレイノパシーを治療または予防するために、FAF1遺伝子およびタンパク質によってアルファ-シヌクレインタンパク質レベルを調節するための組成物および方法、ならびに、アルファ-シヌクレインタンパク質レベル、凝集または変性を調節するためのFAF1の阻害剤に関する。本開示は、関連する診断方法、およびFAF1レベルを調節する活性を有する化合物を使用する治療方法を含む。
【0017】
本開示は、概略、シヌクレイノパシーの進行を阻止したり遅延させたりするヒト細胞におけるFAF1の発現またはFAF1タンパク質の活性を変化させる、抗体、ペプチド、アプタマーもしくはアンチセンス核酸もしくはsiRNAなどの核酸または小分子を使用する組成物および方法に関する。それゆえ、遺伝子配列の変性ならびにタンパク質発現およびFAF1の活性の変化を与える組成物および方法が提供され、それらは病気の進行に影響する。診断または予後目的で、サンプルにおけるアルファ-シヌクレインの検出および定量ならびに/またはシヌクレインの形態の特徴付けのためのそのような組成物および方法の使用も開示される。
【0018】
予期せぬことに、トランスフェクト細胞ベースのアッセイを用いて、本発明者らは、FAF1が細胞中のアルファ-シヌクレインのレベルを用量依存的に増加させることを見出した。さらに、FAF1を発現する組換えアデノウイルスの感染による動物におけるFAF1の発現増加は、アルファ-シヌクレインレベルを上昇させる。さらに、RNAiによるトランスフェクションによるFAF1の減少はアルファ‐シヌクレインレベルを減弱させる。本発明者らは、FAF1がLC‐3IIおよびp62を増加させることによってオートファジーを阻害することも明らかにした。このことは、アルファ‐シヌクレインがイン・ビトロおよび動物の細胞におけるオートファジー経路によって少なくとも部分的に転換されることを強く示唆する。
【0019】
本発明者らは、FAF1阻害剤KM-819を開発した (KR-88493, 米国特許第7,939,550号, Yoo SEら 2016、その全体およびすべての目的が出典明示して本明細書の一部とみなされる)。本発明者らは、化学名が4-[2-(4-ブロモ-フェニルスルファニル)-アセチルアミノ]-1-フェネチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸であるアミノピラゾール化合物KM-819がFAF1阻害剤であることをここに開示する。本発明者らは、ここで、アミノピラゾール化合物KM-819がFAF1過剰発現の効果を逆転させ、細胞および動物におけるアルファ-シヌクレインを減少させることを開示する。まとめると、以下の実施例における実験は、FAF1を調節するFAF1 siRNAまたはアンチセンスまたはその関連遺伝子構築物、ペプチド、抗体、および小分子を用いて、アルファ-シヌクレインの量またはリン酸化状態を調節し、アルファ-シヌクレイン誘導性シヌクレイノパシーを治療することができることを示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、トランスフェクトされたFAF1-FLAGトランス遺伝子のSH-SY5Y細胞における過剰発現を描写する。
【
図2】
図2は、FAF1-FLAGトランス遺伝子を過剰発現するSH-SY5Yにおけるシヌクレインの凝集を示す。
【
図3A】
図3Aおよび3Bは、トランスフェクトされたFAF1-FLAGトランス遺伝子を過剰発現するSH-SY5Y細胞におけるレビー小体様形態の形成を示す。
図3Aは、ベクター対照でトランスフェクトされた細胞を示す。
図3Bは、FAF1-FLAGトランス遺伝子でトランスフェクトされた細胞を示す。DAPI-DAPI染色;α-syn-anti-α-シヌクレイン抗体染色;抗-リン酸化α-シヌクレイン染色を伴うPs129-α- syn -染色;3つの画像の重ね合わせ。
【
図3B】
図3Aおよび3Bは、トランスフェクトされたFAF1-FLAGトランス遺伝子を過剰発現するSH-SY5Y細胞におけるレビー小体様形態の形成を示す。
図3Aは、ベクター対照でトランスフェクトされた細胞を示す。
図3Bは、FAF1-FLAGトランス遺伝子でトランスフェクトされた細胞を示す。DAPI-DAPI染色;α-syn-anti-α-シヌクレイン抗体染色;抗-リン酸化α-シヌクレイン染色を伴うPs129-α- syn -染色;3つの画像の重ね合わせ。
【
図4】
図4は、中脳組織にマイクロインジェクションされたFAF1-発現アデノウイルス構築物を有するマウスの中脳におけるFAF1の過剰発現を描写する。
【
図5】
図5は、α-シヌクレイン遺伝子および対応するsiRNAで同時トランスフェクトされたSH-SY5Y細胞におけるFAF1発現の減弱を示す。
【
図6】
図6は、FAF1遺伝子でトランスフェクトされたSH-SY5Y細胞におけるp62およびLC3タンパク質発現の変化を示す。
【
図7】
図7は、FAF1-FLAG構築物でトランスフェクトされた細胞におけるFAF1へのKM-819の結合を示す。
【
図8】
図8は、細胞抽出物中のKM-819による、FAF1-カスパーゼ8およびFAF1-JNK複合体の形成阻害を示す。
【
図9】
図9は、細胞抽出物中のKM-819による、カスパーゼ3開裂のカスパーゼ8活性およびJNKリン酸化の阻害を示す。
【
図10】
図10は、FAF1を過剰発現し、KM-819で処理したSH-SY5Y細胞におけるp62タンパク質の量の減少およびLC3タンパク質の量の増加を示す。
【
図11】
図11は、FAF1-FLAG発現構築物およびα-シヌクレイン-GFP(緑色蛍光タンパク質)発現構築物で同時トランスフェクトされた細胞におけるα-シヌクレインタンパク質の減少を示す。
【
図12】
図12は、KM-819投与後にFAF1を過剰発現するトランスジェニックマウスの中脳組織におけるαシヌクレイン量およびS129リン酸化α-シヌクレイン量の減少を示す。
【
図13】
図13は、KM-819投与後にFAF1を過剰発現するトランスジェニックマウスの海馬におけるα-シヌクレイン量の減少を示す。
【
図14】
図14は、KM-819投与後にFAF1を過剰発現するトランスジェニックマウスの大脳皮質におけるα-シヌクレイン量の減少を示す。
【
図15】
図15は、KM-819投与後にFAF1を過剰発現するトランスジェニックマウスの小脳におけるα-シヌクレイン量の減少を示す。
【
図16】
図16は、KM-819投与後にFAF1を過剰発現するトランスジェニックマウスの線条体におけるα-シヌクレイン量の減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示のひとつの態様は、シヌクレイノパシーから生じる疾患または症状を治療する方法であって、シヌクレイノパシーの症状を呈するか、シヌクレイノパシーのリスクがある対象に、前記対象の細胞において、アルファ-シヌクレインの量を上昇させるか、または、LC-3およびp62の量を調節するFAF1活性の阻害剤を投与することを含む、方法を提供する。投与される有効量は、それぞれ、対象の細胞において、アルファ-シヌクレインの量を低下させる量、または、LC-3の量を上昇させるおよび/もしくはp62の量を低下させる量である。
【0022】
この方法のいくつかの実施において、FAF1活性の阻害剤は、式1:
【0023】
【化1】
[式中、
R1は、-CO2R3、-CH2OR3、-CONR3R4または
【0024】
【化2】
(式中、R3およびR4は、互いに独立して、H、または、直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C6アルキルである。)であり;
R2は-(CH2)2-フェニルであり;
Bは、H、フェニルまたはC1-C3アルキルもしくはハロゲン置換フェニルであり;
nは、0から2の整数であり;
Yは、S、O、CH2、SO、SO2またはNR3R4(式中、R3およびR4は、互いに独立して、H、または直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C6アルキルである。)であり;
Zは、H、ハロゲン、OCH3、NO2、NH2、または、直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C3アルキルであり;
Aは、CHまたはNである。]
で示されるアミノピラゾール化合物または医薬上許容されるその塩であり得る。
【0025】
いくつかの場合、前記アミノピラゾール化合物は、4-[2-(4-ブロモ-フェニルスルファニル)-アセチルアミノ]-1-フェネチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸またはそのエステルもしくはアミドであり得る。
【0026】
本開示の別の態様は、シヌクレイノパシーから生じる疾患または症状を治療する方法であって、シヌクレイノパシーの症状を呈するか、シヌクレイノパシーのリスクがある対象に、前記対象の細胞において、アミノ酸S129にてリン酸化されたα-シヌクレインの量を低下させるのに有効な量の、FAF1タンパク質に結合する化合物を投与することを含む、方法を提供する。
【0027】
この態様のいくつかの実施において、FAF1活性の阻害剤は、式1:
【0028】
【化3】
[式中、
R1は、-CO2R3、-CH2OR3、-CONR3R4または
【0029】
【化4】
(式中、R3およびR4は、互いに独立して、H、または、直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C6アルキルである。)であり;
R2は-(CH2)2-フェニルであり;
Bは、H、フェニルまたはC1-C3アルキルもしくはハロゲン置換フェニルであり;
nは、0から2の整数であり;
Yは、S、O、CH2、SO、SO2またはNR3R4(式中、R3およびR4は、互いに独立して、H、または直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C6アルキルである。)であり;
Zは、H、ハロゲン、OCH3、NO2、NH2、または、直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C3アルキルであり;
Aは、CHまたはNである。]
で示されるアミノピラゾール化合物または医薬上許容されるその塩であり得る。
【0030】
いくつかの場合、前記アミノピラゾール化合物は、4-[2-(4-ブロモ-フェニルスルファニル)-アセチルアミノ]-1-フェネチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸またはそのエステルもしくはアミドであり得る。
【0031】
本開示の治療態様のいずれにおいても、FAF1阻害剤は、経口的に、または脳もしくは脳脊髄液もしくは血液への注射によって、または皮膚を通して、またはミニポンプ移植のような他の一般的な実際的方法によって投与することができる。最も便利な経路は、FAF1結合化合物を経口投与するものである。
【0032】
アミノピラゾール化合物4-[2-(4-ブロモ-フェニルスルファニル)-アセチルアミノ]-1-フェネチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸は、細胞中のLC-3およびp62レベルを調節するためのEC50が1 nMであり、細胞中のアルファ-シヌクレインの量を減少させるためのEC50が20 μMである。したがって、脳組織細胞中のLC-3およびp62の量を調節するためのこの化合物の有効量は、脳組織の細胞中、少なくとも0.5 nM、好ましくは少なくとも1 nM、少なくとも2 nM、少なくとも5 nMまたは少なくとも10 nMの濃度を提供する量であり、脳組織の細胞中、アルファ-シヌクレインの量を減少させるためのこの化合物の有効量は、少なくとも10 nM、好ましくは少なくとも20 nM、少なくとも40 nM、少なくとも200 nMまたは脳組織中の濃度を提供する量である。
【0033】
本開示の別の態様は、対象において、シヌクレイノパシーを診断し、または、シヌクレイノパシーのリスクを評価する方法であって、対象または対象から採取した試料の細胞において、LC-3およびp62タンパク質によって媒介されるオートファジーを阻害するFAF1タンパク質の量またはFAF1活性のレベルを測定することを含み、ここに、FAF1の活性レベルまたはタンパク質レベルが正常なヒト集団におけるよりも高いことが、シヌクレイノパシーの発症またはシヌクレイノパシーを発症する対象のリスクを示す、方法を提供する。
【0034】
本開示の別の態様は、前記診断と治療を組み合わせて、対象においてシヌクレイオパシーから生じる疾患または症状を治療する方法であって、当該対象の細胞において、正常なヒト集団におけるよりも高い、対象の細胞においてLC-3およびp62タンパク質によって媒介されるオートファジーを阻害するFAF1タンパク質の量またはFAF1活性のレベルを示す対象に、対象の細胞においてLC3の量を上昇させ、および/またはp62の量を減少させるのに有効な量の、LC-3及びp62の量を調節するFAF1活性の阻害剤、または、対象の細胞においてアミノ酸S129にてリン酸化されたα-シヌクレインの量を減少させるのに有効な量の、FAF1タンパク質に結合する化合物を投与することを含む、方法を提供する。
【0035】
本開示のこの態様のいくつかの実施において、FAF1に結合するか、または、LC-3およびp62の量を調節するFAF1の活性を阻害する化合物は、式1:
【0036】
【化5】
[式中、
R1は、-CO2R3、-CH2OR3、-CONR3R4または
【0037】
【化6】
(式中、R3およびR4は、互いに独立して、H、または、直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C6アルキルである。)であり;
R2は-(CH2)2-フェニルであり;
Bは、H、フェニルまたはC1-C3アルキルもしくはハロゲン置換フェニルであり;
nは、0から2の整数であり;
Yは、S、O、CH2、SO、SO2またはNR3R4(式中、R3およびR4は、互いに独立して、H、または直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C6アルキルである。)であり;
Zは、H、ハロゲン、OCH3、NO2、NH2、または、直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C3アルキルであり;
Aは、CHまたはNである。]
で示されるアミノピラゾール化合物または医薬上許容されるその塩であり得る。
【0038】
脳脊髄液 (CSF)を採取して、対象におけるFAF1およびアルファ-シヌクレインのレベルを測定することができる。例えば、T.H. Langenickel et al., Br. J. Clin Pharmacol., vol. 81, pp. 878-890 (2016)(その全体が出典明示して本明細書の一部とみなされる。)によって記載されるような、留置脊椎カテーテルによる経時サンプリングを用いて、FAF1またはアルファ-シヌクレインのアッセイのためにCSF試料を収集することができる。
【実施例0039】
1.細胞中のFAF1によるアルファ-シヌクレインの増加
FAF1は、Flagでタグ付けされたFAF1遺伝子でのトランスフェクションによってSH-SY5Y細胞において過剰発現される。過剰発現は、抗Flag抗体および抗FAF1抗体を用いる細胞抽出物のウェスタンブロットによって確認される。ウサギ抗FAF1抗体は、Proteintech, Chicago, IL, USA, Cat. No. 10271-1-APから購入される。これらの細胞をアルファ-シヌクレイン遺伝子で同時トランスフェクトする。アルファ-シヌクレインのレベルは、抗アルファ-シヌクレイン抗体を用いるウェスタンブロットによってモニターされる。明らかに、かつ、予期せぬことに、アルファ‐シヌクレインのレベルはFAF1の過剰発現と共に増加する(
図1)。ベータ-アクチンレベルは、内部対照として用いられることに留意されたい。細胞内にはあるレベルの内因性FAF1タンパク質が存在することに留意されたい。
【0040】
2.細胞中のFAF1によるアルファ-シヌクレインの凝集形態の増加
FAF1は、Flagでタグ付けされたFAF1遺伝子でのトランスフェクションによってSH-SY5Y細胞において過剰発現される。これらの細胞をアルファ-シヌクレイン遺伝子で同時トランスフェクトする。アルファ-シヌクレインの凝集形態のレベルは、長時間フィルムに暴露した抗アルファ-シヌクレイン抗体を用いるウェスタンブロットによってモニターされる。明らかに、かつ、予期せぬことに、アルファ‐シヌクレインの凝集形態のレベルはFAF1の過剰発現と共に増加する(
図2)。
【0041】
3.細胞中のFAF1によるアルファ-シヌクレインのレビー小体様形態の生成
FAF1は、Flagでタグ付けされたFAF1遺伝子でのトランスフェクションによってSH-SY5Y細胞において過剰発現される。これらの細胞をアルファ-シヌクレイン遺伝子で同時トランスフェクトする。アルファ-シヌクレインのLB様形態は、抗アルファ-シヌクレイン抗体を用いる免疫蛍光染色によってモニターされる。明らかに、かつ、予期せぬことに、アルファ-シヌクレインのLB様形態は、FAF1が過剰発現されたときに観察される(
図3B、上部、矢印)。しかしながら、LB様形態はベクター対照では観察されず(
図3A、上部)、FAF1がLB様形態を誘発することを実証している。
【0042】
アルファシヌクレインは129位のセリン残基がリン酸化されていることが知られており、可能性のある病理過程がレビー小体の生成を引き起こす。129位にてのアルファ-シヌクレインのリン酸化形態は、抗Ps129-アルファ-シヌクレイン抗体を用いる免疫蛍光染色によってモニターされる。明らかに、アルファ-シヌクレインのLB様形態は、FAF1が過剰発現されたときに観察される(
図3B、上部、矢印)。明らかに、アルファ-シヌクレインのS129リン酸化形態は、FAF1がLM様形態で過剰発現したときに観察される(
図3B下部、矢印)。しかしながら、このリン酸化はベクター対照では観察されず(
図3A下部)、FAF1が129位のセリン残基にアルファ-シヌクレインのリン酸化を誘発することを示している。
【0043】
4.マウスにおけるFAF1によるアルファ-シヌクレインの増加
FAF1遺伝子を含む組換えアデノウイルスを中脳領域に通常の方法でステレオタイプ注入することによって、FAF1をマウスに過剰発現させた。過剰発現は、抗FAF1抗体を用いる中脳組織抽出物のウェスタンブロットによって確認される。中脳は、シヌクレイノパシーにおける運動に影響を及ぼすことが知られている黒質ドーパミン作動性ニューロンを有する組織である。2匹のマウスにFAF1アデノウイルスを注射し、2匹の非注射マウスを対照として用いる。アルファ-シヌクレインのレベルは、抗アルファ-シヌクレイン抗体を用いるウェスタンブロットによってモニターされる。明らかに、アルファ-シヌクレインレベルの上昇はFAF1の過剰発現と相関している(
図4)。
【0044】
5.細胞におけるFAF1 siRNAによるアルファ-シヌクレインの減少
FAF1発現は、SH-SY5Y細胞をsiRNA(配列:GUGUUGUGGCACAAACCAU)で処理することによって減弱され、FAFレベルの減少は、抗FAF1抗体を用いる細胞抽出物のウェスタンブロットによって確認される。細胞をアルファ-シヌクレイン遺伝子で同時トランスフェクトする。アルファ-シヌクレインのレベルは、抗アルファ-シヌクレイン抗体を用いるウェスタンブロットによってモニターされる。明らかに、アルファ-シヌクレインのレベルは、FAF1 siRNA処理によって減少する(
図5)。一方、対照siRNA(scRNA、縮重配列)による処理はアルファ‐シヌクレインレベルを低下させない。
【0045】
6.FAF1はオートファジーの抑制因子である
アルファ-シヌクレインは、プロテアソーム、オートファジー、およびシャペロン媒介オートファジーを含む細胞内の様々な経路によって分解されることが知られている(Sampaio-Marques B and Ludovico P 2015)。FAF1はSH‐SY5Y細胞におけるトランスフェクションにより過剰発現し、タンパク質分解経路に関与する種々のタンパク質をウェスタンブロット法により分析した(
図6)。
【0046】
図6に示すように、FAF1の過剰発現によりp62タンパク質は増加し、LC3は減少することから、FAF1はオートファジーを抑制することが示される。他のすべてのタンパク質は変化しないことに留意されたい。この変化は前述のようにオートファジーを媒介する (Sampaio-Marques B and Ludovico P 2015)。
【0047】
7.KM-819 (KR-33493)はFAF1阻害剤である
KM-819 (KR-33493、4-[2-(4-ブロモ-フェニルスルファニル)-アセチルアミノ]-1-フェネチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸)は、虚血性細胞死阻害剤についての先行技術 (米国特許第7,939,550号, Yoo SE et al. 2016)に記載されたアミノピラゾール誘導体である。KM-819によるFAF1の阻害は、
図7に記載されているように、KM-819がFAF1に結合することによって確認される。また、KM-819によるFAF1の阻害は、アポトーシス経路タンパク質カスパーゼ8およびJAKを含む細胞におけるFAF1ダウンストリーム標的の阻害によって確認される(
図8)。化合物は虚血性細胞死のアッセイにおいて10 μMでアポトーシスの70%阻害を示し、デオキシグルコースは低酸素媒介アポトーシスを誘発した (米国特許第7,939,550号)。
【0048】
FAF1へのKM-819結合は、記載されているように (Yoo SE et al. 2016)、ビオチン標識KM-819を用いるSH-SY6H細胞抽出物中のプルダウン分析によって確認される。細胞をフラッグタグ付けされたFAF1でトランスフェクトする。生成したFAF1-KM-819複合体を、アビジン被覆アガロースを用いて沈殿させる。複合体中の沈殿したFAF1を、抗Flag抗体を用いるウェスタンブロットにより測定する。明らかに、FAF1は、細胞が過酸化水素によってストレスを受け、FAF1が活性化されたとき、KM-819に結合する。全細胞抽出物 (WCL)中の全FAF1レベルが対照として測定されることに留意されたい。
【0049】
FAF1は、記載されているように (Yu C et al. 2016)、カスパーゼカスケードの活性化と壊死を介する種々の刺激によってアポトーシスストレスを活性化する。FAF1の直接標的は、これら2つの経路においてそれぞれカスパーゼ8とJNKである。この活性化の段階では、これらの複合体が形成され、引き続き下流の標的が活性化される。
【0050】
KM-819によるFAF1‐カスパーゼ8とFAF1‐JNKの複合体形成の阻害は、カスパーゼ8 DED抗体およびJNK抗体を用いる通常の免疫沈降アッセイで確認し、結合し沈殿したFAF1は、抗FAF1抗体を用いるウェスタンブロットで測定する。明らかに、KM-819は複合体形成を効果的に阻害し、0.1 uMで約80%阻害する(
図8)。
【0051】
KM-819によるカスパーゼ8およびJNKの活性化の阻害は、それぞれ、カスパーゼ8基質、カスパーゼ3の切断、およびJNKの自己リン酸化をアッセイすることによって確認される(
図9)。
細胞を、示されるように異なる濃度のKM-819で処理し、切断されたカスパーゼ3および自己リン酸化された形態のJNKのレベルを、それぞれ、抗カスパーゼ3抗体および抗ホスホ-JNK抗体を用いるウェスタンブロットによって測定する。明らかに、KM-819は、カスパーゼ8およびJNK活性化の活性を阻害する(
図9)。KM-819のカスパーゼ8活性化のIC50は0.73 uMであり、KM-819のJNK活性化のIC50は0.25 uMである。
【0052】
8.KM-819がオートファジーを促進する。
アルファ-シヌクレインは、プロテアソーム、オートファジー、およびシャペロン媒介オートファジーを含む細胞内の様々な経路によって分解されることが知られている (Sampaio-Marques B and Ludovico P 2015)。FAF1はオートファジーを抑制する。
【0053】
FAF1阻害剤がFAF1媒介オートファジー抑制の活性を阻害することを確認するために、FAF1を過剰発現するSH-SY5Y細胞を、示されるようにKM-819で処理し、LC3およびp62レベルをウェスタンブロットによって測定する(
図10)。KM-819はp62タンパク質を減少させ、LC3を増加させ、KM-819がオートファジー経路を促進することを示している。KM-819のオートファジー促進のEC50は1 nMである。
【0054】
9.細胞におけるFAF1阻害剤によるアルファ-シヌクレインの減少
FAF1阻害薬が細胞におけるアルファ-シヌクレインレベルを低下させるかどうかを確認するために、SH-SY5Y細胞をFAF1阻害薬KM-819で処理する (KR-88493, 米国特許第7,939,550号, Yoo SE et al. 2016)。細胞は、Flagでタグ付けされたFAF1およびGFPでタグ付けされたアルファ-シヌクレインをコードする遺伝子で同時トランスフェクトされる。アルファ-シヌクレインレベルは、抗GFP抗体を用いる細胞抽出物のウェスタンブロットによって測定される。FAF1レベルは、抗Flag抗体を用いる細胞抽出物のウェスタンブロットによって測定される。明らかに、アルファ-シヌクレインのレベルはFAF1阻害薬による治療で低下する(
図11)。IC50は20 nMであり、阻害は10 uMで95%以上である。これは、先行技術において測定されたアポトーシス阻害活性、10 uMでの70%阻害と比較してはるかに高い効力である。FAF1レベル自体は、FAF1阻害薬による治療によって変化しないことに留意されたい。
【0055】
10.マウスの中脳におけるFAF1阻害剤によるアルファ-シヌクレインの減少
動物におけるアルファ‐シヌクレインレベルに対するFAF1阻害剤の効果を調べるために、アルファ‐シヌクレイン過剰発現トランスジェニックマウスをFAF1阻害剤KM-819で処理する。トランスジェニック動物は、ヒトアルファ-シヌクレイン突然変異遺伝子A53Tをプリオン遺伝子プロモーター下に有するマウス系統である (Lee MK et al. 2002)。
【0056】
3か月齢のマウスにKM-819を1、5、および10 mg/kg/日の用量で9日間経口投与する。2匹の非トランスジェニックマウス(非-Tg)を対照として用い、3匹のトランスジェニックマウス(アルファ- syn A53T Tg)をKM-819なしのビヒクルのみを投与する。また、KM-819の投与ごとに2匹のマウスを使用する。動物を屠殺し、中脳組織を単離し、抽出物を作成する。アルファ-シヌクレイン、アルファ-シヌクレインのS129リン酸化形態、およびFAF1は、それぞれ、抗アルファ-シヌクレイン抗体、P-アルファ-syn抗体、およびFAF1抗体を用いるウェスタンブロットによって測定される。明らかに、アルファ-シヌクレインおよびそのリン酸化形態のいずれのレベルもFAF1阻害剤KM-819での処理によって減少し、FAF1阻害剤が動物におけるアルファ-シヌクレイン蓄積を減少させることを示している(
図12)。FAF1レベル自体は、FAF1阻害薬による治療によって変化しないことに留意されたい。ベータ-アクチンレベルは、内部対照として用いられることに留意されたい。
【0057】
11.マウスの海馬におけるFAF1阻害剤によるアルファ-シヌクレインの減少
動物におけるアルファ‐シヌクレインレベルに対するFAF1阻害剤の効果を調べるために、アルファ‐シヌクレイン過剰発現トランスジェニックマウスをFAF1阻害剤KM-819で処理する。トランスジェニック動物は、プリオン遺伝子プロモーターの下にヒトアルファ-シヌクレイン突然変異遺伝子A53Tを有するマウス系統である (Human-synuclein-harboring familial Parkinson's, Lee MK et al. 2002)。
【0058】
3か月齢のマウスにKM-819を1、5、および10 mg/kg/日の用量で9日間経口投与する。3匹の非トランスジェニック(非-Tg)マウスを対照として用い、2匹のトランスジェニックマウス(アルファ-syn A53T Tg)をKM-819なしのビヒクルのみを投与する。また、KM-819の投与ごとに2匹のマウスを使用する。動物を屠殺し、海馬組織を単離し、抽出物を作製する。アルファ-シヌクレインおよびFAF1は、それぞれ、抗アルファ-シヌクレイン抗体およびFAF1抗体を用いるウェスタンブロットによって測定される。明らかに、アルファ-シヌクレインのレベルはFAF1阻害剤KM-819での処理によって減少し、FAF1阻害剤が動物におけるアルファ-シヌクレイン蓄積を減少させることを示している(
図13)。
【0059】
12.マウス皮質におけるFAF1阻害剤によるアルファ-シヌクレインの減少
動物におけるアルファ‐シヌクレインレベルに対するFAF1阻害剤の効果を調べるために、アルファ‐シヌクレイン過剰発現トランスジェニックマウスをFAF1阻害剤KM-819で処理する。トランスジェニック動物は、プリオン遺伝子プロモーターの下にヒトアルファ-シヌクレイン突然変異遺伝子A53Tを有するマウス系統である (Human-synuclein-harboring familial Parkinson's, Lee MK et al. 2002)。
【0060】
3か月齢のマウスにKM-819を1、5、および10 mg/kg/日の用量で9日間経口投与する。2匹の非トランスジェニックマウス(非-Tg)を対照として用い、2匹のトランスジェニックマウス(アルファ- syn A53T Tg)をKM-819なしのビヒクルのみを投与する。また、KM-819の投与ごとに2匹のマウスを使用する。動物を屠殺し、皮質組織を単離し、抽出物を作成する。アルファ-シヌクレインは、抗アルファ-シヌクレイン抗体を用いるウェスタンブロットによって測定される。明らかに、アルファ-シヌクレインのレベルは、FAF1阻害剤KM-819での処理によって減少し、FAF1阻害剤が動物におけるアルファ-シヌクレイン蓄積を減少させることを示している(
図14)。
【0061】
13.マウス小脳におけるFAF1阻害剤によるアルファ-シヌクレインの減少
動物におけるアルファ‐シヌクレインレベルに対するFAF1阻害剤の効果を調べるために、アルファ‐シヌクレイン過剰発現トランスジェニックマウスをFAF1阻害剤KM-819で処理する。トランスジェニック動物は、プリオン遺伝子プロモーターの下にヒトアルファ-シヌクレイン突然変異遺伝子A53Tを有するマウス系統である (Human-synuclein-harboring familial Parkinson's, Lee MK et al. 2002)。
【0062】
3か月齢のマウスにKM-819を1、5、および10 mg/kg/日の用量で9日間経口投与する。3匹の非トランスジェニックマウス(非-Tg)を対照として用い、2匹のトランスジェニックマウス(アルファ- syn A53T Tg)にKM-819なしのビヒクルのみを投与する。KM-819の投与ごとに2匹のマウスを用いる。動物を屠殺し、小脳組織を単離し、抽出物を作成する。アルファ-シヌクレインおよびFAFIは、それぞれ、抗アルファシヌクレイン抗体およびFAF1抗体を用いたウェスタンブロットによって測定される。明らかに、アルファ-シヌクレインのいずれのレベルも、FAF1阻害剤KM-819での処理によって減少し、FAF1阻害剤が動物におけるα-シヌクレイン蓄積を減少させることを示している(
図15)。
【0063】
14.マウス線条体におけるFAF1阻害剤によるアルファ-シヌクレインの減少
動物におけるアルファ‐シヌクレインレベルに対するFAF1阻害剤の効果を調べるために、アルファ‐シヌクレイン過剰発現トランスジェニックマウスをFAF1阻害剤KM-819で処理する。トランスジェニック動物は、プリオン遺伝子プロモーターの下にヒトアルファ-シヌクレイン突然変異遺伝子A53Tを有するマウス系統である (Human-synuclein-harboring familial Parkinson's, Lee MK et al. 2002)。
【0064】
3か月齢のマウスにKM-819を1、5、および10 mg/kg/日の用量で9日間経口投与する。3匹の非トランスジェニック(非-Tg)マウスを対照として用い、2匹のトランスジェニックマウス(アルファ- syn A53T Tg)にKM-819なしのビヒクルのみを投与する。また、KM-819の投与ごとに2匹のマウスを使用する。動物を屠殺し、線条体組織を単離し、抽出物を作成する。アルファ-シヌクレインおよびFAF1は、それぞれ抗アルファ-シヌクレイン抗体およびFAF1抗体を用いるウェスタンブロットによって測定される。明らかに、アルファ-シヌクレインのレベルは、FAF1阻害剤KM-819での処理によって減少し、FAF1阻害剤が動物におけるアルファ-シヌクレイン蓄積を減少させることを示している(
図16)。
【0065】
[実施形態]
実施形態1:シヌクレイノパシーから生じる疾患または状態を治療する方法であって、シヌクレイノパシーの症状を呈するか、または、シヌクレイノパシーのリスクがある対象に、アルファ-シヌクレインの量を上昇させるFAF1活性の阻害剤の有効量、または、LC-3およびp62の量を調節するFAF1活性の阻害剤の有効量を投与することを含む、方法。
【0066】
実施形態2:FAF1活性の阻害剤が、式1:
【0067】
【化7】
[式中、
R1は、-CO2R3、-CH2OR3、-CONR3R4または
【0068】
【化8】
(式中、R3およびR4は、互いに独立して、H、または、直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C6アルキルである。)であり;
R2は-(CH2)2-フェニルであり;
Bは、H、フェニルまたはC1-C3アルキルもしくはハロゲン置換フェニルであり;
nは、0から2の整数であり;
Yは、S、O、CH2、SO、SO2またはNR3R4(式中、R3およびR4は、互いに独立して、H、または直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C6アルキルである。)であり;
Zは、H、ハロゲン、OCH3、NO2、NH2、または、直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C3アルキルであり;
Aは、CHまたはNである。]
で示されるアミノピラゾール化合物または医薬上許容されるその塩である、実施形態1に記載の方法。
【0069】
実施形態3:前記アミノピラゾール化合物が4-[2-(4-ブロモ-フェニルスルファニル)-アセチルアミノ]-1-フェネチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸またはそのエステルもしくはアミドである、実施形態1に記載の方法。
【0070】
実施形態4:シヌクレイノパシーから生じる疾患または状態を治療する方法であって、シヌクレイノパシーの症状を呈するか、または、シヌクレイノパシーのリスクがある対象に、当該対象の細胞におけるアミノ酸S129にてリン酸化されたアルファ-シヌクレインの量を減少させる有効な量の、FAF1タンパク質に結合する化合物を投与することを含む、方法。
【0071】
実施形態5:FAF1活性の阻害剤が、式1:
【0072】
【化9】
[式中、
R1は、-CO2R3、-CH2OR3、-CONR3R4または
【0073】
【化10】
(式中、R3およびR4は、互いに独立して、H、または、直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C6アルキルである。)であり;
R2は-(CH2)2-フェニルであり;
Bは、H、フェニルまたはC1-C3アルキルもしくはハロゲン置換フェニルであり;
nは、0から2の整数であり;
Yは、S、O、CH2、SO、SO2またはNR3R4(式中、R3およびR4は、互いに独立して、H、または直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C6アルキルである。)であり;
Zは、H、ハロゲン、OCH3、NO2、NH2、または、直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C3アルキルであり;
Aは、CHまたはNである。]
で示されるアミノピラゾール化合物または医薬上許容されるその塩である、実施形態4に記載の方法。
【0074】
実施形態6:前記アミノピラゾール化合物が4-[2-(4-ブロモフェニルスルファニル)-アセチルアミノ]-1-フェネチル-1H-ピラゾール-3-カルボン酸またはそのエステルもしくはアミドである、実施形態4に記載の方法。
【0075】
実施例7:前記FAF1阻害剤が、経口的に、または、脳もしくは血液中に、もしくは皮膚を介して注射によって投与される、実施形態1~3のいずれか1項に記載の方法。
【0076】
実施形態8:前記FAF1タンパク質に結合する化合物が、経口的に、または、脳もしくは血液中に、もしくは皮膚を介して注射によって、または、他の一般的な実際的方法によって投与され、ここに、前記FAF1結合化合物が経口投与される、実施形態4~6のいずれか1項に記載の方法。
【0077】
実施形態9:対象において、シヌクレイノパシーを診断し、または、シヌクレイノパシーのリスクを評価する方法であって、対象の細胞における、LC-3およびp62タンパク質によって媒介されるオートファジーを阻害するFAF1タンパク質の量またはFAF1活性のレベルを測定することを含み、ここに、FAF1の活性レベルまたはタンパク質レベルが正常なヒト集団におけるよりも高いことが、シヌクレイノパシーの発症またはシヌクレイノパシーを発症する当該対象のリスクを示す、方法。
【0078】
実施形態10:対象においてシヌクレイノパシーから生じる疾患または症状を治療する方法であって、当該対象の細胞において、対象の細胞におけるLC-3およびp62タンパク質を含むオートファジーを阻害するFAF1活性またはFAF1レベルを呈する対象に、対象の細胞においてアミノ酸S129にてリン酸化されたα-シヌクレインの量を減少させるのに有効な量の、FAF1タンパク質に結合する化合物を投与することを含み、ここに、FAF1の活性レベルまたはタンパク質レベルが正常ヒトより高いことが、シヌクレイノパシーの発症またはシヌクレイオパシーを発症する対象のリスクを示す、方法。
【0079】
実施形態11:FAF1活性の阻害剤が、式1:
【0080】
【化11】
[式中、
R1は、-CO2R3、-CH2OR3、-CONR3R4または
【0081】
【化12】
(式中、R3およびR4は、互いに独立して、H、または、直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C6アルキルである。)であり;
R2は-(CH2)2-フェニルであり;
Bは、H、フェニルまたはC1-C3アルキルもしくはハロゲン置換フェニルであり;
nは、0から2の整数であり;
Yは、S、O、CH2、SO、SO2またはNR3R4(式中、R3およびR4は、互いに独立して、H、または直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C6アルキルである。)であり;
Zは、H、ハロゲン、OCH3、NO2、NH2、または、直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C3アルキルであり;
Aは、CHまたはNである。]
で示されるアミノピラゾール化合物または医薬上許容されるその塩が投与される、実施形態10に記載の方法。
【0082】
実施形態12:式1:
【0083】
【化13】
[式中、
R1は、-CO2R3、-CH2OR3、-CONR3R4または
【0084】
【化14】
(式中、R3およびR4は、互いに独立して、H、または、直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C6アルキルである。)であり;
R2は-(CH2)2-フェニルであり;
Bは、H、フェニルまたはC1-C3アルキルもしくはハロゲン置換フェニルであり;
nは、0から2の整数であり;
Yは、S、O、CH2、SO、SO2またはNR3R4(式中、R3およびR4は、互いに独立して、H、または直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C6アルキルである。)であり;
Zは、H、ハロゲン、OCH3、NO2、NH2、または、直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C3アルキルであり;
Aは、CHまたはNである。]
で示されるアミノピラゾール化合物または医薬上許容されるその塩と、医薬上許容される担体とを混合することを含む、医薬の調剤方法。
【0085】
実施形態13:前記医薬が、対象においてシヌクレイノパシーから生じる疾患または症状を治療するためである、実施形態12に記載の方法。
【0086】
実施形態14:対象においてシヌクレイノパシーから生じる疾患または症状を治療するための、式1:
【0087】
【化15】
[式中、
R1は、-CO2R3、-CH2OR3、-CONR3R4または
【0088】
【化16】
(式中、R3およびR4は、互いに独立して、H、または、直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C6アルキルである。)であり;
R2は-(CH2)2-フェニルであり;
Bは、H、フェニルまたはC1-C3アルキルもしくはハロゲン置換フェニルであり;
nは、0から2の整数であり;
Yは、S、O、CH2、SO、SO2またはNR3R4(式中、R3およびR4は、互いに独立して、H、または直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C6アルキルである。)であり;
Zは、H、ハロゲン、OCH3、NO2、NH2、または、直鎖状、分枝状もしくは環状のC1-C3アルキルである。]
で示されるアミノピラゾール化合物または医薬上許容されるその塩の使用。
【0089】
実施形態15:前記アミノピラゾール化合物が、FAF1活性を阻害して、対象の細胞においてもしくは対象由来の試料中の細胞において、アルファ-シヌクレインの量を上昇させるのに有効であるか、または、対象の細胞においてもしくは対象由来の試料の細胞において、LC-3およびp62タンパク質によって媒介されるオートファジーを増加させるのに有効であるか、または、対象の細胞においてもしくは対象由来の試料の細胞において、アミノ酸S129にてリン酸化されたα-シヌクレインの量を減少させるのに有効である、実施形態14の使用。