(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023118968
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】がん治療で使用するためのチェックポイント阻害剤及び全細胞マイコバクテリウム
(51)【国際特許分類】
A61K 35/74 20150101AFI20230818BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230818BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230818BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230818BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230818BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230818BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
A61K35/74 A
A61P35/00
A61P35/02
A61P35/04
A61P37/02
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61K39/395 U
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023112304
(22)【出願日】2023-07-07
(62)【分割の表示】P 2021089422の分割
【原出願日】2016-06-24
(31)【優先権主張番号】1511120.6
(32)【優先日】2015-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1511121.4
(32)【優先日】2015-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】517451423
【氏名又は名称】イモデュロン セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】エークル、 チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】ブルネット、 ローラ ローザ
(57)【要約】
【課題】非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムと相乗的に働くチェックポイント阻害剤を投与することによってがん及び/又は転移の成立を処置及び/又は防止するための効果的方法を提供する。
【解決手段】チェックポイント阻害処置が計画される患者における新生物疾患を治療、減少、阻害、又は制御するのに使用するための免疫調節薬。チェックポイント阻害処置では免疫調節薬の投与と同時、別個、又は逐次に、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、又はIDOに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、若しくは抗体の抗原結合性断片、又はそれらの組合せが選択され投与される。免疫調節薬は全細胞マイコバクテリウム、例えばM.vaccae又はM.obuenseを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェックポイント阻害処置と組み合わせてがんを治療、減少、阻害、又は制御するのに使用するための免疫調節薬であって、
前記チェックポイント阻害処置は、BMS-986016、MGA-271、及びそれらの組合せから選択される遮断薬を投与することを含み、
前記免疫調節薬は、非病原性加熱殺菌全細胞Mycobacterium obuenseを含み、
前記免疫調節薬はチェックポイント阻害処置における投薬と同時、別個、又は逐次に投与される、
前記免疫調節薬。
【請求項2】
前記がんが、前立腺癌、肝臓癌、腎癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、膵臓癌、脳癌、肝細胞癌、リンパ腫、白血病、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、甲状腺癌、黒色腫、頭頸部癌、皮膚癌、及び軟組織肉腫から選択される、請求項1に記載の免疫調節薬。
【請求項3】
前記がんが、黒色腫、膵臓癌、結腸直腸癌、前立腺癌、及び卵巣癌から選択される、請求項1又は請求項2に記載の免疫調節薬。
【請求項4】
前記がんが転移性である、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の免疫調節薬。
【請求項5】
前記非病原性加熱殺菌全細胞Mycobacterium obuense及び/又は前記遮断薬が、非経口経路、経口経路、舌下経路、経鼻経路、又は肺経路を介して投与されるものである、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の免疫調節薬。
【請求項6】
前記非経口経路が、皮下(subcutaneous)、皮内、皮下(subdermal)、腹腔内、又は静脈内から選択される、請求項5に記載の免疫調節薬。
【請求項7】
前記非経口経路が腫瘍内注射、又は腫瘍の近傍若しくはリンパ節の近傍への投与を含む、請求項5又は請求項6に記載の免疫調節薬。
【請求項8】
前記免疫調節薬の投与が、前記チェックポイント阻害処置の前及び/又は後である、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の免疫調節薬。
【請求項9】
前記免疫調節薬の投与が、2以上の反復投与で投与される、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の免疫調節薬。
【請求項10】
1回当たりに投与される前記非病原性加熱殺菌全細胞Mycobacterium obuenseの量が107細胞~109細胞である、請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の免疫調節薬。
【請求項11】
1回当たりに投与される前記非病原性加熱殺菌全細胞Mycobacterium obuenseの量が0.1mg~1mgである、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の免疫調節薬。
【請求項12】
前記使用により、前記遮断薬又は前記免疫調節薬の単独投与と比べて治療有効性が増大する、請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の免疫調節薬。
【請求項13】
治療有効性の増大が、全生存期間の延長;無増悪生存期間の延長;腫瘍サイズの減少又は安定化;又は全奏効率の改善及び/若しくは生活の質の向上により測定される、請求項12に記載の免疫調節薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はがん治療の分野に関する。特に、本発明は、対象における腫瘍の発達及び/又は転移を防止、処置、又は阻害する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
進行がんを有するヒトにおいて、抗腫瘍免疫は、炎症促進性及び抗炎症性シグナル、並びに免疫刺激性及び免疫抑制性シグナルの厳密に制御された相互作用のため、効果を奏しないことが多い。例えば、抗炎症シグナルの喪失によって慢性炎症や増殖性シグナル伝達の長期化がもたらされる。興味深いことに、腫瘍部位では、腫瘍細胞の増殖を促進するサイトカイン及び抑制するサイトカインの両方が産生される。これら種々のプロセスの影響間の不均衡によって腫瘍が促進される。
【0003】
今日まで、効果的ながん免疫療法を開発する試みの主な障壁は、がん部位における免疫抑制の解消及び正常な免疫反応性のネットワークの回復ができないことであった。免疫療法の生理学的アプローチは、例えば内在性腫瘍抗原が認識され、腫瘍細胞に対して効果的な細胞溶解反応が発生するように、免疫反応性を正常化することである。かつては腫瘍免疫監視が存在するかどうかは不明瞭であったが、現在では、免疫系は新たにトランスフォームした細胞を常に監視及び排除していると考えられている。したがって、がん細胞は、攻撃を逃避して(免疫編集)阻害シグナルの発現をアップレギュレートするために、免疫の圧力に応答してその表現型を変え得る。原発性腫瘍及び転移は免疫編集及びその他の破壊プロセスを介してその生存を維持する。
【0004】
抗腫瘍免疫破壊の主な機構の1つは、「T細胞疲弊(T cell exhaustion)」として知られる。これは、抗原への慢性的露出により生じ、抑制性受容体のアップレギュレーションを特徴とする。これらの抑制性受容体は、制御されない免疫反応を防止するための免疫チェックポイントとして機能する。
【0005】
PD-1及び共抑制性受容体、例えば細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、B及びTリンパ球アテニュエーター(B and T Lymphocyte Attenuator)(BTLA;CD272)、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン-3(T cell Immunoglobulin and Mucin domain-3)(Tim-3)、リンパ球活性化遺伝子-3(Lag-3;CD223)等がしばしばチェックポイント制御因子と呼ばれる。これらは分子的「料金所(tollbooth)」として働き、これらにより、細胞外情報が、細胞周期の進行及びその他の細胞内シグナル伝達プロセスが進行すべきかどうかを指示することができる。
【0006】
TCRを介した特異的抗原認識に加え、共刺激受容体により与えられるポジティブ及びネガティブシグナルのバランスによってT細胞活性化が制御される。これらの表面タンパク質は通常、TNF受容体又はB7スーパーファミリーのいずれかのメンバーである。活性化共刺激分子に対するアゴニスト抗体及びネガティブ共刺激分子に対する遮断抗体はT細胞刺激を増強して腫瘍の破壊を促進し得る。
【0007】
55kDの1型膜貫通タンパク質であるプログラム細胞死タンパク質1(Programmed Cell Death Protein 1)(PD-1又はCD279)は、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであるCD28、CTLA-4、誘導性共刺激物質(ICOS)、及びBTLAを含むT細胞共刺激受容体のCD28ファミリーのメンバーである。PD-1は、活性化されたT細胞及びB細胞上で高度に発現される。PD-1発現はメモリーT細胞サブセット上でも種々の発現レベルで検出することができる。PD-1に特異的な2つのリガンドが同定されている:プログラム死リガンド1(programmed death-ligand 1)(PD-L1、B7-H1又はCD274としても知られる)及びPD-L2(B7-DC又はCD273としても知られる)。PD-L1及びPD-L2は、マウス及びヒトの両方の系においてPD-1に結合した後にT細胞活性化をダウンレギュレートすることが示されている(Okazaki et al., Int Immunol., 2007; 19: 813-824)。PD-1と、抗原提示細胞(APC)上及び樹状細胞(DC)上で発現される、PD-1のリガンドであるPD-L1及びPD-L2との相互作用は、活性化T細胞免疫応答を下方制御するネガティブ制御刺激を伝達する。PD-1を遮断すると、このネガティブシグナルが抑制され、T細胞応答が増幅される。
【0008】
多くの研究により、がん微小環境がPD-L1-/PD-1シグナル伝達経路を操作すること、及びPD-L1発現の誘導ががんに対する免疫応答の阻害に関連しており、これによりがんの進行及び転移が可能になることが示されている。PD-L1/PD-1シグナル伝達経路は、複数の理由から、がん免疫回避の主要機構である。第1に、且つ最も重要なことに、この経路は、末梢に見られる活性化エフェクターT細胞の免疫応答のネガティブ制御に関与する。第2に、PD-L1はがん微小環境においてアップレギュレートされ、一方、PD-1も活性化腫瘍浸潤T細胞上でアップレギュレートされるため、阻害の悪循環が強化されている可能性がある。第3に、この経路は、双方向的シグナル伝達により自然免疫制御及び適応免疫制御の両方に複雑に関わる。これらの要因により、PD-1/PD-L1複合体は、がんによる免疫応答の操作及びがん自体の進行の促進を可能にする中心点となる。
【0009】
臨床試験で試験された最初の免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4 mAbであるイピリムマブ(Yervoy、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社)であった。CTLA-4は受容体の免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、これには更にPD-1、BTLA、TIM-3、及びVISTA(T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリン抑制因子(V-domain immunoglobulin suppressor of T cell activation))が含まれる。
【0010】
抗CTLA-4 mAbはナイーブ細胞及び抗原を経験した細胞のいずれからも「ブレーキ」を除去する強力なチェックポイント阻害剤である。治療は、CD8+ T細胞の抗腫瘍機能を増大させ、Foxp3+ 制御性T細胞に対するCD8+ T細胞の比率を上げ、制御性T細胞の抑制的機能を阻害する。抗CTLA-4 mAb療法の主な欠点は、自身を減少させる能力を失った過剰増殖性免疫系のオンターゲット作用により自己免疫毒性が生じることである。イピリムマブで処置された患者の25%までで、皮膚炎、腸炎、肝炎、内分泌疾患(下垂体炎、甲状腺炎、及び副腎炎を含む)、関節炎、ぶどう膜炎、腎炎、及び無菌性髄膜炎を含む重篤なグレード3~4の有害事象/自己免疫型副作用が生じたことが報告されている。抗CTLA-4経験とは対照的に、抗PD-1療法は、より許容され、自己免疫型副作用の誘導率も比較的低いようである。
【0011】
疲弊したCD8+ T細胞によって発現されるもう1つの重要な抑制性受容体としてTIM-3が同定されている。がんのモデルマウスでは、大部分の機能障害性の腫瘍浸潤性CD8+ T細胞が実際にPD-1及びTIM-3を共発現することが示されている。
【0012】
LAG-3は、エフェクターT細胞機能を制限するように、及び制御性T細胞の抑制活性を増強するように働くもう1つの近年同定された抑制性受容体である。近年、マウスにおいて腫瘍浸潤性T細胞によりPD-1及びLAG-3が広く共発現されること、及びがんのマウスモデルにおいてPD-1及びLAG-3を合わせて遮断すると強力な相乗的抗腫瘍免疫応答が誘発されることが明らかにされた。
【0013】
PD-1経路遮断は、治療有効性を向上させるためにワクチン又はその他の免疫調節抗体と組み合わせることができる(Hirano, F. et al, Cancer Res., 65(3): 1089-1096 (2005); Li, B. et al, Clin. Cancer Res., 15: 1507-1509 (2009); 及び Curran, M.A. et al, Proc. Natl. Acad. Set, 107(9):4275-4280 (2010))。
【0014】
現在、PD-1及びそのリガンドPD-L1の両方に対するアンタゴニストmAbががんの治療のための開発の様々な段階にある。最近のヒト臨床試験により、進行した治療抵抗性疾患のがん患者における有望な結果が示されている。
【0015】
第I相臨床試験に入ったB7-H1/PD-1経路を遮断する最初の薬剤は、ブリストル・マイヤーズ スクイブ社によって開発された完全ヒトIgG4抗PD-1 mAbであるニボルマブ(MDX-1106/BMS-936558/ONO-4538)であった。臨床評価中のもう1つのPD-1 mAbが、キュアテック社(CureTech Ltd)によって開発されたPD-1に特異的なヒト化IgG1 mAbであるCT-011である。その他の薬剤としては、ヒト化モノクローナルIgG4 PD-1抗体であるラムブロリズマブ(MK-3475-メルク社);完全ヒトIgG4 PD-L1抗体であるBMS-936559;及びPD-L1経路を標的とするヒトモノクローナル抗体であるロシュ社のMPDL3280Aが含まれる。
【0016】
BRAF野生型メラノーマ患者においてニボルマブ及びイピリムマブの併用と、イピリムマブ単独とを比較した第II相試験の結果、併用療法では61%の奏効率、単独療法では11%の奏効率が示され、完全寛解はそれぞれ患者の22%及び0%であった。併用群患者の54%、イピリムマブ群患者の24%において、グレード3又は4の有害事象が治療下で発現したことが報告された。治療下で、ニボルマブ群患者の7.7%、ニボルマブ+イピリムマブ群患者の36.4%、及びイピリムマブ群患者の14.8%において治験薬の中止に繋がったいずれかのグレードの有害事象が生じた。
【0017】
したがって、本発明の目的は、強力で持続性のある免疫応答を誘発する可能性を有する、免疫調節薬とチェックポイント阻害剤による遮断とを含む、がんを治療するための併用療法である。
【0018】
本発明のもう1つの目的は、治療下で発現する有害事象を低減する可能性を有する、免疫調節薬とチェックポイント阻害剤の遮断とを含む、がんを治療するための併用療法である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムと相乗的に働くチェックポイント阻害剤を投与することによってがん及び/又は転移の成立を処置及び/又は防止するための効果的方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の態様は、チェックポイント阻害処置が計画される患者におけるがんを治療、減少、阻害、又は制御するのに使用するための免疫調節薬に関する。ここで前記チェックポイント阻害処置は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、又はIDOに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、又は抗体の抗原結合性断片、及びそれらの組合せから選択される遮断薬を投与することを含み、前記免疫調節薬は、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムを含み、前記免疫調節薬はチェックポイント阻害処置における投薬と同時、別個、又は逐次に投与され、前記チェックポイント阻害処置は治療量より少ない量及び/又は期間で前記遮断薬を投与することを含むか又は含まない。
【0021】
本発明の第2の態様は、対象における新生物、腫瘍、又はがんを治療する、減少させる、阻害する、又は制御する方法に関する。ここで前記方法は、(i)CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、又はIDOに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、又は抗体の抗原結合性断片、及びそれらの組合せから選択されるチェックポイント阻害剤と(ii)免疫調節薬とを同時、別個、又は逐次に対象に投与することを含み、前記方法により、チェックポイント阻害剤又は免疫調節薬の単独投与と比べて治療有効性が増大し、前記免疫調節薬は、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムを含み、前記方法は治療量より少ない量及び/又は期間で前記チェックポイント阻害剤を投与することを含むか又は含まない。
【0022】
したがって、本発明は、免疫調節薬の投与を含む特定の種類の免疫療法とのチェックポイント阻害剤療法の併用療法を提供する。本発明者らは、両方の療法の組合せが、個々に用いられる各療法の単純な相加的効果を超えて相乗的であることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0023】
添付の図面を参照して本発明を説明する。
【
図1】膵臓癌の異種移植モデル(KPC細胞を皮下注射)における、チェックポイント阻害剤(抗PD-L1 mAb)を併用投与した場合、又は併用投与しない場合での、加熱殺菌したMycobacterium obuense(NCTC 13365)の製剤の効果を示す図である。
【
図2】併用投与したチェックポイント阻害剤が抗PD-1 mAbであることを除き
図1と同様である。
【
図3】対照マウス(赤)、抗CTLA-4処置のみを受けたマウス(青)、又はIMM-101及び抗CTLA-4からなる併用療法を受けたマウス(緑)における、腫瘍に浸潤しているCD3+CD8+細胞及びFoxP3制御性T細胞の比率を示している。この群において有意な増加が認められた(分散分析、p<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、免疫調節薬及びチェックポイント阻害剤の投与を含む、対象において新生物、腫瘍、又はがんを治療する、減少させる、阻害する、又は制御する方法を提供する。これは、PD-L1、PD-1、CTLA-4、PD-L2、CAG-3、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、又はIDOに対するチェックポイント阻害剤と組み合わせて免疫調節薬(全細胞加熱殺菌マイコバクテリウム)を投与することにより、相乗的な抗腫瘍活性、及び/又は、免疫調節薬若しくはチェックポイント阻害剤の単独投与よりも強力な抗腫瘍活性が得られるということを見出したことに基づく。
【0025】
本発明で使用するためのチェックポイント阻害剤は、PD-L1、PD-1、又はCTLA-4のうち一つに対するものであることが好ましい。たとえば、阻害剤は抗PD-L1であってよい。
【0026】
本発明がより容易に理解できるように、最初に特定の用語を定義する。詳細な説明全体を通して追加的な定義が記載される。
【0027】
「チェックポイント阻害剤」とは、TNF受容体又はB7スーパーファミリーのいずれかのメンバーである表面タンパク質上で作用する薬剤であり、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、及び/又はそれらのそれぞれのリガンド、例えばPD-L1、から選択されるネガティブ共刺激分子に結合する薬剤を含む。(Mellman et al.、上記)。「遮断薬」は、上記の共起刺激分子及び/又はそれらの各リガンドに結合する剤である。「チェックポイント阻害剤」及び「遮断薬」は、全体を通して同義的に(interchangeably)使用される。阻害剤は、表面タンパク質上の抗原性部位を標的とする抗体又は抗原結合性分子であることが好ましい。例えば、チェックポイント阻害剤は、PD-L1、又はPD-1若しくはCTLA-4上の抗原性部位を標的とする抗体である。
【0028】
本発明において、免疫調節薬とは、Th1及びマクロファージの活性化、並びに細胞傷害性細胞活性を含む自然免疫及び1型免疫を刺激し、免疫調節機構を介して不適切な抗Th2応答を独立してダウンレギュレートする構成要素である。
【0029】
「腫瘍」、「がん」、及び「新生物」という用語は同義的に使用され、対応する正常な細胞が成長、増殖、又は生存するよりも旺盛に成長、増殖、又は生存している細胞又は細胞集団、例えば細胞の増殖障害又は分化障害を指す。典型的には、成長は制御されない。「悪性腫瘍(malignancy)」という用語は、近くの組織の浸潤を指す。「転移」という用語は、対象内における、原発性腫瘍又は原発性がんとは異なるその他の部位、位置、又は領域への腫瘍、がん、又は新生物の拡散又は播種を指す。
【0030】
「プログラム死1(Programmed Death 1)」、「プログラム細胞死1(Programmed Cell Death 1)」、「タンパク質PD-1(Protein PD-1)」、「PD-1」、及び「PD1」という用語は同義的に使用され、ヒトPD-1のバリアント、アイソフォーム、種ホモログ、及びPD-1と共通する少なくとも1つのエピトープを有するアナログを包含する。完全なPD-1配列はGenBankアクセッション番号U64863に見出すことができる。
【0031】
用語「CD27」及び「CD27抗原」は、同義的に使用され、ヒトCD27のバリアント、アイソフォーム、種ホモログ、及びCD27と共通する少なくとも1つのエピトープを有するアナログを包含する(例えば、Hendriks(2000)Nat Immunol.171(5):433-40参照)。
【0032】
用語「B7-H3」及び「CD276」は、同義的に使用され、ヒトB7-H3のバリアント、アイソフォーム、種ホモログ、及びB7-H3と共通する少なくとも1つのエピトープを有するアナログを包含する(例えば、Wilcox et al.,(2012)Eur.J.Haematology;88:465-475参照)。
【0033】
用語「B7-H4」及び「VTCN1」は、同義的に使用され、ヒトB7-H4のバリアント、アイソフォーム、種ホモログ、及びB7-H4と共通する少なくとも1つのエピトープを有するアナログを包含する(例えば、Wilcox、上記)。
【0034】
用語「A2AR」及び「アデノシンA2A受容体」は、同義的に使用され、ヒトA2ARのバリアント、アイソフォーム、種ホモログ、及びA2ARと共通する少なくとも1つのエピトープを有するアナログを包含する。
【0035】
用語「IDO」及び「インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ」は、同義的に使用され、ヒトIDOのバリアント、アイソフォーム、種ホモログ、及びIDOと共通する少なくとも1つのエピトープを有するアナログを包含する。
【0036】
「細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4」、「CTLA-4」、「CTLA4」、及び「CTLA-4抗原」という用語(例えば、Murata, Am. J. Pathol. (1999) 155:453-460参照)は同義的に使用され、ヒトCTLA-4のバリアント、アイソフォーム、種ホモログ、及びCTLA-4と共通する少なくとも1つのエピトープを有するアナログを包含する(例えば、Balzano (1992) Int. J. Cancer Suppl. 7:28-32参照)。完全なCTLA-4の核酸配列はGenBankアクセッション番号L15006に見出すことができる。
【0037】
本明細書において、「治療量より少ない用量(sub-therapeutic dose)」とは、がんの治療に単独で投与される時、通常の若しくは典型的な治療化合物の用量より少ない治療化合物(例えば抗体)の用量若しくは治療期間、又はより短い期間の治療を意味する。
【0038】
「治療有効量」という用語は、好ましくは疾患症状の重篤度の低下、疾患症状のない期間の頻度及び期間の増加、又は疾患の苦痛による機能障害(impairment)若しくは身体障害(disability)の防止をもたらす、免疫調節薬と組み合わされた、チェックポイント阻害剤の量として定義される。「有効量」又は「薬剤的有効量」という用語は、所望の生物学的又は治療的結果をもたらすのに充分な薬剤の量を指す。その結果は、疾患の徴候、症状、若しくは原因のうち1若しくは複数の、減少、改善、緩和(palliation)、軽減、遅延、及び/若しくは緩和(alleviation)、又は生物学的システムの任意のその他の所望される変化であり得る。がんに関して、有効量は、腫瘍を縮小するのに充分な量、及び/又は腫瘍の成長速度を低下させる(例えば腫瘍成長を抑制する)のに充分な量、又はその他の望ましくない細胞増殖を防止する若しくは遅延させるのに充分な量を含み得る。いくつかの実施形態では、有効量は、発達を遅延させるのに充分な量、生存期間を延長するのに充分な量、又はがん若しくは腫瘍の安定化を誘導するのに充分な量である。
【0039】
いくつかの実施形態では、治療有効量は、再発を防止する又は遅延させるのに充分な量である。治療有効量は、1又は複数の投与で投与され得る。薬物又は組合せの治療有効量は以下の1又は複数の結果をもたらし得る:(i)がん細胞数を減少させる;(ii)腫瘍サイズを減少させる;(iii)末梢器官へのがん細胞浸潤をある程度阻害する、遅らせる、速度を低下させる、及び好ましくは停止する;(iv)腫瘍転移を阻害する(すなわち、ある程度速度を低下させ、好ましくは停止する);(v)腫瘍成長を阻害する;(vi)腫瘍の発生及び/又は再発を防止する又は遅延させる;及び/又は(vii)がんに関連する症状の1又は複数をある程度軽減する。
【0040】
例えば、腫瘍の処置では、「治療有効投与量」は、ベースライン測定値に対して少なくとも約5%、例えば少なくとも約10%、約20%、又は約60%以上の腫瘍縮小を誘導し得る。ベースライン測定値は処置されていない対象から得られ得る。
【0041】
治療化合物の治療有効量は、対象において腫瘍サイズを縮小し得る、又は別の方法で症状を改善させ得る。当業者であれば、対象の大きさ、対象の症状の重篤度、及び選択される具体的な組成物又は投与経路等の要因に基づいてそのような量を決定することができる。
【0042】
「免疫応答」という用語は、がん細胞への選択的ダメージ、がん細胞の破壊、又はヒトの体からのがん細胞の排除をもたらす、例えばリンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及び上記細胞又は肝臓によって産生される可溶性巨大分子(抗体、サイトカイン、及び補体を含む)の作用を指す。
【0043】
本明細書において「抗体」という用語は、全抗体及び任意の抗原結合性断片(すなわち、「抗原結合部分」)又はそれらの単鎖を含む。
【0044】
本明細書において、抗体の「抗原結合部分」という用語(又は単に「抗体部分」)は、受容体及びそのリガンド(例えば、PD-1)に特異的に結合する能力を保持している抗体の1又は複数の断片を指し、以下を含む:(i)Fab断片、(ii)F(ab’)2断片;(iii)VH及びCHIドメインからなるFd断片;(iv)Fv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al, Nature, 341 :544-546 (1989));及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)。単鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることが意図される。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来技術を用いて得ることができ、断片は、インタクトな抗体と同じように有用性についてスクリーニングされる。
【0045】
本明細書において、「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成物の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示す。
【0046】
本明細書において、「ヒト抗体」という用語は、フレームワーク領域及びCDR領域の両方がヒト生殖系免疫グロブリン配列に由来する、可変領域を有する抗体を含むことが意図される。
【0047】
「ヒト化抗体」という用語は、マウス等の別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトのフレームワーク配列上にグラフトされた抗体を指すことが意図される。ヒトフレームワーク配列内で更なるフレームワーク領域修飾がなされてもよい。
【0048】
抗体に加え、適切な標的に対する結合親和性を有するペプチド等のその他の生物学的分子もチェックポイント阻害剤として作用し得る。
【0049】
「処置」、「治療(療法)」という用語は、統計的に有意な様式で、状態(例えば、疾患)、状態の症状を治す、治癒する、緩和する(alleviate)、軽減する(relieve)、変化させる、治療する、改善する(ameliorate)、改善する(improve)、若しくは影響を与える目的で、又は疾患の症状、合併症、生化学的徴候の発生を防止若しくは遅延させる目的で、又は疾患、状態、若しくは障害の更なる発達を停止若しくは阻害する目的で活性薬剤を投与することを指す。
【0050】
本明細書において、「対象」という用語は、ヒト及びヒトではない動物を含むことが意図される。好ましい対象には、免疫応答の強化を必要とするヒト患者が含まれる。方法は、T細胞媒介性免疫応答を増強することにより処置され得る障害を有するヒト患者の処置に特に適している。具体的な実施形態では、方法はインビボでのがん細胞の処置に特に適している。
【0051】
本明細書において、「同時投与(concurrent administration)」又は「同時(concurrently)」若しくは「同時(simultaneous)」という用語は、投与が同じ日に行われることを意味する。「逐次投与(sequential administration)」又は「逐次(sequentially)」若しくは「別個(separate)」という用語は、投与が異なる日に行われることを意味する。
【0052】
本明細書において、「同時」投与は、免疫調節薬と、チェックポイント阻害剤療法を含む薬剤又は方法とを、互いに約2時間以内、約1時間以内、又はそれ以下、更により好ましくは同じ時間に施すことを含む。
【0053】
本明細書において、「別個」投与は、免疫調節薬と、チェックポイント阻害剤療法を含む薬剤又は方法とを、約12時間超、約8時間超、約6時間超、約4時間超、又は約2時間超の間隔をおいて施すことを含む。
【0054】
本明細書において、「逐次」投与は、免疫調節薬及び化学療法剤を、それぞれ複数のアリコート及び/又は複数回投与として、及び/又は、別個の機会に行う投与を含む。免疫調節薬は、チェックポイント阻害剤の投与の後前及び/又は後に患者に投与され得る。あるいは、免疫調節薬は、チェックポイント阻害剤での処置後に患者に適用され続ける。
【0055】
選択肢の使用(例えば、「又は」)は、選択肢のうちいずれか一方、両方、又はその任意の組合せを意味すると理解されるべきである。本明細書において、不定冠詞(“a”又は“an”)は、記載又は列挙されている構成要素の「1又は複数」を指すと理解されるべきである。
【0056】
本明細書において、「約」とは、当業者に決定される具体的値の許容可能な誤差範囲内であることを意味し、これは、その値がどのように測定又は決定されたか、すなわち測定系の限界に一部依存する。例えば、「約」は、当該技術分野の慣習に従って、1以内の、又は1を超える標準偏差内であることを意味し得る。あるいは、「約」は、20%までの範囲を意味し得る。特に断りのない限り、本願及び請求項中で具体的な値が記載される場合、「約」の意味は、その具体的値の許容可能な誤差範囲内であると想定されるべきである。
【0057】
本発明の一態様では、免疫調節薬は、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムを含む。本発明で使用するためのマイコバクテリウム種の例としては、M. vaccae、M. thermoresistibile、M. flavescens、M. duvalii、M. phlei、M. obuense、M. parafortuitum、M. sphagni、M. aichiense、M. rhodesiae、M. neoaurum、M. chubuense、M. tokaiense、M. komossense、M. aurum、M.w、M. tuberculosis、M. microti;M. africanum;M. kansasii、M. marinum;M. simiae;M. gastri;M. nonchromogenicum;M. terrae;M. triviale;M. gordonae;M. scrofulaceum;M. paraffinicum;M. intracellulare;M. avium;M. xenopi;M. ulcerans;M. diernhoferi、M. smegmatis;M. thamnopheos;M. flavescens;M. fortuitum;M. peregrinum;M. chelonei;M. paratuberculosis;M. leprae;M. lepraemurium、及びその組合せが含まれる。
【0058】
非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムは、好ましくは、M. vaccae、M. obuense、M. parafortuitum、M. aurum、M. indicus pranii、M. phlei、及びそれらの組合せから選択される。より好ましくは、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムはR型(rough variant)である。患者に投与されるマイコバクテリウムの量は、患者の免疫系ががん又は腫瘍に対して効果的な免疫応答を開始できるような、患者の防御免疫応答を誘発するのに充分な量である。本発明の特定の実施形態では、典型的には103~1011生物体、好ましくは104~1010生物体、より好ましくは106~1010生物体、更により好ましくは106~109生物体であり得る、本発明における使用のための有効量の加熱殺菌マイコバクテリウムを含む格納手段(containment means)が提供される。本発明における使用のための加熱殺菌マイコバクテリウムの有効量は103~1011生物体、好ましくは104~1010生物体、より好ましくは106~1010生物体、更により好ましくは106~109生物体であり得る。最も好ましくは、本発明における使用のための加熱殺菌マイコバクテリウムの量は107~109個の細胞又は生物体である。典型的には、本発明に係る組成物は、ヒト及び動物に対する使用のため108~109細胞の用量で投与され得る。あるいは、用量は、懸濁剤又は乾燥製剤のいずれかとして与えられる0.01mg~1mg又は0.1mg~1mgの生物体である。
【0059】
M. vaccae及びM. obuenseが特に好ましい。
【0060】
M. vaccae及びM. obuenseは宿主中で複雑な免疫応答を誘導する。これらの製剤を用いた処置は、Th1及びマクロファージの活性化並びに細胞傷害性細胞活性を含む、自然免疫及び1型免疫を刺激する。これらは更に、免疫調節機構を介して不適切なTh2応答を独立してダウンレギュレートする。これにより、免疫系の健康なバランスが回復する。
【0061】
本発明は、固形又は非固形がん等の新生物疾患を処置するために用いられ得る。本明細書において、「処置」は、新生物疾患の防止、減少、制御、及び/又は阻害を包含する。そのような疾患には、肉腫、癌腫(carcinoma)、腺癌、黒色腫、骨髄腫、芽細胞腫、神経膠腫、リンパ腫、又は白血病が含まれる。典型的ながんとしては、例えば、癌腫、肉腫、腺癌、黒色腫、神経(芽細胞腫、神経膠腫)、中皮腫、及び細網内皮系、リンパ性、又は造血性の新生物障害(例えば、骨髄腫、リンパ腫、又は白血病)が含まれる。具体的な態様では、新生物、腫瘍、又はがんは、肺腺癌、肺癌、びまん性又は間質性胃癌、結腸腺癌、前立腺癌、食道癌、乳癌、膵臓腺癌、卵巣腺癌、副腎腺癌、子宮内膜腺癌、又は子宮腺癌を含む。
【0062】
新生物、腫瘍、及びがんには、良性、悪性、転移性、及び非転移性のものが含まれ、新生物、腫瘍、若しくはがんの全てのステージ(I、II、III、IV、又はV)若しくはグレード(G1、G2、G3等)、又は進行中、悪化中、安定化された、若しくは寛解中の新生物、腫瘍、がん、若しくは転移が含まれる。本発明に従って処置され得るがんとしては、限定されるものではないが、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸、歯肉、頭、腎臓、肝臓、肺、咽頭鼻部、首、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、又は子宮が含まれる。好ましくは、がんは、前立腺癌、肝臓癌、腎癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、膵臓癌、脳癌、肝細胞癌、リンパ腫、白血病、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、甲状腺癌、黒色腫、頭頸部癌、皮膚癌、及び軟組織肉腫、及び/又はその他の形態の癌腫から選択され得る。腫瘍は転移性又は悪性腫瘍であり得る。
【0063】
より好ましくは、がんは膵臓癌、結腸直腸癌、前立腺癌、卵巣癌、又は前立腺癌である。
【0064】
本発明の一実施形態では、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、又はIDOに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、及び抗体の抗原結合性断片から選択される遮断薬を投与することを含むチェックポイント阻害剤療法を、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムと併せて用いて、原発性の腫瘍若しくはがんの他の部位への転移、又は原発性の腫瘍若しくはがんから遠位にある別の部位での転移性の腫瘍若しくはがんの形成若しくは成立を減少させる又は阻害することにより、腫瘍若しくはがんの再発、又は腫瘍若しくはがんの進行を阻害する又は減少させる。遮断薬は、CTLA-4、PD-1、もしくはPD-L1に対するものであるか又はその組合せであることが好ましい。最も好ましくは、遮断薬は抗PD-L1である。
【0065】
本発明の更なる実施形態では、治療による利益が増大し、毒性がより管理し易い、強力で長続きする免疫応答を誘発する可能性を有する、免疫調節薬とチェックポイント阻害剤とを含む、がんを治療するための併用療法が提供される。ここで、チェックポイント阻害処置は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、又はIDOに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、又は抗体の抗原結合性断片、及びそれらの組合せから選択される遮断薬を投与することを含み、免疫調節薬は、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムを含む。遮断薬は、CTLA-4、PD-1、もしくはPD-L1に対するものであるか又はその組合せであることが好ましい。最も好ましくは、遮断薬は抗PD-L1である。
【0066】
本発明の更なる実施形態では、(i)Th1及びマクロファージの活性化並びに細胞傷害性細胞活性を含む自然免疫及び1型免疫を刺激し、(ii)免疫調節機構を介して不適切なTh2応答を独立してダウンレギュレートする、免疫調節薬;及びチェックポイント阻害剤を含み、ここで免疫調節薬はM.vaccaeもしくはM.obuenseから選択される非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムであるか又はこれらのいずれでもない、がんを治療するための併用療法が提供される。
【0067】
本発明の一実施形態では、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムと相乗的に作用する、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、又はIDOに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合性断片、及びその組合せから選択されるチェックポイント阻害剤を用いることによりがんを治療する及び/又は転移の成立を防止するための方法が提供される。使用されるチェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、もしくはPD-L1に対するものであるか又はその組合せであることが好ましい。最も好ましくは、遮断薬は抗PD-L1である。
【0068】
更なる実施形態では、本発明の方法は以下の1又は複数を含む:(1)転移し得る又は転移する腫瘍又はがん細胞の成長、増殖、移動、又は浸潤性を減少させる又は阻害すること、(2)原発性腫瘍又はがんから生じる、原発性腫瘍又はがんとは異なる1又は複数の他の部位、位置、又は領域への転移の形成又は成立を減少させる又は阻害すること、(3)転移が形成された又は成立した後の、原発性の腫瘍又はがんとは異なる1又は複数の他の部位、位置、又は領域での転移の成長又は増殖を減少させる又は阻害すること、(4)転移が形成された又は成立した後の、更なる転移の形成又は成立を減少させる又は阻害すること、(5)全生存期間の長期化、(6)無増悪生存期間の長期化、又は(7)疾患の安定化。
【0069】
本発明の一実施形態では、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムとの併用療法における、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、又はIDOに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、又は抗体の抗原結合性断片、及びそれらの組合せから選択されるチェックポイント阻害剤療法の投与は、所与の対象の状態の検出可能又は測定可能な改善、例えば細胞増殖又は細胞過剰増殖障害、新生物、腫瘍、若しくはがん、又は転移の存在に関連する1又は複数の有害な(身体的)症状又は結果の緩和又は改善、すなわち治療的利益又は有益な効果を提供する。
【0070】
遮断薬は、CTLA-4、PD-1、もしくはPD-L1に対するものであるか又はその組合せであることが好ましい。最も好ましくは、遮断薬は抗PD-L1である。
【0071】
治療的利益又は有益な効果は、状態若しくは病状の任意の客観的若しくは主観的な、一過的、一時的、若しくは長期的な改善、又は細胞増殖若しくは細胞過剰増殖障害、例えば新生物、腫瘍、若しくはがん、若しくは転移に関連する、又はこれらによって生じる有害症状の発生、重篤度、期間、若しくは頻度の減少である。これは生存期間を改善し得る。本発明に係る処置方法の満足な臨床エンドポイントは、例えば、1若しくは複数の関連する病状、有害症状、若しくは合併症の重篤度、期間、若しくは頻度の徐々な若しくは部分的な減少、又は細胞増殖若しくは細胞過剰増殖障害、例えば新生物、腫瘍、若しくはがん、若しくは転移の生理学的、生化学的、若しくは細胞的な所見若しくは特徴の1若しくは複数の阻害若しくは逆転がある時に達成される。したがって、治療的利益又は改善は、限定されるものではないが、標的増殖細胞(例えば、新生物、腫瘍、若しくはがん、又は転移)の破壊、又は細胞増殖若しくは細胞過剰増殖障害、例えば新生物、腫瘍、若しくはがん、若しくは転移に関連する若しくはこれらによって生じる1若しくは複数、大部分、若しくは全ての病状、有害症状、若しくは合併症の除去であり得る。しかし、治療的利益又は改善は、全ての標的増殖細胞(例えば、新生物、腫瘍、若しくはがん、又は転移)の完全な破壊若しくは治癒、又は細胞増殖若しくは細胞過剰増殖障害、例えば新生物、腫瘍、若しくはがん、若しくは転移に関連する、又はこれらによって生じる全ての病状、有害症状、若しくは合併症の除去である必要はない。例えば、腫瘍若しくはがん細胞の塊の部分的破壊、又は腫瘍若しくはがんの進行若しくは悪化を阻害することによる腫瘍若しくはがんの質量、サイズ、若しくは細胞数の安定化により、腫瘍又はがんの質量、サイズ、又は細胞の一部又は大部分が残っていても、数日、数週間、又は数ヶ月だけであったとしても、死亡率が低減し得、寿命が延長され得る。
【0072】
治療的利益の非限定的な具体例としては、新生物、腫瘍、若しくはがん、若しくは転移の量(サイズ又は細胞質量)若しくは細胞数の減少;新生物、腫瘍、若しくはがんの体積の増加の阻害若しくは防止(例えば、安定化);新生物、腫瘍、若しくはがんの進行、悪化、若しくは転移の速度低下若しくは阻害;又は新生物、腫瘍、若しくはがんの増殖、成長、若しくは転移の阻害が含まれる。
【0073】
本発明の一実施形態では、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、又はIDOに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、又は抗体の抗原結合性断片、及びそれらの組合せから選択されるチェックポイント阻害剤の、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムと併用療法における投与は、以下の1又は複数を含む、irRC(time-point response assessmentから得られ、腫瘍量に基づく)による検出可能又は測定可能な改善又は全体的反応を提供する:(i)irCR-測定可能かどうかに関わらず、全病変の完全消失、及び新たな病変なし(最初に記録された日から4週間以上の反復的な連続した評価により確認)、(ii)irPR-ベースラインに対して50%以上の腫瘍量の低減(最初の記録から少なくとも4週間後の連続した評価により確認される)。使用されるチェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、もしくはPD-L1に対するものであるか又はその組合せであることが好ましい。
【0074】
本発明の方法はすぐに効果が現れなくてもよい。例えば、処置の後に新生物、腫瘍、若しくはがん細胞の数又は質量が増大することがあり、しかし、その後、時間をかけて最終的に、所与の対象における腫瘍細胞の質量、サイズ、又は細胞数の安定化又は減少が起こり得る。
【0075】
阻害、減少、低減、遅延、又は防止され得る新生物、腫瘍、がん、及び転移に関連する更なる有害症状及び合併症としては、例えば嘔気、食欲不振、嗜眠、疼痛、及び不快感が含まれる。したがって、細胞過剰増殖障害に関連する又はそれによって生じる有害症状又は合併症の重篤度、期間、又は頻度の部分的又は完全な低減又は減少、対象の生活の質及び/又は福祉の改善、例えばエネルギー、食欲、心理学的福祉の向上は全て、治療効果の非限定的な具体例である。
【0076】
したがって、治療の効果又は改善は、処置された対象の生活の質の主観的改善も含み得る。更なる実施形態では、方法は、対象の寿命(生存期間)を延長する又は延ばす。更なる実施形態では、方法は対象の生活の質を改善する。
【0077】
最も好ましい実施形態では、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、又はIDOに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、又は抗体の抗原結合性断片、及びそれらの組合せから選択されるチェックポイント阻害剤の、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムとの併用療法における投与は、以下の1又は複数から選択される疾患の状態及び進行の1又は複数のマーカーの臨床的に有意義な改善をもたらす:(i):全生存期間、(ii):無増悪生存期間、(iii):全体的奏効率、(iv):転移性疾患の減少、(v):腫瘍抗原、例えば炭水化物抗原19.9(CA19.9)及び癌胎児性抗原(CEA)又は腫瘍に応じたその他のものの循環レベル、(vii)栄養状態(体重、食欲、血清アルブミン)、(viii):疼痛管理又は鎮痛薬の使用、(ix):CRP/アルブミン比。投与されるチェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、もしくはPD-L1に対するものであるか又はその組合せであることが好ましい。
【0078】
非病原性加熱殺菌全細胞M.vaccae及びM.obuenseを用いた処置はより複雑な免疫を生じさせ、これは自然免疫及び1型免疫の発達だけでなく、適切な免疫機能をより効率的に回復させる免疫調節も含む。
【0079】
好ましい実施形態では、チェックポイント阻害処置は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、又はIDOに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、又は抗体の抗原結合性断片、及びそれらの組合せから選択される遮断薬を治療量より少ない量及び/又は期間で投与することを含む。好ましくは、チェックポイント阻害処置は、CTLA-4、PD-1、もしくはPD-L1に対するものであるか又はその組合せである遮断薬を治療量より少ない量投与することを含む。
【0080】
更なる好ましい実施形態では、チェックポイント阻害処置は、PD-1及び/又はPD-L1に対する細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、及びその抗原結合性断片から選択される遮断薬の投与を含む。
【0081】
更なる好ましい実施形態では、チェックポイント阻害処置は、CTLA-4に対する遮断抗体又はその抗原結合性断片の投与と同時、別個、又は逐次の、PD-1及び/又はPD-L1に対する細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、及びその抗原結合性断片から選択される遮断薬の投与を含む。
【0082】
更なる好ましい実施形態では、チェックポイント阻害処置は遮断薬の投与を含み、ここで前記遮断薬は、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ(azetolizumab)、トレメリムマブ(WO2006/101692に記載)、MEDI-0680(アストラゼネカ社)、MDX-1105(メダレックス社)、MEDI-4736(メディミューン社(Medimmune, Inc.))又はMSB001078C(メルクKGaA社)、及びその組合せからなる群より選択される抗体である。
【0083】
更なる好ましい実施形態では、チェックポイント阻害処置は遮断薬の投与を含み、ここで前記遮断薬はイピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ(azetolizumab)、トレメリムマブ、及びその組合せから選択される抗体である。
【0084】
更なる好ましい実施形態では、チェックポイント阻害処置は遮断薬の投与を含み、ここで前記遮断薬はペンブロリズマブ(WO2012/135408に記載)であり、前記患者は、前記がんと関連するミスマッチ修復欠損腫瘍を有する、且つ/又は、SP142免疫組織化学抗体アッセイを用いて測定された場合に、腫瘍細胞の少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%若しくはそれ以上においてPD-L1発現を示す。
【0085】
更なる好ましい実施形態では、チェックポイント阻害処置は遮断薬の投与を含み、ここで前記遮断薬は、イピリムマブ(米国特許第9868388号、同第8962804号及び同第8809562号に記載)であり、3週間毎に2mg/mg以下の用量で、所望により最大4回の点滴において、静脈内投与される。
【0086】
更なる好ましい実施形態では、チェックポイント阻害処置は遮断薬の投与を含み、ここで前記遮断薬は、ニボルマブ(ヒトモノクローナル抗体、参照:米国特許第8,004,449号に記載の5C4)であり、少なくとも3mg/mg、又は少なくとも5mg/mg、又は少なくとも10mg/mg若しくはそれ以上の用量で、4週間毎に静脈内投与され、所望により、前記患者は、SP142免疫組織化学抗体アッセイを用いて測定された場合に、腫瘍細胞の少なくとも1%、少なくとも5%、又は少なくとも10%若しくはそれ以上においてPD-L1発現を示すものである。
【0087】
更なる好ましい実施形態では、チェックポイント阻害処置は遮断薬の投与を含み、ここで前記遮断薬は、アテゾリズマブ(azetolizumab)(米国特許第8217149号の配列21)であり、少なくとも10mg/kg又は少なくとも15mg/kg若しくはそれ以上の用量で三週間毎に静脈内投与され、所望により、前記患者は、SP142免疫組織化学抗体アッセイを用いて測定された場合に、少なくとも1%、少なくとも5%、又は少なくとも10%若しくはそれ以上の腫瘍細胞並びに/又はB細胞及びNK細胞から選択される腫瘍浸潤免疫細胞においてPD-L1発現を示すものである。
【0088】
別の好ましい実施形態では、チェックポイント阻害処置は、PD-L2に対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体及びその抗原結合性断片から選択される遮断薬の投与を含む。
【0089】
更なる好ましい実施形態では、チェックポイント阻害処置は、CTLA-4に対する遮断抗体又はその抗原結合性断片の投与と同時、別個又は逐次の、PD-L2に対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体及びその抗原結合性断片から選択される遮断薬の投与を含む。
【0090】
更なる好ましい実施形態では、チェックポイント阻害処置は遮断薬の投与を含み、ここで前記遮断薬は、AMP-224(アンプリミューン社(Amplimmune, Inc))、BMS-986016又はMGA-271、及びその組合せからなる群より選択される抗体である。
【0091】
AMP-224は、B7-DCIgとしても知られており、WO2010/027827及びWO2011/066342に記載がある、PD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
【0092】
BMS-986016は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する免疫化遺伝子導入マウスから単離された、ヒトLAG-3に特異的な完全ヒト抗体である。BMS-986016は、抗体介在性又は補体介在性の標的細胞死滅の可能性を減少又は排除するために、Fc受容体結合を減弱させるための安定化ヒンジ変異(S228P)を含む、IgG4アイソタイプ抗体として発現される。BMS-986016の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、WO2015/042246の配列番号17及び配列番号18に示される。
【0093】
別の実施形態では、チェックポイント阻害処置は、約20mg~約8000mgの用量で2週間毎に、所望により最大48回の点滴において行われる、BMS-986016の静脈内投与を含む。
【0094】
更なる実施形態では、チェックポイント阻害処置は遮断薬の投与を含み、ここで前記遮断薬は、MGA271(a-B7-H3ヒト型化モノクローナル抗体、マクロジェニクス社(Macrogenics, Inc.))若しくは、その内容が参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2012-0294796号に記載の他の抗体などの、B7-H3に特異的に結合する抗体;又は、D-l-メチル-トリプトファン(Lunate)及びその内容が参照により本明細書に援用される米国特許第7,799,776号に記載の他の化合物などの、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤である。
【0095】
本明細書において、「組合せ(併用)」という用語は、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムの投与と同時、別個、又は逐次のチェックポイント阻害剤の投与を包含することが意図される。したがって、チェックポイント阻害剤及び非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムは、同じ医薬製剤中に存在してもよく、別個の医薬製剤中に存在してもよく、同じ時点に投与されてもよく、異なる時点に投与されてもよい。
【0096】
したがって、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウム及びチェックポイント阻害剤は、同じ時点又は異なる時点での投与のための別個の医薬として提供され得る。
【0097】
好ましくは、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウム及びチェックポイント阻害剤は、異なる時点での投与のための別個の医薬として提供される。別個に且つ異なる時点で投与される場合、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウム又はチェックポイント阻害剤のいずれかが最初に投与され得るが、チェックポイント阻害剤の後に非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムを投与することが好ましい。更に、両方を同じ日に投与しても異なる日に投与してもよく、これらは処置サイクル中、同じスケジュールで投与されてもよく、異なるスケジュールで投与されてもよい。
【0098】
本発明の一実施形態では、処置サイクルは、毎週のチェックポイント阻害剤と同時の、毎日、毎週、隔週、又は毎月の非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムの投与からなる。あるいは、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムはチェックポイント阻害剤の投与の前及び/又は後に投与される。
【0099】
本発明の別の実施形態では、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムはチェックポイント阻害剤の投与の前及び後に患者に投与される。すなわち、ある実施形態では、病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムはチェックポイント阻害剤の前及び後に患者に投与される。
【0100】
処置に対する個々の患者の認容性に応じて必要であれば、投与を遅らせ且つ/又は用量を減らし且つスケジュールを調整する。
【0101】
あるいは、チェックポイント阻害剤の投与は、有効量の非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムの投与と同時に行われ得る。
【0102】
非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムは、非経口、経口、舌下、経鼻、又は肺経路で患者に投与され得る。好ましい実施形態では、免疫調節薬は、皮下(subcutaneous)、皮内、皮下(subdermal)、腹腔内、静脈内、及び膀胱内(intravesicular)注射から選択される非経口経路で投与される。より好ましくは、非経口経路による投与は非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウム細胞壁抽出物の腫瘍内注射を含み得る。
【0103】
本発明に係るチェックポイント阻害処置が計画される対象は、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムの投与と同時、別個、又は逐次に療法を受けてよい。
【0104】
本発明の一態様では、有効量の非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムが単回投与として投与され得る。あるいは、有効量の非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムは、複数回(反復)投与、例えば2以上、3以上、4以上、5以上、10以上、又は20以上の反復投与で投与され得る。非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムは、チェックポイント阻害処置の約4週間前~約1日前、例えば約4週間前~1週間前、約3週間前~1週間前、又は約3週間前~2週間前に投与され得る。投与は単回又は複数回投与で与えられ得る。
【0105】
本発明の好ましい実施形態では、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、又はIDOに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、又は抗体の抗原結合性断片、及びそれらの組合せから選択されるチェックポイント阻害剤と組み合わせて新生物疾患の処置に使用するための非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムがあり、ここで前記マイコバクテリウムは、チェックポイント阻害剤が投与される前、それと同時、及び/又はその後に対象に投与される。前記マイコバクテリウムは、CTLA-4、PD-1、もしくはPD-L1に対するものであるか又はその組合せであるチェックポイント阻害剤と組み合わせて新生物疾患の処置に使用するためのものであることが好ましい。
【0106】
本発明の別の好ましい実施形態は、対象における新生物、腫瘍、又はがんを治療する、減少させる、阻害する、又は制御する方法である。ここで前記方法が、(i)CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、又はIDOに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、又は抗体の抗原結合性断片、及びそれらの組合せから選択されるチェックポイント阻害剤及び(ii)免疫調節薬を同時、別個、又は逐次に対象に投与することを含み、前記方法により、チェックポイント阻害剤又は免疫調節薬の単独投与と比べて治療有効性が増大し、且つ前記免疫調節薬が非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムを含み、また前記方法は所望により治療量より少ない量の前記チェックポイント阻害剤を投与することを含む。
【0107】
チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、もしくはPD-L1に対するものであるか又はその組合せであることが好ましい。最も好ましくは、チェックポイント阻害剤は抗PD-L1である。
【0108】
本発明の別の好ましい実施形態は、対象における新生物、腫瘍、又はがんを治療する、減少させる、阻害する、又は制御する方法であって、前記方法が、(i)チェックポイント阻害剤及び(ii)免疫調節薬、好ましくは加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムを同時、別個、又は逐次に対象に投与することを含み、前記チェックポイント阻害処置が、PD-1及び/又はPD-L1に対する細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、及びその抗原結合性断片から選択される遮断薬の投与を含む、方法である。
【0109】
本発明の別の好ましい実施形態は、対象における新生物、腫瘍、又はがんを治療する、減少させる、阻害する、又は制御する方法であって、前記方法が、(i)チェックポイント阻害剤及び(ii)非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムを同時、別個、又は逐次に対象に投与することを含み、前記チェックポイント阻害処置が、CTLA-4、PD-1、もしくはPD-L1に対するものであるか又はその組合せである、抗体及びその抗原結合性断片から選択される遮断薬の投与を含み、前記チェックポイント阻害処置が、治療量より少ない量及び/又は期間で前記遮断薬又はその抗原結合性断片を投与することを含む、方法である。
【0110】
本発明の更に別の実施形態は、対象における新生物、腫瘍、又はがんを治療する、減少させる、阻害する、又は制御する方法であって、前記方法が、(i)2種以上のチェックポイント阻害剤及び(ii)非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムを同時、別個、又は逐次に対象に投与することを含み、前記2種以上のチェックポイント阻害処置が、CTLA-4、PD-1、もしくはPD-L1に対するものであるか又はその組合せである細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、及びその抗原結合性断片から選択される遮断薬の投与を含み、前記チェックポイント阻害処置が、所望により、治療量より少ない量及び/又は期間で前記遮断薬を投与することを含む、方法である。
【0111】
本発明の一実施形態では、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムは、ある剤形で患者に投与される医薬の形態であり得る。
【0112】
特定の場合の本発明に係る容器は、バイアル、アンプル、シリンジ、カプセル、タブレット、又はチューブであり得る。場合により、マイコバクテリウムは凍結乾燥され、投与前に懸濁剤へと処方され得る。しかし、別の場合には、マイコバクテリウムはある体積の薬剤的に許容される液体に懸濁されている。最も好ましい実施形態のいくつかでは、薬剤的に許容されるキャリア中に懸濁された一回単位用量のマイコバクテリウムを含む容器であって、単位用量が約1×106~約1×1010生物体を含む、容器が提供される。いくつかの非常に具体的な実施形態では、懸濁されたマイコバクテリウムを含む液体は、約0.1ml~10ml、約0.3ml~2ml、又は約0.5ml~2mlの体積で提供される。上記組成物は、本明細書に記載の免疫療法用途に理想的な単位を提供する。
【0113】
本発明の方法及び/又は組成物の文脈中で記載されている実施形態は、本明細書に記載されている任意の他の方法又は組成物と関連して使用され得る。したがって、1つの方法又は組成物に関する実施形態が本発明の別の方法及び組成物にも適用され得る。
【0114】
場合によっては、対象の外部又は内部の特異的部位に、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムが投与される。例えば、本発明に係るマイコバクテリウム組成物、例えば特にM.obuenseを含むものは、腫瘍の近傍又はリンパ節の近傍、例えば腫瘍周辺の組織から排出するリンパ節の近傍に投与され得る。したがって、特定の場合には、マイコバクテリウム組成物の部位投与は、後頸部リンパ節、扁桃リンパ節、腋窩リンパ節、鼠径リンパ節、前頸部リンパ節、顎下リンパ節、おとがい下リンパ節、又は鎖骨上リンパ節の近くであり得る。
【0115】
非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムは、患者中にがん若しくは腫瘍が存在する間又はがんが退縮若しくは安定化される時点まで投与され得る。非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムは、がん又は腫瘍が退縮又は安定化された後も患者に投与され続けてよい。
【0116】
本発明に係るマイコバクテリウム組成物は、典型的には薬剤的に許容されるキャリアに分散された有効量のマイコバクテリウムを含む。「薬剤的又は薬理学的に許容される」という句は、動物、例えばヒト等に適切に投与された時に有害な、アレルギー性の、又はその他の望まれない反応を生じない分子的実体及び組成物を指す。マイコバクテリウムを含む医薬組成物の調製は、本開示を考慮することで当業者に明らかになり、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990に例示されている。更に、動物(例えば、ヒト)への投与では、製剤は、無菌性、発熱性、一般的安全性、及び純度の基準を満たすべきであると理解される。本明細書に記載されている薬理学的に許容されるキャリアの具体例は、ホウ酸バッファー、無菌食塩水溶液(0.9%NaCl)である。
【0117】
本明細書において、「薬剤的に許容されるキャリア」は、当業者に知られるように、全ての溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗細菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤(absorption delaying agent)、塩、保存剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、着香料、色素、そのような同様な材料、及びその組合せを含む(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990, pp. 1289-1329参照)。
【0118】
好ましい実施形態では、非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムは、皮下(subcutaneous)、皮内、皮下(subdermal)、腹腔内、静脈内、及び膀胱内注射から選択される非経口経路で投与される。皮内注射は、免疫監視にアクセス可能な、したがって、抗がん免疫応答を選択して局所リンパ節で免疫細胞増殖を促進することができる真皮の層へと全割合のマイコバクテリウム組成物を送達することを可能にする。
【0119】
本発明の非常に好ましい実施形態ではマイコバクテリウム組成物は直接皮内注射により投与されるが、場合によってその他の投与方法が用いられることも想定される。したがって、特定の場合には、本発明の非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムは、注射、注入、持続注入、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病巣内、硝子体内、腟内、直腸内、局所(topically)、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、皮下(subcutaneous)、結膜下、膀胱内、粘膜、心膜内、臍帯内、眼内、経口、頭蓋内、関節内、前立腺内、胸膜内、気管内、鼻腔内、局所(topically)、局地(locally)、吸入(例えば、エアゾール吸入)によって、カテーテルを介して、洗浄(lavage)を介して、又は当業者に公知であるその他の方法若しくは上記の任意の組合せ(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. Mack Printing Company, 1990参照)によって投与され得る。
【0120】
上記明細書中で言及した全ての刊行物を参照により本明細書に援用する。本発明の範囲及び精神から逸脱しない、記載されている本発明の方法及び系の種々の改変及び変更が、当業者に明らかであろう。本発明を具体的な好ましい実施形態に関連して説明したが、特許請求される発明はそのような具体的実施形態に不当に限定されないと理解されるべきである。実際、生化学及び免疫学又は関連分野の熟練者に明白な、本発明を実施するための記載されている様式の種々の改変が、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【実施例0121】
以下に非限定的な実施例を参照して本発明を更に説明する。
【0122】
実施例1
成体C57BL/6マウスの側腹部に、KPCマウス(Hingorani et al. Cancer Cell, 2005, 7:469-48)から得た膵臓癌細胞系由来の105個の細胞を皮下注射した。これらのマウス膵臓癌細胞はKras、p53、及びPdx-Creに変異を有する(Hingorani et al. Cancer Cell, 2005, 7:469-48)。
【0123】
注射された腫瘍細胞が触診可能な腫瘍になるまで成長した時(0日目)、マウスに処置を行わないか、以下の処置を施した:
(1)0.1mgのM.obuense NTCT13365/マウス。実験期間にわたり、5日間1日交代で首筋及び尾底部へ交互の皮下注射を行い、2日間休止;
(2)10mg/kgの抗PDL-1 mAb又は10mg/kgの抗PD-1 mAb、腹腔内、週1回;
(3)抗PDL-1又は抗PD-1とM.obuense NTCT13365との組合せを、単独で用いた上記2つの化合物について上述した用量及びスケジュールで行った。
【0124】
実験経過中、腫瘍成長をモニタリングして、投与された処置が腫瘍サイズの減少及び生存の見込みの改善に効果を示したかどうかを決定した。
【0125】
図1に示すデータは、抗PDL-1とM.obuense NTCT13365を組み合わせた処置を受けたマウスが腫瘍サイズの連続的減少を示し、腫瘍を制御しているようであったことを示している。この腫瘍サイズの減少は、いずれかの処置のみを受けたマウスより顕著であった。処置を受けなかったマウスでは腫瘍の成長が制御されず、マウスはすぐに疾患で死亡した。
【0126】
実施例2
皮下B16-F10腫瘍を担持するC57BL/6マウスにおいて、IMM-101及びチェックポイント阻害剤を用いた併用療法の効果を調べた。マウスには0日目に移植を行った。マウスは、1日目に無作為化され、1日目、3日目、5日目、7日目、9日目、11日目、13日目及び15日目(生存マウスの半数)若しくは16日目(生存マウスの半数)(隔日(Q2D)×8回)における、0.1mg/マウスのIMM-101の合計8回皮下注射、又は、10mg/kgの抗PD1若しくは抗CTLA4の合計4回の腹腔内注射(週2回を連続で2週間、1日目、5日目、8日目及び12日目:週2回(TW)×2回)を、単独又は併用で施された。15日目及び16日目、最後の処置の後に、全生存マウスの半数を屠殺した。腫瘍中の免疫浸潤細胞及び脾臓中の免疫細胞(CD3+CD8+細胞及びFoxP3制御性T細胞の比率)の特徴付けを、FACS解析を用いた定量化により行った(
図3)。
(付記)
本開示は以下の態様を含む。
<1> 非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムを含み、チェックポイント阻害処置が計画される患者におけるがんを治療、減少、阻害、又は制御するのに使用するための免疫調節薬であって、
前記チェックポイント阻害処置は、CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、又はIDOに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、又は抗体の抗原結合性断片、及びそれらの組合せから選択される遮断薬を投与することを含み、
前記チェックポイント阻害処置は治療量より少ない量及び/又は期間で前記遮断薬を投与することを含むか又は含まず、
前記免疫調節薬はチェックポイント阻害処置における投薬と同時、別個、又は逐次に投与される、
前記免疫調節薬。
<2> 前記遮断薬が、CTLA-4、PD-1、又はPD-L1に対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、又は抗体の抗原結合性断片、及びそれらの組合せから選択される遮断薬の投与を含む、<1>に記載の免疫調節薬。
<3> 前記遮断薬は、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ(azetolizumab)、トレメリムマブ、及びそれらの組合せからなる群より選択される抗体である、<1>又は<2>に記載の免疫調節薬。
<4> 前記遮断薬はペンブロリズマブであり、 前記患者は、前記がんと関連するミスマッチ修復欠損腫瘍を有する、且つ/又は、SP142免疫組織化学抗体アッセイを用いて測定された場合に腫瘍細胞の少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%若しくはそれ以上においてPD-L1発現を示す、<3>に記載の免疫調節薬。<5> 前記遮断薬はイピリムマブであり、3週間毎に2mg/mg以下の用量で、所望により最大4回の点滴において、静脈内投与される、<3>に記載の免疫調節薬。
<6> 前記遮断薬はニボルマブであり、少なくとも3mg/mg、又は少なくとも5mg/mg、又は少なくとも10mg/mg若しくはそれ以上の用量で、4週間毎に静脈内投与され、
前記患者は、SP142免疫組織化学抗体アッセイを用いて測定された場合に腫瘍細胞の少なくとも1%、少なくとも5%、又は少なくとも10%若しくはそれ以上においてPD-L1発現を示すか又は示さない、<3>に記載の免疫調節薬。
<7> 前記遮断薬はアテゾリズマブ(azetolizumab)であり、少なくとも10mg/kg又は少なくとも15mg/kg若しくはそれ以上の用量で三週間毎に静脈内投与され、
前記患者はSP142免疫組織化学抗体アッセイを用いて測定された場合に腫瘍細胞並びに/又はB細胞及びNK細胞から選択される腫瘍浸潤免疫細胞の少なくとも1%、少なくとも5%、又は少なくとも10%若しくはそれ以上においてPD-L1発現を示すか又は示さない、<3>に記載の免疫調節薬。
<8> 前記遮断薬は、AMP-224、BMS-986016、MGA-271、及びその組合せから選択される抗体である、<1>に記載の免疫調節薬。
<9> 前記遮断薬は、約20mg~約8000mgの用量で2週間毎に、所望により最大48回の点滴において、静脈内投与される、BMS-986016である、<8>に記載の免疫調節薬。
<10> 前記がんが、前立腺癌、肝臓癌、腎癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、脳癌、肝細胞癌、リンパ腫、白血病、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、甲状腺癌、黒色腫、癌腫、頭頸部癌、皮膚癌、及び軟組織肉腫から選択される、<1>~<9>のいずれか一項に記載の免疫調節薬。
<11> 前記がんが、膵臓癌、結腸直腸癌、前立腺癌、及び卵巣癌から選択される、<1>~<10>のいずれか一項に記載の免疫調節薬。
<12> 前記がんが転移性である、<1>~<11>のいずれか一項に記載の免疫調節薬。
<13> 前記非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムが、M.vaccae、M.obuense、M.parafortuitum、M.aurum、M.indicus pranii、M. phlei、及びそれらの組合せから選択される、<1>~<12>のいずれか一項に記載の免疫調節薬。
<14> 前記非病原性加熱殺菌マイコバクテリウムが、好ましくはR型である、<1>~<13>のいずれか一項に記載の免疫調節薬。
<15> 前記非病原性加熱殺菌マイコバクテリウム及び/又は前記遮断薬が、非経口経路、経口経路、舌下経路、経鼻経路、又は肺経路を介して投与される、<1>~<14>のいずれか一項に記載の免疫調節薬。
<16> 前記非経口経路が、皮下(subcutaneous)、皮内、皮下(subdermal)、腹腔内、又は静脈内から選択される、<15>に記載の免疫調節薬。
<17> 前記非経口経路が腫瘍内注射を含む、<15>又は<16>に記載の免疫調節薬。
<18> 前記免疫調節薬の投与が、前記チェックポイント阻害処置の前及び/又は後である、<1>~<17>のいずれか一項に記載の免疫調節薬。
<19> 対象における新生物、腫瘍、又はがんを治療する、減少させる、阻害する、又は制御する方法であって、
(i)CTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG-3、B7-H3、B7-H4、B7-H6、A2AR、又はIDOに対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、又は抗体の抗原結合性断片、及びそれらの組合せから選択されるチェックポイント阻害剤及び(ii)免疫調節薬を同時、別個、又は逐次に前記対象に投与することを含み、
前記方法により、前記チェックポイント阻害剤又は前記免疫調節薬の単独投与と比べて治療有効性が増大し、
前記免疫調節薬は非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムを含み、
治療量より少ない量の前記チェックポイント阻害剤を投与することを含むか又は含まない、方法。
<20> 前記チェックポイント阻害剤が、CTLA-4、PD-1、又はPD-L1に対する、細胞、タンパク質、ペプチド、抗体、抗体の断片、及びそれらの組合せから選択される、<19>に記載の方法。
<21> 前記チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、アテゾリズマブ(azetolizumab)、トレメリムマブ、及びそれらの組合せからなる群より選択される抗体である、<19>又は<20>に記載の方法。
<22> 前記チェックポイント阻害剤はペンブロリズマブであり、
前記患者は、ミスマッチ修復欠損腫瘍を有する、且つ/又は、SP142免疫組織化学抗体アッセイを用いて測定された場合に腫瘍細胞の少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%若しくはそれ以上においてPD-L1発現を示す、<21>に記載の方法。
<23> 前記チェックポイント阻害剤はイピリムマブであり、3週間毎に2mg/mg以下の用量で、所望により最大4回の点滴において、静脈内投与される、<21>に記載の方法。
<24> 前記チェックポイント阻害剤はニボルマブであり、少なくとも3mg/mg、又は少なくとも5mg/mg、又は少なくとも10mg/mg若しくはそれ以上の用量で、4週間毎に静脈内投与され、
前記患者は、SP142免疫組織化学抗体アッセイを用いて測定された場合に腫瘍細胞の少なくとも1%、少なくとも5%、又は少なくとも10%若しくはそれ以上においてPD-L1発現を示すか又は示さない、<21>に記載の方法。
<25> 前記チェックポイント阻害剤はアテゾリズマブ(azetolizumab)であり、少なくとも10mg/kg又は少なくとも15mg/kg若しくはそれ以上の用量で三週間毎に静脈内投与され、
前記患者はSP142免疫組織化学抗体アッセイを用いて測定された場合に腫瘍細胞並びに/又はB細胞及びNK細胞から選択される腫瘍浸潤免疫細胞の少なくとも1%、少なくとも5%、又は少なくとも10%若しくはそれ以上においてPD-L1発現を示すか又は示さない、<21>に記載の方法。
<26> 前記チェックポイント阻害剤は、AMP-224、BMS-986016、MGA-271、及びその組合せから選択される抗体である、<19>に記載の方法。
<27> 前記チェックポイント阻害剤は、約20mg~約8000mgの用量で2週間毎に、所望により最大48回の点滴において、静脈内投与される、BMS-986016である、<26>に記載の方法。
<28> 前記新生物、前記腫瘍、又は前記がんが、前立腺癌、肝臓癌、腎癌、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、乳癌、膵臓癌、脳癌、肝細胞癌、リンパ腫、白血病、胃癌、子宮頸癌、卵巣癌、甲状腺癌、黒色腫、癌腫、頭頸部癌、皮膚癌、及び軟組織肉腫から選択されるがんに関連する、<19>に記載の方法。
<29> 前記新生物、前記腫瘍、又は前記がんが、膵臓癌、結腸直腸癌、前立腺癌、及び卵巣癌から選択されるがんに関連する、<28>に記載の方法。
<30> 前記新生物、前記腫瘍、又は前記がんが転移性である、<19>、<28>、又は<29>に記載の方法。
<31> 前記非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウムが、M.vaccae、M.obuense、M.parafortuitum、M.aurum、M.indicus pranii、M. phlei、及びそれらの組合せから選択される、<19>又は及び<28>~<30>のいずれか一項に記載の方法。
<32> 前記非病原性加熱殺菌マイコバクテリウムが、R型である、<19>又は<28>~<31>のいずれか一項に記載の方法。
<33> 前記非病原性加熱殺菌全細胞マイコバクテリウム及び/又は前記チェックポイント阻害剤が、非経口経路、経口経路、舌下経路、経鼻経路、又は肺経路を介して投与される、<32>に記載の方法。
<34> 前記非経口経路が、皮下(subcutaneous)、皮内、皮下(subdermal)、腹腔内、又は静脈内から選択される、<33>に記載の方法。
<35> 前記非経口経路が腫瘍内注射を含む、<33>又は<34>に記載の方法。
<36> 投与される前記非病原性加熱殺菌マイコバクテリウムの量が10
7細胞~10
9細胞である、<19>又は<28>~<35>のいずれか一項に記載の方法。
<37> 治療有効性の増大が、全生存期間の延長により測定される、<19>に記載の方法。
<38> 治療有効性の増大が、無増悪生存期間の延長により測定される、<19>に記載の方法。
<39> 治療有効性の増大が、腫瘍サイズの減少又は安定化により測定される、<19>に記載の方法。
<40> 治療有効性の増大が、全奏効率の改善又は生活の質の向上により測定される、<19>に記載の方法。