(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119054
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】スタンディングパウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20230818BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023113191
(22)【出願日】2023-07-10
(62)【分割の表示】P 2019106089の分割
【原出願日】2019-06-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】森田 佐保
(57)【要約】
【課題】電子レンジによる内容物の加熱調理が可能な、自立性を有するパウチにおいて、加熱調理によって内容物から発生する水蒸気を、外部に排出することが可能な自動蒸気抜き機構を備え、開封に際しては開封が容易で、かつ切り口の直線性に優れ、また開封口の開口形状の保持が可能なスタンディングパウチの提供を課題とする。
【解決手段】プラスチックフィルムの積層体からなる、電子レンジによる加熱調理が可能なパウチであって、積層体の最外層側のプラスチックフィルム層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いており、積層体の中間フィルム層は、シーラント層に隣接する層であって、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いており、積層体の最内層側のシーラント層は、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリプロピレン樹脂層であることを特徴とする、スタンディングパウチ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムの積層体からなる、電子レンジによる内容物の加熱調理が可能なパウチであって、
積層体は、パウチ最外層側のプラスチックフィルム層のほか、中間フィルム層、およびパウチ最内層側のシーラント層から構成され、
パウチは前側胴部、後ろ側胴部、およびそれらの間に配置された、底フィルムによって、内容物を収容可能に製袋されており、
パウチは、電子レンジによる加熱調理において、内容物から発生する水蒸気をパウチ外部に排出することが可能な、自動蒸気抜き機構を備えており、
前側胴部と、後ろ側胴部とは、四辺を有して、シーラント層同士を対向させて配置されており、
この四辺のうち、胴部の左右両端部はシールされて、パウチの両端部は密封されており、
胴部下部において、前側胴部および後ろ側胴部との間に、底フィルムが折りたたまれて配置され、パウチの下端部は、底フィルムが底面を形成可能に、胴部とシールされて密封されており、
胴部上部において、前側胴部および後ろ側胴部とは、内容物を収容後、パウチの上端部でシールされて、パウチ全体の密封が可能であり、
胴部の両端部のシール部の、少なくとも一方には切込みが設けられて、この切込みを起点として、パウチの表裏の胴部の、水平方向の直線が開封予定線であり、
積層体の最外層側のプラスチックフィルム層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いており、
積層体の中間フィルム層は、シーラント層に隣接する層であって、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いており、
積層体の最内層側のシーラント層は、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリプロピレン樹脂層であることを特徴とする、スタンディングパウチ。
【請求項2】
前記切込みは、内容物収容後、パウチを自立させた状態において、内容物の表面の高さと、パウチ上端部のシール部との間の位置に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の、スタンディングパウチ。
【請求項3】
前記シーラント層は、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有する、ポリプロピレン樹脂フィルムを積層していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の、スタンディングパウチ。
【請求項4】
前記自動蒸気抜き機構は、電子レンジによる加熱調理において、内容物からの水蒸気発生によって、パウチのシール部の一部が剥離して通蒸することを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載のスタンディングパウチ。
【請求項5】
前記積層体のプラスチックフィルム層のポリエチレンテレフタレートフィルムには、表面に無機化合物蒸着被膜が設けられていることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれかに記載のスタンディングパウチ。
【請求項6】
前記積層体のプラスチックフィルム層のポリエチレンテレフタレートフィルムは、中取りポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれかに記載のスタンディングパウチ。
【請求項7】
前記積層体の中間フィルム層には、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリアミドフィルムをさらに含むことを特徴とする、請求項1~請求項6のいずれかに記載の
スタンディングパウチ。
【請求項8】
前記積層体の中間フィルム層のポリエチレンテレフタレートフィルムには、パウチ胴部の前記開封予定線に沿って、傷加工線が設けられていることを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれかに記載のスタンディングパウチ。
【請求項9】
前記傷加工線は、ミシン目、もしくはハーフカット線で設けられていることを特徴とする、請求項8に記載のスタンディングパウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジによる加熱調理に適したパウチに関するものである。特に、底板を有して自立性がある、スタンディングパウチと呼ばれる形態のパウチであって、加熱調理において内容物から発生する水蒸気を、外部に排出することが可能な自動蒸気抜き機構を備え、開封に際しては開封が容易で、かつ切り口の直線性に優れ、また開封口の開口形状の保持が可能なスタンディングパウチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装材料の一種であるパウチは、プラスチックフィルムを基材とする単体または積層体から構成されるものが広く普及しており、さまざまな形態のものが、幅広い用途に用いられており、人々の生活にとっては不可欠なものとなっている。
【0003】
パウチは、例えば液体容器としても用いられ、飲料のほかレトルト食品などの食品分野でも広く用いられているほか、日用品やトイレタリーの分野でも、さまざまな商品がスーパーマーケットやドラッグストア、コンビニエンスストアの商品棚をにぎわしている。液体容器のほかにも、様々な用途展開がなされている。
【0004】
パウチの利点は、缶や瓶などの容器に比べて、価格が安いことや、要求品質によってきめ細かい材料設計で対応できる点、あるいは内容物充填前、および流通や保管においても軽量で省スペースであることが挙げられる。またパウチは、廃棄物を減らすという観点からも環境適応型であるといえる。
【0005】
またパウチの外側から見える層への高精細の印刷によって、商品のイメージアップを図ることができ、内容物に関する必要な情報を表示することが可能であり、バーコードの印刷などは、商品の流通や在庫管理、マーケティング情報の源泉ともなっている。
【0006】
パウチの中には、自立性を持たせたものも商品化されており、一般にスタンディングパウチと呼ばれている。商品の展示、陳列などに利点を有するほか、自立性を持たせることにより、使い勝手にも利点を有し、たとえば、内容物の取り出しにおいても一層の利便性が図られてきた。
【0007】
さらに加熱調理後のスタンディングパウチの開封に際して、残留した水蒸気によるやけど防止や、開封口の開封性の容易さに加えて、開封口の形状の保持などが重要視されている。
【0008】
開封口の保持は、例えば内容物が食品である場合に、パウチからスプーンやフォークなどの食器を用いて、直接取り出して喫食などする場合においては、開封口が閉じることなく、開口した状態が保たれることが望ましい。同時に開封の切り口についても予め決められた位置で直線状にカットされた状態であることが好ましい。
【0009】
特許文献1には、内容物を充填した状態において自立性を有するスタンディングパウチの提案がなされているが、自立性や充填性にのみ重点が置かれ、開封性、通蒸性、あるいは開口部の形状保持機能、切り口の形状や直線性については考慮されたものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、電子レンジによる内容物の加熱調理が可能な、自立性を有するパウチにおいて、加熱調理によって内容物から発生する水蒸気を、外部に排出することが可能な自動蒸気抜き機構を備え、開封に際しては開封が容易で、かつ切り口の直線性に優れ、また開封口の開口形状の保持が可能なスタンディングパウチの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
プラスチックフィルムの積層体からなる、電子レンジによる内容物の加熱調理が可能なパウチであって、
積層体は、パウチ最外層側のプラスチックフィルム層のほか、中間フィルム層、およびパウチ最内層側のシーラント層から構成され、
パウチは前側胴部、後ろ側胴部、およびそれらの間に配置された、底フィルムによって、内容物を収容可能に製袋されており、
パウチは、電子レンジによる加熱調理において、内容物から発生する水蒸気をパウチ外部に排出することが可能な、自動蒸気抜き機構を備えており、
前側胴部と、後ろ側胴部とは、四辺を有して、シーラント層同士を対向させて配置されており、
この四辺のうち、胴部の左右両端部はシールされて、パウチの両端部は密封されており、
胴部下部において、前側胴部および後ろ側胴部との間に、底フィルムが折りたたまれて配置され、パウチの下端部は、底フィルムが底面を形成可能に、胴部とシールされて密封されており、
胴部上部において、前側胴部および後ろ側胴部とは、内容物を収容後、パウチの上端部でシールされて、パウチ全体の密封が可能であり、
胴部の両端部のシール部の、少なくとも一方には切込みが設けられて、この切込みを起点として、パウチの表裏の胴部の、水平方向の直線が開封予定線であり、
積層体の最外層側のプラスチックフィルム層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いており、
積層体の中間フィルム層は、シーラント層に隣接する層であって、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いており、
積層体の最内層側のシーラント層は、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリプロピレン樹脂層であることを特徴とする、スタンディングパウチである。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、
前記切込みは、内容物収容後、パウチを自立させた状態において、内容物の表面の高さと、パウチ上端部のシール部との間の位置に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の、スタンディングパウチである。
【0014】
また請求項3に記載の発明は、
前記シーラント層は、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有する、ポリプロピレン樹脂フィルムを積層していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の、スタンディングパウチである。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、
前記自動蒸気抜き機構は、電子レンジによる加熱調理において、内容物からの水蒸気発生によって、パウチのシール部の一部が剥離して通蒸することを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれかに記載のスタンディングパウチである。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、
前記積層体のプラスチックフィルム層のポリエチレンテレフタレートフィルムには、表面に無機化合物蒸着被膜が設けられていることを特徴とする、請求項1~請求項4のいずれかに記載のスタンディングパウチである。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、
前記積層体の中間フィルム層には、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリアミドフィルムをさらに含むことを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれかに記載のスタンディングパウチである。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、
前記積層体の中間フィルム層のポリエチレンテレフタレートフィルムには、パウチ胴部の前記開封予定線に沿って、傷加工線が設けられていることを特徴とする、請求項1~請求項6のいずれかに記載のスタンディングパウチである。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、
前記傷加工線は、ミシン目、もしくはハーフカット線で設けられていることを特徴とする、請求項1~請求項7のいずれかに記載のスタンディングパウチである。
【0020】
また、請求項9に記載の発明は、
前記傷加工線は、ミシン目、もしくはハーフカット線で設けられていることを特徴とする、請求項8に記載のスタンディングパウチである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電子レンジによる内容物の加熱調理が可能な、自立性を有するパウチにおいて、加熱調理によって内容物から発生する水蒸気を、外部に排出することが可能な自動蒸気抜き機構を備え、開封に際しては開封が容易で、かつ切り口の直線性に優れ、また開封口の開口形状の保持が可能なスタンディングパウチの提供が可能である。
【0022】
自立性を有するスタンディングパウチである点は、底フィルムを底面を形成可能にシールしてパウチ下部化形成されているために、自立可能であり、加熱調理後も自立性を失うことなく、開封、内容物の取り出しの利便性を有するものである。
【0023】
また、自動蒸気抜き機構を有することによって、加熱調理において内容物から発生する水蒸気によってパウチ内の内圧が上昇し、破袋に至ったり、開封時に水蒸気が噴出するといった不具合を解消することが可能である。
【0024】
胴部の両端部のシール部の、少なくとも一方には切込みが設けられて、この切込みを起点として、パウチの表裏の胴部の、水平方向の直線が開封予定線であることによって、開封の開始作業はより容易に行うことができる。
【0025】
さらに、積層体の中間フィルム層は、シーラント層に隣接する層であって、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いており、積層体の最内層側のシーラント層は、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリプロピレン樹脂層であることによって、開封に際しては開封が容易で、かつ切り口の直線性に優れ、また開封口の開口形状の保持が可能なスタンディングパウチの実現が可能である。
【0026】
また、特に請求項2に記載の発明によれば、切込みは、内容物収容後、パウチを自立させた状態において、内容物の表面の高さと、パウチ上端部のシール部との間の位置に設けられていることによって、切込みを起点としてパウチを切り裂いて開封する際に、内容物がパウチ外へこぼれ出るなどの不具合を起こすことなく、より円滑に切り裂きを行うことができる。
【0027】
また開口部からの内容物の取り出しを、開口部の形状を保持したまま行うことも可能であるために、例えば箸やスプーンなどの食器を用いて、より容易なものとすることが可能である。
【0028】
また、特に請求項3に記載の発明によれば、シーラント層は、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有する、ポリプロピレン樹脂フィルムを積層していることによって、あらかじめ直線カット性を付与されたフィルムを用いて層形成することができるため、より安定して、かつ生産効率の良い積層体、すなわちスタンディングパウチの提供が可能である。
【0029】
また、特に請求項4に記載の発明によれば、自動蒸気抜き機構は、電子レンジによる加熱調理において、内容物からの水蒸気発生によって、パウチのシール部の一部が剥離して通蒸する機構を採用することによって、パウチのシール形状の一部を湾曲または屈曲させるなどの方法や、シール強度を部分的に脆弱化しておくなど、従来の製造工程の範囲での方法で実現可能であり、別部材を必要とすることもなく、コストを大きく圧迫する恐れもない。
【0030】
また、特に請求項5に記載の発明によれば、積層体のプラスチックフィルム層のポリエチレンテレフタレートフィルムには、表面に無機化合物蒸着被膜が設けられていることによって、ガスバリア性能が付与されるために、内容物の保存性を高めたり、保存環境による内容物への影響をなくすことが可能である。
【0031】
特にガスバリアフィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に無機化合物蒸着被膜が設けられている場合には、アルミニウム箔など金属箔によるガスバリア層が、電子レンジによる加熱調理に適性を持たないことに比べて優れている。
【0032】
加えて、無機化合物蒸着被膜に、たとえばAlOXなどを用いる場合には、透明性を有するために、パウチ外部から内容物を可視とすることが可能である。
【0033】
また、特に請求項6に記載の発明によれば、積層体のプラスチックフィルム層のポリエチレンテレフタレートフィルムは、中取りポリエチレンテレフタレートフィルムであることによって、延伸バランスの取れた部分を選択的に使うことになるため、引き裂きによる開封においても、より安定した直線カット性を実現することに効果的である。
【0034】
また、特に請求項7に記載の発明によれば、積層体の中間フィルム層には、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリアミドフィルムをさらに含むことによって、引き裂き性に影響を与えることなく、機械的強度に優れるスタンディングパウチとすることができる。
【0035】
また、特に請求項8に記載の発明によれば、積層体の中間フィルム層のポリエチレンテレフタレートフィルムには、パウチ胴部の前記開封予定線に沿って、傷加工線が設けられていることによって、直線カット性を補助する機構として働くため、引き裂きによる開封においていても、より容易でかつ安定した直線性を実現することに効果的である。
【0036】
また、特に請求項9に記載の発明によれば、傷加工線は、ミシン目、もしくはハーフカット線で設けられていることによって、直線カット性を補助する機構として働くため、引き裂きによる開封においていても、さらに容易で、かつさらに安定した直線性を実現することに効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は本発明に関わるスタンディングパウチの一実施態様を説明するための、平面(一部透視)模式図である。
【
図2】
図2は本発明に関わるスタンディングパウチの一実施態様において、開封した状態を説明するための、斜視(一部透視)模式図である。
【
図3】
図3は本発明に関わるスタンディングパウチの実施例、および比較例の説明をするための、外観形状および寸法を示す平面模式図である。
【
図4】
図4は、本発明に関わるスタンディングパウチの実施例1を説明するための、パウチを構成する積層体の部分断面模式図である。
【
図5】
図5は、本発明に関わるスタンディングパウチの実施例2を説明するための、パウチを構成する積層体の部分断面模式図である。
【
図6】
図6は、本発明に関わるスタンディングパウチの実施例3を説明するための、パウチを構成する積層体の部分断面模式図である。
【
図7】
図7は、本発明に関わるスタンディングパウチの実施例4を説明するための、パウチを構成する積層体の部分断面模式図である。
【
図8】
図8は、本発明に関わるスタンディングパウチの比較例1を説明するための、パウチを構成する積層体の部分断面模式図である。
【
図9】
図9は、本発明に関わるスタンディングパウチの比較例2を説明するための、パウチを構成する積層体の部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を
図1~
図9を参照しながら、更に詳しい説明を加える。ただし本発明は、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって限定されるものである。
【0039】
図1は本発明に関わるスタンディングパウチの一実施態様を説明するための、平面(一部透視)模式図である。
【0040】
本発明は、プラスチックフィルムを用いた積層体からなるスタンディングパウチ(100)であって、積層体は、パウチ最外層側のプラスチックフィルム層のほか、中間フィルム層、およびパウチ最内層側のシーラント層から構成される。
【0041】
シーラント層は、2枚の積層体をシーラント層同士が対向するように重ねて、シールすることによって互いを接着させ、パウチに製袋することを可能にする。シールには、たとえば、加熱、加圧によるヒートシールを用いることができる。
【0042】
シーラント層の材質としては、熱可塑性樹脂のうちポリオレフィン系樹脂を使用することができる。また、シーラント層の形成には、押出機などを用いて溶融した樹脂を製膜して、積層体上に層形成することができる。あるいは、あらかじめフィルムの状態に製膜してある材料を、ラミネートによって積層することによって、積層体の表面にシーラント層を形成することも可能である。
【0043】
図1に示すように、スタンディングパウチ(100)は前側胴部(1)、後ろ側胴部(7)、およびそれらの間に配置された、底フィルム(10)によって、内容物を収容可能に製袋されている。
【0044】
すなわち、前側胴部(1)と、後ろ側胴部(7)とは、四辺を有して、シーラント層同士を対向させて配置されており、この四辺のうち、胴部の左右両端部(2)はシールされて、パウチの左右両端部(2)は密封されている。
【0045】
また、胴部下部において、前側胴部(1)および後ろ側胴部(7)との間に、底フィルム(10)が折り線(6)で折りたたまれて配置され、パウチの下端部(3)は、底フィルム(10)によって底面を形成可能に、シールされて密封されている。
【0046】
この底面の形成によって、内容物を内部に収容したスタンディングパウチ(100)は自立が可能になる。自立によって、たとえば商品としての展示、陳列や、また電子レンジによる加熱調理において、より利便性が高いものとなる。
【0047】
また、胴部上部において、前側胴部(1)および後ろ側胴部(7)とは、内容物を収容後、パウチの上端部(4)でシールされて、スタンディングパウチ(100)全体の密封が可能である。
【0048】
また、本発明によるスタンディングパウチ(100)は、電子レンジによる内容物の加熱調理において、内容物から発生する水蒸気をパウチ外部に排出することのできる、自動蒸気抜き機構(12)を備えている。
【0049】
この自動蒸気抜き機構(12)は、電子レンジによる加熱調理において、パウチ内部に発生する水蒸気による内圧の上昇によって、パウチ本体が一気に破袋することを防止することに有効であり、また加熱調理後のパウチの開封においても、内部からの水蒸気の噴出、それによる手指のやけどなどの危険を防止することにも効果的である。
【0050】
図1に示す例において、自動蒸気抜き機構(12)は、向かって右側側部の上端部(4)に近いところに設けてある例である。本発明において自動蒸気抜き機構(12)を設ける位置については、限定を設けるものではないが、電子レンジ加熱調理において内容物から発生する水蒸気を、パウチ外部に導出することを目的とすることから、加熱調理時に内容物の表面より上方で、直接内容物に触れていない部分の、パウチ内側の空間に面している箇所が適当である。
【0051】
すなわち、
図1に示す例において、電子レンジによる加熱調理時に、加熱によってスタンディングパウチ(100)のパウチ内側の空間に内容物からの水蒸気が充満し、さらに内容物収容空間の体積膨張によって、スタンディングパウチ(100)全体が膨らんで、同時に内圧が上昇する。
【0052】
このとき体積膨張は、スタンディングパウチ(100)のパウチ内側の空間の体積中心から、3次元の放射状に起こるのであって、この体積膨張によって、
図1に示す例において、自動蒸気抜き機構(12)の場合には、その屈曲したシール部に圧力が加わり、この部分の表裏の積層体に対しては、屈曲したシール部に対する剥離の力として作用する。
【0053】
たとえば、
図1に示す例においてパウチは周縁部をシールされており、水蒸気による体積膨張が発生したとしても、内部の圧力が低い間は、
図1に示す略矩形の形状を、3次元に膨らませた形状に変形することは可能である。
【0054】
しかしながらこの放射状の3次元の体積膨張は、さらに内圧が高まるにしたがって、球形の膨張をしようとするために、略矩形のパウチの拡張の余地とは齟齬を生じる結果となる。
【0055】
図1に示す例においては、このとき、自動蒸気抜き機構(12)は、包装袋(100)の内側に向けて屈曲した形状であるために、3次元の放射状の体積膨張によって、
図1に示す例においては、剥離させようとする圧力を周縁部のシール部に比べて、より強く受けるために、この部分に応力集中がより激しくなり、自動蒸気抜き機構(12)のシール部分が剥離を起こすことになる。
【0056】
この剥離によって、パウチの内部空間と外部がつながり、内部の水蒸気は外部に自動的に導出される。したがって、この部分が自動蒸気抜き機構となることによって、スタンディングパウチ(100)の内圧は急激に減少するために、その他の周縁部のシール部においては、このような剥離が発生することはない。
【0057】
また、自動蒸気抜き機構は、その手段方法についてはここに示す例に限定するものではなく、水蒸気の発生によって上昇したパウチの内圧によって、自動的にパウチ内外がシール部の部分的破壊によって連結するなどして、水蒸気を外部に導出する機能において、これを満たすものであれば、他の方法であってもかまわない。
【0058】
他の方法の例を挙げれば、たとえば、周縁部のシール部分に比べて、自動蒸気抜き機構の部分で、シール強度が脆弱、もしくはシール幅が細く、またはその両方でシールされている構造も可能である。
【0059】
たとえば、他のシール部分に比べてシール強度が脆弱にシールされた状態は、シーラントの種類の選択、シール条件の調整、あるいはシール時にこの部分に、脆弱化に有効な層を挿入するなどの方法によって実現することが可能である。
【0060】
また他のシール部分に比べて、シール幅が細くシールされた状態も脆弱な部分となりうるが、この場合においては、シールバーの形状や幅の調整によって実現することが可能である。
【0061】
また、本発明においては、胴部の左右両端部(2)のシール部の、少なくとも一方には切込み(8)が設けられて、この切込み(8)を起点として、パウチの表側胴部(1)の、水平方向の直線として、開封予定線(5)を設けることができる。
【0062】
この切込み(8)を起点として、パウチの表側胴部(1)の、水平方向の直線が開封予定線(5)であることによって、また後ろ側胴部(7)についても同様であって、開封の開始作業、およびそれに続く開封作業をより容易に行うことができる。また開封後の開封口においてもその切り口が又裂きなどを起こすことなく、水平な切り口を保つことが可能となる。
【0063】
図1に示す例においては、向かって左側の側端部に一か所、切込み(8)が設けてある例であり、この切込み(8)を起点としてパウチの表裏の胴部の、水平方向の直線が開封予定線(5)として破線で示してある。ただし後ろ側胴部の開封予定線は表側胴部の開封予定線と重なっており、
図1においては不可視である。
【0064】
この切込み(8)は、その形状は
図1に示す例のようにV字形の切込み(8)とすることができ、あるいは単に線状に切り込んだだけのものであってもよい。
【0065】
また、本発明によるスタンディングパウチ(100)においては、積層体の最外層側のプラスチックフィルム層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いており、積層体の中間フィルム層は、シーラント層に隣接する層であって、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いており、積層体の最内層側のシーラント層は、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリプロピレン樹脂層であることを特徴としている。
【0066】
我々は、本発明を推進する過程において鋭意検討を重ねた結果、これらの材料構成によって、開封に際しては開封が容易で、かつ切り口の直線性に優れ、また開封口の開口形状の保持が可能なスタンディングパウチ(100)の実現が可能であることを見出したのである。
【0067】
このようにして、本発明によれば、電子レンジによる内容物の加熱調理が可能な、自立性を有するパウチにおいて、加熱調理によって内容物から発生する水蒸気を、外部に排出することが可能な自動蒸気抜き機構を備え、開封に際しては開封が容易で、かつ切り口の直線性に優れ、また開封口の開口形状の保持が可能なスタンディングパウチ(100)の提供が可能である。
【0068】
図2は本発明に関わるスタンディングパウチの一実施態様において、開封した状態を説明するための、斜視(一部透視)模式図である。
【0069】
本発明によるスタンディングパウチ(100)は、電子レンジ加熱調理に適性を有するものであって、内容物が収容された状態では、底フィルム(10)が、シールされた底端部(3)の間で拡張してパウチの底部を形成し、パウチは安定して、自立した状態を維持することができる。
【0070】
また、加熱調理後においては、手指で切込み(8)を起点として、表側胴部の開封予定線(5)と、後ろ側胴部の開封予定線(11)とを切り裂いて開封し、パウチ上部(90)を切り離して分離することができる。
【0071】
こうしてできた開口部(20)は、表側胴部の開封予定線(5)と後ろ側胴部の開封予定線(11)で囲まれた部分であって、開いた状態で開口部(20)の形状が維持されている。
【0072】
まず、表側胴部の開封予定線(5)と後ろ側胴部の開封予定線(11)は、水平方向に直線の切り口となっており、これは、本発明によるパウチの積層体の最外層側のプラスチックフィルム層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いており、積層体の中間フィルム層は、シーラント層に隣接する層であって、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いており、パウチの最内層側のシーラント層は、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリプロピレン樹脂層であることによるものである。
【0073】
また、
図2に示すパウチを開封した状態から見て取れるように、開口部(20)は大きく開かれた状態であり、この状態は電子レンジによる加熱調理において、一旦内圧が上昇して膨らんだスタンディングパウチ(100)の、パウチ内側の空間の膨らんだ形状が残っているものである。
【0074】
すなわち、加熱調理前には比較的小さな容積であった内容物(14)の収容空間の余剰部分は、水蒸気の発生によって膨張し、自動蒸気抜き機構(12)によって蒸気抜きが行われた後も、ある程度容積を保った状態で、開封作業が行われるために、開口部(20)が開かれた状態で開封された結果である。
【0075】
また内容物(14)が、液体あるいは流動性を有する状態であれば、内容物(14)はパウチの下部に集まり、底フィルムは平坦な底部を形成することができ、その自重によってパウチの開口部(20)は、広がって自立した状態を作ることが可能であって、電子レンジ加熱調理においても、また開封後も安定した状態で自立した状態を維持することが可能である。
【0076】
開口部(20)が大きく開かれた状態で維持されている結果、本発明によるスタンディングパウチ(100)の内容物(14)の取り出しは、容易であって、例えば食品を例にとれば、箸、スプーン、あるいはフォークなどの餐具等を用いて、直接の取り出し、喫食も可能であり利便性が高い。
【0077】
また、本発明において、切込み(8)は内容物収容後、パウチを自立させた状態において、内容物の表面の高さと、パウチ上端部のシール部との間の位置に設けることが可能であって、この場合には切込み(8)を起点とした手指による開封作業を、より容易かつ安定して開始することができる。
【0078】
さらに切込み(8)に連続する、表側胴部の開封予定線(5)と後ろ側胴部の開封予定線(11)の引き裂きもまた同様であって、表側胴部の開封予定線(5)と、後ろ側胴部の開封予定線(11)による、水平方向の開封作業をより容易に、また安定して行うことが可能である。
【0079】
これは、本発明において、パウチを構成する積層体の最外層側のプラスチックフィルム層は、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いており、積層体の中間フィルム層は、シーラント層に隣接する層であって、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いており、積層体のパウチ最内層側のシーラント層は、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリプロピレン樹脂層であることによるものである。
【0080】
また、本発明においては、シーラント層は、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有する、ポリプロピレン樹脂フィルムを積層したものであってもよい。あらかじめフィルムに製膜された、材料を用いることによって、シーラント層の積層、すなわち積層体の製造はより簡易にまた安定して行うことが可能である。
【0081】
また、本発明において、自動蒸気抜き機構は、その方式について特段の限定を加えるものではないが、例えば電子レンジによる加熱調理において、内容物からの水蒸気発生によって、内圧が上昇してパウチのシール部の一部が剥離して通蒸する方式をとることも可能である。
【0082】
この場合には、パウチのシール形状の一部を湾曲または屈曲させるなどの方法や、シール強度を部分的に脆弱化しておくなど、従来の製造工程の範囲での方法で実現可能であり、別部材を必要とすることもなく、コストを大きく圧迫する恐れもない。
また、積層体のプラスチックフィルム層のポリエチレンテレフタレートフィルムには、表面に無機化合物蒸着被膜を設けることが可能である。
【0083】
これは内容物の保存性を向上させることなどを目的として、スタンディングパウチ(10)を構成する積層体中に、ガスバリア層を設けようとするものであって、プラスチックフィルムの表面に無機化合物のガスバリア層の被膜を、蒸着によって設けてなるガスバリアフィルムを用いるものである。
【0084】
ちなみに、アルミニウムなどの金属の蒸着膜層、あるいはアルミニウムなどの金属箔もガスバリア層として有効ではあるが、電子レンジでの加熱調理には、高周波によるスパークなどが発生するために不適当である。
【0085】
ガスバリアフィルムの場合、ガスバリア層は無機化合物の蒸着層、コーティング層で構成することができ、プラスチックフィルムにアンカーコートを設けた後、蒸着層、コーティング層を順次設ける。
【0086】
ガスバリアフィルムのアンカーコート層には、例えばウレタンアクリレートを用いることができる。アンカーコート層の形成には、樹脂を溶媒に溶解した塗料をグラビアコーティングなど印刷手法を応用したコーティング方法を用いるほか、一般に知られているコーティング方法を用いて塗膜を形成することができる。
【0087】
蒸着膜層を形成する方法としては,SiOやAlOなどの無機化合物を真空蒸着法を用いて、アンカーコート層を設けたプラスチックフィルム上にコーティングし、真空蒸着法による無機化合物層を形成することができる。ちなみに蒸着層の厚みは15nm~30nmが良い。
【0088】
コーティング層を形成する方法としては、水溶性高分子と、(a)一種以上のアルコキシドまたはその加水分解物、または両者、あるいは(b)塩化錫の、少なくともいずれかひとつを含む水溶液あるいは水/アルコール混合水溶液を主剤とするコーティング剤をフィルム上に塗布し、加熱乾燥してコーティング法による無機化合物層を形成しコーティング層とすることができる。このときコーティング剤にはシランモノマーを添加しておくことによってアンカーコート層との密着の向上を図ることができる。
【0089】
無機化合物層は真空蒸着法による塗膜のみでもガスバリア性を有するが、コーティング法による無機化合物層であるコーティング層を真空蒸着法による無機化合物層である蒸着層に重ねて形成し、ガスバリア層とすることができる。
【0090】
これら2層の複合により、真空蒸着法による無機化合物層とコーティング法による無機化合物層との界面に両層の反応層を生じるか、或いはコーティング法による無機化合物層が真空蒸着法による無機化合物層に生じるピンホール、クラック、粒界などの欠陥あるいは微細孔を充填、補強することで、緻密構造が形成される。
【0091】
そのため、ガスバリアフィルムとしてより高いガスバリア性、耐湿性、耐水性を実現するとともに、外力による変形に耐えられる可撓性を有するため、包装材料としての適性も具備することができる。
【0092】
またガスバリア層として、たとえばSiOを用いる場合にはその被膜は透明であるために、内容物をパウチの外側から目で見ることが可能である。これらは、用途、要求品質によって適宜使い分けをすればよい。
【0093】
また、積層体のプラスチックフィルム層のポリエチレンテレフタレートフィルムは、中取りポリエチレンテレフタレートフィルムとすることが可能である。
【0094】
この場合には、選択的に中取りポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることによって、延伸バランスの取れた部分を使うことができるために、開封予定線に沿って胴部の積層体を直線的に切り裂いて開封しようとする際にも、切り裂きの方向が大きくずれる、いわゆる又裂きなどの不具合を防止することに効果的である。
【0095】
また、積層体の中間フィルム層に、パウチ胴部の水平方向に直線カット性を有するポリアミドフィルムをさらに設けることが可能である。
【0096】
この場合には、積層体中にポリアミドフィルム層を加えることによって、耐突き刺し性などの機械的強度の控除を図ることができる一方で、切り裂きの直線性などを阻害する恐れがない。
【0097】
また、積層体の中間フィルム層のポリエチレンテレフタレートフィルムには、パウチ胴部の前記開封予定線に沿って、傷加工線を設けることができる。
【0098】
この場合には、中間フィルム層に直接的に傷加工線を設けることによって、引き裂きによる開封においていても、直線カット性を補助する機構とすることができるため、より容易、かつ安定した直線性を実現することに効果的である。
【0099】
また、傷加工線は、ミシン加工、もしくはハーフカット加工で設けることができる。これにより、直線カット性を補助する機構とすることができるため、さらに容易で、かつさらに安定した直線性を実現することに効果的であり、傷加工の生産性も優れている利点を有する。
【0100】
そのほか、必要に応じて、商品としてのイメージアップや、内容物についての必要な情報表示や意匠性の向上を目的として、積層体中の、パウチ外側から見える層に印刷層を設けることができる。印刷層はパウチの最外層に設けるのでもよい。
【0101】
また印刷層は、パウチの一部に設けるのでもよく、またパウチの全面に渡って設けるのでもよい。あるいは、印刷層を用いずに表示部を設ける方法としては、たとえばパウチの表面に印刷されたシールを貼着することも可能である。
【0102】
ここで、印刷方法、および印刷インキには、とくに制約を設けるものではないが、既知の印刷方法の中からプラスチックフィルムへの印刷適性、色調などの意匠性、密着性、食品容器としての安全性などを考慮すれば適宜選択してよい。
【0103】
たとえば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、グラビアオフセット印刷法、フレキソ印刷法、シルクスクリーン印刷法、インクジェット印刷法などの既知の印刷方法から選択して用いることができる。中でもグラビア印刷法は、生産性、プラスチックフィルムへの印刷適性、および絵柄の高精細度において好ましく用いることができる。
【0104】
このようにして、本発明によれば、電子レンジによる内容物の加熱調理が可能な、自立性を有するパウチにおいて、加熱調理によって内容物から発生する水蒸気を、外部に排出することが可能な自動蒸気抜き機構を備え、開封に際しては開封が容易で、かつ切り口の直線性に優れ、また開封口の開口形状の保持が可能なスタンディングパウチの提供が可能である。
【実施例0105】
以下本発明を、実施例1~実施例4、および比較例1~比較例2によって、また図を用いて、更に具体的な説明を加える。ただし本発明によるスタンディングパウチは、ここに示す例にのみ限定されるものではない。本発明は、請求項によって限定されるものである。
【0106】
図3は本発明に関わるスタンディングパウチの実施例、および比較例の説明をするための、外観形状および寸法を示す平面模式図である。
【0107】
スタンディングパウチの実施例1~実施例4、および比較例1~比較例2に基づいて積層体作成パウチを製袋して評価用サンプルとした。
すなわち、スタンディングパウチの寸法は
縦158mm×横150mm
とした。
【0108】
パウチは、自動蒸気抜き機構(12)を備えている。この自動蒸気抜き機構(12)は、実施例1~実施例4、および比較例1~比較例2、において共通であって、
図3に向かって右上の、側端部(2)のシール部において、パウチ内側に向けて凸となったシールの屈曲部である。
【0109】
また切込み(8)は自動蒸気抜き機構(12)に相対する側端部(2)のシール部に設けられており、それに連続して水平方向が開封予定線(5)が設けられている。開封のための切り裂き方向は、
図3において太い矢印で示すように、
図3に向かって左から右に向かう方向である。
【0110】
評価用に作成した、スタンディングパウチに内容物を収容し、密封してのち電子レンジによる加熱調理を行い、評価した。
【0111】
収容する内容物は肉団子とした。
【0112】
また電子レンジによる加熱調理後において、評価を行った。
【0113】
評価項目は下記のとおりである。
・電子レンジ加熱調理適性
・開封時のカット性
・開封時の又裂きの有無:(中程度以上を×評価とした)
・開封後の外観。
【0114】
<実施例1>
図4は、本発明に関わるスタンディングパウチの実施例1を説明するための、パウチを構成する積層体の部分断面模式図である。
【0115】
積層体(50)の層構成は下記のとおりである。
透明無機化合物蒸着被膜付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)(30)/直線カット性を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)(33)/直線カット性耐熱無延伸ポリプロピレン樹脂層(厚さ60μm)(34)。
【0116】
なお、透明無機化合物蒸着被膜付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)(30)は、ポリエチレンテレフタレートフィルム(31)と、透明無機化合物蒸着被膜(32)とからなる。
【0117】
<実施例2>
図5は、本発明に関わるスタンディングパウチの実施例2を説明するための、パウチを構成する積層体の部分断面模式図である。
【0118】
積層体(51)の層構成は下記のとおりである。
透明無機化合物蒸着被膜付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)(30)/直線カット性を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)ミシン加工付き(35)/直線カット性耐熱無延伸ポリプロピレン樹脂層(厚さ60μm)(34)。
【0119】
すなわち、実施例1に加えて、さらに中間フィルム層にミシン加工(38)を設けたものである。
【0120】
<実施例3>
図6は、本発明に関わるスタンディングパウチの実施例3を説明するための、パウチを構成する積層体の部分断面模式図である。
【0121】
積層体(52)の層構成は下記のとおりである。
透明無機化合物蒸着被膜付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)(30)/直線カット性を有するポリアミドフィルム(厚さ15μm)(40)/直線カット性を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)(33)/直線カット性耐熱無延伸ポリプロピレン樹脂層(厚さ60μm)(34)。
【0122】
すなわち、実施例1に加えて、さらに直線カット性を有するポリアミドフィルム(厚さ15μm)(40)を、透明無機化合物蒸着被膜付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)(30)と、直線カット性を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)(33)との間に加えたものである。
【0123】
<実施例4>
図7は、本発明に関わるスタンディングパウチの実施例4を説明するための、パウチを構成する積層体の部分断面模式図である。
【0124】
積層体(53)の層構成は下記のとおりである。
透明無機化合物蒸着被膜付き中取りポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)(36)/直線カット性を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)(33)/直線カット性耐熱無延伸ポリプロピレン樹脂層(厚さ60μm)(34)。
【0125】
すなわち、実施例1の透明無機化合物蒸着被膜付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)に、「中取り」のグレードである、中取りポリエチレンテレフタレートフィルム(37)を用いたものである。
【0126】
<比較例1>
図8は、本発明に関わるスタンディングパウチの比較例1を説明するための、パウチを構成する積層体の部分断面模式図である。
【0127】
積層体(54)の層構成は下記のとおりである。
透明無機化合物蒸着被膜付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)(30)/ポリアミドフィルム(厚さ15μm)(41)/直線カット性耐熱無延伸ポリプロピレン樹脂層(厚さ60μm)(34)。
【0128】
すなわち、シーラント層に隣接する中間フィルム層として、ポリアミドフィルム(厚さ
15μm)(41)を用いたものである。このポリアミドフィルム(厚さ15μm)(41)は、直線カット性は有していない。したがって、この中間フィルム層の部分は本発明による、積層体の構成を逸脱する部分である。
【0129】
<比較例2>
図9は、本発明に関わるスタンディングパウチの比較例2を説明するための、パウチを構成する積層体の部分断面模式図である。
【0130】
積層体(55)の層構成は下記のとおりである。
透明無機化合物蒸着被膜付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)(30)/直線カット性を有するポリアミドフィルム(厚さ15μm)(40)/耐熱無延伸ポリプロピレン樹脂層(厚さ60μm)(39)。
【0131】
すなわち、シーラント層に、直線カット性を考慮していない、耐熱無延伸ポリプロピレン樹脂層(厚さ60μm)(39)を用いたものである。したがってこのシーラント層の部分は本発明による、積層体の構成を逸脱する部分である。
【0132】
実施例1~実施例4、および比較例1~比較例2の評価結果を表1に示す。
【0133】
【0134】
表1に示す結果から見て取れるように、本発明によるスタンディングパウチである実施例1~実施例4については、電子レンジ加熱調理適性において、また開封時にカット性において、いずれも良好な結果であって、比較例1~比較例2と比べて大きな差異は認められない結果である。
【0135】
しかしながら、本発明によるスタンディングパウチである、実施例1~実施例4については、開封時の又裂きの発生において、また開封後の外観において、本発明によるスタンディングパウチの積層体の構成を逸脱した比較例1~比較例2に比べて、明らかに優位性がみられる。
【0136】
したがって本発明によれば、電子レンジによる内容物の加熱調理が可能な、自立性を有するパウチにおいて、加熱調理によって内容物から発生する水蒸気を、外部に排出することが可能な自動蒸気抜き機構を備え、開封に際しては開封が容易で、かつ切り口の直線性に優れ、また開封口の開口形状の保持が可能な、スタンディングパウチの提供が可能であることを検証した結果となっている。
【0137】
続いて、実施例1~実施例4、および比較例1~比較例2について、個々に考察を加える。
【0138】
実施例1は、電子レンジ加熱調理適性、開封時のカット性、開封時の又裂き、開封後の外観のすべての評価項目について〇評価である。
【0139】
これは、積層体(50)の層構成において、
直線カット性を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)、および直線カット性耐熱無延伸ポリプロピレン樹脂層(厚さ60μm)を有していることによって、開封時のカット性、開封時の又裂き、開封後の外観において、優れる結果を得られたと考えられる。
【0140】
実施例2は、電子レンジ加熱調理適性、開封時のカット性、開封時の又裂き、開封後の外観のすべての評価項目について〇評価である。
【0141】
これは積層体(51)の層構成において、
直線カット性を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)ミシン加工付き/直線カット性耐熱無延伸ポリプロピレン樹脂層(厚さ60μm)を有していることによって、開封時のカット性、開封時の又裂き、開封後の外観において、優れる結果を得られたと考えられる。
【0142】
また、比較例1に比べて、ミシン目加工を加えてあることによっても、開封時のカット性、開封時の又裂きに対して、より安定化に効果的であると考えられる。
【0143】
実施例3は、電子レンジ加熱調理適性、開封時のカット性、開封時の又裂き、開封後の外観のすべての評価項目について〇評価である。
【0144】
これは積層体(52)の層構成において、
直線カット性を有するポリアミドフィルム(厚さ15μm)/直線カット性を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)/直線カット性耐熱無延伸ポリプロピレン樹脂層(厚さ60μm)を有しており。これらは各々直線カット性を有するので、開封時のカット性、開封時の又裂き、開封後の外観において、優れる結果を得られたと考えられる。
【0145】
開封時のカット性、および開封後の外観においては、実施例1とは若干の差が認められたが、これはポリアミドフィルム層を含んでいるためと思われるが、評価結果においては、〇であり実用範囲である。
【0146】
すなわち、ポリアミドフィルム層を付加することにより、耐突き刺し性などの機械的強度を向上させているにもかかわらず、ポリアミドフィルム自身が直線カット性を有するために、積層体全体としては開封時のカット性、開封時の又裂き、開封後の外観において、優れる結果を得られたと考えられる。
【0147】
実施例4は、電子レンジ加熱調理適性、開封時のカット性、開封時の又裂き、開封後の外観のすべての評価項目について〇評価である。
【0148】
これは積層体(53)の層構成において、
中取り透明無機化合物蒸着被膜付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)を用いており、実施例1に加えてさらに、中取りポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ12μm)によって、安定した直線カット性を実現し、その効果が出たものと考えられる。したがって、開封時のカット性、開封時の又裂き、開封後の外観において、優れる結果を得られたと考えられる。
【0149】
比較例1は、電子レンジ加熱調理適性、開封時のカット性、開封時の又裂き、開封後の外観のうち、開封時の又裂き、開封後の外観において×評価である。
【0150】
これは積層体(54)の層構成において、
ポリアミドフィルム(厚さ15μm)を含んでおり、この層には直線カット性は付与されていないために、積層体全体として、開封時の又裂きが発生しその結果、開封後の外観を損ねたものと考えられる。
【0151】
比較例2は、電子レンジ加熱調理適性、開封時のカット性、開封時の又裂き、開封後の外観のうち、開封時の又裂き、開封後の外観において×評価である。
【0152】
これは積層体(55)の層構成において、
シーラント層に当たる部分が、耐熱無延伸ポリプロピレン樹脂層(厚さ60μm)を用いたものであり、この層自体には直線カット性は付与されていないために、積層体全体として、開封時の又裂きが発生し、その結果開封後の外観を損ねたものと考えられる。
【0153】
このように、本発明によれば、電子レンジによる内容物の加熱調理が可能な、自立性を有するパウチにおいて、加熱調理によって内容物から発生する水蒸気を、外部に排出する
ことが可能な自動蒸気抜き機構を備え、開封に際しては開封が容易で、かつ切り口の直線性に優れ、また開封口の開口形状の保持が可能な、スタンディングパウチの提供が可能であることを検証することができた。