(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023119058
(43)【公開日】2023-08-25
(54)【発明の名称】温度管理の改善された二次電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/658 20140101AFI20230818BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230818BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230818BHJP
H01M 10/643 20140101ALI20230818BHJP
H01M 10/6567 20140101ALI20230818BHJP
H01M 10/6561 20140101ALI20230818BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/643
H01M10/6567
H01M10/6561
【審査請求】有
【請求項の数】37
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023113260
(22)【出願日】2023-07-10
(62)【分割の表示】P 2021026515の分割
【原出願日】2018-02-07
(31)【優先権主張番号】62/456,502
(32)【優先日】2017-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519289224
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・ユーエスエイ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES USA CORP.
【住所又は居所原語表記】Two Tower Center Boulevard,Suite 1601,East Brunswick,NJ 08816 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バージニア・オニール
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・ハンリー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・キハラ
(72)【発明者】
【氏名】リーアン・ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジョン・ワトソン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ポール・ティモンズ
(57)【要約】
【課題】好適な温度管理を可能とし、今もなお待望されている、無制御な熱イベントに起因する人的及び物的リスクを最小化する新規電池パックを提供すること。
【解決手段】本発明は、純電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HEV)に有用な、改善された温度管理を備えた新規二次電池パック、またはその他の乗り物用バッテリーのための電池パックに関し、より具体的には、二次電池パックを断熱し、さらに、電池パック内の熱暴走の伝播を最小化するための特定材料の使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池パックであって、
・相互に電機的に接続された複数の電池セル103が内部に配置された、少なくとも1つの電池モジュールケーシング102、並びに
・シリコーンゴムバインダー及び中空ガラスビーズを含むシリコーンゴムシンタクチックフォームであって、前記電池モジュールケーシング102のオープンスペースを部分的に若しくは完全に満たし且つ/又は前記電池セル103を部分的に若しくは全体的に覆い且つ/又は前記モジュールケーシング102を部分的に若しくは全体的に覆う前記シリコーンゴムシンタクチックフォーム
を含み、
前記シリコーンゴムシンタクチックフォームが、過酸化物硬化型オルガノポリシロキサン組成物X又は縮合型オルガノポリシロキサン組成物Xを硬化することにより得られる、前記二次電池パック。
【請求項2】
前記電池モジュールケーシング102を覆う蓋をさらに含む、請求項1に記載の二次電池パック。
【請求項3】
電池セル103が、リチウムイオン型である、請求項1又は2に記載の二次電池パック。
【請求項4】
電池セル間の2つ以上の境界に配置される複数の熱放散部材、及び前記電池モジュールケーシング102の片側に取り付けられた前記熱放散部材に一体化して相互連結された少なくとも1つの熱交換部材をさらに含み、それにより、前記電池セルの充放電中に前記電池セルから生成された熱が、前記熱交換部材により除去される、請求項1~3のいずれかに記載の二次電池パック。
【請求項5】
熱放散部材が、高い熱伝導率を示す熱伝導材料から作られたものであり、前記熱交換部材が、液体又はガス等の冷却剤が流れることを可能とする1つ又は複数の冷却材チャネルを備える、請求項4に記載の二次電池パック。
【請求項6】
中空ガラスビーズが、中空ホウケイ酸塩ガラス微小球である、請求項1~5のいずれかに記載の二次電池パック。
【請求項7】
前記中空ホウケイ酸塩ガラス微小球が、0.10グラム/立方センチメートル~0.65グラム/立方センチメートルの範囲の真密度を有する、請求項6に記載の二次電池パック。
【請求項8】
前記中空ガラスビーズの添加量が、前記シリコーンゴムシンタクチックフォーム中の最大80体積%までである、請求項1~7のいずれかに記載の二次電池パック。
【請求項9】
前記中空ガラスビーズの添加量が、前記シリコーンゴムシンタクチックフォームの5体積%~70体積%である、請求項1~7のいずれかに記載の二次電池パック。
【請求項10】
前記シリコーンゴムシンタクチックフォームが、少なくとも部分的に前記複数の電池セル103を封入するように前記電池モジュールケーシング102中に配置され、且つ/又は前記電池モジュールケーシング102を少なくとも部分的に封入するように前記電池モジュールケーシング102の外側に配置される、注封材料として使用される、請求項1~9のいずれかに記載の二次電池パック。
【請求項11】
乗り物内に配置される、請求項1~10のいずれかに記載の二次電池パック。
【請求項12】
自動車中に配置される、請求項1~10のいずれかに記載の二次電池パック。
【請求項13】
純電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HEV)中に配置される、請求項1~10のいずれかに記載の二次電池パック。
【請求項14】
航空機、ボート、大型船、列車又はウォールユニット中に配置される、請求項1~10のいずれかに記載の二次電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、特許協力条約に基づいて国際出願されており、2017年2月8日に出願された米国特許仮出願第62/456,502号の優先権を主張する。この仮出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、新規二次電池パック、特に、長期間にわたる限界温度の条件下での使用を可能とする改善された温度管理機能を備えた、リチウムイオン電池セルを含む二次電池パックに関する。より具体的には、本発明は、二次電池パックを断熱し、さらに、電池パック内のサーマルエクスカーション(thermal excursions;温度逸脱)の伝播を最小化するための特定材料の使用に関する。二次電池パックは、純電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HEV)、又はその他の乗り物用バッテリーとして使用し得る。
【背景技術】
【0003】
電池は、一次電池と二次電池とに大きく分類される。一次電池はまた、使い捨て型電池とも呼ばれ、枯渇するまで使用されることが意図され、枯渇後、それらは1つ又は複数の、新しい電池と単純に交換される。二次電池は、より一般的には、再充電式電池と呼ばれ、繰り返して再充電及び再利用でき、そのために、使い捨て型電池に比べて、経済的、環境的及び使い勝手の良さの利益を提供する。二次電池の例には、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-金属ハイブリッド電池、ニッケル-水素電池、リチウム二次電池、等が挙げられる。
【0004】
二次電池、特にリチウムイオン電池は、重要なエネルギー貯蔵技術として登場し、今や、家庭用電子機器、産業、輸送、及び電力貯蔵用途のための主要部をなす技術である。
【0005】
それらの高い可能性並びに高エネルギー及び出力密度、また、それらの良好な寿命に起因して、今日では、二次電池は、ハイブリッド電気自動車(HEV)、バッテリー式電気自動車(BEV)及びプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の電動式の乗り物に対し、より長い運転距離及び好適な加速を提供できるので、特に、自動車産業において、好ましい電池技術である。現在の自動車産業では、種々の大きさ及び形状のリチウムイオン電池セルが製造され、続いて、種々の構成のパックに組み立てられる。自動車用二次電池パックは通常、目的の出力及びキャパシティの必要性に合わせるために、多数の、場合により、数百の、さらには数千の電池セルからなる。
【0006】
しかし、電動モーターの使用は、高エネルギー密度、長い動作寿命、及び広範囲の条件中での動作能力を備えた安価な電池に対する必要性に繋がるので、動力伝達技術におけるこの切り替えは、技術的ハードルがないわけではない。再充電式電池セルは、使い捨て型の電池に勝る多くの利点を提供するが、このタイプの電池に欠点がないわけではない。一般に、再充電式電池に関連する大部分の欠点は、用いる電池化学反応に起因するものである。理由は、これらの化学反応は、一次電池で使用される反応より安定性が低い傾向があるためである。リチウムイオンセル等の二次電池セルは、高温が熱生成発熱反応の引き金となり、温度をさらに上げ、より有害な反応のきっかけとなり得る場合に発生する、温度管理問題を起こす傾向が大きい。このようなイベント中に、大量の熱エネルギーが急速に放出され、セル全体が850℃又はそれを超える温度まで加熱される。この温度上昇を受けたセルの温度上昇のために、電池パック内の隣接するセルの温度も上昇する。これらの隣接するセルの温度を妨げることなく上昇させると、それらのセルは、セル内が極めて高温の受け入れられない状態になり、カスケード効果に繋がり、単電池内での温度上昇の開始が電池パック全体に伝播する可能性がある。その結果、電池パックからの出力は中断し、電池パックを採用している系は、損傷の規模に応じて、及び熱エネルギーの放出に関連して大きな付帯的損害を招く可能性がより高くなる。最悪の場合のシナリオでは、生成した熱の量は、電池及び電池の近くの材料の燃焼に至るのに十分な大きさである。
【0007】
さらに、リチウムイオン電池の特性のために、二次電池パックは、-20℃~60℃の環境温度範囲内で動作する。しかし、この温度範囲内で動作している場合であっても、環境温度が0℃を下回ることがある場合には、二次電池パックは、その充放電容量又は能力を失い始め得る。温度が0℃未満で留まる場合、電池のライフサイクル容量又は充電/放電容量は、環境温度に応じて大きく低下する。それにもかかわらず、環境温度が20℃~25℃の最適環境温度範囲の外側になる場所でリチウムイオン電池が使用されることは避けられない。これらの因子は、乗り物の運転距離を大きく短縮するのみでなく、電池に対する大きな損傷の原因ともなる。より低温での利用可能なエネルギー及び出力の低下は、容量の低下及び内部抵抗の増大が原因である。
【0008】
上記で言及したように、電池又は複数のセルを含む電池では、大きな温度変化が1つのセルから次のセルへと発生し、これが、電池パックの動作にとって有害である。全体電池パックの長寿命を促進するために、セルは、目的の閾値温度未満である必要がある。パック性能を高めるために、二次電池パック中のセル間の温度差は、最小化されるべきである。しかし、周囲の環境への熱経路に応じて、異なるセルは、異なる温度に達することになる。さらに、同じ理由で、充電工程の間に、異なるセルは、異なる温度に到達する。したがって、1つのセルが、他のセルに比べて上昇した温度である場合、その充電又は放電効率は異なることになり、従って、そのセルは、他のセルより早く充電又は放電し得る。これが、全体パックの性能の低下に繋がることになる。
【0009】
多くの手法を採用して、熱問題のリスクの低減、又は熱伝播のリスクの低減が行われてきた。電池パック温度管理システムを開示しているこれらは米国特許第8367233号明細書に見出すことができ、このシステムは、電池パック筐体の少なくとも1つの壁に組み込まれた少なくとも1つの筐体障害ポート(enclosure failure port)を含み、電池パックの正常動作中は、筐体障害ポートは閉じたままであり、電池パック熱イベントの際には開口し、それにより、熱イベント中に生成された、制御された方式で電池パック筐体から排気されるべき熱ガスのための流路を提供する。
【0010】
別の手法は、新しいセル化学反応を開発する、及び/又は既存のセル化学反応を改変することである。さらに別の手法は、セルレベルで追加のシールドを設けて、それにより、隣接するセルに伝播する温度管理問題を起こしているセルからの熱エネルギーの流れを抑制することである。またさらに別の手法は、熱イベントを起こしている電池の位置を電池パック内のその所定の位置に維持し、それにより、隣接セルに対する熱の影響を最小限にするスペーサーアセンブリーを使用することである。
【0011】
サーマルエクスカーションのリスク又はそれらの伝播を低減するための電池パックの断熱も報告されている。例えば、米国特許出願公開第2007/0259258号は、発電機が相互に積層され、この積層体がポリウレタンフォーム(発泡体)に取り囲まれて適切な位置に保持される、リチウム電池発電機について記載している。冷却フィンが2つの発電機の間に挿入される実施形態も開示されている。
【0012】
独国実用新案第202005010708号は、筐体が、閉細孔を有するポリプロピレン又はポリ塩化ビニル等のプラスチックフォームを含む、起動装置鉛酸電気化学発電機及び工業用途向けの電気化学発電機を記載している。
【0013】
米国特許出願公開第2012/0003508号は、リチウム電池電気化学発電機を記載しており、これは、ケーシング;ケーシング中に収容された複数の、それぞれが容器を含むリチウム電気化学発電機;ケーシングの内壁と、それぞれの電気化学発電機の容器の側壁の自由表面との間のスペースを満たす電気絶縁材料から形成された閉鎖細孔を有する剛性難燃性フォーム、を含み、長さ全体にわたり、それぞれの電気化学発電機の容器の側壁の自由表面を覆うフォームは、容器の高さの少なくとも25%である。一実施形態では、フォームは、ポリウレタン、エポキシ、ポリエチレン、メラミン、ポリエステル、ホルモフェノール、ポリスチレン、シリコーン又はこれらの混合物を含む群から選択される材料からなり、ポリウレタン、及びポリウレタンとエポキシの混合物が好ましい。フォームを得るために以下に示す化学的経路を用いた、フォーム形成のためのポリウレタン樹脂の膨張について記載されている。
a)化学的経路経由、すなわち、CO2を生成するイソシアネートに対する水の反応によりポリウレタンを発泡させる;
b)物理的経路経由、すなわち、イソシアネートと水素供与体化合物との発熱反応により生成された熱の作用下での低沸点液体の蒸発、又は
c)空気の注入経由。
【0014】
しかし、例えば、発泡剤の存在下で、ポリイソシアネートと、ポリオール等のイソシアネート反応性材料との反応により通常生成される剛性フォームは、フォームが、熱イベントに関連する何らかの火炎及び爆発の有害作用を最小化するために使用される場合に必要な高圧縮永久歪みを示さない。
【0015】
米国特許第4418127号明細書では、モジュール方式リチウム電池が記載され、これは、複数のセルを有し、セルを出力端子に連結する電気的接続手段、及び排出副産物を化学スクラバーに放出するベント手段を有する。ステンレス鋼セルケーシングは、シンタクチックエポキシフォームと共に、アルミニウムモジュールケースに入れられ、前記フォームは、重量を低減するためにシンタクチックの性質であり、その中に組み込まれた、ガラス容器及びセラミックスからなる群より選択される組成物、及び引火性を低減する添加剤から構成される微小中空球を有する。
【0016】
新たに出現した電気乗り物分野における別の大きな問題は、モーター、自動化されたマニュアルトランスミッション、シャフト、及び乗り物を駆動するために、速度を制御し、より大きなトルクを生成する最終的駆動装置を備えたホイールを組み込んだ、動力伝達系の使用に関連している。従来の燃料消費型乗り物に比べて、主たる差異は、電気自動車にはクラッチ又は液圧トルク変換器がなく、そのため、モーター及び動力伝達装置が機械的に直接結合されるので、全体システム構成は、本質的に柔軟性が小さいことである。この構成は、外乱を抑制し、周期的変動を回避できる受動的減衰効果がほとんどなく、これは、主として、低速度領域で走行している間に顕著である。実際に、主たる音は、高周波数の甲高い音のノイズを生成する磁気ノイズである。電動モーターのみで走行している乗り物では、低周波数の妨害音は少ないであろう。これは、その他のノイズ、例えば、電池のための液体又は空気冷却/加熱等の部品ノイズに対する要件を、それに応じて変更しなければならないことを意味する。坂道を下るときの再生(電池充電)中のノイズもまた、重要である。したがって、従来の乗り物に比べて、電気自動車における低減衰及び受動減衰装置の欠如に起因して、動力伝達系周期的変動を最小化するための減衰制御戦略が必要である。
【0017】
電池パック全体にわたる熱侵入及び熱エネルギー伝播のリスクを下げることを試みる多くの手法が採用されてきたが、パックレベル熱イベントが発生する場合、人的リスク及び物的リスクが最小化されることが重要である。電池中のセルの数が増えるに従い、また、セルのサイズが増大するに伴い、好適な温度管理を備えることの必要性及びそれによる利益が重要である。
【0018】
さらに、電池セル、特に、リチウムイオン電池を、天候が-20℃及びさらに低い温度にもなり得る、極低温に達する場合に遭遇する低温の有害作用から良好に遮断することが依然として必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第8367233号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0259258号
【特許文献3】独国実用新案第202005010708号
【特許文献4】米国特許出願公開第2012/0003508号
【特許文献5】米国特許第4418127号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
前記に鑑みて、本発明の重要な目的の1つは、好適な温度管理を可能とし、今もなお待望されている、無制御な熱イベントに起因する人的及び物的リスクを最小化する新規電池パックを提供することである。
【0021】
本発明の別の重要な目的は、動力伝達系の周期的変動を最小化する減衰制御を提供し、使用中の電池から生ずるノイズの伝播の制御において良好な効率をもたらす新規電池パックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明では、請求された二次電池パックが、無制御サーマルエクスカーションに関連する前記問題に対処すること、特に、リチウム電池に対し、効果的な低温断熱特性を提供すること、及び動力伝達系の周期的変動を最小化するための減衰制御戦略を提供することが探求される。
【0023】
全てのこれらの目的は特に、本発明によって達成される。本発明は、下記を含む二次電池パックに関連する:
・相互に電気的に接続された複数の電池セル103が内部に配置された、少なくとも1つの電池モジュールケーシング102、
・シリコーンゴムバインダー及び中空ガラスビーズを含むシリコーンゴムシンタクチックフォームであって、前記電池モジュールケーシング102のオープンスペースを部分的に若しくは完全に満たし且つ/又は前記電池セル103を部分的に若しくは全体的に覆い且つ/又は前記モジュールケーシング102を部分的に若しくは全体的に覆う、前記シリコーンゴムシンタクチックフォーム、並びに
・随意としての、電池モジュールケーシング102を覆う蓋。
【0024】
この目的を達成するために、出願者は、きわめて驚くべきことに、また、意外にも、中空ガラスビーズを含むシンタクチックフォームのためのバインダーとしてのシリコーンゴムの選択により、有機ゴムシンタクチックフォームを用いた類似の電池では解決されなかった問題を克服することが可能となることを示した。
【0025】
本明細書で使用される場合、「シリコーンゴム」という用語は、任意の架橋性シリコーン組成物の架橋生成物を含む。「シリコーンゴムシンタクチックフォーム」は、分散した中空ガラスビーズを内部に含むシリコーンゴムから作られたマトリックスを意味する。
【発明の効果】
【0026】
さらに、電気自動車の充電間の運転距離は、周囲温度で計算されることはよく知られている。電気自動車の運転者は、極寒の温度により利用可能な走行距離が減ることを知らされている。この低下は、車内を電気的に加熱することのみが原因ではなく、低温中に容量を低減させる、電池の電気化学反応の固有の遅延も原因である。従って、前記シンタクチックフォーム内のバインダーとしてのシリコーンゴムの特定の選択により、凝固点近傍又はそれ未満の低温において、前記フォームが優れた断熱性を示すことが可能となる。
【0027】
シンタクチックフォームのために、有機ゴムバインダーに比べてシリコーンゴムバインダーを使用する別の利点は、脆化(延性の消失)点により例示され得、この脆化点は、本発明によるバインダーの-60℃~-70℃に比べて、典型的な有機ゴムバインダーで-20℃~-30℃である。
【0028】
別の利点はまた、有機ゴムバインダーが脆性になる温度でもシリコーンゴムバインダーが効果を持続する、弾性等の物理学的性質に関連する。
【0029】
本発明によるシリコーンシンタクチックフォームを用いることの別の利点は、これが極めて低い水吸収性であり、それにより、セルの最適使用のために、望ましくない水から電池セルを完全に隔離することである。実際に、シリコーンシンタクチックフォームとは対照的に、標準的シリコーンフォームは、吹き込まれた気泡のみを含み、全体的に又は少なくとも一部で相互に結合した空隙を有し、そのため、水を吸収し、拡散させる能力を有し、この特徴により、電池パックが、多くの場合、乗り物の下に、又は乗り物のフロアに配置されるため、雨中の走行条件ではこのような材料で問題を生じる可能性があり、電気自動車内でのその使用を困難にする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】パックの内側に電池を有する、蓋のない二次電池パックの平面図である。
【
図2】パックの内側に電池を有する二次電池パックの斜視図である。
【
図3】パック中の電池間のスペース及び残りのスペースを満たしている本発明によるシリコーンゴムシンタクチックフォームを有する二次電池パック中の電池の平面図である。
【
図4】本発明によるシリコーンゴムシンタクチックフォームで覆われ、前記フォームがパック中の電池間のスペース及び残りのスペースを満たしている二次電池パック中の電池セルの正面図である。
【
図5】抑制剤マスターバッチMI及び触媒マスターバッチMCが、硬化速度を制御するように別々に他の成分中に供給される、付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xの製造方法の好ましい実施形態の概略図である。
【
図6】抑制剤マスターバッチMI及び触媒マスターバッチMCが、硬化速度を制御するように別々に他の成分中に供給される、付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xの製造方法の好ましい実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
温度の差異が、抵抗、電池セルの自己放電率、クーロン効率、並びに不可逆容量及び出力劣化率、広範囲にわたる化学反応に影響を与えるので、本発明による二次電池パックは、電池パック又はモジュール中の全てのセルに対し均一な熱的条件を可能にする。セルの充電アンバランス状態及び非欠陥セルの早期故障の可能性がさらに最小化される。
【0032】
好ましい実施形態では、前記シリコーンゴムシンタクチックフォームは、少なくとも部分的に前記複数の電池セル103を封入するように前記電池モジュールケーシング102中に配置される、及び/又は前記電池モジュールケーシング102を少なくとも部分的に封入するように電池モジュールケーシング102の外側に配置される、注封材料として使用される。
【0033】
実際に、シリコーンゴムシンタクチックフォームは、前記電池モジュールケーシングのオープンスペースを部分的に又は完全に満たす及び/又は前記電池セルを部分的に又は全体的に覆う。シリコーンゴムバインダーは、広範な温度範囲にわたり(例えば、-70℃~200℃)、機械的な可撓性及び熱安定性を有するシンタクチックフォームを提供する。さらに、熱過剰の温度(850℃まで)でのシリコーンゴムバインダーの二酸化ケイ素及び酸化ケイ素への分解は、大量の熱を吸収する。したがって、単位セルからの隣接単位セルへの熱拡散は、前記シリコーンゴムシンタクチックフォームである断熱障壁により効果的に遮断される。サーマルエクスカーションは、全体電池モジュールを通して伝播せず、従って、使用者の安全性を脅かすことは防止される。さらに、電池モジュールケーシング中に配置された制御回路を備えた一部の電池モジュールに対して、本開示のシリコーンゴムシンタクチックフォームを、電池セルと回路基板との間、及び電池セルとコネクティング回路との間に配置して、回路基板及び回路により引き起こされる電池加熱問題を低減できる。
【0034】
シリコーン配合物は、中空ガラスビーズを含み、好ましい実施形態では、前記中空ガラスビーズは、パック中の電池又は電池群で発生する熱イベントの温度に類似の融点を有し、それにより、加熱によりガラスが軟化及び融解して、熱移動を低減し、過熱電池の周りの他の電池を保護する。
【0035】
好ましい実施形態では、前記電池セル103は、リチウムイオン型である。
【0036】
別の好ましい実施形態では、本発明による二次電池パックは、電池セル間の2つ以上の境界に配置される複数の熱放散部材、及び電池モジュールケーシング102の片側に取り付けられた熱放散部材に一体化して相互連結された少なくとも1つの熱交換部材をさらに含み、そのため、電池セルの充放電中に電池セルから生成された熱は、熱交換部材により除去される。これは、電池セル間にスペースがなくても、又は非常に僅かな電池セル間のスペースであっても、従来の冷却システムよりも高い効率で電池セルの冷却を可能とし、それにより、二次電池パックの熱放散効率を最大化し、前記二次電池パック内の空きスペースをさらに制限することを可能とする。
【0037】
別の好ましい実施形態では、本発明による熱放散部材は、高い熱伝導率を示す熱伝導材料から作られ、熱交換部材は、液体又はガス等の冷却剤が流れることを可能とする1つ又は複数の冷却材チャネルを備える。
【0038】
本発明による熱放散部材は、それぞれの熱放散部材が、高い熱伝導率を示す金属板等の熱伝導材料から作られる限りにおいて、特に制限されない。
【0039】
好ましくは、熱交換部材は、冷却剤が通過することを可能とする1つ又は複数の冷却材チャネルを備える。例えば、水等の液体冷却剤が通過することを可能とする冷却材チャネルは、熱交換部材で形成し、それにより、従来の空冷構造に比べて、高い信頼性を有する優れた冷却効果を可能とし得る。
【0040】
別の好ましい実施形態では、本発明による二次電池パックは、冷却剤入口マニホルド、冷却剤出口マニホルド及び入口と出口マニホルドとの間に延在する熱放散部材としての複数の熱交換管をさらに含み、前記熱交換管が電池セル間の1つ又は複数の境界に配置され、電池セルの充放電の間に電池セルから生成された熱の交換のために通過する冷却剤を有する。
【0041】
中空ガラスビーズは、本発明のシンタクチックフォーム中に用いられ、フォームの密度を低減するように機能する。中空ガラスビーズ、及び特に、中空ガラス微小球は、本出願に好適する。理由は、優れた等方性圧縮強度を有することに加えて、それらは、あらゆる充填剤中の最小密度を有し、高い圧縮強度のシンタクチックフォームの製造に有用となるであろう。高い圧縮強度と低密度の組み合わせは、中空ガラス微小球を本発明による多数の利点を備えた充填剤にする。
【0042】
一実施形態では、中空ガラスビーズは、ガラスバブル又はガラスマイクロバブルとして知られる中空ホウケイ酸塩ガラス微小球である。
【0043】
別の実施形態では、中空ホウケイ酸塩ガラス微小球は、0.10グラム/立方センチメートル(g/cc)~0.65グラム/立方センチメートル(g/cc)の真密度を有する。
【0044】
用語の「真密度」は、ガスピクノメーターにより測定して、ガラスバブル試料の質量を、その質量のガラスバブルの真の体積で除算することにより得られる商である。「真の体積」は、ガラスバブルのかさ容積ではなく、ガラスバブル集合体の総体積である。
【0045】
別の実施形態では、中空ガラスビーズの量は、シリコーンゴムシンタクチックフォーム中の、又は下記に記載の前記シリコーンゴムシンタクチックフォームの液状架橋性シリコーン組成物前駆体の最大80体積%添加量まで、及び特に好ましくは、シリコーンゴムシンタクチックフォームの、又は以下に記載の前記シリコーンゴムシンタクチックフォームの液状架橋性シリコーン組成物前駆体の5体積%~70体積%である。
【0046】
好ましい実施形態では、中空ガラスビーズは、3M社から販売されている3M(商標)Glass Bubbles Floated Series (A16/500、G18、A20/1000、H20/1000、D32/4500及びH50/10,000EPXガラスバブル製品)及び3M(商標)Glass Bubbles Series(例えば、限定されないが、K1、K15、S15、S22、K20、K25、S32、S35、K37、XLD3000、S38、S38HS、S38XHS、K46、K42HS、S42XHS、S60、S60HS、iM16K、iM30Kガラスバブル製品)から選択される。前記ガラスバブルは、1.72メガパスカル(250psi)~186.15メガパスカル(27,000psi)の範囲の種々の圧壊強度(最初の複数のガラスバブルの10体積%が圧壊される強度)を示す。その他の3Mにより販売されているガラスバブル、例えば、3M(商標)Glass Bubbles - Floated Series、3M(商標)Glass Bubbles - HGS Series及び3M(商標)Glass Bubbles with Surface Treatmentも、本発明に従って使用することができる。
【0047】
好ましい実施形態では、前記ガラスバブルは、1.72メガパスカル(250psi)~186.15メガパスカル(27000psi)の範囲の圧壊強度(最初の複数のガラスバブルの10体積%が圧壊される強度)を示すものから選択される。
【0048】
特に好ましい実施形態では、中空ガラスビーズは、3M(商標)Glass Bubbles series S15、K1、K25、iM16K、S32及びXLD3000から選択される。
【0049】
空きスペースを本発明によるシリコーンゴムシンタクチックフォームで満たすために、次記が可能である:
a)本発明による中空ガラスビーズを含むシリコーンゴムシンタクチックフォームの液状架橋性シリコーン組成物前駆体を使用すること、これは、注入又はフリーフロー後、空きスペースを満たし、架橋により硬化する、
b)又は、機械加工した又は予め成形した、組立て時にケーシング中に挿入される、中空ガラスビーズ含有シリコーンゴムシンタクチックフォームブロックを使用すること。
【0050】
中空ガラスビーズを含むシリコーンゴムシンタクチックフォームの液状架橋性シリコーン組成物前駆体の電池への使用は、シリコーンフォームの標準的液状架橋性シリコーンに比べて、その充填を容易にする。理由は、標準的フォームの発泡工程の場合、吹き込み気泡を生成し、これは、全体的に又は少なくとも一部で相互に結合した空隙を有し、これが、得られたシリコーンフォーム内に多くの欠陥、及び充填問題を引き起こすためである。
【0051】
実際には、標準的シリコーンフォームは、いくつかの方法により、例えば、熱的に分解可能な発泡剤の添加により、又は成形及び硬化と同時に水素ガス副産物を生成することにより、得られる。熱的に分解可能な発泡剤の添加方法では、分解ガスの毒性及び臭気が問題となる。硬化ステップ中に水素ガス副産物を利用する方法は、潜在的水素ガスの爆発及び貯蔵時の未硬化組成物の注意深い取扱等の問題がある。さらに、ガス生成法は、制御された均一な隔室を形成するのが困難である。
【0052】
膨張性シリコーンゴムシンタクチックフォームの使用は、膨潤圧力が充填される全ての空洞及びくぼみの形状中にフォームを押し込むので、電池パック内の空きスペースの充填が容易である。また、この方法は、予め製造されたブロックを用いた場合には可能ではない、任意の形状を満たすことを可能とする。
【0053】
本発明によるシンタクチックフォーム内でバインダーとして使用されるシリコーンゴムは、多くの場合、シリコーンエラストマーと呼ばれ、3~4種の不可欠な成分から構成される。これらの成分は、(i)1種又は複数の反応性シリコーンポリマー、(ii)最終的に1種又は複数の充填剤、(iii)架橋剤、及び(iv)触媒、である。通常、2つの主要タイプのシリコーンゴム組成物が存在し、これらは、熱加硫(HTV)シリコーンゴム及び室温加硫(RTV)シリコーンゴムである。熱加硫又は高温加硫(HTV)シリコーンゴム組成物は、多くの場合、組成物の未硬化粘度に応じて、高粘度ゴム(HCR)又は液状シリコーンゴム(LSR)としてさらに区別される。しかし、いくつかのRTV組成物は、適度な速度で反応を進行させるのに僅かな加熱しか必要ないので、用語の「室温加硫」(RTV)シリコーンゴム組成物は紛らわしい。
【0054】
ガラスビーズが分散されたシリコーンゴムバインダーは、付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物、過酸化物硬化型オルガノポリシロキサン組成物又は縮合型オルガノポリシロキサン組成物を硬化することにより得られる。
【0055】
このようなシリコーン組成物は、シリコーン分野の当業者には周知である。付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、好ましくは、(1)100重量部の、分子中にケイ素原子に結合した少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、(2)0.1~50重量部の、分子中に、ケイ素原子に結合した少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの水素原子(すなわち、SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、及び(3)触媒量の付加反応触媒、を主に含むものとして定義される。過酸化物硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、好ましくは、(1)100重量部の、分子中にケイ素原子に結合した少なくとも2つのアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、及び(2)触媒量の有機過酸化物、を主に含むものとして定義される。重縮合により架橋する縮合型オルガノポリシロキサン組成物は一般に、シリコーンオイル、通常はヒドロキシル末端基を有し、必要に応じ、加水分解性及び凝縮性末端を有するようにシランで事前官能化されたポリジメチルシロキサン、及び架橋剤、重縮合触媒、通常はスズ塩又はアルキルチタネートを含む。
【0056】
好ましい実施形態では、前記シリコーンゴムシンタクチックフォームは、付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xを硬化することにより得られる。この実施形態は、特に、製造環境中で、一液系(縮合型オルガノポリシロキサン組成物)に優るいくつかの利点を提供する。硬化を生じさせるのは、触媒であり、縮合硬化シリコーンの場合のように水分ではないので、付加硬化型の組成物は、断面厚さによる問題は生じない。実際に、それらは、好都合にも、注封、封入及び大型注入成形等の用途に使用される。付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物は、反応副産物を放出しないので、密閉環境中で硬化できる。それらの硬化はまた、熱硬化により大きく加速できるが、硬化は、加熱の必要なしに、抑制剤及び/又は触媒の量を調節することにより、周囲温度の20℃(+/-5℃)で容易に行うことができ、これは、90℃を超える温度が必要な過酸化物硬化に比べて大きな利点である。
【0057】
別の好ましい実施形態では、付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xは、次記を含む:
a)ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンAであって、前記アルケニル基がそれぞれ2~14個の炭素原子を含み、好ましくは前記アルケニル基は、ビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル及びテトラデセニルからなる群から選択され、特に好ましくは前記アルケニル基はビニル基である、オルガノポリシロキサンA、
b)1分子当たり、ケイ素に結合した少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つの水素原子を有する、少なくとも1種のケイ素化合物B、
c)中空ガラスビーズD、及び好ましくは中空ホウケイ酸塩ガラス微小球、
d)ヒドロシリル化触媒C、
e)随意としての、シリコーン組成物の硬化速度を遅らせる少なくとも1種の硬化速度調整剤G、
f)随意としての、ヒドロシリル化反応を介して反応する少なくとも1種の反応性希釈剤E、及び
g)随意としての、顔料、染料、クレー、界面活性剤、水素添加ヒマシ油、ウォラストナイト、アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム、ハロイサイト、ハンタイト ハイドロマグネサイト、膨張性グラファイト、ホウ酸亜鉛、マイカ又はヒュームドシリカ等の少なくとも1種の添加剤H。
【0058】
別の好ましい実施形態では、付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xは、次記を含む:
a)次の式の少なくとも1種のオルガノポリシロキサンA:
【化1】
(ここで、
R及びR”は互いに独立してC
1~C
30炭化水素基より成る群から選択され、好ましくはR及びR”はメチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル及びフェニルより成る群から選択され、特に好ましくはRはメチル基であり、
R’はC
1~C
20アルケニル基であり、好ましくはR’はビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル及びテトラデセニルより成る群から選択され、特に好ましくはR’はビニル基であり、
nは5~1000の値、好ましくは5~100の値を有する整数である)、
b)ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも2個含む少なくとも1種のケイ素化合物B[好ましくは、2種のケイ素化合物Bの混合物であって、一方がケイ素に結合したテレケリック(telechelic)水素原子を1分子当たり2個含み且つケイ素に結合したペンダント水素原子を含まないものであり、もう一方がケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個含むものである前記混合物]、
c)有効量のヒドロシリル化触媒C、好ましくは白金系ヒドロシリル化触媒C、
d)中空ガラスビーズD、好ましくは中空ホウケイ酸塩ガラス微小球、
e)場合によりそして好ましくは、組成物の粘度を下げるための、ヒドロシリル化反応を介して反応する少なくとも1種の反応性希釈剤Eであって、ヒドロシリル化反応を介して反応するものであり、以下のもの:
・1分子当たり1個の水素化ケイ素基を含むケイ素化合物、及び
・エチレン性不飽和基を1個含有する有機化合物(この有機化合物は、好ましくは3~20個の炭素原子を有する有機α-オレフィンであり、特に好ましくは末端ビニル基を有するドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン、オクタデセン及びそれらのすべての組合せより成る群から選択される)、
・テレケリックアルケニル基を1個有するオルガノポリシロキサン(このテレケリックアルケニル基は、好ましくはビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル及びテトラデセニルより成る群から選択され、特に好ましくはビニル基である)
より成る群から選択される、前記反応性希釈剤E、
f)随意としての、顔料、染料、クレー、界面活性剤、水素添加ヒマシ油、ウォラストナイト、アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム、ハロイサイト、ハンタイト ハイドロマグネサイト、膨張性グラファイト、ホウ酸亜鉛、マイカ又はヒュームドシリカ等の少なくとも1種の添加剤H、並びに
g)随意としての、シリコーン組成物の硬化速度を遅らせる少なくとも1種の硬化速度調整剤G。
【0059】
別の好ましい実施形態では、反応性希釈剤Eは:
・末端ビニル基を有するドデセン、テトラデセン、ヘキサデセン、オクタデセン及びそれらのすべての組合せより成る群から選択されるか、又は
・式Iの液状オルガノポリシロキサンである。
【化2】
ここで、
R及びR
2は互いに独立してC
1~C
30炭化水素基から選択され、好ましくはそれらはメチル、エチル、プロピル、トリフルオロプロピル及びフェニルより成る群から選択され、特に好ましくはメチル基であり、
R
1はC
1~C
20アルケニル基であり、好ましくはR
1はビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル又はテトラデセニルより成る群から選択され、特に好ましくはR
1はビニルであり、
xは0~100の範囲であって、付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xの粘度が反応性希釈剤を含まないことを除いて同様の組成物と比較して低下するように選択される。
【0060】
好ましい実施形態に従えば、オルガノポリシロキサンAは、ジメチルビニルシリル末端基を含有するジメチルポリシロキサンの群から選択される。
【0061】
別の好ましい実施形態に従えば:
・前記オルガノポリシロキサンAの25℃における粘度は、5mPa・s~60000mPa・sの範囲、好ましくは5mPa・s~5000mPa・sの範囲、特に好ましくは5mPa・s~350mPa・sの範囲であり、
・前記のケイ素に結合したテレケリック水素原子を1分子当たり2個含み且つケイ素に結合したペンダント水素原子を含まないケイ素化合物Bの25℃における粘度は、5~100mPa・sの範囲であり、
・前記のケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個含むケイ素化合物Bの25℃における粘度は、5~2000mPa・sの範囲である。
【0062】
本明細書中で想定している全ての粘度は、それ自体既知である方法によって、ブルックフィールド型の装置を用いて25℃で測定された動的粘度の大きさに対応する。液状物質に関しては、本明細書中で想定している粘度は、25℃における「ニュートン」粘度と称される動的粘度、即ち、測定粘度が、速度勾配に依存しないように、充分に低い剪断速度勾配で、それ自体既知である方法により測定される動的粘度である。
【0063】
好ましい実施形態に従えば、前記オルガノポリシロキサンA及び前記のケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも2個含むケイ素化合物Bの25℃における粘度は、付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xの25℃における粘度が、電池モジュールケーシング102に注入できる500mPa・s~300000mPa・sの範囲となるように選択される。電池モジュールケーシング102内に組成物を流し込む選択肢が用いられる場合、前記付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xの成分は、その粘度が、500mPa・s~5000mPa・s、特に好ましくは500mPa・s~2500mPa・sとなるように選択される。
【0064】
ヒドロシリル化触媒Cの例は、米国特許第3715334号に示されるKarstedt触媒等のヒドロシリル化触媒又は当業者に既知のその他の白金若しくはロジウム触媒であり、マイクロカプセル化ヒドロシリル化触媒、例えば米国特許第5009957号に見られるような当該技術分野において周知のものも含まれる。しかし、本発明に関連するヒドロシリル化触媒は、少なくとも1種の次の元素を含むことができる:Pt、Rh、Ru、Pd、Ni、例えば、ラネーニッケル、及びこれらの組み合わせ。触媒は、必要に応じ、不活性又は活性担体と組み合わせられる。使用可能な好ましい触媒の例には、クロロ白金酸、クロロ白金酸のアルコール溶液、白金とオレフィンとの錯体、白金と1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとの錯体及び白金を担持する粉末等の白金型触媒が挙げられる。白金触媒は、文献に十分記載されている。特に、米国特許第3159601号、同第3159602号及び同第3220972号、欧州特許公開第057459号、同第188978号及び同第190530号に記載の白金と有機物質との錯体、並びに、カールシュテットが権利を有する米国特許第3419593号、同第3715334号、同第3377432号、同第3814730号、及び同第3775452号に記載の白金とビニル化オルガノポリシロキサンとの錯体が挙げられる。白金型触媒が特に望ましい。
【0065】
硬化速度調整剤G(抑制剤とも称される)の例は、必要に応じ、調合されたシリコーンの硬化を遅らせるように設計される。硬化速度調整剤は、当該技術分野で公知であり、このような材料の例は、米国特許明細書中に見つけることができる。米国特許第3923705号は、ビニル含有環状シロキサンの使用について言及している。米国特許第3445420号は、アセチレン系アルコールの使用を記載している。米国特許第3188299号は、複素環式アミンの有効性を示している。米国特許第4256870号は、硬化を制御するために使用されるマレイン酸アルキルについて記載している。オレフィン系シロキサンはまた、米国特許第3989667号に記載されているように使用できる。ビニル基を含むポリジオルガノシロキサンも使用され、この技術は、米国特許第3498945号、同第4256870号、及び同第4347346号で見つけることができる。この組成物の好ましい抑制剤は、メチルビニルシクロシロキサン、3-メチル-1-ブチン-3-オール、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノールであり、特に好ましいのは、目的の硬化速度に応じて、シリコーン化合物の0.002%~1.00%の量の1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサンである。
【0066】
好ましい硬化速度調整剤Gは、下記から選択される:
・1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、
・3-メチル-1-ブチン-3-オール、及び
・1-エチニル-1-シクロヘキサノール。
【0067】
より長い作業時間又は「可使時間」を得るために、硬化速度調整剤Gの量は、目的の「可使時間」に達するように調節される。本シリコーン組成物中の触媒抑制剤の濃度は、高温で硬化を防止する又は過剰に硬化を延長することなく、周囲温度で組成物の硬化を遅らせるのに十分である。この濃度は、特定の使われる抑制剤、ヒドロシリル化触媒の性質と濃度、及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンの性質に応じて広範に変化する。白金族金属1モル当たり1モル程度の抑制剤の小さい抑制剤濃度が、いくつかの事例では、満足できる保存安定性及び硬化速度をもたらす。その他の事例では、白金族金属の1モル当たり500モルまで又はそれ以上の抑制剤濃度が必要な場合がある。所与のシリコーン組成物中の特定の抑制剤に対し、最適濃度は、定型的実験を行うことにより、容易に決定できる。
【0068】
好ましい実施形態に従えば、前記付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xに対する前記オルガノポリシロキサンA、前記反応性希釈剤E及び前記ケイ素化合物Bの重量割合は、ケイ素に結合した水素原子対ケイ素に結合した全アルケニル基の全体モル比が0.35~10の範囲内、好ましくは0.4~1.5の範囲内になるようなものである。
【0069】
前記付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物X中には、顔料、染料、クレー、界面活性剤、水素添加ヒマシ油、ウォラストナイト又はヒュームドシリカ等のいくつかの添加剤H(これらは配合されたシリコーン物質の流れを変化させる)を用いることもできる。
【0070】
「染料」は、着色又は蛍光の有機物質のみを意味し、光の選択的吸収によって基材に色を付与する。「顔料」は、着色、黒色、白色又は蛍光性の粒子状有機又は無機固体を意味し、通常はそれらが加えられる媒体や基材中に不溶性であり、媒体や基材によって物理的影響や化学的影響を実質的に受けない。顔料は、光の選択的吸収により及び/又は光の散乱により外観を変える。顔料は通常、着色過程の間を通し、結晶又は粒子構造を保持する。顔料及び染料は、当該技術分野において周知であり、本明細書で詳細に説明する必要はない。
【0071】
クレーは、それ自体よく知られた物質であり、例えば、刊行物「Mineralogie des argiles [Mineralogy of clays], S.Caillere, S.Henin, M.Rautureau, 2nd Edition 1982, Masson」に記載されている。クレーは、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、ナトリウム、カリウム及びリチウムカチオン及びそれらの混合物から選択されるカチオンを含むケイ酸塩である。かかる物質の例としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、ベントナイト、バイデライト、及びサポナイト等のスメクタイト類のクレー、そしてまた、バーミキュライト、ステベンサイト及び緑泥石(chlorite)類のクレーも挙げられる。これらのクレーは天然起源のものでもよく、合成起源のものでもよい。クレーは好ましくはベントナイト又はヘクトライトであり、これらのクレーは、第四級アミン、第三級アミン、アミンアセテート、イミダゾリン、アミン石鹸、脂肪硫酸塩、アルキルアリールスルホネート及びアミンオキシド並びにそれらの混合物から選択される化学化合物で変性されていてもよい。本発明に従って使用可能なクレーは、合成ヘクトライト(ラポナイトとしても知られる)、例えば、Laporte社によりLaponite XLG、Laponite RD及びLaponite RDSの名称で販売されている製品(これらの製品は、ケイ酸ナトリウムマグネシウム及び特にケイ酸リチウムマグネシウムナトリウムである);ベントナイト、例えば、Rheox社によりBentone HCの名称で販売されている製品;ケイ酸マグネシウムアルミニウム、特に水和物、例えば、R.T.Vanderbilt CompanyによりVeegum Ultraの名称で販売されている製品、又はケイ酸カルシウム及び特に、CELITE ET WALSH ASS社によりMicro-Cel Cの名称で販売されている合成型のもの、である。
【0072】
多くのシリコーンポリエーテル界面活性剤が利用可能であるが、本発明のシリコーン化合物を粘稠化するために好ましいシリコーンポリエーテルは、Elkem Silicones USA社のSP 3300であろう。
【0073】
別の好ましい添加剤Hは、レオロジー調整剤、例えば、Elementis Specialties社(米国ニュージャージー州所在)のThixcin R、水素添加ヒマシ油である。
【0074】
メタケイ酸カルシウムとしても知られるウォラストナイトは、天然鉱物であり、難燃剤として添加し得る(添加量は、用途に応じて変化し、付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xの100重量部を基準にして、1重量部~15重量部の範囲である)。本発明で使用し得るウォラストナイトは、採掘型であり、アシキュラー形態を有し、すなわち、針状形状である。好ましいウォラストナイトは、NYCO(登録商標)Minerals社(米国ニューヨーク州Willsboro)により供給される材料から選択される。
【0075】
アルミニウム三水和物(ATH)は、一般的難燃化用充填剤である。これは、180~200℃を超えて加熱すると分解し、この時点で熱を吸収し、水を放出して、火炎を急冷する。水酸化マグネシウム(MDH)は、ATHより高い熱安定性を有する。吸熱(熱吸収)分解は300℃で開始され、その際に水を放出し、この水が難燃剤としての働きをすることができる。
【0076】
ハンタイト/ハイドロマグネサイトのブレンド(Mg3Ca(CO3)4/Mg5(CO3)4(OH)2・4H2O)。ハンタイト及びハイドロマグネサイトは、自然界ではほとんど常に混合物として存在する。ハイドロマグネサイトは、220℃(屋外)~250℃(押出機中加圧下で)で分解し始め、これは十分に高温なので難燃剤として使用できる。ハイドロマグネサイトは、ATH及びMDHと酷似していて、水を放出して熱を吸収する。対照的に、ハンタイトは、400℃超で分解し、熱を吸収するが、二酸化炭素を放出する。
【0077】
ヒュームドシリカもまた、これらの材料のレオロジー特性を変えるために添加剤Hとして使用できる。ヒュームドシリカは、酸水素炎中での揮発性ケイ素化合物の高温熱分解により得ることができ、シリカ微粒子を生成する。この方法は、特に、表面に多数のシラノール基を有する親水性のシリカを得ることを可能とし、このシリカは、低レベルのシラノールを有するシリカより一層シリコーン組成物を粘稠にする傾向がある。かかる親水性シリカは、例えば、Degussa社から、Aerosil 130、Aerosil 200、Aerosil 255、Aerosil 300及びAerosil 380の名称で販売され、また、Cabot社から、Cab-O-Sil HS-5、Cab-O-Sil EH-5、Cab-O-Sil LM-130、Cab-O-Sil MS-55及びCab-O-Sil M-5の名称で販売されている。シラノール基の数の減少をもたらす化学反応によって前記シリカを化学的に変性することが可能である。特に、シラノール基を疎水基で置換することが可能であり、それにより、疎水性シリカが得られる。この疎水基は、以下のものであることができる:
・トリメチルシロキシ基[これは特にヘキサメチルジシラザンの存在下でヒュームドシリカを処理することにより得られる。こうして処理されたシリカは、CTFA(第6版、1995)に従って「シリル化シリカ」として称される。それらは、例えば、Degussa社から参照番号Aerosil R812として、及びCabot社からCab-O-Sil TS-530として販売されている];又は
・ジメチルシリルオキシル又はポリジメチルシロキサン基(これは特にポリジメチルシロキサン又はメチルジクロロシランの存在下でヒュームドシリカを処理することにより得られる)。
【0078】
こうして処理されたシリカは、CTFA(第6版、1995)に従って「ジメチルシリル化シリカ」と称される。これらは例えばDegussa社から参照番号Aerosil R972及びAerosil R974として、並びにCabot社からCab-O-Sil TS-610及びCab-O-Sil TS-720として販売されている。ヒュームドシリカは、好ましくは、ナノメートルからミクロメートル、例えば、約5~200nmの範囲であり得る粒径を有する。
【0079】
別の好ましい実施形態に従えば、前記付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xは、使用前に少なくとも2つの別々の(好ましくは気密性の)パッケージを含む多成分型RTVとして貯蔵され、その際、前記ヒドロシリル化触媒Cとケイ素化合物B又は反応性希釈剤E(これが存在していて且つ1分子当たり1個の水素化ケイ素基を含むケイ素化合物である場合)とが同じパッケージ中に存在しないようにする。
【0080】
別の好ましい実施形態に従えば、前記付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xは、使用前に少なくとも2つの別々の(好ましくは気密性の)パッケージを含む多成分型RTVとして貯蔵され、
a)第1のパッケージA1は、
・本発明に従う前記の少なくとも1種のオルガノポリシロキサンA 100重量部、
・本発明に従う前記の中空ガラスビーズD 5~30重量部、
・本発明に従う前記の少なくとも1種の反応性希釈剤E 0~30重量部、好ましくは5~30重量部、及び
・白金をベースとするヒドロシリル化触媒C 金属白金を基準として4~150ppm
を含み、
b)第2のパッケージA2は、
・本発明に従う前記の少なくとも1種のオルガノポリシロキサンA 100重量部、
・本発明に従う前記のケイ素に結合したテレケリック水素原子を1分子当たり2個含む一方のケイ素化合物B 10~70重量部、
・本発明に従う前記のケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも3個含むケイ素化合物B 5~25重量部、
・本発明に従う前記の中空ガラスビーズD 5~30重量部、及び
・有効量の少なくとも1種の硬化速度を遅くする硬化速度調整剤G
を含む。
【0081】
本発明の別の目的は、上述の本発明に従う二次電池パックを製造するための方法に関し、該方法は、下記のステップを含む:
a)相互に電気的に接続された複数の電池セル103が内部に配置された、少なくとも1つの電池モジュールケーシング102を調製するステップ、
b)前記電池モジュールケーシング102に、請求項3又は11で定義の付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xを導入するステップ、
c)前記電池モジュールケーシング102に完全に又は部分的に充填するステップ、及び
d)シリコーンゴムバインダー及び中空ガラスビーズを含むシリコーンゴムシンタクチックフォームを形成するように、硬化を起こさせるステップ、及び、
e)随意としての、電池モジュールケーシング102を蓋で覆うステップ。
【0082】
本発明に従う前記方法の好ましい実施形態は、付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xの調製法に関し、この調製法は、次のステップa)~e):
a)ベース供給ライン中に液状シリコーンベースMS1を供給するステップと、
b)触媒供給ライン中に触媒マスターバッチMCを供給するステップと、
c)抑制剤供給ライン中に抑制剤マスターバッチMIを供給するステップと、
d)随意としての、添加剤供給ライン中に添加剤マスターバッチMAを供給するステップと、
e)前記液状シリコーンベースMS1、前記触媒マスターバッチMC及び前記抑制剤マスターバッチMI並びに随意として前記添加剤マスターバッチMAをタンク中に導いて前記付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xを得るステップと
を含み、
前記液状シリコーンベースMS1は、以下のi)~iv):
i)ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンA(前記アルケニル基はそれぞれ2~14個の炭素原子を有し、好ましくはビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル及びテトラデセニルより成る群から選択され、特に好ましくは前記アルケニル基はビニル基である)、
ii)中空ガラスビーズD、好ましくは中空ホウケイ酸塩ガラス微小球D1、
iii)ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個有する少なくとも1種のケイ素化合物B、並びに
iv)随意としての硬化速度を遅くする硬化速度調整剤G
を含み、
前記触媒マスターバッチMCは、次のi)及びii):
i)少なくとも1種のヒドロシリル化触媒C;及び
ii)随意としての、ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンA(前記アルケニル基はそれぞれ2~14個の炭素原子を有し、好ましくは前記アルケニル基はビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル及びテトラデセニルより成る群から選択され、特に好ましくは前記アルケニル基はビニル基である)
を含み、
前記抑制剤マスターバッチMIは、次のi)及びii):
i)硬化速度を遅くする硬化速度調整剤G;及び
ii)随意としての、ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンA(前記アルケニル基はそれぞれ2~14個の炭素原子を有し、好ましくは前記アルケニル基はビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル及びテトラデセニルより成る群から選択され、特に好ましくは前記アルケニル基はビニル基である)
を含み、
前記添加剤マスターバッチMAは、次のi)及びii):
i)顔料、染料、クレー、界面活性剤、水素添加ヒマシ油、ウォラストナイト、アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム、ハロイサイト、ハンタイト、ハイドロマグネサイト、膨張性グラファイト、ホウ酸亜鉛、マイカ又はヒュームドシリカ等の少なくとも1種の添加剤H、及び
ii)随意としての、ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンA(前記アルケニル基はそれぞれ2~14個の炭素原子を有し、好ましくは前記アルケニル基はビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル及びテトラデセニルより成る群から選択され、特に好ましくは前記アルケニル基はビニル基である)
を含む。
【0083】
前記の好ましい実施形態の第1の利点は、付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xの架橋の反応速度が、硬化速度調整剤Gの添加により調節されることに依拠している。この必須成分の添加は、特定の供給ラインを介して行われるので、抑制剤のレベルは、作業者により容易に変更でき、作業者が硬化速度を高めたり急速な硬化が始まる温度を下げたりすることを可能とする。新規に設計される二次電池パックの構成がますます複雑な形状を含むようになり、ケースバイケースで硬化速度を注意深く調節することが必要になると思われるので、これは重要な利点である。
【0084】
第2の主要な利点は、今や、抑制剤の量を減らすことが可能となり、そのため、急速な硬化が始まる温度を低下させることが可能となることに依拠している。これは、電池パック内に幾分温度感受性が高い成分が存在する場合に重要になり得る。
【0085】
本発明に従う前記方法の好ましい実施形態は、付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xの調製法であって、下記ステップa)~g):
a)ベース供給ライン中に液状シリコーンベースMS2を供給するステップと、
b)触媒供給ライン中に触媒マスターバッチMCを供給するステップと、
c)抑制剤供給ライン中に抑制剤マスターバッチMIを供給するステップと、
d)随意としての、添加剤供給ライン中に添加剤マスターバッチMAを供給するステップと、
e)前記液状シリコーンベースMS2、前記触媒マスターバッチMC及び前記抑制剤マスターバッチMI並びに随意として前記添加剤マスターバッチMAを撹拌タンク中に導くステップと、
f)前記撹拌タンクを運転し、それによって前記液状シリコーンベースMS2、前記触媒マスターバッチMC及び前記抑制剤マスターバッチMI並びに随意として前記添加剤マスターバッチMAを好ましくは高フロー低剪断ミキサーによって混合するステップと、
g)前記撹拌タンク中に中空ガラスビーズD、好ましくは中空ホウケイ酸塩ガラス微小球D1を、好ましくは重力排出式又はスクリュー式供給装置によって加えて、前記付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xを得るステップと
を含み、
前記液状シリコーンベースMS2が、以下のi)~iv):
i)ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンA(前記アルケニル基はそれぞれ2~14個の炭素原子を有し、好ましくはビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル及びテトラデセニルより成る群から選択され、特に好ましくは前記アルケニル基はビニル基である)、
ii)ケイ素に結合した水素原子を1分子当たり少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個有する少なくとも1種のケイ素化合物B、並びに
iii)随意としての硬化速度を遅くする硬化速度調整剤G
を含み、
前記触媒マスターバッチMCが、次のi)及びii):
i)少なくとも1種のヒドロシリル化触媒C;及び
ii)随意としての、ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンA(前記アルケニル基はそれぞれ2~14個の炭素原子を有し、好ましくは前記アルケニル基はビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル及びテトラデセニルより成る群から選択され、特に好ましくは前記アルケニル基はビニル基である):
を含み、
前記マスターバッチMIが、次のi)及びii):
i)硬化速度を遅くする硬化速度調整剤G;及び
ii)随意としての、ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンA(前記アルケニル基はそれぞれ2~14個の炭素原子を有し、好ましくは前記アルケニル基はビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル及びテトラデセニルより成る群から選択され、特に好ましくは前記アルケニル基はビニル基である):
を含み、
前記添加剤マスターバッチMAが、次のi)及びii):
i)顔料、染料、クレー、界面活性剤、水素添加ヒマシ油、ウォラストナイト、アルミニウム三水和物、水酸化マグネシウム、ハロイサイト、ハンタイト ハイドロマグネサイト、膨張性グラファイト、ホウ酸亜鉛、マイカ又はヒュームドシリカ等の少なくとも1種の添加剤H、及び
ii)随意としての、ケイ素に結合したアルケニル基を1分子当たり少なくとも2個有する少なくとも1種のオルガノポリシロキサンA(前記アルケニル基はそれぞれ2~14個の炭素原子を有し、好ましくは前記アルケニル基はビニル、アリル、ヘキセニル、デセニル及びテトラデセニルより成る群から選択され、特に好ましくは前記アルケニル基はビニル基である):
を含む
ものに関する。
【0086】
付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物X調製の好ましい実施形態の全ての成分は、既に上記した。
【0087】
好ましい実施形態では、本発明による二次電池パックは乗り物内に配置される。
【0088】
本明細書で使用される場合、用語の「乗り物」は、一般的に、スポーツユーティリティービークル(SUV)を含む乗用車、バス、トラック、種々の商用車両等の自動車、種々のボート及び大型船を含む船舶、航空機、等を含み、さらに、ハイブリッド車、電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、水素駆動乗り物及びその他の代替燃料(例えば、石油以外の資源由来の燃料)の乗り物が含まれることが理解される。本明細書において言及される場合、ハイブリッド車は、2つ以上の出力源を有する、例えば、ガソリン及び電気両駆動の乗り物である。
【0089】
別の好ましい実施形態では、本発明による二次電池パックは自動車内に配置される。
【0090】
別の実施形態では、本発明による二次電池パックは、純電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、ハイブリッド車(HEV)中に配置される。
【0091】
別の実施形態では、本発明による二次電池パックは:航空機、ボート、大型船、列車又はウォールユニット中に配置される。
【0092】
図1及び2は、電池セル103が電池モジュールケーシング102中で極めて近接して存在できることを示す。本発明の一実施形態では、本発明による架橋性シリコーン組成物並びにシリコーンゴムバインダー及び中空ガラスビーズを含む軽量のシリコーンゴムシンタクチックフォームの前駆体は、電池が置かれて取り付けられた後の電池モジュールケーシング102中に流し込まれ(
図3、104)、硬化されるとシリコーンシンタクチックフォームが得られる(
図4、105)。
【0093】
図5は、本発明の一実施形態による付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xを製造する方法を示し、前記液状シリコーンベースMS1が、貯蔵タンク1中に貯蔵され、前記触媒マスターバッチMCが貯蔵タンク20に貯蔵され、前記抑制剤マスターバッチMIが貯蔵タンク50に貯蔵され、さらに前記添加剤マスターバッチMAが貯蔵タンク65に貯蔵され、それらそれぞれの供給ライン200、210、220及び230それぞれ中に別々に供給される。液状シリコーンベースMS1の貯蔵タンク1は、任意の大型容積形ポンプであり得るフィードポンプ10、及び任意の送り速度調節器15を介して、撹拌タンク80に連結される。触媒マスターバッチMCの貯蔵タンク20は、任意の小型ピストン容積形ポンプ、歯車ポンプ、マイクロモーションインジェクターポンプ、又はその他の容積形ポンプであり得るフィードポンプ25、及び任意の送り速度調節器30を介して、撹拌タンク80に連結される。抑制剤マスターバッチMIの貯蔵タンク50は、任意の小型ピストン容積形ポンプ、歯車ポンプ、マイクロモーションインジェクターポンプ、又はその他の容積形ポンプであり得るフィードポンプ55、及び任意の送り速度調節器60を介して、撹拌タンク80に連結される。添加剤マスターバッチMAの貯蔵タンク65は、任意の小型ピストン容積形ポンプ、歯車ポンプ、マイクロモーションインジェクターポンプ、又はその他の容積形ポンプであり得るフィードポンプ70、及び任意の送り速度調節器75を介して、撹拌タンク80に連結される。前記液状シリコーンベースMS1、前記触媒マスターバッチMC及び前記抑制剤マスターバッチMI及び随意としての前記添加剤マスターバッチMAが前記撹拌タンク80に向けられる場合、得られた混合物は、好ましくは、高流動性、低剪断力混合機を用いて混合され、本発明による付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xが得られる。この時点で、前記組成物は、前記電池モジュールケーシング102中に手段100(これは電池モジュールケーシング102の空きスペースを満たすためのフリーフローを可能にする注入装置又はポンプのいずれかであることができる)によって導入するために利用可能になり、架橋によって硬化する。
【0094】
図6は、本発明の別の一実施形態による付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xを製造する方法を示し、前記液状シリコーンベースMS2が、貯蔵タンク1中に貯蔵され、前記触媒マスターバッチMCが貯蔵タンク20に貯蔵され、前記抑制剤マスターバッチMIが貯蔵タンク50に貯蔵され、さらに前記添加剤マスターバッチMAが貯蔵タンク65に貯蔵され、それらそれぞれの供給ライン200、210、220及び230それぞれ中に別々に供給される。液状シリコーンベースMS2の貯蔵タンク1は、任意の大型容積形ポンプであり得るフィードポンプ10、及び任意の送り速度調節器15を介して、撹拌タンク80に連結される。触媒マスターバッチMCの貯蔵タンク20は、任意の小型ピストン容積形ポンプ、歯車ポンプ、マイクロモーションインジェクターポンプ、又はその他の容積形ポンプであり得るフィードポンプ25、及び任意の送り速度調節器30を介して、撹拌タンク80に連結される。抑制剤マスターバッチMIの貯蔵タンク50は、任意の小型ピストン容積形ポンプ、歯車ポンプ、マイクロモーションインジェクターポンプ、又はその他の容積形ポンプであり得るフィードポンプ55、及び任意の送り速度調節器60を介して、撹拌タンク80に連結される。添加剤マスターバッチMAの貯蔵タンク65は、任意の小型ピストン容積形ポンプ、歯車ポンプ、マイクロモーションインジェクターポンプ、又はその他の容積形ポンプであり得るフィードポンプ70、及び任意の送り速度調節器75を介して、撹拌タンク80に連結される。前記液状シリコーンベースMS2、前記触媒マスターバッチMC及び前記抑制剤マスターバッチMI及び随意としての前記添加剤マスターバッチMAが前記撹拌タンク80に向けられる場合、得られた混合物は、好ましくは、高流動性、低剪断力混合機を用いて混合される。前記得られた混合物に、ホッパーであるのが好ましい貯蔵タンク90に貯蔵されている中空ガラスビーズD、好ましくは中空ホウケイ酸塩ガラス微小球D1が、好ましくは、重力排出により直接又はスクリューフィーダー95を介して、前記撹拌タンク80に移され、本発明による付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物Xが得られる。この時点で、前記組成物は、前記電池モジュールケーシング102中に手段100(これは電池モジュールケーシング102の空きスペースを満たすためのフリーフローを可能にする注入装置又はポンプのいずれかであることができる)によって導入するために利用可能になり、架橋によって硬化する。
【0095】
本発明により提供される他の利点は、以下の例示的実施例から明らかになろう。
【実施例0096】
I)成分の定義
【0097】
・オルガノポリシロキサンA1=ジメチルビニルシリル末端単位を有するポリジメチルシロキサンであって、25℃における粘度が80mPa・s~120mPa・sの範囲のもの;
・オルガノポリシロキサンA2=ジメチルビニルシリル末端単位を有するポリジメチルシロキサンであって、25℃における粘度が500mPa・s~650mPa・sの範囲のもの;
・連鎖延長剤としてのオルガノポリシロキサンB1(CE)=ジメチルシリルヒドリド末端単位を有するポリジメチルシロキサンであって、25℃における粘度が7mPa・s~10mPa・sの範囲であり、式M’DXM’を有するもの
(ここで、
Dは式(CH3)2SiO2/2のシロキシ単位であり、
M’は式(CH3)2(H)SiO1/2のシロキシ単位であり、
xは8~11の範囲の整数である);
・架橋剤としてのオルガノポリシロキサンB2(XL)=25℃における粘度が18mPa・s~26mPa・sの範囲であり、10個を超えるSiH反応性基が存在する(平均で16~18個のSiH反応性基):鎖中及び鎖末端(α/ω)SiH基を有するポリ(メチルヒドロゲノ)(ジメチル)シロキサン、
・中空ガラスビーズD1:3M(商標)Glass Bubbles Series S15、3M社から販売、粒径(50%)体積によるミクロン=55ミクロン、静水圧破砕強さ:試験圧力300psi(2.07MPa)、真密度(g/cc)=0.15。
・中空ガラスビーズD2:3M(商標)Glass Bubbles Series K25、3M社から販売、粒径(50%)体積によるミクロン=55ミクロン、静水圧破砕強さ:試験圧力750psi、真密度(g/cc)=0.25。
・中空ガラスビーズD3:3M(商標)iM16K Glass Bubbles、3M社から販売、粒径(50%)体積によるミクロン=20ミクロン、静水圧破砕強さ:試験圧力16000psi、真密度(g/cc)=0.46。
・中空ガラスビーズD4:3M(商標)K1 Glass Bubbles、3M社から販売、粒径(50%)体積によるミクロン=65ミクロン、静水圧破砕強さ:試験圧力250psi、真密度(g/cc)=0.125。
・硬化速度調整剤G1:1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン。
・硬化速度調整剤G2:1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ECH)。
・硬化速度調整剤G3-MB:90重量%のオルガノポリシロキサンA1及び10重量%の硬化速度調整剤G2。
・触媒C:Karstedt触媒として、350cSのジメチルビニルダイマー中の10%白金、Johnson Matthey社から販売。
・触媒C-MB:98重量%のオルガノポリシロキサンA1及び2重量%の触媒C。
・反応性希釈剤E=1-テトラデセン。
【0098】
II)実施例パートI
【0099】
【0100】
【0101】
2構成型配合物1については、硬化前に、A部とB部とを6:1(w/w)の重量比で混合して、組成物Iを調製した。
2構成型配合物2については、硬化前に、A部とB部とを1:1(w/w)の重量比で混合して、組成物IIを調製した。
【0102】
複数の相互に導電性接続された電池セル103が内部に配置された電池モジュールケーシング102中に、硬化前の各配合物1及び2流し込んだ。室温で硬化が起こり、シリコーンゴムバインダー及び中空ガラスビーズを含むシリコーンゴムシンタクチックフォームであって、前記電池モジュールケーシング102のオープンスペースを完全に満たし且つ前記電池セル103を全体的に覆うものが得られた。
【0103】
III)実施例パートII
【0104】
以下の配合物を調製した:
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
配合物3を1:1の重量混合比で混合し、室温(25℃)で一晩16時間硬化させて、硬化シリコーンエラストマー(シリコーンゴムシンタクチックフォーム)を得た。
【0114】
配合物4~16を1:1の重量混合比で混合し、室温(25℃)で一晩16時間硬化させて、本発明によるシリコーンゴムシンタクチックフォームを得た。
【0115】
配合物17(比較例)を、Elkem Silicones社から参照番号RTV-3040の名称で販売されている2構成型成分(2構成型成分、重付加硬化系)を1:1の重量混合比で混合することによって調製し、室温(25℃)で一晩16時間硬化させて、硬化シリコーンエラストマーを得た。
【0116】
配合物18(比較例)を、Elkem Silicones社から参照番号Bluesil(商標)ESA 7242の名称で販売されている2構成型成分(重付加により架橋する2構成型成分熱硬化液体シリコーンエラストマー)を1:1の重量混合比で混合することによって調製し、室温(25℃)で一晩16時間硬化させて、硬化シリコーンエラストマーを得た。
【0117】
配合物19を、Sakrete Concreteをベースにして調製した。使用したコンクリートは、ノースカロライナ州Charlotte所在のSAKRETE of North America, LLC社から入手した。この製品は、SAKRETE High Strength Concrete Mixと称される。コンクリート試料は、次の方法を用いて製造した:
・1kgの高強度コンクリート混合物を容器中に流し込み、コンクリートの中央にくぼみを形成する。
・作業可能な混合物を得るために十分な水を加えた(70g)。
・材料を51mmの直径のモールドに流し込んだ。
・材料を空隙にうまく入れた後、金属スパチュラで平坦化した。
・材料に親指の跡が残らなくなるまで、材料を硬化させた。
・材料が硬化すると、金属スパチュラを用いて、目的の仕上げ及び平坦度を得た。
・材料をビニールで覆って湿潤状態に7日間保持し、その間、常に室温を保った。
【0118】
【0119】
【0120】
熱伝導率は、Thermtest Hot Disk TPS (Transient Plane Source) 2500S Testerを用いて測定し、表12に示した。表12は、本発明による配合物実施例(配合物4~16)は、比較材料:配合物17(RTV-3040)、配合物18(ESA 7242)、配合物19(Sakrete Concrete)及び配合物3(ESA 7200)より低い熱伝導率を有することを示す。
【0121】
断熱材料を有することは1つの利点である。パック中の電池又は複数電池が加熱すると、電池の周りの断熱材料は、過剰な熱が電気乗り物(車、トラック、ボート、列車、飛行機、等)の乗客の領域に達しないようにするのを支援する。
【0122】
本発明による硬化配合物4~16の別の利点は、それらが振動を吸収できることである。復元力は振動に関連する。復元力が大きい材料であるほど、より多くの振動が材料を通して変換される。Bayshore弾性計と呼ばれるShore(登録商標)Model SRI弾性計を用いて、ASTM D2632に記載の「ゴム特性-垂直リバウンドによるゴム特性-復元力の標準試験法」を、迅速に、正確に測定する。本発明による実施例及び比較例材料の復元力を測定し、結果を表13に開示している。全ての配合物を1:1の重量混合比で混合し、室温で一晩16時間硬化した。おもりを試験試料上に落とし、そのおもりが試料に当たると、試験試料上でリバウンドする。おもりが試料に当たったときに、跳ね返りが高いと、試料は復元力がより大きい。おもりが高く跳ね返らない場合、材料は復元力が小さい。
【0123】
【0124】
表13は、比較例配合物がより高い復元力を有し、その材料を通してより容易に振動を変換することになるが、一方、本発明による硬化配合物はより低い復元力を有する。
【0125】
「タンデルタ」は、「デルタの正接(Tangent of Delta)」の省略形である。タンデルタは、材料がエネルギーを吸収し、放散させる方式を定量化する。それは、衝撃力と支持体に伝達されて生じた力との間で位相がずれている時間の関連性を表す。タンデルタはまた、より安全な形のエネルギーへの変換、及び放散を介した衝撃力からのこのエネルギーの減少に起因する損失係数としても知られる。したがって、タンデルタは、最終的に、材料の減衰能力の指標である。タンデルタが高いほど、減衰係数が大きく、材料の効率が高いほど、エネルギー吸収及び放散が効果的に達成される。タンデルタは、貯蔵弾性率に対する損失弾性率の比率に等しく、すなわち、tan(delta)=G”/G’である。
G”=損失弾性率及びG’=貯蔵弾性率。より高い値は、より低い値の材料よりも効率的に減衰する材料に対応する。
【0126】
下表14は、本発明の材料の実施例が比較例材料よりも良好に減衰することを示す。
【0127】
【0128】
タンデルタ測定は、Anton Parr MCR 302を用いて25℃で行った。G”及びG’は、硬化材料として測定した。タンデルタはこれらの2つの値から計算した。本発明の好ましい実施形態による付加硬化型組成物から調製されたシリコーンシンタクチックフォームは、好都合にも、減衰材料として使用して、電気自動車分野で必要とされる目標を満たすことが可能であり、これは、動力伝達系の周期的変動を最小化するために待ち望まれている減衰制御戦略である。
【0129】
本発明による3種の硬化材料の耐炎性を測定し、表15に示した。全ての試験した配合物は、自己消炎性であった。
【0130】
【0131】
IV)実施例パートIII
【0132】
【0133】
配合物20(付加硬化型オルガノポリシロキサン組成物)を用いて、シリコーンゴムシンタクチックフォームを調製し、配合物21(スズ触媒縮合硬化生成物)から調製したシリコーンゴムシンタクチックフォームと比較する。表16と表17にそれぞれの成分を記載している。
【0134】
【0135】
電池パックは、パックを満たすとき、絶縁材料(架橋前の本発明によるシリコーンシンタクチックフォームの液体前駆体)は、外気から長い距離を移動することが必要となる場合がある。上記比較例配合物21は、急速に硬化するためには、空気からの水分を必要とする。配合物は、25℃で混合され、初期ジュロ硬度を測定するのに十分に硬化するまで、その温度で静置された。また、縮合硬化性比較例配合物21を製造し、本発明の配合物20と同じ方式で静置させた。両試料を製造後、アルミ皿中に流し込んだ後、静置させた。材料は1cm厚さ及び5.2cm直径であった。材料の1つの5.2cmの面を空気に曝露し、アルミ皿の底又は側面を通して、空気(又は空気からの水分)は移動させなかった。この構成は、典型的な電池パックで発生する可能性のあることの代表的なものである。水分を有する空気は、電池用注封材料の1つの面上に存在し得るが、多くの材料は、その面の下方にあり、注封材料の塊を通して移動する水分に依存している。
【0136】
本発明の配合物20に関しては、Shore Aの範囲で材料のジュロ硬度を測定できるまで約12分を要した。ジュロ硬度は、約15 Shore Aであった。1時間で、ジュロ硬度は50 Shore Aであった。以前の試料では、類似の配合物は約52~54 Shore Aに達した。縮合硬化性配合物21について調べると、ジュロ硬度測定が可能となるまでに、1時間42分を要し、その値は、11.7 Shore Aであった。試料を手で加圧し、第2の試料(皿中と等価)を引き離すと、試料の下半分はまだ液状であることが明らかになった。試験試料は、最上層中でのみ硬化した。これは、縮合硬化材料は、代表的試験構成で硬化するために、本発明の配合物よりかなり長い時間を要することを示している。電池パックを注封する際に、製造時間を加速するために、材料がより急速に硬化すれば、有利となるであろう。
【0137】
別の硬化系、ペルオキシド硬化系を試験した。しかし、ペルオキシドは通常、硬化に加熱を必要とし、そのため,これが既に欠点である。上記で示したように、本発明の配合物11は、所望であれば、極めて急速に硬化させることができ、加熱又は加熱するエネルギーの必要はない。
【0138】
下記のように、過酸化物比較例配合物22を表18で示している。
【0139】
【表18】
・DBPH=Varox(登録商標)=90重量%超の2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサンからなり、R.T.Vanderbilt社から販売されている。
・オルガノポリシロキサンA3:ジメチルビニルシリル末端単位を有するポリ(メチルビニル)(ジメチル)シロキサン、25℃の粘度=390mPa・s。
【0140】
Class及びGrassoは、DBPH触媒を有するシリコーンの177℃で1時間の硬化を示唆している(文献:Class, J. B.; Grasso, R. P., The Efficiency of Peroxides for Curing Silicone Elastomers, Rubber Chemistry and Technology, September 1993, Vol. 66, No. 4, pp. 605-622)。我々は、我々の配合物を硬化させるに当たり、この助言にも従った。後硬化は行わなかった。
【0141】
同一タイプの容器を用いて、硬化中保持した(アルミ皿、1つの解放面、5.2cm直径及び1cm厚さの流し込み材料)。我々は、1つの面を露出した。理由は、注封を実施する場合、容器中に流し込み、空気に露出して材料を硬化するのが一般的であるためである。蓋を容器上に置いて、空気を締め出すのは、蓋のための余分なコスト及び蓋を製造状況で取り付ける余分な時間になり得る。177℃で1時間硬化すると、試料をオーブンから取り出した。空気に面した表面は硬化されなかった。これは通常とは異なる現象ではないが、本発明の配合物に類似の配合物が、他の過酸化物硬化シリコーン配合物で認められる問題を有するかどうかを調べるために、これらの配合物で試験した。未硬化層が除去されると、硬化過酸化物比較例エラストマー配合物22は、20 Shore Aのジュロ硬度を有した。
【0142】
酸素含有境界での硬化不足を解消するために、通常、産業界では下記3つの方法が使用されている:
・不活性ガスの使用により、表面に移動するワックスを使用し、障壁を形成することにより、又はコーティングと直接接触するフィルムの使用により、硬化ゾーンから酸素の除去。
・過酸化物レベルを増大させることによりフリーラジカル濃度を高めること。
・ペルオキシラジカルと反応する化学薬品の使用。
【0143】
硬化の不足に対するこれらの解決策は全て機能する可能性がある。しかし、試料の加熱はまだ必要であり、解決策の実施は、硬化エラストマーを変える遙かに複雑な配合物(すなわち、ワックス、ペルオキシラジカルと反応する化学薬品、等)及びより高価な配合物(すなわち、より多くのフリーラジカルペルオキシド)を必要とするはずである。
【0144】
IV)実施例パートIII
【0145】
配合物23~27を表19に従って調製した。熱伝導率(W/mK)及び比重(g/cm3)を測定した。熱伝導率は、Thermtest Hot Disk TPS (Transient Plane Source) 2500S Testerを用いて測定した。
【0146】
熱放散部材が、高い熱伝導率を示す熱伝導材料から作られたものであり、前記熱交換部材が、液体又はガス等の冷却剤が流れることを可能とする1つ又は複数の冷却材チャネルを備える、請求項3に記載の二次電池パック。